説明

信号判定装置および信号判定方法

【課題】入力信号が有効か否かの判定を簡単に実現する。
【解決手段】信号判定装置10は、入力信号を2値化する2値化部100と、2値化部100の出力を入力とし、判定期間中の入力信号のランレングスを測定するランレングス測定部101と、ランレングス測定部101の測定結果から、判定期間中の入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布とランレングス測定部101の測定結果から得られるランレングスの分布とを比較することにより、入力信号が有効か否かを判定する判定手段(確率算出部103、ノイズ度数算出部104、有効性判定部105)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号が有効か否かを判定する信号判定装置および信号判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザの自己結合効果を用いた自己結合型レーザセンサが提案されている(特許文献1参照)。この自己結合型レーザセンサの構成を図9に示す。図9の自己結合型レーザセンサは、物体210にレーザ光を放射する半導体レーザ201と、半導体レーザ201の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード202と、半導体レーザ201からの光を集光して物体210に照射すると共に、物体210からの戻り光を集光して半導体レーザ201に入射させるレンズ203と、半導体レーザ201に発振波長が連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返させるレーザドライバ204と、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部205と、電流−電圧変換増幅部205の出力電圧を2回微分する信号抽出回路206と、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるモードホップパルス(以下、MHPとする)の数を数える計数装置207と、物体210との距離および物体210の速度を算出する演算装置208と、演算装置208の算出結果を表示する表示装置209とを有する。
【0003】
レーザドライバ204は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ201に供給する。これにより、半導体レーザ201は、発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図10は、半導体レーザ201の発振波長の時間変化を示す図である。図10において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Tcarは三角波の周期である。
【0004】
半導体レーザ201から出射したレーザ光は、レンズ203によって集光され、物体210に入射する。物体210で反射された光は、レンズ203によって集光され、半導体レーザ201に入射する。フォトダイオード202は、半導体レーザ201の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部205は、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅し、信号抽出回路206は、電流−電圧変換増幅部205の出力電圧を2回微分する。計数装置207は、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える。演算装置208は、半導体レーザ1の最小発振波長λaと最大発振波長λbと第1の発振期間P1におけるMHPの数と第2の発振期間P2におけるMHPの数に基づいて、物体210との距離や物体210の速度等の物理量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−313080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自己結合型レーザセンサでは、半導体レーザの前方に物体が存在しない場合や、物体が検出可能範囲外の遠方にあって検出できない場合でも、外乱光などのノイズを信号として計数してしまい、半導体レーザの前方に物体が存在するものとして物理量を算出してしまうので、計数した信号の有効性を判定する必要がある。
【0007】
自己結合信号であるMHPは、物体の物理量と信号品質によって信号成分が変化するため、信号抽出回路から出力されているものがノイズか信号かを簡単に判定することは難しく、ノイズか信号かの判定、すなわち入力信号が有効か否かの判定を簡単に実現する手法は知られていなかった。
【0008】
従来、自己結合型レーザセンサのように干渉原理を利用したセンサなど、信号の周波数もしくは計数値をもとに物理量を算出するセンサにおいて信号の有効性を判定するにはFFT(Fast Fourier Transform)などの周波数解析を利用する手法が考えられる。しかしながら、FFTでは、大きな計算量が必要となり、処理に時間がかかるという問題点があった。
なお、以上のような問題点は自己結合型レーザセンサに限らず、他の装置でも同様に発生する可能性がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、入力信号が有効か否かの判定を簡単に実現することができる信号判定装置および信号判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の信号判定装置は、入力信号を2値化する2値化手段と、この2値化手段の出力を入力とし、判定期間中の前記入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングス(Run