説明

倣い機構

【課題】簡易な構成でステージを基台から浮上させてステージの倣い動作が確実に実行されるようにすると共に、ステージに加えることのできる加圧力の増大を図ることができる技術を提供する。
【解決手段】複数のローラー230を付勢手段250により収容穴223から突出させるという簡易な構成で、ステージ210を基台220から浮上させることができ、第1凸曲面部211、第1凹曲面部221間に摩擦抵抗が生じるおそれがないため倣い動作が確実に実行される。また、ステージ210に高加圧力が加えられたとしても、各ローラー230が収容穴223に収容されて、基台220がステージ210の第1凸曲面部211を下方から第1凹曲面部221により面で支持することで確実にステージ210を支持することができ、ステージ210に加えることのできる加圧力の増大を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ上面の傾きを調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステージ上面の傾きを調整することで、ステージ上面に載置された基板の回路パターン面と、これに接合されるチップなどの電子部品の接合面との平行度を高精度に調整する技術が知られている。例えば、特許文献1には、下面側に凸曲面部を有するステージと、上面側にステージの凸曲面部と摺接可能に設けられた凹曲面部を有するステージの載置用の基台とを備え、基台にステージが載置された状態でステージの凸曲面部と基台の凹曲面部との間に圧縮空気が吐出されることで両曲面部間にわずかな隙間が生じ、これにより、ステージが基台の凹曲面部に沿って自在に揺動する倣い機構が記載されている。
【0003】
すなわち、ステージの凸曲面部と基台の凹曲面部との間に圧縮空気の吐出による空気層が形成されることにより、両曲面部間に生じる摩擦力が抑制されるため、ステージの凸曲面部が基台の凹曲面部に沿って自在に動くことができる。したがって、ステージ上面に載置された基板と、この基板に接合されるチップ等とが当接したときに、ステージの凸曲面部が基台の凹曲面部に沿って動くことによるステージの受動的な倣い動作によって、ステージ上の基板の傾きを調整して、基板とチップとの平行度を一致させることができる。
【0004】
また、ステージの倣い動作によって基板とチップとの平行度が一致すれば、ステージの凸曲面部および基台の凹曲面部間への圧縮空気の吐出を停止することにより、両曲面部が接触し、両曲面部の接触面に生じる静止摩擦力によりステージが基台に固定されてステージの傾きが維持される。このとき、ステージの傾きが維持された状態で、ステージに高加圧力が加えられたとしても、基台がステージの凸曲面部を下方から凹曲面部により面で支持するため、ステージは基台により確実に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−230277号公報(段落0025,0026、図4など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の倣い機構では、圧縮空気を利用してステージの凸曲面部と基台の凹曲面部との間に生じる摩擦力を抑制しているが、両曲面部の接触面の全面にわたって圧縮空気を行渡らせるためには、両曲面部の表面に空気が残留しやすいように、開気孔を多く含む非常に高価な焼結金属で両曲面部を形成しなければならない。また、圧縮空気を両曲面部の接触面に供給するために、両曲面部に複雑な加工を施さなければならずコストアップの原因となっている。
【0007】
また、倣い機構における倣い動作は、例えば、倣いの基準面が、いわゆる片当たり状態でステージの上面に押付けられたときに発生するモーメントによりステージが受動的に揺動することで実行される。そして、ステージが受動的に揺動することにより、ステージの上面および倣いの基準面の傾きが一致して、ステージの上面と倣いの基準面との片当たり状態が解消されれば倣い動作は完了する。
【0008】
このとき、従来の倣い機構では、ステージの凸曲面部と基台の凹曲面部との間に空気を行渡らせるために高圧の圧縮空気を供給しなければならないが、ステージの上面に押付けられる倣いの基準面の大きさが小さければ、発生するモーメントも小さくなるため、高圧の圧縮空気がステージに作用してステージの倣い動作が適切に実行されないおそれがある。
【0009】
また、従来の倣い機構では、ステージの傾きが倣いの基準面の傾きと同じ傾きに維持された状態でステージの上面が加圧されたときに、ステージに対する加圧力の中心が、ステージの上方からみた凸曲面部の重心からずれている場合には、ステージを揺動させるモーメントが生じてステージの傾きが変動するおそれがあるため、ステージに対する加圧力の中心を前記凸曲面部の重心と一致させる必要があり、倣い機構の使い勝手が悪く改善が求められていた。
【0010】
この発明は上記した課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でステージを基台から浮上させてステージの倣い動作が確実に実行されるようにすると共に、ステージに加えることのできる加圧力の増大を図ることができる技術を提供することを第1の目的とする。
【0011】
また、ステージを基台に強固に固定することで倣い機構の使い勝手の改善を図ることができる技術を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した第1の目的を達成するために、本発明にかかる倣い機構は、下面側に第1凸曲面部を有するステージと、前記第1凸曲面部を複数箇所において摺接可能に支持する支持手段とを備え、前記ステージの上面に倣いの基準面が押付けられたときに、前記第1凸曲面部が前記支持手段に摺接しつつ前記ステージが揺動することで、前記ステージの上面および前記倣いの基準面の傾きを一致させる倣い動作が実行される倣い機構において、上面側に前記第1凸曲面部と摺接可能に設けられた第1凹曲面部と、前記第1凹曲面部に複数形成された収容穴とを有し、前記各収容穴それぞれに複数の前記支持手段が収容された前記ステージの載置用の基台と、前記各収容穴に設けられて前記各支持手段それぞれを付勢する複数の付勢手段とをさら備え、前記倣い動作は、前記各付勢手段により前記各支持手段それぞれを付勢することにより、前記第1凸曲面部と前記第1凹曲面部とが離間した状態で実行され、前記ステージの上面が前記各付勢手段の付勢力よりも大きな力で押圧されたときに、前記各付勢手段の付勢力に抗した前記第1凸曲面部の押圧により、前記各支持手段それぞれが前記各収容穴に収容されて前記第1凸曲面部が前記第1凹曲面部に当接することを特徴としている(請求項1)。
