説明

光スペックルパターン検査

脈又は心拍を検査又は確認するための方法が提案される。該方法は、まず指のような身体部分を照射するために照射光を方向付けするステップを有する。該照射光は、光スペクトルの実質的に青色光領域にある波長又は波長帯のものである。それから、身体部分の照射の結果の照射された身体部分の光スペックルパターンが、得られ、画像化される。光スペックルパターンは、心拍を代表するものであり、該スペックルパターンから抽出されたフレームの相関により、身体部分の脈又は拍動の程度が確認され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スペックルパターン検査及び分析、特にバイオメトリック又はバイオセンサ用途の光スペックル検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオメトリック装置は、セキュリティ目的の個人識別認証にますます使用されている。例えば指紋センサ装置は、銀行、空港又は保護区域にアクセスするシステムにしばしば使用される。偽の身体部分(例えば偽の指紋のレリーフ(relief)パターンをもつ偽の指が、このようなセンサを欺くために使用され得る)という点で、指紋又は他の身体部分の物理的レリーフパターンマークの照合の利用のみに頼るセキュリティシステムの使用には潜在的なリスクがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の第1の態様では、改善された技術が発明される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様によれば、本発明は、身体部分を検査する検査システムを提供し、該検査システムは、
照射光を身体部分に向けるための、照射光送出装置と、
身体部分の照射の結果である照射された身体部分の光スペックルパターン画像を取り込む画像取込装置と、
画像取込装置からの画像データを処理するプロセッサであって、身体部分の所有者の認証を確実にしようとするために、該画像データが身体部分の取り込まれた光スペックルパターンを参照スペックルパターンと比較するように処理されるプロセッサと、
を有する。
【0005】
第2の態様によると、本発明は、身体部分の所有者の識別を確かなものにするために身体部分の検査をする方法であって、
身体部分を照射するために照射光を方向付けするステップと、
身体部分の照射の結果である照射された身体部分の光スペックルパターンを画像化するステップと、
身体部分の所有者の識別を確実にしようとするために、取り込まれた身体部分の光スペックルパターンを参照スペックルパターンと比較するように、光スペックルパターン画像データを処理するステップと、
を有する方法を提供する。
【0006】
更なる態様によれば、本発明は、画像データを処理するシステムを提供し、検査で身体部分から散乱された光に対する取り込まれた光スペックルパターン画像データは、処理されると共に、身体部分の所有者の識別を確実にしようとするために、参照スペックルパターンと比較される。
【0007】
一実施例では、システムは、更に、身体部分の表面の特徴的な物理的レリーフパターンの画像(例えば指紋の画像)を取り込むと共に、身体部分の所有者の識別を確実にしようとするために、取り込まれた物理的レリーフパターン画像からの画像データを処理する手段を含む。本願の技術は、それゆえ個人認証を承認する又は否認する二重のチェックを提供することができる。
【0008】
一実施例では、システムは、身体部分の所有者が生体であることを確認するために、身体部分によって示される脈を確認する手段を含む。これを考慮して、身体部分の所有者が生体であることを確認するために、身体部分により示される脈を確認するために、画像取込装置からの光スペックルパターン画像データを処理するように、プロセッサが構成されることが好ましい。
【0009】
本発明の技術は、それゆえ、身体部分が参照の識別情報と一致することだけでなく、身体部分が生体の個人に属するだろうということをチェックすることができる。
【0010】
特に安定したスペックルパターンは、スペクトルの青領域の光が使用される場合に画像化されるということと、このような安定したスペックルパターンを観測する場合、心拍/脈測定が、画像データを処理することにより非常に簡便に確認され得るということとがわかった。
【0011】
更なる態様によれば、本発明は、それゆえ脈又は心拍を検査又は確認する方法を提供し、該方法は、
スペクトルの実質的に青色光領域にある波長又は波長帯のものであり、身体部分を照射する照射光を方向付けするステップと、
身体部分の照射の結果、照射された身体部分の光スペックルパターンを画像化するステップと、
身体部分の脈又は拍動の程度を確認するように、光スペックルパターン画像データを処理するステップと、
を有する。
【0012】
したがって、本発明は身体部分を検査する検査システムも提供し、該検査システムは、
