説明

光デバイス層の移替装置およびレーザー加工機

【課題】エピタキシー基板の裏面側からバファー層にレーザー光線を照射してバファー層を破壊した後に、エピタキシー基板を確実に剥離することができる光デバイス層の移替装置およびレーザー加工機を提供する。
【解決手段】エピタキシー基板の表面にバファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を接合金属層を介して移設基板に接合して複合基板を形成し、エピタキシー基板の裏面側からバファー層にレーザー光線を照射してバファー層を破壊した後に、エピタキシー基板を剥離することにより光デバイス層を移設基板に移設する光デバイス層の移替装置であって、複合基板の移設基板側を保持する第1の保持面を備えた第1の保持手段と、第1の保持面と対向し複合基板のエピタキシー基板側を保持する第2の保持面を備えた第2の保持手段と、第1の保持手段と第2の保持手段とを相対的に近接および離反する方向に移動せしめる分離手段とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイア基板等のエピタキシー基板の表面にバファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を接合金属層を介して移設基板に接合し、エピタキシー基板の裏面側からバファー層にレーザー光線を照射してバファー層を破壊した後に、エピタキシー基板を剥離することにより光デバイス層を移設基板に移設する光デバイス層の移替装置およびレーザー加工機に関する。
【0002】
光デバイス製造工程においては、略円板形状であるサファイア基板等のエピタキシー基板の表面にバファー層を介してn型半導体層およびp型半導体層からなる光デバイス層が積層され格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスを形成して光デバイスウエーハを構成する。そして、光デバイスウエーハをストリートに沿って分割することにより個々の光デバイスを製造している。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
また、光デバイスの輝度を向上させる技術として、光デバイスウエーハを構成するサファイア基板等のエピタキシー基板の表面にバファー層を介して積層されたn型半導体層およびp型半導体層からなる光デバイス層をモリブデン(Mo)、銅(Cu)、シリコン(Si)等の移設基板を金(Au),白金(Pt),クロム(Cr),インジウム(In),パラジウム(Pd)等の接合金属層を介して接合し、エピタキシー基板の裏面側からバファー層にレーザー光線を照射してバファー層を破壊することによりエピタキシー基板を剥離して、光デバイス層を移設基板に移し替えるリフトオフと呼ばれる製造方法が下記特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特表2005−516415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、バファー層にレーザー光線を照射してバファー層を破壊した後に、エピタキシー基板を剥離することにより光デバイス層を移設基板に移設するための移設装置が必要であるが、エピタキシー基板を確実に剥離することができる移設装置が存在しない。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、エピタキシー基板の裏面側からバファー層にレーザー光線を照射してバファー層を破壊した後に、エピタキシー基板を確実に剥離することができる光デバイス層の移替装置およびレーザー加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、エピタキシー基板の表面にバファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を接合金属層を介して移設基板に接合して複合基板を形成し、エピタキシー基板の裏面側からバファー層にレーザー光線を照射してバファー層を破壊した後に、エピタキシー基板を剥離することにより光デバイス層を移設基板に移設する光デバイス層の移替装置において、
複合基板の移設基板側を保持する第1の保持面を備えた第1の保持手段と、該第1の保持面と対向し複合基板のエピタキシー基板側を保持する第2の保持面を備えた第2の保持手段と、該第1の保持手段と該第2の保持手段とを相対的に近接および離反する方向に移動せしめる分離手段と、を具備している、
ことを特徴とする光デバイス層の移替装置が提供される。
【0008】
上記第1の保持手段と第2の保持手段とを第1の保持面および第2の保持面と平行な面内で相対的に変位せしめる剥離補助手段を備えていることが望ましい。
【0009】
