説明

光デバイス

【課題】装置規模を縮小させることができるようにする。
【解決手段】P(Pは自然数)個の第1サーキュレータと、P本の第1入出力導波路が一端に形成されるとともにN(Nは自然数)本の第2入出力導波路が他端に形成された第1導波路型回折格子と、Q(Qは自然数)個の第2サーキュレータと、Q本の第3入力導波路が一端に形成されるとともにN本の第4入出力導波路が他端に形成された第2導波路型回折格子とをそなえ、上記の第1導波路型回折格子の第2入出力導波路と、第2導波路型回折格子の第4入出力導波路との間に、それぞれの導波路を伝搬する光の透過と反射を切り替えるためのN個の透過/反射スイッチが介装され、かつ、上記の第1サーキュレータ,第1導波路型回折格子,透過/反射スイッチ,第2導波路型回折格子および第2サーキュレータが、縦列に配列されて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばWDM(Wavelength Division Multiplexing)伝送システムにおいて、波長別に光路を切り替える波長選択光スイッチ(λ-SW)、および各波長の光レベルを均一化する光レベル調整器(AGEQ: Automatic Gain Equalizer)として用いて好適な、光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及によるデータトラフィックが急増に対応するため、大容量WDM伝送システムが導入されてきた。
今後、WDM伝送システムが網目状に接続されたフォトニックネットワークが形成されると、伝送経路が複数とれるようになる。すると、時間帯によって需要の多い伝送経路に重点的に回線を割り当てることで限られた伝送容量の有効利用が可能となる。WDM伝送システムでは波長毎に伝送経路を切り替えることで実現でき、ここでは波長選択光スイッチが不可欠なデバイスとなる。
【0003】
また、長距離WDM伝送システムでは、光ファイバアンプによる増幅中継を行なうが、アンプ利得の波長依存性のため各波長の光レベルが不均一になる。光ファイバアンプの利得は光強度の強い波長に集中する性質があり、アンプを通過する度に光レベルの不均一性が増長される。これを防止するため各波長の光レベルを均一化する必要があり、波長ごとに減衰量を調整できる光レベル調整器が伝送経路に挿入されている。
【0004】
図20は、上述の波長選択光スイッチにかかる第1の従来例(非特許文献1参照)を示す模式図である。第1の従来例としての波長選択光スイッチ910は、図20に示すように、4つの導波路型回折格子(AWG: Arrayed Waveguide Grating)911〜914と光スイッチ919を組み合わせて、入出力で2つずつのポート(入力側の入力ポート915およびアドポート916と、出力側の出力ポート917およびドロップポート918)を有する2×2スイッチを構成している。
【0005】
この図20に示す波長選択光スイッチにおいては、入力側の2個のAWG911,912を経由して波長分波された光が光スイッチ919で方路のスルー/切替処理が行なわれ、出力側の2個の合波AWG913,914のいずれかに振り分けられる。即ち、入力側の2つのポート915,916からの波長多重光を分波するためにそれぞれ2つのAWG911,912が用いられ、光スイッチ919で方路が切り替えられた光を出力側の2つのポート917,918から波長多重光として出力するために、4つのAWGのうちの残り2つのAWG913,914がそれぞれ用いられている。
【0006】
図21は、波長選択光スイッチにかかる第2の従来例(特許文献1参照)を示す模式図である。この図21に示す波長選択光スイッチ920においては、入力WDM光はAWG921による波長分波の後光ファイバ922を通じてスイッチ923に導かれ、AWG921により、切り替えた先の光ファイバ922に対応したポートへ合波・出力される。
図22(a)は、光レベル調整器にかかる従来例(特許文献2参照)を示す模式図である。この図22(a)に示す光レベル調整器930においては、第1のAWG931で波長分波した各々の光を図22(b)に示すマッハツェンダ干渉回路(MZI: Mach Zehnder Interferometer)932に入力し、このMZI932で強度調整した光を第2のAWG933で合波・出力するようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】電子情報通信学会誌Vol.82 No.7 pp.746-752 1999年7月
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−46569号公報
【特許文献2】特開2002−250827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の図20に示す波長選択光スイッチにおいては、AWG911〜914の使用個数が4個と多いため、波長選択光スイッチ910全体のサイズが大きくなるという課題がある。
また、図21に示す波長選択光スイッチにおいては、AWGの使用個数としては1個としているが、AWG921をなす基板と各光スイッチ922とをポート数に応じた本数の光ファイバで接続する必要が生じるため、装置規模が大きくなるという課題がある。
【0010】
また、図22(a)に示す光レベル調整器930においては、2つのAWG931,932を使用しているので、光レベル調整器全体のサイズが大きくなってしまうという課題がある。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、デバイスのサイズ(装置規模)を縮小させることができるようにした、波長選択光スイッチまたは光レベル調整器として機能する光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明の光デバイスは、P(Pは自然数)個の第1サーキュレータと、第1サーキュレータからの各方路がそれぞれ接続されるP本の第1入出力導波路が一端に形成されるとともにN(Nは自然数)本の第2入出力導波路が他端に形成された第1導波路型回折格子と、Q(Qは自然数)個の第2サーキュレータと、第2サーキュレータからの各方路がそれぞれ接続されるQ本の第3入力導波路が一端に形成されるとともにN本の第4入出力導波路が他端に形成された第2導波路型回折格子とをそなえるとともに、上記の第1導波路型回折格子の第2入出力導波路と、第2導波路型回折格子の第4入出力導波路との間に、それぞれの導波路を伝搬する光の透過と反射を切り替えるためのN個の透過/反射スイッチが介装され、かつ、上記の第1サーキュレータ,第1導波路型回折格子,透過/反射スイッチ,第2導波路型回折格子および第2サーキュレータが、縦列に配列されて構成されたことを特徴としている。
【0012】
この場合において、上記の各透過/反射スイッチを、カンチレバー型ミラーにより構成することができる。
さらに、上記の第1導波路型回折格子と透過/反射スイッチとの間、あるいは上記の透過/反射スイッチと第2導波路型回折格子との間に、光可変減衰器を介装してもよい。
また、本発明の光デバイスは、M(Mは自然数)個のサーキュレータと、該M個のサーキュレータからの各方路がそれぞれ接続されるM本の第1入出力導波路が一端に形成されるとともにN(Nは自然数)本の第2入出力導波路が他端に形成された導波路型回折格子と、上記N本の第2入出力導波路からの光を反射させるとともに上記反射された光の光強度を調整しうる、N個の光強度調整回路と、が縦列に配列されて構成されたことを特徴としている。
【0013】
この場合において、上記の各光強度調整回路を、上記のN本の第2入出力導波路のうちの1本の導波路を2分岐する分岐導波路と、上記分岐導波路で2分岐された方路に一端が接続された2本の枝導波路と、上記各枝導波路の他端に形成された反射部材と、熱光学効果により上記各枝導波路を伝搬する各光について光路長差を調節しうるヒータと、からなるマッハツェンダ干渉回路により構成することができる。
【0014】
また、上記の各光強度調整回路を、上記のN本の第2入出力導波路のうちの1本の導波路を2分岐する分岐導波路と、上記分岐導波路で2分岐された方路に一端が接続された2本の枝導波路と、上記各枝導波路の他端に形成された反射部材とからなるマッハツェンダ干渉回路により構成され、かつ、上記のマッハツェンダ干渉回路の反射部材が、上記の反射部材と分岐導波路との間でのそれぞれの光路長差を調節しうるピストン動作型ミラーにより構成してもよい。
【0015】
さらに、本発明の光デバイスは、互いに並列する入力導波路および出力導波路が一端に形成されるとともに2×N(Nは自然数)本の入出力導波路が他端に形成された導波路型回折格子と、隣接する上記2×N本の入出力導波路のうちの、該入力導波路からの光を伝搬するための一方の入出力導波路からの光について、該出力導波路から出射させるための光路となる他方の入出力導波路へ導入するとともに光強度を調整しうる、N個の光強度調整回路と、が縦列に配列されて構成されたことを特徴としている。
【0016】
この場合において、上記の各光強度調整回路を、該一方の入出力導波路からの光について、熱光学効果で枝間光路長差を調整することにより、光強度を調整しうるマッハツェンダ干渉回路と、該マッハツェンダ干渉回路で光強度が調整された光について該他方の入出力導波路へ導入されるように折り返す光回路と、により構成してもよい。
さらに、上記の各光強度調整回路を、レンズおよびチルト型ミラーにより構成し、かつ、上記の各光強度調整回路を構成するチルト型ミラーを、ミラーアレイとして集積化することもできる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明の光デバイスによれば、第1,第2光サーキュレータ,第1,第2導波路型回折格子および透過/反射スイッチにより、波長選択光スイッチを形成することができ、光ファイバによる結線等を不要として、従来よりも装置規模が縮小化された波長選択光スイッチを実現させることができる利点がある。
