光ディスク及びその製造方法
【課題】 耐熱性を有し、高温負荷試験後においてもディスクの変形が小さく、プレーヤで再生可能な耐熱性の向上した光ディスク及びその光ディスクの製造方法を提供する。
【解決手段】 第1の基板12上に、接着剤16と、光透過性の第2の基板14とが順次形成され、且つ前記第2の基板の前記第1の基板側には反射層及び/又は記録層が形成されてなり、前記第2の基板側からレーザ光を照射して情報の記録再生を行う光ディスクにおいて、前記第1の基板は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなり、前記第2の基板は、前記レーザ光の波長に対して80%以上の透過率を有するポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる。
【解決手段】 第1の基板12上に、接着剤16と、光透過性の第2の基板14とが順次形成され、且つ前記第2の基板の前記第1の基板側には反射層及び/又は記録層が形成されてなり、前記第2の基板側からレーザ光を照射して情報の記録再生を行う光ディスクにおいて、前記第1の基板は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなり、前記第2の基板は、前記レーザ光の波長に対して80%以上の透過率を有するポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに係り、特に、基板に植物を原料としたプラスチックであるポリ乳酸樹脂を用いた環境配慮型の光ディスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油化学工業の発展とプラスチック合成、加工技術の進歩に伴い、種々なプラスチック製品が大量に生産され、これに伴って使用済みのプラスチック製品を産業廃棄物や一般廃棄物として排出される廃プラスチックの量も、急速に増加してきた。例えば平成14年の我が国における廃プラスチックの量は年間1000万トン近くになるに至った。更に、この廃プラスチックの量の増加傾向は続いており、廃プラスチックの処分問題は深刻化しつつある。
現在、このような廃プラスチックの60%前後は単純焼却や埋立によって処分されている。しかしながら、燃焼熱カロリーの高い廃プラスチックを通常のゴミ焼却場で焼却処分すると、異常燃焼し、焼却炉の炉体等を傷めるという問題がある。そして、廃プラスチックを単純焼却することで、大気中に放出される炭酸ガスが増加し、地球温暖化という観点からも問題がある。
【0003】
さらに、廃プラスチックを埋立によって処分する場合には、廃プラスチックは軽くてかさばるため、廃棄物の中でも大きな容積を占め、埋め立て地などの廃棄物最終処分場の用地不足が切迫化してきた現在、将来に亘ってこのような処分方法を続けることは困難である。
このようにプラスチックの廃棄物処理という地球環境の観点からも、また化石資源(原油)の枯渇という地球資源の観点から、植物を原料としたプラスチックや酸素や微生物で分解される生分解性プラスチックの研究開発が盛んに行われるようになってきた。
【0004】
中でもトウモロコシなどのでんぷんを原料としたポリ乳酸樹脂は、生分解性を有するとともに、再生可能資源である植物由来の環境低負荷樹脂であることから、特に注目されている。例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3等にはフィルム、包装材料への応用例が開示されており、グリーンプラスチック(205〜230ページ 2002年シーエムシー出版)には、ポリ乳酸樹脂を用いた応用例として、例えば生ゴミ袋、食品容器、包装容器、包装フィルムなど、耐熱性や耐衝撃性などが厳しく要求されない、主に機能的に単純な用途を対象にした例が示されている。また、例えば特許文献4、特許文献5、特許文献6等には、耐熱性を向上させたポリ乳酸樹脂を主成分とする成形材料の例が開示されており、最近は、自動車の内装部品や電子機器・OA機器の筐体などの高度な機能が必要な分野、用途にも採用され始めている。
【0005】
一方、近年、大容量の情報を記録できるコンパクトディスク(CD)やデジタルバーサタイルディスク(DVD)などの光ディスクの普及はめざましいものがある。特に音楽や映像、データベース、コンピュータプログラムなどの情報を微細な凹凸パターン(いわゆるピット)として記録された基板の上に、アルミニウムなどの金属反射層と保護層を順次積層した再生専用型光ディスクは、大量に安価に製造できるため膨大な数のディスクが製造され、広く普及している。さらに追記記録が出来るCD−Rは再生専用型光ディスク(CD−ROM)以上に生産、消費され始めた。またDVD−Rや書き換え可能なCD−RWやDVD−RW、DVD−RAMなどのディスクも急速に普及し始めている。
【0006】
ここで従来のCDやDVDなどの光ディスクの一例を説明する。図12は反射層(或いは記録層)が1層の光ディスクを示し、図13は反射層(或いは記録層)が2層の光ディスクを示す。
図12に示す場合には、表面に凹凸(ピット)や溝、図示例では凹凸2が形成された厚さが1.2mmまたは0.6mmの透明基板4に反射層や記録層、例えば反射層6を形成し、この反射層6側に、接着剤層8を介して別の基板10を接合して光ディスクを形成している。この場合、記録、或いは再生用のレーザ光Lは、上記透明基板4側から照射される。
【0007】
また図13に示す場合には、図12に示すような凹凸2と反射層6とを有する透明基板4を形成し、これとは別に凹凸2Aと反射層6Aとを有する基板4Aを形成し、これらの両基板4、4Aを、間に接着剤層8を介して接合して光ディスクを形成している。この場合、反射層6としては半透過の反射層を用いるようにし、基板4A側にもレーザ光Lが照射されるようにする。尚、反射層6Aは全反射の反射層とする。そして、この光ディスクに再生または記録再生に用いるレーザ光を照射し、透明基板4を通して大量の信号の再生や記録を行っている。
このように大量の情報を記憶する記憶媒体として上記したような光ディスクが普及し、全世界で200億枚以上が生産され、さらに今後もその生産量は増加していくと考えられる。これに伴い不要になって廃棄される光ディスクの数量も飛躍的に増え始めており、地球環境に及ぼす影響は大きくなりつつある。
【0008】
これらの光ディスクに使用されている材料のうち、最も多量に使用されているのはプラスチック基板である。従来この基板に使用されているプラスチックにはポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂などの、枯渇性化石(石油)資源を原料とした熱可塑性透明樹脂が使用されている。中でも実際の光ディスクのほとんどは光透過性、加工性、生産性などの面から、ポリカーボネート樹脂が使用されている。例えばコンパクトディスク(CD)では、重量換算で98%以上、またDVDでも95%以上がプラスチック基板で占められている。したがって、地球環境に与える負荷を低減すると共に、枯渇性化石(石油)資源を節減するという観点からも上記光ディスクの基板に、毎年再生可能な植物を原料として合成された植物由来のプラスチックであるポリ乳酸樹脂を用いることは、好ましいことである。
【0009】
【特許文献1】特開平3−290461号公報
【特許文献2】特開平4−146952号公報
【特許文献3】特開平4−325526号公報
【特許文献4】特開2003−253009号公報
【特許文献5】特開2003−165917号公報
【特許文献6】特開平4−325526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記したような通常のポリ乳酸樹脂は、ガラス転移温度が60℃前後であり、通常の成形方法で得られる成形品は耐熱性が乏しく、低荷重たわみ温度(DTUL)が約55〜58℃と低く、比較的高温環境下でこの成形品を使用すると熱変形(形状変形)を生じてしまうと言う問題点があった。例えば、ガラス転移温度が60℃の通常のポリ乳酸樹脂を基板材料として用いて作製したDVDディスクを、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクは、変形が著しくてプレーヤでの再生が不能になってしまうという問題点がある。
【0011】
また耐熱性を向上させたポリ乳酸樹脂を主成分とする前記した成形材料は、通常、不透明または著しく透明性が落るので、光ディスクの透明基板として使用するには光透過性が低く使用できないという問題点があった。
本発明は、上記のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、植物原料由来のポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックを基板として用いることにより、耐熱性を有し、高温負荷試験後においてもディスクの変形が小さく、プレーヤで再生可能な耐熱性の向上した光ディスク及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、ポリ乳酸樹脂を光ディスクの基板に用いたときの上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、2枚の基板を貼り合わせて構成された光ディスクにおいて、記録/再生レーザ光が入射される側の基板は透明性を維持したポリ乳酸樹脂を主成分とする基板を用いて、さらに記録/再生レーザ光が入射されない側の基板に荷重たわみ温度が一定値以上有するポリ乳酸樹脂を主成分とする基板を用いて、この2枚の基板を貼り合わせて作製した貼り合わせ型の光ディスクは、高温負荷試験後においてもディスクの変形が小さく、プレーヤで再生可能な耐熱性の向上した光ディスクが得られる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
【0013】
また発明者等は、記録または再生用のレーザ光が入射される側の基板に、ポリ乳酸樹脂と荷重たわみ温度が一定以上の熱可塑性樹脂との混合物であるアロイ樹脂を用いることにより、高温負荷試験後においても変形が更に少なく、より過酷な環境下においてもプレーヤで再生可能な耐熱性の向上した光ディスクを得ることができる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
また更に、本発明者等は、基板の凹凸のピットまたは溝が形成され、且つ反射層及び/又は記録層が形成された側に、硬化性樹脂保護層を設けることにより、更に、この完成後のディスクを所定の温度以下でアニール加熱処理することで、より一層、耐熱性の向上した光ディスクが得られる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
【0014】
すなわち請求項1に係る発明は、第1の基板上に、接着剤と、光透過性の第2の基板とが順次形成され、且つ前記第2の基板の前記第1の基板側には反射層及び/又は記録層が形成されてなり、前記第2の基板側からレーザ光を照射して情報の記録再生を行う光ディスクにおいて、前記第1の基板は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなり、前記第2の基板は、前記レーザ光の波長に対して80%以上の透過率を有するポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなることを特徴とする光ディスクである。
【0015】
請求項2に係る発明は、第1の基板上に、接着剤と、光透過性の第2の基板とが順次形成され、且つ前記第1、第2の基板の互いに対向する側にそれぞれに第1、第2の反射層及び/又は第1、第2の記録層が形成されてなり、前記第2の基板側からレーザ光を照射して情報の記録再生を行う光ディスクにおいて、前記第1の基板は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなり、前記第2の基板は、前記レーザ光の波長に対して80%以上の透過率を有するポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなることを特徴とする光ディスクである。
【0016】
この場合、例えば請求項3に規定するように、前記プラスチックは、ポリ乳酸樹脂と、該ポリ乳酸樹脂以外の他の光透過性の熱可塑性樹脂との混合物よりなるアロイ樹脂よりなり、前記熱可塑性樹脂は、ISOで規定される底荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が80℃以上であって前記アロイ樹脂中に40%以上分散されている。
また例えば請求項4に規定するように、前記第1の基板と第2の基板の内、少なくとも前記第2の基板の表面に凹凸のピットまたは溝が形成されて、且つ前記反射層及び/又は記録層が形成された面上に熱、または紫外線にて硬化する硬化性樹脂保護層が形成されている。
請求項5に係る発明は、請求項1または2に係る光ディスクの製造方法において、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板は、該第1の基板の成形後、90℃以上の加圧下で熱処理が施されることを特徴とする光ディスクの製造方法である。
請求項6に係る発明は、第1の基板上に接着剤層を形成する一方、光透過性の第2の基板上に反射層及び/又は記録層を形成した後、前記接着剤層側を前記反射層及び/又は記録層に対向配置させ、前記接着剤層を介して前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせて作製する光ディスクの製造方法において、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせた後、50〜60度℃の温度で熱処理を行なうことを特徴とする光ディスクの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光ディスクによれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
植物原料由来のポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックを基板として用いることにより、DVDの規格に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後においてもディスクの変形が小さく、再生装置、或いは記録再生装置などのプレーヤで再生可能な耐熱性の向上した光ディスク及びその製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明に係る光ディスクの一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明の光ディスクの第1実施例を示す構成図、図2は本発明の光ディスクの第2実施例を示す構成図、図3は本発明の光ディスクの第3実施例を示す構成図である。
【0019】
<第1実施例>
まず、第1実施例について説明する。この第1実施例の光ディスクは、例えば再生専用シングルレイヤーDVDディスクに対応するものである。図1中の第1実施例の光ディスクD1は、第1の基板12と、光透過性の第2の基板14とを有し、これらの両基板12、14の内の少なくともいずれか一方の表面に反射層及び/又は記録層を有する微小な凹凸や溝を形成し、そして、この両基板12、14を、上記微小な凹凸や溝が形成されている面側を対向させて間に接着剤層16を介在させて接合することにより製造される。記録、或いは再生用のレーザ光Lは第2の基板14の表面側より照射される。
図示例の場合には、第2の基板14の内側の表面のみにトラッキングを行うピットとなる凹凸18が形成されている場合を示しており、この凹凸18が形成されている表面の全面に、反射層20が形成されている。
【0020】
前述のように凹凸18に替えて渦巻状、或いは同心円状の溝(「ウォブル」とも称す)を形成する場合もある。また、反射層20に替えて記録層を設ける場合もあるし、反射層20と記録層とを重ねて設ける場合もある。これらの点は、後述する第2及び第3実施例でも同様である。
ここで重要な点は、第1の基板12を、ISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックにより形成し、第2の基板14を、レーザ光Lの波長に対して透過率が80%以上を有する透明なポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックにより形成する点である。
【0021】
具体的には、上記第2の基板14に用いられるポリ乳酸樹脂を主体とするプラスチックは、厚さ0.6mmにおいて再生を行うレーザ光Lの波長に対して透過率が80%以上の透明性を有しておれば特に限定はなく、例えば乳酸を主成分とするモノマーから合成されたポリ乳酸樹脂が好ましい。例えば三井化学から市販されている「レイシアH100,H100J」や、カーギル・ダウ製「Nature Works」などが好ましい材料である。尚、第2の基板14の透過率が80%よりも低いと、反射層20で反射された反射光が少な過ぎてトラッキングが困難になったり、再生が困難になったりする。さらにエステル形成能を有するその他のモノマー成分と共重合した共重合ポリ乳酸樹脂、またはポリ乳酸樹脂と他の透明プラスチックを混合したポリ乳酸樹脂を主成分とする混合樹脂でもかまわない。
【0022】
上記ポリ乳酸樹脂を用いた第2の基板14は、通常のポリカーボネート樹脂を用いたDVDを作製するときと同様に、金型に予め微小な凹凸(ピット)が形成されたスタンパーを取り付け、射出成形で厚み0.6mmのディスク形状の素板が作製される。このときの樹脂温度、金型温度、成形サイクルなどの成形条件は、使用するポリ乳酸樹脂の溶融温度、ガラス転移温度等を考慮して最適化される。
次に上記射出成形にて得られたポリ乳酸樹脂を主成分とする光透過性の第2の基板14は、真空チャンバー中でDC(直流)またはRFスパッタリング法にて反射層20が形成される。この反射層20に用いる材料に特に制限はないが高反射率が得られる例えばAu、Al、Agまたはその合金が好ましい。
【0023】