また、本発明によれば、エピタキシー基板の表面にバファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を接合金属層を介して移設基板に接合した複合基板におけるバファー層にレーザー光線を照射してバファー層を破壊するレーザー加工機において、
複合基板の移設基板側を保持する第1の保持面を備えた第1の保持手段と、該第1の保持手段に保持された複合基板のバファー層にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該第1の保持手段に該第1の保持面と対向し該複合基板のエピタキシー基板側を保持する第2の保持面を備えた第2の保持手段と、該第1の保持手段と該第2の保持手段とを相対的に近接および離反する方向に移動せしめる分離手段と、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工機が提供される。
【0010】
上記レーザー加工機は、複合基板を収容した複合基板カセットが載置される複合基板カセットテーブルと、該複合基板カセットテーブルに載置された複合基板カセットに収容された複合基板を該第1の保持手段に搬送する搬送手段と、該第2の保持手段を該第1の保持手段の被加工物搬入搬出位置とエピタキシー基板カセットが載置されるエピタキシー基板カセット載置部とに位置付ける位置付け手段とを具備している。
【発明の効果】
【0011】
本発明による光デバイス層の移替装置は、第1の保持手段と第2の保持手段および分離手段とからなり、バファー層が破壊された複合基板を形成する移設基板を第1の保持手段に吸引保持するとともに、エピタキシー基板を第2の保持手段によって吸引保持し、分離手段を作動して第1の保持手段と第2の保持手段とを相対的に離反する方向に移動することにより、バファー層によるエピタキシー基板と光デバイス層との結合機能が喪失されているので、エピタキシー基板を容易に剥離することができるとともに光デバイス層を移設基板に移設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工機の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工機に装備される光デバイス層の移替装置を構成する第2の保持手段の断面図。
【図3】図1に示すレーザー加工機によって加工される光デバイスウエーハの斜視図および要部を拡大して示す断面図。
【図4】図3に示す光デバイスウエーハの光デバイス層の表面に移設基板を接合する移設基板接合工程の説明図。
【図5】環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に光デバイスウエーハに接合された複合基板の移設基板側を貼着した状態を示す斜視図。
【図6】エピタキシー基板の裏面側からバファー層にレーザー光線を照射する剥離用レーザー光線照射工程の説明図。
【図7】エピタキシー基板を光デバイス層から剥離し光デバイス層を移設基板に移設する光デバイス層移替工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された光デバイス層の移替装置およびレーザー加工機の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工機1の斜視図が示されている。
図1に示すレーザー加工機1は、略直方体状の装置ハウジング2を具備している。この装置ハウジング2内には、被加工物としての後述する複合基板を保持する第1の保持手段3が矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)と直交する矢印で示す(Y軸方向)に移動可能に配設されている。第1の保持手段3は、吸着チャック支持台31と、該吸着チャック支持台31上に装着された吸着チャック32を具備しており、該吸着チャック32の上面である第1の保持面上に被加工物としての後述する複合基板を図示しない吸引手段によって保持するようになっている。また、第1の保持手段3は、図示しない回転機構によって回動可能に構成されている。このように構成された第1の保持手段3の吸着チャック支持台31には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ34が配設されている。このように構成された第1の保持手段3は、図示しない回転駆動機構によって回動せしめられるようになっている。なお、レーザー加工機1は、上記第1の保持手段3をX軸方向に加工送りする図示しない加工送り手段、およびY軸方向に割り出し送りする図示しない割り出し送り手段を具備している。
【0015】
図示のレーザー加工機1は、上記第1の保持手段3に保持された被加工物としての後述する複合基板にレーザー加工を施すレーザー光線照射手段4を備えている。レーザー光線照射手段4は、レーザー光線発振手段41と、該レーザー光線発振手段41によって発振されたレーザー光線を集光する集光器42を具備している。なお、レーザー加工機1は、レーザー光線発振手段41を第1の保持手段3の上面である第1の保持面に垂直な方向である矢印Zで示す集光点位置調整方向に移動する図示しない集光点位置調整手段を具備している。
