説明

光ピックアップ装置

【課題】 複数の波長に対応した光ピックアップ装置において、1つの波長では3ビーム法におけるトラッキングエラー信号のアンバランスを防ぎ、かつ、他の波長ではDPD法またはDPP法におけるトラッキングエラー信号によってサーボ制御を行い、各波長共、安定したサーボ信号を得ることができる光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】 フォーカス回折領域21に含まれる細分領域は、光源12が出射可能な光の種類に対応する同数の種類のフォーカス細分領域からなり、異なる種類のフォーカス細分領域は、平行分割線27に直交する方向に交互に隣接して配置される。トラッキング回折領域36に含まれる細分領域は、光源12が出射可能な光の種類に対応する同数の種類のトラッキング細分領域からなり、異なる種類のトラッキング細分領域は、平行分割線27に直交する方向に交互に隣接して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学記録媒体に情報を記録または再生するために、光学記録媒体に光を照射し、光学記録媒体からの反射光を受光する光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1に記載される光ピックアップ装置がある。この光ピックアップ装置は、2種類の光学記録媒体に対して情報の記録および再生を行うために、第1波長および第2波長の2種類の波長の光を用いる。この従来技術による光ピックアップ装置の一例を図11〜図14に示す。
【0003】
図11は、従来技術に係る光ピックアップ装置120の構成の一例を示す図である。図12は、光ピックアップ装置120の回折素子121および受光素子122を表す平面図である。図13は、回折素子121と受光素子122とによる受光状態を示す平面図である。
【0004】
図13(a)は、第1波長についての受光状態を示し、図13(b)は、第2波長についての受光状態を示す。第1波長の場合、光学記録媒体11で反射されてきた光のスポット136は、発光点123から光学記録媒体11に入射する光のスポット135の位置よりも右側にずれる。第2波長の場合、光学記録媒体11で反射されてきた光のスポット137は、発光点123から光学記録媒体11に入射する光のスポット135の位置よりも左側にずれる。
【0005】
第1波長の光の発光点123からの発振波長は、第2波長の光の発光点124からの発振波長よりも短波長である。回折素子121による第1波長の光の発光点123からの光ビーム131の回折角度は、第2波長の光の発光点124からの光ビーム132の回折角度よりも小さくなる。これらの回折角度の差異に応じて、受光素子122には、受光領域18a〜18lが3列125a〜125cに並んで形成される。
【0006】
第1波長の光の発光点123からの光ビーム131は、3列125a〜125cの受光領域のうち、小さい回折角度に対応する列125aの受光領域18i,18kと、中央の列125bの受光領域18a〜18hとに入射する。各受光領域18a〜18lから出力される電気信号をそれぞれSa〜Slとすると、フォーカスエラー信号(Focus Error Signal:以下「FES」という)は、FES=(Sa+Sc)−(Sb+Sd)で算出することができる。
【0007】
トラッキングエラー信号(Tracking Error Signal:以下「TES」もという)は、3ビーム法、差動プッシュプル(Differential Push Pull:以下「DPP」という)法、または差動位相検出(Differential Phase Detection:以下「DPD」という)法を用いて検出することが可能である。
【0008】
3ビーム法によるトラッキングエラー信号をTES1とし、DPP法によるトラッキングエラー信号をTES2とし、DPD法によるトラッキングエラー信号をTES3とすると、それぞれのトラッキングエラー信号は、TES1=(18e+18g)−(18f+18h)、TES2=(18a+18b)−(18c+18d)−k((18e+18f)−(18g+18h))、およびTES3=ph((18a+18b)−(18c+18d))で算出可能である。kはメインビームとサブビームとの強度の違いを補正するための定数であり、ph()はかっこ内の各信号の位相成分の演算を示している。メインビームは、光分割素子130によって生成された0次回折光であり、サブビームは、光分割素子130によって生成された±1次回折光である。
【0009】
