説明

優れた溶接性、加工性、耐食性を有するプレコート鋼板用樹脂組成物、これを利用したプレコート鋼板の製造方法及び鋼板

本発明は、溶接性、耐食性および作業性に優れた鋼板用樹脂組成物、これを用いたプレコート鋼板の製造方法、およびプレコート鋼板に関するものである。より詳細には、主樹脂、硬化剤、およびNi、Co、Mn、Fe、Cu、Al、Zn、Sn及びFePのグループから選ばれた少なくとも一種であり、平均短軸径(φ)がt/3≦φ≦3t〔ここで、tはフィルムの組成物が塗布、硬化された後の厚さである〕の金属粉末でなるコーティング用の金属含有樹脂組成物である。この金属含有樹脂組成物でコーティングされた鋼板は、溶接性、耐食性および作業性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた溶接性、加工性、耐食性を有するプレコート鋼板用樹脂組成物、これを利用して製造されたプレコート鋼板の製造方法及び前記プレコート鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄工場で製造された冷延鋼板は、自動車車体及び部品用素材用や家電、建材用製品に多く使用され、特に自動車部品社では、冷延鋼板を所望の部品形状に加工した後、クロム塗装メッキを行って自動車部品とした。しかし、クロム塗装に伴う環境規制に起因して、代替物であるクロムフリー溶液を使用するようになったが、高価なクロムフリー溶液を利用した塗装は、コスト上昇を引き起こした。したがって、製鉄工場で予め塗装された鋼板を部品製造会社に提供することで、部品に成型した後、部品への個別的な塗装時に発生する塗料の損失を減らすことができる。
【0003】
予め塗装された鋼板、いわゆるプレコート鋼板は、亜鉛及び亜鉛合金系、アルミニウム及びアルミニウム合金系、スズ合金系メッキ鋼板に樹脂をコーティングした製品が開発されたが、樹脂自体の低い電気伝導特性に起因して抵抗溶接が不可能であるか、または電極寿命が非常に低いため、溶接が必要な部品に適用しにくい。これにより、予め塗装が行われていて、且つ溶接性、加工性及び耐食性が優れた、所謂溶接が可能なプレコート鋼板の開発が要求されている。
【0004】
Zn、Al、Cuなどの金属粉末を多量含有する樹脂コーティング鋼板は、芯加工時に金属粉末の脱離、樹脂スクラッチが発生し、芯加工後に耐食性の確保が必要である。金属粉末を含有する樹脂でコーティングされたプレコート鋼板は、芯加工時に金属粉末と金属粉末の周囲の樹脂が容易に脱離する。金属粉末と樹脂が脱離した部位には、水や酸素、塩分、亜硫酸ガスのような腐食因子が容易に浸透し、鋼板の素地層とメッキ鋼板のメッキ層を容易に腐食させるようになる。さらに、芯加工時に樹脂コーティング鋼板から脱離した金属粉末と樹脂は、金型に固着され、部品を連続成型する時、樹脂コーティング鋼板の表面にスクラッチを発生させて、成型された部品の外観を損ない、安全性を必要とする部品に腐食を引き起こす可能性がさらに大きくなる。
【0005】
金属粉末を含有する樹脂組成物に関する従来技術では、大きく、1)金属質感を付与するための顔料として添加し、2)樹脂層にZn、Alのように犠牲方式が可能な金属粉末を添加して、耐食性を改善し、3)導電性、抵抗溶接性向上のために導電体として添加した。金属質感を付与するか、または犠牲方式のために添加する金属粉末は、耐食性向上のために導電性を最大限抑制することを目的にしており、導電性や抵抗溶接性を向上させて、溶接が必要な部品に使用するものと差がある。
【0006】
樹脂コーティング鋼板の低い導電性と溶接性を解決するために、特許文献1には、溶接が可能な燃料タンク用樹脂被覆鋼板に関するものが開示されていて、長方形の長さが0.1〜3.0μmの板状の金属粉末を含有する水溶性フェノキシ系樹脂溶液を使用して溶接性と溶液安定性を向上させたが、連続的な芯加工による耐食性確保に対する言及がなく、非金属固形分と金属粉末の含量、金属粉末の粒度と塗膜の厚さの関係が明確に記載されていない。
【0007】
