光ビーム走査光学装置
【課題】用いる偏向器や走査光学系の種類、装置の設計誤差等に起因して、被走査面上での主走査方向1ライン内でビーム径が主走査方向のみまたは副走査方向のみに変化する場合でも、そのビーム径を均一にして画質を向上させる。
【解決手段】光束幅規制素子では、遮光部材により、入射するレーザ光の光束幅を例えば副走査方向についてのみ規制する。そして、液体レンズにおいて、電極に印加する電圧を主走査方向1ライン内で変化させることにより、遮光性液体の開口部を透過するレーザ光の光束幅を主走査方向1ライン内で変化させる。これにより、感光体上での主走査方向1ラインの各位置でのビーム径を例えば主走査方向にのみ変化させることができ、主走査方向1ライン内でビーム径を均一にすることが可能となる。
【解決手段】光束幅規制素子では、遮光部材により、入射するレーザ光の光束幅を例えば副走査方向についてのみ規制する。そして、液体レンズにおいて、電極に印加する電圧を主走査方向1ライン内で変化させることにより、遮光性液体の開口部を透過するレーザ光の光束幅を主走査方向1ライン内で変化させる。これにより、感光体上での主走査方向1ラインの各位置でのビーム径を例えば主走査方向にのみ変化させることができ、主走査方向1ライン内でビーム径を均一にすることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデジタル複写機やレーザプリンタに適用され、光源からの光ビームを液体光学素子を介して偏向器に導き、偏向器にて偏向して被走査面を走査する光ビーム走査光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、1種または2種の液体の界面形状を変化させることにより、その界面を透過する光ビームの透過光量を制御したり、光束幅を可変する液体光学素子が様々な分野で用いられている。例えば特許文献1〜3では、2種の液体を有する液体光学素子を撮像装置に適用し、これを可変NDフィルタ等の各種のフィルタや絞りとして機能させることが開示されている。
【0003】
また、例えば特許文献4および5では、1種の液体を有する液体光学素子をレーザ走査光学装置に適用した例が開示されている。これらの装置では、電圧印加によって液体の位置および界面の形状を制御することで、上記界面を透過する光源からのレーザ光の被走査面上での集光位置のずれやフォーカスずれを補正するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−356792号公報
【特許文献2】特開2001−228307号公報
【特許文献3】特開2006−250967号公報
【特許文献4】特開2006−251343号公報
【特許文献5】特開2006−251513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーザ走査光学装置においては、光束幅の可変はメカニカルなシャッタ等を用いて行うのが一般的であったが、これでは高速な可変に限界がある。しかし、上記した撮像装置のように液体光学素子を絞り代わりに用いることで、メカニカルなシャッタ等を不要にできるとともに、光束幅の高速な可変にも対応できると考えられる。
【0006】
一方、被走査面の走査に用いる偏向器として、例えばレゾナントスキャナを用いると、被走査面を等速で走査すべく、走査レンズとしてはArcSin特性を有するものが用いられるが、そのような走査レンズを介して被走査面を走査すると、後述する理由により、被走査面上の主走査方向の両端部でビーム径が主走査方向に太る。
【0007】
しかし、レゾナントスキャナおよびArcSin特性を有する走査レンズを用いる構成において、上記の液体光学素子を絞り代わりに用いる構成を単純に適用しただけでは、上記液体光学素子にて主走査方向と副走査方向とで光束幅を同じように可変し、被走査面上で主走査方向と副走査方向とで同じビーム径に可変することになるため、主走査方向の両端部にて主走査方向に太ったビーム径を例えば真円に補正することはできない。その結果、主走査方向の1ライン内でビーム形状を均一にして画質を向上させることができないという問題が生ずる。
【0008】
なお、主走査方向の1ライン内でビーム形状が主走査方向のみまたは副走査方向のみに変化することによって画質が低下する問題は、偏向器としてレゾナントスキャナ以外のものを用いた場合でも、例えば装置の設計誤差に起因して同様に起こり得ることである。
【0009】
以下、偏向器としてレゾナントスキャナを用い、ArcSin特性を有する走査レンズを介して被走査面を走査したときに、主走査方向の両端部でビーム径が太る理由について説明する。
【0010】
まず、偏向器としてポリゴンミラーを用い、走査レンズとしてfθレンズを用いた場合の偏向角とビーム径との関係について説明する。
【0011】
ポリゴンミラーでの偏向角をθ(°)、角速度をk/2(°/s)、時間をt(s)とすると、これらの間には以下の式(1)の関係が成り立つ。
θ=kt ・・・(1)
したがって、偏向角θの単位時間当たりの変化量は、式(1)をtで微分して以下の式(2)のようになる。
∂θ/∂t=k ・・・(2)
【0012】
一方、偏向角θ=0において、被走査面上での単位時間当たりの走査幅ΔL0は、焦点距離をf0として、以下の式(3)のように表される。
ΔL0=f0×k ・・・(3)
また、画像領域最大偏向角をθMAXとしたとき、被走査面上での単位時間当たりの走査幅ΔLMAXは、焦点距離をfMAXとして以下の式(4)のように表される。
ΔLMAX=fMAX×k/cosθMAX ・・・(4)
また、走査レンズとしてfθレンズを用いた等速書き込みであるから、以下の式(5)が成り立つ。
ΔL0=ΔLMAX ・・・(5)
よって、式(3)(4)(5)より、以下の式(6)が成り立つ。
fMAX=f0×cosθMAX ・・・(6)
【0013】
一方、被走査面上で各偏向角θの主光線に垂直な面内でのFナンバーを示すFNO(θ)は、偏向角θ=0でのFNOをFNO(0)として、式(6)より、以下の式(7)のように表される。
FNO(θ)=FNO(0)×cosθ ・・・(7)
また、各偏向角θの主光線に垂直な面内でのビーム径d⊥(θ)はFNO(θ)に比例し、被走査面上の各位置での主走査方向のビーム径d(θ)は、以下の式(8)のように表される。
d(θ)=d⊥(θ)/cos(θ) ・・・(8)
式(7)(8)より、偏向角θ=0でのビーム径をd(0)とすると、以下の式(9)が得られる。
d(θ)=d(0) ・・・(9)
よって、ポリゴンミラーを使った等速走査では、被走査面上での主走査方向のビーム径d(θ)は偏向角θによらず一定であることがわかる。
【0014】
次に、偏向器としてレゾナントスキャナを用い、走査レンズとしてf・ArcSinレンズを用いた場合の偏向角とビーム径との関係について説明する。
【0015】
レゾナントスキャナの可能な最大偏向角をAとすると、時間tでの偏向角θ(t)は、以下の式(10)のように表される。
θ(t)=A×sin(k×t) ・・・(10)
したがって、単位時間当たりの偏向角θの変化量は、式(10)をtで微分して以下の式(11)のように表される。
∂θ(t)/∂t=A×k×cos(k×t) ・・・(11)
【0016】
一方、偏向角θ=0において、被走査面上での単位時間当たりの走査幅ΔL0は、焦点距離をf0として、以下の式(12)のように表される。
ΔL0=f0×A×k ・・・(12)
また、画像領域最大偏向角をθMAXとし、その時間をtMAX、としたとき、被走査面上での単位時間当たりの走査幅ΔLMAXは、焦点距離をfMAXとして以下の式(13)のように表される。
ΔLMAX=fMAX×A×k×cos(k×tMAX)/cosθMAX ・・・(13)
また、走査レンズとしてf・ArcSinレンズを用いた等速書き込みであるから、以下の式(14)が成り立つ。
ΔL0=ΔLMAX ・・・(14)
よって、式(12)(13)(14)より、以下の式(15)が成り立つ。
fMAX=f0×cosθMAX/cos(k×tMAX) ・・・(15)
【0017】
一方、被走査面上で各偏向角θの主光線に垂直な面内でのFNO(θ)は、偏向角θ=0でのFNOをFNO(0)として、式(15)より、以下の式(16)のように表される。
FNO(θ)=FNO(0)×cosθ/cos(k×t) ・・・(16)
式(8)(16)より、以下の式(17)が得られる。
d(θ)=d(0)/cos(k×t) ・・・(17)
式(10)(17)より、以下の式(18)が得られる。
d(θ)=d(0)/(1−(θ/A)2)1/2 ・・・(18)
【0018】
よって、式(18)より、レゾナントスキャナを使った等速走査においては、被走査面上での主走査方向のビーム径d(θ)は、偏向角θが大きくなるにつれて大きくなることがわかる。例えば、レゾナントスキャナの最大偏向角θMAXを30度と仮定したとき、ポリゴンミラーとレゾナントスキャナとの両者において、偏向角と被走査面上での主走査方向のビーム径との関係は、図14に示すようになる。
【0019】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、用いる偏向器や走査光学系の種類、装置の設計誤差等に起因して、被走査面上での主走査方向1ライン内でビーム径が主走査方向のみまたは副走査方向のみに変化する場合でも、そのビーム径を均一にして画質を向上させることができる光ビーム走査光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の光ビーム走査光学装置は、少なくとも1つの光源と、前記光源が発した光ビームを偏向器に導く光源光学系と、前記光源光学系からの光ビームを偏向する偏向器と、前記偏向器にて偏向された光ビームを被走査面上に集光する走査光学系と、を備えた光ビーム走査光学装置において、前記光源光学系は、入射する光ビームを略平行光に変換する変換素子と、入射する光ビームの光束幅を規制する光束幅規制素子とを有しており、前記光束幅規制素子は、主走査方向と副走査方向とのうちでどちらか一方についてのみ、入射する光ビームの光束幅を規制する規制部材と、透光性液体および遮光性液体からなる2種の液体の界面の形状を印加電圧に応じて変化させるとともに、その界面形状の変化に応じて、遮光性液体に形成される開口部の大きさを変化させることにより、前記開口部を透過する光ビームの光束幅を変化させる液体光学素子とを有していることを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、光源からの光ビームは、光源光学系の変換素子(例えばコリメータレンズ)にて略平行光に変換され、光束幅規制素子にてその光束幅が規制された後、偏向器に導かれる。偏向器に入射した光ビームは、そこで偏向された後、走査光学系を介して被走査面上に集光される。
【0022】
ここで、光束幅規制素子では、規制部材により、入射する光ビームの光束幅が主走査方向と副走査方向とのうちでどちらか一方についてのみ規制される。そして、液体光学素子において、透光性液体および遮光性液体の界面形状の変化に応じて遮光性液体の開口部の大きさを変化させることにより、その開口部を透過する光ビームの光束幅が変化する。これにより、光束幅規制素子に入射する光ビームの光束幅を主走査方向または副走査方向のどちらか一方向に可変して出射することができ、光ビームの被走査面上でのビーム径を主走査方向または副走査方向のどちらか一方向に可変することができる。
【0023】
したがって、例えば、用いる偏向器および走査光学系の種類や装置の設計誤差等に起因して、光ビームの被走査面上でのビーム径が主走査方向または副走査方向のどちらか一方向に変化する場合でも、そのビーム径を均一にすることができ、画質を向上させることができる。
【0024】
本発明の光ビーム走査光学装置において、透光性液体および遮光性液体のうちの一方は導電性液体であり、他方は一方と不混和な絶縁性液体であり、前記液体光学素子は、さらに、前記2種の液体を収容するとともに、入射する光ビームを透過させる液体収容器と、前記液体収容器内で導電性液体に接触して設けられる第1の電極と、前記液体収容器内で導電性液体および絶縁性液体と絶縁層を介して設けられる第2の電極と、前記第1の電極および前記第2の電極に電圧を印加する電圧印加手段とを有している構成であってもよい。
【0025】
この構成によれば、第1および第2の電極への電圧印加前は、導電性液体と第2の電極との間、導電性液体と絶縁性液体との間、絶縁性液体と第2の電極との間に生じる3つの界面張力のバランスで、導電性液体と絶縁性液体との界面の形状が決まっている。電圧印加手段によって第1および第2の電極に電圧を印加すると、導電性液体と第2の電極との界面に電荷が生じ、この電荷により生じる力がさらに加わることによって、2液の界面形状が変化し、それに応じて遮光性液体(導電性液体または絶縁性液体)に形成される開口部の大きさも変化する。したがって、上記構成の液体光学素子を上述した規制部材と組み合わせて用いることにより、光ビームの光束幅を主走査方向または副走査方向のどちらか一方向についてのみ変化させることが可能となる。