図14は、回折素子121上でのメインビームおよび2つのサブビームの光スポットを示す図である。図14は、第2波長において3ビーム法を使用する場合に、光学記録媒体11で反射されてきたメインビームおよび2つのサブビームの光スポットである。図14(a)は、1つのサブビームの光スポット126であり、図14(b)は、メインビームの光スポット128であり、図14(c)は、他のサブビームの光スポット127である。それぞれの光スポット126,127,128内の分割線は、図13(b)の回折素子121の分割線を投影したものである。図13(b)の回折素子121の分割線によって分割された領域のうち、領域19e,19g,19f,19hを透過するサブビームは、それぞれ図13(b)の受光領域18e,18g,18f,18hに入射するが、領域19m,19n,19o,19pを透過するサブビームは、受光領域以外の領域に入射し、受光領域には入射しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−287278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術において第2波長で3ビーム法を使用する場合、回折素子121に入射する3ビームのうち、サブビームの光スポット126,127はタンジェンシャル方向Yに、それぞれ+方向と−方向とにずれる。さらに、回折素子121の領域17aと領域17bとの境界線、および領域17cと領域17dとの境界線は、ラジアル方向Xにずれる。これは、光学記録媒体11へ入射するサブビームのスポットを、メインビームのスポットに対して1/2トラック幅分だけずれた位置に入射させるために、サブビームを若干回転させているために生じるずれである。それぞれのビームの光スポットに、回折素子121の分割線を投影すると、図14に示すように、サブビームの光スポット126,127の外形に対する回折素子121の分割線が、メインビームの光スポット128の外形に対する回折素子121の分割線に対して、ラジアル方向Xおよびタンジェンシャル方向Yともにずれている。
【0012】
したがって、3ビーム法では、±1次回折光のサブビームが入射する受光領域18e,18f,18g,18hから得られる電気信号Se,Sf,Sg,Shから、トラッキングエラー信号TES1は、TES1=(Se+Sg)−(Sf+Sh)の算出式で算出することができる。しかし、回折素子121の領域19m,19n,19o,19pを透過する光を受光する受光領域がなく、領域19m,19n,19o,19pを透過する光は、電気信号として検出されない。さらに、+1次回折光のサブビームの光スポット126が入射する領域19eおよび領域19gの合計の面積と、−1次回折光のサブビームの光スポット127が入射する領域19fおよび領域19hの合計の面積とが異なるので、受光素子122から得られる電気信号Se+Sgと電気信号Sf+Shとの電気信号比も異なる。したがって、トラッキングエラー信号TES1は、アンバランスとなり、すなわち、電気信号比が等しい場合の値からずれることになり、トラッキングサーボが不安定になるという課題がある。
【0013】
本発明の目的は、複数の波長に対応した光ピックアップ装置において、1つの波長では3ビーム法におけるトラッキングエラー信号のアンバランスを防ぎ、かつ、他の波長ではDPD法またはDPP法におけるトラッキングエラー信号によってサーボ制御を行い、各波長とも、安定したサーボ信号を得ることができる光ピックアップ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、複数のトラックが形成される光学記録媒体に照射するための光であって、波長の異なる複数種類の光を出射可能な光源と、
受光した光を、光源から出射された光の焦点を制御するための電気信号に変換するフォーカス受光領域と、受光した光を、光源から出射された光を光学記録媒体の目的のトラックへ照射する制御を行うための電気信号に変換するトラッキング受光領域とが形成される受光素子と、
前記光源から出射され、光学記録媒体で反射された反射光をフォーカス受光領域の方向に回折するフォーカス回折領域と、前記反射光をトラッキング受光領域の方向に回折するトラッキング回折領域とに分割された回折領域が形成される回折素子とを含み、
フォーカス回折領域およびトラッキング回折領域は、複数の平行な直線である平行分割線によって細分領域に分割され、
フォーカス回折領域に含まれる細分領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するフォーカス細分領域からなり、異なる光の種類に対応するフォーカス細分領域は、平行分割線に直交する方向に交互に隣接して配置され、
トラッキング回折領域に含まれる細分領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するトラッキング細分領域からなり、異なる光の種類に対応するトラッキング細分領域は、平行分割線に直交する方向に交互に隣接して配置され、
