説明

保守員派遣システム

【課題】保守員派遣システムにおいて、情報センタと保守員とのやり取りに監視員が加わることをなくす。
【解決手段】情報センタ22は、保守員に関する保守員情報を記憶する記憶部28と、記憶部28が記憶する保守員情報に基づいて、異常が発生した設備機器14の異常対応に最適な保守員を複数の保守員の中から選出する保守員選出部26と、保守員選出部26により選出された保守員の携帯端末機32に出動指令を発信する出動指令発信部30と、を有する。出動指令発信部30は、最初の出動指令発信後から待機時間を経過しても携帯端末機32から情報センタ22に返答が無い場合、その携帯端末機32に再度の出動指令を発信する。これにより、返答が無い場合における監視員の関与が無くなるので、ヒューマンエラーを未然に防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の設備機器に異常が発生したときに、当該建物に保守員を派遣する保守員派遣システムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物内の設備機器に異常が発生したときに、その建物から遠隔の情報センタに異常情報が報知され、報知された異常情報より情報センタに常駐する監視員が保守員を複数の保守員の中から選出し、建物に保守員を派遣する保守員派遣システムが知られている。
【0003】
図1は、従来技術に係わる保守員派遣システム110の全体構成の一例を示す図である。保守員派遣システム110は、保守対象となる設備機器114が設置された建物112と、設備機器114の情報を遠隔で取得する情報センタ122とを有する。建物112と情報センタ122とは、通信回線120を介して互いに接続されていている。
【0004】
建物112には、複数の設備機器114a,114b・・・が設置されている。これらの設備機器114は、例えはエレベータやエスカレータ、或いは冷熱機器である。建物112は、異常検知装置116と送受信装置118とを有する。異常検知装置116は、設備機器114に取り付けられたセンサ(図示せず)から設備機器114の異常状態を検知し、それを異常情報として送受信装置118に送信する。送受信装置118は、通信回線120に接続しており、異常情報を情報センタ122に送信する。
【0005】
情報センタ122は、異常情報を受信する送受信装置124と、送受信装置124で受信した異常情報のログを記憶部(図示せず)に記憶させる情報処理部126と、異常情報を画面に表示させる表示部128とを有する。表示部128が画面に表示した異常情報により、情報センタ122に常駐する監視員は建物112で設備機器114の異常が発生していることを把握することができる。
【0006】
監視員は設備機器114の異常を把握すると、この異常の対応に適任であろう保守員を複数の保守員の中から選出する。そして、監視員は、電話機130を用いて選出された保守員が保持する携帯端末機132を呼び出し、保守員に口頭で出動指令を伝達する。これにより、保守員が設備機器114の異常に対応するために建物112に派遣される。
【0007】
このような保守員派遣システム110においては、建物112で生じた設備機器114の異常に対して、保守員を選出してその保守員に出動指令を伝達するのは監視員であるため、誤認などによるヒューマンエラーが発生する可能性があった。また、同時に複数の異常が発生した場合、これらの異常に対して監視員が同時に処理する能力は限られているため、保守員の派遣に遅れが生じる可能性があった。
【0008】
下記特許文献1には、ビルで異常が生じた場合、センタ(情報センタ)が複数の保守員の中から保守員を自動的に選択し、さらに選択された保守員に異常の内容を自動的に報知するシステムが開示されている。このシステムによれば、異常の対応に適任な保守員に対し監視員を介さずに出動指令を報知することができるので、ヒューマンエラーを防ぐことができる。
【0009】
【特許文献1】特開平11−335020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1においては、センタから保守員に報知した出動指令に対する返答がセンタに無い場合、センタがどのような対応をするのかは開示されていない。従来のシステムであれば、情報センタに常駐する監視員が返答の無い保守員に対して再び出動指令を報知するなど監視員を介して情報センタと保守員のやり取りが行われる。