説明

保管棚システム

【課題】保管棚および移送手段から保管容器が落下するのを確実に防止する。
【解決手段】保管棚システム1は、次工程の処理を受けるために待ち時間が生じたシリコンウエハを収納したFOUP10を入出庫させるシステムである。そして、スタッカロボット22によりFOUP10が保管棚21に入庫される場合には、保管棚21の外周キネマティックピン21aは、FOUP10の外周ピン窪み11dに侵入することにより、スタッカロボット22の内周キネマティックピン23aとFOUP10のロック爪16との係合を解除するとともに当該係合が解除されたロック爪16に係合する。また、スタッカロボット22によりFOUP10が保管棚21から出庫される場合にはスタッカロボット22の内周キネマティックピン23aは、FOUP10の内周ピン窪み11eに侵入することにより、保管棚21の外周キネマティックピン21aとFOUP10のロック爪16との係合を解除するとともに当該係合が解除されたロック爪16に係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管棚に保管容器を入庫させるとともに保管棚に載置された保管容器を出庫させる保管棚システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路素子は、半導体製造プロセスとなるCVD(Chemical Vapor Deposition)による薄膜形成、イオン注入、フォトリソグラフィー、エッチング、検査など様々な処理を行う処理装置を経由して、最終製品が製造される。この半導体製造プロセスにおいて、上記した各処理が施される半導体基板(シリコンウエハ)は、FOUP(Front Opening Unified Pod)と呼ばれる保管容器に収納されて、搬送装置により各処理を行う処理装置間を移送される。
【0003】
しかし、各処理装置が処理に必要とする処理時間は装置毎に異なるため、通常、シリコンウエハは、次工程の処理を受けるまでに待ち時間が発生する。この待ち時間の間、シリコンウエハは、FOUPに収納されたまま搬送装置により一旦保管棚に搬入され、次工程の処理を受けられる状況になるまで保管される。そして、次工程の処理が可能になったとき、搬送装置により保管棚から搬出され、搬送装置により次工程の処理装置まで搬送される。
【0004】
通常、このFOUPが貯留された保管棚には、地震によりFOUPが落下しないように、地震対策が講じられている。ここで、図8および図9を参照して、保管棚121からFOUP110が落下しないように地震対策が講じられた従来の一例による保管棚システム101について説明する。図8は、従来の一例による保管棚システムの保管棚に保管されるFOUPの底面図であり、図9は、図8に示したY1−Y2−Y3線に沿った断面のFOUPとストッカとを示した図である。
【0005】
保管棚システム101には、図9に示すように、待ち時間が生じたFOUP110を一時的に保管するためのストッカ120が設けられている。このストッカ120は、FOUP110を載置するための保管棚121と、FOUP110を入出庫させるスタッカロボット122とから構成されている。そして、保管棚121には、3つの外周キネマティックピン121aが設けられている。この3つの外周キネマティックピン121aは、FOUP110の底面111に形成された3つの外周ピン窪み111a(図8参照)に対応するように形成されている。これにより、保管棚121にFOUP110が載置された場合に、保管棚121の外周キネマティックピン121aとFOUP110の外周ピン窪み111aとを嵌合させることができるので、地震が発生したとしても、FOUP110が保管棚121から落下するのを抑制することができる。
【0006】
また、FOUP110の底面111には、図8に示すように、上記した3つの外周ピン窪み111aを頂点とする三角形B1の内側に配置される三角形B2の頂点の位置に3つの内周ピン窪み111bが設けられている。この3つの内周ピン窪み111bは、FOUP110を入出庫させるスタッカロボット122のハンド部123に設けられる3つの内周キネマティックピン123a(図9参照)に対応するように設けられている。これにより、スタッカロボット122のハンド部123にFOUP110が載置された場合に、ハンド部123からFOUP110が落下するのを抑制することができる。
【0007】
また、他の地震対策として、特許文献1には、保管棚に形成された係止孔に、保管棚に載置されるパレットに設けられた係止ロッドを挿入することにより、保管棚に載置されるパレットを固定して、パレットが保管棚から落下するのを防止するパレット落下防止安全装置が開示されている。そして、パレットを保管棚に入庫させる場合には、パレットを保管棚の所定の箇所に載置することにより、パレットに設けられる係止ロッドが、係止ロッドに挿入されたスプリングの付勢力により押圧されて、パレットが保管棚に固定される。また、保管棚からパレットを出庫させる場合には、クレーン(スタッカロボット)がスプリングの付勢力に抗して係止ロッドを係止孔から後退させることにより、保管棚とパレットとの固定を解除する。
