説明

充電口構造

【課題】ヒンジ用ブラケットに対する高い支持剛性が得られ、且つ、フェンダーパネルの取り付け位置調整も可能な充電口構造を提供する。
【解決手段】ヒンジ用ブラケット34と、充電口ドア32と、充電口ドア32のヒンジ32aと、受電用コネクター35とを備え、且つ、ブラケット37に固定された一端側の固定部41aと、ヒンジ用ブラケット34に固定された他端側の固定部41bと、これらの固定部41a,41bの間の中間部41cとを有すると共に、中間部41cは、その長さ方向の複数箇所に屈曲部41e,41f,41gを有する形状の結合用ブラケット41を備えた構成とする。また、一端側の固定部41aは、ボルト40の呼び径より大きな大径穴41dにボルト40を挿通してブラケット37に固定されるボルト締結構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に搭載したバッテリーへ充電するための充電口の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動源とする電気自動車には、前記モータへ電力を供給するための駆動用バッテリーが搭載されている。そして、このバッテリーは電気自動車に設けられている充電口介して充電される。
【0003】
図7には従来の充電口20の構造を示す。電気自動車のフェンダーパネル1には、給電用コネクター2の挿入口1aが形成されている。挿入口1aは充電口ドア4によって開閉される。給電用コネクター2は一般に充電ガンと称されており、電力ケーブル3を介して充電スタンドや家庭の電源装置(図示省略)に電気的に接続される。
【0004】
フェンダーパネル1の内側にはヒンジ用ブラケット5が配設されている。ブラケット5は、その周縁部5aが、フェンダーパネル1における挿入口1aの周縁部1bに固定されている。ヒンジ用ブラケット5の底面5bには開口5cが形成され、この開口5cから受電用コネクター6の先端部6aが露出している。そして、ヒンジ用ブラケット5には、充電口ドア4を回動可能に支持するヒンジ4aがボルト7で固定されている。図7には充電口ドア4がヒンジ4aを回動軸として一方へ回動することにより開いた状態を実線で示し、充電口ドア4がヒンジ4aを回動軸として他方へ回動することにより閉じた状態を一点鎖線で示している。
【0005】
受電用コネクター6は、その本体部6cの外周面に設けられたフランジ部6bがブラケット8へボルト9で締結されることにより、ブラケット8に固定されている。ブラケット8は車体の骨格部材12に固定されている。ヒンジ用ブラケット5とブラケット8の隙間14は、樹脂カバーに11によって覆われている。受電用コネクター6は、電力ケーブル10を介して、電気自動車に搭載された充電器(図示省略)に電気的に接続されている。
【0006】
従って、ドライバーなどの充電作業者が図示の如く充電口ドア4を開けて給電用コネクター2を受電用コネクター6へ結合すると、前記電源装置(車両とは異なる電源装置)から供給される電力が、給電用コネクター2、受電用コネクター6及び充電器を介して、電気自動車に搭載されたバッテリー(図示省略)に充電される。
【0007】
なお、従来の充電口構造が開示されている先行技術文献としては、例えば下記の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−298263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
充電作業者が受電用コネクター6への給電用コネクター2の結合操作をしたとき、この操作入力が受電用コネクター6に作用する。このため、受電用コネクター6に対しては前記操作入力に対応する高い支持剛性が必要となる。従って、このような高い支持剛性を得るには、上記の如く、受電用コネクター6をブラケット8のような車体側支持部材に取り付けることが合理的である。
【0010】
一方、充電口ドア4は、その外周とフェンダーパネル1の挿入口1aの内周との隙間13を適切に保持した状態で取り付ける必要がある。従って、充電口ドア4の取り付け作業を容易にするには、上記の如く、充電口ドア4のヒンジ4aをヒンジ用ブラケット5に取り付けることが合理的である。
【0011】
