説明

光スキャナ、及びその光スキャナを備えた画像投影装置

【課題】所定のミラー振れ角あたりの所要駆動電圧を小さくすることができる光スキャナを提供する。
【解決手段】
光スキャナ100は、固定部品200と固定されて設置される光スキャナ100であって、ミラー部111と、梁部112A、112Bと、本体部113と、を有す構造体110と、駆動部120と、を備え、構造体110を支持する支持面132Fを有し、第3方向Zのミラー部111から離間する向きに延びる支持部132と、支持部132と接続され、第1方向Xを含み、第2方向Yに平行な面上で延びる台部133と、を有す台座130と、を備え、台部133の第3方向Zにおける変形量が支持面132Fの第3方向Zにおける変形量より小さい領域にて、台部133の第3方向Zにおいて対向する2つの面のうち構造体110がある側とは反対側にある面133Fと固定部品200とは固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射したレーザ光を所定方向に走査する光スキャナと、その光スキャナを備える画像投影装置、に関し、さらに詳しくは、光スキャナの所定のミラー振れ角あたりの所要駆動電圧の大きさを小さくすることができる光スキャナと、その光スキャナを備える画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光スキャナとは、レーザ光が入射されるミラーを揺動させることでレーザ光を所定方向に走査する装置である。光スキャナは、レーザプリンタ、バーコードリーダ、レーザプロジェクタ、又は網膜走査ディスプレイ等に用いられる。
【0003】
ミラーを所望の振れ角で揺動させるために、所定の大きさの駆動電圧が光スキャナに加えられる。一般的に、光スキャナのミラー振れ角を大きくするためには、光スキャナに加える駆動電圧を大きくする必要がある。このため、光スキャナの消費電力を小さくするためには、所定のミラー振れ角あたりの所要駆動電圧を小さくすることが求められる。
【0004】
駆動電圧を加えることでミラーを揺動させる光スキャナの一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている光スキャナとしての光走査装置は、構造体としての基板が台座としての支持部材に片持ち状に支持されている。この台座は、ミラーを所定方向に走査するのに適した固定部品に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−293116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の光スキャナについて、本発明者は、種々の実験を通して、台座と固定部品との固定位置によって所要駆動電圧が異なるという知見を得た。即ち、台座と固定部品との固定位置によっては、所要駆動電圧が大きくなるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、所定のミラー振れ角あたりの所要駆動電圧を小さくすることができる光スキャナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の光スキャナは、固定部品と固定されて設置される光スキャナであって、前記光スキャナは、入射したレーザ光を反射するミラー部と、前記ミラー部の揺動軸線に沿う第1方向に延び、前記ミラー部の両端に接続される梁部と、前記梁部を支持し、前記ミラー部から離間する第2方向に延びる本体部と、を有す構造体と、前記本体部の前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において対向する2つの面のうち、一方の面に形成され、駆動電圧の印加により、前記本体部に振動を加え、前記本体部及び前記梁部を介して前記ミラー部を揺動軸線を中心として所定の共振周波数にて揺動させる駆動部と、を備え、前記光スキャナは、前記構造体を片持ち支持する支持面を有し、前記第3方向の前記ミラー部から離間する向きに延びる支持部と、前記支持部と接続され、前記第2方向に平行な面上で延びる台部と、を有す台座をさらに備え、前記台部の第3方向における変形量が前記支持面の第3方向における変形量より小さい領域にて、前記台部の前記第3方向において対向する二つの面のうち前記構造体がある側
