説明

偏光解消素子、照明光学装置、露光装置および露光方法

入射偏光の偏光方向に依存することなく、入射偏光を非偏光の光に確実に変換することのできる偏光解消素子。偏光度を有する入射光を実質的に非偏光の光に変換するための偏光解消素子。本発明の偏光解消素子(3)は、光軸(AX)に沿って配置されて複屈折性の結晶材料で形成された2つの偏角プリズム(31,32)を備えている。2つの偏角プリズムの結晶光学軸は、光軸方向から見て互いに異なる方向を向くように設定されている。2つの偏角プリズムの頂角方向は、光軸方向から見て互いに異なり且つ互いに逆向きでないように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光解消素子、照明光学装置、露光装置および露光方法に関し、特に半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のマイクロデバイスをリソグラフィー工程で製造するのに使用される露光装置などに好適な偏光解消素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の典型的な露光装置においては、光源から射出された光束が、オプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズ(またはマイクロレンズアレイなど)を介して、多数の光源からなる実質的な面光源としての二次光源を形成する。二次光源からの光束は、フライアイレンズの後側焦点面の近傍に配置された開口絞りを介して制限された後、コンデンサーレンズに入射する。
【0003】
コンデンサーレンズにより集光された光束は、所定のパターンが形成されたマスクを重畳的に照明する。マスクのパターンを透過した光は、投影光学系を介してウェハ上に結像する。こうして、ウェハ上には、マスクパターンが投影露光(転写)される。なお、マスクに形成されたパターンは高集積化されており、この微細パターンをウェハ上に正確に転写するにはウェハ上において均一な照度分布を得ることが不可欠である。
【0004】
現在、露光光源として、波長が248nmの光を供給するKrFエキシマレーザ光源や、波長が193nmの光を供給するArFエキシマレーザ光源などが用いられている。また、波長が157nmの光を供給するFレーザ光源などの使用が提案されている。従来の露光装置では、この種の光源から供給される直線偏光の光を偏光解消素子により非偏光の光に変換し、非偏光状態の光でマスクを照明している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、後に詳述するように、従来の偏光解消素子では、入射光の偏光方向(楕円偏光の長軸方向)に対して偏光解消素子の結晶光学軸(進相軸または遅相軸)が正確に45度の角度をなすように設定する必要がある。すなわち、入射光の偏光方向が何らかの理由で想定した方向と異なった場合や、偏光解消素子の結晶光学軸の方向が何らかの理由で意図した方向からずれた場合には、十分な偏光解消効果が得られない。
【0006】
また、光源から供給される光の偏光状態が正確にわかっていても、光源から偏光解消素子までの光路中に偏光状態を変化させる要素(例えば透過部材の複屈折性や反射部材のPS位相差など)が存在するために、偏光解消素子に入射する光の偏光方向が正確にわからない場合がある。この場合には、偏光解消素子の結晶光学軸を入射光の偏光方向に対して45度の角度をなすように設定することが困難であり、十分な偏光解消効果が得られない。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、入射偏光の偏光方向に依存することなく、入射偏光を非偏光の光に確実に変換することのできる偏光解消素子を提供することを目的とする。また、本発明の偏光解消素子を用いて、光源からの光の偏光方向に依存することなく非偏光状態の光で被照射面を確実に照明することのできる照明光学装置を提供することを目的とする。また、本発明の照明光学装置を用いて非偏光状態の光でマスクを確実に照明し、適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことのできる露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、偏光度を有する入射光を実質的に非偏光の光に変換するための偏光解消素子において、
光軸に沿って配置されて複屈折性の結晶材料で形成された少なくとも2つの偏角プリズムを備え、
前記少なくとも2つの偏角プリズムの結晶光学軸は、光軸方向から見て互いに異なる方向を向くように設定され、
前記少なくとも2つの偏角プリズムの頂角方向は、前記光軸方向から見て互いに異なり且つ互いに逆向きでないように設定されていることを特徴とする偏光解消素子を提供する。
【0009】
第1形態の好ましい態様によれば、前記少なくとも2つの偏角プリズムは、偏角プリズムを2つだけ有し、前記2つの偏角プリズムの結晶光学軸は、光軸方向から見て互いに45度の角度をなすように設定されている。また、前記少なくとも2つの偏角プリズムは、水晶、フッ化マグネシウム、または方解石により形成されていることが好ましい。また、前記少なくとも2つの偏角プリズムによる合成偏角作用を補償するための補正偏角プリズムをさらに備えていることが好ましい。
【0010】
あるいは、前記少なくとも2つの偏角プリズムは、第1偏角プリズムと第2偏角プリズムとを有し、前記第1偏角プリズムによる偏角作用を補正するための第1補正偏角プリズムと、前記第2偏角プリズムによる偏角作用を補正するための第2補正偏角プリズムとをさらに備えていることが好ましい。この場合、前記第1補正偏角プリズムおよび前記第2補正偏角プリズムは複屈折性材料で形成され、前記偏光解消素子は、入射側から順に、前記第1補正偏角プリズムと、前記第1偏角プリズムと、前記第2偏角プリズムと、前記第2補正偏角プリズムとを有することが好ましい。また、前記第1偏角プリズムと前記第2偏角プリズムとは互いに隣接して配置されていることが好ましい。第1形態では、前記2つの偏角プリズム同士の頂角方向がほぼ直交するように設定されていることが好ましい。
【0011】
本発明の第2形態では、偏光度を有する入射光を実質的に非偏光の光に変換するための偏光解消素子において、
第1の偏光状態の入射光を非偏光の光に変換するための第1ユニットと、該第1ユニットで非偏光の光に変換することのできない第2の偏光状態の入射光を非偏光の光に変換するための第2ユニットとを備えていることを特徴とする偏光解消素子を提供する。第2形態の好ましい態様によれば、前記第1ユニットは、第1の方向に偏光面を有する直線偏光の光を非偏光の光に変換し、前記第2ユニットは、第2の方向に偏光面を有する直線偏光の光を非偏光の光に変換する。
【0012】
本発明の第3形態では、偏光度を有する入射光を実質的に非偏光の光に変換するための偏光解消素子において、
前記入射光の偏光状態の変動にかかわらずに、前記入射光を前記実質的に非偏光の光に常に変換するための手段を備えていることを特徴とする偏光解消素子を提供する。
本発明の第4形態では、偏光度を有する光を供給する光源と、該光源からの光を被照射面に照射する導光光学系とを備えた照明光学装置において、
前記導光光学系は、第1形態、第2形態または第3形態の偏光解消素子を有することを特徴とする照明光学装置を提供する。
【0013】
第3形態の好ましい態様によれば、前記入射光を前記実質的に非偏光の光に常に変換するための手段は、第1の偏光状態の入射光を非偏光の光に変換するための第1ユニットと、該第1ユニットで非偏光の光に変換することのできない第2の偏光状態の入射光を非偏光の光に変換するための第2ユニットとを備えていることが好ましい。
また、第2形態および第3形態の好ましい態様によれば、前記第1ユニットは、複屈折性の結晶材料で形成された少なくとも1つの偏角プリズムを備えることが好ましく、前記第2ユニットは、複屈折性の結晶材料で形成された少なくとも1つの偏角プリズムを備えることが好ましい。
【0014】
第4形態の好ましい態様によれば、前記偏光解消素子を構成する各偏角プリズムは、各偏角プリズムのくさび角をαとし、光軸方向から見たときの各偏角プリズムの2つの屈折率のうちの高い屈折率および低い屈折率をそれぞれn1およびn2とし、前記偏光解消素子に入射する光束の断面の大きさをLとし、前記偏光解消素子に入射する光の波長をλとするとき、Lα(n1−n2)≧λの条件を満足する。また、前記偏光解消素子と前記被照射面との間の光路中に配置されたオプティカルインテグレータをさらに備えていることが好ましい。
