説明

光ケーブルコネクタおよび光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタとの結合体

【課題】光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタの結合強度を高めることができる光ケーブルコネクタの結合体を提供する。
【解決手段】光ファイバ素線11と光ファイバ素線11を被覆する第一のシース材13aと第一のシース材13aの外周に配設されて光ファイバ素線11を補強するテンションメンバ12とテンションメンバ12の外周を被覆する第二のシース材13bとを有する光ファイバケーブルと、略環状に形成される第一の支持部材21と、略環状に形成される第二の支持部材22とを備え、第一の支持部材21が前記第一のシース材の先端部と前記テンションメンバ12の先端部との間に挿入されるとともに、第二の支持部材22がテンションメンバ12の先端部の外周に配設され、テンションメンバ12の先端部が第一の支持部材21と第二の支持部材22との間に挟持され、光ケーブルコネクタに装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブル同士を光通信可能に接続する光ケーブルコネクタと、光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタとの結合体に関するものであり、特に好適には、自動車などの車両の内部に配索される光ファイバケーブルの光ケーブルコネクタと、光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタとの結合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両においては、搭載される電装機器の増加に伴い、車両内部での情報通信量が増加してきている。光ファイバを用いる光ファイバケーブルは、電線に比較して、多量の情報を高速に通信することができる。このため、車両内部での情報通信量の増加対策として、情報通信媒体を電線から光ファイバケーブルに置き換えるという対策が採られるようになってきている。このように、車両内部において、光ファイバケーブルが配索されることが多くなってきている。
【0003】
光ファイバケーブル同士(または光ファイバ素線同士)の接続には、一般的に光ケーブルコネクタが使用されている。ここでいう光ケーブルコネクタは、「光コネクタ」、「光ファイバコネクタ」と称することもある。具体的には、光ファイバケーブルの末端部に光ケーブルコネクタが結合・装着される。そして、光ケーブルコネクタ同士が物理的に接続される。これにより、光ファイバケーブル同士が、光学的に(すなわち、光信号を伝達可能に)接続される。
【0004】
光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタとの結合構造としては、たとえば、特許文献1に記載されるような構成が提案されている。簡単に説明すると次のとおりである。この光ケーブルコネクタのコネクタハウジングには、光ファイバケーブルを挿通可能なケーブル収容孔が形成される。さらにコネクタハウジングには、前記ケーブル収容孔に連通するスリット部が形成される。そして、ケーブル収容孔に光ファイバケーブルが挿通され、その状態で、スリット部にケーブル保持部材が装着される。
【0005】
このように、ケーブル保持部材によって、光ファイバケーブルのシース材(被覆材)が挟圧されて保持される。したがって、光ファイバケーブルが、光ケーブルコネクタのハウジングから抜脱困難に保持される。また、光ファイバケーブルが保持されることにより、光ファイバケーブルが、その軸線方向に位置決めされる。
【0006】
ところで、自動車などの車両の内部に光ファイバケーブルを配索する作業において、光ファイバケーブルに引っ張り力が加わることがある。たとえば、配索作業のために、光ファイバケーブルや光ファイバケーブルに装着された光ケーブルコネクタが引っ張られることがある。そうすると、光ファイバケーブルが光ケーブルコネクタのハウジングから抜脱するような外力が加わることがある。また、光ファイバケーブルがハウジング内において位置ずれを起こすような外力が加わることがある。このほか、車両の走行時の振動などによっても、同様な外力が加わることがある。このため、特に自動車などの車両用の光ケーブルコネクタは、光ファイバケーブルに強固に装着されて結合していることが好ましい。