説明

偏光子と支持層を備えた光学素子

【解決手段】本明細書において偏光子と支持層を有する光学素子が開示される。偏光子は、固有偏光子を有し、支持層は、(a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上のTgを有する50〜99重量部の(メタ)アクリロイルオリゴマーと、(b)1〜50重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、(c)0.001〜5重量部の開始剤との反応生成物を含む。本明細書では、光学素子を形成する方法も開示される。
【効果】光学素子は、プロジェクター・システム等の光学装置内に使用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本開示は、偏光子と、偏光子の物理及び光学特性に適合する物理及び光学特性を有する支持層とを備えた光学素子を対象とする。光学素子は、各種の電子表示装置で使用されることがあり、特に映写システムでの使用に適する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年10月6日に出願された米国仮特許出願第60/828486号、2007年10月3日に出願された米国特許第11/866616号の利益を請求し、これらの開示は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
液晶ディスプレイ(LCD)は、例えば、コンピュータ・ディスプレイ、テレビ、モニタ、映写システム、デジタル置時計及び腕時計等の電子表示装置に広く使用されている。LCD用途に使用される典型的な偏光子は、例えば、高分子フィルム等の偏光材料を含み、この偏光材料は、支持を提供し且つ偏光子を環境から分離する、隣り合った透明保護材料層の間に挟まれている。保護材料を偏光子に接合するために接着剤(特に、感圧接着剤)が使用されることがある。
【0004】
図1は、LCDプロジェクター等の光学システムの一部として使用されることがある既知の光学素子10の典型的な構造を示す。光学素子10は、基板14に取り付けられた偏光子構造12を有する。基板は、光学素子に支持を提供し、また例えば三酢酸セルロース(TAC)や光学透明ガラス等の種々の材料から作成することができる。偏光子構造12は、ポリビニルアルコールが添加された透明保護層18及び26に接合された偏光子22を有する。透明保護層の適切な材料には、ニトロセルロース、酢酸セルロース、三酢酸セルロース(TAC)、酢酸酪酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、又はポリカーボネート等のセルロースエステルがあり、しばしばTACが使用される。保護層の一方には、通常は保護層を基板14に付着するために使用される感圧接着剤(PSA)を含む接着層16が配置される。他方の保護層上には、ハードコート層28と反射防止膜30がある。光学素子10は、LCD装置内で使用される別の光学素子に積層される場合がある。他の光学素子の例には、リフレクタ、トランスフレクタ(transflectors)、波長板、視角補正膜、及び輝度強化膜がある。この場合も、光学部材を接合するために感圧接着剤や他の光学接着剤が使用されることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書において偏光子と支持層を備えた光学素子を開示する。一態様では、偏光子は、固有偏光子を有し、支持層は、(a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上のTgを有する50〜99重量部の(メタ)アクリロイルオリゴマーと、(b)1〜50重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、(c)0.001〜5重量部の開始剤の反応生成物を含む。一実施形態では、偏光子は、KE型偏光子又はK型偏光子を含む。別の実施形態では、(メタ)アクリロイルオリゴマーは、(a)20℃以上のTgを有する重合体に単独重合可能な50〜99重量部の(メタ)アクリレートエステルモノマー単位と、(b)ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有する1〜50重量部のモノマー単位と、(c)20℃以下のガラス転移温度を有するポリマーに単独重合可能な40重量部未満のモノマー単位との反応生成物を含む。他の実施形態では、偏光子を支持層に閉じ込めることができ、或いは第2の支持層を、他の支持層と反対側の偏光子の隣りに配置することができる。1つ又は複数の基板を光学素子に含めることもできる。
【0006】
別の態様では、本明細書において、反対側の第1と第2の主面を有する固有偏光子と、固有偏光子の第1の主面上にあり、1×10-6未満の(絶対)複屈折、50℃超のTg、1.45〜1.80の屈折率及び可視スペクトルで約85%を超える光透過率を有する第1の支持層と、第1の支持層上の固有偏光子と反対側にある第1の光学的に透明な基板と、固有偏光子の第2の主面上にあり、1×10-6未満の複屈折率、50℃超のTg、1.45〜1.80の屈折率及び可視スペクトルで約85%より大きい光透過を有する第2の支持層と、第2の支持層上の固有偏光子の反対にある第2の光学的に透明な基板とを有する光学素子が開示される。
【0007】
更に別の態様では、本明細書において、1×10-6未満の複屈折率、50℃を超えるTg、1.45〜1.80の屈折率及び可視スペクトルにわたって約85%より大きい光透過率を有する支持層と、支持層内に閉じ込められた固有偏光子と、支持層の両側の外側面に配置された第1と第2の光学的に透明な基板を有する光学素子が開示される。
【0008】
更に別の態様では、本明細書において光学素子を形成する方法が開示される。この方法は、(A)第1の主面と第2の主面を備えた固有偏光子を提供する段階と、(B)第1と第2の主面の少なくとも一方に、(a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上のTgを有する50〜99重量部の(メタ)アクリロイルオリゴマー、(b)1〜50重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマー、及び(c)0.001〜5重量部の開始剤を含む硬化性合成物層を付着させる段階と、(C)硬化性合成物層を紫外線で硬化させて硬化支持層を形成する段階とを含む。
【0009】
更に別の態様では、本明細書でプロジェクター・システムが開示される。プロジェクター・システムは、本明細書に示した光源と光学素子を含む。
【0010】
本発明の以上その他の態様は、以下の詳細な説明で説明される。以上の要約は、本明細書に示された特許請求の範囲によってのみ定義される請求項の内容の制限として解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、偏光子を含む光学素子の既知の従来の構造の概略断面図である。
【図2】図2は、偏光子を含む光学素子の概略断面図である。
【図3】図3は、偏光子を含む光学素子の概略断面図である。
【図4A】図4Aは、偏光子と支持層を含む光学素子の概略断面図である。
【図4B】図4Bは、偏光子と支持層を含む光学素子の概略断面図である。
【図5】図5は、光学映写システムの一実施形態の概略図である。
【図6】図6は、表示システムの別の実施形態の概略図である。
【図7A】図7Aは、試験装置の概略図である。
【図7B】図7Bは、試験装置の概略図である。
【0012】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、添付図面と以下の詳細で説明される。本発明の他の特徴、目的及び利点は、説明、図面及び特許請求の範囲から明かになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すような従来の光学素子の使用と関連した多くの問題がある。例えば、偏光子用の支持層は、支持層を偏光子や他の光学部材に接合するために使用される感圧接着剤と共に、時間の経過により劣化しやすい。これは、特に、光学素子が長期間高い温度や強い光束にさらされる映写や他の表示用途であてはまる。この劣化により、支持体が次第に黄変することがあり、にれより、偏光光学素子と表示システムの輝度と全体的な光学性能が低下する。
【0014】
図1に示したような光学素子等の従来の光学素子と関連した別の問題は、熱の放散が悪く、高い温度や強い光束にさらされると支持層及び/又は接着層が割れて剥がれ、それにより表示システムの性能が更に低下することである。また、光学素子内に支持層を形成するために使用される材料は複屈折性であり、これにより光学性能が低下する。更に、光学素子内の接着層によってできる多数の光界面は、表示システム内の反射損失を引き起こすことがあり、これにより表示装置の全体的な明るさが低下する。図1に示した光学素子等の従来の光学素子と関連した更に別の問題は、製造中の取り扱いが難しく、支持層を破壊せずに掃除することが難しい場合があることである。
【0015】
一般に、本開示は、少なくとも1つの主面に幾つかの所望の特性を有する支持層を有する固有偏光子(intrinsic polarizer)を備えた光学素子を対象とする。支持層は、低黄変、低複屈折、可視光高透過等の良好な光学特性と、高温時の高弾性率や低熱膨張率等の適切な機械特性とを有する硬化合成物で作成される。硬化合成物は、光学接着剤として使用するのに適した粘性と粘着を有し、これにより、光学素子内の接着層をなくすことができる。好ましい実施形態では、偏光子と支持層は、ガラスに積層されてもよく、これにより、プロジェクターや他の表示システムに必要とされる場合がある高い物理的及び熱安定性が提供される。
【0016】
硬化合成物からなる支持層は、偏光子を適所に固定し偏光子の収縮と拡張を最小にする緩衝層の役割することができる。更に、支持層は、表示操作中に強い熱、強い光束及び熱勾配に繰り返しさらされたときに劣化しにくく、黄変しにくく、割れにくい。従って、本明細書に示した支持層は、従来の支持層よりも表示装置の製造を単純化し、表示装置の光学性能の完全性を維持できる期間を長くすることができる。本明細書に示した支持層は、三酢酸セルロース等の従来の支持材料と比べて、表示装置内の他の光学部材との適合が優れた屈折率を有し、これにより、界面反射損が減少し、散乱損が減少し、透過率が向上し、表示が明るくなる。
【0017】
図2は、両側の主面54及び56を備えた偏光子52(一般に、高分子フィルム)を有する光学素子50を示す。支持層58は、偏光子52の第1の主面54上にあり、この支持層は、偏光子52を機械的応力、熱劣化、及び環境汚染から保護する。好ましくは、同じか又は異なる硬化性合成物からなる第2の支持層60が、偏光子52の第2の主面56に付着されてもよく、この第2の支持層は、更に、偏光子52を機械的応力、熱劣化、及び環境汚染から保護する。
【0018】