このように情報センタと保守員のやり取りに監視員が加わることにより、上述したようにヒューマンエラーが発生したり、保守員の派遣に遅れが生じたりする可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、情報センタと保守員とのやり取りに監視員が加わることなく、異常が発生した建物に保守員を迅速且つ的確に派遣することができる保守員派遣システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、建物内の設備機器の異常状態を検知する異常検知装置と、設備機器を保守する保守員が保持する携帯端末機と、異常検知装置が検知した異常状態により携帯端末機に出動指令を発信する情報センタと、が通信回線を介して接続され、建物内の設備機器に異常が発生すると、当該建物に保守員を派遣する保守員派遣システムにおいて、情報センタは、保守員に関する保守員情報を記憶する記憶手段と、記憶手段が記憶する保守員情報に基づいて、異常が発生した設備機器の異常対応に最適な保守員を複数の保守員の中から選出する保守員選出手段と、保守員選出手段により選出された保守員の携帯端末機に出動指令を発信する出動指令発信手段と、を有し、出動指令発信手段は、最初の出動指令発信後から待機時間を経過しても携帯端末機から情報センタに返答が無い場合、その携帯端末機に再度の出動指令を発信することを特徴とする保守員派遣システム。
【0013】
また、最初の出動指令発信後から待機時間を経過しても携帯端末機から情報センタに返答が無い場合、保守員選出手段は、既に選出した保守員を除いた複数の保守員の中から異常対応に最適な保守員を選出し、出動指令手段がその保守員の携帯端末機に出動指令を発信することができる。
【0014】
また、保守員選出手段は、複数の保守員に対して異常対応に最適な者から順に優先順位を付けて、優先順位の上位から所定順位までの保守員を複数選出し、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに複数の携帯端末機から対応可能である旨の返答が情報センタにあった場合、出動指令発信手段は、その中から優先順位が最も高い保守員の携帯端末機に最終的な出動指令を発信することができる。
【0015】
また、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに優先順位が最も高い保守員の携帯端末機から対応可能である旨の返答が情報センタにあった場合、出動指令発信手段は、待機時間の経過を待たずにその携帯端末機に最終的な出動指令を発信することができる。
【0016】
また、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに優先順位が最も高い保守員以外の携帯端末機から対応可能である旨の返答が情報センタにあった場合、出動指令発信手段は、待機時間経過後にその中から優先順位が最も高い保守員の携帯端末機に最終的な出動指令を発信することができる。
【0017】
また、情報センタは、災害が発生したか否かを判断する災害発生判断手段と、災害発生判断手段が災害発生と判断した場合、待機時間を変更する待機時間変更手段とを有することができる。
【0018】
また、情報センタは、建物内の設備機器の異常が人命及び公共性に係わる異常であるか否かを判断する異常判断手段と、異常判断手段が人命及び公共性に係わる異常であると判断した場合、待機時間を変更する待機時間変更手段とを有することができる。
【0019】
また、別の発明は、建物内の設備機器の異常状態を検知する異常検知装置と、設備機器を保守する保守員が保持する携帯端末機と、異常検知装置が検知した異常状態により携帯端末機に出動指令を発信する情報センタと、が通信回線を介して接続され、建物内の設備機器に異常が発生すると、当該建物に保守員を派遣する保守員派遣システムにおいて、情報センタは、保守員に関する保守員情報を記憶する記憶手段と、記憶手段が記憶する保守員情報に基づいて、異常が発生した設備機器の異常対応に最適な保守員を複数の保守員の中から所定の人数選出する保守員選出手段と、保守員選出手段により選出された保守員の携帯端末機に出動指令をそれぞれ発信する出動指令発信手段と、建物内の設備機器の異常が人命及び公共性に係わる異常であるか否かを判断する異常判断手段と、を有し、異常判断手段が人命及び公共性に係わる異常であると判断した場合、出動指令発信手段は、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに対応可能である旨の返答が情報センタに最も早くあった保守員の携帯端末機に最終的な出動指令を発信することを特徴とする。
【0020】
また、異常判断手段が人命及び公共性に係わる異常であると判断した場合、出動指令発信手段は、返答が最も早くあった保守員以外にもさらに、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに対応可能である旨の返答が情報センタにあった保守員の携帯端末機に最終的な出動指令を発信することができる。
【0021】
また、記憶手段は、保守員の現在の位置情報を記憶しており、建物内の設備機器に異常が発生すると、保守員選出手段は、位置情報に基づいて当該建物に近い保守員を選出することができる。
