説明

光ピックアップ装置及び対物光学素子

【課題】記録密度が異なる3種類のディスクに対して情報の記録及び/又は再生を適切に行うことができ、その構成の簡素化、低コスト化を実現可能な光ピックアップ装置及び対物光学素子を提供する。
【解決手段】対物光学素子の光学面は、第一光路差付与構造を有する中央領域と第二光路差付与構造を有する周辺領域の二つの領域を有し、光学素子はその中央領域を通過する第一光束、第二光束、第三光束を、それぞれ第1光ディスク、第2光ディスク、第3光ディスクの情報記録面上に集光し、周辺領域を通過する前記第一光束、第二光束を、それぞれ第1光ディスク、第2光ディスクの情報記録面上に集光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる種類の光ディスクに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置及びそれに用いる対物光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ピックアップ装置において、光ディスクに記録された情報の再生や、光ディスクへの情報の記録のための光源として使用されるレーザ光源の短波長化が進み、例えば、青紫色半導体レーザや、第2高調波を利用して赤外半導体レーザの波長変換を行う青色SHGレーザ等、波長400〜420nmのレーザ光源が実用化されつつある。これら青紫色レーザ光源を使用すると、DVD(デジタルバーサタイルディスク)と同じ開口数(NA)の対物光学素子を使用する場合で、直径12cmの光ディスクに対して、15〜20GBの情報の記録が可能となり、対物光学素子のNAを0.85にまで高めた場合には、直径12cmの光ディスクに対して、23〜25GBの情報の記録が可能となる。以下、本明細書では、青紫色レーザ光源を使用する光ディスク及び光磁気ディスクを総称して「高密度光ディスク」という。
【0003】
尚、NA0.85の対物光学素子を使用する高密度光ディスクでは、光ディスクの傾き(スキュー)に起因して発生するコマ収差が増大するため、DVDにおける場合よりも保護層を薄く設計し(DVDの0.6mmに対して、0.1mm)、スキューによるコマ収差量を低減しているものがある。ところで、かかるタイプの高密度光ディスクに対して適切に情報の記録/再生ができると言うだけでは、光ディスクプレーヤ/レコーダ(光情報記録再生装置)の製品としての価値は十分なものとはいえない。現在において、多種多様な情報を記録したDVDやCD(コンパクトディスク)が販売されている現実をふまえると、高密度光ディスクに対して情報の記録/再生ができるだけでは足らず、例えばユーザが所有しているDVDやCDに対しても同様に適切に情報の記録/再生ができるようにすることが、高密度光ディスク用の光ディスクプレーヤ/レコーダとしての商品価値を高めることに通じるのである。このような背景から、高密度光ディスク用の光ディスクプレーヤ/レコーダに搭載される光ピックアップ装置は、高密度光ディスクとDVD、更にはCDとの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できる性能を有することが望まれる。
【0004】
高密度光ディスクとDVD、更にはCDとの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できるようにする方法として、高密度光ディスク用の光学系とDVDやCD用の光学系とを情報を記録/再生する光ディスクの記録密度に応じて選択的に切り替える方法が考えられるが、複数の光学系が必要となるので、小型化に不利であり、またコストが増大する。
【0005】
従って、光ピックアップ装置の構成を簡素化し、低コスト化を図るためには、互換性を有する光ピックアップ装置においても、高密度光ディスク用の光学系とDVDやCD用の光学系とを共通化して、光ピックアップ装置を構成する光学部品点数を極力減らすのが好ましい。そして、光ディスクに対向して配置される対物光学素子を共通化することが光ピックアップ装置の構成の簡素化、低コスト化に最も有利となる。尚、記録/再生波長が互いに異なる複数種類の光ディスクに対して共通な対物光学素子を得るためには、球面収差の波長依存性を有する光路差付与構造を対物光学系に形成する必要がある。
【0006】
特許文献1には、光路差付与構造を有し、高密度光ディスクと従来のDVD及びCDに対して共通に使用可能な対物光学素子を搭載した光ピックアップ装置が記載されている。
【特許文献1】国際公開第2007/102318号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
然るに、光ピックアップ装置のある仕様においては、CDにおけるワーキングディスタンスを長く確保したい場合もあるが、上記の特許文献1に記載された対物光学素子に適用すると、BDと共用を図るために光学面に形成した光路差付与構造としての回折構造のピッチが小さくなりすぎるので、対物光学素子の製造が困難になると共に、光の利用効率が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は、上述の問題を考慮してなされたものであり、対物光学素子として単玉のレンズを用いたとしても、高密度光ディスク(特にHD)とDVDとCD等の、記録密度が異なる3種類のディスクに対して情報の記録及び/又は再生を適切に行うことができる光ピックアップ装置及び対物光学素子であって、CDにおけるワーキングディスタンスを確保できると共に、光路差付与構造のピッチを小さくすることなく、光の利用効率を高く維持することが可能となると共に、その構成の簡素化、低コスト化を実現可能な光ピックアップ装置及び対物光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、第一波長λ1の第一光束を射出する第一光源と、第二波長λ2(λ2>λ1)の第二光束を射出する第二光源と、第三波長λ3(λ3>λ2)の第三光束を射出する第三光源と、前記第一光束を厚さがt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を厚さがt2(0.9・t1<t2<1.1・t1)の保護基板を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有する第3光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子と、を有し、前記第一光束を前記第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を前記第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を前記第3光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、
前記対物光学素子の光学面は、中央領域と前記中央領域の周りの周辺領域の少なくとも二つの領域を有し、前記中央領域は第一光路差付与構造を有し、前記周辺領域は第二光路差付与構造を有し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記中央領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第三光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記周辺領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子の前記第一光路差付与構造を通過した前記第三光束によって、第一ベストフォーカスと第二ベストフォーカスとが形成され、前記第一ベストフォーカスの光量は、前記第三光束が形成する他のいかなるスポットよりも光量が大きく、前記第二ベストフォーカスの光量は、前記第一ベストフォーカスの次に大きく、
前記第一ベストフォーカスと前記第二ベストフォーカスは、下記の式(1)の関係を満たし、
更に(2)式を満たすことを特徴とする。
0.05<L/f3<0.20 (1)
0.5≦d/f1≦1.0 (2)
但し、f3[mm]は前記第一光路差付与構造を通過し、前記第一ベストフォーカスを形成する前記第三光束の焦点距離を指し、L[mm]は前記第一ベストフォーカスと前記第二ベストフォーカスの間の距離を指す。又、前記対物光学素子の前記第一光束における焦点距離をf1(mm)、前記対物光学素子の中心厚さをd(mm)とする。
【0010】
本発明によれば、HD、DVD、CDの3種類の光ディスクを単一の対物光学素子を用いて記録及び/又は再生を行うことが可能になると共に、(1)式を満たすことによりCDの記録/再生時に不要光がセンサ上で悪影響を及ぼすことを回避させつつ、(2)式を満たすように対物光学素子の軸上厚さを抑えることにより、光路差付与構造のピッチを小さくすることなく、第3光ディスクとしてのCDのワーキングディスタンスを確保でき、対物光学素子の製造も容易にする事が出来、加えて、光の利用効率を高く維持することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の光ピックアップ装置は、請求項1に記載の発明において、前記対物光学素子を通過した前記第三光束が前記第3光ディスクの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸方向から見た際に、スポットの中心から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部、光量密度が前記スポット中心部より低いスポット中間部、光量密度が前記スポット中間部よりも高く前記スポット中心部よりも低いスポット周辺部とが形成され、
前記スポット中心部が前記第3光ディスクの情報の記録及び/又は再生に用いられ、前記スポット中間部及び前記スポット周辺部は前記第3光ディスクの情報の記録及び/又は再生に用いられず、
前記対物光学素子の前記第二光路差付与構造を通過した前記第三光束によって、前記第3光ディスクの情報記録面上で前記スポット周辺部が形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の光ピックアップ装置は、請求項1又は2に記載の発明において、前記第一ベストフォーカスにおいて前記第三光束が形成する前記スポットが、前記第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられ、前記第二ベストフォーカスにおいて前記第三光束が形成する前記スポットは、前記第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられないことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに屈折面である最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに、第三光路差付与構造を有する最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の光ピックアップ装置は、請求項4又は5に記載の発明において、前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記最周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光することを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記第一光路差付与構造は、前記第一光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第二光束の波長差に起因して生じる色収差を補正することを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、前記第一光路差付与構造は、前記第一光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第三光束に対して、前記第1光ディスクの保護基板の厚さt1と前記第3光ディスクの保護基板の厚さt3の違いにより発生する球面収差を補正することを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明において、前記第二光路差付与構造は、前記第二光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第二光束の波長差に起因して生じる色収差を補正することを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至9のいずれかに記載の発明において、前記第一光束及び前記第二光束の、前記対物光学素子の倍率m1、m2が、下記の式(3)、(4)を満たすことを特徴とする。
−0.02<m1<0.02 (3)
−0.02<m2<0.02 (4)
【0020】
請求項11に記載の光ピックアップ装置は、請求項10に記載の発明において、 前記第三光束の、前記対物光学素子の倍率m3が、下記の式(5)を満たすことを特徴とする。
−0.02<m3<0.02 (5)
【0021】
請求項12に記載の光ピックアップ装置は、請求項10に記載の発明において、前記第三光束の、前記対物光学素子の倍率m3が、下記の式(6)を満たすことを特徴とする。
−0.10<m3<0.00 (6)
【0022】
請求項13に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至12のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子は、単玉レンズであることを特徴とする。
【0023】
請求項14に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至13のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造及び前記第二光路差付与構造を有することを特徴とする。
【0024】
請求項15に記載の光ピックアップ装置は、請求項4に記載の発明において、 前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造、前記第二光路差付与構造及び屈折面である前記最周辺領域を有することを特徴とする。
【0025】
請求項16に記載の光ピックアップ装置は、請求項5に記載の発明において、前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造、前記第二光路差付与構造及び前記第三光路差付与構造を有する前記最周辺領域を有することを特徴とする。