【0016】
図示のレーザー加工機1は、上記第1の保持手段3の吸着チャック32上に保持された被加工物としての後述する複合基板の表面を撮像し、上記レーザー光線照射手段4の集光器42から照射されるレーザー光線によって加工すべき領域を検出する撮像手段5を具備している。この撮像手段5は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0017】
図示のレーザー加工機1は、被加工物としての後述する複合基板100を収容する複合基板カセットが載置される複合基板カセット載置部6aを備えている。複合基板カセット載置部6aには図示しない昇降手段によって上下に移動可能に複合基板カセットテーブル61が配設されており、この複合基板カセットテーブル61上に複合基板カセット60が載置される。ここで、複合基板カセット60に収容される複合基板100は、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着されており、ダイシングテープTを介して環状のフレームFに支持された状態で上記複合基板カセット60に収容される。なお、複合基板100については、後で詳細に説明する。
【0018】
図示のレーザー加工機1は、上記複合基板カセット60に収納された加工前の複合基板100を仮置き部7aに配設された位置合わせ手段7に搬出するとともに加工後の複合基板100を複合基板カセット60に搬入する搬出・搬入手段70と、位置合わせ手段7に搬出された加工前の複合基板100を第1の保持手段3に搬送する搬送手段71とを具備している。
【0019】
また、図示のレーザー加工機1は、上記第1の保持手段3上においてレーザー加工された複合基板100の後述するエピタキシー基板側を保持する第2の保持手段8を備えている。この第2の保持手段8について、図2を参照して説明する。図2に示す第2の保持手段8は、吸引保持パッド81と、該吸引保持パッド81を支持する支持軸部82を具備している。吸引保持パッド81は、円盤状の基台811とパッド812とからなっている。基台811は適宜の金属材によって構成され、その上面中央部に支持軸部82が突出して形成されている。吸引保持パッド81を構成する基台811は、下方が開放された円形状の凹部811aを備えている。この凹部811aにポーラスなセラミックス部材によって円盤状に形成されたパッド812が嵌合されている。このようにして基台811の凹部811aに嵌合されたパッド812の下面である第2の保持面は、上記第1の保持手段3を構成する吸着チャック32の上面である第1の保持面と対向するように配設される。吸引保持パッド81を構成する基台811に形成された円形状の凹部811aは、支持軸部82に設けられた吸引通路82aを介して図示しない吸引手段に連通されている。従って、図示しない吸引手段が作動すると、吸引通路82a、基台811の凹部811aを介してパッド812の下面である第2の保持面に負圧が作用せしめられ、該パッド812の下面である第2の保持面に複合基板100の後述するエピタキシー基板を吸引保持することができる。
【0020】
以上のように構成された第2の保持手段8は、図2において上下方向に移動可能な分離手段83に連結されている。この分離手段83は、図示の実施形態においてはエアシリンダ機構830からなり、そのピストンロッド831が第2の保持手段8を構成する支持軸部82に連結されている。このように構成された分離手段83は、第2の保持手段8を第1の保持手段3の上側に位置付け、下降および上昇することにより、第2の保持手段8と第1の保持手段3とを相対的に近接および離反する方向に移動せしめる。
【0021】
上述したように第2の保持手段8を連結した分離手段83は、図1に示すように位置付け手段84を構成する支持アーム841に取り付けられている。この位置付け手段84は、支持アーム841を図示しない移動手段によってY軸方向に移動し、支持アーム841に分離手段83を介して取り付けられた第2の保持手段8を、図1において第1の保持手段3が位置付けられている被加工物搬入搬出位置と後述するエピタキシー基板カセット9が載置されるエピタキシー基板カセット載置部9aに位置付ける。このエピタキシー基板カセット載置部9aには、空のエピタキシー基板カセット9が載置される。
【0022】
図示の実施形態におけるレーザー加工機1は以上のように構成されており、以下その作動について説明する。
図3の(a)および(b)には、上述したレーザー加工機1によって加工される光デバイスウエーハの斜視図および要部拡大断面図が示されている。