【0022】
また、記憶手段は、保守員の現在の作業状態及びその日の作業予定からなる作業情報を記憶しており、保守員選出手段は、作業情報に基づいて出動可能な保守員を選出することができる。
【0023】
また、記憶手段は、保守に関する保守員のスキルの程度をレベル数であらわしたスキルレベル情報を記憶しており、保守員選出手段は、スキルレベル情報に基づいて異常対応に適した保守員を選出することができる。
【0024】
また、記憶手段は、保守員が勤務時間外に出動可能であるか否かという勤務時間外情報を記憶しており、勤務時間外に建物内の設備機器に異常が発生すると、保守員選出手段は、勤務時間外情報に基づいて出動可能な保守員を選出することができる。
【0025】
また、記憶手段は、保守員がどの建物を担当しているかを示す担当建物情報を記憶しており、建物内の設備機器に異常が発生すると、保守員選出手段は、担当建物情報に基づいて当該建物に適した保守員を選出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の保守員派遣システムによれば、情報センタと保守員とのやり取りに監視員が加わることなく、異常が発生した建物に保守員を迅速且つ的確に派遣することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る保守員派遣システムの実施形態について、図に従って説明する。一例として、一つの建物を挙げ、この建物内の設備機器の異常を遠隔で取得して保守員を派遣する保守員派遣システムについて説明する。なお、本発明は、一つの建物に限らず、複数の建物内の設備機器の異常を遠隔で取得して保守員を派遣する保守員派遣システムにも適用できる。
【0028】
まず、本実施形態に係る保守員派遣システム10の構成について、図2を用いて説明する。保守員派遣システム10は、保守対象となる設備機器14が設置された建物12と、設備機器14の情報を遠隔で取得する情報センタ22と、設備機器14を保守する保守員が保持する携帯端末機32とを有する。建物12と情報センタ22と携帯端末機32は、通信回線20を介して互いに接続されている。
【0029】
通信回線20は、有線方式あるいは無線方式で構成される。また、両者を混用することも可能である。通信回線20は、公衆の便に供される共用通信回線であっても、独自の専用の通信回線であってもよい。また、両者を混用することも可能である。共用通信回線としては、通常の電話回線が用いられるが、これに限らず、ISDN、携帯電話、またはPHSなどの回線も利用可能である。
【0030】
携帯端末機32は、音声情報、文字情報、画像データ情報、またはそれらを組み合わせた情報などを通信可能な通信機器であり、例えば、携帯電話、PHS、パソコンなどである。また、携帯端端末機32は、GPS(Global Positioning System)などの衛星測位システムを有し、現在の位置情報を取得することもできる。
【0031】
建物12には、複数の設備機器14a,14b・・・が設置されている。これらの設備機器14a,14b・・・は、例えはエレベータやエスカレータ、或いは冷熱機器である。以降、異常が発生した設備機器を、単に設備機器14と記す。
【0032】
建物12は、異常検知装置16と送受信装置18と有する。異常検知装置16は、設備機器14に取り付けられたセンサ(図示せず)より設備機器14の異常状態を検知し、それを異常情報として送受信装置18に送信する。送受信装置18は、通信回線20に接続しており、異常情報を情報センタ22に送信する。設備機器14の異常状態とは、設備機器14の故障に限らず、故障に至る前の状態を示すこともできる。
【0033】
情報センタ22は、建物12の送受信装置18から送られた異常情報を受信する送受信装置24と、送受信装置24で受信した異常情報より保守員を複数の保守員の中から選出する保守員選出部26と、保守員に関する保守員情報を記憶する記憶部28と、保守員が保持する携帯端末機32に出動指令を発信する出動指令発信部30とを有する。
【0034】
送受信装置24は、通信回線20に接続されており、建物12の送受信装置18や携帯端末機32との通信ができるようになっている。送受信装置24は、建物12の送受信装置18から異常情報を受信するとともに、携帯端末機32から出動指令に対する返答や位置情報などを受信する。一方、送受信装置24は、出動指令発信部30が発信した出動指令を携帯端末機32に送信する。
【0035】
記憶部28は、保守員に関する様々な保守員情報を記憶する。保守員情報は、保守員の現在の位置情報、保守員の現在の作業状態及びその日の作業予定からなる作業情報、保守に関する保守員のスキルの程度をレベル数であらわしたスキルレベル情報、保守員が勤務時間外に出動可能であるか否かという勤務時間外情報、保守員がどの建物を担当しているかを示す担当建物情報などである。
