説明

健康食品・飼料・肥料の製造方法及びその製造用複合発酵菌体群

【課題】 発酵処理が困難であった甲殻類・卵殻他、水産加工残滓、大豆粕、オカラ等を有効利用できる発酵処理による健康食品・飼料・肥料の製造方法を提案する。
【解決手段】水・海水魚介類の消化管より採取した腸内細菌を、乾燥オカラ・米糠の菌床培養し、さらにこれに新たな菌床と既存の環境菌を加えて培養して複合菌体を使用し、発酵処理対象物を第一原料とし、第二原料として、乾燥オカラ、脱脂大豆粕、米糠等の製造目的に対応した材料を選択して混合攪拌し、前記複合発酵菌体群を植え付け、保温性バッチ式発酵機械(発酵槽1)で低温から攪拌発酵処理し、75〜85℃に達するまで発酵処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バチルス属主体の複合発酵菌体群及び前記菌体群を使用した健康食品・動物・水産飼料・農業肥料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オカラは高たんぱくの食品加工残渣であり、養魚用飼料や畜産飼料として広く採用されている。このオカラを発酵処理して使用する手段として、特開平11−289994号公報(特許文献1)に、オカラを繊維分解酵素枯草菌で予備発酵させて脱水乾燥させ、これに他の原料を添加混合する混合飼料が開示されている。
【0003】
またイカ肝臓が摂餌誘引効果を有することが知られているが、生のまま乾燥配合飼料として利用されることは無く、一旦粉末状に形成した後に配合飼料の原料として使用している。また特許3023534号公報(特許文献2)には、他の配合原料との混合物を混練、加熱、加圧処理して製出する魚類飼料が開示されている。
【0004】
また特許3314302号公報(特許文献3)には好熱性みろく菌種を海産物残渣等の有機素材に添加し好気性条件下高温発酵させることを特徴とした飼料添加物、液状飼料添加物、飼料およびそれらの製造方法が開示されており、特開2003−219864号公報(特許文献4)には、好熱性種菌PTA−1773をエビ及び/またはカニの残渣等の有機素材に添加し、好気条件下かつ50乃至90℃で発酵させることによって得られる生態環境改良資材が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−289994号公報。
【特許文献2】特許3023534号公報。
【特許文献3】特許3314302号公報。
【特許文献4】特開2003−219864号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乾燥オカラを直接養殖場に散布すると、水質汚染が生ず易い。特許文献1記載のようなオカラ発酵物の利用においては、飼料に対する添加量が少なくオカラを有効利用した飼料とはいえない。
【0007】
更にイカ肝臓を飼料として採用する場合には、粉末化その他の加工が必要となり、高コストによる製造費のアップが免れない。
【0008】
また特許文献3,4に開示されている海産物残渣の発酵処理においては、オカラ成分を使用しておらず、使用菌種はバチルス属の好熱菌のみであり、低温で発酵が進行するための低温菌は含まれていない
【0009】
そこで本発明者は、前記の課題を解決する手段として、バチルス属が主成分で低温菌と好熱菌を含む耐熱性の複合菌である種菌を植え付け、魚介類加工残渣、魚介類、繭玉を取り除いた蛹、その他の発酵処理対象物を所定量加え、所定時間強制空気供給を行わずに混合攪拌して好気発酵処理し、発酵処理後に所定の乾燥を行って飼料・肥料を製出する対処方法を提案した(特願2007−075871)。
【0010】
前記の複合菌群は、生ごみ処理用(生ごみ分解用)に環境菌という名称で市販されているものを所定の温度で発酵して得たものである。
【0011】