一方、特許文献2では、導電性高分子を利用した低温焼付形クロムフリー前処理層に関するものが開示されているが、金属粉末を使用せず、前処理層に限っていて、本発明とは区別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国特許公開第2002−0039568号(特許出願第2000−0069474号)
【特許文献2】大韓民国特許公開第2008−0063171号(特許出願第2007−0139436号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非導電性高分子樹脂、硬化剤、潤滑剤、無機添加剤を含有する樹脂に抵抗溶接性を付与するには、導電性を有する金属粉末を含有することが必要である。金属粉末を多量に含有する金属含有樹脂組成物を塗布した鋼板は、芯加工時に金型と鋼板との間の摩擦力に耐えることができず、鋼板の表面から脱離し易くなる。脱離した金属粉末と樹脂被膜の切れ片は、金型表面に固着し、連続的な部品成型工程時に部品表面に樹脂スクラッチを誘発するようになる。樹脂が脱離した部位または成型中に発生した樹脂スクラッチ部位には、水、酸素、塩分、亜硫酸ガスなどの腐食因子が浸透し易く、鋼板の素地層またはメッキ層に腐食を誘発し、部品の安全性が低下するようになる。
【0010】
一方、プレコート鋼板の耐食性を向上させるために金属粉末を微細にするか、または金属粉末の含量を少なくすれば、互いに当接した2つの鋼板の間に瞬間的に大きい電流が流れる抵抗溶接時に対し、電流の流れを難しくするので、溶接が不可能になるか、または連続溶接時に溶接棒の損傷を引き起こすことがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、優れた溶接性、加工性、耐食性を有するプレコート鋼板コーティング用金属含有樹脂組成物及びこれにより得られるプレコート鋼板を提供することを目的にする。本発明では、溶接性、加工性、耐食性を同時に確保することができるように金属含有樹脂組成物内の金属粉末の含量と金属粉末の平均粒度、塗布後に乾燥した被膜の厚さの最適関係を設定した。
【0012】
より具体的には、主樹脂と、硬化剤と、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Cu、Al、Zn、Sn及びFePよりなる群から選択される1種以上の金属粉末と、を含み、前記金属粉末の短軸の平均直径Φがt/3≦Φ≦3t(ここで、tは、前記樹脂組成物をコーティングして乾燥した後の塗膜の厚さを意味する)を満たす金属含有樹脂組成物でコーティングされた、優れた溶接性、耐食性、加工性を有するプレコート鋼板に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
付着量10〜2,000mg/mとなるようにクロメートまたはクロムフリー被膜前処理、SiO層処理、リン酸塩前処理された鋼板のうちいずれか1つの方法で前処理された冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛系合金メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、アルミニウム合金系メッキ鋼板、ステンレス鋼板のうちいずれか1つに本発明の金属含有樹脂組成物を被覆することによって、優れた溶接性、加工性、耐食性が必要な自動車部品、家電部品、建材用外板に成型と溶接後、塗装を省略するか、または溶接や切断が行われた部位にのみ最小限のシール処理または塗装を実施するので、部品として使用するに適している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、主樹脂と、硬化剤と、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Cu、Al、Zn、Sn及びFePよりなる群から選択される1種以上の単一金属粉末またはこれらの合金粉末とを含み、乾燥後の塗膜の厚さは、金属含有樹脂組成物に含有された金属粉末の平均直径によって金属粉末または合金粉末の短軸の平均直径Φがt/3≦Φ≦3t(ここで、tは、塗膜コーティング用樹脂金属組成物をコーティングして乾燥した塗膜の厚さを意味する)となるようにすることができ、より具体的には、Φがt/2≦Φ≦2tとなるように塗膜の厚さと金属粉末の平均直径を選定することができる。
