説明

信号伝送ケーブルのコネクタ、信号伝送ケーブルに信号を出力する信号伝送装置

【課題】高速な信号伝送が可能な、伝送ケーブルの接続用コネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、伝送信号を伝送する伝送ケーブルに接続される。基板12は、伝送ケーブルを介して伝送される伝送信号を入出力する半導体チップが実装される。基板12の一部は、嵌合部14として、接続相手の伝送ケーブルと嵌合する形状で形成される。パターン配線16は、本コネクタ10と伝送ケーブルとの嵌合部14と、半導体チップの伝送信号の入出力用の端子と、の間を結線するよう基板12上に敷設される。パターン配線16は、嵌合部14において、本コネクタ10が伝送ケーブルと接続された状態で、伝送ケーブルから引き出される接続ピンと接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送ケーブルと接続されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体集積回路の高速化、高機能化に伴って、半導体集積回路間の信号の伝送レートは上昇の一途をたどっている。たとえば、HDMI(High Definition Multimedia Interface)規格の信号伝送では、1GHzを超える周波数を有する差動のシリアル信号を生成し、信号伝送ケーブルを介して、別の半導体集積回路へと信号を伝送する。
【0003】
半導体集積回路は、プリント基板上に実装されるのが一般的であるため、プリント基板上に敷設された配線から、信号伝送ケーブルに対して信号を出力するためには、基板接続用のコネクタが必要となる。基板接続用のコネクタは、プリント基板上の配線パターンと、はんだによって接続され、信号伝送ケーブル内の信号線と、プリント基板上の配線パターンを接続する機能を果たす。従来において、このような基板接続用のコネクタは、単独の部品として製造、市販されており、半導体集積回路が実装される電子機器等の設計者は、使用する信号伝送ケーブルに対応したコネクタを利用して、半導体集積回路が入出力する信号を、信号伝送ケーブルに入出力していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、基板接続用のコネクタを利用すると、プリント基板との接続に使用されるはんだや、コネクタ内部の信号線等が有する寄生容量、寄生抵抗、寄生インダクタンスが、信号の伝送特性に影響を及ぼし、高速なデータ伝送を阻害する要因となっていた。基板接続用のコネクタを利用すると、インピーダンスに不整合が生ずるため、信号の不要輻射が発生し、EMI(Electro Magnetic Interference)の法規制値を満足することが困難となるという問題も生ずる。かかる問題は、伝送すべき信号の伝送レートが上昇するほど顕著となる。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的のひとつは、高速な信号伝送が可能な、伝送ケーブルのコネクタの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、信号を伝送する伝送ケーブルに接続されるコネクタが提供される。このコネクタは、基板と、その基板上に形成されたパターン配線を含んで構成される。伝送ケーブルを介して伝送される信号を入出力する半導体チップが実装される基板の一部は、接続相手の伝送ケーブルと嵌合する形状にて形成される。パターン配線は、本コネクタと接続相手の伝送ケーブルとの嵌合部と、半導体チップの信号の入出力用の端子と、の間を結線するよう基板上に敷設される。パターン配線は、嵌合部において、本コネクタが伝送ケーブルと接続された状態にて、伝送ケーブルから引き出される接続ピンと接触する形状を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コネクタが基板と一体に形成され、基板接続用のコネクタが不要となるため、不要な寄生容量等を削減することができ、高速な信号伝送が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
はじめに、本発明の実施の形態に係るコネクタ、それを利用した信号伝送装置の概要について説明する。
