説明

偏心光学系、偏心光学系を用いた画像表示装置及び撮像装置

【課題】広画角でかつ大きな射出瞳を有し、高解像を実現できる偏心光学系を提供する。
【解決手段】本発明に係る偏心光学系は、画像表示素子の原画像の中間像を形成するリレー光学系と、その中間像を虚像として投影する接眼光学系を有する光学系であって、記接眼光学系は、相互に偏心した2面で構成され、前記2面の間を屈折率1以上の媒質で満たされた正のパワーを有する裏面鏡であり、リレー光学系は、少なくとも3面有し、前記少なくとも3面は相互に偏心して構成され、前記少なくとも3面で形成された内部を屈折率1以上の媒質で満たされたプリズム光学系であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面鏡と回転非対称面を用いた偏心プリズム光学系とを備えた偏心光学系とそれを用いた画像表示装置、および撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小型画像表示素子を用い、これらの表示素子の原画像を観察光学系によって拡大して観察者に呈示する頭部装着型の画像表示装置が知られている。
【0003】
この頭部装着型の画像表示装置は、装置を頭部に装着するため、装置全体の小型化、軽量化が要望されている。また呈示する画像に高い臨場感を持たせるには、表示素子の原画像を出来るだけ広画角に呈示すると共に、高解像度で表現できる光学系が求められる。
【0004】
このような要求を満たすための手段として、表示素子からの光束を観察者眼球に導く光学系は、表示素子と観察者眼球の間の経路に中間像を形成させることが有効となる。例えば、特許文献1から特許文献6には、光路中に中間結像を形成する光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−166211号公報
【特許文献2】特開2001−255489号公報
【特許文献3】特開2000−221440号公報
【特許文献4】特開2000−206446号公報
【特許文献5】特開2000−199853号公報
【特許文献6】特開2004−341411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、1個の接眼光学系とリレー光学系である1個のプリズム光学系によって、広画角でかつ大きな射出瞳を有し、高い解像力を有する偏心光学系を提供するところにある。
【0007】
さらに、画像表示素子とこの偏心光学系を用いることで、比較的に小型軽量、低コスト化が可能でかつ、装着した人に違和感の少ない画像表示装置を提供するところにある。
【0008】
リレー光学系を用いて1次像を形成し、接眼光学系でその1次像を眼球に導く偏心光学系を備えた画像表示装置においては、リレー光学系を備えていない画像表示装置に比べると、リレー光学系により小さな表示素子を中間結像面に大きく拡大することで、見かけ上大きな表示面を接眼光学系に用いたものと等価になる。したがって、小さな表示素子であっても広い観察画角を得ることが可能となるのである。リレー光学系を用いずに、接眼光学系だけで画像表示装置を構成した場合、広い観察画角を達成するためには接眼光学系の焦点距離を短くして倍率を上げる必要があるが、接眼光学系のパワーを強くしすぎると収差を補正することが困難となる。
【0009】
リレー光学系を用いた場合、接眼光学系で発生する収差をリレー光学系で補正することができるメリットが得られる。
【0010】
特許文献1、特許文献2では、観察像を表示する2次元画像表示素子と、2次元画像表示素子の実像を空中に投影するリレー光学系と、その実像を空中に拡大投影すると共に光軸を反射屈曲させる接眼鏡とを具備した視覚表示装置であるが、これらの光学系では、リレー光学系は複数個の球面、または非球面レンズを用い、さらに2面の偏心非球面からなる補正光学系を用いているために、光学系は大型化し、重量が増大する。
【0011】
さらに左側は、リレー光学系と接眼鏡との間に相互に偏心した面で構成された偏心補正光学系を具備しており、コスト、重量ともに不利になる。さらに右側は、より広画角になると、接眼するプリズムが実現できないほど大型化する恐れがある。
【0012】
特許文献3には観察像を表示する画像表示素子と、画像表示素子の実像を空中に投影するリレー光学系と、その実像を空中に拡大投影すると共に光軸を反射屈曲させる接眼鏡とを具備した視覚表示装置であるが、この光学系では、接眼光学系に回転非対称な凹面の表面鏡を用いているため、より広画角になると、リレー光学系で発生する非対称な像面湾曲などの収差補正を十分行うことができない。
【0013】
特許文献4では、観察像を表示する2次元画像表示素子と、2次元画像表示素子の実像を空中に投影するリレー光学系と、その実像を空中に拡大投影すると共に光軸を反射屈曲させる接眼鏡と、リレー光学系と接眼鏡3との間に相互に偏心した面で構成された偏心プリズムとを具備した視覚表示装置であるが、これらの光学系では、リレー光学系は回転非対称面を用いた偏心プリズムを用いて小型化を図っているが、接眼光学系に無偏心の凹面鏡とハーフミラーを用いているために画像表示素子から発した光は、観察者眼球に届くまでに光量は1/4になり、さらに観察者眼球から光学系までの距離であるアイリリーフが相対的に短くなるため、広画角な光学系を実現することは難しい。
【0014】
特許文献5、特許文献6では、観察像を表示する2次元画像表示素子と、2次元画像表示素子の実像を空中に投影するリレー光学系と、その実像を空中に拡大投影すると共に光軸を反射屈曲させる接眼鏡と、リレー光学系と接眼鏡3との間に相互に偏心した面で構成された偏心プリズムとを具備した視覚表示装置であるが、これらの光学系では、2つの偏心プリズムにより偏心収差を相互に補正することにより、観察画角が広く焦点距離の短い中間像1回結像タイプの観察光学系を実現している。しかしながら、更なる広い画角を実現する場合には、画像表示素子の中間像が大きくなり、その光線すべてを取り込むには接眼するプリズムが巨大化するため、広画角な光学系を実現することは難しい。
【0015】
本発明は従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、画像表示素子の中間像を形成するリレー光学系と、接眼光学系からなる画像表示装置において、リレー光学系部分に偏心プリズムを用いて光路を折り曲げることにより光学系をさらにコンパクト化すると共に、リレー光学系での中間像拡大率を大きくして広画角を可能にし、接眼光学系を裏面鏡とすることで接眼光学系における偏心収差の補正特に非対称な像面湾曲を補正し、リレー光学系の収差補正の負担を軽減し、光学系全体の小型化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る偏心光学系は、
画像表示素子の原画像の中間像を形成するリレー光学系と、その中間像を観察者眼球に虚像として投影する接眼光学系を有する光学系において、
