説明

光スキャナー及び画像形成装置

【課題】トーションバーである梁の内部応力を少なくし品質良くミラーが動作する光スキャナーを提供する。
【解決手段】光反射面9aを有する光反射部材9と、光反射部材9を支持する可動部8と、可動部8に一端が接続され、光反射面9aと略平行に延在する複数の可動梁10と、可動梁10の他端に接続された変位部5と、変位部5に固定された永久磁石7と、可動梁10の延長方向に変位部5から隔てて配置され、永久磁石7と協働して変位部5を駆動する駆動部11と、変位部5に一端が接続され可動梁10に略直交するとともに光反射面9aと略平行に延在し、変位部5を支持する駆動梁6と、駆動梁6の他端が接続された固定部3と、固定部3が固定された基台2と、を備え、固定部3は接着剤4を介して基台2に固定され、接着剤4は固定部3が基台2と対向する対向領域3aにおいて、対向領域3aの中心3bから離れた場所に枠状に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スキャナー及び画像形成装置にかかわり、特に、光スキャナーの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター等にて光走査により描画を行うための光スキャナーとして、捩り振動子で構成されアクチュエーターを用いたものが、特許文献1に開示されている。これによると、アクチュエーターは、一対の永久磁石が設けられた絶縁基板と、一対の永久磁石の間に位置するように絶縁基板に支持されたスキャナー本体とを有している。また、スキャナー本体は、枠状の支持部と、支持部の内側に設けられた枠状の外側可動板と、外側可動板の内側に設けられた内側可動板(ミラー)とを有している。また、外側可動板は、X方向に延長する一対の第1トーションバーを介して支持部に接続されており、内側可動板は、X方向と直交するY方向に延長する第2トーションバーを介して外側可動板に接続している。また、外側可動板及び内側可動板には、それぞれコイルが設けられている。
【0003】
このような構成のアクチュエーターは通電により各コイルから発生する磁界を一対の永久磁石との間に発生する磁界に作用させている。これにより、外側可動板が内側可動板とともに第1トーションバーを中心軸として回動し、内側可動板が第2トーションバーを中心軸として回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−181395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トーションバーは支持基板に支持され、支持基板は枠状の側面部材に支持されていた。そして、側面部材は底面部材に固定されていた。トーションバーを支持する側面部材を枠状から複数の柱状にして各側面部材を梁にて接続することにより、支持部材の体積を減らして光スキャナーを小型にすることができる。このとき、複数の側面部材を底面部材に接着剤を用いて固定する方法が用いられる。接着剤が固化する過程において、側面部材と底面部材とが相対的に移動または傾くことがある。そして、各側面部材を接続する梁やミラーを支持する梁に内部応力が形成される。そして、梁のトーションバーとしての動作が設計上の動作と異なってしまう。そこで、梁の内部応力を少なくして、品質良くミラーが動作する光スキャナーが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかる光スキャナーであって、光反射面を有する光反射部材と、前記光反射部材を支持し、かつ回動中心軸まわりに回動可能な可動部と、前記可動部に一端が接続され、前記光反射面と略平行に延在する複数の可動梁と、前記可動梁の他端に接続された変位部と、前記変位部に固定された永久磁石と、前記可動梁の延長方向に前記変位部から隔てて配置され、前記永久磁石と協働して前記変位部を駆動する駆動部と、前記変位部に一端が接続され前記可動梁に略直交するとともに前記光反射面と略平行に延在し、前記変位部を支持する駆動梁と、前記駆動梁の他端が接続された固定部と、前記固定部が固定された基台と、を備え、前記固定部は接着剤を介して前記基台に固定され、前記接着剤は前記固定部が前記基台と対向する対向領域において、前記対向領域の中心から離れた場所に配置されることを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、基台に固定された固定部には駆動梁が接続され、駆動梁には変位部が接続されている。変位部には永久磁石が固定され、この永久磁石と隔てた場所に駆動部が配置されている。そして、駆動部が永久磁石を駆動することにより、変位部が移動される。変位部に接続して可動梁が設置され、可動梁の一端には可動部が接続されている。可動部は光反射部材を支持している。従って、駆動部が変位部を駆動することにより、光反射部材を回動、振動させることが可能となっている。
【0009】
固定部と基台とが接着剤を介して固定されている。そして、固定部が基台と対向する対向領域において、接着剤は対向領域の中心から離れた場所に配置されている。対向領域の中心に接着剤が配置され対向領域の中心から離れた場所に接着剤がないとき、対向領域の中心と周辺とで固定部と基台との距離が異なる可能性が高い。つまり、対向領域の中心では接着剤の厚みに対応する距離だけ固定部と基台とが離れる。そして、対向領域の周辺では接着剤がないので固定部と基台とが接近し易くなる。その結果、基台に対して、固定部が傾斜し易くなる。
【0010】
一方、本適用例では接着剤が対向領域において、対向領域の中心から離れた場所に配置されている。従って、対向領域における固定部と基台との距離が接着剤の厚みの距離だけ離れた状態にて固定部と基台とが固定される為、固定部と基台とが傾斜することを防止できる。その結果、駆動梁や可動梁の内部応力が少なくできる為、品質良く光反射面が動作する光スキャナーを提供することができる。
【0011】
[適用例2]