本発明のある態様によれば、信号を伝送する伝送ケーブルに接続されるコネクタが提供される。このコネクタは、伝送ケーブルを介して伝送される信号を入出力する半導体チップが実装される基板であって、その一部が、接続相手の伝送ケーブルと嵌合する形状にて形成された基板と、本コネクタと接続相手の伝送ケーブルとの嵌合部と、半導体チップの信号の入出力用の端子と、の間を結線するよう基板上に敷設されたパターン配線と、を備える。パターン配線は、嵌合部において、本コネクタが伝送ケーブルと接続された状態で、伝送ケーブルから引き出される接続ピンと接触する形状を有する。
【0009】
本明細書において、「信号を入出力する」とは、信号の入力または出力の少なくとも一方を行うことを意味し、必ずしも入力と出力の両方を行う必要はない。
この態様によると、半導体チップが実装される基板の一部およびパターン配線が、伝送ケーブルと接続されるコネクタとして機能するため、伝送ケーブルと半導体チップ間に、基板接続用のコネクタを実装する必要がなくなる。その結果、不要な寄生容量等が削減され、高速な信号伝送が実現できる。
【0010】
ある態様において、基板は多層基板であって、パターン配線はその表層に敷設されており、パターン配線と隣接する配線層には、少なくともパターン配線とオーバーラップする領域に接地パターンが形成されてもよい。
【0011】
この場合、パターン配線をマイクロストリップライン、あるいはストリップラインとして形成することができるため、基板の誘電体層の厚み、誘電率、パターン配線の幅、厚みをパラメータとして、信号の伝送経路の特性インピーダンスの設計を高精度で行うことが可能となる。また、基板の上面および下面に、パターン配線を敷設する場合には、接地パターンを設けることにより、両面のパターン配線間のクロストークを抑制することができる。
【0012】
ある態様において、パターン配線は、その特性インピーダンスが、接続相手の伝送ケーブルの特性インピーダンスとなるように形成されてもよい。この場合、不要な信号の反射が抑制されるため、信号品質が改善し、より高い伝送レートを実現することができる。
【0013】
ある態様において、伝送ケーブルは、複数の信号を伝送するものであり、パターン配線は、嵌合部において、複数の信号に対してそれぞれ設けられ、かつ設けられた配線部分が互いに隣接するように形成されてもよい。
パターン配線を隣接して敷設することにより、HDMIやDVI(Digital Visual Interface)、USB(Universal Seral Bus)等の規格に準拠したケーブルのコネクタを構成することができる。
【0014】
別の態様において、伝送ケーブルは、複数の信号を伝送するものであって、本コネクタとの嵌合部において、伝送ケーブルの接続ピンは2列に配置されていてもよい。このとき、パターン配線はそれぞれの信号に対応して設けられており、1列目の接続ピンと接続されるパターン配線は、嵌合部において、基板の表層に敷設され、2列目の接続ピンと接続されるパターン配線は、嵌合部において、基板の裏面に敷設されてもよい。
この態様によれば、内部の信号線の本数が多い伝送ケーブルのコネクタを提供することができる。
【0015】
伝送ケーブルは、HDMI(High Definition Multimedia Interface)規格に準拠したケーブルであり、本コネクタの基板に実装される半導体チップは、HDMI信号を入出力してもよい。
【0016】
ある態様において、コネクタは、基板上の嵌合部に実装されたハウジングをさらに備えてもよい。この場合、ケーブルとコネクタの嵌合性が高まる。また、ハウジングを導体で形成することにより、シールドとして機能させることもできるため、信号品質をより改善することができる。
【0017】
本発明の別の態様によれば、メイン基板上に実装された第1半導体チップから出力されるパラレル信号をパラレルシリアル変換し、接続された伝送ケーブルに対して出力する信号伝送装置が提供される。この信号伝送装置は、メイン基板上に実装され、その一部が、接続相手の伝送ケーブルと嵌合する形状を有するサブ基板と、サブ基板上に実装され、第1半導体チップから出力されるパラレル信号をパラレルシリアル変換し、出力端子からシリアルの信号を出力する第2半導体チップと、を備える。サブ基板上には、本信号伝送装置と接続相手の伝送ケーブルとの嵌合部と、信号伝送用半導体チップの出力端子と、の間を結線するパターン配線が形成され、当該パターン配線は、嵌合部において、本信号伝送装置が前記伝送ケーブルと接続された状態にて、伝送ケーブルから引き出される接続ピンと接触する形状を有する。
【0018】
この態様によれば、サブ基板の嵌合部が、伝送線路とのコネクタとして機能するため、シリアルの信号を、基板接続用のコネクタを介することなく、伝送ケーブルへと送出することができ、高速な信号伝送が可能となる。