【0015】
本発明の第5形態では、前記被照射面に配置されたマスクを照明するための第4形態の照明光学装置を備え、前記マスクに形成されたパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置を提供する。
【0016】
本発明の第6形態では、第4形態の照明光学装置を用いて前記被照射面に配置されたマスクを照明し、前記マスクに形成されたパターンを感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、たとえば複屈折性を有する2つの偏角プリズムを用いて偏光解消素子を構成し、この2つの偏角プリズムの結晶光学軸を互いに異なる方向を向くように設定し、頂角方向を互いに異なり且つ互いに逆向きでないように設定している。その結果、本発明の偏光解消素子では、2つの偏角プリズムの作用により、入射偏光の偏光方向に依存することなく、入射偏光を非偏光の光に確実に変換することができる。
【0018】
また、本発明の偏光解消素子を用いる照明光学装置では、光源からの光の偏光方向に依存することなく非偏光状態の光で被照射面を確実に照明することができる。したがって、本発明の照明光学装置を用いる露光装置および露光方法では、非偏光状態の光でマスクを確実に照明し、適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいては良好な露光により良好なマイクロデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
[図1]本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
[図2]偏光状態測定器がウェハステージに着脱可能に取り付けられた様子を示す図である。
[図3]図2の偏光状態測定器の内部構成を概略的に示す図である。
[図4]図1に示す本実施形態の偏光解消素子の内部構成を概略的に示す図である。
[図5]本実施形態の偏光解消素子を構成する各偏角プリズムの構成を概略的に示す図である。
[図6]本実施形態の偏光解消素子の作用効果を説明する図であって、射出光のストークスパラメータの変化を示す図である。
[図7]本実施形態の偏光解消素子の作用をストークスパラメータとポアンカレ球とを用いて説明する第1の図である。
[図8]本実施形態の偏光解消素子の作用をストークスパラメータとポアンカレ球とを用いて説明する第2の図である。
[図9]マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法のフローチャートである。
[図10]マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得る際の手法のフローチャートである。
[図11]従来の偏光解消素子の構成を概略的に示す図である。
[図12]第1偏角プリズムの結晶光学軸方向の角度φが45度に設定されたときに、入射光の偏光方向の角度θによって射出光のストークスパラメータがどのように変化するかを示す図である。
[図13]第1偏角プリズムの結晶光学軸方向の角度φが22.5度に設定されたときに、入射光の偏光方向の角度θによって射出光のストークスパラメータがどのように変化するかを示す図である。
[図14]図11に示す従来の偏光解消素子の作用をストークスパラメータとポアンカレ球とを用いて説明する第1の図である。
[図15]図11に示す従来の偏光解消素子の不都合をストークスパラメータとポアンカレ球とを用いて説明する図である。
[図16]本実施形態の変形例にかかる偏光解消素子の構成を概略的に示す図である。
[図17]本実施形態の変形例にかかる偏光解消素子の作用効果を概略的に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、本発明の実施形態の説明に先立って、従来の偏光解消素子の不都合について詳細に説明する。図11は、従来の偏光解消素子の構成を概略的に示す図である。図11(a)を参照すると、従来の偏光解消素子は、光の入射側から順に、第1偏角プリズム(くさび板)101と第2偏角プリズム102とにより構成されている。第1偏角プリズム101は、水晶のような複屈折性材料からなり、光線の通過位置によって厚みが異なるため、通過位置によって異なる移相量を有する移相子として機能する。第1偏角プリズム102は、石英ガラスのような非複屈折性材料からなり、第1偏角プリズム101の偏角作用によって曲がった光線を元に戻すための補正板として機能する。
【0021】
なお、厳密な議論においては、複屈折性材料からなる偏角プリズムを通過する光は常光と異常光とで屈折角度が微妙に異なり、その光路差に起因して常光と異常光との間に位相差が発生することにより、入射偏光の偏光状態が変化する。しかしながら、ここでは、第1偏角プリズム101が上述のように通過位置によって異なる移相量を有する移相子であるものと近似して説明することにする。また、本発明の目的および効果を説明するには、このような近似に基づく説明で十分である。
【0022】
図11(b)は、第1偏角プリズム101を光軸方向から見たときの結晶光学軸の方向および入射光の偏光方向を示している。図11(b)では、縦方向をストークスパラメータのS1軸とし、−45度、−45度方向をストークスパラメータのS2軸と定義している。ここで、入射光の偏光方向とは、楕円偏光における楕円長軸の方向であり、直線偏光においては光の振動方向を意味する。図11(b)では、第1偏角プリズム101の結晶光学軸方向103の縦軸に対する角度をφで表わし、入射光の偏光方向104の縦軸に対する角度をθで表わしている。
【0023】
第1偏角プリズム101に入射した偏光は通過位置によって異なる偏光状態変化を受けるため、射出光の偏光状態は通過位置によって異なる偏光状態変化を受けた光の平均とみなすことができる。したがって、射出光のストークスパラメータは、通過位置によって異なる偏光状態変化を受けた光のストークスパラメータの平均となる。
【0024】
ここで、光軸方向から見たときの第1偏角プリズム101の屈折率のうち、高い屈折率をn1とし、低い屈折率をn2とし、第1偏角プリズム101のくさび角(頂角)をαとし、入射光束の断面の大きさをLとしたとき、Lα(n1−n2)が入射光の波長λの整数倍(1倍、2倍、3倍・・・)であるか、あるいは整数倍でなくてもLα(n1−n2)がλに対して十分に大きければ、第1偏角プリズム101の移相量は0〜2πの間でほぼ均等に分布するものと考えることができる。すなわち、射出光のストークスパラメータは、入射光のストークスパラメータに対して0〜2πの移相角変化を受けた場合の平均となる。そして、このような効果を得るには、Lα(n1−n2)≧λの条件を満たす必要がある。
【0025】
図12は、第1偏角プリズムの結晶光学軸方向の角度φが45度に設定されたときに、入射光の偏光方向の角度θによって射出光のストークスパラメータがどのように変化するかを示す図である。図12において、横軸は第1偏角プリズム101に入射する直線偏光の偏光方向の角度θを、縦軸は射出光のストークスパラメータの値を示している。図12を参照すると、入射光の偏光方向が変化した場合、S1およびS3は常に0に保たれるが、S2は−1と+1との間で大きく変化することがわかる。したがって、入射光の偏光方向の角度θ(0≦θ<360)が0度、90度、180度、270度であるときにのみ、S1とS2とS3とが同時に0となり、ひいては完全な偏光解消効果が得られる。
【0026】
図13は、第1偏角プリズムの結晶光学軸方向の角度φが−22.5度に設定されたときに、入射光の偏光方向の角度θによって射出光のストークスパラメータがどのように変化するかを示す図である。この場合、図13を参照すると、入射光の偏光方向の変化に伴って、S1およびS2がともに変化し、入射光の偏光方向の角度θが22.5度、112.5度、202.5度、292.5度であるときに、入射偏光が完全に偏光解消されることがわかる。このように、単独の水晶偏角プリズムを用いる従来の偏光解消素子において完全な偏光解消効果を得るには、入射光の偏光方向に対する結晶光学軸方向の角度を正確に45度−90度×I(Iは整数:・・・−1,0,+1,+2・・・)に設定する必要がある。
【0027】