【0026】
本発明の光ビーム走査光学装置において、前記電圧印加手段は、前記第1の電極および前記第2の電極に印加する電圧を主走査方向1ライン内で変化させることにより、前記開口部を透過する光ビームの光束幅を主走査方向1ライン内で変化させるようにしてもよい。
【0027】
この場合、遮光性液体の開口部を透過して被走査面に集光される光ビームの被走査面上でのビーム径を、主走査方向1ライン内で変化させることができる。したがって、例えば、用いる偏向器および走査光学系の種類や装置の設計誤差等に起因して、被走査面上での主走査方向1ライン内でビーム径が主走査方向または副走査方向のどちらか一方向に変化する場合でも、主走査方向1ライン内の各位置ごとにビーム径を均一に補正することができる。
【0028】
本発明の光ビーム走査光学装置は、被走査面上における主走査方向の走査開始のタイミングを検出するとともに、その検出結果に基づいて、前記光源からの光ビームの出射を制御するタイミング検出手段をさらに備え、前記タイミング検出手段は、さらに、前記検出結果に基づいて、前記液体光学素子の前記界面の形状変化によって前記開口部の大きさを変化させるタイミングを制御してもよい。
【0029】
このように、タイミング検出手段を光源の制御手段としてだけでなく、液体光学素子の制御手段としても用いることにより、光源および液体光学素子のそれぞれに対応して別々の制御手段を設ける必要がなくなる。これにより、装置の構成を簡素化することができ、また、装置のコストを低減することも可能となる。
【0030】
本発明の光ビーム走査光学装置において、前記偏向器は、往復振動型の偏向器であることが望ましい。往復振動型の偏向器は、光ビームの偏向をミラー1枚で行うことができるので、回転多面鏡(ポリゴンミラー)を用いた場合のような面間誤差の問題が全く無い。また、回転多面鏡に比べて、偏向器の発熱量、消費電力、騒音が小さい。特に、装置内部で温度上昇が起こると、樹脂の歪みで素子の位置や光学特性が変化し、所望の作像を行うことができなくなるが、往復振動型の偏向器は発熱量が小さいので、所望の作像を安定して行うことが可能となる。
【0031】
本発明の光ビーム走査光学装置において、前記規制部材は、入射する光ビームの光束幅を副走査方向についてのみ規制し、前記液体光学素子は、被走査面上の主走査方向中央部に比べて主走査方向両端部に向かう光ビームほど光束幅が広がるように、2種の液体の界面の形状を変化させて前記開口部の大きさを変化させるようにしてもよい。
【0032】
光ビームの光束幅は、規制部材によって副走査方向について規制されるので、液体光学素子にて開口部の大きさを変化させて光ビームの光束幅を広げても、光束幅規制素子から出射される光ビームの光束幅としては、副走査方向には変化せず、主走査方向にのみ広がる。したがって、このように液体光学素子にて光ビームの光束幅を広げることにより、被走査面上でのビーム径を主走査方向にのみ狭めることができる。
【0033】
よって、被走査面上の主走査方向中央部に比べて主走査方向両端部に向かう光ビームほど光束幅を広げることにより、被走査面上の主走査方向中央部から両端部に向かうにつれて本来なら主走査方向に次第に太るビーム径を主走査方向にのみ狭め、主走査方向1ライン内でビーム径を確実に均一にすることができる。その結果、画質を確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、光束幅規制素子に入射する光ビームの光束幅を主走査方向または副走査方向のどちらか一方向にのみ変化させて、光ビームの被走査面上でのビーム径を主走査方向または副走査方向のどちらか一方向にのみ変化させることができる。これにより、用いる偏向器および走査光学系の種類や装置の設計誤差等に起因して、被走査面上にてビーム径が主走査方向または副走査方向のどちらか一方向に変化する場合でも、そのビーム径を均一に補正することができ、画質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、主走査方向は、後述する感光体8の軸方向および画像幅方向に対応し、副走査方向は、主走査方向に垂直な方向および紙の通紙方向に対応するものとする。
【0036】
図2は、本実施形態のレーザ走査光学装置(光ビーム走査光学装置)の概略の構成を示す説明図である。このレーザ走査光学装置は、光源1と、光源光学系2と、レゾナントスキャナ3と、走査光学系4と、反射ミラー5と、同期センサ6と、制御部7と、感光体8とを有して構成されている。光源1、光源光学系2、レゾナントスキャナ3、走査光学系4、反射ミラー5および同期センサ6は、筐体9の内部に設けられている。
【0037】
光源1は、光ビームとしてのレーザ光を出射する例えばレーザダイオードで構成されている。この光源1は、カラープリントに対応すべく、異なる波長に対応して複数設けられていてもよい。
【0038】
光源光学系2は、光源1が発したレーザ光をレゾナントスキャナ3に導く光学系であり、コリメータレンズ2aと、光束幅規制素子2bとで構成されている。コリメータレンズ2aは、光源1からのレーザ光を略平行光に変換する変換素子である。光束幅規制素子2bは、コリメータレンズ2aを介して入射する光源1からのレーザ光の光束幅を規制するものであるが、その詳細については後述する。
【0039】
なお、本実施形態では、光束幅規制素子2bは、コリメータレンズ2aに対して光源1とは反対側の光路上に配置されている。これは、光束幅規制素子2bの後述する液体レンズ30(図5、図6参照)自体は平行平板と同等に扱われるため、収差補正上有利となるからである(収差の劣化を回避できるからである)。しかし、光束幅規制素子2bをコリメータレンズ2aに対して光源1側の光路上に配置することも可能である。この場合は、光源1が載置される基板と液体レンズ30の制御基板とを近くに配置することが可能となり、これによって配線の引き回しなどが簡素化できるというメリットがある。ただし、この場合は、液体レンズ30による収差劣化をコリメータレンズ2aにて補正しておく必要がある。
【0040】
レゾナントスキャナ3は、光源光学系2から出射されたレーザ光を主走査方向に偏向する往復振動型の偏向器であるが、その詳細については後述する。
【0041】
走査光学系4は、レゾナントスキャナ3にて偏向されたレーザ光を被走査面である感光体8上に集光する走査レンズで構成されている。上記のレゾナントスキャナ3は後述するようにsin振動するため、走査光学系4はArcSin特性を有している。これにより、レゾナントスキャナ3にて偏向されたレーザ光で感光体8上を主走査方向に等速走査することが可能となる。
【0042】
反射ミラー5は、レゾナントスキャナ3にて偏向され、走査光学系4を介して同期センサ6に向かうレーザ光の光路を反射によって折り曲げるミラーである。
【0043】
同期センサ6は、レゾナントスキャナ3にて偏向されたレーザ光を受光したときに、感光体8における主走査方向の走査開始のタイミングを検知し、その検知信号を制御部7に出力するSOS(Start Of Scan)検出センサである。制御部7は、同期センサ6から送られる信号に基づいて光源1からのレーザ光の出射を制御するものである。したがって、同期センサ6と制御部7とで、主走査方向の走査開始タイミングを検出するとともに、その検出結果に基づいて光源1からのレーザ光の出射を制御するタイミング検出手段10が構成されている。
【0044】
上記の構成において、光源1が発したレーザ光は、光源光学系2のコリメータレンズ2aにて略平行光に変換され、光束幅規制素子2bにて光束幅を規制された後、レゾナントスキャナ3に入射し、そこで感光体8の方向に偏向される。このとき、レゾナントスキャナ3にて偏向されたレーザ光が走査光学系4および反射ミラー5を介して同期センサ6に入射し、同期センサ6からの信号が制御部7に入力されると、制御部7は、感光体8上の主走査方向の書き込み開始位置から画像(静電潜像)が書き込まれるように、光源1からのレーザ光の出射を制御する。レゾナントスキャナ3の往復振動により、レゾナントスキャナ3に入射したレーザ光は感光体8上を主走査方向に偏向、走査され、これによって主走査方向1ライン(例えば数kHz程度)の画像の書き込みが行われるとともに、各ラインごとに走査方向が反転しながら画像の書き込みが行われる。
【0045】
次に、レゾナントスキャナ3の詳細について説明する。
図3は、レゾナントスキャナ3の概略の構成を示す斜視図である。レゾナントスキャナ3は、薄板状の基板11と、その基板11上に配置されるミラー12および駆動コイル13と、基板11と空隙を介して配置される2つの永久磁石14・14とを有して構成されている。
【0046】
基板11において互いに対向する2辺には、ミラー12の回転軸Aに沿う方向にトーションバー11aが突出してそれぞれ設けられている。2つのトーションバー11a・11aは、図示しない支持部にて支持されている。ミラー12は、基板11のほぼ中央に配置されており、駆動コイル13は、このミラー12を基板11上で取り囲むように配線されている。永久磁石14・14は、一方がN極で他方がS極の極性を有しており、N極からS極に向かう磁界を駆動コイル13が横切るように、基板11におけるトーションバー11a・11aが設けられていない他の2辺とそれぞれ空隙を介して対向するように配置されている。
【0047】
この構成では、駆動コイル13にa方向から電流を流すと、その電流が磁界を横切って流れることにより、基板11には回転軸Aを中心に回転しようとする力(ローレンツ力)が働き、基板11とともにミラー12が所定角度だけ例えばP方向に回転する。そして、駆動コイル13に流す電流をゼロにすると、トーションバー11a・11aの復元力により、基板11とともにミラー12がQ方向に回転して元の位置に戻る。続いて、駆動コイル13に上記とは逆方向のb方向から電流を流すと、基板11とともにミラー12が所定角度だけQ方向に回転する。
【0048】
以降、この動作を繰り返すことにより、ミラー12は、図4に示すように、時間経過とともにミラー角度がsinカーブを描いて変化するように振動する。本実施形態では、図4のsinカーブにおいてほぼリニアな部分(図中の太線部分)の角度範囲を使って、感光体8に画像を書き込むようにしている。
【0049】
このように、往復振動型のレゾナントスキャナ3は、1枚のミラー12の振動によってレーザ光の偏向を行うので、ポリゴンミラーを用いた場合のような面間誤差の問題が全く無い(面倒れ補正を考慮する必要が全く無い)。また、装置内部で温度上昇が起こると、樹脂の歪みで素子の位置や光学特性が変化し、所望の作像を行うことができなくなるが、レゾナントスキャナ3は、ポリゴンミラーに比べて発熱量が少なく、この点では非常に有利となる。また、レゾナントスキャナ3は、消費電力が少なく、騒音が小さいという利点も有している。
【0050】
次に、光束幅規制素子2bの詳細について説明する。
図5は、光束幅規制素子2bの概略の構成を示す断面図および後述する遮光部材20の光入射側からの平面図である。同図に示すように、光束幅規制素子2bは、遮光部材20と、液体レンズ30とで構成されている。
【0051】
遮光部材20は、主走査方向と副走査方向とのうちでどちらか一方についてのみ、光源1からのレーザ光の光束幅を規制する規制部材であり、本実施形態では、副走査方向よりも主走査方向に長い開口部20aを有する薄板状のスリットで構成されている。したがって、遮光部材20にレーザ光が入射すると、そのレーザ光は副走査方向についてのみ、その光束幅が規制されて開口部20aを透過し、液体レンズ30に入射する。
【0052】
なお、本実施形態では、遮光部材20は液体レンズ30の後述する遮光性液体側、すなわち、光束幅を決める側に配置されているが、透光性液体側に配置されてもよい。ただし、光束幅を決める側に遮光部材20を配置するほうが、液体レンズ30に入射するゴースト光を効果的に遮光して、ゴースト光の光束幅への影響を確実に低減できる点で有利である。
【0053】
液体レンズ30は、透光性液体および遮光性液体からなる2種の液体の界面の形状を印加電圧に応じて変化させることにより、その界面の形状を変化させる液体光学素子である。以下、液体レンズ30の詳細について説明する。
【0054】
図6は、液体レンズ30の概略の構成を示す断面図である。液体レンズ30は、導電性液体31と、絶縁性液体32と、液体収容器33と、電極34・35と、絶縁層36と、電圧印加手段37とを含んで構成されている。
【0055】
導電性液体31は、例えば無機塩の水溶液や有機液体など、それ自身が導電性を有する液体や、イオン成分を付加することによって導電性を有する液体であり、例えば食塩水を用いることができる。絶縁性液体32は、例えばシリコーンオイルやパラフィンオイルなど、導電性液体と混合せず、絶縁性を有する液体である。
【0056】