【0008】
【特許文献1】特開平8−34502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図9に示した保管棚システム101では、保管棚121に設けられたキネマティックピン121aおよび123aには一定の高さがあり、多少の振動や軽微な地震に対しては、ピン窪み111aおよび111bとキネマティックピン121aおよび123aとの嵌合がはずれることはない。しかしながら、稀に発生する大地震に対しては、外周キネマティックピン121aによる位置ずれ規制の効力は限界を越え、FOUP110が保管棚121から落下するという問題点があった。FOUP110に収納されるシリコンウエハのシリコンは脆性材料であるので落下によって、容易に破損し、ほとんど全て再生不可能となる。シリコンウエハは素材単価が高く、保管棚システム101の保管棚121に保管される多数のFOUP110が落下した場合には、多数のシリコンウエハを破損させる事態に陥り、莫大な損失が発生する。
【0010】
稀にしか発生しない大地震対策であったとしても、このとき受ける金銭的損失、或いは、再製造になった場合の納期遅延などの機会損失を考慮すると、多少の投資が必要であっても大地震対策は十分採算が採れ、大地震対策が必要であることは明白である。
【0011】
また、上記特許文献1に開示されたパレット落下防止安全装置では、大地震が発生した場合でも、保管棚とパレットとが固定されているので、保管棚からパレットが落下するのを防止することができる。しかしながら、クレーン(スタッカロボット)からパレットが落下するのを防止する防止策は講じられていない。したがって、保管棚との固定が解除されたパレットをクレーンにより移送させる場合に、クレーンからパレットが落下するという問題点がある。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、保管棚および移送手段から保管容器が落下するのを確実に防止することが可能な保管棚システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0013】
上記目的を達成するために、この発明の保管棚システムは、被収納物を収納し、第1凹部および第2凹部が形成された下面と第1凹部および第2凹部の間に配置される爪部とを含む保管容器と、保管容器が載置され、保管容器の下面に形成された第1凹部に侵入したときに爪部と係合可能な形状の第1突起部を有する保管棚と、保管棚に保管容器を入庫させるとともに保管棚に載置された保管容器を出庫させ、保管容器の下面に形成された侵入したときに爪部と係合可能な形状の第2突起部を有する移送手段とを備えている。そして、移送手段により保管容器が保管棚に入庫される場合には、保管棚の第1突起部は、保管容器の第1凹部に侵入することにより、移送手段の第2突起部と保管容器の爪部との係合を解除するとともに当該係合が解除された爪部に係合し、移送手段により保管容器が保管棚から出庫される場合には、移送手段の第2突起部は、保管容器の第2凹部に侵入することにより、保管棚の第1突起部と保管容器の爪部との係合を解除するとともに当該係合が解除された爪部に係合する。
【0014】
この発明による保管棚システムでは、上記のように、移送手段により保管容器が保管棚に入庫される場合に、その第1突起部を保管容器の第1凹部に侵入させることにより、移送手段の第2突起部と保管容器の爪部との係合を解除するとともに当該係合が解除された爪部に第1突起部を係合することによって、移送手段に固定されて入庫した保管容器を、保管棚に固定することができる。その結果、大地震や外部から強い振動が加わっても、保管棚から保管容器が落下するのを確実に防止することができる。
【0015】
また、この保管棚システムでは、上記のように、移送手段により保管容器が保管棚から出庫される場合に、その第2突起部を保管容器の第2凹部に侵入させることにより、保管棚の第1突起部と保管容器の爪部との係合を解除するとともに当該係合が解除された爪部に第2突起部を係合することによって、保管棚に固定された保管容器を、移送手段に固定することができる。その結果、大地震や外部から強い振動が加わっても、移送手段から保管容器が落下するのを確実に防止することができる。以上のように、大地震や外部から強い振動が加わっても、保管棚および移送手段から保管容器が落下するのを確実に防止することができるので、保管容器が落下することに起因して莫大な損失を被るのを防ぐことができる。
【0016】