また、本発明の光デバイスによれば、単一の導波路型回折格子を使用するのみで、光レベル調整器を構成することができるので、装置サイズを従来よりも大幅にされた光レベル調整器を構成することができる利点がある。
【0018】
さらに、本発明の光デバイスによれば、単一の導波路型回折格子を使用するのみで、光レベル調整器を構成することができるので、装置サイズを従来よりも大幅にされた光レベル調整器を構成することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態にかかる光デバイスを示す模式図である。
【図2】第1実施形態にかかる光デバイスの要部を示す模式図である。
【図3】第1実施形態にかかる光デバイスの要部を示す模式図である。
【図4】第1実施形態にかかる光デバイスの要部を示す模式図である。
【図5】第1実施形態にかかる光デバイスの要部を示す模式図である。
【図6】第1実施形態の変形例にかかる光デバイスを示す模式図である。
【図7】(a),(b)はともに第2実施形態にかかる光デバイスを示す模式図である。
【図8】第2実施形態の変形例にかかる光デバイスを示す模式図である。
【図9】第3実施形態にかかる光デバイスを示す模式図である。
【図10】第3実施形態の変形例にかかる光デバイスを示す模式図である。
【図11】第4実施形態にかかる光デバイスを示す模式図である。
【図12】第4実施形態にかかる光デバイスの要部を示す模式図である。
【図13】第4実施形態にかかる光デバイスの要部を示す模式図である。
【図14】第4実施形態にかかる光デバイスの要部を示す模式図である。
【図15】第5実施形態にかかる光デバイスを示す模式図である。
【図16】第5実施形態にかかる光デバイスの要部を示す模式図である。
【図17】第5実施形態にかかる光デバイスの要部を示す模式図である。
【図18】第6実施形態にかかる光デバイスを示す模式図である。
【図19】第6実施形態の変形例にかかる光デバイスを示す模式図である。
【図20】従来技術を示す模式図である。
【図21】従来技術を示す模式図である。
【図22】(a),(b)はいずれも従来技術を示す模式図である。
【図23】(a),(b)はいずれも光デバイスの構成要素としてのAWGを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(a)導波路型回折格子の説明
本実施形態にかかる光デバイスは、波長選択光スイッチまたは光レベル調整器として機能するものであるが、この光デバイスの構成要素として、図23(a),図23(b)に示す2種類の態様のAWG1,1Aを適用することができる。以下、本発明の各実施形態における光デバイスに適用されるAWGについて説明する。
【0021】
図23(a)に示す態様のAWG1は、光信号の入力および出力のための導波路として1本の合波側導波路3が設けられたものであり、合波側導波路3には光サーキュレータ2が接続されている。このAWG1は、上述の入出力導波路3とともに、スラブ導波路4,互いに長さの異なる複数本のチャンネル導波路5,スラブ導波路6およびN(Nは複数)本の分波側導波路7−1〜7−Nが、基板上に形成されてなるものである。
【0022】
すなわち、光サーキュレータ2を通じて合波側導波路3に波長多重光は入射されると、スラブ導波路4では入射された波長多重光が拡散され、長さの順番で並列に配列されたチャンネル導波路5に出射されると、それぞれの長さに応じて位相差が生ぜしめられてスラブ導波路6に出射される。スラブ導波路6では、位相差が生ぜしめられた波長多重光が干渉して、波長毎に異なる分波側導波路7を通じて伝播される。
【0023】
これにより、例えば合波側導波路3からN波長の波長多重光が入射されると、N本の各分波側導波路7においては、入射されたN波長の波長多重光が分波された分波光をそれぞれ伝搬させることができる。尚、各分波側導波路7−1〜7−Nから、それぞれ互いに異なる波長の光を入射させると、上述の場合とは逆に、合波側導波路3では入射された各波長が合波された波長多重光を伝搬させることができる。
【0024】
また、光サーキュレータ2は、IN(入力)ポート2Aから入射された光をAWG1の合波側導波路3に出力するとともに、合波側導波路3からの光についてはOUT(出力)ポート2Bを通じて出力するためのものである。これにより、波長多重光をINポート2Aから入力すると分波側導波路7では波長分離光が得られ、各分波側導波路7−1〜7−Nから互いに異なる波長の光を入力するとOUTポート2Bからは入力された光についての波長多重光が得られ、一つのAWG1を合波・分波双方に用いることができるのである。
【0025】
また、図23(b)は図23(a)に示すAWG1に比して分解能が2倍のAWG1Aであって、図23(a)に示すAWG1に比して、2本の合波側導波路3a,3bとともに、2×N(Nの2倍)本の分波側導波路7a−1〜7a−N,7b−1〜7b−Nをそなえている点が異なっている。尚、図23(b)中、図23(a)と同一の符号は、同様の部分を示している。
【0026】
また、上述の2本の合波側導波路3a,3bは互いに近接して配置されるとともに、2つの導波路7a−i,7b−i(i:1〜Nにおける任意の整数)は上述の合波側導波路3a,3bにそれぞれ対応して互いに近接するように形成されている。
なお、以下においては、上述のごとくa×b本あるいはa×b個と記載するとき、当該本数あるいは個数にかかる対象物が、aおよびbの値の乗算値に相当する本数あるいは個数存在することを示している。
【0027】
これにより、例えば合波側導波路3aに入力した波長多重光は、分波側導波路7a−1〜7a−N(分波側導波路7a−1〜7a−N,7b−1〜7b−Nの配列における上から奇数番目の導波路)から分波・出力させることができるようになっている。
同様に、合波側導波路3bに入力した波長多重光は、分波側導波路7b−1〜7b−N(分波側導波路7a−1〜7a−N,7b−1〜7b−Nの配列における上から偶数番目の導波路)から分波・出力させることができるようになっている。
【0028】
さらには、波長間隔Δλ、波長数NのWDM光に対し、波長間隔Δλ/2、波長数2×Nを合分波できるようにAWG1Aをデザインすることができる。通常は、合波側、分波側のスラブは形状が合同となるようにデザインされる。更に、分波側の導波路列の間隔と同じだけ間隔をあけて、合波側に2本目の導波路を付加する。
なお、図23(b)にて図示したAWG1Aは2つの合波側導波路3a,3bを設けているが、これを3個以上とすることもでき、この場合には分解能を3倍以上としたAWGとなる。また、分解能2倍のAWGとサーキュレータを組み合わせることでAWG4個分の合分波機能を実現することが可能である。
【0029】
(b)第1実施形態の説明
図1は第1実施形態にかかる光デバイスを示す模式図であり、この図1に示す光デバイス10は、波長選択光スイッチとして動作しうるものであって、それぞれ独立した入出力ポートとして機能しうる2つの光サーキュレータ11a,11bと、AWG12と、N個の反射型光スイッチ13−1〜13−Nと、が縦列に配列されて構成されている。
【0030】
ここで、AWG12は、前述の図23(b)に示すAWG1Aと同様の構成を有するもので、2個の光サーキュレータ11a,11bからの各方路がそれぞれ接続される2本の第1入出力導波路121a,121bが一端に形成されるとともに2×N(Nは自然数)本の第2入出力導波路125a−1〜125a−N,125b−1〜125b−Nが他端に形成されている。尚、122,124はスラブ導波路,123はチャンネル導波路である。
【0031】
また、N個の反射型光スイッチ13−1〜13−Nはそれぞれ、2×N本の第2入出力導波路125a−1〜125a−N,125b−1〜125b−Nのうちの隣接する2本の導波路125a−i,125b−i(i:1〜Nにおける任意の整数)ごとの光路を反射させるとともに戻り先の導波路を切り替えるためのものであって、入力ポートおよび出力ポートが2つずつの2×2光スイッチを構成するものである(以下においては、a×b光スイッチと記述するとき、当該光スイッチには入力ポートとして機能するポートはa個有し、出力ポートとして機能するポートはb個有することを示している)。
【0032】
たとえば、反射型2×2光スイッチ13−1は、2本の第2入出力導波路125a―1、125b―1に光学的に接続されて、第2入出力導波路125a−1,125b−1のいずれかから入力された光を反射するとともに、戻り先の導波路として、入力されたそのままの導波路とするか、他方の導波路とするかを、選択的に切り替えることができるようになっている。
【0033】
反射型2×2光スイッチ13−iで反射された光は、それぞれ、第2入出力導波路125a−i,125b−iのいずれかに再び入射されて、スラブ導波路124,チャンネル導波路123およびスラブ導波路122を介することにより、2本の第1入出射導波路121a,121bおよびそれぞれの方路が接続された光サーキュレータ11a,11bを通じて出力されるようになっている。
【0034】
このような構成により、光スイッチ13−1〜13−Nにおいて反射光の光路をもとの導波路とする設定の場合には、光サーキュレータ11aの入力ポート11a−1を通じて入力された光は、光サーキュレータ11aの出力ポート11a−2を通じて出力され、光サーキュレータ11bの入力ポート11b−1を通じて入力された光は、光サーキュレータ11bの出力ポート11b−2を通じて出力される。
【0035】
