説明

傾き測定装置

【課題】従来に比べ、天候とは無関係に傾き測定終了まで要する時間を短縮することが出来、しかも測定精度を向上させることが出来る、傾き測定装置を提供することである。
【解決手段】夫々がL字形状横断面を有し、台座10に設置された物体12において台座から立ち上がった平坦な表面部位12aの上部及び下部の夫々に水平に着脱可能に固定される上部及び下部光反射部材18,20と;台座において上記表面部位に対向し台座からの振動を遮断して配置されたレーザ測定器14と;を備える。レーザ測定器により上部及び下部光反射部材の夫々の上記両端の夫々までの距離A1,A2,B1,B2及び垂直角を測定し、これらの測定値からレーザ測定器から上記夫々の上記両端の夫々までの水平距離HA1,HA2,HB1,HB2を求めるとともに、これらの水平距離の差異により上記表面部位の前後方向傾斜量及び左右方向傾斜量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、台座に設置された物体の鉛直線に対する傾きを測定する傾き測定装置に関係している。
【背景技術】
【0002】
台座に鉛直に設置されるべき物体(例えば、大型の制御盤)が鉛直線に対し傾いて設置されていると種々の問題を生じる。これら種々問題には、例えば、物体の外観が不安定に見えることによる物体の品質に対する信頼感の低下や、物体に扉が設けられている場合の扉の開閉の不具合や、物体が大型の制御盤であった場合の制御盤に格納された種々の計器類の動作の精密度の低下などが含まれる。
【0003】
従来は、台座に設置された物体が、例えば、大型の制御盤の如き立方体を含む直方体の場合には、鉛直線に対する物体の傾きは、物体において台座から立ち上がっている平坦な表面部位の上辺に隣接して、一端に錘を支持した糸の他端が固定されている吊り錘支持金具を着脱可能に固定し、物体の上記表面部位からの上記糸の上記一端及び上記他端の夫々の離間距離の差異及び上記表面部位において上下方向に延出している一側辺に対する上記糸の上記一端及び上記他端の夫々の離間距離の差異を、例えば物差しや巻尺の如き目視による長さ測定器具及び目視による角度測定器を利用して測定している。
【0004】
前者の離間距離の差異は物体の上記表面部位を物体の前面とした場合における物体の前後の傾きを表し、後者の離間距離の差異は物体の上記表面部位を物体の前面とした場合における物体の左右の傾きを表している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した如き従来の傾き測定方法では、物体の表面部位に前述した如く吊り錘支持金具を固定してから吊り錘支持金具に支持された錘付きの糸の振れが止まり前述した如く傾きの測定を開始するまでに時間が係ることである。しかも、上記物体が屋外にある場合には、風の影響による上記振れを防止する対策が必要であるし、風がある程度強い日には上記対策も取れない場合がある。
【0006】
また、前述した離間距離の測定は、目視による長さ測定器具や角度測定器具を利用して行なわれているので、その測定精度には限界があった。
【0007】
この発明は上記事情の下でなされ、この発明の目的は、前述した従来の場合に比べ、天候とは無関係に傾き測定終了まで要する時間を短縮することが出来、しかも測定精度を向上させることが出来る、傾き測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述したこの発明の目的を達成する為に、この発明に従った傾き測定装置は:直角に交わり光を反射する2つの内側面と、これら2つの内側面の交線の両端においてこれら2つの内側面と直角に交わり光を反射する2つの内端面と、を有したL字形状横断面を有しており、台座に設置された物体において台座から立ち上がり鉛直線に対する傾きを測定する平坦な表面部位の上部に上記2つの内側面の一方を上記表面部位が向いている方向に向けるとともに上記2つの内側面の他方を下方に向けて水平に着脱可能に固定される上部光反射部材と;直角に交わり光を反射する2つの内側面と、これら2つの内側面の交線の両端においてこれら2つの内側面と直角に交わり光を反射する2つの内端面と、を有したL字形状横断面を有しており、上記物体の上記平坦な表面部位の下部に上記2つの内側面の一方を上記表面部位が向いている方向に向けるとともに上記2つの内側面の他方を上方に向けて水平に着脱可能に固定される下部光反射部材と;そして、台座において上記物体の上記表面部位に対向し台座からの振動を遮断して配置され、目標に向かいレーザ光を投射し目標からの反射レーザ光により目標までの距離を測定可能であり、さらに目標に対するレーザ光の水平角及び垂直角を変更可能なレーザ測定器と;を備えている。
【0009】
