説明

光ピックアップ装置

【課題】 光検出器のXYポジション調整を容易に行うことが出来る光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】 信号記録層から反射される戻り光の中のメインビームが照射されるメインビーム用受光部10M及びサブビームが照射されるサブビーム用受光部が設けられている光検出器を備え、前記メインビーム用受光部10Mを光ディスクのトラッキング方向に対応する光検出器の方向をX軸、該X軸に対して直角方向をY軸としたとき、X軸方向及びY軸方向に夫々共通の分割線にて分割された内側4分割受光部101Mと外側4分割受光部102Mより成る8つの受光部にて構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作や光ディスクに信号の記録動作を行う光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作や信号の記録動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
光ディスク装置としては、CDやDVDと呼ばれる光ディスクを使用するものが一般に普及しているが、最近では斯かるCD規格及びDVD規格の光ディスクに加えてBlu−ray規格の光ディスクが普及している。斯かるBlu−ray規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うレーザー光としては、波長が短いレーザー光、例えば波長が405nmの青紫色光が使用されている。
【0004】
図2は例えばBlu−ray規格の光ディスクDに設けられている信号記録層Lに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置を構成する光学系を示す概略図であり、同図を利用して光ピックアップ装置の構成について説明する。
【0005】
図2において、1は波長が405nmの青紫色光であるレーザー光を放射するレーザーダイオード、2は前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光が入射される位置に設けられている回折格子であり、0次回折光であるメインビームと±1次回折光であるサブビームとを分離生成する作用を成すものである。3は前記回折格子2を透過したレーザー光が入射される1/2波長板であり、前記レーザーダイオード1から放射されるレーザー光の偏光方向をS方向又はP方向の直線偏光光に調整する作用を成すものである。
【0006】
4は前記回折格子2及び1/2波長板3を透過したレーザー光が入射される位置に設けられているハーフミラーであり、光ディスクD方向へレーザー光を反射させるとともに該光ディスクDの信号記録層Lから反射された戻り光を透過させる制御膜が形成されている。5は前記ハーフミラー4にて反射されたレーザー光が入射される位置に設けられているコリメートレンズであり、入射されるレーザー光を平行光に変換する作用を成すものである。
【0007】
6は前記コリメートレンズ5にて平行光に変換されたレーザー光が入射されるとともに該レーザー光を反射させる立ち上げミラーであり、光軸の方向を図示したように90度変更するようにされている。7は前記立ち上げミラー6によって反射されたレーザー光が入射される位置に設けられている1/4波長板であり、前記立ち上げミラー6側から入射されるレーザー光を直線偏光光から円偏光光へ、また反対側から入射されるレーザー光である戻り光を円偏光光から直線偏光光に偏光する作用を成すものである。
【0008】
8は前記1/4波長板7を透過したレーザー光が照射される位置に設けられている対物レンズであり、光ディスクDに設けられている信号記録層Lにレーザー光を集光させて読み出し動作や記録動作を行うために適した形状のスポットを生成させる作用を成すものである。前記対物レンズ8によって光ディスクDに設けられている信号記録層Lに集光されたレーザー光は、該信号記録層Lにて反射されて戻り光として該対物レンズ8に光ディスクD側から入射される。
【0009】
前記対物レンズ8に入射された戻り光は、該対物レンズ8を透過した後1/4波長板7に入射され、該1/4波長板7によって円偏光光から直線偏光光に変換される。このようにして偏光された戻り光は、立ち上げミラー6にて反射された後コリメートレンズ5に入射される。
【0010】
前記コリメートレンズ5に入射された戻り光は、該コリメートレンズ5を透過してハーフミラー4に入射されるが、このようにしてハーフミラー4に入射される戻り光は、前記1/4波長板7に対する往復透過動作によって直線偏光光の偏光方向が反転されているので、該ハーフミラー4に設けられている制御膜にて反射されることはなく、該制御膜を透過することになる。