上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、前記接着剤は複数の場所に分離して配置されていることを特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、対向領域において接着剤が複数の場所に分離している。接着剤が分離していないとき、接着剤が固化する過程において接着剤が凝集して部分的に厚くなる場合がある。本適用例では接着剤が複数の場所に分離している為、接着剤が固化する過程において接着剤が凝集して部分的に厚くなり難くなっている。従って、固定部と基台とが傾斜することを防止できる。
【0013】
[適用例3]
上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、前記対向領域において前記中心の前記固定部または前記基台には凹部が設置されていることを特徴とする。
【0014】
本適用例によれば、固定部または基台には凹部が設置されている。凹部では固定部と基台との距離が離れている。固定部と基台との間に接着剤が配置され接着剤が対向領域の中心に向かって流動する可能性がある。このとき、接着剤は中心と離れた場所の凹部に滞留する。従って、接着剤が固化した後で固定部が基台に対して傾斜することを防止することができる。
【0015】
[適用例4]
上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、前記固定部は前記基台と対向する場所に前記対向領域の前記中心から離れる方向に突出する突出部を備え、前記突出部において前記固定部は前記接着剤を介して前記基台に固定されていることを特徴とする。
【0016】
本適用例によれば、固定部は対向領域の中心から離れる方向に突出する突出部を備えている。そして、突出部において固定部は接着剤を介して基台に固定されている。従って、対向領域の中心から最も離れた場所に接着剤が配置されている。従って、接着剤が固化するときに突出部と基台との距離が変わるときにも固定部が基台に対して傾斜し難くすることができる。
【0017】
[適用例5]
上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、前記接着剤は、前記対向領域の中心から離れた場所に枠状に配置されることを特徴とする。
【0018】
本適用例によれば、接着剤が枠状に配置されている。従って、接着された面と平行の任意の方向から固定部が押圧されるときにも、基台に対して固定部が移動しないように固定することができる。
【0019】
[適用例6]
本適用例にかかる光スキャナーであって、光反射面を有する光反射部材と、前記光反射部材を支持し、かつ回動中心軸まわりに回動可能な可動部と、前記可動部に一端が接続され、前記光反射面と略平行に延在する複数の可動梁と、前記可動梁の他端に接続された変位部と、前記変位部に固定された永久磁石と、前記可動梁の延長方向に前記変位部から隔てて配置され、前記永久磁石と協働して前記変位部を駆動する駆動部と、前記変位部に一端が接続され前記可動梁に略直交するとともに前記光反射面と略平行に延在し、前記変位部を支持する駆動梁と、前記駆動梁の他端が接続された連結板と、柱状の固定部が立設した基台と、を備え、前記連結板は接着剤を介して前記固定部に固定され、前記接着剤は前記固定部が前記連結板と対向する対向領域において、前記対向領域の中心から離れた場所に配置されることを特徴とする。
【0020】
本適用例によれば、固定部と連結板とが接着剤を介して固定されている。そして、固定部が連結板と対向する対向領域において、接着剤は対向領域の中心から離れた場所に配置されている。対向領域の中心に接着剤が配置され対向領域の中心から離れた場所に接着剤がないとき、対向領域の中心と周辺とで固定部と基台との距離が異なる可能性が高い。つまり、対向領域の中心では接着剤の厚みに対応する距離だけ固定部と基台とが離れる。そして、対向領域の周辺では接着剤がないので固定部と基台とが接近し易くなる。その結果、固定部に対して、連結板が傾斜し易くなる。
【0021】
一方、本適用例では対向領域において接着剤が対向領域の中心から離れた場所に配置されている。従って、対向領域における固定部と連結板との距離が接着剤の距離だけ離れた状態にて固定部と基台とが固定される為、固定部と連結板とが傾斜することを防止できる。その結果、駆動梁や可動梁の内部応力が少なくできる為、品質良く光反射面が動作する光スキャナーを提供することができる。
【0022】
[適用例7]
上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、前記接着剤は前記連結板に接続する前記駆動梁と離れた場所に配置されることを特徴とする。
【0023】
本適用例によれば、接着剤が駆動梁と離れた場所に配置される為、接着剤は駆動梁に付着し難くなっている。接着剤が駆動梁に付着するとき、駆動梁がねじれるときのばね定数が変化する。このとき、設計上の動作から外れてしまう。本適用例では接着剤が駆動梁に付着しない為、駆動梁が設計した通りに動作する。従って、品質良く光反射面が動作する光スキャナーを提供することができる。
【0024】
[適用例8]
上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、前記接着剤は、前記対向領域の中心から離れた場所に枠状に配置されることを特徴とする。
【0025】
本適用例によれば、接着剤が枠状に配置されている。従って、接着された面と平行の任意の方向から固定部が押圧されるときにも、基台に対して固定部が移動しないように固定することができる。
【0026】
[適用例9]
本適用例にかかる画像形成装置であって、光源と、前記光源が射出する光の進行方向を制御する光スキャナーと、を備え、前記光スキャナーは上記に記載の光スキャナーであることを特徴とする。
【0027】
本適用例によれば、画像形成装置は光源と光スキャナーとを備え、光源が射出する光の進行方向を光スキャナーが制御する。これにより、画像形成装置は画像を描画することが可能になっている。そして、光スキャナーは梁に内部応力が少なく、品質良く光反射面を動作することができる。従って、画像形成装置は品質良く動作する光スキャナーを備えた画像形成装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態にかかり光スキャナーの構成を示す模式平面図。