一方、光スイッチ13−1〜13−Nにおいて反射光の光路を他方の導波路とする設定の場合には、光サーキュレータ11aの入力ポート11a−1を通じて入力された光は、光サーキュレータ11bの出力ポート11b−2を通じて出力され、光サーキュレータ11aの入力ポート11b−1を通じて入力された光は、光サーキュレータ11aの出力ポート11a−2を通じて出力されることになる。
【0036】
上述の反射型2×2光スイッチ13−1〜13−Nとしては、例えば図2〜図5に示すような4種類の態様で構成することが可能である。
まず、反射型2×2光スイッチ13−1〜13−Nは、第1態様の構成として、図2に示すように、レンズ131A〜133AおよびMEMS(Micro Electric Mechanical System)ミラー等の微小角度可変ミラー(チルトミラー)134Aにより構成された光スイッチ13A−1〜13A−Nとすることができる。
【0037】
この図2において、レンズ131A,132Aはそれぞれ、AWG12が形成されたPLC(Planer Lightwave Circuit)端面から出射された、第2入出力導波路125a−1,125b−1を伝搬してきた光について、平行光にコリメートしうるもので、レンズ133Aはレンズ131A,132Aにてコリメートされた光について微小角度可変ミラー134A表面上に焦点がくるように集光するものである。
【0038】
微小角度可変ミラー134Aは、その面位を可変しうるチルト型ミラーとして構成され、レンズ133Aから入射される光の入射角度を可変することにより、レンズ131A,132Aにてコリメートされたコリメート光が反射して戻る先の導波路を切り替えることができるようになっている。尚、このチルト型ミラー134Aは、通常、ミラーアレイとして集積化して構成されている。
【0039】
なお、微小角度可変ミラー134Aで反射された光は、レンズ133Aで平行光となり、レンズ131A,132Aで対応する導波路125a−1,125b−1端面で焦点がくるように集光されるようになっている。
これにより、第1の態様としての光スイッチ13A−iにおいては、微小角度可変ミラー134Aの角度を選択的に切り替えることにより、第2入出力導波路125a−i又は125b−iから入力された光の戻り光が伝搬すべき導波路を、2つの第2入出力導波路125a−i,125b−iのいずれかから選択的に切り替えることができる。
【0040】
尚、上述のスイッチ13A−1〜13A−Nそれぞれのレンズ131A〜133Aについては、一体化して配列されたレンズアレイにより構成することができ、ミラー134Aについても、一体化して配列されたミラーアレイとして構成することができる。
ついで、反射型2×2光スイッチ13−1〜13−Nは、第2態様の構成として、図3に示すように、AWG12が形成された基板12A上に一体に形成された反射型MZI13B−1〜13B−Nとすることができる。
【0041】
ここで、この図3に示すMZI13B−iはそれぞれ、2入力2出力の方向性結合器131B,方向性結合器131Bからの2方路に一端がそれぞれ接続された図中上下2本の枝導波路137B,上述の2方路をなす枝導波路137Bを個別に加熱するヒータ132B,ヒータ132Bに加熱制御用の電圧を供給するための電極133B,および2つのヒータ132Bによる加熱制御が互いに影響を与えないようにするために枝導波路137B間に形成された断熱溝134Bとともに、基板12A端部に形成されたλ/4板135Bおよび反射膜(反射部材)136Bをそなえて構成されている。
【0042】
MZI13B−1に着目すると、MZI13B−1の方向性結合器131Bは、2本の第2入出力導波路125a−1,125b−1からの光について干渉させるとともに反射膜136Bにて反射された光について干渉させる2入力2出力の干渉導波路として機能するもので、この2本の第2入出力導波路125a−1,125b−1からの光について、これらの光が同位相の場合には光路の上下が逆転して後段に伝搬させることができるようになっている。
【0043】
すなわち、ポート11a−1を通じて入力された光は導波路125a−1を通じて入力されるが、光路が上下逆転して、図中2つの出力方路における下側の枝導波路137Bを伝搬する。同様に、ポート11b−1を通じて入力された光は導波路125b−1を通じて入力されるが、光路が上下逆転して、図中2つの出力方路における上側の枝導波路137Bを伝搬する。
【0044】
ヒータ132Bは、方向性結合器131Bからの2方路がそれぞれ接続された枝導波路137B上に形成されて、熱光学効果により各枝導波路137Bを伝搬する光について光路長差を調節しうるものである。
具体的には、ヒータ132Bは、上下2本の枝導波路137Bのそれぞれに対してヒータ加熱により屈折率変化を起こさせて、これら2つの枝導波路137Bを伝搬する光の間で位相差を生ぜしめるものである。
【0045】
反射膜136Bは2方路をなす枝導波路137Bの他端に接続されて、枝導波路137からの2方路の光をともに反射させるものであるが、ヒータ132Bは、この反射膜136Bによる枝導波路137B上の往復の光路で、伝搬する光のヒータ加熱を行なうことができるようになっている。これにより、反射膜136Bによる光路の折り返しのないMZIを構成する場合に比して、ヒータの消費電力を半減させることができる。
【0046】
ここで、反射型2×2光スイッチ13B−1に入力された光の出力先となる第2入出力導波路125a−1,125b−1をそのままとする場合には、上下2つの枝導波路137Bを伝搬する光の位相関係を同位相関係となるようにヒータ加熱制御を行なうが、入力された光の出力先となる第2入出力導波路125a−1,125b−1を切り替える場合には、上下2つの枝導波路137Bを伝搬する光が互いに逆位相関係となるようにヒータ加熱制御を行なっている。
【0047】
これにより、戻り光として上下2つの枝導波路137Bを伝搬してきた光が方向性結合器131Bに入力されると、これら2つの光の位相関係がヒータ132Bで同一位相に制御されている場合には、上下2つの導波路を伝搬してきた戻り光は、光路が上下逆転して、もとの方路(入力時と同じ第2入出力導波路125a−1,125b−1)へ再び戻って出力される。
【0048】
これに対し、2つの光の位相関係がヒータ132Bで逆位相に制御されている場合には、反射膜136Bによる反射前の段階で逆方路に伝搬された光は、光路は上下逆転せずに出力されて、入力時とは異なる他方の第2入出力導波路125a−1,125b−1へつながる方路から出力される。
換言すれば、このMZI13B−1内の光路を往復して合波されるときの位相をヒータ加熱による屈折率変化で制御し、同一位相に制御すれば上下のポートが入れ替わり、逆位相なら入力したポートに光が返される。
【0049】
これにより、第2の態様としての光スイッチ13B−iにおいては、電極133Bを通じたヒータ132Bの加熱制御を行なうことにより、第2入出力導波路125a−i又は125b−iから入力された光の戻り光が伝搬すべき導波路を、2つの第2入出力導波路125a−i,125b−iのいずれかから選択的に切り替えることができる。
また、反射型2×2光スイッチ13−1〜13−Nは、第3態様の構成として、図4に示すように、前述の図3に示すもの(符号131B参照)と同様に干渉導波路として機能する方向性結合器131Cと、方向性結合器131Cに一端が接続された2本の枝導波路137Cと、ピストン運動微小ミラー132Cとからなる反射型光スイッチ13C−1〜13C−Nとすることもできる。
【0050】
ここで、ピストン運動微小ミラー132Cは、各枝導波路137Bの他端に形成された反射部材として機能するものであるが、外部からの制御を受けて、ミラー132C面を光路に平行として前後させることができるようになっており、これにより、2つの枝導波路137Cを往復する光の間での光路長に差をつけることができるようになっている。換言すれば、ピストン運動微小ミラー132Cは、方向性結合器131Cと当該ミラー132C面との間でのそれぞれの光路長差を調節しうるピストン動作型ミラーとして機能する。
【0051】
これにより、戻り光として上下2つの枝導波路137Cを伝搬してきた光が方向性結合器131Bに入力されると、これら2つの光が同位相となるように、ミラー132Cで光路長差が制御されている場合には、上下2つの導波路を伝搬してきた戻り光は、光路が上下逆転して、もとの方路(入力時と同じ第2入出力導波路125a−1,125b−1)へ再び戻って出力される。
【0052】
これに対し、2つの光が逆位相となるように、ミラー132Cで光路長差が制御されている場合には、ミラー132Cによる反射前の段階で逆方路に伝搬された光は、光路は上下逆転せずに出力されて、入力時とは異なる他方の第2入出力導波路125a−1,125b−1へつながる方路から出力される。
したがって、第3の態様としての光スイッチ13C−iにおいては、ミラー132Cのミラー面位置を光路に平行に調節することにより、第2入出力導波路125a−i又は125b−iから入力された光についての光路長差を調節して、第2入出力導波路125a−i又は125b−iから入力された光の戻り光が伝搬すべき導波路を、2つの第2入出力導波路125a−i,125b−iのいずれかから選択的に切り替えることができる。
【0053】
また、反射型2×2光スイッチ13−i(i:1〜Nの任意の整数)は、第4態様の構成として、図5に示すような、磁気光学効果を利用することにより、上記戻り先の導波路を切り替えるべく構成された反射型2×2光スイッチ13D−iとすることもできる。
ここで、この図5に示す反射型2×2光スイッチ13D−iは、第2入出力導波路125a−i,125b−iに接続される2つの方路に対応した2つのコリメータ131D,複屈折板132D,λ/2板(二分の一波長板)133D,複屈折板134D,レンズ135DおよびMO(Magneto Optic)媒体付ミラー136Dをそなえて構成されている。
