説明

充電システム、充電装置、及び電池パック

【課題】ユーザのニーズに応じて、二次電池の電池容量を増大させたり、二次電池の劣化を低減して寿命を確保したりすることができる充電システム、充電装置、及び電池パックを提供する。
【解決手段】多孔性保護膜325を備えた二次電池141と、基準電圧以下の電圧に設定された設定電圧V1を充電電圧電流供給回路33によって二次電池141へ供給させる通常充電モードと、基準電圧を超える電圧に設定された設定電圧V2を充電電圧電流供給回路33によって二次電池141へ供給させる高電圧充電モードとを有する充放電制御部211と、通常充電モードと高電圧充電モードとのうち、いずれか一方の設定を選択的に受け付ける設定スイッチSW1とを備え、充放電制御部211は、設定スイッチSW1により設定が受け付けられたモードによって、二次電池141の充電を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を充電する充電システム、充電装置、及び二次電池を備えた電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来技術による充電電圧および電流の管理方法を説明するためのグラフである。図8はリチウムイオン電池を定電流定電圧(CCCV)充電する場合のグラフであり、二次電池の端子電圧α1と、二次電池へ供給される充電電流α2と、SOC(State Of Charge)α3の変化を示している。
【0003】
まず、CCCV充電の場合には、充電開始から定電流(CC)充電領域となり、予め定める定電流I1、たとえば公称容量値NCを定電流放電して、1時間で放電できるレベルを1Cとして、その70%に、並列セル数PNを乗算した充電電流が供給され、定電流(CC)充電が行われる。
【0004】
これによって、電池パックの充電端子の端子電圧がセル当り4.2Vの予め定める終止電圧Vf(=直列セル数SN×4.2V、したがって、たとえば3セル直列の場合は、12.6V)となると、定電圧(CV)充電領域に切換わり、その終止電圧Vfを超えないように充電電流値が減少されてゆき、前記充電電流値が温度によって設定される電流値I2まで低下すると満充電と判定して充電電流の供給が停止される。すなわち、充電電流値が電流値I2まで低下したときの充電深度α3が、100%を示している。電流値I2は、満充電を検出するための判定値で、充電容量を満充電にするためには、理想的には0Aが望ましいが、定電圧充電では、二次電池が満充電に近づくほど充電電流が減少して充電が遅くなるので、電流値I2を0Aに設定したのでは、わずかな充電容量を増大させるために長時間必要となる。そのため、電流値I2は、充電容量と充電時間とのバランスにより適宜設定されており、例えば(0.1A×並列セル数PN)程度の電流値が設定されている。この場合、0.1Aは、電池容量Cに対して、例えば1/20CAとして設定されている。
【0005】
図9は、リチウムイオン電池を充電した場合のリチウム基準に対する、正極電位Ppと負極電位Pmとの変化を示す説明図である。横軸はSOCを示し、縦軸は電位を示している。図9に示すように、リチウムイオン電池が充電されると、SOCが増大するに従って、正極電位Ppは増大し、負極電位Pmは減少する。この場合、リチウムイオン電池の端子電圧は、正極電位Ppと負極電位Pmとの差であり、Pp−Pmで与えられる。
【0006】
そして、SOCが増大するに従って負極電位Pmが減少し、負極電位Pmが0Vになったときの正極電位Ppと負極電位Pmとの差で示される。ここで負極電位Pmが、充電時の電流や温度バラツキなど、さらには製造時の重量バラツキなどを考慮してSOC100%のときに0Vよりも高い電位(約0.1V)となるように電池の容量を設計する。これは、どのようなバラツキが重なったとしても負極電位が0V以下にならないように余裕を持った設計を行うためである。
【0007】
すなわち、実質的に0Vとは、これらのバラツキ対策の設計を含むため、負極電位が約0.1Vになるまでを含む範囲を示す。
【0008】
リチウムイオン電池の端子電圧は、充電電流値、温度、正極及び負極の活物質の組成のバラツキの影響を受けるものの、正極活物質として、主にコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムを用いた場合に略4.2V、正極活物質として、主に、マンガン酸リチウムや、複数の金属元素からなる正極活物質の一部をマンガンに置換したマンガン系の正極活物質を用いた場合に略4.2V以上に充電終止電圧を設定する場合もある。
【0009】
また、負極電位Pmが、負電位になると、正極から負極へ移動したリチウムイオンが負極表面で金属リチウムとして析出する。そして、負極表面で析出した金属リチウムは、柱状の樹枝状晶、いわゆるリチウムデンドライトとなって正極に向かって成長し、例えばポリエチレン等の樹脂材料で構成されたセパレータを貫通して負極と正極との間を短絡する。その結果、リチウムデンドライトを流れる短絡電流によってセパレータが溶融し、短絡箇所が拡大して電池が破損してしまうおそれがあることが知られている。
【0010】
そのため、負極電位Pmが負電位にならないように、一セル当たりの端子電圧が、正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いた場合には4.2Vを超えないように、正極活物質としてマンガン系の正極活物質を用いた場合には、例えば4.3Vを超えないように、終止電圧Vfが設定されている。例えば、終止電圧Vfは、正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いた場合には4.2V×直列セル数SN、正極活物質としてマンガン酸リチウムを用いた場合には4.3V×直列セル数SNに設定されており、二次電池を充電する際に、充電電圧がこのように設定された終止電圧Vfを超えないように、されている。
【0011】
また、負極電位Pmが0Vになったら、これ以上充電すると金属リチウムが析出してしまうために充電することはできないので、負極電位Pmが0Vになるときの充電状態を満充電状態(SOC:100%)としている。
【特許文献1】特開平6−78471号公報
【特許文献2】特開平7−220759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
二次電池に対しては、二次電池の電池容量を増大したいというニーズと、二次電池の劣化を低減して電池の寿命を確保したいというニーズとがある。二次電池の電池容量を増大させるには、充電電圧を高めて二次電池を定電圧充電する方法が考えられる。しかしながら、上述のように、負極のリチウム基準における電位が実質的に0Vになる状態である満充電状態になったときの負極と正極との間の電圧(以下、基準電圧と称する)を超えて、充電電圧を増大すると、リチウムデンドライトが形成されて負極と正極との間が短絡され、その短絡電流によってセパレータが溶融し、短絡箇所が拡大して電池が破損してしまうおそれがある。そのため、基準電圧を超えて充電電圧を増大させることができないという不都合があった。
【0013】
ここで、上述したように、実質的に0Vとは、これらのバラツキ対策の設計を含むため、負極電位が約0.1Vになるまでを含む範囲を示す。
【0014】
ところで、負極と正極との間に耐熱性の多孔質絶縁膜を形成することによって、上述のようにリチウムデンドライトが形成されて短絡電流が流れ、発熱した場合であっても、短絡箇所が拡大しないようにした二次電池が知られている(例えば、特許文献2参照。)。このように、短絡電流が流れて発熱しても、短絡箇所が拡大しないようにした二次電池を用いて、基準電圧を超えて充電電圧を増大させることにより、電池の充電容量を増大させることが可能になると考えられる。
【0015】