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の光ケーブルコネクタは、車両などに適用すると、光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタとの結合強度が不充分となることがある。前記光ケーブルコネクタは、光ファイバケーブルのシース材が、ケーブル保持部材により外部から挟圧されるという構成を有する。すなわち、光ファイバケーブルのシース材とケーブル保持部材の当接面との間にはたらく摩擦力によって、光ファイバケーブルがコネクタハウジングから抜脱困難に保持されるものである。したがって、この摩擦力が小さい場合(または小さくなった場合)や、摩擦力を越える引っ張り力が加わった場合には、光ファイバケーブルがコネクタハウジングから抜脱したり、光ケーブルコネクタがコネクタハウジングの内部において位置ずれを起こしたりするおそれがある。
【0008】
このように、特許文献1に記載の構成では、引っ張り力などが加わった場合において、光ファイバケーブルがコネクタハウジングから抜脱するおそれや、位置ずれを起こすおそれがある。そして光ファイバケーブルの抜脱や位置ずれによって、光信号の送受信の信頼性が低下することがある。
【0009】
【特許文献1】特開2002−333548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタの結合強度を高めることができる光ケーブルコネクタおよび光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタの結合体を提供すること、または、光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタの結合強度を高めることにより、光ファイバの位置ずれや光ファイバケーブルの抜脱を、抑制もしくは防止できる光ケーブルコネクタおよび光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタの結合体を提供すること、または、光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタの結合強度を高めることにより、光ファイバによる光信号の送受信の信頼性が高い光ケーブルコネクタおよび光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタの結合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、光ファイバ素線と該光ファイバ素線を被覆する第一のシース材と該第一のシース材の外周に配設されて前記光ファイバ素線を補強するテンションメンバと該テンションメンバの外周を被覆する第二のシース材とを有する光ファイバケーブルと、略環状に形成される第一の支持部材と、略環状に形成される第二の支持部材とを備え、前記光ファイバケーブルの先端部は前記第一のシース材の先端部および前記テンションメンバの先端部が前記第二のシース材の先端から突出し、前記第一の支持部材が前記第一のシース材の先端部と前記テンションメンバの先端部との間に挿入されるとともに、前記第二の支持部材が前記テンションメンバの先端部の外周に配設され、前記テンションメンバの先端部が前記第一の支持部材と前記第二の支持部材との間に挟持されることを要旨とするものである。
【0012】
ここで、前記第一の支持部材と前記第二の支持部材が装着された前記光ファイバケーブルの先端部を収容可能なコネクタハウジングを備え、該コネクタハウジングには前記第二の支持部材に係合して前記光ファイバケーブルの軸線方向への移動を規制する構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第一の支持部材と第二の支持部材との間にテンションメンバが挟持されることにより、光ファイバケーブルが保持される。すなわち、光ファイバ素線の補強部材であるテンションメンバが、直接的に第一の支持部材と第二の支持部材によって保持される。このため、従来の光ケーブルコネクタのようなケーブル保持部材によって光ファイバケーブルを外部から挟圧する構成と比較すると、光ファイバケーブルと光ファイバケーブルに当接する部材(本発明でいうところの第一の支持部材および第二の支持部材)との結合強度の向上を図ることができる。
【0014】
