説明

偏光板分離供給装置及び偏光板分離供給方法並びに液晶パネル

【課題】多数の偏光板を平積みにした偏光板を確実に1枚ずつ分離して供給するに当って、円滑かつ迅速な分離供給を可能にする。
【解決手段】吸着ドラム11によって、偏光板スタック部10から偏光板6を取り出すために、吸着ドラム11を回転させると共に、偏光板スタック部10を前進方向に移動させる。吸着ドラム11の外周面に吸着孔が開口しており、偏光板スタック部10の最上段の偏光板6の表面を吸着させて取り出すが、この吸着ドラム11に偏光板6が2枚密着していることが重送検出手段15で検出されると、偏光板スタック部10を前後方向に移動させて、リトライを所定回数行った上で、吸着ドラム11が180度回転したときに、剥離用ローラ21により外周側の偏光板6を回収し内周側の偏光板6を偏光板搬出部17により送り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶セルの表裏両面に偏光板を貼り付けるために、多数の偏光板を平積み状態にした偏光板スタック部から偏光板を1枚ずつ分離して、液晶セルへの偏光板貼り付け機構に供給するための偏光板分離供給装置及び偏光板分離供給方法に関するものであり、またこのようにして供給された偏光板を液晶セルの表裏両面に貼り付けた液晶パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルを構成する液晶セルは、2枚の透明基板の間にセルギャップを形成して貼り合わせたものからなり、セルギャップに液晶を封入する構成としたものである。さらに、この液晶セルには、その表裏両面に偏光板が貼り付けられる。この液晶セルに偏光板を貼り付けるには、液晶セルを所定の位置に配置し、この液晶セルに対して偏光板を位置決めした上で貼り付けるようにするが、偏光板は、例えば特許文献1に示されているように、長尺のテープ状のベースに貼り付けたものを使用していた。
【0003】
この特許文献1では、ベースには所定のピッチ間隔をもって偏光板を貼り付けることにより偏光板テープとなし、この偏光板テープをリールに巻回しておき、液晶セルを搬送経路に沿って搬送する間に、このリールから繰り出した偏光板テープを貼り付けドラムにより液晶セルの表面に対して押圧するようにする。そして、ベースを液晶セルに貼り付けた偏光板から分離して回収するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−22012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶セルが小型で、それに貼り付けられる偏光板もサイズの小さいものの場合には、前述した従来技術の方式を採用することはできるが、液晶パネルが大型化すれば、当然、大判の偏光板が貼り付けられることになる。偏光板テープとしてリールに巻回して、このリールから供給する方式は、取り扱われる偏光板のサイズに限度があり、あまり大きなサイズの偏光板をリールから供給する方式を採用するのは困難なことがある。
【0006】
以上のことから、偏光板スタック部を設けて、この偏光板スタック部に多数の偏光板を平積み状態にしておき、この偏光板スタック部から偏光板を1枚ずつ分離して取り出すようにすると、大判の偏光板であっても、1枚ずつ分離して液晶セルへの貼り付け位置に供給することができる。ただし、偏光板を平積みにすると、上部側の偏光板はともかく、下部側の偏光板には、大きな重量が作用することになるので、上下の偏光板が密着してしまって分離しにくくなり、1枚の偏光板を迅速かつ確実に供給できず、2枚やそれ以上の偏光板が固着した状態で供給されるおそれもある等といった不都合がある。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、多数の偏光板を平積みにした状態の偏光板を1枚ずつ分離するに当って、偏光板を確実に1枚ずつ分離して、円滑かつ迅速に供給できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明において、平積み状態にした偏光板スタック部から偏光板を1枚ずつ分離してパネルへの偏光板貼り付け機構に供給する偏光板分離供給装置は、前記偏光板スタック部から1枚の偏光板を取り出すために、外周面に吸着孔を開口させて設け、この偏光板スタック部の最上段の偏光板の表面を吸着する吸着ドラムと、前記吸着ドラムを前記最上段の偏光板に沿って転動させるために、この吸着ドラムを回転駆動し、かつこの吸着ドラムと前記偏光板スタック部とを前後方向に相対移動させる駆動手段と、前記吸着ドラムの外面に吸着保持されている偏光板の厚みに基づいて偏光板の重送の有無を検出する重送検出手段と、1枚の偏光板が前記吸着ドラムに保持されたときには、この偏光板を前記偏光板貼り付け機構に供給し、前記重送検出手段により前記吸着ドラムで2枚の偏光板が取り出されと検出されたときには、重送状態の偏光板間を分離することにより重送を解消した上で、1枚の偏光板を前記偏光板貼り付け機構に供給する偏光板搬出部とを備える構成としたことをその特徴とするものである。
