説明

光ピックアップ装置

【課題】光ピックアップ装置において、受光素子数の少ない、簡易で小型、かつ、低ノイズな1ビーム検出光学系を提供する。
【解決手段】光ピックアップ装置の1ビーム検出光学系において、回折光学素子8によりトラッキングエラーのメインプッシュプル(MPP)信号領域とサブプッシュプル(SPP)信号領域とに戻り光束を分割し、どちらか一方にのみ非点収差を与え、4分割受光素子9により受光する。ラジアル方向の差動と、タンジェンシャル方向の差動を用いて、ディファレンシャルプッシュプル(DPP)相当のトラッキングエラー信号を生成するとともに、非点収差法によるフォーカスエラー信号など、必要な信号を全て得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置におけるサーボ信号検出方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報記録媒体として「CD」(Comapct Disk)や「DVD」(Digital Versatile Disk)などの光ディスクが提案されている。近年、さらに大容量の記録が可能な「BD」(Blu-ray Disk)も提案されている。「BD」には、記録層が1層のみの単層ディスクのほか、記録層が2層ある2層ディスクが存在し、「BD」では、どちらのディスクも同様に普及している。
【0003】
光ディスクの記録または再生時には、光ピックアップ装置の対物レンズを透過した光束が、光ディスクのトラック、フォーカス方向ともに正しい位置に集光される必要がある。そのため、トラッキングサーボ、フォーカスサーボによる制御が行なわれている。トラッキングサーボ方法としては、DPP(Differential Push-Pull)法が一般的であり、DPP法はレーザ光源からの光束を、グレーティングを使って、中央のメインビームと、2つのサブビームに分岐し、メインビームのプッシュプル信号(以下、MPPという)に生じたレンズシフトによるDCオフセットを、サブビームのプッシュプル信号(以下、SPPという)でキャンセルする方法である。なお、「BD」では特にレーザパワー不足の問題があるため、光倍速対応などのためサブビームの強度は、メインビームの強度に対して10%程度と弱く設定されていることが多い。
【0004】
ところで、2層ディスクを再生する場合は、再生していない(フォーカスが合っていない)層からの反射光がクロストーク光として信号に混入し、トラッキングエラー信号を乱すという問題があった。前述のDPP法によるトラッキングサーボにおいては、MPPのクロストーク光が、パワーの弱いSPPに与える影響が特に顕著である。そのため、ビームを3つに分岐するDPP法ではなく、1つのビームをホログラムやビームスプリッタなどで必要に応じて分岐し、領域分割して各サーボ信号に対して個別の受光素子で受光する、1ビーム検出が提案されている。1ビーム検出は、レーザ光源と受光素子を集積化する際に有効である。そのため、1ビーム検出は、車載用などに用いられ、また、光学系の許容誤差(トレランス)が多く得られる集積ユニットへの応用開発も求められている。
【0005】
非特許文献1では、光束をフォーカスエラー信号検出用及びトラッキングエラー信号検出用に2分岐する回折光学素子を用いる。この回折光学素子により、フォーカスエラー用の光束には非点収差が与えられ、4分割セルを用いて、一般的な非点収差法によるフォーカスエラー検出が行われる。一方、トラッキングエラー用の光束は、MPPに当たる2領域と、SPPに当たる2領域からなり、フォーカスエラー検出信号用とは異なる4分割セルに集光され、DPP法に相当するトラッキングエラー信号を検出する。
【0006】
特許文献1では、ラジアル方向及びタンジェンシャル方向に非対称な領域を有する回折光学素子を用いて、対物レンズシフトの影響を低減している。この方法によれば、SSD(Spot Size Detection)法によるフォーカスエラー信号検出とDPP法によるトラッキングエラー信号検出が可能である。
【0007】
特許文献2では、3本の分割線をもつ回折光学素子により6つに分割された光束を、適切な位置関係で配置された8つの受光素子で受光することにより、非点収差法によるフォーカスエラー信号検出と、DPP法に相当するトラッキングエラー信号検出の両方を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−265595公報
【特許文献2】特開2008−171470公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kousei SANO,et.al.,“Novel One-Beam Tracking Detection Method for Dual-Layer Blu-ray Discs",Japanese Journal of Applied Physics Vol.45,No.2B,2006,pp.1174-1177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、非特許文献1においては、トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号検出用に、光束を2分岐する上に、受光素子が多く必要となるためノイズが多く、メイン信号のS/Nが取りにくいという問題がある。さらには、シリンドリカルレンズと回折光学素子の両方が必要となり、部品点数が増えるほか、検出系が大きくなるという課題もある。また、受光素子や回折光学素子の位置精度を示す信号としてポジション信号を得る場合、サーボ信号には用いられない別の信号を検出する必要があるため、出力端子数が増加する。
【0011】
また、特許文献1においては、フォーカスエラー信号とSPPを同一光束で検出する場合、MPPとSPPの検出用に光束を2分岐する必要があり、SPPとMPPを同一光束で検出する場合は、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号の検出用に光束を2分岐する必要がある。そのため、前述のいずれの構成であっても、光束を分岐する素子や受光素子の数が増え、ノイズが多くなり、また装置の大型化や、構成の複雑化を伴う。また、受光素子の位置精度を示す信号としてポジション信号を得る場合、サーボ信号には用いられない別の信号を検出する必要があるため、出力端子数が増加する。
【0012】
さらに、特許文献2においては、複雑な形状の受光素子が8つ必要なため、依然としてノイズが多く、構成の複雑化を伴う他、受光素子の形状が複雑な上に、受光素子のそれぞれは大きく離れているので、位置調整が困難であるという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、光ディスクからの反射光束を分岐することなく、また、少ない受光素子数および出力端子数でフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及び位置調整のためのポジション信号を得ることができる簡易、かつ、小型な光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の従来の技術の課題を解決するため、本発明に係る光ピックアップ装置は、以下の構成のいずれかを有するものである。
【0015】
〔構成1〕
光ディスクに光束を照射するレーザ光源と、光ディスクの記録トラックにより回折される成分と回折しない成分の重なる光束が入射される第1の回折領域と光ディスクの記録トラックにより回折しない成分の光束が入射される第2の回折領域とを設け光ディスクより反射された光束を第1の回折領域及び第2の回折領域において所定次数で回折し、かつ、第1の回折領域または第2の回折領域のいずれか一方で非点収差を与える回折光学素子と、光ディスクの記録トラック方向に対応する方向の分割線と記録トラック方向に垂直な方向に対応する方向の分割線とにより4個の受光領域に分割され第1の回折領域及び第2の回折領域で回折された光を受光する受光素子とを有することを特徴とするものである。
【0016】
〔構成2〕
構成1を有する光ピックアップ装置において、回折光学素子の第1の回折領域は、光ディスクの記録トラックにより+1次で回折される成分と回折しない成分が重なる光束が入射され、かつ、光ディスクの記録トラック方向に対応する方向の分割線で分割される領域と、光ディスクの記録トラックにより−1次で回折される成分と回折しない成分が重なる光束が入射され、かつ、光ディスクの記録トラック方向に垂直な方向に対応する分割線で分割される領域とからなり、各領域は入射された光束をそれぞれ異なる方向へ回折する4個の分割領域を有し、回折光学素子の第2の回折領域は、光ディスクの記録トラックにより回折しない成分の光束が入射され、かつ、記録トラック方向に垂直な方向に対応する分割線で分割されてそれぞれ異なる方向へ回折する2個の分割領域を有し、第1の回折領域の4個の分割領域でそれぞれ回折される光は、受光素子のそれぞれ異なる受光領域にて受光され、第2の回折領域の2個の分割領域でそれぞれ回折される光は、受光素子の4個の領域のうち、記録トラック方向に垂直な方向に対応する分割線で分割した場合に同じ側に含まれる2個ずつの領域にてそれぞれ受光されることを特徴とするものである。