そして、前記第一の支持部材と前記第二の支持部材が装着された前記光ファイバケーブルの先端部を収容可能なコネクタハウジングを備え、コネクタハウジングには前記第二の支持部材に係合する構成であれば、光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタとの引っ張り力に対する強度の向上を図ることができる。そして光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタとの引っ張り力に対する強度が向上するから、光ファイバケーブルがコネクタハウジングから抜脱することや、光ファイバケーブルがコネクタハウジング内において軸線方向に位置ずれすることを防止または抑制できる。その結果、配索作業時に引っ張り力が加わる場合や、使用時に(車両の走行などによって)振動などする場合であっても、光信号の送受信の信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態にかかる光ケーブルコネクタに好適に適用できる光ファイバケーブルの断面構造を、模式的に示した断面図である。以下の説明においては、本発明の実施形態にかかる光ケーブルコネクタに好適に適用できる光ファイバケーブルを、単に「光ファイバケーブル」と称することがある。図1に示すように、光ファイバケーブル1は、光ファイバ素線11と、テンションメンバ12と、第一のシース材13aと、第二のシース材13bとを有する。
【0017】
光ファイバ素線11は、光信号を伝送可能な部材であり、公知の各種光ファイバ素線が適用できる。したがって、詳細な説明は省略する。たとえば、ガラス系の材料からなるものや、合成樹脂系の材料からなるものが適用できる。図1に示す光ファイバケーブル1は、二芯型のものであり、二本の光ファイバ素線11を有する。二本の光ファイバ素線11のうちの一本が送信用の光ファイバ素線として機能し、他の一本が受信用の光ファイバ素線として機能する。また、光ファイバケーブル1の光ファイバ素線11は、着色剤などによりその表面が着色されていることが好ましい。このような構成によれば、送信用として機能する光ファイバ素線11と、受信用として機能する光ファイバ素線11とを、目視により容易に識別が可能となる。
【0018】
テンションメンバ12は、光ファイバ素線11を補強などするための部材である。光ファイバケーブル1のテンションメンバ12には、公知の各種テンションメンバが適用できる。したがって、詳細な説明は省略する。たとえば、ケブラー(登録商標)樹脂からなる繊維を纏めたものや、鋼などからなる細線を束にしたものなどが適用できる。
【0019】
第一のシース材13aは、テンションメンバ12の内側に充填される材料である。この第一のシース材13aは、光ファイバ素線11とテンションメンバ12とを一体化するとともに、光ファイバ素線11を被覆する。第二のシース材13bは、テンションメンバ12の外周を被覆する材料である。これらの第一のシース材13aおよび第二のシース材13bは、曲がり変形容易な材料により形成される。第一のシース材13aおよび第二のシース材13bの材質には、公知の各種シース材と同じ材質が適用できる。具体的にはたとえば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ノンハロゲン難燃ポリエチレンなどの材料が適用できる。
【0020】
図1に示すように、テンションメンバ12は、略チューブ状(換言すると、略筒状)に形成される。そして、テンションメンバ12の内部には、送信用として機能する光ファイバ素線11と、受信用として機能する光ファイバ素線11とが配設される。テンションメンバ12の内部に第一のシース材13aが充填されている。また、テンションメンバ12の外周には、第二のシース材13bの層が形成される。このように、第一のシース材13aと第二のシース材13bとテンションメンバ12とは、略同心状に形成される。
【0021】
なお、図1に示す光ファイバケーブル1は、二本の光ファイバ素線11(送信用の光ファイバ素線と受信用の光ファイバ素線)を有する構成を備えるが、光ファイバケーブル1が有する光ファイバ素線11の本数は限定されるものではない。すなわち、光ファイバケーブル1が一本の光ファイバ素線11を有する構成であっても良く、三本以上の光ファイバ素線11を有する構成であっても良い。また、図1に示す光ファイバケーブル1は、二本の光ファイバ素線11が所定の距離だけ離間して配設される構成を有するが、光ファイバ素線11同士が離間している必要はなく、たとえば接触(または密集)していても良い。