とは反対側の面と前記固定部品とは固定されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の光スキャナは、前記台部は、前記支持面と前記ミラー部との最短距離より、前記支持面と前記台部との最短距離が遠い領域にて固定部品と固定されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の光スキャナは、前記台部は、前記第2方向において対向する両端を有し、その両端のうち、前記支持面から遠い一端の前記第1方向に延びる両側方領域にて固定部品と固定されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の光スキャナは、前記台部は、前記第2方向において対向する両端を有し、その両端のうち、前記支持面に近い一端の前記第1方向に延びる領域の中央領域にて固定部品と固定されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の光スキャナは、前記台部は、前記第2方向において対向する両端を有し、その両端のうち、前記支持面に近い一端の前記第1方向に延びる領域の中央領域にて固定部品と固定されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の光スキャナは、前記台部は、前記第2方向において対向する両端を有し、その両端のうち、前記支持面から遠い一端の前記第1方向に延びる領域の両側方領域にて固定部品と固定され、前記中央領域は、前記両側方領域より狭いことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の画像投影装置は、画像信号に応じたレーザ光を出射する光出射部と、前記光出射部から出射されたレーザ光を前記ミラー部に反射させ、所定方向に走査する請求項1〜6のいずれかに記載の光スキャナと、前記光スキャナによって前記所定方向に走査されたレーザ光を、前記所定方向と略直交する方向に走査する第2光スキャナと、前記第2光スキャナによって前記直交する方向に走査されたレーザ光を被投射対象に投射する投射部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の光スキャナによれば、台部は、台部の第3方向における変形量が支持面の第3方向における変形量より小さい領域にて固定部品と固定される。台部が第3方向における変形量の小さい領域にて固定部品と固定されることで、支持面の第3方向における変形量より変形量が大きな領域にて固定部品と固定する場合と比較して、駆動部によって本体部に加えられた振動力が台座を伝って固定部品に発散しにくい。このため、支持面の第3方向における変形量より変形量が大きな領域にて固定部品と固定する場合と比較して、光スキャナの所要駆動電圧を小さくすることができる。
【0016】
請求項2に記載の光スキャナによれば、台部は、支持面とミラー部との最短距離より、支持面と台部との最短距離が遠い領域にて固定部品と固定される。支持面から遠い台部は構造体及び台座に振動力を与える駆動部から遠い。このために、支持面から遠い台部は、支持面に近い台部と比較して、変形量が小さい。その結果、振動力が台部を伝って固定部品に発散しにくい。このため、光スキャナの所要駆動電圧を小さくすることができる。
【0017】
請求項3に記載の光スキャナによれば、台部は、第2方向において対向する両端のうち、支持面から遠い一端の第1方向における両側方領域にて固定部品と固定される。支持面から遠い一端の中で、第1方向における中央領域は振動の腹となる。このため、第1方向における中央領域は、前記両側方領域と比較して変形量が大きい。このため、前記中央領域と固定部品とを固定すると、光スキャナの所要駆動電圧が大きくなる。一方、前記両側方領域は振動の節となる。このため、前記両側方領域は支持面から遠い一端の中で変形量
が比較的小さい。このため、台部の前記両側方領域と固定部品とを固定することで、光スキャナの所要駆動電圧を小さくすることができる。
【0018】