【0017】
〔構成3〕
構成1を有する光ピックアップ装置において、回折光学素子の第1の回折領域は、光ディスクの記録トラックにより+1次で回折される成分と回折しない成分が重なる光束が入射される領域と、光ディスクの記録トラックにより−1次で回折される成分と回折しない成分が重なる光束が入射される領域とからなり、各領域は入射された光束をそれぞれ異なる方向へ回折する2個の分割領域を有し、回折光学素子の第2の回折領域は、光ディスクの記録トラックにより回折しない成分の光束が入射され、かつ、記録トラック方向に対応する方向と記録トラック方向に垂直な方向に対応する分割線とで分割されてそれぞれ異なる方向へ回折する4個の分割領域を有し、第1の回折領域の2個の分割領域でそれぞれ回折される光は、受光素子の4個の領域のうち、記録トラック方向に垂直な方向に対応する分割線で分割した場合に同じ側に含まれる2個ずつの領域にてそれぞれ受光され、第2の回折領域の4個の分割領域でそれぞれ回折される光は、受光素子のそれぞれ異なる受光領域にて受光されることを特徴とするものである。
【0018】
〔構成4〕
構成1ないし構成3のいずれか一を有する光ピックアップ装置において、受光素子の4個の受光領域のうち、光ディスクの記録トラック方向に対応する方向の分割線で分割した場合に同じ側に含まれる受光領域の光検出信号をそれぞれ加算して第1及び第2の加算信号を得て、第1の加算信号から第2の加算信号を減算して第1の差分信号を算出し、受光素子の4個の受光領域のうち、光ディスクの記録トラック方向に垂直な方向に対応する方向の分割線で分割した場合に同じ側に含まれる受光領域の光検出信号をそれぞれ加算して第3及び第4の加算信号を得て、第3の加算信号から第4の加算信号を減算して第2の差分信号を算出し、第1及び第2の差分信号を用いてトラッキングエラー信号を算出する第1の制御部を有することを特徴とするものである。
【0019】
〔構成5〕
構成1ないし構成4のいずれか一を有する光ピックアップ装置において、受光素子の4個の受光領域のうち、対角線上に配置される受光領域の光検出信号をそれぞれ加算して第5及び第6の加算信号を得て、第5の加算信号から第6の加算信号を減算してフォーカスエラー信号を算出する第2の制御部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る光ピックアップ装置においては、全てのサーボ信号を、第1の領域乃至第4の受光領域を有する受光素子のみで検出できるため、光束を2つに分岐する必要はない。よって、特許文献1及び非特許文献1に記載された従来の技術のように検出光学系で2光束に分岐する必要がなく、また、受光素子数も削減できるため、低ノイズ化や小型化、構成の簡素化が期待できる。
【0021】
さらに、トラッキングエラー信号のMPP、SPPがそのままポジション信号になるので、端子数を削減することもできる。
【0022】
さらに、特許文献2に記載された従来の技術と比較しても、受光素子のセル数削減の他、互いに隣接、もしくは近接した第1の受光領域乃至第4の受光領域を有する受光素子のみで検出できるため、受光素子の位置合わせを容易にすることができる。
【0023】
すなわち、本発明は、光ディスクからの反射光束を分岐することなく、また、少ない受光素子数及び出力端子数でフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及び位置調整のためのポジション信号を得ることができる簡易、かつ、小型な光ピックアップ装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態の光ピックアップ装置の全体構成を摸式的に示した図である。
【図2】回折光学素子の構造の例を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の回折光学素子と受光素子との位置関係を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の光ピックアップ装置の全体構成を摸式的に示した図である。
【図6】回折光学素子の構造の別の例を示す構成図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の回折光学素子と受光素子との位置関係を説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。
【図10】本発明の第4の実施形態の光ピックアップ装置の全体構成を摸式的に示した図である。
【図11】回折光学素子の構造のさらに別の例を示す構成図である。
【図12】本発明の第4の実施形態の回折光学素子と受光素子との位置関係を説明する図である。
【図13】本発明の第4の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。
【図14】本発明の第5の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。
【図15】本発明の第6の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。
【図16】本発明の第7の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。
【図17】本発明の第8の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。図1は、第1の実施形態の光ピックアップ装置の全体構成を摸式的に示す図である。
【0027】
本発明に係る光ピックアップ装置においては、図1に示すように、レーザ光源1から射出された発散光は、偏光ビームスプリッタ(PBS)2を透過し、4分の1波長板3を透過して円偏光となる。4分の1波長板3を透過した発散光は、コリメータレンズ4により略平行光に変換され、立ち上げミラー5により光束の方向を偏向される。立ち上げミラー5により光束の方向を偏向された光は、対物レンズ6により集光され、光ディスク7の信号記録面上に集光する。光ディスク7の信号記録面で反射された光は、往路とは逆の順に、対物レンズ6を透過し、立ち上げミラー5で偏向され、コリメータレンズ4を透過する。コリメータレンズ4を透過した光は、4分の1波長板3を再び透過することで、レーザ1からの射出光に対して偏光方向が90度回転した直線偏光となる。4分の1波長板3を透過した直線偏光は、PBS2で反射され、回折光学素子8にて分割され、かつ、回折されて受光素子9上に集光する。受光素子9で受光された光は、スポットを形成された後、不図示の制御部により所定の演算処理がなされ、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号が検出される。
【0028】
なお、回折光学素子8における回折に用いる回折次数は種々存在し得るが、本発明における以後の説明では、最も回折効率の高い次数で回折された光を、受光素子9で検出し、各信号に用いることとする。また、回折光学素子8は、対物レンズ6から見て、4分の1波長板3よりも光源側にあればよく、図1の構成に限定されない。また、対物レンズ6、4分の1波長板3、回折光学素子8を全てアクチュエータに組み込む構成も考えられる。ただし、この場合には、回折光学素子8は、偏光選択性を有している必要がある。
【0029】
図2は、回折光学素子8の構造の例を示す断面図である。
【0030】
図2に示すように、回折光学素子8の構造は、鋸型状であり、溝の深さは+1次回折光が100%となる深さに設定している。ただし、必要な光量が得られ、かつ、迷光の影響が小さくなる構造であれば、これに限ったものではない。
【0031】
図3は、第1の実施形態の回折光学素子8と受光素子9との位置関係を説明する図である。
【0032】
図3に示すように、回折光学素子8に光ディスク7からの反射光が垂直に入射した場合、回折光学素子8の中心8Pと受光素子の中心9Pは光軸方向に一致する。すなわち、回折光学素子8で回折しない0次光が存在する場合、その0次光は受光素子9の中心9Pに入射する。
【0033】
図4は、第1の実施形態の回折光学素子8と受光素子9のパターンを説明する図である。図4(a)は、回折光学素子8の各領域の回折パターンを示したものである。
【0034】
図4(a)に示すように、回折光学素子8は、第1乃至第3の領域8a1,8a2,8bの3領域に分割され、領域毎に異なる回折パターンを有する。
【0035】
図4(b)は、図4(a)の回折パターンを省略して、回折光学素子8上のスポットを示している。図4(b)に示す破線で囲まれる領域は、対物レンズ6のレンズシフト(以下、単にレンズシフトという)がない場合の回折光学素子8上の光束を示している。そして、破線で示す領域のうち、ハッチングで示す光束8s1,8s2は、光ディスク7の記録トラックによる回折成分、すなわち、記録トラックで回折した0次光と1次光との重なりによる光束である。また、ハッチングされない光束8s3は、記録トラックによる回折成分を含まない、すなわち、記録トラックで回折した0次光のみの光束である。
【0036】