【0022】
要は、テンションメンバ12が、単数または複数の光ファイバ素線11を囲繞する構成であればよい。
【0023】
図2は、本発明の実施形態にかかる光ケーブルコネクタ2の構成を、模式的に示した分解斜視図である。図2に示すように、本発明の実施形態にかかる光ケーブルコネクタ2は、第一の支持部材21と、第二の支持部材22と、第三の支持部材23と、フェルール24と、コネクタハウジング25とを備える。
【0024】
第一の支持部材21は、環状または円筒状に形成される部材である。この第一の支持部材21は、高強度の材料(変形が困難な材料)により形成されることが好ましい。たとえば、金属などにより形成されることが好ましい。第一の支持部材は、チューブ状に形成されるテンションメンバ12の径と略同じ径に形成される。
【0025】
第二の支持部材22も、環状または円筒状に形成される部材である。この第二の支持部材22は、高強度の材料(変形が困難な材料)により形成されることが好ましい。たとえば、金属などにより形成されることが好ましい。第二の支持部材22の内径は、第一の支持部材21の外径よりも大きい径に形成される。すなわち、第二の支持部材22は、その内部(開口部)に第一の支持部材21を挿通することができる寸法形状に形成される。
【0026】
第三の支持部材23は、略U字形状に形成される部材である。すなわち、二本の略平行な腕231を有する。この第三の支持部材23も、高強度の材料(変形が困難な材料)により形成されることが好ましい。たとえば、金属などにより形成されることが好ましい。二本の腕231の間隔は、第二の支持部材22の外径より小さく、第一の支持部材21の外径より大きいことが好ましい。すなわち、二本の腕231の間に、第一の支持部材21を遊挿することはできるが、第二の支持部材22を挿入することはできない。
【0027】
フェルール24は、光ファイバ素線11を保持する部材である。そして、互いに接続する二つの光ケーブルコネクタ2のフェルール24の先端面同士を突き合わせることによって、光ファイバ素線11同士を、光信号を伝送可能に接続する。このためフェルール24は、硬度が高く、寸法精度を維持できる材料により形成されることが好ましい。たとえば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)にガラスを含有させることで硬度を高めた材料などが好適に適用できる。
【0028】
図2に示すフェルール24は、略直方体に形成される構成を有する。このうちの一端面が、フェルール24同士を突き合わせる面(以下「突き合わせ面242」と称することがある。また、この「突き合わせ面242」に背中合わせの面を後端面と称することがある)。そしてフェルール24には、受信用として機能する光ファイバ素線11と、送信用として機能する光ファイバ素線11のそれぞれを挿通可能な二つの光ファイバ素線挿通孔241が形成される。これらの光ファイバ素線挿通孔241は、後端面(図2においては隠れて見えない)から突き合わせ面242にかけて、フェルール24を貫通するように形成される。
【0029】
また、光ファイバ素線挿通孔241は、これらの光ファイバ素線挿通孔241に光ファイバ素線11を挿通する作業の作業性を考慮した形状に形成される。具体的には、光ファイバ素線挿通孔241の入口(すなわち、後端面の開口部)は、光ファイバ素線11の径よりも充分大きい寸法に形成される。そして、光ファイバ素線挿通孔241の軸線方向中間には、後端面側から突き合わせ面242側に向けて、次第に小径となるテーパ状の部分が形成される。さらに、このテーパ状の部分から突き合わせ面242にかけては、これらの光ファイバ素線挿通孔241の内径が、光ファイバ素線11の外径と略同じ寸法に形成される。
【0030】
このような構成とすることにより、微小な径の光ファイバ素線11を、光ファイバ素線挿通孔241に無理なく挿入することができる。そして光ファイバ素線挿通孔241に後端面側から挿入された光ファイバ素線11は、その先端が、光ファイバ素線挿通孔241のテーパ状の部分、および光ファイバ素線11と略同径に形成される部分を通じて、フェルールの突き合わせ面242の所定の位置に位置決めされて突出する。
【0031】
フェルール24の外周面(いわゆる側面)には、接着剤注入孔243が形成される。この接着剤注入孔243は、フェルール24の内部において光ファイバ素線挿通孔241に連通する。光ファイバ素線11が光ファイバ素線挿通孔241に挿入された後、この接着剤注入孔243から接着剤が注入されることにより、光ファイバ素線11がフェルール24に固定される。