しかし、充電作業者が充電口ドア4を大きく開け過ぎると(充電口ドア4がオーバーランすると)、この充電口ドア4のオーバーラン入力が、ヒンジ4aを介してヒンジ用ブラケット5に作用する。このため、ヒンジ用ブラケット5に対しても、前記オーバーラン入力に対応する高い支持剛性が確保する必要がある。しかし、上記の如く、従来の充電口構造においては単に隙間14を樹脂カバーに11で覆っているだけであるため、ヒンジ用ブラケット5に対する高い支持剛性が得られない。従って、ヒンジ用ブラケット5に対する高い支持剛性を得るためには、ヒンジ用ブラケット5もブラケット8などの車体側支持部材に結合することが望ましい。
【0012】
しかしながら、フェンダーパネル1を車体に取り付ける際には、フェンダーパネル1の取り付け位置を車両の上下方向、前後方向及び車幅方向に調整することによって、フェンダーパネル1とその周辺部材(車室ドア、ボンネット、ヘッドライト、バンパー、車輪など:図1参照)の相対位置関係を適切な状態にする必要がある。そして、このようなフェンダーパネル1の取り付け位置調整を可能にするには、ヒンジ用ブラケット5をブラケット8などの車体側支持部材に単純に結合することはできず、これらの結合の仕方を工夫する必要であった。
【0013】
従って本発明は上記の事情に鑑み、ヒンジ用ブラケットに対する高い支持剛性が得られ、且つ、フェンダーパネルの取り付け位置調整も可能な充電口構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する第1発明の充電口構造は、車両とは異なる電源装置からの電力を前記車両に搭載したバッテリーへ充電するための充電口の構造であって、
前記車両のフェンダーパネルに形成された給電用コネクター挿入口の周縁部に固定されたヒンジ用ブラケットと、
前記挿入口を開閉する充電口ドアと、
前記ヒンジ用ブラケットに固定された前記充電口ドアのヒンジと、
車体側支持部材に固定され、バッテリー充電時に前記給電用コネクターが結合される受電用コネクターと、
前記車体側支持部材に固定された一端側の固定部と、前記ヒンジ用ブラケットに固定された他端側の固定部と、これらの固定部の間の中間部とを有すると共に、前記中間部は、その長さ方向の複数箇所に屈曲部を有する形状の結合用ブラケットと、
を備えた構成であることを特徴とする。
【0015】
また、第2発明の充電口構造は、第1発明の充電口構造において、
前記一端側の固定部又は前記他端側の固定部は、ボルトの呼び径より大きな大径穴に前記ボルトを挿通して前記車体側支持部材又は前記ヒンジ用ブラケットに固定されるボルト締結構造であることを特徴とする。
【0016】
また、第3発明の充電口構造は、第1又は第2発明の充電口構造において、
前記結合用ブラケットは、Z字状に形成されたものであることを特徴とする。
【0017】
また、第4発明の充電口構造は、第1〜第3発明の何れか1つの充電口構造において、
前記結合用ブラケットは、前記中間部の幅が、前記大径穴が設けられている前記一端側の固定部又は前記他端側の固定部の幅に比べて狭くなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1発明の充電口構造によれば、車両とは異なる電源装置からの電力を前記車両に搭載したバッテリーへ充電するための充電口の構造であって、前記車両のフェンダーパネルに形成された給電用コネクター挿入口の周縁部に固定されたヒンジ用ブラケットと、前記挿入口を開閉する充電口ドアと、前記ヒンジ用ブラケットに固定された前記充電口ドアのヒンジと、車体側支持部材に固定され、バッテリー充電時に前記給電用コネクターが結合される受電用コネクターと、前記車体側支持部材に固定された一端側の固定部と、前記ヒンジ用ブラケットに固定された他端側の固定部と、これらの固定部の間の中間部とを有すると共に、前記中間部は、その長さ方向の複数箇所に屈曲部を有する形状の結合用ブラケットとを備えた構成であることを特徴としているため、ヒンジ用ブラケットに対する高い支持剛性が得られると共に、車体組立て時の車体側支持部材とフェンダーパネルとの位置関係を結合用ブラケットで規定することができる。そして、充電作業者が受電用コネクターへの給電用コネクターの結合操作をしたとき、この操作入力が受電用コネクターに作用しても、車体側支持部材で入力を吸収させることができる。
【0019】
第2発明の充電口構造によれば、第1発明の充電口構造において、前記一端側の固定部又は前記他端側の固定部は、ボルトの呼び径より大きな大径穴に前記ボルトを挿通して前記車体側支持部材又は前記ヒンジ用ブラケットに固定されるボルト締結構造であることを特徴としているため、フェンダーパネルの取り付け位置調整も可能である。