光ディスク7の信号記録面の記録トラックによる回折成分、すなわち、光束8s1,8s2を主に含む第1及び第2の領域8a1,8a2と、それ以外の第3の領域8bとに回折光学素子8の領域を分けた場合、第1及び第2の領域8a1,8a2の両方を含む領域、または、第3の領域8bのどちらか一方の領域のみが非点収差を与える領域であり、もう一方の領域は、非点収差を与えない領域とする。第1の実施形態では、第3の領域8bにおいて非点収差を与えるものとする。
【0037】
次に、図4(c)を用いて、受光素子9上に入射する光束のスポット形状を説明する。図4(c)は、受光素子9の分割パターン及びスポット形状を示したものである。
【0038】
受光素子9は、ラジアル方向に2分割され、タンジェンシャル方向にも2分割されていて、第1乃至第4の領域9A,9B,9C,9Dに4分割されたセルより構成される。
【0039】
また、図4の一点鎖線で囲まれる領域は、スポット形状を示す。第1のスポット9a1は、第1の領域8a1で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第2のスポット9a2は、第2の領域8a2で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第3のスポット9bは、第3の領域8bで回折される+1次回折光により形成されるスポットである。
【0040】
図4(c)のハッチングで示す領域は、図4(b)のハッチングで示す光束に対応している。すなわち、図4(b)のハッチングで示す光束9s1,9s2は、それぞれ回折光学素子8上でそれぞれ光束8s1,8s2を形成していた光によるものである。また、回折光学素子8上で光束8s3を形成した光のうち、第1の領域8a1に重なる光束は、第1のスポット9a1に含まれ、第2の領域8a2に重なる光束は、第2のスポット9a2に含まれ、第3の領域8bに重なる光束は、第3のスポット9bに含まれる。
【0041】
回折光学素子8の第1乃至第3の領域と受光素子9でのスポットとの関係について、さらに詳細に説明する。
【0042】
非点収差を与える第3の領域8bで回折される+1次回折光は、受光素子9上のラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係が逆転され、図4(c)の第3のスポット9bに示す形状で受光素子9上に入射する。一方、非点収差の与えらない第1及び第2の領域8a1,8a2で回折される+1次回折光は、ラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係に変化はなく、スポット9bとは重ならず、かつ、第1及び第2の領域8a1,8a2とは大きさと位置関係が若干異なるように、受光素子9上で第1及び第2のスポット9a1,9a2となる。
【0043】
ここで、受光素子9での第1乃至第4の領域9A,9B,9C,9Dにより検出される光量をそれぞれA,B,C,Dとする。不図示の制御部は、記録トラックによる回折成分が主に含まれる第1及び第2のスポット9a1,9a2より、MPPを算出することが可能である。MPPは、以下の式(1)で表される。
MPP=(A+D)−(B+C) ・・・(1)
【0044】
一方、回折光学素子8の第3の領域8bとそれに対応する受光素子9上の第3のスポット9bは、ラジアル方向とタンジェンシャル方向とが入れ替わる。そして、不図示の制御部は、レンズシフトによるオフセット成分が主に含まれる第3のスポット9bより、オフセット成分をキャンセルするSPPを算出することが可能である。SPPは、以下の式(2)で表される。
SPP=(A+B)−(C+D) ・・・(2)
【0045】
さらに、レンズシフトによるオフセット成分をキャンセルするパラメータをkとすれば、不図示の制御部は、DPP法を改良したトラッキングエラー信号APP(Advanced Push Pull)は、以下の式(3)によって与えられる。
APP=MPP+k*SPP ・・・(3)
【0046】
また、図4(b)の第3のスポット9bには、前述のように非点収差が付与されているので、非点収差法によるフォーカス検出か可能である。そして、不図示の制御部は、フォーカスエラー信号FESを算出することが可能である。FESは、以下の式(4)で与えられる。
FES=(A+C)−(B+D) ・・・(4)
【0047】
さらに、受光素子9上の第1乃至第3のスポット9a1,9a2,9bのラジアル方向の位置を示すポジション信号PosX,及びタンジェンシャル方向の位置を示すポジション信号PosYは、それぞれMPP,SPPと同一であり、不図示の制御部は、それぞれ以下の式(5),(6)により、ポジション信号PosX,PosYを算出する。
PosX=MPP ・・・(5)
PosY=SPP ・・・(6)
【0048】
さらに、再生専用ディスク(ROM)ではDPD(Differential Phase Detection)法によるトラッキング検出が必要になるが、DPD法では4つの受光素子の対角成分の位相差で表されるため、xの位相をφ(x)と表記することにすれば、トラッキングエラー信号DPDは、以下の式(7)で表される。
DPD=φ(A+C)−φ(B+D)・・・(7)
【0049】
なお、回折光学素子8、受光素子9のパターンは、原理的に同様であれば、図2に限定されない。さらに、記録トラックによる回折成分、すなわち、光束8s1,8s2を主に含む第1及び第2の領域8a1、8a2の両方の領域に非点収差を与え、それ以外の第3の領域8bに非点収差を与えない場合は、MPPとSPPとを入れ換えてトラッキングエラー信号APPの演算をすることで対応可能である。
【0050】
以上説明したように、光束を分岐することなく、一つの回折光学素子8と、4つのセルを有する受光素子9のみで、受光素子9の位置検出用の信号も含めた全てのサーボ信号検出を行うことができるため、ノイズの少ない信号で、かつ、小型で簡易な光学構成の光ピックアップ装置を提供することができる。
【0051】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について図5乃至図8を参照して説明する。図5は、第2の実施形態の光ピックアップ装置の全体構成を摸式的に示す図である。
【0052】
図5に示す第2の実施形態の光学構成について、第1の実施形態の図1との相違点を中心に説明する。
【0053】
第2の実施形態における光学構成は、PBS2に替わって分岐プリズム10、回折光学素子8に替わって回折光学素子18、受光素子9に替わって受光素子19を省スペースに配置したものである。その他の光学構成は、第1の実施形態と同様である。
【0054】
図6は、第2の実施形態の回折光学素子18の構造の例を示す断面図である。
【0055】
図6に示すように、回折光学素子18の構造は、階段状であり、溝の深さは、レーザ光源1から射出される光の1波長相当分を4分割した4段構造である。階段状の回折光学素子18は金型の製作が容易であるが、+1次回折効率は最大96%となり、また溝の深さや階段状の形状誤差などによりさらに低下する。また、理論的にも−3次回折光が僅かに発生し、また形状誤差があった場合には回折作用を受けない0次光なども発生する。これらの−3次回折光や0次光は、迷光となって、各信号を劣化させる要因となる。
【0056】
図7は、第2の実施形態の回折光学素子18と受光素子19の位置関係を説明する図である。
【0057】
図7に示すように、第2の実施形態の回折光学素子18と受光素子19とは、迷光の影響を低減する位置関係となっている。すなわち、回折光学素子18に光ディスク7からの反射光が垂直に入射した場合、回折光学素子18の中心18Pを通る光軸方向への延長線上から所定の距離d離れたところに受光素子19の中心19Pがある。すなわち、回折光学素子18で回折しない0次光が存在した場合、受光素子19には0次光は入射せず、また、−3次回折光は、信号検出に用いる+1次回折光とは光軸を挟んで180°反対方向に回折するので、受光素子19には入射しない。よって、図7に示す第2の実施形態の回折光学素子18と受光素子19の位置関係によれば、前述の迷光の影響を抑制することができる。ただし、迷光の影響が少ないとみなせる場合には、図3に示す回折光学素子8と受光素子9の位置関係を回折光学素子18と受光素子19の位置関係に適用してもよい。
【0058】
図8は、第2の実施形態の回折光学素子18と受光素子19のパターンを説明する図である。図8(a)は、回折パターンを省略して、回折光学素子18上のスポットを示している。
【0059】
図8(a)に示すように、回折光学素子18は、第1乃至第6の領域18a11,18a12,18a21,18a22,18b1,18b2の6領域に分割され、領域毎に異なる回折パターンを有する。
【0060】
図8(a)に示す破線で囲まれる領域は、レンズシフトがない場合の回折光学素子18上の光束を示している。そして、破線で示す領域のうち、図8(a)のハッチングで示す光束18s1,18s2は、光ディスク7の記録トラックによる回折成分、すなわち、記録トラックで回折した0次光と1次光の重なりによる光束である。また、ハッチングされない光束18s3は、記録トラックによる回折成分を含まない、すなわち、記録トラックで回折した0次光のみの光束である。第2の実施形態では、第5及び第6領域18b1,18b2において非点収差を与えるものとする。