【0054】
また、2つのコリメータ131Dはそれぞれ、第2入出力導波路125a−i,125b−iから入力される各光をコリメートするとともに、第2入出力導波路125a−i,125b−iへ出射される戻り光をコリメートするものである。
さらに、複屈折板132D,134Dは、入射される光のうちで縦偏波と横偏波とで異なる屈折率で伝搬するものであり、125a−i,125b−iからの光を、それぞれ互いに異なる光路を伝搬する偏波成分に分離するとともに、互いに異なる光路で入射された偏波成分を偏波合成しうるものであり、λ/2板133Dは、入力される光が横偏波の場合には縦偏波として出力し、入力される光が縦偏波の場合には横偏波として出力するものである。
【0055】
また、レンズ135Dは、複屈折板134Dからの光を集光してMO媒体付ミラー136Dに反射させ、MO媒体付ミラー136Dで反射された光を集光して複屈折板134Dに出射するものである。更に、MO付ミラー136Dは、レンズ135Dからの光を反射するミラー136D−1の面上に、MO媒体136D−2が固着されたものであって、このMO媒体136D−2に磁気エネルギーを与えることにより、反射光の偏波を0度又は90度回転させることができるようになっている。
【0056】
このような構成の反射型2×2光スイッチ13D−iにおいて、例えば第2入出力導波路125a−iからの光は、複屈折板132Dで縦偏波と横偏波に分解され、横偏波はλ/2板133Dを通して縦偏波に変換される。複屈折板134Dでは、複屈折板132Dで分離された縦偏波とともに、λ/2板133Dからの縦偏波を、互いに異なる光路を通じてレンズ135Dに出射する。
【0057】
複屈折板134Dからの2つの縦偏波は、レンズ135Dで集光されてM/O媒体136D−2に入射する。このM/O媒体136D−2は印加磁場の制御によりミラー136D−2で反射する光の偏波を0度または90度回転させている。このとき、M/O媒体136D−2に対し、偏波の回転を0度のとする印加磁場の制御を行なうことにより、反射光を縦偏波のままとして、伝搬してきた経路を逆戻りしてもとの第2入出力導波路125a−iに出力させることができる。
【0058】
また、第2入出力導波路125b−iからの光については、複屈折板132Dおよびλ/2板133Dにより、2本の横偏波に変換されるが、偏波の回転を0度のとする印加磁場の制御を行なうことにより、反射光を横偏波のままとして、もとの第2入出力導波路125b−iに出力させることができる。
これに対し、M/O媒体136D−2に対し、偏波の回転を90度のとする印加磁場の制御を行なうことにより、第2入出力導波路125a−i,125b−1からの縦偏波,横偏波が入れ替えられて反射するので、出力先の導波路は入力時の導波路と入れ替えられて出力される。即ち、導波路125a−iからの光の反射光は導波路125b−iから出力され、導波路125b−1からの光の反射光は導波路125a−iから出力される。
【0059】
したがって、第4の態様としての光スイッチ13D−iにおいては、M/O媒体136D−2に対する印加磁場を制御することにより、反射光の偏波を0度又は90度に回転させて、第2入出力導波路125a−i又は125b−iから入力された光の戻り光が伝搬すべき導波路を、2つの第2入出力導波路125a−i,125b−iのいずれかから選択的に切り替えることができる。
【0060】
上述の構成により、第1実施形態にかかる光デバイス10においては、ポート11a−1,11b−1をそれぞれアドポート,インポートとし、ポート11a−2,11b−2をそれぞれドロップポート,アウトポートとすると、単一のAWGを用いるのみで、ADM(Add/Drop Multiplexing)スイッチングを行なうスイッチとして動作させることができる。
【0061】
すなわち、インポート11b−1から入力された波長多重光のうちで所定波長の光をアウトポート11b−2から出力するためには、反射光がもとの光路を辿るように該当波長の光路を切り替える光スイッチ13−iを制御する。これにより、反射光は合波側導波路121bおよび光サーキュレータ11bを通じてアウトポート11b−2から出力される。
【0062】
また、インポート11b−1から入力された波長多重光のうちで所定波長の光をドロップポート11a−2から出力するためには、反射光が他方の光路を辿るように該当波長の光路を切り替える光スイッチ13−iを制御する。これにより、反射光は合波側導波路121aおよび光サーキュレータ11aを通じてドロップポート11a−2から出力される。光スイッチ13−iを同様に制御することにより、所定波長の光をアドポート11a−1からアウトポート11b−2へ出力することができる。
【0063】
さらに、第2態様〜第4態様にかかる光スイッチにおいては、ポート11a−1,11b−1をいずれもインポートとし、ポート11a−2,11b−2をいずれもアウトポートとすると、単一のAWGを用いるのみで、波長クロスコネクトを行なうスイッチとして動作させることができる。
このように、第1実施形態にかかる光デバイスによれば、単一のAWGを構成要素として用いながら、従来構成よりも大幅に装置規模を縮小化させた波長選択光スイッチを構成することができる利点がある。
【0064】
また、第2態様にかかる反射型光スイッチ13B−1〜13B−Nを適用した光デバイスによれば、単一のAWGおよび光スイッチ13−1〜13−Nが同一基板上に形成されたPLCで、波長選択光スイッチを形成することができ、装置構成要素として使用するAWGの個数を従来技術にかかるものよりも削減しながら、装置規模が縮小化された波長選択光スイッチを実現させることができる利点がある。
【0065】
なお、上述の図2〜図5に示す反射型光スイッチは、いずれも2×2の光スイッチであるが、例えば上記各図2〜図5に示すスイッチの構成要素を多段にツリー接続することによって、入出力で2以上のポート数を有する光スイッチを構成することもできる。このようにすれば、波長選択光スイッチとしての光デバイスにおいても、入出力で2以上のポート数を有するものを構成することができる。
【0066】
(b1)第1実施形態の変形例の説明
図6は第1実施形態の変形例にかかる光デバイス10Aを示す模式図であり、この図6に示す光デバイス10Aにおいては、上述の図1に示す光デバイス10に比して、AWG12の各第2入出力導波路125a−i,125b−iと反射型光スイッチ13−iとの間に、伝搬する光の強度を可変制御する光可変減衰器(VOA: Variable Optical Attenuator)14a−i,14b−iが介装されている点が異なっている。尚、図6中において、図1と同一の符号は同様の部分を示している。
【0067】
このVOA14a−i,14b−iとしては、例えば前述の図3に示す光スイッチ13B−iと基本的に同様に、ヒータ加熱による屈折率変化を利用して枝導波路間を伝搬する光の光路長差を制御するMZIにより構成することができる。
このような構成の光デバイス10Aによれば、光強度を各波長間でレベル調整して等化するAGEQとしての機能を併せ持つ波長選択光スイッチを、装置構成要素として使用するAWGの個数を従来技術にかかるものよりも削減し、装置規模を大幅に縮小化させながら実現することができる利点がある。
【0068】
(c)第2実施形態の説明
図7(a)は第2実施形態にかかる光デバイスを示す模式図であり、この図7に示す光デバイス20は、波長選択光スイッチとして動作しうるものであって、前述の図23(a)に示すもの(符号1参照)と同様のAWG21,22が2つ設けられ、AWG21の分波側導波路(第2入出力導波路)217−1〜217−N(Nは2以上の自然数)とAWG22の分波側導波路(第4入出力導波路)227−1〜227−Nが、それぞれカンチレバー型MEMSミラー23−1〜23−Nを介して接続されている。
【0069】
なお、AWG21の合波側導波路(第1入出力導波路)213には第1サーキュレータ24が接続され、AWG22の合波側導波路(第3入出力導波路)223には第3サーキュレータ25が接続されている。換言すれば、第1サーキュレータ24,AWG21,カンチレバー型MEMSミラー23−1〜23−R,AWG22および第2サーキュレータ25が、縦列に配列されて構成されている。
【0070】
また、AWG21は、第1サーキュレータ24からの方路が接続される1本の第1入出力導波路213が一端に形成されるとともにN本の第2入出力導波路217−1〜217−Nが他端に形成された第1導波路型回折格子として機能するとともに、AWG22は、第2サーキュレータ25からの方路が接続される1本の第3入力導波路223が一端に形成されるとともにN本の第4入出力導波路227−1〜227−Nが他端に形成された第2導波路型回折格子として機能する。
【0071】
さらに、分波側導波路217−1〜217−Nと、分波側導波路227−1〜227−Nとの間にそれぞれ介装されているカンチレバー型MEMSミラー23−1〜23−Nは、それぞれの導波路217−1〜217−N,227−1〜227−Nを伝搬する光の透過と反射を切り替えるための透過/反射スイッチとして機能するものである。
図7(b)は上述のカンチレバー型MEMSミラー23−i(i:1〜Nのいずれかの自然数)の動作を説明するための模式図を示す図であり、図7(a)に示す光デバイス20における分波側導波路217−i,227−iについての正視断面図である。尚、27は導波路217−i,227−iを包囲するクラッド層である。
【0072】
この図7(b)に示すように、カンチレバー型MEMSミラー23−iは、両面ミラー231とミラー端部がその一端に固着されたバー232により構成され、バー232の他端は導波路217−i,227−i上部のクラッド層27に固着されている。