【0026】
請求項17に記載の対物光学素子は、第一波長λ1の第一光束を射出する第一光源と、第二波長λ2(λ2>λ1)の第二光束を射出する第二光源と、第三波長λ3(λ3>λ2)の第三光束を射出する第三光源と、前記第一光束を厚さがt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を厚さがt2(0.9・t1<t2<1.1・t1)の保護基板を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有する第3光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子と、を有し、前記第一光束を前記第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を前記第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を前記第3光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置の対物光学素子において、
前記対物光学素子の光学面は、中央領域と前記中央領域の周りの周辺領域の少なくとも二つの領域を有し、前記中央領域は第一光路差付与構造を有し、前記周辺領域は第二光路差付与構造を有し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記中央領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第三光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記周辺領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子の前記第一光路差付与構造を通過した前記第三光束によって、第一ベストフォーカスと第二ベストフォーカスとが形成され、前記第一ベストフォーカスの光量は、前記第三光束が形成する他のいかなるスポットよりも光量が大きく、前記第二ベストフォーカスの光量は、前記第一ベストフォーカスの次に大きく、
前記第一ベストフォーカスと前記第二ベストフォーカスは、下記の式(1)の関係を満たし、
更に(2)式を満たすことを特徴とする。
0.05<L/f3<0.20 (1)
0.5≦d/f1≦1.0 (2)
但し、f3[mm]は前記第一光路差付与構造を通過し、前記第一ベストフォーカスを形成する前記第三光束の焦点距離を指し、L[mm]は前記第一ベストフォーカスと前記第二ベストフォーカスの間の距離を指す。又、前記対物光学素子の前記第一光束における焦点距離をf1(mm)、中心厚さをd(mm)とする。
【0027】
請求項18に記載の対物光学素子は、請求項17に記載の発明において、前記対物光学素子を通過した前記第三光束が前記第3光ディスクの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸方向から見た際に、スポットの中心から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部、光量密度が前記スポット中心部より低いスポット中間部、光量密度が前記スポット中間部よりも高く前記スポット中心部よりも低いスポット周辺部とが形成され、
前記スポット中心部が前記第3光ディスクの情報の記録及び/又は再生に用いられ、前記スポット中間部及び前記スポット周辺部は前記第3光ディスクの情報の記録及び/又は再生に用いられず、
前記対物光学素子の前記第二光路差付与構造を通過した前記第三光束によって、前記第3光ディスクの情報記録面上で前記スポット周辺部が形成されることを特徴とする。
【0028】
請求項19に記載の対物光学素子は、請求項17又は18に記載の発明において、前記第一ベストフォーカスにおいて前記第三光束が形成する前記スポットが、前記第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられ、前記第二ベストフォーカスにおいて前記第三光束が形成する前記スポットは、前記第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられないことを特徴とする。
【0029】
請求項20に記載の対物光学素子は、請求項17乃至19のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに屈折面である最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする。
【0030】
請求項21に記載の対物光学素子は、請求項17乃至19のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに、第三光路差付与構造を有する最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする。
【0031】
請求項22に記載の対物光学素子は、請求項20又は21に記載の発明において、前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記最周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光することを特徴とする。
【0032】
請求項23に記載の対物光学素子は、請求項17乃至22のいずれかに記載の発明において、前記第一光路差付与構造は、前記第一光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第二光束の波長差に起因して生じる色収差を補正することを特徴とする。
【0033】
請求項24に記載の対物光学素子は、請求項17乃至23のいずれかに記載の発明において、前記第一光路差付与構造は、前記第一光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第三光束に対して、前記第1光ディスクの保護基板の厚さt1と前記第3光ディスクの保護基板の厚さt3の違いにより発生する球面収差を補正することを特徴とする。
【0034】
請求項25に記載の対物光学素子は、請求項17乃至24のいずれかに記載の発明において、前記第二光路差付与構造は、前記第二光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第二光束の波長差に起因して生じる色収差を補正することを特徴とする。
【0035】
請求項26に記載の対物光学素子は、請求項17乃至25のいずれかに記載の発明において、前記第一光束及び前記第二光束の、前記対物光学素子への入射光束の倍率m1、m2が、下記の式(3)、(4)を満たすことを特徴とする。
−0.02<m1<0.02 (3)
−0.02<m2<0.02 (4)
【0036】
請求項27に記載の対物光学素子は、請求項26に記載の発明において、前記第三光束の、前記対物光学素子への入射光束の倍率m3が、下記の式(5)を満たすことを特徴とする。
−0.02<m3<0.02 (5)
【0037】
請求項28に記載の対物光学素子は、請求項26に記載の発明において、前記第三光束の、前記対物光学素子への入射光束の倍率m3が、下記の式(6)を満たすことを特徴とする。
−0.10<m3<0.00 (6)
【0038】
請求項29に記載の対物光学素子は、請求項17乃至28のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子は、単玉レンズであることを特徴とする。
【0039】
請求項30に記載の対物光学素子は、請求項17乃至29のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造及び前記第二光路差付与構造を有することを特徴とする。
【0040】
請求項31に記載の対物光学素子は、請求項20に記載の発明において、前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造、前記第二光路差付与構造及び屈折面である前記最周辺領域を有することを特徴とする。
【0041】
請求項32に記載の対物光学素子は、請求項21に記載の発明において、前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造、前記第二光路差付与構造及び前記第三光路差付与構造を有する前記最周辺領域を有することを特徴とする。
【0042】
請求項33に記載の光ピックアップ装置は、第一波長λ1の第一光束を射出する第一光源と、第二波長λ2(λ2>λ1)の第二光束を射出する第二光源と、第三波長λ3(λ3>λ2)の第三光束を射出する第三光源と、前記第一光束を厚さがt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を厚さがt2(0.9・t1<t2<1.1・t1)の保護基板を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有する第3光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子と、を有し、前記第一光束を前記第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を前記第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を前記第3光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、
前記対物光学素子の光学面は、中央領域と前記中央領域の周りの周辺領域の少なくとも二つの領域を有し、前記中央領域は第一光路差付与構造を有し、前記周辺領域は第二光路差付与構造を有し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記中央領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第三光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記周辺領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記第一光路差付与構造は、少なくとも第一基礎構造と第二基礎構造とを重畳してなる構造であり、
前記第一基礎構造は、前記第一基礎構造を通過した前記第一光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であり、
前記第二基礎構造は、前記第二基礎構造を通過した前記第一光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の±1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であり、
更に(2)式を満たすことを特徴とする。
0.5≦d/f1≦1.0 (2)
但し、前記対物光学素子の前記第一光束における焦点距離をf1(mm)、中心厚さをd(mm)とする。
【0043】
本発明によれば、HD、DVD、CDの3種類の光ディスクを単一の対物光学素子を用いて記録及び/又は再生を行うことが可能になると共に、(1)式を満たすことによりCDの記録/再生時に不要光がセンサ上で悪影響を及ぼすことを回避させつつ、(2)式を満たすように対物光学素子の軸上厚さを抑えることにより、光路差付与構造のピッチを小さくすることなく、第3光ディスクとしてのCDのワーキングディスタンスを確保でき、対物光学素子の製造も容易にする事が出来、加えて、光の利用効率を高く維持することが可能となる。
【0044】
請求項34に記載の光ピックアップ装置は、請求項33に記載の発明において、前記第二光路差付与構造は、前記第二光路差付与構造を通過した前記第一光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であることを特徴とする。
【0045】
請求項35に記載の光ピックアップ装置は、請求項33又は34に記載の発明において、前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに屈折面である最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする。
【0046】
請求項36に記載の光ピックアップ装置は、請求項33又は34に記載の発明において、前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに、第三光路差付与構造を有する最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする。
【0047】
請求項37に記載の光ピックアップ装置は、請求項36に記載の発明において、前記第三光路差付与構造は、前記第三光路差付与構造を通過した前記第一光束の5次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の3次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の3次または2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であることを特徴とする。
【0048】
請求項38に記載の光ピックアップ装置は、請求項33乃至37のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子は、単玉レンズであることを特徴とする。
【0049】
請求項39に記載の光ピックアップ装置は、請求項33乃至38のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子がプラスチックレンズであることを特徴とする。
【0050】
請求項40に記載の光ピックアップ装置は、請求項33乃至38のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子がガラスレンズであることを特徴とする。
【0051】