【0011】
前記ハーフミラー4は、透過する戻り光に対してフォーカス制御動作を行うためのフォーカスエラー信号を生成するために非点収差を付加する作用を有するものであるが、その特性からAS収差やコマ収差と呼ばれる収差が発生するという問題がある。9は前記ハーフミラー4を透過した戻り光が入射される位置に設けられているアナモフィックレンズであり、該ハーフミラー4にて生成される非点収差をフォーカスエラー信号の生成動作を行うために適した大きさになるように拡大する作用を成すとともにハーフミラー4にて発生するAS収差やコマ収差を補正する作用を成すように構成されている。
【0012】
10は前記アナモフィックレンズ9を透過した戻り光が照射される位置に設けられている光検出器であり、照射されて生成されるスポット形状の変化やスポット位置の変位を利用することによってフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成するように構成されている。
【0013】
以上に説明したように光ディスクDに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置の光学系は構成されているが、次にトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号の生成動作について図3を参照して説明する。
【0014】
前記光検出器10に組み込まれている受光部には、例えば、図3に示すように戻り光の中のメインビームMが照射される4分割受光部であるメインビーム用受光部10aと、サブビームS1及びS2が各々照射される2分割受光部であるサブビーム用受光部10b及び10cが設けられている。そして、前記メインビーム用受光部10aは、例えば図示したようにトラッキング方向であるX軸方向及びX軸に対して直角方向であるY軸方向に夫々均等に2分割された4つの受光部A、B、C及びDにて構成され、サブビーム用受光部10b及び10cは、各々X軸方向に均等に2分割された2つの受光部E、F及び受光部G、Hにて構成されている。
【0015】
斯かる構成において、光ディスクDに設けられている信号記録層Lに形成されている信号トラックに対してレーザー光のスポット位置が光ディスクDの径方向にずれると、即ちトラッキングにずれが生じると、メインビーム用受光部10a及びサブビーム用受光部10b、10c上に照射生成されるメインビームMの位置、サブビームS1及びS2の位置が矢印A又はB方向に変位することになり、その結果、各受光部に対する受光量が変化することになる。
【0016】
図3に示した回路図は、差動プッシュプル法と呼ばれるトラッキング制御動作を行うためのものである。同図において、11はメインビームMが照射されるメインビーム用受光部10aを構成する受光部A及びDから得られる信号を加算する第1加算器、12は同じく受光部B及びCから得られる信号を加算する第2加算器、13は前記第1加算器11の出力信号から第2加算器12から得られる出力信号を減算する第1差動器、14はサブビームS1が照射されるサブビーム用受光部10bを構成する受光部Eから得られる信号か
ら受光部Fから得られる信号を減算する第2差動器、15はサブビームS2が照射されるサブビーム用受光部10cを構成する受光部Gから得られる信号から受光部Hから得られる信号を減算する第3差動器である。
【0017】
16は前記第2差動器14の出力信号と第3差動器15の出力信号とを加算する第3加算器、17は前記第3加算器16の出力信号をK倍(Kはメインビームの光量とサブビームの光量との光量比に基づいて設定される。)の信号に増幅する増幅回路、18は前記第1差動器13の出力信号から前記増幅回路17の出力信号を減算する第4差動器であり、その出力信号がトラッキングエラー信号として出力端子19に出力される。
【0018】
前述した各受光部A、B、C、D、E、F、G及びHから得られる信号をA、B、C、D、E、F、G及びHとし、トラッキングエラー信号をTEとすると、該トラッキングエラー信号TEは、
TE=(A+D)−(B+C)−K{(E−F)+(G−H)}
から算出されるが、斯かるトラッキングエラー信号TEは、図3に示した回路の出力端子19より得ることが出来る。斯かる差動プッシュプル法によるトラッキング制御動作を行う光ピックアップ装置に関する技術は特許文献1に記載されている。
【0019】
トラッキング制御動作に使用されるトラッキングエラー信号TEの生成動作は以上に説明したように行われるが、次に非点収差法と呼ばれるフォーカス制御動作に使用されるフォーカスエラー信号FEの生成動作について説明する。