Length)を測定するランレングス測定手段と、このランレングス測定手段の測定結果から、前記判定期間中の前記入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布と前記ランレングス測定手段の測定結果から得られるランレングスの分布とを比較することにより、入力信号が有効か否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の信号判定装置は、入力信号を2値化する2値化手段と、この2値化手段の出力を入力とし、判定期間中の前記入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定手段と、このランレングス測定手段の測定結果から、前記判定期間中の前記入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布から得られるノイズの総度数と前記判定期間中の前記ランレングスの数である総度数との比から、入力信号が有効か否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の信号判定装置は、入力信号を2値化する2値化手段と、この2値化手段の出力を入力とし、判定期間中の前記入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定手段と、このランレングス測定手段の測定結果から、前記判定期間中の前記入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布から得られるノイズの総度数と、前記判定期間中の前記ランレングスの数である総度数および前記ノイズの総度数から求めた信号の度数との比から、入力信号が有効か否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の信号判定装置の1構成例において、前記判定手段は、判定期間中のランレングスの度数とノイズの度数との差の絶対値を階級値毎に求め、求めた値の総和を前記信号の度数とすることを特徴とするものである。
また、本発明の信号判定装置の1構成例において、前記判定手段は、判定期間中の各階級値のランレングスの度数のうち、当該階級値のノイズの度数よりも大きい度数のみの総和を前記信号の度数とすることを特徴とするものである。
また、本発明の信号判定装置の1構成例において、前記判定手段は、前記ランレングス測定手段の測定結果から得られる階級値1の度数から前記ノイズの度数分布を求めることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の信号判定方法は、入力信号を2値化する2値化ステップと、この2値化ステップの出力を入力とし、判定期間中の前記入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定ステップと、このランレングス測定ステップの測定結果から、前記判定期間中の前記入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布と前記ランレングス測定ステップの測定結果から得られるランレングスの分布とを比較することにより、入力信号が有効か否かを判定する判定ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入力信号を2値化する2値化手段と、2値化手段の出力を入力とし、判定期間中の入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定手段と、ランレングス測定手段の測定結果から、判定期間中の入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布とランレングス測定手段の測定結果から得られるランレングスの分布とを比較することにより、入力信号が有効か否かを判定する判定手段とを設けることにより、入力信号が有効か否かを簡単に判定することができる。本発明では、FFTなどの周波数解析手法を利用しないので、入力信号が有効か否かを少ない計算量且つ短時間で判定することができる。
【0013】
また、本発明では、入力信号を2値化する2値化手段と、2値化手段の出力を入力とし、判定期間中の入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定手段と、ランレングス測定手段の測定結果から、判定期間中の入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布から得られるノイズの総度数と判定期間中のランレングスの数である総度数との比から、入力信号が有効か否かを判定する判定手段とを設けることにより、入力信号が有効か否かを簡単に判定することができる。
【0014】
また、本発明では、入力信号を2値化する2値化手段と、2値化手段の出力を入力とし、判定期間中の入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定手段と、ランレングス測定手段の測定結果から、判定期間中の入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布から得られるノイズの総度数と、判定期間中のランレングスの数である総度数およびノイズの総度数から求めた信号の度数との比から、入力信号が有効か否かを判定する判定手段とを設けることにより、入力信号が有効か否かを簡単に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る自己結合型レーザセンサの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における電流−電圧変換増幅部の出力電圧波形およびフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る自己結合型レーザセンサにおける信号判定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る自己結合型レーザセンサにおける信号判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る自己結合型レーザセンサにおける2値化部とランレングス測定部の動作を説明する図である。
【図6】無信号状態のランレングス度数分布の例を示す図である。
【図7】2値化後の符号が変化する確率と符号が変化しない確率について説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る自己結合型レーザセンサにおける信号判定装置の効果を説明する図である。
【図9】従来の自己結合型レーザセンサの構成を示すブロック図である。
【図10】図9の自己結合型レーザセンサにおける半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る自己結合型レーザセンサの構成を示すブロック図である。
図1の自己結合型レーザセンサは、測定対象の物体11にレーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、物体11からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動する発振波長変調手段となるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれる自己結合信号であるMHPの数を数える計数部7と、MHPの数から物体11との距離および物体11の速度を算出する演算部8と、演算部8の算出結果を表示する表示部9と、フィルタ部6の出力が入力信号が有効か否かを判定する信号判定装置10とを有する。