【図2】(a)及び(b)は、光スキャナーの構成を示す模式側断面図、(c)は、対向領域を説明するための模式図、(d)は、接着剤を配置する場所を説明するための模式図。
【図3】光スキャナーの製造方法を示すフローチャート。
【図4】光スキャナーの製造方法を説明するための模式図。
【図5】光スキャナーの製造方法を説明するための模式図。
【図6】第2の実施形態にかかり対向領域を示す要部模式平面図。
【図7】第3の実施形態にかかり光スキャナーの構成を示す模式側断面図。
【図8】第4の実施形態にかかり光スキャナーの構成を示す模式平面図。
【図9】光スキャナーの構成を示す模式平面図。
【図10】第5の実施形態にかかり光スキャナーの構成を示す模式側断面図。
【図11】光スキャナーの構成を示す模式平面図。
【図12】第6の実施形態にかかり光スキャナーの構成を示す模式側断面図。
【図13】第7の実施形態にかかりプロジェクターの構成を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本実施形態では、光スキャナーの特徴的な例について、図1〜図5に従って説明する。以下、実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0030】
(第1の実施形態)
第1の実施形態にかかわる光スキャナーの構造について図1〜図2に従って説明する。図1は、光スキャナーの構成を示す模式平面図である。図2(a)及び(b)は、光スキャナーの構成を示す模式側断面図である。図2(a)は、図1の光スキャナーのA−A’に沿う断面の断面図であり、図2(b)は、図1の光スキャナーのB−B’ に沿う断面の断面図である。
【0031】
図1、図2(a)及び図2(b)に示すように、光スキャナー1は四角形の板状の基台2を備え、基台2上の四隅には4つの固定部3が立設されている。そして、固定部3は接着剤4を介して基台2に固定されている。
【0032】
基台2の材質は剛性があり加工し易い材質であればよく、特に限定されない、例えば、パイレックス(登録商標)、テンパックス等のガラスやシリコンあるいはアルミニウム等の金属を主材料として構成することができる。本実施形態では、例えば、アルミニウムを主材料としている。固定部3の材質は弾性があり加工し易い材質であればよく、特に限定されない、例えば、金属、ガラス、シリコン等を用いることができる。本実施形態では、例えば、シリコンを用いている。接着剤4は、基台2と固定部3とを接着できれば良く、特に限定されない。接着剤4は、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル系嫌気性接着剤(紫外線硬化樹脂)、合成ゴム系樹脂、湿気硬化性樹脂、エポキシ系紫外線硬化樹脂を用いることができる。
【0033】
基台2の直交する2辺が延在する方向をX方向とY方向とする。そして、立設する固定部3が延在する方向をZ方向とする。基台2の1つの辺の両端に位置する一対の固定部3の間には変位部5が設置されている。そして、変位部5と固定部3との間は駆動梁6によって接続されている。従って、一対の固定部3の間には固定部3、駆動梁6、変位部5、駆動梁6、固定部3がこの順に並んで配置されている。
【0034】
変位部5には直方体状の永久磁石7が固定されており、永久磁石7はZ方向に延在して配置されている。そして、永久磁石7はZ方向と−Z方向において変位部5から突出して配置されている。変位部5及び永久磁石7は駆動梁6を回転軸として回動可能となっている。駆動梁6の材質は固定部3と同じであり弾性のあるシリコンであり、駆動梁6はトーションバーとして機能する。
【0035】
永久磁石7の材質は、特に限定されず、例えば、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石等の、硬磁性体を着磁したものを好適に用いることができる。
【0036】
変位部5は4つの固定部3の間のうち基台2の4辺の中央と対向する場所の近くに設置されている。従って、変位部5は4箇所に設置されている。そして、4箇所の変位部5の中央には板状の可動部8が設置され、可動部8上には光を反射する光反射部材9が支持部材9bを介して固定されている。可動部8は4つの変位部5と可動梁10により接続されている。従って、X方向に位置する一対の変位部5の間には変位部5、可動梁10、可動部8、可動梁10、変位部5がこの順に並んで配置されている。Y方向に位置する一対の変位部5の間も同様の配置となっている。そして、X方向に延在する可動梁10とY方向に延在する可動梁10とは可動部8を交点にして直交している。なお、本実施形態では、光反射部材9は支持部材9bを介して可動部8に固定されているが、光反射部材9は可動部8に直接固定されていても良い。
【0037】
変位部5と可動部8との中程の可動梁10には屈曲部10aが設置されている。屈曲部10aは曲がりやすい構造となっており、可動梁10に曲げ応力が作用するとき可動梁10は屈曲部10aにて曲がるようになっている。
【0038】
光反射部材9は平板状をなし、基台2側と反対の向きを向く面には光反射性を有する光反射面9aが形成されている。光反射面9aは鏡面仕上げが施されているとともに、例えば、金、銀、アルミニウム等の金属を蒸着等により形成された金属膜が設置されている。
【0039】
4箇所に設置された変位部5において光反射部材9と反対側で可動梁10の延長方向には駆動部11が変位部5から隔てて配置されている。駆動部11は電磁石を備え、永久磁石7と協働して変位部5を駆動する。駆動部11は変位部5と同じく4箇所設置され、変位部5と変位部5を駆動する駆動部11とが対になっている。そして、駆動部11は配線により制御部12と接続されている。
【0040】
制御部12は駆動部11に電流信号を出力し、駆動部11は電流信号に応じて変位部5を回動させる。これにより、可動梁10が+Z方向もしくは−Z方向に曲げられる。そして、光反射面9aが所定の方向を向くようになっている。制御部12は4つの駆動部11に出力する電流信号を制御することにより、光反射面9aをX方向とY方向とに所望の角度で傾斜させることが可能となっている。言い換えれば、光反射面9aは、X方向を軸とする回動中心軸まわりと、Y方向を軸とする回動中心軸まわりに回動可能となっている。
【0041】