【0009】
吸着ドラムは偏光板スタック部から偏光板を1枚ずつ取り出して、偏光板搬出部から所定のステージ、即ち液晶セルに偏光板を貼り付ける偏光板貼り付け機構を設けたステージに搬送される。吸着ドラムには、偏光板を吸着するために、吸着孔が外周面に開口しているが、吸着孔はこの吸着ドラムの軸線方向に1列に複数形成するのが望ましい。従って、吸着ドラムの回転方向において、偏光板の先端部分がこの吸着孔により吸着される。偏光板を偏光板スタック部から分離したときに、その後端部が自由状態とならないようにすることができる。例えば、吸着ドラムの外径と偏光板の長さ寸法との関係において、偏光板供給手段により偏光板が偏光板貼り付け機構に供給する状態となっても、なおこの偏光板が偏光板スタック部の上に位置する構成とすれば良い。ただし、偏光板の先端が偏光板供給手段への供給部の到達する前に、この偏光板が偏光板スタック部から離脱する場合には、この偏光板の後端部を吸着保持するようにする。
【0010】
偏光板搬出部は、吸着ドラムによる偏光板スタック部の偏光板への当接位置から180度回転した位置とすることが望ましい。重送検出手段は、吸着ドラムによる偏光板スタック部の偏光板への当接位置から偏光板供給部側に向けて90度回転した位置またはそれ以下の回転位置に配置することができる。これによって、偏光板を吸着保持している吸着ドラムが回転する間に、重送状態にあるか否かを、迅速かつ確実に検出することができる。従って、重送状態であると判定されると、吸着ドラムを逆転させた後に再度正転方向に回転することによりリトライすることができる。
【0011】
ここで、重送検出手段では、この吸着ドラムに吸着保持されている偏光板の厚みを検出するように構成される。具体的には、重送検出手段としては、プッシュロッドを有し、吸着ドラムに保持されている偏光板の表面をこのプッシュロッドで押動して、その反力を検出するもので構成でき、吸着ドラムにプッシュロッドと対面する位置にパッドを設けることによって、正確に厚み検出を行うことができる。
【0012】
偏光板搬出部は、吸着ドラムに偏光板が1枚のみ吸着保持されている場合には、そのまま搬出されるが、重送状態となっていると、経路を分岐させて、1枚の偏光板のみが搬出され、他の偏光板は回収される。ここで、吸着ドラムには、偏光板が重送状態で保持されているとしても、殆どは2枚の場合であって、3枚以上となっていることは極めて稀である。3枚以上の重送状態となっている場合は、重送検出手段での検出結果に基づいて装置を停止させる。2枚が重送されているときには、吸着ドラムにおける内周側の偏光板を搬出し、外周側を回収する場合と、外周側を搬出し、内周側を回収する場合とがある。いずれにしろ、吸着ドラムに巻回された2枚の偏光板は、内周側のものと外周側のものとで、曲率半径が異なってくるので、両者に滑りが生じることになる。これによって、偏光板間の密着性が解除されるから、容易に分離できる。
【0013】
内周側の偏光板を搬出する場合には、吸着ドラムの所定の回転角位置に対向配設され、外周面に吸着部を設けた剥離用ローラを設けることによって、経路分岐部とする。内周側の偏光板は吸着ドラムと剥離用ローラとの間から送り出す。また、外周側偏光板搬送経路は、剥離用ローラに移行して、回収部に向けて偏光板を送り込むように構成する。負圧切換制御部は、吸着ドラムの吸着孔が剥離用ローラの配設位置に到達したときに、吸着孔における負圧を解除するが、重送検出手段により吸着ドラムでの偏光板の重送状態が検出されると、剥離用ローラの吸着部を作動させて、吸着ドラムに保持されている外周側の偏光板を吸着保持して回転することによって、重送偏光板の分離が行われる。
【0014】
