説明

充電ケーブルのロック装置

【課題】充電用ケーブルを、使用中に給電設備に締結して取り外し不可能にロックする装置を提供する。
【解決手段】ロック装置1は、ハウジング2にレバー軸32で枢支され拘束位置と解放位置間を回転可能なロックレバー3と、ハウジング2に固定されロックレバー3を拘束位置に錠止する符号錠4と、ハウジング2に支持されロックレバー3と符号錠4の操作を制御するトリガ機構とを具備する。符号錠4の操作軸42は、施錠位置でレバー軸32を拘束位置に錠止し、解錠位置でこれを解放する。トリガ機構は、受け入れ凹部21a内のケーブルCの存否により、可働位置と不働位置との間を移動自在で、常時は不働位置に付勢され、不働位置で解放位置にあるレバー軸32及び解錠位置にある操作軸42を拘束して、両軸32,42の回転操作を不能とする。また、可働位置において両軸32,42を解放してそれらの回転操作を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給電設備から電気自動車のバッテリへ充電する際等に用いられる充電用ケーブルが、充電中に第三者に持ち去られることがないように充電ケーブルと給電設備へ錠止するロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給電設備から電気自動車のバッテリへ充電する際等に用いられる充電用ケーブルは、自動車とは別体に構成される専用のもので、一端に、給電設備へ接続される受電コネクタ、他端に、バッテリへ接続される給電コネクタを有し(例えば特許文献1参照)、比較的高価なものである。一般に受電コネクタと給電コネクタは、ケーブルの直径より大きく構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−161884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気自動車の充電は、各電気自動車がそれぞれ車載する充電用ケーブルを用いて、不特定人が使用する給電設備に接続して行うことが想定される。電気自動車の充電は、ガソリン車の給油にように手短に行えないから、充電中、運転者が自動車から離れることが想定され、さらにこの間に充電用ケーブルが盗難にあう危険がある。
したがって、この出願に係る発明は、充電用ケーブルを、使用中に給電設備に締結して取り外し不可能にロックする装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、この出願に係る発明のロック装置1は、給電設備に固着され、外側面にケーブルCを受け入れる受け入れ凹部21aを有するハウジング2と、ハウジング2に枢支されケーブルCを受け入れ凹部21a内に拘束するロックレバー3と、ハウジング2に固定されロックレバー3を拘束位置に錠止する符号錠4と、ハウジング2に固定されロックレバー3と符号錠4の操作を制御するトリガ機構とを具備する。ロックレバー3は、ハウジング2の受け入れ凹部21aにケーブルCを受け入れた状態で、当該受け入れ凹部21a上に張り出してケーブルCの抜き出しを不可能とする拘束位置と、受け入れ凹部21aの前方から退避した解放位置との間を正逆回転するように、レバー軸32によりハウジング2に枢支される。符号錠4は、解錠符号が整列した時に、施錠位置と解錠位置の間で正逆回転操作可能な操作軸42を備える。操作軸42は、施錠位置において、ロックレバー3のレバー軸32を拘束位置に錠止し、解錠位置においてレバー軸32を解放する。トリガ機構は、ハウジング2の受け入れ凹部21aへのケーブルCの受け入れ、取り外しの動作に連動して可働位置と不働位置との間で移動自在にハウジング2に支持され、常時は不働位置に付勢される。不働位置において解放位置にあるレバー軸32と、解錠位置にある符号錠4の操作軸42を拘束して、当該レバー軸32及び操作軸42の回転操作を不能とする。また、可働位置においてレバー軸32及び操作軸42を解放してそれらの回転操作を許容する。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明の装置によれば、充電用ケーブルCを、使用中に給電設備に締結して取り外し不可能にロックし、充電用ケーブルCの盗難を防止することができる。ハウジング2の受け入れ凹部21aへケーブルCが受け入れられていない状態、すなわち給電設備が使用されていない状態においては、トリガ機構により、ロックレバー3と符号錠4の操作軸42が拘束され、これらを回転操作することができないから、不使用時に、いたずらにロック状態で施錠されるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る充電ケーブルのロック装置の非ロック状態の正面図である。