【0015】
乾燥した塗膜金属粉末の平均直径が塗膜の厚さの1/3より小さければ、金属粉末が互いに連結され、電気伝導を可能にする経路が形成されず、抵抗溶接が不可能になるおそれがあり、金属粉末の平均直径が塗膜の厚さの3倍より大きくなると、金属粉末が乾燥した塗膜の外部に露出し、塗膜の表面が粗くなり、芯加工時に金属粉末が脱離し、金型を汚染させて、部品の表面にスクラッチを引き起こすことがある。
【0016】
本発明において、樹脂、硬化剤、無機添加剤が含有された組成物は、粘度によって適切な有機溶媒を利用して希釈し、鋼板にコーティングし乾燥するのが有利である。
【0017】
本発明において、前記単一金属粉末またはこれらの合金粉末は、乾燥した塗膜の2〜30v/v%で含まれる。すなわち、本発明の組成物において、主樹脂、硬化剤、無機添加剤を含む非導電性樹脂に、Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Cu、Al、Zn、Sn及びFePよりなる群から選択される1種以上の単一金属粉末または合金粉末を乾燥した後の塗膜内に塗膜全体体積の約2〜30v/v%で含有するように分散させることができる。
【0018】
乾燥した被膜内で金属粉末が占める体積比率は、被膜内の導体と不導体の体積比率になり、被膜の電気伝導率を決定する重要な要素になる。Alは、他の金属と異なって、比重が低く、Ni、Cuなどは、比重が高く、非金属含有樹脂組成物と金属粉末を同一の重量比で混合し、乾燥した被膜で金属が占める体積比率は、比重が大きい金属であるほど小さくなる。したがって、比重が大きい金属を含有する金属含有樹脂組成物でコーティングされた鋼板を当接した後、抵抗溶接を行うとき、電流が流れる経路が少くなり、抵抗溶接に不利になる。したがって、優れた溶接特性を有するプレコート鋼板を製造するには、乾燥した被膜で非導電性樹脂組成物が占める体積と導電性金属粉末が占める体積を制御することが必要である。乾燥後、塗膜内の金属粉末が占める体積比が2〜30v/v%になるように調節することが好ましい。より具体的には、乾燥した塗膜内の金属粉末が占める体積比が5〜20v/v%になるように調節するのがよい。
【0019】
金属粉末が占める比率が2v/v%より小さいと、瞬間的に非常に大きい電流が流れなければならない抵抗溶接時に、充分な電気伝導経路を確保できず、溶接が不可能になるおそれがある。一方、30v/v%を超える量の金属粉末を含有すると、コーティングされた鋼板を芯加工する時、塗膜が剥げるか、または金属粉末が脱離し、金型に固着し、連続成型作業時に成型された部品の外観を損なうばかりでなく、塗膜が剥げるかまたはスクラッチされた部分の耐食性が急激に低下し、腐食が発生し易くなる。
【0020】
本発明において、平均直径が0.1〜100μm、より好ましくは0.3〜60μmである金属粉末または合金粉末を使用することができる。金属粉末または合金粉末の平均直径が0.1μm未満であると、金属粉末同士が直接接触し、塗膜を透過する通電経路を形成することが難しく、溶接が不可能になることがあり、100μmを超える場合には、加工時に少量の金属粉末が脱離しても樹脂表面にスクラッチが発生することがあり、また、溶液内に長時間分散状態を維持し難いため、均一なコーティングができないことがある。
【0021】
上記のように、塗膜の厚さと金属粉末の平均直径を調節しても、溶接のためには、塗膜の厚さが1〜20μmにすることが好ましく、より好ましくは、乾燥後の塗膜の厚さを2〜15μmにするのが適当である。
【0022】
乾燥した塗膜の厚さが1μmより小さいと、一般に使用される鋼板表面が有する粗さに起因して、金属粉末を混合しないとしても、抵抗溶接時に高い電圧を印加して溶接は可能であるが、金属粉末を含有する金属含有樹脂組成物で塗布すると、芯加工して部品に成型しないとしても、耐食性が大きく低下し、腐食を引き起こすことがある。一方、乾燥した塗膜の厚さが20μmより大きくすると、上記の条件で金属粉末を混合しても、非常に高い電圧で抵抗溶接しなければならず、抵抗溶接時に電極の寿命を短くするおそれがある。また、7〜60μm以上の大きな金属粉末を使用しなければならないので、芯加工時に金型に金属粉末と樹脂が脱離し、固着して、連続作業時に樹脂スクラッチが激しく発生することがあり、芯加工部位と非加工部位の色相差が大きくなることがある。