【0061】
次に、図8(b)を用いて、受光素子19上に入射する光束のスポット形状を説明する。図8(b)は、受光素子19の分割パターンとスポット形状を示す。
【0062】
受光素子19は、ラジアル方向に2分割され、タンジェンシャル方向にも2分割されていて、第1乃至第4の領域19A,19B,19C,19Dに4分割されたセルで構成される。また、図8(b)の一点鎖線で囲まれる領域は、スポット形状を示す。第1のスポット19a11は、第1の領域18a11で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第2のスポット19a12は、第2の領域18a12で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第3のスポット19a21は、第3の領域18a21で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第4のスポット19a22は、第4の領域18a22で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第5のスポット19b1は、第5の領域18b1で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第6のスポット19b2は、第6の領域18b2で回折される+1次回折光により形成されるスポットである。
【0063】
図8(a)の回折光学素子18上のハッチングで示す光束18s1のうち、第1の領域18a11と重なる光束は、第1のスポット19a11に、第2の領域18a12と重なる光束は、第2のスポット19a12に含まれる。また、図8(a)の回折光学素子18上のハッチングで示す光束18s2のうち、第3の領域18a21と重なる光束は、第3のスポット19a21に、第4の領域18a22と重なる光束は、第4のスポット19a22に含まれる。
【0064】
回折光学素子18の各領域と受光素子19での各スポットの関係について、さらに詳細に説明する。
【0065】
非点収差を与える第5及び第6の領域18b1,18b2で回折される+1次回折光は、受光素子19上ではラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係が逆転され、それぞれ第5及び第6のスポット19b1,19b2に示す形状で受光素子19上に入射する。一方、非点収差の与えられない第1乃至第4の領域18a11,18a12,18a21,18a22で回折される+1次回折光は、ラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係に変化はなく、第5及び第6のスポット19b1,19b2とは重ならず、かつ、受光素子19上でほぼフォーカスを結ぶようにそれぞれ第1乃至第4のスポット19a11,19a12,19a21,19a22となる。
【0066】
ここで、受光素子19での第1乃至第4の領域19A,19B,19C,19Dにより検出される光量をそれぞれA,B,C,Dとすると、第1の実施形態と同様の演算により、各サーボ信号及び位置検出信号が得られる。
【0067】
以上説明したように、光束を分岐することなく、一つの回折光学素子と、4つのセルをもつ受光素子のみで、受光素子の位置検出用の信号も含めた全てのサーボ信号検出を行うことができるため、ノイズの少ない信号で、かつ、小型で簡易な光ピックアップ装置を提供することができる。
【0068】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について図9を参照して説明する。第3の実施形態の光学構成は、図5に示した第2の実施形態の光学構成と同一であるが、回折光学素子18に替わって回折光学素子28、受光素子19に替わって受光素子29を用いる。
【0069】
図9は、発明の第3の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。図9(a)は、回折パターンを省略して、回折光学素子28上のスポットを示している。
【0070】
図9(a)に示すように、回折光学素子28は、第1乃至第6の領域28a11,28a12,28a21,28a22,28b1,28b2の6領域に放射状に分割され、領域毎に異なる回折パターンを有する。
【0071】
図9(a)に示す破線で囲まれる領域は、レンズシフトがない場合の回折光学素子28上の光束を示している。そして、破線で示す領域のうち、図9(a)のハッチングで示す光束28s1,28s2は、光ディスク7の記録トラックによる回折成分、すなわち、記録トラックで回折した0次光と1次光の重なりによる光束である。また、ハッチングされない光束18s3は、記録トラックによる回折成分を含まない、すなわち、記録トラックで回折した0次光のみの光束である。第3の実施形態では、第5及び第6領域28b1,28b2において非点収差を与えるものとする。
【0072】
次に、図9(b)を用いて、受光素子29上に入射する光束のスポット形状を説明する。図9(b)は、受光素子29の分割パターンとスポット形状を示す。
【0073】
受光素子29は、ラジアル方向に2分割され、タンジェンシャル方向にも2分割されていて、第1乃至第4の領域29A,29B,29C,29Dに4分割されたセルで構成される。また、図9(b)の一点鎖線で囲まれる領域は、スポット形状を示す。第1のスポット29a11は、第1の領域28a11で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第2のスポット29a12は、第2の領域28a12で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第3のスポット29a21は、第3の領域28a21で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第4のスポット29a22は、第4の領域28a22で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第5のスポット29b1は、第5の領域28b1で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第6のスポット29b2は、第6の領域28b2で回折される+1次回折光により形成されるスポットである。
【0074】
図9(a)の回折光学素子28上のハッチングで示す光束28s1のうち、第1の領域28a11と重なる光束は、第1のスポット29a11に、第2の領域28a12と重なる光束は、第2のスポット29a12に含まれる。また、図9(a)の回折光学素子28上のハッチングで示す光束28s2のうち、第3の領域28a21と重なる光束は、第3のスポット29a21に、第4の領域28a22と重なる光束は、第4のスポット29a22に含まれる。
【0075】
回折光学素子28の各領域と受光素子29での各スポットの関係について、さらに詳細に説明する。
【0076】
非点収差を与える第5及び第6の領域28b1,28b2で回折される+1次回折光は、受光素子29上ではラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係が逆転され、それぞれ第5及び第6のスポット29b1,29b2に示す形状で受光素子29上に入射する。一方、非点収差の与えられない第1乃至第4の領域28a11,28a12,28a21,28a22で回折される+1次回折光は、ラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係に変化はなく、第5及び第6のスポット29b1,29b2とは重ならず、かつ、受光素子29上でほぼフォーカスを結ぶようにそれぞれ第1乃至第4のスポット29a11,29a12,29a21,29a22となる。
【0077】
ここで、受光素子29での第1乃至第4の領域29A,29B,29C,29Dにより検出される光量をそれぞれA,B,C,Dとすると、第1の実施形態と同様の演算により、各サーボ信号及び位置検出信号が得られる。
【0078】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について図10乃至図13を参照して説明する。図10は、本発明の第4の実施形態の光ピックアップ装置の全体構成を摸式的に示した図である。
【0079】
図10に示す第4の実施形態の光学構成について、第1の実施形態の図1との相違点を中心に説明する。
【0080】
第4の実施形態における光学構成においては、レーザ光源1と受光素子39,40とは、少ない面積に集積化されて光集積ユニットを構成している。この第4の実施形態においては、第2の実施形態の光学系と比較しても、さらに小型化を図ることができる。
【0081】
この光学系は、回折光学素子8に替わって回折光学素子38を有し、この回折光学素子38がPBS2に替わる機能も有する。すなわち、この光学系においては、PBS2は用いられない。また、受光素子9に替わって受光素子39,40を省スペースに配置したものである。その他の光学構成は、第1の実施形態と同様である。