【0032】
フェルール24の突き合わせ面242には、位置決めピン244が立設されるとともに、位置決め孔245が形成される。この位置決めピン244は、フェルール24の本体とは別の部材により形成されることが好ましい。たとえばフェルール24の突き合わせ面242に孔が形成され、その孔に位置決めピン244の基端部が挿入される構成が好適に適用できる。そして、互いに接続する二つの光ケーブルコネクタ2のフェルール24同士を突き合わせると、一方のフェルール24の位置決めピン244が他方のフェルール24の位置決め孔245に係合するという構成を有する。
【0033】
互いに接続する二つの光ケーブルコネクタ2のフェルール24同士が突き合わされると、ある一方の光ケーブルコネクタ2のフェルール24に形成される光ファイバ素線挿通孔241(ここでは、送信用として機能する光ファイバ素線11を収容できる光ファイバ素線挿通孔241)と、他の一方の光ケーブルコネクタ2のフェルール24の光ファイバ素線挿通孔241(ここでは、受信用として機能する光ファイバ素線11を収容できる光ファイバ素線挿通孔241)とが連通する(軸線が略一致する)。また、他の一方の光ケーブルコネクタ2のフェルール24に形成される光ファイバ素線挿通孔241(ここでは、送信用として機能する光ファイバ素線11を収容できる光ファイバ素線挿通孔241)と、ある一方の光ケーブルコネクタ2のフェルール24の光ファイバ素線挿通孔241(ここでは、受信用として機能する光ファイバ素線11を収容できる光ファイバ素線挿通孔241)とが連通する(軸線が略一致する)。
【0034】
フェルール24の後端面側には、このフェルール24をコネクタハウジング25に係止するための係止突起246が形成される。図2においては、鍔状の係止突起246が形成される構成を示す。この係止突起246は、後述するコネクタハウジング25の係止片により係止される部分である。そして、コネクタハウジング25の係止片により係止されることができる構成であれば、形状などが限定されるものではない。
【0035】
コネクタハウジング25は、樹脂材料などにより一体に形成される部材、または略一体に形成される部材である。図3は、コネクタハウジング25の内部構造を模式的に示した断面図である。(a)と(b)は、接続する光ファイバケーブル1の軸線と略平行な面であって、互いに直角な面の切断面である。
【0036】
コネクタハウジング25の内部には、フェルール収容部251と、光ファイバケーブル収容孔252とが形成される。フェルール収容部251は、フェルール24を収納可能な開口部であり、コネクタハウジング25の先端面側(光ケーブルコネクタ同士を突き合わせる側)に開口している。光ファイバケーブル収容孔252は、光ファイバケーブルを収容可能な開口部であり、コネクタハウジング25の後端面側に開口している。そして、フェルール収容部251と光ファイバケーブル収容孔252とは、コネクタハウジング25の内部で連通している。
【0037】
また、フェルール収容部251の側部には、フェルール24の係止突起246を係止可能な係止片253が形成される。図3に示すようにこの係止片253は、コネクタハウジング25の先端面側から後端面側に延出する舌片状の部位である。そしてその先端側(コネクタハウジング25を基準とすると後端面側)が、コネクタハウジング25の外側に向かって弾性変形可能に構成される。
【0038】
光ファイバケーブル収容孔252は、その内径が、第二の支持部材22を挿入可能な寸法に形成される。また、特に図3(b)に示すように、コネクタハウジング25の外周面(側面)には、第三の支持部材挿入孔254が形成される(特に図3(b)参照)。この第三の支持部材挿入孔254は、第三の支持部材23の二本の腕231を挿入可能な孔である。そして、この第三の支持部材挿入孔254は、光ファイバケーブル収容孔252に連通する。
【0039】
このような部材を有する光ケーブルコネクタ2の組み付け構造は、次のとおりである。図4(a)は、光ファイバケーブル1の先端部に、第一の支持部材21が組み付けられた構成を模式的に示した断面図である。図4(b)は、さらに第二の支持部材22が組み付けられた構成を模式的に示した断面図である。
【0040】
まず、あらかじめ、光ファイバケーブル1の先端部に、コネクタハウジング25を挿通しておく(図略)。