しかしながら、このようなリチウムデンドライトによる短絡電流で生じた熱では短絡箇所が拡大しないようにした二次電池であっても、基準電圧を超える充電電圧が印加された場合には、部分的には、負極にリチウムが析出し、リチウムデンドライトが形成されて二次電池が劣化するおそれがある。そうすると、二次電池の劣化を低減して電池の寿命を確保したいというニーズに反する結果を招いてしまうという不都合があった。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みて為された発明であり、ユーザのニーズに応じて、二次電池の電池容量を増大させたり、二次電池の劣化を低減して寿命を確保したりすることができる充電システム、充電装置、及び電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る充電システムは、負極と正極との間に、耐熱性を有する耐熱部材を備えた二次電池と、前記二次電池を充電するための充電電圧を供給する充電電圧供給部と、前記負極のリチウム基準における電位が実質的に0Vになる状態である満充電状態になったときの前記負極と前記正極との間の電圧を基準電圧とし、前記基準電圧に基づき前記充電電圧供給部の動作を制御する充電制御部と、通常充電モードと高電圧充電モードとのうち、いずれか一方の設定を選択的に受け付けるモード設定受付部とを備え、前記充電制御部は、前記モード設定受付部により前記通常充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧以下の電圧に設定された第1設定電圧を前記充電電圧として前記充電電圧供給部によって前記二次電池へ供給させ、前記モード設定受付部により前記高電圧充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧を超える電圧に設定された第2設定電圧を前記充電電圧として前記充電電圧供給部によって前記二次電池へ供給させることによって、前記二次電池の充電を行う。ここで、実質的に0Vとは、上述したようなバラツキ対策の設計を含むため、負極電位が約0.1Vになるまでを含む範囲を示す。
【0018】
この構成によれば、ユーザが二次電池の電池容量を増大させたい場合には、モード設定受付部を用いて高電圧充電モードを設定することで、基準電圧を超える電圧に設定された第2設定電圧が充電電圧として二次電池へ供給されて充電されるので、基準電圧以下の電圧で二次電池を充電する場合よりも電池容量を増大させることができる。この場合、リチウムデンドライトが形成されて負極と正極との間が短絡されるおそれがあるが、負極と正極との間に耐熱性を有する耐熱部材が設けられているので、リチウムデンドライトによって負極と正極との間に短絡電流が流れても、耐熱部材により短絡箇所の拡大が抑制される結果、二次電池を破損させることなく基準電圧を超えて充電電圧を増大させて、電池容量を増大させることができる。一方、ユーザが二次電池の劣化を低減して寿命を確保したい場合には、モード設定受付部を用いて通常モードを設定することで、基準電圧以下に設定された第1設定電圧が充電電圧として二次電池へ供給されて充電されるので、負極にリチウムが析出するおそれが低減される結果、二次電池の劣化が低減されて寿命が確保される。このように、ユーザのニーズに応じて、二次電池の電池容量を増大させたり、二次電池の劣化を低減して寿命を確保したりすることができる。
【0019】
また、前記耐熱部材は、樹脂結着剤と無機酸化物フィラーとを含む多孔性保護膜であることが好ましい。この構成によれば、多孔性保護膜は耐熱性を有するので、負極と正極との間に前記設定電圧が印加されてリチウムデンドライトにより負極と正極とが短絡されて、発熱した場合であっても、多孔性保護膜は溶融、変形することがないので、短絡部が拡大して二次電池が破損するおそれが低減される。
【0020】
また、前記耐熱部材は、セパレータであってもよい。この構成によれば、セパレータは耐熱性を有するので、負極と正極との間に前記設定電圧が印加されてリチウムデンドライトにより負極と正極とが短絡されて、発熱した場合であっても、セパレータの溶融、変形により短絡部が拡大して二次電池が破損するおそれが低減される。
【0021】
また、前記正極の活物質として、LiNiCo(MはAl、Mn、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、およびMoからなる群から選択される少なくとも一種の金属であり、且つ0<a<1.3、0.02≦b≦0.5、0.02≦d/c+d≦0.9、1.8<e<2.2の範囲であって、更にb+c+d=1であり、0.34<cである)を用いることが好ましい。
【0022】
正極の活物質として、LiNiCo(MはAl、Mn、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、およびMoからなる群から選択される少なくとも一種の金属であり、且つ0<a<1.3、0.02≦b≦0.5、0.02≦d/c+d≦0.9、1.8<e<2.2の範囲であって、更にb+c+d=1であり、0.34<cである)を用いた場合、充電による活物質の体積膨張が低減されるので、高電圧充電モードにおいて基準電圧を超えて充電電圧を増大させることで、満充電状態でさらに充電を行った場合であっても、電極を収容している容器内で正極活物質が膨張して電極が座屈を生じるおそれが低減される。
【0023】
また、前記二次電池を充電するための充電電流を供給する充電電流供給部と、前記充電電流供給部から、予め設定された一定の電流を前記二次電池に供給させることにより、定電流充電を実行する定電流充電制御部と、前記二次電池の端子電圧を検出する電圧検出部とをさらに備え、前記モード設定受付部によって前記通常充電モードの設定が受け付けられ、かつ前記定電流充電の実行期間中に、前記電圧検出部により検出された端子電圧が前記第1設定電圧に達した場合、前記定電流充電制御部は、前記定電流充電を停止すると共に、前記充電制御部は、前記定電圧充電を実行し、前記モード設定受付部によって前記高電圧充電モードの設定が受け付けられ、かつ前記定電流充電の実行期間中に、前記電圧検出部により検出された端子電圧が前記第2設定電圧に達した場合、前記定電流充電制御部は、前記定電流充電を停止すると共に、前記充電制御部は、前記定電圧充電を実行することが好ましい。
【0024】
この構成によれば、通常充電モードでは、二次電池の端子電圧が第1設定電圧に達するまで二次電池が定電流充電された後、当該第1設定電圧による定電圧充電が実行され、高電圧充電モードでは、二次電池の端子電圧が第2設定電圧に達するまで二次電池が定電流充電された後、当該第2設定電圧による定電圧充電が実行される。この場合、高電圧充電モードでは、二次電池の端子電圧が第1設定電圧より高い第2設定電圧に達するまで二次電池が定電流充電された後、当該設定電圧による定電圧充電が実行される。そうすると、二次電池の端子電圧が第1設定電圧に達したときに定電流充電を定電圧充電に切り替える場合よりも、定電流充電を行う期間を延長することができる。定電流充電から定電圧充電に切り替えると、二次電池に流れる充電電流は徐々に減少するが、上述のように、高電圧充電モードにおいて定電流充電を行う期間を延長することにより、充電電流が減少されずに維持される期間が延長される結果、二次電池の端子電圧が第1設定電圧に達したときに定電圧充電に切り替える場合よりも、充電時間が短縮される。
【0025】
また、前記モード設定受付部は、前記充電制御部もしくは前記二次電池から電力供給を受ける負荷機器により提供される、機構的もしくは電子的な情報を読み取ることにより、前記通常充電モードと前記高電圧充電モードとのうち、いずれか一方の設定を選択的に受け付けることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、ユーザの使用目的とは別に、二次電池に接続される充電電圧供給部や、二次電池から電力供給を受ける負荷機器の特性に応じて、充電制御を行うことができる。すなわち、例えば電力消費が大きく、大容量の電池を必要とする負荷機器の場合には、自動的に高電圧充電モードを選択する、といったことが可能となる。
【0027】
また、本発明に係る充電装置は、負極と正極との間に、耐熱性を有する耐熱部材を備えた二次電池に接続するための接続端子と、前記接続端子に前記二次電池を充電するための充電電圧を供給する充電電圧供給部と、前記負極のリチウム基準における電位が実質的に0Vになる状態である満充電状態になったときの前記負極と前記正極との間の電圧を基準電圧とし、前記基準電圧に基づき前記充電電圧供給部の動作を制御する充電制御部と、前記通常充電モードと前記高電圧充電モードとのうち、いずれか一方の設定を選択的に受け付けるモード設定受付部とを備え、前記充電制御部は、前記モード設定受付部により前記通常充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧以下の電圧である第1設定電圧を前記充電電圧として前記充電電圧供給部によって前記接続端子へ供給させ、前記モード設定受付部により前記高電圧充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧を超える電圧である第2設定電圧を前記充電電圧として前記充電電圧供給部によって前記接続端子へ供給させる。
【0028】