フォーカス回折領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するフォーカス領域を含み、トラッキング回折領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するトラッキング領域を含み、
各フォーカス領域は、各フォーカス領域に対応する光の種類と同一の光の種類に対応するフォーカス細分領域からなり、前記反射光を同一のフォーカス受光領域に回折し、各トラッキング領域は、各トラッキング領域に対応する光の種類と同一の光の種類に対応するトラッキング細分領域からなり、前記反射光を同一のトラッキング受光領域に回折し、
各フォーカス細分領域は、フォーカス回折領域とトラッキング回折領域との境界で、各フォーカス細分領域に対応する光の種類と同一の光の種類に対応するトラッキング細分領域と隣接するように配置されることを特徴とする光ピックアップ装置である。
【0015】
また本発明は、前記回折領域は、光学記録媒体の記録面に平行で光学記録媒体のトラックの接線方向に直交する直線である第1分割線によって前記フォーカス回折領域と前記トラッキング回折領域とに分割され、
前記平行分割線は、第1分割線に対して予め定める角度で傾斜することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記予め定める角度は、30度以上150度以下の角度であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記各細分領域には複数の回折溝が平行かつ周期的に形成され、
回折溝に直交する仮想平面で1つの細分領域を切断したとき、仮想平面に含まれる回折溝の数は、5以上であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記トラッキング受光領域は、第1トラッキング受光領域と、第1トラッキング受光領域とは異なる位置に配置される第2トラッキング受光領域とを含み、
前記各トラッキング細分領域は、前記反射光の一部を第1トラッキング受光領域の方向に回折する第1回折領域、および前記反射光の一部を第2トラッキング受光領域の方向に回折する第2回折領域のうちの少なくとも1つを含み、
同一のトラッキング細分領域にある第1回折領域と第2回折領域とは、光学記録媒体のトラックの接線方向と平行な直線である少なくとも1つの第2分割線によって分割され、
各第2分割線の位置は、トラッキング細分領域に対応する光の種類に応じて配置されることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記トラッキング受光領域は、各トラッキング領域によって回折された光を、光源が出射可能な光の種類に応じて選択的に受光する複数の受光領域を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光源は、複数のトラックが形成される光学記録媒体に照射するための光であって、波長の異なる複数種類の光を出射可能である。受光素子は、受光した光を、光源から出射された光の焦点を制御するための電気信号に変換するフォーカス受光領域と、受光した光を、光源から出射された光を光学記録媒体の目的のトラックへ照射する制御を行うための電気信号に変換するトラッキング受光領域とが形成される。回折素子は、前記光源から出射され、光学記録媒体で反射された反射光をフォーカス受光領域の方向に回折するフォーカス回折領域と、前記反射光をトラッキング受光領域の方向に回折するトラッキング回折領域とに分割された回折領域が形成される。
【0021】
また、フォーカス回折領域およびトラッキング回折領域は、複数の平行な直線である平行分割線によって細分領域に分割される。フォーカス回折領域に含まれる細分領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するフォーカス細分領域からなり、異なる光の種類に対応するフォーカス細分領域は、平行分割線に直交する方向に交互に隣接して配置される。トラッキング回折領域に含まれる細分領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するトラッキング細分領域からなり、異なる光の種類に対応するトラッキング細分領域は、平行分割線に直交する方向に交互に隣接して配置される。フォーカス回折領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するフォーカス領域を含み、トラッキング回折領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するトラッキング領域を含む。
【0022】