【0023】
樹脂塗膜に同一量の金属粉末が含有されても、金属粉末の形状によって溶接特性が変わる。金属含有樹脂組成物を製造するために、樹脂組成物に金属粉末を混合する時、均一に分散するために高速で回転するインペラーを使用して撹拌するか、またはビーズミルを利用して機械的に衝撃を加える方法がある。前者の方法は、金属粉末の形状を大きく変化させないが、粒子を均一に分散させるに難しく、後者の方法は、ビーズミルの運転条件によって均一な分散が可能であるが、原料金属粉末の形状変化を引き起こすことがある。原料金属粉末の形状は、球形、卵円形、角形、くさび形状またはこれらの混合形態であることができるが、機械的に衝撃を加えて、金属粉末を分散させる場合、粒子は、板状形態に変形される。さらに、金属質感を具現するために使用される塗料用Al粉末、Zn粉末は、製造過程で予め圧延し、板状の金属粉末として用いるのがよい。
【0024】
本発明の溶接性に優れた鋼板を製造するためには、鋼板にコーティングする前の金属含有樹脂組成物に含有された金属粉末の短軸と長軸の平均的な長さ比率は、好ましくは1:1〜1:10、より好ましくは1:1〜1:5にする。
【0025】
金属粉末の形状が短軸と長軸の平均長さ比率が1:10より大きい板状または針状の粉末は、金属粉末が2〜30v/v%含有された金属含有樹脂組成物を塗布し乾燥して得た塗膜で互いに積層され、電気が導通することができる経路の形成が難しいか、または溶接が可能に充分に大きい電流を通過させ難いことがある。特に針状の金属粉末を含有する組成物は、充分に大きい電流を通過させる時、素地鉄が溶接される前に、塗膜に含有された金属粉末が先に溶解し、溶接を難しくし、組成物の粘度を増加させて、均一なコーティングを難しくすることがある。一方、球形の金属粉末の表面に突起またはくさび形状が付着した形状を有する金属粉末は、樹脂層と結合することができる表面積が広く、樹脂にアンカーリング効果を有するため、樹脂組成物に分散させて塗布したプレコート鋼板を芯加工する時、塗膜から脱離する量を減らすことができ、溶接するに充分な電流が流れることができるので、抵抗溶接が可能になる。
【0026】
乾燥した被膜で金属粉末と樹脂の密着性を向上させるために、金属粉末を樹脂組成物と混合する前に、シランカップリング剤を使用して処理するか、または主樹脂100重量部を基準にして0.1〜10重量部のシランカップリング剤を樹脂組成物に予め混合した後、金属粉末を分散させることができる。
【0027】
また、本発明は、前記樹脂金属組成物が塗布されたプレコート鋼板に関するものであり、プレコート鋼板の場合、脱脂後の付着量が10〜2,000mg/mとなるように、クロメート処理、クロムフリー被膜処理、SiO層処理またはリン酸塩処理法で前処理される。本発明において、プレコート鋼板コーティング用樹脂金属組成物を塗布した後、乾燥させた塗膜の厚さは、前処理層の厚さを含んで1〜20μmである。
【0028】
本発明において、シランカップリング剤は、金属粉末と樹脂、鋼板表面またはメッキ層表面と樹脂の結合を堅固にするために混合する。樹脂組成物にシランカップリング剤を予め混合した後、金属粉末を分散させる時、主樹脂100重量部を基準にして0.1重量部より少なく使用すると、金属粉末と樹脂の結合に大きい影響を与えないおそれがあり、10重量部より多く使用すると、樹脂組成物内にシランカップリング剤が不均一に分散され、耐食性が低下するか、または分散性が低下するおそれがある。
【0029】
本発明において主樹脂の例としては、これに特に制限されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂などを含むことができ、エポキシ樹脂とフェノキシ樹脂は、数平均分子量が3,000〜10,000、ポリエステル樹脂は、数平均分子量が5,000〜30,000のものを使用することができる。主樹脂は、単独でまたは2種以上の混合物として使用することができる。