偏光子52は、意図された用途に応じて幅広く異なる場合があり、適切な偏光子は、H型(ヨウ素)偏光子と染料偏光子のような吸収二色性平面偏光フィルムと、K型偏光子とKE型偏光子のような固有偏光子とがある。固有偏光子は、偏光子を形成するために使用される基礎材料の固有の化学構造により光を偏光する。偏光子52は、必要に応じて色付けされてもよく、隣接した光学部材又は支持層への接着を強化するために表面処理が施されてもよい。固有偏光子は好ましく、特に、厳しい環境条件下で優れた性能を得るために、ミネソタ州セント・ポール(St. Paul, MN)の3M Co.から入手可能なKE型偏光子が好ましい。KE型偏光子は、長期間高温に対して優れた耐性を有し、そのため、表示及び映写システムで使用される好ましい選択肢である。また、この固有偏光子は、一般に、薄く且つ耐久性がある。K型偏光子は、均一な光吸収発色団濃度を有する分子配向ポリビニルアルコール・シート又はフィルムを利用した合成ダイクロイック平面偏光子である。K型偏光子は、染料添加物、着色料又は浮遊結晶質材料の光吸収特性からではなく、そのマトリックスの光吸収特性からその二色性を得る。従って、K型偏光子は、高い偏光効率と高い耐熱性の両方を有することができる。また、K型偏光子は、色に関して極めて無色な場合がある。改良されたK型偏光子は、KE型偏光子と呼ばれ、高温等の厳しい環境条件下で偏光子の安定性が改善された。光吸収特性が、ポリビニルアルコールと三ヨウ化物イオン間の発色団の形成によるものであるH型偏光子と対照的に、KE型偏光子は、酸接触熱脱水反応によってポリビニルアルコールを化学反応させることによって作成される。得られた発色団(ポリビニレンと呼ばれる)と得られた重合体は、ビニルアルコールとビニレンのブロック共重合体と呼ばれることがある。組込みK型及びKE型偏光子は、米国特許第5,666,223号、米国特許出願第2003/0002154号、米国特許出願第2006/0139574 A1号に更に詳しく記載されており、これらの開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。表示用途の幾つかの実施形態では、KE型偏光子層52は、5μm〜約100μmの厚さ、又は10〜50μm若しくは25〜40μmの厚さ、及び好ましくは約20μmの厚さを有する。
【0019】
支持層58は、光学装置(特に、映写システム)で使用するのによく適した物理特性と光学特性の組み合わせを有する硬化性合成物で作成される。支持層58は、好ましくは、例えば、光学素子50の全体的な応力を最小にするように選択された熱膨張率等の物理特性を有するべきである。例えば、硬化性合成物は、硬化プロセス中に、約10%未満、より好ましくは約5%未満の体積収縮を有することが好ましい。物理特性の適切な選択により、光学素子の寿命を伸ばし、光学性能を高めることができる。硬化性合成物が硬化されて支持層58が形成された後、支持層58は、隣接した偏光子を機械的及び環境応力から保護する。そのような応力は、最小にされないと、光学素子の光学性能に悪影響を及ぼす偏光子の寸法的変化を引き起こし、偏光子に亀裂等の構造的損傷を提供する場合がある。硬化後、支持層は、20℃超、好ましくは50℃超、より好ましくは80℃超のTgを有する。このTgにより、硬化支持層が、優れた熱的安定性を有し、投写システム等の光学装置で受ける極端な温度条件と強い光束下で、軟化したり、曲がったり、割れたり、後述する基板等の隣接層から剥がれることがなくなる。 支持層(硬化後)は、110℃の温度で10MPa超、好ましくは110℃の温度で30MPa超、より好ましくは110℃の温度で50MPaの弾性率Eを有する。また、支持層(硬化後)は、0.20(MPa)(m1/2)より大きく、及び好ましくは0.40(MPa)(m1/2)より大きい破壊靱性(Klc)を有する。一実施形態では、支持層は、50℃超のTgと110℃の温度で少なくとも50MPaの弾性率とを有する。
【0020】
支持層58は、低い黄変特性を有する他に、露出で低い透過損を有し、これにより、この材料の光学特性が、高い熱負荷又は強い光束によって低下しないことが分かる。偏光子材料の過熱は、最終的に、偏光子性能を降伏させ、その結果プロジェクター性能が低下する。支持層58は、1×10-6未満の複屈折率、1.45〜1.80の屈折率、及び可視スペクトルで約85%を超える光透過率、及び好ましくは可視スペクトルで90%を超える光透過率を有する優れた光学特性を有する。本明細書で使用されるとき、可視スペクトルは、約400nmから約700nmの波長領域を指す。熱と光に長期間さらされたとき、支持層58の光学特性は実質的に影響を受けない。図1に関して前に述べたような従来の偏光子の場合、構造は、三酢酸セルロースの層を含む。三酢酸セルロースが、投写システム内で熱と光にさらされて黄色し、これによりしばしば青色光の透過率が低下することは周知である。投写型ディスプレイの黄変は、均一の白色光パターンをスクリーン上、好ましくは白又は灰色のスクリーン上に投写したときに最もよく確認される。黄色の発生は、スクリーンに表示される白色の変化として確認することができる。次に、これを測定するために、スクリーン上の様々なポイントで色度を測定することができ、また、1997ANSI規格ANSI/NAPMIT7.228−1997によって規定された方法、又はスクリーン上の投写画像全体の色のばらつきを決定する様々な他の方法を使用して、白色点又は白色均一性を判定することができる。色均一性の一般表現には、1931CIEΔxとΔy座標及び1976CIEデルタu’とデルタv’がある。各表示装置メーカーは、許容可能な均一性レベルを決定するが、一般に、ΔxとΔyの許容可能な変動は、多くの中心白色点に関してΔxでは0.015未満、Δyでは0.015未満である。例えば、高温ポリシリコン(HTPS)投写型ディスプレイの時間の経過による黄変の原因の1つは、長期間熱と光にさらされることにより時間の経過と共に生じる青色チャネル偏光子の透過特性の低下又は変化によるものである。青色チャネル偏光子の波長範囲全体にわたって平均透過率が低下し、スペクトル成分が変化することもがある。透過損は、所定の波長における%で表した透過率変化(transmission change)として表わすことができる(例えば、440nmにおける%T)。青色チャネルの光出力の変化は、プロジェクターでの色バランスに影響し、白色画面が表示されたときに黄色に見えることがある。
【0021】
支持層58を構成するのに適した1つの合成物は、2006年2月13日に出願された米国出願第11/276068号に記載されており、この開示は、参照にその全体が本明細書に組み込まれる。この硬化性合成物は、1つ又は複数のオリゴマー、好ましくは、複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上好ましくは50℃以上のTgを有する(メタ)アクリロイルオリゴマーを含む。オリゴマーは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド、およびポリカーボネートのオリゴマーから選択されてもよい。また、支持層を形成するために使用される合成物は、フリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマー、及び開始剤を含むことが好ましい。オリゴマー分子量と架橋剤及び/又は反応性希釈剤の添加量は、硬化性合成物が、硬化した反応生成物が最小の収縮と複屈折性を示すように選択されてもよい。硬化性合成物の低い収縮性は、特に、モールド成形用途や正確なモールド成形及び/又は位置合わせが必要な用途に有効である。これは、100%固体とし作成されてもよく、フリーラジカル・プロセスによって硬化される。
【0022】
硬化性合成物は、粘性が低く、高精度のモールド成形プロセスを含むモールド成形プロセスに適する。硬化性合成物は、一般に、100℃未満の適用温度で、20,000センチポワズ未満、15,000センチポワズ未満、又は10,000センチポワズ未満の粘性を有する。硬化性合成物は、一般に、100℃未満の適用温度で、少なくとも100センチポワズ、又は少なくとも500センチポワズの粘性を有する。
【0023】
支持層は、一般に、(a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上のTgを有する50〜99重量部の(メタ)アクリロイルオリゴマーと、(b)1〜50重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、(c)0.001〜5重量部の開始剤の反応生成物を含む。
【0024】
(メタ)アクリロイルオリゴマーは、60〜95重量部又は70〜95重量部の量が含まれてもよく、また50℃以上のTgを有してもよい。フリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーは、5〜40重量部又は5〜30重量部の量で含まれてもよい。フリーラジカル重合性架橋剤は、使用される場合、1〜40重量部、1〜30重量部、又は1〜20重量部の量で含まれてもよい。希釈剤モノマーは、使用される場合、25重量部未満、15重量部未満、又は10重量部未満の量で含まれてもよい。開始剤は、100重量部のオリゴマー及び架橋剤及び/又は反応性希釈剤モノマーに対して0.001〜1重量部又は0.01〜0.1重量部の量で含まれてもよい。
【0025】
ペンダントフリーラジカル重合性官能基は、アクイロイル(acyroyl)基とメタクリロイル基から成るグループから選択されてもよく、アクリレート基、メタアクリレート基、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基を含む。オリゴマーは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド、及びポリカーボネートオリゴマーから選択されてもよい。本明細書で使用されるとき、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基とメタクリロイル基の両方を指し、アクリレート基、メタアクリレート基、アクリルアミド基、及びメタクリルアミド基を含む。
【0026】
(メタ)アクリロイルオリゴマーは、(a)20℃以上のTgを有する重合体に単独重合可能な50〜99重量部のアクリレートエステルモノマー単位と、(b)ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有する1〜50重量部のモノマー単位と、(c)100重量部のa)とb)に対して40重量部未満で、20℃以下のガラス転移温度を有する重合体に単独重合可能なモノマー単位の反応生成物を含むことができる。場合によって、(メタ)アクリレートエステルモノマー単位は、50℃以上のTgを有する重合体に単独重合可能である。一実施形態では、支持層は、(a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上のTgを有する75〜85重量部の(メタ)アクリロイルオリゴマーと、(b)15〜25重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、(c)0.001〜5重量部の及び開始剤の反応生成物を含む。
【0027】