【0082】
図11は、第4の実施形態の回折光学素子38の構造の例を示す断面図である。
【0083】
図11に示すように、回折光学素子38の構造は、金型の製作が容易なバイナリー構造であり、溝の深さは、レーザ光源1から射出される光の1波長相当分を2分割した2段構造である。バイナリー構造の回折光学素子38は金型の製作が容易であるが、+1次回折効率は最大40%となり、また溝の深さやバイナリー構造の形状誤差などによりさらに低下する。また、理論的にも−1次回折光が同じ回折効率で発生する。また、形状誤差があった場合には回折作用を受けない0次光なども発生する。この0次光は、迷光となって、各信号を劣化させる要因となる。
【0084】
図12は、第4の実施形態の回折光学素子38と受光素子39,40の位置関係を説明する図である。
【0085】
回折光学素子38に光ディスク7からの反射光が垂直に入射した場合、回折光学素子38の中心38Pを通る光軸方向への延長線上から所定の距離d離れたところで、光軸を挟んで左右対称に各受光素子39,40の中心39P,40Pがある。すなわち、回折光学素子38で回折しない0次光が存在した場合、受光素子39,40には0次光は入射せず、また、信号検出に用いる±1次回折光は、光軸を挟んで180°反対方向に回折する。そのため、回折光学素子38で回折しない0次光による迷光は受光素子39,40に入射しない構成となっている。また、光軸中心から見て反対側配置された同様の構成を有する受光素子39,40により、±1次回折光の両方を受光することができる。
【0086】
第4の実施の形態においては、受光素子39,40のセル数は倍になるが、図11に示す製造が容易なバイナリー形状の回折光学素子38を用いながら、一定の光量を得ることができる。また、図12に示す第4の実施形態の回折光学素子38と受光素子39,40の位置関係によれば、前述の迷光の影響を抑制することができる。
【0087】
図13は、第4の実施形態の回折光学素子38と受光素子39,40のパターンを説明する図である。図13(a)は、回折パターンを省略して、回折光学素子38上のスポットを示している。
【0088】
図13(a)に示すように、回折光学素子38は、第1乃至第6の領域38a11,38a12,38a21,38a22,38b1,38b2の6領域に分割され、領域毎に異なる回折パターンを有する。
【0089】
図13(a)に示す破線で囲まれる領域は、レンズシフトがない場合の回折光学素子38上の光束を示している。そして、破線で示す領域のうち、図13(a)のハッチングで示す光束38s1,38s2は、光ディスク7の記録トラックによる回折成分、すなわち、記録トラックで回折した0次光と1次光の重なりによる光束である。また、ハッチングされない光束38s3は、記録トラックによる回折成分を含まない、すなわち、記録トラックで回折した0次光のみの光束である。第4の実施形態では、第5及び第6領域38b1,38b2において非点収差を与えるものとする。
【0090】
次に、図13(b)を用いて、受光素子39,40上に入射する光束のスポット形状を説明する。図13(b)は、受光素子39,40の分割パターンとスポット形状を示す。
【0091】
受光素子39,40は、それぞれがラジアル方向に2分割され、タンジェンシャル方向にも2分割されていて、それぞれが第1乃至第4の領域39A,39B,39C,39D、40A,40B,40C,40Dに4分割されたセルで構成される。また、図13(b)の一点鎖線で囲まれる領域は、スポット形状を示す。一方の受光素子39には、回折光学素子38で回折される+1次回折光が入射し、他方の受光素子40には、回折光学素子38で回折される−1次回折光が入射する。これら受光素子39,40には、光軸中心に対して点対称な位置にスポットが入射する。そのため、受光素子39,40の各セル名を、一方の受光素子39において第1乃至第4の領域39A乃至39Dとし、他方の受光素子40において第1乃至第4の領域40A乃至40Dとすると、39Aと40C、39Bと40D、39Cと40A、39Dと40Bがそれぞれ、光軸中心を挟んで対応する位置に配置されている。
【0092】
一方の受光素子39において、第1のスポット39a11は、第1の領域38a11で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第2のスポット39a12は、第2の領域38a12で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第3のスポット39a21は、第3の領域38a21で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第4のスポット39a22は、第4の領域38b22で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第5のスポット39b1は、第5の領域38b1で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第6のスポット39b2は、第6の領域38b2で回折される+1次回折光により形成されるスポットである。
【0093】
図13(a)の回折光学素子38上のハッチングで示す光束38s1のうち、第1の領域38a11と重なる光束は、第1のスポット39a11に、第2の領域38a12と重なる光束は、第2のスポット39a12に含まれる。また、図13(a)の回折光学素子38上のハッチングで示す光束38s2のうち、第3の領域38a21と重なる光束は、第3のスポット39a21に、第4の領域38a22と重なる光束は、第4のスポット39a22に含まれる。
【0094】
他方の受光素子40において、第1のスポット40a11は、第1の領域38a11で回折される−1次回折光により形成されるスポットであり、第2のスポット40a12は、第2の領域38a12で回折される−1次回折光により形成されるスポットであり、第3のスポット40a21は、第3の領域38a21で回折される−1次回折光により形成されるスポットであり、第4のスポット40a22は、第4の領域38b22で回折される−1次回折光により形成されるスポットであり、第5のスポット40b1は、第5の領域38b1で回折される−1次回折光により形成されるスポットであり、第6のスポット40b2は、第6の領域38b2で回折される−1次回折光により形成されるスポットである。
【0095】
図13(a)の回折光学素子38上のハッチングで示す光束38s1のうち、第1の領域38a11と重なる光束は、第1のスポット40a11に、第2の領域38a12と重なる光束は、第2のスポット40a12に含まれる。また、図13(a)の回折光学素子38上のハッチングで示す光束38s2のうち、第3の領域38a21と重なる光束は、第3のスポット40a21に、第4の領域38a22と重なる光束は、第4のスポット40a22に含まれる。
【0096】
回折光学素子38の各領域と各受光素子39,40での各スポットの関係について、さらに詳細に説明する。
【0097】
非点収差を与える第5及び第6の領域38b1,38b2で回折される±1次回折光は、受光素子39,40上ではラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係が逆転され、それぞれ第5及び第6のスポット39b1,39b2、40b1,40b2に示す形状で各受光素子39,40上に入射する。一方、非点収差の与えられない第1乃至第4の領域38a11,38a12,38a21,38a22で回折される±1次回折光は、ラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係に変化はなく、第5及び第6のスポット39b1,39b2、40b1,40b2とは重ならず、かつ、受光素子39,40上でほぼフォーカスを結ぶようにそれぞれ第1乃至第4のスポット39a11,39a12,39a21,39a22、40a11,40a12,40a21,40a22となる。
【0098】
ここで、各受光素子39,40での第1乃至第4の領域39A,39B,39C,39D、40A,40B,40C,40Dにより検出される光量をそれぞれA1,B1,C1,D1,A2,B2,C2,D2とし、受光素子からの出力A,B,C,Dを、以下の式(8)で定義する。
A=A1+A2
B=B1+B2
C=C1+C2
D=D1+D2 ・・・(8)
【0099】
式(8)に示すように、各受光素子39,40により検出される光量をそれぞれA,B,C,Dと定義することにより、第1の実施形態と同様の演算により、各サーボ信号及び位置検出信号が得られる。
【0100】
以上説明したように、光束を分岐することなく、一つの回折光学素子と、それぞれ4つのセルをもつ2つの受光素子のみで、受光素子の位置検出用の信号も含めた全てのサーボ信号検出を行うことができるため、ノイズの少ない信号で、かつ、小型で簡易な光ピックアップ装置を提供することができる。