前記接眼光学系は、相互に偏心した2面で構成され、前記2面の間を屈折率1以上の媒質で満たされた正のパワーを有する裏面鏡であり、
前記リレー光学系は、少なくとも3面有し、前記少なくとも3面は相互に偏心して構成され、前記少なくとも3面で形成された内部を屈折率1以上の媒質で満たされたプリズム
光学系であることを特徴とするものである。
【0017】
以下、上記配置をとる理由と作用について説明する。以下は、設計上の利便性から、観察者瞳位置から画像表示素子へ向けて光線を追跡する逆追跡の光路に沿って説明する。まず用いる座標系について以下のように定義する。軸上主光線が、光学系の第1面に交差するまでの直線によって定義される光軸をZ軸とし、そのZ軸と直交し、かつ、偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記光軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸とする。図1乃至図4はY−Z面内の断面図を示している。接眼光学系が相互に偏心した2面の曲面で構成され、前記2面の間を屈折率1以上の媒質で満たされた正のパワーを有する裏面鏡とすることにより、通常、偏心して配置された接眼光学系で発生する光軸に対して非対称な収差を補正することができるのである。以下、上記配置をとる理由について図を用いて説明する。
【0018】
図1は、球面の表面反射凹面鏡を観察者眼球側から光線を定義する逆光線追跡によって示した図である。この図において、観察者眼球を101、観察者虹彩位置を102、凹面鏡を103、観察者視軸を104、凹面鏡103によって屈曲した光軸を105、凹面鏡103による中間像位置を106、射出瞳位置を107で示す。この図は、観察者眼球位置101での瞳径は10mm、追跡光線の画角は水平80°(半画角40°)の光線を示している図である。前述したように、広画角の場合の凹面鏡103の結像特性として、凹面鏡の焦点面105は湾曲してしまう。観察画角の中心である観察者視軸104は、凹面鏡103によって反射され光軸105を形成する。
【0019】
凹面鏡103は、観察者視軸104に対して偏心して配置しているために、像面と光軸105は垂直にならずに、光軸105に対して斜めに傾いた像面(中間像位置)106として形成される。つまり、偏心した凹面鏡103で光軸105までも屈曲させているために、観察画角の中心である光軸105に対して傾いてなおかつ湾曲した像面106を形成する。この像面湾曲は、凹面鏡103を非球面で構成しても、トーリック面で構成しても、同じである。非球面もトーリック面も、Y−Z面内における面の屈折力の分布は対称面であるため、同様の面形状となるためである。この像面をリレー光学系で画像表示素子上に投影することは、傾いて湾曲した物体面を平面の2次元画像表示素子上に投影することをリレー光学系に要求することとなる。
【0020】
リレー光学系の偏心と画像表示素子の傾きによって、像面の傾きと像面湾曲を補正できることは一般によく知られている事項であるが、本発明のように大きな瞳径と高い解像力を同時に満足することは困難であり、通常のレンズ等で実現する場合には大掛かりなリレー光学系が必要となる。
【0021】
また、観察者眼球101の虹彩位置を入射瞳として光線追跡した結果として、接眼光学系によって形成される射出瞳位置107において、瞳収差が大きいために主光線が収束されず、また各画角の光線束もまとまりが悪いため、射出瞳位置107における全光束は大きくなっている。したがって、その後に配備されるリレー光学系が大型化することは避けられない。
【0022】
そこで、本発明においては、接眼光学系を、相互に偏心した2面の曲面で構成し、前記2面の間を屈折率1以上の媒質で満たされた正のパワーを有する裏面鏡とすることで、光軸に対して傾いていて湾曲した像面を光軸に対して垂直に起こすと共に像面湾曲を補正することに成功したものである。
【0023】
図2は、回転非対称面2面で構成された裏面鏡を観察者眼球側から光線を定義する逆光線追跡によって示した図である。図に示すように、接眼光学系としての裏面鏡108は、
光軸105に対して非対称な像面湾曲を補正するために、裏面鏡108の上部の厚さを薄くし、下部になるに従って厚さが厚くなるようにしたために、非対称な像面湾曲が補正され、光軸105に対してほぼ対称な像面に変換する作用を持たせることができる。これにより、リレー光学系は比較的平坦な像面を画像表示素子に投影するだけですむので、リレー光学系の収差補正の負担が減り、小型のリレー光学系で構成することに成功したものである。
【0024】
なお、上記のような形状の接眼光学系は、軸上光線に対して楔状をしていることが、像面の傾きを補正し、解像力の高い観察像を提供するために好ましい。
【0025】
また、裏面鏡108で発生した非点収差は、裏面鏡108が偏心して配置されているために、視軸に対して回転対称ではない複雑な非点隔差を発生させている。この複雑な非点隔差を補正するために、接眼光学系は回転非対称面であるアナモルフィック面や自由曲面で構成することが望ましく、図2の紙面内のY−Z軸面内の屈折力より、紙面と垂直なX−Z軸面内の屈折力が大きくなるように構成することが、非点収差を補正して解像力の高い観察像を視野周辺まで提供するために必要となる。
【0026】
また、裏面鏡108を回転非対称面にすることによって、リレー光学系に入射する瞳収差を補正することが可能となり、リレー光学系の収差補正の負担が減り、リレー光学系を小型にできる。
【0027】
さらに、裏面鏡108の前側焦点位置より離れた位置に観察者虹彩位置102を配置すると、裏面鏡108が中間像位置106に形成する像面を小さくすることが可能となる。
【0028】
裏面鏡108のX−Z面内の焦点距離をFRx、裏面鏡108のY−Z面内の焦点距離をFRy、裏面鏡108と観察者虹彩位置102までの軸上主光線に沿った距離をERとするとき、
0.6 < ER/FRx < 5 ・・・・(1)
0.6 < ER/FRy < 5 ・・・・(2)
なる条件式を満足することが好ましい。ここで、上記条件式下限を越えると、裏面鏡108で反射した光線が極端に広がり、リレー光学系が大きくなってしまい、装置全体が大型のものになってしまう。条件式の上限を越えると、裏面鏡108で反射した光線が極端に広がってしまい、リレー光学系が大きくなってしまい、装置全体が大型のものになってしまう。
【0029】
また、裏面鏡108と観察者眼球101の観察者瞳虹彩位置102又は眼球回旋点との距離は、裏面鏡108を観察者眼球101直前に配置するために、余りに短いと、観察者の睫毛に当たり恐怖感を与えてしまう。このために、裏面鏡108と観察者虹彩位置102までの軸上主光線に沿った距離ERは
ER ≧ 30 ・・・・(3)
なる条件を満たして配置することが望ましい。
【0030】
さらに、裏面鏡108における観察者視軸の屈曲角をαとするとき、
α> 40° ・・・・(4)
なる条件を満足することが望ましい。