【0013】
また、前記各支持手段は、前記収納穴それぞれに出没自在に設けられて前記第1凸曲面部に摺接可能に当接するローラーを有し、前記第1凸曲面部および前記第1凹曲面部は、それぞれ円弧面状に形成されており、前記倣い動作は、前記各付勢手段により前記各収容穴から突出した前記各ローラーが前記第1凸曲面部に当接した状態で、前記ステージが前記円弧面の円弧方向に揺動することにより実行されるとよい(請求項2)。
【0014】
また、前記各付勢手段それぞれは、相反発する一対の磁石であり、前記各付勢手段それぞれの一方の磁石に前記支持手段が取付けられていてもよい(請求項3)。
【0015】
また、上記した第1の目的を達成するために、本発明にかかる倣い機構は、下面側に第1凸曲面部を有するステージと、前記第1凸曲面部を複数箇所において摺接可能に支持する支持手段とを備え、前記ステージの上面に倣いの基準面が押付けられたときに、前記第1凸曲面部が前記支持手段に摺接しつつ前記ステージが揺動することで、前記ステージの上面および前記倣いの基準面の傾きを一致させる倣い動作が実行される倣い機構において、上面側に前記第1凸曲面部と摺接可能に設けられた第1凹曲面部と、前記第1凹曲面部に埋設された複数個の第1磁石とを有する前記ステージの載置用の基台と、前記各第1磁石それぞれに同一磁極が対向して複数個の磁石対をなすように第1凸曲面部に埋設された複数個の第2磁石とをさら備え、前記倣い動作は、前記各磁石対の第1、第2磁石の反発力により、前記第1凸曲面部が浮上して前記第1凹曲面部から離間した状態で実行され、
前記ステージの上面が前記各磁石対の第1、第2磁石の反発力よりも大きな力で押圧されたときに、前記各磁石対の第1、第2磁石の反発力に抗した前記第1凸曲面部の押圧により、前記第1凸曲面部が前記第1凹曲面部に当接することを特徴としている(請求項4)。
【0016】
また、上記した第2の目的を達成するため、本発明にかかる倣い機構は、前記基台の下面側に設けられた第2凸曲面部と、前記第1凹曲面部に形成された開口と前記第2凸曲面部に形成された開口とを連通して前記基台に形成された貫通孔と、一端が前記ステージの前記第1凸曲面部に連結され前記貫通孔に挿通されたボルト部材と、前記貫通孔を経て前記基台の下方に導出された前記ボルト部材の他端部に螺合されるナット部材と、上面側に前記第2凸曲面部と摺接可能に設けられた第2凹曲面部を有し、第2凸曲面部と前記ナット部材との間に介挿される介挿部材とを有し、前記ナット部材の締め付け時に、前記第1凸曲面部が前記第1凹曲面部に当接し前記第2凸曲面部が前記第2凹曲面部に当接することで載置状態の前記ステージを前記基台に固定する固定手段をさらに備えることを特徴としている(請求項5)。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、基台の上面側に設けられた第1凹曲面部に複数形成された収容穴に収容された複数の支持手段それぞれを付勢手段により付勢するという簡易な構成で、下面側に設けられた第1凸曲面部が支持手段により複数箇所において摺接可能に支持されたステージを基台から浮上させることができ、ステージの上面に倣いの基準面が押付けられたときに、ステージの下面側の第1凸曲面部と基台の上面側の第1凹曲面部とが離間した状態であるため、両曲面部間に摩擦抵抗が生じるおそれがなく、下面側の第1凸曲面部が支持手段に摺接しつつステージが揺動することで、ステージの上面および倣いの基準面の傾きを一致させる倣い動作が確実に実行される。
【0018】
また、ステージに高加圧力が加えられたとしても、ステージの上面が各付勢手段の付勢力よりも大きな力で押圧されたときは、各付勢手段の付勢力に抗したステージ下面側の第1凸曲面部の押圧により、各支持手段それぞれが収容穴に収容されて、第1凸曲面部が、該第1凸曲面部と摺接可能に設けられた基台上面側の第1凹曲面部に面で当接するため、基台がステージの第1凸曲面部を下方から第1凹曲面部により面で支持することで確実にステージを支持することができ、ステージに加えることのできる加圧力の増大を図ることができる。
【0019】
また、ステージの倣い動作時には、ステージを支持する支持手段を付勢する付勢手段の付勢力によりステージの下面側の第1凸曲面部と基台の上面側の第1凹曲面部とが離間した状態であり、従来のように、高圧の圧縮空気などをステージの第1凸曲面部と基台の第1凹曲面部との接触面に供給する必要がないため、ステージ等を焼結金属等の特殊な材質で形成する必要がなく、さらに、ステージ等に空気供給路などの特殊な加工を施す必要もないため、倣い機構の製造コストの大幅な抑制を図ることができる。また、ステージの倣い動作時に圧縮空気を使用しないため、供給された圧縮空気がステージに作用することによる外乱が発生するおそれがなく、ステージ上面の倣い動作を高精度に実行することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、各支持手段が、収容穴それぞれに出没自在に設けられて第1凸曲面部に摺接可能に当接するローラーを有し、ステージ下面側の第1凸曲面部および基台上面側の第1凹曲面部が、それぞれ円弧面状に形成されることで、各付勢手段により各収容穴から突出した各ローラーが、円弧面状に形成されたステージ下面側の第1凸曲面部に当接した状態で、ステージの下面側の第1凸曲面部が各ローラーに摺接してステージが円弧面の円弧方向に揺動することによる倣い動作を実行することができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、相反発する一対の磁石により付勢手段段が形成されて、各付勢手段それぞれの一方の磁石に支持手段が取付けられることで非接触で支持手段を付勢することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、ステージの下面側の第1凸曲面部および基台の上面側の第1凹曲面部それぞれに同一の磁極が対向するように第1、第2磁石を埋設して複数個の磁石対を形成するという簡易な構成で、各磁石対の第1、第2磁石の反発力によりステージを基台から浮上させることができ、ステージの上面に倣いの基準面が押付けられたときに、ステージの下面側の第1凸曲面部と基台の上面側の第1凹曲面部とが離間した状態であるため、両曲面部間に摩擦抵抗が生じるおそれがなく、ステージが揺動することで、ステージの上面および倣いの基準面の傾きを一致させる倣い動作が確実に実行される。