【0019】
本発明のさらに別の態様も、コネクタである。このコネクタは、伝送ケーブルと嵌合する形状で形成された部分を有する基板と、基板の表面に、一端が、伝送ケーブルとの接続時において、当該伝送ケーブル内の配線と接触するように形成され、他端が、半導体集積回路の信号の入出力用の端子と接続されるランドとして形成されたパターン配線と、を備える。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0021】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、デジタル信号を伝送する伝送ケーブルに接続されるコネクタについて説明する。まず、本実施の形態に係るコネクタについて説明する前に、前提となる接続相手の伝送ケーブルについて説明する。図1は、第1の実施の形態に係るコネクタの接続相手となる伝送ケーブル100の外観図である。本実施の形態において、接続対象の伝送ケーブルはHDMI規格に準拠したものとして説明するが、これに限定されるものではなく、DVI、USBなど別の規格の規格であってもよい。
【0023】
図1の伝送ケーブル100は、接続部102、ハウジング104、ケーブル106を備える。ケーブル106は、その内部に、信号線の本数に応じた配線(不図示)と、シールド(不図示)を備える。配線とシールドは、絶縁体によって被覆されている。ハウジング104は、ユーザが伝送ケーブル100を、接続先のコネクタに接続する際に、ハンドリングが容易となるような形状で形成される。
【0024】
接続部102は、接続先のコネクタと嵌合する部分であり、絶縁部112、シールド114、複数の接続ピン108を備える。絶縁部112の外周は、金属のシールド114で覆われている。シールド114は接続先のコネクタを介して接地され、ケーブル106内部のシールドと接続される。絶縁部112は開口されており、開口部110が形成される。開口部110には、接続相手のコネクタが挿入される。絶縁部112の開口部110の内壁には、複数の接続ピン108が設けられている。接続ピン108は、ケーブル106の内部の信号線ごとに設けられており、各接続ピン108が、接続先のコネクタの端子と接触することにより、伝送ケーブル100とコネクタが電気的に接続され、信号の伝送が可能となる。なお、本実施の形態において、接続ピン108は、接続先のコネクタとの接続箇所、すなわち接続部102において、2列に配置されている。図1には、絶縁部112の開口部110の内壁のうち、下面に設けられた接続ピン108のみが示されるが、内壁の上面にも、同様の接続ピン108が設けられている。以下、開口部110の内壁の上面の接続ピン108を、108Uと記し、下面の接続ピン108を、108Lと称し、必要に応じて区別する。HDMI規格の場合、上面の接続ピン108Uは9本、下面の接続ピン108Lは10本である。
【0025】
図2は、第1の実施の形態に係るコネクタ10の構成を示す斜視図である。このコネクタ10は、図1の伝送ケーブル100と接続されるものである。本実施の形態に係るコネクタ10は、基板12、パターン配線16を含んで構成される。
【0026】
基板12は、いわゆるプリント基板であって、この基板上に、LSIなどの半導体チップや、抵抗、キャパシタ、フィルタ、あるいはESD(Electro-static Discharge)保護素子などの回路部品を実装するためのランドパターンや、これらの回路部品を電気的に接続するためのパターン配線が形成される。なお、図2には、コネクタ10を構成するパターン配線のみが示されており、その他のパターン配線やランドパターンは省略されている。基板12の材料としては、エポキシを主成分とするFR4やBTレジンなどを好適に用いることができる。なお、図2に示されるパターン配線は、その経路上に回路部品が接続可能に形成されていてもよい。
【0027】
基板12には、伝送ケーブルを介して伝送される信号を入出力する半導体チップ(不図示)が実装される。図2には、半導体チップが実装される領域が実装領域18として示されている。実装領域18に実装される半導体チップは、入力された信号を、HDMI規格の伝送信号に変換して送受信する専用の機能IC(Integrated Circuit)、あるいはHDMI規格の伝送信号を送受信する機能を有するDSP(Digital Signal Processor)である。
【0028】