この条件を満足すると、接眼光学系としての裏面鏡108で発生する像面の屈曲後の視軸に対する傾きと、裏面鏡108に斜めに光束が入射するために発生する複雑な非点収差の発生とにより、観察画角周辺まで明瞭な観察像を観察することができない。上記の収差を補正するためには、裏面鏡108で反射した光軸に対して、リレー光学系を構成する光学要素が傾いて配置することにより、裏面鏡108で発生する偏心収差に対して、リレー
光学系で補正することが可能となる。
【0031】
本発明の場合には、リレー光学系を回転非対称面とし、相互に偏心した少なくとも3面で形成された内部を屈折率1以上の媒質で満たされたプリズム光学系としたため、偏心による光線収差を補正することが可能となり、偏心プリズム1個のみでリレー光学系とすることが可能としている。
【0032】
以下にその理由と作用について述べる。
偏心光学系は、画像表示素子から射出された光束に反射時にパワーを与える偏心曲面形状を有し、かつ、その偏心曲面の反射によって発生する偏心収差を補正するような回転非対称な面形状を有した反射面を備えているので、光路を折り曲げて構成することができ、リレー光学系を従来の軸対称な光学系を用いる場合に比較してコンパクトにすることができる。また、リレー光学系で中間像を収差補正して拡大させるので、裏面鏡のパワーを小さく保ったまま広画角を実現することができるものである。また、リレー光学系を構成する光学面が、偏心曲面形状を有しかつその偏心曲面の反射によって発生する偏心収差を補正するような回転非対称な面形状を有しているので、リレー光学系に偏心光学系を用いても収差補正が十分可能になる。
【0033】
そして、リレー光学系として、屈折率が1よりも大きい媒質を挟んだ第1面と第2面の少なくとも2つの面を有し、第1面が前記画像表示素子から射出された光束を前記媒質内に入射させる入射面にて構成され、第2面が像源側反射面として構成され、かつ、第1面と第2面とが中間像と画像表示素子との間に配置されているようにすると、リレー光学系をよりコンパクト化することができると共に、リレー光学系の収差補正をより確実に行うことができる。
【0034】
ここで、リレー光学系をこのような偏心光学系、特に、内部反射の偏心プリズムで構成することのメリットについて説明する。レンズのような屈折光学素子は、その境界面に曲率を付けることにより始めてパワーを持たせることができる。そのため、レンズの境界面で光線が屈折する際に、屈折光学素子の色分散特性による色収差の発生が避けられない。その結果、色収差を補正する目的で別の屈折光学素子が付加されるのが一般的である。
【0035】
一方、ミラーやプリズム等のような反射光学素子は、その反射面にパワーを持たせても原理的に色収差の発生はなく、色収差を補正する目的だけのために別の光学素子を付加する必要はない。そのため、反射光学素子を用いた光学系は、屈折光学素子を用いた光学系に比べて、色収差補正の観点から光学素子の構成枚数の削減が可能である。
【0036】
同時に、反射光学素子を用いた反射光学系は、光路を折り畳むことになるために、屈折光学系に比べて光学系自身を小さくすることが可能である。また、反射面は屈折面に比して偏心誤差感度が高いため、組み立て調整に高い精度を要求される。
【0037】
しかし、反射光学素子の中でも、プリズムはそれぞれの面の相対的な位置関係が固定されているので、プリズム単体として偏心を制御すればよく、必要以上の組み立て精度、調整工数が不要である。さらに、プリズムは、屈折面である入射面と射出面、それと反射面を有しており、反射面しかもたないミラーに比べて、収差補正の自由度が大きい。特に、反射面に所望のパワーの大部分を分担させ、屈折面である入射面と射出面のパワーを小さくすることで、ミラーに比べて収差補正の自由度を大きく保ったまま、レンズ等のような屈折光学素子に比べて、色収差の発生を非常に小さくすることが可能である。また、プリズム内部は空気よりも屈折率の高い透明体で満たされているために、空気に比べ光路長を長くとることができ、空気中に配置されるレンズやミラー等よりは、光学系の薄型化、小型化が可能である。
【0038】
また、観察光学系は、中心性能はもちろんのこと周辺まで良好な結像性能を要求される。そこで、本発明では、上記のように、観察光学系を構成するリレー光学系に1個のプリズムを用いて、少なくとも、画像表示素子から射出された像光をプリズム内に入射させる第1面と、その第1面から入射した光束を反射させる第2面と射出させる第3面で構成し、少なくともその反射面に光学的パワーを与えかつ偏心収差を補正する回転非対称な曲面形状に構成して、中心ばかりでなく軸外収差も良好に補正することを可能にしている。
【0039】
このような基本構成をとることで、屈折光学系あるいは回転対称なリレー光学系を用いた光学系に比べて光学素子の構成枚数が少なく、中心から周辺まで性能の良好な、小型の画像表示装置を得ることが可能となる。ここで、逆光線追跡で、瞳中心を通過して画像表示素子の表示面の中心に到達する光線を軸上主光線としたとき、プリズムの少なくとも1つの反射面が軸上主光線に対して偏心していないと、軸上主光線の入射光線と反射光線が同一の光路をとることとなり、軸上主光線が光学系中で遮断されてしまう。その結果、中心部が遮光された光束のみで像を形成することになり、中心が暗くなったり、中心では全く像を結ばなくなったりしてしまう。また、パワーを付けた反射面を軸上主光線に対し偏心させることも当然可能である。
【0040】
上記したように、本発明においては、リレー光学系を構成する反射面の面形状として、光束に光学的パワーを与えかつ偏心収差を補正する回転非対称な曲面形状に構成している。このような面形状は偏心収差を補正する上で好ましい。
【0041】
その理由を以下に詳述する。
【0042】
一般に、球面レンズでのみ構成された球面レンズ系では、球面により発生する球面収差と、コマ収差、像面湾曲等の収差をいくつかの面でお互いに補正しあい、全体として収差を少なくする構成になっている。一方、少ない面数で収差を良好に補正するためには、回転対称非球面等が用いられる。これは、球面で発生する各種収差自体を少なくするためである。しかし、偏心した光学系においては、偏心により発生する回転非対称な収差を回転対称光学系で補正することは不可能である。この偏心により発生する回転非対称な収差は、歪曲収差、像面湾曲、さらに、軸上でも発生する非点収差、コマ収差がある。
【0043】
まず、回転非対称な像面湾曲について説明する。例えば、無限遠の物点から偏心した凹面鏡に入射した光線は、凹面鏡に当たって反射結像されるが、光線が凹面鏡に当たって以降、像面までの後側焦点距離は、像界側が空気の場合、光線が当たった部分の曲率半径の半分になる。すると、図7に示すように、軸上主光線に対して傾いた像面を形成する。このような回転非対称な像面湾曲を補正するには回転対称な光学系では不可能である。
【0044】
この傾いた像面湾曲をその発生源である凹面鏡自身で補正するには、凹面鏡を回転非対称な面で構成し、この例ではY軸正の方向に対して曲率を強く(屈折力を強く)し、Y軸負の方向に対して曲率を弱く(屈折力を弱く)すれば、補正することができる。また、上記構成と同様な効果を持つ回転非対称な面を、凹面鏡とは別に光学系中に配置することにより、少ない構成枚数でフラットの像面を得ることが可能となる。また、回転非対称な面は、その面内及び面外共に回転対称軸を有しない回転非対称面形状の面とすることが、自由度が増え収差補正上は好ましい。
