説明

傾き検査装置および傾き検査方法

【課題】載置面に対する被観測物の傾きを簡易に観測する。
【解決手段】傾き検査装置200は、載置面に載置された被観測物(切断装置100)の載置面に対する傾きを検出するための装置である。傾き検査装置200は、被観測物に光を照射または投影する光源210と、光源210と被観測物との間に配置され、第1の方向に延在する第1のスリットおよび当該第1の方向と垂直な第2の方向に延在する第2のスリットを含む遮光板218と、遮光板218を平面方向に回転可能に支持するとともに、第1のスリットが載置面に対して垂直な状態で遮光板218を固定する移動機構とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾き検査装置および傾き検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金型等、複数の精密加工部品で組み立てた装置では、加工精度の維持管理のために、各部品の平行度および垂直度の確認が重要かつ不可欠である。しかし、従来、簡易な方法で各部品の平行度および垂直度を測定する方法がなかった。
【0003】
特許文献1(特開平3−128407号公報)には、スリット光平面を直方体被検査物の同じ頂点を含む隣接する複数の平面に一度に光切断線が生じるようにし、かつ、スリット光平面が被検査物表面に入射する角度を傾けるようにして、複数の表面を有する立体形状物の複数の面に発生する欠陥を同時に検出するようにした装置が記載されている。
【0004】
特許文献2(特開平11−291008号公報)には、連続鋳造鋳片をガス切断機によって切断した所定長さの鋳片に対し、レーザ光発振器から、その端面から下面にかけて十字状スリットレーザ光を照射し、十字状スリットレーザ光の照射された鋳片の端面および下面をカメラによって撮影し、得られた画像を処理し、照射されたレーザ光の状態によって鋳片の端面および下面の形状を検出する構成が記載されている。
【特許文献1】特開平3−128407号公報
【特許文献2】特開平11−291008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献に記載の技術では、被観測物の表面形状を測定することを目的としており、被観測物の平行度および垂直度等の傾きを簡易に測定するという点で依然として問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
載置面に載置された被観測物の前記載置面に対する傾きを検出するための傾き検査装置であって、
前記被観測物に光を照射または投影する光源と、
前記光源と前記被観測物との間に配置され、第1の方向に延在する第1のスリットおよび当該第1の方向と垂直な第2の方向に延在する第2のスリットを含む遮光板と、
前記遮光板を当該遮光板の平面方向に回転可能に支持し、前記第1のスリットが前記載置面に対して垂直な状態で前記遮光板を固定する移動機構と、
を含む傾き検査装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、
上記の傾き検査装置を用いて、
前記光源から前記第1のスリットまたは前記第2のスリットを透過したスリット光と、前記被観測物を構成する所定の面の縁とを比較することにより、前記被観測物の傾きを検出する傾き検査方法が提供される。
本発明によれば、
載置面に載置された被観測物の前記載置面に対する傾きを検出する方法であって、
前記載置面に対して垂直な第1の方向に延在する第1のスリットおよび当該第1の方向と垂直な第2の方向に延在する第2のスリットを含む遮光板を前記被観測物と光源との間に配置して、前記第1のスリットまたは前記第2のスリットを透過したスリット光と前記被観測物を構成する所定の面の縁とを比較することにより、前記被観測物の傾きを検出する傾き検査方法が提供される。
【0008】
この構成によれば、複数の部品要素で組み立てた装置の各要素の載置面に対する傾きを、目視で観察および計測することが可能となる。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、載置面に対する被観測物の傾きを簡易に観測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
以下の実施の形態において、所定の載置面に載置された被観測物の載置面に対する傾きを検出する。ここで、載置面は、たとえば載置台の上面等の略平坦な平面とすることができる。被観測物は、たとえば複数の精密加工部品で組み立てた装置とすることができる。ここで、被観測物の各部品は、載置面に対して平行に延在すべき縁(以下、平行縁という。)、または載置面に対して垂直に延在すべき縁(以下、垂直縁という。)を含むものとすることができる。このような被観測物において、数〜数十μm(マイクロメータ)オーダーの精密さが必要な場合に、以下の実施の形態における傾き検査方法により、当該被観測物の載置面に対する傾きを簡易的に観察および計測することができる。
