説明

停電検出回路

【課題】
トランスの一次側において交流電源の通電および停電を検出し、通電の検出と同期してリセット信号を制御部に出力することができる停電検出回路を提供する。
【解決手段】
交流電源の通電および停電を検出する停電検出回路において、トランスの一次側において交流電源の通電および停電を検出する停電検出手段と、通電検出信号および停電検出信号を生成する検出信号生成手段と、リセット信号を生成するリセット信号生成手段と、停電検出手段が通電を検出すると、通電検出信号とリセット信号の生成を同期させる同期手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子機器における交流電源の通電および停電を検出する停電検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭内に設置されている電気・電子機器は、ユーザがリモートコントローラを用いて電源のオンオフ等の操作を可能とするために、待機状態となっている。機器が待機状態であるとき、リモートコントローラからの信号を受光する受光部や制御部等の一部の構成部のみに電力を供給している。このため、このような電気・電子機器では、機器を使用するときに電力を供給する主電源回路と機器を使用しないときに電力を供給するスタンバイ電源回路が備えられている。
【0003】
主電源回路およびスタンバイ電源回路を備えた電気・電子機器では、交流電源からの通電および停電を検出する検出部とリセット信号を出力するリセット部が備えられている。検出部が通電を検出すると、制御部により主電源回路から機器の各構成部に電力が供給されるとともに、リセット部からリセット信号が制御部に出力され、制御部を初期状態にする。また、検出部が停電を検出すると、機器への電力供給が停止されるため、制御部によりPOWER OFFや停電処理シーケンスが実行される。この検出部およびリセット部は、通常、スタンバイ電源回路で使用するトランスの二次巻線に接続されている。検出部は、トランスの一次側の通電および停電にリニアに反応するトランスの二次巻線の出力変動を利用することにより、通電および停電を検出している。
【0004】
また、電気・電子機器において、主電源回路およびスタンバイ電源回路の他にスイッチング電源を用いることもできる(例えば、特許文献1参照)。スイッチング電源における通電および停電の検出は、検出部をトランスの一次側に設け、トランスの一次側の電圧変動を二次側に伝達する手段(フォトカプラ)を用いている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−359974号公報
【特許文献2】特開2007−192690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スイッチング電源を備えた電子・電気機器において、トランスの二次側の電圧変動により通電および停電を検出する場合、トランスの二次側の電圧変動が交流電源に対してリニアに反応しないことがある。このため、停電検出に遅れが発生し、機器が起動した状態で電源オフとなり停電処理等を行うことができないという問題がある。
【0007】
特許文献2のように検出部をトランスの一次側に設けた電子・電気機器は、電源電圧が動作限界値付近を変動すると、通電検出と連動してリセット信号が出力されない場合や、主回路に供給される電源が必要とされる電圧レベルに達していない状態でリセットが解除されることも想定され、誤作動を起こす可能性がある。このように、電源電圧が不安定な状態で初期化されると、電子・電気機器を正常に起動させることができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、トランスの一次側において交流電源の通電および停電を検出し、通電の検出と同期してリセット信号を制御部に出力することができる停電検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明における停電検出回路は、交流電源の通電および停電を検出する停電検出回路において、トランスの一次側において交流電源の通電および停電を検出する停電検出手段と、通電検出信号および停電検出信号を生成する検出信号生成手段と、リセット信号を生成するリセット信号生成手段と、停電検出手段が通電を検出すると、通電検出信号およびリセット信号の生成を同期させる同期手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記の停電検出回路において、停電検出手段は、発光ダイオードとフォトトランジスタにより構成されるフォトカプラを有し、発光ダイオードはトランスの一次側に接続され、フォトダイオードはトランスの二次側に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トランスの一次側において交流電源の通電および停電を検出し、通電の検出と同期してリセット信号を制御部に出力することができる停電検出回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例である停電検出回路の構成を示すブロック図である。