導電性液体31には、遮光性材料として例えばカーボンブラックが含有されており、絶縁性液体32には遮光性材料は含有されていない。この結果、導電性液体31は遮光性液体を構成し、絶縁性液体32は透光性液体を構成している。なお、後述する図9(a)(b)に示すように、絶縁性液体32にカーボンブラックを含ませて遮光性液体を構成する一方、導電性液体31を透光性液体としてもよい。
【0057】
また、図6の例では、遮光性液体である導電性液体31には、導電性液体31と絶縁性液体32との界面Bの形状変化に応じて大きさが変化する開口部31aが形成されている。この開口部31aは、後述する対称軸となる軸Cを中心に開口しており、開口部31aを介して絶縁性液体32と液体収容器33の後述する窓部33aとが接触している。なお、開口部31aは、界面Bの形状変化の仕方(電極34・35への印加電圧の大きさ)、導電性液体31および絶縁性液体32の材料や体積比等によっては、大きさがゼロ、すなわち消滅する場合もある。
【0058】
液体収容器33は、導電性液体31および絶縁性液体32を収容する容器である。液体収容器33内では、導電性液体31と絶縁性液体32との界面Bは、軸対称(回転対称)で、かつ、光入射側に凸となるように形成されており、その対称の軸Cの方向において例えば光入射側に導電性液体31が収容され、光射出側に絶縁性液体32が収容されている。また、液体収容器33における光入射側および光射出側の窓部33a・33bは、液体収容器33に入射する光源1からのレーザ光を透過させる透光性材料で形成されている。なお、液体収容器33における他の部位が透光性材料で形成されていても勿論構わない。
【0059】
電極34・35は、ともに軸Cを中心軸とする円筒形で形成されており、その内側(中心軸側)に上記の導電性液体31および絶縁性液体32が収容されている。電極34(第1の電極)は、液体収容器33内で導電性液体31に接触して設けられている。一方、電極35(第2の電極)は、液体収容器33内で導電性液体31および絶縁性液体32と絶縁層36を介して設けられている。これらの電極34・35には電圧印加手段37が接続されており、電圧印加手段37からの電圧が印加される。
【0060】
ここで、上記構成の液体レンズ30において、界面Bの形状が変化する原理、および界面Bの形状変化に伴う開口部31aの大きさの変化について説明する。
【0061】
図7(a)は、図6の液体レンズ30のD部に対応し、電極34・35への電圧印加前の界面Bの形状を模式的に示す説明図である。なお、同図(a)において、γSWは、導電性液体31と電極35との間に働く界面張力(mN/m)を示し、γOWは、導電性液体31と絶縁性液体32との間に働く界面張力(mN/m)を示し、γSOは、絶縁性液体32と電極35との間に働く界面張力(mN/m)を示し、θは、電極35に対する絶縁性液体32の接触角度(°)を示す。
【0062】
電圧印加手段37による電極34・35への電圧印加前においては、これら3つの界面張力γSW、γOW、γSOと接触角度θとの間には、いわゆるYoung-Laplaceの方程式から以下の関係式が成り立つ。したがって、以下の関係式を満たすように界面Bの形状が決まる。
cosθ=(γSW−γSO)/γOW
【0063】
一方、電圧印加手段37によって電極34・35に電圧を印加すると(電位差を与えると)、図7(b)に示すように、導電性液体31と電極35との界面に電荷が生じ、この電荷により生じる力Πがさらに加わることによって、界面Bの形状が変化する。ここで、Π、およびcosθは、以下の式で表される。なお、εは絶縁層36の誘電率を示し、ε0は真空誘電率(F/m)を示し、eは絶縁層36の厚さ(m)を示し、Vは印加電圧(V)を示す。
Π =(1/2)・(ε・ε0/e)・V2
cosθ=(γSW−γSO)/γOW−Π
=(γSW−γSO)/γOW−(1/2)・(ε・ε0/e)・V2
【0064】
つまり、電極34・35に電圧を印加すると、電圧印加前に比べてθが大きくなるように界面Bの形状が変化する。特に、電極34・35が上述のように円筒形で形成されている場合には、電極34・35に電圧を印加する前後で、界面Bの形状は軸対称のまま変化する。そして、そのような界面Bの形状変化に応じて、開口部31aの大きさも円形のまま変化する。
【0065】
図8(a)は、電極34・35への電圧印加前における液体レンズ30の断面図および導電性液体31の光入射側からの平面図を示し、図8(b)は、電極34・35への電圧印加後における液体レンズ30の断面図および導電性液体31の光入射側からの平面図を示す。これらの図に示すように、電極34・35への電圧印加による界面Bの形状変化によって、開口部31aの大きさは電圧印加前よりも電圧印加後で小さくなる。その結果、開口部31aを透過するレーザ光の光束幅は、電圧印加前のD1(mm)から電圧印加後にはD2(mm)へと小さくなる。
【0066】
このように、液体レンズ30においては、上述した構成により、界面Bの形状を印加電圧に応じて変化させるとともに、その界面Bの形状変化に応じて開口部31aの大きさを変化させることにより、開口部31aを透過するレーザ光の光束幅を変化させることが可能となる。
【0067】
特に、上記構成の液体レンズ30を、上述した遮光部材20(図5参照)と組み合わせて用いることにより、遮光部材20にて副走査方向の光束幅が規制されて液体レンズ30に入射するので、遮光部材20の開口部20a(図5参照)の副走査方向の幅よりも液体レンズ30の開口部31aの副走査方向の幅が狭くならない限り、液体レンズ30から出射されるレーザ光の光束幅が副走査方向に変化することはなく、光束幅規制素子2b全体から出射されるレーザ光の光束幅を主走査方向についてのみ変化させることが可能となる。
【0068】
なお、遮光部材20が液体レンズ30に対して光射出側(絶縁性液体32側)に配置される場合でも、液体レンズ30の開口部31aを透過したレーザ光は遮光部材20によって副走査方向の光束幅が規制されるので、開口部20aの副走査方向の幅よりも開口部31aの副走査方向の幅が狭くならない限り、光束幅規制素子2bから出射されるレーザ光としては、その光束幅を主走査方向についてのみ変化させることが可能となる。
【0069】
また、図6の液体レンズ30では、図8(a)(b)に示すように、電圧印加前(電源オフの状態)と電圧印加後(界面Bの形状の最大変化時)とで界面Bの形状変化を小さくすることができるので、消費電力を小さく抑えることが可能となる。
【0070】
ところで、図9(a)(b)は、液体レンズ30と同等の機能を有する液体レンズ30’の構成を示すものであって、図9(a)は、電極34・35への電圧印加前における液体レンズ30’の断面図および絶縁性液体32の光射出側からの平面図を示し、図9(b)は、電極34・35への電圧印加後における液体レンズ30’の断面図および絶縁性液体32の光射出側からの平面図を示す。
【0071】
液体レンズ30’では、導電性液体31を透光性液体で構成している一方、絶縁性液体32を遮光性液体で構成している。つまり、絶縁性液体32に遮光性材料として例えばカーボンブラックが含有されている。また、導電性液体31および絶縁性液体32の界面Bは、軸対称で、かつ、光射出側に凸となるように形成されている。
【0072】
また、液体レンズ30’においては、電極34・35への電圧無印加時には遮光性液体である絶縁性液体32に開口部が形成されず、電極34・35への電圧印加時には上述した開口部31aと同様の開口部32aが絶縁性液体32に形成されるように、導電性液体31および絶縁性液体32の材料や体積比等が選定されている。この開口部32aは、上述した開口部31aと同様に、電極34・35への電圧印加によって界面Bの形状が変化し、その界面形状の変化に応じてその大きさが変化する。特に、液体レンズ30’では、電極34・35への印加電圧が高くなるほど、電極35に対する絶縁性液体32の接触角度θが大きくなることによって、開口部32aの形状は大きくなる方向に変化する。
【0073】
したがって、このような液体レンズ30’の構成であっても、界面Bの形状を印加電圧に応じて変化させるとともに、その界面Bの形状変化に応じて開口部32aの大きさを変化させることにより、開口部32aを透過するレーザ光の光束幅を変化させることが可能となる。その結果、上記構成の液体レンズ30’を、上述した遮光部材20と組み合わせて用いることにより、遮光部材20の開口部20aの副走査方向の幅よりも開口部32aの副走査方向の幅が狭くならない限り、光束幅規制素子2bから出射されるレーザ光としては、その光束幅を主走査方向についてのみ変化させることが可能となる。
【0074】
特に、液体レンズ30’においては、電極34・35への電圧無印加時に絶縁性液体32に開口部が形成されないので、入射するレーザ光を絶縁性液体32にて完全に遮光することができる。したがって、電圧無印加時に光漏れが無く、安全面で有効となる。
【0075】
次に、主走査方向1ライン内でのビーム径の補正について説明する。
偏向器としてレゾナントスキャナ3を用い、ArcSin特性を有する走査光学系4を介して感光体8を走査したときには、前述の理由によって感光体8上の主走査方向の両端部でビーム径が主走査方向に太る。図10は、主走査方向1ライン内の各位置ごとの主走査方向のビーム径の変化率を示している。なお、この変化率は、主走査方向の中央位置での主走査方向ビーム径を基準とし、これに対する主走査方向の各位置での主走査方向ビーム径の比を示すものである。また、同図中、SOI(Start Of Imaging)、COI(Center Of Imaging)およびEOI(End Of Imaging)は、それぞれ、主走査方向1ラインにおける画像書き込みの開始位置、中央位置および終了位置を示す。
【0076】
このように主走査方向の各位置ごとに変化する主走査方向のビーム径を補正するには、理論的には、図10に示した各位置ごとのビーム径変化率に対応する量だけ、主走査方向の光束幅を光束幅規制素子2bにて変化させればよい。図11は、主走査方向1ライン内の各位置に入射するレーザ光の主走査方向の光束幅の可変率を示している。なお、この可変率は、主走査方向光束幅を変化前に対してどれだけ変化させるかを示す値である。例えば、主走査方向の両端部のSOIおよびEOIでは、ビーム径変化率は約1.19(図10参照)であるので、SOIおよびEOIに入射するレーザ光の主走査方向の光束幅を、光束幅規制素子2bによって約1.19倍広げることにより(図11参照)、SOIおよびEOIでのビーム径をCOIでのビーム径と等しくなるように狭めることができる。
【0077】
ここで、光束幅を広げることによってビーム径を狭めることができる理由は、以下の通りである。
【0078】
光源1から出射されるレーザ光の波長をλとし、走査光学系4(走査レンズ)の明るさ(Fナンバー)をFNOで表すと、一般的に、ビーム径dは、以下の式で表される。なお、ここでのλおよびdの単位はm(メートル)である。
d=4×(λ/π)×FNO
したがって、FNOの値を小さくすることにより(明るくすることにより)、ビーム径dを小さくすることが可能となる。このとき、走査光学系4の焦点距離をf(mm)とし、走査光学系4に入射するレーザ光の光束幅をD(mm)とすると、FNOは、以下の式で表される。
FNO=f/D
よって、光束幅Dを広げる(大きくする)ことにより、FNO(ビーム径)を小さくすることができるので、ビーム径dを小さくすることが可能となる。
【0079】
また、図12(a)(b)は、走査光学系4に入射するレーザ光の光束幅Dと、感光体8上におけるビーム径dとの関係を模式的に示す説明図であり、図12(a)は光束幅Dが相対的に狭く、図12(b)は光束幅Dが相対的に広い場合のものを示している。図12(a)のように光束幅Dが狭い場合、レーザ光は幾何学的には感光体8上で1点に集光するが(破線の光路参照)、波動光学的には1点には集光せず(実線の光路参照)、感光体8上でビーム径dが広くなる。これに対して、図12(b)のように光束幅Dが広い場合、レーザ光は幾何学的には感光体8上で1点に集光し(破線の光路参照)、波動光学的には、図12(a)の場合よりも狭いビーム径dで集光する(実線の光路参照)。このことからも、光束幅Dを広げることにより、感光体8上でのビーム径dを小さくできることがわかる。
【0080】
次に、主走査方向1ライン内でのビーム径の補正の具体的な方法について説明する。
本実施形態では、図2に示した同期センサ6によって主走査方向の走査開始のタイミングが検知され、制御部7が同期センサ6からの信号を検出すると、制御部7はレーザ光の検知から所定時間Δt経過後(例えば数msec後)、つまり、感光体8への画像書き込み開始以降、液体レンズ30または液体レンズ30’の電圧印加手段37に図1または図13に示す電圧を電極34・35に印加させる。
【0081】
