説明

光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物及びその硬化物

【課題】本発明の紫外線硬化樹脂によれば、2P法による基板成形の量産性に優れ、スタンパからの剥離性が特に良好で、硬化時及び多層ディスクを高温多湿化に置いた後において反りの変化量が小さい強い光ディスク用基盤を提供することができる。
【解決手段】
(A)脂肪鎖を有する(メタ)アクリレート、(B)(メタ)アクリレートモノマー及び/又は(C)ウレタン(メタ)アクリレート、及び(D)光重合開始剤を含有することを特徴とする多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層光ディスク用紫外線硬化物に関し、ポリカーボネート製スタンパからの剥離性が高く、硬化時の反り、高温多湿下での反りの変化が小さい次世代高密度多層光ディスクを効率的に生産するための樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化が著しく、記憶容量を増量するために多層型光ディスクが急速に普及している。光ディスクの記録容量を高める技術としては、記録・再生ビ−ムの短波長化、記録・再生ビ−ム照射光学系における対物レンズの高NA(開口数)化、記録層の多層化などが挙げられる。これらのうち記録層の多層化による大容量化は、短波長化や高NA化に比べ、低コストでの大容量化が可能である。
例えば、2個の記録層を有するDVDディスクは、2つの記録層を、透明樹脂中間層を介して積層した構造をとっている。具体的には、0.6mmの第1の透明樹脂基板、第1の記録層、第1の半透明反射膜層、透明樹脂中間層、第2の記録層、第2の反射膜層、接着層、0.6mmの第2の透明樹脂基板の順に積層した構造である。この場合は、透明樹脂中間層は第1の半透明反射膜層上に透明樹脂中間層を形成する紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、記録・再生ビ−ムのガイド用案内溝などの凹凸パタ−ンのある透明樹脂スタンパに押しつけ、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させた後スタンパを剥離し、紫外線硬化型樹脂組成物の表面に凹凸を転写させて形成される。
【0003】
ブルーレイディスクにおいては、読み取り専用ディスクでは、基板である例えば直径120mm、厚み1.1mmのポリカーボネート基板の片面にピット状の記録パターンが転写され、この基板の表面に第1の記録層となる第1の反射膜層、例えば銀合金反射膜層が成膜される。さらに、第1の反射膜層上にピット状の記録パターンが転写された透明樹脂中間層が形成され、この中間膜上に第2の記録層となる第2の反射膜層、例えば銀合金反射膜層が成膜される。そして、透明樹脂層を積層する構成となっている。尚、銀合金反射膜層は、例えばスパッタリング法により、真空中で成膜される手法が提案されている。
記録型ディスクでは、基盤である例えば直径120mm、厚み1.1mmのポリカーボネート基板の片面にピット状の記録パターンが転写され、この基盤の表面に第1の反射膜層、第1の誘電体層、第1の記録層、第2の誘電体層が積層され、さらに透明樹脂中間層、第2の反射膜層、第3の誘電体層、第2の記録層、第4の誘電体層、透明樹脂層の順に積層した構造となっている。
これらの場合において、透明樹脂中間層は反射膜層又は誘電体層上に透明樹脂中間層を形成する紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、記録・再生ビ−ムのガイド用案内溝などの凹凸パタ−ンのある透明樹脂スタンパに押しつけ、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させた後スタンパを剥離し、紫外線硬化型樹脂組成物の表面に凹凸を転写させて形成される。ここで、通常、透明樹脂中間層は読み取り専用ディスクでは、第2の反射膜層に接着している剥離層と第1の反射膜層に接着している接着層からなり、記録型ディスクでは第2の反射膜層に接着している剥離層と第2の誘電体層に接着している接着層からなっている。
【0004】
一般に、該転写法を2P(Photo Polymerization)法といい、使用する紫外線硬化型樹脂組成物を2P剤という。
透明樹脂スタンパは、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、2P剤を硬化させた後の剥離性、低吸湿性、形状安定性等の点から非晶質ポリオレフィンが好ましく、材料コストの点からはポリカーボネート樹脂が好ましい。そこで、コストを削減する目的で安価なポリカーボネート製スタンパーを剥離でき、歩留まり良く複数の記録層を有する光記録媒体を供給することを可能とする多層光記録媒体の製造方法が提案され、当該製造方法に適した樹脂も開発されている(特許文献1)。
【0005】
現在、2P法を使用する際の紫外線硬化型樹脂組成物として主流なものとして、例えば(a)光ラジカル重合可能なプレポリマー、モノマー及び光重合開始剤を含む組成物、(b)光カチオン重合可能なプレポリマー、モノマー、及び光重合開始剤を含む組成物、(c)光ラジカル重合及びカチオン重合組成物を混合した組成物、等の紫外線により硬化する組成物等が挙げられる。
【0006】
プレポリマーとしては、エポキシ、ウレタン等の骨格に、(メタ)アクリロイル基を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。それぞれ、スタンパからの離型性といった成型性、反射膜層又は誘電体層への接着性、耐湿性、柔軟性といった光ディスクの要求特性に重大な影響を与える成分である。
【0007】