【0017】
以下、説明を容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
レーザドライバ4は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間P1と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間P2とを交互に繰り返すように駆動される。このときの半導体レーザ1の発振波長の時間変化は、図10に示したとおりである。本実施の形態では、発振波長の最大値λb及び発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。
【0018】
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、物体11に入射する。物体11で反射された光は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0019】
フィルタ部6は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図2(A)は電流−電圧変換増幅部5の出力電圧波形を模式的に示す図、図2(B)はフィルタ部6の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2の出力に相当する図2(A)の波形(変調波)から、図10の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、図2(B)のMHP波形(干渉波形)を抽出する過程を表している。半導体レーザ1から放射されたレーザ光と物体11からの戻り光との自己結合効果によって生じる自己結合信号であるMHPについては、例えば特許文献1で説明されているので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0020】
計数部7は、フィルタ部6の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える。計数部7は、論理ゲートからなるカウンタを利用するものでもよいし、他の手段を用いるものでもよい。
【0021】
演算部8は、半導体レーザ1の最小発振波長λaと最大発振波長λbと計数部7が数えたMHPの数に基づいて、物体11との距離および物体11の速度を算出する。物体11との距離および物体11の速度を算出する方法については、例えば特許文献1に開示されているので、ここでは詳細な説明は省略する。なお、本発明は測定する物理量には限定されない。例えば特開2010−78560号公報に開示されているようにMHPの数に基づいて物体の振動周波数を求めてもよいし、特開2010−78393号公報に開示されているようにMHPの数に基づいて物体の振動振幅を求めてもよい。
表示部9は、演算部8の算出結果を表示する。
【0022】
次に、信号判定装置10は、フィルタ部6の出力が入力信号が有効か否かを判定する。図3は信号判定装置10の構成を示すブロック図である。信号判定装置10は、2値化部100と、ランレングス(Run Length)測定部101と、記憶部102と、確率算出部103と、ノイズ度数分布算出部104と、有効性判定部105とを有する。確率算出部103とノイズ度数分布算出部104と有効性判定部105とは、判定手段を構成している。
【0023】
図4は信号判定装置10の動作を示すフローチャートである。図5(A)、図5(B)は2値化部100とランレングス測定部101の動作を説明する図であり、図5(A)はフィルタ部6の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、図5(B)は図5(A)に対応する2値化部100の出力を示す図である。
【0024】
まず、信号判定装置10の2値化部100は、図5(A)に示すフィルタ部6の出力電圧がハイレベル(H)かローレベル(L)かを判定して、図5(B)のような判定結果を出力する。このとき、2値化部100は、フィルタ部6の出力電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、フィルタ部6の出力電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、フィルタ部6の出力を2値化する(図4ステップS1)。
【0025】
続いて、ランレングス測定部101は、入力信号が有効か否かを判定する判定期間中のMHPのランレングスを測定する(図4ステップS2)。ここで、本実施の形態では、計数部7がMHPの数を数える第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々を判定期間とする。ランレングス測定部101は、図5(B)に示すように2値化部100の出力の立ち上がりから次の立ち下がりまでの時間tudを測定し、また2値化部100の出力の立ち下がりから次の立ち上がりまでの時間tduを測定することにより、2値化部100の出力のランレングス(すなわち、MHPのランレングス)を測定する。このように、MHPのランレングスとは、時間tudまたはtduのことである。ランレングス測定部101は、以上のような測定を判定期間中において2値化部100の出力の立ち上がりまたは立ち下がりのどちらかが検出される度に行う。
【0026】
なお、ランレングス測定部101は、サンプリングクロックの周期を1単位としてMHPのランレングスを測定する。例えばMHPのランレングスがサンプリングクロック2個分であれば、このランレングスの大きさは2[samplings]である。サンプリングクロックの周波数は、MHPの取り得る最高周波数に対して十分に高いものとする。
記憶部102は、ランレングス測定部101の測定結果を記憶する。
【0027】
次に、確率算出部103は、2値化後の符号が変化する確率pを算出する(図4ステップS3)。MHPがない場合(半導体レーザ1の前方に物体11が存在しない場合や物体11が検出可能範囲外の遠方にあって検出できない場合)、すなわち無信号状態の場合にランレングス測定部101によって測定されるランレングスの度数分布の例を図6に示す。無信号状態のランレングス度数分布は、離散時間の確率過程であるベルヌーイ過程に従うため、式(1)の幾何分布Fedge(x)に従う。