ここで、図1は、図8(a)(b)に示した液体レンズ30の電圧印加手段37による電極34・35への電圧印加のタイミングチャートを示しており、図13は、図9(a)(b)に示した液体レンズ30’の電圧印加手段37による電極34・35への電圧印加のタイミングチャートを示している。このように、本実施形態では、電圧印加手段37が、電極34・35に印加する電圧を主走査方向1ライン内で変化させることにより、開口部31a(または開口部32a)を透過するレーザ光の光束幅を主走査方向1ライン内で変化させる。より具体的には、電圧印加手段37は、感光体8上の主走査方向の各位置ごとのビーム径変化率(図10参照)または光束幅可変率(図11参照)に対応する電圧を電極34・35に印加し、主走査方向の各位置に対応してレーザ光の主走査方向の光束幅を主走査方向1ライン内で変化させる。
【0082】
つまり、図1および図13の例では、感光体8上の主走査方向1ライン内において、SOIおよびEOIにレーザ光を照射して画像を書き込む場合には、それらの位置のビーム径変化率または光束幅可変率に対応する電圧A1が電極34・35に印加される。一方、COIにレーザ光を照射して画像を書き込む場合には、その位置のビーム径変化率または光束幅可変率に対応する電圧A2が電極34・35に印加される。また、SOI、COI、EOIの各位置の間にレーザ光を照射して画像を書き込む場合でも、照射される各位置におけるビーム径変化率または光束幅可変率に対応する電圧が各位置ごとに印加される。
【0083】
ただし、液体レンズ30においては、電圧無印加時に開口部31aが大きく開き(図8(a)参照)、印加電圧が高くなるにつれて開口部31aが狭くなるので(図8(b)参照)、印加電圧の変化を示すグラフは、主走査方向1ライン内でA1<A2となる上に凸の曲線となる(図1参照)。一方、液体レンズ30’においては、電圧無印加時に開口部が消滅し(図9(a)参照)、印加電圧が高くなるにつれて開口部32aが大きく開くので(図9(b)参照)、印加電圧の変化を示すグラフは、主走査方向1ライン内でA1>A2となる下に凸の曲線となる(図13参照)。
【0084】
なお、図1および図13では、印加電圧の変化が図10や図11の場合と同様に曲線的となっているが、様々な要因(例えば導電性液体31や絶縁性液体32の材料、導電性液体31の導電率など)によって直線的となる場合もあり得る。しかし、主走査方向1ラインにおいて、印加電圧の変化がCOIを中心に左右対称のグラフとなる点は変わらない。
【0085】
このように、電圧印加手段37が、電極34・35に印加する電圧を主走査方向1ライン内で変化させることにより、主走査方向1ラインを走査する間に開口部31a(または開口部32a)の形状を変化させ、そこを透過するレーザ光の光束幅を主走査方向1ライン内で変化させることができる。これにより、上述した理由により、感光体8上でのビーム径を主走査方向1ライン内で変化させることができ、主走査方向の各位置で主走査方向のビーム径が均一となるように、すなわち各位置における主走査方向のビーム径がCOIでの主走査方向のビーム径と等しくなるように、ビーム径を補正することが可能となる。
【0086】
以上のように、光束幅規制素子2bは、入射するレーザ光の光束幅を副走査方向についてのみ規制する上述した遮光部材20と、界面Bの形状を印加電圧に応じて変化させるとともに、その界面形状の変化に応じて、開口部31a(または開口部32a)の大きさを変化させることにより、そこを透過するレーザ光の光束幅を変化させる液体レンズ30(または液体レンズ30’)とを有して構成されているので、光束幅規制素子2bに入射するレーザ光の光束幅を主走査方向にのみ変化させて出射することができ、感光体8上でのビーム径を主走査方向にのみ変化させることができる。
【0087】
これにより、偏向器としてレゾナントスキャナ3を用いるとともに、走査光学系4としてArcSin特性を有するものを用いることによって、あるいは装置の設計誤差等に起因して、感光体8上においてビーム径が主走査方向にのみ変化する場合でも、主走査方向のビーム径を主走査方向の各位置で均一にすることができ、画質を向上させることができる。また、例えばページごとにDPI(Dot Per Inch)を切り替えることも可能となり、多彩なプリントを実現することも可能となる。
【0088】
また、例えば、装置の設計誤差等に起因して、ビーム形状が副走査方向にのみ変化する場合もあり得る。しかし、このような場合でも、例えば、入射するレーザ光の光束幅を主走査方向についてのみ規制するように遮光部材20を構成し(例えば本実施形態の遮光部材20を軸Cを中心に90°回転させて配置し)、これと上述した液体レンズ30(または液体レンズ30’)とを組み合わせることにより、副走査方向のビーム径を主走査方向の各位置で均一にして画質を向上させることができる。
【0089】
また、本実施形態では、同期センサ6および制御部7からなるタイミング検出手段10が、感光体8上における主走査方向の走査開始のタイミングを検出するとともに、その検出結果に基づいて、液体レンズ30(または液体レンズ30’)の界面Bの形状変化に応じて開口部31a(または開口部32a)の大きさを変化させるタイミング(電極34・35への電圧印加タイミング)を制御している。つまり、タイミング検出手段10を光源1の制御手段としてだけでなく、液体レンズ30・30’の制御手段としても用いている。これにより、光源1および液体レンズ30・30’のそれぞれに対応して別々の制御手段を設ける必要がなくなり、装置の構成の簡素化および装置のコスト低減を図ることが可能となる。
【0090】
また、本実施形態では、遮光部材20として、入射するレーザ光の光束幅を副走査方向についてのみ規制するものを用い、液体レンズ30(または液体レンズ30’)において、図1または図13に示したような、主走査方向1ラインの各位置に応じた電圧を電極34・35に印加している。これにより、界面Bの形状変化とともに開口部31a(または開口部32a)の大きさが変化することによって、そこを透過するレーザ光の光束幅が、主走査方向1ラインにおいてCOIに比べてSOIおよびEOIに向かうレーザ光ほど主走査方向に広がることになる。したがって、COIからSOIおよびEOIに向かうにつれて本来なら主走査方向に次第に太るビーム径を主走査方向にのみ狭めることができる。その結果、主走査方向1ライン内でビーム径を確実に均一にすることができ、画質を確実に向上させることができる。
【0091】
なお、本実施形態の光束幅規制素子2bは、遮光部材20を削除して、液体レンズ30のみまたは液体レンズ30’のみで構成することが可能である。ただし、この場合、例えば液体レンズ30・30’の電極34・35を断面楕円形に構成したり、電極34・35を軸Cを含む平面で複数に分割して個々の電極に印加する電圧を異ならせることにより、開口部31aまたは開口部32aを主走査方向または副走査方向のどちらか一方向にのみ偏平な形状に変化させる必要がある。このように光束幅規制素子2bを構成しても、開口部31aまたは開口部32aを透過するレーザ光の光束幅をどちらか一方向にのみ変化させることができるので、上述した本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
なお、本実施形態では、往復振動型の偏向器としてレゾナントスキャナ3を用いた例について説明したが、ガルバノスキャナを用いても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、例えばデジタル複写機やレーザプリンタに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の一形態に係るレーザ走査光学装置に適用される液体レンズの電圧印加手段による電極への電圧印加のタイミングチャートを示す説明図である。
【図2】上記レーザ走査光学装置の概略の構成を示す説明図である。
【図3】上記レーザ走査光学装置に適用されるレゾナントスキャナの概略の構成を示す斜視図である。
【図4】上記レゾナントスキャナの速度特性を示す説明図である。
【図5】上記レーザ走査光学装置に適用される光束幅規制素子の概略の構成を示す断面図および遮光部材の光入射側からの平面図である。
【図6】上記液体レンズの概略の構成を示す断面図である。
【図7】(a)は、上記液体レンズにおいて、電極への電圧印加前の2液の界面の形状を模式的に示す説明図であり、(b)は、電極への電圧印加後の2液の界面の形状を模式的に示す説明図である。
【図8】(a)は、電極への電圧印加前における上記液体レンズの断面図および導電性液体の光入射側からの平面図であり、(b)は、電極への電圧印加後における上記液体レンズの断面図および導電性液体の光入射側からの平面図である。
【図9】(a)は、電極への電圧印加前における他の液体レンズの断面図および絶縁性液体の光射出側からの平面図であり、(b)は、電極への電圧印加後における他の液体レンズの断面図および絶縁性液体の光射出側からの平面図である。
【図10】主走査方向1ライン内の各位置ごとの主走査方向のビーム径の変化率を示す説明図である。
【図11】主走査方向1ライン内の各位置に入射するレーザ光の主走査方向の光束幅の可変率を示す説明図である。
【図12】(a)は、走査光学系に入射するレーザ光の光束幅と、感光体上におけるビーム径との関係の一例を模式的に示す説明図であり、(b)は、上記光束幅と上記ビーム径との関係の他の例を模式的に示す説明図である。
【図13】上記他の液体レンズの電圧印加手段による電極への電圧印加のタイミングチャートを示す説明図である。
【図14】ポリゴンミラーとレゾナントスキャナとの両者において、偏向角と被走査面上での主走査方向のビーム径との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1 光源
2 光源光学系
2a コリメータレンズ(変換素子)
2b 光束幅規制素子
3 レゾナントスキャナ(偏向器)
4 走査光学系
6 同期センサ(タイミング検出手段)
7 制御部(タイミング検出手段)
8 感光体(被走査面)
10 タイミング検出手段
20 遮光部材(規制部材)
30 液体レンズ(液体光学素子)
30’ 液体レンズ(液体光学素子)
31 導電性液体
31a 開口部
32 絶縁性液体
32a 開口部
33 液体収容器
33a 窓部(液体収容器)
33b 窓部(液体収容器)
34 電極(第1の電極)
35 電極(第2の電極)
36 絶縁層
37 電圧印加手段
B 界面
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデジタル複写機やレーザプリンタに適用され、光源からの光ビームを液体光学素子を介して偏向器に導き、偏向器にて偏向して被走査面を走査する光ビーム走査光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、1種または2種の液体の界面形状を変化させることにより、その界面を透過する光ビームの透過光量を制御したり、光束幅を可変する液体光学素子が様々な分野で用いられている。例えば特許文献1〜3では、2種の液体を有する液体光学素子を撮像装置に適用し、これを可変NDフィルタ等の各種のフィルタや絞りとして機能させることが開示されている。
【0003】
また、例えば特許文献4および5では、1種の液体を有する液体光学素子をレーザ走査光学装置に適用した例が開示されている。これらの装置では、電圧印加によって液体の位置および界面の形状を制御することで、上記界面を透過する光源からのレーザ光の被走査面上での集光位置のずれやフォーカスずれを補正するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−356792号公報
【特許文献2】特開2001−228307号公報
【特許文献3】特開2006−250967号公報
【特許文献4】特開2006−251343号公報
【特許文献5】特開2006−251513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーザ走査光学装置においては、光束幅の可変はメカニカルなシャッタ等を用いて行うのが一般的であったが、これでは高速な可変に限界がある。しかし、上記した撮像装置のように液体光学素子を絞り代わりに用いることで、メカニカルなシャッタ等を不要にできるとともに、光束幅の高速な可変にも対応できると考えられる。
【0006】
一方、被走査面の走査に用いる偏向器として、例えばレゾナントスキャナを用いると、被走査面を等速で走査すべく、走査レンズとしてはArcSin特性を有するものが用いられるが、そのような走査レンズを介して被走査面を走査すると、後述する理由により、被走査面上の主走査方向の両端部でビーム径が主走査方向に太る。
【0007】
しかし、レゾナントスキャナおよびArcSin特性を有する走査レンズを用いる構成において、上記の液体光学素子を絞り代わりに用いる構成を単純に適用しただけでは、上記液体光学素子にて主走査方向と副走査方向とで光束幅を同じように可変し、被走査面上で主走査方向と副走査方向とで同じビーム径に可変することになるため、主走査方向の両端部にて主走査方向に太ったビーム径を例えば真円に補正することはできない。その結果、主走査方向の1ライン内でビーム形状を均一にして画質を向上させることができないという問題が生ずる。