次に第1の基板12に用いられるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックは、上述のようにISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるプラスチックを用いる。また、好ましくは125℃以上であるプラスチックを用いる。この温度が100℃よりも低いと、貼り合わせ光ディスク形状にて高温負荷試験を実施すると熱変形が生じてしまう。このとき第1の基板12は必ずしも透明である必要はなく、ポリ乳酸樹脂の中に無機フィラーを分散させた複合材料や、ポリ乳酸樹脂と親和性が良く、耐熱性の高い樹脂との混合樹脂(アロイ)を用いるのが好ましい。例えば、ポリ乳酸樹脂に層状ケイ酸塩を0.5〜3wt%程度ナノメートルのオーダーで分散させた複合材料や、ポリ乳酸樹脂にポリアセタール樹脂を溶融混練りした混合樹脂などが好適である。
【0024】
上記ポリ乳酸樹脂を主成分とした複合材料や混合樹脂を用いた第1の基板12は、通常のポリカーボネート樹脂を用いたDVDを作製するときと同様に、金型に凹凸のないミラースタンパーを取り付け、射出成形で厚み0.6mmに作製される。このときの樹脂温度、金型温度、成形サイクルなどの成形条件は、使用するポリ乳酸樹脂の複合材料や混合樹脂の溶融温度、ガラス転移温度等を考慮して最適化される。
【0025】
次に、上述のように形成した第1及び第2の基板12、14を貼り合わせて図1に示した再生専用シングルレイヤーDVDディスクD1を製造する。このとき、第2の基板14の反射層20を形成した側の面と、第1の基板12とを対向させ、その間に接着剤層16を介在させる。この貼り合わせの時に接着剤層16に使用される材料は、生産性、歩留まりの点からアクリレート系の紫外線硬化樹脂を使用するのが好ましく、貼り合わせ方法は、いずれか一方の基板に紫外線硬化樹脂を塗布した後、その上からもう一方の基板を重ね合わせ、重なった2枚の基板12、14を回転して紫外線硬化樹脂を全面に行き渡らせて貼り合わせする、いわゆるスピン貼り合わせの方法が好ましい。ここで紫外線硬化樹脂としては例えばエポキシアクリレートやウレタンアクリレートまたはそれらの混合物が主成分である紫外線硬化樹脂が好ましい。またこの時使用される接着剤は必ずしも透明である必要はなく、シリカ、マイカなどの無機フィラーを含有分散させ熱変形温度を向上させた接着剤を用いても良い。
【0026】
このようにして、耐熱性を有し、高温負荷試験後においてもディスクの変形が小さく、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後においてもプレーヤで再生可能な耐熱性の向上した再生専用シングルレイヤーDVDディスクを得ることができる。
【0027】
<第2実施例>
次に第2実施例について説明する。この第2実施例は、例えば反射層、或いは記録層が2層形成された再生専用デュアルレイヤーDVDディスクに対応するものである。尚、図1に示す構成部分と同一構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
図2中の第2実施例の光ディスクD2では、第2の基板14の表面には、ピットとなる凹凸18が形成されて、このピット面の全面に反射層20Aが形成されている点は、先の第1実施例の場合と同様であるが、この第2実施例では、上記反射層20Aは、第1実施例の全反射の反射層20とは異なって半透過の反射層が用いられており、この下層にレーザ光を透過させるようになっている。更に、第1の基板12の表面にも微小な凹凸(ピット)22が設けられており、ピット面の全体に反射層20Bが形成されている。尚、上記凹凸に替えて螺旋状、或いは同心円状の溝を設けてもよいし、更に反射層20Bに替えて記録層を形成する場合もあるし、反射層と記録層とを重ねて設ける場合もある。
【0028】
そして、第1の基板12の反射層20Bが形成された側の面と、第2の基板14の半透過の反射層20Aが形成された側の面とを光透過性の接着剤層24で貼り合わせることで光ディスクD2を形成する。このように形成した光ディスクD2は、耐熱性を有し、高温負荷試験後においてもディスクの変形が小さく、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後においてもプレーヤで再生可能な耐熱性の向上した再生専用デュアルレイヤーDVDディスクを得ることができる。
またこの第2実施例の貼り合わせに使用される接着剤層24は、前述のように透明であることが必要であり、少なくとも再生または記録/再生を行うレーザ光の波長に対して透過率が90%以上あることが望ましい。
【0029】
<第3実施例>
次に第3実施例について説明する。この第3実施例は再生専用シングルレイヤーDVDディスクに対応するものである。尚、図1及び図2に示す構成部分と同一構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
図3中に示されるこの第3実施例の光ディスクD3は、先の第1及び第2実施例の光ディスクよりさらに耐熱性を向上させたDVDディスクであり、夏期の自動車内など温度が80℃近くに達する環境下に置かれた後でも熱変形が小さく使用可能な光ディスクである。
【0030】
すなわち、この光ディスクD3では、第1の基板12としては、図2に示す第2実施例と同様に、その表面に凹凸(ピット)22が形成されており、そのピット面の全面に全反射の反射層20Bが形成されている。そして、光透過性の第2の基板26としては、レーザ光の波長に対して透過率が80%以上を有する透明なポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックを用いており、ここではこのプラスチックは二軸延伸されたシート状となっている。そしてこのシート状の第2の基板26と上記第1の基板12の反射層20Bとの間に、図2に示したような透明な接着剤層24を介在させて両基板26、12を接合して光ディスクD3を形成する。
【0031】
具体的には、第1の基板12に用いられるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックは、ISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるプラスチックを用いて、微小な凹凸(ピット)22を有する厚さ0.6mmの素板を射出成形で作製する。このとき形成されるピットは、従来の再生専用シングルレイヤーDVDディスクとは逆に螺旋状にピットが形成されたスタンパーを用いて成形される。さらにAlなどの反射層20Bを形成させてディスク中間体を作製する。
【0032】
次に厚さ550ミクロンに二軸延伸された透明なポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックのシートを外径120mm、内径15mmに打ち抜き、光透過性の第2の基板26を作製する。この二軸に延伸されたシートに使用されるポリ乳酸樹脂は、通常の混合物のないプレーンのポリ乳酸樹脂(例えば三井化学から市販されている「レイシアH100,H100J」)を用いても良いし、再生または記録/再生を行うレーザ光Lの波長に対して透過率が80%以上を有するポリ乳酸樹脂を主成分とする他の樹脂との混合樹脂を用いてもよい。このようにして二軸延伸されたシートから作製することにより、高い透明性を有すると共に耐熱性の向上した光透過性の第2の基板26が得られる。
【0033】
上記のようにして作製した第1の基板12を有すディスク中間体の反射層20Bが形成された面側と第2の基板26を、光透過性の接着剤層24を介して貼り合わせる。このとき貼り合わせに使用される接着剤は、透明であることが必要である。少なくとも再生または記録/再生を行うレーザ光Lの波長に対して透過率が90%以上あることが望ましい。このようにして得られた再生専用シングルレイヤーDVDディスクD3は、さらに耐熱性を有し、高温負荷試験後においてもディスクの変形が小さく、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後においてもプレーヤで再生可能なだけでなく、自動車内など温度が80℃近くに達する環境下に置かれた後でも熱変形が小さく使用可能なディスクである。
【0034】
尚、この第3実施例の場合には、DVDディスクに適用するだけでなく、例えば第1の基板12の厚さをより厚くして例えば1.1mmとした次世代の光ディスクに適用してもよい。例えば射出成形によってピットまたは溝が形成された厚さ約1.1mmの基板に反射層を形成し(記録型の場合は記録層も順次形成し)、接着剤層を介して厚さ約0.1mmの透明カバー層を貼り合わせて光ディスクを構成してもよい。これによれば、レーザ光の記録波長を短くし、高NAの対物レンズを用いたDVD、さらに大容量の記録が可能な次世代光ディスクシステム(いわゆるBlu−ray Disc)にも適応が可能である。
【0035】
<第4実施例>
次に第4実施例について説明する。先の第1実施例においては、ポリ乳酸樹脂を主成分とした複合材料や混合樹脂を用いた第1の基板12は、通常のポリカーボネート樹脂を用いたDVDを作製するときと同様に、金型に凹凸のないミラースタンパーを取り付け、射出成形で厚み0.6mmに作製され、このときの樹脂温度、金型温度、成形サイクルなどの成形条件は、使用するポリ乳酸樹脂の複合材料や混合樹脂の溶融温度、ガラス転移温度等を考慮して最適化されるが、この第4実施例においては、比較的低い金型温度、例えば20℃〜60℃の金型温度で射出成形される。成形後の第1の基板12は、基板に接触する部分が平坦なガラス製の熱処理金型に挟み、さらに熱処理金型内の第1の基板12に圧力が加わるように熱処理金型上に重りを乗せ、第1の基板12は熱処理金型及び重りとともに90℃以上の熱処理炉の中に投入される。熱処理金型が90℃になった後、一定時間経過後、第1の基板12は熱処理金型及び重りとともに熱処理炉より取り出し、室温になるまでそのまま放置する。熱処理金型が室温になった後、第1の基板12は熱処理金型内から取り出され、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板12ができあがる。
【0036】
この際、この第1の基板12を金型に重ね合わせた場合にピットの凹凸18が接触しないように、第1の基板12に凸部を設けることがあるが、そのような場合はこの熱処理金型の形状はその凸部を逃げた形状とする。この熱処理金型の材質はガラス製のほか、ステンレスなどの金属製等平坦面が加工できるものであればよい。また、熱処理金型内の第1の基板12に圧力が加わるようにする方法としては、重りを乗せる方法だけでなく、油圧や空圧を用いるなどの方法があり、いずれにしても熱処理金型に圧力が加わる方法であれば、どのような方法でもよい。
この第1の基板12に90℃以上の熱処理を行うのは、加圧が行われた後、あるいは加圧と同時に熱が加わるようになっていれば良く、第1の基板12の熱処理炉への投入のタイミングと熱処理炉の温度と時間は適宜選択されてよい。この第1の基板12の熱処理炉からの取り出しのタイミング及び熱処理金型からの取り出しのタイミングや方法については適宜選択されてよい。また、熱処理金型自体に加熱機構を設けてもよい。
【0037】
先の第1実施例では、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板12を得る方法としては、射出成形工程のみでポリ乳酸樹脂を結晶化させ耐熱性を上げたが、この場合、射出成形金型温度は比較的高い温度である90℃以上となっている。この際、第1の基板12を射出成形金型より取り出すときに、第1の基板12は比較的高い温度である90℃に近い状態で、射出成形金型内の突き出し機構で押されるため、第1の基板12の反りは市販のDVDプレーヤで再生可能な平坦な光ディスクD1を得るのには十分ではあったが比較的大きな反りとなっていた。この反りをさらに軽減し、さらに平坦な光ディスクD1が得られるようにしたのがこの第4実施例である。上記したように、この第4実施例では比較的低い射出成形金型温度、例えば20℃〜60℃の金型温度で射出成形され、平坦な第1の基板12を得た後、この第1の基板12は平坦な状態のまま加圧下、90℃以上で熱処理を施すことでポリ乳酸樹脂を結晶化させ耐熱性を上げている。このような第4実施例のような方法をとることで、より平坦な第1の基板12を得ることが可能となった。
【0038】
<第5実施例>
次に第5実施例について説明する。先の第1実施例では貼り合わせにより光ディスクD1を得た後には、処理は何も行っていないが、この第5実施例では貼り合わせ後の光ディスクD1を、ディスクに接触する部分が平坦なガラス製の熱処理金型に挟み、さらに熱処理金型内の光ディスクD1に圧力が加わるように、光ディスクD1の上側の熱処理金型の質量を調整し、光ディスクD1は熱処理金型とともに50℃以上の熱処理炉の中に投入される。熱処理金型が50℃になった後、一定時間経過後、光ディスクD1は熱処理金型とともに熱処理炉より取り出し、室温になるまでそのまま放置する。熱処理金型が室温になった後、光ディスクD1は熱処理金型内から取り出され、平坦な光ディスクD1ができあがる。
【0039】
この際、光ディスクを金型に重ね合わせた場合に光ディスクの信号部が接触しないように、光ディスクD1に凸部を設けることがあるが、そのような場合はこの熱処理金型の形状はその凸部を逃げた形状とする。熱処理金型の材質はガラス製のほか、ステンレスなどの金属製等平坦面が加工できるものであればよい。また、熱処理金型内の光ディスクD1に圧力が加わるようにする方法としては、熱処理金型の質量を調整する方法だけでなく、重りを乗せる方法や油圧や空圧を用いるなどの方法があり、いずれにしても熱処理金型に圧力が加わる方法であれば、どのような方法でもよい。
この光ディスクD1に50℃以上の熱処理を行うのは、加圧が行われた後、あるいは加圧と同時に熱が加わるようになっていれば良く、光ディスクD1の熱処理炉への投入のタイミングと熱処理炉の温度と時間は適宜選択されてよい。この光ディスクD1の熱処理炉からの取り出しのタイミング及び熱処理金型からの取り出しのタイミングや方法については適宜選択されてよい。また、熱処理金型自体に加熱機構を設けてもよい。
【0040】
先の第1実施例では、市販のDVDプレーヤで再生可能な平坦な光ディスクD1を得るのには十分ではあったが比較的大きな反りとなっており、この反りをさらに軽減し、さらに平坦な光ディスクD1が得られるようにしたのがこの第5実施例である。この第5実施例のような方法をとることで、第1の基板12及び第2の基板14及び接着剤層16の残留応力を除去でき、より平坦な光ディスクD1を得ることが可能となった。
なお、上記第4実施例、第5実施例は第1実施例の構成の光ディスクについて行ったものであるが、第2及び第3実施例の構成の光ディスクについても同様に実施することが可能である。
【0041】
<第6実施例>
次に第6実施例について説明する。この第6実施例では、第1〜第5実施例で用いた第1基板や第2基板を構成するプラスチックを、ポリ乳酸樹脂と、該ポリ乳酸樹脂以外の他の熱可塑性樹脂との混合物よりなるアロイ樹脂により形成し、前記熱可塑性樹脂は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が80℃以上であって前記アロイ樹脂中に40%以上含有されるように構成した点に特徴がある。
具体的には、本実施例に使用する第1の基板12は、第4実施例と同様にして作製する。すなわちポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックを比較的低い射出成形金型温度、例えば20℃〜60℃の金型温度で射出成形し、平坦な第1の基板12を得た後、この第1の基板12は平坦な状態のまま加圧下、90℃以上で熱処理を施すことでポリ乳酸樹脂を結晶化させて耐熱性を上げ、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上である第1の基板12を作製する。
【0042】
次に、第2の基板14は、ポリ乳酸樹脂とISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の加重たわみ温度(DTUL)が80℃以上である他の透明な熱可塑性樹脂との混合物であるアロイ樹脂を用いて射出成形する。このとき第2の基板14は、信号を記録・再生するレーザ光Lが透過する必要があるため、前記レーザ光Lに対して80%以上の透過率が必要である。このため前記アロイ樹脂も高い透明性が必要であり、アロイ樹脂の一部を構成する上記透明な熱可塑性樹脂の屈折率は、ポリ乳酸樹脂の屈折率1.46に近い事が望ましい。具体的には上記熱可塑性樹脂は1.53〜1.40の範囲の屈折率を有する樹脂が好適であり、さらに1.49〜1.44の範囲の屈折率を有する樹脂がさらに好適である。前記屈折率の範囲にあり、且つDTULが80℃以上である上記透明な熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA、屈折率1.49)、ポリメチルペンテン(TPX、屈折率1.47)、ポリアセタール(POM、屈折率1.48)、酢酸セルロース(屈折率1.50)などが挙げられる。
【0043】
また上記アロイ樹脂の一部を構成する上記透明な熱可塑性樹脂の屈折率が、前記屈折率の範囲を超えている場合においては、アロイ樹脂を作製する際に混錬機等により溶融混錬りを行って上記熱可塑性樹脂を分散させ、光ディスクの記録再生装置に使用されるレーザ光の波長以下にまで小さく分散される必要がある。好ましくは分散される熱可塑性樹脂の粒径(ドメイン)は、600nm以下に分散していることが望ましい。上記熱可塑性樹脂が600nm以下に分散することで、ポリ乳酸樹脂と屈折率の異なる透明な熱可塑性樹脂がポリ乳酸樹脂中に混合されていても、光ディスクの記録再生装置に使用するレーザ光の波長に対して透明性が保てるとともに、ポリ乳酸樹脂より耐熱性の高い熱可塑性樹脂が強化繊維的に分散しており、耐熱性の向上したアロイ樹脂を得ることができる。このようなポリ乳酸樹脂とアロイ樹脂を構成させる透明な熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂脂環式ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0044】
