説明

光トランシーバ

【課題】 光送受信モジュールを熟練を要することなく容易に取り付けることができ、伝送する信号の質の劣化を防止することができる光トランシーバを提供する。光ファイバが破断等することなく安定した光信号の送受信を行うことができる光トランシーバを提供する。
【解決手段】 光伝送線1を介して光信号を送受信する光送受信モジュールと、光送受信モジュールを接続してある回路基板31とを備える光トランシーバにおいて、光送受信モジュールは、光伝送線1を接続している部分と対向する方向に設けた第1のリードピン51、51、・・・と、光伝送線1を接続している部分から第1のリードピン51、51、・・・を望む方向と交叉する方向に設けた第2のリードピン52、52、・・・とを有し、第1のリードピン51、51、・・・は、第1のリードピン51、51、・・・の光送受信モジュールからの導出部の近傍にて回路基板31に接続してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を送受信する双方向光送受信モジュールを回路基板に固着してある光電/電光変換効率の高い光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、通信技術の急速な進展に伴い、信号の伝送速度の速い光通信が注目を浴びている。光信号を送受信する光トランシーバに光伝送線である光ファイバを接続する場合、光受信部のリードピン及び光送信部のリードピンの両方を備えた双方向光送受信モジュールを用いることが多い。
【0003】
従来の双方向光送受信モジュールは、本体部に、レンズ、受光素子、発光素子、前置増幅器及びコンデンサを含む電子回路等を有しており、本体部の一端に、光伝送線である光ファイバに取り付けられたフェルールが接続(挿入)される。また、本体部の他端からは、発光素子で光信号に変換する電気信号を入力する光送信部のリードピンが導出し、本体部の中央近傍の側面には、受光素子で受けた光信号が変換された電気信号を出力する光受信部のリードピンが導出している。(非特許文献1参照)
【0004】
上述した光送受信モジュールを用いた光通信は、例えば、従来、電気通信が利用されていたコンピュータのバックパネル間における通信、電話交換機間の通信等にも適用範囲が拡大しており、光送受信モジュールを回路基板に配設することが必要となってきている。この場合、光送受信モジュールの実装密度の向上、光送受信モジュールを備えた光トランシーバのコンパクト化等が重要な課題の1つとなっている。
【0005】
しかし、非特許文献1に開示されている光送受信モジュールは、光電変換率を高めるように光の結合効率を高める光軸合わせを行うため、光送受信モジュール1個毎に調芯を行う必要があり、製造される光送受信モジュール毎に、光送信部、光受信部、及び本体部の相対位置関係は微妙に相違する。これにより、光送信部から導出するリードピン、光受信部から導出するリードピンの相対位置も光送受信モジュール毎に相違しており、リードピンの実装時に、これらの相違を吸収しつつ回路基板へ取り付ける必要があることから、取り付けに相当の時間を要する、取り付け工程に熟練度が要求される等、製造コスト増加の要因となっている。また、発光素子は、熱により電光変換効率が低下する傾向がある。
【0006】
図9は、従来の光トランシーバでの光送受信モジュールを取り付けた状態を示す模式平面図である。図9では、回路基板91に光送受信モジュール本体93を装入し、光送受信モジュール93を固着する固着部材94を介して回路基板91に固着する。図10は、従来の固着部材94の一例を示す斜視図である。固着部材94の把持部95に光送受信モジュールを挟み込み、取り付け孔部96にネジ、タップビス等を挿入することにより回路基板91に固着する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】インフィネオン テクノロジー エージー(Infineon Tehnologies AG)、BIDIテストボード ユーザーズ ガイド(BIDI Test Board User's Guide)、ドイツ、S23481-A5159-51、2002年3月25日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来の光トランシーバでは、光送受信モジュールを回路基板91の表面(裏面)に固着することから、リードピンを端子接続位置に合わせて曲げ加工する必要があり、精度良く回路基板91上の端子に接続するためには、相当の熟練を要するという問題点があった。
【0009】