また、2つの分波側導波路217−i,227−iの間に設けられた溝状スペース28にミラー231が落とし込まれているが、例えば静電気を印加する制御によって、上述のバー232の自由端側(ミラー231が固着された側)が反り上がり、ミラー231を溝状スペース28から持ち上げることができるようになっている。
【0073】
これにより、ミラー231が溝状スペース28に落とし込まれている状態においては、2つの分波側導波路217−i,227−iは遮断され、分波側導波路217−iからの光は、ミラー231の一方の面で、もとの導波路217−iに向けて反射され、分波側導波路227−iからの光は、ミラー231の他方の面で、もとの導波路227−iに向けて反射されることになる。
【0074】
また、ミラー231が溝状スペース28から持ち上がった状態においては、2つの分波側導波路217−i,227−iは光学的に接続されて、分波側導波路217−iからの光は導波路227−iを通じて伝搬していくとともに、分波側導波路227−iからの光は導波路217−iを通じて伝搬していくことになる。
上述の構成により、第2実施形態にかかる光デバイス20では、第1光サーキュレータ24に入力される側のポート24−1をインポート、第2光サーキュレータ25に入力される側のポート25−1をアドポートとし、第1光サーキュレータ24から出力される側のポート24−2をアウトポート、第2光サーキュレータ25から出力される側のポート25−2をドロップポートとすると、2つのAWGが形成された単一のPLCで、ADM(Add/Drop Multiplexing)スイッチングを行なうスイッチを構成することができる。
【0075】
すなわち、インポート24−1から入力された波長多重光のうちで所定波長の光をアウトポート24−2から出力するためには、該当する波長の分波光における光路の延長上(分波光を伝搬する分波側導波路217−iの終端部)に設けられたカンチレバー型MEMSミラー23−iのミラー231を溝状スペース28内に配置することにより、当該波長の光を分波側導波路217−iへ反射させる。これにより、反射光は合波側導波路213および第1光サーキュレータ24を通じてアウトポート24−2から出力される。
【0076】
また、インポート24−1から入力された波長多重光のうちで所定波長の光をドロップポート25−2から出力するためには、該当する波長の分波光における光路の延長上に設けられたカンチレバー型MEMSミラー23−iのミラー231を溝状スペース28から持ち上げることにより、当該波長の光を分波側導波路227−iへ出力する。分波側導波路227−iへ出力された光は合波側導波路223および第2光サーキュレータ25を通じてドロップポート25−2から出力される。カンチレバー型MEMSミラー23−iを同様に制御することにより、所定波長の光をアドポート25−1からアウトポート24−2へ出力することができる。
【0077】
さらに、ポート24−1,25−1をいずれもインポートとし、ポート24−2,25−2をいずれもアウトポートとすると、2つのAWGが形成された単一のPLCで、波長クロスコネクトを行なうスイッチとして動作させることができる。
このように、第2実施形態にかかる光デバイス20によれば、第1,第2光サーキュレータ24,25,2つのAWG21,22およびカンチレバー型MEMSミラー23−1〜23−Nにより、波長選択光スイッチを形成することができ、光ファイバによる結線等を不要として、従来よりも装置規模が縮小化された波長選択光スイッチを実現させることができる利点がある。
【0078】
特に、2つのAWGおよびカンチレバー型MEMSミラー23−1〜23−Nが同一基板上に形成された単一のPLC(Planer Lightwave Circuit)で、波長選択光スイッチを形成することができ、従来よりも大幅に装置規模が縮小化された波長選択光スイッチを実現させることができる利点がある。
なお、上述の図7(a)に示す光デバイス20においては、2つのAWG21,22がともに一つの合波側導波路213,223をそなえることにより、2×2の波長選択型光スイッチとして構成されているが、これに限定されず、各AWG21,22の合波側導波路の本数をそれぞれP(P:2以上の自然数)本,Q(Q:2以上の自然数)とすることにより、入出力で2以上のポート数を有する波長選択光スイッチを構成することもできる。
【0079】
また、それぞれの導波路217−1〜217−N,227−1〜227−Nを伝搬する光の透過と反射を切り替えるための透過/反射スイッチとして機能するものとしては、カンチレバー型MEMSミラー23−1〜23−N以外のものを用いることとしてもよい。
(c1)第2実施形態の変形例の説明
図8は第2実施形態の変形例にかかる光デバイス20Aを示す模式図であり、この図8に示す光デバイス20Aにおいては、上述の図7(a)に示す光デバイス20に比して、AWG21の分波側導波路217−1〜217−N上、およびAWG22の分波側導波路227−1〜227−N上にそれぞれ、伝搬する光の強度を可変制御する光可変減衰器(VOA: Variable Optical Attenuator)28−1〜28−N,29−1〜29−Nが介装されている点が異なっている。尚、図8中において、図7と同一の符号は同様の部分を示している。
【0080】
このVOA28−1〜28−N,29−1〜29−Nとしては、例えば前述の図3に示す光スイッチ13B−1〜13b―Nと基本的に同様に、ヒータ加熱による屈折率変化を利用して枝導波路間を伝搬する光の光路長差を制御するMZIにより構成することができる。
このような構成の光デバイス20Aによれば、光強度を各波長間でレベル調整して等化するAGEQとしての機能を併せ持つ波長選択光スイッチを、装置規模を大幅に縮小化させながら実現することができる利点がある。
【0081】
なお、上述のVOA28−1,28−Nは分波側導波路217−1〜217−N上に設けられているが、少なくともAWG21とカンチレバー型MEMSミラー23−1〜23−Nとの間の、分波された光を伝搬する箇所に設けることとしてもよいし、又、VOA29−1〜29−Nは、少なくともAWG22とカンチレバー型MEMSミラー23−1〜23−Nとの間の、分波された光を伝搬する箇所に設けることとしてもよい。
【0082】
(d)第3実施形態の説明
図9は第3実施形態にかかる光デバイスを示す模式図であり、この図9に示す光デバイス30は、前述の第1実施形態における光デバイス10に比して、反射型光スイッチ13−1〜13−Nとしてカンチレバー型MEMSミラー331a,331bを用いた光スイッチ33−1〜33−Nを適用している点が異なっており、それ以外の構成については基本的に同様である。尚、図9中、図1と同一の符号は同様の部分を示している。
【0083】
ここで、反射型光スイッチ33−i(i:1〜Nの任意の自然数)は、同一の波長の分波光を伝搬しうる(隣接する2本の)第2入出力導波路125a−i,125b−iにおける一方の導波路からの光を他方の導波路に導入されるように折り返す光回路332と、隣接する2本の第2入出力導波路125a−i,125b−iを伝搬する光の透過/反射を切り替える2個のカンチレバー型MEMSスイッチ331a,331bと、をそなえて構成されている。
【0084】
ここで、この図9に示す光回路332は、反射ミラー332aをそなえて構成され、隣接する2本の第2入出力導波路125a−i,125b−iが、第2入出力導波路125a−i,125b−iにおける一方の導波路からの光が反射ミラー332aで反射されて、他方の導波路に導入されるように形成されているが、このような構成の他に、隣接する2つの第2入出力導波路125a−i,125b−iを、曲がり導波路等を用いて(バイパス)接続するようにしてもよい。
【0085】
上述の構成により、第3実施形態にかかる光デバイス30では、光サーキュレータ11bに入力される側のポート11b−1をインポート、光サーキュレータ11aに入力される側のポート11a−1をアドポートとし、光サーキュレータ11bから出力される側のポート11b−2をアウトポート、光サーキュレータ11aから出力される側のポート11a−2をドロップポートとすると、単一のAWGを用いた構成で、ADM(Add/Drop Multiplexing)スイッチングを行なうスイッチを構成することができる。
【0086】
すなわち、インポート11b−1から入力された波長多重光のうちで所定波長の光をアウトポート11b−2から出力するためには、該当する波長の光路を切り替えるための光スイッチ33−iにおけるカンチレバー型MEMSミラー332a,332bを図示しない溝状スペース内に配置することにより、分波側導波路125b−iから伝搬してきた当該波長の光を分波側導波路125b−iへ反射させる。これにより、反射光は合波側導波路121bおよび光サーキュレータ11bを通じてアウトポート11b−2から出力される。
【0087】
また、インポート11b−1から入力された波長多重光のうちで所定波長の光をドロップポート11a−2から出力するためには、該当する波長の光路を切り替えるための光スイッチ33−iにおけるカンチレバー型MEMSミラー332a,332bを図示しない溝状スペースから持ち上げることにより、分波側導波路125b−iから伝搬してきた当該波長の光を分波側導波路125a−iへ出力する。分波側導波路125a−iへ出力された光は合波側導波路121aおよび光サーキュレータ11aを通じてドロップポート11a−2から出力される。
【0088】
さらに、光スイッチ33−iのカンチレバー型MEMSミラー332a,332bを同様に制御することにより、所定波長の光をアドポート11a−1からアウトポート11b−2へ出力することもできる。
このように、第3実施形態にかかる光デバイスによれば、単一のAWGを用いた構成で、波長選択光スイッチを形成することができ、装置構成要素として使用するAWGの個数を従来技術にかかるものよりも削減しながら、光ファイバの結線等をスイッチ内部で不要として、装置規模が縮小化された波長選択光スイッチを実現させることができる利点がある。