モノマーとしては、官能基は(メタ)アクリロイル基を有するものが一般的に用いられているが、ビニル基を有するものも用いられている。一般にプレポリマーは粘度が高く、単体では2P剤として使用困難である為、モノマーを反応性希釈剤として用いる。例えば3官能以上のモノマーを用いることにより、硬化物の架橋密度が増加し、硬度、ヤング率、耐湿熱性が向上する。
【0008】
多層光ディスクを作製する際に、透明樹脂スタンパからの剥離性が悪いと透明樹脂中間層の一部が透明樹脂スタンパと共に剥離してしまい欠陥が生じる。転写性が悪いと記録・再生時にエラ−を生じる。紫外線硬化後に反りが大きいと、形成した凹凸パターンに記録層や反射膜層を均一に形成できなかったり、DVDの場合は第2の基板を貼り合わせることができなかったり、ブルーレイディスクの場合は0.1mmの光透過層を均一に形成できない。また、高温高湿下で凹凸パタ−ンが変形すると、第1、2の記録層の記録特性(例えば、ジッタ特性)が同等にならない。
特許文献2〜5の2P剤は金属製のスタンパを用いてガラス基板上に凹凸パタ−ンを形成しており、透明樹脂スタンパによる凹凸パタ−ン形成についての記載はない。また、特許文献6〜10に2P剤の記載はあるが、本発明の樹脂についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−224057号公報
【特許文献2】特開平5−59139号公報
【特許文献3】特開平5−132534号公報
【特許文献4】特開平5−140254号公報
【特許文献5】特開平5−132506号公報
【特許文献6】特開2003−331463号公報
【特許文献7】特開2004−288242号公報
【特許文献8】特開2004−288264号公報
【特許文献9】特開2005−332564号公報
【特許文献10】特許第4193916号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常、2P剤として用いられる紫外線硬化型樹脂は凹凸パターンが形成されたスタンパから、当該パターンを保持したままで、スタンパから剥がしやすくする必要がある。その際、スタンパから剥離しにくいと、樹脂がスタンパに付着して、反射膜又は誘電体層に接着しない等の問題が生じ、生産効率の低下を招くこととなる。また、スタンパからの剥離性が高い樹脂であっても、紫外線硬化時又は多層ディスクを高温多湿下に置いた後において反りの変化量が大きければ、読み取りエラーが生じてしまうという問題が生じてしまう。
【0011】
そこで、本発明はこのような実情に鑑みて、脂肪鎖を有する(メタ)アクリレートを用いることで、スタンパからの剥離、特にポリカーボネート製スタンパからの剥離に優れ、かつ、硬化時及び多層ディスクを高温多湿下に置いた後において反りの変化量が小さい樹脂組成を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明はスタンパを剥離させる際に選択的に反射膜又は誘電体層に接着させることができるため、2P剤のおける紫外線硬化型樹脂の接着層を省略することを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、脂肪鎖を有する(メタ)アクリレートを使用することで、スタンパ、特にポリカーボネート製スタンパからの剥離性を高め、硬化時及び多層ディスクを高温多湿下で置いた後において反りの変化量が小さい樹脂組成を見出した。これにより、ポリカーボネート製スタンパからの剥離性に優れ、硬化時及び多層ディスクを高温多湿下に置いた後において反りの変化量の小さい紫外線効果型樹脂組成物を開発するに至ったのである。
【0014】
本発明は下記(1)乃至(5)に関する。
(1)(A)脂肪鎖を有する(メタ)アクリレート、(B)(メタ)アクリレートモノマー及び/又は(C)ウレタン(メタ)アクリレート、及び(D)光重合開始剤を含有することを特徴とする多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
(2)(A)脂肪鎖を有する(メタ)アクリレートが、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、及びイソベヘニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種もしくは2種以上である(1)記載の多層光ディスク用紫外線硬化性樹脂組成物。
(3)(B)(メタ)アクリレートモノマーが、イソボルニル(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、及びヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、からなる群から選択される1種もしくは2種以上である(1)又は(2)記載の多層光ディスク用紫外線硬化性樹脂組成物。
(4)樹脂組成物全体に対し、(A)成分が5〜90重量%、(B)成分及び/又は(C)成分が5〜90重量%、(D)成分が1〜15重量%である(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
(5)前記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の樹脂組成物に紫外線を照射して得られる硬化物を有する光ディスク
【発明の効果】
【0015】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物及びその硬化物は、スタンパからの剥離、特にポリカーボネートからの剥離性に優れ、かつ硬化時及び多層ディスクを高温多湿下に置いた後において反りの変化量の小さい2P剤として有用である。また、接着層を省略して1液で中間層を形成させることを可能とする紫外線硬化型樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、(A)脂肪鎖を有する(メタ)アクリレート、(B)(メタ)アクリレートモノマー及び/又は(C)ウレタン(メタ)アクリレート、及び(D)光重合開始剤を含有することを特徴とする多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物に関する。