【0045】
次に、回転非対称な非点収差について説明する。上記説明と同様に、偏心して配置された凹面鏡では、軸上光線に対しても図8に示すような非点収差が発生する。この非点収差を補正するためには、上記説明と同様に、回転非対称面のX軸方向の曲率とY軸方向の曲率を適切に変えることによって可能となる。さらに、回転非対称なコマ収差について説明
する。上記説明と同様に、偏心して配置された凹面鏡では、軸上光線に対しても図9に示すようなコマ収差が発生する。このコマ収差を補正するためには、回転非対称面のX軸の原点から離れるに従って面の傾きを変えると共に、Y軸の正負によって面の傾きを適切に変えることによって可能となる。また、本発明の結像光学系では、前述の反射作用を有する少なくとも1つの面が軸上主光線に対し偏心し、回転非対称な面形状でパワーを有する構成も可能である。このような構成をとれば、その反射面にパワーを持たせることで発生する偏心収差をその面自体で補正することが可能となり、プリズムの屈折面のパワーを緩めることで、色収差の発生自体を小さくすることができる。
【0046】
また、本発明で用いる上記の回転非対称面は、対称面を1面のみ有する面対称自由曲面であることが好ましい。ここで、本発明で使用する自由曲面とは、以下の式(a)で定義されるものである。なお、その定義式のZ軸が自由曲面の軸となる。
Z=cr2 /[1+√{1−(1+k)c22 }]
65
+Σ Cj Xmn ・・・(a)
j=2
ここで、(a)式の第1項は球面項、第2項は自由曲面項である。
【0047】
球面項中、
R:頂点の曲率半径
k:コーニック定数(円錐定数)
r=√(X2 +Y2
である。
【0048】
自由曲面項は、
66
Σ Cj Xmn
j=2
=C1
+C2 X+C3 Y
+C4 X2 +C5 XY+C6 Y2
+C7 X3 +C8 X2 Y+C9 XY2 +C10Y3
+C11X4 +C12X3 Y+C13X22 +C14XY3 +C15Y4
+C16X5 +C17X4 Y+C18X32 +C19X23 +C20XY4
+C21Y5
+C22X6 +C23X5 Y+C24X42 +C25X33 +C26X24
+C27XY5 +C28Y6
+C29X7 +C30X6 Y+C31X52 +C32X43 +C33X34
+C34X25 +C35XY6 +C36Y7
・・・・・・
ただし、Cj (jは2以上の整数)は係数である。
【0049】
上記自由曲面は、一般的には、X−Z面、Y−Z面共に対称面を持つことはないが、本発明ではXの奇数次項を全て0にすることによって、Y−Z面と平行な対称面が1つだけ存在する自由曲面となる。例えば、上記定義式(a)においては、C2、C5、C7、C9、C12、C14、C16、C18、C20、C23、C25、C27、C29、C31、C33、C35・・・の各項の係数を0にすることによって可能である。
【0050】
また、Yの奇数次項を全て0にすることによって、X−Z面と平行な対称面が1つだけ存在する自由曲面となる。例えば、上記定義式においては、C3、C5、C8、C10、C12
、C14、C17、C19、C21、C23、C25、C27、C30、C32、C34、C36・・・の各項の係数を0にすることによって可能である。
【0051】
また、上記対称面の方向の何れか一方を対称面とし、それに対応する方向の偏心、例えば、Y−Z面と平行な対称面に対して光学系の偏心方向はY軸方向に、X−Z面と平行な対称面に対しては光学系の偏心方向はX軸方向にすることで、偏心により発生する回転非対称な収差を効果的に補正しながら同時に製作性をも向上させることが可能となる。
【0052】
また、上記定義式(a)は、前述のように1つの例として示したものであり、本発明の自由曲面は、対称面を1面のみ有する回転非対称な面を用いることで偏心により発生する回転非対称な収差を補正し、同時に製作性も向上させるということが特徴であり、他のいかなる定義式に対しても同じ効果が得られることはいうまでもない。
【0053】
また、リレー光学系を偏心プリズムで構成する場合に、少なくとも第1面〜第3面の3つの面でプリズムを構成し、第1面を画像表示素子から射出された光束を媒質内に入射させる入射面にて構成し、第2面をその第1面から入射した光束を反射させる反射面で構成し、第3面をその第2面から反射した光束を反射させる反射面で構成し、第2面、第3面共に光束に光学的パワーを与えかつ偏心収差を補正する回転非対称な曲面形状に構成することが収差補正上より望ましい。
【0054】
また、裏面鏡の凹面反射面が観察光学系全体で発生する偏心収差を補正する作用を持った回転非対称な曲面形状にて構成することもできる。このように構成すると、より一層良好な収差補正が可能になる。
【0055】
また、裏面鏡を画像表示素子からの光束を反射すると共に、外界光を入射させる反射作用と透過作用とを兼用する面にて構成し、裏面鏡の外界側に外界光が観察者眼球に略パワーレスになるように補正光学系を配備することができる。このように構成すると、画像表示素子の表示画像の拡大観察と共に、選択的にあるいはそれと重畳して外界を観察することができる。その場合に、補正光学系が、屈折率が1よりも大きい媒質を挟んだ略平行な2つの凹曲面間の薄肉部材にて構成され、外界光が裏面鏡を介して入射する際に発生する収差を補正するように構成することが望ましい。
【0056】
また、その場合に、補正光学系の2つの凹曲面間の薄肉部材の厚さは、0.1mm〜10mmの範囲内にて構成することが望ましい。その厚さが0.1mmを越えると、薄すぎるため量産性が低下すると共に、シースルー機能実現のためにハーフミラーコーティングする場合等に破損しやすくなり好ましくない。また、10mmを越えると、厚くなりすぎ重量が増加してしまい好ましくない。
【0057】
また、これらの場合に、裏面鏡を通過する光束に加えられる歪曲収差発生量が、有効面内における中心から1/3の径の領域において10%の範囲内となるように、裏面鏡の2つの凹曲面の形状を構成することが望ましい。その歪曲収差発生量が10%を越えてしまうと、外界観察において観察者に不快な印象を与えてしまい望ましくない。なお、好ましくは5%の範囲内に収めるように構成することで、外界をより美しく観察可能となる。
【0058】
さて、リレー光学系を、画像表示素子から射出された像光をプリズム内に入射させる第1面と、その第1面から入射した光束を反射させる第2面と、その第2面から反射された光束を反射させる第3面とを有し、第1面と第2面とを結ぶ光路と第3面からの反射光路とがプリズム内で交差するように構成された偏心プリズムで構成することが好ましい。
【0059】
このような構成(後述の実施例2)によれば、入射瞳位置がプリズムの内部に位置し、