【0023】
また、ステージに高加圧力が加えられたとしても、ステージの上面が各磁石対の第1、第2磁石の反発力よりも大きな力で押圧されたときは、各磁石対の第1、第2磁石の反発力に抗して第1凸曲面部が、該第1凸曲面部と摺接可能に設けられた基台上面側の第1凹曲面部に面で当接するため、基台がステージの第1凸曲面部を下方から第1凹曲面部により面で支持することで確実にステージを支持することができ、ステージに加えることのできる加圧力の増大を図ることができる。
【0024】
また、ステージの倣い動作時には、ステージの下面側の第1凸曲面部および基台の上面側の第1凹曲面部それぞれに埋設された各磁石対の第1、第2磁石の反発力によりステージの下面側の第1凸曲面部と基台の上面側の第1凹曲面部とが離間した状態であり、従来のように、高圧の圧縮空気などをステージの第1凸曲面部と基台の第1凹曲面部との接触面に供給する必要がないため、ステージ等を焼結金属等の特殊な材質で形成する必要がなく、さらに、ステージ等に空気供給路などの特殊な加工を施す必要もないため、倣い機構の製造コストの大幅な抑制を図ることができる。また、ステージの倣い動作時に圧縮空気を使用しないため、供給された圧縮空気がステージに作用することによる外乱が発生するおそれがなく、ステージ上面の倣い動作を高精度に実行することができる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、上面側に設けられた第1凹曲面部に形成された開口と、下面側に設けられた第2凸曲面部に形成された開口とを連通して基台に形成された貫通孔に、ステージの下面側の第1凸曲面部に一端が連結されたボルト部材が挿通され、基台の下方に導出されたボルト部材の他端部にはナット部材が螺合されて、基台の下面側の第2凸曲面部とボルト部材の他端部に螺合されたナット部材との間には、上面側に基台の第2凸曲面部と摺接可能に設けられた第2凹曲面部を有する介挿部材が介挿される。
【0026】
そして、ナット部材の締め付け時に、ステージの下面側の第1凸曲面部が基台の上面側の第1凹曲面部に当接し、基台の下面側の第2凸曲面部が介挿部材の上面側の第2凹曲面部に当接することで、ステージが基台に載置された状態で固定されるため、ステージの第1凸曲面部および介挿部材の第2凹曲面部により基台が上下から強固にクランプされた状態となり、ナット部材の締め付けに伴い生じるステージ下面側の第1凸曲面部および基台上面側の第1凹曲面部間の静止摩擦力によりステージが基台に強固に固定されるので、ステージの上面が加圧されてステージを揺動させるモーメントが生じたとしても、当該モーメントの大きさが前記静止摩擦力の大きさを超えない限り、ステージの傾きが容易に変動するおそれがないため、従来のように、ステージに対する加圧力の加圧中心について考慮する必要がなく、倣い機構の使い勝手の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の倣い機構を備える接合装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】倣い機構の斜視図である。
【図3】図2とは異なる方向から見た倣い機構の分解斜視図である。
【図4】倣い機構の一部切断正面図である。
【図5】倣い機構の一部切断正面図である。
【図6】倣い機構の一部切断正面図である。
【図7】倣い機構の一部切断正面図である。
【図8】本発明の倣い機構の第2実施形態を示す一部切断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
この発明の第1実施形態について図1ないし図7を参照して説明する。図1は本発明の倣い機構200を備える接合装置100の第1実施形態を示す図である。図2は倣い機構200の斜視図である。図3は図2とは異なる方向から見た倣い機構200の分解斜視図である。図4〜図7は倣い機構200の一部切断正面図であって、それぞれ異なる状態を示す図である。
【0029】
(接合装置の構成)
図1に示す接合装置100は、チップ23や電子部品などの対象物を、基板24やウエハなどの被実装物の所定の位置に超音波振動により接合する。すなわち、GaAsなどの半導体の接合面に金属バンプ23aを有するチップ23と、金属バンプ24aを有する基板24とが超音波振動が印加されることにより接合され、チップ23が基板24の所定の位置に接合される。なお、チップ23は後述する共振器7の保持手段40の保持面に保持され、基板24は後述するステージ210の上面に載置される。
【0030】
図1に示すように、接合装置100は、接合機構27と、倣い機構200とステージテーブル12とを有する実装機構28と、位置認識部29と、搬送部30と、制御装置31とを備えている。
【0031】
接合機構27は、上下駆動機構25とヘッド部26とを備え、上下駆動機構25は上下駆動モータ1とボルト・ナット機構2とにより、共振器支持部6を上下ガイド3でガイドしながら上下動する。そして、接合機構27はフレーム34に結合され、フレーム34はヘッド部26の加圧中心の周辺を囲むように配設された4本の支柱13により架台35と連結されている。なお、支柱13およびフレーム34の一部は図示省略されている。
【0032】
共振器支持部6は、ヘッド逃がしガイド5で上下方向にガイドされ、自重をキャンセルするための自重カウンター4に牽引された状態でボルト・ナット機構2に連結されている。そして、この共振器支持部6に、共振器7を有するヘッド部26が結合されている。
【0033】
また、共振器支持部6には圧力センサ32が設けられており、圧力センサ32は、共振器7とステージ210との間に挟持されたチップ23、基板24などの接合対象物への加圧力を検出する。そして、圧力センサ32により検出された接合対象物に対する加圧力が制御装置31にフィードバックされ、当該フィードバック値に基づいて上下駆動機構25が制御されることで、両接合対象物への加圧力が制御される。また、共振器支持部6は、リニアセンサなどにより形成される共振器部高さ検出手段36を備えており、これによりヘッド部26の高さが検出される。