【0041】
次いで、光ファイバケーブル1の先端部に、第一の支持部材21を挿通しておく。そして、第二のシース材13b先端部を剥がし、第二のシース材13bから、テンションメンバ12と第一のシース材13aを突出させる。さらに第一のシース材13aの先端からは、光ファイバ素線11を突出させる。
【0042】
突出させたテンションメンバ12と第一のシース材13aとの間に、第一の支持部材21が挿入される。また、図4(a)に示すように、突出したテンションメンバ12の外側に、第二の支持部材22が配設される。そして、図4(b)に示すように、配設された第二の支持部材22が、突出させたテンションメンバ12の外周面に圧着される。すなわち、第二の支持部材22に、外周側から中心に向かって圧縮力を加え、第二の支持部材22の内径を減少させる。この結果、突出したテンションメンバ12は、第一の支持部材21と第二の支持部材22とにより挟持される。
【0043】
また、第一のシース材13aの端部から突出する光ファイバ素線11が、フェルール24の光ファイバ素線挿通孔241に挿入される。挿入された光ファイバ素線11の先端は、フェルール24の突き合わせ面242から突出する。そして、フェルール24の接着剤注入孔243に接着剤が注入される。これにより、光ファイバ素線11がフェルール24に固定される。そして、フェルール24の突き合わせ面242から突出する光ファイバ素線11(すなわち、光ファイバ素線11の剰余部分)が切断され、フェルール24の突き合わせ面242が研磨加工などによって、光ファイバ素線11の端面を含めて鏡面仕上げされる。鏡面仕上げの後、突き合わせ面242の所定の位置に、位置決めピン244が立設される。
【0044】
次いで、あらかじめ光ファイバケーブル1に挿通されたコネクタハウジング25を、光ファイバケーブル1の先端側に移動させる。図5は、光ファイバケーブル1に、コネクタハウジング25が装着された状態を模式的に示した断面図である。これにより、フェルール24が、コネクタハウジング25のフェルール収容部251に収容される。また、光ファイバケーブル1の先端部が、コネクタハウジング25の光ファイバケーブル収容孔252に収容される。フェルール24がフェルール収容部251に収容されると、フェルール24の係止突起246が、コネクタハウジング25の係止片253により係止される。これにより、フェルール24が、コネクタハウジング25に抜脱困難に保持される。
【0045】
そして、第三の支持部材23が、コネクタハウジング25の第三の支持部材挿入孔254に挿入される。そして、第三の支持部材23は、第二の支持部材22の後端面に係止する。このような構成によれば、コネクタハウジング25と光ファイバケーブル1との間に引っ張り力が加わった場合(すなわち図5において、矢印aに示す向きの力が加わった場合)、第二の支持部材22が第三の支持部材23に係止することにより、光ファイバケーブル1がコネクタハウジング25から抜脱することが防止される。第二の支持部材22は光ファイバケーブル1のテンションメンバ12に直接的に結合しているから、光ファイバケーブル1の抜けに対する抵抗力は、テンションメンバ12に掛かる構成となる。このため、シース材に掛かる構成と比較して、光ファイバケーブル1とコネクタハウジング25の結合強度の向上を図ることができる。したがって、配索作業時に外力が加わった場合や、使用時に振動などが加わった場合であっても、光ファイバケーブル1の抜けや位置ずれを防止することができる。
【0046】
また、テンションメンバ12が、強固な材料から形成される第一の支持部材21と第二の支持部材22とに挟持される。したがって、光ファイバ素線11に引っ張り力などが掛かることを防止できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能である。
【0048】
前記実施形態においては、二本の光ファイバ素線を備える光ファイバ用の光ケーブルコネクタを示したが、光ファイバケーブルの心数(光ファイバ素線の数)は限定されるものではない。たとえば一本の単心型の光ファイバケーブルや、三本以上の光ファイバを有する多心型の光ファイバケーブルに適用することができる。この場合には、フェルール24に形成される光ファイバ素線層通孔241の数を、接続する光ファイバ素線11の数に合わせて増減すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態にかかる光ケーブルコネクタに好適に適用できる光ファイバケーブルの断面構造を、模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる光ケーブルコネクタ2の構成を、模式的に示した分解斜視図である。