【0101】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について図14を参照して説明する。第5の実施形態の光学構成は、図5に示した第2の実施形態の光学構成と同一であるが、回折光学素子18に替わって回折光学素子48、受光素子19に替わって受光素子49を用いる。
【0102】
図14は、発明の第5の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。図14(a)は、回折パターンを省略して、回折光学素子48上のスポットを示している。
【0103】
図14(a)に示すように、回折光学素子48は、第1乃至第8の領域48a11,48a12,48a21,48a22,48b11,48b12,48b21,48b22の8領域に放射状に分割され、領域毎に異なる回折パターンを有する。
【0104】
図14(a)に示す破線で囲まれる領域は、レンズシフトがない場合の回折光学素子48上の光束を示している。そして、破線で示す領域のうち、図14(a)のハッチングで示す光束48s1,48s2は、光ディスク7の記録トラックによる回折成分、すなわち、記録トラックで回折した0次光と1次光の重なりによる光束である。また、ハッチングされない光束18s3は、記録トラックによる回折成分を含まない、すなわち、記録トラックで回折した0次光のみの光束である。第5の実施形態では、第5乃至第8領域48b11,48b12,48b21,48b22において非点収差を与えるものとする。
【0105】
次に、図14(b)を用いて、受光素子49上に入射する光束のスポット形状を説明する。図14(b)は、受光素子49の分割パターンとスポット形状を示す。
【0106】
受光素子49は、ラジアル方向に2分割され、タンジェンシャル方向にも2分割されていて、第1乃至第4の領域49A,49B,49C,49Dに4分割されたセルで構成される。また、図14(b)の一点鎖線で囲まれる領域は、スポット形状を示す。第1のスポット49a11は、第1の領域48a11で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第2のスポット49a12は、第2の領域48a12で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第3のスポット49a21は、第3の領域48a21で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第4のスポット49a22は、第4の領域48a22で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第5のスポット49b11は、第5の領域48b11で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第6のスポット49b12は、第6の領域48b12で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第7のスポット49b21は、第7の領域48b21で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第8のスポット49b22は、第8の領域48b22で回折される+1次回折光により形成されるスポットである。
【0107】
図14(a)の回折光学素子48上のハッチングで示す光束48s1のうち、第1の領域48a11と重なる光束は、第1のスポット49a11に、第2の領域48a12と重なる光束は、第2のスポット49a12に含まれる。また、図14(a)の回折光学素子48上のハッチングで示す光束48s2のうち、第3の領域48a21と重なる光束は、第3のスポット49a21に、第4の領域48a22と重なる光束は、第4のスポット49a22に含まれる。
【0108】
回折光学素子48の各領域と受光素子49での各スポットの関係について、さらに詳細に説明する。
【0109】
非点収差を与える第5乃至第8の領域48b11,48b12,48b21,48b22で回折される+1次回折光は、受光素子49上ではラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係が逆転され、それぞれ第5乃至第8のスポット49b11,49b1249b21,49b22に示す形状で受光素子49上に入射する。一方、非点収差の与えられない第1乃至第4の領域48a11,48a12,48a21,48a22で回折される+1次回折光は、ラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係に変化はなく、第5乃至第8のスポット49b11,49b12,49b21,49b22とは重ならず、かつ、受光素子49上でほぼフォーカスを結ぶようにそれぞれ第1乃至第4のスポット49a11,49a12,49a21,49a22となる。
【0110】
ここで、受光素子49での第1乃至第4の領域49A,49B,49C,49Dにより検出される光量をそれぞれA,B,C,Dとすると、第1の実施形態と同様の演算により、各サーボ信号及び位置検出信号が得られる。
【0111】
なお、この実施形態においては、図14(b)に示すように、回折光学素子48の第5乃至第8の領域48b11,48b12,48b21,48b22を経た第5乃至第8のスポット49b11,49b12,49b21,49b22が互いに離れていることにより、受光素子49上でスポットが移動した場合においても、サーボ信号に不要なオフセットが乗ることを抑制することができる。
【0112】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態について図15を参照して説明する。第6の実施形態の光学構成は、図5に示した第2の実施形態の光学構成と同一であるが、回折光学素子18に替わって回折光学素子58、受光素子19に替わって受光素子59を用いる。
【0113】
図15は、本発明の第6の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。図15(a)は、回折パターンを省略して、回折光学素子58上のスポットを示している。
【0114】
図15(a)に示すように、回折光学素子58は、第1乃至第8の領域58a11,58a12,58a21,58a22,58b11,58b12,58b21,58b22の8領域に放射状に分割され、領域毎に異なる回折パターンを有する。
【0115】
図15(a)に示す破線で囲まれる領域は、レンズシフトがない場合の回折光学素子58上の光束を示している。そして、破線で示す領域のうち、図15(a)のハッチングで示す光束58s1,58s2は、光ディスク7の記録トラックによる回折成分、すなわち、記録トラックで回折した0次光と1次光の重なりによる光束である。また、ハッチングされない光束18s3は、記録トラックによる回折成分を含まない、すなわち、記録トラックで回折した0次光のみの光束である。第6の実施形態では、第5乃至第8領域58b11,58b12,58b21,58b22において非点収差を与えるものとする。
【0116】
次に、図15(b)を用いて、受光素子59上に入射する光束のスポット形状を説明する。図15(b)は、受光素子59の分割パターンとスポット形状を示す。
【0117】
受光素子59は、ラジアル方向に2分割され、タンジェンシャル方向にも2分割されていて、第1乃至第4の領域59A,59B,59C,59Dに4分割されたセルで構成される。
【0118】
第6の実施形態においては、受光素子59の第1乃至第4の領域59A,59B,59C,59Dは、互いに離間されて配置されており、各領域59A,59B,59C,59Dの間には、光量を検出しない不感帯が形成されている。
【0119】
図15(b)の一点鎖線で囲まれる領域は、スポット形状を示す。第1のスポット59a11は、第1の領域58a11で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第2のスポット59a12は、第2の領域58a12で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第3のスポット59a21は、第3の領域58a21で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第4のスポット59a22は、第4の領域58a22で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第5のスポット59b11は、第5の領域58b11で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第6のスポット59b12は、第6の領域58b12で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第7のスポット59b21は、第7の領域58b21で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第8のスポット59b22は、第8の領域58b22で回折される+1次回折光により形成されるスポットである。
【0120】