基板12は、その一部が、図1の接続相手の伝送ケーブルと嵌合するような形状にて形成される。以下、この部分を嵌合部14と称する。具体的には、基板12の嵌合部14は、図1の絶縁部112に設けられた開口部110と嵌合可能なサイズで構成される。すなわち、基板12の嵌合部14における厚みdは、図1の開口部110の高さYと略同一であり、嵌合部14の幅Wは、図1の開口部110の幅Xと略同一となる。
【0029】
基板12上には、パターン配線16が、上側の第1実装面と、その裏面(図2では不可視)である第2実装面に、複数本づつ形成される。以下、第1実装面のパターン配線16を、16Uと、第2実装面のパターン配線16を、16Lと称し、必要に応じて区別する。第1実装面のパターン配線16Uは、接続ピン108Uと接続され、第2実装面のパターン配線16Lは、接続ピン108Lと接続される。
【0030】
図2に示される各パターン配線16Uは、コネクタ10と接続相手の伝送ケーブル100との嵌合部14と、実装領域18に実装される半導体チップの伝送信号の入出力用の端子と、の間を結線するように敷設される。図2において、パターン配線16は直線のパターンで形成されるが、一部において曲げられていてもよい。
【0031】
本実施の形態において、パターン配線16の一端は、半導体チップの信号入出力用の端子が接続されるランドパターン(端子)として機能する。また、パターン配線16Uの他端は、伝送ケーブル100の接続ピン108Uとのコンタクト素子として機能する。パターン配線16Uの嵌合部14内の形状は、伝送ケーブル100との接続状態において、伝送ケーブル100から引き出される配線、すなわち、接続ピン108Uと接触する形状を有している。
【0032】
さらに、コネクタ10は、接続相手の伝送ケーブル100との嵌合性を高めるために、基板12の嵌合部14に実装されたハウジング(不図示)をさらに備えることが好ましい。ハウジングと基板12との接続は特に限定されるものではなく、はんだ、ねじなどの接続手段を用いて基板12と接続する。ハウジングは、市販の基板接続用コネクタのハウジングを流用してもよい。
【0033】
基板12は、多層基板として形成されることが好ましく、本実施の形態に係る基板12は、4層の配線層と、各配線層間に形成された3層の誘電体層を含む。便宜的に、図2に示される上側の第1実装面から、その裏面である第2実装面に向かって積層される配線層および絶縁層を、順に、第1配線層、第1誘電体層、第2配線層、第2誘電体層、第3配線層、第3誘電体層、第4配線層とよぶ。
【0034】
図3(a)〜(d)は、図2の基板12の第1〜第4配線層を示す図である。すなわち、図3(a)に示される第1配線層30のパターンは、図2の9本のパターン配線16Uを含む。パターン配線16Uは、銅で形成し、その上に金メッキを施すのが好ましい。さらに、第1配線層30は、複数のランド22を備える。ランド22は、第4配線層36のパターン配線16Lそれぞれに、ビアホールを介して接続される。したがって、ランド22は、10個設けられる。図3(a)では、第1配線層30のランド22がパターン配線16Uと隣接する位置に配置されているが、実際のレイアウトでは適宜、図2の実装領域18に実装される半導体チップの伝送信号の入出力用端子の位置に配置する。ランド22およびパターン配線16Uの実装領域18側の一端の位置および形状は、半導体チップのパッケージに応じて決定する。たとえば、BGA(Ball Grid Array)パッケージであれば、はんだボールの直下に形成し、リードフレームパッケージであれば、リードの先端と接触する位置に形成する。
【0035】
また、図3(d)に示される第4配線層36は、10本のパターン配線16Lを含む。各パターン配線16Lの一端は、第1配線層30まで信号を引き上げるためのビアホール28が接続されるコンタクトとして機能する。ビアホール28は、第1配線層30から第4配線層36まで貫通するように設けられている。
【0036】
図3(b)、(c)の第2配線層32、第3配線層34は、主にグランド層であり、第1配線層30および第4配線層36に形成される複数のパターン配線16U、16Lとオーバーラップする領域に、グランドパターン38、40が形成されている。グランドパターン38、40は、互いに図示しないビアホールで接続されている。さらに、第2配線層32、第3配線層34には、第4配線層36のパターン配線16Lから第1配線層30のランド22を接続するビアホール28のためのビアコンタクト24、26が設けられる。
【0037】
また、パターン配線16U、16Lのうち、グランド線として機能する配線は、必要に応じて、グランドパターン38、40と図示しないビアホールを介して接続される。
【0038】