請求項41に記載の対物光学素子は、第一波長λ1の第一光束を射出する第一光源と、第二波長λ2(λ2>λ1)の第二光束を射出する第二光源と、第三波長λ3(λ3>λ2)の第三光束を射出する第三光源と、前記第一光束を厚さがt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を厚さがt2(0.9・t1<t2<1.1・t1)の保護基板を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有する第3光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子と、を有し、前記第一光束を前記第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を前記第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を前記第3光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置の対物光学素子において、
前記対物光学素子の光学面は、中央領域と前記中央領域の周りの周辺領域の少なくとも二つの領域を有し、前記中央領域は第一光路差付与構造を有し、前記周辺領域は第二光路差付与構造を有し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記中央領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第三光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記周辺領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記第一光路差付与構造は、少なくとも第一基礎構造と第二基礎構造とを重畳してなる構造であり、
前記第一基礎構造は、前記第一基礎構造を通過した前記第一光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であり、
前記第二基礎構造は、前記第二基礎構造を通過した前記第一光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の±1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であり、
更に(2)式を満たすことを特徴とする。
0.5≦d/f1≦1.0 (2)
但し、前記対物光学素子の前記第一光束における焦点距離をf1(mm)、中心厚さをd(mm)とする。
【0052】
請求項42に記載の対物光学素子は、請求項41に記載の発明において、前記第二光路差付与構造は、前記第二光路差付与構造を通過した前記第一光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であることを特徴とする。
【0053】
請求項43に記載の対物光学素子は、請求項41又は42に記載の発明において、前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに屈折面である最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする。
【0054】
請求項44に記載の対物光学素子は、請求項41又は42に記載の発明において、前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに、第三光路差付与構造を有する最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする。
【0055】
請求項45に記載の対物光学素子は、請求項44に記載の発明において、前記第三光路差付与構造は、前記第三光路差付与構造を通過した前記第一光束の5次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の3次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の3次または2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であることを特徴とする。
【0056】
請求項46に記載の対物光学素子は、請求項41乃至45のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子は、単玉レンズであることを特徴とする。
【0057】
請求項47に記載の対物光学素子は、請求項41乃至46のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子がプラスチックレンズであることを特徴とする。
【0058】
請求項48に記載の対物光学素子は、請求項41乃至46のいずれかに記載の発明において、前記対物光学素子がガラスレンズであることを特徴とする。
【0059】
本発明に係る光ピックアップ装置は、第一光源、第二光源、第三光源の少なくとも3つの光源を有する。さらに、本発明の光ピックアップ装置は、第一光束を第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、第二光束を第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、第三光束を第3光ディスクの情報記録面上に集光させるための集光光学系を有する。また、本発明の光ピックアップ装置は、第1光ディスク、第2光ディスク又は第3光ディスクの情報記録面からの反射光束を受光する受光素子を有する。
【0060】
第1光ディスクは、厚さがt1の保護基板と情報記録面とを有する。第2光ディスクは厚さがt2(0.9・t1<t2<1.1・t1)の保護基板と情報記録面とを有する。第3光ディスクは、厚さがt3(t2<t3)の保護基板と情報記録面とを有する。なお、第1光ディスク、第2光ディスク又は第3光ディスクは、複数の情報記録面を有する複数層の光ディスクでもよい。
【0061】
本明細書においては、高密度光ディスクの例としては、NA0.65乃至0.67の対物光学素子により情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度である規格の光ディスク(例えば、HD DVD:単にHDともいう)が挙げられる。また、高密度光ディスクには、情報記録面上に数〜数十nm程度の厚さの保護膜(本明細書では、保護基板は保護膜も含むものとする)を有する光ディスクや、保護基板の厚さが0の光ディスクも含まれる。また、高密度光ディスクには、情報の記録/再生用の光源として、青紫色半導体レーザや青紫色SHGレーザが用いられる光磁気ディスクも含まれるものとする。更に、本明細書においては、DVDとは、NA0.60〜0.67程度の対物光学素子により情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD−Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。また、本明細書においては、CDとは、NA0.45〜0.51程度の対物光学素子により情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが1.2mm程度であるCD系列光ディスクの総称であり、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等を含む。尚、記録密度については、高密度光ディスクの記録密度が最も高く、次いでDVD、CDの順に低くなる。
【0062】
なお、保護基板の厚さt1、t2、t3に関しては、以下の条件式(7)、(8)、(9)を満たすことが好ましいが、これに限られない。
【0063】
0.5mm≦t1≦0.7mm (7)
0.5mm≦t2≦0.7mm (8)
1.0mm≦t3≦1.3mm (9)
【0064】
本明細書において、第一光源、第二光源、第三光源は、好ましくはレーザ光源である。レーザ光源としては、好ましくは半導体レーザ、シリコンレーザ等を用いることが出来る。第一光源から出射される第一光束の第一波長λ1、第二光源から出射される第二光束の第二波長λ2(λ2>λ1)、第三光源から出射される第三光束の第三波長λ3(λ3>λ2)は以下の条件式(10)、(11)を満たすことが好ましい。
【0065】
1.5×λ1<λ2<1.7×λ1 (10)
1.9×λ1<λ3<2.1×λ1 (11)
【0066】
また、第1光ディスク、第2光ディスク、第3光ディスクとして、それぞれ、HD、DVD及びCDが用いられる場合、第一光源の第一波長λ1は好ましくは、350nm以上、440nm以下、より好ましくは、380nm以上、415nm以下であって、第二光源の第二波長λ2は好ましくは570nm以上、680nm以下、より好ましくは630nm以上、670nm以下であって、第三光源の第三波長λ3は好ましくは、750nm以上、880nm以下、より好ましくは、760nm以上、820nm以下である。
【0067】
また、第一光源、第二光源、第三光源のうち少なくとも2つの光源をユニット化してもよい。ユニット化とは、例えば第一光源と第二光源とが1パッケージに固定収納されているようなものをいうが、これに限られず、2つの光源が収差補正不能なように固定されている状態を広く含むものである。また、光源に加えて、後述する受光素子を1パッケージ化してもよい。
【0068】
受光素子としては、フォトダイオードなどの光検出器が好ましく用いられる。光ディスクの情報記録面上で反射した光が受光素子へ入射し、その出力信号を用いて、各光ディスクに記録された情報の読み取り信号が得られる。さらに、受光素子上のスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、この検出に基づいて、合焦、トラッキングのために対物光学素子を移動させることが出来る。受光素子は、複数の光検出器からなっていてもよい。受光素子は、メインの光検出器とサブの光検出器を有していてもよい。例えば、情報の記録再生に用いられるメイン光を受光する光検出器の両脇に2つのサブの光検出器を設け、当該2つのサブの光検出器によってトラッキング調整用のサブ光を受光するような受光素子としてもよい。また、受光素子は各光源に対応した複数の受光素子を有していてもよい。
【0069】
集光光学系は、対物光学素子を有する。集光光学系は、対物光学素子のみを有していても良いが、集光光学系は、対物光学素子の他にコリメータレンズ等のカップリングレンズを有していてもよい。カップリングレンズとは、対物光学素子と光源の間に配置され、光束の発散角を変える単レンズ又はレンズ群のことをいう。コリメータレンズは、カップリングレンズの一種で、コリメータレンズに入射した光を平行光にして出射するレンズである。更に集光光学系は、光源から射出された光束を、情報の記録再生に用いられるメイン光束と、トラッキング等に用いられる二つのサブ光束とに分割する回折光学素子などの光学素子を有していてもよい。本明細書において、対物光学素子とは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系を指す。好ましくは、対物光学素子とは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系であって、更に、アクチュエータにより少なくとも光軸方向に一体的に変異可能とされた光学系を指す。対物光学素子は、好ましくは単玉の対物レンズである。また、対物光学素子は、ガラスレンズであってもプラスチックレンズであっても、又は、ガラスレンズの上に光硬化性樹脂などで光路差付与構造などを設けたハイブリッドレンズであってもよい。また、対物光学素子は、屈折面が非球面であることが好ましい。また、対物光学素子は、光路差付与構造が設けられるベース面が非球面であることが好ましい。
【0070】
また、対物光学素子をガラスレンズとする場合は、ガラス転移点Tgが400℃以下であるガラス材料を使用することが好ましい。ガラス転移点Tgが400℃以下であるガラス材料を使用することにより、比較的低温での成形が可能となるので、金型の寿命を延ばすことが出来る。このようなガラス転移点Tgが低いガラス材料としては、例えば(株)住田光学ガラス製のK−PG325や、K−PG375(共に製品名)がある。
【0071】
ところで、ガラスレンズは一般的に樹脂レンズよりも比重が大きいため、対物光学素子をガラスレンズとすると、重量が大きくなり対物光学素子を駆動するアクチュエータに負担がかかる。そのため、対物光学素子をガラスレンズとする場合には、比重が小さいガラス材料を使用するのが好ましい。具体的には、比重が3.0以下であるのが好ましく、2.8以下であるのがより好ましい。
【0072】
また、対物光学素子をプラスチックレンズとする場合は、環状オレフィン系の樹脂材料を使用するのが好ましく、環状オレフィン系の中でも、波長405nmに対する温度25℃での屈折率が1.54乃至1.60の範囲内であって、−5℃から70℃の温度範囲内での温度変化に伴う波長405nmに対する屈折率変化率dN/dT(℃-1)が−20×10-5乃至−5×10-5(より好ましくは、−10×10-5乃至−8×10-5)の範囲内である樹脂材料を使用するのがより好ましい。また、対物光学素子をプラスチックレンズとする場合、カップリングレンズもプラスチックレンズとすることが好ましい。
【0073】
対物光学素子について、以下に記載する。対物光学素子の少なくとも一つの光学面が、中央領域と、中央領域の周りの周辺領域とを有する。対物光学素子の少なくとも一つの光学面が、周辺領域の周りに最周辺領域を有していてもよい。中央領域は、対物光学素子の光軸を含む領域であることが好ましいが、含まない領域であってもよい。中央領域、周辺領域、及び最周辺領域は同一の光学面上に設けられていることが好ましい。図1に示されるように、中央領域CN、周辺領域MD、最周辺領域OTは、同一の光学面上に、光軸を中心とする同心円状に設けられていることが好ましい。また、対物光学素子の中央領域には第一光路差付与構造が設けられ、周辺領域には第二光路差付与構造が設けられている。最周辺領域を有する場合、最周辺領域は屈折面であってもよいし、最周辺領域に第三光路差付与構造が設けられていてもよい。中央領域、周辺領域、最周辺領域はそれぞれ隣接していることが好ましいが、間に僅かに隙間があっても良い。
【0074】
第一光路差付与構造は、対物光学素子の中央領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第一光路差付与構造が、中央領域の全面に設けられていることである。第二光路差付与構造は、対物光学素子の周辺領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第二光路差付与構造が、周辺領域の全面に設けられていることである。第三光路差付与構造は、対物光学素子の最周辺領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第三光路差付与構造が、最周辺領域の全面に設けられていることである。
【0075】