【0013】
以下の実施の形態において、被観測物は、たとえば、切断装置100とすることができる。図12に切断装置100の構成の一例を示す。切断装置100は、下金型102と、上金型104と、下金型102に取り付けられたダイ106と、上金型104に取り付けられ、被切断物を切断加工するための切断用パンチ110と、上金型104を上下に移動可能に保持する支柱112とを含む。下金型102、上金型104、ダイ106、切断用パンチ110、および支柱112は、それぞれ金型要素であり、切断装置100は、これら複数の金型要素により組み立てられている。なお、図12は便宜上、本発明の実施の形態の説明で必要とされる最低限度の要素を図示したものであり、金型の剛性や強度の維持向上に必要な部品の図示は省略している。
【0014】
切断装置100は、たとえば、半導体チップを封止した封止樹脂の外縁部に複数のアウターリード(以下単にリードという)を備えた半導体装置(不図示)のリードを切断加工するリード切断金型とすることができる。
【0015】
半導体装置は、以下の手順で製造される。まず、リードフレーム上に半導体チップを搭載し、半導体チップの樹脂封止処理を行う。その後、封止樹脂バリ除去や、あらかじめ外装処理がなされていないリードフレームではめっき等の外装処理を行う。さらにその後、半導体装置をリードフレームから切り離す。表面実装タイプの場合、半導体装置をリードフレームから切り離した後、フォーミング加工する。具体的には、水平方向に突出したアウターリードを下方に折り曲げさらに水平方向に折り曲げてガルウィング形状とする。このリードの切断加工を図12に示したような切断装置100により行うことができる。ダイ106に半導体装置(不図示)が載置され、上金型104がプレスの動力により支柱112を軸として上下動作することにより、リードの切断加工を行うことができる。
【0016】
図13は、半導体装置の一例を示す概略図である。図13(a)は、半導体装置300の平面図であり、図13(b)は、図13(a)のA−A’断面図である。
半導体チップを封入する封止樹脂301の側面には、複数のリード302が設けられている。一例として、リード302の厚みは、0.125〜0.150mm(ミリメートル)であり、幅は約0.2mmである。このリード302の上面、下面および側面(リード切断面を除く)には、めっき被膜が施されている。この場合、めっき被膜の膜厚も考慮すると、リードフレーム上下方向の全厚は0.125〜0.180mm程度である。
【0017】
半導体装置300のリード加工の一例を図14に示す。ここでは、リード302を長めに切断して(図14(a))、所定形状に曲げ加工した後(図14(b))、リード302を切断し規定寸法に仕上げる(図14(c))。また、半導体装置のリード加工の他の例を図15に示す。ここでは、リード302を所定寸法で切り離し(図15(a)、図15(b))、曲げ加工によって規定寸法に仕上げる(図15(c))。
【0018】
図12に戻り、リード切断加工では、リードの切断やリードの曲げ加工を行うが、リード切断のクリアランスやリード曲げの位置等の設定、および維持管理のためには、各金型要素の傾きを検出することが重要かつ不可欠である。各金型要素は、平行縁または垂直縁を含む。例として、上金型104の平行縁104aおよび支柱112の垂直縁112aを破線で示す。以下の実施の形態において、切断装置100の載置面に対する各構成要素の平行縁の平行度、または切断装置100の載置面に対する各構成要素の垂直縁の垂直度を観測することにより、各金型要素(以下、単に要素という。)の傾きを検出する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態において、所定の載置面に載置された被観測物である切断装置100の載置面に対する傾きを検出する手順を示す模式図である。
本実施の形態において、傾き検査装置200は、被観測物に光を照射する光源210と、光源210と被観測物との間に配置され、第1の方向に延在する第1のスリットおよび当該第1の方向と垂直な第2の方向に延在する第2のスリットを含む遮光板218とを含む。ここで、第1のスリットと第2のスリットとは、十字形状に設けることができる。図1では、第1のスリットと第2のスリットとを十字スリット220として示している。
【0020】
図2は、本実施の形態における傾き検査装置200の遮光板218の構成を示す正面図である。
傾き検査装置200は、十字スリット220が設けられた遮光板218と、遮光板移動機構240(移動機構)とを含む。遮光板218には、第1の方向に延在する第1のスリット222および当該第1の方向と垂直な第2の方向に延在する第2のスリット224から構成される十字スリット220が設けられている。十字スリット220の第1のスリット222と第2のスリット224とは直交している。第1のスリット222や第2のスリット224の幅に対して遮光板218の厚さが厚すぎると、光源210が傾いた場合に、光が通過できなくなる。そのため、この観点からは、遮光板218の厚さは薄い方が好ましい。一方、ある程度の強度を持たせるためには、遮光板218の厚さはある程度厚い方が好ましい。これらを考慮すると、遮光板218の厚さは、たとえば、0.5mm程度とすることができる。