【0030】
主樹脂は、有機溶媒に分散するのが好ましい。有機溶媒としては、アルコール、ケトン、エーテル、芳香族化合物、脂肪族炭化水素またはアミンを挙げることができ、具体的にはプロピレングリコールメチルエーテルなどが使用できる。主樹脂であるエポキシ樹脂またはフェノキシ樹脂は、分子量が大きくなるほど疎水性が大きくなり、疎水性である主樹脂を溶解させるためには、反応基を有する有機溶媒を使用することが好ましい。
【0031】
本発明において硬化剤の例としては、これに特に制限されるものではないが、例えば、末端ブロック化ポルリイソシアネートまたはメラミンなどがある。硬化剤は、単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
本発明においてシランカップリング剤の例としては、これに特に制限されるものではないが、例えば、エポキシシラン系カップリング剤が使用することができ、より具体的には、3−アミノプロピルトリエポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン及びγ−グリシドキシトリメチルジメトキシシランなどがある。シランカップリング剤は、単独で、または2種以上の混合物として使用することができる。
【0033】
以下、下記実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
主樹脂として数平均分子量3000〜10000を有するエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、硬化剤としては末端ブロック化ポリイソシアネート及びメラミン樹脂を使用し、シリカフィラー、シランカップリング剤としてエポキシシランと主樹脂を、プロピレングリコールメチルエーテル有機溶媒にて希釈した後、下記表1に記載したように、Zn粉末の平均直径、形状、含量を変化させながら配合した。含量は、乾燥した塗膜で占める体積比(体積%)で示した。混合方法は、インペラーを利用した高速撹拌方法とビーズミルを利用した機械的粉砕及び混合方法を用いた。
【0035】
上記のように調製した金属−樹脂溶液を、アルカリ脱脂した電気亜鉛メッキ鋼板に、100〜1000mg/mの付着量となるようにクロムフリー前処理を行った後に、金属粉末の平均直径によって適切な塗膜の厚さでコーティングし、乾燥してプレコート鋼板とした。そして、プレコート鋼板の溶接性、加工性、耐食性を評価した。
【0036】
溶接性は、Cu−Cr合金RWMA−クラスIIの溶接電極が装着されたAC空圧式スポット溶接機を使用して電極寿命を測定した。測定条件は、加圧力1.8kN、溶接時間、スクイズ時間、維持時間をそれぞれ6、24、12サイクルに設定した。溶接電流及び印加電圧は、溶接が可能な電流範囲を測定した後、適切に調整し、溶接部ナゲットの平均直径が鋼板の厚さの二乗根の4倍、すなわち4x(鋼板厚さ)1/2以上になる最大溶接打数を電極寿命として測定した。評価基準は、次の通りである。
◎:連続打点数800以上
○:連続打点数600〜800
△:連続打点数300〜500
×:連続打点数0〜300
【0037】
加工性は、コーティングされた鋼板を、直径96mmの円板となるようにブランクを製作し、加圧力0.5トン、直径50mm、高さ30mmのコップ形状に加工した後、3M社の透明テープを利用してコップの側面部に接着した後、剥離し、金属粉末及び樹脂の剥離面積の比率を測定した。加工性評価基準は、次の通りである。
◎:Tape面積対比5以下剥離
○:Tape面積対比5〜10%剥離
△:Tape面積対比10〜20%剥離
×:Tape面積対比20%以上の剥離
【0038】
耐食性は、上記と同じ加工方法でコップ形状の試験片をそれぞれ製作した後、35℃、5%塩水を噴射させる塩水噴霧試験機器(SST、Salt Spray Tester)でコップ加工された試験片の側面に赤錆が発生する時間を測定した。耐食性評価基準は、次の通りである。
◎:480時間以上で赤錆発生
○:360〜480時間範囲内で赤錆発生
△:240〜360時間範囲内で赤錆発生