また、リードピンに曲げ加工を行うことにより、直線状のリードピンで接続する場合よりもリードピンの長さが長くなる。一般にリードピンの長さが長くなるほど、伝送される信号の質が劣化することから、特に500MHz以上の高速信号の場合、リードピンを可能な限り短くすることが重要となる。
【0010】
さらに、光伝送線である光ファイバは曲げ荷重に対する耐久力が小さく、所定の荷重を超えた曲げ荷重が付与された場合、破断、損傷等より、光信号の送受信を行うことができなくなるおそれも残されていた。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、光送受信モジュールを熟練を要することなく容易に取り付けることができ、伝送する信号の質の劣化を防止することができる光トランシーバを提供することを目的とする。
【0012】
また本発明は、光ファイバに外部から過度の曲げ荷重が付与された場合であっても、光ファイバが破断等することなく安定した光信号の送受信を行うことができる光トランシーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために第1発明に係る光トランシーバは、光伝送線を介して光信号を送受信する光送受信モジュールと、該光送受信モジュールを接続してある回路基板とを備える光トランシーバにおいて、前記光送受信モジュールは、前記光伝送線の延伸方向に設けた第1のリードピンと、前記光伝送線の延伸方向と交叉する方向に設けた第2のリードピンとを有し、前記第1のリードピンは、該第1のリードピンを基準として前記回路基板に接続してあることを特徴とする。
【0014】
また、第2発明に係る光トランシーバは、第1発明において、前記光送受信モジュールは、前記回路基板の表裏から挟持する挟持部材により前記回路基板に固着してあることを特徴とする。
【0015】
また、第3発明に係る光トランシーバは、第2発明において、前記光送受信モジュール及び前記回路基板を収納する筐体を有し、前記挟持部材は、合成樹脂部材を介して前記筐体に熱的に接続してあることを特徴とする。
【0016】
また、第4発明に係る光トランシーバは、第3発明において、前記筐体に前記光伝送線を導出する孔部を設けてあり、前記孔部の半径は、前記光伝送線の許容曲げ荷重に対応する曲率半径に沿って前記光伝送線が変形した場合の前記筐体近傍での変位よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
また、第5発明に係る光トランシーバは、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記光送受信モジュールは、光信号と電気信号とを相互に変換し、前記第1のリードピンは、光信号に変換する電気信号を入力する光送信部の端子であり、前記第2のリードピンは、光信号を変換して得た電気信号を出力する光受信部の端子であることを特徴とする。
【0018】
また、第6発明に係る光トランシーバは、第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記第2のリードピンは、フレキシブル基板を介して前記回路基板に接続してあることを特徴とする。
【0019】
第1発明では、光伝送線の延伸方向に設けた第1のリードピンと、光伝送線の延伸方向と交叉する方向に設けた第2のリードピンとを有し、第1のリードピンは、第1のリードピンを基準として導出部の近傍にて回路基板に接続する。すなわち、光送受信モジュールから導出している第1のリードピンの長さを短くすることにより、第1のリードピンの光送受信モジュールからの導出部及び第1のリードピンと回路基板との接続部の間の距離を短くすることができる。
【0020】
これにより、第1のリードピンの変形により光軸が変動する度合が小さくなることから光軸合わせがより容易となり、第1のリードピンが発熱による影響を受けにくくなることから、発熱量に左右されやすい光電/電光変換効率の劣化を未然に防止することが可能となる。
【0021】
また、第2発明では、光送受信モジュールは、回路基板の表裏から挟持する挟持部材により回路基板に固着することにより、固着する位置の微調整を容易に行うことができる。これにより、光送受信モジュールの固着位置の微調整を行うことで、容易に光軸合わせを行うことが可能となる。
【0022】
また、第3発明では、挟持部材は、合成樹脂部材を介して筐体に熱的に接続する。これにより、第1のリードピンに生じた発熱量は、挟持部材を介して筐体へと逃がすことができる。したがって、光送受信モジュールの光電/電光変換効率が発熱量により劣化するのを未然に防止することが可能となる。
【0023】