図14は、図11に示す従来の偏光解消素子の作用をストークスパラメータとポアンカレ球とを用いて説明する図である。また、図15は、図11に示す従来の偏光解消素子の不都合をストークスパラメータとポアンカレ球とを用いて説明する図である。なお、ストークスパラメータ(Stokes parameter)およびポアンカレ球(Poincare sphere)に関しては、鶴田匡夫著,「応用光学II」,培風館において詳細に説明されている。図14において、入射偏光が横方向の直線偏光である場合、この直線偏光はポアンカレ球上の点106aで表現される。図11に示す従来の偏光解消素子では、第1偏角プリズム101の結晶光学軸の方向が入射光の偏光方向に対して45度の角度をなすように設定されている。
【0028】
このため、第1偏角プリズム101の移相作用は、ポアンカレ球においてS2軸廻りの回転によって表現されることになる。なお、ポアンカレ球は赤道一周が180度に相当するものと考えると理解しやすい。こうして、入射偏光は第1偏角プリズム101の通過位置によって異なる移相量を受けるため、射出光の偏光状態は参照符号106bで示す線上に分布することになる。このとき、線106b上に分布する偏光状態の平均はポアンカレ球の中心となるため、射出光のストークスパラメータはS1=S2=S3=0になり、完全な偏光解消効果を得ることができる。
【0029】
一方、図15では、入射偏光がポアンカレ球上の点107aで表現されている。この場合、点107aで表現される入射光の偏光方向はS2軸に対して45度の角度からずれているため、偏光解消効果が不十分になるはずである。図15のポアンカレ球で考えると、点107aで表現される入射偏光が第1偏角プリズム101の移相作用(すなわちS2軸廻りの回転)を受けて、射出光の偏光状態は参照符号107bで示す線上に分布することになる。この場合、射出光のストークスパラメータの平均はS1=S3=0であるがS2=0にはならないため、完全な非偏光状態にはならず、偏光解消効果が不十分になる。
【0030】
以上のように、従来の偏光解消素子では、入射光の偏光方向(楕円偏光の長軸方向)に対して偏光解消素子の結晶光学軸(進相軸または遅相軸)が正確に45度の角度をなすように設定する必要がある。その結果、入射光の偏光方向が何らかの理由で想定した方向と異なった場合や、偏光解消素子の結晶光学軸の方向が何らかの理由で意図した方向からずれた場合や、偏光解消素子に入射する光の偏光方向が正確にわからないような場合には、十分な偏光解消効果を得ることができない。
【0031】
本発明では、たとえば複屈折性を有する2つの偏角プリズムを用いて偏光解消素子を構成し、この2つの偏角プリズムの結晶光学軸を、光軸方向から見て互いに異なる方向を向くように設定している。加えて、この2つの偏角プリズムの頂角方向を、光軸方向から見て互いに異なり且つ互いに逆向きでないように設定している。本発明の偏光解消素子では、上述の2つの偏角プリズムの作用により、入射偏光の偏光方向に依存することなく、入射偏光を非偏光の光に確実に変換することができる。
【0032】
また、本発明の偏光解消素子を用いる照明光学装置では、光源からの光の偏光方向に依存することなく非偏光状態の光で被照射面を確実に照明することができる。したがって、本発明の照明光学装置を用いる露光装置および露光方法では、非偏光状態の光でマスクを確実に照明し、適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいては良好な露光により良好なマイクロデバイスを製造することができる。
【0033】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。また、図2は、偏光状態測定器がウェハステージに着脱可能に取り付けられた様子を示す図である。また、図3は、図2の偏光状態測定器の内部構成を概略的に示す図である。
【0034】
図1を参照すると、本実施形態の露光装置は、露光光(照明光)を供給するための光源1を備えている。光源1として、たとえば248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源や、193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や、157nmの波長の光を供給するFレーザ光源などを用いることができる。光源1から射出された所定の偏光度を有するほぼ平行な光束は、ビーム送光系2を介して所定の矩形状の断面を有する光束に整形された後、偏光解消素子3に入射する。
【0035】
ここで、偏光度Vは、次の式(a)により表わされる。式(a)において、S0は全強度を、S1は水平直線偏光強度マイナス垂直直線偏光強度を、S2は45度直線偏光強度マイナス135度直線偏光強度を、S3は右まわり円偏光強度マイナス左まわり円偏光強度をそれぞれ表わしている。
V=(S1+S2+S31/2/S0 (a)
【0036】
ビーム送光系2は、入射光束を適切な大きさおよび形状の断面を有する光束に変換しつつ偏光解消素子3へ導くとともに、後段の偏光解消素子3へ入射する光束の位置変動および角度変動をアクティブに補正する機能を有する。一方、偏光解消素子3は、偏光度を有する入射光(本実施形態では例えば直線偏光の光)を実質的に非偏光の光に変換する機能を有する。なお、偏光解消素子3の詳細な構成および作用については後述する。
【0037】
偏光解消素子3を介して非偏光状態に変換されたほぼ平行な光束は、マイクロレンズアレイ(またはフライアイレンズ)4に入射する。マイクロレンズアレイ4は、縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であり、たとえば平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成される。ここで、マイクロレンズアレイを構成する各微小レンズは、フライアイレンズを構成する各レンズエレメントよりも微小である。
【0038】
また、マイクロレンズアレイは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、正屈折力を有するレンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロレンズアレイはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。なお、マイクロレンズアレイ4に代えて、回折光学素子や角柱状のロッド型インテグレータのようなオプティカルインテグレータを用いることもできる。
【0039】
マイクロレンズアレイ4に入射した光束は多数の微小レンズにより二次元的に分割され、光束が入射した各微小レンズの後側焦点面には光源がそれぞれ形成される。こうして、マイクロレンズアレイ4の後側焦点面には、多数の光源からなる実質的な面光源(以下、「二次光源」という)が形成される。マイクロレンズアレイ4の後側焦点面に形成された二次光源からの光束は、必要に応じて配置された開口絞り(不図示)によって制限され、ビームスプリッター7aを介し、コンデンサー光学系5の集光作用を受けた後、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。
【0040】
マスクMのパターンを透過した光束は、投影光学系PLを介して、感光性基板であるウェハW上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面内においてウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが逐次露光される。
【0041】
なお、本実施形態では、たとえば石英ガラスにより形成されたノンコートの平行平面板(すなわち素ガラス)の形態を有するビームスプリッター7aによって、マイクロレンズアレイ4で形成される二次光源からの光束の一部を分岐して、インテグレータセンサとしての光電検出器7bに導いている。そして、この光電検出器7bからの出力信号に基づいて、ウェハWへの露光量を制御する構成としている。
【0042】
また、本実施形態では、1つのオプティカルインテグレータを用いているが、たとえば米国特許第4,939,630号に開示されるような2つのオプティカルインテグレータを直列的に配置した照明光学装置に偏光解消素子3を適用する場合には、最も光源側のオプティカルインテグレータの光源側に偏光解消素子3を配置すればよい。また、たとえば米国特許第6,563,567号に開示されるような回折光学素子とオプティカルインテグレータとを直列的に配置した照明光学装置に偏光解消素子3を適用する場合には、最も光源側の回折光学素子の光源側に偏光解消素子3を配置すればよい。
【0043】