本実施の形態において、パターン配線16U、16Lは、それぞれ隣接するグランドパターン38、40を接地導体としたマイクロストリップラインとなる。パターン配線16U、16Lの線幅、および第1誘電体層および第3誘電体層の厚み、誘電率は、特性インピーダンスが、HDMI規格の伝送ケーブル100の特性インピーダンスである100Ωと一致するように設計する。
【0039】
以上のように構成されたコネクタ10によれば、以下の利点を得ることができる。
本実施の形態に係るコネクタ10では、伝送信号を入出力する半導体チップが実装される基板12自体が、伝送ケーブル100とのコネクタとして機能する。言い換えれば、コネクタが基板12と一体に形成されている。したがって、従来のように、伝送ケーブル100を接続するための基板接続用のコネクタが不要となり、伝送線路上に発生する寄生容量や寄生抵抗を低減することができる。その結果、伝送信号の信号品質を改善することができ、従来よりも高いビットレートでの信号伝送が可能となる。特に、従来では、基板接続用のコネクタを基板に接続するためにはんだを利用しており、はんだによる寄生容量が数pF程度と大きいため、1GHz以上の伝送信号に及ぼす影響が大きかった。これに対して、本実施の形態に係るコネクタ10では、はんだが、半導体チップと基板12を接続する箇所のみで使用されるため、従来に比べて、寄生容量を大幅に削減することができる。
【0040】
図4(a)、(b)は、それぞれ、図2のコネクタ10を用いたとき、従来の基板接続用コネクタを用いたときの伝送信号のアイパターンを示す図である。図4(a)、(b)は、HDMI規格で伝送される3.4GHzの伝送信号のアイパターンである。図4(b)に示すように、従来の基板接続用コネクタを用いた場合、矢印で示す開口率が顕著に小さくなり、誤り率が増大する。これに対して、本実施の形態に係るコネクタ10を利用すれば、図4(a)に示すように、開口率の高い、品質の良好な伝送信号を得ることができ、高速な信号伝送が可能となる。
【0041】
さらに、本実施の形態に係るコネクタ10では、半導体チップから伝送ケーブル100に至るまでのパターン配線16U、Lがマイクロストリップラインとして形成されるため、特性インピーダンスを正確に設計することができる。従来の基板接続用のコネクタを用いた場合、コネクタ内の配線や接続ピンが、針金等で形成されていたため、特性インピーダンスの調節が困難であり、またばらつきも大きかった。パターン配線16の特性インピーダンスと、伝送ケーブル100の特性インピーダンスとの間の不整合は、信号品質の悪化、信号の不要な反射や電磁輻射等を招く要因となる。この点において、本実施の形態に係るコネクタ10によれば、パターン配線16の特性インピーダンスを正確に設計することができ、良好なインピーダンス整合が得られ、高速な信号伝送が可能となる。
【0042】
また、基板12を多層基板としたことにより、パターン配線16Uとパターン配線16Lの間に、グランドパターン38、40を設けることができ、パターン配線16U、16L間のクロストークを抑制することができる。
【0043】
上述のように、本実施の形態に係るコネクタ10は、マイクロストリップラインであるパターン配線16U、16Lの特性インピーダンスを精度よく設計する点にひとつの特徴がある。基板12の第1絶縁層〜第3絶縁層の厚みをd1、d2、d3とすると、それらの和は、基板12の全体の厚みdであり、良好な嵌合性を実現するために、d≒Yを満たす必要がある。一方、第1絶縁層の厚みd1および第3絶縁層の厚みd3は、パターン配線16Uおよびパターン配線16Lの特性インピーダンスが100Ωに一致するように決定する必要がある。本実施の形態に係るコネクタ10では、パターン配線16U、16Lの特性インピーダンスに影響を及ぼさない第2絶縁層が設けられており、その厚みd2を調節することができるため、特性インピーダンスを最適化しつつ、良好な嵌合性を得ることができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、コネクタが基板に一体に形成された信号伝送装置について説明する。図5は、第2の実施の形態に係る信号伝送装置50を備えた電子機器200の構成を示す図である。電子機器200は、高速なシリアル信号を伝送する機能を備えており、たとえば、テレビなどの表示装置、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器などである。
【0045】