【0021】
遮光板移動機構240は、遮光板保持部242および回転軸244を含む。遮光板218は、回転軸244を介して遮光板保持部242に取り付けられている。回転軸244は、遮光板218を当該遮光板218の平面方向に、遮光板保持部242に対して任意の角度で回転させるとともに任意の角度で固定して支持する。
【0022】
本実施の形態においては、第1のスリット222が載置面に対して垂直、第2のスリット224が載置面に対して平行となるようにして遮光板218を回転させて固定する。そして、切断装置100の各要素のうち、垂直縁を有する要素には、第1のスリット222を透過した第1のスリット光を照射して、垂直縁と第1のスリット光とを目視で比較し、平行度を確認することにより、当該要素の傾きを検出する。また、切断装置100の各要素のうち、平行縁を有する要素には、第2のスリット224を透過した第2のスリット光を照射して、平行縁と第2のスリット光とを目視で比較し、平行度を確認することにより、当該要素の傾きを検出する。
【0023】
本実施の形態において、光源210は、目視可能なものとすることができる。光源210は、たとえば、LED(Light Emitting Diode)とすることができる。
また、本実施の形態における傾き検査装置200によれば、被観測物が以下の条件を満たすときに、被観測物の傾きを精度よく検出することができる。
・スリット光の照射面が、被観測物の外側(主に側面側)から目視観察可能であること。
・照射されたスリット光が、照射面上で目視観察可能であること。
・スリット光の照射面表面が滑らかであること。
・スリット光の照射面の外縁が、面取りされていないこと(機械加工で精度良く面取りされた場合は可。)。
【0024】
遮光板218の角度の調整および固定は、以下の手順で行うことができる。
(1)第1のスリット222および第2のスリット224をそれぞれ透過したスリット光を被観測物に照射する。
(2)十字スリット220と被観測物との間の任意の場所に、基準となる治具を配置し、治具に照射される光と治具との位置関係に基づき、第1のスリット222を透過した第1のスリット光が載置面に対して垂直となるか、または第2のスリット224を透過したスリット光が載置面に対して平行となるように遮光板218の角度を調整して固定する。
【0025】
ここで、基準となる治具としては、予め、載置面に対して平行であることが保証されている平行方向に延在する平行方向延在部、または載置面に対して垂直であることが保証されている垂直方向に延在する垂直方向延在部を含むものを用いることができる。たとえば、治具が垂直方向延在部を含む場合、十字スリット220の第1のスリット222を透過した第1のスリット光が垂直方向延在部と重なるように、遮光板218の角度を調整・固定することができる。また、治具が平行方向延在部を含む場合、十字スリット220の第2のスリット224を透過した第2のスリット光が平行方向延在部と重なるように遮光板218の角度を調整・固定することができる。また、治具は、平行方向延在部および垂直方向延在部の両方を含む構成とすることができる。この場合、第1のスリット222を透過した第1のスリット光が垂直方向延在部と重なるとともに第2のスリット224を透過した第2のスリット光が平行方向延在部と重なるように、遮光板218の角度を調整・固定することができる。これにより、遮光板218の角度を精度よく調整・固定することができる。また、治具が、平行方向延在部および垂直方向延在部の両方を含む構成とし、第1のスリット222を透過した第1のスリット光が垂直方向延在部と重なるとともに第2のスリット224を透過した第2のスリット光が平行方向延在部と重なるように、遮光板218の角度を調整・固定することにより、光源210が遮光板218の上下左右等の斜め方向に存在している場合でも、遮光板218の角度を精度よく調整・固定することができる。
【0026】
また、載置面が水平面と平行であることが保証されている場合は、治具として、おもりを吊るした糸および当該糸をつり下げる保持部を用いることもできる。このとき、十字スリット220の第1のスリット222を透過した第1のスリット光が、静止した状態の糸と重なるように、遮光板218の角度を調整・固定することができる。糸の幅、色および材料等は、第1のスリット222を透過した第1のスリット光と糸との重なりの状態が、視認判定できるものを選定することができる。
【0027】
図1では、被観測物である切断装置100の四方にそれぞれ光源210および十字スリット220を配置した例を示しているが、1セットの光源210および十字スリット220を用い、各側面からそれぞれ測定することもできる。
【0028】