本実施形態では、図2に示すように、ウェハWを保持するためのウェハステージWSに、ウェハWに対する照明光(露光光)の偏光状態を測定するための偏光状態測定器6が着脱可能に取り付けられている。図3を参照すると、偏光状態測定器6は、ウェハWの位置またはその近傍に位置決め可能なピンホール部材60を備えている。なお、偏光状態測定器6の使用時には、ウェハWは光路から退避する。ピンホール部材60のピンホール60aを通過した光は、コリメートレンズ61を介してほぼ平行な光束になり、反射鏡62で反射された後、移相子としてのλ/4板63および偏光子としての偏光ビームスプリッター64を介した後、二次元CCD65の検出面65aに達する。
【0044】
ここで、λ/4板63および偏光ビームスプリッター64は、光軸を中心としてそれぞれ回転可能に構成されている。こうして、ウェハWに対する照明光の偏光度が0でない場合には、λ/4板63を光軸廻りに回転させることにより二次元CCD65の検出面65aにおける光強度分布が変化する。したがって、偏光状態測定器6では、λ/4板63を光軸廻りに回転させながら検出面65aにおける光強度分布の変化を検出し、この検出結果から回転移相子法により、ウェハWに対する照明光(ひいてはマスクMに対する照明光)の偏光状態を測定することができる。
【0045】
なお、回転移相子法については、例えば鶴田著,「光の鉛筆−光技術者のための応用光学」,株式会社新技術コミュニケーションズなどに詳しく記載されている。実際には、ピンホール部材60(ひいてはピンホール60a)をウェハ面に沿って二次元的に移動させつつ、ウェハ面内の複数の位置における照明光の偏光状態を測定する。このとき、偏光状態測定器6では、二次元的な検出面65aにおける光強度分布の変化を検出するので、この検出分布情報に基づいて照明光の瞳内における偏光状態の分布を測定することができる。
【0046】
また、偏光状態測定器6では、反射鏡62の偏光特性により光の偏光状態が変化してしまう場合がある。この場合、反射鏡62の偏光特性は予めわかっているので、所要の計算によって反射鏡62の偏光特性の偏光状態への影響に基づいて偏光状態測定器6の測定結果を補正し、照明光の偏光状態を正確に測定することができる。
【0047】
図4は、図1に示す本実施形態の偏光解消素子の内部構成を概略的に示す図である。また、図5は、本実施形態の偏光解消素子を構成する各偏角プリズムの構成を概略的に示す図である。また、図6は、本実施形態の偏光解消素子の作用効果を説明する図であって、射出光のストークスパラメータの変化を示す図である。
【0048】
図4を参照すると、偏光解消素子3は、光源側から順に、水晶により形成された第1偏角プリズム31と、同じく水晶により形成された第2偏角プリズム32と、石英ガラスにより形成された第3偏角プリズム33とにより構成されている。図5(a)を参照すると、第1偏角プリズムとしての第1水晶プリズム31では、その結晶光学軸の方向31aが図中鉛直方向に設定され、その頂角方向31bが図中上向きから反時計廻りに45度回転した向きに設定されている。
【0049】
また、図5(b)を参照すると、第2偏角プリズムとしての第2水晶プリズム32では、その結晶光学軸の方向32aが図中鉛直方向に対して45度をなすように(第1水晶プリズム31の結晶光学軸の方向31aを光軸AXを中心として時計廻りに45度回転させたように)設定され、その頂角方向32bが図中上向きから時計廻りに45度回転した向きに設定されている。また、図5(c)を参照すると、第3偏角プリズムとしての石英プリズム33では、その頂角方向33bが図中下向きに設定されている。
【0050】
すなわち、本実施形態の偏光解消素子3では、複屈折性の結晶材料である水晶により形成された2つの偏角プリズム、すなわち第1水晶プリズム31の結晶光学軸31aと第2水晶プリズム32の結晶光学軸32aとは、光軸AX方向から見て互いに45度の角度をなすように設定されている。また、第1水晶プリズム31の頂角方向31bと第2水晶プリズム32の頂角方向32bとは、光軸AX方向から見て互いに直交するように設定されている。
【0051】
さらに、第1水晶プリズム31と第2水晶プリズム32との偏角作用による光線の曲がりが石英プリズム33の偏角作用により元に戻されるように、第1水晶プリズム31の頂角方向31bおよび第2水晶プリズム32の頂角方向32bに対して石英プリズム33の頂角方向33bが設定されている。すなわち、石英プリズム33は、第1水晶プリズム31と第2水晶プリズム32とによる合成偏角作用を補償するための補正偏角プリズムを構成している。
【0052】
なお、水晶プリズム31および32は複屈折性を有するため、互いに異なる2つの屈折率n1およびn2(n1>n2)を有する。したがって、第1水晶プリズム31と第2水晶プリズム32とによる光線の偏角を屈折率が(n1−n2)/2であるものとして計算し、計算で求めた光線の偏角を打ち消すように石英プリズム33の偏角を定めればよい。
【0053】
図7は、本実施形態の偏光解消素子の作用をストークスパラメータとポアンカレ球とを用いて説明する第1の図である。また、図8は、本実施形態の偏光解消素子の作用をストークスパラメータとポアンカレ球とを用いて説明する第2の図である。以下、図7および図8を参照して、入射偏光の偏光方向(偏光状態)に依存することなく、入射偏光を非偏光の光に確実に変換することができ、ひいてはほぼ完全な偏光解消効果が得られることを説明する。
【0054】
図7において、偏光解消素子3への入射偏光がポアンカレ球上の適当な点50aで表現されるものとする。図4に示すように、偏光解消素子3への入射偏光は先ず第1水晶プリズム31に入射するが、第1水晶プリズム31の結晶光学軸方向31aは縦方向(図5中鉛直方向に対して0度の方向)である。このため、第1水晶プリズム31の移相作用はS1軸廻りの回転となり、第1水晶プリズム31からの射出偏光は参照符号50bで示す線上に分布することになる。
【0055】
次に、線50bで表現される第1水晶プリズム31からの射出偏光は第2水晶プリズム32に入射するが、その結晶光学軸方向32aは縦方向に対して45度の方向(図5中鉛直方向に対して45度の方向)である。このため、第2水晶プリズム32の移相作用はS2軸廻りの回転となり、図8に示すように、第2水晶プリズム32からの射出偏光は参照符号50cで示す帯状の曲面上に分布することになる。
【0056】
このとき、帯状曲面50c上に分布する偏光状態の平均は常にポアンカレ球の中心(S1=S2=S3=0)となり、本実施形態の偏光解消素子3によりほぼ完全な偏光解消効果が得られることがわかる。これは、偏光解消素子3への入射偏光の偏光状態に対応する点50aがポアンカレ球上のどこに位置していたとしても成り立つことは明らかであり、本実施形態の偏光解消素子3によれば、入射偏光の偏光状態に関わりなくほぼ完全な偏光解消効果が得られることになる。
【0057】
本実施形態では、上述の偏光状態測定器6を用いてウェハWに対する照明光(ひいてはマスクMに対する照明光)の偏光状態を随時測定し、偏光解消素子3の作用によりほぼ完全な偏光解消効果が得られていることを確認することができる。そして、所望の偏光解消効果が得られていない場合には、入射偏光の偏光方向に依存することなく入射偏光を非偏光の光に確実に変換するように偏光解消素子3の光学調整を行うことができる。
【0058】
このように、本実施形態では、偏光解消素子3によりほぼ完全な偏光解消効果を得ているため、仮に偏光解消素子3へ入射する光束の偏光状態が経時的に変動したとしても、インテグレータセンサとしての光電検出器7bへ光束を分岐するビームスプリッター7aに入射する光束の偏光状態が一定に維持される。そのため、このビームスプリッター7aの反射特性が入射偏光の状態によって変化するものであっても、常に一定の光量を光電検出器7bへ導くことができる。ひいては正確な露光量制御が可能となる。
【0059】
なお、上述の実施形態では、第1水晶プリズム31の結晶光学軸方向31aを縦方向に対して0度の方向に設定し、第2水晶プリズム32の結晶光学軸方向32aを縦方向に対して45度の方向に設定している。しかしながら、この角度に限定されることなく、第1水晶プリズム31の結晶光学軸方向31aと第2水晶プリズム32の結晶光学軸方向32aとが光軸AX方向から見て互いに45度の角度をなしていれば、すなわちポアンカレ球上において回転作用の軸線が90度の角度をなしていれば、入射偏光の偏光状態に関わりなくほぼ完全な偏光解消効果が得られることは明らかである。
【0060】