この構成によれば、接続端子に耐熱性を有する耐熱部材を備えた二次電池が接続されると、ユーザが二次電池の電池容量を増大させたい場合には、モード設定受付部を用いて高電圧充電モードを設定することで、基準電圧を超える電圧に設定された第2設定電圧が充電電圧として接続端子を介して二次電池へ供給されて充電されるので、基準電圧以下の電圧で二次電池を充電する場合よりも電池容量を増大させることができる。この場合、リチウムデンドライトが形成されて負極と正極との間が短絡されるおそれがあるが、負極と正極との間に耐熱性を有する耐熱部材が設けられているので、リチウムデンドライトによって負極と正極との間に短絡電流が流れても、耐熱部材により短絡箇所の拡大が抑制される結果、二次電池を破損させることなく基準電圧を超えて充電電圧を増大させて、電池容量を増大させることができる。一方、ユーザが二次電池の劣化を低減して寿命を確保したい場合には、モード設定受付部を用いて通常モードを設定することで、基準電圧以下に設定された第1設定電圧が充電電圧として接続端子を介して二次電池へ供給されて充電されるので、負極にリチウムが析出するおそれが低減される結果、二次電池の劣化が低減されて寿命が確保される。このように、ユーザのニーズに応じて、二次電池の電池容量を増大させたり、二次電池の劣化を低減して寿命を確保したりすることができる。
【0029】
また、本発明に係る電池パックは、外部からの指示に応じて二次電池を充電するための充電電圧を供給する充電装置と接続される電池パックであって、負極と正極との間に、耐熱性を有する耐熱部材を備えた二次電池と、前記負極のリチウム基準における電位が実質的に0Vになる状態である満充電状態になったときの前記負極と前記正極との間の電圧を基準電圧とし、前記基準電圧に基づき前記充電装置へ前記指示を出力する充電制御部と、前記通常充電モードと前記高電圧充電モードとのうち、いずれか一方の設定を選択的に受け付けるモード設定受付部とを備え、前記充電制御部は、前記モード設定受付部により前記通常充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧以下の電圧である第1設定電圧を前記充電電圧として設定する旨の指示を前記充電装置へ出力することにより、前記充電装置によって前記第1設定電圧を前記二次電池へ供給させ、前記モード設定受付部により前記高電圧充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧を超える電圧である第2設定電圧を前記充電電圧として設定する旨の指示を前記充電装置へ出力することにより、前記充電装置によって前記第2設定電圧を前記二次電池へ供給させることによって、前記二次電池の充電を行う。
【0030】
この構成によれば、ユーザが二次電池の電池容量を増大させたい場合には、モード設定受付部を用いて高電圧充電モードを設定することで、基準電圧を超える電圧に設定された第2設定電圧が充電装置から充電電圧として二次電池へ供給されて充電されるので、基準電圧以下の電圧で二次電池を充電する場合よりも電池容量を増大させることができる。この場合、リチウムデンドライトが形成されて負極と正極との間が短絡されるおそれがあるが、負極と正極との間に耐熱性を有する耐熱部材が設けられているので、リチウムデンドライトによって負極と正極との間に短絡電流が流れても、耐熱部材により短絡箇所の拡大が抑制される結果、二次電池を破損させることなく基準電圧を超えて充電電圧を増大させて、電池容量を増大させることができる。一方、ユーザが二次電池の劣化を低減して寿命を確保したい場合には、モード設定受付部を用いて通常モードを設定することで、基準電圧以下に設定された第1設定電圧が充電装置から充電電圧として二次電池へ供給されて充電されるので、負極にリチウムが析出するおそれが低減される結果、二次電池の劣化が低減されて寿命が確保される。このように、ユーザのニーズに応じて、二次電池の電池容量を増大させたり、二次電池の劣化を低減して寿命を確保したりすることができる。
【発明の効果】
【0031】
このような構成の充電システム、充電装置、及び電池パックによれば、ユーザが二次電池の電池容量を増大させたい場合には、モード設定受付部を用いて高電圧充電モードを設定することで、基準電圧を超える電圧に設定された第2設定電圧が充電電圧として二次電池へ供給されて充電されるので、基準電圧以下の電圧で二次電池を充電する場合よりも電池容量を増大させることができる。この場合、リチウムデンドライトが形成されて負極と正極との間が短絡されるおそれがあるが、負極と正極との間に耐熱性を有する耐熱部材が設けられているので、リチウムデンドライトによって負極と正極との間に短絡電流が流れても、耐熱部材により短絡箇所の拡大が抑制される結果、二次電池を破損させることなく基準電圧を超えて充電電圧を増大させて、電池容量を増大させることができる。一方、ユーザが二次電池の劣化を低減して寿命を確保したい場合には、モード設定受付部を用いて通常モードを設定することで、基準電圧以下に設定された第1設定電圧が充電電圧として二次電池へ供給されて充電されるので、負極にリチウムが析出するおそれが低減される結果、二次電池の劣化が低減されて寿命が確保される。このように、ユーザのニーズに応じて、二次電池の電池容量を増大させたり、二次電池の劣化を低減して寿命を確保したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明の一実施形態に係る充電システムの構成の一例を示すブロック図である。この充電システム1は、電池パック2に、それを充電する充電器3を備えて構成されるが、電池パック2から給電が行われる図示しない負荷機器をさらに含めて電子機器システムが構成されてもよい。また、充電器3は負荷機器の一部として構成されていてもよい。その場合、電池パック2は、図1では充電器3から充電が行われるけれども、該電池パック2が前記負荷機器に装着されて、負荷機器を通して充電が行われてもよい。電池パック2および充電器3は、給電を行う直流ハイ側の端子T11,T21と、通信信号の端子T12,T22と、給電および通信信号のためのGND端子T13,T23とによって相互に接続される。前記負荷機器が設けられる場合も、同様の端子が設けられる。
【0033】
ここで、負荷機器とは、例えば、電池パック2からの電力供給に基づき動作することで、アプリケーションを実現するアプリケーション機器である。アプリケーション機器の一例としては、例えば携帯型パーソナルコンピュータやデジタルカメラ、携帯電話機等の電子機器、電気自動車やハイブリッドカー等の車両、等を挙げることができる。
【0034】
電池パック2内で、端子T11から延びる直流ハイ側の充電経路11には、FET(Field Effect Transistor)12が介在されており、その充電経路11が組電池14のハイ側端子に接続される。組電池14のロー側端子は、直流ロー側の充電経路15を介してGND端子T13に接続され、この充電経路15には、充電電流および放電電流を電圧値に変換する電流検出抵抗16(電流検出部)が介在されている。
【0035】
組電池14は、複数の二次電池(セル)が直並列に接続されて成り、例えば3個の二次電池141が直列に接続されて構成されている。二次電池141の温度は温度センサ17によって検出され、制御IC18内のアナログ/デジタル変換器19に入力される。また、各二次電池141の端子間電圧は電圧検出回路20(電圧検出部)によって読取られ、制御IC18内のアナログ/デジタル変換器19に入力される。さらにまた、電流検出抵抗16によって検出された電流値も、制御IC18内のアナログ/デジタル変換器19に入力される。アナログ/デジタル変換器19は、各入力値をデジタル値に変換して、制御部21へ出力する。なお、組電池14の代わりに二次電池141が単体で使用されてもよい。
【0036】
制御部21は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)と、所定の制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、これらの周辺回路等とを備えて構成され、ROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、充放電制御部211(充電制御部)、及び定電流充電制御部212として機能する。
【0037】
また、制御部21には、組電池14の電池容量を増大させる高電圧充電モードの設定と、高電圧充電モードよりも組電池14の劣化を低減して電池の寿命を確保する通常モードの設定とのうち、いずれか一方の設定を選択的に受け付ける設定スイッチSW1(モード設定受付部)が接続されている。設定スイッチSW1は、例えばオフで通常モードの設定を、オンで高電圧充電モードの設定を示すようになっている。
【0038】
設定スイッチSW1としては、例えばディップスイッチやロータリスイッチ、ジャンパピン等のユーザが操作可能な種々の設定スイッチが用いられる。この場合、設定スイッチSW1は、請求項におけるモード設定受付部に相当している。