本発明は、先に提案した発酵処理製出品に比較しても、発酵分解による有効成分製出が効果的になされる新規な発酵菌体群を見出したもので、この菌体群の製造方法及びこの菌体群を使用した新規な健康食品・飼料・肥料の製造方法を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1)に係る健康食品・飼料・肥料の製造用複合発酵菌体群の製造方法は、淡水・海水魚介類の消化管より採取した腸内細菌を、保温バッチ式発酵槽内で、乾燥オカラまたは米糠あるいは双方の混合物からなる菌床に植え付け、培養温度を50℃以下に維持しながら攪拌を行って低温菌繁殖を行い、Sphingomonas paucimobilis、Pseudomonas fluorescens、Leclercia adecarboxylata、Shewanella putrifaciens、Pseudomonas putidaを含む菌体群を製出し、更に前記菌体群及び既知の環境菌であるバチルス・サブチリス、バチルスsp、バチルス・バリスモルテイス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、パニエニバチルスspの菌体群を、保温バッチ式発酵槽内で、乾燥オカラまたは米糠あるいは双方の混合物からなる菌床に植え付け、培養温度を55〜65℃を維持して5〜10時間の攪拌培養して製出したことを特徴とするものである。
【0013】
而して従来の乳酸菌系発酵やバチルスナットウ菌使用の発酵分解では、発酵分解する原料が限られ、蟹殻や卵殻を非加熱にて短時間で分解、有用物化することは不可能であったが、先の発明で分解可能な手法を見出したので、更に効果的な菌体群を特定し、使用し易いようにしたもので、特に菌培養上限温度は65℃とし、下限温度は55℃として病原性大腸菌やウイルスの繁殖を妨げ、低温菌が胞子、芽胞で生存可能な上限温度で繁殖させたものである。
【0014】
本発明(請求項2)に係る健康食品・飼料・肥料の製造方法は、発酵処理対象物を第一原料とし、第二原料として、乾燥オカラ、脱脂大豆粕、米糠等の製造目的に対応した材料を選択して、混合攪拌し、しかる後前記の本発明方法で製出した複合発酵菌体群を植え付け、保温性バッチ式発酵機械で攪拌発酵処理し、75〜85℃に達したら発酵処理を終了してなる特徴とするものである。
【0015】
第一原料及び第二原料は、発酵処理品(製出品)の使用目的に応じて特定されるものであり、発酵処理は、攪拌によって露出した表面のみが空気接触して好気発酵が行われ、強制空気供給を行わないので処理対象物(混合攪拌物)の温度低下を免れ、高温を維持しての高速発酵処理がなされる。特に本発明(請求項1)の複合発酵菌体群を使用するものであるから、発酵処理は低温菌による低温発酵から好熱菌による高温発酵がなされ、製品発酵温度を75〜85℃に設定することにより、有害菌が死滅する。
【0016】
また本発明(請求項3)に係る健康食品の製造方法は、特に蟹・海老等の甲殻又は卵殻を主成分とする原料に、乾燥オカラ又は脱脂大豆粕或いは双方の混合物を第二原料として加えて混合攪拌し、しかる後本発明の複合発酵菌体群を植え付け、保温性バッチ式発酵機械で攪拌発酵を行い、発酵終了後に所定の乾燥工程行い、微粉砕及び加熱殺菌してなるものである。
【0017】
而して、前記の製出品は、加工食品原料として各種食品に添加して食品に含有させたり、溶液(水・アルコール・食酢等)に溶解・希釈して飲料とするものである。特に第一原料を分解して製出されたキトサン・有機カルシウム、第二原料を分解して折出された有機アミノ酸等を含有するものである。
【0018】
また特に本発明(請求項4、5)は、前記の健康食品の製造方法において、原料比が、第一原料として蟹・海老等の甲殻類を約40%又は卵殻を約40%とし、第二原料である乾燥オカラ・脱脂大豆粕を約60%とし、12〜15時間発酵処理して製造したもので、前記の混合比率を採用することで、発酵対象(攪拌混合物)の全体の水分量が適正となり発酵し易い状態となるものである。
【0019】
更に原料比が、第一原料として蟹・海老等の甲殻類を約40%、第二原料で副発酵物である乾燥オカラ・脱脂大豆粕を約60%としてなる発酵処理した発酵物と、原料比が第一原料として卵殻を約40%、第二発酵原料の乾燥オカラ・脱脂大豆粕約60%を成分として発酵処理した発酵物を、7:3〜8:2の割合で混合して攪拌し、しかる後加熱殺菌してなる製造方法(請求項6)で製出された健康食品は、前記発酵物を成人が1日2〜3gを2週間余り摂取すると、足の関節の痛みが回復、肝臓の機能回復(γGTPなど数値改善)、血液中の血糖値の改善、尿タンパクが陽性から陰性への変化などの効果が強く診られた。
【0020】