図2(c)は対向領域を説明するための模式図であり、図2(d)は接着剤を配置する場所を説明するための模式図である。図2(c)に示すように、基台2と固定部3とが対向する場所を対向領域3aとする。対向領域3aは四角形となっている。このとき、四角形の各辺の垂直2等分線の交点を対向領域3aの中心3bとする。対向領域3aが四角形でないときには、対向領域3aの形状の重心を中心3bとして設定しても良い。図中において斜線のハッチング部分が対向領域3aに相当する。
【0042】
図2(d)に示すように、対向領域3aの一部に接着剤4が配置されている。図中において斜線のハッチング部分が、接着剤4が配置された場所に相当する。接着剤4は対向領域3aにおいて中心3bから離れた場所に枠状に配置されている。これにより、対向領域3aにおける固定部3と基台2との距離が接着剤4の距離だけ離れた状態にて固定部3と基台2とが平行に固定される為、固定部3と基台2とが傾斜することを防止できる。
【0043】
(光スキャナーの製造方法)
次に上述した光スキャナー1の製造方法について図3〜図5にて説明する。図3は、光スキャナーの製造方法を示すフローチャートであり、図4及び図5は光スキャナーの製造方法を説明するための模式図である。
【0044】
図3のフローチャートにおいて、ステップS1は接着剤塗布工程に相当し、基台に接着剤を塗布する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は接着工程に相当し、基台に固定部を設置する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は固化工程に相当し、接着剤が固化する時間の間放置する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は駆動部設置工程に相当し、電磁石等からなる駆動部を設置する工程である。以上の製造工程にて光スキャナーが完成する。
【0045】
次に、図4及び図5を用いて、図3に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。図4(a)及び図4(b)はステップS1の接着剤塗布工程に対応する図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、基台2に接着剤4を塗布する。接着剤4を塗布する方法は位置精度良く所定の量を塗布できれば良く、特に限定されない。塗布方法は例えば、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェットヘッドから吐出して描画する方法、シリンジにて塗布する方法等を用いることができる。本実施形態では、例えば、オフセット印刷を採用している。基台2に固定部3を配置する予定の場所は基台2の四隅である。その場所に接着剤4を四角の枠状に配置する。
【0046】
図4(c)及び図5(a)はステップS2の接着工程及びステップS3の固化工程に対応する図である。図4(c)に示すように、接着剤4に重ねて固定部3を設置する。基台2に対して固定部3の位置を合わせるために、接着剤4の塗布形状を用いても良い。また、基台2の四隅と固定部3の角とを合わせるように固定部3を配置しても良い。
【0047】
固定部3には駆動梁6、変位部5、可動梁10、屈曲部10a、可動部8が形成されている。固定部3と固定部3に接続して形成されている部材は公知であるフォトリソグラフィ法及びエッチング法等の方法を用いて形成することが可能であり、詳細な説明を省略する。概略の説明としては、まず、固定部3の材料となる基板にマスクとなる材料を塗布し固化させて膜を形成する。次に、所定の形状に露光した後にエッチングしてマスクを形成する。次に、基板をエッチングすることにより所定の形状に形成した後、マスクを除去する。以上のように、パターニングとエッチングを繰り返して固定部3と固定部3に接続して形成されている部材を形成する。そして、可動部8には光反射部材9が接着され、変位部5には永久磁石7が接着され固定されている。
【0048】
図5(a)に示すように、基台2を載置台13上に搭載する。そして、固定部3上に押さえ板14を設置する。押さえ板14にはバネ14aが設置され、押さえ板14は固定部3を加勢する。これにより、固定部3は基台2に密着させることができる。
【0049】
ステップS3の固化工程において、所定の時間放置し接着剤4を固化させる。接着剤4の固化は常温にて温度変化のない環境にて行うのが好ましい。固化する間に温度が変化するとき、基台2と固定部3との温度係数が異なるときには、基台2と固定部3との伸縮の差により4つの固定部3間の距離が変化してしまうため、駆動梁6に内部応力が形成される可能性がある。
【0050】
接着剤4に光硬化性接着剤を用いるときには紫外線等の光を照射して固化してもよい。接着剤4が湿気硬化性の特性を有するときには加湿して固化を促進してもよい。短時間に固化できることから生産性良く固化させることができる。
【0051】
図5(b)はステップS4の駆動部設置工程に対応する図である。図5(b)に示すように、4個の永久磁石7と対向する場所に駆動部11を図示しない支持部材を介して設置する。以上の工程により光スキャナー1を製造する工程を終了する。
【0052】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、固定部3と基台2とが接着剤4を介して固定されている。そして、固定部3が基台2と対向する対向領域3aにおいて、接着剤4は対向領域3aの中心3bから離れた場所に配置されている。対向領域3aの中心3bに接着剤4が配置され対向領域3aの中心3bから離れた場所に接着剤がないとき、対向領域3aの中心3bと周辺とで固定部3と基台2との距離が異なる可能性が高い。つまり、対向領域3aの中心では接着剤4の厚みに対応する距離だけ固定部3と基台2とが離れる。そして、対向領域3aの周辺では接着剤4がないので固定部3と基台2とが接近し易くなる。その結果、基台2に対して、固定部3が傾斜し易くなる。
【0053】