図3は、図2に示した遮光板218の十字スリット220の第1のスリット222および第2のスリット224をそれぞれ透過した第1のスリット光248および第2のスリット光250が切断装置100の上金型104に照射された状態を示す図である。
【0029】
ここでは、上金型104が傾いている例を示す。ここでは、切断装置100の上金型104の観測面104bの平行縁104aに第2のスリット224を透過した第2のスリット光250を照射する。このとき、平行縁104aは、上金型104の観測面の下端に位置するので、第2のスリット光250の下端が、平行縁104aの端部に重なるように光を照射することが好ましい。ここで、平行縁104a上で、第2のスリット光250が途中で切れることなく限りなく平行に伸びていれば、この部位の平行が保たれていることが確認できる。図中、観測面104bのスリット光が照射されている箇所にはハッチングをしている。図示した例では、上金型104の平行縁104aに照射された第2のスリット光250は、上金型104上で切れているため、上金型104の平行度が保たれていないことがわかる。本実施の形態において、第2のスリット光250と、上金型104の平行縁104aとの平行度を観測することにより、上金型104の傾きを検出することができる。
【0030】
被観測物の傾きの計測精度は、被観測物に照射されるスリット光の線幅を調整することにより、変更することができる。たとえば、スリット光の線幅を100μmに設定して被観測物に照射した場合、このスリット光が観測面の対象縁の途中で切れれば、その箇所で100μmの傾き(高低差)が生じていることとなる。スリット光の線幅は、被観測物において、計測したい傾き(高低差)の最小寸法と同等とすることができる。
【0031】
図4は、図3に示した例よりも、スリット光の線幅が広い場合の例を示す。
図3に示した例と図4に示した例とでは、上金型104の傾きは同じである。しかし、図3においては、第2のスリット光250が上金型104上で切れているのに対し、図4においては、第2のスリット光250が上金型104上で切れていない。つまり、同じ傾きがあるものでも、照射するスリット光の線幅が広い方が照射光が途切れにくくなる。そのため、スリット光の線幅が広すぎると、計測精度が低下してしまう。計測精度を高めるためには、スリット光の線幅が狭い方がよい。スリット光の線幅は、たとえば、傾き検査装置200と被観測物との距離を調整することや、遮光板218の第1のスリット222および第2のスリット224の線幅を調整することにより、変更することができる。
【0032】
図5は、傾き検査装置200の具体的な構成の一例を示す側面図である。
傾き検査装置200は、光源210を移動可能に保持する光源移動機構230をさらに含むことができる。光源移動機構230は、光源210を載置面から遠ざかる方向および載置面に近づく方向に移動させる移動機構、ならびに光源210を載置面に対して横方向に移動させる移動機構を含むことができる。
【0033】
また、遮光板移動機構240は、上述した遮光板保持部242および回転軸244に加えて、遮光板218を載置面から遠ざかる方向および載置面に近づく方向に移動させる移動機構、ならびに遮光板218を載置面に対して横方向に移動させる移動機構を含むことができる。このような構成とすると、スリット光の照射箇所を変化させることができるので、被観測物の各要素の観測を連続的に行うことができる。また、ここでは、遮光板移動機構240と光源移動機構230とを独立に示しているが、傾き検査装置200は、遮光板218と光源210とが、連動して動くような移動機構を設けた構成とすることもできる。たとえば、遮光板218を光源210に取り付け、遮光板218も光源210とともに連動して動くような構成とすることができる。
【0034】
図6は、十字スリット220の第2のスリット224を透過した第2のスリット光により、各要素の平行度を計測する例を示す。図6に示した例では、第2のスリット光250により上金型104の平行度、第2のスリット光252により切断用パンチ110の平行度、第2のスリット光254によりダイ106の平行度、第2のスリット光256により下金型102の平行度をそれぞれ計測することができる。図5に示したような傾き検査装置200を用いて、切断装置100の一側方から、複数の要素の平行度を計測する場合、遮光板218の角度を固定した後、第2のスリット光の照射位置を調整することにより、複数の要素の平行度を順次計測することができる。
【0035】
また、図7は、十字スリット220の第1のスリット222を透過した第1のスリット光により、各要素の垂直度を計測する例を示す。図7に示した例では、第1のスリット光260により切断用パンチ110の垂直度、第1のスリット光262により支柱112の垂直度をそれぞれ計測することができる。図5に示したような傾き検査装置200を用いて、切断装置100の一側方から、複数の要素の平行度を計測する場合、遮光板218の角度を固定した後、第1のスリット光の照射位置を調整することにより、複数の要素の垂直度を順次計測することができる。
【0036】