これらは蟹由来のキトサンやグルコサミン、アスタキサンチン、卵殻内膜のタンパク質が分解して出来たアミノ酸や複合発酵菌体群が成出したアミノ酸20種類、大豆由来のナットウキナーゼなどの酵素、アミノ酸の仲間のオルニチンなどが相乗的に効果を奏するものと推測され、C型肝炎陽性の患者にも強い改善効果が診られた。更に関節痛などは化学薬品処理されたグルコサミンと違い、発酵物中にはグルコサミンが1.3%の含有にも関わらず高い効果を示した。
【0021】
本発明(請求項8)に係る養豚・養鶏飼料の製造方法は、エノキ茸栽培廃菌床を第一原料とし、乾燥オカラ又は米糠或いは双方の混合物を第二原料として加えて混合攪拌し、しかる後本発明の複合発酵菌体群を植え付け、保温性バッチ式発酵機械で、攪拌発酵後8時間前後で80〜85℃まで発酵させた後乾燥し、前記発酵物を重量比で80%乃至60%となるように他の養豚・養鶏飼料に混合してなるものである。
【0022】
第一原料としては、エノキ茸の菌糸体が作り出した菌床であるが、発酵処理によって前記原料のセルロースが分解された各種糖(オリゴ糖なども含む)を作り出し、これらの糖を複合発酵菌体が食べてアミノ酸や酵素を出し、高速で世代交代したバクテリアの細胞壁がタンパク質(窒素物)として残り、原料由来のタンパク質の総量を上回る効果を得るものである。
【0023】
更に本発明(請求項9)に係る養豚・養鶏飼料の製造方法は、トウモロコシ由来のバイオエタノール製造後の乾燥搾りかす約40%、コーンコブ約30%、米糠約25%、塩及び炭酸カルシウムを約5%混合し、所定の型に収納して加熱蒸気殺菌した後冷却し、これにエノキ茸菌糸体を植え付け栽培室にて培養後、エノキ茸の発生が見られたらこれら菌糸体群を第一原料として約60%と、第二原料として乾燥オカラ約20%及び米糠約20%を加え、しかる後本発明の複合発酵菌体群を植え付け、保温性バッチ式発酵機械で、攪拌発酵後8時間前後で80〜85℃まで発酵させた後乾燥し、前記発酵物を重量比で80%乃至60%となるように他の養豚・養鶏飼料に混合してなるものである。
【0024】
前記の製造方法において、エノキ茸菌糸体を利用するのは、トウモロコシの殻(セルロース)は固くバイオエタノールの製造工程では分解しないが、エノキ茸の菌糸体がセルロースを糖に分解する作用を利用した既存の分解手段である。またトウモロコシの殻に含まれるフィチン酸は、リンを取り巻き、動物の体内では吸収されず排泄物の臭いが悪臭となるが、本発明の複合発酵菌体は、フィチン酸を分解してイノシトールに変えるため、穀物中に含まれるリン、カルシウム、鉄、マグネシウムなどの微量元素が動物の体内に消化吸収されるものである。
【0025】
本発明(請求項10)に係る水産飼料の製造方法は、水産物加工残渣を第一原料とし、乾燥オカラ又は脱脂大豆粕或いは双方の混合物を第二原料として加えて混合攪拌し、しかる後本発明の複合発酵菌体群を植え付け、保温性バッチ式発酵機械で攪拌発酵を行って80〜85℃まで発酵させたものであり、特にイカ肝臓約30%を第一原料とし、脱脂大豆粕約70%を第二原料とするもの(請求項11)である。
【0026】
前記の水産加工残渣はイカ肝臓のほかにホタテのウロヒモ混合物も同様にして使用できるもので、この発酵物を水産飼料に12〜20%混合して水産飼料として養殖魚に与えるもので主飼料となる魚粉を節約できる。しかも発酵物12%の混合割合で与えた場合に、魚粉のみの飼料より成長が15%ほど良好になることも確認できた。更に発酵物12〜40%の混入で、養殖魚の肝臓機能が良好になり、肝臓の色合いは養殖魚特有の黄変が見られず健康体であった。また血液中のリゾチームの量が魚粉100%使用区に比して1.5〜2倍高まり、免疫力の期待できる状態となった。
【0027】
本発明に係る肥料の製造方法(請求項12)は、粉砕ホタテ殻、卵殻、粉砕牡蠣殻のいずれか又はこれらの混合物を第一原料とし、乾燥オカラ、米糠、その糖質の高い植物を第二原料として加えて混合攪拌し、しかる後本発明の複合発酵菌体群を植え付け、75〜85℃まで発酵処理してなるもので、第一原料の発酵分解によって、発酵カルシウムを多量に含有した肥料を得ることができるものである。
【0028】
本発明に係る肥料の製造方法(請求項13)は、水産物加工残渣や雑魚を第一原料とし、乾燥オカラ、米糠、その糖質の高い植物を第二原料として加えて混合攪拌し、しかる後本発明の複合発酵菌体群を植え付け、75〜85℃まで発酵処理してなるもので、第一原料及び第二原料の発酵分解によって、窒素、リン系発酵肥料を製造できたものである。