(メタ)アクリレートウレタンは、水酸基末端イソシアネートで拡張された多価アルコール、ポリエステル又はポリエーテルの多官能(メタ)アクリレートエステルである。(メタ)アクリレートウレタンオリゴマーは、例えば、ジイソシアネートや他の多価イソシアネート化合物を多価アルコール(ポリエーテルとポリエステルポリオールを含む)と反応させてイソシアネート末端ウレタン・プレポリマーを生成することによって合成することができる。ポリエステルポリオールは、多塩基酸(例えば、テレフタル酸又はマレイン酸)を多価アルコール(例えば、エチレングリコール又は1,6−ヘキサンジオール)と反応させることによって形成することができる。アクリレート官能化ウレタンオリゴマーを作成するのに有効なポリエーテルポリオールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(2−メチルテトラヒドロフラン)、ポリ(3−メチルテトラヒドロフラン)から選択することができる。代替として、アクリレートウレタンオリゴマーの多価アルコール結合は、ポリカーボネート多価アルコールでもよい。
【0028】
次に、水酸基を含む(メタ)アクリレートをプレポリマーの末端イソシアネート基と反応させることができる。ウレタンと反応させてオリゴマーを得るために、芳香族イソシアネートと好ましくは脂肪族イソシアネートの両方を使用することができる。アクリレートオリゴマーを作成するのに有効なジイソシアネートの例は、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等である。アクリレートオリゴマーを作成するのに有効な水酸基末端アクリレートの例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等があるがこれらに限定されない。
【0029】
(メタ)アクリレートウレタンオリゴマーは、例えば、少なくとも2つのアクリレート官能性を有し、一般には約6つ未満の官能性を有する任意のウレタンオリゴマーでよい。また、適切な(メタ)アクリレートウレタンオリゴマーは、例えば、Henkel Corp.から入手可能な商標PHOTOMER 6008、6019、6184(脂肪族ウレタントリアクリレート)、UCB Chemicalから入手可能なEBECRYL 220(分子量1000のヘキサ官能性芳香族ウレタンアクリレート)、EBECRYL 284(12%の1,6−ヘキサンジオールジアクリレートで希釈された分子量1200の脂肪族ウレタンジアクリレート)、EBECRYL 4830(10%のテトラエチレングリコールジアクリレートで希釈された分子量1200の脂肪族ウレタンジアクリレート)、及びEBECRYL 6602(40%のトリメチルロールプロパンエトキシトリアクリレートで希釈された分子量1300のトリ官能性芳香族ウレタンアクリレート)、並びにペンシルバニア州エクストン(Exton, PA)のSartomer Co.から入手可能なSARTOMIER CN1963、963E75、945A60、963B80、968及び983として知られるようなものが市販されている。
【0030】
代替として、アクリレート官能化オリゴマーは、ポリエステルアクリレートオリゴマー、アクリレートアクリルオリゴマー、ポリカーボネートアクリレートオリゴマー、又はポリエーテルアクリレートオリゴマーでよい。適切なアクリレートアクリルのオリゴマーには、例えば、EBECRYL 745や1710等の市販品があり、これらは両方ともUCB Chemicals (ジョージア州スミュルナ:Smyrna, GA)から入手可能である。有効なポリエステルアクリレートオリゴマーは、Sartomer Co.(ペンシルバニア州エクストン:Exton, PA)から入手可能なCN293、CN294及びCN2250、2281、2900と、UCB Chemicals (ジョージア州スミュルナ:Smyrna, GA)から入手可能なEBECRYL 80、657、830及び1810がある。適切なポリエーテルアクリレートオリゴマーには、Sartomer Co.(ペンシルバニア州エクストン:Exton, PA)から入手可能なCN501、502及び551がある。有効なポリカーボネートアクリレートオリゴマーは、米国特許第6,451,958号(Sartomer Technology Company Inc., デラウェア州ウィリミントン:Wilmington, DE)従って作成することができる。
【0031】
(メタ)アクリレートエポキシは、ビスフェノールAエポキシ樹脂の(メタ)アクリレートエステル等のエポキシ樹脂の多官能(メタ)アクリレートエステルである。市販されているアクリレートエポキシの例には、ジョージア州スミュルナ(Smyrna, GA)のUCB Chemicalから入手可能なEBECRYL 600(分子量525のビスフェノールAエポキシジアクリレート)、EBECRYL 605(25%トリプロピレングリコールジアクリレートを含むEBECRYL 600)、EBECRYL 3700(分子量524のビスフェノールAジアクリレート)、及び3720H(20%のヘキサンジオールジアクリレートを含む分子量524のビスフェノールAジアクリレート)、並びにニュージャージー州ホーボーケン(Hoboken, NJ)のHenkel Corp.から入手可能なPHOTOMER 3016(ビスフェノールAエポキシアクリレート)、PHOTOMER 3016-40R(エポキシアクリレートと40%トリプロピレングリコールジアクリレートの混合物)、及びPHOTOMER 3072(改質ビスフェノールAアクリレート等)がある。
【0032】
好ましい実施形態では、オリゴマーは、一般に、(a)20℃以上、好ましくは50℃以上のガラス転移温度を有する重合体に単独重合可能な50〜99重量部、好ましくは60〜97重量部、最も好ましくは80〜95重量部の(メタ)アクリロイルモノマー単位であって、(メタ)アクリレートモノマー単位であることが好ましい(メタ)アクリロイルモノマー単位と、(b)ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有する1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部、最も好ましくは5〜20重量部のモノマー単位と、(c)100重量部のa)とb)に対して、20℃以下のガラス転移温度を有する重合体に単独重合可能な40重量部未満、好ましくは30重量部未満、最も好ましくは20重量部未満のモノマー単位とからなる重合アクリロイルモノマー単位を含む。
【0033】
第1成分オリゴマーは、単独重合された場合に、20℃超、好ましくは50℃超のTgを有する重合体を生成する1つ又は複数の高Tgモノマーからなる。好ましい高Tgモノマーは、少なくとも6個の炭素原子を有する単環及び二環脂肪族アルコールと芳香族アルコールの単官能(メタ)アクリレートエステルである。脂環基と芳香族基は両方とも、例えば、C1−6アルキル、ハロゲン、硫黄、シアン等によって代用することができる。特に好ましい高Tgモノマーには、3,5ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、4−ビフェニル(メタ)アクリレート、フェニル基(メタ)アクリレート、ベンジル・メタアクリレート、及び2−ナフチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレートがある。高Tgモノマーの混合物を使用することもできる。モノマーを(メタ)アクリレートモノマーを含むモノマーの残りの部分と重合できる場合は、スチレンやビニールエステル等を含む任意の高Tgモノマーを使用することができる。しかしながら、高Tgモノマーは、一般に、アクリレート又はメタクリル酸エステルである。
【0034】
他の高Tgモノマーには、メチルメタアクリレート、メタクリル酸エチル、イソプロピルメタアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリルメタアクリレート、シクロヘキシルメタクリート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタアクリレート、アリルメタアクリレート、ブロモエチルメタアクリレート等のC1−C20アルキル(メタ)アクリレートと、スチレンと、ビニールトルエンと、ビニルプロピオネート、酢酸ビニル、ビニールピバレート及びビニールネオノナノアート等のビニールエステルと、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、及びt−ブチルアクリルアミド及び(メタ)アクリロニトリル等のアクリルアミドとがある。高Tgモノマーの混合物を使用してもよい。
【0035】
最も好ましい高Tgモノマーは、環境(熱と光)安定性を得るために、イソボニル(メタ)アクリレート、メタクリル酸シクロヘキシル、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、イソプロピルメタアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、イソブチルメタアクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート及びこれらの混合物等の直鎖型、分枝型、脂環型、及び架橋型の脂環式(メタ)アクリレートから選択される。
【0036】
合成物の第1成分オリゴマーは、フリーラジカル重合性不飽和を含む1つ又は複数のペンダント基を含む。好ましいペンダント不飽和基には、(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルオキシ、及び(メタ)アクリルアミドがある。そのようなペンダント基は、少なくとも2つの方法で重合体に組み込むことができる。最も直接的な方法は、エチレンジ(メタ)アクリレートのモノマー単位の間に1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)又はビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを入れることである。有効なポリ不飽和モノマーには、アリル、プロパルギル及びクロチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、及びアリル2−アクリルアミド−2、2−ジメチルアセテートがある。
【0037】
ペンダントフリーラジカル重合性官能基を組み込む「直接法」を使用する場合、有効な官能モノマーには、ビニル、ビニルオキシ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド及びアセチレン官能基を含む炭素−炭素二重結合を含む官能基などのフリーラジカル添加可能な官能基を含む最大約36個の炭素原子を有する不飽和脂肪族、脂環族及び芳香族化合物がある。
【0038】