edge(x)=p・(1−p)x-1 ・・・(1)
【0028】
式(1)について説明する。離散時間の確率過程で、成功/失敗の確率は時間依存性のないベルヌーイ試行の列で表現することができる。MHPがない場合、フィルタ部6から出力されるものは時間依存性のないホワイトノイズであるとすることができる。このホワイトノイズを2値化する際、ホワイトノイズの平均値としきい値TH1,TH2の中心とが概ね等しいとき、図7に示すように、2値化後の符号がローレベルからハイレベルまたはハイレベルからローレベルへ変化する確率をp、符号が変化しない確率を1−pとすることができる。2値化後の符号が変化する場合を成功、符号が変化しない場合を失敗と呼ぶ。図7における横軸はフィルタ部6の出力であり、70はホワイトノイズ、71は確率密度、72は累積確率を示している。同じ符号がx回続く確率は、x−1回の失敗と1回の成功が起こる確率であるので、上記の式(1)で表すことができる。
【0029】
式(1)の関係から、2値化後の符号が変化する確率pを算出することができる。階級値1[samplings]の度数をN1、判定期間中の総サンプリングクロック数をNsampとすると、2値化後の符号が変化する確率pは次式のように算出することができる。
p=√(N1/Nsamp)=(N1/Nsamp)1/2 ・・・(2)
【0030】
確率算出部103は、記憶部102に記憶されているランレングス測定部101の測定結果から、判定期間中の階級値1[samplings]の度数N1を求め、この度数N1と判定期間中の総サンプリングクロック数Nsampとを用いて式(2)により、2値化後の符号が変化する確率pを算出すればよい。確率算出部103の算出結果は、記憶部102に格納される。
【0031】
次に、ノイズ度数分布算出部104は、ノイズの度数分布を算出する(図4ステップS4)。式(1)の関係から、判定期間中の階級値n[samplings]のノイズの度数N(n)は次式のように算出することができる。
N(n)=Nsamp・p2・(1−p)n-1 ・・・(3)
なお、このときノイズの総度数ΣN(n)は、Nsamp・pである。
【0032】
ノイズ度数分布算出部104は、記憶部102に記憶されているランレングス測定部101の測定結果から、判定期間中の階級値n[samplings]のノイズの度数N(n)を算出する。ノイズ度数分布算出部104は、このような度数N(n)の算出を、階級値1から最大階級値(ランレングス測定部101の測定結果のうちの最大周期)まで階級値毎に行う。
【0033】
有効性判定部105は、信号の度数とノイズの度数との比率Rから、入力信号が有効か否かを判定する(図4ステップS5)。具体的には、有効性判定部105は、比率Rを次式のように算出する。
R={ΣN−ΣN(n)}/ΣN(n) ・・・(4)
式(4)において、ΣNは判定期間中の総度数(判定期間中のランレングスの数)である。
【0034】
有効性判定部105は、算出した比率Rが所定の判定しきい値以下の場合には、フィルタ部6の出力に含まれる信号(MHP)が無効であると判定し、比率Rが判定しきい値を超える場合には、フィルタ部6の出力に含まれる信号(MHP)が有効であると判定する。
信号判定装置10は、以上のような処理を判定期間毎に行う。表示部9は、信号判定装置10の判定結果を表示する。
【0035】
以上のように、本実施の形態では、2値化後の符号が変化する確率pを基に、信号の度数とノイズの度数との比率Rから入力信号が有効か否かを判定することができる。
【0036】
図8(A)〜図8(C)は本実施の形態の信号判定装置10の効果を説明する図であり、ランレングス測定部101によって測定されるランレングスの度数分布の例を示す図である。図8(A)はフィルタ部6の出力に含まれる信号が有効で且つノイズが少ない場合の度数分布80を示し、図8(B)はフィルタ部6の出力に含まれる信号が有効で且つノイズが多い場合の度数分布81を示し、図8(C)はフィルタ部6の出力が無信号状態の場合の度数分布82を示している。
【0037】
本実施の形態の信号判定装置10の処理によると、ランレングス度数分布82から得られる比率Rは0.029、ランレングス度数分布80から得られる比率Rは0.719、ランレングス度数分布81から得られる比率Rは0.402である。したがって、0.029と0.402との間に判定しきい値を設定すれば、無信号状態と信号が有効な状態とを区別できることが分かる。判定しきい値は、信号の求められる信頼性に応じて設定すればよい。
【0038】
なお、本実施の形態では、信号の度数とノイズの度数との比率Rから入力信号が有効か否かを判定しているが、これに限るものではなく、判定手段は、ノイズの総度数ΣN(n)と判定期間中の総度数ΣNとの比ΣN(n)/ΣNから、入力信号が有効か否かを判定するようにしてもよい。判定手段は、比ΣN(n)/ΣNが所定の判定しきい値以上の場合には、フィルタ部6の出力に含まれる信号(MHP)が無効であると判定し、比ΣN(n)/ΣNが判定しきい値未満の場合には、フィルタ部6の出力に含まれる信号(MHP)が有効であると判定する。
【0039】
また、本実施の形態では、判定期間中の信号の度数をΣN−ΣN(n)で算出しているが、これに限るものではなく、他の方法で算出してもよい。具体的には、有効性判定部105は、信号の度数をΣ(|N−N(n)|)により算出してもよい。ここで、Nは階級値nのランレングスの度数である。すなわち、ランレングスの度数Nとノイズの度数N(n)との差の絶対値を階級値1から最大階級値まで階級値毎に求め、求めた値の総和を信号の度数とすればよい。また、有効性判定部105は、各階級値のランレングスの度数のうち、当該階級値のノイズの度数よりも大きい度数のみの総和を、信号の度数としてもよい。また、全ての度数ではなく、度数分布の一部の階級に制限しての総和を用いてもよい。
【0040】
なお、本実施の形態では、本発明の信号判定装置を自己結合型レーザセンサに適用した場合について説明したが、これに限るものではなく、本発明の信号判定装置は他の分野にも適用することができる。
【0041】
また、本実施の形態において少なくとも演算部8と信号判定装置10とは、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータを動作させるためのプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供される。CPUは、読み込んだプログラムを記憶装置に書き込み、このプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、入力信号が有効か否かを判定する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…半導体レーザ、2…フォトダイオード、3…レンズ、4…レーザドライバ、5…電流−電圧変換増幅部、6…フィルタ部、7…計数部、8…演算部、9…表示部、10…信号判定装置、11…物体、100…2値化部、101…ランレングス測定部、102…記憶部、103…確率算出部、104…ノイズ度数分布算出部、105…有効性判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を2値化する2値化手段と、