【0029】
本発明に係る肥料の製造方法(請求項14)は、蟹・海老等の甲殻類を第一原料とし、乾燥オカラ、米糠、その糖質の高い植物を第二原料として加えて混合攪拌し、しかる後本発明の複合発酵菌体群を植え付け、75〜85℃まで発酵処理してなるもので、放線菌の繁殖を促し土中の細菌を活性化し、病気に強い植物を作るキトサン肥料を製造できたるものである。
【0030】
前記各肥料においては、発酵処理によって20種類のアミノ酸が成出され、植物に根より吸収される栄養素と、発酵物400〜500倍希釈液の葉面散布により葉面より吸収されるアミノ酸により、植物の活性が促進され葉や果実、根菜中の窒素物が減少し、糖度が高く苦味がない美味しい野菜や果実を栽培できるものである。
【0031】
また特に前記のカルシウム高含有肥料を約50%、前記の窒素、リン系発酵肥料約45%、前記キトサン肥料約5%を混合してなる肥料(請求項15)は、果実、野菜の糖度を高める配合比である。
【発明の効果】
【0032】
本発明方法は上記したとおり、発酵処理を行う複合発酵菌体群であり、低温発酵をなす低温菌と高温で発酵をなす高温発酵菌を含むものであり、廃棄処理される甲殻類の加工残渣やその他の水産加工残渣、卵殻、貝殻、エノキ茸栽培廃菌床等の第一原料と、やはり有効利用されているとは認められない乾燥オカラや脱脂大豆粕等の植物タンパク源を第二原料として、低温発酵から高温発酵までの連続発酵処理によって、発酵処理が困難であった第一原料及び第二原料の発酵処理によって、前記の廃棄物を有効に利用でき、且つアミノ酸20種類を含むと共に、有機カルシウム、キトサン等を含む健康食品・飼料・肥料を容易に且つ安価に製造できたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に本発明の実施の形態について説明する。複合菌体の製造及び健康食品・飼料・肥料の製造に使用する発酵処理機器は、図1に示すように従前公知の発酵槽(保温バッチ式)1を使用するもので、発酵槽1は内部に攪拌羽根2を備え、モータ3で駆動され、パイプ状の通気部4を備えた蓋体5を被冠し、前記通気部4には外部の送風機(乾燥用)6を接続するようにしているものである。この発酵槽1は、所定の原料等を入れ、所定時間攪拌混合を連続的に実施して、菌の培養並びに発酵処理を行うものである。
【0034】
複合菌体の製造は、第一段階として淡水・海水魚介類の消化管より採取した腸内細菌を、保温バッチ式発酵槽内で、乾燥オカラまたは米糠あるいは双方の混合物からなる菌床に植え付け、培養温度を50℃以下に維持しながら5〜10時間攪拌を行って低温菌が繁殖する状態を維持し、Sphingomonas paucimobilis、Pseudomonas fluorescens、Leclercia adecarboxylata、Shewanella putrifaciens、Pseudomonas putidaを含む菌体群を製出す る。
【0035】
更に生ごみ処理菌として市販されている既知の環境菌であるバチルス・サブチリス、バチルスsp、バチルス・バリスモルテイス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、パニエニバチルスspの菌体群を、保温バッチ式発酵槽1内で、乾燥オカラまたは米糠あるいは双方の混合物からなる菌床に植え付け、培養温度を55〜65℃を維持して5〜10時間の攪拌培養をして、菌床と共に乾燥させ、乾燥状態として保存するものである。乾燥した複合菌体は、遮光真空パック容器にて脱酸素剤投入をすれば常温での長期保存も何等不都合無く出来る。
【0036】
次に前記複合菌体を使用した健康食品・飼料・肥料の製造について説明する。
<第一実施例:健康食品A>
第一原料として蟹・海老等甲殻類(水産加工残渣)を約40%(以下%表示は重量比である)、第二原料を約60%の割合で混合して発酵させるもので、第一原料は、十分に水切りを行ったものであり、第二原料として乾燥オカラ(水分4.5%程度)を25%以上として、残余分は、脱脂大豆粕を使用し、第二原料全体の水分を8%以下となるようにすると、原料全体で発酵に適する水分量となる。
【0037】