【0008】
なお、主走査方向の1ライン内でビーム形状が主走査方向のみまたは副走査方向のみに変化することによって画質が低下する問題は、偏向器としてレゾナントスキャナ以外のものを用いた場合でも、例えば装置の設計誤差に起因して同様に起こり得ることである。
【0009】
以下、偏向器としてレゾナントスキャナを用い、ArcSin特性を有する走査レンズを介して被走査面を走査したときに、主走査方向の両端部でビーム径が太る理由について説明する。
【0010】
まず、偏向器としてポリゴンミラーを用い、走査レンズとしてfθレンズを用いた場合の偏向角とビーム径との関係について説明する。
【0011】
ポリゴンミラーでの偏向角をθ(°)、角速度をk/2(°/s)、時間をt(s)とすると、これらの間には以下の式(1)の関係が成り立つ。
θ=kt ・・・(1)
したがって、偏向角θの単位時間当たりの変化量は、式(1)をtで微分して以下の式(2)のようになる。
∂θ/∂t=k ・・・(2)
【0012】
一方、偏向角θ=0において、被走査面上での単位時間当たりの走査幅ΔL0は、焦点距離をf0として、以下の式(3)のように表される。
ΔL0=f0×k ・・・(3)
また、画像領域最大偏向角をθMAXとしたとき、被走査面上での単位時間当たりの走査幅ΔLMAXは、焦点距離をfMAXとして以下の式(4)のように表される。
ΔLMAX=fMAX×k/cosθMAX ・・・(4)
また、走査レンズとしてfθレンズを用いた等速書き込みであるから、以下の式(5)が成り立つ。
ΔL0=ΔLMAX ・・・(5)
よって、式(3)(4)(5)より、以下の式(6)が成り立つ。
fMAX=f0×cosθMAX ・・・(6)
【0013】
一方、被走査面上で各偏向角θの主光線に垂直な面内でのFナンバーを示すFNO(θ)は、偏向角θ=0でのFNOをFNO(0)として、式(6)より、以下の式(7)のように表される。
FNO(θ)=FNO(0)×cosθ ・・・(7)
また、各偏向角θの主光線に垂直な面内でのビーム径d⊥(θ)はFNO(θ)に比例し、被走査面上の各位置での主走査方向のビーム径d(θ)は、以下の式(8)のように表される。
d(θ)=d⊥(θ)/cos(θ) ・・・(8)
式(7)(8)より、偏向角θ=0でのビーム径をd(0)とすると、以下の式(9)が得られる。
d(θ)=d(0) ・・・(9)
よって、ポリゴンミラーを使った等速走査では、被走査面上での主走査方向のビーム径d(θ)は偏向角θによらず一定であることがわかる。
【0014】
次に、偏向器としてレゾナントスキャナを用い、走査レンズとしてf・ArcSinレンズを用いた場合の偏向角とビーム径との関係について説明する。
【0015】
レゾナントスキャナの可能な最大偏向角をAとすると、時間tでの偏向角θ(t)は、以下の式(10)のように表される。
θ(t)=A×sin(k×t) ・・・(10)
したがって、単位時間当たりの偏向角θの変化量は、式(10)をtで微分して以下の式(11)のように表される。
∂θ(t)/∂t=A×k×cos(k×t) ・・・(11)
【0016】
一方、偏向角θ=0において、被走査面上での単位時間当たりの走査幅ΔL0は、焦点距離をf0として、以下の式(12)のように表される。
ΔL0=f0×A×k ・・・(12)
また、画像領域最大偏向角をθMAXとし、その時間をtMAX、としたとき、被走査面上での単位時間当たりの走査幅ΔLMAXは、焦点距離をfMAXとして以下の式(13)のように表される。
ΔLMAX=fMAX×A×k×cos(k×tMAX)/cosθMAX ・・・(13)
また、走査レンズとしてf・ArcSinレンズを用いた等速書き込みであるから、以下の式(14)が成り立つ。
ΔL0=ΔLMAX ・・・(14)
よって、式(12)(13)(14)より、以下の式(15)が成り立つ。
fMAX=f0×cosθMAX/cos(k×tMAX) ・・・(15)
【0017】
一方、被走査面上で各偏向角θの主光線に垂直な面内でのFNO(θ)は、偏向角θ=0でのFNOをFNO(0)として、式(15)より、以下の式(16)のように表される。
FNO(θ)=FNO(0)×cosθ/cos(k×t) ・・・(16)
式(8)(16)より、以下の式(17)が得られる。
d(θ)=d(0)/cos(k×t) ・・・(17)
式(10)(17)より、以下の式(18)が得られる。
d(θ)=d(0)/(1−(θ/A)2)1/2 ・・・(18)
【0018】
よって、式(18)より、レゾナントスキャナを使った等速走査においては、被走査面上での主走査方向のビーム径d(θ)は、偏向角θが大きくなるにつれて大きくなることがわかる。例えば、レゾナントスキャナの最大偏向角θMAXを30度と仮定したとき、ポリゴンミラーとレゾナントスキャナとの両者において、偏向角と被走査面上での主走査方向のビーム径との関係は、図14に示すようになる。
【0019】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、用いる偏向器や走査光学系の種類、装置の設計誤差等に起因して、被走査面上での主走査方向1ライン内でビーム径が主走査方向のみまたは副走査方向のみに変化する場合でも、そのビーム径を均一にして画質を向上させることができる光ビーム走査光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の光ビーム走査光学装置は、少なくとも1つの光源と、前記光源が発した光ビームを偏向器に導く光源光学系と、前記光源光学系からの光ビームを偏向する偏向器と、前記偏向器にて偏向された光ビームを被走査面上に集光する走査光学系と、を備えた光ビーム走査光学装置において、前記光源光学系は、入射する光ビームを略平行光に変換する変換素子と、入射する光ビームの光束幅を規制する光束幅規制素子とを有しており、前記光束幅規制素子は、主走査方向と副走査方向とのうちでどちらか一方についてのみ、入射する光ビームの光束幅を規制する規制部材と、透光性液体および遮光性液体からなる2種の液体の界面の形状を印加電圧に応じて変化させるとともに、その界面形状の変化に応じて、遮光性液体に形成される開口部の大きさを変化させることにより、前記開口部を透過する光ビームの光束幅を変化させる液体光学素子とを有していることを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、光源からの光ビームは、光源光学系の変換素子(例えばコリメータレンズ)にて略平行光に変換され、光束幅規制素子にてその光束幅が規制された後、偏向器に導かれる。偏向器に入射した光ビームは、そこで偏向された後、走査光学系を介して被走査面上に集光される。
【0022】
ここで、光束幅規制素子では、規制部材により、入射する光ビームの光束幅が主走査方向と副走査方向とのうちでどちらか一方についてのみ規制される。そして、液体光学素子において、透光性液体および遮光性液体の界面形状の変化に応じて遮光性液体の開口部の大きさを変化させることにより、その開口部を透過する光ビームの光束幅が変化する。これにより、光束幅規制素子に入射する光ビームの光束幅を主走査方向または副走査方向のどちらか一方向に可変して出射することができ、光ビームの被走査面上でのビーム径を主走査方向または副走査方向のどちらか一方向に可変することができる。
【0023】
したがって、例えば、用いる偏向器および走査光学系の種類や装置の設計誤差等に起因して、光ビームの被走査面上でのビーム径が主走査方向または副走査方向のどちらか一方向に変化する場合でも、そのビーム径を均一にすることができ、画質を向上させることができる。
【0024】
本発明の光ビーム走査光学装置において、透光性液体および遮光性液体のうちの一方は導電性液体であり、他方は一方と不混和な絶縁性液体であり、前記液体光学素子は、さらに、前記2種の液体を収容するとともに、入射する光ビームを透過させる液体収容器と、前記液体収容器内で導電性液体に接触して設けられる第1の電極と、前記液体収容器内で導電性液体および絶縁性液体と絶縁層を介して設けられる第2の電極と、前記第1の電極および前記第2の電極に電圧を印加する電圧印加手段とを有している構成であってもよい。
【0025】
この構成によれば、第1および第2の電極への電圧印加前は、導電性液体と第2の電極との間、導電性液体と絶縁性液体との間、絶縁性液体と第2の電極との間に生じる3つの界面張力のバランスで、導電性液体と絶縁性液体との界面の形状が決まっている。電圧印加手段によって第1および第2の電極に電圧を印加すると、導電性液体と第2の電極との界面に電荷が生じ、この電荷により生じる力がさらに加わることによって、2液の界面形状が変化し、それに応じて遮光性液体(導電性液体または絶縁性液体)に形成される開口部の大きさも変化する。したがって、上記構成の液体光学素子を上述した規制部材と組み合わせて用いることにより、光ビームの光束幅を主走査方向または副走査方向のどちらか一方向についてのみ変化させることが可能となる。
【0026】
本発明の光ビーム走査光学装置において、前記電圧印加手段は、前記第1の電極および前記第2の電極に印加する電圧を主走査方向1ライン内で変化させることにより、前記開口部を透過する光ビームの光束幅を主走査方向1ライン内で変化させるようにしてもよい。
【0027】
この場合、遮光性液体の開口部を透過して被走査面に集光される光ビームの被走査面上でのビーム径を、主走査方向1ライン内で変化させることができる。したがって、例えば、用いる偏向器および走査光学系の種類や装置の設計誤差等に起因して、被走査面上での主走査方向1ライン内でビーム径が主走査方向または副走査方向のどちらか一方向に変化する場合でも、主走査方向1ライン内の各位置ごとにビーム径を均一に補正することができる。
【0028】
本発明の光ビーム走査光学装置は、被走査面上における主走査方向の走査開始のタイミングを検出するとともに、その検出結果に基づいて、前記光源からの光ビームの出射を制御するタイミング検出手段をさらに備え、前記タイミング検出手段は、さらに、前記検出結果に基づいて、前記液体光学素子の前記界面の形状変化によって前記開口部の大きさを変化させるタイミングを制御してもよい。
【0029】
このように、タイミング検出手段を光源の制御手段としてだけでなく、液体光学素子の制御手段としても用いることにより、光源および液体光学素子のそれぞれに対応して別々の制御手段を設ける必要がなくなる。これにより、装置の構成を簡素化することができ、また、装置のコストを低減することも可能となる。
【0030】
本発明の光ビーム走査光学装置において、前記偏向器は、往復振動型の偏向器であることが望ましい。往復振動型の偏向器は、光ビームの偏向をミラー1枚で行うことができるので、回転多面鏡(ポリゴンミラー)を用いた場合のような面間誤差の問題が全く無い。また、回転多面鏡に比べて、偏向器の発熱量、消費電力、騒音が小さい。特に、装置内部で温度上昇が起こると、樹脂の歪みで素子の位置や光学特性が変化し、所望の作像を行うことができなくなるが、往復振動型の偏向器は発熱量が小さいので、所望の作像を安定して行うことが可能となる。
【0031】
本発明の光ビーム走査光学装置において、前記規制部材は、入射する光ビームの光束幅を副走査方向についてのみ規制し、前記液体光学素子は、被走査面上の主走査方向中央部に比べて主走査方向両端部に向かう光ビームほど光束幅が広がるように、2種の液体の界面の形状を変化させて前記開口部の大きさを変化させるようにしてもよい。
【0032】
光ビームの光束幅は、規制部材によって副走査方向について規制されるので、液体光学素子にて開口部の大きさを変化させて光ビームの光束幅を広げても、光束幅規制素子から出射される光ビームの光束幅としては、副走査方向には変化せず、主走査方向にのみ広がる。したがって、このように液体光学素子にて光ビームの光束幅を広げることにより、被走査面上でのビーム径を主走査方向にのみ狭めることができる。
【0033】
よって、被走査面上の主走査方向中央部に比べて主走査方向両端部に向かう光ビームほど光束幅を広げることにより、被走査面上の主走査方向中央部から両端部に向かうにつれて本来なら主走査方向に次第に太るビーム径を主走査方向にのみ狭め、主走査方向1ライン内でビーム径を確実に均一にすることができる。その結果、画質を確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、光束幅規制素子に入射する光ビームの光束幅を主走査方向または副走査方向のどちらか一方向にのみ変化させて、光ビームの被走査面上でのビーム径を主走査方向または副走査方向のどちらか一方向にのみ変化させることができる。これにより、用いる偏向器および走査光学系の種類や装置の設計誤差等に起因して、被走査面上にてビーム径が主走査方向または副走査方向のどちらか一方向に変化する場合でも、そのビーム径を均一に補正することができ、画質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、主走査方向は、後述する感光体8の軸方向および画像幅方向に対応し、副走査方向は、主走査方向に垂直な方向および紙の通紙方向に対応するものとする。