また上記のようにして作製されたアロイ樹脂中の荷重たわみ温度(DTUL)が80℃以上である透明な熱可塑性樹脂の含有量は少なくとも40%以上必要である。この含有量が40%を下回る場合では、耐熱性を向上させる効果はほとんどなく、40%以上含有することで、その効果が現れてくる。また上記含有量は60%以上であることが望ましい。
ここで、植物由来という環境に配慮したポリ乳酸樹脂を出きるだけ多く使用するという観点で見ると、ポリ乳酸樹脂の含有量を多くすることが望ましい。このため荷重たわみ温度(DTUL)の温度がより高い樹脂を用いることが望ましいが、最終形態である光ディスクに求められる耐熱性、ポリ乳酸樹脂との相溶性、得られるアロイ樹脂の透明性などを考慮して含有比率は決めることが望ましい。
【0045】
<第7実施例>
次に第7実施例について説明する。この第7実施例では、第1〜第6実施例で用いた、前記第1の基板と第2の基板の内、少なくとも前記第2の基板の表面に凹凸のピットまたは溝が形成されて、且つ前記反射層及び/又は記録層が形成された面上に熱、または紫外線にて硬化する硬化性樹脂保護層を形成するようにした点に特徴がある。ここでは、一例として再生専用シングルレイヤーDVDディスクに対応する光ディスクを例にとって、第1実施例との相異を示して説明する。図4は本発明の光ディスクの第7実施例を示す構成図である。
【0046】
この第7実施例の光ディスクが、図1に示す先の第1実施例に対して異なる点は、図4に示すように、第2の基板14上に形成された微小な凹凸のピットや溝の形状変化を保護するための硬化性樹脂保護相30を形成したことに特徴があり、それ以外は第1実施例と同様の構成及び材料を用いており詳細は省略する。
すなわち図4中の第7実施例の光ディスクD7は、第1の基板12と、光透過性の第2の基板14とを有し、少なくとも第2の基板14の一方の表面に反射層及び/又は記録層を有する微小な凹凸や溝を形成し(図9中では凹凸18が形成されている)、上記微小な凹凸や溝が形成されている面側に熱または紫外線にて硬化する硬化性樹脂保護層30を設ける。このとき硬化性樹脂保護層30は、60℃付近にガラス転移点を示し、形状変化が起こり易い比較的耐熱性の劣る光透過性の透明なポリ乳酸樹脂製の第2の基板14が、ガラス転移点付近、またはそれ以上の温度の環境負荷がかかったときに、ピットの形状変化(変形)を抑える目的で形成されている。
【0047】
このような硬化性樹脂保護層30としては、熱可塑性でなく架橋密度が高く、ガラス転移点が高い硬化性樹脂が好ましく、上記のように熱硬化または紫外線硬化樹脂を用いる。さらにこの硬化樹脂の硬度は、鉛筆硬度でH以上の硬さをもつ硬化性樹脂が好ましい。このような材料としては、エポキシアクリレート樹脂やウレタンアクリレート樹脂またはそれらの混合物が主成分である紫外線硬化樹脂などが好ましく、具体的には日本化薬製HOD−3200、HOD−3500、HOD−3603、三菱レイヨン製MH−7421、大日本インキ製SD−715、GE東芝シリコーン製XR39−C1008、ソニーケミカル製SK−5110などが挙げられる。このような硬化性樹脂保護層30は、おもにスピンコート法で1〜50ミクロン程度の厚みで形成される。特に5〜20ミクロン程度の厚みに形成するのが好ましい。
【0048】
このようにして少なくとも第2の基板14のピットや溝が形成された側に反射層20及び硬化性樹脂保護層30が形成された第2の基板14と、接着剤層16を介在させて第1の基板12とを接合することにより光ディスクD7が製造される。この光ディスクD7に対して、記録、或いは再生用のレーザ光Lは第2の基板14の表面側より照射される。
【0049】
このようにして得られた光ディスクD7は、温度50℃〜60℃でアニール処理を行う。これは透明な第2の基板14を主に構成するポリ乳酸樹脂のガラス転移温点以下でアニール加熱処理を行うことで、硬化性樹脂保護層30がピットの凹凸18の形状を保護しつつ、基板成形時に生じた応力を緩和させることが可能になり、その後の例えば55℃での高温環境試験による変形を小さくさせることができる。
尚、アニール処理温度は、第2の基板14を主に構成するポリ乳酸樹脂のガラス転移温点以下であれば、特に限定はないが50℃〜60℃の範囲が好ましい。更にアニール時間も特に限定はないが、基板成形時に生じた応力を十分に緩和させる程度の時間、アニールすることが好ましく、例えば55℃のときは30分から3時間程度が好適な時間である。またアニール温度を比較的低い温度で行う場合は、アニール時間を数時間から数十時間行うのが好ましい。更に、アニール温度が50℃よりも低いと、アニール時間として更に長時間を要し、スループットが大幅に低下してしまう。
【0050】
このようにして、耐熱性を有し、高温負荷試験後においてもディスクの変形がさらに小さく、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定める高温(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)に基づいて実施した後においてもプレーヤで再生可能な耐熱性の向上した再生専用シングルレイヤーDVDディスクを得ることができる。
ここでは、第1実施例に第7実施例の発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限定されず、第2実施例〜第6実施例に対しても、この第7実施例の発明を適用することができる。この場合、第2実施例のように、反射層や記録層が2層ある2レイヤー構造の光ディスクの場合には、第1の基板側にも硬化性樹脂保護層を設ける。更に、第3実施例のように、第1の基板12側だけに凹凸や溝が形成されている場合には、第1の基板12側に硬化性樹脂保護層を形成することになる。
【0051】
<各実施例の評価>
次に実際に上記各実施例の光ディスクを製造して評価を行ったので、その評価結果について説明する。
(第1実施例の評価)
図5は第1実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
まず、三井化学製のポリ乳酸樹脂ペレット(レイシアH100)を用いて、射出成形機(日精樹脂製 M040E)の金型にDVD規格に準拠した信号ピットが形成されたスタンパーを取り付けてシリンダー温度230℃、金型温度50℃でDVD規格に準拠した信号ピットが形成された厚さ0.6mmの光透過性の第2の基板14を作製した。この時、この第2の基板14のDVD再生レーザ光の波長である650〜660nmでの光透過率は92%であった。
【0052】
また第2の基板14の表面に形成された微小な凹凸(ピット)18を原子間力顕微鏡で観察すると、ピット幅、長さ、深さ等のピット形状は従来のポリカーボネートと同等に良好な形状であった。
この第2の基板14の信号ピットが形成された側の面にDCスパッタリング法により膜厚70nmのAl膜よりなる反射層20を形成してディスク中間体M2を作製した。
次にポリスチレン換算で分子量20万のポリL乳酸樹脂のペレットに層状珪酸塩を樹脂に対して3重量%を添加し、二軸押出機を用いて220℃で溶融混練し、さらにペレット化してポリ乳酸樹脂を主成分とする第1の基板用のポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のポリ乳酸樹脂を結晶化させた場合のISO75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)を測定すると125℃であった。この得られたペレットを射出成形機(日精樹脂製 M040E)を用いて、この金型に表面がミラーのスタンパーを取り付け、シリンダー温度250℃、金型温度105℃、冷却時間1分で射出成形し、厚さ0.6mmの第1の基板12を作製した。この第1の基板12は白濁しており、光透過性はなかったが表面の平坦性は貼り合わせ基板として十分であった。
【0053】
上述のように作製したディスク中間体M2のAl反射層20を設けた側の表面に接着剤として紫外線硬化樹脂(協立化学産業(株)製:変性ウレタンアクリレート(商品名)ワールドロックNo811)を塗布し、その上に上記第1の基板12を重ね合わせ、回転数2000rpmでスピン塗布したのち、紫外線を照射して貼り合わせを行った。このときの接着剤層16(図1参照)の厚みは40μmであった。このようにして再生専用シングルレイヤーDVDディスクD1を完成した。
この得られた光ディスクD1の保存試験をDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施したところ、ディスクの変形はほとんどなく、しかも試験後の光ディスクD1は市販のDVDプレーヤで再生可能であった。
【0054】
(第2実施例の評価)
図6は第2実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
まず第1実施例と全く同じ方法で第2の基板14を作製した。当然、この第2の基板14のDVD再生波長である650〜660nmでの光透過率は92%であった。
この第2の基板14の表面に形成された微小な凹凸(ピット)を原子間力顕微鏡で観察すると、ピット幅、長さ、深さ等のピット形状は従来のポリカーボネートと同等の良好な形状であった。この第2の基板14の信号ピットが形成された側の面にDCスパッタリング法により膜厚5nmのAu膜よりなる半透過の反射層20Aを形成してディスク中間体M22を作製した。
【0055】
次に実施例1と同様にポリスチレン換算で分子量20万のポリL乳酸樹脂のペレットに層状珪酸塩を樹脂に対して1.0重量%を添加し、二軸押出機を用いて210℃で溶融混練し、さらにペレット化してポリ乳酸樹脂を主成分とする第1の基板用のポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のポリ乳酸樹脂を結晶化させた場合のISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)を測定すると100℃であった。この得られたペレットを射出成形機(日精樹脂製 M040E)の金型に予め微小な凹凸(ピット)が形成されたスタンパーを取り付け、シリンダー温度230℃、金型温度95℃、冷却時間1分で射出成形し、厚さ0.6mmの第1の基板12を作製した。この第1の基板12は白濁して光透過性はなかったが、基板表面に形成された微小な凹凸(ピット)22を原子間力顕微鏡で観察すると、ピット幅、長さ、深さ等のピット形状は従来のポリカーボネート同等の良好な形状であった。この第1の基板12の信号ピットが形成された側の面にDCスパッタリング法により膜厚70nmのAl膜よりなる反射層20Bを形成してディスク中間体M21を作製した。
【0056】
上述のように作製したディスク中間体M21のAl反射層20Bを設けた側の表面に接着剤として紫外線硬化樹脂(協立化学産業(株)製:変性ウレタンアクリレート(商品名)ワールドロックNo811)を塗布し、その上に上記ディスク中間体M22の反射層20Aの面を重ね合わせ、回転数2000rpmでスピン塗布したのち、紫外線を照射して貼り合わせを行った。このときの接着剤層24(図2参照)の厚みは40μmであった。このようにして再生専用デュアルレイヤーDVDディスクD2を完成した。
【0057】
得られた光ディスクD2の保存試験をDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施したところディスクの変形はほとんどなく、試験後のディスクは市販DVDプレーヤで凹凸18を有するレイヤー0、凹凸22を有するレイヤー1は共に再生可能であった。
【0058】
(第3実施例の評価)
図7は第3実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
まずポリスチレン換算で分子量20万のポリL乳酸樹脂のペレットに層状珪酸塩を樹脂に対して3重量%を添加し、二軸押出機を用いて220℃で溶融混練し、さらにペレット化してポリ乳酸樹脂を主成分とする第1の基板用のポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のポリ乳酸樹脂を結晶化させた場合のISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)を測定すると125℃であった。この得られたペレットを射出成形機(日精樹脂製 M040E)の金型にDVD規格に準拠した信号ピットが形成されたスタンパーを取り付け、シリンダー温度250℃、金型温度110℃、冷却時間1分で射出成形し、厚さ0.6mmの第1の基板12を作製した。この基板は白濁して光透過性はなかったが、基板表面に形成された微小な凹凸(ピット)22を原子間力顕微鏡で観察すると、ピット幅、長さ、深さ等のピット形状はポリカーボネート樹脂で成形したときと同等の良好な形状であった。
【0059】
この第1の基板12の信号ピットが形成された側の面にDCスパッタリング法により膜厚70nmのAl膜よりなる反射層20Bを形成しディスク中間体M31を作製した。
次にポリスチレン換算で分子量20万のポリL乳酸樹脂のペレットを二軸延伸ロールを用いて、厚さ550ミクロンに二軸延伸された透明なポリ乳酸樹脂のシートを得た。このシートを外形120mm、内径15mmに打ち抜き、光透過性の第2の基板26を作製した。この第2の基板26のDVD再生波長である650〜660nmでの光透過率は85%であった。
【0060】
上述のように作製したディスク中間体M31のAl反射層20Bを設けた側の表面に接着剤として紫外線硬化樹脂(協立化学産業(株)製:変性ウレタンアクリレート(商品名)ワールドロックNo811)を塗布し、その上にシート状の上記第2の基板26を重ね合わせ、回転数2000rpmでスピン塗布したのち、紫外線を照射して貼り合わせを行った。このときの接着剤層24(図3参照)の厚みは50μmであった。このようにして再生専用シングルレイヤーDVDディスクD3を完成した。
得られた光ディスクD3の保存試験をDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施したところディスクの変形はなく、試験後のディスクは市販DVDプレーヤで再生可能であった。
さらに試験条件(温度80℃、相対湿度60%、96時間放置)で高温(耐熱性)試験を実施したところ、ディスクの変形はほとんどなく、試験後のディスクは市販DVDプレーヤで再生可能であった。
【0061】
(第4実施例の評価)
第4実施例は第1の基板12の製造方法が異なるのみで、その他は第1実施例と同じである。この第4実施例における第1の基板12は以下の製造方法で作られ、図8を用いて説明する。
まずポリスチレン換算で分子量20万のポリL乳酸樹脂のペレットに層状珪酸塩を樹脂に対して3重量%を添加し、二軸押出機を用いて220℃で溶融混練し、さらにペレット化してポリ乳酸樹脂を主成分とする第1の基板用のポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のポリ乳酸樹脂を結晶化させた場合のISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)を測定すると125℃であった。この得られたペレットを射出成形機(日精樹脂製 M040E)を用いて、この金型に表面がミラーのスタンパーを取り付け、シリンダー温度250℃、金型温度30℃、冷却時間15秒で射出成形し、厚さ0.6mmの第1の基板12を作製した。成形後の第1の基板12は、基板に接触する部分が平坦なガラス製の熱処理金型31A及び31Bに挟み、さらに熱処理金型31A及び31B内の第1の基板12に圧力が加わるように上側の熱処理金型31B上に900gの重り32を乗せ、第1の基板12は熱処理金型31A及び31B及び重り32とともに90℃以上の図示しない熱処理炉の中に投入される。
【0062】
上記熱処理金型31A及び31Bが90℃になった後、その状態で10分経過後、第1の基板12は熱処理金型31A及び31B及び重り32とともに熱処理炉より取り出し、室温になるまでそのまま放置する。上記熱処理金型31A及び31Bが室温になった後、第1の基板12は熱処理金型31A及び31B内から取り出され、これによりISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板12ができあがる。
【0063】
先の第1実施例では、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板12を得る方法としては、射出成形工程のみでポリ乳酸樹脂を結晶化させ耐熱性を上げたが、この場合、射出成形金型温度は比較的高い温度である90℃以上となっている。この際、第1の基板12を射出成形金型より取り出すときに、第1の基板12は比較的高い温度である90℃に近い状態で、射出成形金型内の突き出し機構で押されるため、第1の基板12の反りは市販のDVDプレーヤで再生可能な平坦な光ディスクD1を得るのには十分ではあったが比較的大きな反りとなっていた。この実施例1の光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角を測定すると、+0.13°、−1.2°となっていた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。
【0064】
この反りをさらに軽減し、さらに平坦な光ディスクD1が得られるようにしたのが第4実施例である。上記したように、この第4実施例では比較的低い射出成形金型温度である30℃の金型温度で射出成形され、平坦な第1の基板12を得た後、この第1の基板12は平坦な状態のまま加圧下、90℃以上で熱処理を施すことでポリ乳酸樹脂を結晶化させ耐熱性を上げている。この第4実施例のような方法をとることで、より平坦な第1の基板12を得ることが可能となり、この第4実施例の光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角を測定すると、+0.24°、−0.48°となっており、先の第1実施例の場合よりも改善できることが確認できた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。