【0039】
なお、モード設定受付部は、必ずしも操作スイッチに限られず、例えば電池パック2や充電器3に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部機器(負荷機器)から、高電圧充電モードの設定と、通常モードの設定とのうちいずれを設定するかの指示を受信する通信回路等であってもよい。例えば、充電器3と通信を行う通信インターフェイス回路である通信部22をモード設定受付部として用いてもよい。
【0040】
この場合、例えば、充電器3において、後述する充電制御部31が、充電制御部31における通信インターフェイス回路である通信部32によって、高電圧充電モードと通常モードとのうちいずれを設定するかを示す指示を通信部22へ送信させることで、通信部22において当該指示が受け付けられる。また、前記指示は、電気的な信号(電子的な情報)によって送受信されればよく、通信信号によって送受信される例に限られない。
【0041】
また、前記指示は、電気的な信号によって、送受信される例に限らず、例えば機構的な構造によって、高電圧充電モードと通常モードとのうちいずれを設定するかを示す指示を伝達するようにしてもよい。例えば、充電器3の筐体に、電池パック2が取り付けられる壁面から突出した突起部を設けるか否かによって、高電圧充電モードと通常モードとのうちいずれを設定するかを示してもよい。そして、電池パック2は、例えば充電器3に取り付けられた場合に前記突起部により押されてオンするスイッチをモード設定受付部として備え、当該スイッチのオン、オフに応じて、通常充電モードと高電圧充電モードとのうち、いずれか一方の設定を選択的に受け付けるようにしてもよい。
【0042】
また、負荷機器(アプリケーション機器)が、高電圧充電モードと通常モードとのうちいずれを設定するかを示す指示を、充電器3(通信部32)を介して、あるいは直接、電気的な信号や機構的な構造等の手段によって、電池パック2におけるモード設定受付部に伝達する構成としてもよい。
【0043】
このような構成によれば、ユーザの使用目的とは別に、電池パック2が装着される充電器3や負荷機器の特性に応じて、充電制御を選択することができる。すなわち、例えば電力消費が大きく、大容量の電池を必要とする負荷機器の場合には、当該負荷機器に電池パック2を装着することにより、自動的に高電圧充電モードを選択する、といったことが可能となる。
【0044】
充放電制御部211は、アナログ/デジタル変換器19からの各入力値に応答して、充電器3に対して、出力を指示する充電電流の電圧値、電流値を演算し、通信部22から端子T12,T22;T13,T23を介して充電器3へ送信する。また、充放電制御部211は、アナログ/デジタル変換器19からの各入力値から、端子T11,T13間の短絡や充電器3からの異常電流などの電池パック2の外部における異常や、組電池14の異常な温度上昇などを検出し、FET12を遮断するなどの保護動作を行う。
【0045】
定電流充電制御部212は、FET12をオンすると共に、充電器3へ、予め設定された一定の電流Iccを供給させる旨の指示を出力することにより、定電流充電を実行する。
【0046】
そして、設定スイッチSW1によって通常充電モードの設定が受け付けられ、かつアナログ/デジタル変換器19で得られた組電池14の端子電圧Vbが、予め設定された電圧VF1以上になった場合、定電流充電制御部212は、定電流充電を停止すると共に、充放電制御部211は、充電器3へ、電圧VF1を供給させる旨の指示を出力することにより、定電圧充電を実行する。
【0047】
また、設定スイッチSW1によって高電圧充電モードの設定が受け付けられ、かつアナログ/デジタル変換器19で得られた組電池14の端子電圧Vbが、予め設定された電圧VF2以上になった場合、定電流充電制御部212は、定電流充電を停止すると共に、充放電制御部211は、充電器3へ、電圧VF2を供給させる旨の指示を出力することにより、定電圧充電を実行する。
【0048】
電圧VF1は、二次電池141の負極のリチウム基準における電位が実質的に0Vになる状態である満充電状態になったときの負極と正極との間の電圧を基準電圧とした場合に、基準電圧以下の電圧に設定された設定電圧V1(第1設定電圧)と、組電池14に含まれる二次電池141の直列セル数SNとを乗じた電圧にされている。すなわち電圧VF1=設定電圧V1×直列セル数SNとなるように設定されており、このように設定された電圧VF1が組電池14に印加されることにより、各二次電池141に、充電電圧として設定電圧V1が供給されるようになっている。
【0049】
ここで、上述したように、実質的に0Vとは、これらのバラツキ対策の設計を含むため、負極電位が約0.1Vになるまでを含む範囲を示す。
【0050】
設定電圧V1は、基準電圧以下の電圧、例えば基準電圧と等しい電圧が設定され、二次電池141の正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いた場合、例えば基準電圧と等しい4.2Vに設定され、正極活物質としてマンガン酸リチウムを用いた場合、例えば基準電圧と等しい4.3Vに設定される。
【0051】
リチウムイオン電池の端子電圧は、充電電流値、温度、正極及び負極の活物質の組成のバラツキの影響を受けるものの、正極活物質として、主にコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムを用いた場合に略4.2V、正極活物質として、主に、マンガン酸リチウムや、複数の金属元素からなる正極活物質の一部をマンガンに置換したマンガン系の正極活物質を用いた場合に略4.2V以上に充電終止電圧を設定する場合もある。
【0052】
電圧VF2は、基準電圧を超える電圧に設定された設定電圧V2(第2設定電圧)と、組電池14に含まれる二次電池141の直列セル数SNとを乗じた電圧にされている。すなわち電圧VF2=設定電圧V2×直列セル数SNとなるように設定されており、このように設定された電圧VF2が組電池14に印加されることにより、各二次電池141に、充電電圧として設定電圧V2が供給されるようになっている。
【0053】
設定電圧V2は、基準電圧を超える電圧が設定され、二次電池141の正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いた場合、例えば略4.4Vに設定され、正極活物質としてマンガン酸リチウムを用いた場合、例えば略4.5Vに設定される。
【0054】
以下、二次電池141の正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いた場合について説明し、設定電圧V1が4.2V、設定電圧V2が4.4Vに設定されている場合について説明する。
【0055】
充電器3では、前記の指示を、制御IC30において、通信手段である通信部32で受信し、例えばマイクロコンピュータを用いて構成された充電制御部31が充電電圧電流供給回路33(充電電圧供給部、充電電流供給部)を制御して、前記の電圧値、電流値、およびパルス幅で、充電電流を供給させる。充電電圧電流供給回路33は、AC−DCコンバータやDC−DCコンバータなどから成り、入力電圧を、充電制御部31で指示された電圧値、電流値、およびパルス幅に変換して、端子T21,T11;T23,T13を介して、充電経路11,15へ供給する。
【0056】
なお、制御部21及び設定スイッチSW1を電池パック2に備える例に限られず、充電器3に制御部21及び設定スイッチSW1を備えてもよく、あるいは制御部21及び設定スイッチSW1の一部を充電器3に備えるようにしてもよい。また、設定スイッチSW1を充電器3に備える構成では、電池パック2は、設定スイッチSW1に設定されたモードを示す情報を受信する通信回路等を、モード設定受付部として備えるようにしてもよい。
【0057】
図2は、二次電池141の構成の一例を示す概略断面図である。図2に示す二次電池141は、巻回構造の極板群を有する円筒形の非水電解質二次電池、例えばリチウムイオン二次電池である。極板群312は、正極リード集電体302を備えた正極板301(正極)と、負極リード集電体304を備えた負極板303(負極)とが、セパレータ305を介して渦巻き状に巻回された構造を有している。また、負極板303とセパレータ305との間には、図略の多孔性保護膜が形成されている。
【0058】
極板群312の上部には図略の上部絶縁板が、下部には下部絶縁板307が取り付けられている。そして、極板群312、及び図略の非水電解液(電解質)が入れられたケース308は、ガスケット309と封口板310と正極端子311とで封口されている。