即ち、結合用ブラケットは、一端側の固定部又は他端側の固定部におけるボルト挿通用の穴をボルトの呼び径より大きな大径穴としたことにより、結合用ブラケットの位置(即ちばか穴の位置)を、ボルト軸部に対して車両上下方向や車両前後方向へ移動させることができる。このため、フェンダーパネルを車体へ取り付ける際にフェンダーパネルの車両上下方向位置や車両前後方向位置を調整することができる。更に、結合用ブラケットは、中間部の複数箇所の屈曲部の屈曲角度が変化することにより、一端側の固定部又は他端側の固定部が車幅方向に平行移動し、同時に前記平行移動に伴って大径穴の位置が、ボルト軸部に対して、車両前後方向へ移動することができる。従って、結合用ブラケットを用いることにより、フェンダーパネルの周辺部材や車体側支持部材などの建て付けのバラツキを吸収して、フェンダーパネルと前記周辺部材の相対位置関係を適切な状態にする調整することができる。即ち、複数箇所の屈曲部と大径穴を設けたことにより、一端側の固定部又は他端側の固定部の平行移動を可能にしている。
また、フェンダーパネルの取り付け位置を調整した後、ボルトを締め付ければ、一端側の固定部又は他端側の固定部の大径穴の位置が固定されるため、結合用ブラケットは、ヒンジ用ブラケットに対して、充電口ドアのオーバーラン入力に対応する高い支持剛性を発揮する。
【0020】
第3発明の充電口構造によれば、第1又は第2発明の充電口構造において、前記結合用ブラケットは、Z字状に形成されたものであることを特徴としているため、屈曲部が2箇所の最も簡易な形状で結合用ブラケットを実現することができる。
【0021】
第4発明の充電口構造によれば、第1〜第3発明の何れか1つの充電口構造において、前記結合用ブラケットは、前記中間部の幅が、前記ばか穴が設けられている前記一端側の固定部又は前記他端側の固定部の幅に比べて狭くなっていることを特徴としているため、一端側の固定部又は他端側の固定部は、ばか穴を形成可能な十分な幅を有する一方、中間部は幅が狭くなり、屈曲部の屈曲角度を変化させ易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態例に係る充電口構造を備えた電気自動車の前部の側面図である。
【図2】前記充電口構造の鉛直断面図(図1のA−A線矢視断面図)である。
【図3】前記充電口構造の水平断面図(図1のB−B線矢視断面図)である。
【図4】前記充電口構造の側面図(図3のC方向矢視図)である。
【図5】(a)は前記充電口構造に適用される結合用ブラケットの斜視図、(b)は前記結合用ブラケットの側面図である。
【図6】(a)は前記充電口構造に適用される他の形状の結合用ブラケットの斜視図、(b)は前記第2ブラケットの側面図である。
【図7】従来の充電口構造の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明の実施の形態例に係るバッテリー充電用の充電口21は、フロント側のフェンダーパネル22の部分に設けられている。フェンダーパネル22の周辺には車室ドア24、ボンネット25、ヘッドライト26、バンパー27、車輪28などの周辺部材が配設されている。
【0025】
図2〜図4に示すように、フェンダーパネル22には、給電用コネクター31の挿入口22aが形成されている。挿入口22aは充電口ドア32によって開閉される。給電用コネクター31は一般に充電ガンと称されており、電力ケーブル33を介して充電スタンドや家庭の電源装置(図示省略)に電気的に接続される。
【0026】
フェンダーパネル22の内側にはヒンジ用ブラケット34が配設されている。ヒンジ用ブラケット34は鉛直断面形状(図2)及び水平断面形状(図3)がコ字状のものであり、その周縁部34aが、フェンダーパネル22における挿入口22aの周縁部22bにスポット溶接で固定されている。即ち、ヒンジ用ブラケット34は挿入口22aを、その内側から覆うような状態になっている。フェンダーパネル22は薄い鋼板によって形成され、ヒンジ用ブラケット34は比較的厚い鋼板によって形成されている。
【0027】
ヒンジ用ブラケット34の底面34bには開口34cが形成され、この開口34cから受電用コネクター35の先端部35aが露出している。そして、ヒンジ用ブラケット34の底面34cには、充電口ドア32を回動可能に支持するヒンジ32aがボルト36で固定されている。図3には充電口ドア32がヒンジ32aを回動軸として一方へ回動することにより開いた状態を実線で示し、充電口ドア32がヒンジ32aを回動軸として他方へ回動することにより閉じた状態を一点鎖線で示している。なお、ヒンジ用ブラケット34へのヒンジ32aの固定位置は、充電口ドア32を閉じたとき、充電口ドア32の外周とフェンダーパネル22の挿入口22aの内周との隙間30が適切に保持することができるように設定されている。