また、各フォーカス領域は、各フォーカス領域に対応する光の種類と同一の光の種類に対応するフォーカス細分領域からなり、前記反射光を同一のフォーカス受光領域に回折し、各トラッキング領域は、各トラッキング領域に対応する光の種類と同一の光の種類に対応するトラッキング細分領域からなり、前記反射光を同一のトラッキング受光領域に回折する。そして、各フォーカス細分領域は、フォーカス回折領域とトラッキング回折領域との境界で、各フォーカス細分領域に対応する光の種類と同一の光種類に対応するトラッキング細分領域と隣接するように配置される。
【0023】
これによって、光ピックアップ装置は、フォーカス受光領域およびトラッキング受光領域を、波長の異なる複数種類の光の使用において共用することができる。また、光ピックアップ装置は、フォーカス領域とトラッキング領域に入射する3ビーム法によるサブビームの強度の不連続性を低減し、トラッキングサーボを安定して行うことができる。したがって、複数の波長に対応した光ピックアップ装置は、1つの波長では3ビーム法におけるトラッキングエラー信号のアンバランスを防ぎ、かつ、他の波長ではDPD法またはDPP法におけるトラッキングエラー信号によってサーボ制御を行い、各波長とも、安定したサーボ信号を得ることができる。
【0024】
また本発明によれば、前記回折領域は、光学記録媒体の記録面に平行で光学記録媒体のトラックの接線方向に直交する直線である第1分割線によって前記フォーカス回折領域と前記トラッキング回折領域とに分割される。そして、前記平行分割線は、第1分割線に対して予め定める角度で傾斜する。したがって、光ピックアップ装置は、光学記録媒体に付着した異物や汚れによる再生信号へのノイズを少なくすることができる。
【0025】
また本発明によれば、前記予め定める角度は、30度以上150度以下の角度である。したがって、光ピックアップ装置は、光学記録媒体の回転時に、光学記録媒体上の凹凸となるピットによる光信号に入るノイズが少なくなり、再生信号を安定して再生することができる。
【0026】
また本発明によれば、前記各細分領域には複数の回折溝が平行かつ周期的に形成される。そして、回折溝に直交する仮想平面で1つの細分領域を切断したとき、仮想平面に含まれる回折溝の数は、5以上である。これによって、光ピックアップ装置は、各フォーカス細分領域および各トラッキング細分領域における回折溝が、回折溝に垂直な方向において並ぶ数を、効率よく回折を行うために最低限必要な数以上とすることができる。したがって、光ピックアップ装置は、各フォーカス細分領域および各トラッキング細分領域における回折を、効率よく行うことができる。
【0027】
また本発明によれば、前記トラッキング受光領域は、第1トラッキング受光領域と、第1トラッキング受光領域とは異なる位置に配置される第2トラッキング受光領域とを含む。前記各トラッキング細分領域は、前記反射光の一部を第1トラッキング受光領域の方向に回折する第1回折領域、および前記反射光の一部を第2トラッキング受光領域の方向に回折する第2回折領域のうちの少なくとも1つを含む。同一のトラッキング細分領域にある第1回折領域と第2回折領域とは、光学記録媒体のトラックの接線方向と平行な直線である少なくとも1つの第2分割線によって分割される。そして、各第2分割線の位置は、トラッキング細分領域に対応する光の種類に応じて配置される。
【0028】
これによって、光ピックアップ装置は、複数の光源の位置に差異があっても、第1トラッキング受光領域および第2トラッキング受光領域に入射する光の光強度が、第1トラッキング受光領域および第2トラッキング受光領域のうちのいずれか1つに偏ることを防止することができる。したがって、光ピックアップ装置は、トラッキングサーボを高い精度で行うことができる。
【0029】
また本発明によれば、前記トラッキング受光領域は、各トラッキング領域によって回折された光を、光源が出射可能な光の種類に応じて選択的に受光する複数の受光領域を含む。これによって、光ピックアップ装置は、トラッキング受光領域を小形化することができる。したがって、光ピックアップ装置は、トラッキングサーボにおける応答速度を速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態である光ピックアップ装置10の構成を示す図である。
【図2】回折素子16および受光素子6の平面図である。
【図3】第1波長の光での回折素子16と各受光領域との関係を表す図である。
【図4】第2波長の光での回折素子16と各受光領域との関係を表す図である。
【図5】回折素子16に入射した±1次回折光に分割線を投影した図である。
【図6】本発明の第2実施形態である光ピックアップ装置210の構成を表す図である。
【図7】回折素子216および受光素子206の平面図である。
【図8】第1波長の光での回折素子216と各受光領域との関係を表す図である。
【図9】第2波長の光での回折素子216と各受光領域との関係を表す図である。
【図10】第3の波長の光での回折素子216と各受光領域との関係を表す図である。
【図11】従来技術に係る光ピックアップ装置120の構成の一例を表す図である。