【0036】
保守員選出部26は、送受信装置24が異常情報を受信すると、記憶部28が記憶する保守員情報に基づいて、異常が発生した設備機器14の対応(以下、異常対応と記す)に最適な保守員を選出する。
【0037】
具体的な、最適な保守員を選出する選出方法の一例を以下に述べる。保守員選出部26は、異常情報から異常が発生した建物12の位置、異常情報から異常が発生した設備機器14の種別、および異常状態の種別などを特定することができる。そして、保守員選出部26は、保守員の現在の位置情報に基づいて異常が発生した建物12に近い保守員を複数の保守員の中から選出する。選出された保守員は、他の保守員より早く建物12に到着して異常状態を把握して対処することができるので、異常対応に最適な保守員であるといえる。
【0038】
さらに、保守員選出部26は、上記選出方法の他に、以下の複数の選出方法のうち少なくとも1つを加えて異常対応に最適な保守員を選出するともできる。
【0039】
一つの選出方法として、保守員選出部26は、作業情報に基づいて出動可能な保守員を選出する。保守員の位置が、異常が発生した建物12の近くであっても、その保守員が重要な作業に着手している場合、直ちに建物12の向かうことは困難である。よって、保守員選出部26は、作業情報に基づいて、作業を一時中断または作業予定を変更することができる保守員を異常対応により適する者として選出する。
【0040】
また、一つの選出方法として、保守員選出部26は、スキルレベル情報に基づいて異常対応に適した保守員を選出する。保守員の位置が、異常が発生した建物12の近くであっても、その保守員のスキルの程度が低い場合、異常に対して有効に対処できない。よって、保守員選出部26は、スキルレベル情報に基づいて、異常に有効に対処可能な程度にスキルを有する保守員を異常対応により適する者として選出する。
【0041】
また、一つの選出方法として、保守員選出部26は、例えば深夜や休日などの勤務時間外に設備機器14に異常が発生すると、勤務時間外情報に基づいて出動可能な保守員を選出する。勤務時間外であるため、異常対応の出動が困難な保守員もいる。よって、保守員選出部26は、勤務時間外情報に基づいて、勤務時間外でも出動可能である保守員をより異常対応に適する者として選出する。
【0042】
さらに、一つの選出方法として、保守員選出部26は、設備機器14に異常が発生すると、担当建物情報に基づいて保守員を選出する。異常が発生した建物12を担当する保守員は、建物12の設備機器14のことを熟知している。よって、保守員選出部26は、担当建物情報に基づいて、異常が発生した建物12を担当する保守員をより異常対応に適する者として選出する。
【0043】
出動指令発信部30は、保守員選出部26で選出された保守員が保持する携帯端末機32に出動指令を発信する。出動指令を受けた保守員は、携帯端末機32から情報センタ22に対応可能であるか否かの返答を行う。
【0044】
対応可能である旨の返答があった場合、出動指令発信部30は、携帯端末機32に最終的な出動指令を発信する。最終的な出動指令とは、出動する保守員が確定したことを知らせるための出動指令である。一方、対応が不可能である旨の返答があった場合、保守員選出部26は既に選出された保守員を除いた複数の保守員の中から異常対応に最適な保守員を選出し、出動指令発信部30がその保守員の携帯端末機32に出動指令を発信する。そして、携帯端末機32から返答があった場合、情報センタ22は再び上述のような動作を行う。なお、出動指令及び返答は、音声情報、文字情報、画像データ情報、またはそれらを組み合わせた情報とすることができる。
【0045】
従来の保守員派遣システムにおいては、出動指令発信部が携帯端末機に出動指令を発信した後一定時間待っても携帯端末機から返答が無い場合、警報を表示などして情報センタに常駐する監視員に返答が無いことを知らせていた。警報を知った監視員は、返答の無い保守員に連絡を取ったり、その保守員を除いた複数の保守員の中から異常対応に適する保守員を選出して出動指令を報知したりしていた。しかしながら、監視員が保守員の選定及び出動指令の報知を行うことにより、ヒューマンエラーが発生したり、保守員の派遣に遅れが生じたりする問題があった。
【0046】
そこで、本発明の保守員派遣システム10は、最初の出動指令発信後から待機時間を経過しても携帯端末機32から情報センタ22に返答が無い場合、出動指令発信部30がその携帯端末機32に再度の出動指令を発信することを特徴とする。これにより、返答が無い場合における監視員の関与が無くなるので、ヒューマンエラーを未然に防ぐことができる。
【0047】