【0020】
図3に示した回路において、20は前記メインビーム用受光部10a部を構成する受光部A及びCより得られる信号を加算する第4加算器、21は前記メインビーム用受光部10a部を構成する受光部B及びDより得られる信号を加算する第5加算器、22は前記第4加算器20の出力信号から前記第5加算器21の出力信号を減算する第5差動器であり、その出力信号がフォーカスエラー信号として出力端子23に出力される。
【0021】
フォーカスエラー信号FEは、周知のようにFE=(A+C)−(B+D)と表されるが、これは対物レンズ8のフォーカス方向への変位に伴って発生する非点収差に基づいてメインビームMの形状が楕円から円形へ、また円形から楕円へと変化する特性を利用することによって得られるものである。斯かるフォーカスエラー信号FEを使用するフォーカス制御動作を行う光ピックアップ装置に関する技術は特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開平8−339556号公報
【特許文献2】特開2006−79797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
光ピックアップ装置の組み立て時に光検出器10の固定位置の調整動作、即ちXYポジション調整と呼ばれる調整動作が行われるが、斯かる調整動作は図3に示すようにメインビームMがメインビーム用受光部10a部の中央部に位置するように行われる。
【0024】
前述したXYポジション調整動作は、光検出器10のメインビーム用受光部10a部を構成する受光部A、B、C及びDから得られる信号をA、B、C、Dとしたとき、A+D=B+Cになるように調整することによってX軸方向の位置調整を行い、A+B=C+Dになるように調整することによってY軸方向の位置調整を行うように構成されている。
【0025】
前述したXYポジションの調整動作はX軸方向の調整を行った後にY軸方向の調整動作を行うようにしているので、光検出器10の位置変位動作が直角方向に異なる2方向に対して行われことになる。従って、調整位置が微妙に変化することになり、正確な位置調整を行うためには熟練した技術が要求されるという問題がある。
【0026】
本発明は、前述した問題を解決することが出来る光ピックアップ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、回折格子によってメインビームと2つのサブビームに分離されたレーザー光を光ディスクに設けられている信号記録層に集光させる対物レンズと、前記信号記録層から反射される戻り光の中のメインビームが照射されるメインビーム用受光部及びサブビームが照射されるサブビーム用受光部が設けられている光検出器を備え、前記メインビーム用受光部を光ディスクのトラッキング方向に対応する光検出器の方向をX軸、該X軸に対して直角方向をY軸としたとき、X軸方向及びY軸方向に夫々共通の分割線にて分割された内側4分割受光部と外側4分割受光部より成る8つの受光部にて構成したことを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明は、8つの受光部から非点収差法によるフォーカス制御動作に使用するフォーカスエラー信号を生成するとともに内側4分割受光部から差動プッシュプル法によるトラッキング制御動作に使用するトラッキングエラー信号を生成するようにしたことを特徴とするものである。
【0029】
そして、本発明は、内側4分割受光部のX軸方向の幅及びY軸方向の幅を受光レーザー光のスポット径と同一になるようにしたことを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明は、スポット径としてレーザー光の最大強度に対して1/e(eは自然対数の底)となるレーザー光を使用するようにしたことを特徴とするものである。
【0031】
そして、本発明は、内側4分割受光部を構成する全ての受光部から得られる信号を加算し、その加算信号のレベルが最大になるように光検出器の位置を調整するようにしたことを特徴とするものである。
【0032】