一方、本実施形態では接着剤4が対向領域3aにおいて中心3bから離れた場所に枠状に配置されている。従って、対向領域3aにおける固定部3と基台2との距離が接着剤の厚みだけ離れた状態にて固定部3と基台2とが固定される為、固定部3と基台2とが傾斜することを防止できる。その結果、駆動梁6や可動梁10の内部応力が少なくできる為、品質良く光反射面9aが動作する光スキャナー1を提供することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、光スキャナーの一実施形態について図6の対向領域を示す要部模式平面図を用いて説明する。図6(a)、図6(b)、図6(c)はそれぞれ異なる形態を示す。
本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、接着剤4を塗布する形状が異なる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0055】
すなわち、本実施形態では、図6(a)に示すように、対向領域3aの四隅に分断された枠状に接着剤4が配置されている。この場合においても接着剤4は中心3bから離れた場所に設置されている。
【0056】
また、図6(b)では、対向領域3aのうち1つの辺を挟む2箇所の角の場所に接着剤4が配置されている。さらに、接着剤4が配置された2つの角の間の辺と対向する場所の辺に接して接着剤4が配置されている。つまり、3つに分断された枠状に接着剤4が配置されている。この場合においても接着剤4は中心3bから離れた場所に設置されている。
【0057】
また、図6(c)では、対向領域3aの四角形のうち一対の対向する辺と接する場所に接着剤4が配置されている。接着剤4は2つの場所に長方形に配置されているので、2つの場所の接着剤4は分断させている。つまり、2つに分断された枠状に接着剤4が配置されている。この場合においても接着剤4は中心3bから離れた場所に設置されている。上記の例のように、接着剤4を複数の場所に分断された枠状に配置することができる。
【0058】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、対向領域3aにおいて接着剤4が複数の場所に分離している。接着剤4が分離していないとき、接着剤4が固化する過程において接着剤4が凝集して部分的に厚くなる場合がある。本実施形態では接着剤4が複数の場所に分離している為、接着剤が固化する過程において接着剤4が凝集して部分的に厚くなり難くなっている。従って、固定部3と基台2とが傾斜することを防止できる。
【0059】
(第3の実施形態)
次に、光スキャナーの一実施形態について図7の光スキャナーの構成を示す模式側断面図を用いて説明する。図7(a)、図7(b)、図7(c)はそれぞれ異なる形態を示す。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、基台2または固定部3が凹部を有する点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0060】
すなわち、本実施形態では、図7(a)に示すように光スキャナー15は基台2を備えている。そして、接着剤4を介して基台2に固定部16が固定されている。固定部16が基台2と対向する場所を対向領域16aとする。そして、対向領域16aの中心16bには固定部16に凹部16cが形成されている。凹部16cを除く対向領域16aには接着剤4が配置されており、接着剤4は第1の実施形態と同様に枠状に配置されている。なお、凹部16cの形状は、本実施形態に記載されたものに限定されず、例えば、基台2に対向して四角形の開口を有する四角錘状の凹部形状であっても良い。光スキャナー15の材料がシリコンである場合は、異方性エッチングによってこのような凹部形状を形成することができる。
【0061】
ステップS2の接着工程において固定部16が基台2に押圧される。このとき、接着剤4は押圧されて伸展する。中心16bに向かって伸展する接着剤4は対向領域16aの中心16bから離れた場所に滞留するので、中心16bに到達し難くなっている。従って、接着剤4が固化した後で固定部16が基台2に対して傾斜することを防止することができる。
【0062】
図7(b)では光スキャナー17は基台18を備えている。そして、接着剤4を介して基台18に固定部3が固定されている。対向領域3aの中心3bには基台18に凹部18aが形成されている。凹部18aを除く対向領域3aには接着剤4が配置されており、接着剤4は第1の実施形態と同様に枠状に配置されている。なお、凹部18aの形状は、本実施形態に記載されたものに限定されず、例えば固定部3に対向して四角形の開口を有する四角錘状の凹部形状であっても良い。基台18の材料がシリコンである場合は、異方性エッチングによってこのような凹部形状を形成することができる。
【0063】
ステップS2の接着工程において固定部3が基台18に押圧される。このとき、接着剤4は押圧されて伸展する。中心3bに向かって伸展する接着剤4は対向領域3aの中心3bから離れた場所に滞留するので、中心3bに到達し難くなっている。従って、接着剤4が固化した後で固定部3が基台18に対して傾斜することを防止することができる。
【0064】
図7(c)では光スキャナー19は基台18を備えている。そして、接着剤4を介して基台18に固定部16が固定されている。固定部16が基台18と対向する場所を対向領域16aとする。そして、対向領域16aの中心16bには固定部16に凹部16cが形成され、基台18に凹部18aが形成されている。凹部16c,18aを除く対向領域16aには接着剤4が配置されており、接着剤4は第1の実施形態と同様に枠状に配置されている。凹部16c、凹部18aの形状は、図7(a)、図7(b)同様の形状をとることができる。
【0065】
ステップS2の接着工程において固定部16が基台18に押圧される。このとき、接着剤4は押圧されて伸展する。中心16bに向かって伸展する接着剤4は対向領域16aの中心16bから離れた場所に滞留するので、中心16bに到達し難くなっている。従って、接着剤4が固化した後で固定部16が基台18に対して傾斜することを防止することができる。