【0065】
また、熱処理温度は90℃以上である、100℃、110℃、120℃の実験を行ったが、90℃の場合と同じ結果が得られた。それに対して、熱処理温度を80℃とした場合には、X線回折による結晶化度の測定では結晶化が不十分な第1の基板12しか得られず、できあがった光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification forRead−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角は、+1.6°、−2.6°以上となっていた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。
【0066】
(第5実施例の評価)
第5実施例は光ディスクD1を得た後に熱処理を行う方法が異なるのみで、その他は第1実施例と同じである。
この第5実施例の光ディスクD1は以下の製造方法で作られ、図9を用いて説明する。先の第1実施例では貼り合わせにより光ディスクD1を得た後には、処理は何も行っていないが、この第5実施例では貼り合わせ後の光ディスクD1をディスクに接触する部分が平坦なガラス製の熱処理金型33A及び33Bに挟み、さらに熱処理金型33A及び33B内の光ディスクD1に圧力が加わるように、光ディスクD1の上側の熱処理金型33Bの質量を200gに調整し、光ディスクD1は熱処理金型33A及び33Bとともに50℃の図示しない熱処理炉の中に投入される。この熱処理金型33A及び33Bが50℃になった後、この状態で12時間経過後、光ディスクD1は熱処理金型33A及び33Bとともに熱処理炉より取り出し、室温になるまでそのまま放置する。この熱処理金型33A及び33Bが室温になった後、光ディスクD1は熱処理金型33A及び33B内から取り出され、平坦な光ディスクD1ができあがる。
【0067】
先の第1実施例では、市販のDVDプレーヤで再生可能な平坦な光ディスクD1を得るのには十分ではあったが比較的大きな反りとなっていた。この第1実施例の光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification for Read−OnlyDisc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角を測定すると、+0.13°、−1.2°となっていた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。この反りをさらに軽減し、さらに平坦な光ディスクD1が得られるようにしたのが第5実施例である。上記した第5実施例のような方法をとることで、第1の基板12及び第2の基板14及び接着剤層16の残留応力を除去でき、より平坦な光ディスクD1を得ることが可能となり、この第5実施例の光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification for Read−OnlyDisc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角を測定すると、+0.15°、−0.29°となっていた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。
【0068】
また、熱処理温度は50℃以上である、55℃、60℃の実験を行ったが、50℃の場合と同じ結果が得られた。それに対して、熱処理温度を45℃とした場合には、第1の基板12及び第2の基板14及び接着剤層16の残留応力を除去できておらず、できあがった光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角は、実施例1と同等の+0.11°、−1.1°となっていた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。また、熱処理温度が65℃の場合は反りは良かったが、信号の変形と推測される原因により高温負荷試験後のディスクは市販DVDプレーヤで再生不能であった。これは、第5実施例では、信号ピットの凹凸18が設けられた第2の基板14の樹脂材料のISO75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)は55℃であったためであり、第2の基板14の樹脂材料の荷重たわみ温度がもっと高い場合には、65℃以上の熱処理温度も効果がある。
【0069】
(第6実施例の評価)
実施例6に使用する第1の基板12は、第4実施例と同様にして作製した。
次に第2の基板14を作製するのに用いるアロイ樹脂として、以下の2種類を作製した。
<アロイ樹脂の調整>
ポリL乳酸樹脂ペレット(三井化学製 レイシアH100)に、他の透明な熱 可塑性樹脂としてISO75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が約80℃であるポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA、屈折率1.49)(住友化学製 スミペックス)をポリ乳酸樹脂に対して30、40、50、60重量%をそれぞれ添加し(実施例6−1、6−2、6−3、6−4に対応)、二軸押出機を用いて溶融混練して、ポリメチルメタクリレート樹脂をポリ乳酸樹脂中に分散させ、さらにペレット化してアロイ樹脂を作製した。得られたアロイ樹脂を射出成形で試験サンプルを作製し、CD、DVD再生装置のレーザ光の波長780nm、660nmでの光透過率を測定するといずれも80%以上あり、良好な光透過率であった。
【0070】
同様にポリL乳酸樹脂ペレット(三井化学製 レイシアH100)に、他の透明な熱可塑性樹脂としてISO75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が約100℃であるポリメチルペンテン樹脂(三井化学製 TPX)を樹脂に対して30、40、50、60重量%をそれぞれ添加し(実施例6−5、6−6、6−7、6−8に対応)、二軸押出機を用いて溶融混練して分散させ、さらにペレット化しアロイ樹脂を作製した。得られたアロイ樹脂を射出成形で試験サンプルを作製し、CD、DVD再生装置のレーザ光の波長780nm、660nmでの光透過率を測定するといずれも80%以上あり、良好な光透過率であった。
【0071】
次に、上述のように作製したアロイ樹脂を用いて、金型に予め微小な凹凸(ピット)や溝(グルーブ)が形成されたスタンパーを取り付け、射出成形でDVD規格に準拠した信号ピットが形成された第2の基板14を作製し、さらにDCまたはRFスパッタリング法にてAl反射層を形成した。
次に、上述のように作製した第1及び第2の基板12、14を貼り合わせてDVDディスクを製造する。このとき、第2の基板14の反射層20を形成した側の面と、第1の基板12とを対向させ、その間に接着剤層16を介在させる。この貼り合わせの時に接着剤層16に使用される材料は、アクリレート系の紫外線硬化樹脂を用いた。このようにして再生専用シングルレイヤーDVDディスクを作製した。
得られたDVDディスクの高温(耐熱)保存試験(試験条件:温度70℃、相対湿度50%、96時間放置)を実施し、試験後のディスク変形状態及び市販DVDプレーヤでの再生可否を調べた。その結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
アロイ樹脂の一部を構成する熱可塑性樹脂であるポリメチルメタクリレート樹脂やポリメチルペンテン樹脂の含有量が30%の場合(実施例6−1、6−5)には、共にディスク変形が大きく、しかもプレーヤでの再生も不可であった。
これに対して、上記熱可塑性樹脂の含有量が40%以上、具体的には、40%、50%、60%(実施例6−2、〜6−4、6−6、〜6−8)の場合には、ディスクの変形が”ややあり”か、或いは”なし”であり、またプレーヤでの再生も可能であったので、良好であることが確認できた。特に、熱可塑性樹脂の含有量が60%以上の場合には、ディスク変形もほとんどなく、プレーヤでの再生も可能であるので、非常に好ましいことが確認できた。
【0074】
(第7実施例の評価)
図10は第7実施例の光ディスクの製造過程を示す図、図11は第7実施例の光ディスクのアニール処理を示す図である。
まず、第1実施例と同様の材料、装置、条件でDVD規格に準拠した信号ピットが形成された厚さ0.6mmの光透過性の第2の基板14を作製した。この第2の基板14のピットである凹凸18が形成された側の面にDCスパッタリング法により膜厚70nmのAl膜よりなる反射層20を形成し、さらにAl反射層20が形成された側に、鉛筆硬度2Hである紫外線硬化型樹脂(日本化薬製 HOD−3200)をスピンコート法(回転数2500rpm)でスピン塗布して塗布後、紫外線硬化を行って厚さ12ミクロンからなる硬化樹脂保護層30を形成し、ディスク中間体M41を作製した。
【0075】
次に、第1実施例と同様の材料、装置、条件で厚さ0.6mmの第1の基板12を作製した。
上述のように作製したディスク中間体M41の硬化樹脂保護層30を設けた側の表面に接着剤として紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:アクリレート系樹脂(商品名)SD−661)を塗布して接着剤層16を形成し、その上に上記第1の基板12を重ね合わせ、回転数2000rpmでスピン塗布した後、紫外線を照射して貼り合わせを行った。このようにしてピット保護のための硬い硬化樹脂保護層30を有する再生専用シングルレイヤーDVDディスク7を完成した。
更に得られたディスクD7を、図11に示すように厚さ1cmの平坦な重さ900gの2枚のガラス板40で挟み、55℃のオーブン50の中に3時間放置してアニール処理を行った。このアニール処理の後、取り出して室温まで冷却した。
【0076】
このアニール処理で得られた光ディスクD7の保存試験をDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定める高温(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)に基づいて実施したところ、ディスクの変形はほとんどなく、しかも試験後の光ディスクD7は市販のDVDプレーヤで良好に再生可能であり、硬い硬化樹脂保護層30によるピット保護とアニール処理による高温負荷後のディスク変形抑止に硬化があることを確認した。
【0077】
(比較例の評価)
次に比較例の評価を行った。この比較例では、先の実施例1と同様に三井化学製 ポリ乳酸樹脂ペレット(レイシアH100)を用いて、射出成形機(日精樹脂製 M040E)の金型にDVD規格に準拠した信号ピットが形成されたスタンパーを取り付けシリンダー温度230℃、金型温度50℃でDVD規格に準拠した信号ピットが形成された厚さ0.6mmの光透過性の第2の基板を作製した。さらに貼り合わせる第1の基板も、三井化学製のポリ乳酸樹脂ペレット(レイシアH100)を用いて射出成形して作製した。ここで上記第1の基板の樹脂材料のISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)は55℃であった。この2枚の基板は、実施例1と全く同じ方法で反射層、貼り合わせを行い、再生専用シングルレイヤーDVDディスクを完成した。
【0078】
得られた光ディスクの保存試験をDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施したところ、ディスクの変形は著しく、試験後のディスクは市販DVDプレーヤで再生不能であった。また同様の実験を、上記荷重たわみ温度(DTUL)が55℃及び85℃の各樹脂材料についても比較例としてディスクを作製したが、このディスクも変形が著しく、市販のDVDプレーヤでは再生不能であった。
【0079】
(比較例2:第7実施例に対する比較例)
次に実施例7と同様にして作製した光ディスクをオーブンの中でアニール処理を行わなかった場合を比較例とし、評価を行った。この比較例では、先の実施例7と同様にしてピット保護のための硬い硬化樹脂保護層を有する再生専用シングルレイヤーDVDディスクを作製するところまでは同じである。
【0080】
ここで実施例7との相違は、完成したディスクを55℃のオーブンの中でアニール処理を行わずに、保存試験を実施した。すなわちDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定める高温(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)に基づいて実施した。
試験後のディスクは、硬化樹脂保護層で保護されており、顕微鏡観察でもピット形状には著しい変化は観察されなかった。しかしながら、オーブンの中でアニール処理を行わず、ガラス転移温度付近の55℃に長時間放置されたため、光ディスクの透明な第2の基板側が応力緩和の進行に伴う変形が生じ、結果として光ディスク形状に僅かに反りが生じた。このアニール処理を行わなかった光ディスクの反りは、特にディスク中周から外周にかけて変形が生じ、市販のDVDプレーヤにてかろうじて再生することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の光ディスクの第1実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の光ディスクの第2実施例を示す構成図である。
【図3】本発明の光ディスクの第3実施例を示す構成図である。
【図4】本発明の光ディスクの第7実施例を示す構成図である。
【図5】第1実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図6】第2実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図7】第3実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図8】第4実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図9】第5実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図10】第7実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図11】第7実施例の光ディスクのアニール処理を示す図である。
【図12】反射層(或いは記録層)が1層の光ディスクを示す図である。
【図13】反射層(或いは記録層)が2層の光ディスクを示す図である。
【符号の説明】
【0082】
12…第1の基板、14,26…第2の基板、16,24…接着剤層、18,22…凹凸、20,20A,20B…反射層、30…硬化性樹脂保護層、31A,31B,33A,33B…熱処理金型、32…重り、D1,D2,D3,D7…光ディスク、L…レーザ光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに係り、特に、基板に植物を原料としたプラスチックであるポリ乳酸樹脂を用いた環境配慮型の光ディスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油化学工業の発展とプラスチック合成、加工技術の進歩に伴い、種々なプラスチック製品が大量に生産され、これに伴って使用済みのプラスチック製品を産業廃棄物や一般廃棄物として排出される廃プラスチックの量も、急速に増加してきた。例えば平成14年の我が国における廃プラスチックの量は年間1000万トン近くになるに至った。更に、この廃プラスチックの量の増加傾向は続いており、廃プラスチックの処分問題は深刻化しつつある。
現在、このような廃プラスチックの60%前後は単純焼却や埋立によって処分されている。しかしながら、燃焼熱カロリーの高い廃プラスチックを通常のゴミ焼却場で焼却処分すると、異常燃焼し、焼却炉の炉体等を傷めるという問題がある。そして、廃プラスチックを単純焼却することで、大気中に放出される炭酸ガスが増加し、地球温暖化という観点からも問題がある。
【0003】
さらに、廃プラスチックを埋立によって処分する場合には、廃プラスチックは軽くてかさばるため、廃棄物の中でも大きな容積を占め、埋め立て地などの廃棄物最終処分場の用地不足が切迫化してきた現在、将来に亘ってこのような処分方法を続けることは困難である。
このようにプラスチックの廃棄物処理という地球環境の観点からも、また化石資源(原油)の枯渇という地球資源の観点から、植物を原料としたプラスチックや酸素や微生物で分解される生分解性プラスチックの研究開発が盛んに行われるようになってきた。
【0004】
中でもトウモロコシなどのでんぷんを原料としたポリ乳酸樹脂は、生分解性を有するとともに、再生可能資源である植物由来の環境低負荷樹脂であることから、特に注目されている。例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3等にはフィルム、包装材料への応用例が開示されており、グリーンプラスチック(205〜230ページ 2002年シーエムシー出版)には、ポリ乳酸樹脂を用いた応用例として、例えば生ゴミ袋、食品容器、包装容器、包装フィルムなど、耐熱性や耐衝撃性などが厳しく要求されない、主に機能的に単純な用途を対象にした例が示されている。また、例えば特許文献4、特許文献5、特許文献6等には、耐熱性を向上させたポリ乳酸樹脂を主成分とする成形材料の例が開示されており、最近は、自動車の内装部品や電子機器・OA機器の筐体などの高度な機能が必要な分野、用途にも採用され始めている。
【0005】