照射光を身体部分に向け、該照射光がスペクトルの実質的に青色光領域にある波長又は波長帯のものである照射光送出装置と、
身体部分の照射の結果、照射された身体部分の光スペックルパターン画像を取り込む画像取り込み装置と、
画像取り込み装置からの画像データを処理するプロセッサであって、該画像データが、身体部分の脈又は拍動の程度を確認するように処理されるプロセッサと、
を有する。
【0013】
一実施例では、光スペックルパターンはカメラを用いて画像化され、脈又は心拍を確認するために時間的に間隔をおいて取り込まれた画像フレームからの画像データ間の相関が処理される。
【0014】
本発明は、添付の図面を参照して、単なる例として特定の実施例で更に詳述されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
光スペックル検査技術は、ある表面形状をもつつやなしの又は磨かれていない表面で散乱される(典型的にレーザ源からの)コヒーレントな光に頼る。該表面は、コヒーレント光をランダムな位相及び方向で散乱し、その結果散乱された光が見られたとき、ランダムな形状及び位置にある明るい及び暗い領域の粗い構成が見られる。このスペックルパターンは、散乱された光線の中の強め合う干渉及び弱め合う干渉の結果である。
【0016】
身体部分例えば指からスペックルパターンを得る際に、レーザからのレーザ放射光が、指の選択された領域を照射するために使用される。散乱された光が、そのとき集められるとともに、電荷結合装置(CCD)のような撮像装置を使用して画像化される。
【0017】
本発明による第1実施例に例示されるような典型的な検査システムは、図1に示される。指10は、レーザ源30からのコヒーレントなレーザ光20を用いて照射される。指は、反射光線55から光線50を形成するスペックルをより良く分離するために、プリズム40を通じて照射され、スペックルパターンは、CCD撮像装置60を用いて見られる。
【0018】
青色光は、可視のスペクトルの最も短い波長を有し、従って指のより細かい詳細を区別することができる。加えて、このプロセスで使用される青色レーザ放射光は、最も安定したスペックルパターンを提供すると分かっている。従って青色帯レーザ光が好ましい照射光である。
【0019】
検査する身体部分、すなわち指10は、該部分の固有の温度のために赤外(IR)放射光を放出するだろう。このIR放射光は、可視スペクトルの赤色帯に相当する波長を有する。その結果として、赤色光が照射光として使用された場合、CCD撮像装置60は、散乱されたスペックル形成光線に加えて、放出されたIR放射光を集めただろう。このIR放射光は、散乱された光線と干渉し、従って所望のスペックルパターンを不安定なものにするだろう。CCD撮像装置60が波長範囲に対して敏感なので、IR干渉の原因から離れた照射波長が最も安定なパターンを生成するだろう。したがって、青色照射光の使用がなされる。
【0020】
指付近の様々な位置にレーザビームを方向付けることから得られるスペックルパターンは、明確であることがわかり、顕著な明るい及び暗い場所を有する。より重要なことに、スペックルパターンは、再現可能であり、バイオメトリック識別キーとして使用可能であることがわかる。
【0021】
第2の実施例に例示されたように本発明によれば、指の指紋領域の表面から散乱された光線は、スペックルパターンに加えて、指紋のレリーフを画像化するために、レンズを使用してフォーカスされ得る。このような画像は、図2において示される。スペックルパターンにおける明確な縞70は、はっきりわかり、指紋の渦及びカーブを示すものである。このスペックルパターンは、それゆえ指の所有者を識別するために、更に使用され得る。
【0022】
指の運動は、両方の識別技術で誤った画像となり得るスペックルの変化を起こし得る。しかしながら、この運動は、フーリエ解析のような信号処理技術を用いて画像をきれいにするか、又は影響を最小にするために、指の運動に従って作動させるレーザ源を用いることにより対応され得る。
【0023】
指紋から得られるスペックルパターンの使用は、指の同一性を識別することにおいて指紋自身よりもより有益である。これは、スペックルパターンが指紋のように触れられた物体上に残らないからである。結果として、オリジナルの指を測定することなしに、オリジナルの指のスペックルパターンを複製することは不可能である。
【0024】
指紋セキュリティシステムを切り抜けるために、前に触れられた物体から指紋を複製して、この複製を人工的な指にエンボス加工することが可能であることはわかっていた。図1の検査システムを用いて指及び/又は指紋から得られたユニークなスペックルパターンを使用することに加えて、該スペックルパターンは、現行の指紋システムのこのセキュリティの不備を克服するためにも使用され得る。これは、心拍を明らかにし、従って人工の指から「生きた」指を区別するために、指の表面の運動を監視することにより達成される。
【0025】