【0034】
共振器支持部6に結合されたヘッド部26は、共振器7と、振動子8と、チップ23を吸着保持する保持手段40と、基部20と第1クランプ手段21および第2クランプ手段22とを有する共振器支持手段44とを備えている。
【0035】
共振器7は、振動子8が発生する超音波振動に共振するものであって、共振器7のほぼ中央の位置と、両端位置とが最大振幅点となるように、共振周波数の一波長の長さで形成されている。このように構成すれば、最大振幅点から1/4波長離れた位置それぞれが最小振幅点(ノーダルポイント)に相当する。また、共振器7は、断面形状が円形状である円柱状に形成されている。
【0036】
振動子8は、共振器7の中心軸と同軸に共振器7の一端に連結されている。また、振動子8は、制御装置31により制御されて超音波振動を発生し、これにより共振器7がその中心軸の方向に振動する。
【0037】
保持手段40は、最大振幅点である共振器7のほぼ中央の位置における外周下面に、熱硬化型樹脂などの接着剤により取着されて、チップ23や電子部品などの接合対象物を保持面に保持する。また、保持手段40は、チップ23や電子部品などの接合対象物を保持面に吸着保持できるように、真空吸着機構(図示省略)を備えている。また、チップ23などの対象物を保持する構成としては真空吸着機構に限られるものではなく、静電吸着機構、機械式のチャック機構など、対象物を保持できる機構であればどのような構成であってもよい。また、接合対象物を保持手段40に直接貼付けることにより接合対象物が保持手段40に保持されるようにしてもよい。
【0038】
また、保持手段40を、超硬タングステンカーバイト、セラミック、ダイヤモンドなど、金属以外の部材により形成してもよく、このように構成した保持手段40を、エポキシ系の接着剤や、Ni、Cu、Agなどの金属ろうなどによって共振器7に接着してもよい。
【0039】
また、共振器7の最小振幅点の外周には、それぞれ凹状の被支持部が形成されており、凹状に形成された被支持部がそれぞれ共振器支持手段44が有する第1クランプ手段21および第2クランプ手段にクランプされることで、共振器7が共振器支持手段44により支持される。
【0040】
また、共振器支持手段44の基部20は共振器支持部6に固定されており、共振器支持部6が上下駆動機構25により上下に駆動されることにより、共振器支持手段44に支持された共振器7が上下動し、チップ23および基板24などの接合対象物が加圧される。
【0041】
なお、保持手段40を、上記した材質のうち、比較的硬度の高い、ガラス、超硬タングステンカーバイト、セラミックやダイヤモンドなどで形成すれば、共振器7を音響特性の優れた材質、例えばチタン合金により形成するとよい。また、保持手段40を、硬度の高い材質で形成すれば、共振器7を安価な材質、例えばAlにより形成してもよい。
【0042】
実装機構28は、被実装物としての基板24が載置されるステージ210を有する倣い機構200と、倣い機構200(ステージ210)を上下方向にほぼ直交する水平面内で移動するステージテーブル12とを備えている。
【0043】
倣い機構200が有するステージ210は、基板24をステージ210の上面に吸着保持するため真空吸着機構(図示省略)を備えている。また、基板24やウエハなどの被実装物を保持する構成としては真空吸着機構に限られるものではなく、静電吸着機構や、機械式のチャック機構など、被実装物を保持できる機構であればどのような構成であってもよい。また、被実象物をステージ210上に載置するだけでもよい。なお、倣い機構200の構成および動作については後で詳細に説明する。
【0044】
ステージテーブル12は、平行・回転移動自在な移動軸を備え、倣い機構200(ステージ210)をヘッド部26に対して相対的に移動することで、保持手段40に保持されたチップ23に対する基板24の相対的な位置を調整する。なお、この実施形態では、後述する上下マーク認識手段14により読取られたチップ23および基板24の金属バンプ23a,24a(アライメントマーク)の相対的な位置関係に基づいてステージテーブル12が制御装置31により制御されて、チップ23と基板24との相対的な位置調整が行われる。
【0045】
位置認識部29は、対向配置されたチップ23と基板24の間に挿入されて、チップ23および基板24にそれぞれ設けられた位置認識用のアライメントマーク(金属バンプ23a,24a)を光学的に読取る上下マーク認識手段14と、チップ23、基板24および共振器7の振幅を検出する振幅検出器33と、上下マーク認識手段認識手段14および振幅検出器33を水平面内および上下方向に移動させる認識手段移動テーブル15とを備えている。なお、上下マーク認識手段14は、ミラーやプリズムで構成される、周知の2視野光学系レンズと、2視野光学系レンズを介してその上下に隔離して配置されたチップ23および基板24を撮像するCCDカメラとを備えている(図示省略)。
【0046】
搬送部30は、チップ23を搬送するチップ供給装置16およびチップトレイ17と、基板24を搬送する基板搬送装置18および基板搬送コンベア19とを備えている。
【0047】
制御装置31は、ヘッド部26を介してチップ23および基板24に加えられる加圧力や、振動子8へ印加される電圧および電流を調整してチップ23および基板24に加えられる超音波振動エネルギーの大きさなどを制御する。また、制御装置31は、共振器部高さ検出手段36によるヘッド部26の高さ位置の検出信号に基づいて上下駆動機構25を制御し、ヘッド部26の図1中の矢印Z方向の高さを調節する。また、制御装置31は、接合装置100全体の制御を行うための操作パネル(図示省略)を備えている。
【0048】
(接合動作)
次に、接合装置100における、チップ23を基板24の所定の位置に超音波振動により接合する接合動作の一例について説明する。
【0049】
まず、対象物としてのチップ23および被実装物としての基板24の供給が行われる。チップ23は、チップ供給装置16によりチップトレイ17から共振器7に取着された保持手段40に供給されて吸着保持される。また、基板24は、基板搬送装置18により基板搬送コンベア19からステージ210に供給されて吸着保持される。