【0036】
図2は、本実施形態のレーザ走査光学装置(光ビーム走査光学装置)の概略の構成を示す説明図である。このレーザ走査光学装置は、光源1と、光源光学系2と、レゾナントスキャナ3と、走査光学系4と、反射ミラー5と、同期センサ6と、制御部7と、感光体8とを有して構成されている。光源1、光源光学系2、レゾナントスキャナ3、走査光学系4、反射ミラー5および同期センサ6は、筐体9の内部に設けられている。
【0037】
光源1は、光ビームとしてのレーザ光を出射する例えばレーザダイオードで構成されている。この光源1は、カラープリントに対応すべく、異なる波長に対応して複数設けられていてもよい。
【0038】
光源光学系2は、光源1が発したレーザ光をレゾナントスキャナ3に導く光学系であり、コリメータレンズ2aと、光束幅規制素子2bとで構成されている。コリメータレンズ2aは、光源1からのレーザ光を略平行光に変換する変換素子である。光束幅規制素子2bは、コリメータレンズ2aを介して入射する光源1からのレーザ光の光束幅を規制するものであるが、その詳細については後述する。
【0039】
なお、本実施形態では、光束幅規制素子2bは、コリメータレンズ2aに対して光源1とは反対側の光路上に配置されている。これは、光束幅規制素子2bの後述する液体レンズ30(図5、図6参照)自体は平行平板と同等に扱われるため、収差補正上有利となるからである(収差の劣化を回避できるからである)。しかし、光束幅規制素子2bをコリメータレンズ2aに対して光源1側の光路上に配置することも可能である。この場合は、光源1が載置される基板と液体レンズ30の制御基板とを近くに配置することが可能となり、これによって配線の引き回しなどが簡素化できるというメリットがある。ただし、この場合は、液体レンズ30による収差劣化をコリメータレンズ2aにて補正しておく必要がある。
【0040】
レゾナントスキャナ3は、光源光学系2から出射されたレーザ光を主走査方向に偏向する往復振動型の偏向器であるが、その詳細については後述する。
【0041】
走査光学系4は、レゾナントスキャナ3にて偏向されたレーザ光を被走査面である感光体8上に集光する走査レンズで構成されている。上記のレゾナントスキャナ3は後述するようにsin振動するため、走査光学系4はArcSin特性を有している。これにより、レゾナントスキャナ3にて偏向されたレーザ光で感光体8上を主走査方向に等速走査することが可能となる。
【0042】
反射ミラー5は、レゾナントスキャナ3にて偏向され、走査光学系4を介して同期センサ6に向かうレーザ光の光路を反射によって折り曲げるミラーである。
【0043】
同期センサ6は、レゾナントスキャナ3にて偏向されたレーザ光を受光したときに、感光体8における主走査方向の走査開始のタイミングを検知し、その検知信号を制御部7に出力するSOS(Start Of Scan)検出センサである。制御部7は、同期センサ6から送られる信号に基づいて光源1からのレーザ光の出射を制御するものである。したがって、同期センサ6と制御部7とで、主走査方向の走査開始タイミングを検出するとともに、その検出結果に基づいて光源1からのレーザ光の出射を制御するタイミング検出手段10が構成されている。
【0044】
上記の構成において、光源1が発したレーザ光は、光源光学系2のコリメータレンズ2aにて略平行光に変換され、光束幅規制素子2bにて光束幅を規制された後、レゾナントスキャナ3に入射し、そこで感光体8の方向に偏向される。このとき、レゾナントスキャナ3にて偏向されたレーザ光が走査光学系4および反射ミラー5を介して同期センサ6に入射し、同期センサ6からの信号が制御部7に入力されると、制御部7は、感光体8上の主走査方向の書き込み開始位置から画像(静電潜像)が書き込まれるように、光源1からのレーザ光の出射を制御する。レゾナントスキャナ3の往復振動により、レゾナントスキャナ3に入射したレーザ光は感光体8上を主走査方向に偏向、走査され、これによって主走査方向1ライン(例えば数kHz程度)の画像の書き込みが行われるとともに、各ラインごとに走査方向が反転しながら画像の書き込みが行われる。
【0045】
次に、レゾナントスキャナ3の詳細について説明する。
図3は、レゾナントスキャナ3の概略の構成を示す斜視図である。レゾナントスキャナ3は、薄板状の基板11と、その基板11上に配置されるミラー12および駆動コイル13と、基板11と空隙を介して配置される2つの永久磁石14・14とを有して構成されている。
【0046】
基板11において互いに対向する2辺には、ミラー12の回転軸Aに沿う方向にトーションバー11aが突出してそれぞれ設けられている。2つのトーションバー11a・11aは、図示しない支持部にて支持されている。ミラー12は、基板11のほぼ中央に配置されており、駆動コイル13は、このミラー12を基板11上で取り囲むように配線されている。永久磁石14・14は、一方がN極で他方がS極の極性を有しており、N極からS極に向かう磁界を駆動コイル13が横切るように、基板11におけるトーションバー11a・11aが設けられていない他の2辺とそれぞれ空隙を介して対向するように配置されている。
【0047】
この構成では、駆動コイル13にa方向から電流を流すと、その電流が磁界を横切って流れることにより、基板11には回転軸Aを中心に回転しようとする力(ローレンツ力)が働き、基板11とともにミラー12が所定角度だけ例えばP方向に回転する。そして、駆動コイル13に流す電流をゼロにすると、トーションバー11a・11aの復元力により、基板11とともにミラー12がQ方向に回転して元の位置に戻る。続いて、駆動コイル13に上記とは逆方向のb方向から電流を流すと、基板11とともにミラー12が所定角度だけQ方向に回転する。
【0048】
以降、この動作を繰り返すことにより、ミラー12は、図4に示すように、時間経過とともにミラー角度がsinカーブを描いて変化するように振動する。本実施形態では、図4のsinカーブにおいてほぼリニアな部分(図中の太線部分)の角度範囲を使って、感光体8に画像を書き込むようにしている。
【0049】
このように、往復振動型のレゾナントスキャナ3は、1枚のミラー12の振動によってレーザ光の偏向を行うので、ポリゴンミラーを用いた場合のような面間誤差の問題が全く無い(面倒れ補正を考慮する必要が全く無い)。また、装置内部で温度上昇が起こると、樹脂の歪みで素子の位置や光学特性が変化し、所望の作像を行うことができなくなるが、レゾナントスキャナ3は、ポリゴンミラーに比べて発熱量が少なく、この点では非常に有利となる。また、レゾナントスキャナ3は、消費電力が少なく、騒音が小さいという利点も有している。
【0050】
次に、光束幅規制素子2bの詳細について説明する。
図5は、光束幅規制素子2bの概略の構成を示す断面図および後述する遮光部材20の光入射側からの平面図である。同図に示すように、光束幅規制素子2bは、遮光部材20と、液体レンズ30とで構成されている。
【0051】
遮光部材20は、主走査方向と副走査方向とのうちでどちらか一方についてのみ、光源1からのレーザ光の光束幅を規制する規制部材であり、本実施形態では、副走査方向よりも主走査方向に長い開口部20aを有する薄板状のスリットで構成されている。したがって、遮光部材20にレーザ光が入射すると、そのレーザ光は副走査方向についてのみ、その光束幅が規制されて開口部20aを透過し、液体レンズ30に入射する。
【0052】
なお、本実施形態では、遮光部材20は液体レンズ30の後述する遮光性液体側、すなわち、光束幅を決める側に配置されているが、透光性液体側に配置されてもよい。ただし、光束幅を決める側に遮光部材20を配置するほうが、液体レンズ30に入射するゴースト光を効果的に遮光して、ゴースト光の光束幅への影響を確実に低減できる点で有利である。
【0053】
液体レンズ30は、透光性液体および遮光性液体からなる2種の液体の界面の形状を印加電圧に応じて変化させることにより、その界面の形状を変化させる液体光学素子である。以下、液体レンズ30の詳細について説明する。
【0054】
図6は、液体レンズ30の概略の構成を示す断面図である。液体レンズ30は、導電性液体31と、絶縁性液体32と、液体収容器33と、電極34・35と、絶縁層36と、電圧印加手段37とを含んで構成されている。
【0055】
導電性液体31は、例えば無機塩の水溶液や有機液体など、それ自身が導電性を有する液体や、イオン成分を付加することによって導電性を有する液体であり、例えば食塩水を用いることができる。絶縁性液体32は、例えばシリコーンオイルやパラフィンオイルなど、導電性液体と混合せず、絶縁性を有する液体である。
【0056】
導電性液体31には、遮光性材料として例えばカーボンブラックが含有されており、絶縁性液体32には遮光性材料は含有されていない。この結果、導電性液体31は遮光性液体を構成し、絶縁性液体32は透光性液体を構成している。なお、後述する図9(a)(b)に示すように、絶縁性液体32にカーボンブラックを含ませて遮光性液体を構成する一方、導電性液体31を透光性液体としてもよい。
【0057】
また、図6の例では、遮光性液体である導電性液体31には、導電性液体31と絶縁性液体32との界面Bの形状変化に応じて大きさが変化する開口部31aが形成されている。この開口部31aは、後述する対称軸となる軸Cを中心に開口しており、開口部31aを介して絶縁性液体32と液体収容器33の後述する窓部33aとが接触している。なお、開口部31aは、界面Bの形状変化の仕方(電極34・35への印加電圧の大きさ)、導電性液体31および絶縁性液体32の材料や体積比等によっては、大きさがゼロ、すなわち消滅する場合もある。
【0058】
液体収容器33は、導電性液体31および絶縁性液体32を収容する容器である。液体収容器33内では、導電性液体31と絶縁性液体32との界面Bは、軸対称(回転対称)で、かつ、光入射側に凸となるように形成されており、その対称の軸Cの方向において例えば光入射側に導電性液体31が収容され、光射出側に絶縁性液体32が収容されている。また、液体収容器33における光入射側および光射出側の窓部33a・33bは、液体収容器33に入射する光源1からのレーザ光を透過させる透光性材料で形成されている。なお、液体収容器33における他の部位が透光性材料で形成されていても勿論構わない。
【0059】
電極34・35は、ともに軸Cを中心軸とする円筒形で形成されており、その内側(中心軸側)に上記の導電性液体31および絶縁性液体32が収容されている。電極34(第1の電極)は、液体収容器33内で導電性液体31に接触して設けられている。一方、電極35(第2の電極)は、液体収容器33内で導電性液体31および絶縁性液体32と絶縁層36を介して設けられている。これらの電極34・35には電圧印加手段37が接続されており、電圧印加手段37からの電圧が印加される。
【0060】
ここで、上記構成の液体レンズ30において、界面Bの形状が変化する原理、および界面Bの形状変化に伴う開口部31aの大きさの変化について説明する。
【0061】
図7(a)は、図6の液体レンズ30のD部に対応し、電極34・35への電圧印加前の界面Bの形状を模式的に示す説明図である。なお、同図(a)において、γSWは、導電性液体31と電極35との間に働く界面張力(mN/m)を示し、γOWは、導電性液体31と絶縁性液体32との間に働く界面張力(mN/m)を示し、γSOは、絶縁性液体32と電極35との間に働く界面張力(mN/m)を示し、θは、電極35に対する絶縁性液体32の接触角度(°)を示す。
【0062】
電圧印加手段37による電極34・35への電圧印加前においては、これら3つの界面張力γSW、γOW、γSOと接触角度θとの間には、いわゆるYoung-Laplaceの方程式から以下の関係式が成り立つ。したがって、以下の関係式を満たすように界面Bの形状が決まる。
cosθ=(γSW−γSO)/γOW
【0063】
一方、電圧印加手段37によって電極34・35に電圧を印加すると(電位差を与えると)、図7(b)に示すように、導電性液体31と電極35との界面に電荷が生じ、この電荷により生じる力Πがさらに加わることによって、界面Bの形状が変化する。ここで、Π、およびcosθは、以下の式で表される。なお、εは絶縁層36の誘電率を示し、ε0は真空誘電率(F/m)を示し、eは絶縁層36の厚さ(m)を示し、Vは印加電圧(V)を示す。
Π =(1/2)・(ε・ε0/e)・V2
cosθ=(γSW−γSO)/γOW−Π
=(γSW−γSO)/γOW−(1/2)・(ε・ε0/e)・V2
【0064】