なお、本明細書でいう光路差付与構造とは、入射光束に対して光路差を付加する構造の総称である。光路差付与構造には、位相差を付与する位相差付与構造も含まれる。また、位相差付与構造には回折構造が含まれる。光路差付与構造は、段差を有し、好ましくは段差を複数有する。この段差により入射光束に光路差及び/又は位相差が付加される。光路差付与構造により付加される光路差は、入射光束の波長の整数倍であっても良いし、入射光束の波長の非整数倍であっても良い。段差は、光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。
【0076】
光路差付与構造は、光軸を中心とする同心円状の複数の輪帯を有することが好ましい。また、光路差付与構造は、様々な断面形状(光軸を含む面での断面形状)をとり得る。最も一般的な光路差付与構造の断面形状としては、図2(a)に記載されるような、光路差付与構造の光軸を含む断面形状が鋸歯状である場合である。平面の光学素子に光路差付与構造を設けた場合に断面が階段状に見えるものも、非球面レンズ面等に同様の光路差付与構造を設けた場合は、図2(a)のような鋸歯状の断面形状と捉えることができる。従って、本明細書でいう鋸歯状の断面形状には、階段状の断面形状も含まれるものとする。また、段差の向きの異なる鋸歯状の光路差付与構造を重畳することによって、図2(b)に示すようなバイナリ構造の光路差付与構造を得ることも可能である。本明細書の第一光路差付与構造及び第二光路差付与構造は、その断面形状を異なる鋸歯状の光路差付与構造を重畳した構造としてもよいし、鋸歯状の光路差付与構造を重畳してできるバイナリ構造の光路差付与構造に、さらに鋸歯状の光路差付与構造を重畳した構造としてもよい。例えば、図2(c)は鋸歯状の構造とバイナリ構造を重畳した構造であり、図2(d)は細かい鋸歯状の構造と荒い鋸歯状の構造を重畳した構造である。
【0077】
また、対物光学素子の中央領域に設けられる第一光路差付与構造と、対物光学素子の周辺領域に設けられる第二光路差付与構造は、対物光学素子の異なる光学面に設けられていてもよいが、同一の光学面に設けられることが好ましい。同一の光学面に設けられることにより、製造時の偏芯誤差を少なくすることが可能となるため好ましい。また、第一光路差付与構造及び第二光路差付与構造は、対物光学素子の光ディスク側の面よりも、対物光学素子の光源側の面に設けられることが好ましい。
【0078】
対物光学素子は、対物光学素子の第一光路差付与構造が設けられた中央領域を通過する第一光束、第二光束及び第三光束を、それぞれ集光スポットを形成するように集光する。好ましくは、対物光学素子は、対物光学素子の第一光路差付与構造が設けられた中央領域を通過する第一光束を、第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光する。また、対物光学素子は、対物光学素子の第一光路差付与構造が設けられた中央領域を通過する第二光束を、第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光する。さらに、対物光学素子は、対物光学素子の第一光路差付与構造が設けられた中央領域を通過する第三光束を、第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光する。また、第1光ディスクの保護基板の厚さt1と第2光ディスクの保護基板の厚さt2が異なる場合、第一光路差付与構造は、第一光路差付与構造を通過する第一光束及び第二光束に対して、第1光ディスクの保護基板の厚さt1と第2光ディスクの保護基板の厚さt2の違いにより発生する球面収差及び/又は第一光束と第二光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。さらに、第一光路差付与構造は、第一光路差付与構造を通過した第一光束及び第三光束に対して、第1光ディスクの保護基板の厚さt1と第3光ディスクの保護基板の厚さt3との違いにより発生する球面収差及び/又は第一光束と第三光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。
【0079】
また、対物光学素子の第一光路差付与構造を通過した第三光束によって、第三光束が形成するスポットの光量が最も大きい第一ベストフォーカスと、スポットの光量が次に大きい第二ベストフォーカスとが形成される。好ましくは、第三光束が形成するスポットのスポット径が最も小さくなるところが第一ベストフォーカスであり、第三光束が形成するスポットのスポット径が第一ベストフォーカスの次に小さくなるところが第二ベストフォーカスであることが好ましい。なお、ここでいうベストフォーカスとは、ビームウェストが、あるデフォーカスの範囲で極小となる点を指すことが好ましい。つまり、第三光束によって、第一ベストフォーカス及び第二ベストフォーカスが形成されるということは、第三光束において、或るデフォーカスの範囲でビームウェストが極小となる点が、少なくとも2点存在するということである。また、第一ベストフォーカスを形成する回折光の回折効率と、第二ベストフォーカスを形成する回折光の回折効率の差が20%以下である場合に、本発明の効果がより顕著となる。
【0080】
尚、第一ベストフォーカスにおいて第三光束が形成するスポットが、第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられ、第二ベストフォーカスにおいて第三光束が形成するスポットは、第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられないことが好ましいが、第一ベストフォーカスにおいて第三光束が形成するスポットが、第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられず、第二ベストフォーカスにおいて第三光束が形成するスポットが、第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられるような態様を否定するものではない。なお、第一光路差付与構造が、対物光学素子の光源側の面に設けられている場合、第二ベストフォーカスの方が、第一ベストフォーカスに比して対物光学素子に近い方が好ましい。
【0081】
さらに、第一ベストフォーカスと第二ベストフォーカスは、下記の式(1)を満たす。
0.05<L/f3<0.20 (1)
但し、f3[mm]は第一光路差付与構造を通過し、第一ベストフォーカスを形成する第三光束の焦点距離を指し、L[mm]は第一ベストフォーカスと第二ベストフォーカスの間の距離を指す。
【0082】
なお、下記の式(1)’を満たすことがより好ましい。
0.07<≦L/f3<0.15 (1)’
【0083】
また、Lは、0.18mm以上、0.30mm以下であることが好ましい。さらに、fは、1.8mm以上、3.0mm以下であることが好ましい。
【0084】
上記構成により、第3光ディスクの記録及び/又は再生時に、第三光束のうち第3光ディスクの記録及び/又は再生時に用いられない不要光がトラッキング用の受光素子に悪影響を及ぼすことを防ぐことが可能となり、第3光ディスクの記録及び/又は再生時に良好なトラッキング性能を維持することが可能となる。加えて、第一光路差付与構造のピッチが小さくなりすぎることを防止でき、対物光学素子の製造をより容易にすると共に、光利用効率を高く維持できる。
【0085】
さらに、対物光学素子の第一光束における焦点距離をf1(mm)とし、対物光学素子の中心厚さをd(mm)とした際に、下記の式(2)を満たす。
0.5≦d/f1≦1.0 (2)
【0086】
なお、下記の式(2)’を満たすことがより好ましい。
0.5≦d/f1≦0.8 (2)’
【0087】
上記構成により、光路差付与構造のピッチを小さくすることなく、第3光ディスクとしてのCDのワーキングディスタンスを確保でき、対物光学素子の製造も容易にする事が出来、加えて、光の利用効率を高く維持することが可能となる。
【0088】
また、以下の条件式を満たすことが好ましい。
2.1mm≦φ≦4.2mm
尚、Φは、第2光ディスク使用時の対物光学素子の有効径を表す。上記範囲を満たすことにより、第3光ディスクとしてのCDのワーキングディスタンスを実使用上問題ないレベルの距離を確保しつつ、例え、対物光学素子がプラスチックレンズであったとしても、温度変化時における収差変化を問題ないレベルに維持することができる。
【0089】
また、対物光学素子は、対物光学素子の第二光路差付与構造が設けられた周辺領域を通過する第一光束及び第二光束を、それぞれ集光スポットを形成するように集光する。好ましくは、対物光学素子は、対物光学素子の第二光路差付与構造が設けられた周辺領域を通過する第一光束を、第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光する。また、対物光学素子は、対物光学素子の第二光路差付与構造が設けられた周辺領域を通過する第二光束を、第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光する。また第二光路差付与構造は、第二光路差付与構造を通過する第一光束及び第二光束の波長の違いにより発生する色球面収差を補正することが好ましい。
【0090】
また、好ましい態様として、周辺領域を通過した第三光束は、第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられない態様が挙げられる。周辺領域を通過した第三光束が、第3光ディスクの情報記録面上で集光スポットの形成に寄与しないようにすることが好ましい。つまり、対物光学素子の第二光路差付与構造が設けられた周辺領域を通過する第三光束は、第3光ディスクの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。図5に示すように、対物光学素子を通過した第三光束が第3光ディスクの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸側(又はスポット中心部)から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部SCN、光量密度がスポット中心部より低いスポット中間部SMD、光量密度がスポット中間部よりも高くスポット中心部よりも低いスポット周辺部SOTを有する。スポット中心部が、光ディスクの情報の記録及び/又は再生に用いられ、スポット中間部及びスポット周辺部は、光ディスクの情報の記録及び/又は再生には用いられない。上記において、このスポット周辺部をフレアと言っている。つまり、対物光学素子の周辺領域に設けられた第二光路差付与構造を通過した第三光束は、第3光ディスクの情報記録面上でスポット周辺部を形成する。なお、ここでいう第三光束の集光スポット又はスポットは、第一ベストフォーカスにおけるスポットであることが好ましい。また、対物光学素子を通過した第二光束においても、第2光ディスクの情報記録面上で形成するスポットが、スポット中心部、スポット中間部、スポット周辺部を有することが好ましい。
【0091】
対物光学素子が、中央領域と周辺領域に加え、最周辺領域を有する場合、対物光学素子は、対物光学素子の最周辺領域を通過する第二光束を、第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光する。また、最周辺領域を通過した第二光束において、第2光ディスクの記録及び/又は再生時にその球面収差が補正されていることが好ましい。尚、対物光学素子は、中央領域と周辺領域のみからなっていてもよい。第1光ディスクであるHDと第2光ディスクであるDVDにおける必要開口数がほぼ等しいため、中央領域と周辺領域のみからなる場合と、中央領域、周辺領域に加え、最周辺領域を有する場合の何れの態様も考えられる。
【0092】
また、最周辺領域を有する場合の好ましい態様として、最周辺領域を通過した第一光束は、第1光ディスクの記録及び/又は再生に用いられず、最周辺領域を通過した第三光束は、第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられない態様が挙げられる。最周辺領域を通過した第一光束及び第三光束が、それぞれ第1光ディスク及び第3光ディスクの情報記録面上での集光スポットの形成に寄与しないようにすることが好ましい。つまり、対物光学素子が最周辺領域を有する場合、対物光学素子の最周辺領域を通過する第三光束は、第3光ディスクの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。言い換えると、対物光学素子の最周辺領域を通過した第三光束は、第3光ディスクの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましい。また、対物光学素子が最周辺領域を有する場合、対物光学素子の最周辺領域を通過する第一光束は、第1光ディスクの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。言い換えると、対物光学素子の最周辺領域を通過した第一光束は、第1光ディスクの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましい。
【0093】
最周辺領域が第三光路差付与構造を有する場合、第三光路差付与構造が、第三光路差付与構造を通過した第二光束に対して、第二光源の波長の僅かな変動によって発生するスフェロクロマティズム(色球面収差)を補正するようにしてもよい。波長の僅かな変動とは、±10nm以内の変動を指す。例えば、第二光束が波長λ2より±5nm変化した際に、第三光路差付与構造によって、最周辺領域を通過した第二光束の球面収差の変動を補償し、第2光ディスクの情報記録面上での波面収差の変化量が0.001λ2rms以上、0.070λ2rms以下となるようにすることが好ましい。
【0094】
なお、第一光路差付与構造は、鋸歯状の回折構造とバイナリ構造を重畳してなる構成であってもよい。また、第二光路差付与構造は、鋸歯状の回折構造と、より荒い(ピッチの大きい)鋸歯状の回折構造を重畳してなる構成であってもよい。第一光路差付与構造又は第二光路差付与構造が当該重畳構造の場合、当該鋸歯状の回折構造(第二光路差付与構造の場合、荒くない(ピッチの小さい)方の回折構造)については、第一光束の第一波長λ1の偶数倍相当の光路差を第一光束に付与するようにし、それにより第一光束は波面の位相に変化を生じないようにしてもよい。更に、第三光束の第三波長λ3が、第一光束の第一波長のほぼ偶数倍の波長であるときは、整数倍の光路差を第三光束に付与されることになり、同様に第三光束の波面の位相に変化を生じないことになる。この様な構成により、第一光束と第三光束は、当該回折構造によって集光に影響を及ぼされることがないという利点がある。なお、偶数倍相当とは、nを自然数とした場合、(2n−0.1)×λ1以上、(2n+0.1)×λ1以下の範囲を言う。