上記保管棚システムにおいて、好ましくは、爪部は、第1切欠部および第2切欠部を含む。また、保管棚の第1突起部には、爪部の第1切欠部に係合する第3切欠部が形成されるとともに、移送手段の第2突起部には、爪部の第2切欠部に係合する第4切欠部が形成されている。そして、移送手段により保管容器が保管棚に入庫される場合には、保管棚の第1突起部が保管容器の第1凹部に侵入することにより、移送手段の第2突起部の第4切欠部と爪部の第2切欠部との係合を解除させるとともに当該係合が解除された爪部の第1切欠部と第1突起部の第3切欠部とを係合させ、移送手段により保管容器が保管棚から出庫される場合には、移送手段の第2突起部が保管容器の第2凹部に侵入することにより、保管棚の第1突起部の第3切欠部と爪部の第1切欠部との係合を解除させるとともに当該係合が解除された爪部の第2切欠部と第2突起部の第4切欠部とを係合させる。このように構成すれば、爪部の第1切欠部と保管棚の第1突起部の第3切欠部とを係合させることにより、保管容器を保管棚により確実に固定することができるので、保管棚から保管容器が落下するのを確実に防止することができる。また、爪部の第2切欠部と移送手段の第2突起部の第4切欠部とを係合させることにより、保管容器を移送手段により確実に固定することができるので、移送手段から保管容器が落下するのを確実に防止することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、爪部は、第1凹部に侵入した保管棚の第1突起部と第2凹部に侵入した移送手段の第2突起部との間を揺動可能に支持されている。そして、移送手段により保管容器が保管棚に入庫される場合には、保管棚の第1突起部が保管容器の第1凹部に侵入することにより、第1突起部が爪部を揺動させて、移送手段の第2突起部の第4切欠部と爪部の第2切欠部との係合を解除させるとともに当該係合が解除された爪部の第1切欠部と第1突起部の第3切欠部とを係合させ、移送手段により保管容器が保管棚から出庫される場合には、移送手段の第2突起部が保管容器の第2凹部に侵入することにより、第2突起部が爪部を揺動させて、保管棚の第1突起部の第3切欠部と爪部の第1切欠部との係合を解除させるとともに当該係合が解除された爪部の第2切欠部と第2突起部の第4切欠部とを係合させる。このように揺動可能に支持されている爪部を用いれば、その爪部の揺動位置で固定および解除の両方を行うことができる。
【0018】
上記揺動可能に支持された爪部を有する保管棚システムにおいて、好ましくは、保管容器は、第1突起部と第2突起部との間を揺動可能に支持された爪部を、第1突起部側または第2突起部側に付勢する付勢手段をさらに含む。このように構成すれば、付勢手段の付勢力により第1突起部または第2突起部と爪部とを確実に固定することができる。
【0019】
上記保管棚システムにおいて、好ましくは、爪部は、両端に第1切欠部および第2切欠部が形成された平板である。このように構成すれば、1つの爪部を用いて、保管棚の第1突起部との係合および移送手段の第2突起部との係合を行うことができる。これにより、保管容器の構成が複雑になるのを抑制することができる。
【0020】
また、上記保管棚システムにおいて、爪部は、一対の平板であり、一方の平板には第1切欠部が形成されるとともに他方の平板には第2切欠部が形成されていてもよい。このように構成すれば、それぞれの平板を用いて、確実に保管棚および移送手段と固定することができる。
【0021】
上記保管棚システムにおいて、好ましくは、平面的に見て、保管容器の下面に形成される第1凹部は、略正三角形の各頂点の位置に形成されるとともに、保管容器の下面に形成される第2凹部は、略正三角形の内側に配置される略正三角形の各頂点の位置に形成される。このように構成すれば、保管容器と、保管棚または移送手段との固定をバランスよく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による保管棚システムのFOUPを示した斜視図であり、図2は、図1に示したFOUPの底面図である。図3は、図2に示したX1−X2−X3線に沿った断面のFOUPとストッカとを示した図である。図4および図5は、スタッカロボットによりFOUPを入庫・出庫させるときのロック爪の動作を説明するための図である。図1〜図5を参照して、第1実施形態による保管棚システム1の構成について詳細に説明する。
【0024】
第1実施形態による保管棚システム1は、次工程の処理を受けるために待ち時間が生じたシリコンウエハ(図示せず)を収納したFOUP10(図1参照)を一旦ストッカ20(図3参照)に入庫させて、次工程の処理を受けることが可能になった場合に、そのFOUP10をストッカ20から出庫させるシステムである。なお、FOUP10とは、業界標準として規格化されたシリコンウエハの収納ケースであり、300mmのシリコンウエハの場合、シリコンウエハの収納枚数は24枚が標準となっている。
【0025】