そして、レーザ測定器により上部光反射部材の上記両端に向かいレーザ光を投射し上記両端からの反射レーザ光を使用して、レーザ測定器から上部光反射部材の上記両端の夫々までの距離,水平角,そして垂直角を測定し、これらの距離,水平角,そして垂直角からレーザ測定器から上部光反射部材の上記両端の夫々までの水平距離を求めるとともに、
レーザ測定器により下部光反射部材の上記両端に向かいレーザ光を投射し上記両端からの反射レーザ光を使用して、レーザ測定器から下部光反射部材の上記両端の夫々までの距離及び垂直角を測定し、これらの距離及び垂直角からレーザ測定器から下部光反射部材の上記両端の夫々までの水平距離を求め、
さらに、レーザ測定器から上部光反射部材の上記両端の一方までの水平距離と、レーザ測定器から下部光反射部材の上記両端において上部光反射部材の上記両端の上記一方の下方に位置する一方までの水平距離と、の差異により鉛直方向に対する台座に設置された物体の上記表面部位の前後方向傾斜量を求め、
また、レーザ測定器から上部光反射部材及び下部光反射部材の一方の上記両端の一方までの垂直距離と、レーザ測定器から上部光反射部材及び下部光反射部材の上記一方の上記両端の他方までの垂直距離と、の差異により鉛直方向に対する台座に設置された物体の上記表面部位の左右方向傾斜量を求める、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上述した如く構成されていることを特徴とするこの発明に従った傾き測定装置は、台座に設置された物体において台座から立ち上がり鉛直線に対する傾きを測定する平坦な表面部位の上部と下部に水平に着脱可能に固定されるL字形状横断面の上部及び下部光反射部材の夫々の両端に向かい、台座において上記物体の上記表面部位に対向し台座からの振動を遮断して配置されたレーザ測定器からレーザ光を投射し上記両端からのレーザ反射光を使用して、レーザ測定器から上部及び下部光反射部材の夫々の上記両端の夫々までの距離及び垂直角を測定し、これらの距離及び垂直角からレーザ測定器から上部及び下部光反射部材の夫々の上記両端の夫々までの水平距離を求めている。
【0011】
従って、これらの水平距離を天候とは無関係に測定終了まで要する時間を短縮することが出来、しかも測定精度を向上させることが出来る。
【0012】
ひいては、レーザ測定器から上部光反射部材の上記両端の一方までの水平距離と、レーザ測定器から下部光反射部材の上記両端において上部光反射部材の上記両端の上記一方の下方に位置する一方までの水平距離と、の差異から求められる鉛直方向に対する台座に設置された物体の上記表面部位の前後方向傾斜量;及び、レーザ測定器から上部光反射部材及び下部光反射部材の一方の上記両端の一方までの垂直距離と、レーザ測定器から上部光反射部材及び下部光反射部材の上記一方の上記両端の他方までの垂直距離と、の差異から求められる鉛直方向に対する台座に設置された物体の上記表面部位の左右方向傾斜量の夫々の測定終了まで要する時間を短縮することが出来、しかも測定精度を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、台座に設置された物体において台座から立ち上がり鉛直線に対する傾きを測定する平坦な表面部位の前後方向傾斜量及び左右方向傾斜量を、この発明の一実施の形態に従った傾き測定装置により測定する様子を概略的に示す斜視図である。
【図2】図2の(A)は、図1の概略的な平面図であり;そして、図2の(B)は、図1の概略的な側面図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、図1の物体の平坦な表面部位の上部光反射部材の2つの直角に交わる内側面に対し入射するレーザ測定装置からの入射レーザ光と上記内側面において反射した後の反射レーザ光との組み合わせの2つの例を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、上述した添付の図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に従った傾き測定装置の構成及び作用効果について以下に説明する。
【0015】
台座10の上面には、物体12、この実施の形態では立方体形状を含む直方体形状の大型の制御盤、が載置されていて、物体12は台座10の上面から立ち上がり鉛直線に対する傾きを測定する平坦な表面部位12aを有している。
【0016】
台座10の上面にはさらに、物体12の表面部位12aに対向し、この発明の一実施の形態に従った傾き測定装置の構成の一部であるレーザ測定器14が載置されている。レーザ測定器14は、水準器16を有していて台座10の上面に水平に載置される基台14aと、基台14aにより支持されたレーザ測定器本体14cと、を含む。基台14aとレーザ測定器本体14cとの間には、レーザ測定器本体14cに対する台座10からの振動を遮断する公知の振動遮断手段14bが介在されている。