つまり、電極34・35に電圧を印加すると、電圧印加前に比べてθが大きくなるように界面Bの形状が変化する。特に、電極34・35が上述のように円筒形で形成されている場合には、電極34・35に電圧を印加する前後で、界面Bの形状は軸対称のまま変化する。そして、そのような界面Bの形状変化に応じて、開口部31aの大きさも円形のまま変化する。
【0065】
図8(a)は、電極34・35への電圧印加前における液体レンズ30の断面図および導電性液体31の光入射側からの平面図を示し、図8(b)は、電極34・35への電圧印加後における液体レンズ30の断面図および導電性液体31の光入射側からの平面図を示す。これらの図に示すように、電極34・35への電圧印加による界面Bの形状変化によって、開口部31aの大きさは電圧印加前よりも電圧印加後で小さくなる。その結果、開口部31aを透過するレーザ光の光束幅は、電圧印加前のD1(mm)から電圧印加後にはD2(mm)へと小さくなる。
【0066】
このように、液体レンズ30においては、上述した構成により、界面Bの形状を印加電圧に応じて変化させるとともに、その界面Bの形状変化に応じて開口部31aの大きさを変化させることにより、開口部31aを透過するレーザ光の光束幅を変化させることが可能となる。
【0067】
特に、上記構成の液体レンズ30を、上述した遮光部材20(図5参照)と組み合わせて用いることにより、遮光部材20にて副走査方向の光束幅が規制されて液体レンズ30に入射するので、遮光部材20の開口部20a(図5参照)の副走査方向の幅よりも液体レンズ30の開口部31aの副走査方向の幅が狭くならない限り、液体レンズ30から出射されるレーザ光の光束幅が副走査方向に変化することはなく、光束幅規制素子2b全体から出射されるレーザ光の光束幅を主走査方向についてのみ変化させることが可能となる。
【0068】
なお、遮光部材20が液体レンズ30に対して光射出側(絶縁性液体32側)に配置される場合でも、液体レンズ30の開口部31aを透過したレーザ光は遮光部材20によって副走査方向の光束幅が規制されるので、開口部20aの副走査方向の幅よりも開口部31aの副走査方向の幅が狭くならない限り、光束幅規制素子2bから出射されるレーザ光としては、その光束幅を主走査方向についてのみ変化させることが可能となる。
【0069】
また、図6の液体レンズ30では、図8(a)(b)に示すように、電圧印加前(電源オフの状態)と電圧印加後(界面Bの形状の最大変化時)とで界面Bの形状変化を小さくすることができるので、消費電力を小さく抑えることが可能となる。
【0070】
ところで、図9(a)(b)は、液体レンズ30と同等の機能を有する液体レンズ30’の構成を示すものであって、図9(a)は、電極34・35への電圧印加前における液体レンズ30’の断面図および絶縁性液体32の光射出側からの平面図を示し、図9(b)は、電極34・35への電圧印加後における液体レンズ30’の断面図および絶縁性液体32の光射出側からの平面図を示す。
【0071】
液体レンズ30’では、導電性液体31を透光性液体で構成している一方、絶縁性液体32を遮光性液体で構成している。つまり、絶縁性液体32に遮光性材料として例えばカーボンブラックが含有されている。また、導電性液体31および絶縁性液体32の界面Bは、軸対称で、かつ、光射出側に凸となるように形成されている。
【0072】
また、液体レンズ30’においては、電極34・35への電圧無印加時には遮光性液体である絶縁性液体32に開口部が形成されず、電極34・35への電圧印加時には上述した開口部31aと同様の開口部32aが絶縁性液体32に形成されるように、導電性液体31および絶縁性液体32の材料や体積比等が選定されている。この開口部32aは、上述した開口部31aと同様に、電極34・35への電圧印加によって界面Bの形状が変化し、その界面形状の変化に応じてその大きさが変化する。特に、液体レンズ30’では、電極34・35への印加電圧が高くなるほど、電極35に対する絶縁性液体32の接触角度θが大きくなることによって、開口部32aの形状は大きくなる方向に変化する。
【0073】
したがって、このような液体レンズ30’の構成であっても、界面Bの形状を印加電圧に応じて変化させるとともに、その界面Bの形状変化に応じて開口部32aの大きさを変化させることにより、開口部32aを透過するレーザ光の光束幅を変化させることが可能となる。その結果、上記構成の液体レンズ30’を、上述した遮光部材20と組み合わせて用いることにより、遮光部材20の開口部20aの副走査方向の幅よりも開口部32aの副走査方向の幅が狭くならない限り、光束幅規制素子2bから出射されるレーザ光としては、その光束幅を主走査方向についてのみ変化させることが可能となる。
【0074】
特に、液体レンズ30’においては、電極34・35への電圧無印加時に絶縁性液体32に開口部が形成されないので、入射するレーザ光を絶縁性液体32にて完全に遮光することができる。したがって、電圧無印加時に光漏れが無く、安全面で有効となる。
【0075】
次に、主走査方向1ライン内でのビーム径の補正について説明する。
偏向器としてレゾナントスキャナ3を用い、ArcSin特性を有する走査光学系4を介して感光体8を走査したときには、前述の理由によって感光体8上の主走査方向の両端部でビーム径が主走査方向に太る。図10は、主走査方向1ライン内の各位置ごとの主走査方向のビーム径の変化率を示している。なお、この変化率は、主走査方向の中央位置での主走査方向ビーム径を基準とし、これに対する主走査方向の各位置での主走査方向ビーム径の比を示すものである。また、同図中、SOI(Start Of Imaging)、COI(Center Of Imaging)およびEOI(End Of Imaging)は、それぞれ、主走査方向1ラインにおける画像書き込みの開始位置、中央位置および終了位置を示す。
【0076】
このように主走査方向の各位置ごとに変化する主走査方向のビーム径を補正するには、理論的には、図10に示した各位置ごとのビーム径変化率に対応する量だけ、主走査方向の光束幅を光束幅規制素子2bにて変化させればよい。図11は、主走査方向1ライン内の各位置に入射するレーザ光の主走査方向の光束幅の可変率を示している。なお、この可変率は、主走査方向光束幅を変化前に対してどれだけ変化させるかを示す値である。例えば、主走査方向の両端部のSOIおよびEOIでは、ビーム径変化率は約1.19(図10参照)であるので、SOIおよびEOIに入射するレーザ光の主走査方向の光束幅を、光束幅規制素子2bによって約1.19倍広げることにより(図11参照)、SOIおよびEOIでのビーム径をCOIでのビーム径と等しくなるように狭めることができる。
【0077】
ここで、光束幅を広げることによってビーム径を狭めることができる理由は、以下の通りである。
【0078】
光源1から出射されるレーザ光の波長をλとし、走査光学系4(走査レンズ)の明るさ(Fナンバー)をFNOで表すと、一般的に、ビーム径dは、以下の式で表される。なお、ここでのλおよびdの単位はm(メートル)である。
d=4×(λ/π)×FNO
したがって、FNOの値を小さくすることにより(明るくすることにより)、ビーム径dを小さくすることが可能となる。このとき、走査光学系4の焦点距離をf(mm)とし、走査光学系4に入射するレーザ光の光束幅をD(mm)とすると、FNOは、以下の式で表される。
FNO=f/D
よって、光束幅Dを広げる(大きくする)ことにより、FNO(ビーム径)を小さくすることができるので、ビーム径dを小さくすることが可能となる。
【0079】
また、図12(a)(b)は、走査光学系4に入射するレーザ光の光束幅Dと、感光体8上におけるビーム径dとの関係を模式的に示す説明図であり、図12(a)は光束幅Dが相対的に狭く、図12(b)は光束幅Dが相対的に広い場合のものを示している。図12(a)のように光束幅Dが狭い場合、レーザ光は幾何学的には感光体8上で1点に集光するが(破線の光路参照)、波動光学的には1点には集光せず(実線の光路参照)、感光体8上でビーム径dが広くなる。これに対して、図12(b)のように光束幅Dが広い場合、レーザ光は幾何学的には感光体8上で1点に集光し(破線の光路参照)、波動光学的には、図12(a)の場合よりも狭いビーム径dで集光する(実線の光路参照)。このことからも、光束幅Dを広げることにより、感光体8上でのビーム径dを小さくできることがわかる。
【0080】
次に、主走査方向1ライン内でのビーム径の補正の具体的な方法について説明する。
本実施形態では、図2に示した同期センサ6によって主走査方向の走査開始のタイミングが検知され、制御部7が同期センサ6からの信号を検出すると、制御部7はレーザ光の検知から所定時間Δt経過後(例えば数msec後)、つまり、感光体8への画像書き込み開始以降、液体レンズ30または液体レンズ30’の電圧印加手段37に図1または図13に示す電圧を電極34・35に印加させる。
【0081】
ここで、図1は、図8(a)(b)に示した液体レンズ30の電圧印加手段37による電極34・35への電圧印加のタイミングチャートを示しており、図13は、図9(a)(b)に示した液体レンズ30’の電圧印加手段37による電極34・35への電圧印加のタイミングチャートを示している。このように、本実施形態では、電圧印加手段37が、電極34・35に印加する電圧を主走査方向1ライン内で変化させることにより、開口部31a(または開口部32a)を透過するレーザ光の光束幅を主走査方向1ライン内で変化させる。より具体的には、電圧印加手段37は、感光体8上の主走査方向の各位置ごとのビーム径変化率(図10参照)または光束幅可変率(図11参照)に対応する電圧を電極34・35に印加し、主走査方向の各位置に対応してレーザ光の主走査方向の光束幅を主走査方向1ライン内で変化させる。
【0082】
つまり、図1および図13の例では、感光体8上の主走査方向1ライン内において、SOIおよびEOIにレーザ光を照射して画像を書き込む場合には、それらの位置のビーム径変化率または光束幅可変率に対応する電圧A1が電極34・35に印加される。一方、COIにレーザ光を照射して画像を書き込む場合には、その位置のビーム径変化率または光束幅可変率に対応する電圧A2が電極34・35に印加される。また、SOI、COI、EOIの各位置の間にレーザ光を照射して画像を書き込む場合でも、照射される各位置におけるビーム径変化率または光束幅可変率に対応する電圧が各位置ごとに印加される。
【0083】
ただし、液体レンズ30においては、電圧無印加時に開口部31aが大きく開き(図8(a)参照)、印加電圧が高くなるにつれて開口部31aが狭くなるので(図8(b)参照)、印加電圧の変化を示すグラフは、主走査方向1ライン内でA1<A2となる上に凸の曲線となる(図1参照)。一方、液体レンズ30’においては、電圧無印加時に開口部が消滅し(図9(a)参照)、印加電圧が高くなるにつれて開口部32aが大きく開くので(図9(b)参照)、印加電圧の変化を示すグラフは、主走査方向1ライン内でA1>A2となる下に凸の曲線となる(図13参照)。
【0084】
なお、図1および図13では、印加電圧の変化が図10や図11の場合と同様に曲線的となっているが、様々な要因(例えば導電性液体31や絶縁性液体32の材料、導電性液体31の導電率など)によって直線的となる場合もあり得る。しかし、主走査方向1ラインにおいて、印加電圧の変化がCOIを中心に左右対称のグラフとなる点は変わらない。
【0085】
このように、電圧印加手段37が、電極34・35に印加する電圧を主走査方向1ライン内で変化させることにより、主走査方向1ラインを走査する間に開口部31a(または開口部32a)の形状を変化させ、そこを透過するレーザ光の光束幅を主走査方向1ライン内で変化させることができる。これにより、上述した理由により、感光体8上でのビーム径を主走査方向1ライン内で変化させることができ、主走査方向の各位置で主走査方向のビーム径が均一となるように、すなわち各位置における主走査方向のビーム径がCOIでの主走査方向のビーム径と等しくなるように、ビーム径を補正することが可能となる。
【0086】
以上のように、光束幅規制素子2bは、入射するレーザ光の光束幅を副走査方向についてのみ規制する上述した遮光部材20と、界面Bの形状を印加電圧に応じて変化させるとともに、その界面形状の変化に応じて、開口部31a(または開口部32a)の大きさを変化させることにより、そこを透過するレーザ光の光束幅を変化させる液体レンズ30(または液体レンズ30’)とを有して構成されているので、光束幅規制素子2bに入射するレーザ光の光束幅を主走査方向にのみ変化させて出射することができ、感光体8上でのビーム径を主走査方向にのみ変化させることができる。
【0087】
これにより、偏向器としてレゾナントスキャナ3を用いるとともに、走査光学系4としてArcSin特性を有するものを用いることによって、あるいは装置の設計誤差等に起因して、感光体8上においてビーム径が主走査方向にのみ変化する場合でも、主走査方向のビーム径を主走査方向の各位置で均一にすることができ、画質を向上させることができる。また、例えばページごとにDPI(Dot Per Inch)を切り替えることも可能となり、多彩なプリントを実現することも可能となる。