一方、近年、大容量の情報を記録できるコンパクトディスク(CD)やデジタルバーサタイルディスク(DVD)などの光ディスクの普及はめざましいものがある。特に音楽や映像、データベース、コンピュータプログラムなどの情報を微細な凹凸パターン(いわゆるピット)として記録された基板の上に、アルミニウムなどの金属反射層と保護層を順次積層した再生専用型光ディスクは、大量に安価に製造できるため膨大な数のディスクが製造され、広く普及している。さらに追記記録が出来るCD−Rは再生専用型光ディスク(CD−ROM)以上に生産、消費され始めた。またDVD−Rや書き換え可能なCD−RWやDVD−RW、DVD−RAMなどのディスクも急速に普及し始めている。
【0006】
ここで従来のCDやDVDなどの光ディスクの一例を説明する。図12は反射層(或いは記録層)が1層の光ディスクを示し、図13は反射層(或いは記録層)が2層の光ディスクを示す。
図12に示す場合には、表面に凹凸(ピット)や溝、図示例では凹凸2が形成された厚さが1.2mmまたは0.6mmの透明基板4に反射層や記録層、例えば反射層6を形成し、この反射層6側に、接着剤層8を介して別の基板10を接合して光ディスクを形成している。この場合、記録、或いは再生用のレーザ光Lは、上記透明基板4側から照射される。
【0007】
また図13に示す場合には、図12に示すような凹凸2と反射層6とを有する透明基板4を形成し、これとは別に凹凸2Aと反射層6Aとを有する基板4Aを形成し、これらの両基板4、4Aを、間に接着剤層8を介して接合して光ディスクを形成している。この場合、反射層6としては半透過の反射層を用いるようにし、基板4A側にもレーザ光Lが照射されるようにする。尚、反射層6Aは全反射の反射層とする。そして、この光ディスクに再生または記録再生に用いるレーザ光を照射し、透明基板4を通して大量の信号の再生や記録を行っている。
このように大量の情報を記憶する記憶媒体として上記したような光ディスクが普及し、全世界で200億枚以上が生産され、さらに今後もその生産量は増加していくと考えられる。これに伴い不要になって廃棄される光ディスクの数量も飛躍的に増え始めており、地球環境に及ぼす影響は大きくなりつつある。
【0008】
これらの光ディスクに使用されている材料のうち、最も多量に使用されているのはプラスチック基板である。従来この基板に使用されているプラスチックにはポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂などの、枯渇性化石(石油)資源を原料とした熱可塑性透明樹脂が使用されている。中でも実際の光ディスクのほとんどは光透過性、加工性、生産性などの面から、ポリカーボネート樹脂が使用されている。例えばコンパクトディスク(CD)では、重量換算で98%以上、またDVDでも95%以上がプラスチック基板で占められている。したがって、地球環境に与える負荷を低減すると共に、枯渇性化石(石油)資源を節減するという観点からも上記光ディスクの基板に、毎年再生可能な植物を原料として合成された植物由来のプラスチックであるポリ乳酸樹脂を用いることは、好ましいことである。
【0009】
【特許文献1】特開平3−290461号公報
【特許文献2】特開平4−146952号公報
【特許文献3】特開平4−325526号公報
【特許文献4】特開2003−253009号公報
【特許文献5】特開2003−165917号公報
【特許文献6】特開平4−325526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記したような通常のポリ乳酸樹脂は、ガラス転移温度が60℃前後であり、通常の成形方法で得られる成形品は耐熱性が乏しく、低荷重たわみ温度(DTUL)が約55〜58℃と低く、比較的高温環境下でこの成形品を使用すると熱変形(形状変形)を生じてしまうと言う問題点があった。例えば、ガラス転移温度が60℃の通常のポリ乳酸樹脂を基板材料として用いて作製したDVDディスクを、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクは、変形が著しくてプレーヤでの再生が不能になってしまうという問題点がある。
【0011】
また耐熱性を向上させたポリ乳酸樹脂を主成分とする前記した成形材料は、通常、不透明または著しく透明性が落るので、光ディスクの透明基板として使用するには光透過性が低く使用できないという問題点があった。
本発明は、上記のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、植物原料由来のポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックを基板として用いることにより、耐熱性を有し、高温負荷試験後においてもディスクの変形が小さく、プレーヤで再生可能な耐熱性の向上した光ディスク及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、ポリ乳酸樹脂を光ディスクの基板に用いたときの上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、2枚の基板を貼り合わせて構成された光ディスクにおいて、記録/再生レーザ光が入射される側の基板は透明性を維持したポリ乳酸樹脂を主成分とする基板を用いて、さらに記録/再生レーザ光が入射されない側の基板に荷重たわみ温度が一定値以上有するポリ乳酸樹脂を主成分とする基板を用いて、この2枚の基板を貼り合わせて作製した貼り合わせ型の光ディスクは、高温負荷試験後においてもディスクの変形が小さく、プレーヤで再生可能な耐熱性の向上した光ディスクが得られる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
【0013】
また発明者等は、記録または再生用のレーザ光が入射される側の基板に、ポリ乳酸樹脂と荷重たわみ温度が一定以上の熱可塑性樹脂との混合物であるアロイ樹脂を用いることにより、高温負荷試験後においても変形が更に少なく、より過酷な環境下においてもプレーヤで再生可能な耐熱性の向上した光ディスクを得ることができる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
また更に、本発明者等は、基板の凹凸のピットまたは溝が形成され、且つ反射層及び/又は記録層が形成された側に、硬化性樹脂保護層を設けることにより、更に、この完成後のディスクを所定の温度以下でアニール加熱処理することで、より一層、耐熱性の向上した光ディスクが得られる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
【0014】
すなわち請求項1に係る発明は、第1の基板上に、接着剤と、光透過性の第2の基板とが順次形成され、且つ前記第2の基板の前記第1の基板側には反射層及び/又は記録層が形成されてなり、前記第2の基板側からレーザ光を照射して情報の記録再生を行う光ディスクにおいて、前記第1の基板は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなり、前記第2の基板は、前記レーザ光の波長に対して80%以上の透過率を有するポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなることを特徴とする光ディスクである。
【0015】
請求項2に係る発明は、第1の基板上に、接着剤と、光透過性の第2の基板とが順次形成され、且つ前記第1、第2の基板の互いに対向する側にそれぞれに第1、第2の反射層及び/又は第1、第2の記録層が形成されてなり、前記第2の基板側からレーザ光を照射して情報の記録再生を行う光ディスクにおいて、前記第1の基板は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなり、前記第2の基板は、前記レーザ光の波長に対して80%以上の透過率を有するポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなることを特徴とする光ディスクである。
【0016】
この場合、例えば請求項3に規定するように、前記プラスチックは、ポリ乳酸樹脂と、該ポリ乳酸樹脂以外の他の光透過性の熱可塑性樹脂との混合物よりなるアロイ樹脂よりなり、前記熱可塑性樹脂は、ISOで規定される底荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が80℃以上であって前記アロイ樹脂中に40%以上分散されている。
また例えば請求項4に規定するように、前記第1の基板と第2の基板の内、少なくとも前記第2の基板の表面に凹凸のピットまたは溝が形成されて、且つ前記反射層及び/又は記録層が形成された面上に熱、または紫外線にて硬化する硬化性樹脂保護層が形成されている。
請求項5に係る発明は、請求項1または2に係る光ディスクの製造方法において、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板は、該第1の基板の成形後、90℃以上の加圧下で熱処理が施されることを特徴とする光ディスクの製造方法である。
請求項6に係る発明は、第1の基板上に接着剤層を形成する一方、光透過性の第2の基板上に反射層及び/又は記録層を形成した後、前記接着剤層側を前記反射層及び/又は記録層に対向配置させ、前記接着剤層を介して前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせて作製する光ディスクの製造方法において、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせた後、50〜60度℃の温度で熱処理を行なうことを特徴とする光ディスクの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光ディスクによれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
植物原料由来のポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックを基板として用いることにより、DVDの規格に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後においてもディスクの変形が小さく、再生装置、或いは記録再生装置などのプレーヤで再生可能な耐熱性の向上した光ディスク及びその製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明に係る光ディスクの一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明の光ディスクの第1実施例を示す構成図、図2は本発明の光ディスクの第2実施例を示す構成図、図3は本発明の光ディスクの第3実施例を示す構成図である。
【0019】
<第1実施例>
まず、第1実施例について説明する。この第1実施例の光ディスクは、例えば再生専用シングルレイヤーDVDディスクに対応するものである。図1中の第1実施例の光ディスクD1は、第1の基板12と、光透過性の第2の基板14とを有し、これらの両基板12、14の内の少なくともいずれか一方の表面に反射層及び/又は記録層を有する微小な凹凸や溝を形成し、そして、この両基板12、14を、上記微小な凹凸や溝が形成されている面側を対向させて間に接着剤層16を介在させて接合することにより製造される。記録、或いは再生用のレーザ光Lは第2の基板14の表面側より照射される。
図示例の場合には、第2の基板14の内側の表面のみにトラッキングを行うピットとなる凹凸18が形成されている場合を示しており、この凹凸18が形成されている表面の全面に、反射層20が形成されている。
【0020】
前述のように凹凸18に替えて渦巻状、或いは同心円状の溝(「ウォブル」とも称す)を形成する場合もある。また、反射層20に替えて記録層を設ける場合もあるし、反射層20と記録層とを重ねて設ける場合もある。これらの点は、後述する第2及び第3実施例でも同様である。
ここで重要な点は、第1の基板12を、ISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックにより形成し、第2の基板14を、レーザ光Lの波長に対して透過率が80%以上を有する透明なポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックにより形成する点である。
【0021】
具体的には、上記第2の基板14に用いられるポリ乳酸樹脂を主体とするプラスチックは、厚さ0.6mmにおいて再生を行うレーザ光Lの波長に対して透過率が80%以上の透明性を有しておれば特に限定はなく、例えば乳酸を主成分とするモノマーから合成されたポリ乳酸樹脂が好ましい。例えば三井化学から市販されている「レイシアH100,H100J」や、カーギル・ダウ製「Nature Works」などが好ましい材料である。尚、第2の基板14の透過率が80%よりも低いと、反射層20で反射された反射光が少な過ぎてトラッキングが困難になったり、再生が困難になったりする。さらにエステル形成能を有するその他のモノマー成分と共重合した共重合ポリ乳酸樹脂、またはポリ乳酸樹脂と他の透明プラスチックを混合したポリ乳酸樹脂を主成分とする混合樹脂でもかまわない。
【0022】
上記ポリ乳酸樹脂を用いた第2の基板14は、通常のポリカーボネート樹脂を用いたDVDを作製するときと同様に、金型に予め微小な凹凸(ピット)が形成されたスタンパーを取り付け、射出成形で厚み0.6mmのディスク形状の素板が作製される。このときの樹脂温度、金型温度、成形サイクルなどの成形条件は、使用するポリ乳酸樹脂の溶融温度、ガラス転移温度等を考慮して最適化される。
次に上記射出成形にて得られたポリ乳酸樹脂を主成分とする光透過性の第2の基板14は、真空チャンバー中でDC(直流)またはRFスパッタリング法にて反射層20が形成される。この反射層20に用いる材料に特に制限はないが高反射率が得られる例えばAu、Al、Agまたはその合金が好ましい。
【0023】
次に第1の基板12に用いられるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックは、上述のようにISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるプラスチックを用いる。また、好ましくは125℃以上であるプラスチックを用いる。この温度が100℃よりも低いと、貼り合わせ光ディスク形状にて高温負荷試験を実施すると熱変形が生じてしまう。このとき第1の基板12は必ずしも透明である必要はなく、ポリ乳酸樹脂の中に無機フィラーを分散させた複合材料や、ポリ乳酸樹脂と親和性が良く、耐熱性の高い樹脂との混合樹脂(アロイ)を用いるのが好ましい。例えば、ポリ乳酸樹脂に層状ケイ酸塩を0.5〜3wt%程度ナノメートルのオーダーで分散させた複合材料や、ポリ乳酸樹脂にポリアセタール樹脂を溶融混練りした混合樹脂などが好適である。
【0024】
上記ポリ乳酸樹脂を主成分とした複合材料や混合樹脂を用いた第1の基板12は、通常のポリカーボネート樹脂を用いたDVDを作製するときと同様に、金型に凹凸のないミラースタンパーを取り付け、射出成形で厚み0.6mmに作製される。このときの樹脂温度、金型温度、成形サイクルなどの成形条件は、使用するポリ乳酸樹脂の複合材料や混合樹脂の溶融温度、ガラス転移温度等を考慮して最適化される。
【0025】
次に、上述のように形成した第1及び第2の基板12、14を貼り合わせて図1に示した再生専用シングルレイヤーDVDディスクD1を製造する。このとき、第2の基板14の反射層20を形成した側の面と、第1の基板12とを対向させ、その間に接着剤層16を介在させる。この貼り合わせの時に接着剤層16に使用される材料は、生産性、歩留まりの点からアクリレート系の紫外線硬化樹脂を使用するのが好ましく、貼り合わせ方法は、いずれか一方の基板に紫外線硬化樹脂を塗布した後、その上からもう一方の基板を重ね合わせ、重なった2枚の基板12、14を回転して紫外線硬化樹脂を全面に行き渡らせて貼り合わせする、いわゆるスピン貼り合わせの方法が好ましい。ここで紫外線硬化樹脂としては例えばエポキシアクリレートやウレタンアクリレートまたはそれらの混合物が主成分である紫外線硬化樹脂が好ましい。またこの時使用される接着剤は必ずしも透明である必要はなく、シリカ、マイカなどの無機フィラーを含有分散させ熱変形温度を向上させた接着剤を用いても良い。
【0026】
このようにして、耐熱性を有し、高温負荷試験後においてもディスクの変形が小さく、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後においてもプレーヤで再生可能な耐熱性の向上した再生専用シングルレイヤーDVDディスクを得ることができる。
【0027】
<第2実施例>
次に第2実施例について説明する。この第2実施例は、例えば反射層、或いは記録層が2層形成された再生専用デュアルレイヤーDVDディスクに対応するものである。尚、図1に示す構成部分と同一構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
図2中の第2実施例の光ディスクD2では、第2の基板14の表面には、ピットとなる凹凸18が形成されて、このピット面の全面に反射層20Aが形成されている点は、先の第1実施例の場合と同様であるが、この第2実施例では、上記反射層20Aは、第1実施例の全反射の反射層20とは異なって半透過の反射層が用いられており、この下層にレーザ光を透過させるようになっている。更に、第1の基板12の表面にも微小な凹凸(ピット)22が設けられており、ピット面の全体に反射層20Bが形成されている。尚、上記凹凸に替えて螺旋状、或いは同心円状の溝を設けてもよいし、更に反射層20Bに替えて記録層を形成する場合もあるし、反射層と記録層とを重ねて設ける場合もある。
【0028】
そして、第1の基板12の反射層20Bが形成された側の面と、第2の基板14の半透過の反射層20Aが形成された側の面とを光透過性の接着剤層24で貼り合わせることで光ディスクD2を形成する。このように形成した光ディスクD2は、耐熱性を有し、高温負荷試験後においてもディスクの変形が小さく、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後においてもプレーヤで再生可能な耐熱性の向上した再生専用デュアルレイヤーDVDディスクを得ることができる。