使用できるポリエチレン型不飽和モノマーの例には、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6ヘキサメチレンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジ、トリ及びテトラアクリレート及び1,12−ドデカンジオールジアクリレート等のポリアクリル酸官能モノマーと、アリルメタアクリレート、2アリルオキシカルボニルアミドエチルメタアクリレート及び2−アリルアミノエチルアクリレート等のオレフィンアクリル官能モノマーと、アリル2アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテートと、ジビニルベンゼンと、2−(エテニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(エチニルオキシ)−1−プロペン、4(エチニルオキシ)−1−ブテン及び4−(エテニルオキシ)ブチル−2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテート等のビニルオキシ基置換官能モノマーとがあるが、これらに限定されない。ペンダント不飽和を有する重合体を作成するために使用できる有効なポリ不飽和モノマー及び有効な反応/共同反応化合物については、米国特許第5,741,543号(Winslowら)に詳しく記載されている。
【0039】
好ましいポリ不飽和モノマーは、不飽和基が不等反応性のものである。当業者は、不飽和基に結合された特定の部分がその不飽和基の相対反応性に影響を及ぼすことを理解する。例えば、等反応性の不飽和基を有するポリ不飽和モノマー(例えば、HDDA)を使用する場合は、例えばラジカルスカベンジャーとして働く酸素の存在による合成物の早すぎるゲル化を防止しなければならない。これと反対に、異なる反応性の不飽和基を有するポリ不飽和モノマーを使用する場合は、反応性の低い不飽和基(ビニール、アリル、ビニルオキシ、又はアセチレン等)が反応して合成物を架橋する前に、反応性の高い基((メタ)アクリレートとしての(メタ)アクリルアミド等)がポリマー骨格に優先的に組み込まれる。この直接法は、一般に、分岐と早すぎるゲル化の制御が難しいので好ましくない。
【0040】
重合性不飽和を含むペンダント基を第1重合体に組み込む好ましい間接的方法は、反応性官能基を含むいくつかのペンダント基を重合体のモノマー単位間に含めることである。有効な反応性官能基には、水酸基、アミノ基(特に第2アミノ基)、オキサゾロニル基、オキサゾリニル基、アセトアセチル基、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、アジリジニル基、ハロゲン化アシル基、及び環状無水物基があるがこれらに限定されない。これらのうちカルボキシル基、水酸基、及びアジリジニル基が好ましい。これらのペンダント反応性官能基は、反応性ペンダント官能基と共反応性官能基を含む不飽和化合物と反応させられる。2つの官能基が反応するとき、ペンダント不飽和を含むオリゴマーが生じる。
【0041】
ペンダントフリーラジカル重合性官能基を組み込む「間接法」を使用するとき、有効な反応性官能基には、水酸基、第2アミノ基、オキサゾリニル基、オキサゾロニル基、アセチル基、アセトニル基、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、アジリジニル基、ハロゲン化アシル基、ビニルオキシ基、及び環状無水物基がある。ペンダント反応性官能基がイソシアナト官能基である場合、共反応性官能基は第2アミノ基又は水酸基からなることが好ましい。ペンダント反応性官能基が水酸基を含む場合、共反応性官能基は、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、無水物基又はオキサゾリニル基からなることが好ましい。ペンダント反応性官能基がカルボキシル基を含む場合、共反応性官能基は、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基又はオキサゾリニル基からなることが好ましい。最も一般的には、反応は、置換又は凝縮メカニズムによって反応する求核性官能基と親電子官能基の間で生じる。
【0042】
有効な共反応性化合物の代表的な例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、3−アミノプロピロン(メタ)アクリレート及び4−アミノスチレン等のアミノアルキリデン(メタ)アクリレートと、2−エテニル−1,3−オキサゾリン−5−1、及び2−プロペニル基−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−1等のオキサゾリニル化合物と、(メタ)アクリル酸や4−カルボキシベンジル(メタ)アクリレート等のカルボキシ置換化合物と、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートと4−イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のイソシアナト置換化合物と、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシに置換化合物と、N−アクリロイルアジリジンと1−(2−プロペニル基)−アジリジン等のアジリジニル置換化合物と、(メタ)アクリロイル塩化物などのアクリロイルハロゲン化合物とがある。
【0043】
好ましい官能モノマーは、次の一般式を有する。
【0044】
【化1】

【0045】
ここで、R1は水素、C1からC4はアルキル基又はフェニル基、好ましくは水素又はメチル基であり、R2は、エチレン不飽和基を重合性又は反応性官能基Aに結合する単結合又は二価結合基であり、好ましくは、最大34個、好ましくは最大18個、より好ましくは最大10個の炭素と、任意に酸素原子と窒素原子を含み、R2が単結合でないとき、好ましくは次の式から選択される。
【0046】
【化2】

【0047】
ここで、R3は、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基、5〜10個の炭素原子を有する5又は6構成のシクロアルキレン基、又はアルキレン−オキシアルキレンであり、各アルキレンは、1〜6個の炭素原子を含むか、6〜16個の炭素原子を有する二価芳香族基であり、Aは、遊離基を炭素−炭素二重結合に追加できる官能基、又はフリーラジカル重合性官能基を組み込むために共反応性官能基と反応することができる反応性官能基である。
【0048】
第1成分オリゴマーの以上の説明の文脈において、フリーラジカル重合性基を有するエチレン不飽和モノマーが、架橋剤と反応性希釈剤とフリーラジカル重合できるように選択されることを理解されるであろう。官能基間の反応は、成分間のエチレン不飽和基のフリーラジカル付加反応によって共有結合を形成することによって架橋を提供する。本発明では、ペンダント官能基は、副生成物分子が作成されない付加反応によって反応し、例示した反応相手は、この好ましい形態によって反応する。
【0049】
高温を使用して硬化性合成物を処理しなければならず、またペンダント不飽和を含む直接法が使用された場合、そのようなペンダント基を活性化させたり早すぎるゲル化を引き起こしたりしないように注意しなければならない。例えば、ホットメルト処理温度を比較的低く維持することもでき、また混合物に重合抑制剤を添加することもできる。従って、合成物を処理するために熱が使用される場合、ペンダント不飽和基を組み込む好ましい方法は前述の間接法である。
【0050】
オリゴマーは、必要に応じて、更に、20℃未満のTgを有する重合体に単独重合可能な低Tgアルキル(メタ)アクリレートエステル又はアミドを含むことができる。本発明に有効なアルキル(メタ)アクリレートエステルモノマーは、C1−C20アルキル基を含むアルキルエステルの直鎖、環状及び分枝鎖異性体を含む。Tgと側鎖結晶性を考慮すると、好ましい低Tgアルキル(メタ)アクリレートエステルは、C1−C8アルキル基を有するものである。アルキル(メタ)アクリレートエステルの有効な具体的な例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、n−プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソ−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソ−ノニル(メタ)アクリレート、及びデシル(メタ)アクリレートがある。最も好ましい(メタ)アクリレートエステルには、アクリル酸メチル、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレートがある。低Tgアルキル(メタ)アクリレートエステルは、得られるオリゴマーが20℃以上のTgを有するような量で添加される。一般に、そのような低Tgモノマーは、40重量部未満、好ましくは30重量部未満、最も望ましくは20重量部未満の量で使用される。
【0051】
オリゴマーの理論的Tgは、例えば、L. H. Sperling, “Introduction to Physical Polymer Science“ 2nd Edition, John Wiley & Sons, New York, p.357 (1992) と、T. G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc., 1,123 (1956)に記載されているような、Fox式1/Tg=(w1/Tg1+w2/Tg2)を使用して計算することができ、ここで、w1とw2は、2つの成分の重量分率を指し、Tg1とTg2は、2つの成分のガラス転移温度を指す。これらの2つの文献は参照により本明細書に組み込まれる。成分モノマーのTgとオリゴマー中のその重量分率の推定値を使用して、生じるオリゴマーのTgを計算することができる。当業者によって理解されるように、Fox式は、2つ以上の成分を含む系に使用されてもよい。
【0052】
オリゴマーは、連鎖移動剤の存在下で開始剤とモノマーを結合することによるラジカル重合技術を用いて作成することができる。この反応では、連鎖移動剤が、ある成長鎖上の活性部分を次に新しい鎖を開始できる別の分子に移動させ、それにより重合度を制御することができる。得られるオリゴマーの重合度は、10〜300、好ましくは15〜200、より好ましくは20〜200でよい。重合度が高すぎると、合成物は粘性が高すぎ、融けにくいことが分かっている。これと反対に、重合度が低すぎると、硬化合成物の収縮度が大きくなりすぎ、硬化合成物の複屈折性が高くなる。
【0053】
連鎖移動剤は、本明細書に記載されたモノマーを重合して生じるオリゴマーの分子量を制御するときに使用されてもよい。適切な連鎖移動剤には、ハロゲン化炭化水素(例えば、四臭化炭素)と硫黄化合物(例えば、ラウリルメルカプタン、ブチルメルカプタン、エタンチオール、2−メルカプトエチルエーテル、イソオクチルチオグリコレート、t−ドデシルメルカプタン、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール)がある。有効な連鎖移動剤の量は、所望のオリゴマーの分子量と連鎖移動剤のタイプに依存する。連鎖移動剤は、一般に、モノマーの全重量に対して、約0.1部〜約10部、好ましくは、0.1部〜約8部、より好ましくは約0.5部〜約6部の量が使用される。