【0017】
本発明の樹脂組成物においては、(A)脂肪鎖を有する(メタ)アクリレートを必須成分として使用する。脂肪鎖を有する(メタ)アクリレートは下記式(1)で表せられる(メタ)アクリレートを使用することができる。
【化1】

(式中、RはH又はCH、nは10〜25の整数を示す。)
【0018】
具体例としては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、イソベヘニル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。組成物中の(A)脂肪鎖を有するアクリレートの含有量としては、5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%程度である。
(A)脂肪鎖を有する(メタ)アクリレートは、市販品としては例えば、日油化学社製 ブレンマーSA、ブレンマーCA、ブレンマーVA;新中村化学工業社製 イソステアリルアクリレート;共栄社化学社製 ライトアクリレートIS−A、ライトアクリレートIM−A等が挙げられる。
【0019】
本発明の樹脂組成物では、(B)(メタ)アクリレートモノマーを使用する。使用する(メタ)アクリレートモノマーとしては、(A)成分以外の(メタ)アクリレートモノマーであり公知のものであれば、特に限定することなく使用できる。例としては、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルフォリン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
ここで、剥離性を向上させるため、(メタ)アクリレートモノマーがイソボルニルアクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレートを使用することが好ましい。
【0020】
本発明の樹脂組成物では(C)ウレタン(メタ)アクリレートを使用する。ウレタン(メタ)アクリレートは、有機ポリイソシアネート化合物及びヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物を反応させることによって得られる。
有機ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等のジイソシアネート類、又はジシクロペンタニルイソシアネート等のイソシアネート類が挙げられる。
ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物としては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチロールシクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシカプロラクトン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
反応は以下のようにして行う。即ち、有機ポリイソシアネートをそのイソシアネート基1.0あたり、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物をその水酸基が好ましくは1.0〜2.1当量となるように混合し、70〜90℃で反応させて目的とするウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートは1種又は2種以上を任意割合で混合使用することができる。
また、(B)(メタ)アクリレートモノマー、(C)ウレタン(メタ)アクリレートの樹脂組成物中の含有量としては次のようである。すなわち、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物中の(B)(メタ)アクリレートモノマー及び/又は(C)ウレタン(メタ)アクリレートの含有量としては5〜90重量%が用いられ、好ましくは10〜80重量%程度である。
【0021】
また、本発明においては、必要に応じて、適宜エポキシ(メタ)アクリレートを含有させることができる。エポキシ(メタ)アクリレートとしては、好ましくは分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物との反応により得られる。原料となるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素化2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化合物等の水素化ビスフェノール型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のハロゲノ化ビスフェノール型エポキシ化合物、EO/PO変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル化合物等の脂環式ジグリシジルエーテル化合物、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジグリシジルエーテル化合物、ポリサルファイドジグリシジルエーテル等のポリサルファイド型ジグリシジルエーテル化合物、ビフェノール型エポキシ樹脂、ポリエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0022】