また、外周側の偏光板を搬出する場合には、吸着ドラムに反転用ローラを対向配設させることによって、経路の分岐を行わせる。重送検出手段に負圧切換制御部を接続し、反転用ローラには、その外周面に吸着ドラムに吸着保持されている偏光板を吸着する吸着部を設ける。負圧切換制御部は、重送検出手段により吸着ドラムが1枚の偏光板を保持していると判定されると、この偏光板が反転用ローラと対面する位置に到達したときに、この偏光板を反転用ローラで吸着させ、かつ吸着ドラムの吸着孔に対する負圧を解除する。吸着ドラムの重送状態であると判定されると、この偏光板が反転用ローラと対面する位置に到達したときに、この偏光板を反転用ローラで吸着させ、かつ吸着ドラムの吸着孔に対する負圧を継続するように制御する。これによって、内周側の偏光板は偏光スタック部に還流するようにして回収される。
【0015】
また、平積み状態にした偏光板スタック部から偏光板を1枚ずつ分離してパネルへの偏光板貼り付けラインに供給する偏光板分離供給方法の発明は、外周面に複数の吸着孔を設けた吸着ドラムを、偏光板スタック部に積層されている偏光板の最上部に位置する偏光板上で転動させて、1枚の偏光板を分離させてこの吸着ドラムに吸着保持させる偏光板分離工程と、前記吸着ドラムを所定角度回転させた状態で、この吸着ドラムに吸着保持されている偏光板の厚みを検出して、偏光板の重送の有無を検出する偏光板重送検出工程と、前記偏光板重送検出工程で1枚の偏光板が吸着ドラムに吸着されていると判定したときには、吸着ドラムの回転を継続させて、次工程に搬入するようになし、偏光板が重送されていると判定したときには、再度偏光板分離工程を実行するリトライ工程と、複数回リトライ工程を行っても、偏光板の重送状態が解消されないときには、重送状態のまま吸着ドラムを回転させて、この吸着ドラムを所定角度回転させたときに、この偏光板の重送を解除して、前記偏光板貼り付け機構に供給する重送解除・供給工程とからなることを特徴としている。
【0016】
重送解除・供給工程では、吸着ドラムに吸着保持されている重送状態の内外2層の偏光板のうち、内周側の偏光板を偏光板貼り付け機構に供給し、外周側の偏光板を回収するようにするか、または吸着ドラムの2層の偏光板のうち、外周側の偏光板を偏光板貼り付け機構に供給し、内周側の偏光板は偏光板スタック部に還流させるようにすることも可能である。
【発明の効果】
【0017】
平積みにした多数の偏光板を確実に1枚ずつ分離して、円滑かつ迅速にパネルへの偏光板貼り付けラインに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】液晶パネルを分解して示す構成説明図である。
【図2】液晶セルへの偏光板の貼り付け装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す偏光板分離供給装置の構成説明図である。
【図4】図3の偏光板分離供給装置を構成する吸着ドラムの構成説明図である。
【図5】偏光板分離供給装置の動作を説明する図であって、偏光板の分離を開始する状態を示す動作説明図である。
【図6】偏光板分離供給装置による吸着ドラムから偏光板を偏光板搬出部に送り込まれる状態を示す動作説明図である。
【図7】吸着ドラムに2枚の偏光板が吸着保持されているときに、この2枚の偏光板を分離している状態を示す作動説明図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示す偏光板分離供給装置の構成説明図である。
【図9】図8に示した偏光板分離供給装置において、吸着ドラムに2枚の偏光板が吸着保持されているときに、この2枚の偏光板を分離している状態を示す作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に液晶パネル1の概略構成を分解して示す。液晶パネル1は一対の透明基板2,3間に液晶4を封入した液晶セル5から構成され、両透明基板2,3の表面には偏光板6V,6Hが貼り付けられる。偏光板6V,6Hは、光源部7(図面上では反射部材を示す)からの光を垂直及び水平の直交方向に偏光させるためのものである。なお、以下の説明においては、偏光板6V,6Hにおいて、偏光方向を限定しない場合には、符号6を用いる。
【0020】
液晶セル5の表裏両面への偏光板6V,6Hの貼り付け装置は概略図2に示したように構成される。図中において、8は液晶セル5を搬送する搬送路であり、液晶セル5はこの搬送路8において、ほぼ垂直状態にして搬送されるようになっている。この搬送路8の途中位置には、左右一対の貼り付けドラム9,9が配置されており、これら両貼り付けローラ9の外周面にそれぞれ偏光板6が吸着保持されている。液晶セル5が搬送路8に沿って搬送されると、これら貼り付けドラム9が相互に近接する方向に変位して、液晶セル5を進行させる間に、貼り付けドラム9に吸着保持されている偏光板6がこの液晶セル5の表裏両面に貼り付けられることになる。これによって液晶パネル1が形成される。