【0054】
幾つかの実施形態では、2つ以上の官能基を有する多官能連鎖移動剤を使用して、複数のオリゴマー基を有する化合物を作成することができる。多官能連鎖移動剤の使用により、硬化後の破壊靱性が高くなる。多官能連鎖移動剤の例には、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3− メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[2−(3−メルカプトプロピオニロキシ)エチル]イソシアヌレート、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールエタントリチオグリコレート、1,4−ブタンジオールビスメルカプトアセテート、及びグリセリルチオグリコレート、又はこれらの材料の組み合わせがある。また、多官能連鎖移動剤は、当該技術分野で知られているようなα,ωメルカプトアルカン又はα,ωアリルアルカンから得ることもでき、また1,10−ジメルカプトデカン、1,14−ジメルカプトテトラデカン、1,10−ジアリルデカンを含む。他の連鎖移動剤は、α,α,α,ω,ω,ω−ヘキサブロモデカン等のα,ωハロゲン置換アルカンを含む。参照により本明細書に組み込まれた米国特許第6,395,804号及び第6,201,099号(Petersonら)を参照することができる。
【0055】
このオリゴマー化反応に適切な開始剤には、例えば熱及び光開始剤がある。有効な熱開始剤は、アゾ化合物と過酸化物を含む。有効なアゾ化合物の例には、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)(E. I. duPont de Nemours & Co.から市販されているVazo52)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(E. I. duPont de Nemours & Co.から市販されているVazo 67)、1,1−アゾビス(シアノシクロヘキサン)(E. I. duPont de Nemours & Co.から市販されているVazo 88)、1,1‘−アゾビス(1−シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.から市販されているV-40)、及びジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.から市販されているV-601)がある。有効な過酸化物の例には、過酸化ベンゾイル、ジ−t−アミル過酸化物、t−ブチルペルオキシベンゾアート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ラウロイルパーオキサイ、及びt−ブチルペルオキシピバレートがある。有効な有機ヒドロペルオキシドには、t−アミルヒドロペルオキシドとt−ブチルヒドロペルオキシド等の化合物があるが、これらに限定されない。
【0056】
有効な光開始剤には、ベンゾインメチルエーテルやベンゾインブチルエーテル等のベンゾインエーテルと、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノンや2,2−ジエトキシアセトフェノン2等のアセトフェノン誘導体と、ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシドやイソプロポキシ(フェニル)−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、ジメチルピバロイルホスホネート等のアシルホスフィンオキシド誘導体とアシルホスホネート誘導体がある。これらのうち、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノンが好ましい。開始剤は、一般に、モノマー100重量部当たり0.001〜5重量部のレベルで使用される。
【0057】
合成物は、更に、複数のペンダントエチレン不飽和フリーラジカル重合性官能基を含む架橋剤を含む。有効な架橋剤は、1つ超、好ましくは2つ以上の平均官能性(1分子当たりのエチレン不飽和フリーラジカル重合性官能基の平均数)を含む。官能基は、第1成分オリゴマー上のペンダントエチレン不飽和フリーラジカル重合性官能基と共重合できるように選択される。有効な官能基には、第1成分オリゴマーに関して説明したものがあり、またビニール官能基、ビニルオキシ官能基、(メタ)アクリロイル官能基、及びアセチレン官能基があるがこれらに限定されない。
【0058】
有効な架橋剤は、次のような一般式を有する。
【0059】
【化3】

【0060】
ここで、Zは、炭素−炭素二重結合等のフリーラジカル重合性官能基であり、nは1より大きく、Rはnの原子価を有する有機ラジカルである。Rは、直鎖又は分枝でもよい原子価nの脂肪族アルキルラジカルであることが好ましい。
【0061】
そのような架橋剤の例には、C2−C18アルキルエンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のC3−C18アルキレントリオールトリウ(メタ)アクリレート、ペンシルバニア州エクストン(Exton, PA)のSratomer Co.から入手可能なCD501等のプロポキシレートトリメチロールプロパントリアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、Cognis Co.から入手可能なBISOMER EP100DMA等のポリアルキレングリコールジメチタクリレートがある。好ましい架橋剤は、混合し易くするために、添加温度で固体材料ではない。
【0062】
本発明による合成物は、少なくとも1つの反応性希釈剤を含んでもよい。反応性希釈剤を使用して合成物の粘性を調整することができる。従って、反応性希釈剤はそれぞれ、化学線にさらされたときに重合することができる少なくとも1つの官能基を含む低粘性モノマーでよい。例えば、ビニール反応性希釈剤と(メタ)アクリレートモノマー希釈剤が使用されてもよい。
【0063】
反応性希釈剤にある官能基は、硬化性(メタ)アクリレートオリゴマーで使用されるものと同じでもよい。反応性希釈剤中にある放射硬化性官能基は、放射硬化性オリゴマーにある放射硬化性官能基と共重合できることが好ましい。反応性希釈剤は、一般に、約550を以下の分子量又は室温で約500mPa秒(100%希釈として測定した)未満の度を有する。
【0064】
反応性希釈剤は、(メタ)アクリロイル又はビニール官能性及びC1−C20アルキル部分を有するモノマーからなることができる。そのような反応性希釈剤の例には、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェネチシリン(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等がある。好ましい反応性希釈剤は、イソボニル(メタ)アクリレート等の低揮発性アルキル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェネチシリン(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートである。
【0065】
反応性希釈剤は、硬化合成物の体積収縮が約10%、好ましくは約5%を超えない量で添加されることが好ましい。反応性希釈剤の適切な量は、約40重量部未満、好ましくは約0〜約30重量部、より好ましくは約0〜約20重量部であることが分かった。反応性希釈剤と架橋剤の合計量は、40重量部未満であることが好ましい。
【0066】
合成物の成分は、組み合わされ光開始剤で硬化されてもよい。光開始剤は、硬化性合成物の硬化と転換率を改善するが、光開始剤が試料の厚さに侵入する透過光を減衰させるので硬化の深さ(より厚い被覆又は造形品)に悪影響を及ぼす場合がある。光開始剤は、1.0重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、最も好ましくは0.05重量%未満の量で使用される。
【0067】
従来の光開始剤を使用することができる。その例には、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル及びベンジルケタル等のアセトフェノン誘導体、モノアシルホスフィンオキシド、及びビス−アシルホスフィンオキシドがある。好ましい光開始剤は、ニュージャージー州マウント・オリーブ(Mt.Olive, NJ )のBASF,から入手可能なエチル2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(LUCIRIN TPO-L)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−1(IRGACURE 1173 TM, Ciba Specialties)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(IRGACURE 651 TM, Ciba Specialties)、フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IRGACURE 819, Ciba Specialities)がある。他の適切な光開始剤には、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾオキサゾール、及びヘキサリルビスイミダゾールがある。光開始剤の混合物が適切な特性バランスを提供することがある。
【0068】
次に、硬化性合成物を所望の基材に付着させるか鋳型に添加し、紫外線等の化学線にさらすことができる。合成物は、可視光線や紫外線等の任意の形態の化学線にさらされてもよいが、UVA(320〜390nm)又はUVB(395〜445nm)放射にさらされることが好ましい。一般に、化学線の量は、粘着性がなく寸法的に安定した固体塊を形成するのに十分なものでなければならない。一般に、合成物を硬化させるのに必要なエネルギー量は、約0.2から20.0J/cm2の範囲である。
【0069】
光重合には、炭素アークランプ、低圧、中圧又は高圧水銀ランプ、渦流型プラズマアーク・ランプ、キセノン閃光ランプ、紫外線発光ダイオード、及び紫外線放射レーザを含む任意の適切な光源を使用することができる。多くの用途で、硬化を実現するためにLED光源又はアレイを使用することが望ましい場合がある。そのようなLED光源は、硬化時間を短縮し、硬化中に合成物に与える熱を少なくすることができる。1つの適切なLED光源は、Norlux大面積アレイ・シリーズ808(イリノイ州キャロルストリーム(Carol Stream, IL)のNorluxから入手可能)である。
【0070】