【0089】
(d1)第3実施形態の変形例の説明
図10は第3実施形態の変形例にかかる光デバイス30Aを示す模式図であり、この図10に示す光デバイス30Aにおいては、上述の図9に示す光デバイス30に比して、AWG12の各第2入出力導波路125a−i,125b−iと反射型光スイッチ33−iとの間に、伝搬する光の強度を可変制御する光可変減衰器(VOA: Variable Optical Attenuator)14a−i,14b−iが介装されている点が異なっている。尚、図10中において、図9と同一の符号は同様の部分を示している。
【0090】
このVOA14a−i,14b−iとしては、例えば前述の図6に示すものと同様に、ヒータ加熱による屈折率変化を利用して枝導波路間を伝搬する光の光路長差を制御するMZIにより構成することができる。
このような構成の光デバイス30Aによれば、光強度を各波長間でレベル調整して等化するAGEQとしての機能を併せ持つ波長選択光スイッチを、装置構成要素として使用するAWGの個数を従来技術にかかるものよりも削減し、装置規模を大幅に縮小化させながら実現することができる利点がある。
【0091】
(e)第4実施形態の説明
図11は第4実施形態にかかる光デバイス40を示す模式図であり、この図11に示す光デバイス40は、光レベル調整器としてとして動作しうるものであって、前述の図23(a)に示すものと同様のAWG41が設けられて、AWG41の一端に形成された合波側導波路〔第1入出力導波路,図23(a)中の符号3参照〕413には光サーキュレータ42が、AWG41の他端に形成された分波側導波路〔第2入出力導波路,図23(a)中の符号7−1〜7−N参照〕417−1〜417−Nにはそれぞれ反射光強度調整素子43−1〜43−Nが接続されている。
【0092】
なお、AWG41において、414は図23(a)中の符号4に相当するスラブ導波路、415は同図の符号5に相当するチャンネル導波路、416は同図の符号6に相当するスラブ導波路である。
すなわち、入出力ポートとして機能しうる光サーキュレータ42,AWG41,およびN個の反射光強度調整素子43−1〜43−Nと、が縦列に配列されて構成されている。
【0093】
また、反射光強度調整素子43−1〜43−Nはそれぞれ、分波側導波路417−1,417−Nからの光を反射させるとともに上記反射された光の光強度を調整しうる、光強度調整回路として機能するものであって、例えば以下に示す図12〜図14のいずれかに示す態様で構成することができる。
すなわち、反射光強度調整素子43−1〜43−Nは、第1態様の構成として、図12に示すような、AWG41をなすPLCと一体に形成された反射型MZI(マッハツェンダ干渉回路)43A−1〜43A−Nとすることができる。
【0094】
ここで、この反射型MZI43A−1〜43A−Nは、いずれも同様の構成を有しており、反射光強度調整素子43−1に相当する反射型MZI43A−1に着目すると、分岐導波路431と、2本の枝導波路432a,432bと、反射部材433a,433bと、ヒータ434a,434bと、をそなえて構成されている。
すなわち、MZI43A−1の分岐導波路431は、分波側導波路417−1を2分岐するものであり、2本の枝導波路432a,432bは、分岐導波路431で2分岐された方路に一端がそれぞれ接続されたもので、反射部材433a,433bは、各枝導波路432a,432bの他端に形成されて、それぞれの枝導波路432a,432bを伝搬してきた光について反射させるものである。
【0095】
さらに、ヒータ434a,434bは、熱光学効果により各枝導波路432a,432bを伝搬する各光について光路長差を調節しうるものであって、例えば前述の図3に示すものと同様に、ヒータ434a,434bに加熱制御用の電圧を供給するためにそれぞれ電極(符号133B参照)を設けるとともに、2つのヒータ434a,434bによる加熱制御が互いに影響を与えないようにするために枝導波路432a,432b間に断熱溝を形成するようにしてもよい。
【0096】
これにより、ヒータ434a,434bで位相差が調整された、各枝導波路432a,432bを伝搬する反射光は、分岐導波路431で干渉しながら合波される。即ち、ヒータ434a,434bにおいて合波前の反射光の位相差を調整しておくことにより、合波時の光レベルを調整することができるのである。
したがって、反射光強度調整素子43−1〜43−Nの第1態様の構成としての反射型MZI43A−1〜43A−Nでは、熱光学効果を用いて反射光の位相調整を行なうことによって、AWG41における分波側導波路417−1〜417−Nを伝搬する反射光のレベルを調整することができる。
【0097】
また、反射光強度調整素子43−1〜43−Nは、第2態様の構成として、図13に示すような反射型MZI(マッハツェンダ干渉回路)43B−1〜43B−Nとすることができる。
ここで、この反射型MZI43B−1〜43B−Nは、いずれも同様の構成を有しており、反射光強度調整素子43−1に相当する反射型MZI43B−1に着目すると、前述のMZI43A−1の場合と同様の分岐導波路431および2本の枝導波路432a,432bをそなえるとともに、前述のMZI43A−1の場合(符号433a,433b参照)とは異なる反射部材435a,435bと、をそなえて構成されている。
【0098】
反射部材435a,435bはそれぞれ、各枝導波路432a,432bの他端に形成されたものであるが、これらの反射部材435a,435bは、前述の図4の符号132Cと同様のビストン動作型ミラーにより構成されている。
このピストン動作型ミラー435a,435bはそれぞれ、外部からの制御を受けて、ミラー435a,435b面を光路に平行として前後させることができるようになっており、これにより、2つの枝導波路432a,432bを往復する光の間での光路長に差をつけることができるようになっている。換言すれば、ピストン動作型ミラー435a,435bは、当該ミラー435a,435bと分岐導波路431との間でのそれぞれの光路長差を調節することができるようになっている。
【0099】
これにより、ピストン動作型ミラー435a,435bで光路長差が調整された、各枝導波路432a,432bを伝搬する反射光は、分岐導波路431で干渉しながら合波される。即ち、ピストン動作型ミラー435a,435bにおいて合波前の反射光の光路長差を調整しておくことにより、合波時の光レベルを調整することができるのである。
したがって、反射光強度調整素子43−1〜43−Nの第2態様の構成としての反射型MZI43B−1〜43B−Nでは、ピストン動作型ミラー435a,435bを用いて反射光の光路長差調整を行なうことによって、AWG41におけるもとの分波側導波路417−1〜417−Nを伝搬する反射光のレベルを調整することができる。
【0100】
さらに、反射光強度調整素子43−1〜43−Nは、第3態様の構成として、図14に示すようなレンズミラー機構43C−1〜43C−Nとすることができる。
ここで、このレンズミラー機構43C−1〜43C−Nは、いずれも同様の構成を有しており、反射光強度調整素子43−1に相当するレンズミラー機構43C−1に着目すると、レンズミラー機構43C−1は、レンズ436およびMEMSミラー等の微小角度可変ミラー(チルトミラー)437をそなえて構成されている。
【0101】
また、レンズ436は、AWG41をなす分波側導波路417−1〜417−Nが形成されたPLC端面から出射された光について集光しうるもので、これらのレンズ436で集光された光はミラー437に入射されるようになっている。換言すれば、レンズミラー機構43C−1のレンズ436は、分波側導波路417−1からの出射光とチルトミラー437とを光学的に結合させるものである。
【0102】
ミラー437は、レンズ436から入射される光について反射するものであるが、その反射面位を角度調整できるように構成されており、これにより、レンズ436からの光についてレンズ436に反射させる光量を可変することができるようになっている。尚、このチルトミラー437は、通常、ミラーアレイとして集積化して構成されている。
したがって、反射光強度調整素子43−1〜43−Nの第3態様の構成としてのレンズミラー機構43C−1〜43C−Nでは、チルトミラー437の反射面位を調整することにより反射光の光量を調整することを通じて、AWG41におけるもとの分波側導波路417−1〜417−Nを伝搬する反射光のレベルを調整することができる。
【0103】
このように構成された光デバイス40においては、光サーキュレータ42に接続された入力ポート42−1からの波長多重光はAWG41で波長分離されて、分波側導波路417−1〜417−Nにおいて個別の波長の光として伝搬する。各反射光強度調整素子43−1〜43−Nでは、分波側導波路417−1〜417−Nからの光を反射するとともに、反射光のレベル調整を行なって、各波長の光強度を等化する。これにより、各波長成分のレベルが等化された光はAWG41で合波されて、合波側導波路413および光サーキュレータ42を通じて、出力ポート42−2から出力される。
【0104】
このように、第4実施形態にかかる光デバイス40によれば、単一のAWG41を使用するのみで、光レベル調整器を構成することができるので、装置サイズを従来よりも大幅にされた光レベル調整器を構成することができる利点がある。
(f)第5実施形態の説明
図15は第5実施形態にかかる光デバイス50を示す模式図であり、この図15に示す光デバイス50は、光レベル調整器としてとして動作しうるものであって、前述の図23(b)に示すものと同様のAWG51が設けられている。
【0105】