また、第4発明では、筐体に光伝送線を導出する孔部を設けてあり、孔部の半径が、光伝送線の許容曲げ荷重に対応する曲率半径に沿って光伝送線が変形した場合の筐体近傍での変位よりも大きいことにより、光伝送線である光ファイバは、孔部で屈曲することが無く、破断、損傷等により光信号の送受信を行うことができなくなる事態を未然に防止することが可能となる。
【0024】
また、第5発明では、第1のリードピンは、光信号に変換する電気信号を入力する光送信部の端子であり、第2のリードピンは、光信号を変換して得た電気信号を出力する光受信部の端子である。これにより、光受信部より発熱量の大きい光送信部につき、上述した構成により光電/電光変換効率の劣化を未然に防止することが可能となる。
【0025】
また、第6発明では、第2のリードピンは、フレキシブル基板を介して前記回路基板に接続してある。これにより、第1のリードピンを基準として光送受信モジュールを回路基板に接続した場合であっても、第2のリードピンの取り付け誤差をフレキシブル基板により吸収することができ、第2のリードピンを確実に回路基板に接続することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
第1発明によれば、光送受信モジュールから導出している第1のリードピンの長さを短くすることにより、第1のリードピンの光送受信モジュールからの導出部及び第1のリードピンと回路基板との接続部の間の距離を短くすることができる。これにより、第1のリードピンの長さを従来より短くすることができ、伝送する信号の質の劣化を防止することが可能となる。
【0027】
第2発明によれば、挟持部材は金属であることから電気的安定性に優れており、送信部側の信号が受信部側に回り込むことを防止することができる。また、光送受信モジュールを強固に固定することができ、耐振動性、耐衝撃性に優れる。さらに、回路基板側へ放熱を促すことができることから、発熱量に左右されやすい電光変換効率の劣化を未然に防止することが可能となる。これらの効果は、光送受信モジュールの表裏両側から挟持することにより、従来のように片側で固着している場合よりも多大な効果を奏する。
【0028】
第3発明によれば、挟持部材により、光送受信モジュールを回路基板に強固に固定することができ、筐体との間に合成樹脂(高分子)部材を保持した場合であっても、光送受信モジュールの特性を劣化させることなく保持することができる。また、発熱した熱量を筐体へと逃がすことができ、光送受信モジュールの電光変換効率が発熱量により劣化するのを未然に防止することも可能となる。
【0029】
第4発明によれば、孔部の半径が、光伝送線の許容曲げ荷重に対応する曲率半径に沿って光伝送線が変形した場合の筐体近傍での変位よりも大きいことにより、光伝送線である光ファイバは、孔部で屈曲することが無く、破断、損傷等により光信号の送受信を行うことができなくなる事態を未然に防止することが可能となる。
【0030】
第5発明によれば、第1のリードピンは、光信号に変換する電気信号を入力する光送信部の端子であり、第2のリードピンは、光信号を変換して得た電気信号を出力する光受信部の端子であることから、光送信部につき、上述した構成により発熱による電光変換効率の劣化を抑制することが可能となる。
【0031】
第6発明によれば、第1のリードピンを基準として光送受信モジュールを回路基板に接続した場合であっても、第2のリードピンの取り付け誤差をフレキシブル基板により吸収することができ、第2のリードピンを確実に回路基板に接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る光トランシーバに取り付ける光送受信モジュールの構成を示す斜視図であり、(b)は、光送信部側から見た正面図であり、(c)は、光受信部側から見た側面図である。
【図2】本発明に係る光送受信モジュール内の光伝送路を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光トランシーバでの、光送受信モジュールの取り付け状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る光トランシーバの挟持部材の一例を示す回路基板に直交する面での断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る光トランシーバのフレキシブルケーブルの一例を示す平面図である。
【図6】筐体の孔部と光送受信モジュールとの位置関係を示す光ファイバの延伸方向での断面図である。