【0028】
受電用コネクター35は、その本体部35cの外周面に設けられたフランジ部35bがブラケット37へボルト40で締結されることにより、ブラケット37(車体側支持部材)に固定されている。ボルト40は、ブラケット37に設けたナット43に螺合している。ブラケット37はアッパーフレーム38にスポット溶接で固定されている。ブラケット37は比較的厚い鋼板によって形成された鉛直断面(図2)が台形状のものであり、受電用コネクター35の本体部35cが挿通される開口37aを有している。アッパーフレーム38は車体の骨格部材であり、比較的厚い鋼板によって中空閉断面形状に形成されている。受電用コネクター35は、電力ケーブル39を介して、電気自動車に搭載された充電器(図示省略)に電気的に接続されている。
【0029】
従って、ドライバーなどの充電作業者が図示の如く充電口ドア32を開けて給電用コネクター31を受電用コネクター35へ結合すると、前記電源装置(車両とは異なる電源装置)から供給される電力が、給電用コネクター31、受電用コネクター35及び充電器を介して、電気自動車に搭載されているバッテリー(図示省略)に充電される。
【0030】
そして、本実施の形態例の充電口構造では、ヒンジ用ブラケット34をブラケット37(車体側支持部材)に結合してヒンジ用ブラケット34に対する高い支持剛性を得るため、結合用ブラケット41が用いられている。
【0031】
図2〜図4と図5(a)及び図5(b)に基づいて説明すると、結合用ブラケット41は比較的厚い鋼板によって形成されたものであり、一端側の固定部41aと、他端側の固定部41bと、これらの固定部41a,41bの間の中間部41cとを有して成るZ字状に近い形状のものである。一端側の固定部41aは受電用コネクター35のフランジ部35bとともにボルト40で共締めされてブラケット37に固定されており、他端側の固定部41bはヒンジ用ブラケット34の底面34bにスポット溶接で固定されている。
【0032】
一端側の固定部41aには、ボルト40の軸部40aが挿通される、ボルト40の呼び径(軸部40aの直径)よりも大きな大径穴、所謂ばか穴41dが上下方向に2つ並んで設けられている。即ち、このばか穴41dの内周面とボルト軸部40aの外周面との間には、フェンダーパネル22の取り付け位置調整をするのに十分な広さの隙間42が確保されている。また、一端側の固定部41aは車幅方向(矢印F方向)と直交する方向に沿って配設されている。即ち、一端側の固定部41aの面(ブラケット37へ固定する面)が、車幅方向と直交している。なお、図示例では、他端側の固定部41bも車幅方向と直交する方向に沿って配設されている。
【0033】
中間部41cは、中間部41c(結合用ブラケット41)の長さ方向、即ち一端側の固定部41aから他端側の固定部41bへ向かう方向の複数箇所(図示例では3箇所)に屈曲部41e,41f,41gを有している。屈曲部41e,41f,41gの折目は、中間部41cの幅方向に沿っている。
【0034】
また、結合用ブラケット41は、中間部41cの幅W1が、ばか穴41dを設けた一端側の固定部41aの幅W2に比べて狭くなっている。他端側の固定部41bの幅W3は、中間部41cの幅W1と同じである。なお、他端側の固定部41bの幅W3は、一端側の固定部41aの幅W2と同じように広くしてもよい。
【0035】
結合用ブラケット41は、一端側の固定部41aにおけるボルト挿通用の穴をばか穴41dとしたことにより、図5(a)に矢印D,Eで示すように結合用ブラケット41の位置(即ちばか穴41dの位置)を、ボルト軸部40aに対して、車両上下方向(矢印D方向)や車両前後方向(矢印E方向)へ移動させることができる。このため、フェンダーパネル22を車体へ取り付ける際にフェンダーパネル22の車両上下方向位置や車両前後方向位置を調整することができる。
更に、結合用ブラケット41は、図5(b)に一点鎖線又は二点鎖線で示すように中間部41cの複数箇所の屈曲部41e,41f,41gの屈曲角度が変化することにより、一端側の固定部41aが車幅方向(矢印F方向)に平行移動し、同時に前記平行移動に伴ってばか穴41dの位置が、ボルト軸部40aに対して、車両前後方向(矢印E方向)へ移動することができる。即ち、複数箇所の屈曲部41e,41f,41gとばか穴41dとを設けたことにより、一端側の固定部41aの平行移動を可能にしている。
【0036】