【0066】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、固定部16には凹部16cが設置され、基台18には凹部18aが設置されている。これにより、固定部3,16と基台2,18との間に接着剤4が配置され接着剤4が対向領域3a,16aの中心3b,16bに向かって流動するときにも、接着剤4は中心3b,16bに到達し難くなっている。従って、接着剤4が固化した後で固定部3,16が基台2,18に対して傾斜することを防止することができる。
【0067】
(第4の実施形態)
次に、光スキャナーの一実施形態について図8及び図9の光スキャナーの構成を示す模式平面図を用いて説明する。図8と図9とはそれぞれ異なる形態を示す。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、固定部が突出部を有し、突出部にて基台に固定部が固定されている点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0068】
すなわち、本実施形態では図8に示すように、光スキャナー21は基台2を備え、接着剤4を介して基台2に固定部22が固定されている。固定部22の基台2と対向する場所を対向領域22aとし、対向領域22aの重心を中心22bとする。そして、固定部22は、中心22bから離れる方向に突出する突出部22cを備えている。そして、突出部22cにおいて固定部22は接着剤4を介して基台2に固定されている。従って、対向領域22aの中心22bから最も離れた場所に接着剤4が配置されている。従って、接着剤4が固化するとき突出部22cと基台2との距離が変わるときにも固定部22が基台2に対して傾斜し難くすることができる。
【0069】
図9は図8と類似する形態を示す。図9においても、光スキャナー23は基台2を備え、接着剤4を介して基台2に固定部24が固定されている。基台2の周囲には基台2を囲んで4個の駆動部25が配置されている。固定部24の基台2と対向する場所を対向領域24aとし、対向領域24aの重心を中心24bとする。そして、固定部24は、中心24bから離れる方向に突出する突出部24cを3個備えている。そして、突出部24cにおいて固定部24は接着剤4を介して基台2に固定されている。さらに、対向領域24aにおいて光反射部材9と離れる方向に位置する角の付近も接着剤4を介して基台2に固定されている。従って、対向領域24aの中心24bから最も離れた突出部24cに接着剤4が配置されている。従って、接着剤4が固化するとき突出部24cと基台2との距離が変わるときにも固定部24が基台2に対して傾斜し難くすることができる。
【0070】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、光スキャナー21において固定部22は対向領域22aの中心22bから離れる方向に突出する突出部22cを備えている。そして、突出部22cにおいて固定部22は接着剤4を介して基台2に固定されている。従って、対向領域22aの中心22bから最も離れた場所に接着剤4が配置されている。光スキャナー23においても固定部24は対向領域24aの中心24bから離れる方向に突出する突出部24cを備えている。そして、突出部24cにおいて固定部24は接着剤4を介して基台2に固定されている。従って、対向領域24aの中心24bから最も離れた場所に接着剤4が配置されている。従って、接着剤4により突出部22c,24cと基台2との距離が変わるときにも固定部22,24が基台2に対して傾斜し難くすることができる。
【0071】
(第5の実施形態)
次に、光スキャナーの一実施形態について図10及び図11を用いて説明する。図10は、光スキャナーの構成を示す模式側断面図である。図11は、光スキャナーの構成を示す模式平面図である。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、固定部3が基台2に立設され、駆動梁6と接続する連結板が固定部3に固定されている点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0072】
すなわち、本実施形態では図10及び図11に示すように、光スキャナー26は基台27を備え、基台27には柱状の固定部28が立設されている。固定部28は基台27と一体となっていても良く、基台27に固着されていても良い。固定部28は第1の実施形態の固定部3に相当する。
【0073】
固定部28には接着剤4を介して連結板29が固定されている。連結板29には第1の実施形態の固定部3と同様に駆動梁6が接続されている。そして、駆動梁6に続けて変位部5、可動梁10、可動部8が接続されている。固定部28が連結板29と対向する領域を対向領域28aとし、対向領域28aの重心を中心28bとする。そして、接着剤4は対向領域28aにおいて中心28bから離れた場所に枠状に配置されている。接着剤4の配置は第1の実施形態と同様の配置となっている。
【0074】
接着剤4は連結板29に接続する駆動梁6と離れた場所に配置されている。従って、連結板29を固定部28に接着するとき、接着剤4が駆動梁6に付着し難いようになっている。
【0075】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、接着剤4は対向領域28aの中心28bから離れた場所に配置されている。従って、対向領域28aにおける固定部28と連結板29との距離が接着剤4の距離だけ離れた状態にて固定部28と連結板29とが固定される為、固定部28と連結板29とが傾斜することを防止できる。その結果、駆動梁6や可動梁10の内部応力が少なくできる為、品質良く光反射面9aが動作する光スキャナー26を提供することができる。
【0076】
(2)本実施形態によれば、接着剤4は駆動梁6と離れた場所に配置される為、接着剤4は駆動梁6に付着し難くなっている。接着剤4が駆動梁6に付着するとき、駆動梁6がねじれるときのばね定数が変化する。このとき、設計上の動作から外れてしまう。本実施形態では接着剤4が駆動梁6に付着しない為、駆動梁6が設計した通りに動作する。従って、品質良く光反射面9aが動作する光スキャナー26を提供することができる。
【0077】
(第6の実施形態)