更に、本発明は、サブビーム用受光部より得られる信号によって光検出器の回転位置を調整するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、信号記録層から反射される戻り光の中のメインビームが照射されるメインビーム用受光部及びサブビームが照射されるサブビーム用受光部が設けられている光検出器を備え、前記メインビーム用受光部を光ディスクのトラッキング方向に対応する光検出器の方向をX軸、該X軸に対して直角方向をY軸としたとき、X軸方向及びY軸方向に夫々共通の分割線にて分割された内側4分割受光部と外側4分割受光部より成る8つの受光部にて構成し、内側4分割受光部を利用して光検出器の位置調整を行うことが出来るようにしたので、光検出器のXYポジション調整を簡単に行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る光ピックアップ装置の一実施例を示すブロック回路図である。
【図2】本発明に係る光ピックアップ装置を構成する概略図である。
【図3】光ピックアップ装置の各種制御信号を生成するブロック回路図である。
【図4】レーザー光の強度分布を説明するための特性図である。
【図5】光検出器の受光部の大きさと検出信号比との関係を説明するための特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
非点収差法によるフォーカス制御動作を行うためのフォーカスエラー信号等を生成するとともに差動プッシュプル方式によるトラッキング制御動作を行うためのトラッキングエラー信号を生成するために設けられている光検出器に関し、特にメインビームが照射されるメインビーム用受光部に内側4分割受光部と外側4分割受光部より成る8つの受光部を設け、内側4分割受光部を利用して光検出器のXYポジション調整を行うことが出来るように構成された光ピックアップ装置である。
【実施例1】
【0036】
図1は本発明に係る光ピックアップ装置の一実施例を示すブロック回路図であり、図3に示した回路要素と同一の回路要素には同一の番号を付している。
【0037】
本発明の光ピックアップ装置に設けられている光検出器10に組み込まれているとともにメインビームMを受光するべく設けられているメインビーム用受光部10Mは、図1に示すようにX軸方向の共通の分割線及びY軸方向の共通の分割線にて分割された受光部a、b、c、dにて構成される内側4分割受光部101Mと受光部A、B、C、Dにて構成される外側4分割受光部102Mにて構成されている。
【0038】
斯様に構成されたメインビーム用受光部10Mにおいて、内側4分割受光部101Mを構成する受光部a及びdより得られる信号は、第1加算器11に入力され、受光部b及びcより得られる信号は、第2加算器12に入力されるように構成されている。
【0039】
24は内側4分割受光部101Mを構成する受光部aから得られる信号と外側4分割受光部102Mを構成する受光部Aから得られる信号とを加算する第1信号加算器であり、その出力信号は第4加算器20の一方の入力端子に入力されるように構成されている。
【0040】
25は内側4分割受光部101Mを構成する受光部bから得られる信号と外側4分割受光部102Mを構成する受光部Bから得られる信号とを加算する第2信号加算器であり、その出力信号は第5加算器21の一方の入力端子に入力されるように構成されている。
【0041】
26は内側4分割受光部101Mを構成する受光部cから得られる信号と外側4分割受光部102Mを構成する受光部Cから得られる信号とを加算する第3信号加算器であり、その出力信号は第4加算器20の一方の入力端子に入力されるように構成されている。
【0042】
27は内側4分割受光部101Mを構成する受光部dから得られる信号と外側4分割受光部102Mを構成する受光部Dから得られる信号とを加算する第4信号加算器であり、その出力信号は第5加算器21の一方の入力端子に入力されるように構成されている。
【0043】
28は前記第1加算器11の出力信号と第2加算器12の出力信号とを加算する調整用加算器であり、その出力信号を利用して光検出器10のXYポジションの調整を行うように構成されている。
【0044】
斯かる構成において、前述した各受光部a、b、c、d、E、F、G及びHから得られる信号をa、b、c、d、E、F、G及びHとし、トラッキングエラー信号をTEとすると、該トラッキングエラー信号TEは、
TE=(a+d)−(b+c)−K{(E−F)+(G−H)}
から算出される。(但し、Kは内側4分割受光部101Mの受光レベルとサブビーム用受
光部10b、10cの受光レベルの比に基づいて設定される。)
前述したように図1に示す本発明に係る光検出器10によれば差動プッシュプル法によるトラッキング制御動作に使用されるトラッキングエラー信号を生成することが出来るので、斯かるトラッキングエラー信号を利用することによって光ピックアップ装置におけるトラッキング制御動作を行うことが出来る。
【0045】