【図2】図1のロック装置のロック状態の正面図である。
【図3】図1のロック装置の非ロック状態における内部機構の主要部を示す平面図である。
【図4】図1のロック装置の非ロック状態における内部機構の主要部を示す正面図である。
【図5】図1のロック装置のロック状態における内部機構の主要部を示す平面図である。
【図6】図1のロック装置のロック状態における内部機構の主要部を示す正面図である。
【図7】図1のロック装置の内部機構の一部の側面図である。
【図8】図1のロック装置の内部機構の一部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
充電用ケーブルCは、ケーブルC1の一端に、このケーブルより大径の受電コネクタC2、他端に、ケーブルより大径の給電コネクタC3をそれぞれ備える。
ロック装置1は、充電用ケーブルCの使用中に、これを給電設備に締結して取り外し不可能にロックする装置であり、図示しない給電設備に固着されるハウジング2に組み込まれる。
【0009】
ハウジング2は、本体21と蓋体22とからなる。本体21は外側面(前面側)に、ケーブルCを受け入れる受け入れ凹部21aを有する。
【0010】
ロックレバー3は、ハウジング2の受け入れ凹部21a内に受け入れられたケーブルCを拘束するためのもので、本体31とレバー軸32とを具備し、レバー軸32により、ハウジング2に枢支される。ロックレバー本体31は、解放位置(図1,3,4)と拘束位置(図2,5,6)との間をハウジング2の前面に沿って90度正逆回転自在で、拘束位置においてハウジングの受け入れ凹部21aにケーブルCを受け入れた状態で、当該受け入れ凹部21aの前方に、これを横断するように張り出し、ケーブルCの抜き出しを不可能にする。ロックレバー3は、解放位置において、後記する符号錠4の符号ダイアル41の前方に延び、これを操作不可能に隠蔽するように配置される。ロックレバー3のレバー軸32は、外周にそれぞれ90度離れて係合凹部32a、32b、32c、32dを有する。
【0011】
ロックレバー3を拘束位置に錠止するための符号錠4がハウジング2に固定される。符号錠4は、符号ダイアル41と、操作軸42とを具備する。操作軸42は、前後方向にハウジング2内へ延出し、符号ダイアル41が解錠符号列に整列したときに、操作摘み42aを操作することにより、解錠位置(図1,3,4)と施錠位置(図2,5,6)の間で90度正逆回転操作可能である。図2、図6に示すように、操作軸42が施錠位置にあるとき、カムプレート8、デッドボルト5を介してロックレバー3のレバー軸32を拘束位置に錠止する。なお、符号錠4としては、施錠操作毎に解錠符号列を設定して記憶させ、解錠操作毎に解錠符号列の記憶を解除する記憶方式のものと、解錠操作があっても解錠符号列の記憶を解除せずに予め決められた解錠符号列の記憶を保持する記憶方式のもののいずれをも適用可能である。
【0012】
デッドボルト5は、符号錠4の操作軸42とレバー軸32との間に延びる本体51と、これに取り付けられたローラ52とを具備する。デッドボルト本体51は、ハウジング2内に固着された支持フレーム6上に軸方向移動自在に支持される。これにより、デッドボルト5は、下位のロック位置と、上位の非ロック位置の間で進退自在であり、またばね7により常時は非ロック位置に付勢される。図6に示すロック位置において、デッドボルト5の下端部は、レバー軸32の係合凹部32cに係合し、ロックレバー3を拘束位置に錠止する。
【0013】
操作軸42には、カムプレート8が固着される。カムプレート8は、外周にカム面81と係合部82とを具備する。カム面81は、デッドボルト5のローラ52に接しており、操作軸42が図4に示す解錠位置から図6に示す施錠位置に回転(図4において反時計方向)操作されるとき、デッドボルト5をロック位置に押し下げる。
【0014】