【0059】
そして、封口板310の略中央には、略円形もしくは略馬蹄形の溝313が形成されており、ケース308内でガスが発生して内部圧力が所定の圧力を超えると、溝313が破断してケース308内のガスを放出するようになっている。また、正極端子311の略中央部には、外部接続用の凸部が設けられ、この凸部に電極開口部314が設けられており、溝313が破断して放出されたガスを、電極開口部314から二次電池141の外部へ放出するようになっている。
【0060】
図3は、極板群312の構成を詳細に示す断面図である。図3に示す極板群312は、負極集電体323、負極活物質324、多孔性保護膜325、セパレータ305、正極活物質322、及び正極集電体321がこの順に積層されて構成されている。
【0061】
図3に示す正極板301は、例えばアルミ箔等の金属箔からなる正極集電体321の表面に、正極活物質322が略均一に塗着されて構成されている。
【0062】
正極活物質322は、リチウムを含む遷移金属含有複合酸化物、例えば、非水電解質二次電池に使用されるLiCoO、LiNiO等の遷移金属含有複合酸化物を正極活物質として含有する。これらの遷移金属含有複合酸化物の中でも、高い充電終止電圧を使用でき、また高電圧状態で添加剤がその表面に吸着あるいは分解して良質な被膜を形成しうるCoの一部を他の元素で置換した遷移金属含有複合酸化物が好ましい。
【0063】
このような遷移金属含有複合酸化物としては、具体的には、例えば、一般式LiNiCo(MはAl、Mn、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、およびMoからなる群から選択される少なくとも一種の金属であり、且つ0<a<1.3、0.02≦b≦0.5、0.02≦d/c+d≦0.9、1.8<e<2.2の範囲であって、更にb+c+d=1であり、0.34<cである)で表される遷移金属含有複合酸化物が挙げられる。特に、上記一般式において、Mが、Cu及びFeからなる群から選択される少なくとも一種の金属であることが好ましい。
【0064】
このように構成された正極活物質322は、充電状態における体積膨張が低減されるので、例えば図9に示す満充電状態(SOC100%)を超えて充電を行った場合でも、ケース308内で正極活物質322が膨張して極板群312の中心部が座屈を生じるおそれが低減される。
【0065】
なお、以下の説明においては、正極活物質322としてコバルト酸リチウムを用いた場合(二次電池141の負極板303のリチウム基準における電位が実質的に0Vになる状態である満充電状態になったときの負極板303と正極板301との間の電圧である基準電圧が、4.2Vである場合)を例に、説明する。(正極活物質322としてマンガン酸リチウムを用いた場合には、基準電圧は4.3Vとなる。)
また、図3に示す負極板303は、例えば銅箔等の金属箔からなる負極集電体323の表面に、負極活物質324が略均一に塗着されて構成されている。
【0066】
負極活物質324としては、炭素材料、リチウム含有複合酸化物、リチウムと合金化可能な材料等、リチウムを可逆的に吸蔵放出可能な材料、及び金属リチウムを用いることができる。炭素材料としては、例えば、コークス、熱分解炭素類、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、黒鉛化メソフェーズ小球体、気相成長炭素、ガラス状炭素類、炭素繊維(ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、セルロース系、気相成長炭素系)、不定形炭素、有機物の焼成された炭素材料等が挙げられる。これらは単独または二種以上を混合して使用してもよい。これらの中でもメソフェーズ小球体を黒鉛化した炭素材料や、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料が好ましい。また、リチウムと合金化可能な材料としては、例えば、Si単体あるいはSiとOとの化合物(SiO)等が挙げられる。これらは単独または二種以上を混合して使用してもよい。上記のようなケイ素系の負極活物質を使用することにより、さらに高容量の非水電解質二次電池が得られる。
【0067】
図3に示すセパレータ305は、大きなイオン透過度、及び所定の機械的強度を有する絶縁性の微多孔性薄膜が用いられる。また、セパレータ305は、200℃以下の融点を有する樹脂材料をベースとするものが望ましく、特にボリオレフィンが好ましく用いられる。なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、ボリエチレンとボリプロピレンとの複合物などが好ましい。200℃以下の融点を有するポリオレフィン製のセパレータは、電池が外的要因で短絡した場合に容易に溶融し、樹脂材料が軟化して細孔構造が閉塞することにより、イオンの移動が抑制されるいわゆるシャットダウン効果が得られ、二次電池141の安全性を向上することができる。
【0068】
セパレータ305は、1種のポリオレフィン樹脂からなる単層膜であってもよく、2種以上のボリオレフィン樹脂からなる多層膜であってもよい。セパレータ305の厚みt1は、特に限定されないが、電池の設計容量を維持する観点から8〜30μmであることが好ましい。
【0069】
図3に示す多孔性保護膜325(耐熱部材)は、例えば無機酸化物フィラーおよび樹脂結着剤を含む塗料(以下、多孔膜塗料)を調製し、これを負極板303の表面に塗布し、その塗膜を乾燥することで得られる。多孔膜塗料は、無機酸化物フィラーおよび樹脂結着剤を、フィラーの分散媒と混合することにより得られる。分散媒には、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、シクロヘキサノン等の有機溶媒や水が好ましく用いられるが、これらに限定されない。フィラー、樹脂結着剤および分散媒の混合は、プラネタリミキサ等の双腕式攪拌機やビーズミル等の湿式分散機を用いて行うことができる。多孔膜塗料を電極表面に塗布する方法としては、コンマロール法、グラビアロール法、ダイコート法等を挙げることができる。
【0070】
なお、多孔性保護膜325は、樹脂結着剤と無機酸化物フィラーを含む微粒子スラリーが、負極又は正極の表面の少なくとも一方に塗布されるものであればよく、負極板303の表面に形成される例に限られず、正極板301の表面に形成されてもよく、正極板301及び負極板303の両方の表面に相対向するように形成されていてもよい。また、多孔性保護膜325の厚さt2は、0.1μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。
【0071】
耐熱性の高い多孔性保護膜325を得る観点からは、無機酸化物フィラーが250℃以上の耐熱性を有し、かつ非水電解液二次電池の電位窓内で電気化学的に安定であることが望まれる。多くの無機酸化物フィラーはこれらの条件を満たすが、無機酸化物のなかでも、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニアなどが好ましく、特に、粒径が0.1μm〜50μmの範囲にあるアルミナ粉末又はSiO粉末(シリカ)より選ばれることが好ましい。無機酸化物フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0072】
イオン伝導性の良好な多孔性保護膜325を得る観点からは、無機酸化物フィラーの嵩密度(タップ密度)が0.2g/cm以上0.8g/cm以下であることが望ましい。嵩密度が0.2g/cm未満では、無機酸化物フィラーが嵩高くなり過ぎて、多孔性保護膜325の構造が脆弱になることがある。一方、嵩密度が0.8g/cmを超えると、フィラー粒子間に好適な空隙を形成することが困難になることがある。無機酸化物フィラーの粒子径は、特に限定されないが、粒子径が小さい方が嵩密度が低くなりやすい。無機酸化物フィラーの粒子形状は、特に限定されないが、複数個(例えば2〜10個程度、好ましくは3〜5個)の一次粒子が連結固着した不定形粒子であることが望ましい。一次粒子は、通常、単一の結晶からなるため、不定形粒子は、必ず多結晶粒子となる。
【0073】
多孔性保護膜325に含まれる樹脂結着剤の量は、無機酸化物フィラーの100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下が望ましく、1重量部以上5重量部以下が更に望ましい。樹脂結着剤の量が20重量部を超えると、多孔性保護膜325の細孔の多くが樹脂結着剤で塞がれてしまい、放電特性が低下することがある。一方、樹脂結着剤の量が1重量部未満では、多孔性保護膜325と電極表面との密着性が低下して、多孔性保護膜325が剥離することがある。