請求項4に記載の光スキャナによれば、台座は1対のハネ部を有し、1対のハネ部は支持面に近い側の領域にて固定部品と固定される。前記1対のハネ部の中で前記支持面から遠い側の領域は振動の腹となる。このため、前記支持面から遠い側の領域は変形量が大きく、光スキャナの所要駆動電圧が大きくなる。一方、前記1対のハネ部の各ハネ部の前記支持面から近い側の領域は振動の節となる。このため、前記支持面から近い側の領域は前記支持面から遠い側と比較して変形量が小さい。このため、前記支持面から近い側の領域と固定部品とを固定することで、光スキャナの所要駆動電圧を小さくすることができる。また、前記支持面に近い側の領域と固定部品とを固定することにより、固定部品と台座との接合力が強化される。その結果、過度な衝撃が光スキャナに加わることによって固定部品と台座とが分離されることを防ぐことができる。また、駆動部と駆動部を制御するための制御回路とをつなぐ接続部品を1対のハネ部の各ハネ部に載置し、ワイヤーボンディング等により駆動部と接続部品とを電気的に接続することで、容易に駆動部に駆動電圧を加えることができる。
【0019】
請求項5に記載の光スキャナによれば、台部は、第2方向において対向する両端のうち、支持面に近い一端の第1方向の中央領域にて固定部品と固定される。前記支持面から近い一端の中で、第1方向における両側方領域は振動の腹となる。このため、第1方向における両側方領域は変形量が大きく、光スキャナの所要駆動電圧が大きくなる。一方、第1方向における中央領域はわずかに振動の節となる。このため、第1方向における中央領域の変形量は、第1方向における両側方領域の変形量と比較して小さい。このため、前記中央領域と固定部品とを固定した場合、前記両側方領域と固定部品とを固定した場合と比較して、光スキャナの所要駆動電圧を小さくすることができる。また、台部の第2方向において対向する両端のうち支持面から遠い一端が固定されている場合、支持面から近い一端の第1方向の中央領域と、支持面から遠い一端と、は、第2方向において互いに反対側に固定される。このため、第2方向において同じ側に固定された場合と比較して、光スキャナの振動が安定する。また、前記中央領域にて固定することにより、第2方向において同じ側に固定された場合と比較して、台部の前記反対側の面全体に対する偏りがなくなる。その結果、固定部品と台部との接合力が強化される。そして、過度な衝撃が光スキャナに加わることによって固定部品と台部とが分離されることを防ぐことができる。
【0020】
請求項6に記載の光スキャナによれば、支持面に近い一端の中央領域は、支持面から遠い一端の両側方領域より狭い。一般的に、固定領域を大きくすればするほど、駆動部による振動が固定部品に分散されやすく、その結果所要駆動電圧は大きくなる。また、台部の第2方向における両端のうち、支持面に近い一端は支持面から遠い一端と比較して変形量が大きい。このため、前記中央領域を前記両側方領域より小さくすることで、光スキャナの所要駆動電圧を一層小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】光スキャナ100の平面図。
【図2】本発明の一実施形態における構造体110と圧電駆動部120との平面図。
【図3】(A)台座130の平面図、(B)台座130のA−A線に沿う断面図、(C)台座130の底面図。
【図4】(A)台座130と固定部品200とを示す側面図、(B)台座130と固定部品200との接着領域を示す底面図。
【図5】光スキャナ駆動時のZ方向から見た台座130においてZ方向における変形量の小さな領域を示す図。
【図6】(A)固定部品と台座の接着領域の違いによるミラー振れ角変化を示すグラフ。(B)固定部品との台座の接着領域の違いによるミラー振れ角変化率を示すグラフ。
【図7】台座130Bを示す平面図。
【図8】光スキャナ駆動時のZ方向から見た台座130BにおいてZ方向における変形量の小さな領域を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一側面を反映した実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。本発明の一側面は以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に説明する各構成において、所定の構成を省略し、または他の構成などに置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0023】
[光スキャナ100の構成]