【0095】
なお、第一光路差付与構造は、少なくとも第一基礎構造と第二基礎構造とを重ね合わせた構造としてもよい。
【0096】
第一基礎構造は、第一基礎構造を通過した第一光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第二光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第三光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造である。第一基礎構造は、第一基礎構造を通過した第一光束及び第三光束を、波面が略そろった状態で射出し、第一基礎構造を通過した第二光束を、波面がそろわない状態で射出する光路差付与構造であることが好ましい。また、第一基礎構造は、第一基礎構造を通過した第二光束の回折角を、第一光束及び第三光束の回折角と異ならせる光路差付与構造であると好ましい。また、第一基礎構造の光軸方向の段差量は、第1光束に対して第1波長の略2波長分の光路差を与え、第2光束に対して第2波長の略1.2波長分の光路差を与え、第3光束に対して第3波長の略1波長分の光路差を与えるような段差量である事が好ましい。
【0097】
また、第二基礎構造は、第二基礎構造を通過した第一光束の0次(透過光)の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第二光束の0次(透過光)の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第三光束の±1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造である。第二基礎構造は、第二基礎構造を通過した第一光束及び第二光束を、波面が略そろった状態で射出し、第ニ基礎構造を通過した第三光束を、波面がそろわない状態で射出する光路差付与構造であることが好ましい。また、第二基礎構造は、第二基礎構造を通過した第三光束の回折角を、第一光束及び第二光束の回折角と異ならせる光路差付与構造であると好ましい。また、第二基礎構造の光軸方向の段差量は、第1光束に対して第1波長の略5波長分の光路差を与え、第2光束に対して第2波長の略3波長分の光路差を与え、第3光束に対して第3波長の略2.5波長分の光路差を与えるような段差量である事が好ましい。さらに、第二基礎構造の形状は、例えば図2(b)に示すようなバイナリ状の形状である事が好ましい。
【0098】
なお、前述したように、第一基礎構造が、第一基礎構造を通過した第二光束の回折角を、第一光束及び第三光束の回折角と異ならせる光路差付与構造であり、第二基礎構造が、第二基礎構造を通過した第三光束の回折角を、第一光束及び第二光束の回折角と異ならせる光路差付与構造であるため、第一基礎構造と第二基礎構造を重ね併せて第一光路差付与構造を形成することにより、第一光路差付与構造を通過した第一光束、第二光束、第三光束全ての出射光の方向を異ならせることが可能となるため、第一光束、第二光束、第三光束の全ての光束が同じ倍率(例えば、全て平行光束)で対物光学素子に入射したとしても、異なる種類の光ディスクを用いていることに起因して発生する収差を補正でき、互換が可能となる。
【0099】
対物光学素子がプラスチックレンズである場合、温度特性補正用構造として第三基礎構造を、第一基礎構造及び第二基礎構造にさらに重ねたものを第一光路差付与構造としてもよい。しかしながら、第1光ディスクがHDである場合は、温度変化の影響がそれ程大きくないため、対物光学素子に温度特性補正用構造としての基礎構造は設けなくてもよい。具体的には、第三基礎構造の光軸方向の段差量は、第1光束に対して第1波長の略5波長分の光路差を与え、第2光束に対して第2波長の略3波長分の光路差を与え、第3光束に対して第3波長の略2波長分の光路差を与えるような段差量である事が好ましい。
【0100】
また、第二光路差付与構造は、少なくとも第一基礎構造を有する構造としてもよい。対物光学素子がプラスチックレンズである場合、温度特性補正用構造として第三基礎構造を、第一基礎構造にさらに重ねたものを第二光路差付与構造としてもよい。しかしながら、第1光ディスクがHDである場合は、温度変化の影響がそれ程大きくないため、対物光学素子に温度特性補正用構造としての基礎構造は設けなくてもよい。
【0101】
また、最周辺領域を設け、さらに第三光路差付与構造を設ける場合は、第三光路差付与構造は、少なくとも第三基礎構造を有する構造としてもよい。
【0102】
また、本発明に係る光学素子を設計する場合、以下のような方法で設計する事が考えられる。まず輪帯状の構造を有する光路差付与構造である基礎構造を設計する。次に、当該基礎構造とは、或る光束に対して回折光率が最大となる回折次数が異なる輪帯状の構造を有する別の基礎構造を設計する。そして、これらの2つ(3つ以上であってもよい)の基礎構造を重ねあわせ、第一光路差付与構造又は第二光路差付与構造を設計する方法である。
【0103】
この様な方法で設計する場合、ピッチ幅が小さな輪帯が発生する可能性がある。例えば、図8(a)に示すような基礎構造と図8(b)に示すような基礎構造とを重ね合わせると、図8(c)のような光路差付与構造が得られる。しかしながら、図8(c)でWaとして示されているようにピッチ幅が小さい輪帯が発生してしまうことになる。尚、ピッチ幅とは、輪帯構造の、光学素子の光軸と直交方向の幅をいう。例えば、光路差付与構造が図6で示すような構造である場合、ピッチ幅とは、w1、w2、w3、w4のそれぞれの長さをいう。また、光路差付与構造が図7で示すような構造である場合、ピッチ幅とは、w5、w6、w7、w8、w9のそれぞれの長さをいう。
【0104】
本発明者は、鋭意研究の結果、このWaが5μm以下の輪帯であれば、この輪帯を削ったり、埋めてしまっても、光学性能に大きな影響を及ぼさないことを見出した。つまり、図8(c)において、Waが5μm以下である場合、図8(d)に示すように、この小さなピッチ幅の輪帯を削っても、光学性能に大きな影響を及ぼすことはない。
【0105】
また、対物光学素子を成形する金型の製造を容易にしたり、金型の転写性を良好にする観点からは、光路差付与構造の段差のピッチ幅は小さすぎない方が好ましい。従って、複数の基礎構造を重ねあわせて基礎となる光路差付与構造を設計した際に、ピッチ幅が5μm以下の輪帯が発生する場合、そのようなピッチ幅が5μm以下の輪帯を除去して、最終的な光路差付与構造を得る事が好ましい。ピッチ幅が5μm以下の輪帯が凸状である場合は、輪帯を削る事により除去すればよく、ピッチ幅が5μm以下の輪帯が凹状である場合は、輪帯を埋める事により除去すればよい。
【0106】
従って、少なくとも第一光路差付与構造のピッチ幅は全て5μmより大きい事が好ましい。好ましくは、第一光路差付与構造、第二光路差付与構造及び第三光路差付与構造の全てのピッチ幅が5μmより大きい事である。
【0107】
また、前述したように、段差量は大きすぎない方が好ましい。基礎構造を複数重ね合わせて得た基礎となる光路差付与構造のある輪帯の段差量が基準の値より高い場合、輪帯の段差量を10・λB/(n−1)(μm)だけ低くすることにより、光学性能に影響を及ぼすことなく、大きすぎる段差量を減らすことが可能となる。なお、基準の値としては、任意の値を設定する事ができるが、10・λB/(n−1)(μm)を基準値とする事が好ましい。
【0108】
また、細長い輪帯が少ない方が製造上好ましいという観点から、第一光路差付与構造の全ての輪帯において、(段差量/ピッチ幅)の値が、1以下である事が好ましく、更に好ましくは0.8以下である事である。更に好ましくは、全ての光路差付与構造の全ての輪帯において、(段差量/ピッチ幅)の値が、1以下である事が好ましく、更に好ましくは0.8以下である事である。
【0109】
第1光ディスクに対して情報を再生及び/又は記録するために必要な対物光学素子の像側開口数をNA1とし、第2光ディスクに対して情報を再生及び/又は記録するために必要な対物光学素子の像側開口数をNA2(0.8<NA1/NA2<1.2)とし、第3光ディスクに対して情報を再生及び/又は記録するために必要な対物光学素子の像側開口数をNA3(NA2>NA3)とする。NA1は、0.55以上、0.7以下であることが好ましい。特にNA1は0.60又は0.65であることが好ましい。NA2は、0.55以上、0.7以下であることが好ましい。特にNA2は0.60又は0.65であることが好ましい。また、NA3は、0.4以上、0.55以下であることが好ましい。特にNA3は0.45又は0.53であることが好ましい。
【0110】
対物光学素子の中央領域と周辺領域の境界は、第三光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物光学素子の中央領域と周辺領域の境界が、NA3に相当する部分に形成されていることである。また、対物光学素子の周辺領域と最周辺領域の境界は、第二光束の使用時において、0.9・NA2以上、1.2・NA2以下(より好ましくは、0.95・NA2以上、1.15・NA2以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物光学素子の周辺領域と最周辺領域の境界が、NA2に相当する部分に形成されていることである。
【0111】
対物光学素子を通過した第三光束を第3光ディスクの情報記録面上に集光する場合に、球面収差が少なくとも1箇所の不連続部を有することが好ましい。その場合、不連続部は、第三光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に存在することが好ましい。
【0112】
また、球面収差が連続していて、不連続部を有さない場合であって、対物光学素子を通過した第三光束を第3光ディスクの情報記録面上に集光する場合に、NA2では、縦球面収差の絶対値が0.03μm以上であって、NA3では縦球面収差の絶対値が0.02μm以下であることが好ましい。より好ましくは、NA2では、縦球面収差の絶対値が0.08μm以上であって、NA3では縦球面収差の絶対値が0.01μm以下である。
【0113】
また、回折効率は回折構造の輪帯深さに依存するので、光ピックアップ装置の用途に応じて、中央領域の各波長に対する回折効率を適宜設定可能である。例えば、第1光ディスクに対して記録及び再生を行い、第二、第三光ディスクに対して再生のみ行う光ピックアップ装置の場合には、中央領域及び/又は周辺領域の回折効率を、第一光束を重視して設定するのが好ましい。一方、第1光ディスクに対して再生のみを行い、第二、第三光ディスクに対して記録及び再生を行う光ピックアップ装置の場合には、中央領域の回折効率を、第二、第三光束を重視して設定し、周辺領域の回折効率を第二光束を重視して設定するのが好ましい。
【0114】
何れの場合でも、下記条件式(12)を満たすようにすることで、各領域の面積加重平均により計算される第一光束の回折効率を高く確保することが可能となる。
【0115】
η11≦η21 (12)
但し、η11は中央領域における第一光束の回折効率を表し、η21は周辺領域における第一光束の回折効率を表す。なお、中央領域の回折効率を第二、第三波長の光束重視とした場合には、中央領域の第一光束の回折効率は低くなるが、第1光ディスクの開口数が第3光ディスクの開口数に比べて大きい場合は、第一光束の有効径全体で考えると中央領域の回折効率低下はそれほど大きな影響を与えない。
【0116】
なお、本明細書における回折効率は、以下のように定義することができる。
[1]同一の焦点距離、レンズ厚さ、開口数を有し、同一の材料で形成され、第一及び第二光路差付与構造が形成されない対物光学素子の透過率を、中央領域、周辺領域に分けて測定する。この際、中央領域の透過率は、周辺領域に入射する光束を遮断して測定し、周辺領域の透過率は中央領域に入射する光束を遮断して測定する。
[2]第一及び第二光路差付与構造を有する対物光学素子の透過率を、中央領域と周辺領域に分けて測定する。
[3]上記[2]の結果を[1]の結果で割った値を各領域の回折効率とする。
【0117】
また、第一光束乃至第三光束の何れか二つの光束の光利用効率が80%以上であって、残りの一つの光束の光利用効率を30%以上、80%以下にするようにしてもよい。残りの一つの光束の光利用効率を40%以上、70%以下にするようにしてもよい。この場合、光利用効率を30%以上、80%以下(または40%以上、70%以下)とする光束は、第三光束であることが好ましい。
【0118】
なお、ここでいう光利用効率とは、第一光路差付与構造及び第二光路差付与構造が形成された対物光学素子(第三光路差付与構造が形成されていてもよい)により光ディスクの情報記録面上に形成された集光スポットのエアリーディスク内の光量をAとし、同一の材料から形成され、且つ、同一の焦点距離、軸上厚さ、開口数、波面収差を有し、第一光路差付与構造、第二光路差付与構造及び第三光路差付与構造が形成されない対物光学素子により、光情報記録媒体の情報記録面上に形成された集光スポットのエアリーディスク内の光量をBとしたとき、A/Bにより算出するものとする。なお、ここでいうエアリーディスクとは、集光スポットの光軸を中心とする半径r’の円をいう。r’=0.61・λ/NAで表される。
【0119】
また、第一光路差付与構造を通過した第三光束において、最大の光量となる回折次数の回折光の光量と、次に大きな光量となる回折次数の回折光の光量の差、即ち、第一ベストフォーカスを形成する回折光の光量と、第二ベストフォーカスを形成する回折光の光量の差が、0%以上、20%以下である場合、特に第3光ディスクにおけるトラッキング特性を良好に保つことが困難であるが、本発明に係る形態は、そのような状況においても、トラッキング特性を良好にすることを可能とする。
【0120】
第一光束、第二光束及び第三光束は、平行光として対物光学素子に入射してもよいし、発散光若しくは収束光として対物光学素子に入射してもよい。好ましくは、第一光束が対物光学素子に入射する時の、対物光学素子の倍率m1が、下記の式(3)を満たすことである。
−0.02<m1<0.02 (3)
【0121】
一方で、第一光束を発散光として対物光学素子に入射する場合、第1光束が対物光学素子へ入射する時の、対物光学素子の倍率m1が、下記の式(3)‘を満たすことが好ましい。
−0.10<m1<0.00 (3)‘
【0122】
また、第二光束を平行光又は略平行光として対物光学素子に入射させる場合、第二光束が対物光学素子へ入射する時の、対物光学素子の倍率m2が、下記の式(4)を満たすことが好ましい。
−0.02<m2<0.02 (4)
【0123】