また、上述の実施形態では、第1水晶プリズム31の頂角方向31bと第2水晶プリズム32の頂角方向32bとが光軸AX方向から見て互いに直交するように設定している。しかしながら、この角度に限定されることなく、第1水晶プリズム31の頂角方向31bと第2水晶プリズム32の頂角方向32bとが光軸AX方向から見て互いに異なり且つ互いに逆向きでないように設定されていれば良い。ただし、第1水晶プリズム31の頂角方向31bと第2水晶プリズム32の頂角方向32bとがなす角度が小さい場合、ほぼ完全な偏光解消効果を得るには入射偏光の光束を大きくする必要がある。
【0061】
したがって、偏光解消素子3への入射偏光の光束径が小さくてもほぼ完全な偏光解消効果を得ることができ、ひいては偏光解消素子の小型化を達成するために、第1水晶プリズム31の頂角方向31bと第2水晶プリズム32の頂角方向32bとが光軸AX方向から見て互いに直交するように設定されていることが好ましい。なお、第1水晶プリズム31の頂角方向31bと第2水晶プリズム32の頂角方向32bとが互いに逆向きである場合(および互いに同じ向きである場合)には、入射偏光の偏光度を低下させることはできてもほぼ完全な偏光解消効果を得ることはできない。
【0062】
また、上述の実施形態では、2つの水晶プリズム(31,32)の結晶光学軸方向(31a,32a)が光軸AX方向から見て互いに45度の角度をなすように構成した例を示している。しかしながら、たとえば3つ以上の水晶プリズムを用いて偏光解消素子を構成する場合には、45度の角度に限定されることはない。すなわち、例えば3つの水晶プリズムを用いて偏光解消素子を構成する場合、3つの水晶プリズムによる移相作用の結果として、射出光の偏光状態を表すポアンカレ球上の曲面の重心がポアンカレ球の中心になるように結晶光学軸方向を設定すれば、ほぼ完全な偏光解消効果を得ることが可能である。
【0063】
また、上述の実施形態では、2つの水晶プリズム(31,32)のマスク側に、補正偏角プリズムとしての石英プリズム33を配置している。しかしながら、この配置に限定されることなく、たとえば石英プリズム33を最も光源側に配置したり、2つの水晶プリズム(31,32)の間の光路中に石英プリズム33を配置したりすることもできる。
【0064】
また、上述の実施形態では、複屈折性を有する2つの偏角プリズム(31,32)を水晶により形成している。しかしながら、これに限定されることなく、たとえばフッ化マグネシウムや方解石のような複屈折性の結晶材料を用いて2つの偏角プリズムを形成することもできる。あるいは、非複屈折性の材料に外部応力を作用させることによって得られた複屈折性材料などを用いることもできる。
【0065】
また、上述の実施形態では、ビーム送光系2とマイクロレンズアレイ4との間の光路中に偏光解消素子3を配置しているが、これに限定されることなく、たとえばコンデンサー光学系5とマスクMとの間の光路中または他の適当な光路中に偏光解消素子3を配置することもできる。ただし、偏光解消素子3とマスクMとの間の光路中にオプティカルインテグレータを配置する構成を採用することにより、偏光解消素子3の有効径(外径)を小さく抑えることができる。
【0066】
また、上述の実施形態では、偏光解消素子3を照明光路に対して挿脱自在に構成することが好ましい。この場合、必要に応じて、偏光解消素子3を照明光路中に設定することにより非偏光状態の光でマスクMを照明し、偏光解消素子3を照明光路から退避させることにより直線偏光状態の光でマスクMを照明することができ、ひいてはマスクMに対する多様な照明が可能になる。
【0067】
前述したように、本実施形態にかかる偏光解消素子3では、第1水晶プリズム31の結晶光学軸と第2水晶プリズム32の結晶光学軸とが光軸AX方向から見て互いに45度の角度をなすように設定され、且つ第1水晶プリズム31の頂角方向と第2水晶プリズム32の頂角方向とが光軸AX方向から見て互いに直交するように設定される。すなわち、一例として、図5(a)に示すように結晶光学軸の方向31aと頂角方向31bとが45度の角度をなすように第1水晶プリズム31を製造し、図5(b)に示すように結晶光学軸の方向32aと頂角方向32bとが一致するように第2水晶プリズム32を製造する必要がある。
【0068】
しかしながら、結晶光学軸の方向と頂角方向とが所定の角度関係を満たすように偏角プリズムを精度良く製造することは困難であり、結晶光学軸の方向と頂角方向との間の角度に関して製造誤差が発生し易い。この場合、所望の偏光解消効果を得るために第1水晶プリズム31の結晶光学軸と第2水晶プリズム32の結晶光学軸とが互いに45度の角度をなすように設定すると、第1水晶プリズム31の頂角方向と第2水晶プリズム32の頂角方向とが正確には直交しなくなり、第1水晶プリズム31と第2水晶プリズム32とによる合成偏角作用を石英プリズム33により正確に補償することができなくなってしまう。
【0069】
一方、正確な偏角作用補償効果を得るために第1水晶プリズム31の頂角方向と第2水晶プリズム32の頂角方向とが直交するように設定すると、第1水晶プリズム31の結晶光学軸と第2水晶プリズム32の結晶光学軸とが正確には45度の角度をなさなくなり、所望の偏光解消効果を得ることができなくなってしまう。以下、本実施形態の変形例として、結晶光学軸の方向と頂角方向とが所定の角度関係を正確に満たす必要のない一対の水晶偏角プリズムを用いて本実施形態と同等の光学的効果を得ることのできる偏光解消素子について説明する。
【0070】
図16は、本実施形態の変形例にかかる偏光解消素子の構成を概略的に示す図である。また、図17は、本実施形態の変形例にかかる偏光解消素子の作用効果を概略的に示す図である。図16を参照すると、変形例にかかる偏光解消素子3’は、光源側(図16中左側)から順に、第1補正偏角プリズム34と、第1偏角プリズム35と、第2偏角プリズム36と、第2補正偏角プリズム37とにより構成されている。ここで、第1偏角プリズム35および第2偏角プリズム36は水晶により形成された偏角プリズムであり、第1補正偏角プリズム34および第2補正偏角プリズム37は蛍石または石英ガラスにより形成された偏角プリズムである。
【0071】
第1偏角プリズムとしての第1水晶プリズム35では、図17(a)に示すように結晶光学軸の方向35aがz方向に設定され、図16(b)に示すように頂角方向も+z方向に設定されている。一方、第2偏角プリズムとしての第2水晶プリズム36では、図17(b)に示すように結晶光学軸の方向36aがz方向に対して45度をなすように(第1水晶プリズム35の結晶光学軸の方向35aを光軸AXを中心として時計廻りに45度回転させたように)設定され、図16(a)に示すように頂角方向は−y方向に設定されている。
【0072】
また、図16(b)を参照すると、第1補正偏角プリズムとしての第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34では、その頂角方向が−z方向に、すなわち第1水晶プリズム35の頂角方向とは互いに反対の向きに設定されている。同様に、図16(a)を参照すると、第2補正偏角プリズムとしての第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37では、その頂角方向が−y方向に、すなわち第2水晶プリズム36の頂角方向とは互いに反対の向きに設定されている。
【0073】
すなわち、変形例にかかる偏光解消素子3’においても上述の実施形態にかかる偏光解消素子3の場合と同様に、複屈折性の結晶材料である水晶により形成された2つの偏角プリズム、すなわち第1水晶プリズム35の結晶光学軸と第2水晶プリズム36の結晶光学軸とは、光軸AX方向から見て互いに45度の角度をなすように設定されている。また、第1水晶プリズム31の頂角方向と第2水晶プリズム32の頂角方向とは、光軸AX方向から見て互いに直交するように設定されている。
【0074】
しかしながら、変形例にかかる偏光解消素子3’では上述の実施形態にかかる偏光解消素子3の場合とは異なり、第1水晶プリズム35の偏角作用による光線の曲がりを第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34の偏角作用により相殺し、第2水晶プリズム36の偏角作用による光線の曲がりを第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37の偏角作用により相殺するように、第1水晶プリズム35と第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34とが第1ユニット(34,35)を構成し、第2水晶プリズム36と第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37とが第2ユニット(36,37)を構成している。
【0075】