図1を用いて光スキャナ100について説明する。図1は、光スキャナ100の平面図である。図1に示すように、光スキャナ100は、構造体110と、圧電駆動部120と、台座130と、を備える。光スキャナ100において、圧電駆動部120が構造体110の共振周波数にて周期的に伸縮することで、構造体110に板波振動が励起される。この板波振動が構造体110の本体部113を伝達し、構造体110のミラー部111を揺動させることで、光スキャナ100は駆動される。
【0024】
[構造体110の構成]
図2を用いて、構造体110と圧電駆動部120との構成を説明する。図2は、構造体110と圧電駆動部120との平面図である。構造体110は、ミラー部111と、捩れ梁部112A、112Bと、本体部113と、を有する。構造体110は、プレス加工を用いて、厚さ数十から数百μmのステンレスの金属板に対して、上記各構成を形成することで製造される。
【0025】
方向について定義する。構造体110の厚み方向がZ方向、ミラー部111の揺動軸線L1に平行な方向がX方向、捻れ梁部112A、112Bの端部から本体部113が延びる方向がY方向、とそれぞれ定義される。以下、構造体110に含まれる各構成について説明する。
【0026】
ミラー部111は、揺動軸線L1を中心として、数万Hzの共振周波数で揺動する。ミラー部111は、Z方向から見て円形に形成される。ミラー部111のZ方向負側の面は、入射した光を反射するように、鏡面研磨がなされている。
【0027】
捩れ梁部112A、112Bは、ミラー部111の両側に接続され、揺動軸線L1に平行に延びる。捩れ梁部112Aは、ミラー部111からX方向正側に延びる。捩れ梁部112Bは、ミラー部111からX方向負側に延びる。
【0028】
本体部113は、耳部分113A1、113A2と、中心部分113Bと、接続部分113Cと、を有する。耳部分113A1は、捩れ梁部112AのX方向正側の端部と接続される。耳部分113A2は、捩れ梁部112BのX方向負側の端部と接続される。耳部分113A1、113A2は、耳部分113A1、113A2の捩れ梁部112A、112Bが接続される位置から、Y方向負側に延びる。耳部分113A1は、中心部分113BのY方向正側の辺において、中心部分113BのX方向正側の端部に接続される。耳部分113A2は、中心部分113BのY方向正側の辺において、中心部分113BのX方向負側の端部に接続される。中心部分113Bは、構造体110の中心部分に位置する。中心部分113Bは、Z方向正側から見て四角形状の中心本体部113B1と、中心本体部113B1のY方向負側の辺からY方向負側にテーパ状に狭く形成される中心テーパ部
113B2と、を備える。中心本体部113B1のZ方向正側の面は、圧電駆動部120が接着される。中心テーパ部113B2のY方向負側の辺は、接続部分113Cと接続される。接続部分113Cは、Z方向から見て四角形状である。接続部分113CのY方向正側の一端のX方向の中央と、中心テーパ部113B2のY方向負側の一端と、は接続される。接続部分113Cは、台座130に固定される。
【0029】
圧電駆動部120は、中心本体部113B1のZ方向正側の面に設けられる。圧電駆動部120は、例えば、厚さ30μm〜100μmの平板状に成形され圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛の両面に対して、電極層として金又は白金を0.2μm〜0.6μm積層することで形成される。圧電駆動部120と中心本体部113B1とは、導電性接着剤で接着される。導電性接着剤は、例えば、エポキシ系の合成樹脂製の基剤内に、銀で構成された円盤状の金属フィラーを分散させたものである。
【0030】
[台座130の構成]
図3を用いて、台座130について説明する。図3(A)は、台座130の平面図である。図3(B)は、図3(A)に示す台座130をA−A線に沿って破断した断面図である。図3(C)は、台座130の底面図である。台座130は、図3(A)に示されるように、Z方向正側から見て十字型に形成される。台座130は、ステンレスで構成されている。図3(A)(B)に示すように、台座130は、台部133と、支持部132と、1対のハネ部131A、131Bと、を備える。
【0031】