この第一原料及び第二原料を発酵槽1に入れ、更に前記の乾燥複合菌体を原料に対して2%加えて攪拌すると、攪拌によって露出した表面のみが空気と接触して好気発酵が行われ、低温時(20℃以下)には低温菌による発酵がなされ、発酵が進行して温度が上昇すると高温菌による発酵が促進され、12〜15時間で75〜85℃に達する。
発酵終了温度を75〜85℃に設定することで、60℃以上の温度帯が2時間以上継続することになるので、一部の耐熱菌(バチルス・サブチリス、バチルスsp、バチルス・バリスモルテイス)以外は死滅することになり、病原性大腸菌やウイルスは残らない。
【0038】
前記の発酵終了物は、特にグルコサミンが1.3%を含有することが確認され、この発酵終了物を微粉砕して加熱殺菌処理した健康食品Aを、毎日2〜3gを1〜3週間の摂取で、2〜3週間後には関節痛や腰痛が緩和されたことが確認できた。
【0039】
このように従来苛性ソーダ、濃塩酸を使用した分解製造が一般的であるグルコサミンを容易に分解製造ができ、而も他の有用成分、例えばアスタキサンチンやアミノ酸も破壊することなく含有させることができたものである。
【0040】
<第二実施例:健康食品B>
第一原料として卵殻を使用して前記健康食品A同様の手順で発酵処理(第二原料は同一で、同一重量比とし、水分調整を行う)して製出した健康食品Bは、有機カルシウムを多量に含むもので、同様に毎日2〜3gを10日間摂取したところ、糖尿病も併発していた患者は血糖値が40ほど低下し、尿タンパクも+2の陽性が−2の陰性へと改善した。
【0041】
<第三実施例:健康食品C>
前記の健康食品Aと健康食品Bを7:3〜8:2の割合で混合した健康食品Cを、毎日2〜3gを1〜3週間の摂取で、20種類のアミノ酸の効果と、キトサンやオルニチン、卵の内膜に含まれるリゾチームの効果により、肝臓機能が飛躍的に改善した。特に1週間の内服でC型肝炎陽性者はγGTPが138から80に、GTPは47から24に改善した、同一人物が10日服用後飲酒をして検査したがγGTPが88であり、基の数値には戻らず発酵物の有効性が確かめられた。
【0042】
また4ヶ月摂取した女性はC型肝炎治療後、吐き気や食欲不振痩身に悩まされていたが、1ヶ月で吐き気が止まり食欲の改善や体重の増加が見られ、4ヵ月後には体重も回復し顔色も赤みが差し健康体になりC型肝炎患者とは判別不能となった。
【0043】
特に第一原料として紅ズワイ蟹の加工残渣を、第二原料として乾燥オカラを使用した場合には、アスタキサンチンを多量に含む健康食品とすることができる。
【0044】
<第四実施例:飼料D>
エノキ茸栽培廃菌床を第一原料とし、乾燥オカラ及び米糠を第二原料として、複合菌体で発酵処理したもので、エノキ茸栽培廃菌床は、トウモロコシ由来のバイオエタノール製造後の乾燥搾りかす(乾燥工程アルコール分を除去したもの)約40%、コーンコブ約30%、米糠約25%、塩及び炭酸カルシウムを約5%混合し、所定の型に収納して加熱蒸気殺菌した後冷却し、これにエノキ茸菌糸体を植え付け栽培室にて培養後、エノキ茸の発生が見られたら、エノキ茸を収穫し、収獲後の廃菌床を使用するものである。
【0045】
発酵処理は、前記の第一原料を約60%と、第二原料として乾燥オカラ約20%及び米糠約20%を加え、水分を30〜40%に調整し、複合発酵菌体群を植え付け、保温性バッチ式発酵機械で攪拌混合して行うもので攪拌発酵後8時間前後で80〜85℃まで発酵させた後乾燥し、前記発酵物を重量比で80%乃至60%となるように他の養豚・養鶏飼料に混合して、養豚・養鶏飼料とするものである。
【0046】
特に廃菌床を第一原料として使用することで知エノキ茸の菌糸体のセルロース分解効果を利用することができ、トウモロコシの殻が固いため養豚での使用は不可であり、且つ年間で莫大なバイオエタノールの搾りかすが排出されているものを有効に利用できたものである。また菌床材料として従来のオガ粉に代わりトウモロコシのコーンコブが使用され、セルロースがエノキの菌糸体により容易に糖化されオリゴ糖などの栄養体となる。
さらに含有タンパク質においても、エノキ廃菌床の総淡白量、乾燥オカラ、米糠の総淡白量を合計した数値(計算上11〜12%)よりも発酵後は20%程度に増加する。これは、発酵の過程で複合発酵菌の世代交代が猛烈な勢いで起こり、死滅したバクテリアの細胞壁がタンパクとしてカウントされる為である。市販の肉豚育成飼料のタンパク量は14〜17%程度であるから、これらに比較しても優良な飼料と認められる。
【0047】