【図7】筐体の孔部の直径と、筐体の外面及び光ファイバの光送受信モジュールの本体部からの導出部との距離との関係を模式的に示す回路基板に直交する面での断面図である。
【図8】光送受信モジュールと筐体との位置関係を示す部分拡大断面図である。
【図9】従来の光トランシーバでの光送受信モジュールを取り付けた状態を示す模式平面図である。
【図10】従来の固着部材の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。図1(a)は、本発明の実施の形態に係る光トランシーバに取り付ける光送受信モジュールの構成を示す斜視図であり、図1(b)は、光送信部側から見た正面図であり、図1(c)は、光受信部側から見た側面図である。図1(a)に示すように、光伝送線である光ファイバ1を取り付ける本体部2を中心として、光ファイバ1の延伸方向に光送信部3を、光ファイバ1の延伸方向と交叉する方向、すなわち本体部2の側面側に光受信部4を設けている。光送信部3は、図1(b)に示すように(第1の)リードピン51、51、・・・を数本、例えば3本、本体部2から導出しており、光受信部4は、図1(c)に示すように(第2の)リードピン52、52、・・・を数本、例えば5本、本体部2から導出している。
【0034】
図2は、本発明の実施の形態に係る光送受信モジュール内の光伝送路を示す図である。図2に示すように、本体部2を形成するパッケージ内には、薄膜を形成したビームスプリッタ21、送信光を発生するレーザダイオードからなる発光素子22、受信光を受光するフォトダイオード、フォトトランジスタ等からなる受光素子23、送受信光の共通光路に配置されている結合レンズ24、26を介して光結合してある光ファイバ導出部25を備えている。
【0035】
光信号の送信時には、発光素子22が発光した送信光がビームスプリッタ21を通過し、光ファイバ導出部25を介して、光ファイバ1から送信先へ伝送される。また、光信号の受信時には、光ファイバ1から光ファイバ導出部25を介して入射し、ビームスプリッタ21により反射された受信光を受光素子23が受信する。
【0036】
上述した光信号の送受信を確実に行うためには、ビームスプリッタ21、受光素子23、発光素子22、光ファイバ導出部25等の光軸を、光信号の送信時には、発光素子22から発光された送信光が光ファイバ導出部25に正確に入射するよう、光信号の受信時には、受信光が受光素子23に正確に入射するよう、それぞれ調整する必要がある。具体的には、発光素子22から送信光を発光させる、又は光ファイバ導出部25から受信光を受信する等の方法により、各部材について光軸合わせを行っている。このため、光送受信モジュールの組み立てには、相当の時間を要すると共に、完成品である光送受信モジュールのリードピン51、51、・・・及びリードピン52、52、・・・の本体部2に対する相対位置は、光軸の調整具合により個々の製品毎に3次元的に相違することになる。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態に係る光トランシーバでの、光送受信モジュールの取り付け状態を示す斜視図である。図3において、光送受信モジュールの光送信部3のリードピン51、51、・・・は、回路基板31上の端子へ直接半田付けしている。一方、光送受信モジュールの光受信部4のリードピン52、52、・・・は、可撓性を有するフレキシブルケーブル32を介して回路基板31へ半田付けしてある。
【0038】
すなわち、光送受信モジュールの位置合わせは、光送受信モジュールの光送信部3のリードピン51、51、・・・の回路基板31との接続部分までの長さにより微調整し、回路基板31の表裏両側から挟持部材33により本体部2の位置を固定する。本体部2の位置の固定には、挟持部材33に設けてある孔部にネジ、タップビス等を挿入し、表裏2枚の挟持部材33を締め付けることにより行う。
【0039】
なお、把持部材33が光送受信モジュールを保持する位置は、可能な限り光送信部3のリードピン51、51、・・・の近傍であることが好ましい。温度変化に伴い回路基板31が伸縮した場合であっても、把持部材33とリードピン51、51、・・・との距離が短いことから、伸縮により生じるストレスも小さくて済むからである。また、リードピン51、51、・・・の近傍を把持部材33で保持する場合、把持部材33は発光素子22の外側を把持することになり、発光素子22で発生した熱を把持部材33を介して外部へ放出しやすくなるというメリットも生じる。
【0040】