図15(a)の回折光学素子58上のハッチングで示す光束58s1のうち、第1の領域58a11と重なる光束は、第1のスポット59a11に、第2の領域58a12と重なる光束は、第2のスポット59a12に含まれる。また、図15(a)の回折光学素子58上のハッチングで示す光束58s2のうち、第3の領域58a21と重なる光束は、第3のスポット59a21に、第4の領域58a22と重なる光束は、第4のスポット59a22に含まれる。
【0121】
回折光学素子58の各領域と受光素子59での各スポットの関係について、さらに詳細に説明する。
【0122】
非点収差を与える第5乃至第8の領域58b11,58b12,58b21,58b22で回折される+1次回折光は、受光素子59上ではラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係が逆転され、それぞれ第5乃至第8のスポット59b11,59b1259b21,59b22に示す形状で受光素子59上に入射する。一方、非点収差の与えられない第1乃至第4の領域58a11,58a12,58a21,58a22で回折される+1次回折光は、ラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係に変化はなく、第5乃至第8のスポット59b11,59b12,59b21,59b22とは重ならず、かつ、受光素子59上でほぼフォーカスを結ぶようにそれぞれ第1乃至第4のスポット59a11,59a12,59a21,59a22となる。
【0123】
ここで、受光素子59での第1乃至第4の領域59A,59B,59C,59Dにより検出される光量をそれぞれA,B,C,Dとすると、第1の実施形態と同様の演算により、各サーボ信号及び位置検出信号が得られる。
【0124】
なお、第6の実施形態においては、図15(b)に示すように、回折光学素子58の第5乃至第8の領域58b11,58b12,58b21,58b22を経た第5乃至第8のスポット59b11,59b12,59b21,59b22が互いに離れており、さらに、受光素子59の第1乃至第4の領域59A,59B,59C,59Dが互いに離間されていることにより、受光素子59上でスポットが移動した場合においても、サーボ信号に不要なオフセットが乗ることを抑制することができる。
【0125】
<第7の実施形態>
次に、本発明の第7の実施形態について図16を参照して説明する。第7の実施形態の光学構成は、図5に示した第2の実施形態の光学構成と同一であるが、回折光学素子18に替わって回折光学素子68、受光素子19に替わって受光素子69を用いる。
【0126】
図16は、本発明の第7の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。図16(a)は、回折パターンを省略して、回折光学素子68上のスポットを示している。
【0127】
図16(a)に示すように、回折光学素子68は、第1乃至第6の領域68a1,68a2,68b11,68b12,68b21,68b22の6領域に光ディスク7による回折成分を含む領域に合わせて分割され、領域毎に異なる回折パターンを有する。
【0128】
図16(a)に示す破線で囲まれる領域は、レンズシフトがない場合の回折光学素子68上の光束を示している。そして、破線で示す領域のうち、図16(a)のハッチングで示す光束68s1,68s2は、光ディスク7の記録トラックによる回折成分、すなわち、記録トラックで回折した0次光と1次光の重なりによる光束である。また、ハッチングされない光束18s3は、記録トラックによる回折成分を含まない、すなわち、記録トラックで回折した0次光のみの光束である。第7の実施形態では、第1及び第2領域68a1,68a2において非点収差を与えるものとする。
【0129】
次に、図16(b)を用いて、受光素子69上に入射する光束のスポット形状を説明する。図16(b)は、受光素子69の分割パターンとスポット形状を示す。
【0130】
受光素子69は、ラジアル方向に2分割され、タンジェンシャル方向にも2分割されていて、第1乃至第4の領域69A,69B,69C,69Dに4分割されたセルで構成される。また、図16(b)の一点鎖線で囲まれる領域は、スポット形状を示す。第1のスポット69a1は、第1の領域68a1で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第2のスポット69a2は、第2の領域68a2で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第3のスポット69b11は、第3の領域68b11で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第4のスポット69b12は、第4の領域68b12で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第5のスポット69b21は、第5の領域68b21で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第6のスポット69b22は、第6の領域68b22で回折される+1次回折光により形成されるスポットである。
【0131】
図16(b)のハッチングで示す領域は、図16(a)のハッチングで示す光束に対応している。すなわち、図16(b)のハッチングで示す光束69s1,69s2は、それぞれ回折光学素子68上でそれぞれ光束68s1,68s2を形成していた光によるものである。また、回折光学素子68上で光束68s3を形成した光のうち、第1の領域68a1に重なる光束は、第1のスポット69a1に含まれ、第2の領域68a2に重なる光束は、第2のスポット69a2に含まれる。
【0132】
回折光学素子68の各領域と受光素子69での各スポットの関係について、さらに詳細に説明する。
【0133】
非点収差を与える第1及び第2の領域68a1,68a2で回折される+1次回折光は、受光素子69上ではラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係が逆転され、それぞれ第1及び第2のスポット69a1,69a2に示す形状で受光素子69上に入射する。一方、非点収差の与えられない第3乃至第6の領域68b11,68b12,68b21,68b22で回折される+1次回折光は、ラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係に変化はなく、第1及び第2のスポット69a1,69a2とは重ならず、かつ、受光素子69上でほぼフォーカスを結ぶようにそれぞれ第3乃至第6のスポット69b11,69b12,69b21,69b22となる。
【0134】
ここで、受光素子69での第1乃至第4の領域69A,69B,69C,69Dにより検出される光量をそれぞれA,B,C,Dとすると、第1の実施形態と同様の演算により、各サーボ信号が得られる。
【0135】
第7の実施形態においても、ポジション信号PosX(ラジアル方向),PosY(タンジェンシャル方向)は、SPP,MPPそのものである。しかし、図16に示すように、回折光学素子の第1及び第2の領域68a1,68a2で回折される+1次回折光は、受光素子69上で90°回転したスポットとなる。そのため、第1〜第6の実施形態とは異なり、以下の式(9),(10)で表される。
PosX=SPP ・・・(9)
PosY=MPP ・・・(10)
【0136】
<第8の実施形態>
次に、本発明の第8の実施形態について図17を参照して説明する。第8の実施形態の光学構成は、図5に示した第2の実施形態の光学構成と同一であるが、回折光学素子18に替わって回折光学素子78、受光素子19に替わって受光素子79を用いる。
【0137】
図17は、本発明の第8の実施形態の回折光学素子と受光素子のパターンを説明する図である。図17(a)は、回折パターンを省略して、回折光学素子78上のスポットを示している。
【0138】
図17(a)に示すように、回折光学素子78は、第1乃至第6の領域78a1,78a2,78b11,78b12,78b21,78b22の6領域に放射状に分割され、領域毎に異なる回折パターンを有する。
【0139】
図17(a)に示す破線で囲まれる領域は、レンズシフトがない場合の回折光学素子78上の光束を示している。そして、破線で示す領域のうち、図17(a)のハッチングで示す光束78s1,78s2は、光ディスク7の記録トラックによる回折成分、すなわち、記録トラックで回折した0次光と1次光の重なりによる光束である。また、ハッチングされない光束18s3は、記録トラックによる回折成分を含まない、すなわち、記録トラックで回折した0次光のみの光束である。第8の実施形態では、第1及び第2領域78a1,78a2において非点収差を与えるものとする。
【0140】
次に、図17(b)を用いて、受光素子79上に入射する光束のスポット形状を説明する。図17(b)は、受光素子79の分割パターンとスポット形状を示す。
【0141】