図3に示した光学素子70の別の実施形態では、偏光子72は、第1の主面74とその反対側の第2の主面76、並びに概略向かい合った縁78及び80とを有する。偏光子72を閉じ込めるために、支持層82は、偏光子72の主面74及び76だけでなく、縁78及び80も覆う。支持層82は、独立した硬化片として偏光子72の主面74、76と縁78、80のいずれに付着されてもよく、硬化性合成物が、偏光子72のまわりに塗布され、その後で硬化されてもよい。偏光子72が、偏光子の主面74、76と縁78、80上に同じ材料を使用して閉じ込められてもよく、或いは、材料の縁78及び80を密閉するために主面74及び76を覆うために使用される材料と異なる材料が使用されてもよいことに注意されたい。
【0071】
図3に示した「封入された」光学素子70は、優れた環境耐性を有する。図2に示した光学素子50と図3に示した光学素子70は両方とも、極めて薄いという利点を有し、約0.5mm未満の厚さ、より好ましくは約0.2mmの厚さを有することができ、これは、小型ディスプレイで使用するのに適する。
【0072】
図4Aに示した光学素子100は、図3からの封入された偏光子構造70を有する。光学素子100では、偏光子構造70は、第1の光学的に透明な支持基板102上に取り付けられ、支持基板102は、光学素子100の物理的完全性を維持する役割をし、光の吸収とプロジェクター動作温度によって生じる熱を伝達する熱放散層として働くことができる。偏光子から熱を放散させる相対能力を評価する1つの方法は、プロジェクター環境内の光学素子の基板温度を評価し、この温度を同じ環境における類似の偏光子材料と比較することである。
【0073】
基板102は、任意の光学的に透明な材料から選択することができ、一般にガラスである。適切な材料には、石英、サファイア・ガラス、水晶、ホウケイ酸ガラス又はセラミック・ガラスがある。また、基板102には、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、及びノンボルネン系環状オレフィン共重合体フィルム等の高分子材料が適切である。
【0074】
偏光子72に固定される支持層82は、第1の支持基板102の第1の主面104に取り付けられる。基板102と支持層60間の接着性が高めるために、必要に応じて、例えばシラン処置等の表面処理が、基板102の第1の主面104又は支持層82の結合面105に施される。必要に応じて、接着層(図4Aに示してない)が使用されてもよいが、そのような追加の層は、光学界面の数を増やし、一般に光学素子100の光学性能を低下させるので好ましくない。
【0075】
また、任意選択の第2の支持基板108を使用して、支持層82と封入された偏光子72を支持し間に挟むことができる。第2の支持基板108は、第1の支持基板102と同じ材料から作成されてもよく異なる材料から作成されてもよく、幾つかの用途では、支持層82に直接付着された高分子材料のハードコートでもよい。この場合も、支持層82と第2の基板108の結合面106、107にそれぞれ表面処理を施して他の層に対する接着性を高めてもよい。支持層82と第2の支持基板108の間に任意選択の接着層(図4に示されていない)を付着させてもよい。
【0076】
任意選択の反射防止被覆層110が、第2の支持基板108に付着されてもよく、又は支持層82の表面106に直接付着されてもよい。
【0077】
図4Bに示した別の光学素子200は、図2からの偏光子構造50を含む。光学素子200では、偏光子構造50は、第1の光学的に透明な支持基板202に取り付けられ、支持基板202は、光学素子200の物理的完全性の維持に寄与し、熱放散層として働く場合がある。基板202は、一般に、ガラスであり、適切な材料には、石英、サファイア・ガラス、水晶、ホウケイ酸ガラス又はセラミック・ガラスがある。また、基板202には高分子材料が適する。
【0078】
偏光子52に固定された第1の支持層60は、第1の支持基板202の第1の主面204に取り付けられる。例えば、基板202と支持層60の間の接着性を高めるために、必要に応じて、基板202の第1の主面204又は第1の支持層60の結合面205にシラン処置等の表面処理が施される。必要に応じて、接着層(図4Bに示していない)が使用されてもよいが、そのような付加層は、光学的界面の数を増やし、一般に光学素子200の光学性能を低下させるので好ましくない。
【0079】
また、第2の支持層58と偏光子52を支持し間に挟むために、任意選択の第2の支持基板208が使用されてもよい。第2の支持基板208は、第1の支持基板202と同じ材料で作成されてもよく異なる材料で作成されてもよく、幾つかの用途では第2の支持層58上に直接付着された高分子材料のハードコートでもよい。この場合も、必要に応じて、他の層への接着性を高めるために、第2の支持層58の結合面206又は第2の基板208の結合面207にそれぞれ表面処理が施されてもよい。第2の支持層52と第2の支持基板208の間に任意選択の接着層(図4Bに示されていない)を付着させてもよい。
【0080】
任意選択の反射防止被覆層210が、第2の支持基板208に付着されてもよく、支持層58の表面206に直接付着されてもよい。
【0081】
特定の用途向けのより複雑な光学構造を提供するために、必要に応じて、光学素子100/200上に追加の光学層(図4A〜図4Bに示されていない)が付着されてもよい。LCDディスプレイと映写システムで有効な例には、リフレクタ、トランスフレクタ、波長板、視角補正薄膜、又は輝度強化薄膜がある。必要に応じて、光学素子100/200の任意の表面に、例えば、反射防止膜等、帯電防止被覆、保護用ハードコート等の追加被覆が付着されてもよい。特に有効な「簡単清浄」保護被膜には、少なくとも1つの1価ヘキサフルオロポリプロピレンオキシド誘導体と、従来の炭化水素系ハードコート剤に対するアクリレート相溶化剤を含むフルオロアルキル基又はアクリレート相溶化剤を含むフルオロアルキレン基のいずれかから成るフリーラジカル反応性相溶化剤とに耐えるモノ又はマルチ(メチル)アクリレートのモノマーがある。これにより得られる被覆は、実質的に滑らかであり、汚れ及びインク付着防止剤であり更に優れた光学品質を有する低表面エネルギーを有する高耐久性表面層を形成する。
【0082】
光学素子100は、各種の光学装置に使用されてもよく、特に、輝度、コントラスト及び色均一性が重要な透過型の高温映写システムに適する。代表的な用途には、例えば、業務用途に適したフロント・スクリーン・プロジェクター、テレビと映画表示に適したリア・スクリーン・プロジェクター、及び車輌で使用されるカラー・シングル・パネル・ディスプレイがある。
【0083】
図5は、前の図2、図3又は図4A〜図4Bに示した封入された偏光子構造のいずれか又は組み合わせを含むことができる投写システム500の概略図である。投写システム500では、光源502は光を射出し、その光は集束レンズ504によって集束される。光束506は、集束レンズ504から出でた後、ビーム・スプリッタ508に導かれ、ビーム・スプリッタ508は、光束506を青色光束509と黄色光束510に分離する。
【0084】
青色光束509は、ミラー511によって反射され、青色入射偏光子512に入る。青色入射偏光子512には、前の図2、図3又は図4A〜図4Bに示した偏光子構造のいずれも使用することができる。青色光束509は、青入射偏光子512から出た後、青色LCDイメージャ514に入り、次に青色射出偏光子516に入る。この場合も、前に図2から図4に示した偏光子構造のどれが青色射出偏光子516に使用されてもよい。青色光束509は、青色射出偏光子516から出た後、Xキューブ520に入る。
【0085】
黄色光束510は、ビーム・スプリッタ522に入り、そこで緑色光束524と赤色光束526に分離される。次に、緑色光束524は、緑色入射偏光子532に入る。前に図2から図4に示した偏光子構造のどれが緑色入射偏光子532に使用されてもよい。緑色光束524は、緑色入射偏光子532を出た後、緑色LCDイメージャ534に入り、次に緑色射出偏光子536に入る。この場合も、緑色射出偏光子536に前の図2、図3又は図4A〜図4Bに示した偏光子構造のどれが使用されてもよい。緑色光束524は、緑色射出偏光子536から出た後、Xキューブ520に入る。
【0086】
赤色光束526は、第1のミラー528と第2のミラー529で反射され、次に赤色入射偏光子542に入る。赤色入射偏光子542に、前に図2〜図4に示した偏光子構造のどれが使用されてもよい。赤色光束526は、赤色入射偏光子542を出た後、赤色LCDイメージャ544に入り、次に赤い射出偏光子546に入る。この場合も、赤色射出偏光子546には、前の図2、図3又は図4A〜図4Bに示した偏光子構造のどれが使用されてもよい。赤色光束526は、赤色射出偏光子546から出た後、Xキューブ520に入る。
【0087】
青色光束509、緑色光束524及び赤色光束526はXキューブ520内で再結合された後、Xキューブ520から出て、スクリーン560上に映写ビーム552として次に映写するために映写レンズ550に入る。
【0088】
図6は、前に図2、図3又は図4A〜図4Bに示した偏光子5構造を有することができる別の例示的な光学システム600を示す。このシステム600は、矢印Aの方向に沿った光を提供する光源602とバックライト層604とを有する。光は、前の図2、図3又は図4A〜図4Bに示した偏光子構造のどれから選択されてもよい第1の偏光子606を通り、次に偏光は液晶層608に入る。液晶層608は、一般に、第1のガラス層、保護層、アラインメント層、液晶、金属酸化物層及び第2のガラス層を含むが、分かりやすくするためにこれらの副層は図6に示されていない。光は液晶層608を通った後、光は第2の偏光子610に入り、この第2の偏光子は、光を分析して光学素子600に画像情報を提供する。この場合も、第2の偏光子610は、前の図2、図3又は図4A〜図4Bに示した偏光子構造のどれから選択されてもよい。光学素子600は、例えば、車両用のタッチスクリーンとして又はナビゲーション画面で使用される。
【0089】
前述の支持層は、偏光光学素子内の接着層とハードコート層をなくすことを可能にするので、この支持層を使用することにより光学素子の製造が単純化される。
【0090】
例えば、図4A〜図4Bで前に例示した偏光光学素子を作成するには、2枚の光学品質ガラスと適切なサイズの偏光フィルム(好ましくはKE偏光フィルム)が必要である。ガラスとKE偏光フィルムは、組み立て前に、必要に応じて、隣接層への接着性を高めるように表面処理される。例えば、表面処理のために、ガラスと偏光子フィルムは、マサチューセッツ州ワード・ヒル(Ward Hill, MA )のAlfa Aesarからの呼称A174 Silaneで入手可能なようなモノシラン溶液に浸されてもよい。A174モノシラン溶液は、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、酢酸、及びキャリアを含む。典型的なキャリアには、水と2プロパノール等の有機溶媒がある。モノシラン溶液に浸された後、構成要素は、必要に応じて、次の処理のために溶液の除去を早くし構成要素を乾燥させるために加熱される。例えば、乾燥プロセスは、一般に、構成要素を約15分間約120℃の温度のオーブンに入れることがある。