また、AWG51の一端には、互いに並列する入力導波路としての合波側導波路513bおよび出力導波路としての合波側導波路513a〔それぞれ図23(b)中の符号3b,3a参照〕が形成されるとともに、AWG51の他端には分波側導波路〔2×N本の入出力導波路,図23(b)中の符号7a−1〜7a−N,7b−1〜7b−N参照〕517a−1〜517a−N,517b−1〜517b−Nが形成され、隣接する2つの分波側導波路7a−i,7b−iごとに反射光強度調整素子53−iが接続されている。
【0106】
なお、AWG51において、514は図23(b)中の符号4に相当するスラブ導波路、515は同図の符号5に相当するチャンネル導波路、516は同図の符号6に相当するスラブ導波路である。即ち、AWG51およびN個の反射光強度調整回路53−1〜53−Nと、が縦列に配列されて構成されている。
また、反射光強度調整素子53−1〜53−Nはそれぞれ、一方の入出力導波路としての分波側導波路517b−1,517b−Nからの光の光強度を調整するとともに光強度が調整された光を反射させて、他方の入出力導波路としての分波側導波路517a−1〜517a−Nへ導入させる光強度調整回路として機能するものであって、例えば後述する図16,図17のいずれかに示す態様で構成することができる。
【0107】
すなわち、反射光強度調整素子53−1〜53−Nは、第1態様の構成として、図16に示すような、MZI(マッハツェンダ干渉回路)531およびミラー532からなる光強度調整回路とすることができる。ここで、この光強度調整回路53A−1〜53A−Nは、いずれも同様の構成を有しており、以下においては、反射光強度調整素子53−1に相当する光強度調整回路53A−1に着目してその構成を説明する。
【0108】
ここで、光強度調整回路53A−1をなすMZI531は、AWG51をなす分波側導波路517b−1を通じて伝搬してきた分波光について、熱光学効果で枝間光路長差を調整しうるものであって、分岐導波路531a,2本の枝導波路531b,531c,合波導波路531dおよびヒータ531e,531fをそなえて構成されている。
すなわち、MZI531の分岐導波路531aは、分波側導波路517b−1を通じて伝搬してきた分波光を2分岐するものであり、2本の枝導波路531b,531cは、分岐導波路531aで2分岐された方路に一端がそれぞれ接続されたもので、合波導波路531dは、枝導波路531b,531cを伝搬する光を一つの導波路517b−1を伝搬する光として合波するものである。
【0109】
さらに、ヒータ531e,531fは、熱光学効果により各枝導波路531b,531cを伝搬する各光について光路長差を調節しうるものであって、例えば前述の図3に示すものと同様に、ヒータ531e,531fに加熱制御用の電圧を供給するためにそれぞれ電極(符号133B参照)を設けるとともに、2つのヒータ531e,531fによる加熱制御が互いに影響を与えないようにするために枝導波路531b,531c間に断熱溝を形成するようにしてもよい。
【0110】
これにより、ヒータ531e,531fで位相差が調整された、各枝導波路531b,531cを伝搬する光は、合波導波路531dで干渉しながら合波される。即ち、ヒータ531e,531fにおいて合波前の反射光の位相差を調整しておくことにより、合波時の光レベルを調整することができるのである。
また、ミラー532は、MZI531で光強度が調整された光について反射させて、分波側導波路517a−1に導入させるものであり、隣接する分波側導波路517a−1,517b−1のうちの、(入力導波路513aからの光を伝搬する)一方の分波側導波路517b−1からの光について、(出力導波路から出射させるための光路となる)他方の分波側導波路517a−1へ導入されるように折り返す光回路を構成するものである。
【0111】
したがって、反射光強度調整素子53−1〜53−Nの第1態様の構成としての光強度調整回路53A−1〜53A−Nでは、熱光学効果を用いて反射光の位相調整を行なうことによって、AWG51における出力光をなす各波長のレベルを調整することができる。
なお、上述のMZI531はミラー532による反射される前の分波光について強度調整するように配置されているが、ミラー532による反射後の反射光について強度調整するように配置してもよい。
【0112】
また、反射光強度調整素子53−1〜53−Nは、第2態様の構成として、図17に示すようなレンズミラー機構53B−1〜53B−Nとすることができる。
ここで、このレンズミラー機構53B−1〜53B−Nは、いずれも同様の構成を有しており、反射光強度調整素子53−1に相当するレンズミラー機構53B−1に着目すると、レンズミラー機構53B−1は、レンズ536a〜536cおよびMEMSミラー等の微小角度可変ミラー(チルトミラー)537をそなえて構成されている。
【0113】
レンズ536bは、入出力導波路517b−1が形成されたPLC端面から出射された光について、平行光にコリメートしうるもので、レンズ536cはレンズ536bにてコリメートされた光について微小角度可変ミラー537表面上に焦点がくるように集光するとともに、ミラー537からの反射光について平行光に集光するものである。
ミラー537は、レンズ536cから入射される光について反射するものであるが、その反射面位を角度調整できるように構成されており、これにより、レンズ536cからの光についてレンズ536cに反射させる光量を可変することができるようになっている。尚、このチルトミラー537は、通常、ミラーアレイとして集積化して構成されている。
【0114】
さらに、レンズ536aは、レンズ536cにて集光された反射光について入出力導波路517a−1が形成されたPLC端面上に焦点がくるように集光するものである。換言すれば、レンズミラー機構53B−1のレンズ536a〜536cは、AWG51とチルトミラー537とを光学的に結合させるものである。
したがって、反射光強度調整素子53−1〜53−Nの第3態様の構成としてのレンズミラー機構53C−1〜53C−Nでは、チルトミラー537の反射面位を調整することにより反射光の光量を調整することを通じて、AWG51におけるもとの分波側導波路517−1〜517−Nを伝搬する反射光のレベルを調整することができる。
【0115】
このように構成された光デバイス50においては、入力導波路513bからの波長多重光はAWG51で波長分離されて、分波側導波路517b−1〜517b−Nにおいて個別の波長の光として伝搬する。各反射光強度調整素子53−1〜53−Nでは、分波側導波路517b−1〜517b−Nからの光のレベル調整を行なうとともに反射させて、分波側導波路517a−1〜517a−Nを伝搬する各波長の光強度を等化する。これにより、各波長成分のレベルが等化された光はAWG51で合波されて、合波側導波路413および光サーキュレータ42を通じて、出力ポート42−2から出力される。
【0116】
このように、第5実施形態にかかる光デバイス50においても、単一のAWG51を使用するのみで、光レベル調整器を構成することができるので、装置サイズを従来よりも大幅にされた光レベル調整器を構成することができる利点がある。
(g)第6実施形態の説明
図18は第6実施形態にかかる光デバイス60を示す模式図であり、この図18に示す光デバイス60は波長選択光スイッチとして動作しうるものであって、図23(b)に示すものと同様の構成を有するAWG62,64がタンデム配置されるとともに、AWG62,64間にはN個の反射型光スイッチ63−1〜63−Nが介装されている。即ち、上述のAWG62,光スイッチ63−1〜63−NおよびAWG64は、基板61上に縦列に配列されて構成されており、
ここで、図18に示すAWG(第1導波路型回折格子)62において、621a,621bはそれぞれ2本の入力導波路〔図23(b)の符号3a,3b参照〕で、625a−1〜625a−N,625b−1〜625b−Nは2×N本の出力導波路〔図23(b)の符号7a−1〜7a−N,7b−1〜7b−N参照〕である。即ち、入力導波路621a,621bを通じてそれぞれ入力された波長多重光を分波して、それぞれ出力導波路625a−1〜625a−N,625b−1〜625b−Nを通じて分波光を伝搬させることができるようになっている。
【0117】
さらに、光スイッチ63−i(i:1〜Nの任意の自然数)は、2個の入力方路とともに2個の出力方路が設けられて、上記の2×N本の出力導波路625a−1〜625a−N,625b―1〜625b−Nのうちの隣接する2本の導波路625a−i,625b−iごとに上述の入力方路が接続されて、入力方路からの入力光について出力すべき出力方路の切り替えを行なうことができるものであって、2×2光スイッチとして構成されている。又、これらの光スイッチ63−iの2つの出力方路は、AWG64の入力導波路645a−i,645b−iに接続されている。
【0118】
また、AWG(第2導波路型回折格子)64において、645a−1〜645a−N,645b―1〜645b−Nは2×N本の入力導波路〔図23(b)の符号7a−1〜7a−N,7b−1〜7b−N参照〕で、641a,641bはそれぞれ2本の出力導波路〔図23(b)の符号3a,3b参照〕である。即ち、入力導波路645a−1〜645a−N,645b−1〜645b−Nを通じてそれぞれ入力された分波光を合波して、それぞれ出力導波路641a,641bを通じて波長多重光として伝搬させることができるようになっている。
【0119】
ここで、上述の光スイッチ63−1〜63−Nとしては、詳細には図18に示すようなMZI型の光スイッチとして構成されている。尚、この光スイッチ63−1〜63−Nは、前述の第1実施形態におけるMZI13B−1〜13B−Nを1方向のMZIとして展開した構成となっている。