FOUP10は、図1に示すように、シリコンウエハを収納する本体部11と、本体部11の前面に設けられる蓋枠11aに嵌め込まれる蓋12とから構成されている。本体部11の蓋枠11aに蓋12が嵌め込まれることにより、本体部11の内部の機密性を保持している。また、本体部11の内部には、24枚のシリコンウエハを1枚ずつ挿入することが可能な桟11bが設けられている。また、FOUP10の本体部11の外表面には、各処理装置間を移動するOHT搬送台車(図示せず)が把持するフランジ13および作業者が手で把持するための取手14が設けられている。また、蓋12には、蓋12を本体部11に取り付けるための施錠用のロックバルブ18が設けられている。
【0026】
また、本体部11の下面11cには、図2に示すように、仮想線で示す略正三角形A1の各頂点の位置に3つの外周ピン窪み11dが形成されるとともに、前記略正三角形A1の内側に配置される仮想線で示す略正三角形A2の各頂点の位置に3つの内周ピン窪み11eが形成されている。また、外周ピン窪み11dと内周ピン窪み11eとのそれぞれの間には、図2および図3に示すように、軸部15により揺動可能に支持された平板のロック爪16が設けられている。また、図4に示すように、ロック爪16を揺動可能に支持する軸部15の各々には、ロック爪16をD1方向(外周キネマティックピン21a側)に付勢するねじりコイルバネ17が取り付けられている。
【0027】
そして、ロック爪16には、図4に示すように、外周ピン窪み11d(図2参照)側および内周ピン窪み11e(図2参照)側のそれぞれに切欠部16aおよび16bが設けられている。これにより、ロック爪16が揺動することにより、内周ピン窪み11eに侵入する後述するスタッカロボット22のハンド部23の内周キネマティックピン23a(図3参照)および外周ピン窪み11dに侵入する後述する保管棚21の外周キネマティックピン21a(図3参照)のいずれにもロック爪16を係合させることが可能となる。また、ロック爪16には、両側に張り出した翼部16cおよび16dが設けられている。そして、この翼部16cの当接面161cに、外周キネマティックピン21aの頂部211aが当接して、ロック爪16をD1方向に揺動させることにより、内周キネマティックピン23aとロック爪16との係合を解除する。また、同様に、翼部16dの当接面161dに、内周キネマティックピン23aの頂部231aが当接して、ロック爪16をD2方向に揺動させることにより、外周キネマティックピン21aとロック爪16との係合を解除する。
【0028】
ストッカ20は、所定の製造プロセスから次の製造プロセスに工程を進める段階で待ち時間が生じたシリコンウエハを収納したFOUP10を一旦保管するために設けられている。このストッカ20は、図3に示すように、上記したFOUP10を載置するための保管棚21と、FOUP10を保管棚21に入庫させるとともに保管棚21からFOUP10を出庫させるスタッカロボット22とから構成されている。
【0029】
保管棚21は、多段式の棚であって、複数のFOUP10を載置可能に構成されている。そして、FOUP10が載置される各箇所には、FOUP10の本体部11の下面11cに形成された3つの外周ピン窪み11d(図2参照)に対応する3つの外周キネマティックピン21aが設けられている。また、FOUP10が載置される各箇所には、スタッカロボット22のハンド部23が通過する開口部21bが設けられている。
【0030】
ここで、本実施形態では、図5(b)〜(d)に示すように、外周キネマティックピン21aは、スタッカロボット22によりFOUP10が保管棚21に入庫される場合に、FOUP10の外周ピン窪み11d(図2および図3参照)に侵入することにより、後述するスタッカロボット22の内周キネマティックピン23aの切欠部232aとFOUP10のロック爪16の切欠部16bとの係合を解除する。また、図5(e)に示すように、外周キネマティックピン21aは、FOUP10の外周ピン窪み11dにさらに侵入することにより、係合が解除されたFOUP10のロック爪16の切欠部16aと係合して、保管棚21に固定される。
【0031】
スタッカロボット22は、図3に示すように、FOUP10の下面11cを支持して搬送するハンド部23を備えている。このハンド部23は、保管棚21の開口部21bを介して上下方向に移動するように構成されている。そして、ハンド部23には、FOUP10の本体部11の下面11cに形成された3つの内周ピン窪み11eに対応する3つの内周キネマティックピン23aが設けられている。
【0032】
また、本実施形態では、図4(b)〜(d)に示すように、内周キネマティックピン23aは、スタッカロボット22によりFOUP10が保管棚21から出庫される場合に、FOUP10の内周ピン窪み11e(図2および図3参照)に侵入することにより、保管棚21の外周キネマティックピン21aの切欠部212aとFOUP10のロック爪16の切欠部16aとの係合を解除する。また、内周キネマティックピン23aは、図4(e)に示すように、FOUP10の内周ピン窪み11eにさらに侵入することにより、係合が解除されたFOUP10のロック爪16の切欠部16bと係合して、スタッカロボット22に固定される。
【0033】