図2は、本実施例の停電検出回路1の詳細な構成を示す図である。本実施例の停電検出回路は、映像音響機器などの電気・電子機器に備えられる。図1に示す停電検出回路1は、停電検出部10、同期部20、検出信号生成部30、リセット信号生成部40を備える。本実施例の停電検出回路1は、電源生成部2に接続されている。電源生成部2は、例えばスイッチング電源であり、商用電源等の交流電源3と接続し、停電検出回路1を備えた機器が通常の動作をしているときに、図示しないこの機器の各構成部の動作に必要な電力を供給する。図2に示すように、電源生成部2は、トランスT、一次巻線P、二次巻線S、帰還巻線D、電源制御回路を備える。
【0013】
停電検出部10は、フォトカプラ11、定電圧ダイオード12、ダイオード13、抵抗14およびコンデンサ15を備え、交流電源3のHOT/COLD間に接続されている。フォトカプラ11は、発光ダイオード11aとフォトトランジスタ11bを備える。フォトカプラ11において、発光ダイオード11aは電源生成部2のトランスTの一次側に接続され、フォトダイオード11bは電源生成部2のトランスTの二次側に接続されている。定電圧ダイオード12、ダイオード13および抵抗14は、発光ダイオード11aに流れる電流を調整するために、発光ダイオード11aと直列に接続されている。コンデンサ15は、トランスTの一次側から流れる脈動電流を平滑するために用いられる。
【0014】
交流電源からの通電時において、電源生成部2のトランスTの一次側の電圧が定電圧ダイオード12の降伏電圧より大きくなると、発光ダイオード11aに電流が流れ、発光ダイオード11aが発光する。発光ダイオード11aから発光された光は、フォトトランジスタ11bにより受光される。また、交流電源からの通電が停止すると、トランスTの一次側の電圧が定電圧ダイオード11の降伏電圧より小さくなるため、発光ダイオード11aに電流が流れなくなり、発光ダイオード11aの発光が停止する。
【0015】
このように、停電検出部10は、トランスTの一次側が通電すると、一次側に接続された発光ダイオード11aが発光し、この光を受光した二次側に接続されたフォトトランジスタ11bがオンすることにより、通電を検出する。また、停電検出回路10は、トランスTの一次側が停電すると、一次側に接続された発光ダイオード11aの発光が停止し、二次側に接続されたフォトトランジスタ11bがオフすることにより、停電を検出する。
【0016】
同期部20は、npnトランジスタ21、抵抗22、抵抗23、抵抗24およびコンデンサ25を備える。npnトランジスタ21のベースは、抵抗22を介してフォトトランジスタ11bのエミッタと接続している。また、npnトランジスタ21のコレクタは、抵抗23を介して電源生成部2のトランスTの二次側と接続している。トランスTの一次側が通電すると、npnトランジスタ21は、停電検出部10のフォトトランジスタ11bがオンするため、ベースに電圧が印加されオンになる。このとき、npnトランジスタ21のコレクタは、LOWレベルになる。また、トランスTの一次側が停電すると、npnトランジスタ21は、停電検出部10のフォトトランジスタ11bがオフとするため、ベースに電圧が印加されなくなりオフになる。このとき、npnトランジスタ21のコレクタはHIGHレベルになる。
【0017】
このように、同期部20は、トランスTの一次側が通電すると、すなわち停電検出部10が通電を検出すると、npnトランジスタ21のコレクタがLOWレベルになる。また、同期部20は、トランスTの一次側が停電すると、すなわち停電検出部10が停電を検出すると、npnトランジスタ21のコレクタがHIGHレベルになる。LOWレベルとなる信号およびHIGHレベルとなる信号は、同期部20から検出信号生成部30およびリセット信号生成部40に同時に出力される。
【0018】
検出信号生成部30は、リセットIC31および抵抗32を備える。本実施例におけるリセットIC31はオープンドレイン型のリセットICである。リセットIC31の入力端子は、同期部20のnpnトランジスタ21のコレクタと接続している。リセットIC31の出力端子は、抵抗32を介して電源生成部2のトランスTの二次側と接続している。また、リセットIC31の出力端子は、図示しない電気・電子機器を制御するマイクロコンピュータ等の制御部と接続している。検出信号生成部30は、同期部20から入力した信号に応じた検出信号を生成し制御部に出力する。
【0019】