次に、光スキャナーの一実施形態について図12を用いて説明する。図12は、光スキャナーの構成を示す模式側断面図である。図12(a)と図12(b)とは異なる形態を示す。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、固定部3が角錐または斜めの角柱となっている点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0078】
すなわち、本実施形態では図12(a)に示すように、光スキャナー31は基台2を備えている。そして、接着剤4を介して基台2に四角錐の形状をした固定部32が固定されている。固定部32が基台2と対向する場所を対向領域32aとする。そして、対向領域32aの中心32bから離れた場所には接着剤4が配置されており、接着剤4は第1の実施形態と同様に枠状に配置されている。
【0079】
固定部32の材質はシリコンからなり、シリコンの結晶配置条件やエッチング条件を調整することにより駆動梁6の長手方向に対して斜めに固定部32の側面を形成することができる。これにより、固定部32は四角錐の形状になっている。
【0080】
図12(b)においては、光スキャナー33は基台2を備えている。そして、接着剤4を介して基台2に四角柱の形状をした固定部34が固定されている。駆動梁6の長手方向と基台2上の面とは平行に設置され、固定部34の長手方向は基台2上の面に対して斜めに配置されている。固定部34が基台2と対向する場所を対向領域34aとする。そして、対向領域34aの中心34bから離れた場所には接着剤4が配置されており、接着剤4は第1の実施形態と同様に枠状に配置されている。
【0081】
固定部34の材質はシリコンからなり、シリコンの結晶配置条件やエッチング条件を調整することにより駆動梁6の長手方向に対して斜めに固定部34の側面を形成することができる。これにより、固定部34の長手方向を基台2上の面に対して斜めに設置することができる。
【0082】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、光スキャナー31では接着剤4が対向領域32aにおいて中心32bから離れた場所に枠状に配置されている。従って、対向領域32aにおける固定部32と基台2との距離が接着剤の厚みだけ離れた状態にて固定部32と基台2とが固定される為、固定部32と基台2とが傾斜することを防止できる。その結果、駆動梁6や可動梁10の内部応力が少なくできる為、品質良く光反射面9aが動作する光スキャナー31を提供することができる。
【0083】
(2)本実施形態によれば、光スキャナー33では接着剤4が対向領域34aにおいて中心34bから離れた場所に枠状に配置されている。従って、対向領域34aにおける固定部34と基台2との距離が接着剤の厚みだけ離れた状態にて固定部34と基台2とが固定される為、固定部34と基台2とを設計した傾斜角度から離れた角度になることを防止できる。その結果、駆動梁6や可動梁10の内部応力が少なくできる為、品質良く光反射面9aが動作する光スキャナー33を提供することができる。
【0084】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態のプロジェクターについて、図13のプロジェクターの構成を示す概略斜視図を用いて説明する。プロジェクターは、第1の実施形態の光スキャナーを備えている。また、かかる光スキャナーは、第1の実施形態の構成と同様な構成を備えている。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0085】
上記に説明した光スキャナー1は、例えば、プロジェクター、レーザープリンター、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡等の画像形成装置に好適に適用することができる。本実施形態では画像形成装置の一例としてプロジェクターに光スキャナー1を適用する場合について説明する。
【0086】
図13に示すように、画像形成装置としてのプロジェクター36は、赤色の光線を射出する赤色光源装置37と、青色の光線を射出する青色光源装置38と、緑色の光線を射出する緑色光源装置39とからなる光源としての光源装置40を備えている。
【0087】
赤色光源装置37、青色光源装置38、緑色光源装置39が射出する光線の光軸上にはそれぞれダイクロイックミラー41が設置され、各ダイクロイックミラー41に光線が照射される。ダイクロイックミラー41に照射された各色の光線は同じ光路を通って光スキャナー1の光反射面9aを照射する。そして、各色の光線は光反射面9aにて反射して固定ミラー42を照射する。さらに、固定ミラー42にて反射する各色の光線はプロジェクター36から外に出て、スクリーン43を照射する。
【0088】
プロジェクター36は制御装置44を備え、制御装置44はインターフェイスを備えている。そして、制御装置44は外部から映像信号を入力し、映像信号に応じて光源装置40の出力と光反射面9aの角度を制御する。これにより、制御装置44は各色の光線の光強度と光線がスクリーン43を照射する光の軌跡45を制御する。従って、プロジェクター36は入力した映像信号に対応した画像をスクリーン43に描画することが可能となっている。
【0089】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、プロジェクター36は光スキャナー1を備えている。光スキャナー1は駆動梁6及び可動梁10に内部応力が少なく、品質良く光反射面9aを動作することができる。従って、プロジェクター36は品質良く動作する光スキャナー1を備えたプロジェクター36とすることができる。
【0090】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、上記の実施形態に限らない。そして、上記課題の少なくとも一部を解決できる範囲での変形、改良等は上記の実施形態に含まれるものである。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0091】
(変形例1)