ハウジング2の受け入れ凹部21aへのケーブルCが受け入れられていないとき、すなわち、充電ケーブルCの不使用時に、ロック装置1がロック状態で施錠されることがないように、受け入れ凹部21aにケーブルCが受け入れられたときだけロック装置1を稼働させるトリガ機構が設けられる。トリガ機構は、ハウジング2の受け入れ凹部21aへのケーブルCの受け入れ、取り外し動作に連動して可働位置と不働位置との間で移動自在で、常時は図4に示す不働位置に付勢され、不働位置において解放位置にあるレバー軸32及び解錠位置にある符号錠4の操作軸42を拘束して当該レバー軸32及び操作軸42の回転操作を不能とし、図6に示す可働位置においてレバー軸32及び操作軸42を解放してそれらの回転操作を許容するようにハウジング2内に固定される。
【0015】
図示の実施形態において、トリガ機構は、ハウジング2内において支持フレーム6に回転自在に支持されるトリガ軸9と、このトリガ軸9に固着される第1及び第2のトリガ10,11と、これらトリガ10,11の突出部101、111を常時受け入れハウジング2の凹部21a内へ突出させるようにトリガ軸9を回転付勢するばね12とを具備する。トリガ10,11は、それぞれ突出部101、111と係合部102,112とを具備する。突出部101、111は、ハウジング2の凹部21a内に形成された開口21bから常時外方へ突出し(図3,4)、ケーブルCが受け入れられたとき、これに押し込まれて可働位置(図5,6)へ回転する。
【0016】
図3,4に示すように、第1のトリガ10の係合部102は、当該トリガ10が不働位置にあって、操作軸42が解錠位置にあるとき、カムプレート8の係合部82に係合して、操作軸42の施錠方向への回転を阻止する。
同じく、第2のトリガ11の係合部112は、当該トリガ11が不働位置にあって、ロックレバー3が解放位置にあるとき(図3,4)、当該ロックレバー3のレバー軸32の係合凹部32aに係合して、ロックレバー3の拘束方向への回転を阻止するように設けられる。
【0017】
電気自動車に充電を行う場合には、給電設備の近くに自動車を止めて、車載の充電用ケーブルCを取り出し、これで給電設備と自動車のバッテリとの間を接続すると共に、ケーブルCの延長途上をロック装置1の受け入れ凹部21aに嵌合させる。図2に示すように、ロックレバー3を、ケーブルCの前方を横断する拘束位置へ90度回転させたうえ、符号錠4の操作軸42を施錠位置へ90度回転させることにより、図5,6に示すように、デッドボルト5でロックレバー3を拘束し、符号ダイアル41を施錠位置に配置して操作軸42を錠止する。これで、符号錠4を解錠しない限り、充電ケーブルCを給電設備から取り外すことができなくなる。充電が完了するまでの間、給電設備から離れても、充電ケーブルCを持ち去られるおそれはない。
【0018】
この間のロック装置1の動作を詳しく説明する。いま、ロック装置1は、図1,3,4に示すように、ケーブルCを受け入れておらず、ロックレバー3は上向きの解放位置、符号錠4の操作軸42は解錠位置にある。このとき、トリガ10,11は、突出部101,111を凹部21aへ突出させた不働位置にあり、係合部102がカムプレート8の係合部82に当接し、係合部112がレバー軸32の係合凹部32aに係合している。このため、操作軸42は施錠位置へ回すことができず、またロックレバー3は拘束位置へ回すことができず、さらに符号ダイアル41はロックレバー3に隠れて、操作不能である。
【0019】
この状態で、図2,5,6に示すように、受け入れ凹部21aにケーブルCが嵌合されると、トリガ10,11の突出部101,111がハウジング2内へ押し込まれてトリガ軸9と共に可働位置へ回転する。係合部102がカムプレート8の係合部82からはずれ、係合部112がレバー軸32の係合凹部32aから抜ける。ロックレバー3を90度拘束位置へ回転させてケーブルCを拘束し、符号錠4の操作軸42を施錠位置へ回転させる。カムプレート8が操作軸42と共に回転し、それのカム面81がデッドボルト5を押し下げる。デッドボルト5の下端部がレバー軸32の係合凹部32cに係合する。この状態で、符号ダイアル41を施錠位置に配置して施錠する。
【0020】
充電が完了したら、符号ダイアル41を解錠符号列に合わせ、操作軸42をカムプレート8と共に、解錠位置に回転(図6において時計方向)させると、デッドボルト5がばね7の力で上昇して、レバー軸32の係合凹部32cから抜け、ロックレバー3が解放される。ロックレバー3を図1に示す解放位置へ回転させれば、ケーブルCを取り外すことができる。ケーブルCを取り外すと、ばね12の力でトリガ軸9と共にトリガ10,11が不働位置へ復帰して図1,3,4に示す状態に戻る。なお、レバー軸32の係合凹部32a、32bには回転角度毎に、ばね13が落ち込んでクリック感を生じる。