【0021】
偏光板6を1枚ずつ貼り付けドラム9に供給する偏光板分離供給装置の構成についての第1の実施の形態を図3乃至図7に示す。まず、図3に示したように、所定枚数の偏光板6が平積みにして収容されており、この偏光板6の収容部が偏光板スタック部10である。このように、偏光板スタック部10に水平状態に積層された偏光板から1枚ずつ分離して取り出される。そして、偏光板6は水平状態から垂直状態となるように姿勢を転換させて、貼り付け装置の搬送路8に送り込まれる。なお、偏光板6の姿勢転換機構は周知の構成を採用することができるので、この機構についての図示及び具体的な説明は省略する。偏光板分離供給装置は一対設けられ、偏光板6V,6Hはそれぞれ別個の偏光板スタック部10には収容されている。
【0022】
偏光板スタック部10から偏光板6を1枚ずつ分離して取り出して貼り付け装置に供給するために、偏光板分離供給装置は吸着ドラム11を備えており、この吸着ドラム11は偏光板スタック部10に積層されている偏光板6のうち、最上部に位置する偏光板6の上面を転動するものである。この吸着ドラム11は回転軸12を有し、この回転軸12には図示しない正逆回転モータが接続されており、このモータにより回転軸12を回転させることによって、吸着ドラム11が正転方向Aまたは逆転方向Bに向けて回転駆動される。また、偏光板スタック部10には往復動手段13が設けられており、この往復動手段13によって偏光板スタック部10は、矢印Fで示した前進方向または矢印Cで示した後退方向に水平移動できるようになっている。これによって、吸着ドラム11は偏光板6の表面に沿って正逆方向に転動となり、この間に偏光板6と吸着ドラム11との間は前後方向に移動する。さらに、往復動手段13には、図示は省略するが、偏光板スタック部10を昇降駆動するための手段が内蔵されている。
【0023】
図4に示したように、吸着ドラム11の外周面には、複数の吸着孔14が設けられており、これらの吸着孔14は、吸着ドラム11の回転軸線と平行な方向に1列に並べられている。吸着ドラム11の吸着孔14に負圧を作用させた状態で、この吸着ドラム11を正転方向Aに向けて回転駆動し、往復動手段13によって偏光板スタック部10を前進方向Fに移動させると、偏光板スタック部10の最上部位置の偏光板6が分離されて、吸着ドラム11に巻回されることになる。なお、吸着孔14は、吸着ドラム11の回転軸線と平行な方向に列状に設けたものを回転ドラム11の円周状に複数設けても良い。
【0024】
さらに、図5に示したように、吸着ドラム11の正転方向Aに向けて90度回転した位置には、重送検出手段15が対向配設されている。この重送検出手段15は、吸着ドラム11に偏光板6が1枚巻回されているか、2枚以上巻回された重送状態となっているかを検出するためのものである。重送検出手段15は、アクチュエータ部15aと、このアクチュエータ部15aにより前後動可能となったプッシュロッド15bとから構成されている。プッシュロッド15bはロードセルを有するものである。アクチュエータ部15aを作動させて、プッシュロッド15bを押し出すと、このプッシュロッド15bの先端が吸着ドラム11に吸着保持されている偏光板6に対して所定の押圧力をもってこの偏光板6を押動することになる。このときの反力をロードセルで検出することによって、偏光板6が1枚であるか、2枚乃至それ以上の重送状態であるかの検出が行われる。このために、吸着ドラム11におけるプッシュロッド15bで押圧される部位にはパッド16が設けられており、このパッド16は荷重を作用させると、容易に圧縮される部材である。このパッド16は、吸着ドラム11における吸着孔14を設けた部位に装着されている。
【0025】
さらに、吸着ドラム11が偏光板スタック部10への当接部から180度の位置、つまり反転した位置に偏光板搬出部17が設けられている。偏光板搬出部17は、吸着ドラム11により1枚の偏光板6が保持されている場合には、これを次工程である偏光板貼り付け機構の搬送路8に送り込み、重送状態となっている場合には、吸着ドラム11に直接巻回されている内側の偏光板6を搬送路8に向けて送り出し、外側に位置する偏光板6は回収経路に移行させるように経路を分岐する構成としている。
【0026】
このために、偏光板搬出部17には、呼び込み部18とコンベア等からなる偏光板搬送手段19とが設けられている。吸着ドラム11に吸着されている偏光板6は、この吸着ドラム11の回転により、呼び込み部18の部位に移動すると、吸着ドラム11の吸着孔14の負圧を解除することによって、偏光板6を呼び込み部18から偏光板搬送手段19に移行するようになる。また、偏光板搬出部17は、偏光板6が吸着ドラム11で重送状態となっていると、外側に位置する偏光板6は、偏光板搬送手段19には向かわず、回収部20に回収させる構成としている。