従って、この結合用ブラケット41を用いることにより、フェンダーパネル22の周辺部材(車室ドア24、ボンネット25、ヘッドライト26、バンパー27、車輪28など)やブラケット37などの建て付けのバラツキを吸収して、フェンダーパネル22と前記周辺部材の相対位置関係を適切な状態にする調整することができる。
【0037】
なお、ばか穴41dの内径を、ボルト軸40aの外径に対してどの程度大きくするかは、前記建て付けのバラツキの程度、即ちフェンダーパネル22の取り付け位置調整に要する調整代に応じて適宜設定すればよい。
【0038】
フェンダーパネル22の取り付け位置を調整した後、ボルト40を締め付ければ、一端側の固定部41aのばか穴41dの位置が固定されるため、結合用ブラケット41は、ヒンジ用ブラケット34に対して、充電口ドア32のオーバーラン入力に対応する高い支持剛性を発揮する。
【0039】
図6(a)及び図6(b)には他の形状の結合用ブラケット51を示す。この結合用ブラケット51はZ字状に形成されたものであり、図2〜図4に示す充電口構造において結合用ブラケット41の代わりに用いることができる。
【0040】
図2〜図4と図6(a)及び図6(b)に基づいて詳述すると、結合用ブラケット51は比較的厚い鋼板によって形成されたものであり、一端側の固定部51aと、他端側の固定部51bと、これらの固定部51a,51bの間の中間部51cとを有して成るZ字状のものである。一端側の固定部51aは受電用コネクター35のフランジ部35bとともにボルト40で共締めされてブラケット37に固定され、他端側の固定部51bはヒンジ用ブラケット34の底面34bにスポット溶接で固定される。
【0041】
一端側の固定部51aには、ボルト40の軸部40aが挿通される、ボルト40の呼び径(軸部40aの直径)よりも大きな大径穴、所謂ばか穴51dが上下方向に2つ並んで設けられている。即ち、このばか穴51dの内周面とボルト軸部40aの外周面との間には、フェンダーパネル22の取り付け位置調整をするのに十分な広さの隙間42が確保されている。また、一端側の固定部51aは車幅方向(矢印F方向)と直交する方向に沿って配設される。即ち、一端側の固定部51aの面(ブラケット37へ固定する面)が、車幅方向と直交している。なお、図示例では、他端側の固定部51bも車幅方向と直交する方向に沿って配設される。
【0042】
中間部51cは、中間部51c(結合用ブラケット51)の長さ方向、即ち一端側の固定部51aから他端側の固定部51bへ向かう方向の2箇所に屈曲部51e,51fを有している。屈曲部51e,51fの折目は、中間部51cの幅方向に沿っている。
【0043】
また、結合用ブラケット51は、中間部51cの幅W1が、ばか穴51dを設けた一端側の固定部51aの幅W2に比べて狭くなっている。他端側の固定部51bの幅W3は、中間部51cの幅W1と同じである。なお、他端側の固定部51bの幅W3は、一端側の固定部51aの幅W2と同じように広くしてもよい。
【0044】
結合用ブラケット51は、一端側の固定部51aにおけるボルト挿通用の穴をばか穴51dとしたことにより、図6(a)に矢印D,Eで示すように結合用ブラケット51の位置(即ちばか穴51dの位置)を、ボルト軸部40aに対して、車両上下方向(矢印D方向)や車両前後方向(矢印E方向)へ移動させることができる。このため、フェンダーパネル22を車体へ取り付ける際にフェンダーパネル22の車両上下方向位置や車両前後方向位置を調整することができる。
更に、結合用ブラケット51は、図6(b)に一点鎖線又は二点鎖線で示すように中間部51cの2箇所の屈曲部51e,51fの屈曲角度が変化することにより、一端側の固定部51aが車幅方向(矢印F方向)に平行移動し、同時に前記平行移動に伴ってばか穴51dの位置が、ボルト軸部40aに対して、車両前後方向(矢印E方向)へ移動することができる。即ち、2箇所の屈曲部51e,51fとばか穴51dとを設けたことにより、一端側の固定部51aの平行移動を可能にしている。
【0045】
従って、この結合用ブラケット51を用いることにより、フェンダーパネル22の周辺部材(車室ドア24、ボンネット25、ヘッドライト26、バンパー27、車輪28など)やブラケット37などの建て付けのバラツキを吸収して、フェンダーパネル22と前記周辺部材の相対位置関係を適切な状態にする調整することができる。
【0046】
なお、ばか穴51dの内径を、ボルト軸40aの外径に対してどの程度大きくするかは、前記建て付けのバラツキの程度、即ちフェンダーパネル22の取り付け位置調整に要する調整代に応じて適宜設定すればよい。
【0047】