【0091】
シランで処理した構成要素を使用して光学素子を作成するには、最初に組立治具をホットプレート上で一般に80℃まで加熱し、次に剥離ライナーが組立治具の表面に塗布される。次に、剥離ライナー上に、表面処理されたガラス板が配置され、数滴の未硬化液体支持層合成物が、ガラス基板の露出面に塗布されてもよい。未硬化液体支持層合成物を含む領域のうちの1つの領域上に、適切なサイズの偏光子フィルムを配置した後で、組立治具を閉じて構造物を押し合わせ構成要素の位置合わせを維持することができる。
【0092】
次に、必要に応じて治具を加熱し紫外線ランプの下に置いて、液体支持層合成物を硬化させ、ガラス基板間と偏光フィルムのまわりに支持層を形成することができる。硬化プロセスの条件は幅広く異なる場合があるが、一般に、構造の両側に約90秒の硬化が必要である。適切な硬化ランプには、イリノイ州キャロルストリーム(Carol Stream, IL)のNorluxによる呼称808 Die Array UV Lampで入手可能なものがある。組立体の両面から光を照射することにより1回の工程で支持層の均一な硬化が可能になるが、当然ながら複数の硬化工程も使用することができる。必要に応じて、未硬化支持層合成物の小さなビードを、偏光子フィルムの露出した縁に付着させ、次に硬化させて縁を封止し完全な封入を形成してもよい。
【0093】
以下の例を検討して本発明をより完全に理解することができる。
【0094】

以下の例は、単に例示のためであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。例における全ての部、割合、比率等は、特に断らない限り重量によるものである。使用される試薬は、表1に示され、特に断らない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee, WI)のSigma-Aldrich Chemical Companyから入手された。KE偏光子(厚さ約25μm)は、マサチューセッツ州ノーウッド(Norwood, MA)の3M Companyから入手され、この偏光子の作成は、米国特許出願第2006/0139574 A1号に記載されている。
【0095】
【表1】

【0096】
例A
例1
支持層材料1は、以下のように作成された。IBOA(180.0g)、HBA(20.0g)、PETMP(6.0g)及び熱開始剤VAZO52(0.01g)、VAZO88(0.01g)、及びLUPEROX130XL45(0.01g)を、還流凝縮器、温度計、機械式攪拌機、及び窒素ガス入口を備えた4口フラスコに加えた。混合物を攪拌し窒素中で60℃まで加熱した。重合中に、反応混合物の温度は約180℃でピークに達した。反応温度がピークに達した後、混合物を更に30分間140℃で加熱した。混合物の温度を120℃に冷却し、MAnh(22.8g)とIRGANOX1076(0.42g)を加えた。反応混合物を120℃で4時間撹拌し、その後で、HDDMA(28.7g)、BISOMER EP100DMA(28.7g)及びLUCIRIN TPO−L(0.17g)を加え、オリゴマー混合物を濃い液体として得た。
【0097】
図4Aに示したものと類似の「サンドイッチ」からなる光学素子を以下のように作成した。厚さ1mmの石英板を25mm角に切断した。それらの切断片を、イソプロピルアルコール中の5wt%の水、2wt%の3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリトキシシラン、及び0.5wt%の酢酸の溶液に浸した。それらの切断片をイソプロピルアルコールですすぎ、次に25分間140℃のオーブン内で乾燥させた。適切なサイズのKE型偏光子フィルム片を同じシラン溶液に10秒ずつ浸し、次にイソプロピルアルコールですすいだ。次に、これらを1時間100℃のオーブンに入れた。
【0098】
数滴(0.15〜0.4g)支持層材料1を、前述のシラン処理した石英基板の上面に塗布した。この未硬化の液体支持層上に、適切なサイズのシラン処理偏光子フィルムを置いた。更に数滴(0.15〜0.4g)の支持層材料1を偏光子フィルムの上に塗布した。第2のシラン処理ガラス基板をこのスタックの上に置き、上から押して余分な液体を絞り出した。このサンドイッチ組立体は、Norlux 808 375 nm LEDアレイ(イリノイ州キャロル・ストリーム(Carol Stream, IL)のNorlux Corporationから入手可能なNAR375808A003)を使用して露光時間1分間で硬化された。余分な重合体を安全かみそりの刃で除去し、閉じ込めた偏光子のガラス面をアセトンで洗浄した。
【0099】
光学素子の環境試験は、100℃で240時間、−60℃/相対湿度90%で240時間、−40℃で240時間、−20℃〜80℃で70熱サイクル(各温度に3時間入れ、各温度の間に1時間勾配をつけた)にさらすことにより実行された。試験サンプルには、剥がれと割れに関して構造の著しい機械的変化はなかった。
【0100】
比較例1
紫外線接着剤を使用してKE偏光子をTACに付着させることによって比較例1を作成された(米国特許出願2006/0139574 A1号に示されたように)。次に、光学感圧接着剤を使用して石英基板をKE偏光子に付着させた。各接着剤層は、30〜40μmの厚さであった。
【0101】
評価
例1と比較例1を、通常フロント・スクリーンHTPSプロジェクターで受ける光束と熱にさらして光漏れを評価した。各試料を、イメージャを取り外した状態のEpson 81P プロジェクターに入れ、緑色チャネルを測定に使用した。光が吸収されスクリーン上が暗い状態になるように偏光子を位置合わせした。次に、Minolta CL 200照度計と0.4ニュートラル・フィルタを使用して、スクリーンの4つの角(90%フィールドポイント)と中心で光強度を測定した。中心と角のルクス値を比較することによって、試料間の相対的な光漏れを測定することができる。
【0102】
試験で、試料は2つの方向に向けられ、それぞれの向きは、図7Aと図7Bに概略的に示される。各事例で、試験装置は、ランプ702と照明光学素子704、並びにXキューブ/映写レンズ706と検出器708を備える。イメージャ710は、図7Aと図7Bでは点線で示され、試験の際には存在しないが、試験装置内の他の光学部品に対する偏光子構造の向きを示すために図面に含まれる。図7Aに示した向き1は、試験装置700内で偏光子構造712が入射位置で使用される適用例をシミュレートした。この場合、石英基板714は、ランプ702の方に位置決めされ、偏光子716は、Xキューブ/映写レンズ706の方に位置決めされた。図7Bに示した向き2は、試験装置800内で偏光子構造722が射出位置で使用される適用例をシミュレートした。向き2では、石英基板724は、ランプ702と反対を向き、偏光子726は、Xキューブ/映写レンズ706と反対を向いている。
【0103】
試験を行なうために、偏光子構造712、722を試験装置700/800に挿入し、少なくとも2分間温度を安定させた。同一プロジェクターの緑(500〜600nm)の光束をあらかじめ測定した。ニュートラル(ND)フィルタ(低透過率と均一スペクトル応答を有するフィルタ)と映写レンズを使用して、光束を少なくとも12ミリワット/mm2になるように計算した。その結果を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
表2のデータから、両方の向き1(図7A)と向き2(図7B)において、比較例1が、各中心値の比較で例1より多い光漏れを示すことが分かる。角の漏れデータでは変化の大きさがかなり小さいが、比較例1では光レベルが全体的に高いことに注意されたい。両方の向きと全ての位置(中心と角)で、全体の光レベルは、例1より比較例1の方が高い。これは、向き2ではより明らかである。
【0106】
視覚的に、例示的1と比較例1の両方には著しい漏れがあった。例えば、例1と向き1の比較例1の場合、漏れパターンは、直交偏光子漏れパターン特有のものであるが、向き2の比較例1は、直交偏光子漏れパターン並びに設定された測定位置(6.9ルクスを示す1つの位置)よりも角から近くに明るい領域がある。向き2では、三酢酸セルロース構造とその固有の複屈折及び誘起複屈折から高い光漏れが生じる可能性が高い。
【0107】
例B
支持層材料1は、直径47mmで厚さ約4.5mmの円盤形キャビティを有する鋳型に注入された。円盤を80℃まで加熱し、Norlux 375nm LEDアレイに60秒間さらし材料を硬化させた。比較となる市販の材料を、0.06wt%のLucirin TPO-Lで作成し、同じように円盤状に硬化させた。TCS Plus Spectrophotometer(BYK-Gardner USA, ミズーリ州シルバースプリング(Silver Spring, MO))を使用しこれらの円盤の420nmでの透過率(%T)とb*値を測定した。その結果を表3に示す。
【0108】
硬化した円盤試料を回転台に取り付け、J.A.Woollam M2000可変角スペクトル楕円偏光計を使用して、一連の位置における透過スペクトル楕円偏光解析法(TSE)遅延特性データを測定した。合計8つの面内測定を行うために、直交する2つの方向に6ミリメートル離れた4つの位置で面内測定を行った。測定した遅延特性を、545〜555ナノメートルの波長範囲で平均した。試料の複屈折は、遅延特性を試料厚で割ることによって求めた。複屈折値を表3に示す。
【0109】
動的機械分析試験のために、円盤の一部分をダイアモンドソーで1mm×4.5mm×20mmの公称寸法を有するビームに切断した。次に、これらのビームを、Thermal Analysis Q800 DMA機器によって、支点間距離4.5mm、周波数1Hz、及び固定振幅5ミクロンの単一片持曲げモードで試験した。温度を25℃から150℃まで2℃/分の割合で高めた。DMA実験で確認された最大接線デルタ値を使用してTgを決定した。これらの係数とTg結果を表3に示す。
【0110】
また、円盤の一部分を、ダイアモンドソーによって、37〜47mmの長さで9mm×4.5mmの公称寸法を有するビームに切断した。これらのビームの破壊靱性を、ASTM D 5045-99により単一エッジ・ノッチ・ビーム破面試験を使用して測定した。ダイアモンドソーを使用してビームの一面にノッチを付け、単一エッジ・ノッチ・ビーム試験片を作成した。ノッチを安全かみそりの刃で軽く叩いて各試験片にクラックを入れた。次に、試験片を、規格に示された構成で36mm間隔の支持ローラを備えたSintech/MTS負荷フレームで破壊試験を行った。試験温度は22℃、負荷速度は10mm/分であった。全ての事例で、負荷変位曲線は、線形弾性負荷を示し、次に突発的な高速破壊を示した。次に、規格に示されたように応力拡大係数(KIc)を計算し、その結果を表3に示す。
【0111】
【表3】

【0112】
例C