【0027】
回収部20は、経路分岐部材を構成する剥離用ローラ21により分岐した経路となっており、呼び込み部22及び回収用搬送手段23とを備えている。ここで、剥離用ローラ21の外周面には偏光板6を吸着するための吸着部24が開口している。そして、重送検出手段15には負圧切換制御部25が接続されており、重送状態となっている偏光板6の先端部が吸着ドラム11と剥離用ローラ21との間の位置に到達すると、剥離用ローラ21における吸着部24が作動して、外側の偏光板6が吸着保持されることになる。この状態で、この剥離用ローラ21を回転駆動すると、重送状態となった外側の偏光板6は呼び込み部22から回収用搬送手段23から回収部20に向けて送り込まれる。
【0028】
負圧ポンプ26には開閉弁27及び28を介してそれぞれ吸着ドラム11の吸着孔14及び剥離用ローラ21の吸着部24に接続されている。負圧切換制御部25は、重送検出手段15からの出力信号と、吸着ドラム11の回転量に基づいて、開閉弁27,28を開閉制御することによって、これら吸着孔14及び吸着部24に負圧を作用させたり、負圧の作用を解除したりすることができる。なお、吸着孔14を吸着ドラム11の円周上に複数設けた場合には、開閉弁27を複数系統に分けて設けて、円周上の吸着孔の負圧を制御するようにしても良い。
【0029】
吸着ドラム11の外周面における円周方向の全長をL1とし、偏光板6の全長をL2としたときに、L1/2<L2<L1なる関係を持たせる。これによって、吸着ドラム11に吸着保持されている偏光板6は、その先端が偏光板搬出部17に移行しても、なお部分的に偏光板スタック部10に位置して、吸着ドラム11と当接しており、吸着ドラム11が1回転する前に、偏光板6は偏光板スタック部10から離脱することになる。
【0030】
偏光板分離供給装置は以上のように構成されるものであり、次に偏光板スタック部10において、平積み状態にして収容されている偏光板6を1枚ずつ分離して供給する方法について説明する。
【0031】
まず、図3のように、往復動手段13によって、偏光板スタック部10を最後方位置に配置して、積層状態で収容されているうちの最上部に位置する偏光板6をこの偏光板スタック部10に対向配設した吸着ドラム11と当接させる。往復動手段13は昇降機構を備えているので、偏光板スタック部10を上昇させることによって、吸着ドラム11と当接させることができる。このときには、吸着ドラム11は、その吸着孔14を偏光板スタック部10に対面する位置に待機させておく。
【0032】
開閉弁27を開いて、吸着孔14に負圧吸引力を作用させることによって、最上部位置の偏光板6の表面を吸着保持させる。そして、吸着ドラム11を正転方向Aに回転させ、この回転と同期させて往復動手段13により偏光板スタック部10を前進方向Fに移動させる。その結果、吸着孔14に吸着保持された偏光板6が偏光板スタック部10から分離して吸着ドラム11に保持されて持ち上がるようになる。
【0033】
図5に示したように、吸着ドラム11が正転方向Aに向けて90度回転したときに、一度吸着ドラム11の回転を停止して、重送検出手段15を作動させる。即ち、重送検出手段15のプッシュロッド15bをアクチュエータ部15aから突出させて、吸着ドラム11に吸着保持されている偏光板6を押動させる。プッシュロッド15bが対面するのは、吸着ドラム11におけるパッド16を設けた部位である。重送検出手段15では、偏光板6を押動したときの反力を検出することによって、吸着ドラム11に吸着保持されている偏光板6の状態が判定される。このように、吸着ドラム11を回転させたり、停止させたりするように制御する必要があることから、回転軸12に回転角を検出する検出器を設けるか、または偏光板スタック部10の移動ストロークを検出する検出器を設けて、この検出器からの出力信号に基づいて吸着ドラム11の回転制御を行うようにする。
【0034】
本来であれば、吸着ドラム11には1枚の偏光板6が吸着保持されているはずであり、プッシュロッド15bで押動すれば、所定の反力が検出される。ロードセルによってこの反力を測定することによって、1枚の偏光板6が吸着保持されているか、2枚乃至それ以上が重なり合っているか、さらには偏光板6が全く保持されていないかの検出が行われることになる。
【0035】