【符号の説明】
【0021】
1 ロック装置
2 ハウジング
21 ハウジング本体
21a 受け入れ凹部
22 蓋体
3 ロックレバー
31 ロックレバー本体
32 レバー軸
32a 係合凹部
32b 係合凹部
32c 係合凹部
4 符号錠
41 符号ダイアル
42 操作軸
42a 摘み
5 デッドボルト
51 デッドボルト本体
52 ローラ
6 支持フレーム
7 ばね
8 カムプレート
81 カム面
82 係合部
9 トリガ軸
10 第1のトリガ
101 突出部
102 係合部
11 第2のトリガ
111 突出部
112 係合部
12 ばね
13 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの一端に、このケーブルより大径の受電コネクタ、他端に、ケーブルより大径の給電コネクタをそれぞれ備えた充電用ケーブルを、使用中に給電設備に締結して取り外し不可能にロックする装置であって、
給電設備に固着され、外側面にケーブルを受け入れる受け入れ凹部を有するハウジングと、
このハウジングの受け入れ凹部にケーブルを受け入れた状態で当該受け入れ凹部上に張り出してケーブルの抜き出しを不可能とする拘束位置と、受け入れ凹部上から退避した解放位置との間を正逆回転するように、レバー軸によりハウジングに枢支されるロックレバーと、
解錠符号の整列時に施錠位置と解錠位置の間で正逆回転操作可能な操作軸を備え、操作軸の施錠位置においてデッドボルトを介して前記ロックレバーのレバー軸を拘束位置に錠止し、操作軸の解錠位置においてレバー軸を解放するように、前記ハウジングに固定される符号錠と、
前記ハウジングの受け入れ凹部へのケーブルの受け入れ、取り外し動作に連動して可働位置と不働位置との間で移動自在で、常時は不働位置に付勢され、不働位置において解放位置にある前記レバー軸及び解錠位置にある符号錠の操作軸を拘束して当該レバー軸及び操作軸の回転操作を不能とし、可働位置においてレバー軸及び操作軸を解放してそれらの回転操作を許容するように前記ハウジングに支持されるトリガ機構とを具備することを特徴とする充電ケーブルのロック装置。
【請求項2】
前記トリガ機構は、前記ハウジング内に回転自在に支持されるトリガ軸と、このトリガ軸に固着されそれぞれ突出部と係合部とを具備し前記ハウジングの受け入れ凹部内へ突出部を出没自在に設けられる第1及び第2のトリガと、これらトリガの突出部を常時受け入れ凹部内へ突出させるようにトリガ軸を回転付勢するばねとを具備し、
前記符号錠の操作軸には、外周にカム面と係合部とを具備するカムプレートが固着され、
前記ロックレバーのレバー軸は、外周に前記デッドボルト又は前記第2のトリガの係合部が係合する係合凹部を具備し、
前記デッドボルトは、前記カムプレートと前記レバー軸との間に配置され、カムプレートのカム面に押されてロック位置と非ロック位置との間で軸方向に進退自在で常時非ロック位置側へ付勢されて前記ハウジング内に支持され、ロック位置においてレバー軸の係合凹部に係合し、非ロック位置において当該係合凹部から離脱する一端を具備し、
前記第1のトリガの係合部は、当該トリガが不働位置にあって、前記操作軸が解錠位置にあるときに、前記カムプレートの係合部に係合して、操作軸の施錠方向への回転を阻止するように設けられ、
前記第2のトリガの係合部は、当該トリガが不働位置にあって、前記ロックレバーが解放位置にあるときに、当該ロックレバーのレバー軸の係合凹部に係合して、ロックレバーの拘束方向への回転を阻止するように設けられることを特徴とする請求項1に記載の充電ケーブルのロック装置。
【請求項3】
前記ロックレバーは、解放位置において、前記符号錠の符号ダイアルの正面上方に延び、これを操作不可能に隠蔽するように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の充電ケーブルのロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−250619(P2011−250619A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122470(P2010−122470)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)
【Fターム(参考)】