【図3】コネクタハウジングの内部構造を模式的に示した断面図であり、(a)と(b)は、接続する光ファイバケーブル1の軸線と略平行な面であって、互いに直角な面の切断面である。
【図4】(a)は、光ファイバケーブルの先端部に、第一の支持部材が組み付けられた構成を模式的に示した断面図、(b)は、さらに第二の支持部材が組み付けられた構成を模式的に示した断面図である。
【図5】光ファイバケーブルに、コネクタハウジングが装着された状態を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 光ファイバケーブル
11 光ファイバ素線
12 テンションメンバ
13 シース材
2 光ケーブルコネクタ
21 第一の支持部材
22 第二の支持部材
23 第三の支持部材
24 フェルール
241 光ファイバ素線挿通孔
242 突き合わせ面
243 接着剤注入孔
244 位置決めピン
245 位置決め孔
246 係止突起
25 コネクタハウジング
251 フェルール収容部
252 光ファイバケーブル収容孔
253 係止片
254 第三の支持部材挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ素線と該光ファイバ素線を被覆する第一のシース材と該第一のシース材の外周に配設されて前記光ファイバ素線を補強するテンションメンバと該テンションメンバの外周を被覆する第二のシース材とを有する光ファイバケーブルと、
略環状に形成される第一の支持部材と、
略環状に形成される第二の支持部材と、
を備え、
前記光ファイバケーブルの先端部は前記第一のシース材の先端部および前記テンションメンバの先端部が前記第二のシース材の先端から突出し、
前記第一の支持部材が前記第一のシース材の先端部と前記テンションメンバの先端部との間に挿入されるとともに、
前記第二の支持部材が前記テンションメンバの先端部の外周に配設され、
前記テンションメンバの先端部が前記第一の支持部材と前記第二の支持部材との間に挟持されることを特徴とする光ケーブルコネクタ。
【請求項2】
前記第一の支持部材と前記第二の支持部材が装着された前記光ファイバケーブルの先端部を収容可能なコネクタハウジングを備え、該コネクタハウジングには前記第二の支持部材に係合して前記光ファイバケーブルの軸線方向への移動を規制することを特徴とする請求項1に記載の光ケーブルコネクタ。
【請求項3】
光ファイバ素線と該光ファイバ素線を被覆する第一のシース材と該第一のシース材の外周に配設されて前記光ファイバ素線を補強するテンションメンバと該テンションメンバの外周を被覆する第二のシース材とを有する光ファイバケーブルと、
略環状に形成される第一の支持部材と、
略環状に形成される第二の支持部材と、
を備え、
前記光ファイバケーブルの先端部は前記第一のシース材の先端部および前記テンションメンバの先端部が前記第二のシース材の先端から突出し、
前記第一の支持部材が前記第一のシース材の先端部と前記テンションメンバの先端部との間に挿入されるとともに、
前記第二の支持部材が前記テンションメンバの先端部の外周に配設され、
前記テンションメンバの先端部が前記第一の支持部材と前記第二の支持部材との間に挟持されることを特徴とする光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタの結合体。
【請求項4】
前記第一の支持部材と前記第二の支持部材が装着された前記光ファイバケーブルの先端部を収容可能なコネクタハウジングを備え、該コネクタハウジングには前記第二の支持部材に係合して前記光ファイバケーブルの軸線方向への移動を規制することを特徴とする請求項3に記載の光ファイバケーブルと光ケーブルコネクタの結合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−72416(P2010−72416A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240621(P2008−240621)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】