また、最初の出動指令発信後から待機時間を経過しても携帯端末機32から情報センタ22に返答が無い場合、保守員選出部26が既に選出した保守員を除いた複数の保守員の中から異常対応に最適な保守員を選出し、出動指令発信部30がその保守員の携帯端末機32に出動指令を発信することが好適である。これにより、返答の無い保守員と連絡が取れるまで待機する時間を省くことができ、別の保守員を建物12へ迅速に派遣することができる。
【0048】
また、保守員選出部26は、異常対応に最適な保守員を一人選出するのではなく、異常対応に最適な者から順に優先順位を付けて、優先順位の上位から所定順位までの保守員を複数選出し、出動指令発信部30がこれらの保守員の携帯端末機32に出動指令を発信することが好適である。そうすると、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに少なくとも一つの携帯端末機32から対応可能である旨の返答があった場合、その中から優先順位が最も高い保守員の携帯端末機32に最終的な出動指令を発信することができる。これにより、一人だけ選出された異常対応に最適な保守員の返答がないとき、その最適な保守員を除いた複数の保守員の中から新たに保守員を選出してその保守員に出動指令を発信するよりも、保守員を建物12へ迅速且つ的確に派遣することができる。
【0049】
ここで、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに優先順位が最も高い保守員の携帯端末機32から対応可能である旨の返答があった場合、出動指令発信部30は待機時間の経過を待たずにその携帯端末機32に最終的な出動指令を発信してもよい。優先順位が最も高い保守員であるということは、異常対応に最適な保守員であり、その保守員が対応可能であるということは、他の保守員の返答を待つ必要がないからである。一方、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに優先順位が最も高い保守員以外の携帯端末機32から対応可能である旨の返答があった場合、出動指令発信部30は待機時間経過後にその中で優先順位が最も高い保守員の携帯端末機32に最終的な出動指令を発信する。待機時間が経過するまでは、優先順位がより高い保守員からの返答を待つためである。
【0050】
次に別の態様の保守員派遣システム10について、図3及び4を用いて説明する。なお、上記実施形態と同じ構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0051】
図3に示す態様の保守員派遣システム10においては、情報センタ22が、災害発生判断部34と待機時間変更部36とを有する。災害発生判断部34は、災害が発生したか否かを判断する。災害は、例えば地震、台風、火災である。これらの災害の情報は情報提供機関(図示せず)から通信回線20を介して情報センタ22に提供され、この情報に基づいて災害発生判断部34は災害が発生したか否かを判断する。また、建物12に地震計を設置し、この地震計の動作により災害が発生したか否かを判断することもできる。具体的には、地震が発生すると、地震計が動作してこの動作情報が通信回線20を介して情報センタ22に送信され、この情報に基づいて災害発生判断部34は災害が発生したか否かを判断する。
【0052】
災害発生判断部34が災害発生と判断した場合、待機時間変更部36は待機時間を変更する。例えば地震が発生した場合、電気通信事業者による通信規制、または通信回線網のケーブルの断線などによる通信回線の遮断により、情報センタ22と携帯端末機32との間の通信ができないという不具合が生じる可能性がある。このような場合、待機時間変更部36は待機時間を通常時より長く設定する。待機時間が長くなることにより、情報センタ22は、通信障害または通信の混雑が原因で遅延する携帯端末機32からの返答を確実に受信することができる。
【0053】
図4に示す態様の保守員派遣システム10においては、情報センタ22は、図3の態様に記載された災害発生判断部34の代わりに異常判断部38を有する。異常判断部38は、異常情報が人命及び公共性に係わる異常であるか否かを判断する。人命に係わる異常とは、例えば人がエレベータのカゴに閉じ込められるエレベータの故障である。また、公共性に係わる異常とは、例えば病院などの公共施設内の設備機器の故障である。
【0054】
異常判断部38が人命及び公共性に係わる異常であると判断した場合、待機時間変更部36は待機時間を変更する。例えば人がエレベータのカゴに閉じ込められた場合、待機時間変更部36は待機時間を通常の異常のときより短く設定する。待機時間が短くなることにより、出動指令発信部30がより早く最終的な出動指令を発信することができ、より迅速に保守員を派遣することができる。
【0055】