【0074】
内部短絡の発生箇所が高温になっても多孔性保護膜325の熱的安定性を維持させる観点から、樹脂結着剤の融点または熱分解温度は250℃以上であることが好ましい。また、樹脂結着剤が結晶性高分子からなる場合には、結晶性高分子の融点が250℃以上であることが好ましい。ただし、多孔性保護膜325の主成分は耐熱性の高い無機酸化物であるから、本発明の効果は、樹脂結着剤の耐熱性に大きく依存されるものではない。
【0075】
多孔質絶縁膜の多孔度Pの範囲は、セパレータの見かけ体積に対する真体積の割合をRとした場合に−0.10≦R−P≦0.30を満たす範囲で決定すればよい。
【0076】
多孔性保護膜の多孔度Pは、次の方法で求めることができる。まず、無機酸化物フィラーと、樹脂結着剤と、フィラーを分散させる分散媒を含む塗料(以下、多孔膜塗料)を調製する。多孔膜塗料を金属箔上に塗布し、乾燥する。乾燥後の塗膜を金属箔とともに任意の面積に切り取り、金属箔を取り除くことで、多孔性保護膜の試料が得られる。得られた試料の厚みと面積から、多孔性保護膜の見かけ体積Vaを求め、さらに試料の重量を測定する。次に、試料の重量と、無機物フィラーおよび樹脂結着剤の真比重を用いて、多孔性保護膜の真体積Vtを求める。多孔度Pは、見かけ体積Vaおよび真体積Vtから、以下の式(1)により求められる。
【0077】
多孔度P=(Va−Vt)/Va ・・・(1)
多孔度Pは、無機酸化物フィラーの大きさ例えば平均粒径と、形状とを適宜設定することで、所望の値に設定することができ、例えば35〜45%程度が好適である。
【0078】
セパレータ305の見かけ体積に対する真体積の割合Rは、次の方法で求めることができる。まず、セパレータ305の厚みと面積からセパレータ305の見かけ体積Vasを算出し、さらにセパレータ305の重量を測定する。次に、セパレータ305の重量と真比重を用いて、セパレータの真体積Vtsを求める。割合Rは、見かけ体積Vasおよび真体積Vtsから、以下の式(2)により求められる。
【0079】
割合R=Vts/Vas ・・・(2)
無機酸化物フィラーは、無機酸化物フィラーを多結晶粒子とすることで、樹枝状、珊瑚状、房状などの形状にすることができる。このような形状の多結晶粒子は、多孔性保護膜内で過度に緻密な充填構造を形成しにくいため、適度な空隙を形成するのに適している。多結晶粒子には、例えば2〜10個程度の一次粒子が溶融により連結した粒子や、2〜10個程度の結晶成長中の粒子が途中で接触して合体した粒子等が含まれる。
【0080】
多結晶粒子の平均粒径(体積基準のメディアン径:D50)は、例えばマイクロトラック社製の湿式レーザー粒度分布測定装置等により測定することができる。多結晶粒子の平均粒径が、一次粒子の平均粒径の2倍未満では、多孔性保護膜が過度に緻密な充填構造をとることがあり、10μmを超えると、多孔性保護膜の多孔度が過剰となって多孔性保護膜の構造が脆くなることがある。
【0081】
多結晶粒子を得る方法は特に限定されないが、例えば無機酸化物を焼結して塊状物とし、塊状物を適度に粉砕すれば得られる。また、粉砕工程を経ずに、結晶成長中の粒子を途中で接触させることにより、多結晶粒子を直接得ることもできる。
【0082】
例えばα−アルミナを焼結して塊状物とし、塊状物を適度に粉砕して、多結晶粒子を得る場合、焼結温度は800〜1300℃が好ましく、焼結時間は3〜30分が好ましい。また、塊状物を粉砕する場合、ボールミル等の湿式設備やジェットミル・ジョークラッシャー等の乾式設備を用いて粉砕を行うことができる。その場合、当業者であれば、粉砕条件を適宜調整することにより、多結晶粒子を任意の平均粒径に制御することができる。
【0083】
なお、セパレータ305を用いず、例えば図4に示す極板群312aのように、多孔性保護膜325aの多孔度P、厚さt2、あるいは曲路率その他の特性を適宜設定することにより、セパレータ305の代わりに多孔性保護膜325aを用いる構成としてもよい。
【0084】
また、多孔性保護膜325を備える代わりに、例えば図5に示す極板群312bのように、耐熱性のセパレータ305a(耐熱部材)を用いるようにしてもよい。図5に示す耐熱性セパレータ305aは、例えばポリエチレンの基材355の表面に、耐熱材料であるアラミド樹脂層356を備えて構成されている。ポリエチレンの基材355の厚さt6は例えば14μm程度、アラミド樹脂層356の厚さt7は例えば3〜4μm程度にされている。
【0085】
次に、上述のように構成された充電システム1の動作について説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る充電システム1の動作の一例を示す説明図である。図6は、通常モードにおける充電電流Ic、端子電圧Vb、及びSOCを、Ic1、Vb1、及びSOC1で示し、高電圧充電モードにおける充電電流Ic、端子電圧Vb、及びSOCを、Ic2、Vb2、及びSOC2で示している。また、図7は、本発明の一実施形態に係る充電システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0086】
まず、定電流充電制御部212によって、設定スイッチSW1の設定状態が確認され(ステップS1)、設定スイッチSW1がオンであれば高電圧充電モードで充電を行うべくステップS2へ移行し(ステップS1でYES)、設定スイッチSW1がオフであれば通常充電モードで充電を行うべくステップS6へ移行する(ステップS1でNO)。
【0087】
ここで、ユーザが組電池14の電池容量を増大させたい場合、ユーザが設定スイッチSW1をオンに設定することにより高電圧充電モードが選択され、ステップS2へ移行する。また、ユーザが組電池14の劣化を抑えて電池寿命を確保したい場合、ユーザが設定スイッチSW1をオフに設定することにより通常モードが選択され、ステップS6へ移行する。
【0088】
また、同様に、上述の電気的な信号や機構的な構造等の手段によって、電池パック2が装着される充電器3や負荷機器(アプリケーション機器)の特性に応じて、充電制御モードを選択する場合もある。この場合は、電池パック2が装着される充電器3や負荷機器の特性に応じて、充電制御を行うモードが選択される。
【0089】
まず、高電圧充電モードでの動作について説明すると、ステップS2において、定電流充電制御部212によって、FET12がオンされると共に、通信部22,32を介して充電制御部31へ、電流値Iccの充電電流Ic2を出力すべき旨の指示が出力される。電流値Iccは、たとえば公称容量値NCを定電流放電して、1時間で放電できるレベルを1Cとして、その70%に、並列セル数PNを乗算した電流値(例えば、NC=2000mAhで、2個並列であるとき、70%で2800mA)に設定されている。そして、充電制御部31からの制御信号に応じて充電電圧電流供給回路33から、電流値Iccに設定された充電電流Ic2が出力されて、定電流充電が行われる(タイミングT1)。
【0090】
次に、定電流充電制御部212によって、電圧検出回路20によって検出された組電池14の端子電圧Vb2が確認され(ステップS3)、端子電圧Vb2が、電圧VF2以上になると(ステップS3でYES)、定電流充電制御部212は定電流充電を停止し、定電圧充電を開始するべくステップS4へ移行する。ここで、電圧VF2は、基準電圧を超える電圧に設定された設定電圧V2と、組電池14に含まれる二次電池141の直列セル数SNとを乗じた電圧にされている。すなわち電圧VF2=設定電圧V2×直列セル数SNとなるように設定されており、このように設定された電圧VF2が組電池14に印加されることにより、各二次電池141に、充電電圧として設定電圧V2が供給されるようになっている。設定電圧V2は、例えば二次電池141の正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いた場合の基準電圧である4.2Vを超える4.4Vに設定されており、VF2=4.4×SN(組電池14の直列セル数SNが3であれば、VF2=4.4V×3=13.2V)となる。
【0091】
そうすると、端子電圧Vb2が設定電圧V2×直列セル数SN以上になることは、各二次電池141の端子電圧が原則的には、設定電圧V2以上になることを意味する。そうすると、二次電池141の負極板303のリチウム基準における電位は、実質的に0Vを下回ることとなり、負極活物質324の表面に金属リチウムが析出し始める。
【0092】