一方で、第二光束を発散光として対物光学素子に入射させる場合、第二光束が対物光学素子へ入射する時の、対物光学素子の倍率m2が、下記の式(4’)を満たすことが好ましい。
【0124】
−0.10<m2<0.00 (4’)
【0125】
また、第三光束を平行光又は略平行光として対物光学素子に入射させる場合、第三光束が対物光学素子へ入射する時の、対物光学素子の倍率m3が、下記の式(15)を満たすことが好ましい。第三光束が平行光である場合、トラッキングにおいて問題が発生しやすくなるが、本発明は第三光束が平行光であっても、良好なトラッキング特性を得ることを可能とし、3つの異なる光ディスクに対して記録及び/又は再生を適切に行う事を可能とする。
−0.02<m3<0.02 (5)
【0126】
一方で、第三光束を発散光として対物光学素子に入射させる場合、第三光束が対物光学素子へ入射する時の、対物光学素子の倍率m3が、下記の式(6)を満たすことが好ましい。
−0.10<m3<0.00 (6)
【0127】
また、第3光ディスクを用いる際の対物光学素子のワーキングディスタンス(WD)は、0.20mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。好ましくは、0.3mm以上、1.20mm以下である。次に、第2光ディスクを用いる際の対物光学素子のWDは、0.4mm以上、1.3mm以下であることが好ましい。さらに、第1光ディスクを用いる際の対物光学素子のWDは、0.4mm以上、1.2mm以下であることが好ましい。
【0128】
対物光学素子の入射瞳径は、第2光ディスクを用いる際に、φ2.2mm以上、φ4.5mm以下であることが好ましい。
【0129】
本発明に係る光情報記録再生装置は、上述の光ピックアップ装置を有する光ディスクドライブ装置を有する。
【0130】
ここで、光情報記録再生装置に装備される光ディスクドライブ装置に関して説明すると、光ディスクドライブ装置には、光ピックアップ装置等を収納している光情報記録再生装置本体から光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイのみが外部に取り出される方式と、光ピックアップ装置等が収納されている光ディスクドライブ装置本体ごと、外部に取り出される方式とがある。
【0131】
上述した各方式を用いる光情報記録再生装置には、概ね、次の構成部材が装備されているがこれに限られるものではない。 ハウジング等に収納された光ピックアップ装置、光ピックアップ装置をハウジングごと光ディスクの内周あるいは外周に向けて移動させるシークモータ等の光ピックアップ装置の駆動源、光ピックアップ装置のハウジングを光ディスクの内周あるいは外周に向けてガイドするガイドレールなどを有した光ピックアップ装置の移送手段及び、光ディスクの回転駆動を行うスピンドルモータ等である。
【0132】
前者の方式には、これら各構成部材の他に、光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイおよびトレイを摺動させるためのローディング機構等が設けられ、後者の方式にはトレイおよびローディング機構がなく、各構成部材が外部に引き出し可能なシャーシに相当するドロワーに設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0133】
本発明によれば、簡単且つ低コストの構成で、異なる3種の光ディスク(例えば、青紫色レーザ光源を使用する高密度光ディスクとDVDとCDの3つの光ディスク)に対して、一つの対物光学素子で情報の記録及び/又は再生を適切に行うことができる。加えて、3つの異なる光ディスクの全てにおいて、無限系の光学系を用いる場合であっても、トラッキング、特に第3光ディスクの記録及び/又は再生を行う際のトラッキングの正確性を保つことができる光ピックアップ装置、対物光学素子および光情報記録再生装置を提供することが可能となる。さらに、単玉の対物光学素子で、異なる3種の光ディスクに対して、情報の記録及び/又は再生を適切に行うことができる光ピックアップ装置、対物光学素子および光情報記録再生装置を提供することが可能になる。さらに、対物光学素子として、プラスチックレンズを用いたとしても、温度特性を良好にし、3種類の光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を適切に行うことができる光ピックアップ装置、対物光学素子及び光情報記録再生装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0134】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図3は、異なる光ディスクであるHDとDVDとCDに対して適切に情報の記録及び/又は再生を行うことができる本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。かかる光ピックアップ装置PU1は、光情報記録再生装置に搭載できる。ここでは、第1光ディスクをHDとし、第2光ディスクをDVDとし、第3光ディスクをCDとする。なお、本発明は、本実施の形態に限られるものではない。
【0135】
光ピックアップ装置PU1は、対物光学素子OBJ、絞りST、コリメートレンズCL偏光ダイクロイックプリズムPPS、BDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され波長λ1=405nmのレーザ光束(第一光束)を射出する第一半導体レーザLD1(第一光源)と、BDの情報記録面RL1からの反射光束を受光する第一の受光素子PD1と、レーザモジュールLM等を有する。
【0136】
また、レーザモジュールLMは、DVDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され波長λ2=658nmのレーザ光束(第二光束)を射出する第二半導体レーザEP1(第二光源)と、CDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され波長λ3=785nmのレーザ光束(第三光束)を射出する第三半導体レーザEP2(第三光源)と、DVDの情報記録面RL2からの反射光束を受光する第二の受光素子DS1と、CDの情報記録面RL3からの反射光束を受光する第三の受光素子DS2と、プリズムPSと、を有している。
【0137】
図1及び図4に示されるように、本実施の形態の対物光学素子OBJにおいて、光源側の非球面光学面に光軸を含む中央領域CNと、その周囲に配置された周辺領域MDと、更にその周囲に配置された最周辺領域OTとが、光軸を中心とする同心円状に形成されている。図示していないが、中央領域CNには、第1基礎構造と第2基礎構造とを重畳した第一光路差付与構造が形成され、周辺領域MDには第二光路差付与構造が形成されている。また、最周辺領域OTには、第三光路差付与構造が形成されている(以下の実施例1)ものと第三光路差付与構造が形成されず屈折面のもの(以下の実施例2)ものとがある。第一基礎構造は、通過した第一光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第二光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第三光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。又、第二基礎構造は、通過した第一光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第二光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第三光束の±1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。更に、第二光路差付与構造は、通過した第一光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第二光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第三光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。又、第三光路差付与構造は、通過した第一光束の5次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第二光束の3次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第三光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする。なお、図1及び図4の中央領域、周辺領域、最周辺領域の面積などの比率は正確には表されていない。
【0138】
青紫色半導体レーザLD1から射出された第一光束(λ1=405nm)の発散光束は、偏光ダイクロイックプリズムPPSを透過し、コリメートレンズCLにより平行光束とされた後、図示しない1/4波長板により直線偏光から円偏光に変換され、絞りSTによりその光束径が規制され、対物光学素子OBJに入射する。ここで、対物光学素子OBJの中央領域と周辺領域により集光された(最周辺領域を通過した光束はフレア化され、スポット周辺部を形成する)光束は、厚さ0.6mmの保護基板PL1を介して、HDの情報記録面RL1上に形成されるスポットとなる。
【0139】
情報記録面RL1上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物光学素子OBJ、絞りSTを透過した後、図示しない1/4波長板により円偏光から直線偏光に変換され、コリメートレンズCLにより収斂光束とされ、偏光ダイクロイックプリズムPPSを透過した後、第一の受光素子PD1の受光面上に収束する。そして、第一の受光素子PD1の出力信号を用いて、2軸アクチュエータACにより対物光学素子OBJをフォーカシングやトラッキングさせることで、HDに記録された情報を読み取ることができる。
【0140】
赤色半導体レーザEP1から射出された第二光束(λ2=658nm)の発散光束は、プリズムPSで反射された後、偏光ダイクロイックプリズムPPSにより反射され、コリメートレンズCLにより平行光束とされた後、図示しない1/4波長板により直線偏光から円偏光に変換され、対物光学素子OBJに入射する。ここで、対物光学素子OBJの中央領域と周辺領域と最周辺領域により集光された光束は、厚さ0.6mmの保護基板PL2を介して、DVDの情報記録面RL2に形成されるスポットとなり、スポット中心部を形成する。
【0141】
情報記録面RL2上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物光学素子OBJ、絞りSTを透過した後、図示しない1/4波長板により円偏光から直線偏光に変換され、コリメートレンズCLにより収斂光束とされ、偏光ダイクロイックプリズムPPSにより反射された後、その後、プリズム内で2回反射された後、第二の受光素子DS1に収束する。そして、第二の受光素子DS1の出力信号を用いてDVDに記録された情報を読み取ることができる。
【0142】
赤外半導体レーザEP2から射出された第三光束(λ3=785nm)の発散光束は、プリズムPSで反射された後、偏光ダイクロイックプリズムPPSにより反射され、コリメートレンズCLにより平行光束とされた後、図示しない1/4波長板により直線偏光から円偏光に変換され、対物光学素子OJTに入射する。ここで、対物光学素子OBJの中央領域により集光された(周辺領域及び最周辺領域を通過した光束はフレア化され、スポット周辺部を形成する)光束は、厚さ1.2mmの保護基板PL3を介して、CDの情報記録面RL3上に形成されるスポットとなる。
【0143】
情報記録面RL3上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物光学素子OBJ、絞りSTを透過した後、図示しない1/4波長板により円偏光から直線偏光に変換され、コリメートレンズCLにより収斂光束とされ、偏光ダイクロイックプリズムPPSにより反射された後、その後、プリズム内で2回反射された後、第三の受光素子DS2に収束する。そして、第三の受光素子DS2の出力信号を用いてCDに記録された情報を読み取ることができる。
【0144】
<実施例>
次に、上述の実施の形態に用いることができる実施例について説明する。以下の実施例において、対物光学素子は、単玉のポリオレフィン製のプラスチックレンズである。対物光学素子の光学面の中央領域CNの全面には、第一光路差付与構造が形成されている。光学面の周辺領域MDの全面には、第二光路差付与構造が形成されている。実施例1においては、光学面の最周辺領域OTの全面には、第三光路差付与構造が形成されており、実施例2においては、最周辺領域OTは非球面の屈折面である。
【0145】
また、実施例1〜2において、第一光路差付与構造は、第一基礎構造と第二基礎構造とが重畳された構造となっており、鋸歯状の回折構造とバイナリ構造とが重畳された形状となっている。断面形状は、図2(c)で示されているような形状である。鋸歯状の回折構造である第一基礎構造は、第1光束の2次の回折光の光量を他のいかなる次数(0次即ち透過光も含む)の回折光の光量よりも大きくし、第2光束の1次の回折光の光量を他のいかなる次数(0次即ち透過光も含む)の回折光の光量よりも大きくし、第3光束の1次の回折光の光量を他のいかなる次数(0次即ち透過光も含む)の回折光量よりも大きくするように設計されている。また、バイナリ構造である第二基礎構造は、所謂、波長選択回折構造であり、第1光束の0次の回折光(透過光)の光量を他のいかなる次数の回折光の光量よりも大きくし、第2光束の0次の回折光(透過光)の光量を他のいかなる次数の回折光の光量よりも大きくし、第3光束の±1次の回折光の光量を他のいかなる次数(0次即ち透過光も含む)の回折光量よりも大きくするように設計されている。
【0146】
また、実施例1〜2において、第一光路差付与構造は、図2(c)に示すように、中央領域の光軸側の領域においては、段差が光軸側を向いている鋸歯状の構造とバイナリ構造が重畳されており、中央領域の周辺領域側の領域においては、段差が光軸側とは逆を向いている鋸歯状の構造とバイナリ構造が重畳されており、その間には、鋸歯状の構造の段差の向きを切り替えるために必要な遷移領域が設けられている。この遷移領域は、回折構造により透過波面に付加される光路差を光路差関数で表現した時、光路差関数の極値となる点に相当する領域である。なお、光路差関数が極値となる点を持つと、光路差関数の傾きが小さくなるので、輪帯ピッチを広げることが可能となり、回折構造の形状誤差による透過率低下を抑制できる。