次に、図4を参照して、ロック爪16の動作について説明する。
【0034】
まず、保管棚21に保管されたFOUP10をスタッカロボット22により出庫させる場合について説明する。
【0035】
図4(a)に示すように、ねじりコイルバネ17により、矢印D1方向に付勢されるロック爪16は、保管棚21に設けられた外周キネマティックピン21aに係合している。具体的には、内周キネマティックピン23aの切欠部232aに、ロック爪16の切欠部16aが水平方向に入り込んで係合している。そのため、FOUP10に対して、上方へ持ち上げる力が加わっても、係合が解除されない。なお、ロック爪16の切欠部16aの係合面161aは、外周キネマティックピン21aの切欠部212aの当接面212bに当接している。この状態から、図4(b)に示すように、スタッカロボット22のハンド部23が、保管棚21の開口部21b(図3参照)を介して上方に移動することにより、ハンド部23の内周キネマティックピン23aがFOUP10の内周ピン窪み11e(図3参照)に侵入する。この際、内周キネマティックピン23aの頂部231aがロック爪16の翼部16dの当接面161dに接触する。そして、図4(c)に示すように、ハンド部23がさらに上昇することにより、内周キネマティックピン23aの頂部231aが、ねじりコイルバネ17の付勢に抗して、ロック爪16の翼部16dの当接面161dを上方に押し上げるので、ロック爪16が軸部15を回転軸としてD2方向に揺動する。
【0036】
この状態からハンド部23がさらに上方に移動すると、図4(d)に示すように、内周キネマティックピン23aの頂部231aがロック爪16の翼部16dの当接面161dをさらに上方に押し上げて、FOUP10が保管棚21から持ち上げられる。そして、外周キネマティックピン21aとロック爪16とを完全に分離させる。この際、図4(e)に示すように、ロック爪16の切欠部16bの係合面161bが、内周キネマティックピン23aの切欠部232aの当接面232bに接近して、ロック爪16と内周キネマティックピン23aとが係合する。なお、ここでは、ロック爪16の切欠部16bの係合面161bと、内周キネマティックピン23aの切欠部232aの当接面232bとの接触は無いが、ロック爪16の内周キネマティックピン23aの切欠部232aへの食込み量が大きいので、FOUP10はハンド部23に固定される。このようにして、スタッカロボット22によって、保管棚21に保管されたFOUP10が出庫される。
【0037】
次に、スタッカロボット22によりFOUP10を保管棚21に入庫させる場合について説明する。
【0038】
図5(a)に示すように、矢印D2方向に揺動しているロック爪16は、スタッカロボット22のハンド部23の内周キネマティックピン23aに係合している。具体的には、内周キネマティックピン23aの切欠部232aに、ロック爪16の切欠部16bが水平方向に入り込んで係合している。そのため、FOUP10に対して、上方へ持ち上げる力が加わっても、係合が解除されない。この状態から、図5(b)に示すように、スタッカロボット22のハンド部23が、保管棚21の開口部21b(図3参照)を介して下方に移動することにより、保管棚21の外周キネマティックピン21aがFOUP10の外周ピン窪み11d(図3参照)に侵入する。この際、外周キネマティックピン21aの頂部211aがロック爪16の翼部16cの当接面161cに接触する。そして、図5(c)に示すように、ハンド部23がさらに下降することにより、外周キネマティックピン21aの頂部211aがロック爪16の翼部16cの当接面161cを上方に押し上げるので、ロック爪16が軸部15を回転軸としてD1方向に揺動する。
【0039】
この状態からハンド部23がさらに下方に移動すると、図5(d)に示すように、外周キネマティックピン21aの頂部211aがロック爪16の翼部16cの当接面161cをさらに上方に押し上げて、内周キネマティックピン23aとロック爪16とを完全に分離させる。これにより、FOUP10が保管棚21に載置される。この際、図5(e)に示すように、ロック爪16の切欠部16aの係合面161aが、外周キネマティックピン21aの切欠部212aの当接面212bに接近した後、ロック爪16と外周キネマティックピン21aとが係合する。ロック爪16の切欠部16aの係合面161aと、外周キネマティックピン21aの切欠部212aの当接面212bとは、ねじりコイルバネ17の付勢力により確実に固定される。このようにして、スタッカロボット22により保管棚21へFOUP10が入庫される。
【0040】
第1実施形態では、上記のように、FOUP10をストッカ20の保管棚21に載置する場合やスタッカロボット22のハンド部23に載置する場合に、FOUP10のロック爪16がキネマティックピン21aまたは23aに係合して固定されるので、大地震や外部から強い振動が加わっても、FOUP10が保管棚21やハンド部23から落下するのを確実に防止することができる。