フェンダーパネル22の取り付け位置を調整した後、ボルト40を締め付ければ、一端側の固定部51aのばか穴51dの位置が固定されるため、結合用ブラケット51は、ヒンジ用ブラケット34に対して、充電口ドア32のオーバーラン入力に対応する高い支持剛性を発揮する。
【0048】
以上のように、本実施の形態例の充電口構造によれば、車両とは異なる電源装置からの電力を前記車両に搭載したバッテリーへ充電するための充電口21の構造であって、車両のフェンダーパネル22に形成された給電用コネクター挿入口22aの周縁部22bに固定されたヒンジ用ブラケット34と、挿入口22aを開閉する充電口ドア32と、ヒンジ用ブラケット34に固定された充電口ドア32のヒンジ32aと、ブラケット37(車体側支持部材)に固定され、バッテリー充電時に給電用コネクター31が結合される受電用コネクター35と、ブラケット37に固定された一端側の固定部41a(51a)と、ヒンジ用ブラケット34に固定された他端側の固定部41b(51b)と、これらの固定部41a,41b(51a,51b)の間の中間部41c(51c)とを有すると共に、中間部41c(51c)は、その長さ方向の複数箇所に屈曲部41e,41f,41g(51e,51f)を有する形状の結合用ブラケット41(51)とを備えた構成であることを特徴としているため、ヒンジ用ブラケット34に対する高い支持剛性が得られると共に、車体組立て時のブラケット37とフェンダーパネル22との位置関係を結合用ブラケット41(51)で規定することができる。そして、充電作業者が受電用コネクター35への給電用コネクター31の結合操作をしたとき、この操作入力が受電用コネクター35に作用しても、ブラケット37で入力を吸収させることができる。
また、一端側の固定部41a(51a)は、ばか穴41d(51d)にボルト40を挿通してブラケット37に固定されるボルト締結構造であることを特徴としているため、フェンダーパネル22の取り付け位置調整も可能である。
【0049】
具体的には、本実施形態例の充電口構造によれば、車両とは異なる電源装置からの電力を前記車両に搭載したバッテリーへ充電するための充電口21の構造であって、フェンダーパネル22に形成された給電用コネクター挿入口22aの周縁部22bに固定されたヒンジ用ブラケット34と、挿入口22aを開閉する充電口ドア32と、ヒンジ用ブラケット34に固定された充電口ドア32のヒンジ32aと、ブラケット37(車体側支持部材)に固定され、バッテリー充電時に給電用コネクター31が結合される受電用コネクター35と、ブラケット37に固定された一端側の固定部41a(51a)と、ヒンジ用ブラケット34に固定された他端側の固定部41b(51b)と、これらの固定部41a,41b(51a,51b)の間の中間部41c(51c)とを有し、且つ、一端側の固定部41a(51a)は、フェンダーパネル取り付け位置調整用のばか穴41d(51d)が設けられこのばか穴41d(51d)に軸部40aが挿通されたボルト40でブラケット37に固定され且つ車幅方向と直交する方向に沿って配設されており、中間部41c(51c)は、その長さ方向の複数箇所に屈曲部41e,41f,41g(51e,51f)を有する形状の結合用ブラケット41(51)とを備えた構成であることを特徴としているため、ヒンジ用ブラケット34に対する高い支持剛性が得られ、且つ、フェンダーパネル22の取り付け位置調整も可能である。
【0050】
また、結合用ブラケットを図6の結合用ブラケット51のようにZ字状に形成すれば、屈曲部が2箇所の最も簡易な形状で結合用ブラケットを実現することができる。
【0051】
また、結合用ブラケット41,51は、中間部41c,51cの幅W1が、ばか穴41d,51dが設けられている一端側の固定部41a,51aの幅W2に比べて狭くなっていることを特徴としているため、一端側の固定部41a,51aは、ばか穴41d,51dを形成可能な十分な幅W2を有する一方、中間部41c,51cは幅W1が狭くなり、屈曲部41e,41f,41g,51e,51fの屈曲角度を変化させ易くなる。
【0052】
なお、上記の結合用ブラケット41,51では、ばか穴41d,51dを一端側の固定部41a,51aに設けたが、必ずしもこれに限定するものでなく、他端側の固定部41b,51bにばか穴41d,51dを設けるようにしてもよい。この場合には、他端側の固定部41b,51bのばか穴41d,51dに挿通したボルトによって、ヒンジ用ブラケット34に他端側の固定部41b,51bを固定する。また、他端側の固定部41b,51bは、車幅方向と直交する方向に沿って配設する。
【0053】