ここで、図3、図4に示す多孔性保護膜325,325aや図5に示すセパレータ305aのような、耐熱部材を備えない従来の二次電池の場合には、負極表面で金属リチウムが析出すると、析出した金属リチウムがリチウムデンドライトとなって正極に向かって成長し、例えばポリエチレン等の樹脂材料で構成されたセパレータを貫通して負極と正極との間を短絡する結果、リチウムデンドライトを流れる短絡電流によってセパレータが溶融し、短絡箇所が拡大して電池が破損してしまうおそれがある。そのため、従来の二次電池では、負極にリチウムを析出させないために、二次電池の端子電圧が基準電圧を超えないように、例えば正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いた二次電池では4.2Vを超えないように、設定電圧V2が4.2V以下の電圧に設定されていた。そのため、従来の二次電池では、端子電圧Vbが、4.2V×直列セル数SNに達するタイミングT2までしか定電流充電を行うことができなかった。
【0093】
しかし、二次電池141では、図3、図4に示す多孔性保護膜325,325aや、図5に示すセパレータ305aのような耐熱部材を備えることにより、リチウムデンドライトが形成されて正極板301と負極板303との間が短絡された場合であっても、セパレータの溶融により短絡箇所が拡大することが抑制されるので、設定電圧V2を、基準電圧(4.2V)を超える電圧、例えば4.4Vに設定することができる。そうすると、端子電圧Vbが、4.4V×直列セル数SNに達するタイミングT3まで定電流充電を行うことができる。
【0094】
次に、ステップS4において、充放電制御部211によって、通信部22,32を介して充電制御部31へ、電圧VF2の電圧を出力すべき旨の指示が出力される。そして、充電制御部31からの制御信号に応じて充電電圧電流供給回路33から、電圧VF2(=設定電圧V2×直列セル数SN)の電圧、すなわち4.4V×3=13.2Vが出力されて、組電池14の端子電圧Vb2が13.2Vにされて定電圧充電が行われる。
【0095】
図3、図4に示す多孔性保護膜325,325aや、図5に示すセパレータ305aのような耐熱部材を備えない従来の二次電池を充電する場合には、負極へのリチウムの析出を回避するために、4.2V×直列セル数SN以下の電圧で、定電圧充電を行う必要があった。しかし、二次電池141では、図3、図4に示す多孔性保護膜325,325aや、図5に示すセパレータ305aのような耐熱部材を備えることにより、上述したように、4.4V×直列セル数SNの電圧で充電を行うことができる。
【0096】
そして、充放電制御部211によって、電流検出抵抗16で検出された充電電流Icが確認され(ステップS5)、充電電流Icが予め設定された終止電流Ith以下になると(ステップS5でYES)、充放電制御部211は充電を終了するべくステップS10へ移行する。終止電流Ithは、温度に応じて適宜設定され、例えば(0.1A×並列セル数PN)程度の電流値が用いられる。
【0097】
次に、ステップS10において、充放電制御部211によって、充電制御部31へ充電電圧をゼロにすべき指示が出力され、充電制御部31により充電電圧電流供給回路33の出力電圧がゼロにされて充電を終了する(タイミングT5)。
【0098】
以上、高電圧充電モードでは、ステップS2〜S5,S10の処理により、基準電圧を超える電圧に設定された設定電圧V2、例えば4.4Vで各二次電池141が定電圧充電される。そうすると、図9の符号Aで示すように、二次電池141の正極電位Ppと負極電位Pmとの差が4.4Vになるまで二次電池141が充電されるから、二次電池141は満充電状態(SOC:100%)を超えて充電されることとなり、二次電池141の電池容量が増大する結果、組電池14の電池容量が増大する。
【0099】
また、上述のように構成された正極活物質322は、充電状態における体積膨張が低減されるので、二次電池141のSOCが100%を超えるまで充電を行った場合であっても、ケース308内で正極活物質322が膨張して極板群312が座屈を生じるおそれが低減される。
【0100】
次に、通常モードでの動作について説明する。まず、ステップS6において、定電流充電制御部212によって、FET12がオンされると共に、通信部22,32を介して充電制御部31へ、電流値Iccの充電電流Ic1を出力すべき旨の指示が出力される。そして、充電制御部31からの制御信号に応じて充電電圧電流供給回路33から、電流値Iccに設定された充電電流Ic1が出力されて、定電流充電が行われる(タイミングT1)。
【0101】
次に、定電流充電制御部212によって、電圧検出回路20によって検出された組電池14の端子電圧Vbが確認され(ステップS7)、端子電圧Vb1が、電圧VF1以上になると(ステップS7でYES、タイミングT2)、定電流充電制御部212は定電流充電を停止し、定電圧充電を開始するべくステップS8へ移行する。
【0102】
ここで、電圧VF1は、基準電圧以下の電圧に設定された設定電圧V1と、組電池14に含まれる二次電池141の直列セル数SNとを乗じた電圧にされている。すなわち電圧VF1=設定電圧V1×直列セル数SNとなるように設定されており、このように設定された電圧VF1が組電池14に印加されることにより、各二次電池141に、充電電圧として設定電圧V1が供給されるようになっている。設定電圧V1は、例えば二次電池141の正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いた場合の基準電圧である4.2Vに設定されており、VF1=4.2×SN(組電池14の直列セル数SNが3であれば、VF1=4.2V×3=12.6V)となる。
【0103】
そうすると、端子電圧Vb1が設定電圧V1×直列セル数SNになることは、各二次電池141の端子電圧が原則的には、設定電圧V1になることを意味する。そうすると、二次電池141の負極板303のリチウム基準における電位は、実質的に0V以上となり、負極活物質324の表面に金属リチウムが析出するおそれが低減される結果、高電圧充電モードと比べて二次電池141の劣化が低減される。
【0104】
次に、ステップS8において、充放電制御部211によって、通信部22,32を介して充電制御部31へ、電圧VF1の電圧を出力すべき旨の指示が出力される。そして、充電制御部31からの制御信号に応じて充電電圧電流供給回路33から、電圧VF1(=設定電圧V1×直列セル数SN)の電圧、すなわち4.2V×3=12.6Vが出力されて、組電池14の端子電圧Vb1が12.6Vにされて定電圧充電が行われる。そうすると、二次電池141の負極板303のリチウム基準における電位が実質的に0V以上となる範囲で定電圧充電が行われるので、負極活物質324の表面に金属リチウムが析出するおそれが低減される結果、高電圧充電モードと比べて二次電池141の劣化が低減される。
【0105】
そして、充放電制御部211によって、電流検出抵抗16で検出された充電電流Icが確認され(ステップS9)、充電電流Icが予め設定された終止電流Ith以下になると(ステップS9でYES)、充放電制御部211は充電を終了するべくステップS10へ移行する。終止電流Ithは、温度に応じて適宜設定され、例えば(0.1A×並列セル数PN)程度の電流値が用いられる。
【0106】
次に、ステップS10において、充放電制御部211によって、充電制御部31へ充電電圧をゼロにすべき指示が出力され、充電制御部31により充電電圧電流供給回路33の出力電圧がゼロにされて充電を終了する(タイミングT4)。
【0107】
以上、通常モードでは、ステップS6〜S10の処理により、基準電圧以下の電圧に設定された設定電圧V1、例えば4.2Vで各二次電池141が定電圧充電される。そうすると、二次電池141は図9に示す満充電状態(SOC:100%)を超えて充電されることがなく、負極電位Pmは0V以上に維持されるから、負極活物質324の表面に金属リチウムが析出するおそれが低減される結果、高電圧充電モードと比べて二次電池141の劣化が低減され、二次電池141の寿命が確保される。
【0108】
以上、ステップS1〜S10の処理により、ユーザが組電池14の電池容量を増大させたい場合、ユーザが設定スイッチSW1をオンに設定することにより高電圧充電モードが選択されて組電池14の電池容量が増大され、ユーザが組電池14の劣化を抑えて電池寿命を確保したい場合、ユーザが設定スイッチSW1をオフに設定することにより通常モードが選択されて高電圧充電モードより二次電池141の劣化が低減され、二次電池141の寿命が確保されるので、ユーザのニーズに応じて、二次電池の電池容量を増大させたり、二次電池の劣化を低減して寿命を確保したりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、携帯型パーソナルコンピュータやデジタルカメラ等の電子機器、電気自動車やハイブリッドカー等の車両、等の電池搭載装置として使用される充電システム、これら電池搭載装置の電源として用いられる電池パック、及びこのような電池パックを充電する充電装置として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の一実施形態に係る充電システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す二次電池の構成の一例を示す概略断面図である。