前記第1の実施形態では、固定部3は四角柱であり、対向領域3aは四角形であった。そして、接着剤4は四角の枠状に配置された。固定部3は四角柱に限らず、3角柱でもよく、5角以上の角数の角柱でも良い。このときにも、中心3bから離れた場所に接着剤4を配置することにより、固定部3を傾斜し難くすることができる。
【0092】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、ステップS1の接着剤塗布工程において基台2に接着剤4を塗布した。これに限らず、固定部3に接着剤4を塗布しても良い。接着剤4を塗布し易い方に塗布しても良い。これにより、生産性良く光スキャナー1を製造することができる。
【0093】
(変形例3)
前記第5の実施形態では、接着剤4は枠状に配置されたが、図6に示す配置と同様に分断された枠状に配置しても良い。
【0094】
(変形例4)
前記第6の実施形態では、光スキャナー31において固定部32は基台2側が駆動梁6側より細い角錐であった。固定部32は基台2側が駆動梁6側より太い角錐にしても良い。この場合にも、同様に接着剤4を配置することにより、駆動梁6及び可動梁10に内部応力を形成しないようにできる。
【0095】
(変形例5)
前記第6の実施形態では、光スキャナー33において固定部34は基台2側より駆動梁6側が張出した角柱であった。固定部34は基台2側が駆動梁6側より張出した形状の角柱にしても良い。この場合にも、同様に接着剤4を配置することにより、駆動梁6及び可動梁10に内部応力を形成しないようにできる。
【0096】
(変形例6)
前記第7の実施形態では、プロジェクター36は第1の実施形態における光スキャナー1を用いた。プロジェクター36は第2〜第6の実施形態における光スキャナー15,17,19,21,23,26,31,33を用いても良い。このときにも、プロジェクター36は品質良く動作する光スキャナー15,17,19,21,23,26,31,33を備えたプロジェクター36とすることができる。
【符号の説明】
【0097】
2,18,27…基台、3a,16a,22a,24a,28a,32a,34a…対向領域、3b,16b,22b,24b,28b,32b,34b…中心、3,16,22,24,28,32,34…固定部、4…接着剤、5…変位部、6…駆動梁、8…可動部、9a…光反射面、9…光反射部材、10…可動梁、11,25…駆動部、16c,18a…凹部、15,17,19,21,23,26,31,33…光スキャナー、22c,24c…突出部、29…連結板、36…画像形成装置としてのプロジェクター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射面を有する光反射部材と、
前記光反射部材を支持し、かつ回動中心軸まわりに回動可能な可動部と、
前記可動部に一端が接続され、前記光反射面と略平行に延在する複数の可動梁と、
前記可動梁の他端に接続された変位部と、
前記変位部に固定された永久磁石と、
前記可動梁の延長方向に前記変位部から隔てて配置され、前記永久磁石と協働して前記変位部を駆動する駆動部と、
前記変位部に一端が接続され前記可動梁に略直交するとともに前記光反射面と略平行に延在し、前記変位部を支持する駆動梁と、
前記駆動梁の他端が接続された固定部と、
前記固定部が固定された基台と、を備え、
前記固定部は接着剤を介して前記基台に固定され、前記接着剤は前記固定部が前記基台と対向する対向領域において、前記対向領域の中心から離れた場所に配置されることを特徴とする光スキャナー。
【請求項2】
請求項1に記載の光スキャナーであって、
前記接着剤は複数の場所に分離して配置されていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光スキャナーであって、
前記対向領域において前記中心の前記固定部または前記基台には凹部が設置されていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光スキャナーであって、
前記固定部は前記基台と対向する場所に前記対向領域の前記中心から離れる方向に突出する突出部を備え、
前記突出部において前記固定部は前記接着剤を介して前記基台に固定されていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項5】
請求項1に記載の光スキャナーであって、
前記接着剤は、前記対向領域の中心から離れた場所に枠状に配置されることを特徴とする光スキャナー。
【請求項6】
光反射面を有する光反射部材と、
前記光反射部材を支持し、かつ回動中心軸まわりに回動可能な可動部と、
前記可動部に一端が接続され、前記光反射面と略平行に延在する複数の可動梁と、
前記可動梁の他端に接続された変位部と、
前記変位部に固定された永久磁石と、
前記可動梁の延長方向に前記変位部から隔てて配置され、前記永久磁石と協働して前記変位部を駆動する駆動部と、
前記変位部に一端が接続され前記可動梁に略直交するとともに前記光反射面と略平行に延在し、前記変位部を支持する駆動梁と、
前記駆動梁の他端が接続された連結板と、
柱状の固定部が立設した基台と、を備え、
前記連結板は接着剤を介して前記固定部に固定され、前記接着剤は前記固定部が前記連結板と対向する対向領域において、前記対向領域の中心から離れた場所に配置されることを特徴とする光スキャナー。
【請求項7】
請求項6に記載の光スキャナーであって、
前記接着剤は前記連結板に接続する前記駆動梁と離れた場所に配置されることを特徴とする光スキャナー。
【請求項8】
請求項6または7に記載の光スキャナーであって、
前記接着剤は、前記対向領域の中心から離れた場所に枠状に配置されることを特徴とする光スキャナー。
【請求項9】
光源と、前記光源が射出する光の進行方向を制御する光スキャナーと、を備え、
前記光スキャナーは請求項1〜8のいずれか一項に記載の光スキャナーであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−237839(P2012−237839A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105929(P2011−105929)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】