【0088】
また、例えば、装置の設計誤差等に起因して、ビーム形状が副走査方向にのみ変化する場合もあり得る。しかし、このような場合でも、例えば、入射するレーザ光の光束幅を主走査方向についてのみ規制するように遮光部材20を構成し(例えば本実施形態の遮光部材20を軸Cを中心に90°回転させて配置し)、これと上述した液体レンズ30(または液体レンズ30’)とを組み合わせることにより、副走査方向のビーム径を主走査方向の各位置で均一にして画質を向上させることができる。
【0089】
また、本実施形態では、同期センサ6および制御部7からなるタイミング検出手段10が、感光体8上における主走査方向の走査開始のタイミングを検出するとともに、その検出結果に基づいて、液体レンズ30(または液体レンズ30’)の界面Bの形状変化に応じて開口部31a(または開口部32a)の大きさを変化させるタイミング(電極34・35への電圧印加タイミング)を制御している。つまり、タイミング検出手段10を光源1の制御手段としてだけでなく、液体レンズ30・30’の制御手段としても用いている。これにより、光源1および液体レンズ30・30’のそれぞれに対応して別々の制御手段を設ける必要がなくなり、装置の構成の簡素化および装置のコスト低減を図ることが可能となる。
【0090】
また、本実施形態では、遮光部材20として、入射するレーザ光の光束幅を副走査方向についてのみ規制するものを用い、液体レンズ30(または液体レンズ30’)において、図1または図13に示したような、主走査方向1ラインの各位置に応じた電圧を電極34・35に印加している。これにより、界面Bの形状変化とともに開口部31a(または開口部32a)の大きさが変化することによって、そこを透過するレーザ光の光束幅が、主走査方向1ラインにおいてCOIに比べてSOIおよびEOIに向かうレーザ光ほど主走査方向に広がることになる。したがって、COIからSOIおよびEOIに向かうにつれて本来なら主走査方向に次第に太るビーム径を主走査方向にのみ狭めることができる。その結果、主走査方向1ライン内でビーム径を確実に均一にすることができ、画質を確実に向上させることができる。
【0091】
なお、本実施形態の光束幅規制素子2bは、遮光部材20を削除して、液体レンズ30のみまたは液体レンズ30’のみで構成することが可能である。ただし、この場合、例えば液体レンズ30・30’の電極34・35を断面楕円形に構成したり、電極34・35を軸Cを含む平面で複数に分割して個々の電極に印加する電圧を異ならせることにより、開口部31aまたは開口部32aを主走査方向または副走査方向のどちらか一方向にのみ偏平な形状に変化させる必要がある。このように光束幅規制素子2bを構成しても、開口部31aまたは開口部32aを透過するレーザ光の光束幅をどちらか一方向にのみ変化させることができるので、上述した本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
なお、本実施形態では、往復振動型の偏向器としてレゾナントスキャナ3を用いた例について説明したが、ガルバノスキャナを用いても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、例えばデジタル複写機やレーザプリンタに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の一形態に係るレーザ走査光学装置に適用される液体レンズの電圧印加手段による電極への電圧印加のタイミングチャートを示す説明図である。
【図2】上記レーザ走査光学装置の概略の構成を示す説明図である。
【図3】上記レーザ走査光学装置に適用されるレゾナントスキャナの概略の構成を示す斜視図である。
【図4】上記レゾナントスキャナの速度特性を示す説明図である。
【図5】上記レーザ走査光学装置に適用される光束幅規制素子の概略の構成を示す断面図および遮光部材の光入射側からの平面図である。
【図6】上記液体レンズの概略の構成を示す断面図である。
【図7】(a)は、上記液体レンズにおいて、電極への電圧印加前の2液の界面の形状を模式的に示す説明図であり、(b)は、電極への電圧印加後の2液の界面の形状を模式的に示す説明図である。
【図8】(a)は、電極への電圧印加前における上記液体レンズの断面図および導電性液体の光入射側からの平面図であり、(b)は、電極への電圧印加後における上記液体レンズの断面図および導電性液体の光入射側からの平面図である。
【図9】(a)は、電極への電圧印加前における他の液体レンズの断面図および絶縁性液体の光射出側からの平面図であり、(b)は、電極への電圧印加後における他の液体レンズの断面図および絶縁性液体の光射出側からの平面図である。
【図10】主走査方向1ライン内の各位置ごとの主走査方向のビーム径の変化率を示す説明図である。
【図11】主走査方向1ライン内の各位置に入射するレーザ光の主走査方向の光束幅の可変率を示す説明図である。
【図12】(a)は、走査光学系に入射するレーザ光の光束幅と、感光体上におけるビーム径との関係の一例を模式的に示す説明図であり、(b)は、上記光束幅と上記ビーム径との関係の他の例を模式的に示す説明図である。
【図13】上記他の液体レンズの電圧印加手段による電極への電圧印加のタイミングチャートを示す説明図である。
【図14】ポリゴンミラーとレゾナントスキャナとの両者において、偏向角と被走査面上での主走査方向のビーム径との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1 光源
2 光源光学系
2a コリメータレンズ(変換素子)
2b 光束幅規制素子
3 レゾナントスキャナ(偏向器)
4 走査光学系
6 同期センサ(タイミング検出手段)
7 制御部(タイミング検出手段)
8 感光体(被走査面)
10 タイミング検出手段
20 遮光部材(規制部材)
30 液体レンズ(液体光学素子)
30’ 液体レンズ(液体光学素子)
31 導電性液体
31a 開口部
32 絶縁性液体
32a 開口部
33 液体収容器
33a 窓部(液体収容器)
33b 窓部(液体収容器)
34 電極(第1の電極)
35 電極(第2の電極)
36 絶縁層
37 電圧印加手段
B 界面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光源と、
前記光源が発した光ビームを偏向器に導く光源光学系と、
前記光源光学系からの光ビームを偏向する偏向器と、
前記偏向器にて偏向された光ビームを被走査面上に集光する走査光学系と、を備えた光ビーム走査光学装置において、
前記光源光学系は、
入射する光ビームを略平行光に変換する変換素子と、
入射する光ビームの光束幅を規制する光束幅規制素子とを有しており、
前記光束幅規制素子は、
主走査方向と副走査方向とのうちでどちらか一方についてのみ、入射する光ビームの光束幅を規制する規制部材と、
透光性液体および遮光性液体からなる2種の液体の界面の形状を印加電圧に応じて変化させるとともに、その界面形状の変化に応じて、遮光性液体に形成される開口部の大きさを変化させることにより、前記開口部を透過する光ビームの光束幅を変化させる液体光学素子とを有していることを特徴とする光ビーム走査光学装置。
【請求項2】
透光性液体および遮光性液体のうちの一方は導電性液体であり、他方は一方と不混和な絶縁性液体であり、
前記液体光学素子は、さらに、
前記2種の液体を収容するとともに、入射する光ビームを透過させる液体収容器と、
前記液体収容器内で導電性液体に接触して設けられる第1の電極と、
前記液体収容器内で導電性液体および絶縁性液体と絶縁層を介して設けられる第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極に電圧を印加する電圧印加手段とを有していることを特徴とする請求項1に記載の光ビーム走査光学装置。
【請求項3】
前記電圧印加手段は、前記第1の電極および前記第2の電極に印加する電圧を主走査方向1ライン内で変化させることにより、前記開口部を透過する光ビームの光束幅を主走査方向1ライン内で変化させることを特徴とする請求項2に記載の光ビーム走査光学装置。
【請求項4】
被走査面上における主走査方向の走査開始のタイミングを検出するとともに、その検出結果に基づいて、前記光源からの光ビームの出射を制御するタイミング検出手段をさらに備え、
前記タイミング検出手段は、さらに、前記検出結果に基づいて、前記液体光学素子の前記界面の形状変化によって前記開口部の大きさを変化させるタイミングを制御することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ビーム走査光学装置。
【請求項5】
前記偏向器は、往復振動型の偏向器であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光ビーム走査光学装置。
【請求項6】
前記規制部材は、入射する光ビームの光束幅を副走査方向についてのみ規制し、
前記液体光学素子は、被走査面上の主走査方向中央部に比べて主走査方向両端部に向かう光ビームほど光束幅が広がるように、2種の液体の界面の形状を変化させて前記開口部の大きさを変化させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光ビーム走査光学装置。
【請求項1】
少なくとも1つの光源と、
前記光源が発した光ビームを偏向器に導く光源光学系と、
前記光源光学系からの光ビームを偏向する偏向器と、
前記偏向器にて偏向された光ビームを被走査面上に集光する走査光学系と、を備えた光ビーム走査光学装置において、
前記光源光学系は、
入射する光ビームを略平行光に変換する変換素子と、
入射する光ビームの光束幅を規制する光束幅規制素子とを有しており、
前記光束幅規制素子は、
主走査方向と副走査方向とのうちでどちらか一方についてのみ、入射する光ビームの光束幅を規制する規制部材と、
透光性液体および遮光性液体からなる2種の液体の界面の形状を印加電圧に応じて変化させるとともに、その界面形状の変化に応じて、遮光性液体に形成される開口部の大きさを変化させることにより、前記開口部を透過する光ビームの光束幅を変化させる液体光学素子とを有していることを特徴とする光ビーム走査光学装置。
【請求項2】
透光性液体および遮光性液体のうちの一方は導電性液体であり、他方は一方と不混和な絶縁性液体であり、
前記液体光学素子は、さらに、
前記2種の液体を収容するとともに、入射する光ビームを透過させる液体収容器と、
前記液体収容器内で導電性液体に接触して設けられる第1の電極と、
前記液体収容器内で導電性液体および絶縁性液体と絶縁層を介して設けられる第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極に電圧を印加する電圧印加手段とを有していることを特徴とする請求項1に記載の光ビーム走査光学装置。
【請求項3】
前記電圧印加手段は、前記第1の電極および前記第2の電極に印加する電圧を主走査方向1ライン内で変化させることにより、前記開口部を透過する光ビームの光束幅を主走査方向1ライン内で変化させることを特徴とする請求項2に記載の光ビーム走査光学装置。
【請求項4】
被走査面上における主走査方向の走査開始のタイミングを検出するとともに、その検出結果に基づいて、前記光源からの光ビームの出射を制御するタイミング検出手段をさらに備え、
前記タイミング検出手段は、さらに、前記検出結果に基づいて、前記液体光学素子の前記界面の形状変化によって前記開口部の大きさを変化させるタイミングを制御することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ビーム走査光学装置。
【請求項5】
前記偏向器は、往復振動型の偏向器であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光ビーム走査光学装置。
【請求項6】
前記規制部材は、入射する光ビームの光束幅を副走査方向についてのみ規制し、
前記液体光学素子は、被走査面上の主走査方向中央部に比べて主走査方向両端部に向かう光ビームほど光束幅が広がるように、2種の液体の界面の形状を変化させて前記開口部の大きさを変化させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光ビーム走査光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−25339(P2009−25339A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185360(P2007−185360)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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