図3に示された第3の実施例に例示されるような本発明によれば、指10は、レーザ30からのコヒーレントなレーザビーム20を用いて、指の選択された領域に照射される。散乱された光線は、カメラ80を用いて集められ、選択された時間スケールに渡って見られる。所与の時間における典型的なスペックルパターンは、図4に示される。
【0026】
身体における心臓の拍動は、血液を指の毛細血管に送り込み、血管において音波を生成することがわかる。この脈は、心拍と共に周期的に変化することがわかるスペックルパターンを監視することにより決定され得る。
【0027】
1つの特定のタイムフレームにおいて得られたスペックルパターンを、選択された参照フレーム、例えば最初及び/又は最後、と相関付けることにより、心拍の影響が、図5に示されるように明確になる。図5に示される第1プロットは、0〜105秒の期間にわたって取られたスペックルパターンの様々なフレームと参照フレームとの間の相対的重なりの一致すなわち相関を与える。1という相関は、2つのフレームが同一であることを示し、0という相関は、2つのフレームが互いに逆であることを示唆するだろう。図5の第2プロットは、短期間のスケールでの相関のパターンを示す。スペクトルの青色領域の波長を持つ光を用いることは、スペックル検査技術を用いた心拍監視能力を高めることがわかり、この図で指の拍動は、より明確になり、心拍数のより良い見積もりのために使用され得る。
【0028】
したがって、図1又は3に図示された検査システムを用いて指を識別することは、指紋セキュリティシステムに必要とされるように、生きた「拍動する」指と人工の指とを見分けるだけでなく、スペックルパターン及び/又は指紋の分析を通じて、指の所有者を決定するために使用され得る。
【0029】
上記の実施例が本発明を制限するのではなく説明し、当業者らは、請求項により規定された本発明の範囲から逸脱することなく多くの代替の実施例を設計することができるだろうということは、留意されるべきである。請求項において、括弧内に位置されたいかなる参照符号も、請求項を制限するものとして解釈されるべきではない。「有している」及び「有する」等の言葉は、全体として請求項又は明細書にリストにされたもの以外の要素又はステップの存在を排除しない。要素の単数の表記は、このような要素の複数の表記を排除せず、逆も同様である。本発明の態様は、いくつかの別個の要素を有するハードウェア、及び適切にプログラムされたコンピュータにより実施され得る。いくつかの手段を列挙する装置の請求項において、これらの手段のいくつかは、ハードウェアの同一の部品により実施され得る。ある手段が相互に異なる従属請求項において繰り返されるという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用され得ないということを示すわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、検査システムの概略的な図である。
【図2】図2は、指紋にレーザビームを向けることから得られるフォーカスされたスペックルパターンである。
【図3】図3は、心拍を確認するための検査システムの代替の図である。
【図4】図4は、指から得られた典型的なスペックルパターンである。
【図5】図5は、スペックルパターンと参照パターンとの相関を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈又は心拍を検査又は確認する方法であって、
身体部分を照射するために、実質的にスペクトルの青色光領域の波長又は波長帯である照射光を方向付けするステップと、
前記身体部分の照射の結果、前記照射された身体部分の光スペックルパターンを画像化するステップと、
前記身体部分の脈又は拍動の程度を確認するように、光スペックルパターン画像データを処理するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記光スペックルパターンがカメラを用いて画像化され、時間的に間隔をおかれて取り込まれた画像フレームからの画像データ間の相関は、前記脈又は心拍を確認するように処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
身体部分を検査するための検査システムであって、
スペクトルの実質的に青色光領域の波長又は波長帯である照射光を身体部分に方向付けする照射光送出装置と、
前記身体部分の照射の結果、前記照射された身体部分の光スペックルパターン画像を取り込むための画像取込装置と、
前記身体部分の脈又は拍動の程度を確認するように、前記画像取込装置からの画像データを処理するプロセッサと、
を有する検査システム。
【請求項4】
送出された前記照射光がコヒーレント光のビームである、請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
送出された前記照射光がレーザ光のビームである、請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