<第五実施例:飼料E>
前記の飼料D60%に、後述する肥料H(雑魚、ホタテのヒモウロ、ボイルエッグの不良品や、賞味期限の切れた厚焼き玉子など、加熱した卵製品を等の動物タンパク質からなる第一原料として発酵処理したもので飼料としても使用できる)10%、肥料I(甲殻類第一原料として発酵処理したもので飼料としても使用できる)3%、一般のトウモロコシ飼料20%、大麦末粉7%、さらにこれらの合計量に0.5%の養豚用市販混合ビタミン剤を入れ、攪拌後造粒して、飼料Eを製造した。
【0048】
この飼料Eを35〜40kgの子豚に90日前後与えると、LWD種などの量産種白豚が黒豚や東京Xのような特別種より美味しくなることが確認できた。この飼料Eで飼育された豚は肉質が良く80%が上肉規格となり、肉は豚臭が無く内臓肉も極めて臭気が少なく、煮込んでも柔らかく美味しい豚となった。
【0049】
また総コレステロール量が通常の値の3分の1に減少し、チャーシューや豚カツに加工しても食べ飽きせずヘルシーな肉となる。コレステロールが低い豚は、品種的(例えば沖縄のアグー種)には生息するが、量産品種では味を引き上げて健康面に良い影響をだす飼料は無い。
【0050】
さらに125〜130kgくらいまで育てると、肉の色合いが鮮明で、ロース、肩ロースに霜降りがみられ、シャブシャブ肉とした時の付加価値が高く、肉は揚げ物、焼肉、煮 込みをした時にこくがあり、噛む程に美味しくなる。
また飼育された豚は排便の臭いが少なく、特別の飼育設備をしなくとも周囲への臭気公害は極めて軽微である。これはトウモロコシや米糠・大豆などの皮に含まれるフィチン酸が発酵により分解し、イノシトールに変化する為リン、カルシウム、鉄、マグネシウムが体内で吸収されるため排便の悪臭が消え、便は軟便ではなく固まり固形化する。
【0051】
また特に殻つきのボイルエッグ(加熱しすぎ、割れたもの等の廃棄品)40%、糠30%、乾燥オカラ30%の割合で発酵させると養豚の飼料となる。この飼料は多くは与えられないが飼料中10〜15%以内の使用であれば高品質の飼料となる。通常、卵は乾燥しても卵黄油が出て固形化し易く、飼料としては不向きであったが本発明方法では容易に資源として使えるようになるものである。
【0052】
<第六実施例:水産飼料F>
こり水産飼料Fは、イカ肝臓約30%を第一原料とし、脱脂大豆粕約70%を第二原料とし、前記した複合菌体を2%加えて保温性バッチ式発酵機械である発酵槽1に投入し、80〜85℃まで発酵処理して製造したものである。
【0053】
この飼料Fを通常の魚粉飼料において、12〜30%置き換えて養殖魚に与えたところ、混合比に応じて試験魚の血液中にリゾチームが多く見られ、免疫力が増しこれが養殖魚の健康を司るものと認められた。
【0054】
この点は従前の水産飼料(魚粉飼料)では見られなかった現象であり、今後の養殖では魚病薬を減らせるか、使用しないでも済む養殖も考えられる。飼料Fは、アミノ酸20種類が成出されているので、魚の肉質・味に大きな変化をもたらすもので、大型虹鱒(1.5〜3kg)では、魚の生臭さが消え、刺身や焼き物、揚げ物で旨さが大幅に向上、刺身のアラを吸い物にすると美味しく、生臭みがまるで感じられない。この旨みの元は飼料に含まれる20種のアミノ酸と認められる。また排泄物は養豚同様、消化吸収が良くなるので川や海洋の汚染を防ぎメタンガス発生を抑止する。
【0055】
このように通常脂肪分の多いイカ肝臓やホタテのウロヒモなどの魚粉には酸化防止剤が必要だが、飼料Fは、酸化防止剤の添加を必要としない利点がある。
【0056】
尚他の水産加工残渣(雑魚、ホタテのヒモウロ、ボイルエッグの不良品や、賞味期限の切れた厚焼き玉子など、加熱した卵製品を等の動物タンパク質からなる)を第一原料とし、これに乾燥オカラ又は脱脂大豆粕或いは双方の混合物(混合比率は任意であり、本実施例は1:1)を第二原料として70%を加えて混合攪拌し、複合発酵菌体群を植え付け、発酵処理した飼料においても、魚の肉質改善、養殖状の汚染防止に役立つ飼料とすることができる。
【0057】
<第七実施例;肥料G・H・I>
肥料Gは、粉砕ホタテ殻、卵殻、粉砕牡蠣殻のいずれか又はこれらの混合物を第一原料とし、肥料Hは、水産物加工残渣や雑魚を第一原料とし、更に肥料Iは、蟹・海老等の甲殻を第一原料としたもので、これらの第一原料を30%、第二原料を乾燥オカラ(副資材として、米糠、その糖質の高い植物を加えても良い)を70%加えて混合攪拌し、発酵条件に適する水分調整(30%〜40%)を行い、複合発酵菌体群2%を植え付け、前記の各実施例と同様に75〜85℃まで発酵処理して製出したものである。