これらエポキシ化合物の市販品としては、例えばjER828、jER1001、jER1002、jER1003、jER1004(いずれもジャパンエポキシレジン製)、エポミックR−140、エポミックR−301、エポミックR−304(いずれも三井化学製)、DER−331、DER−332、DER−324(いずれもダウ・ケミカル社製)、エピクロン840、エピクロン850(いずれも大日本インキ製)UVR−6410(ユニオンカーバイド社製)、YD−8125(東都化成社製)等のビスフェノール−A型エポキシ樹脂、UVR−6490(ユニオンカーバイド社製)、YDF−2001、YDF−2004、YDF−8170(いずれも東都化成社製)、エピクロン830、エピクロン835(いずれも大日本インキ製)等のビスフェノール−F型エポキシ樹脂、HBPA−DGE(丸善石油化学製)、リカレジンHBE−100(新日本理化製)等の水素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、DER−513、DER−514、DER−542(いずれもダウ・ケミカル社製)等の臭素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、エポライト3002(共栄社化学製)等のPO変性ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、セロキサイド2021(ダイセル製)、リカレジンDME−100(新日本理化製)、EX−216(ナガセ化成製)等の脂環式エポキシ樹脂、ED−503(旭電化製)、リカレジンW−100(新日本理化製)、EX−212、EX−214、EX−850(いずれもナガセ化成製)等の脂肪族ジグリシジルエーテル化合物、FLEP−50、FLEP−60(いずれも東レチオコール製)等のポリサルファイド型ジグリシジルエーテル化合物、YX−4000(ジャパンエポキシレジン製)等のビフェノール型エポキシ化合物、エポライト100E、エポライト200P(いずれも共栄社化学製)等のポリエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。
【0023】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物に含有される(D)光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュアー2959;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュアー127;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(イルガキュア651;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン](エサキュアONE;ランバルティ製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(イルガキュアー907;チバスペシャリティーケミカルズ製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ルシリンTPO:BASF製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュアー819;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0024】
これらの光重合開始剤は1種類でも複数でも任意の割合で混合して使用することができ、アミン類等の光重合開始助剤と併用することも可能である。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物中の(D)光重合開始剤の含有量としては1〜15重量%が用いられ、好ましくは3〜10重量%程度である。
本発明で使用しうるアミン類等の光重合開始助剤としては、例えば、ジエタノールアミン、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等が挙げられる。光重合開始助剤を併用する場合、本発明の紫外線硬化型脂組組成物中の含有量としては0.05〜5重量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜3重量%程度である。
【0025】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物においては、必要によりリン酸(メタ)アクリレートを加えることができる。リン酸(メタ)アクリレートは、アルミニウム、銀または銀合金と接着剤硬化物との接着性を向上させるが、金属膜を腐食させる恐れがありその使用量は制限される。
【0026】
更に、本発明には、上記の成分に加え、必要によりシランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、重合禁止剤、光安定剤(ヒンダ−ドアミン系等)、酸化防止剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、充填剤などの添加剤を併用してもよい。このような添加剤の例としては、例えば、シランカップリング剤として、信越化学(株)社製 KBM−502、KBM−503、KBM−5103、KBM−802、KBM−803;東レ・ダウコーニング(株)社製 Z−6062、SH−6062、SH−29PA、レベリング剤として、ビックケミー社製 BYK−333、BYK−307、BYK−3500、BYK−3530、BYK−3570、酸化防止剤として、(株)アデカ社製 LA−82等が挙げられる。