オープンドレイン型のリセットICは、入力電圧がリセットICの最低動作電圧未満のとき、出力がHIGHレベル(ICの出力が不定となるため、プルアップされた電圧)となる。しかし、入力電圧がリセットICの最低動作電圧を超え、且つ検出電圧未満の状態では出力がLOWレベルとなる。また、入力電圧が最低動作電圧を超え、且つ検出電圧を超えることにより、出力はHIGHレベルになる。本実施例で使用するオープンドレイン型のリセットIC31は、入力電圧がリセットICの最低動作電圧未満の状態と、最低動作電圧以上で且つ検出電圧未満の状態の2種類の動作モードで使用する。
【0020】
本実施例の検出信号生成部30において、停電検出部10が通電を検出すると、同期部20のnpnトランジスタ21のコレクタがLOWレベルになるため、このコレクタに接続されたリセットIC31の入力端子もLOWレベル(最低動作電圧未満の入力電圧)になる。リセットIC31は、入力端子がLOWレベルになると、出力端子からHIGHレベル(リセットIC31の出力が不定となるため、プルアップされた電圧)の通電検出信号を出力する。また、本実施例の検出信号生成部30において、停電検出部10が停電を検出すると、同期部20のnpnトランジスタ21のコレクタがHIGHレベルになるため、このコレクタに接続されたリセットIC31の入力端子もHIGHレベルになる。しかしながら、このときに入力される電圧は最低動作電圧以上で且つ検出電圧未満に設定されているため、リセットIC31は、入力端子がHIGHレベルになると、出力端子からLOWレベルの停電検出信号を出力する。
【0021】
このように、検出信号生成部30は、停電検出部10が通電を検出すると、HIGHレベルの通電検出信号を制御部に出力する。制御部は、検出信号生成部30からHIGHレベルの通電検出信号が入力されることにより、通電時の制御をすることができる。また、検出信号生成部30は、停電検出部10が停電を検出するとき、LOWレベルの停電検出信号を制御部に出力する。制御部は、検出信号生成部30からLOWレベルの停電検出信号が入力されることにより、停電時の制御をすることができる。
【0022】
リセット信号生成部40は、npnトランジスタ41、npnトランジスタ42、抵抗43、抵抗44、電解コンデンサ45、抵抗46、抵抗47、抵抗48、ダイオード49、抵抗50、抵抗51およびコンデンサ52を備える。npnトランジスタ41のベースは抵抗43を介して同期部21のnpnトランジスタ21のコレクタと接続し、npnトランジスタ41のコレクタは抵抗44を介して電源生成部2のトランスTの二次側と接続している。また、npnトランジスタ41のコレクタは、電解コンデンサ45のプラス極に接続している。npnトランジスタ42のベースは抵抗46を介して電解コンデンサ45のマイナス極に接続し、npnトランジスタ42のコレクタは抵抗47を介して電源生成部2のトランスTの二次側と接続している。また、npnトランジスタ42のコレクタは、電気・電子機器を制御するマイクロコンピュータ等の制御部と接続している。リセット信号生成部40は、同期部20から入力した信号に応じたリセット信号を制御部に出力する。
【0023】
リセット信号生成部40において、停電検出部10が通電を検出すると、同期部20のnpnトランジスタ21のコレクタがLOWレベルになるため、このコレクタに接続されたnpnトランジスタ41のベースもLOWレベルになる。npnトランジスタ41は、ベースがLOWレベルになるため、ベースに電圧が印加されずオフとなる。このとき、npnトランジスタ41のコレクタはHIGHレベルとなり、電解コンデンサ45に電圧が印加される。npnトランジスタ42は、ベースに電解コンデンサ45により微分化された電圧が印加される。npnトランジスタ42は、ベースに電圧が印加されオンになり、コレクタがLOWレベルになる。このように、npnトランジスタ42のコレクタがLOWレベルになることにより、リセット信号生成部40は、LOWレベルのリセット信号を制御部に出力することができる。
【0024】
リセット信号生成部40において、停電検出部10が停電を検出すると、同期部20のnpnトランジスタ21のコレクタがHIGHレベルになるため、このコレクタに接続されたnpnトランジスタ41のベースもHIGHレベルになる。npnトランジスタ41は、ベースがHIGHレベルになるため、ベースに電圧が印加されオンになる。npnトランジスタ41がオンになると、電解コンデンサ45の電荷は放電されるが、npnトランジスタ42に対して順方向に電圧が印加されない。このため、npnトランジスタ42は、オフになりコレクタがHIGHレベルになる。このように、npnトランジスタ42のコレクタからHIGHレベルになることにより、リセット信号生成部40は、HIGHレベルのリセット信号を制御部に出力することができる。
【0025】