【0041】
また、第1実施形態では、略正三角形A1の各頂点の位置に形成された3つの外周ピン窪み11dと、略正三角形A2の各頂点の位置に形成された3つの内周ピン窪み11eとのそれぞれの間に設けられた3つのロック爪により、保管棚21およびスタッカロボット22との固定を行っているので、バランスよく固定することができる。
【0042】
(第2実施形態)
この第2実施形態では、第1実施形態と異なり、保管棚21の外周キネマティックピン21aに係合するロック爪と、スタッカロボット22のハンド部23の内周キネマティックピン23aに係合するロック爪とを別個に設けた例について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態のロック爪16を一対のロック爪26および36に変更したこと以外、上記した第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0043】
図6および図7は、第2実施形態による保管棚システムのFOUPを入出庫させるときのロック爪の動作を説明するための図である。
【0044】
FOUP10の内周ピン窪み11eと外周ピン窪み11dとの間には、図6および図7に示すように、軸部25および35により揺動可能に支持された一対の平板のロック爪(外側ロック爪26および内側ロック爪36)が設けられている。この一対のロック爪26および36は、それぞれ独立して揺動するように構成されている。また、ロック爪26および36を揺動可能に支持する各々の軸部25および35には、それぞれ、ねじりコイルバネ27および37が取り付けられている。外側ロック爪26の軸部25に取り付けられるねじりコイルバネ27は、外側ロック爪26をD1方向に付勢する機能を有するとともに、内側ロック爪36の軸部35に取り付けられるねじりコイルバネ37は、内側ロック爪36をD2方向に付勢する機能を有している。
【0045】
そして、外側ロック爪26には、外周ピン窪み11d側に、切欠部26aが設けられるとともに、内側ロック爪36には、内周ピン窪み11e側に、切欠部36aが設けられている。また、外側ロック爪26の切欠部26aの反対側には、翼部26bが設けられるとともに、内側ロック爪36の切欠部36aの反対側には、翼部36bが設けられている。そして、図6(b)および(c)に示すように、外側ロック爪26の翼部26bの当接面261bに、内周キネマティックピン23aの頂部231aが当接して、外側ロック爪26をD2方向に揺動させることにより、外周キネマティックピン21aと外側ロック爪26との係合を解除する。また、同様に、図7(b)および(c)に示すように、内側ロック爪36の翼部36bの当接面361bに、外周キネマティックピン21aの頂部211aが当接して、内側ロック爪36をD1方向に揺動させることにより、内周キネマティックピン23aと内側ロック爪36との係合を解除する。
【0046】
次に、図6および図7を参照して、ロック爪26および36の動作について説明する。
【0047】
まず、保管棚21に保管されたFOUP10を出庫させる場合について説明する。
【0048】
図6(a)に示すように、ねじりコイルバネ27により、矢印D1方向に付勢される外側ロック爪26は、保管棚21に設けられた外周キネマティックピン21aに係合している。具体的には、外周キネマティックピン21aの切欠部212aに、外側ロック爪26の切欠部26aが水平方向に入り込んで係合している。そのため、FOUP10に対して、上方へ持ち上げる力が加わっても、係合が解除されない。なお、外側ロック爪26の切欠部26aが、外周キネマティックピン21aの切欠部212aの当接面212bに当接している。この状態から、図6(b)に示すように、スタッカロボット22のハンド部23が、保管棚21の開口部21b(図3参照)を介して上方に移動することにより、ハンド部23の内周キネマティックピン23aがFOUP10の内周ピン窪み11e(図3参照)に侵入する。この際、内周キネマティックピン23aの頂部231aがロック爪26の翼部26bの当接面261bに接触する。そして、図6(c)に示すように、ハンド部23がさらに上昇することにより、内周キネマティックピン23aの頂部231aが、ねじりコイルバネ27の付勢に抗して、外側ロック爪26の翼部26bの当接面261bを上方に押し上げるので、外側ロック爪26が軸部25を回転軸としてD2方向に揺動する。
【0049】
この状態からハンド部23がさらに上方に移動すると、図6(d)に示すように、内側ロック爪36の翼部36bの当接面361bと外周キネマティックピン21aの頂部211aとの接触が外れて、D2方向に付勢される内側ロック爪36がD2方向に揺動する。これにより、内側ロック爪36の切欠部36aが、内周キネマティックピン23aの切欠部232aの当接面232bと接触して、内側ロック爪36と内周キネマティックピン23aとが係合する。そして、FOUP10が保管棚21から持ち上げられる。このようにして、スタッカロボット22によって、保管棚21に保管されたFOUP10が出庫される。