またこの第2実施例の貼り合わせに使用される接着剤層24は、前述のように透明であることが必要であり、少なくとも再生または記録/再生を行うレーザ光の波長に対して透過率が90%以上あることが望ましい。
【0029】
<第3実施例>
次に第3実施例について説明する。この第3実施例は再生専用シングルレイヤーDVDディスクに対応するものである。尚、図1及び図2に示す構成部分と同一構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
図3中に示されるこの第3実施例の光ディスクD3は、先の第1及び第2実施例の光ディスクよりさらに耐熱性を向上させたDVDディスクであり、夏期の自動車内など温度が80℃近くに達する環境下に置かれた後でも熱変形が小さく使用可能な光ディスクである。
【0030】
すなわち、この光ディスクD3では、第1の基板12としては、図2に示す第2実施例と同様に、その表面に凹凸(ピット)22が形成されており、そのピット面の全面に全反射の反射層20Bが形成されている。そして、光透過性の第2の基板26としては、レーザ光の波長に対して透過率が80%以上を有する透明なポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックを用いており、ここではこのプラスチックは二軸延伸されたシート状となっている。そしてこのシート状の第2の基板26と上記第1の基板12の反射層20Bとの間に、図2に示したような透明な接着剤層24を介在させて両基板26、12を接合して光ディスクD3を形成する。
【0031】
具体的には、第1の基板12に用いられるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックは、ISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるプラスチックを用いて、微小な凹凸(ピット)22を有する厚さ0.6mmの素板を射出成形で作製する。このとき形成されるピットは、従来の再生専用シングルレイヤーDVDディスクとは逆に螺旋状にピットが形成されたスタンパーを用いて成形される。さらにAlなどの反射層20Bを形成させてディスク中間体を作製する。
【0032】
次に厚さ550ミクロンに二軸延伸された透明なポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックのシートを外径120mm、内径15mmに打ち抜き、光透過性の第2の基板26を作製する。この二軸に延伸されたシートに使用されるポリ乳酸樹脂は、通常の混合物のないプレーンのポリ乳酸樹脂(例えば三井化学から市販されている「レイシアH100,H100J」)を用いても良いし、再生または記録/再生を行うレーザ光Lの波長に対して透過率が80%以上を有するポリ乳酸樹脂を主成分とする他の樹脂との混合樹脂を用いてもよい。このようにして二軸延伸されたシートから作製することにより、高い透明性を有すると共に耐熱性の向上した光透過性の第2の基板26が得られる。
【0033】
上記のようにして作製した第1の基板12を有すディスク中間体の反射層20Bが形成された面側と第2の基板26を、光透過性の接着剤層24を介して貼り合わせる。このとき貼り合わせに使用される接着剤は、透明であることが必要である。少なくとも再生または記録/再生を行うレーザ光Lの波長に対して透過率が90%以上あることが望ましい。このようにして得られた再生専用シングルレイヤーDVDディスクD3は、さらに耐熱性を有し、高温負荷試験後においてもディスクの変形が小さく、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後においてもプレーヤで再生可能なだけでなく、自動車内など温度が80℃近くに達する環境下に置かれた後でも熱変形が小さく使用可能なディスクである。
【0034】
尚、この第3実施例の場合には、DVDディスクに適用するだけでなく、例えば第1の基板12の厚さをより厚くして例えば1.1mmとした次世代の光ディスクに適用してもよい。例えば射出成形によってピットまたは溝が形成された厚さ約1.1mmの基板に反射層を形成し(記録型の場合は記録層も順次形成し)、接着剤層を介して厚さ約0.1mmの透明カバー層を貼り合わせて光ディスクを構成してもよい。これによれば、レーザ光の記録波長を短くし、高NAの対物レンズを用いたDVD、さらに大容量の記録が可能な次世代光ディスクシステム(いわゆるBlu−ray Disc)にも適応が可能である。
【0035】
<第4実施例>
次に第4実施例について説明する。先の第1実施例においては、ポリ乳酸樹脂を主成分とした複合材料や混合樹脂を用いた第1の基板12は、通常のポリカーボネート樹脂を用いたDVDを作製するときと同様に、金型に凹凸のないミラースタンパーを取り付け、射出成形で厚み0.6mmに作製され、このときの樹脂温度、金型温度、成形サイクルなどの成形条件は、使用するポリ乳酸樹脂の複合材料や混合樹脂の溶融温度、ガラス転移温度等を考慮して最適化されるが、この第4実施例においては、比較的低い金型温度、例えば20℃〜60℃の金型温度で射出成形される。成形後の第1の基板12は、基板に接触する部分が平坦なガラス製の熱処理金型に挟み、さらに熱処理金型内の第1の基板12に圧力が加わるように熱処理金型上に重りを乗せ、第1の基板12は熱処理金型及び重りとともに90℃以上の熱処理炉の中に投入される。熱処理金型が90℃になった後、一定時間経過後、第1の基板12は熱処理金型及び重りとともに熱処理炉より取り出し、室温になるまでそのまま放置する。熱処理金型が室温になった後、第1の基板12は熱処理金型内から取り出され、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板12ができあがる。
【0036】
この際、この第1の基板12を金型に重ね合わせた場合にピットの凹凸18が接触しないように、第1の基板12に凸部を設けることがあるが、そのような場合はこの熱処理金型の形状はその凸部を逃げた形状とする。この熱処理金型の材質はガラス製のほか、ステンレスなどの金属製等平坦面が加工できるものであればよい。また、熱処理金型内の第1の基板12に圧力が加わるようにする方法としては、重りを乗せる方法だけでなく、油圧や空圧を用いるなどの方法があり、いずれにしても熱処理金型に圧力が加わる方法であれば、どのような方法でもよい。
この第1の基板12に90℃以上の熱処理を行うのは、加圧が行われた後、あるいは加圧と同時に熱が加わるようになっていれば良く、第1の基板12の熱処理炉への投入のタイミングと熱処理炉の温度と時間は適宜選択されてよい。この第1の基板12の熱処理炉からの取り出しのタイミング及び熱処理金型からの取り出しのタイミングや方法については適宜選択されてよい。また、熱処理金型自体に加熱機構を設けてもよい。
【0037】
先の第1実施例では、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板12を得る方法としては、射出成形工程のみでポリ乳酸樹脂を結晶化させ耐熱性を上げたが、この場合、射出成形金型温度は比較的高い温度である90℃以上となっている。この際、第1の基板12を射出成形金型より取り出すときに、第1の基板12は比較的高い温度である90℃に近い状態で、射出成形金型内の突き出し機構で押されるため、第1の基板12の反りは市販のDVDプレーヤで再生可能な平坦な光ディスクD1を得るのには十分ではあったが比較的大きな反りとなっていた。この反りをさらに軽減し、さらに平坦な光ディスクD1が得られるようにしたのがこの第4実施例である。上記したように、この第4実施例では比較的低い射出成形金型温度、例えば20℃〜60℃の金型温度で射出成形され、平坦な第1の基板12を得た後、この第1の基板12は平坦な状態のまま加圧下、90℃以上で熱処理を施すことでポリ乳酸樹脂を結晶化させ耐熱性を上げている。このような第4実施例のような方法をとることで、より平坦な第1の基板12を得ることが可能となった。
【0038】
<第5実施例>
次に第5実施例について説明する。先の第1実施例では貼り合わせにより光ディスクD1を得た後には、処理は何も行っていないが、この第5実施例では貼り合わせ後の光ディスクD1を、ディスクに接触する部分が平坦なガラス製の熱処理金型に挟み、さらに熱処理金型内の光ディスクD1に圧力が加わるように、光ディスクD1の上側の熱処理金型の質量を調整し、光ディスクD1は熱処理金型とともに50℃以上の熱処理炉の中に投入される。熱処理金型が50℃になった後、一定時間経過後、光ディスクD1は熱処理金型とともに熱処理炉より取り出し、室温になるまでそのまま放置する。熱処理金型が室温になった後、光ディスクD1は熱処理金型内から取り出され、平坦な光ディスクD1ができあがる。
【0039】
この際、光ディスクを金型に重ね合わせた場合に光ディスクの信号部が接触しないように、光ディスクD1に凸部を設けることがあるが、そのような場合はこの熱処理金型の形状はその凸部を逃げた形状とする。熱処理金型の材質はガラス製のほか、ステンレスなどの金属製等平坦面が加工できるものであればよい。また、熱処理金型内の光ディスクD1に圧力が加わるようにする方法としては、熱処理金型の質量を調整する方法だけでなく、重りを乗せる方法や油圧や空圧を用いるなどの方法があり、いずれにしても熱処理金型に圧力が加わる方法であれば、どのような方法でもよい。
この光ディスクD1に50℃以上の熱処理を行うのは、加圧が行われた後、あるいは加圧と同時に熱が加わるようになっていれば良く、光ディスクD1の熱処理炉への投入のタイミングと熱処理炉の温度と時間は適宜選択されてよい。この光ディスクD1の熱処理炉からの取り出しのタイミング及び熱処理金型からの取り出しのタイミングや方法については適宜選択されてよい。また、熱処理金型自体に加熱機構を設けてもよい。
【0040】
先の第1実施例では、市販のDVDプレーヤで再生可能な平坦な光ディスクD1を得るのには十分ではあったが比較的大きな反りとなっており、この反りをさらに軽減し、さらに平坦な光ディスクD1が得られるようにしたのがこの第5実施例である。この第5実施例のような方法をとることで、第1の基板12及び第2の基板14及び接着剤層16の残留応力を除去でき、より平坦な光ディスクD1を得ることが可能となった。
なお、上記第4実施例、第5実施例は第1実施例の構成の光ディスクについて行ったものであるが、第2及び第3実施例の構成の光ディスクについても同様に実施することが可能である。
【0041】
<第6実施例>
次に第6実施例について説明する。この第6実施例では、第1〜第5実施例で用いた第1基板や第2基板を構成するプラスチックを、ポリ乳酸樹脂と、該ポリ乳酸樹脂以外の他の熱可塑性樹脂との混合物よりなるアロイ樹脂により形成し、前記熱可塑性樹脂は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が80℃以上であって前記アロイ樹脂中に40%以上含有されるように構成した点に特徴がある。
具体的には、本実施例に使用する第1の基板12は、第4実施例と同様にして作製する。すなわちポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックを比較的低い射出成形金型温度、例えば20℃〜60℃の金型温度で射出成形し、平坦な第1の基板12を得た後、この第1の基板12は平坦な状態のまま加圧下、90℃以上で熱処理を施すことでポリ乳酸樹脂を結晶化させて耐熱性を上げ、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上である第1の基板12を作製する。
【0042】
次に、第2の基板14は、ポリ乳酸樹脂とISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の加重たわみ温度(DTUL)が80℃以上である他の透明な熱可塑性樹脂との混合物であるアロイ樹脂を用いて射出成形する。このとき第2の基板14は、信号を記録・再生するレーザ光Lが透過する必要があるため、前記レーザ光Lに対して80%以上の透過率が必要である。このため前記アロイ樹脂も高い透明性が必要であり、アロイ樹脂の一部を構成する上記透明な熱可塑性樹脂の屈折率は、ポリ乳酸樹脂の屈折率1.46に近い事が望ましい。具体的には上記熱可塑性樹脂は1.53〜1.40の範囲の屈折率を有する樹脂が好適であり、さらに1.49〜1.44の範囲の屈折率を有する樹脂がさらに好適である。前記屈折率の範囲にあり、且つDTULが80℃以上である上記透明な熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA、屈折率1.49)、ポリメチルペンテン(TPX、屈折率1.47)、ポリアセタール(POM、屈折率1.48)、酢酸セルロース(屈折率1.50)などが挙げられる。
【0043】
また上記アロイ樹脂の一部を構成する上記透明な熱可塑性樹脂の屈折率が、前記屈折率の範囲を超えている場合においては、アロイ樹脂を作製する際に混錬機等により溶融混錬りを行って上記熱可塑性樹脂を分散させ、光ディスクの記録再生装置に使用されるレーザ光の波長以下にまで小さく分散される必要がある。好ましくは分散される熱可塑性樹脂の粒径(ドメイン)は、600nm以下に分散していることが望ましい。上記熱可塑性樹脂が600nm以下に分散することで、ポリ乳酸樹脂と屈折率の異なる透明な熱可塑性樹脂がポリ乳酸樹脂中に混合されていても、光ディスクの記録再生装置に使用するレーザ光の波長に対して透明性が保てるとともに、ポリ乳酸樹脂より耐熱性の高い熱可塑性樹脂が強化繊維的に分散しており、耐熱性の向上したアロイ樹脂を得ることができる。このようなポリ乳酸樹脂とアロイ樹脂を構成させる透明な熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂脂環式ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0044】
また上記のようにして作製されたアロイ樹脂中の荷重たわみ温度(DTUL)が80℃以上である透明な熱可塑性樹脂の含有量は少なくとも40%以上必要である。この含有量が40%を下回る場合では、耐熱性を向上させる効果はほとんどなく、40%以上含有することで、その効果が現れてくる。また上記含有量は60%以上であることが望ましい。
ここで、植物由来という環境に配慮したポリ乳酸樹脂を出きるだけ多く使用するという観点で見ると、ポリ乳酸樹脂の含有量を多くすることが望ましい。このため荷重たわみ温度(DTUL)の温度がより高い樹脂を用いることが望ましいが、最終形態である光ディスクに求められる耐熱性、ポリ乳酸樹脂との相溶性、得られるアロイ樹脂の透明性などを考慮して含有比率は決めることが望ましい。
【0045】
<第7実施例>
次に第7実施例について説明する。この第7実施例では、第1〜第6実施例で用いた、前記第1の基板と第2の基板の内、少なくとも前記第2の基板の表面に凹凸のピットまたは溝が形成されて、且つ前記反射層及び/又は記録層が形成された面上に熱、または紫外線にて硬化する硬化性樹脂保護層を形成するようにした点に特徴がある。ここでは、一例として再生専用シングルレイヤーDVDディスクに対応する光ディスクを例にとって、第1実施例との相異を示して説明する。図4は本発明の光ディスクの第7実施例を示す構成図である。
【0046】
この第7実施例の光ディスクが、図1に示す先の第1実施例に対して異なる点は、図4に示すように、第2の基板14上に形成された微小な凹凸のピットや溝の形状変化を保護するための硬化性樹脂保護相30を形成したことに特徴があり、それ以外は第1実施例と同様の構成及び材料を用いており詳細は省略する。
すなわち図4中の第7実施例の光ディスクD7は、第1の基板12と、光透過性の第2の基板14とを有し、少なくとも第2の基板14の一方の表面に反射層及び/又は記録層を有する微小な凹凸や溝を形成し(図9中では凹凸18が形成されている)、上記微小な凹凸や溝が形成されている面側に熱または紫外線にて硬化する硬化性樹脂保護層30を設ける。このとき硬化性樹脂保護層30は、60℃付近にガラス転移点を示し、形状変化が起こり易い比較的耐熱性の劣る光透過性の透明なポリ乳酸樹脂製の第2の基板14が、ガラス転移点付近、またはそれ以上の温度の環境負荷がかかったときに、ピットの形状変化(変形)を抑える目的で形成されている。
【0047】
このような硬化性樹脂保護層30としては、熱可塑性でなく架橋密度が高く、ガラス転移点が高い硬化性樹脂が好ましく、上記のように熱硬化または紫外線硬化樹脂を用いる。さらにこの硬化樹脂の硬度は、鉛筆硬度でH以上の硬さをもつ硬化性樹脂が好ましい。このような材料としては、エポキシアクリレート樹脂やウレタンアクリレート樹脂またはそれらの混合物が主成分である紫外線硬化樹脂などが好ましく、具体的には日本化薬製HOD−3200、HOD−3500、HOD−3603、三菱レイヨン製MH−7421、大日本インキ製SD−715、GE東芝シリコーン製XR39−C1008、ソニーケミカル製SK−5110などが挙げられる。このような硬化性樹脂保護層30は、おもにスピンコート法で1〜50ミクロン程度の厚みで形成される。特に5〜20ミクロン程度の厚みに形成するのが好ましい。
【0048】
このようにして少なくとも第2の基板14のピットや溝が形成された側に反射層20及び硬化性樹脂保護層30が形成された第2の基板14と、接着剤層16を介在させて第1の基板12とを接合することにより光ディスクD7が製造される。この光ディスクD7に対して、記録、或いは再生用のレーザ光Lは第2の基板14の表面側より照射される。
【0049】
このようにして得られた光ディスクD7は、温度50℃〜60℃でアニール処理を行う。これは透明な第2の基板14を主に構成するポリ乳酸樹脂のガラス転移温点以下でアニール加熱処理を行うことで、硬化性樹脂保護層30がピットの凹凸18の形状を保護しつつ、基板成形時に生じた応力を緩和させることが可能になり、その後の例えば55℃での高温環境試験による変形を小さくさせることができる。