なお、遮光板218とともに光源210を移動させた場合、その都度、基準となる治具を用いた遮光板218の角度の調整および固定の処理を行ってもよい。なお、図6では各要素の平行度、図7では各要素の垂直度をそれぞれ計測する例を示したが、本実施の形態の遮光板218には、第1のスリット222と第2のスリット224とが設けられているので、同じ側面に平行縁と垂直縁とが存在する場合、これらも連続的に計測することができる。
【0037】
図8は、傾き検査装置200の具体的な構成の他の例を示す図である。
図8(a)は、傾き検査装置200の側面図、図8(b)は、傾き検査装置200の平面図である。
ここでは、光源移動機構230が、光源210の光の照射角度を変化させる機構も有するようにすることができる。このとき、遮光板移動機構240は、遮光板218を垂直方向や水平方向に移動させる移動機構は有しない構成とすることもできる。この場合でも、たとえば、遮光板218を固定しておき、光源210の光の照射角度を調整したり、光源210の位置を移動させることにより、切断装置100の所望の位置にスリット光が照射されるようにすることができる。
【0038】
また、ここでは、遮光板移動機構240と光源移動機構230とを独立に示しているが、遮光板218を光源210に取り付け、遮光板218も光源210とともに連動して動くような構成とすることもできる。
【0039】
以上で説明したように、本実施の形態における傾き検査装置200の構成によれば、被観測物の各要素の観測面の縁に、十字スリット220から、載置面に垂直な第1のスリット光または載置面に水平な第2のスリット光を照射する。そして、観測面上でスリット光が欠けている状態を目視で観測することにより、各要素の傾きの有無や、各要素の傾き度合い(寸法)を容易かつ精度よく確認することができる。
【0040】
従来、複数の部品で組み立てた物の中で、とくに金型等の精密加工部品の平行度および垂直度は、一般的にダイヤルゲージの様に点接触方式の測定器を用い、複数点の測定結果をもとに水平度や垂直度を算出し、判定していた。そのため、解析が複雑だった。また、従来、平行度および垂直度の測定および判定のためには、測定機材に加えて専門的な計測の知識と技能が必要であり、光源、カメラ、画像処理装置、専用プログラム等の非常に高価な構成を必要としていた。
【0041】
しかし、本実施の形態における傾き検査装置200の構成によれば、被観測物の各要素の傾きを、目視で観測することができる。そのため、カメラ、画像処理装置、専用プログラム等の高価な構成を用いることなく、安価かつ簡単に測定を行うことができる。なお、本実施の形態においても、カメラや画像処理装置を用いて観測面の詳細な分析等を行うこともできる。また、カメラや画像処理装置を用いて観測面の詳細な分析を行う場合、光源210として、レーザ等のコヒーレント光を用いることもできる。
【0042】
(第2の実施の形態)
図9は、本実施の形態における傾き検査装置200による傾き検査方法を説明する図である。本実施の形態では、照射光を被観測物の切断装置100に照射するのではない点で第1の実施の形態の検査方法と異なる。
【0043】
本実施の形態においても、傾き検査装置200の構成は、第1の実施の形態の構成と同様とすることができる。ただし、本実施の形態において、傾き検査装置200の光源210の光量を、第1の実施の形態の場合よりも低くする。本実施の形態においては、観測者は、観測面に投影された遮光板218の第1のスリット222または第2のスリット224から見える光源210と、観測面の所定の縁との平行状態を確認することにより、被観測物の平行度および垂直度を検出することができる。すなわち、本実施の形態において、光源210の光量は、スリット光が観測面に照射されない程度まで光源の光量を下げることができる。本実施の形態においても、光源210は、目視可能なものとすることができる。
【0044】
本実施の形態における傾き検査装置200によれば、被観測物が以下の条件を満たすときに、被観測物の傾きを精度よく検出することができる。
・スリット光の投影面が、被観測物の外側(主に側面側)から目視観察可能であること。
・投影されたスリット光が、投影面上で目視観察可能であること。
・スリット光の投影面表面が滑らかであること(可能な限り鏡面が望ましい。)。
・スリット光の投影面の外縁が、面取りされていないこと(機械加工で精度良く面取りされた場合は可。)。
【0045】
図10は、切断装置100の上金型104の観測面の状態を示す図である。
上金型104の観測面104bには、遮光板218、ならびに第1のスリット222および第2のスリット224を透過した光源210の光が投影されている。ここで、上金型104の観測面104bの平行縁104a付近に第2のスリット224越しの投影光である第2のスリット光270(光源210)が映る様に視野を変える。ここで、投影光が途中で切れることなく平行に伸びていれば、この要素の平行が保たれていることが確認できる。図示した例では、光源210が切れているため、上金型104に傾きがあることが検出できる。
【0046】