【0147】
実施例1〜2において、第二光路差付与構造は、第一基礎構造のみからなっており、鋸歯状の形状となっている。鋸歯状の回折構造である第一基礎構造は、第1光束の2次の回折光の光量を他のいかなる次数(0次即ち透過光も含む)の回折光の光量よりも大きくし、第2光束の1次の回折光の光量を他のいかなる次数(0次即ち透過光も含む)の回折光の光量よりも大きくし、第3光束の1次の回折光の光量を他のいかなる次数(0次即ち透過光も含む)の回折光量よりも大きくするように設計されている。
【0148】
実施例1において、第三光路差付与構造は、第三基礎構造のみからなっており、鋸歯状の形状となっている。鋸歯状の回折構造である第三基礎構造は、第1光束の5次の回折光の光量を他のいかなる次数(0次即ち透過光も含む)の回折光の光量よりも大きくし、第2光束の3次の回折光の光量を他のいかなる次数(0次即ち透過光も含む)の回折光の光量よりも大きくし、第3光束の2次の回折光の光量を他のいかなる次数(0次即ち透過光も含む)の回折光量よりも大きくするように設計されている。
【0149】
表1に実施例1のレンズデータ、表2に実施例2のレンズデータを示す。なお、これ以降において、10のべき乗数(例えば、2.5×10−3)を、E(例えば、2.5E−3)を用いて表すものとする。
【0150】
対物光学素子の光学面は、それぞれ数1式に、表に示す係数を代入した数式で規定される、光軸の周りに軸対称な非球面に形成されている。
【0151】
【数1】

【0152】
ここで、X(h)は光軸方向の軸(光の進行方向を正とする)、κは円錐係数、A2iは非球面係数、hは光軸からの高さである。
【0153】
また、回折構造により各波長の光束に対して与えられる光路長は、数22式の光路差関数に、表に示す係数を代入した数式で規定される。
【0154】
【数2】

【0155】
尚、λは入射光束の波長、λBは設計波長(ブレーズ化波長)、dorは回折次数、C2iは光路差関数の係数である。
【0156】
【表1】

【0157】
【表2】

【0158】
尚、実施例1におけるd/f1は、0.69であり、L/f3は、0.137である。また、実施例2におけるd/f1は、0.54であり、L/f3は、0.082である。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明に係る対物光学素子OBJの一例を、光軸方向から見た図である。
【図2】本発明に係る対物光学素子OBJに設けられる光路差付与構造の幾つかの例(a)〜(d)を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明に係る光ピックアップ装置の構成を概略的に示す図である。
【図4】本発明に係る対物光学素子OBJの一例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明に係る対物光学素子によるスポットの形状を示した図である。
【図6】光路差付与構造の一例を示す断面図である。
【図7】光路差付与構造を有する対物レンズを光軸方向に見た図である。
【図8】複数の基礎構造を重畳させて光路差付与構造を形成することを示す図である。
【符号の説明】
【0160】
AC 二軸アクチュエータ
PPS 偏光ダイクロイックプリズム
CL コリメートレンズ
LD1 青紫色半導体レーザ
LM レーザモジュール
OBJ 対物光学素子
PL1 保護基板
PL2 保護基板
PL3 保護基板
PU1 光ピックアップ装置
RL1 情報記録面
RL2 情報記録面
RL3 情報記録面
CN 中央領域
MD 周辺領域
OT 最周辺領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一波長λ1の第一光束を射出する第一光源と、第二波長λ2(λ2>λ1)の第二光束を射出する第二光源と、第三波長λ3(λ3>λ2)の第三光束を射出する第三光源と、前記第一光束を厚さがt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を厚さがt2(0.9・t1<t2<1.1・t1)の保護基板を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有する第3光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子と、を有し、前記第一光束を前記第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を前記第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を前記第3光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、
前記対物光学素子の光学面は、中央領域と前記中央領域の周りの周辺領域の少なくとも二つの領域を有し、前記中央領域は第一光路差付与構造を有し、前記周辺領域は第二光路差付与構造を有し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記中央領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第三光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記周辺領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子の前記第一光路差付与構造を通過した前記第三光束によって、第一ベストフォーカスと第二ベストフォーカスとが形成され、前記第一ベストフォーカスの光量は、前記第三光束が形成する他のいかなるスポットよりも光量が大きく、前記第二ベストフォーカスの光量は、前記第一ベストフォーカスの次に大きく、
前記第一ベストフォーカスと前記第二ベストフォーカスは、下記の式(1)の関係を満たし、
更に(2)式を満たすことを特徴とする光ピックアップ装置。
0.05<L/f3<0.20 (1)
0.5≦d/f1≦1.0 (2)
但し、f3[mm]は前記第一光路差付与構造を通過し、前記第一ベストフォーカスを形成する前記第三光束の焦点距離を指し、L[mm]は前記第一ベストフォーカスと前記第二ベストフォーカスの間の距離を指す。又、前記対物光学素子の前記第一光束における焦点距離をf1(mm)、前記対物光学素子の中心厚さをd(mm)とする。
【請求項2】
前記対物光学素子を通過した前記第三光束が前記第3光ディスクの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸方向から見た際に、スポットの中心から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部、光量密度が前記スポット中心部より低いスポット中間部、光量密度が前記スポット中間部よりも高く前記スポット中心部よりも低いスポット周辺部とが形成され、
前記スポット中心部が前記第3光ディスクの情報の記録及び/又は再生に用いられ、前記スポット中間部及び前記スポット周辺部は前記第3光ディスクの情報の記録及び/又は再生に用いられず、
前記対物光学素子の前記第二光路差付与構造を通過した前記第三光束によって、前記第3光ディスクの情報記録面上で前記スポット周辺部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記第一ベストフォーカスにおいて前記第三光束が形成する前記スポットが、前記第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられ、前記第二ベストフォーカスにおいて前記第三光束が形成する前記スポットは、前記第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられないことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに屈折面である最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに、第三光路差付与構造を有する最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記最周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光することを特徴とする請求項4又は5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
前記第一光路差付与構造は、前記第一光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第二光束の波長差に起因して生じる色収差を補正することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
前記第一光路差付与構造は、前記第一光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第三光束に対して、前記第1光ディスクの保護基板の厚さt1と前記第3光ディスクの保護基板の厚さt3の違いにより発生する球面収差を補正することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
前記第二光路差付与構造は、前記第二光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第二光束の波長差に起因して生じる色収差を補正することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項10】
前記第一光束及び前記第二光束の、前記対物光学素子の倍率m1、m2が、下記の式(3)、(4)を満たすことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
−0.02<m1<0.02 (3)
−0.02<m2<0.02 (4)
【請求項11】
前記第三光束の、前記対物光学素子の倍率m3が、下記の式(5)を満たすことを特徴とする請求項10に記載の光ピックアップ装置。
−0.02<m3<0.02 (5)
【請求項12】
前記第三光束の、前記対物光学素子の倍率m3が、下記の式(6)を満たすことを特徴とする請求項10に記載の光ピックアップ装置。
−0.10<m3<0.00 (6)
【請求項13】
前記対物光学素子は、単玉レンズであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項14】
前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造及び前記第二光路差付与構造を有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項15】
前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造、前記第二光路差付与構造及び屈折面である前記最周辺領域を有することを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ装置。
【請求項16】
前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造、前記第二光路差付与構造及び前記第三光路差付与構造を有する前記最周辺領域を有することを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項17】
第一波長λ1の第一光束を射出する第一光源と、第二波長λ2(λ2>λ1)の第二光束を射出する第二光源と、第三波長λ3(λ3>λ2)の第三光束を射出する第三光源と、前記第一光束を厚さがt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を厚さがt2(0.9・t1<t2<1.1・t1)の保護基板を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有する第3光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子と、を有し、前記第一光束を前記第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を前記第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を前記第3光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置の対物光学素子において、
前記対物光学素子の光学面は、中央領域と前記中央領域の周りの周辺領域の少なくとも二つの領域を有し、前記中央領域は第一光路差付与構造を有し、前記周辺領域は第二光路差付与構造を有し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記中央領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第三光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記周辺領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子の前記第一光路差付与構造を通過した前記第三光束によって、第一ベストフォーカスと第二ベストフォーカスとが形成され、前記第一ベストフォーカスの光量は、前記第三光束が形成する他のいかなるスポットよりも光量が大きく、前記第二ベストフォーカスの光量は、前記第一ベストフォーカスの次に大きく、
前記第一ベストフォーカスと前記第二ベストフォーカスは、下記の式(1)の関係を満たし、
更に(2)式を満たすことを特徴とする対物光学素子。
0.05<L/f3<0.20 (1)
0.5≦d/f1≦1.0 (2)
但し、f3[mm]は前記第一光路差付与構造を通過し、前記第一ベストフォーカスを形成する前記第三光束の焦点距離を指し、L[mm]は前記第一ベストフォーカスと前記第二ベストフォーカスの間の距離を指す。又、前記対物光学素子の前記第一光束における焦点距離をf1(mm)、中心厚さをd(mm)とする。
【請求項18】
前記対物光学素子を通過した前記第三光束が前記第3光ディスクの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸方向から見た際に、スポットの中心から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部、光量密度が前記スポット中心部より低いスポット中間部、光量密度が前記スポット中間部よりも高く前記スポット中心部よりも低いスポット周辺部とが形成され、