×:240時間未満で赤錆発生
【0039】
【表1】

【実施例2】
【0040】
実施例1と同じ樹脂組成物に、表2に記載したように、Al粉末を平均直径、形状、含量を変化させながら配合した。含量は、乾燥した塗膜で占める体積比(体積%)で示した。混合方法は、インペラーを利用した高速撹拌方法とビーズミルを利用した機械的粉砕及び混合方法を取った。
【0041】
【表2】

【実施例3】
【0042】
主樹脂として、数平均分子量5000〜30000を有するポリエステル樹脂、硬化剤としてはポリイソシアネート及びメラミン樹脂を使用して、シリカフィラー、シランカップリング剤としてエポキシシランと主な樹脂をプロピレングリコールメチルエーテル有機溶媒で希釈した後、表3及び表4に記載したように、Ni粉末の平均直径、形状、含量を変化させながら配合した。含量は、乾燥した塗膜で占める体積比(体積%)で示した。混合方法は、インペラーを利用した高速撹拌方法とビーズミルを利用した機械的粉砕及び混合方法を取った。
【0043】
【表3】

【0044】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主樹脂と、
硬化剤と、
Ni、Co、Mn、Fe、Ti、Cu、Al、Zn、Sn及びFePよりなる群から選択される1種以上の単一金属粉末またはこれらの合金粉末と、を含み、
前記単一金属粉末または合金粉末の短軸の平均直径Φが、t/3≦Φ≦3t(ここで、tは、塗膜コーティング用樹脂金属組成物をコーティングして乾燥した塗膜の厚さを意味する)であることを特徴とするプレコート鋼板コーティング用樹脂金属組成物。
【請求項2】
前記Φが、t/2≦Φ≦2tであることを特徴とする請求項1に記載のプレコート鋼板コーティング用樹脂金属組成物。
【請求項3】
樹脂金属組成物中の前記単一金属粉末または合金粉末の短軸:長軸の長さ比が、1:1〜10であることを特徴とする請求項1に記載のプレコート鋼板コーティング用樹脂金属組成物。
【請求項4】
前記単一金属粉末または合金粉末の平均直径が、0.1〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載のプレコート鋼板コーティング用樹脂金属組成物。
【請求項5】
前記単一金属粉末またはこれらの合金粉末が、乾燥した塗膜全体体積の2〜30v/v%で含まれることを特徴とする請求項1に記載のプレコート鋼板コーティング用樹脂金属組成物。
【請求項6】
前記金属粉末または合金粉末をシランカップリング剤で前処理した後、非金属含有樹脂組成物に混合するか、または主な樹脂100重量部を基準にして0.1〜10重量部のシランカップリング剤を含有する非金属含有樹脂組成物に前記1種以上の金属粉末または合金粉末を分散させることを特徴とする請求項1に記載のプレコート鋼板コーティング用樹脂金属組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂金属組成物が塗布されたプレコート鋼板。
【請求項8】
前記プレコート鋼板が、付着量10〜2,000mg/mとなるように、クロメート処理、クロムフリー被膜処理、SiO層処理及びリン酸塩処理法よりなる群から選択されるいずれか1つの方法で前処理されたことを特徴とする請求項7に記載のプレコート鋼板。
【請求項9】
前記プレコート鋼板コーティング用樹脂金属組成物を塗布した後に乾燥させた塗膜の厚さが前処理層の厚さを含んで1〜20μmであることを特徴とする請求項7に記載のプレコート鋼板。

【公表番号】特表2013−515854(P2013−515854A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545839(P2012−545839)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008713
【国際公開番号】WO2011/078497
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(502258417)ポスコ (73)
【Fターム(参考)】