電子機器200は、メインボード202、第1半導体チップ204、信号伝送装置50を備える。メインボード202上には、外部機器(図示せず)に対して送信すべき信号を生成する第1半導体チップ204が実装される。第1半導体チップ204は、たとえばCPU(Central Processing Unit)、グラフィックプロセッサ、あるいはその他のDSPである。近年の電子機器200の高機能化によって、メインボード202は多層化が進んでおり、その厚みが増大しているため、メインボード202の一部に、第1の実施の形態で説明した嵌合部14を形成し、図2のコネクタ10を一体形成することが困難な場合がある。本実施の形態に係る信号伝送装置50は、かかる状況において、外部機器との高速な信号伝送を実現するために利用することができる。
【0046】
第1半導体チップ204は、外部機器に伝送すべき信号を、パラレル信号として、その出力端子206から出力する。信号伝送装置50は、メインボード202上に実装された第1半導体チップ204から出力されるパラレル信号をパラレルシリアル変換し、接続された伝送ケーブル(不図示)に対して出力する機能を有する。すなわち、信号伝送装置50は、いわゆるトランスミッタやレシーバである。
【0047】
信号伝送装置50は、サブ基板12a、パターン配線16a、第2の半導体チップである信号伝送用半導体チップ20を備える。サブ基板12a、パターン配線16aは、それぞれ図2のコネクタ10の基板12、パターン配線16に対応し、第1の実施の形態に係るコネクタ10と同等の機能を果たす。
【0048】
サブ基板12aは、メインボード202上に実装され、その一部が、接続相手の伝送ケーブルと嵌合する形状を有している。
【0049】
信号伝送用半導体チップ20は、サブ基板12a上に実装される。したがって、信号伝送用半導体チップ20は、図2の実装領域18に実装される半導体チップに相当する。この信号伝送用半導体チップ20は、その入力端子に入力されたパラレル信号をパラレルシリアル変換し、その出力端子からシリアルの差動伝送信号を出力するトランシーバICである。サブ基板12a上の信号伝送用半導体チップ20の実装箇所には、図3(a)のパターン配線16Uおよびランド22と同様のパターン配線が形成されており、信号伝送用半導体チップ20の伝送信号の入出力端子が、このパターンに接続される。
【0050】
サブ基板12a上のパターン配線16aは、信号伝送装置50および接続相手の伝送ケーブルとの嵌合部14aと、信号伝送用半導体チップ20の出力端子と、の間を結線するよう敷設される。パターン配線16aは、嵌合部14aにおいて、信号伝送装置50が伝送ケーブルと接続された状態にて、伝送ケーブルから引き出される接続ピンと接触する形状を有する。すなわち、図5のパターン配線16aは、図2で説明したパターン配線16U、16Lと同様に設計される。さらに、サブ基板12aには、信号伝送用半導体チップ20の入力端子と、第1半導体チップ204の出力端子を接続するための配線およびパッドが設けられているが、一般的な技術を用いればよいため説明を省略する。
【0051】
第2の実施の形態に係る信号伝送装置50によれば以下の利点が得られる。
まず、信号伝送装置50を利用することにより、伝送ケーブルと信号伝送用半導体チップ20の間に、基板接続用のコネクタを設ける必要がないため、第1の実施の形態で説明した理由によって、高速な信号伝送が可能となる。ここで、第1半導体チップ204と信号伝送用半導体チップ20間には、配線や基板が介在するが、この間を伝送する信号は、パラレル信号であって、シリアル信号ほど周波数が高くないため、伝送レートに及ぼす影響はほとんどない。
【0052】
また、サブ基板12aの厚みは、メインボード202の厚みとは独立に設計することができる。言い換えれば、メインボード202は、伝送ケーブルとの嵌合性を意識せずに、従来通りに設計することができる。
【0053】
さらに、シリアルパラレル変換する機能を、信号伝送用半導体チップ20に持たせているため、信号伝送装置50は、あらゆる電子機器に汎用的に使用することができる。すなわち、本実施の形態に係る信号伝送装置50を利用することにより、さまざまな電子機器に、高速なシリアル信号を伝送する機能を提供することが可能となる。
【0054】
(第3の実施の形態)
第1、第2の実施の形態では、コネクタ10あるいは信号伝送装置50が、凸型の形状を有しており、伝送ケーブル側が凹型の形状を有する場合について説明した。第3の実施の形態では、凹型の形状を有するコネクタ10bについて説明する。
【0055】