本実施の形態において、被観測物の傾きの計測精度は、観測面に投影されるスリット光の線幅を調整することにより、変更することができる。たとえば、スリット光の線幅は、たとえば10μm程度まで細く設定することができる。たとえばスリット光の線幅を10μmに設定して被観測物に投影させた場合、このスリット光が、観測面の対象縁の途中で切れれば、その箇所で10μmの傾き(高低差)が生じていることとなる。スリット光の線幅は、被観測物において、計測したい傾き(高低差)の最小寸法と同等とすることができる。スリット光の線幅は、たとえば、傾き検査装置200と被観測物との距離を調整することや、遮光板218の第1のスリット222および第2のスリット224の線幅を調整することにより、変更することができる。
【0047】
図9に戻り、切断用パンチ110、ダイ106、および下金型102の平行度も、それぞれ第2のスリット光272、第2のスリット光274、第2のスリット光276により、観測することができる。
【0048】
図11は、本実施の形態における傾き検査装置200により、各要素の垂直度を検出する方法を説明する図である。支柱112および切断用パンチ110の垂直度も、それぞれ第1のスリット光280および第1のスリット光282により観測することができる。
【0049】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、第1の実施の形態では、照射光は広がりを持つため、10μmオーダーのレベルまで線幅を細くしたスリット光を照射することが難しい。本実施の形態の構成によれば、より線幅の狭いスリット光で各要素の平行度および垂直度を確認することができる。
【0050】
さらに、本実施の形態においては、視点を変えることにより、スリット光の投影箇所を変えることができるので、光源210の光源移動機構230がない構成とすることもできる。また、遮光板移動機構240の移動機構も簡略化することができる。さらに、傾き検査装置200の配置位置の自由度が高くなる。
【0051】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0052】
なお、以上の照射の形態において、1本の第1のスリット222と1本の第2のスリット224とが十字形状に直交した例を示したが、遮光板218に形成されるスリットの数は、水平方向および垂直方向で、それぞれ、複数とすることもできる。また、たとえば、格子状のスリットとすることもできる。ただし、照射面または投影面での目視観察時に、水平方向のスリット光間と垂直方向のスリット光間が、それぞれ重ならないように、間隔を空けて配置することが好ましい。
【0053】
また、水平方向および垂直方向で、それぞれ複数のスリットを設ける場合、各スリットの幅を異ならせることもできる。これにより、線幅が異なる複数のスリット光での観測を連続的に行うことができ、傾き度合を正確に把握することができる。
【0054】
また、第1の実施の形態で説明したスリット光を照射する方法と、第2の実施の形態で説明したスリット光を投影させる方法とを組み合わせて行うこともできる。たとえば、傾き度合が小さく、スリット光を照射させる方法では傾きが観測しづらいときに、光源210の光量を下げて、引き続きスリット光を投影させる方法で傾きを観測することにより、傾きを精密に計測することができる。
【0055】
以上の実施の形態においては、完成品金型の傾きの検査方法について述べたが、本発明は、金型組立工程における各金型要素の傾きの検査にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態において、所定の載置面に載置された被観測物である切断装置の載置面に対する傾きを検出する手順を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態における傾き検査装置の遮光板の構成を示す正面図である。
【図3】図2に示した遮光板の十字スリットを透過したスリット光が切断装置の上金型に照射された状態を示す図である。
【図4】図3に示した例よりも、スリット光の線幅が広い場合の例を示す図である。
【図5】傾き検査装置の具体的な構成の一例を示す側面図である。
【図6】十字スリットの第2のスリットを透過した第2のスリット光により、各要素の平行度を計測する例を示す図である。
【図7】十字スリットの第1のスリットを透過した第1のスリット光により、各要素の垂直度を計測する例を示す図である。
【図8】傾き検査装置の具体的な構成の他の例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における傾き検査装置による傾き検査方法を説明する図である。
【図10】切断装置の上金型の観測面の状態を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における傾き検査装置による傾き検査方法を説明する図である。
【図12】切断装置の構成を示す斜視図である。
【図13】半導体装置の一例を示す概略図である。