【0050】
次に、スタッカロボット22によりFOUP10を保管棚21に入庫させる場合について説明する。
【0051】
図7(a)に示すように、矢印D2方向に揺動している内側ロック爪36は、スタッカロボット22のハンド部23の内周キネマティックピン23aに係合している。具体的には、内周キネマティックピン23aの切欠部232aに、内側ロック爪36の切欠部36aが水平方向に入り込んで係合している。そのため、FOUP10に対して、上方へ持ち上げる力が加わっても、係合が解除されない。なお、内側ロック爪36の切欠部36aが、内周キネマティックピン23aの切欠部232aの当接面232bに当接している。この状態から、図7(b)に示すように、スタッカロボット22のハンド部23が、保管棚21の開口部21b(図3参照)を介して下方に移動することにより、保管棚21の外周キネマティックピン21aがFOUP10の外周ピン窪み11d(図3参照)に侵入する。この際、外周キネマティックピン21aの頂部211aが内側ロック爪36の翼部36bの当接面361bに接触する。そして、図7(c)に示すように、ハンド部23がさらに下降することにより、外周キネマティックピン21aの頂部211aが内側ロック爪36の翼部36bの当接面361bを上方に押し上げるので、内側ロック爪36が軸部35を回転軸としてD1方向に揺動する。
【0052】
この状態からハンド部23がさらに下方に移動すると、図7(d)に示すように、外側ロック爪26の翼部26bの当接面261bと内周キネマティックピン23aの頂部231aとの接触が外れて、D1方向に付勢される外側ロック爪26がD1方向に揺動する。これにより、外側ロック爪26の切欠部26aが、外周キネマティックピン21aの切欠部212aの当接面212bと接触して、外側ロック爪26と外周キネマティックピン21aとが係合する。そして、FOUP10が保管棚21に載置される。このようにして、スタッカロボット22によって、保管棚21へFOUP10が入庫される。
【0053】
第2実施形態では、上記のように、外側ロック爪26により、外周キネマティックピン21aを固定し、内側ロック爪36により、内周キネマティックピン23aを固定することができるので、FOUP10と、保管棚21およびスタッカロボット22とを強固に固定することができる。
【0054】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0055】
例えば、上記実施形態では、ねじりコイルバネによりロック爪を付勢する例を示したが、本発明はこれに限らず、ねじりコイルバネ以外の付勢手段を用いて、ロック爪を付勢してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、略正三角形の各頂点の位置に形成される外周ピン窪みおよび内周ピン窪みに対応するようにロック爪を略正三角形の各頂点の位置に配置する例を示したが、本発明はこれに限らず、確実にロック爪と保管棚およびスタッカロボットとを固定できれば、ロック爪を略正三角形の各頂点の位置に配置しなくてもよい。一例として、ロック爪を略正方形の各頂点の位置に配置してもよい。また、軸部25と軸部35とを1つにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態による保管棚システムのFOUPを示した斜視図である。
【図2】図1に示したFOUPの底面図である。
【図3】図2に示したX1−X2−X3線に沿った断面のFOUPとストッカとを示した図である。
【図4】第1実施形態による保管棚システムのFOUPを出庫させるときのロック爪の動作を説明するための図である。
【図5】第1実施形態による保管棚システムのFOUPを入庫させるときのロック爪の動作を説明するための図である。
【図6】第2実施形態による保管棚システムのFOUPを出庫させるときのロック爪の動作を説明するための図である。
【図7】第2実施形態による保管棚システムのFOUPを入庫させるときのロック爪の動作を説明するための図である。
【図8】従来の一例による保管棚システムの保管棚に保管されるFOUPの底面図である。
【図9】図8に示したY1−Y2−Y3線に沿った断面のFOUPとストッカとを示した図である。
【符号の説明】
【0058】
1 保管棚システム
10 FOUP(保管容器)
11d 外周ピン窪み(第1凹部)
11e 内周ピン窪み(第2凹部)
16、26、36 爪部
16a、26a、36a 切欠部(第1切欠部)
16b、26b、36b 切欠部(第2切欠部)
17、27、37 ねじりコイルバネ(付勢手段)
21 保管棚
21a 外周キネマティックピン(第1突起部)
212a 切欠部(第3切欠部)
22 スタッカロボット(移送手段)
23a 内周キネマティックピン(第2突起部)