図6(a)、(b)は、第3の実施の形態に係るコネクタ10bの構成を示す図である。コネクタ10bは、基板12b、パターン配線16bを含んで構成される。図6(a)に示すように、コネクタ10bの嵌合部14bは、図1の伝送ケーブル100の開口部110に相当しており、基板12b(以下、上面基板12bU)と基板12b(以下、下面基板12bLという)とを所定の間隔で対向して配置することにより、間隙を形成している。上面基板12bUと、下面基板12bLには、それぞれ図1の伝送ケーブル100の接続ピン108に対応するパターン配線16bが形成されている。以下、必要に応じて、上面基板12bU側に形成されるパターン配線を、16bU、下面基板12bL側に形成されるパターン配線を、16bL、とよび区別する。
【0056】
本実施の形態において、上面基板12bUおよび下面基板12bLは、一枚の基板12bを折り曲げることにより形成される。折り曲げ可能な基板として、フレキシブル(軟質)・リジット(硬質)基板を好適に用いることができる。フレキシブル・リジット基板は、ある程度の硬さを有しつつ、折り曲げることが可能な基板であり市販されている。
【0057】
図6(b)は、図6(a)の基板12bを折り曲げる前の展開図である。基板12bは、図6(a)の上面基板12bUと、下面基板12bLに相当する部分を有している。上面基板12bUには、パターン配線16bUが形成されている。同様に、下面基板12bLには、パターン配線16bLが形成されている。パターン配線16bU、16bLの形成は、第1、第2の実施の形態で説明したパターン配線16と同様に形成すればよい。パターン配線16bU、16bLの嵌合部14bと反対側には、伝送信号を入出力する半導体チップ(不図示)が接続されるが、接続方法は特に限定されない。
【0058】
図6(b)に示す基板12bを、一点鎖線60を軸として手前に折り返すように折り曲げることにより、図6(a)に示す凹型の形状を有するコネクタ10bを構成することができる。
【0059】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素、その組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0060】
実施の形態では、HDMI規格に準拠した伝送ケーブルと接続されるコネクタについて説明したが本発明は、現在、あるいは将来において使用可能なさまざまな規格の伝送ケーブルのコネクタに適用することができる。したがって、基板12上に形成されるパターン配線16の本数は、例示した値に限定されるものではない。また、パターン配線16の配置に関しても、基板12の両面に形成されている必要はなく、USBなどに適用する場合には、一面にのみパターン配線16を形成すればよい。
【0061】
実施の形態では、基板12として多層基板を用いる場合について説明したが、単層基板を用いても構わない。
【0062】
また、実施の形態では、伝送ケーブルを介して伝送される信号が差動のシリアル信号である場合について説明したが、本発明は差動信号に限定されるものでもなく、あるいはシリアル信号に限定されるものでもない。さらにいえば、本発明は、アナログ信号の伝送ケーブルと接続されるコネクタに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施の形態に係るコネクタの接続相手となる伝送ケーブルの外観図である。
【図2】第1の実施の形態に係るコネクタの構成を示す斜視図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、図2の基板の第1〜第4配線層を示す図である。
【図4】図4(a)、(b)は、それぞれ、図2のコネクタを用いたとき、従来の基板接続用コネクタを用いたときの伝送信号のアイパターンを示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る信号伝送装置を備えた電子機器の構成を示す図である。
【図6】図6(a)、(b)は、第3の実施の形態に係るコネクタの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10・・・コネクタ、12・・・基板、14・・・嵌合部、16・・・パターン配線、18・・・実装領域、20・・・信号伝送用半導体チップ、22・・・ランド、24・・・ビアコンタクト、26・・・ビアコンタクト、28・・・ビアホール、30・・・第1配線層、32・・・第2配線層、34・・・第3配線層、36・・・第4配線層、38・・・グランドパターン、40・・・グランドパターン、50・・・信号伝送装置、100・・・伝送ケーブル、102・・・接続部、104・・・ハウジング、106・・・ケーブル、108・・・接続ピン、110・・・開口部、112・・・絶縁部、114・・・シールド、200・・・電子機器、202・・・メインボード、204・・・第1半導体チップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を伝送する伝送ケーブルに接続されるコネクタであって、