【0050】
次に、それぞれの接合面が対向するように保持されたチップ23と基板24との間に上下マーク認識手段14が認識手段移動テーブル15により挿入されて、対向保持されたチップ23および基板24にそれぞれ設けられたアライメントマーク(金属バンプ23a,24a)の位置が上下マーク認識手段14により検出される。そして、上下マーク認識手段14により読取られたチップ23および基板24のアライメントマークの相対的な位置関係に基づいて、チップ23の位置を基準としてステージテーブル12が平行・回転移動されて基板24の位置が調整されて、チップ23と基板24との相対的な位置調整が行われる。
【0051】
続いて、チップ23および基板24の相対的な位置が整合された状態(金属バンプ23a,24aの位置が合わされた状態)で、認識手段移動テーブル15により上下マーク認識手段14が退避されると共に、上下駆動機構25によりヘッド部26の下降が開始され、チップ23と基板24とが接近される。そして、チップ23の金属バンプ23aと基板24の金属バンプ24aとが接触することによる圧力センサ32からの検出信号に基づき、チップ23と基板24とが共振器7およびステージ210との間に挟持されたことが検出されると、所定の加圧力がチップ23および基板24に加えられると共に超音波振動が印加されて、金属バンプ23a,24aどうしが接合される。
【0052】
このとき、制御装置31により、振動子8に印加される電流値および電圧値から導出される超音波振動エネルギー、共振器7の共振振幅、チップ23および基板24に対する加圧力などの監視と制御が行われる。なお、接合処理を終了するタイミングは、目的とされる接合面積で接合されるために必要な加圧力、超音波振動エネルギーおよび接合時間を予め求めておき、予め求めたそれぞれの値に達したときに接合処理を終了すればよい。
【0053】
この実施形態では、一例として、振動子8の発信周波数は40kHzに設定され、振動子8への印加電圧は0V〜10Vの範囲内に設定されている。また、この実施形態では、一例として、チップ23と基板24との間の相対振動振幅の大きさが0.1μm〜0.5μm程度の振幅となるように構成されているが、相対振動振幅の大きさは、対象物および被実装物の種類(材質、機能など)や接触面積などに応じて適宜変更すればよい。
【0054】
そして、チップ23および基板24の接合が終了して接合処理が完了すると共振器7によるチップ23の吸着が解除され、ヘッド部26が上方へ復帰移動される。最後に、チップ23が実装された状態で、ステージ210上に保持された基板24が基板搬送装置18により基板搬送コンベア19へ排出されて一連の接合処理が終了する。なお、基板24へ接合されるチップ23の数は1つに限られず、複数のチップ23を基板24へ連続的に接合してもよい。
【0055】
(倣い機構の構成)
次に、主に図2〜図4を参照して倣い機構200の構成について説明する。図3に示すように、倣い機構200は、下面側に第1凸曲面部211を有するステージ210と、上面側に第1凸曲面部211と摺接可能に設けられた第1凹曲面部221を有するステージ210の載置用の基台220と、第1凸曲面部211に摺接可能に当接して第1凸曲面部211を複数箇所において支持するローラー230(支持手段)と、基台220が載置されてボルト241により固定される支持台240とを備え、支持台240がボルト242によりステージテーブル12に固定されることで倣い機構200はステージテーブル12に取り付けられる。
【0056】
図4に示すように、ステージ210の下面側の第1凸曲面部211および基台220の上面側の第1凹曲面部221は、正面視における断面形状が円弧状となるようにそれぞれ円弧面状に形成されている。また、第1凸曲面部211と第1凹曲面部221とは、円弧面の円弧方向に摺接できるように、円弧の曲率がほぼ同一に形成されている。また、ステージ210の第1凸曲面部211の所定位置にはガイド部材212が取着され、基台220の第1凹曲面部221のガイド部材212に対応する位置にはガイド孔222が形成されており、ステージ210は、ガイド部材212がガイド孔222に挿通された状態で基台220に載置される。
【0057】
また、ガイド孔222は、ガイド部材212の直径とほぼ同一の幅で第1凹曲面部221の円弧方向に長軸に形成されており、ガイド部材212の円弧方向以外への移動を規制する。したがって、ガイド部材212をガイド孔222に挿通してステージ210が基台220に載置されることで、ステージ210の円弧方向にほぼ直交する方向への移動、すなわち、ステージ210の基台220からのずれ落ちが防止される。
【0058】
また、基台220の第1凹曲面部221には複数の収容穴223が形成されており、各収容穴223には、ローラー230と、ローラー230を収容穴223から突出する方向に付勢する例えばばねにより形成された付勢手段250とが配設される。ローラー230は、回転軸231の両端に2個のローラーが連結された状態で、ローラー230の回転方向が、第1凸曲面部211および第1凹曲面部221の摺接方向(円弧方向)と一致するように、各収容穴223それぞれに出没自在に収容される。
【0059】
なお、付勢手段250に用いるばねは、コイルばね、板ばね、その他のばねであればよく、ばね以外に弾性を有するゴム材などを付勢手段250に使用してもよい。また、エアーシリンダ、油圧シリンダ、エアー袋などを付勢手段250に使用してもよい。また、付勢手段250として、相反発するように同一磁極が対向配置された一対の磁石を使用し、磁石の反発力によりローラー230を付勢してもよい。
【0060】
また、付勢手段250は、ローラー230の回転軸231を上方に付勢するように、収容穴223の回転軸231の下方に配置される。なお、付勢手段250によるローラー230の収容穴223からの過剰な飛び出しを規制するために、押さえ板232が、収容穴223の所定位置に形成された凹部223aに、ローラー230の回転軸231の上方に配置されるように取り付けられている。
【0061】