232a 切欠部(第4切欠部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収納物を収納し、第1凹部および第2凹部が形成された下面と前記第1凹部および前記第2凹部の間に配置される爪部とを含む保管容器と、
前記保管容器が載置され、前記保管容器の下面に形成された前記第1凹部に侵入したときに前記爪部と係合可能な形状の第1突起部を有する保管棚と、
前記保管棚に前記保管容器を入庫させるとともに前記保管棚に載置された前記保管容器を出庫させ、前記保管容器の下面に形成された前記第2凹部に侵入したときに前記爪部と係合可能な形状の第2突起部を有する移送手段とを備え、
前記移送手段により前記保管容器が前記保管棚に入庫される場合には、前記保管棚の第1突起部は、前記保管容器の第1凹部に侵入することにより、前記移送手段の第2突起部と前記保管容器の爪部との係合を解除するとともに当該係合が解除された爪部に係合し、
前記移送手段により前記保管容器が前記保管棚から出庫される場合には、前記移送手段の第2突起部は、前記保管容器の第2凹部に侵入することにより、前記保管棚の第1突起部と前記保管容器の爪部との係合を解除するとともに当該係合が解除された爪部に係合することを特徴とする、保管棚システム。
【請求項2】
前記爪部は、第1切欠部および第2切欠部を含み、
前記保管棚の第1突起部には、前記爪部の第1切欠部に係合する第3切欠部が形成されるとともに、前記移送手段の第2突起部には、前記爪部の第2切欠部に係合する第4切欠部が形成されており、
前記移送手段により前記保管容器が前記保管棚に入庫される場合には、前記保管棚の第1突起部が前記保管容器の第1凹部に侵入することにより、前記移送手段の第2突起部の第4切欠部と前記爪部の第2切欠部との係合を解除させるとともに当該係合が解除された爪部の第1切欠部と前記第1突起部の第3切欠部とを係合させ、
前記移送手段により前記保管容器が前記保管棚から出庫される場合には、前記移送手段の第2突起部が前記保管容器の第2凹部に侵入することにより、前記保管棚の第1突起部の第3切欠部と前記爪部の第1切欠部との係合を解除させるとともに当該係合が解除された爪部の第2切欠部と前記第2突起部の第4切欠部とを係合させることを特徴とする、請求項1に記載の保管棚システム。
【請求項3】
前記爪部は、前記第1凹部に侵入した前記保管棚の第1突起部と前記第2凹部に侵入した前記移送手段の第2突起部との間を揺動可能に支持され、
前記移送手段により前記保管容器が前記保管棚に入庫される場合には、前記保管棚の第1突起部が前記保管容器の第1凹部に侵入することにより、前記第1突起部が前記爪部を揺動させて、前記移送手段の第2突起部の第4切欠部と前記爪部の第2切欠部との係合を解除させるとともに当該係合が解除された爪部の第1切欠部と前記第1突起部の第3切欠部とを係合させ、
前記移送手段により前記保管容器が前記保管棚から出庫される場合には、前記移送手段の第2突起部が前記保管容器の第2凹部に侵入することにより、前記第2突起部が前記爪部を揺動させて、前記保管棚の第1突起部の第3切欠部と前記爪部の第1切欠部との係合を解除させるとともに当該係合が解除された爪部の第2切欠部と前記第2突起部の第4切欠部とを係合させることを特徴とする、請求項2に記載の保管棚システム。
【請求項4】
前記保管容器は、前記第1突起部と前記第2突起部との間を揺動可能に支持された前記爪部を、前記第1突起部側または前記第2突起部側に付勢する付勢手段をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の保管棚システム。
【請求項5】
前記爪部は、両端に前記第1切欠部および前記第2切欠部が形成された平板であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の保管棚システム。
【請求項6】
前記爪部は、一対の平板であり、一方の前記平板には前記第1切欠部が形成されるとともに他方の前記平板には前記第2切欠部が形成されていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の保管棚システム。
【請求項7】
平面的に見て、前記保管容器の下面に形成される前記第1凹部は、略正三角形の各頂点の位置に形成されるとともに、前記保管容器の下面に形成される前記第2凹部は、前記略正三角形の内側に配置される略正三角形の各頂点の位置に形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の保管棚システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−56386(P2008−56386A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233123(P2006−233123)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】