図3(A)に示すように、台部133は、Z方向から見て四角形状に形成される。図3(B)に示すように、台部133は、1対のハネ部131A、131BのZ方向負側の面と比較して、Z方向負側に数μm突出した突出部133Aを備える。台部133のZ方向負側の突出部133Aの周りの面133Fは、後述する固定部品200と接着される。図3(C)に示すように、台部133は、Z方向から見て楕円形の貫通孔HL1と、Z方向から見て矩形の貫通孔HL2と、が設けられる。貫通孔HL1は、構造体110のミラー部111のZ方向負側に位置する。図示しない光出射装置から出射されたレーザ光は、貫通孔HL1を通過して、鏡面研磨されたミラー部111のZ方向負側の面に入射され、水平方向に反射される。貫通孔HL2は、中心テーパ部113B2のZ方向負側に位置する。貫通孔HL2は、光スキャナ100の製造工程において用いられる。
【0032】
図3(A)に示すように、支持部132は、台部133の縁から□型にZ方向正側に延びる。支持部132のY方向負側のZ方向正側の面132Fと、構造体110の接続部分113CのZ方向負側の面とは、接続される。
【0033】
図3(A)に示すように、1対のハネ部131A、131Bは、台部133のX方向の両側のY方向における中央から、ミラー部111から離間する向きに突出して、Y方向に延びて設けられる。図3(B)に示すように、ハネ部131AのX方向負側の一端は、Z方向正側に突出して形成される。ハネ部131BのX方向正側の一端は、Z方向正側に突出して形成される。
【0034】
[固定部品200と台座130との接着領域]
図4を用いて、固定部品200と台座130との接着領域について説明する。図4(A)は、固定部品200と台座130との側面図である。図4(B)は、固定部品200と台座130との接着領域を示す平面図である。図4(A)に示すように、固定部品200は、台部133のZ方向負側の突出部133Aの周りの面133Fと接着剤を用いて固定される。接着剤は、アクリル樹脂からなる。図4(B)に示すように、固定部品200と台座130とは、所定の接着領域FF1、FF2、FF3、FF4、FF5にて接着される。接着領域FF1は、台部133のY方向正側の一端のX方向における両側のうちX方
向負側の領域である。接着領域FF2は、台部133のY方向正側の一端のX方向における両側のうちX方向正側の領域である。接着領域FF3は、台座130のハネ部131BのY方向における両側のうち、Y方向負側の領域である。接着領域FF4は、台座130のハネ部131AのY方向における両側のうち、Y方向負側の領域である。接着領域FF5は、台部133のY方向負側の一端のX方向に延びる領域における中央領域である。
【0035】
〔光スキャナ100駆動時の変形量〕
図5を用いて、光スキャナ100の駆動時での台座130のZ方向における変形量の大きさの違いについて説明する。図5は、光スキャナ100の駆動時での台座130のZ方向における変形量の大きさの状況を示す図である。図5のZ方向における変形量の大きさは、インテリスウィートを用いて実験した結果である。図5に示す領域BF1、BF2(縦線部分)は、台座130のZ方向における変形量の平均変形量に対してZ方向における変形量が小さい領域である。領域BF1は、台部133のY方向正側の一端のX方向における両側のうちX方向負側から、ハネ部131AのY方向負側までをほぼ帯状に延びる領域である。領域BF2は、台部133のY方向正側の一端のX方向における両側のうちX方向正側から、ハネ部131BのY方向負側までをほぼ帯状に延びる領域である。図5に示すように、接着領域FF1、FF2、FF3、FF4に相当する領域は、領域BF1、BF2内にある。領域BF1、BF2は、台座130の他の領域と比較して、光スキャナ100の駆動時のZ方向における変形量が小さい。変形量が小さい領域は、変形量が大きい領域と比較して、圧電駆動部120による構造体110への振動力が台座130を介して固定部品へと発散しにくい。ゆえに、変形量が小さい領域は、変形量が大きい領域と比較して、固定部品と固定されて所定の駆動電圧をかけた際のミラー振れ角が大きい。
【0036】