また、基台220には、下面側に第2凸曲面部260が設けられ、第1凹曲面部221に形成された開口と第2凸曲面部に形成された開口とを連通する貫通孔261が形成されており、支持台240の貫通孔261に対応する位置には貫通孔241が形成されている。また、ステージ210の第1凸曲面部211のほぼ中央の位置には、ボルト部材262の一端が固定ボルト262aにより固定されており、第1凸曲面部211に連結されたボルト部材262が、基台220の貫通孔261および支持台240の貫通孔241に挿通されてステージ210が基台220に載置される。
【0062】
また、基台220の貫通孔261を経て基台220の下方に導出されたボルト部材262の他端部にはナット部材263が螺合されており、ボルト部材262の、基台220の第2凸曲面部260とナット部材263との間には介挿部材264が介挿されている。また、介挿部材264の上面側には第2凸曲面部260と摺接可能に第2凹曲面部265が設けられており、図4に示すように、基台220の下面側の第2凸曲面部260および介挿部材264の上面側の第2凹曲面部265は、正面視における断面形状が円弧状となるようにそれぞれ円弧面状に形成されている。また、第2凸曲面部260と第2凹曲面部265とは、円弧面の円弧方向に摺接できるように、円弧の曲率が、第1凸曲面部211および第1凹曲面部221の円弧の曲率とほぼ同一に形成されている。
【0063】
このように構成すると、図4に示すように、ナット部材263の締め付け時に、ステージ210の下面側の第1凸曲面部211が基台220の上面側の第1凹曲面部221に当接し、基台220の下面側の第2凸曲面部260が介挿部材264の上面側の第2凹曲面部265に当接することで、基台200に載置された状態でステージ210が基台220に固定される。以上のように、第2凸曲面部260、貫通孔261、ボルト部材262、ナット部材263、介挿部材264、第2凹曲面部265が、本発明の「固定手段」として機能している。
【0064】
一方、図5に示すように、ナット部材263が緩められると、付勢手段250により各ローラー230が各収容穴223から突出し、ローラー230が第1凸曲面部211に当接することにより支持されたステージ210が基台220から浮上して、ステージ210の下面側の第1凸曲面部211と基台220の上面側の第1凹曲面部221とが離間する。この状態で、ステージ210の上面に倣いの基準面が押付けられれば、図6に示すように、ステージ210の第1凸曲面部211がローラー230に摺接しつつステージ210が第1凸曲面部211(円弧面)の円弧方向に揺動することで、ステージ210の上面および倣いの基準面を一致させる倣い動作が実行される。
【0065】
また、ステージ210の上面が各付勢手段250の付勢力よりも大きな力で押圧されたときは、各付勢手段250の付勢力に抗したステージ210の下面側の第1凸曲面部211の押圧により、各ローラー230が各収容穴223に収容されて第1凸曲面部211が基台200の上面側の第1凹曲面部221に当接する。
【0066】
(倣い動作の一例)
次に、主に図4〜図7を参照して倣い機構200による倣い動作の一例について説明する。この実施形態では、接合装置100による接合動作が実行される前に、共振器7に取着された保持手段40の保持面の傾き(倣いの基準面の傾き)と、ステージ210の上面の傾きとを一致させるために倣い機構200による倣い動作が実行される。
【0067】
まず、ナット部材263が緩められて、図5に示すように、付勢手段250の付勢力によりステージ210が基台220から持ち上げられてローラー230に支持された状態となる。この状態で、接合装置100のヘッド部26が下降され、保持手段40の保持面がステージ210の上面に当接すると、図6に示すように、ステージ210の下面側の第1凸曲面部211がローラー230に摺接しつつ、保持手段40の保持面の傾きとステージ210の上面の傾きとが一致するまでステージ210が揺動する。
【0068】
続いて、保持手段40の保持面の傾きとステージ210の上面の傾きとが一致した後は、付勢手段250の付勢力に抗したステージ210の下面側の第1凸曲面部211の押圧により、各ローラー230が各収容穴223に収容されて第1凸曲面部211が基台200の上面側の第1凹曲面部221に当接するまでヘッド部26を下降する。そして、ステージ210の下面側の第1凸曲面部211が基台200の上面側の第1凹曲面部221に当接すれば、ヘッド部26の下降が停止され、図7に示すように、ナット部材263が締め付けられて、ステージ210の上面の傾きが倣いの基準面の傾きに一致するように調整された状態で、ステージ210が基台220に固定される。最後に、ヘッド部26が復帰移動されて倣い動作が完了する。
【0069】
以上のように、この実施形態によれば、基台220の上面側に設けられた第1凹曲面部221に複数形成された収容穴223に出没自在に収容された複数のローラー230それぞれを、当該収容穴223から突出する方向に付勢する複数の付勢手段250により各収容穴223から突出させるという簡易な構成で、下面側に設けられた第1凸曲面部211がローラーにより複数箇所において摺接可能に支持されたステージ210を基台220から浮上させることができ、ステージ210の上面に倣いの基準面が押付けられたときに、ステージ210の下面側の第1凸曲面部211と基台220の上面側の第1凹曲面部221とが離間した状態であるため、両曲面部211,221間に摩擦抵抗が生じるおそれがなく、下面側の第1凸曲面部211がローラーに摺接しつつステージ210が揺動することで、ステージ210の上面および倣いの基準面の傾きを一致させる倣い動作が確実に実行される。
【0070】
また、ステージ210に高加圧力が加えられたとしても、ステージ210の上面が各付勢手段250の付勢力よりも大きな力で押圧されたときは、各付勢手段250の付勢力に抗したステージ210の下面側の第1凸曲面部211の押圧により、各ローラー230それぞれが収容穴223に収容されて、第1凸曲面部211が、該第1凸曲面部211と摺接可能に設けられた基台220の上面側の第1凹曲面部221に面で当接するため、基台220がステージ210の第1凸曲面部211を下方から第1凹曲面部221により面で支持することで確実にステージ210を支持することができ、ステージ210に加えることのできる加圧力の増大を図ることができる。
【0071】