【0017】
レーザ測定器本体14cは、目標に向かいレーザ光を投射し目標からの反射レーザ光により目標までの距離を測定可能であり、さらに目標に対する水平角及び垂直角を測定可能に構成されていて、このように構成されたレーザ測定器本体14cは公知である。この実施の形態のレーザ測定器14は、測定した目標までの距離,目標に対する水平角及び垂直角を表示する公知の表示手段14dを含む。
【0018】
この実施の形態において、レーザ測定器本体14cのレーザ光出射位置と反射レーザ光入射位置とは共通している。レーザ測定器本体14cは、例えばレーザ光出射用半導体の如きレーザ光源と、受光素子と、基端にレーザ光源が配置され末端がレーザ光出射位置と反射レーザ光入射位置として兼用され基端と末端の途中から分岐された分岐光学系を伴った主要光学系と、を備えていて、分岐光学系の末端に受光素子が配置されている。主要光学系は、基端のレーザ光源から出射されたレーザ光を末端のレーザ光出射位置まで導くとともに、末端のレーザ光出射位置と兼用された反射レーザ光入射位置に入射した反射レーザ光を基端と末端の途中から分岐された分岐光学系により受光素子に導く。そしてこのようなレーザ測定器本体14cは公知である。
【0019】
この発明の一実施の形態に従った傾き測定装置はさらに、L字形状横断面を有し水平方向に延出しており物体12の平坦な表面部位12aの上部に水平に着脱可能に固定された上部光反射部材18と、L字形状横断面を有し水平方向に延出しており物体12の平坦な表面部位12aの下部に水平に着脱可能に固定された下部光反射部材20と、を備えている。
【0020】
詳細には、上部光反射部材18は、直角に交わり光を反射する2つの内側面18a,18bと、これら2つの内側面18a,18bの交線CL(図3の(A)参照)の両端においてこれら2つの内側面18a,18bと直角に交わり光を反射する2つの内端面18d,18eと、を有しており、一方の内側面18aを物体12の表面部位12aが向いている方向に向けるとともに他方の内側面18bを下方に向けている。上部光反射部材18は公知の着脱可能手段により物体12の平坦な表面部位12aの上部に着脱可能に固定されていて、公知の着脱可能手段は両面テープや物体12の表面部位12aが鉄を含む磁性材料の場合には磁石であることができる。上部光反射部材18は、2つの内側面18a,18bの少なくともいずれか一方の中央に水準器16を含んでいる。なお、図1には、一方の内側面18aの中央に配置された水準器16のみが図示されているが、この実施の形態に従った上部光反射部材18は他方の内側面18bの中央にも水準器16を含んでいる。
【0021】
2つの内側面18a,18bの夫々の少なくとも両端部及び2つの内端面18d,18eには、光反射率を向上させる為の公知の光反射率向上加工が適用されていることが出来、公知の光反射率向上加工には例えばメッキ加工や鏡面仕上げ加工が含まれる。
【0022】
下部光反射部材20は、直角に交わり光を反射する2つの内側面20a,20bと、これら2つの内側面20a,20bの交線CLの両端においてこれら2つの内側面20a,20bと直角に交わり光を反射する2つの内端面20d,20eと、を有しており、一方の内側面20aを物体12の表面部位12aが向いている方向に向けるとともに他方の内側面20bを上方に向けている。下部光反射部材20は公知の着脱可能手段により物体12の平坦な表面部位12aの下部に着脱可能に固定されていて、公知の着脱可能手段は両面テープや物体12の表面部位12aが鉄を含む磁性材料の場合には磁石であることができる。下部光反射部材20は、2つの内側面20a,20bの少なくともいずれか一方の中央に水準器16を含んでいる。なお、図1には、この実施の形態に従った下部光反射部材20が、2つの内側面20a,20bの夫々の中央に水準器16を含んでいることが図示されている。
【0023】
2つの内側面20a,20bの夫々の少なくとも両端部及び2つの内端面20d,20eには、光反射率を向上させる為の公知の光反射率向上加工が適用されていることが出来、公知の光反射率向上加工には例えばメッキ加工や鏡面仕上げ加工が含まれる。
【0024】
次に、このように構成されているこの発明の一実施の形態に従った傾き測定装置を使用した、台座10上の物体12の表面部位12aの、鉛直線に対する前後方向傾斜量及び左右方向傾斜量の求め方を説明する。
【0025】
レーザ測定器本体14cの中心から台座10の上面上の物体12の平坦な表面部位12aまでの最短距離の仮想線をY軸とし、水平方向に延出していてY軸と直交する仮想線をX軸とし、そして鉛直方向に延出していてY軸及びX軸と直交する仮想線をZ軸とする。