1枚の偏光板6が吸着保持されていることが検出された場合には、吸着ドラム11をそのまま継続して回転させる。その結果、図6に示したように、偏光板6の先端が偏光板搬出部17の位置に至ることになる。そこで、開閉弁27を閉じて吸着ドラム11における吸着孔14の負圧を解除し、この吸着ドラム11の回転を継続することによって、偏光板6は呼び込み部18から偏光板搬送手段19に送り込まれる。ここで、吸着ドラム11による吸着孔14における負圧が解除されたときには、なおこの吸着ドラム11で偏光板6の中間部分が押圧されているので、偏光板6は安定した状態に保持される。
【0036】
一方、吸着ドラム11において、偏光板6が全く保持されていないか、または相互の密着等によって2枚若しくはそれ以上の偏光板6が吸着保持されている場合には、吸着ドラム11を逆転方向Bに回転させると共に、偏光板スタック部10を後退方向Cに向けて移動させる。この駆動は図3の位置までとする。そして、吸着ドラム11の吸着孔14による負圧は解除せず、この吸着ドラム11を正転方向Aに回転させると共に、往復動手段13により偏光板スタック部10を前進方向Fに移動させる。つまり、吸着ドラム11による偏光板6の吸着保持を行う動作をリトライする。このリトライの結果、1枚の偏光板6が吸着ドラム11に吸着保持されれば、前述したと同様にして、この偏光板6を偏光板搬出部17によって、偏光板搬送手段19に送り込む。
【0037】
リトライは1回のみ行うようにしても良く、また設定により複数回リトライするようにすることもできる。いずれにしろ、偏光板6が吸着ドラム11に全く取り出せないと、故障が発生したものとして装置の稼働を停止する。また、所定回数のリトライを行っても、3枚以上の偏光板6が重送されていると判断される場合も同様である。ただし、リトライにより偏光板6を吸着ドラム11に繰り返し巻き込んだり、巻き戻したりすることから、このような事態が発生するのは極めて稀である。ただし、偏光板スタック部10では、偏光板6が積層状態となっているので、吸着ドラム11のリトライ時の回転角は概略90度であるから、上下2枚の偏光板6,6が密着したままで剥がれないことがある。
【0038】
リトライを設定された回数行っても、2枚の偏光板6が吸着ドラム11に吸着されていると、リトライを中止して、重送を解消しないままで、吸着ドラム11の正転方向Aへの回転と、偏光板スタック部10を前進方向Fへの送りとを実行する。その結果、偏光板6は、重送状態のままで偏光板搬出部17の位置に移行する。この偏光板搬出部17の位置には、剥離用ローラ21が対向配設されており、この剥離用ローラ21の吸着部24が吸着ドラム11側を向いた状態に待機させている。重送検出手段15により偏光板6の重送状態が検出されているので、この重送状態の偏光板6の先端が剥離用ローラ21の部位に到達すると、開閉弁28を開いて剥離用ローラ21の吸着部24に負圧を作用させて、重送偏光板6の外周側に位置する偏光板6を剥離用ローラ21に吸着保持させ、この剥離用ローラ21を回転駆動する。
【0039】
これによって、外周側の偏光板6は呼び込み部22から回収用搬送手段23に送り込まれて、回収部20で回収されて、矢印29で示したように、系外に搬出される。一方、内側の偏光板6は偏光板搬出部17において、吸着孔14による吸着が解除され、呼び込み部18から偏光板搬送手段19に向けて送り込まれることになる。そして、回収部20において回収された偏光板6は改めて偏光板スタック部10に供給することができる。
【0040】
ここで、吸着ドラム11に保持されている2枚の偏光板6,6のうち、内側に位置する偏光板6の曲率半径より外側に位置する偏光板6は曲率半径が偏光板6の1枚の厚み分だけ大きいものとなっている。従って、内外周の偏光板6,6間で径差に基づく滑りが発生することになり、両者間の密着性が解除される。そして、剥離用ローラ21によって外周側の偏光板6が吸着保持されているので、この外周側の偏光板6は内周側の偏光板6から円滑に剥離されて、1枚の偏光板6が偏光板搬出部17に搬送されて、偏光板貼り付け機構の搬送路8に送り込まれる。
【0041】
前述した第1の実施の形態では、重送偏光板の一方を偏光板搬出部に供給し、他方の偏光板を回収部に送り込むように構成したが、図8及び図9に示したように、重送偏光板の一方は偏光板搬出部に供給するが、他方の偏光板を偏光板スタック部に還流させるように構成することもできる。
【0042】