前記画像取込装置がカメラを有する、請求項3に記載の検査システム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記身体部分の脈又は拍動の程度を確認するために、時間的に間隔をあけて取り込まれた画像フレームからの画像データ間の相関を使用して確認する、請求項3に記載の検査システム。
【請求項8】
基準フレーム画像データセットが、前記相関の処理のために確認され、該基準フレームデータセットが、複数の画像フレームに対する平均の画像ピクセルデータを有する、請求項7に記載の検査システム。
【請求項9】
身体部分を検査する検査システムであって、
照射光を前記身体部分に向ける照射光送出装置と、
前記身体部分の照射の結果、前記照射された身体部分の光スペックルパターン画像を取り込む画像取込装置と、
前記画像取込装置からの画像データを処理するプロセッサであって、前記身体部分の所有者の識別を確認しようとするために、前記身体部分の前記取り込まれた光スペックルパターンを参照スペックルパターンと比較するように、前記画像データが処理されるプロセッサと、
を有する検査システム。
【請求項10】
前記システムが、前記身体部分の所有者が生体であるということを確かめるために、前記身体部分により示される脈を確認する手段を含む、請求項9に記載の検査システム。
【請求項11】
前記身体部分の所有者が生体であることを確かめるために、前記身体部分により示される脈を確認するように、前記プロセッサが前記画像取込装置からの光スペックルパターン画像データを処理する、請求項10に記載の検査システム。
【請求項12】
送出された前記照射光がコヒーレント光のビームである、請求項9に記載の検査システム。
【請求項13】
前記身体部分の表面における特徴的な物理的レリーフパターンの画像を取り込み、前記身体部分の所有者の識別を確認しようとするように、前記取り込まれた物理的レリーフパターン画像からの画像データを処理する手段を更に含む、請求項9に記載の検査システム。
【請求項14】
前記特徴的な物理的レリーフパターンが指紋又は該指紋の一部分である、請求項13に記載の検査システム。
【請求項15】
前記画像取込装置が、前記照射された身体部分の前記光スペックルパターン画像と、前記身体部分の表面における前記特徴的な物理的レリーフパターンの画像とを取り込み、前記身体部分の所有者の識別を確認しようとするように、前記プロセッサが、前記光スペックルパターン画像データと、前記物理的レリーフパターン画像データとを処理する、請求項13に記載の検査システム。
【請求項16】
前記照射光が、スペクトルの実質的に青色光領域における波長又は波長帯である、請求項9に記載の検査システム。
【請求項17】
身体部分の所有者の識別を確認しようとするために、身体部分の検査をする方法であって、
前記身体部分を照射するために照射光を方向付けるステップと、
前記身体部分の照射の結果、該照射された身体部分の光スペックルパターンを画像化するステップと、
前記身体部分の所有者の識別を確認しようとするように、前記身体部分の取り込まれた光スペックルパターンを参照スペックルパターンと比較して、光スペックルパターン画像データを処理するステップと、
を有する方法。
【請求項18】
前記システムが、前記身体部分の所有者が生体であることを確認するために、前記身体部分により示される脈を確認する手段を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記光スペックルパターン画像データが、前記身体部分の所有者が生体であることを確認するように、前記身体部分により示される脈を確認するために処理される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
更に、前記身体部分の表面上の特徴的な物理的レリーフパターンの画像を取り込むステップと、前記身体部分の所有者の識別を確認しようとするために、前記取り込まれた物理的レリーフパターン画像からの画像データを処理するステップとを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
基準フレーム画像データセットは、相関処理のために確認され、該基準フレームのデータセットが複数の画像フレームに対する平均の画像ピクセルデータを有する、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−529577(P2008−529577A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553769(P2007−553769)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/IB2006/050369
【国際公開番号】WO2006/085252
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】