【図14】半導体装置のリード加工の一例を示す図である。
【図15】半導体装置のリード加工の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
100 切断装置
102 下金型
104 上金型
104a 平行縁
104b 観測面
106 ダイ
110 切断用パンチ
112 支柱
112a 垂直縁
200 傾き検査装置
210 光源
218 遮光板
220 十字スリット
222 第1のスリット
224 第2のスリット
230 光源移動機構
240 遮光板移動機構
242 遮光板保持部
244 回転軸
248 第1のスリット光
250 第2のスリット光
252 第2のスリット光
254 第2のスリット光
256 第2のスリット光
260 第1のスリット光
262 第1のスリット光
270 第2のスリット光
272 第2のスリット光
274 第2のスリット光
276 第2のスリット光
280 第1のスリット光
282 第1のスリット光
300 半導体装置
301 封止樹脂
302 リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面に載置された被観測物の前記載置面に対する傾きを検出するための傾き検査装置であって、
前記被観測物に光を照射または投影する光源と、
前記光源と前記被観測物との間に配置され、第1の方向に延在する第1のスリットおよび当該第1の方向と垂直な第2の方向に延在する第2のスリットを含む遮光板と、
前記遮光板を当該遮光板の平面方向に回転可能に支持し、前記第1のスリットが前記載置面に対して垂直な状態で前記遮光板を固定する移動機構と、
を含む傾き検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の傾き検査装置において、
前記移動機構は、前記遮光板を前記載置面から遠ざかる方向および前記載置面に近づく方向に移動可能に支持する傾き検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の傾き検査装置において、
前記移動機構は、前記遮光板を前記載置面上で横方向に移動可能に支持する傾き検査装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載の傾き検査装置において、
前記移動機構は、前記光源を、前記被観測物に対する前記光源の光の照射角度または投影角度が変化可能に支持する傾き検査装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の傾き検査装置において、
前記移動機構は、前記遮光板に連動させて前記光源を移動可能に支持する傾き検査装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載の傾き検査装置において、
前記第1のスリットと前記第2のスリットとが十字形状に設けられた傾き検査装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれかに記載の傾き検査装置を用いて、
前記光源から前記第1のスリットまたは前記第2のスリットを透過したスリット光と、前記被観測物を構成する所定の面の縁とを比較することにより、前記被観測物の傾きを検出する傾き検査方法。
【請求項8】
載置面に載置された被観測物の前記載置面に対する傾きを検出する方法であって、
前記載置面に対して垂直な第1の方向に延在する第1のスリットおよび当該第1の方向と垂直な第2の方向に延在する第2のスリットを含む遮光板を前記被観測物と光源との間に配置して、前記第1のスリットまたは前記第2のスリットを透過したスリット光と前記被観測物を構成する所定の面の縁とを比較することにより、前記被観測物の傾きを検出する傾き検査方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の傾き検査方法において、
前記スリット光と前記縁との平行度を観測することにより、前記被観測物の傾きを検出する傾き検査方法。
【請求項10】
請求項7から9いずれかに記載の傾き検査方法において、
前記スリット光を前記所定の面の前記縁に照射して、当該照射された光と前記縁との平行度を観測することにより、前記被観測物の傾きを検出する傾き検査方法。
【請求項11】
請求項7から9いずれかに記載の傾き検査方法において、
前記スリット光を前記所定の面の前記縁に投影して、当該投影された光と前記縁との平行度を観測することにより、前記被観測物の傾きを検出する傾き検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−91338(P2010−91338A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259951(P2008−259951)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】