【0026】
レーザ測定器本体14cにより上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)に向かいレーザ光を投射し上記両端からの反射レーザ光が最も強くなる時の反射レーザ光を使用して、レーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の上記両端の夫々までの距離及び垂直角を測定する。
【0027】
ここで上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)に向かい投射したレーザ光の上記両端からの反射レーザ光が最も強くなる時の反射レーザ光を使用するのは、以下の理由からである。
【0028】
即ち、図3の(A)及び(B)中に図示されている如く、上述した如く投射されたレーザ光の光路ILB´が上部光反射部材18の2つの内側面18a,18bの交線CLに一致しないと上部光反射部材18からの反射レーザ光の光路RLB´は投射されたレーザ光の光路ILB´から離れ、しかも2つの内側面18a,18bの交線CLからの投射されたレーザ光の光路ILB´の離間距離が大きくなるほど投射されたレーザ光の光路ILB´と反射レーザ光の光路RLB´との間の離間距離も大きくなる。このことは、レーザ測定器本体14cの反射レーザ光入射位置に入射し受光素子が受光する反射レーザ光の光量が少なくなることを意味している。そして、図3の(B)中に図示されている如く、上述した如く投射されたレーザ光の光路ILBが上部光反射部材18の2つの内側面18a,18bの交線CLに一致すると上部光反射部材18からの反射レーザ光の光路RLBは投射されたレーザ光の光路ILBと一致する。このことは、レーザ測定器本体14cの反射レーザ光入射位置に入射し受光素子が受光する反射レーザ光の光量が最も強くなることを意味している。
【0029】
同じことは、上述した如く投射されたレーザ光の光路ILB´が上部光反射部材18の2つの両端面18d及び18eの夫々に入射した場合も生じる。
【0030】
ここで、レーザ測定器本体14cにより上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の一方(この実施の形態では左端)に向かい投射されたレーザ光と上記両端の上記一方からの反射レーザ光との共通の光路を参照符号a1により指摘し、レーザ測定器本体14cにより測定されたレーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の左右両端の上記一方までの光路a1に沿った距離をA1とし、Y軸からの光路a1の水平角をφ1(図2の(A)参照)とし、Y軸からの光路a1の垂直角をθ1(図2の(B)参照)とする。
【0031】
さらにレーザ測定器本体14cにより上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の他方(この実施の形態では右端)に向かい投射されたレーザ光と上記両端の上記他方からの反射レーザ光との共通の光路を参照符号a2により指摘し、レーザ測定器本体14cにより測定されたレーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の左右両端の上記他方までの光路a2に沿った距離をA2とし、Y軸からの光路a2の水平角をφ2(図2の(A)参照)とし、Y軸からの光路a2(図2の(B)に括弧付きで図示)の垂直角をθ2(図2の(B)に括弧付きで図示)とする。
【0032】
そしてレーザ測定器本体14cにより測定されたこれらの測定値、即ち、レーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の左右両端の上記一方までの光路a1に沿った距離A1及びY軸からの光路a1の垂直角θ1(図2の(B)参照)、や、レーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の左右両端の上記他方までの光路a2に沿った距離A2及びY軸からの光路a2の垂直角θ2(図2の(B)に括弧付きで図示)、は表示手段14dに表示される。
【0033】
当業者は、これらの測定結果から三角測量の要領で、レーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の一方(この実施の形態では左端)までの台座10の上面に対し平行な水平距離HA1(=A1×COSθ1)と、レーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の左右両端の他方(この実施の形態では右端)までの台座10の上面に対し平行な水平距離HA2(=A2×COSθ2)と、を得ることが出来るし、さらには上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の一方(この実施の形態では左端)からZ軸の延長上のレーザ測定器本体14cに対応する位置までのZ軸に対し平行な垂直距離H1(図2の(B)を参照)と、上部光反射部材18の左右両端の他方(この実施の形態では右端)からZ軸の延長上のレーザ測定器本体14cに対応する位置までのZ軸に対し平行な垂直距離H2(図2の(B)中に括弧付きで記載)と、を得ることが出来る。