図3の(a)および(b)に示す光デバイスウエーハ10は、直径が50mmで厚みが600μmの円板形状であるサファイア基板からなるエピタキシー基板11の表面11aにn型窒化ガリウム半導体層121およびp型窒化ガリウム半導体層122からなる光デバイス層12がエピタキシャル成長法によって形成されている。なお、エピタキシー基板11の表面にエピタキシャル成長法によってn型窒化ガリウム半導体層121およびp型窒化ガリウム半導体層122からなる光デバイス層12を積層する際に、エピタキシー基板11の表面11aと光デバイス層12を形成するn型窒化ガリウム半導体層121との間には窒化ガリウム(GaN)からなる厚みが例えば1μmのバファー層13が形成される。このように構成された光デバイスウエーハ10は、図示の実施形態においては光デバイス層12の厚みが例えば10μmに形成されている。なお、光デバイス層12は、図3の(a)に示すように格子状に形成された複数のストリート123によって区画された複数の領域に光デバイス124が形成されている。
【0023】
上述したように光デバイスウエーハ10におけるエピタキシー基板11を光デバイス層12から剥離して移設基板に移し替えるためには、光デバイス層12の表面12aに移設基板を接合する移設基板接合工程を実施する。即ち、図4の(a)および(b)に示すように、光デバイスウエーハ10を構成するエピタキシー基板11の表面11aに形成された光デバイス層12の表面12aに、厚みが1mmの銅基板からなる移設基板15を錫からなる接合金属層16を介して接合する。なお、移設基板15としてはモリブデン(Mo)、シリコン(Si)等を用いることができ、また、接合金属層16を形成する接合金属としては金(Au),白金(Pt),クロム(Cr),インジウム(In),パラジウム(Pd)等を用いることができる。この移設基板接合工程は、エピタキシー基板11の表面11aに形成された光デバイス層12の表面12aまたは移設基板15の表面15aに上記接合金属を蒸着して厚みが3μm程度の接合金属層16を形成し、この接合金属層16と移設基板15の表面15aまたは光デバイス層12の表面12aとを対面させて圧着することにより、光デバイスウエーハ10を構成する光デバイス層12の表面12aに移設基板15の表面15aを接合金属層16を介して接合して複合基板100を形成する。
【0024】
上述したように光デバイスウエーハ10を構成する光デバイス層12の表面12aに移設基板15の表面15aが接合された複合基板100は、図5に示すように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に光デバイスウエーハ10に接合された移設基板15側を貼着する(複合基板支持工程)。従って、ダイシングテープTの表面に貼着された移設基板15が接合されている光デバイスウエーハ10のエピタキシー基板11の裏面11bが上側となる。このようにして、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された複合基板100は、上記複合基板カセット60に収容され複合基板カセットテーブル61上に載置される。
【0025】
上述したように複合基板カセットテーブル61上に載置された複合基板カセット60に収容された加工前の複合基板100は、図示しない昇降手段によって複合基板カセットテーブル61が上下動することにより搬出位置に位置付けられる。次に、被加工物搬出・搬入手段70が進退作動して搬出位置に位置付けられた複合基板100を位置合わせ手段7に搬出する。位置合わせ手段7に搬出された複合基板100は、位置合わせ手段7によって所定の位置に位置合せされる。次に、位置合わせ手段7によって位置合わせされた加工前の複合基板100は、搬送手段71の旋回動作によって第1の保持手段3を構成する吸着チャック32の上面である第1の保持面上に搬送され、該吸着チャック32に吸引保持される(複合基板保持工程)。そして、複合基板100が貼着されたダイシングテープTが装着されている環状のフレームFは、第1の保持手段3に装着されたクランプ34によって固定される。
【0026】
上述した複合基板保持工程が実施されたならば、図示しない加工送り手段を作動して第1の保持手段3をレーザー光線照射手段4の集光器42が位置するレーザー光線照射領域に移動し、上記エピタキシー基板11の裏面11b(上面)側からバファー層13にサファイアに対しては透過性を有し窒化ガリウム(GaN)に対しては吸収性を有する波長のレーザー光線を照射し、バファー層13を破壊するレーザー光線照射工程を実施する。このレーザー光線照射工程は、第1の保持手段3を図6の(a)で示すようにレーザー光線照射手段4の集光器42が位置するレーザー光線照射領域に移動し、一端(図6の(a)において左端)をレーザー光線照射手段4の集光器42の直下に位置付ける。次に、図6の(b)に示すように集光器42から照射するパルスレーザー光線のバファー層13の上面におけるスポットSのスポット径を30μmに設定する。このスポット径は、集光スポット径でも良いし、デフォーカスによるスポット径でも良い。そして、レーザー光線発振手段41を作動して集光器42からパルスレーザー光線を照射しつつ第1の保持手段3を図6の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図6の(c)で示すようにレーザー光線照射手段4の集光器42の照射位置にエピタキシー基板11の他端(図6の(c)において右端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともに第1の保持手段3の移動を停止する(レーザー光線照射工程)。このレーザー光線照射工程をバファー層13の全面に対応する領域に実施する。この結果、バファー層13が破壊され、バファー層13によるエピタキシー基板11と光デバイス層12との結合機能が喪失する。