プリズムの面のパワーを瞳位置に対して略対称的に配置することで、収差補正を良好に行うことができる。
【0060】
また、リレー光学系において、観察者虹彩位置、または眼球回旋中心位置である射出瞳と共役な瞳位置は、リレー光学系である偏心プリズムの入射窓近傍、或いはプリズム内部に形成されることが好ましい。
【0061】
このような構成によれば、表示素子の射出瞳をプリズム光学系の入射窓近傍またはプリズム内部に形成されることで、プリズム光学系を小さく構成することができ、観察画像周縁の光束のケラレを小さくできる。
【0062】
また、リレー光学系は、画像表示素子から射出された光の経路の順に、プリズム内に光を入射させる第1面、その第1面から入射した光束を反射させる第2面、第2面で反射された光は再び第1面に向かい、第1面の光束が入射される部分では内部反射するように、第1面に入射する角度を臨界角以上に設定することが好ましい。
【0063】
入射領域ではなく、臨界角以下の反射領域には反射コーティングが施されている反射コート部分からなる第1面から反射された光束を射出させる第3面とで構成された偏心プリズムで構成する場合(後述の実施例1)は、瞳位置がプリズムの内部に位置するため、偏心プリズムの大きさを小さくすることができ、かつ、第2面に主な正のパワーを持たせ、第1面を負のパワーとすることで、特に球面収差、コマ収差の収差補正を良好に行うことができる。
【0064】
以上のような偏心光学系を画像表示装置に適用することで、リレー光学系としてのプリズム光学系が小さくなり、観察者は画面の周辺まで鮮明な画像を観察することができる。なお、本発明の偏心光学系を画像表示装置に適用する場合、画像表示素子と、画像表示素子の光束を観察者眼球に導くための偏心光学系を観察者頭部に保持できるように形成された支持部材を有するように構成するのが実際の装置とする上で必要となる。
【0065】
また、本発明に係る画像表示装置は、前記偏心光学系の逆光線追跡における像面に画像表示素子を配備し、前記偏心光学系の入射瞳位置に観察者の眼を配備することで、前記観察者に拡大した虚像を呈示することを特徴としている。
【0066】
画像表示素子から発した光は、リレー光学系としてのプリズム光学系を射出した後に中間像を空中に形成し、その中間像を接眼光学系である裏面鏡によって光は略平行光となり、射出瞳位置に配備された観察者眼球の瞳孔に全画角の光束が入射される。このような構成の画像表示装置によれば、観察者は拡大された虚像を観察することができる。
【0067】
さらに本発明に係る画像表示装置において、前記偏心光学系の逆光線追跡における像面に撮像素子を配備し、前記偏心光学系の射出瞳位置に観察者の瞳孔を配備することが好ましい。
【0068】
また、本発明に係る撮像装置は、プリズム光学系の第1面に対向して撮像素子を配備し、前記偏心光学系の入射瞳位置近傍に開口絞りを配備することで、外界像を撮像することができる。
【0069】
例えば、裏面鏡の第1面に対向した瞳位置に、円形の開口を持つ開口絞りを配備し、プリズムの第1面に対向してCCD等の撮像素子を配備することで、開口絞りを通過し裏面鏡にて反射し、プリズム光学系に入射し、内部反射した後、第1面の射出面から光が射出して撮像素子に到達し、光は集光する。このような構成によれば、広角の撮像装置を実現
することができる。
【発明の効果】
【0070】
本発明の偏心光学系によれば、構成する光学素子が2個でありながら、広画角でかつ大きな射出瞳を有し、高解像を実現できる偏心光学系を提供できる。さらに、この偏心光学系を用いることで、画像表示素子の画像を虚像として観察者眼球に投影することが可能な画像表示装置を提供することができる。さらに、このような偏心光学系を用いることで、広画角かつ高解像度の撮像を行う撮像装置を提供することをも可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】球面の表面反射凹面鏡を示す図
【図2】回転非対称面2面で構成された裏面鏡を示す図
【図3】本発明の実施形態(実施例1)に係る画像表示装置を示す図
【図4】本発明の実施形態(実施例2)に係る画像表示装置を示す図
【図5】本発明の実施例1の横収差図
【図6】本発明の実施例1の横収差図
【図7】偏心配置の凹面鏡により発生する像面湾曲を説明するための図
【図8】偏心配置の凹面鏡により発生する非点収差を説明するための図
【図9】偏心配置の凹面鏡により発生する軸上コマ収差を説明するための図
【図10】本発明の画像表示装置を片眼装着の構成にした場合の様子を示す図
【図11】本発明の画像表示装置を両眼装着の構成にした場合の様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明の偏心光学系について実施例1、2を用いて説明する。各実施例の構成パラメータにおいては、図3に示すように、逆光線追跡で、軸上主光線2を、接眼光学系の射出瞳1の中心を通り、像面(画像表示素子)3の中心に到る光線で定義する。また、軸上主光線1の進行方向に沿った方向をZ軸正方向とし、このZ軸と像面中心を含む平面をY−Z平面とし、原点を通りY−Z平面に直交し、紙面の手前から裏面側に向かう方向をX軸正方向とし、X軸、Z軸と右手直交座標系を構成する軸をY軸とする。
【0073】
実施例1、実施例2では、このY−Z平面内で各面の偏心を行っており、また、各回転非対称自由曲面の唯一の対称面をY−Z面としている。偏心面については、対応する座標系の原点から、その面の面頂位置の偏心量(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向をそれぞれX、Y、Z)と、その面の中心軸(自由曲面については、前記(a)式のZ軸)のX軸、Y軸、Z軸それぞれを中心とする傾き角(それぞれα、β、γ(°))とが与えられている。なお、その場合、αとβの正はそれぞれの軸の正方向に対して反時計回りを、γの正はZ軸の正方向に対して時計回りを意味する。
【0074】
また、媒質の屈折率、アッベ数が慣用法に従って与えられている。
【0075】
また、本発明で用いられる自由曲面の面の形状は前記(a)式により定義し、その定義式のZ軸が自由曲面の軸となる。
【0076】
また、非球面は、以下の定義式(b)で与えられる回転対称非球面である。
Z=(Y2/R)/[1+{1−(1+k)Y2/R21/2
+aY4+bY6+cY8+dY10+・・・
…(b)
ただし、Zを光の進行方向を正とした光軸(軸上主光線)とし、Yを光軸と垂直な方向にとる。ここで、Rは近軸曲率半径、kは円錐定数、a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数である。この定義式のZ軸が回転対称非球面の軸とな
る。なお、データの記載されていない非球面に関する項は0である。
【0077】
なお、データの記載されていない自由曲面に関する項は0である。屈折率については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記してある。長さの単位はmmである。