【0058】
肥料Gは、発酵カルシウムを多量に含有したものであり、肥料Hは、窒素、リン系肥料であり、肥料Iはキトサンを含有する肥料であり、しかも前記の各肥料は、発酵分解によって多量のアミノ酸を含むものである。
【0059】
<第8実施例:肥料J>
肥料Jは、肥料Gを約50%、肥料Hを約45%、更に肥料Iを約5%を混合してなる複合肥料であり、肥料として使い易い。
【0060】
例えば梨、桃、リンゴ、サクランボ等には従来の堆肥や有機肥料を秋落葉前に施す時、樹木1本あたり肥料Jを10〜15kgを目安に10a当り150kgの撒布を一緒に行う。そして開花が済み摘果をしたら薬剤散布の時、肥料Jの500倍希釈液の散布を一緒に行う。
【0061】
特にまだ若葉が病気などに罹り易い時期葉面散布を行うと、葉からアミノ酸が吸収され極めてしっかりとした葉となり、光合成が進み樹木がしっかりと育つ。
【0062】
またサクランボは収穫が早いので6月に入ったら、梅雨の晴れ間に同様の撒布を行う、これは糖度をあげるのと、梅雨時期に太陽光が少なく光合成が進まないので発育の促進の為に行う。このように肥料J中に含まれるアミノ酸20種は、本来樹木が行う光合成を助け、促進し果実の糖度をあげる。
【0063】
リンゴや梨などはこの時期と8月にもう一度行い、冨士リンゴのように収穫の遅い種類は9月末にさらにもう一度行うと、青森のように開花が遅く太陽光も弱い地域では糖度が低い冨士リンゴ多いが、本肥料では大幅に糖度が上昇し渋みの無い美味しい果実が収穫される。日の出白桃や豊水・幸水では平均糖度が使用前に比して3〜3.5度上昇した。
【0064】
メロン、スイカなどは有機肥料と併用し土に500倍相当の希釈液を撒布し、後は葉面散布で葉からアミノ酸を吸収させることにより、葉が丈夫になり病気に対しても抵抗力が出る。
【0065】
ナスやトマトは同様の使い方で良いが、収穫が長期にわたるので根本の茎から10cm位の所に穴を開け肥料の追肥を毎月1〜2回行う。
【0066】
トマトはハウス栽培で桃太郎の糖度が最高7.7になり、どの固体も7.2以上と言う高品質の収穫が出来た。この糖度の上昇は卵の殻発酵物量との関連があり、卵の殻は生で発酵させなければ分解し難い。また牡蠣殻やホタテ殻粉砕物を卵殻の代わりに発酵原料に用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施装置の簡易な説明図。
【符号の説明】
【0068】
1 発酵槽
2 攪拌羽根
3 モータ
4 通気部
5 蓋体
6 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
淡水・海水魚介類の消化管より採取した腸内細菌を、保温バッチ式発酵槽内で、乾燥オカラまたは米糠あるいは双方の混合物からなる菌床に植え付け、培養温度を50℃以下に維持しながら攪拌を行って低温菌繁殖を行い、Sphingomonas paucimobilis、Pseudomonas fluorescens、Leclercia adecarboxylata、Shewanella putrifaciens、Pseudomonas putidaを含む菌体群を製出し、更に前記菌体群及び既知の環境菌であるバチルス・サブチリス、バチルスsp、バチルス・バリスモルテイス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、パニエニバチルスspの菌体群を、保温バッチ式発酵槽内で、乾燥オカラまたは米糠あるいは双方の混合物からなる菌床に植え付け、培養温度を55〜65℃を維持して5〜10時間の攪拌培養して製出したことを特徴とする健康食品・飼料・肥料の製造用複合発酵菌体群。
【請求項2】
発酵処理対象物を第一原料とし、第二原料として乾燥オカラ、脱脂大豆粕、米糠等の製造目的に対応した材料を選択して、混合攪拌し、しかる後請求項1記載の複合発酵菌体群を植え付け、保温性バッチ式醗酵機械で攪拌醗酵処理し、75〜85℃に達したら発酵処理を終了してなる特徴とする健康食品・飼料・肥料の製造方法。
【請求項3】