図4は、本発明の実施の形態に係る光トランシーバの挟持部材33の一例を示す回路基板31に直交する面での断面図である。図4の例では、2つの挟持部材33により中間部に形成される空間部36で、光送受信モジュールの本体部2を挟み、ネジ34を孔部に挿入して、対向する面からナット35を締めることにより、回路基板31に締結する。
【0041】
光送受信モジュールの光送信部3のリードピン51、51、・・・を半田付けする位置に応じて、光送受信モジュールの本体部2の固着位置は、光ファイバ1の延伸方向に前後する。したがって、光送受信モジュールの光受信部4のリードピン52、52、・・・の位置も光ファイバ1の延伸方向に前後する。光送受信モジュールの光受信部4のリードピン52、52、・・・の位置が光ファイバ1の延伸方向に前後した場合であっても、回路基板31と確実に接続することができるように、光送受信モジュールの光受信部4のリードピン52、52、・・・は、フレキシブルケーブル32を介して回路基板31と接続してあり、光送受信モジュールの固着位置が光ファイバ1の延伸方向に前後することによるリードピン52、52、・・・の位置の相違を、フレキシブルケーブル32により吸収する。
【0042】
図5は、本発明の実施の形態に係る光トランシーバのフレキシブルケーブル32の一例を示す平面図である。フレキシブルケーブル32は、例えば可撓性を有する合成樹脂製の基板61に、エッチング等により配線62をプリントしてあり、光受信部2のリードピン52、52、・・・をリードピン孔部63、63、・・・に挿入して半田付けする。また、回路基板31との接続端子64、64、・・・を回路基板31上に並列して配置してある接続端子に半田付けすることにより接続する。可撓部65は、光送受信モジュールの調芯による光送信部3と光受信部4との相対位置の相違に応じて撓み具合が大小する。したがって、光送受信モジュールの固着位置が光ファイバ1の延伸方向に前後、あるいは延伸方向を軸とする回転方向にずれることによりリードピン52、52、・・・の位置が変動した場合であっても、リードピン孔部63、63、・・・及び接続端子64、64、・・・での半田付けが剥離することはない。
【0043】
以上のような構成により、光受信部4より発熱による特性劣化が顕著な光送信部3側のリードピン51、51、・・・の光送受信モジュールの本体部2の付け根に近い位置、すなわちリードピン51、51、・・・の長さを短くして、500MHz以上の高速信号における信号の質を確保している。また、熟練の必要な曲げ加工も不要となる。さらに、光送受信モジュールの取り付け誤差に余裕があることから、光軸合わせを容易に行うことも可能となる。
【0044】
一方、回路基板31は、光送受信モジュールを固着した状態で筐体72に収納してある。光ファイバ1は、筐体に設けてある孔部から筐体72の外部へ導出されている。図6は、筐体72の孔部と光送受信モジュールとの位置関係を示す光ファイバの延伸方向での断面図である。
【0045】
光ファイバ1は、曲げによる曲率半径Rが略3cm以下になった場合、ファイバが破断、損傷等することにより、光信号を送受信することができない。そこで、従来、光送受信モジュールの光送信部3と対向する部分では、光ファイバ1の本体部2への取り付け部分を覆う合成樹脂製のブーツ71を備えており、光ファイバ1に曲げ荷重が付与された場合、所定の範囲の曲げ加重についてはブーツ71の伸縮、撓み、変形等により付与された曲げ荷重を吸収することができ、光ファイバ1が筐体72の孔部73で屈曲しないようにしてある。
【0046】
それに加えて、本実施の形態に係るトランシーバでは、光ファイバ1を筐体72の外部へ引き出した場合、筐体72の孔部73により光ファイバ1が屈曲しないように、筐体72の孔部73の直径Dを定めている。図7は、筐体72の孔部73の直径Dと、筐体72の外面及び光ファイバ1の光送受信モジュールの本体部2からの導出部との距離Lとの関係を模式的に示す回路基板31に直交する面での断面図である。図7は、両者の関係を明確にすべく、ブーツ71の記載を省略している。
【0047】
1’は、曲げによる曲率半径Rが略3cmである場合の光ファイバ1の変形状態を示している。筐体72の孔部73の直径Dは、光ファイバ1の変形状態1’で、光ファイバが孔部73により屈曲しない大きさであれば良い。したがって、直径Dは、曲率半径R及び距離Lを用いて(数1)のように表すことができる。
【0048】
(数1)
D>2×(R−(R2−L21/2
【0049】
これにより、光送受信モジュールを固着した場合に光ファイバ1が正常に機能することが可能な範囲内の曲げ荷重を付与された場合であっても、光ファイバ1は筐体72の孔部73に接触して屈曲することなく、筐体72の外部へ導出することができる。したがって、信頼性の高い光トランシーバを提供することが可能となる。