また、異常判断部38が人命及び公共性に係わる異常であると判断した場合、出動指令発信部30は、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに対応可能である旨の返答が情報センタ22に最も早くあった保守員の携帯端末機32に最終的な出動指令を発信することが好適である。最も早く返答があった保守員に対して最終的な出動指令をすることにより、その保守員は一刻でも早く現場に到着し異常状態を把握して対処することができる。また、出動指令発信部30は、返答が最も早くあった保守員以外にもさらに、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに対応可能である旨の返答が情報センタ22にあった保守員の携帯端末機32に最終的な出動指令を発信することも好適である。人命及び公共性に係わる異常であるため、その対応には社会的な任務が課せられる。よって、保守員が複数人派遣されたとしても、人数が多すぎるということはないからである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来技術に係わる保守員派遣システムの全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態の保守員派遣システムの全体構成を示す図である。
【図3】別の態様の保守員派遣システムの全体構成を示す図である。
【図4】さらに別の態様の保守員派遣システムの全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10 保守員派遣システム、12 建物、14 設備機器、16 異常検知装置、20 通信回線、22 情報センタ、26 保守員選出部、28 記憶部、30 出動指令発信部、32 携帯端末機、34 災害発生部判断部、36 待機時間変更部、38 異常判断部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の設備機器の異常状態を検知する異常検知装置と、設備機器を保守する保守員が保持する携帯端末機と、異常検知装置が検知した異常状態により携帯端末機に出動指令を発信する情報センタと、が通信回線を介して接続され、
建物内の設備機器に異常が発生すると、当該建物に保守員を派遣する保守員派遣システムにおいて、
情報センタは、
保守員に関する保守員情報を記憶する記憶手段と、
記憶手段が記憶する保守員情報に基づいて、異常が発生した設備機器の異常対応に最適な保守員を複数の保守員の中から選出する保守員選出手段と、
保守員選出手段により選出された保守員の携帯端末機に出動指令を発信する出動指令発信手段と、を有し、
出動指令発信手段は、最初の出動指令発信後から待機時間を経過しても携帯端末機から情報センタに返答が無い場合、その携帯端末機に再度の出動指令を発信することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項2】
請求項1に記載の保守員派遣システムにおいて、
最初の出動指令発信後から待機時間を経過しても携帯端末機から情報センタに返答が無い場合、保守員選出手段は、既に選出した保守員を除いた複数の保守員の中から異常対応に最適な保守員を選出し、出動指令手段がその保守員の携帯端末機に出動指令を発信することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項3】
請求項1に記載の保守員派遣システムにおいて、
保守員選出手段は、複数の保守員に対して異常対応に最適な者から順に優先順位を付けて、優先順位の上位から所定順位までの保守員を複数選出し、
最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに複数の携帯端末機から対応可能である旨の返答が情報センタにあった場合、出動指令発信手段は、その中から優先順位が最も高い保守員の携帯端末機に最終的な出動指令を発信することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項4】
請求項3に記載の保守員派遣システムにおいて、
最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに優先順位が最も高い保守員の携帯端末機から対応可能である旨の返答が情報センタにあった場合、出動指令発信手段は、待機時間の経過を待たずにその携帯端末機に最終的な出動指令を発信することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項5】
請求項3に記載の保守員派遣システムにおいて、
最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに優先順位が最も高い保守員以外の携帯端末機から対応可能である旨の返答が情報センタにあった場合、出動指令発信手段は、待機時間経過後にその中から優先順位が最も高い保守員の携帯端末機に最終的な出動指令を発信することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の保守員派遣システムにおいて、