次に非点収差法によるフォーカス制御動作を行うために使用されるフォーカスエラー信号について説明する。前述した構成のメインビーム用受光部10Mを構成する内側4分割受光部101Mの受光部a、b、c、d及び外側4分割受光部102Mの受光部A、B、C、Dから得られる信号をa、b、c、d、A、B、C及びDとし、フォーカスエラー信号をFEとすると、フォーカスエラー信号FEは、
FE=(a+A+c+C)−(b+B+d+D)
から算出される。
【0046】
前述したように図1に示す本発明に係る光検出器10によれば非点収差法によるフォーカス制御動作に使用されるフォーカスエラー信号を生成することが出来るので、斯かるフォーカスエラー信号を利用することによって光ピックアップ装置におけるフォーカス制御動作を行うことが出来る。
【0047】
以上に説明したように図1に示した本発明に係るメインビーム用受光部10Mは構成されているとともに差動プッシュプル法によるトラッキング制御動作に使用されるトラッキングエラー信号の生成動作及び非点収差法によるフォーカス制御動作に使用されるフォーカスエラー信号の生成動作は行われるが、次にメインビームMのスポット径と内側4分割受光部101Mの大きさとの関係について、図4及び図5を参照にして説明する。
【0048】
レーザーダイオード1から放射されるレーザー光は、ガウシアンと呼ばれる特性を有しており、図4は斯かるガウシアン特性を有するレーザー光の強度分布特性を示すものである。また、光ピックアップ装置においては、対物レンズ8等の光学系に使用されるレンズの開口数や光ディスクDに記録されている信号の読み出し動作を行うために必要なレーザー強度及び光ディスクDに信号を記録するために必要なレーザー強度のレーザー光を得るためにスポットとして使用する径を設定するようにされている。
【0049】
使用するスポットの径は図4に示す特性図において必要なレーザー強度が得られる範囲にて設定される。例えば、レーザー光の最大強度を1.0としたとき、0.5、即ち強度が最大強度に対して半分となる50%強度の位置、所謂半値幅と呼ばれる位置よりも強度が高いレーザー光の部分をスポットとして利用するようにスポット径を設定したり、0.135、即ち強度が最大強度に対して1/e(eは自然対数の底)となる13.5%強度の位置よりも強度が高いレーザー光の部分をスポットとして利用するようにスポット径を設定することが行われている。
【0050】
前述したようにレーザー強度分布に基づいてスポット径の設定が行われるが、スポットとして使用するレーザー光の強度範囲はスポットのサイズ、スポットのピーク光強度及びスポットの全パワーの中でどの値を優先させるかによって決定されている。
【0051】
そして、現在の光ピックアップ装置では、レーザー光の強度分布に基づいて設定されるスポット径は、レーザー光のパワーロスを考慮して設定されており、一般には強度が最大強度に対して1/eとなる13.5%強度の位置よりも強度が高いレーザー光の部分をスポットとして利用するように設定されている。このようにしてレーザー光のスポット径を設定すれば、多くの光ピックアップ装置の読み出し特性や記録特性を満足させるスポット径を得ることが出来る。
【0052】
本発明の光ピックアップ装置は、光検出器10に組み込まれているメインビーム用受光部10Mに戻り光として照射されるメインビームMのスポット径と内側4分割受光部101MのX軸方向及びY軸方向の幅とが同一になるように構成されている。
【0053】
図5はレーザー光の戻り光であるメインビームMのスポット径が50μmの場合において、内側4分割受光部101MのX軸方向及びY軸方向の幅である大きさと該内側4分割受光部101Mの大きさに応じて得られる差動プッシュプル信号である検出信号の振幅比との関係を示すものである。尚、図1に示した実施例において、外側4分割受光部102MのX軸方向及びY軸方向の幅は90μmである。
【0054】
同図に示すように内側4分割受光部101MのX軸方向及びY軸方向の幅が50μm、即ちメインビームMのスポット径である50μmと同一の場合に検出信号の振幅比は0.85となるが、トラッキング制御動作を支障なく行うことが出来る差動プッシュプル信号であることが確認出来た。
【0055】
従って、最大強度に対して1/eとなる13.5%強度の位置よりも強度が高いレーザー光の部分をスポットとして利用するように設定した場合にそのメインビームMのスポット径と内側4分割受光部101MのX軸方向及びY軸方向の幅を同一にしても差動プッシュプル法によるトラッキング制御動作を行うことが出来る。
【0056】