このように、上述の実施形態にかかる偏光解消素子3では、補正偏角プリズムとしての1つの石英プリズム33が、2つの偏角プリズムである第1水晶プリズム31と第2水晶プリズム32とによる合成偏角作用を補償している。これに対し、変形例にかかる偏光解消素子3’では、第1補正偏角プリズムとしての第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34が第1水晶プリズム35による偏角作用を補正(補償)し、第2補正偏角プリズムとしての第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37が第2水晶プリズム36による偏角作用を補正(補償)している。
【0076】
ただし、上述の実施形態にかかる偏光解消素子3において第1水晶プリズム35の結晶光学軸と第2水晶プリズム36の結晶光学軸とが互いに45度の角度をなすように設定され、変形例にかかる偏光解消素子3’において第1水晶プリズム35の結晶光学軸と第2水晶プリズム36の結晶光学軸とが互いに45度の角度をなすように設定されている点は互いに共通している。その結果、変形例にかかる偏光解消素子3’においても、ポアンカレ球を参照して前述したように、結晶光学軸が互いに45度の角度をなすように設定された一対の水晶偏角プリズムの作用により、上述の実施形態にかかる偏光解消素子3と同等の偏光解消効果を得ることができる。
【0077】
以下、図17を参照して、ポアンカレ球とは異なる観点から変形例にかかる偏光解消素子3’の基本的な作用効果について簡単に説明する。第1水晶プリズム35では、図17(a)に示すように、結晶光学軸の方向35aがz方向に設定されている。したがって、結晶光学軸の方向35aに対して45度の角度をなす方向35cまたは35dに偏光面を有する直線偏光の光が第1水晶プリズム35に入射した場合、光の通過位置によって異なる移相量が付与され、ひいては偏光解消が可能である。しかしながら、結晶光学軸の方向35aに対して90度または0度の角度をなすy方向35eまたはz方向35fに偏光面を有する直線偏光の光が第1水晶プリズム35に入射した場合、偏光状態が全く変わることなく直線偏光のまま通過し、偏光解消は不可能である。
【0078】
同様に、第2水晶プリズム36では、図17(b)に示すように、結晶光学軸の方向36aがz方向に対して45度の角度に設定されている。したがって、結晶光学軸の方向36aに対して45度の角度をなすy方向36cまたはz方向36dに偏光面を有する直線偏光の光が第2水晶プリズム36に入射した場合、光の通過位置によって異なる移相量が付与され、ひいては偏光解消が可能である。しかしながら、結晶光学軸の方向36aに対して90度または0度の角度をなす方向36eまたは36fの方向に偏光面を有する直線偏光の光が第2水晶プリズム36に入射した場合、偏光状態が全く変わることなく直線偏光のまま通過し、偏光解消は不可能である。
【0079】
このように、第1水晶プリズム35および第2水晶プリズム36には偏光解消が不可能な直線偏光がそれぞれ存在するが、第1水晶プリズム35の結晶光学軸と第2水晶プリズム36の結晶光学軸とが互いに45度の角度をなすように設定されているので、第1水晶プリズム35により偏光解消が不可能な直線偏光の光が第2水晶プリズム36により偏光解消が可能で、第2水晶プリズム36により偏光解消が不可能な直線偏光の光が第1水晶プリズム35により偏光解消が可能に構成されている。換言すれば、第1ユニット(34,35)は第2ユニット(36,37)で非偏光の光に変換することのできない方向35cまたは35dに偏光面を有する直線偏光を非偏光の光に変換し、第2ユニット(36,37)は第1ユニット(34,35)で非偏光の光に変換することのできない方向36cまたは36dに偏光面を有する直線偏光を非偏光の光に変換するように構成されている。
【0080】
以上、直線偏光が入射する場合を例にとって変形例にかかる偏光解消素子3’の基本的な作用効果を簡単に説明したが、直線偏光に限定されることなく入射光が楕円偏光であっても円偏光であっても、第1ユニット(34,35)は第2ユニット(36,37)で非偏光の光に変換することのできない偏光状態の入射光を非偏光の光に変換することになり、第2ユニット(36,37)は第1ユニット(34,35)で非偏光の光に変換することのできない偏光状態の入射光を非偏光の光に変換することになる。その結果、変形例にかかる偏光解消素子3’においても、上述の実施形態にかかる偏光解消素子3と同等の偏光解消効果を得ることができる。
【0081】
なお、変形例にかかる偏光解消素子3’においても上述の実施形態にかかる偏光解消素子3の場合と同様に、第1水晶プリズム35および第2水晶プリズム36の製造に際して、結晶光学軸の方向と頂角方向との間の角度に関する製造誤差が発生し易い。この場合、変形例にかかる偏光解消素子3’では、第1水晶プリズム35の頂角方向と第2水晶プリズム36の頂角方向とが正確には直交しなくても、所望の偏光解消効果を得るために第1水晶プリズム35の結晶光学軸と第2水晶プリズム36の結晶光学軸とが互いに45度の角度をなすように精度良く設定すればよい。
【0082】
そして、第1水晶プリズム35の頂角方向と第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34の頂角方向とが互いに反対の向きになるように第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34を正確に位置決めし、第2水晶プリズム36の頂角方向と第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37の頂角方向とが互いに反対の向きになるように第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37を正確に位置決めすればよい。その結果、第1水晶プリズム35の偏角作用を第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34により精度良く補正(補償)し、第2水晶プリズム36の偏角作用を第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37により精度良く補正(補償)することができる。
【0083】
第1水晶プリズム35の頂角方向と第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34の頂角方向との位置決め手法としては、たとえば第1水晶プリズム35および第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34を保持する金物基準で位置決めすることが考えられる。さらに高精度に位置決めするための手法の一例を以下に示す。第1水晶プリズム35にコリメートされた光束を照射し、第1水晶プリズム35を介した光束を集光レンズで光電検出器上に集光する。そして、第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34をコリメートされた光束中に挿入する。
【0084】
ここで、第1水晶プリズム35および第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34がコリメート光束中に存在しない場合の光電検出器上の集光点と、第1水晶プリズム35のみがコリメート光束中に存在する場合の光電検出器上の集光点と、第1水晶プリズム35および第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34の双方がコリメート光束中に存在する場合の光電検出器上の集光点とが同一直線上になるように、第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)の光軸廻りの回転位置を調整する。これにより、第1水晶プリズム35の偏角作用を第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34により精度良く補正(補償)することができる。上述の例では、第1蛍石プリズム(第1石英プリズム)34の回転調整を行ったが、第1水晶プリズムの回転調整を行ってもよい。なお、第2水晶プリズム36の頂角方向と第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37の頂角方向との位置決め手法については上述の説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0085】