【0034】
また、レーザ測定器本体14cにより下部光反射部材20の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の一方(この実施の形態では左端)に向かい投射されたレーザ光と上記両端の上記一方からの反射レーザ光との共通の光路を参照符号b1により指摘し、レーザ測定器本体14cにより測定されたレーザ測定器本体14cから下部光反射部材20の左右両端の上記一方までの光路b1に沿った距離をB1とし、Y軸からの光路b1(図2の(A)中に括弧付きで図示)の水平角をα1(図2の(A)中に括弧付きで図示)とし、Y軸からの光路b1の垂直角をβ1(図2の(B)参照)とする。
【0035】
さらにレーザ測定器本体14cにより下部光反射部材20の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の他方(この実施の形態では右端)に向かい投射されたレーザ光と上記両端の上記他方からの反射レーザ光との共通の光路を参照符号b2により指摘し、レーザ測定器本体14cにより測定されたレーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の左右両端の上記他方までの光路b2に沿った距離をB2とし、Y軸からの光路b2の水平角をα2(図2の(A)中に括弧付きで図示)とし、Y軸からの光路b2の垂直角をβ2(図2の(B)中に括弧付きで図示)とする。
【0036】
そしてレーザ測定器本体14cにより測定されたこれらの測定値、即ち、レーザ測定器本体14cから下部光反射部材20の左右両端の上記一方までの光路b1に沿った距離B1及びY軸からの光路b1の垂直角β1(図2の(B)参照)、や、レーザ測定器本体14cから下部光反射部材20の左右両端の上記他方までの光路b2に沿った距離B2及びY軸からの光路b2の垂直角β2(図2の(B)中に括弧付きで図示)、は表示手段14dに表示される。
【0037】
当業者は、これらの測定結果から三角測量の要領で、レーザ測定器本体14cから下部光反射部材20の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の一方(この実施の形態では左端)までの台座10の上面に対し平行な水平距離HB1(=B1×COSβ1)と、レーザ測定器本体14cから下部光反射部材20の左右両端の他方(この実施の形態では右端)までの台座10の上面に対し平行な水平距離HB2(=B2×COSβ2)と、を得ることが出来るし、さらにはZ軸の延長上のレーザ測定器本体14cに対応する位置から下部光反射部材20の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の一方(この実施の形態では左端)までのZ軸に対し平行な垂直距離T1(図2の(B)を参照)と、Z軸の延長上のレーザ測定器本体14cに対応する位置から下部光反射部材20の左右両端の他方(この実施の形態では右端)までのZ軸に対し平行な垂直距離T2(図2の(B)中に括弧付きで記載)と、を得ることが出来る。
【0038】
そして、レーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の一方(この実施の形態では左端)までの台座10の上面に対し平行な水平距離HA1と、レーザ測定器本体14cから下部光反射部材20の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)において上記一方の下方に位置した一方(この実施の形態では左端)までの台座10の上面に対し平行な水平距離HB1と、の差異により鉛直方向に延出しているZ軸に沿った方向に対する台座10の上面上の物体12の表面部位12aの前後方向(この実施の形態ではY軸に沿った方向)の傾斜量を求めることができる。
【0039】
また、レーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の他方(この実施の形態では右端)までの台座10の上面に対し平行な水平距離HA2と、レーザ測定器本体14cから下部光反射部材20の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)において上記他方の下方に位置した他方(この実施の形態では右端)までの台座10の上面に対し平行な水平距離HB2と、の差異によっても、鉛直方向に延出しているZ軸に沿った方向に対する台座10の上面上の物体12の表面部位12aの前後方向(この実施の形態ではY軸に沿った方向)の傾斜量を求めることができる。