また、上面側に設けられた第1凹曲面部221に形成された開口と、下面側に設けられた第2凸曲面部260に形成された開口とを連通して基台220に形成された貫通孔261に、ステージ210の下面側の第1凸曲面部211に一端が連結されたボルト部材262が挿通され、基台220の下方に導出されたボルト部材262の他端部にはナット部材263が螺合されて、基台220の下面側の第2凸曲面部260とボルト部材262の他端部に螺合されたナット部材263との間には、上面側に基台220の第2凸曲面部260と摺接可能に設けられた第2凹曲面部265を有する介挿部材264が介挿される。
【0072】
そして、ナット部材264の締め付け時に、ステージ210の下面側の第1凸曲面部211が基台220の上面側の第1凹曲面部221に当接し、基台210の下面側の第2凸曲面部260が介挿部材264の上面側の第2凹曲面部265に当接することで、ステージ210が基台220に載置された状態で固定されるため、ステージ210の第1凸曲面部211および介挿部材264の第2凹曲面部265により基台220が上下から強固にクランプされた状態となり、ナット部材263の締め付けに伴い生じるステージ210下面側の第1凸曲面部211および基台220上面側の第1凹曲面部221間の静止摩擦力によりステージ210が基台220に強固に固定されるので、ステージ210の上面が加圧されてステージ210を揺動させるモーメントが生じたとしても、当該モーメントの大きさが前記静止摩擦力の大きさを超えない限り、ステージ210の傾きが容易に変動するおそれがないため、従来のように、ステージ210に対する加圧力の加圧中心について考慮する必要がなく、倣い機構200の使い勝手の改善を図ることができる。
【0073】
また、ステージ210下面側の第1凸曲面部211および基台220上面側の第1凹曲面部221が、それぞれ円弧面状に形成されることで、各付勢手段250により各収容穴223から突出した各ローラー230が、円弧面状に形成されたステージ210下面側の第1凸曲面部211に摺接可能に当接した状態で、ステージ210の下面側の第1凸曲面部211が各ローラー230に摺接してステージ210が円弧面の円弧方向に揺動することによる倣い動作を容易に実行することができる。
【0074】
<第2実施形態>
この発明の第2実施形態について図8を参照して説明する。図8は本発明の倣い機構の第2実施形態を示す一部切断正面図である。この実施形態が上記した第1実施形態と異なる点は、図8に示すように、ローラー230および付勢手段250に換えて、複数の磁石対300を成すように、複数の第1磁石310が第1凹曲面部221に埋設され、各第1磁石310それぞれに同一磁極を対向させて複数の第2磁石320が第1凸曲面部211に埋設されている点である。その他の構成および動作は上記した第1実施形態と同様であるため、同一符号を付すことにより、その構成および動作の説明は省略する。
【0075】
このように構成すると、ナット部材263を緩めることで、各磁石対300の第1、第2磁石310,320の反発力により、ステージ210が基台220から浮上する。そして、第1凸曲面部211が第1凹曲面部221から離間した状態で、第1凸曲面部211が第1磁石310に擬似的に摺接しつつステージ210が揺動することで、上記した倣い動作が実行される。
【0076】
したがって、ステージ210の下面側の第1凸曲面部211および基台220の上面側の第1凹曲面部221それぞれに同一の磁極が対向するように第1、第2磁石310,320を埋設して複数個の磁石対300を形成するという簡易な構成で、各磁石対300の第1、第2磁石310,320の反発力によりステージ210を基台から浮上させることができ、ステージ210の上面に倣いの基準面が押付けられたときに、ステージ210の下面側の第1凸曲面部211と基台220の上面側の第1凹曲面部221とが離間した状態であるため、第1凸曲面部211および第1凹曲面部221間に摩擦抵抗が生じるおそれがなく、ステージ210が揺動することで、ステージ210の上面および倣いの基準面の傾きを一致させる倣い動作が確実に実行される。
【0077】
また、ステージ210の上面が各磁石対300の第1、第2磁石310,320の反発力よりも大きな力で押圧されたときは、各磁石対300の第1、第2磁石310,320の反発力に抗した第1凸曲面部211の押圧により、第1凸曲面部211が基台220の上面側の第1凹曲面部221に当接する。
【0078】
したがって、ステージ210に高加圧力が加えられたとしても、ステージ210の上面が各磁石対300の第1、第2磁石310,320の反発力よりも大きな力で押圧されたときは、各磁石対300の第1、第2磁石310,320の反発力に抗して第1凸曲面部211が、該第1凸曲面部211と摺接可能に設けられた基台220上面側の第1凹曲面部221に面で当接するため、基台220がステージ210の第1凸曲面部211を下方から第1凹曲面部221により面で支持することで確実にステージ210を支持することができ、ステージ210に加えることのできる加圧力の増大を図ることができる。
【0079】
また、ステージ210の両側にはフランジ部が形成されており、基台220の両側の上面には、一部が第1凹曲面部221の周縁部分に突出してステージ210のフランジ部の上方に配置されるように規制板400がボルトなどにより固定されて配設されている。したがって、第1凹曲面部221に突出した規制板400の一部にステージ210のフランジ部が下方から当接することにより、ステージ210の基台220からの過剰な浮き上がりが防止される。
【0080】
以上のように、この実施形態では、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、磁石対300が本発明の「支持手段」として機能している。
【0081】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば、第1凸曲面部211および第1凹曲面部221を曲率がほぼ同じ球面により形成し、第2凸曲面部260および第2凹曲面部265を曲率がほぼ同じ球面により形成することで、ステージ210が四方のどの方向にも揺動することができるようにしてもよい。この場合、第1凸曲面部211および第1凹曲面部221により形成される中心角と、第2凸曲面部260および第2凹曲面部265により形成される中心角とを一致させるとよい。