従って、この第2の実施の形態においては、図8に示したように、偏光板スタック部110から吸着ドラム111によって偏光板6を取り出して、この吸着ドラム111に吸着保持させた偏光板6を重送検出手段115で検出する点は、第1の実施の形態と同様である。重送検出手段115で吸着ドラム111に1枚の偏光板6が吸着保持されていると判定されると、吸着ドラム111が180度回転するが、この位置には吸着ドラム111に反転用ローラ121が対向配設されている。この反転用ローラ121は第1の実施の形態における剥離用ローラ21と同じ構成とし、この反転用ローラ121の位置で偏光板6の経路を分岐させる。ただし、偏光板搬出部117は、第1の実施の形態に示した偏光板搬出部17の位置ではなく、回収用搬送手段23と同じ位置で同じ構成とする。従って、偏光板6が搬出される経路は1箇所のみとなり、もうひとつの経路は偏光板スタック部110に向かう還流経路とする。
【0043】
このように構成することによって、偏光板スタック部110から取り出された偏光板6は吸着ドラム111に吸着されて取り出される。そして、重送検出手段115による検出結果によって、1枚の偏光板6が吸着ドラム111の外周面に吸着保持されていると判定されたときには、この吸着ドラム111から反転用ローラ121に受け渡される。即ち、吸着ドラム111側の負圧を解除し、反転ローラ121側に負圧を作用させることによって、偏光板6は反転用ローラ121に移行して、その搬送方向を反転させて、偏光板搬出部117に送り込まれることになる。
【0044】
一方、重送検出手段115によって吸着ドラム111に2枚の偏光板6が保持されていると判定されたときには、外周側に位置する偏光板6が反転用ローラ121により吸着されて、呼び込み部118と偏光板搬送部119とを有する偏光板搬出部117に送り込まれる。そして、吸着ドラム111側の負圧を解除せず、内周側の偏光板6を保持する状態を維持して、反転用ローラ121と共に吸着ドラム111を回転駆動する。その結果、図9に示したように、外周側に位置する偏光板6は反転用ローラ121により偏光板搬出部117に向けて搬送され、内周側の偏光板6は吸着ドラム111に保持されたまま偏光板スタック部110に還流することになる。なお、吸着ドラム111に保持されて、偏光板スタック部110に還流した偏光板6を偏光板スタック部110に積層されている偏光板6の端部と位置合わせするには、往復動手段113によって、偏光板スタック部110を下降させて吸着ドラム111から分離させるようになし、この状態で偏光板スタック部110を前後に動かして、その位置調整を行うようにすれば良い。
【符号の説明】
【0045】
1 液晶パネル 2,3 透明基板
5 液晶セル 6,6V,6H 偏光板
10,110 偏光板スタック部 11,111 吸着ドラム
12 回転軸 13,113 往復動手段
14 吸着孔 15,115 重送検出手段
16 パッド 17,117 偏光板搬出部
20 回収部 21 剥離用ローラ
121 反転用ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平積み状態にした偏光板スタック部から偏光板を1枚ずつ分離してパネルへの偏光板貼り付け機構に供給する偏光板分離供給装置であって、
前記偏光板スタック部から1枚の偏光板を取り出すために、外周面に吸着孔を開口させて設け、この偏光板スタック部の最上段の偏光板の表面を吸着する吸着ドラムと、
前記吸着ドラムを前記最上段の偏光板に沿って転動させるために、この吸着ドラムを回転駆動し、かつこの吸着ドラムと前記偏光板スタック部とを前後方向に相対移動させる駆動手段と、
前記吸着ドラムの外面に吸着保持されている偏光板の厚みに基づいて偏光板の重送の有無を検出する重送検出手段と、
1枚の偏光板が前記吸着ドラムに保持されたときには、この偏光板を前記偏光板貼り付け機構に供給し、前記重送検出手段により前記吸着ドラムで2枚の偏光板が取り出されと検出されたときには、重送状態の偏光板間を分離することにより重送を解消した上で、1枚の偏光板を前記偏光板貼り付け機構に供給する偏光板搬出部と
を備える構成としたことを特徴とする偏光板分離供給装置。
【請求項2】
前記吸着ドラムに開口させた前記吸着孔は、この吸着ドラムの軸線方向に向けて1列に複数形成する構成としたことを特徴とする請求項1記載の偏光板分離供給装置。
【請求項3】
前記偏光板供給手段は、前記吸着ドラムによる前記偏光板スタック部の偏光板への当接位置から180度回転した位置に設ける構成としたことを特徴とする請求項1記載の偏光板分離供給装置。
【請求項4】
前記重送検出手段は、前記吸着ドラムによる前記偏光板スタック部の偏光板への当接位置から前記偏光板供給部側に向けて90度回転した位置またはそれ以下の回転位置に配置されて、この吸着ドラムに吸着保持されている偏光板の厚みを検出する構成としたことを特徴とする請求項3記載の偏光板分離供給装置。