【0040】
さらにはZ軸の延長上のレーザ測定器本体14cに対応する位置から上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の一方(この実施の形態では左端)までのZ軸に対し平行な垂直距離H1(図2の(B)を参照)と、Z軸の延長上のレーザ測定器本体14cに対応する位置から上部光反射部材18の左右両端の他方(この実施の形態では右端)までのZ軸に対し平行な垂直距離H2(図2の(B)中に括弧付きで記載)と、の差異により、鉛直方向に延出しているZ軸に沿った方向に対する台座10の上面上の物体12の表面部位12aの左右方向(この実施の形態ではX軸に沿った方向)の傾斜量を求めることができる。
【0041】
またZ軸の延長上のレーザ測定器本体14cに対応する位置から下部光反射部材20の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)の一方(この実施の形態では左端)までのZ軸に対し平行な垂直距離T1(図2の(B)を参照)と、Z軸の延長上のレーザ測定器本体14cに対応する位置から下部光反射部材20の左右両端の他方(この実施の形態では右端)までのZ軸に対し平行な垂直距離T2(図2の(B)中に括弧付きで記載)と、の差異によっても、鉛直方向に延出しているZ軸に沿った方向に対する台座10の上面上の物体12の表面部位12aの左右方向(この実施の形態ではX軸に沿った方向)の傾斜量を求めることができる。
【0042】
なお、この発明の概念に従えば:前述した如くレーザ測定器本体14cにより測定されたレーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の左右両端の上記一方までの光路a1に沿った距離A1,Y軸からの光路a1の水平角φ1,そしてY軸からの光路a1の垂直角θ1;さらにレーザ測定器本体14cにより測定されたレーザ測定器本体14cから上部光反射部材18の左右両端の上記他方までの光路a2に沿った距離A2,Y軸からの光路a2の水平角φ2,そしてY軸からの光路a2の垂直角θ2の測定結果を基に、
1).レーザ測定器本体14cに、三角測量の要領で前述した如く、上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)に関する水平距離HA1及びHA2を計算させ、及び垂直距離H1及びH2を計算させ、さらには、下部光反射部材20の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)に関する水平距離HB1及びHB2を計算させ、及び垂直距離T1及びT2を計算させること、が出来、ひいては上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)に関して上述した如く計算された水平距離HA1,HA2及び垂直距離H1,H2、また下部光反射部材20の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)に関して上述した如く計算された水平距離HB1,HB2及び垂直距離T1,T2を表示手段14dに表示させることができるし、さらには、
2).レーザ測定器本体14cに、上部光反射部材18の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)に関して上述した如く計算された水平距離HA1,HA2及び垂直距離H1,H2、また下部光反射部材20の左右両端(図1ではX軸に沿った方向の両端)に関して上述した如く計算された水平距離HB1,HB2及び垂直距離T1,T2から、鉛直方向に延出しているZ軸に沿った方向に対する台座10の上面上の物体12の表面部位12aの前後方向(この実施の形態ではY軸に沿った方向)の傾斜量を計算させることができ、また鉛直方向に延出しているZ軸に沿った方向に対する台座10の上面上の物体12の表面部位12aの左右方向(この実施の形態ではX軸に沿った方向)の傾斜角を計算させることができ、ひいてはこのように計算された台座10の上面上の物体12の表面部位12aの前後方向(この実施の形態ではY軸に沿った方向)の傾斜量及び左右方向(この実施の形態ではX軸に沿った方向)の傾斜量を表示手段14dに表示させることができる。
【符号の説明】
【0043】