図6を用いて、固定部品と台座との接着領域の違いによるミラー部111の振れ角変化について説明する。図6(A)は、固定部品と台座との接着領域の違いによる振れ角変化を示すグラフである。図6(B)は、固定部品と台座との接着領域の違いによる振れ角変化率を示すグラフである。実験は、所定の振れ角を測定可能な評価装置を用いて、一定の駆動電圧に対する振れ角を測定した。また、数値計算は、インテリスウィートを用いた。実験は、イニシャル、ミラー側のみ、溶接側のみ、の3パターンで、試行回数3回、行われた。イニシャルとは、台座130と固定部品200とを接着せず治具で固定した場合の実験結果である。ミラー側のみとは、ミラー部111に近接した接着領域FF1、FF2のみで固定部品200と台座130とを固定した場合である。溶接側のみとは、台座130のY方向負側の一端のX方向における両側方領域のみで固定部品200と台座130とを固定した場合である。図6(A)を見てみると、イニシャルの場合の振れ角は、平均して27°前後であるのに対し、ミラー側のみの振れ角は、平均30°前後である。図6(B)を見てみると、ミラー側のみの振れ角変化率は、イニシャルの振れ角変化率と比較して、平均10%前後高くなっている。一方、図6(A)に示すように、ミラー側のみのY方向における反対側にあたる溶接側のみの振れ角は、平均23°前後である。図6(B)を見てみると、溶接側のみの振れ角変化率は、イニシャルの振れ角変化率と比較して、平均20%前後低くなっている。このように、ミラー側のみ接着した場合の光スキャナ100は、溶接側のみ接着した場合の光スキャナと比較して、所要駆動電圧に対する振れ角が大きい。即ち、ミラー側のみ接着した場合の光スキャナ100は、溶接側のみ接着した場合の光スキャナと比較して、所定のミラー振れ角を得るための所要駆動電圧の大きさが小さい。図6より、Z方向における変形量の少ない領域FF1、FF2と固定部品200とを接着することで、Z方向における変形量の大きい領域と固定部品200とを接着した場合と比較して、光スキャナの所要駆動電圧の大きさが小さくなることは明らかである。
【0037】
〔使用例〕
本実施形態の光スキャナ100は、例えば特開2010−79104号公報記載の網膜走査ディスプレイの頭部装着ユニットに組み込まれて使用される。光スキャナ100は、
網膜走査ディスプレイの光ファイバから出射されたレーザ光を高速水平走査する光走査素子として使用される。網膜走査ディスプレイは、画像信号に応じたレーザ光を出射する光出射部と、光出射部から出射されたレーザ光をミラー部111に反射させ、水平方向に走査する光スキャナ100と、光スキャナ100によって水平方向に走査されたレーザ光を水平方向と直交する垂直方向に走査する第2光スキャナと、第2光スキャナによって垂直方向に走査されたレーザ光をユーザの瞳孔に投射する投射部と、を備える。光出射部は、画像信号に応じたレーザ光を生成し、レーザ光を出射する。光出射部から出射されたレーザ光は、光スキャナ100のミラー部111にて反射され、水平方向に走査される。光スキャナ100によって水平方向に走査されたレーザ光は、第2光スキャナの第2ミラー部にて反射され、水平方向と直交する垂直方向に走査される。水平方向と直交する垂直方向に走査されたレーザ光は、投射部に出射され、投射部によってユーザの瞳孔に投射される。これにより、ユーザは、画像信号によって変調されたレーザ光を視認することができる。本実施形態における網膜走査ディスプレイ、光出射部、第2光スキャナ、及び投射部は、順に本発明における画像投影装置、光出射部、第2光スキャナ、及び投射部の一例である。本実施形態におけるユーザの瞳孔は、本発明における被投射対象の一例である。本実施形態における水平方向、及び垂直方向は、順に本発明における所定方向、及び所定方向と略直交する方向の一例である。
【0038】
〔変形例〕
本実施形態の台座130とは異なる台座130Bについて図7を用いて説明する。図7は、台座130Bの底面図である。台座130Bは、台座130のハネ部131A、131Bを除いた形状を有する。図8は、台座130Bの光スキャナ駆動時のZ方向における変形量の小さな領域を示す図である。図8の所定の領域BB1、BB2、BB3(縦線部分)のZ方向における変形量は、Z方向の平均変形量と比較して小さい。領域BB1は、Y方向正側の一端のX方向負側領域から、貫通孔HL1のX方向負側のY方向において中央までをほぼ帯状に延びる領域である。領域BB2は、Y方向正側の一端のX方向正側領域から、貫通孔HL1のX方向正側のY方向において中央までをほぼ帯状に延びる領域である。領域BB3は、Y方向負側の一端のX方向における中央領域である。