【0050】
また、筐体72の内面には、光送受信モジュールが筐体72に直接接触することを防止すべく、緩衝材として合成樹脂部材81を固着してある。図8は、光送受信モジュールと筐体72との位置関係を示す部分拡大断面図である。図8に示すように、回路基板31に挟持部材33により光送受信モジュールの本体部2を取り付けてあり、筐体72の内面に、緩衝材である合成樹脂部材81を貼付してある。
【0051】
光送受信モジュールを取り付けている挟持部材33の上部は、筐体72に収納した状態で、合成樹脂部材81と接触しており、弾性的に押圧されている。合成樹脂部材81は、一般に熱伝導性を有していることから、光送受信モジュールで発生した熱は、挟持部材33の上部から、合成樹脂部材81を介して筐体72へと伝導し、筐体72の外部へと放出される。
【0052】
すなわち、比較的発熱しやすい発光素子22を備えた光送信部3のリードピン51、51、・・・で発生した熱は、挟持部材33へと伝導し、合成樹脂部材81を介して筐体72へと伝導する。したがって、光送信部3のリードピン51、51、・・・に生じた熱は、挟持部材33を介して筐体72へと逃がすことができることから、光送受信モジュールの電光変換効率が発熱量により劣化するのを未然に防止することが可能となる。
【0053】
なお、上述した実施の形態において、光送受信モジュールは、光送信部3と光受信部4との配置位置が逆である構成であってもよい。すなわち、光ファイバ1を接続している部分と対向する方向に光受信部3を、光ファイバ1を接続している部分から光受信部3を望む方向と交叉する方向、すなわち本体部2の側面側に光送信部4を設ける構成でもよい。斯かる構成においても、実施の形態と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0054】
1 光ファイバ(光伝送線)
2 本体部
3 光送信部
4 光受信部
31 回路基板
51 (第1の)リードピン
52 (第2の)リードピン
72 筐体
73 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送線を介して光信号を送受信する光送受信モジュールと、該光送受信モジュールを接続してある回路基板とを備える光トランシーバにおいて、
前記光送受信モジュールは、前記光伝送線の延伸方向に設けた第1のリードピンと、前記光伝送線の延伸方向と交叉する方向に設けた第2のリードピンとを有し、
前記第1のリードピンは、該第1のリードピンを基準として前記回路基板に接続してあることを特徴とする光トランシーバ。
【請求項2】
前記光送受信モジュールは、前記回路基板の表裏から挟持する挟持部材により前記回路基板に固着してあることを特徴とする請求項1記載の光トランシーバ。
【請求項3】
前記光送受信モジュール及び前記回路基板を収納する筐体を有し、
前記挟持部材は、合成樹脂部材を介して前記筐体に熱的に接続してあることを特徴とする請求項2記載の光トランシーバ。
【請求項4】
前記筐体に前記光伝送線を導出する孔部を設けてあり、
前記孔部の半径は、前記光伝送線の許容曲げ荷重に対応する曲率半径に沿って前記光伝送線が変形した場合の前記筐体近傍での変位よりも大きいことを特徴とする請求項3記載の光トランシーバ。
【請求項5】
前記光送受信モジュールは、光信号と電気信号とを相互に変換し、前記第1のリードピンは、光信号に変換する電気信号を入力する光送信部の端子であり、前記第2のリードピンは、光信号を変換して得た電気信号を出力する光受信部の端子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光トランシーバ。
【請求項6】
前記第2のリードピンは、フレキシブル基板を介して前記回路基板に接続してあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光トランシーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−223346(P2009−223346A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161495(P2009−161495)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【分割の表示】特願2004−314496(P2004−314496)の分割
【原出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】