ここで、この図18に示す2×2光スイッチ63−iはそれぞれ、2入力2出力の方向性結合器631,方向性結合器131Bからの2方路に一端がそれぞれ接続された図中上下2本の枝導波路632a,632b,枝導波路632a,632bの他端が2つの入力方路に接続された2入力2出力の方向性結合器634をそなえるとともに、上述の2方路をなす枝導波路632a,632bを個別に加熱するヒータ635a,635b,ヒータ635a,635bに加熱制御用の電圧を供給するための電極637a,637bをそなえている。
【0120】
また、方向性結合器634の2つの出力方路は、AWG64における2×N本の入力導波路641a−1〜641a−N,641b−1〜641b−Nのうちの対応する2本の隣接する導波路641a−i,641b−iに接続されている。
なお、2つのヒータ635a,635bによる加熱制御が互いに影響を与えないようにするために枝導波路632a,632b間には断熱溝636が形成されている。
【0121】
これにより、2×2光スイッチ63−iにおいても、電極637a,637bを通じたヒータ635a,635bの加熱制御を行なうことにより、枝導波路632a,632bを伝搬する光の位相差を調整して、出力導波路625a−i又は625b−iから入力された光の伝搬先となる導波路を、2つの入力導波路645a−i,645b−iのいずれかから選択的に切り替えることができる。
【0122】
したがって、AWG62の入力導波路621a,621bを通じて入力された波長多重光の各波長成分は光スイッチ63−1〜63−Nで方路が切り替えられて、AWG64の出力導波路641a,641bを通じて波長多重光として出力されるようになっている。
上述のごとく構成された光デバイス60においては、入力導波路621a,621bをそれぞれインポート,アドポートとし、出力導波路641a,641bをそれぞれアウトポート,ドロップポートとすることにより、光デバイス60を、光ADMスイッチングを行なうスイッチとして動作させることができる。
【0123】
このように、第6実施形態にかかる光デバイス60によれば、第1,第2導波路型回折格子62,64および光スイッチ63−1〜63−Nをそなえたことにより、波長選択光スイッチを形成することができ、波長選択スイッチ内での光ファイバ等の結線をなくし、装置規模を大幅に縮小させることができる利点がある。
特に、2つのAWG62,64および光スイッチ63−1〜63−Nが同一基板上に形成されたPLCで、波長選択光スイッチを形成することができ、波長選択スイッチ内での光ファイバ等の結線をなくし、装置規模を大幅に縮小させることができる利点がある。
【0124】
なお、上述の図18に示す光スイッチ63−1〜63−Nは、いずれも2×2の光スイッチであるが、例えば上記各図18に示すスイッチの構成要素を多段にツリー接続することによって、入出力で2以上のポート数を有する光スイッチを構成することもできる。このようにすれば、波長選択光スイッチとしての光デバイスにおいても、入出力で2以上のポート数を有するものを構成することができる。又、入出力のポート数についても同一とする場合以外に、異なって構成することも考えられる。
【0125】
(g1)第6実施形態の変形例の説明
図19は第6実施形態の変形例にかかる光デバイス60Aを示す模式図であり、この図19に示す光デバイス60Aにおいては、上述の図18に示す光デバイス60に比して、反射型光スイッチ63−iの各2つの出力方路とAWG64の各入力導波路645a−i,645b−iとの間にそれぞれ、伝搬する光の強度を可変制御する光可変減衰器(VOA: Variable Optical Attenuator)64a−i,64b−iが介装されている点が異なっている。尚、図19中において、図18と同一の符号は同様の部分を示している。
【0126】
このVOA64a−i,64b−iとしては、例えば前述の図18に示す光スイッチ63−iと基本的に同様に、ヒータ加熱による屈折率変化を利用して枝導波路間を伝搬する光の光路長差を制御するMZIにより構成することができる。
このような構成の光デバイス60Aによれば、光強度を各波長間でレベル調整して等化するAGEQとしての機能を併せ持つ波長選択光スイッチを、装置構成要素として使用するAWGの個数を従来技術にかかるものよりも削減し、装置規模を大幅に縮小化させながら実現することができる利点がある。
【0127】
(h)その他
なお、上述した実施形態に関わらず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
また、各実施形態が開示されていれば、当業者によって製造することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上のように、本発明の光デバイスは、WDM光伝送システムを実現する際に有用であり、特に波長別に光路を切り替える波長選択光スイッチ、および各波長の光レベルを均一化する光レベル調整器として用いる際に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
P(Pは自然数)個の第1サーキュレータと、
該第1サーキュレータからの各方路がそれぞれ接続されるP本の第1入出力導波路が一端に形成されるとともにN(Nは自然数)本の第2入出力導波路が他端に形成された第1導波路型回折格子と、
Q(Qは自然数)個の第2サーキュレータと、
該第2サーキュレータからの各方路がそれぞれ接続されるQ本の第3入力導波路が一端に形成されるとともにN本の第4入出力導波路が他端に形成された第2導波路型回折格子とをそなえるとともに、
上記の第1導波路型回折格子の第2入出力導波路と、第2導波路型回折格子の第4入出力導波路との間に、それぞれの導波路を伝搬する光の透過と反射を切り替えるためのN個の透過/反射スイッチが介装され、
かつ、上記の第1サーキュレータ,第1導波路型回折格子,透過/反射スイッチ,第2導波路型回折格子および第2サーキュレータが、縦列に配列されて構成されたことを特徴とする、光デバイス。
【請求項2】
上記の各透過/反射スイッチが、カンチレバー型ミラーにより構成されていることを特徴とする、請求項1記載の光デバイス。
【請求項3】
上記の第1導波路型回折格子と透過/反射スイッチとの間、あるいは上記の透過/反射スイッチと第2導波路型回折格子との間に、光可変減衰器が介装されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の光デバイス。
【請求項4】
M(Mは自然数)個のサーキュレータと、
該M個のサーキュレータからの各方路がそれぞれ接続されるM本の第1入出力導波路が一端に形成されるとともにN(Nは自然数)本の第2入出力導波路が他端に形成された導波路型回折格子と、
上記N本の第2入出力導波路からの光を反射させるとともに上記反射された光の光強度を調整しうる、N個の光強度調整回路と、
が縦列に配列されて構成されたことを特徴とする、光デバイス。
【請求項5】
上記の各光強度調整回路が、上記のN本の第2入出力導波路のうちの1本の導波路を2分岐する分岐導波路と、上記分岐導波路で2分岐された方路に一端が接続された2本の枝導波路と、上記各枝導波路の他端に形成された反射部材と、熱光学効果により上記各枝導波路を伝搬する各光について光路長差を調節しうるヒータと、からなるマッハツェンダ干渉回路により構成されたことを特徴とする、請求項4記載の光デバイス。
【請求項6】
上記の各光強度調整回路が、上記のN本の第2入出力導波路のうちの1本の導波路を2分岐する分岐導波路と、上記分岐導波路で2分岐された方路に一端が接続された2本の枝導波路と、上記各枝導波路の他端に形成された反射部材とからなるマッハツェンダ干渉回路により構成され、かつ、上記のマッハツェンダ干渉回路の反射部材が、上記の反射部材と分岐導波路との間でのそれぞれの光路長差を調節しうるピストン動作型ミラーにより構成されたことを特徴とする、請求項4記載の光デバイス。
【請求項7】
互いに並列する入力導波路および出力導波路が一端に形成されるとともに2×N(Nは自然数)本の入出力導波路が他端に形成された導波路型回折格子と、
隣接する上記2×N本の入出力導波路のうちの、該入力導波路からの光を伝搬するための一方の入出力導波路からの光について、該出力導波路から出射させるための光路となる他方の入出力導波路へ導入するとともに光強度を調整しうる、N個の光強度調整回路と、
が縦列に配列されて構成されたことを特徴とする、光デバイス。
【請求項8】
上記の各光強度調整回路が、該一方の入出力導波路からの光について、熱光学効果で枝間光路長差を調整することにより、光強度を調整しうるマッハツェンダ干渉回路と、該マッハツェンダ干渉回路で光強度が調整された光について該他方の入出力導波路へ導入されるように折り返す光回路と、により構成されたことを特徴とする、請求項7記載の光デバイス。
【請求項9】
上記の各光強度調整回路が、レンズおよびチルト型ミラーにより構成され、かつ、上記の各光強度調整回路を構成するチルト型ミラーは、ミラーアレイとして集積化されていることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか1項記載の光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−199099(P2009−199099A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139542(P2009−139542)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【分割の表示】特願2004−571856(P2004−571856)の分割
【原出願日】平成15年5月15日(2003.5.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】