固定部品200との接着領域FF6、FF7、FF8は、領域BB1、BB2、BB3内にそれぞれある。接着領域FF6は、台部133の面133FにおいてY方向正側の一端のX方向における両側方領域のうち、X方向負側の領域である。接着領域FF7は、台部133の面133FにおいてY方向正側の一端のX方向における両側方領域のうち、X方向正側の領域である。接着領域FF8は、台部133の面133FにおいてY方向負側の一端のX方向における中央領域である。Z方向における変形量が小さい領域FF6、FF7と固定部品200とを接着することで、所要駆動電圧を小さくすることができる。Y方向において領域FF6、FF7の反対側にある領域FF8と、固定部品200と、を接着することで、構造体110及び台座130Bの振動が安定する。また、台座130Bと固定部品200との接着が剥がれ、台座130Bと固定部品200とが分離することを防ぐことができる。台座130Bにおいても、台座130と同様に、Z方向における変形量が比較的小さい領域と固定部品200とが接着されているため、Z方向における変形量が大きい領域と固定部品200とを接着した場合と比較して、所要駆動電圧の大きさを小さくすることができる。
【0039】
本実施形態においては、構造体はプレス加工によって形成されたが、構造体は例えばエッチング加工等の他の除去加工によって形成してもよい。本実施形態においては、構造体はステンレスであったが、構造体はシリコンウエハなどの非金属材料によって形成されても差し支えない。この場合、非金属材料の構造体の表面は、金属薄膜などの導電層が設けられると圧電駆動部に駆動電圧を伝達しやすくなる。本実施形態においては、圧電駆動部は、チタン酸ジルコン酸鉛であったが、圧電材料であればよい。本実施形態においては、台座はステンレスであったが、台座はチタン等の弾性を有す金属であればよい。本実施形
態においては、ミラー部111は円形に形成されたが、ミラー部111は、例えば楕円又は多角形であってもよい。本実施形態において固定部品200と台座130とを接着する接着剤は、アクリル樹脂からなるが、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等、合成樹脂であればよい。本実施形態において圧電駆動部120と構造体110とを接着する導電性接着剤は、シリコン樹脂製の基剤内に銀で構成された金属フィラーを分散させたものであったが、基剤はエポキシ樹脂、アクリル樹脂等、合成樹脂であればよいし、フィラーは金、銅等、金属であればよい。
【0040】
本実施形態におけるX方向、Y方向及びZ方向は、順に本発明における第1方向、第2方向、及び第3方向の一例である。本実施形態における固定部品200、光スキャナ100、構造体110、圧電駆動部120、及び台座130は、順に本発明における固定部品、光スキャナ、構造体、駆動部、及び台座の一例である。本実施形態におけるミラー部111、及び本体部113は、順に本発明におけるミラー部、及び本体部の一例である。本実施形態における捻れ梁部112A、112Bは、本発明における梁部の一例である。本実施形態における支持部132、及び台部133は、本発明における支持部、及び台部の一例である。本実施形態における1対のハネ部131A、131Bは、本発明における1対のハネ部の一例である。本実施形態における支持部132のY方向負側のZ方向正側の面132Fは、本発明における支持面の一例である。本実施形態における周りの面133Fは、本発明における反対側の面の一例である。本実施形態における揺動軸線L1は、本発明における揺動軸線の一例である。本実施形態における接着領域FF1、FF2は、本発明における支持面から遠い一端の第1方向に延びる両側方領域の一例である。本実施形態における接着領域FF1、FF2は、支持面と台部との最短距離が遠い領域の一例である。本実施形態における接着領域FF3、FF4は、本発明における第2方向における両側方領域のうち、前記支持面に近い側の領域の一例である。本実施形態における接着領域FF5は、本発明における、支持面に近い一端の第1方向に延びる領域の中央領域の一例である。本実施形態における接着領域FF6、FF7は、本発明における支持面から遠い一端の前記第1方向に延びる両側方領域の一例である。本実施形態における接着領域FF8は、本発明における第1方向に延びる領域の中央領域の一例である。本実施形態における接着領域FF1、FF2、FF3、FF4、FF5、FF6、FF7、FF8は、台部の第3方向における変形量が支持面の第3方向における変形量より小さい領域の一例である。本実施形態における台座130Bは、本発明における台座の一例である。本実施形態における中心本体部113B1のZ方向正側の面は、本発明における一方の面の一例である。