尚、アニール処理温度は、第2の基板14を主に構成するポリ乳酸樹脂のガラス転移温点以下であれば、特に限定はないが50℃〜60℃の範囲が好ましい。更にアニール時間も特に限定はないが、基板成形時に生じた応力を十分に緩和させる程度の時間、アニールすることが好ましく、例えば55℃のときは30分から3時間程度が好適な時間である。またアニール温度を比較的低い温度で行う場合は、アニール時間を数時間から数十時間行うのが好ましい。更に、アニール温度が50℃よりも低いと、アニール時間として更に長時間を要し、スループットが大幅に低下してしまう。
【0050】
このようにして、耐熱性を有し、高温負荷試験後においてもディスクの変形がさらに小さく、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定める高温(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)に基づいて実施した後においてもプレーヤで再生可能な耐熱性の向上した再生専用シングルレイヤーDVDディスクを得ることができる。
ここでは、第1実施例に第7実施例の発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限定されず、第2実施例〜第6実施例に対しても、この第7実施例の発明を適用することができる。この場合、第2実施例のように、反射層や記録層が2層ある2レイヤー構造の光ディスクの場合には、第1の基板側にも硬化性樹脂保護層を設ける。更に、第3実施例のように、第1の基板12側だけに凹凸や溝が形成されている場合には、第1の基板12側に硬化性樹脂保護層を形成することになる。
【0051】
<各実施例の評価>
次に実際に上記各実施例の光ディスクを製造して評価を行ったので、その評価結果について説明する。
(第1実施例の評価)
図5は第1実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
まず、三井化学製のポリ乳酸樹脂ペレット(レイシアH100)を用いて、射出成形機(日精樹脂製 M040E)の金型にDVD規格に準拠した信号ピットが形成されたスタンパーを取り付けてシリンダー温度230℃、金型温度50℃でDVD規格に準拠した信号ピットが形成された厚さ0.6mmの光透過性の第2の基板14を作製した。この時、この第2の基板14のDVD再生レーザ光の波長である650〜660nmでの光透過率は92%であった。
【0052】
また第2の基板14の表面に形成された微小な凹凸(ピット)18を原子間力顕微鏡で観察すると、ピット幅、長さ、深さ等のピット形状は従来のポリカーボネートと同等に良好な形状であった。
この第2の基板14の信号ピットが形成された側の面にDCスパッタリング法により膜厚70nmのAl膜よりなる反射層20を形成してディスク中間体M2を作製した。
次にポリスチレン換算で分子量20万のポリL乳酸樹脂のペレットに層状珪酸塩を樹脂に対して3重量%を添加し、二軸押出機を用いて220℃で溶融混練し、さらにペレット化してポリ乳酸樹脂を主成分とする第1の基板用のポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のポリ乳酸樹脂を結晶化させた場合のISO75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)を測定すると125℃であった。この得られたペレットを射出成形機(日精樹脂製 M040E)を用いて、この金型に表面がミラーのスタンパーを取り付け、シリンダー温度250℃、金型温度105℃、冷却時間1分で射出成形し、厚さ0.6mmの第1の基板12を作製した。この第1の基板12は白濁しており、光透過性はなかったが表面の平坦性は貼り合わせ基板として十分であった。
【0053】
上述のように作製したディスク中間体M2のAl反射層20を設けた側の表面に接着剤として紫外線硬化樹脂(協立化学産業(株)製:変性ウレタンアクリレート(商品名)ワールドロックNo811)を塗布し、その上に上記第1の基板12を重ね合わせ、回転数2000rpmでスピン塗布したのち、紫外線を照射して貼り合わせを行った。このときの接着剤層16(図1参照)の厚みは40μmであった。このようにして再生専用シングルレイヤーDVDディスクD1を完成した。
この得られた光ディスクD1の保存試験をDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施したところ、ディスクの変形はほとんどなく、しかも試験後の光ディスクD1は市販のDVDプレーヤで再生可能であった。
【0054】
(第2実施例の評価)
図6は第2実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
まず第1実施例と全く同じ方法で第2の基板14を作製した。当然、この第2の基板14のDVD再生波長である650〜660nmでの光透過率は92%であった。
この第2の基板14の表面に形成された微小な凹凸(ピット)を原子間力顕微鏡で観察すると、ピット幅、長さ、深さ等のピット形状は従来のポリカーボネートと同等の良好な形状であった。この第2の基板14の信号ピットが形成された側の面にDCスパッタリング法により膜厚5nmのAu膜よりなる半透過の反射層20Aを形成してディスク中間体M22を作製した。
【0055】
次に実施例1と同様にポリスチレン換算で分子量20万のポリL乳酸樹脂のペレットに層状珪酸塩を樹脂に対して1.0重量%を添加し、二軸押出機を用いて210℃で溶融混練し、さらにペレット化してポリ乳酸樹脂を主成分とする第1の基板用のポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のポリ乳酸樹脂を結晶化させた場合のISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)を測定すると100℃であった。この得られたペレットを射出成形機(日精樹脂製 M040E)の金型に予め微小な凹凸(ピット)が形成されたスタンパーを取り付け、シリンダー温度230℃、金型温度95℃、冷却時間1分で射出成形し、厚さ0.6mmの第1の基板12を作製した。この第1の基板12は白濁して光透過性はなかったが、基板表面に形成された微小な凹凸(ピット)22を原子間力顕微鏡で観察すると、ピット幅、長さ、深さ等のピット形状は従来のポリカーボネート同等の良好な形状であった。この第1の基板12の信号ピットが形成された側の面にDCスパッタリング法により膜厚70nmのAl膜よりなる反射層20Bを形成してディスク中間体M21を作製した。
【0056】
上述のように作製したディスク中間体M21のAl反射層20Bを設けた側の表面に接着剤として紫外線硬化樹脂(協立化学産業(株)製:変性ウレタンアクリレート(商品名)ワールドロックNo811)を塗布し、その上に上記ディスク中間体M22の反射層20Aの面を重ね合わせ、回転数2000rpmでスピン塗布したのち、紫外線を照射して貼り合わせを行った。このときの接着剤層24(図2参照)の厚みは40μmであった。このようにして再生専用デュアルレイヤーDVDディスクD2を完成した。
【0057】
得られた光ディスクD2の保存試験をDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施したところディスクの変形はほとんどなく、試験後のディスクは市販DVDプレーヤで凹凸18を有するレイヤー0、凹凸22を有するレイヤー1は共に再生可能であった。
【0058】
(第3実施例の評価)
図7は第3実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
まずポリスチレン換算で分子量20万のポリL乳酸樹脂のペレットに層状珪酸塩を樹脂に対して3重量%を添加し、二軸押出機を用いて220℃で溶融混練し、さらにペレット化してポリ乳酸樹脂を主成分とする第1の基板用のポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のポリ乳酸樹脂を結晶化させた場合のISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)を測定すると125℃であった。この得られたペレットを射出成形機(日精樹脂製 M040E)の金型にDVD規格に準拠した信号ピットが形成されたスタンパーを取り付け、シリンダー温度250℃、金型温度110℃、冷却時間1分で射出成形し、厚さ0.6mmの第1の基板12を作製した。この基板は白濁して光透過性はなかったが、基板表面に形成された微小な凹凸(ピット)22を原子間力顕微鏡で観察すると、ピット幅、長さ、深さ等のピット形状はポリカーボネート樹脂で成形したときと同等の良好な形状であった。
【0059】
この第1の基板12の信号ピットが形成された側の面にDCスパッタリング法により膜厚70nmのAl膜よりなる反射層20Bを形成しディスク中間体M31を作製した。
次にポリスチレン換算で分子量20万のポリL乳酸樹脂のペレットを二軸延伸ロールを用いて、厚さ550ミクロンに二軸延伸された透明なポリ乳酸樹脂のシートを得た。このシートを外形120mm、内径15mmに打ち抜き、光透過性の第2の基板26を作製した。この第2の基板26のDVD再生波長である650〜660nmでの光透過率は85%であった。
【0060】
上述のように作製したディスク中間体M31のAl反射層20Bを設けた側の表面に接着剤として紫外線硬化樹脂(協立化学産業(株)製:変性ウレタンアクリレート(商品名)ワールドロックNo811)を塗布し、その上にシート状の上記第2の基板26を重ね合わせ、回転数2000rpmでスピン塗布したのち、紫外線を照射して貼り合わせを行った。このときの接着剤層24(図3参照)の厚みは50μmであった。このようにして再生専用シングルレイヤーDVDディスクD3を完成した。
得られた光ディスクD3の保存試験をDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施したところディスクの変形はなく、試験後のディスクは市販DVDプレーヤで再生可能であった。
さらに試験条件(温度80℃、相対湿度60%、96時間放置)で高温(耐熱性)試験を実施したところ、ディスクの変形はほとんどなく、試験後のディスクは市販DVDプレーヤで再生可能であった。
【0061】
(第4実施例の評価)
第4実施例は第1の基板12の製造方法が異なるのみで、その他は第1実施例と同じである。この第4実施例における第1の基板12は以下の製造方法で作られ、図8を用いて説明する。
まずポリスチレン換算で分子量20万のポリL乳酸樹脂のペレットに層状珪酸塩を樹脂に対して3重量%を添加し、二軸押出機を用いて220℃で溶融混練し、さらにペレット化してポリ乳酸樹脂を主成分とする第1の基板用のポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のポリ乳酸樹脂を結晶化させた場合のISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)を測定すると125℃であった。この得られたペレットを射出成形機(日精樹脂製 M040E)を用いて、この金型に表面がミラーのスタンパーを取り付け、シリンダー温度250℃、金型温度30℃、冷却時間15秒で射出成形し、厚さ0.6mmの第1の基板12を作製した。成形後の第1の基板12は、基板に接触する部分が平坦なガラス製の熱処理金型31A及び31Bに挟み、さらに熱処理金型31A及び31B内の第1の基板12に圧力が加わるように上側の熱処理金型31B上に900gの重り32を乗せ、第1の基板12は熱処理金型31A及び31B及び重り32とともに90℃以上の図示しない熱処理炉の中に投入される。
【0062】
上記熱処理金型31A及び31Bが90℃になった後、その状態で10分経過後、第1の基板12は熱処理金型31A及び31B及び重り32とともに熱処理炉より取り出し、室温になるまでそのまま放置する。上記熱処理金型31A及び31Bが室温になった後、第1の基板12は熱処理金型31A及び31B内から取り出され、これによりISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板12ができあがる。
【0063】
先の第1実施例では、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板12を得る方法としては、射出成形工程のみでポリ乳酸樹脂を結晶化させ耐熱性を上げたが、この場合、射出成形金型温度は比較的高い温度である90℃以上となっている。この際、第1の基板12を射出成形金型より取り出すときに、第1の基板12は比較的高い温度である90℃に近い状態で、射出成形金型内の突き出し機構で押されるため、第1の基板12の反りは市販のDVDプレーヤで再生可能な平坦な光ディスクD1を得るのには十分ではあったが比較的大きな反りとなっていた。この実施例1の光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角を測定すると、+0.13°、−1.2°となっていた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。
【0064】
この反りをさらに軽減し、さらに平坦な光ディスクD1が得られるようにしたのが第4実施例である。上記したように、この第4実施例では比較的低い射出成形金型温度である30℃の金型温度で射出成形され、平坦な第1の基板12を得た後、この第1の基板12は平坦な状態のまま加圧下、90℃以上で熱処理を施すことでポリ乳酸樹脂を結晶化させ耐熱性を上げている。この第4実施例のような方法をとることで、より平坦な第1の基板12を得ることが可能となり、この第4実施例の光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角を測定すると、+0.24°、−0.48°となっており、先の第1実施例の場合よりも改善できることが確認できた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。
【0065】
また、熱処理温度は90℃以上である、100℃、110℃、120℃の実験を行ったが、90℃の場合と同じ結果が得られた。それに対して、熱処理温度を80℃とした場合には、X線回折による結晶化度の測定では結晶化が不十分な第1の基板12しか得られず、できあがった光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification forRead−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角は、+1.6°、−2.6°以上となっていた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。
【0066】
(第5実施例の評価)
第5実施例は光ディスクD1を得た後に熱処理を行う方法が異なるのみで、その他は第1実施例と同じである。
この第5実施例の光ディスクD1は以下の製造方法で作られ、図9を用いて説明する。先の第1実施例では貼り合わせにより光ディスクD1を得た後には、処理は何も行っていないが、この第5実施例では貼り合わせ後の光ディスクD1をディスクに接触する部分が平坦なガラス製の熱処理金型33A及び33Bに挟み、さらに熱処理金型33A及び33B内の光ディスクD1に圧力が加わるように、光ディスクD1の上側の熱処理金型33Bの質量を200gに調整し、光ディスクD1は熱処理金型33A及び33Bとともに50℃の図示しない熱処理炉の中に投入される。この熱処理金型33A及び33Bが50℃になった後、この状態で12時間経過後、光ディスクD1は熱処理金型33A及び33Bとともに熱処理炉より取り出し、室温になるまでそのまま放置する。この熱処理金型33A及び33Bが室温になった後、光ディスクD1は熱処理金型33A及び33B内から取り出され、平坦な光ディスクD1ができあがる。
【0067】
先の第1実施例では、市販のDVDプレーヤで再生可能な平坦な光ディスクD1を得るのには十分ではあったが比較的大きな反りとなっていた。この第1実施例の光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification for Read−OnlyDisc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角を測定すると、+0.13°、−1.2°となっていた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。この反りをさらに軽減し、さらに平坦な光ディスクD1が得られるようにしたのが第5実施例である。上記した第5実施例のような方法をとることで、第1の基板12及び第2の基板14及び接着剤層16の残留応力を除去でき、より平坦な光ディスクD1を得ることが可能となり、この第5実施例の光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification for Read−OnlyDisc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角を測定すると、+0.15°、−0.29°となっていた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。
【0068】