この2値化手段の出力を入力とし、判定期間中の前記入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定手段と、
このランレングス測定手段の測定結果から、前記判定期間中の前記入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布と前記ランレングス測定手段の測定結果から得られるランレングスの分布とを比較することにより、入力信号が有効か否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする信号判定装置。
【請求項2】
入力信号を2値化する2値化手段と、
この2値化手段の出力を入力とし、判定期間中の前記入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定手段と、
このランレングス測定手段の測定結果から、前記判定期間中の前記入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布から得られるノイズの総度数と前記判定期間中の前記ランレングスの数である総度数との比から、入力信号が有効か否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする信号判定装置。
【請求項3】
入力信号を2値化する2値化手段と、
この2値化手段の出力を入力とし、判定期間中の前記入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定手段と、
このランレングス測定手段の測定結果から、前記判定期間中の前記入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布から得られるノイズの総度数と、前記判定期間中の前記ランレングスの数である総度数および前記ノイズの総度数から求めた信号の度数との比から、入力信号が有効か否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする信号判定装置。
【請求項4】
請求項3記載の信号判定装置において、
前記判定手段は、判定期間中のランレングスの度数とノイズの度数との差の絶対値を階級値毎に求め、求めた値の総和を前記信号の度数とすることを特徴とする信号判定装置。
【請求項5】
請求項3記載の信号判定装置において、
前記判定手段は、判定期間中の各階級値のランレングスの度数のうち、当該階級値のノイズの度数よりも大きい度数のみの総和を前記信号の度数とすることを特徴とする信号判定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の信号判定装置において、
前記判定手段は、前記ランレングス測定手段の測定結果から得られる階級値1の度数から前記ノイズの度数分布を求めることを特徴とする信号判定装置。
【請求項7】
入力信号を2値化する2値化ステップと、
この2値化ステップの出力を入力とし、判定期間中の前記入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定ステップと、
このランレングス測定ステップの測定結果から、前記判定期間中の前記入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布と前記ランレングス測定ステップの測定結果から得られるランレングスの分布とを比較することにより、入力信号が有効か否かを判定する判定ステップとを備えることを特徴とする信号判定方法。
【請求項8】
入力信号を2値化する2値化ステップと、
この2値化ステップの出力を入力とし、判定期間中の前記入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定ステップと、
このランレングス測定ステップの測定結果から、前記判定期間中の前記入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布から得られるノイズの総度数と前記判定期間中の前記ランレングスの数である総度数との比から、入力信号が有効か否かを判定する判定ステップとを備えることを特徴とする信号判定方法。
【請求項9】
入力信号を2値化する2値化ステップと、
この2値化ステップの出力を入力とし、判定期間中の前記入力信号の2値化結果である符合が変化する度に符号のランレングスを測定するランレングス測定ステップと、
このランレングス測定ステップの測定結果から、前記判定期間中の前記入力信号に含まれるノイズの度数分布を幾何分布と仮定した分布を求め、求めた分布から得られるノイズの総度数と、前記判定期間中の前記ランレングスの数である総度数および前記ノイズの総度数から求めた信号の度数との比から、入力信号が有効か否かを判定する判定ステップとを備えることを特徴とする信号判定方法。
【請求項10】
請求項9記載の信号判定方法において、
前記判定ステップは、判定期間中のランレングスの度数とノイズの度数との差の絶対値を階級値毎に求め、求めた値の総和を前記信号の度数とすることを特徴とする信号判定方法。
【請求項11】
請求項9記載の信号判定方法において、
前記判定ステップは、判定期間中の各階級値のランレングスの度数のうち、当該階級値のノイズの度数よりも大きい度数のみの総和を前記信号の度数とすることを特徴とする信号判定方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか1項に記載の信号判定方法において、
前記判定ステップは、前記ランレングス測定ステップの測定結果から得られる階級値1の度数から前記ノイズの度数分布を求めることを特徴とする信号判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−18026(P2012−18026A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154550(P2010−154550)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】