【0027】
上記レーザー光線照射工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
光源 :YAGパルスレーザー
波長 :266nm
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :0.12W
パルス幅 :100ps
スポット径 :φ30μm
加工送り速度 :600mm/秒
【0028】
なお、バファー層13を破壊するレーザー光線照射工程は、集光器42をエピタキシー基板11の最外周に位置付け、第1の保持手段3を回転しつつ集光器42を中心に向けて移動することによりバファー層13の全面にレーザー光線を照射し、バファー層13を破壊してバファー層13によるエピタキシー基板11と光デバイス層12との結合機能を喪失させてもよい。
【0029】
上述したようにバファー層13を破壊するレーザー光線照射工程を実施したならば、複合基板100を保持している第1の保持手段3は、最初に複合基板100を吸引保持した位置に戻される。次に、上記位置付け手段84の図示しない移動手段を作動して第2の保持手段8を第1の保持手段3の直上に位置付け、更にエアシリンダ機構830からなる分離手段83を作動して第2の保持手段8を下降し、図7の(a)に示すように吸引保持パッド81を構成するパッド812の下面である第2の保持面を第1の保持手段3に吸引保持されている複合基板100を形成するエピタキシー基板11の裏面11bである上面に接触させる。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、吸引保持パッド81を構成するパッド812の下面である第2の保持面に複合基板100を形成するエピタキシー基板11の裏面11bである上面を吸引保持する。従って、複合基板100は移設基板15がダイシングテープTを介して第1の保持手段3に吸引保持されるとともに、エピタキシー基板11が第2の保持手段8に吸引保持されることになる。次に、図7の(a)に示すように第1の保持手段3を回転駆動する図示しない回転駆動機構を作動して第2の保持手段8を矢印3aで示す方向に所定角度回動する。この結果、上記レーザー光線照射工程を実施することによってエピタキシー基板11と光デバイス層12との結合機能が喪失せしめられたバファー層13が更に破壊される。従って、第1の保持手段3を回転駆動する図示しない回転駆動機構は、第1の保持手段と第2の保持手段とを第1の保持面および第2の保持面と平行な面内で相対的に変位せしめる剥離補助手段として機能する。このようにバファー層13が破壊されたならば、図7の(b)に示すようにエアシリンダ機構830からなる分離手段83を作動して第2の保持手段8を上昇させる。この結果、エピタキシー基板11は第2の保持手段8の吸引保持パッド81を構成するパッド812の下面に吸引保持された状態で光デバイス層12から剥離され、光デバイス層12は移設基板15に移設される(光デバイス層移替工程)。従って、第1の保持手段3と、第2の保持手段8および分離手段83は、複合基板100を形成するエピタキシー基板11を剥離することにより光デバイス層12を移設基板15に移設する光デバイス層の移替装置として機能する。
【0030】
このように第1の保持手段3と第2の保持手段8および分離手段83とからなる光デバイス層の移替装置は、バファー層13を破壊するレーザー光線照射工程が実施された複合基板100を形成する移設基板15を第1の保持手段3に吸引保持するとともに、エピタキシー基板11を第2の保持手段8によって吸引保持し、分離手段83を作動して第2の保持手段8を第1の保持手段3に対して離反する方向に移動することにより、バファー層13によるエピタキシー基板11と光デバイス層12との結合機能が喪失されているので、エピタキシー基板11を容易に剥離することができる。また、図示の実施形態においては、分離手段83を作動して第2の保持手段8を第1の保持手段3に対して離反する方向に移動する前に、第1の保持手段3を所定角度回動することによりバファー層13を更に破壊するので、エピタキシー基板11の剥離がより容易となる。なお、図示の実施形態においては第1の保持手段3を所定角度回動する例を示したが、第2の保持手段8を所定角度回動することにより第1の保持手段と第2の保持手段とを第1の保持面および第2の保持面と平行な面内で相対的に変位せしめる剥離補助手段を設けて第2の保持手段8を所定角度回動してもよい。