【図3】図2に示す極板群の構成の一例を詳細に示す断面図である。
【図4】図2に示す極板群の構成の他の一例を詳細に示す断面図である。
【図5】図2に示す極板群の構成の他の一例を詳細に示す断面図である。
【図6】図1に示す充電システムの動作の一例を示す説明図である。
【図7】図1に示す充電システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】背景技術に係る二次電池の充電時における一般的な充電電圧および電流の管理方法を説明するためのグラフである。
【図9】リチウムイオン電池を充電した場合のリチウム基準に対する、正極電位と負極電位との変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0111】
1 充電システム
2 電池パック
3 充電器
14 組電池
16 電流検出抵抗
17 温度センサ
19 アナログ/デジタル変換器
20 電圧検出回路
21 制御部
22,32 通信部
31 充電制御部
33 充電電圧電流供給回路
141 二次電池
211 充放電制御部
212 定電流充電制御部
301 正極板
302 正極リード集電体
303 負極板
304 負極リード集電体
305,305a セパレータ
306 上部絶縁板
307 下部絶縁板
308 ケース
309 ガスケット
310 封口板
311 正極端子
312,312a,312b 極板群
322 正極活物質
324 負極活物質
325,325a 多孔性保護膜
355 基材
356 アラミド樹脂層
SW1 設定スイッチ
T11,T12,T13,T21,T22, 端子
Pp 正極電位
Pm 負極電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極と正極との間に、耐熱性を有する耐熱部材を備えた二次電池と、
前記二次電池を充電するための充電電圧を供給する充電電圧供給部と、
前記負極のリチウム基準における電位が実質的に0Vになる状態である満充電状態になったときの前記負極と前記正極との間の電圧を基準電圧とし、前記基準電圧に基づき前記充電電圧供給部の動作を制御する充電制御部と、
通常充電モードと高電圧充電モードとのうち、いずれか一方の設定を選択的に受け付けるモード設定受付部とを備え、
前記充電制御部は、前記モード設定受付部により前記通常充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧以下の電圧に設定された第1設定電圧を前記充電電圧として前記充電電圧供給部によって前記二次電池へ供給させ、前記モード設定受付部により前記高電圧充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧を超える電圧に設定された第2設定電圧を前記充電電圧として前記充電電圧供給部によって前記二次電池へ供給させることによって、前記二次電池の充電を行うこと
を特徴とする充電システム。
【請求項2】
前記耐熱部材は、樹脂結着剤と無機酸化物フィラーとを含む多孔性保護膜であること
を特徴とする請求項1記載の充電システム。
【請求項3】
前記耐熱部材は、セパレータであること
を特徴とする請求項1記載の充電システム。
【請求項4】
前記正極の活物質として、LiNiCo(MはAl、Mn、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、およびMoからなる群から選択される少なくとも一種の金属であり、且つ0<a<1.3、0.02≦b≦0.5、0.02≦d/c+d≦0.9、1.8<e<2.2の範囲であって、更にb+c+d=1であり、0.34<cである)を用いること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の充電システム。
【請求項5】
前記二次電池を充電するための充電電流を供給する充電電流供給部と、
前記充電電流供給部から、予め設定された一定の電流を前記二次電池に供給させることにより、定電流充電を実行する定電流充電制御部と、
前記二次電池の端子電圧を検出する電圧検出部とをさらに備え、
前記モード設定受付部によって前記通常充電モードの設定が受け付けられ、かつ前記定電流充電の実行期間中に、前記電圧検出部により検出された端子電圧が前記第1設定電圧に達した場合、前記定電流充電制御部は、前記定電流充電を停止すると共に、前記充電制御部は、前記定電圧充電を実行し、
前記モード設定受付部によって前記高電圧充電モードの設定が受け付けられ、かつ前記定電流充電の実行期間中に、前記電圧検出部により検出された端子電圧が前記第2設定電圧に達した場合、前記定電流充電制御部は、前記定電流充電を停止すると共に、前記充電制御部は、前記定電圧充電を実行すること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の充電システム。
【請求項6】
負極と正極との間に、耐熱性を有する耐熱部材を備えた二次電池に接続するための接続端子と、
前記接続端子に前記二次電池を充電するための充電電圧を供給する充電電圧供給部と、
前記負極のリチウム基準における電位が実質的に0Vになる状態である満充電状態になったときの前記負極と前記正極との間の電圧を基準電圧とし、前記基準電圧に基づき前記充電電圧供給部の動作を制御する充電制御部と、
前記通常充電モードと前記高電圧充電モードとのうち、いずれか一方の設定を選択的に受け付けるモード設定受付部とを備え、
前記充電制御部は、前記モード設定受付部により前記通常充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧以下の電圧である第1設定電圧を前記充電電圧として前記充電電圧供給部によって前記接続端子へ供給させ、前記モード設定受付部により前記高電圧充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧を超える電圧である第2設定電圧を前記充電電圧として前記充電電圧供給部によって前記接続端子へ供給させること
を特徴とする充電装置。
【請求項7】
外部からの指示に応じて二次電池を充電するための充電電圧を供給する充電装置と接続される電池パックであって、
負極と正極との間に、耐熱性を有する耐熱部材を備えた二次電池と、
前記負極のリチウム基準における電位が実質的に0Vになる状態である満充電状態になったときの前記負極と前記正極との間の電圧を基準電圧とし、前記基準電圧に基づき前記充電装置へ前記指示を出力する充電制御部と、
前記通常充電モードと前記高電圧充電モードとのうち、いずれか一方の設定を選択的に受け付けるモード設定受付部とを備え、
前記充電制御部は、前記モード設定受付部により前記通常充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧以下の電圧である第1設定電圧を前記充電電圧として設定する旨の指示を前記充電装置へ出力することにより、前記充電装置によって前記第1設定電圧を前記二次電池へ供給させ、前記モード設定受付部により前記高電圧充電モードの設定が受け付けられたとき、前記基準電圧を超える電圧である第2設定電圧を前記充電電圧として設定する旨の指示を前記充電装置へ出力することにより、前記充電装置によって前記第2設定電圧を前記二次電池へ供給させることによって、前記二次電池の充電を行うこと
を特徴とする電池パック。
【請求項8】
前記モード設定受付部は、
前記充電制御部もしくは前記二次電池から電力供給を受ける負荷機器により提供される、機構的もしくは電子的な情報を読み取ることにより、前記通常充電モードと前記高電圧充電モードとのうち、いずれか一方の設定を選択的に受け付けること
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−167642(P2008−167642A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292285(P2007−292285)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】