受光素子79は、ラジアル方向に2分割され、タンジェンシャル方向にも2分割されていて、第1乃至第4の領域79A,79B,79C,79Dに4分割されたセルで構成される。また、図17(b)の一点鎖線で囲まれる領域は、スポット形状を示す。第1のスポット79a1は、第1の領域78a1で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第2のスポット79a2は、第2の領域78a2で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第3のスポット79b11は、第3の領域78b11で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第4のスポット79b12は、第4の領域78b12で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第5のスポット79b21は、第5の領域78b21で回折される+1次回折光により形成されるスポットであり、第6のスポット79b22は、第6の領域78b22で回折される+1次回折光により形成されるスポットである。
【0142】
図17(b)のハッチングで示す領域は、図17(a)のハッチングで示す光束に対応している。すなわち、図17(b)のハッチングで示す光束79s1,79s2は、それぞれ回折光学素子78上でそれぞれ光束78s1,78s2を形成していた光によるものである。また、回折光学素子78上で光束78s3を形成した光のうち、第1の領域78a1に重なる光束は、第1のスポット79a1に含まれ、第2の領域78a2に重なる光束は、第2のスポット79a2に含まれる。
【0143】
回折光学素子78の各領域と受光素子79での各スポットの関係について、さらに詳細に説明する。
【0144】
非点収差を与える第1及び第2の領域78a1,78a2で回折される+1次回折光は、受光素子79上ではラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係が逆転され、それぞれ第1及び第2のスポット79a1,79a2に示す形状で受光素子79上に入射する。一方、非点収差の与えられない第3乃至第6の領域78b11,78b12,78b21,78b22で回折される+1次回折光は、ラジアル方向とタンジェンシャル方向の関係に変化はなく、第1及び第2のスポット79a1,79a2とは重ならず、かつ、受光素子79上でほぼフォーカスを結ぶようにそれぞれ第3乃至第6のスポット79b11,79b12,79b21,79b22となる。
【0145】
ここで、受光素子79での第1乃至第4の領域79A,79B,79C,79Dにより検出される光量をそれぞれA,B,C,Dとすると、第1の実施形態と同様の演算により、各サーボ信号が得られる。
【0146】
第8の実施形態においても、図17に示すように、回折光学素子の第1及び第2の領域78a1,78a2で回折される+1次回折光は、受光素子79上で90°回転したスポットとなる。そのため、第7の実施形態と同様の式(9),(10)で表される。
【0147】
以上、本発明の第1乃至第8の実施形態について説明した。各実施形態は、光学構成(図1、図5及び図10に示す)、回折光学素子の構造(図3、図6及び図11に示す)、回折光学素子及び受光素子の位置関係、並びに、受光素子の構成(図4、図7及び図12に示す)、回折光学素子の分割方法及び受光素子の対応付け(図2、図8、図9、図13乃至図17に示す)の組み合わせにより構成しているが、本発明の効果は、いずれの組み合わせによっても成立するものであり、各実施形態で示した組み合わせのみに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明は、光ディスクの再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に適用される。
【符号の説明】
【0149】
1 レーザ光源
2 偏光ビームスプリッタ
3 4分の1波長板
4 コリメータレンズ
5 立ち上げミラー
6 対物レンズ
7 ディスク
8 回折光学素子
9 受光素子
10 分岐プリズム
18 回折光学素子
19 受光素子
28 回折光学素子
29 受光素子
38 回折光学素子
39 受光素子
40 受光素子
48 回折光学素子
49 受光素子
58 回折光学素子
59 受光素子
68 回折光学素子
69 受光素子
78 回折光学素子
79 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに光束を照射するレーザ光源と、
前記光ディスクの記録トラックにより回折される成分と回折しない成分の重なる光束が入射される第1の回折領域と、前記光ディスクの記録トラックにより回折しない成分の光束が入射される第2の回折領域とを設け、前記光ディスクより反射された光束を、前記第1の回折領域及び第2の回折領域において所定次数で回折し、かつ前記第1の回折領域または前記第2の回折領域のいずれか一方で非点収差を与える回折光学素子と、
前記光ディスクの記録トラック方向に対応する方向の分割線と、前記記録トラック方向に垂直な方向に対応する方向の分割線とにより4個の受光領域に分割され、前記第1の回折領域及び前記第2の回折領域で回折された光を受光する受光素子と
を有することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記回折光学素子の第1の回折領域は、前記光ディスクの記録トラックにより+1次で回折される成分と回折しない成分が重なる光束が入射され、かつ、前記光ディスクの記録トラック方向に対応する方向の分割線で分割される領域と、前記光ディスクの記録トラックにより−1次で回折される成分と回折しない成分が重なる光束が入射され、かつ、前記光ディスクの記録トラック方向に垂直な方向に対応する分割線で分割される領域とからなり、各領域は入射された光束をそれぞれ異なる方向へ回折する4個の分割領域を有し、
前記回折光学素子の第2の回折領域は、前記光ディスクの記録トラックにより回折しない成分の光束が入射され、かつ、前記記録トラック方向に垂直な方向に対応する分割線で分割されてそれぞれ異なる方向へ回折する2個の分割領域を有し、
前記第1の回折領域の4個の分割領域でそれぞれ回折される光は、前記受光素子のそれぞれ異なる受光領域にて受光され、前記第2の回折領域の2個の分割領域でそれぞれ回折される光は、前記受光素子の4個の領域のうち、前記記録トラック方向に垂直な方向に対応する分割線で分割した場合に同じ側に含まれる2個ずつの領域にてそれぞれ受光されることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記回折光学素子の第1の回折領域は、前記光ディスクの記録トラックにより+1次で回折される成分と回折しない成分が重なる光束が入射される領域と、前記光ディスクの記録トラックにより−1次で回折される成分と回折しない成分が重なる光束が入射される領域とからなり、各領域は入射された光束をそれぞれ異なる方向へ回折する2個の分割領域を有し、
前記回折光学素子の第2の回折領域は、前記光ディスクの記録トラックにより回折しない成分の光束が入射され、かつ、前記記録トラック方向に対応する方向と前記記録トラック方向に垂直な方向に対応する分割線とで分割されてそれぞれ異なる方向へ回折する4個の分割領域を有し、
前記第1の回折領域の2個の分割領域でそれぞれ回折される光は、前記受光素子の4個の領域のうち、前記記録トラック方向に垂直な方向に対応する分割線で分割した場合に同じ側に含まれる2個ずつの領域にてそれぞれ受光され、前記第2の回折領域の4個の分割領域でそれぞれ回折される光は、前記受光素子のそれぞれ異なる受光領域にて受光されることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記受光素子の4個の受光領域のうち、前記光ディスクの記録トラック方向に対応する方向の分割線で分割した場合に同じ側に含まれる受光領域の光検出信号をそれぞれ加算して第1及び第2の加算信号を得て、前記第1の加算信号から前記第2の加算信号を減算して第1の差分信号を算出し、前記受光素子の4個の受光領域のうち、前記光ディスクの記録トラック方向に垂直な方向に対応する方向の分割線で分割した場合に同じ側に含まれる受光領域の光検出信号をそれぞれ加算して第3及び第4の加算信号を得て、前記第3の加算信号から前記第4の加算信号を減算して第2の差分信号を算出し、第1及び第2の差分信号を用いてトラッキングエラー信号を算出する第1の制御部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記受光素子の4個の受光領域のうち、対角線上に配置される受光領域の光検出信号をそれぞれ加算して第5及び第6の加算信号を得て、前記第5の加算信号から前記第6の加算信号を減算してフォーカスエラー信号を算出する第2の制御部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−211859(P2010−211859A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56044(P2009−56044)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】