【0031】
上述した光デバイス層移替工程を実施したならば、上記位置付け手段84の図示しない移動手段を作動して第2の保持手段8を図1に示すエピタキシー基板カセット載置部9aに載置されているエピタキシー基板カセット9の直上に位置付け、更にエアシリンダ機構830からなる分離手段83を作動して第2の保持手段8を下降する。そして、第2の保持手段8を構成する吸引保持パッド81による吸引保持を解除することにより、吸引保持パッド81に保持されていたエピタキシー基板11をエピタキシー基板カセット9に収容する。
【0032】
一方、光デバイス層12が移設された移設基板15を吸引保持している第1の保持手段3は吸引保持を解除するとともに、クランプ34による環状のフレームFの固定を解除する。次に、搬送手段71を作動して光デバイス層12が移設された移設基板15(環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている状態)を位置合わせ手段7に搬送する。そして、被加工物搬出・搬入手段70を作動して位置合わせ手段7に搬送された光デバイス層12が移設された移設基板15を複合基板カセット60の所定位置に収納する。
【0033】
1:レーザー加工機
2:装置ハウジング
3:第1の保持手段
4:レーザー光線照射手段
41:レーザー光線発振手段
42:集光器
5:撮像手段
6a:複合基板カセット載置部
60:複合基板カセット
7:位置合わせ手段
70:搬出・搬入手段
71:搬送手段
8:第2の保持手段
83:分離手段
84:位置付け手段
9a:エピタキシー基板カセット載置部
9:エピタキシー基板カセット
10:光デバイスウエーハ
15:移設基板
100:複合基板
F:環状のフレーム
T:ダイシングテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシー基板の表面にバファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を接合金属層を介して移設基板に接合して複合基板を形成し、エピタキシー基板の裏面側からバファー層にレーザー光線を照射してバファー層を破壊した後に、エピタキシー基板を剥離することにより光デバイス層を移設基板に移設する光デバイス層の移替装置において、
複合基板の移設基板側を保持する第1の保持面を備えた第1の保持手段と、該第1の保持面と対向し複合基板のエピタキシー基板側を保持する第2の保持面を備えた第2の保持手段と、該第1の保持手段と該第2の保持手段とを相対的に近接および離反する方向に移動せしめる分離手段と、を具備している、
ことを特徴とする光デバイス層の移替装置。
【請求項2】
該第1の保持手段と該第2の保持手段とを該第1の保持面および第2の保持面と平行な面内で相対的に変位せしめる剥離補助手段を備えている、請求項1記載の光デバイス層の移替装置。
【請求項3】
エピタキシー基板の表面にバファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を接合金属層を介して移設基板に接合した複合基板におけるバファー層にレーザー光線を照射してバファー層を破壊するレーザー加工機において、
複合基板の移設基板側を保持する第1の保持面を備えた第1の保持手段と、該第1の保持手段に保持された複合基板のバファー層にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該第1の保持手段に該第1の保持面と対向し該複合基板のエピタキシー基板側を保持する第2の保持面を備えた第2の保持手段と、該第1の保持手段と該第2の保持手段とを相対的に近接および離反する方向に移動せしめる分離手段と、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工機。
【請求項4】
複合基板を収容した複合基板カセットが載置される複合基板カセットテーブルと、該複合基板カセットテーブルに載置された複合基板カセットに収容された複合基板を該第1の保持手段に搬送する搬送手段と、該第2の保持手段を該第1の保持手段の被加工物搬入搬出位置とエピタキシー基板カセットが載置されるエピタキシー基板カセット載置部とに位置付ける位置付け手段とを具備している、請求項3記載のレーザー加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−110137(P2013−110137A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251358(P2011−251358)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】