情報センタは、
災害が発生したか否かを判断する災害発生判断手段と、
災害発生判断手段が災害発生と判断した場合、待機時間を変更する待機時間変更手段とを有することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1つに記載の保守員派遣システムにおいて、
情報センタは、
建物内の設備機器の異常が人命及び公共性に係わる異常であるか否かを判断する異常判断手段と、
異常判断手段が人命及び公共性に係わる異常であると判断した場合、待機時間を変更する待機時間変更手段とを有することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項8】
建物内の設備機器の異常状態を検知する異常検知装置と、設備機器を保守する保守員が保持する携帯端末機と、異常検知装置が検知した異常状態により携帯端末機に出動指令を発信する情報センタと、が通信回線を介して接続され、
建物内の設備機器に異常が発生すると、当該建物に保守員を派遣する保守員派遣システムにおいて、
情報センタは、
保守員に関する保守員情報を記憶する記憶手段と、
記憶手段が記憶する保守員情報に基づいて、異常が発生した設備機器の異常対応に最適な保守員を複数の保守員の中から所定の人数選出する保守員選出手段と、
保守員選出手段により選出された保守員の携帯端末機に出動指令をそれぞれ発信する出動指令発信手段と、
建物内の設備機器の異常が人命及び公共性に係わる異常であるか否かを判断する異常判断手段と、
を有し、
異常判断手段が人命及び公共性に係わる異常であると判断した場合、出動指令発信手段は、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに対応可能である旨の返答が情報センタに最も早くあった保守員の携帯端末機に最終的な出動指令を発信することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項9】
請求項8に記載の保守員派遣システムにおいて、
異常判断手段が人命及び公共性に係わる異常であると判断した場合、出動指令発信手段は、返答が最も早くあった保守員以外にもさらに、最初の出動指令発信後から待機時間を経過するまでに対応可能である旨の返答が情報センタにあった保守員の携帯端末機に最終的な出動指令を発信することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の保守員派遣システムにおいて、
記憶手段は、保守員の現在の位置情報を記憶しており、
建物内の設備機器に異常が発生すると、保守員選出手段は、位置情報に基づいて当該建物に近い保守員を選出することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1つに記載の保守員派遣システムにおいて、
記憶手段は、保守員の現在の作業状態及びその日の作業予定からなる作業情報を記憶しており、
保守員選出手段は、作業情報に基づいて出動可能な保守員を選出することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1つに記載の保守員派遣システムにおいて、
記憶手段は、保守に関する保守員のスキルの程度をレベル数であらわしたスキルレベル情報を記憶しており、
保守員選出手段は、スキルレベル情報に基づいて異常対応に適した保守員を選出することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか1つに記載の保守員派遣システムにおいて、
記憶手段は、保守員が勤務時間外に出動可能であるか否かという勤務時間外情報を記憶しており、
勤務時間外に建物内の設備機器に異常が発生すると、保守員選出手段は、勤務時間外情報に基づいて出動可能な保守員を選出することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか1つに記載の保守員派遣システムにおいて、
記憶手段は、保守員がどの建物を担当しているかを示す担当建物情報を記憶しており、
建物内の設備機器に異常が発生すると、保守員選出手段は、担当建物情報に基づいて当該建物に適した保守員を選出することを特徴とする保守員派遣システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−49299(P2010−49299A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210326(P2008−210326)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】