以上のように、変形例にかかる偏光解消素子3’では、第1水晶プリズム35の偏角作用および第2水晶プリズム36の偏角作用を第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34および第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37により独立に補正(補償)する構成を採用している。このため、第1水晶プリズム35および第2水晶プリズム36の製造に際して例え結晶光学軸の方向と頂角方向とが所定の角度関係を正確に満たすことができなくても、第1水晶プリズム35と第2水晶プリズム36との間の結晶光学軸の位置関係、第1水晶プリズム35と第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34との間の頂角方向の位置関係、および第2水晶プリズム36と第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37との間の頂角方向の位置関係を正確に満たすように組み立てることにより、所望の偏光解消効果および偏角作用補償効果を得ることができる。
【0086】
第1水晶プリズム35と第2水晶プリズム36との結晶光学軸の方向を所定の角度関係とするための手法の一例について以下に説明する。ここで、上述の手法により、第1水晶プリズム35および第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34の頂角方向の位置決め、並びに第2水晶プリズム36および第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37の頂角方向の位置決めがなされているものとする。まず、第1水晶プリズム35および第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34の対と、第2水晶プリズム36および第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37の対とを直列に配置し、これらに対して直線偏光の光束を照射する。そして、これらのプリズム対の組34〜37を介した光束の射出側に偏光ビームスプリッター(または反射防止コート無しのガラス(素ガラス))を配置し、偏光ビームスプリッターの反射側または透過側、あるいは双方の側に光量検出器を配置する。この(これら)光量検出器の出力から、プリズム対の組34〜37を介した光束の偏光度を求めることが可能である。
【0087】
そして、プリズム対の組34〜37へ入射させる直線偏光の偏光面の方向を光軸周りに回転させつつ光電検出器の出力をモニターして、入射直線偏光の偏光面の方向によらず、光電検出器の出力が一定となるように、第1水晶プリズム35および第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34の対と、第2水晶プリズム36および第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37の対との少なくとも一方の光軸周りの角度位置を調整する。これにより、第1水晶プリズム35および第2水晶プリズム36の結晶光学軸の方向を所定の角度関係に設定することが可能である。
【0088】
なお、変形例にかかる偏光解消素子3’では、第1水晶プリズム35の光源側に第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34を配置し、第2水晶プリズム36のマスク側の第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37を配置している。しかしながら、これに限定されることなく、第1蛍石プリズム(または第1石英プリズム)34および第2蛍石プリズム(または第2石英プリズム)37の位置については様々な変形例が可能である。ただし、偏光状態を変化させる特性を有する光学材料(例えば複屈折性を有する蛍石など)を用いて第1補正偏角プリズム34および第2補正偏角プリズム37を形成する場合には、第1水晶プリズム35と第2水晶プリズム36との間の光路中において偏光状態が変化することがないように、図16に示すように第1水晶プリズム35と第2水晶プリズム36とが隣り合う配置構成、すなわち一対の補正偏角プリズム34および37により一対の水晶プリズム35および36を挟む配置構成を採用することが好ましい。
【0089】
また、変形例にかかる偏光解消素子3’において、第1水晶プリズム35の頂角方向と第2水晶プリズム36の頂角方向とが互いに直交するように設定する必要がないこと、たとえば水晶以外のフッ化マグネシウムや方解石のような複屈折性の結晶材料を用いて2つの偏角プリズム(35,36)を形成することができることなどは、上述の実施形態にかかる偏光解消素子3の場合と同様である。なお、上述の実施形態では、偏光状態測定器6がウェハステージWSに取り付け可能な構成を示したが、この偏光状態測定器6をウェハステージWSに組み込んでもよく、またウェハステージWSとは別のステージに組み込んでもよい。
【0090】
上述の実施形態にかかる露光装置では、照明光学装置によってマスク(レチクル)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、上述の実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図9のフローチャートを参照して説明する。
【0091】
先ず、図9のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、その1ロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、上述の実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。
【0092】
また、上述の実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図10のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図10において、パターン形成工程401では、上述の実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィー工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
【0093】
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列したカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。
【0094】
セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
【0095】
なお、上述の実施形態では、コンデンサー光学系5によって二次光源からの光を集光して重畳的にマスクMを照明している。しかしながら、これに限定されることなく、コンデンサー光学系5とマスクMとの間の光路中に、照明視野絞り(マスクブラインド)と、この照明視野絞りの像をマスクM上に形成するリレー光学系とを配置しても良い。この場合、コンデンサー光学系5は、二次光源からの光を集光して重畳的に照明視野絞りを照明することになり、リレー光学系は照明視野絞りの開口部(光透過部)の像をマスクM上に形成することになる。
【0096】
また、上述の実施形態では、露光光としてKrFエキシマレーザ光やArFエキシマレーザ光やFレーザ光を用いているが、これに限定されることなく、偏光度を有する光を供給する他の適当な光源に対して本発明を適用することもできる。また、上述の実施形態では、照明光学装置を備えた投影露光装置を例にとって本発明を説明したが、マスク以外の被照射面を照明するための一般的な照明光学装置に本発明を適用することができることは明らかである。
【符号の説明】
【0097】
1 光源
2 ビーム送光系
3,3’ 偏光解消素子
4 マイクロレンズアレイ(フライアイレンズ)
5 コンデンサー光学系
6 偏光状態測定器
31,32,35,36 水晶プリズム
33 石英プリズム
34,37 蛍石プリズム(または石英プリズム)
M マスク
PL 投影光学系
W ウェハ
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光度を有する入射光を実質的に非偏光の光に変換するための偏光解消素子において、