【0027】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、前記各成分を常温〜80℃で混合溶解後、必要により濾過して得ることができる。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の粘度は、B型粘度計で25℃での測定で10〜800mPa・s、好ましくは30〜500mPa・sである。
【0028】
DVDの場合、透明樹脂中間層は、(1)第1の透明樹脂基板、第1の記録層、第1の半透明反射膜層が積層された基板と透明樹脂スタンパの少なくとも一方に、本発明の樹脂組成物をスピンコ−ト法、スクリ−ン印刷法、ロ−ルコ−ト法等方法により塗工後、貼り合わせて透明樹脂スタンパ側から紫外線を照射して形成される。または、(2)透明樹脂スタンパに前記方法により本発明の樹脂組成物を塗工後、紫外線硬化させ、第1の透明樹脂基板、第1の記録層、第1の半透明反射膜層が積層された基板と任意の紫外線硬化型樹脂で貼り合わせて形成させることもできる。(1)の形成方法は生産効率を省略できる点で、生産コストの低減が望めるため、好ましい。また、ブルーレイディスクもDVDと同様の方法で透明樹脂中間層を形成する。一般に、DVDやHD−DVDの0.6mmの第1の透明樹脂基板、ブルーレイディスクの1.1mmの樹脂基板はポリカーボネート樹脂が使用される。
【0029】
透明樹脂スタンパとしては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、2P剤を硬化させた後の剥離性、低吸湿性、形状安定性等の点から非晶質ポリオレフィンが好ましく、材料コストの点からはポリカーボネート樹脂が好ましい。本発明の2P硬化型樹脂組成物はどちらの透明樹脂スタンパも使用できる。
本発明の紫外線硬化型硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化物を与える。該活性エネルギー線をしては、例えば、紫外〜近紫外の光線が挙げられる。例えば、低圧、高圧、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、無電極ランプ、紫外線発光ダイオ−ド等があげられる。前記硬化物も本発明に含まれる。
【0030】
前記硬化物による透明樹脂中間層上に形成される記録層は有機色素や相変化材料のいずれも使用できる。例えば、有機色素は含金属アゾ系、ポリメチン系、フタロシアニン系が挙げられ、相変化材料はSbおよびTeにIn、Ag、Au、Bi、Se、Al、P、Ge、Si、C、V、W、Ta、Zn、Ti、Ce、Tb、Sn、Pbのいずれか一種以上を添加したものがあげられる。
また、本発明の樹脂組成物はポリカーボネート製基板を貼り合わせた構造の光ディスクやブルーレイディスクのいずれにも使用できる。
【0031】
塗工方法として、例えば、スピンコート法、2P法、ロールコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0032】
また、次世代の高密度光ディスクには読み取り及び/又は書き込みに400nm前後の青色レーザーが使用されることから、膜厚90−100μmの硬化物において405nmの透過率が80%以上であることが好ましい。透過率は、100μmの膜を作り、分光光度計(U−3310、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、当該膜の405nmでの吸光度の値を測定して求めることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。
実施例及び試験例
実施例1−5及び比較例1−4の樹脂組成物につき、構成材料及び使用量と記項目を評価したその結果を表1に示した。なお、記載中の「部」は重量部を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
なお、表1中に略称で示した各成分は下記の通りである。
ISA:イソステアリルアクリレート、新中村化学工業社製
ICA:イソセチルアクリレート、共栄社化学社製
IDA:イソデシルアクリレート、共栄社化学社製
SA:ステアリルアクリレート、日油社製
CA:セチルアクリレート、日油社製
IBA:イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業社製
R−604:ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、
日本化薬社製
R−684:トリシクロデカンジメチロールアクリレート、日本化薬社製
NPG−2P:プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、第一
工業製薬社製
FA−512A:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、日立化成社製
THE−330:ヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンアクリレート、日本化薬社製
RP−1040:ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラアクリレート、日本化薬社製
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサンアクリレート、日本化薬社製
UX−5000:6官能ウレタンアクリレート、日本化薬社製
イルガキュアー184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャ
ルティーケミカル社製
【0036】
(評価用サンプルの作製)
得られた紫外線硬化型樹脂組成物を用い、以下1〜3の方法にて評価用サンプルディスクを作製した。