【符号の説明】
【0041】
100 光スキャナ
110 構造体
111 ミラー部
112A、112B 捩れ梁部
113 本体部
120 圧電駆動部
130、130B 台座
131A、131B 1対のハネ部
132 支持部
132F 支持面
133 台部
200 固定部品
L1 揺動軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部品と固定されて設置される光スキャナであって、
前記光スキャナは、
入射したレーザ光を反射するミラー部と、
前記ミラー部の揺動軸線に沿う第1方向に延び、前記ミラー部の両端に接続される梁部と、
前記梁部を支持し、前記ミラー部から離間する第2方向に延びる本体部と、
を有す構造体と、
前記本体部の前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において対向する2つの面のうち、一方の面に形成され、駆動電圧の印加により、前記本体部に振動を加え、前記本体部及び前記梁部を介して前記ミラー部を揺動軸線を中心として所定の共振周波数にて揺動させる駆動部と、を備え、
前記光スキャナは、
前記構造体を片持ち支持する支持面を有し、前記第3方向の前記ミラー部から離間する向きに延びる支持部と、
前記支持部と接続され、前記第2方向に平行な面上で延びる台部と、
を有す台座をさらに備え、
前記台部の第3方向における変形量が前記支持面の第3方向における変形量より小さい領域にて、前記台部の前記第3方向において対向する二つの面のうち前記構造体がある側とは反対側の面と前記固定部品とは固定されることを特徴とする光スキャナ。
【請求項2】
前記台部は、
前記支持面と前記ミラー部との最短距離より、前記支持面と前記台部との最短距離が遠い領域にて固定部品と固定されることを特徴とする請求項1に記載の光スキャナ。
【請求項3】
前記台部は、
前記第2方向において対向する両端を有し、
その両端のうち、前記支持面から遠い一端の前記第1方向に延びる両側方領域にて固定部品と固定されることを特徴とする請求項2に記載の光スキャナ。
【請求項4】
前記台座は、
前記台部の前記第1方向における両側から突出する1対のハネ部を有し、
前記1対のハネ部は、
前記第2方向における両側方領域のうち、前記支持面に近い側の領域にて固定部品と固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光スキャナ。
【請求項5】
前記台部は、
前記第2方向において対向する両端を有し、
その両端のうち、前記支持面に近い一端の前記第1方向に延びる領域の中央領域にて固定部品と固定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光スキャナ。
【請求項6】
前記台部は、
前記第2方向において対向する両端を有し、
その両端のうち、前記支持面から遠い一端の前記第1方向に延びる領域の両側方領域にて固定部品と固定され、
前記中央領域は、前記両側方領域より狭いことを特徴とする請求項5に記載の光スキャナ。
【請求項7】
画像信号に応じたレーザ光を出射する光出射部と、
前記光出射部から出射されたレーザ光を前記ミラー部に反射させ、所定方向に走査する請求項1〜6のいずれかに記載の光スキャナと、
前記光スキャナによって前記所定方向に走査されたレーザ光を、前記所定方向と略直交する方向に走査する第2光スキャナと、
前記第2光スキャナによって前記直交する方向に走査されたレーザ光を被投射対象に投射する投射部と、
を備えることを特徴とする画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−78389(P2012−78389A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220668(P2010−220668)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】