光軸に沿って配置されて複屈折性の結晶材料で形成された少なくとも2つの偏角プリズムを備え、
前記少なくとも2つの偏角プリズムの結晶光学軸は、光軸方向から見て互いに異なる方向を向くように設定され、
前記少なくとも2つの偏角プリズムの頂角方向は、前記光軸方向から見て互いに異なり且つ互いに逆向きでないように設定されていることを特徴とする偏光解消素子。
【請求項2】
前記少なくとも2つの偏角プリズムは、偏角プリズムを2つだけ有し、
前記2つの偏角プリズムの結晶光学軸は、光軸方向から見て互いに45度の角度をなすように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の偏光解消素子。
【請求項3】
前記少なくとも2つの偏角プリズムは、水晶、フッ化マグネシウム、または方解石により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光解消素子。
【請求項4】
前記少なくとも2つの偏角プリズムによる合成偏角作用を補償するための補正偏角プリズムをさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の偏光解消素子。
【請求項5】
前記少なくとも2つの偏角プリズムは、第1偏角プリズムと第2偏角プリズムとを有し、
前記第1偏角プリズムによる偏角作用を補正するための第1補正偏角プリズムと、前記第2偏角プリズムによる偏角作用を補正するための第2補正偏角プリズムとをさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の偏光解消素子。
【請求項6】
前記第1補正偏角プリズムおよび前記第2補正偏角プリズムは複屈折性材料で形成され、
前記偏光解消素子は、入射側から順に、前記第1補正偏角プリズムと、前記第1偏角プリズムと、前記第2偏角プリズムと、前記第2補正偏角プリズムとを有することを特徴とする請求項5に記載の偏光解消素子。
【請求項7】
前記第1補正偏角プリズムおよび前記第2補正偏角プリズムは複屈折性材料で形成され、
前記第1偏角プリズムと前記第2偏角プリズムとは互いに隣接して配置されていることを特徴とする請求項5に記載の偏光解消素子。
【請求項8】
前記2つの偏角プリズム同士の頂角方向がほぼ直交するように設定されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の偏光解消素子。
【請求項9】
偏光度を有する入射光を実質的に非偏光の光に変換するための偏光解消素子において、
第1の偏光状態の入射光を非偏光の光に変換するための第1ユニットと、該第1ユニットで非偏光の光に変換することのできない第2の偏光状態の入射光を非偏光の光に変換するための第2ユニットとを備えていることを特徴とする偏光解消素子。
【請求項10】
偏光度を有する入射光を実質的に非偏光の光に変換するための偏光解消素子において、
前記入射光の偏光状態の変動にかかわらずに、前記入射光を前記実質的に非偏光の光に常に変換するための手段を備えていることを特徴とする偏光解消素子。
【請求項11】
前記入射光を前記実質的に非偏光の光に常に変換するための手段は、第1の偏光状態の入射光を非偏光の光に変換するための第1ユニットと、該第1ユニットで非偏光の光に変換することのできない第2の偏光状態の入射光を非偏光の光に変換するための第2ユニットとを備えていることを特徴とする請求項10に記載の偏光解消素子。
【請求項12】
前記第1ユニットは、第1の方向に偏光面を有する直線偏光の光を非偏光の光に変換し、
前記第2ユニットは、前記第1の方向とは異なる第2の方向に偏光面を有する直線偏光の光を非偏光の光に変換することを特徴とする請求項9または11に記載の偏光解消素子。
【請求項13】
前記第1ユニットは、複屈折性の結晶材料で形成された少なくとも1つの偏角プリズムを備え、
前記第2ユニットは、複屈折性の結晶材料で形成された少なくとも1つの偏角プリズムを備えることを特徴とする請求項9、11または12に記載の偏光解消素子。
【請求項14】
前記第1ユニット中の前記偏角プリズムの結晶光学軸と、前記第2ユニット中の前記偏角プリズムの結晶光学軸とは、光軸方向から見て互いに異なる方向を向くように設定されることを特徴とする請求項13に記載の偏光解消素子。
【請求項15】
前記少なくとも2つの偏角プリズムの頂角方向は、前記光軸方向から見て互いに異なり且つ互いに逆向きでないように設定されていることを特徴とする請求項13または14に記載の偏光解消素子。
【請求項16】
前記第1ユニットおよび前記第2ユニットは、それぞれ前記偏角プリズムを1つだけ備え、
前記2つの偏角プリズムの結晶光学軸は、光軸方向から見て互いに45度の角度をなすように設定されていることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の偏光解消素子。
【請求項17】
前記第1ユニット中の前記偏角プリズムと前記第2ユニット中の前記偏角プリズムとによる合成偏角作用を補償するための補正偏角プリズムをさらに備えていることを特徴とする請求項16に記載の偏光解消素子。
【請求項18】
前記第1ユニットは、前記第1偏角プリズムと、前記第1偏角プリズムによる偏角作用を補正するための第1補正偏角プリズムとを有し、
前記第2ユニットは、第2偏角プリズムと、前記第2偏角プリズムによる偏角作用を補正するための第2補正偏角プリズムと備えていることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の偏光解消素子。
【請求項19】
前記第1補正偏角プリズムおよび前記第2補正偏角プリズムは複屈折性材料で形成され、
前記第1偏角プリズムと前記第2偏角プリズムとは互いに隣接して配置されていることを特徴とする請求項18に記載の偏光解消素子。
【請求項20】
前記第1偏角プリズムの頂角方向と前記第2偏角プリズムの頂角方向とがほぼ直交するように設定されていることを特徴とする請求項13乃至19のいずれか1項に記載の偏光解消素子。
【請求項21】
偏光度を有する光を供給する光源と、該光源からの光を被照射面に照射する導光光学系とを備えた照明光学装置において、
前記導光光学系は、請求の範囲第1項乃至第20項の何れか一項に記載の偏光解消素子を有することを特徴とする照明光学装置。
【請求項22】
前記偏光解消素子を構成する各偏角プリズムは、各偏角プリズムのくさび角をαとし、光軸方向から見たときの各偏角プリズムの2つの屈折率のうちの高い屈折率および低い屈折率をそれぞれn1およびn2とし、前記偏光解消素子に入射する光束の断面の大きさをLとし、前記偏光解消素子に入射する光の波長をλとするとき、
Lα(n1−n2)≧λ
の条件を満足することを特徴とする請求項21に記載の照明光学装置。
【請求項23】
前記偏光解消素子と前記被照射面との間の光路中に配置されたオプティカルインテグレータをさらに備えていることを特徴とする請求項21または22に記載の照明光学装置。
【請求項24】
前記偏光解消素子から前記被照射面へ向かう光束の少なくとも一部を検出するインテグレータセンサをさらに備えていることを特徴とする請求項23に記載の照明光学装置。
【請求項25】
前記偏光解消素子と前記オプティカルインテグレータとは隣接して配置されていることを特徴とする請求項23または24に記載の照明光学装置。
【請求項26】
前記偏光解消素子は、照明光路に対して挿脱自在に構成されていることを特徴とする請求項21乃至25のいずれか1項に記載の照明光学装置。
【請求項27】
マスクに形成されたパターンを感光性基板に露光する露光装置において、
前記被照射面に配置された前記マスクを照明するための請求項21乃至26のいずれか1項に記載の照明光学装置を備えていることを特徴とする露光装置。
【請求項28】
マスクに形成されたパターンを感光性基板に露光する露光方法において、
請求項21乃至26のいずれか1項に記載の照明光学装置を用いて前記被照射面に配置されたマスクを照明する照明工程と、
前記マスクに形成されたパターンを感光性基板上に露光するパターン転写工程とを備えていることを特徴とする露光方法。

【国際公開番号】WO2004/104654
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506344(P2005−506344)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006821
【国際出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】