前記スポット中心部が前記第3光ディスクの情報の記録及び/又は再生に用いられ、前記スポット中間部及び前記スポット周辺部は前記第3光ディスクの情報の記録及び/又は再生に用いられず、
前記対物光学素子の前記第二光路差付与構造を通過した前記第三光束によって、前記第3光ディスクの情報記録面上で前記スポット周辺部が形成されることを特徴とする請求項17に記載の対物光学素子。
【請求項19】
前記第一ベストフォーカスにおいて前記第三光束が形成する前記スポットが、前記第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられ、前記第二ベストフォーカスにおいて前記第三光束が形成する前記スポットは、前記第3光ディスクの記録及び/又は再生に用いられないことを特徴とする請求項17又は18に記載の対物光学素子。
【請求項20】
前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに屈折面である最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする請求項17乃至19のいずれか1項に記載の対物光学素子。
【請求項21】
前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに、第三光路差付与構造を有する最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする請求項17乃至19のいずれか1項に記載の対物光学素子。
【請求項22】
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記最周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光することを特徴とする請求項20又は21に記載の対物光学素子。
【請求項23】
前記第一光路差付与構造は、前記第一光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第二光束の波長差に起因して生じる色収差を補正することを特徴とする請求項17乃至22のいずれか1項に記載の対物光学素子。
【請求項24】
前記第一光路差付与構造は、前記第一光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第三光束に対して、前記第1光ディスクの保護基板の厚さt1と前記第3光ディスクの保護基板の厚さt3の違いにより発生する球面収差を補正することを特徴とする請求項17乃至23のいずれか1項に記載の対物光学素子。
【請求項25】
前記第二光路差付与構造は、前記第二光路差付与構造を通過した前記第一光束及び前記第二光束の波長差に起因して生じる色収差を補正することを特徴とする請求項17乃至24のいずれか1項に記載の対物光学素子。
【請求項26】
前記第一光束及び前記第二光束の、前記対物光学素子への入射光束の倍率m1、m2が、下記の式(3)、(4)を満たすことを特徴とする請求項17乃至25のいずれか1項に記載の対物光学素子。
−0.02<m1<0.02 (3)
−0.02<m2<0.02 (4)
【請求項27】
前記第三光束の、前記対物光学素子への入射光束の倍率m3が、下記の式(5)を満たすことを特徴とする請求項26に記載の対物光学素子。
−0.02<m3<0.02 (5)
【請求項28】
前記第三光束の、前記対物光学素子への入射光束の倍率m3が、下記の式(6)を満たすことを特徴とする請求項26に記載の対物光学素子。
−0.10<m3<0.00 (6)
【請求項29】
前記対物光学素子は、単玉レンズであることを特徴とする請求項17乃至28のいずれか1項に記載の対物光学素子。
【請求項30】
前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造及び前記第二光路差付与構造を有することを特徴とする請求項17乃至29のいずれか1項に記載の対物光学素子。
【請求項31】
前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造、前記第二光路差付与構造及び屈折面である前記最周辺領域を有することを特徴とする請求項20に記載の対物光学素子。
【請求項32】
前記対物光学素子の同一の光学面が、前記第一光路差付与構造、前記第二光路差付与構造及び前記第三光路差付与構造を有する前記最周辺領域を有することを特徴とする請求項21に記載の対物光学素子。
【請求項33】
第一波長λ1の第一光束を射出する第一光源と、第二波長λ2(λ2>λ1)の第二光束を射出する第二光源と、第三波長λ3(λ3>λ2)の第三光束を射出する第三光源と、前記第一光束を厚さがt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を厚さがt2(0.9・t1<t2<1.1・t1)の保護基板を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有する第3光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子と、を有し、前記第一光束を前記第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を前記第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を前記第3光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、
前記対物光学素子の光学面は、中央領域と前記中央領域の周りの周辺領域の少なくとも二つの領域を有し、前記中央領域は第一光路差付与構造を有し、前記周辺領域は第二光路差付与構造を有し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記中央領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第三光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記周辺領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記第一光路差付与構造は、少なくとも第一基礎構造と第二基礎構造とを重畳してなる構造であり、
前記第一基礎構造は、前記第一基礎構造を通過した前記第一光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であり、
前記第二基礎構造は、前記第二基礎構造を通過した前記第一光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の±1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であり、
更に(2)式を満たすことを特徴とする光ピックアップ装置。
0.5≦d/f1≦1.0 (2)
但し、前記対物光学素子の前記第一光束における焦点距離をf1(mm)、中心厚さをd(mm)とする。
【請求項34】
前記第二光路差付与構造は、前記第二光路差付与構造を通過した前記第一光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であることを特徴とする請求項33に記載の光ピックアップ装置。
【請求項35】
前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに屈折面である最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする請求項33又は34に記載の光ピックアップ装置。
【請求項36】
前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに、第三光路差付与構造を有する最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする請求項33又は34に記載の光ピックアップ装置。
【請求項37】
前記第三光路差付与構造は、前記第三光路差付与構造を通過した前記第一光束の5次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の3次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の3次または2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であることを特徴とする請求項36に記載の光ピックアップ装置。
【請求項38】
前記対物光学素子は、単玉レンズであることを特徴とする請求項33乃至37のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項39】
前記対物光学素子がプラスチックレンズであることを特徴とする請求項33乃至38のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項40】
前記対物光学素子がガラスレンズであることを特徴とする請求項33乃至38のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項41】
第一波長λ1の第一光束を射出する第一光源と、第二波長λ2(λ2>λ1)の第二光束を射出する第二光源と、第三波長λ3(λ3>λ2)の第三光束を射出する第三光源と、前記第一光束を厚さがt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を厚さがt2(0.9・t1<t2<1.1・t1)の保護基板を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有する第3光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子と、を有し、前記第一光束を前記第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第二光束を前記第2光ディスクの情報記録面上に集光させ、前記第三光束を前記第3光ディスクの情報記録面上に集光させることによって情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置の対物光学素子において、
前記対物光学素子の光学面は、中央領域と前記中央領域の周りの周辺領域の少なくとも二つの領域を有し、前記中央領域は第一光路差付与構造を有し、前記周辺領域は第二光路差付与構造を有し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記中央領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第三光束を、前記第3光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記対物光学素子は、前記対物光学素子の前記周辺領域を通過する前記第一光束を、前記第1光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第二光束を、前記第2光ディスクの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記第一光路差付与構造は、少なくとも第一基礎構造と第二基礎構造とを重畳してなる構造であり、
前記第一基礎構造は、前記第一基礎構造を通過した前記第一光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であり、
前記第二基礎構造は、前記第二基礎構造を通過した前記第一光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の0次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の±1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であり、
更に(2)式を満たすことを特徴とする対物光学素子。
0.5≦d/f1≦1.0 (2)
但し、前記対物光学素子の前記第一光束における焦点距離をf1(mm)、中心厚さをd(mm)とする。
【請求項42】
前記第二光路差付与構造は、前記第二光路差付与構造を通過した前記第一光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であることを特徴とする請求項41に記載の対物光学素子。
【請求項43】
前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに屈折面である最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする請求項41又は42に記載の対物光学素子。
【請求項44】
前記対物光学素子の光学面は、前記周辺領域の周りに、第三光路差付与構造を有する最周辺領域を含む、三つの領域を有することを特徴とする請求項41又は42に記載の対物光学素子。
【請求項45】
前記第三光路差付与構造は、前記第三光路差付与構造を通過した前記第一光束の5次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第二光束の3次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、前記第三光束の3次または2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする光路差付与構造であることを特徴とする請求項44に記載の対物光学素子。
【請求項46】
前記対物光学素子は、単玉レンズであることを特徴とする請求項41乃至45のいずれか1項に記載の対物光学素子。
【請求項47】
前記対物光学素子がプラスチックレンズであることを特徴とする請求項41乃至46のいずれか1項に記載の対物光学素子。
【請求項48】
前記対物光学素子がガラスレンズであることを特徴とする請求項41乃至46のいずれか1項に記載の対物光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−157992(P2009−157992A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333833(P2007−333833)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】