【0082】
また、支持手段は上記したローラー230に限られるものではなく、全方向に回転可能に形成されたボールベアリングなど、ステージ210の第1凸曲面部211に滑らかに摺接することができる構成であれば、どのように支持手段を構成してもよい。
【0083】
また、上記した倣い機構200を、ステージ210の揺動方向がほぼ直交するように2個組合わせて使用してもよい。また、倣い機構200の天地を入換えて使用してももちろんよい。
【0084】
また、上記した実施形態では、ステージ10側が水平方向の位置調整機能、ヘッド部26側が上下駆動機構を有するように構成したが、水平方向の位置調整機能、上下駆動機構はステージ10側、ヘッド部26側にどのように組み合わせてもよく、また、重複するように構成してもよい。
【0085】
さらに、上記した実施形態では、ヘッド部26およびステージ10を上下方向(図1に示す矢印Z方向)に配置し、対象物であるチップ23および被実装物である基板24を上下方向で重ね合わせて接合する構成としたが、ヘッド部26およびステージ10の配置方向としてはこれに限定されず、上下方向にほぼ直交する左右方向に配置することにより、両対象物が左右方向で重ね合わされて接合される構成でもよい。
【符号の説明】
【0086】
200…倣い機構
210…ステージ
211…第1凸曲面部
220…基台
221…第1凹曲面部
223…収容穴
230…ローラー(支持手段)
250…付勢手段
260…第2凸曲面部
261…貫通孔
262…ボルト部材
263…ナット部材
264…介挿部材
265…第2凹曲面部
300…磁石対(支持手段)
310…第1磁石
320…第2磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面側に第1凸曲面部を有するステージと、
前記第1凸曲面部を複数箇所において摺接可能に支持する支持手段とを備え、
前記ステージの上面に倣いの基準面が押付けられたときに、前記第1凸曲面部が前記支持手段に摺接しつつ前記ステージが揺動することで、前記ステージの上面および前記倣いの基準面の傾きを一致させる倣い動作が実行される倣い機構において、
上面側に前記第1凸曲面部と摺接可能に設けられた第1凹曲面部と、前記第1凹曲面部に複数形成された収容穴とを有し、前記各収容穴それぞれに複数の前記支持手段が収容された前記ステージの載置用の基台と、
前記各収容穴に設けられて前記各支持手段それぞれを付勢する複数の付勢手段とをさら備え、
前記倣い動作は、前記各付勢手段により前記各支持手段それぞれを付勢することにより、前記第1凸曲面部と前記第1凹曲面部とが離間した状態で実行され、
前記ステージの上面が前記各付勢手段の付勢力よりも大きな力で押圧されたときに、前記各付勢手段の付勢力に抗した前記第1凸曲面部の押圧により、前記各支持手段それぞれが前記各収容穴に収容されて前記第1凸曲面部が前記第1凹曲面部に当接する
ことを特徴とする倣い機構。
【請求項2】
前記各支持手段は、前記収納穴それぞれに出没自在に設けられて前記第1凸曲面部に摺接可能に当接するローラーを有し、
前記第1凸曲面部および前記第1凹曲面部は、それぞれ円弧面状に形成されており、
前記倣い動作は、前記各付勢手段により前記各収容穴から突出した前記各ローラーが前記第1凸曲面部に当接した状態で、前記ステージが前記円弧面の円弧方向に揺動することにより実行されることを特徴とする請求項1に記載の倣い機構。
【請求項3】
前記各付勢手段それぞれは、相反発する一対の磁石であり、前記各付勢手段それぞれの一方の磁石に前記支持手段が取付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の倣い機構。
【請求項4】
下面側に第1凸曲面部を有するステージと、
前記第1凸曲面部を複数箇所において摺接可能に支持する支持手段とを備え、
前記ステージの上面に倣いの基準面が押付けられたときに、前記第1凸曲面部が前記支持手段に摺接しつつ前記ステージが揺動することで、前記ステージの上面および前記倣いの基準面の傾きを一致させる倣い動作が実行される倣い機構において、
上面側に前記第1凸曲面部と摺接可能に設けられた第1凹曲面部と、前記第1凹曲面部に埋設された複数個の第1磁石とを有する前記ステージの載置用の基台と、
前記各第1磁石それぞれに同一磁極が対向して複数個の磁石対をなすように第1凸曲面部に埋設された複数個の第2磁石とをさら備え、
前記倣い動作は、前記各磁石対の第1、第2磁石の反発力により、前記第1凸曲面部が浮上して前記第1凹曲面部から離間した状態で実行され、
前記ステージの上面が前記各磁石対の第1、第2磁石の反発力よりも大きな力で押圧されたときに、前記各磁石対の第1、第2磁石の反発力に抗した前記第1凸曲面部の押圧により、前記第1凸曲面部が前記第1凹曲面部に当接する
ことを特徴とする倣い機構。
【請求項5】
前記基台の下面側に設けられた第2凸曲面部と、
前記第1凹曲面部に形成された開口と前記第2凸曲面部に形成された開口とを連通して前記基台に形成された貫通孔と、
一端が前記ステージの前記第1凸曲面部に連結され前記貫通孔に挿通されたボルト部材と、
前記貫通孔を経て前記基台の下方に導出された前記ボルト部材の他端部に螺合されるナット部材と、
上面側に前記第2凸曲面部と摺接可能に設けられた第2凹曲面部を有し、第2凸曲面部と前記ナット部材との間に介挿される介挿部材とを有し、
前記ナット部材の締め付け時に、前記第1凸曲面部が前記第1凹曲面部に当接し前記第2凸曲面部が前記第2凹曲面部に当接することで載置状態の前記ステージを前記基台に固定する固定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の倣い機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−89720(P2012−89720A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236160(P2010−236160)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(307044493)株式会社アドウェルズ (24)
【Fターム(参考)】