図3は、リセット信号の信号波形を示す図である。図3aに示すように、停電検出部10が通電を検出すると、npnトランジスタ42のベースに電解コンデンサ45により微分化された電圧が印加される。npnトランジスタ42は、ベース電圧が印加されることでオンするため、コレクタがHIGHレベルからLOWレベルになり、図3bに示すようなパルス状のリセット信号を出力する。その後、npnトランジスタ42はベース電圧の低下によってオフになり、npnトランジスタ42のコレクタはLOWレベルからHIGHレベルになる。制御部は、LOWレベルのリセット信号の入力でリセット状態になり、HIGHレベルのリセット信号の入力でリセット状態が解除され初期化される。
【0026】
上述した本実施例の停電検出回路1では、停電検出部10が通電を検出すると、同期部20のnpnトランジスタ21のコレクタがLOWレベルになる。このnpnトランジスタ21のコレクタから出力されるLOWレベルの信号は、検出信号生成部30およびリセット信号生成部40に同時に出力される。したがって、検出信号生成部30による通電検出信号とリセット信号生成部40によるリセット信号の生成を同期させることができる。
【0027】
また、本実施例の停電検出回路1において、電源生成部2は、スイッチング電源の代わりに、トランスを用いた直流電源を使用することも可能である。また、停電検出部10に備えられたフォトトランジスタ11bの出力を、同期部20のnpnトランジスタ21を介して検出信号生成部30およびリセット信号生成部40に接続することにより、フォトトランジスタ11bのコレクタ電流を低減させることができ、発光ダイオード11aの消費電流を低減させることができる。
【0028】
検出信号生成部30において、オープンドレイン型のリセットICを用いることにより、出力端子の電圧レベルを入力電圧レベルに関わらず設定することができる。また、検出信号生成部30には、オープンドレイン型のリセットICの他に、トランジスタでリセットICの出力論理を変換することで、COMS出力タイプのリセットICを使用することも可能である。どちらのリセットICを使用する場合でも、リセットICの消費電流を低減させることができる。オープンドレイン型のリセットICを使用する場合は、出力端子に接続する抵抗の抵抗値を調整することにより、消費電流を低減させることができる。また、検出信号生成部30では、リセットICの代わりにトランジスタを用いることもできる。
【0029】
上述したように、本実施例の停電検出回路1は、停電検出回路10においてトランスTの一次側で通電および停電を検出する。停電検出部10が通電を検出したと、同期部20により通電検出信号とリセット信号が同期して生成され、生成された通電検出信号およびリセット信号を制御部に出力することができる。このため、マイクロコンピュータ等の制御部の誤作動を防ぐことができ、正常に電気・電子機器を起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例である停電検出回路の構成を示すブロック図。
【図2】本実施例の停電検出回路1の詳細な構成を示す図。
【図3】リセット信号の信号波形を示す図。
【符号の説明】
【0031】
1…停電検出回路、2…電源生成部、3…交流電源、10…停電検出部、11…フォトカプラ、11a…発光ダイオード、11b…フォトトランジスタ、12…定電圧ダイオード、13…ダイオード、14…抵抗、15…コンデンサ、20…同期部、21…npnトランジスタ、22…抵抗、23…抵抗、24…抵抗、25…コンデンサ、30…検出信号生成部、31…リセットIC、32…抵抗、40…リセット信号生成部、41…npnトランジスタ、42…npnトランジスタ、43…抵抗、44…抵抗、45…電解コンデンサ、46…抵抗、47…抵抗、48…抵抗、49…ダイオード、50…抵抗、51…抵抗、52…コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の通電および停電を検出する停電検出回路において、
トランスの一次側において交流電源の通電および停電を検出する停電検出手段と、
通電検出信号および停電検出信号を生成する検出信号生成手段と、
リセット信号を生成するリセット信号生成手段と、
前記停電検出手段が通電を検出すると、前記通電検出信号および前記リセット信号の生成を同期させる同期手段とを備えることを特徴とする停電検出回路。
【請求項2】
請求項1に記載の停電検出回路において、
前記停電検出手段は、発光ダイオードとフォトトランジスタにより構成されるフォトカプラを有し、前記発光ダイオードはトランスの一次側に接続され、フォトダイオードはトランスの二次側に接続されることを特徴とする停電検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−88207(P2010−88207A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254216(P2008−254216)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(303009467)株式会社ディーアンドエムホールディングス (274)
【Fターム(参考)】