【0078】
実施例1、実施例2の光軸を含むY−Z断面図をそれぞれ図3、図4に示す。
【0079】
図3には、実施例1の画像表示装置が示されている。実施例1は、画像表示素子3に対向する第1面21と、第1面21から入射した光束を反射させる第2面22と、第2面22から反射された光束を反射させる第1面21と、第1面21から反射された光束を射出する第3面23を備え、第1面21から第3面23への光路中においてプリズム内で交差しないような光学面を有する自由曲面プリズム4を用いており、これら第1面21〜第3面23に面対称自由曲面を用いている。
【0080】
実施例1の画像表示装置は、図3に示すように、リレー光学系を構成する自由曲面プリズム4と接眼光学系を構成する裏面鏡5とからなり、自由曲面プリズム4は3つの光学面21〜23からなり、その3つの面21〜23の間は、屈折率が1より大きい透明媒質で埋められている。また、裏面鏡5は凹面透過面51と凹面反射面52とからなる。逆光線追跡で、射出瞳1を通る軸上主光線2は、裏面鏡5の入射面である凹面透過面51から入射して、凹面反射面52で反射され、再び凹面透過面51にて透過される。
【0081】
次に自由曲面プリズム4の透過面である第3面23に入射して自由曲面プリズム4内に入り、内部反射面として作用する第1面21で反射され、次に反射面の第2面22で反射され、その反射光線は透過作用を有する領域の第1面21を透過して自由曲面プリズム4から射出して、像面の位置に配置された画像表示素子3の表示面に到達して結像する。
【0082】
ここで、第1面21は、内部反射する光線に対しては、第1面21に対する入射角が臨界角以上の場合、その領域では全反射を起こして反射する。第1面21に対する入射角が臨界角より小さい場合には、その領域にはアルミニウムなどの反射膜をコーティングすることで内部反射させることができる。その場合、この反射コーティングする領域は、画像表示素子3へ射出する領域と重ならないようにすることが肝要となる。
【0083】
この実施例の場合は、自由曲面プリズム4中の第3面23と裏面鏡5の射出面52の間に湾曲した中間像面6が形成されている。
【0084】
実際には画像表示素子3から射出された表示光は上記の光路を逆に辿り、射出瞳1の位置に瞳が位置する観察者の眼球内に拡大投影される。この実施例の裏面鏡5は回転対称非球面形状が2面で構成された曲面鏡であり、水平画角80度、垂直画角62度、全光学系のX方向の焦点距離は9.9mm、Y方向の焦点距離は10.1mmであり、瞳径はφ10.0mmである。
【0085】
実施例2の画像表示装置は、図4に示すように、リレー光学系を構成する自由曲面プリズム4と、接眼光学系を構成する裏面鏡5とからなり、自由曲面プリズム4は4つの光学面11〜14からなり、その4つの面11〜14の間は、屈折率が1より大きい透明媒質で埋められている。また、裏面鏡5は凹面透過面51と凹面反射面52とからなる。逆光線追跡で、射出瞳1を通る軸上主光線2は、裏面鏡5の入射面である凹面透過面51から入射して、凹面反射面52で反射され、再び凹面透過面51にて透過される。次に自由曲面プリズム4の透過面である第4面14に入射して自由曲面プリズム4内に入り、反射面である第3面13で反射され、次に反射面の第2面12で反射され、その反射光線は透過
作用のみを有する第1面11を透過して自由曲面プリズム4から射出して、像面の位置に配置された画像表示素子3の表示面に到達して結像する。
【0086】
この実施例の場合は、自由曲面プリズム4中の第4面14と裏面鏡5の凹面透過面51の間に湾曲した中間像面6が形成されている。
【0087】
実際には画像表示素子3から射出された表示光は上記の光路を逆に辿り、射出瞳1の位置に瞳が位置する観察者の眼球内に拡大投影される。この実施例の裏面鏡5の凹面透過面51及び凹面反射面52は自由曲面形状の曲面であり、水平画角75度、垂直画角60度、全光学系のX方向の焦点距離は10.5mm、Y方向の焦点距離は7.6mmであり、瞳径はφ12.0mmである。
【0088】
以下に上記実施例1、実施例2についての数値実施例を示す。これら数値実施例において“FFS”は自由曲面を示す。
【0089】
(実施例1)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ -1000.00
1 ∞(ダミー面)
2 ∞(絞り面) 偏心(1)
3 非球面[1] 偏心(2) 1.5254 56.2
4 非球面[2] 偏心(3) 1.5254 56.2
5 非球面[1] 偏心(2)
6 FFS[1] 偏心(4) 1.5254 56.2
7 FFS[2] 偏心(5) 1.5254 56.2
8 FFS[3] 偏心(6) 1.5254 56.2
9 FFS[2] 偏心(5)
像 面 ∞ 偏心(7)