前記伝送ケーブルを介して伝送される信号を入出力する半導体チップが実装される基板であって、その一部が、接続相手の伝送ケーブルと嵌合する形状にて形成された基板と、
本コネクタと前記接続相手の伝送ケーブルとの嵌合部と、前記半導体チップの前記信号の入出力用の端子と、の間を結線するよう前記基板上に敷設されたパターン配線と、
を備え、
前記パターン配線は、前記嵌合部において、本コネクタが前記伝送ケーブルと接続された状態で、前記伝送ケーブルから引き出される接続ピンと接触する形状を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記基板は多層基板であって、前記パターン配線はその表層に敷設されており、
前記パターン配線と隣接する配線層には、少なくとも前記パターン配線とオーバーラップする領域に接地パターンが形成されることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記パターン配線は、その特性インピーダンスが、前記接続相手の伝送ケーブルの特性インピーダンスとなるように形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記伝送ケーブルは、複数の信号を伝送するものであり、前記パターン配線は、前記嵌合部において、前記複数の信号に対してそれぞれ設けられ、かつ設けられた配線部分が互いに隣接するように形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項5】
前記伝送ケーブルは、複数の信号を伝送するものであって、本コネクタとの嵌合部において、前記伝送ケーブルの接続ピンは2列に配置されており、
前記パターン配線は、前記複数の信号に対してそれぞれ設けられ、1列目の接続ピンと接続されるパターン配線は、前記嵌合部において、前記基板の表層に敷設され、2列目の接続ピンと接続されるパターン配線は、前記嵌合部において、前記基板の裏面に敷設されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項6】
前記基板上の前記嵌合部に実装されたハウジングをさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項7】
メイン基板上に実装された第1半導体チップから出力されるパラレル信号をパラレルシリアル変換し、接続された伝送ケーブルに対して出力する信号伝送装置であって、
前記メイン基板上に実装され、その一部が、接続相手の伝送ケーブルと嵌合する形状を有するサブ基板と、
前記サブ基板上に実装され、前記第1半導体チップから出力される前記パラレル信号をパラレルシリアル変換し、出力端子からシリアルの信号を出力する第2半導体チップと、
を備え、
前記サブ基板上には、本信号伝送装置と前記接続相手の伝送ケーブルとの嵌合部と、前記第2半導体チップの前記出力端子と、の間を結線するパターン配線が形成され、当該パターン配線は、前記嵌合部において、本信号伝送装置が前記伝送ケーブルと接続された状態にて、前記伝送ケーブルから引き出される接続ピンと接触する形状を有することを特徴とする信号伝送装置。
【請求項8】
伝送ケーブルと嵌合する形状で形成された部分を有する基板と、
前記基板の表面に、一端が、前記伝送ケーブルとの接続時において、当該伝送ケーブル内の接続ピンと接触するように形成され、他端が、半導体チップの信号の入出力用の端子と接続されるランドとして形成されたパターン配線と、
を備えることを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−72022(P2008−72022A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250864(P2006−250864)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(395015319)株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (871)
【Fターム(参考)】