また、上記ではフロント側のフェンダーパネル1に充電口21を設ける場合について説明したが、これに限定するものではなく、本発明の充電口構造はリア側のフェンダーパネルに充電口を設ける場合にも適用することができる。
【0054】
また、上記では結合用ブラケット41,51と受電用コネクター35をボルト40でブラケット37へ共締めしているが、必ずしもこれに限定するものではなく、受電用コネクター35とは別に結合用ブラケット41,51を、ボルトでブラケット37などへ固定するようにしてもよい。
【0055】
また、上記では受電用コネクター35や結合用ブラケット41,51を、ブラケット37に固定しているが、必ずしもこれに限定するものでなく、その他の車体側支持部材へ固定(例えばアッパーフレーム38などの骨格部材へ直接固定)するようにしてよい。
【0056】
また、結合用ブラケットの形状としては、必ずしも結合用ブラケット41,51のような形状に限定するものではなく、例えば中間部の長さ方向の3箇所に屈曲部を有するM字状やW字状の形状、或いはこれらに近い形状などでもよい。即ち、結合用ブラケットは中間部の長さ方向の複数箇所に屈曲部を有していればよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は充電口構造に関するものであり、電気自動車などの車両に搭載したバッテリーへ充電するために前記車両に充電口を設ける場合に適用して有用なものである。
【符号の説明】
【0058】
21 充電口
22 フェンダーパネル
22a 挿入口
22b 周縁部
24 車室ドア
25 ボンネット
26 ヘッドライト
27 バンパー
28 車輪
31 給電用コネクター
32 充電口ドア
32a ヒンジ
33 電力ケーブル
34 ヒンジ用ブラケット
34a 周縁部
34b 底面
34c 開口
35 受電用コネクター
35a 先端部
35b フランジ部
35c 本体部
36 ボルト
37 ブラケット
37a 開口
38 アッパーフレーム
39 電力ケーブル
40 ボルト
40a 軸部
41 結合用ブラケット
41a 一端側の固定部
41b 他端側の固定部
41c 中間部
41d ばか穴
41e,41f,41e 屈曲部
42 隙間
43 ナット
51 結合用ブラケット
51a 一端側の固定部
51b 他端側の固定部
51c 中間部
51d ばか穴
51e,51f 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両とは異なる電源装置からの電力を前記車両に搭載したバッテリーへ充電するための充電口の構造であって、
前記車両のフェンダーパネルに形成された給電用コネクター挿入口の周縁部に固定されたヒンジ用ブラケットと、
前記挿入口を開閉する充電口ドアと、
前記ヒンジ用ブラケットに固定された前記充電口ドアのヒンジと、
車体側支持部材に固定され、バッテリー充電時に前記給電用コネクターが結合される受電用コネクターと、
前記車体側支持部材に固定された一端側の固定部と、前記ヒンジ用ブラケットに固定された他端側の固定部と、これらの固定部の間の中間部とを有すると共に、前記中間部は、その長さ方向の複数箇所に屈曲部を有する形状の結合用ブラケットと、
を備えた構成であることを特徴とする充電口構造。
【請求項2】
請求項1に記載の充電口構造において、
前記一端側の固定部又は前記他端側の固定部は、ボルトの呼び径より大きな大径穴に前記ボルトを挿通して前記車体側支持部材又は前記ヒンジ用ブラケットに固定されるボルト締結構造であることを特徴とする充電口構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の充電口構造において、
前記結合用ブラケットは、Z字状に形成されたものであることを特徴とする充電口構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の充電口構造において、
前記結合用ブラケットは、前記中間部の幅が、前記大径穴が設けられている前記一端側の固定部又は前記他端側の固定部の幅に比べて狭くなっていることを特徴とする充電口構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−111352(P2012−111352A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261939(P2010−261939)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】