【請求項5】
前記重送検出手段はプッシュロッドを有し、前記吸着ドラムに吸着保持されている偏光板の表面を前記プッシュロッドで押動して、その反力を検出するものであり、前記吸着ドラムには前記プッシュロッドと対面する位置にパッドを設ける構成としたことを特徴とする請求項4記載の偏光板分離供給装置。
【請求項6】
前記偏光板供給手段は、前記吸着ドラムに対向配設され、外周面に吸着部を設けた剥離用ローラと、前記吸着ドラムのこの剥離用ローラが対向する位置から吸着ドラムの接線方向に向けて偏光板を送り出す偏光板供給部と、前記重送検出手段に接続した負圧切換制御部とを備え、この負圧切換制御部は、前記吸着ドラムの吸着孔が前記偏光板供給部に到達すると、この吸着孔の負圧を解除するようになし、前記重送検出手段により前記吸着ドラムでの偏光板の重送状態を検出したときには、前記剥離用ローラの前記吸着部を作動させて、前記吸着ドラムに保持されている外周側の偏光板を吸着保持して回転することによって、偏光板を分岐させる構成としたことを特徴とする請求項1記載の偏光板分離供給装置。
【請求項7】
前記偏光板供給手段は、前記吸着ドラムに対向配設した反転用ローラと、前記重送検出手段に接続した負圧切換制御部とを備え、前記反転用ローラには、その外周面に前記吸着ドラムに吸着保持されている偏光板を吸着する吸着部を設け、前記負圧切換制御部は、前記重送検出手段により前記吸着ドラムが1枚の偏光板を保持していると判定されると、この偏光板が前記反転用ローラと対面する位置に到達したときに、この偏光板を前記反転用ローラで吸着させ、かつ前記吸着ドラムの吸着孔に対する負圧を解除し、前記吸着ドラムの重送状態であると判定されると、この偏光板が前記反転用ローラと対面する位置に到達したときに、この偏光板を前記反転用ローラで吸着させ、かつ前記吸着ドラムの吸着孔に対する負圧を継続して、この吸着ドラムに保持されている偏光板を前記偏光至スタック部に還流させるように制御する構成としたことを特徴とする請求項1記載の偏光板分離供給装置。
【請求項8】
平積み状態にした偏光板スタック部から偏光板を1枚ずつ分離してパネルへの偏光板貼り付けラインに供給する偏光板分離供給方法であって、
外周面に複数の吸着孔を設けた吸着ドラムを、偏光板スタック部に積層されている偏光板の最上部に位置する偏光板上で転動させて、1枚の偏光板を分離させてこの吸着ドラムに吸着保持させる偏光板分離工程と、
前記吸着ドラムを所定角度回転させた状態で、この吸着ドラムに吸着保持されている偏光板の厚みを検出して、偏光板の重送の有無を検出する偏光板重送検出工程と、
前記偏光板重送検出工程で1枚の偏光板が吸着ドラムに吸着されていると判定したときには、吸着ドラムの回転を継続させて、次工程に搬入するようになし、
偏光板が重送されていると判定したときには、再度偏光板分離工程を実行するリトライ工程と、
複数回リトライ工程を行っても、偏光板の重送状態が解消されないときには、重送状態のまま吸着ドラムを回転させて、この吸着ドラムを所定角度回転させたときに、この偏光板の重送を解除して、前記偏光板貼り付け機構に供給する重送解除・供給工程と
を含むことを特徴とする偏光板分離供給方法。
【請求項9】
前記重送解除・供給工程では、吸着ドラムに吸着保持されている重送状態の内外2層の偏光板のうち、内周側の偏光板を前記偏光板貼り付け機構に供給し、外周側の偏光板を回収するようにしたことを特徴とする請求項8記載の偏光板分離供給方法。
【請求項10】
前記重送解除・供給工程では、吸着ドラムに吸着保持されている重送状態の内外2層の偏光板のうち、外周側の偏光板を前記偏光板貼り付け機構に供給し、内周側の偏光板は前記偏光板スタック部に還流させるようにしたことを特徴とする請求項8記載の偏光板分離供給方法
【請求項11】
請求項1乃至請求項7のいずれかの偏光板分離供給装置により、または請求項8乃至10の偏光板分離供給方法により偏光板を1枚ずつ分離して偏光板貼り付け機構に供給して、液晶セルの表裏両面に貼り付けることにより製造した液晶パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−32017(P2011−32017A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178482(P2009−178482)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】