支持層材料2を以下のよう作成した。IBOA(350g)、HBA(40g)、IOTG(12g)、VAZO52(0.02g)、VAZO88(0.02g)及びLUPERSOL130(0.02g)の溶液を攪拌しながら180℃を超える温度まで窒素中で加熱した。これを180℃に冷却し、10gのIBOAを0.02gのVAZO88と共に加えた。N2中で180℃で40分間攪拌し続けた。次に、フラスコに空気を入れた。溶液の温度を120℃に下げた。MAnh(45.6g)とIRGANOX1076(0.8g)を加え、反応物を4時間攪拌した。冷却後、5.9gのこの樹脂をHDDMA(0.74g)、BISOMER EP100DMA(0.74g)及びVAZO67(0.022g)と混ぜた。
【0113】
厚さ1mmのフロート・ガラス(ホウケイ酸ガラス)の板を25mm角に切断した。それらの切断片を、イソプロピルアルコール中の5wt%の水、2wt%の3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、及び0.5wt%酢酸の溶液に浸した。それらの切断片をイソプロピルアルコールですすぎ、次に25分間140℃のオーブン内で乾燥させた。寸法17.4mm×20.2mmのKE型偏光子フィルム片を、10秒ずつ同じシラン溶液に浸して、次にイソプロピルアルコールですすいだ。次に、これらを1時間100℃オーブンに入れた。
【0114】
数滴(0.15〜0.4g)の支持層材料2を、前述のシラン処理したガラス基板の上面に塗布した。この未硬化液体支持層上に、寸法17.4mm×20.2mmのシラン処理した偏光子フィルムを配置した。更に数滴(0.15〜0.4g)の支持層材料2を偏光子に塗布した。第2のシラン処理したガラス基板をこのスタックの上に置き、上から押して余分な液体を絞り出した。このサンドイッチ組立体を16時間80℃のオーブンに入れた。次に、更に80分間120℃オーブンに入れた。取り出すと、液体が堅い重合体に硬化した。余分な重合体を安全かみそりの刃で除去し、閉じ込められた偏光子のガラス面をアセトンで洗浄した。
【0115】
例D
ランダム偏光と500nm〜580nmのスペクトル成分の22ミリワット/mm2の光束にさらした基板構造の比較研究で、図4Aに示した構造を図1に示した構造と比較した。この比較は、両方の基板材料として単結晶石英と両方の基板材料として石英を使用する図4Aの構造のKE偏光子を使用することで構成される。
【0116】
代替として、紫外線接着剤を使用してKE偏光子をTACに付着させた(米国特許第2006/0139574A1号に示されたように)。この構造物を単結晶石英、サファイア及び石英から成る基板材料に付着させた。暴露中にRaytheon赤外線撮像カメラによって表面温度を測定した。図4A構造間の表面温度を標準構造と比較すると、図4Aの構造の表面温度が図1の構造より低いことが分かる。結果を表4に示す。
【0117】
【表4】

【0118】
例E
環境試験(オーブンが100℃で設定された環境)下での黄変を最小にするためにKE偏光子フィルム材料の表面作成方法を比較する研究において、図4Aに示した偏光子構造(例1の手順に従って作成された)を比較した。構造の組み立て前にシラン処置を追加する他に、KE偏光子を100℃で1時間と120℃で1時間乾燥させた。この結果から、オーブン内で240時間環境エージングした後、組み立て前に100℃で1時間乾燥させた試料よりも組み立て前に120℃で1時間乾燥させた試料の方が透過損が小さいことが分かった。100℃乾燥試料の波長範囲500nm〜590nmにわたる透過率の平均変化は、120℃乾燥試料の0.67%と比較して、1.48%であった。組み立て前のKE偏光子の乾燥は、KE偏光子が高温にさらされたとき生じる可能性がある付加的な触媒脱水を最小にする。その結果を表5に示す。
【0119】
【表5】

【0120】
本発明の様々な実施形態を説明した。以上その他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0121】
50 光学素子
52 偏光子
54、56 主面
58、60 支持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層を有する固有偏光子を備える光学素子であって、
前記支持層が、
(a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上のTgを有する50〜99重量部の(メタ)アクリロイルオリゴマーと、
(b)1〜50重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、
(c)0.001〜5重量部の開始剤
の反応生成物を含む光学素子。
【請求項2】
前記固有偏光子は、KE型偏光子又はK型偏光子を備える、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記支持層が、
(a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上のTgとを有する75〜85重量部の(メタ)アクリロイルオリゴマーと、
(b)15〜25重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、
(c)0.001〜5重量部の開始剤の反応生成物
を含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記(メタ)アクリロイルオリゴマーは、
(a)20℃以上のTgを有する重合体に単独重合可能な50〜99重量部の(メタ)アクリレートエステルモノマー単位と、
(b)ペンダントフリーラジカル重合性官能基を有する1〜50重量部のモノマー単位と、
(c)100重量部の前記a)と前記b)に対して、20℃未満のガラス転移温度を有する重合体に単独重合可能な40重量部未満のモノマー単位
との反応生成物を含む請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートエステルモノマー単位は、50℃以上のTgを有する重合体に単独重合可能である、請求項4に記載の光学素子。
【請求項6】
前記開始剤は、光開始剤である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
前記支持層は、第1の支持層を有し、前記光学素子は、更に、第2の支持層を有し、前記偏光子は、前記第1と第2の支持層の間に配置された、請求項1に記載の光学素子。
【請求項8】
前記偏光子は、前記支持層上に閉じ込められた、請求項1に記載の光学素子。
【請求項9】
前記支持層は、0.5mm以下の厚さを有する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項10】
前記支持層の隣りで且つ前記偏光子と反対側に光学的に透明な基板を更に有する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項11】
前記基板は、ガラス又は重合体である、請求項10に記載の光学素子。
【請求項12】
前記基板は、石英、サファイア及びホウケイ酸ガラスから選択されたガラスである、請求項10に記載の光学素子。
【請求項13】
前記偏光子は、シラン表面処理を含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項14】
前記基板は、シラン表面処理を有するガラスである、請求項10に記載の光学素子。
【請求項15】
前記基板上に反射防止層を更に有する、請求項10に記載の光学素子。
【請求項16】
前記支持層と前記基板の間に配置された接着層を更に有する、請求項10に記載の光学素子。
【請求項17】
前記支持層は、50℃以上のTgと、110℃の温度で少なくとも50MPaの弾性率を有する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項18】
対向する第1と第2の主面を有する固有偏光子と、
前記固有偏光子の前記第1の主面上にあって、
(a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上のTgとを有する50〜99重量部の(メタ)アクリロイルオリゴマーと、
(b)1〜50重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、
(c)0.001〜5重量部の開始剤の反応生成物
とを有する第1の支持層と、
前記第1の支持層上の前記固有偏光子の反対側にある第1の光学的に透明な基板と、
前記固有偏光子の前記第2の主面上にあって、
(a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上のTgを有する50〜99重量部の(メタ)アクリロイルオリゴマーと、
(b)1〜50重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、
(c)0.001〜5重量部の開始剤との反応生成物
とを有する第2の支持層と、
前記第2の支持層上の前記固有偏光子の反対側にある第2の光学的に透明な基板とを有する光学素子。
【請求項19】
1.5mm以下の厚さを有する、請求項18に記載の光学素子。
【請求項20】
(a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上のTgとを有する50〜99重量部の(メタ)アクリロイルオリゴマーと、
(b)1〜50重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、
(c)0.001〜5重量部の開始剤
の反応生成物を含む支持層と、
前記支持層に閉じ込められた固有偏光子と、
前記支持層の両側の外側面に配置された第1と第2の光学的に透明な基板とを有する光学素子。
【請求項21】
1.5mm以下の厚さを有する、請求項20に記載の光学素子。
【請求項22】
光学素子を形成する方法であって、
(A)第1の主面と第2の主面を有する固有偏光子を提供する工程と、
(B)前記第1と第2の主面の少なくとも一方に、
(a)複数のペンダントフリーラジカル重合性官能基と20℃以上のTgを有する50〜99重量部の(メタ)アクリロイルオリゴマーと、
(b)1〜50重量部のフリーラジカル重合性架橋剤及び/又は希釈剤モノマーと、
(c)0.001〜5重量部の開始剤
とを含む硬化性合成物層を付着させる工程と、
(C)前記硬化性合成物層を紫外線で硬化させて硬化支持層を形成する工程とを含む方法。
【請求項23】
光源と請求項1に記載の光学素子とを有するプロジェクター・システム。
【請求項24】
前記光学素子は、更に、LCDパネルを有する、請求項23に記載のプロジェクター・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2010−506220(P2010−506220A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531618(P2009−531618)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/080508
【国際公開番号】WO2008/045768
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】