非球面[1]
曲率半径 1001.72
k -8.9463e+000
a -2.8719e-007 b 1.1477e-011 c -2.5182e-015
d 1.3967e-019

非球面[2]
曲率半径 -101.98
k -1.0053e+000
a -7.6692e-008 b -2.6006e-012 c 7.7137e-016

FFS[1]
C4 -8.1912e-004 C6 -2.4574e-002 C8 -1.0985e-003
C10 6.2016e-004 C11 1.8828e-005 C13 3.8065e-005
C15 -4.1559e-005 C17 -4.5723e-006 C19 -1.8374e-006
C21 1.8014e-006 C22 -5.2576e-009 C24 2.5927e-007
C26 6.4070e-008 C28 -3.1023e-008

FFS[2]
C4 -8.0395e-003 C6 -5.0653e-003 C8 -1.6821e-004
C10 1.0889e-004 C11 -5.5993e-006 C13 -9.2824e-007
C15 -5.8464e-006 C17 -3.4199e-007 C19 -1.8962e-007
C21 1.6875e-007 C22 -1.3475e-008 C24 2.8715e-008
C26 3.8422e-009 C28 -3.4084e-009

FFS[3]
C4 -1.1814e-002 C6 -1.1386e-002 C8 -7.9670e-005
C10 -8.3894e-005 C11 -1.2008e-006 C13 -3.2577e-006
C15 -2.8915e-006 C17 -3.9496e-009 C19 -4.7920e-008
C21 -4.2985e-008 C22 -5.0941e-010 C24 -4.3484e-010
C26 -1.1172e-009 C28 -5.9436e-010

偏心[1]
X 0.00 Y 0.00 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00

偏心[2]
X 0.00 Y 25.65 Z 29.99
α 12.72 β 0.00 γ 0.00

偏心[3]
X 0.00 Y -35.64 Z 61.97
α -0.83 β 0.00 γ 0.00

偏心[4]
X 0.00 Y -69.40 Z -5.09
α 33.35 β 0.00 γ 0.00

偏心[5]
X 0.00 Y -81.36 Z -20.59
α 94.00 β 0.00 γ 0.00

偏心[6]
X 0.00 Y -74.64 Z -59.10
α 142.96 β 0.00 γ 0.00

偏心[7]
X 0.00 Y -98.88 Z -37.24
α 110.54 β 0.00 γ 0.00
【0090】
(実施例2)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ -1000.00
1 ∞(ダミー面)
2 ∞(絞り面) 偏心(1)
3 FFS[1] 偏心(2) 1.5163 64.1
4 FFS[2] 偏心(3) 1.5163 64.1
5 FFS[1] 偏心(2)
6 FFS[3] 偏心(4) 1.5254 56.2
7 FFS[4] 偏心(5) 1.5254 56.2
8 FFS[5] 偏心(6) 1.5254 56.2
9 FFS[6] 偏心(7)
像 面 ∞ 偏心(8)

FFS[1]
C4 1.3656e-003 C6 -3.7579e-003 C8 -1.6231e-004
C10 -2.1738e-006 C11 -1.9328e-006 C13 6.3271e-008
C15 6.8599e-009

FFS[2]
C4 -3.6787e-003 C6 -4.2794e-003 C8 -3.0982e-005
C10 -9.7644e-006 C11 -1.7001e-007 C13 -1.9999e-007
C15 -7.0890e-010 C17 -1.1382e-008 C19 9.2077e-009
C21 -1.1626e-009 C22 -1.3000e-010 C24 8.6659e-011
C26 -2.0018e-010 C28 5.0260e-013

FFS[3]
C4 9.0556e-003 C6 -7.2414e-004 C8 1.0574e-004
C10 3.7835e-004 C11 -2.1905e-005 C13 4.9268e-005
C15 -1.0807e-006 C17 -9.2193e-007 C19 1.1304e-006
C21 -2.6771e-007 C22 2.0025e-008 C24 2.5733e-008
C26 1.6169e-008 C28 -3.4938e-009

FFS[4]
C4 3.6094e-003 C6 -2.3148e-003 C8 -1.4798e-004
C10 -6.7902e-005 C11 1.3393e-007 C13 -1.1393e-006
C15 -2.5629e-006 C17 -2.1929e-008 C19 -9.4473e-008
C21 1.2612e-008 C22 -2.3678e-010 C24 -3.2177e-009
C26 -1.0939e-009 C28 -1.4717e-009

FFS[5]
C4 -6.2219e-003 C6 -8.6396e-003 C8 -3.0772e-005
C10 -4.3326e-005 C11 -4.4831e-008 C13 -8.6916e-007
C15 -1.2263e-006 C17 -1.1563e-008 C19 -1.5010e-008
C21 -1.8370e-008 C22 1.2767e-011 C24 4.1496e-010
C26 -1.5180e-010 C28 -2.1253e-010

FFS[6]
C4 3.6725e-002 C6 -2.3865e-003 C8 -3.9614e-004
C11 -2.5196e-004 C13 -5.4462e-004 C15 2.6807e-004
C17 4.9496e-005 C19 5.3563e-005 C21 -2.8008e-005
C22 -1.1100e-006 C24 -1.7486e-006 C26 -1.5762e-006
C28 8.3349e-007