また、熱処理温度は50℃以上である、55℃、60℃の実験を行ったが、50℃の場合と同じ結果が得られた。それに対して、熱処理温度を45℃とした場合には、第1の基板12及び第2の基板14及び接着剤層16の残留応力を除去できておらず、できあがった光ディスクD1のDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施した後のディスクの半径方向の反り角は、実施例1と同等の+0.11°、−1.1°となっていた。なお、反り角の測定方法は、DVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた方法で測定した。また、熱処理温度が65℃の場合は反りは良かったが、信号の変形と推測される原因により高温負荷試験後のディスクは市販DVDプレーヤで再生不能であった。これは、第5実施例では、信号ピットの凹凸18が設けられた第2の基板14の樹脂材料のISO75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)は55℃であったためであり、第2の基板14の樹脂材料の荷重たわみ温度がもっと高い場合には、65℃以上の熱処理温度も効果がある。
【0069】
(第6実施例の評価)
実施例6に使用する第1の基板12は、第4実施例と同様にして作製した。
次に第2の基板14を作製するのに用いるアロイ樹脂として、以下の2種類を作製した。
<アロイ樹脂の調整>
ポリL乳酸樹脂ペレット(三井化学製 レイシアH100)に、他の透明な熱 可塑性樹脂としてISO75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が約80℃であるポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA、屈折率1.49)(住友化学製 スミペックス)をポリ乳酸樹脂に対して30、40、50、60重量%をそれぞれ添加し(実施例6−1、6−2、6−3、6−4に対応)、二軸押出機を用いて溶融混練して、ポリメチルメタクリレート樹脂をポリ乳酸樹脂中に分散させ、さらにペレット化してアロイ樹脂を作製した。得られたアロイ樹脂を射出成形で試験サンプルを作製し、CD、DVD再生装置のレーザ光の波長780nm、660nmでの光透過率を測定するといずれも80%以上あり、良好な光透過率であった。
【0070】
同様にポリL乳酸樹脂ペレット(三井化学製 レイシアH100)に、他の透明な熱可塑性樹脂としてISO75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が約100℃であるポリメチルペンテン樹脂(三井化学製 TPX)を樹脂に対して30、40、50、60重量%をそれぞれ添加し(実施例6−5、6−6、6−7、6−8に対応)、二軸押出機を用いて溶融混練して分散させ、さらにペレット化しアロイ樹脂を作製した。得られたアロイ樹脂を射出成形で試験サンプルを作製し、CD、DVD再生装置のレーザ光の波長780nm、660nmでの光透過率を測定するといずれも80%以上あり、良好な光透過率であった。
【0071】
次に、上述のように作製したアロイ樹脂を用いて、金型に予め微小な凹凸(ピット)や溝(グルーブ)が形成されたスタンパーを取り付け、射出成形でDVD規格に準拠した信号ピットが形成された第2の基板14を作製し、さらにDCまたはRFスパッタリング法にてAl反射層を形成した。
次に、上述のように作製した第1及び第2の基板12、14を貼り合わせてDVDディスクを製造する。このとき、第2の基板14の反射層20を形成した側の面と、第1の基板12とを対向させ、その間に接着剤層16を介在させる。この貼り合わせの時に接着剤層16に使用される材料は、アクリレート系の紫外線硬化樹脂を用いた。このようにして再生専用シングルレイヤーDVDディスクを作製した。
得られたDVDディスクの高温(耐熱)保存試験(試験条件:温度70℃、相対湿度50%、96時間放置)を実施し、試験後のディスク変形状態及び市販DVDプレーヤでの再生可否を調べた。その結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
アロイ樹脂の一部を構成する熱可塑性樹脂であるポリメチルメタクリレート樹脂やポリメチルペンテン樹脂の含有量が30%の場合(実施例6−1、6−5)には、共にディスク変形が大きく、しかもプレーヤでの再生も不可であった。
これに対して、上記熱可塑性樹脂の含有量が40%以上、具体的には、40%、50%、60%(実施例6−2、〜6−4、6−6、〜6−8)の場合には、ディスクの変形が”ややあり”か、或いは”なし”であり、またプレーヤでの再生も可能であったので、良好であることが確認できた。特に、熱可塑性樹脂の含有量が60%以上の場合には、ディスク変形もほとんどなく、プレーヤでの再生も可能であるので、非常に好ましいことが確認できた。
【0074】
(第7実施例の評価)
図10は第7実施例の光ディスクの製造過程を示す図、図11は第7実施例の光ディスクのアニール処理を示す図である。
まず、第1実施例と同様の材料、装置、条件でDVD規格に準拠した信号ピットが形成された厚さ0.6mmの光透過性の第2の基板14を作製した。この第2の基板14のピットである凹凸18が形成された側の面にDCスパッタリング法により膜厚70nmのAl膜よりなる反射層20を形成し、さらにAl反射層20が形成された側に、鉛筆硬度2Hである紫外線硬化型樹脂(日本化薬製 HOD−3200)をスピンコート法(回転数2500rpm)でスピン塗布して塗布後、紫外線硬化を行って厚さ12ミクロンからなる硬化樹脂保護層30を形成し、ディスク中間体M41を作製した。
【0075】
次に、第1実施例と同様の材料、装置、条件で厚さ0.6mmの第1の基板12を作製した。
上述のように作製したディスク中間体M41の硬化樹脂保護層30を設けた側の表面に接着剤として紫外線硬化樹脂(大日本インキ(株)製:アクリレート系樹脂(商品名)SD−661)を塗布して接着剤層16を形成し、その上に上記第1の基板12を重ね合わせ、回転数2000rpmでスピン塗布した後、紫外線を照射して貼り合わせを行った。このようにしてピット保護のための硬い硬化樹脂保護層30を有する再生専用シングルレイヤーDVDディスク7を完成した。
更に得られたディスクD7を、図11に示すように厚さ1cmの平坦な重さ900gの2枚のガラス板40で挟み、55℃のオーブン50の中に3時間放置してアニール処理を行った。このアニール処理の後、取り出して室温まで冷却した。
【0076】
このアニール処理で得られた光ディスクD7の保存試験をDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定める高温(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)に基づいて実施したところ、ディスクの変形はほとんどなく、しかも試験後の光ディスクD7は市販のDVDプレーヤで良好に再生可能であり、硬い硬化樹脂保護層30によるピット保護とアニール処理による高温負荷後のディスク変形抑止に硬化があることを確認した。
【0077】
(比較例の評価)
次に比較例の評価を行った。この比較例では、先の実施例1と同様に三井化学製 ポリ乳酸樹脂ペレット(レイシアH100)を用いて、射出成形機(日精樹脂製 M040E)の金型にDVD規格に準拠した信号ピットが形成されたスタンパーを取り付けシリンダー温度230℃、金型温度50℃でDVD規格に準拠した信号ピットが形成された厚さ0.6mmの光透過性の第2の基板を作製した。さらに貼り合わせる第1の基板も、三井化学製のポリ乳酸樹脂ペレット(レイシアH100)を用いて射出成形して作製した。ここで上記第1の基板の樹脂材料のISO 75で規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)は55℃であった。この2枚の基板は、実施例1と全く同じ方法で反射層、貼り合わせを行い、再生専用シングルレイヤーDVDディスクを完成した。
【0078】
得られた光ディスクの保存試験をDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定められた使用温度を想定した高温負荷(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)を実施したところ、ディスクの変形は著しく、試験後のディスクは市販DVDプレーヤで再生不能であった。また同様の実験を、上記荷重たわみ温度(DTUL)が55℃及び85℃の各樹脂材料についても比較例としてディスクを作製したが、このディスクも変形が著しく、市販のDVDプレーヤでは再生不能であった。
【0079】
(比較例2:第7実施例に対する比較例)
次に実施例7と同様にして作製した光ディスクをオーブンの中でアニール処理を行わなかった場合を比較例とし、評価を行った。この比較例では、先の実施例7と同様にしてピット保護のための硬い硬化樹脂保護層を有する再生専用シングルレイヤーDVDディスクを作製するところまでは同じである。
【0080】
ここで実施例7との相違は、完成したディスクを55℃のオーブンの中でアニール処理を行わずに、保存試験を実施した。すなわちDVDの規格(DVD Specification for Read−Only Disc Part1 2.2.2)に定める高温(耐熱性)試験(温度55℃、相対湿度50%、96時間)に基づいて実施した。
試験後のディスクは、硬化樹脂保護層で保護されており、顕微鏡観察でもピット形状には著しい変化は観察されなかった。しかしながら、オーブンの中でアニール処理を行わず、ガラス転移温度付近の55℃に長時間放置されたため、光ディスクの透明な第2の基板側が応力緩和の進行に伴う変形が生じ、結果として光ディスク形状に僅かに反りが生じた。このアニール処理を行わなかった光ディスクの反りは、特にディスク中周から外周にかけて変形が生じ、市販のDVDプレーヤにてかろうじて再生することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の光ディスクの第1実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の光ディスクの第2実施例を示す構成図である。
【図3】本発明の光ディスクの第3実施例を示す構成図である。
【図4】本発明の光ディスクの第7実施例を示す構成図である。
【図5】第1実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図6】第2実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図7】第3実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図8】第4実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図9】第5実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図10】第7実施例の光ディスクの製造過程を示す図である。
【図11】第7実施例の光ディスクのアニール処理を示す図である。
【図12】反射層(或いは記録層)が1層の光ディスクを示す図である。
【図13】反射層(或いは記録層)が2層の光ディスクを示す図である。
【符号の説明】
【0082】
12…第1の基板、14,26…第2の基板、16,24…接着剤層、18,22…凹凸、20,20A,20B…反射層、30…硬化性樹脂保護層、31A,31B,33A,33B…熱処理金型、32…重り、D1,D2,D3,D7…光ディスク、L…レーザ光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に、接着剤と、光透過性の第2の基板とが順次形成され、且つ前記第2の基板の前記第1の基板側には反射層及び/又は記録層が形成されてなり、前記第2の基板側からレーザ光を照射して情報の記録再生を行う光ディスクにおいて、
前記第1の基板は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなり、
前記第2の基板は、前記レーザ光の波長に対して80%以上の透過率を有するポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなることを特徴とする光ディスク。
【請求項2】
第1の基板上に、接着剤と、光透過性の第2の基板とが順次形成され、且つ前記第1、第2の基板の互いに対向する側にそれぞれに第1、第2の反射層及び/又は第1、第2の記録層が形成されてなり、前記第2の基板側からレーザ光を照射して情報の記録再生を行う光ディスクにおいて、
前記第1の基板は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなり、
前記第2の基板は、前記レーザ光の波長に対して80%以上の透過率を有するポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなることを特徴とする光ディスク。
【請求項3】
前記プラスチックは、ポリ乳酸樹脂と、該ポリ乳酸樹脂以外の他の光透過性の熱可塑性樹脂との混合物よりなるアロイ樹脂よりなり、前記熱可塑性樹脂は、ISOで規定される底荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が80℃以上であって前記アロイ樹脂中に40%以上分散されていることを特徴とする請求項1または2記載の光ディスク。
【請求項4】
前記第1の基板と第2の基板の内、少なくとも前記第2の基板の表面に凹凸のピットまたは溝が形成されて、且つ前記反射層及び/又は記録層が形成された面上に熱、または紫外線にて硬化する硬化性樹脂保護層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光ディスク。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに係る光ディスクの製造方法において、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板は、該第1の基板の成形後、90℃以上の加圧下で熱処理が施されることを特徴とする光ディスクの製造方法。
【請求項6】
第1の基板上に接着剤層を形成する一方、光透過性の第2の基板上に反射層及び/又は記録層を形成した後、前記接着剤層側を前記反射層及び/又は記録層に対向配置させ、前記接着剤層を介して前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせて作製する光ディスクの製造方法において、
前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせた後、50〜60度℃の温度で熱処理を行なうことを特徴とする光ディスクの製造方法。
【請求項1】
第1の基板上に、接着剤と、光透過性の第2の基板とが順次形成され、且つ前記第2の基板の前記第1の基板側には反射層及び/又は記録層が形成されてなり、前記第2の基板側からレーザ光を照射して情報の記録再生を行う光ディスクにおいて、
前記第1の基板は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなり、
前記第2の基板は、前記レーザ光の波長に対して80%以上の透過率を有するポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなることを特徴とする光ディスク。
【請求項2】
第1の基板上に、接着剤と、光透過性の第2の基板とが順次形成され、且つ前記第1、第2の基板の互いに対向する側にそれぞれに第1、第2の反射層及び/又は第1、第2の記録層が形成されてなり、前記第2の基板側からレーザ光を照射して情報の記録再生を行う光ディスクにおいて、
前記第1の基板は、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなり、
前記第2の基板は、前記レーザ光の波長に対して80%以上の透過率を有するポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなることを特徴とする光ディスク。
【請求項3】
前記プラスチックは、ポリ乳酸樹脂と、該ポリ乳酸樹脂以外の他の光透過性の熱可塑性樹脂との混合物よりなるアロイ樹脂よりなり、前記熱可塑性樹脂は、ISOで規定される底荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が80℃以上であって前記アロイ樹脂中に40%以上分散されていることを特徴とする請求項1または2記載の光ディスク。
【請求項4】
前記第1の基板と第2の基板の内、少なくとも前記第2の基板の表面に凹凸のピットまたは溝が形成されて、且つ前記反射層及び/又は記録層が形成された面上に熱、または紫外線にて硬化する硬化性樹脂保護層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光ディスク。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに係る光ディスクの製造方法において、ISOで規定される低荷重下(0.45MPa)の荷重たわみ温度(DTUL)が100℃以上であるポリ乳酸樹脂を主成分とするプラスチックからなる第1の基板は、該第1の基板の成形後、90℃以上の加圧下で熱処理が施されることを特徴とする光ディスクの製造方法。
【請求項6】
第1の基板上に接着剤層を形成する一方、光透過性の第2の基板上に反射層及び/又は記録層を形成した後、前記接着剤層側を前記反射層及び/又は記録層に対向配置させ、前記接着剤層を介して前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせて作製する光ディスクの製造方法において、
前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせた後、50〜60度℃の温度で熱処理を行なうことを特徴とする光ディスクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−73166(P2006−73166A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322994(P2004−322994)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
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