10…台座、12…物体、12a…平坦な表面部位、14…レーザ測定器、14a…基台、14b…振動遮断手段、14c…レーザ測定器本体、14d…表示手段、16…水準器、18…上部光反射部材、18a,18b…内側面、18d,18e…内端面、CL…交線、20…下部光反射部材、20a,20b…内側面、20d,20e…内端面、CL…交線、a1,a2,b1,b2…光路、A1,A2,B1,B2…(光路a1,a2,b1,b2の)距離、φ1,φ2,α1,α2…水平角、θ1,θ2,β1,β2…垂直角、HA1,HA2,HB1,HB2…水平距離、H1,H2,T1,T2…垂直距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直角に交わり光を反射する2つの内側面と、これら2つの内側面の交線の両端においてこれら2つの内側面と直角に交わり光を反射する2つの内端面と、を有したL字形状横断面を有しており、台座に設置された物体において台座から立ち上がり鉛直線に対する傾きを測定する平坦な表面部位の上部に上記2つの内側面の一方を上記表面部位が向いている方向に向けるとともに上記2つの内側面の他方を下方に向けて水平に着脱可能に固定される上部光反射部材と;
直角に交わり光を反射する2つの内側面と、これら2つの内側面の交線の両端においてこれら2つの内側面と直角に交わり光を反射する2つの内端面と、を有したL字形状横断面を有しており、上記物体の上記平坦な表面部位の下部に上記2つの内側面の一方を上記表面部位が向いている方向に向けるとともに上記2つの内側面の他方を上方に向けて水平に着脱可能に固定される下部光反射部材と;そして、
台座において上記物体の上記表面部位に対向し台座からの振動を遮断して配置され、目標に向かいレーザ光を投射し目標からの反射レーザ光により目標までの距離を測定可能であり、さらに目標に対するレーザ光の水平角及び垂直角を変更可能なレーザ測定器と;
を備えており、
レーザ測定器により上部光反射部材の上記両端に向かいレーザ光を投射し上記両端からの反射レーザ光を使用して、レーザ測定器から上部光反射部材の上記両端の夫々までの距離及び垂直角を測定し、これらの距離及び垂直角からレーザ測定器から上部光反射部材の上記両端の夫々までの水平距離を求めるとともに、
レーザ測定器により下部光反射部材の上記両端に向かいレーザ光を投射し上記両端からの反射レーザ光を使用して、レーザ測定器から下部光反射部材の上記両端の夫々までの距離及び垂直角を測定し、これらの距離及び垂直角からレーザ測定器から下部光反射部材の上記両端の夫々までの水平距離を求め、
さらに、レーザ測定器から上部光反射部材の上記両端の一方までの水平距離と、レーザ測定器から下部光反射部材の上記両端において上部光反射部材の上記両端の上記一方の下方に位置する一方までの水平距離と、の差異により鉛直方向に対する台座に設置された物体の上記表面部位の前後方向傾斜量を求め、
また、レーザ測定器から上部光反射部材及び下部光反射部材の一方の上記両端の一方までの垂直距離と、レーザ測定器から上部光反射部材及び下部光反射部材の上記一方の上記両端の他方までの垂直距離と、の差異により鉛直方向に対する台座に設置された物体の上記表面部位の左右方向傾斜量を求める、
ことを特徴とする傾き測定装置。
【請求項2】
上部光反射部材及び下部光反射部材の夫々は、上記両端の水平を示す水準器を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の傾き測定装置。
【請求項3】
レーザ測定器が、
レーザ測定器から上部光反射部材の上記両端の一方までの水平距離と、レーザ測定器から下部光反射部材の上記両端において上部光反射部材の上記両端の上記一方の下方に位置する一方までの水平距離と、の差異により鉛直方向に対する台座に設置された物体の上記表面部位の前後方向傾斜量を計算し、
また、レーザ測定器から上部光反射部材及び下部光反射部材の一方の上記両端の一方までの垂直距離と、レーザ測定器から上部光反射部材及び下部光反射部材の上記一方の上記両端の他方までの垂直距離と、の差異により鉛直方向に対する台座に設置された物体の上記表面部位の左右方向傾斜量を計算し、
これら水平距離及び垂直距離と、前後方向傾斜量及び左右方向傾斜量と、の少なくともいずれかの組み合わせを表示する表示装置を備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の傾き測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−210341(P2010−210341A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55387(P2009−55387)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】