1.記録層としてのアゾ系色素層、反射膜層、誘電体層としてのZnS・SiO層が形成された直径120mm/0.6mm厚のポリカ−ボネ−ト製基板(第1の基板)内周上に気泡が入らないように作製した透明樹脂にポリカーボネート製スタンパを乗せて2000rpm、4秒間スピンコートして貼り合わせた。
2.高圧水銀灯(80W/cm)をポリカーボネート製スタンパ側から400mJ/cm照射し、第2の紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させた。
3.ディスク剥離装置(オリジン電機(株)製)を用いて、透明樹脂スタンパを剥離し、評価用サンプルディスクを作製した。
【0037】
(a)剥離性テスト
ディスク剥離装置(オリジン電機(株)製)を使用して剥離性が悪い内径60mmでの剥離強度を計測器(FGC−5B、日本電産シンボ(株)製)で測定することにより行った。
剥離良好性の判断は下記基準で行った。
○・・・剥離強度1.5kgf以下
×・・・剥離強度1.5kgf以上
【0038】
(b)反りテスト
樹脂層の反りの数値は、記録層としてのアゾ系色素層、反射膜層、誘電体層としてのZnS・SiO層が形成された直径120mm/0.6mm厚のポリカ−ボネ−ト製基板(第1の基板)内周上に各樹脂組成物をスピンコーターで膜厚が硬化後に10±3μmになるように塗布し、光ディスクの機械特性装置であるMT−146(Dr.schenk社製)を用いて測定した。反りの値は外周になるにつれ大きくなるため、最外周に近い内径から56mmの反りの値で評価を行った。
初期反りは下記(数式1)により計算した。
(数式1)硬化時の反り変化量=紫外線硬化型樹脂塗布後のディスクの反り−紫外線硬化型樹脂組成物塗布前のディスクの反り
反りの単位は度で表示。
○・・・硬化時の反りの変化量が±0.1未満
×・・・硬化時の反りの変化量が±0.1以上
【0039】
(c)耐久性テスト
耐久性テストとしては、反りテストの工程で作製したサンプルディスクを80℃85%の高温多湿下の条件で96時間放置した後、24時間室温で保存し、高温多湿下に置く前と室温で保存した後での反りの変化量を測定した。反りの値は外周になるにつれ大きくなるため、最外周に近い内径から56mmの反りの値で評価を行った。また、測定には光ディスクの機械特性装置であるMT−146(Dr.schenk社製)を用いた。
初期反りは下記(数式2)により計算した。
(数式2)耐久性試験後の反り変化量=室温保存後のディスクの反り−紫外線硬化型樹脂塗布後のディスクの反り
○・・・耐久性試験後の反り変化量が±0.5未満
×・・・耐久性試験後の反り変化量が±0.5以上
【0040】
表1から明らかなように本発明の紫外線硬化型樹脂組成物及びその硬化物である実施例1〜5は、比較例1〜4と比較して高温多湿下に置かれた後であっても反りの変化量が少ない。また、多官能のアクリレートモノマーを用いた比較例2、比較例3に比べ特に剥離性にすぐれている樹脂組成物となっていることが確認された。硬化時の反りについても、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、比較例2、比較例3及び比較例4と比較して極めて反りの値が低く、形成した凹凸パターンに記録層や反射膜層を均一に形成するには非常に有用な樹脂組成物であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物及びその硬化物は、剥離性に優れ、硬化時及び多層ディスクを高温多湿下に置いた後において反りの変化量が小さい2P剤として有用である。また、接着層を省略して1液で中間層を形成させることを可能とする、紫外線硬化型樹脂を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪鎖を有する(メタ)アクリレート、(B)(メタ)アクリレートモノマー及び/又は(C)ウレタン(メタ)アクリレート、及び(D)光重合開始剤を含有することを特徴とする多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
(A)脂肪鎖を有する(メタ)アクリレートが、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、及びイソベヘニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種もしくは2種以上である請求項1記載の多層光ディスク用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)(メタ)アクリレートモノマーが、イソボルニル(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、及びヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種もしくは2種以上である請求項1又は請求項2記載の多層光ディスク用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物全体に対し、(A)成分が5〜90重量%、(B)成分及び/又は(C)成分が5〜90重量%、(D)成分が1〜15重量%である請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の樹脂組成物に紫外線を照射して得られる硬化物を有する光ディスク。

【公開番号】特開2011−23072(P2011−23072A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167454(P2009−167454)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】