このように内側4分割受光部101MのX軸方向及びY軸方向の幅をメインビームMの径と同一にすると、図1に示すようにメインビームMの位置が内側4分割受光部101Mの中央に位置しているとき、該内側4分割受光部101Mを構成する受光部a、b、c、dより得られる各信号を合算した値が最大になる。即ち、斯かる受光部a、b、c、dより得られる各信号を合算した信号は、図1に示す調整用加算器28から出力されることになるので、この出力信号のレベルが最大になるように光検出器10の位置を調整することによって該光検出器10の位置調整を行うことが出来る。
【0057】
光検出器10を光ピックアップ装置を構成する基台に形成されている固定位置に接着固定する場合に行われる位置調整、即ちXYポジション調整は、まずメインビームMが内側4分割受光部101Mの中央に位置するように行われるが、斯かる調整は前記調整用加算器28から出力される出力信号のレベルが最大になるように光検出器10の位置を調整することによって行われる。
【0058】
斯かる調整によって調整用加算器28から出力される出力信号のレベルが最大になったとき、メインビームMが内側4分割受光部101Mの中央に位置していると判定される。次に、斯かる状態からサブビーム用受光部10bまたは10cから得られる信号からE=FまたはG=Hとなるように光検出器10をメインビーム用受光部10Mの中心部を中心として回転調整することによって光検出器10のXYポジション調整を完了させることが出来、斯かる状態にて該光検出器10の接着固定動作が行われる。前述したように本発明によれば光検出器10のXYポジションの調整動作を容易に、且つ正確に行うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、Blu−ray規格の光ディスクDに記録されている信号の読み出し動作等を行う光ピックアップ装置に実施することが出来るだけでなく、DVD規格やCD規格の光ディスクに使用される光ピックアップ装置に応用することも出来る。
【符号の説明】
【0060】
1 レーザーダイオード
4 ハーフミラー
5 コリメートレンズ
8 対物レンズ
9 アナモフィックレンズ
10 光検出器
10M メインビーム用受光部
101M 内側4分割受光部
102M 外側4分割受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折格子によってメインビームと2つのサブビームに分離されたレーザー光を光ディスクに設けられている信号記録層に集光させる対物レンズと、前記信号記録層から反射される戻り光の中のメインビームが照射されるメインビーム用受光部及びサブビームが照射されるサブビーム用受光部が設けられている光検出器を備えた光ピックアップ装置であり、前記メインビーム用受光部を光ディスクのトラッキング方向に対応する光検出器の方向をX軸、該X軸に対して直角方向をY軸としたとき、X軸方向及びY軸方向に夫々共通の分割線にて分割された内側4分割受光部と外側4分割受光部より成る8つの受光部にて構成したことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
8つの受光部から非点収差法によるフォーカス制御動作に使用するフォーカスエラー信号を生成するとともに内側4分割受光部から差動プッシュプル法によるトラッキング制御動作に使用するトラッキングエラー信号を生成するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
内側4分割受光部のX軸方向の幅及びY軸方向の幅を受光レーザー光のスポット径と同一になるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
スポット径としてレーザー光の最大強度に対して1/e(eは自然対数の底)となるレーザー光を使用するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
内側4分割受光部を構成する全ての受光部から得られる信号を加算し、その加算信号のレベルが最大になるように光検出器の位置を調整するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
サブビーム用受光部より得られる信号によって光検出器の回転位置を調整するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−129194(P2011−129194A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285957(P2009−285957)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】