第一原料を、蟹・海老等の甲殻類の加工残渣又は卵殻の何れか一方又は双方を用い、発酵終了後に所定の乾燥工程行い、微粉砕及び加熱殺菌してなる健康食品原料の製造方法。
【請求項4】
原料比が、第一原料として蟹・海老等甲殻類の加工残渣を約40%、第二原料である乾燥オカラ・脱脂大豆粕を約60%としてなる請求項3記載の健康食品原料の製造方法。
【請求項5】
原料比が第一原料として卵殻を約40%、第二原料の乾燥オカラ・脱脂大豆粕を約60%としてなる請求項3記載の健康食品原料の製造方法。
【請求項6】
原料比が、第一原料として蟹・海老等の甲殻類の加工残渣を約40%、第二原料で副発酵物である乾燥オカラ・脱脂大豆粕を約60%として75〜85℃まで発酵させた発酵物と、原料比が第一原料として卵殻を約40%、第二醗酵原料の乾燥オカラ・脱脂大豆粕約60%を成分として80〜85℃まで発酵させた後乾燥し、75〜85℃まで発酵させた後乾燥し、発酵処理した発酵物を、7:3乃至8:2の割合で混合して攪拌し、しかる後加熱殺菌してなる請求項2記載の健康食品原料の製造方法。
【請求項7】
第一原料として紅ズワイ蟹の加工残渣を、第二原料として乾燥オカラを使用した請求項6記載の健康食品原料の製造方法。
【請求項8】
エノキ茸栽培廃菌床を第一原料とし、乾燥オカラ又は米糠或いは双方の混合物を第二原料として加えて混合攪拌し、しかる後請求項1記載の複合発酵菌体群を植え付け、保温性バッチ式醗酵機械で、攪拌醗酵後8時間前後で80〜85℃まで発酵させた後乾燥し、前記発酵物を重量比で80%〜60%となるように他の養豚・養鶏飼料に混合してなる養豚・養鶏飼料の製造方法。
【請求項9】
トウモロコシ由来のバイオエタノール製造後の乾燥搾りかす約40%、コーンコブ約30%、米糠約25%、塩及び炭酸カルシウムを約5%混合し、所定の型に収納して加熱蒸気殺菌した後冷却し、これにエノキ茸菌糸体を植え付け栽培室にて培養後、えのき茸の発生が見られたらこれら菌糸体群を第一原料として約60%と、第二原料として乾燥オカラ約20%及び米糠約20%を加え、しかる後請求項1記載の複合発酵菌体群を植え付け、保温性バッチ式醗酵機械で、攪拌醗酵後8時間前後で80〜85℃まで発酵させた後乾燥し、前記発酵物を重量比で80%〜60%となるように他の養豚・養鶏飼料に混合してなる養豚・養鶏飼料の製造方法。
【請求項10】
水産物加工残渣を第一原料とし、乾燥オカラ又は脱脂大豆粕或いは双方の混合物を第二原料として加えて混合攪拌し、しかる後請求項1記載の複合発酵菌体群を植え付け、保温性バッチ式醗酵機械で攪拌醗酵処理を行い、75〜85℃に達したら発酵処理を終了してなる水産飼料の製造方法。
【請求項11】
イカ肝臓約30%を第一原料とし、脱脂大豆粕約70%を第二原料としてなる請求項10記載の水産飼料の製造方法。
【請求項12】
粉砕ホタテ殻、卵殻、粉砕牡蠣殻のいずれか又はこれらの混合物を第一原料とし、乾燥オカラ、米糠、その糖質の高い植物を第二原料として加えて混合攪拌し、しかる後請求項1記載の複合発酵菌体群を植え付け、75〜85℃に達するまで発酵処理してなる肥料の製造方法。
【請求項13】
水産物加工残渣や雑魚を第一原料とし、乾燥オカラ、米糠、その糖質の高い植物を第二原料として加えて混合攪拌し、しかる後請求項1記載の複合発酵菌体群を植え付け、75〜85℃に達するまで発酵処理してなる肥料の製造方法。
【請求項14】
蟹・海老等の甲殻類を第一原料とし、乾燥オカラ、米糠、その糖質の高い植物を第二原料として加えて混合攪拌し、しかる後請求項1記載の複合発酵菌体群を植え付け、75〜85℃に達するまで発酵処理してなる肥料の製造方法。
【請求項15】
請求項12記載の製造方法で製出した肥料約50%、請求項13記載の製造方法で製出した肥料約45%、請求項14記載の製造方法で製出した肥料約5%を混合してなる肥料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−278895(P2009−278895A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132679(P2008−132679)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(501204422)
【出願人】(508151323)株式会社土田養魚場 (1)
【Fターム(参考)】