偏心[1]
X 0.00 Y 0.00 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00

偏心[2]
X 0.00 Y -22.05 Z 45.00
α 0.29 β 0.00 γ 0.00

偏心[3]
X 0.00 Y -36.87 Z 66.00
α -3.10 β 0.00 γ 0.00

偏心[4]
X 0.00 Y -45.51 Z -20.97
α 66.52 β 0.00 γ 0.00

偏心[5]
X 0.00 Y -88.75 Z -21.92
α 75.64 β 0.00 γ 0.00

偏心[6]
X 0.00 Y -62.14 Z -52.34
α 142.46 β 0.00 γ 0.00

偏心[7]
X 0.00 Y -76.99 Z 3.61
α 144.02 β 0.00 γ 0.00

偏心[8]
X 0.00 Y -81.23 Z 4.73
α 143.99 β 0.00 γ 0.00
【0091】
図5、図6に実施例1の横収差図を示す。この横収差図において、括弧内に示された数字は(水平(X方向)画角、垂直(Y方向)画角)を表し、その画角における横収差を示す。
【0092】
実施例1、実施例2において、条件式(1)〜(4)に関する値は次の通りである。
【0093】
実施例1 実施例2
FRy[mm] 13.3 48.5
FRx[mm] 23.1 21.7
ER/FRy(条件式(1)) 2.71 0.887
ER/FRx(条件式(2)) 1.56 1.98
ER[mm] (条件式(3)) 36.0 43.04
α [°] (条件式(4)) 49.6 47.1
【0094】
以上に説明したような画像表示装置を1組用意し、片眼装着用に構成しても、また、そのような組を左右一対用意し、それらを眼輻距離だけ離して支持することにより、両眼装着用に構成してもよい。そのようにして、片眼あるいは両眼で観察できる据え付け型又はポータブル型の画像表示装置として構成することができる。
【0095】
片眼に装着する構成にした場合の様子を図10に(この場合は、左眼に装着)、両眼に装着する構成にした場合の様子を図11に示す。図10中、31は表示装置本体部を示し、観察者の左眼の前方に保持されるよう支持部材が頭部を介して固定している。その支持部材としては、一端を表示装置本体部31に接合し、観察者の側頭部を渡るように延在す
る前フレーム32、後フレーム33と、後フレーム33の他端に挟まれるように自らの両端を一方ずつ接合し、観察者の頭頂部を支持する頭頂フレーム34とから構成されている。一方、図11に示される両眼タイプのものは、両眼前方に保持される表示装置本体部31R、31Lをそれぞれ、前方フレーム32、後フレーム33を介して頭頂フレーム34にて支持することで、観察者に対して固定配置している。
【0096】
また、片目タイプ、両眼タイプどちらの構成においても以下の構成を採用することとしている。前フレーム32における上記の後フレーム33との接合近傍には、弾性体からなり例えば金属板バネ等で構成されたリヤプレート35が接合されている。このリヤプレート35は、上記支持部材の一翼を担うリヤカバー36が観察者の後頭部から首のつけねにかかる部分で耳の後方に位置して支持可能となるように接合されている。リヤプレート35又はリヤカバー36内に観察者の耳に対応する位置にスピーカー39が取り付けられている。
【0097】
映像・音声信号等を外部から送信するためのケーブル41が表示装置本体部31から、頭頂フレーム34、後フレーム33、前フレーム32、リヤプレート35の内部を介してリヤプレート35あるいはリヤカバー36の後端部より外部に突出している。そして、このケーブル41はビデオ再生装置40に接続されている。なお、図中、40aはビデオ再生装置40のスイッチやボリュウム調整部である。
【0098】
なお、ケーブル41は先端をジャックして、既存のビデオデッキ等に取り付け可能としてもよい。さらに、TV電波受信用チューナーに接続してTV鑑賞用としてもよいし、コンピュータに接続してコンピュータグラフィックスの映像や、コンピュータからのメッセージ映像等を受信するようにしてもよい。また、邪魔なコードを排斥するために、アンテナを接続して外部からの信号を電波によって受信するようにしても構わない。また、両眼タイプの場合には、左右の各画像表示装置に対して、それぞれ右眼用、左眼用として作成された映像を表示させることで、観察者に立体映像を提供することが可能となる。
【0099】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0100】
1…射出瞳
2…軸上主光線
3…画像表示素子
4…自由曲面プリズム
5…接眼光学系
51…凹面透過面
52…凹面反射面
6…中間像面
11…第1面
12…第2面
13…第3面
14…第4面
21…第1面
22…第2面
23…第3面
31…本体
32…前フレーム
33…後フレーム
34…頭頂フレーム
35…リヤプレート
36…リヤカバー
40…ビデオ再生装置
41…ケーブル
101…観察者眼球
102…観察者虹彩位置
103…凹面鏡
104…観察者視軸
105…凹面鏡によって屈曲した光軸
106…凹面鏡による中間像面
107…射出瞳位置
108…裏面鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子の原画像の中間像を形成するリレー光学系と、その中間像を虚像として投影する接眼光学系を有する光学系において、
前記接眼光学系は、相互に偏心した2面で構成され、前記2面の間を屈折率1以上の媒質で満たされた正のパワーを有する裏面鏡であり、
前記リレー光学系は、少なくとも3面有し、前記少なくとも3面は相互に偏心して構成され、前記少なくとも3面で形成された内部を屈折率1以上の媒質で満たされたプリズム光学系であることを特徴とする
偏心光学系。
【請求項2】
前記接眼光学系を構成する2面のうち少なくとも1面は非球面であることを特徴とする
請求項1に記載の偏心光学系。
【請求項3】
前記接眼光学系を構成する2面のうち少なくとも1面は回転非対称面であることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の偏心光学系。
【請求項4】
下記条件式(1)、(2)を満足することを特徴とする
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の偏心光学系。
0.6 < ER/FRx < 5 ・・・・(1)
0.6 < ER/FRy < 5 ・・・・(2)
ただし、
FRx:裏面鏡のX−Z面内の焦点距離
FRy;裏面鏡のY−Z面内の焦点距離
ER: 裏面鏡と観察者虹彩位置までの軸上主光線に沿った距離、である。
【請求項5】
下記条件式(3)を満足することを特徴とする
ER ≧ 30 ・・・・(3)
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の偏心光学系。
ただし、
ER:裏面鏡と観察者虹彩位置までの軸上主光線に沿った距離、である。
【請求項6】
下記条件式(4)を満足することを特徴とする
α> 40° ・・・・(4)
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の偏心光学系。
ただし、
α:裏面鏡における観察者視軸の屈曲角、である。
【請求項7】
前記接眼光学系は、前記画像表示素子側の厚さがより厚い形状を有する裏面鏡であることを特徴とする
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の偏心光学系。
【請求項8】
前記リレー光学系を構成する少なくとも3面のうち、少なくとも2面は回転非対称面であることを特徴とする
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の偏心光学系。
【請求項9】
前記リレー光学系を構成する少なくとも3面のうち、少なくとも2面は自由曲面であることを特徴とする
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の偏心光学系。
【請求項10】
前記リレー光学系は、回転非対称面であり、相互に偏心した少なくとも3面で形成された内部を屈折率1以上の媒質で満たされたプリズム光学系であることを特徴とする
請求項1から請求項9の何れか1項に記載の偏心光学系。
【請求項11】
前記リレー光学系は、回転非対称面であり、相互に偏心した少なくとも4面で形成された内部を屈折率1以上の媒質で満たされたプリズム光学系であることを特徴とする
請求項1から請求項9の何れか1項に記載の偏心光学系。
【請求項12】
請求項1から請求項11の何れか1項に記載の偏心光学系を有し、
前記リレー光学系に対向して前記画像表示素子を配備し、
前記接眼光学系に対向して観察者の眼球を配備させたとき、前記観察者に対して拡大された虚像を呈示することを特徴とする
画像表示装置。
【請求項13】
前記偏心光学系の像面に画像表示素子を配備し、
前記偏心光学系の射出瞳位置に観察者瞳孔を配備することを特徴とする
請求項12に記載の画像表示装置。
【請求項14】
請求項1から請求項11の何れか1項に記載の偏心光学系を有し、
前記リレー光学系に対向して撮像素子を配備し、
前記接眼光学系に対向した瞳位置に開口絞りを配備し、
外界像を撮像することを特徴とする
撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−208193(P2012−208193A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71984(P2011−71984)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】