【図12】光ピックアップ装置120の回折素子121および受光素子122を表す平面図である。
【図13】回折素子121と受光素子122とによる受光状態を示す平面図である。
【図14】回折素子121上でのメインビームおよび2つのサブビームの光スポットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための複数の実施形態について説明する。以下の説明においては、各実施形態に先行する実施形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を省略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。またそれぞれの実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態である光ピックアップ装置10の構成を示す図である。図2は、回折素子16および受光素子6の平面図である。図3は、第1波長の光での回折素子16と各受光領域との関係を表す図である。図4は、第2波長の光での回折素子16と各受光領域との関係を表す図である。
【0033】
光ピックアップ装置10は、光学記録媒体11に記録される情報を読取るために、光学記録媒体11に光を照射し、光学記録媒体11からの反射光18を回折領域19により+1次回折させ、その回折光を受光する装置である。図1,2において、回折領域19は、複数の分割線によって複数の領域に分割されている。回折領域19は、回折領域19の中心点P0を通り、ラジアル方向Xに延びて配置されている第1分割線である後述するフォーカス規定分割線26(以下、「ナイフエッジ部26」ともいう)によってフォーカス回折領域21とトラッキング回折領域36とに分割されている。図2は、平行分割線27をナイフエッジ部26に対して角度αにした回折素子16および受光素子6を、光軸方向から見た配置関係を示す平面図である。平行分割線27は、複数の平行な直線からなる分割線である。図3,4は、光ピックアップ装置10の回折素子16と、回折素子16によって回折した光が到達する各受光領域との関係を表す図である。
【0034】
光ピックアップ装置10は、光源12、受光素子6、回折素子16、コリメートレンズ28、および対物レンズ29を含んで構成される。回折素子16は、光源12からの入射光より0次および±1次回折光を生成する光分割素子46および光記録媒体11からの反射光を受光素子6へ導く回折領域19を有する。光源12は、波長の異なる複数種類の光を出射可能である。光源12は、光学記録媒体11に照射するための光を出射する。受光素子6には、受光する光を電気信号に変換する複数の受光領域が形成される。複数の受光領域の一部は、フォーカス受光領域17として用いられる。フォーカス受光領域17は、フォーカスサーボに用いられる。フォーカスサーボとは、光源12から出射された出射光の焦点を光学記録媒体11の記録面35に合わせるために行われる制御である。
【0035】
回折領域19は、ホログラムパターンにより実現され、光記録媒体11からの反射光の回折領域19による+1次回折光は、受光素子6に集光される。
【0036】
光分割素子46は、回折格子によって実現され、光源12からの出射光を0次回折光と±1次回折光との3つの光に分割することによって、3ビームを形成する。すなわち、光分割素子46は、メインビームとなる0次回折光と、サブビームとなる±1次回折光とを生成する。光分割素子46は、回折素子16の表面または内部に形成される。光分割素子46は、光源12と回折領域19との間に設けられる。
【0037】
光分割素子46を透過した光源12からの出射光は、光学記録媒体11の主トラックおよび副トラックに集光される。光分割素子46には、直線状の複数の回折溝が形成される。光分割素子46に形成される回折溝は、主トラックにおける0次回折光の理想的な集光位置と、副トラックにおける±1次回折光の理想的な集光位置とを結んだ直線に対して、垂直に形成される。光分割素子46は、回折素子16と同様に、透明硝子基板であればフォトリソグラフィ法によって、透明樹脂であればフォトポリマー法(Photo Polymerization法:略称「2P法」)や金型成型によって形成が可能である。
【0038】
回折素子16には、光学記録媒体11からの反射光18が入射する。回折素子16には、回折領域19が形成される。回折領域19は、複数の領域に分割される。分割された領域の一部は、反射光18を受光素子6に向けて回折させるフォーカス回折領域21として用いられる。フォーカス回折領域21は、反射光18の少なくとも一部をフォーカス受光領域17の方向に回折させる。
【0039】
フォーカス回折領域21は、光源12が出射可能な光の種類と同数の種類のフォーカス領域22を備える。フォーカス領域22の種類は、光源12が出射可能な光の各種類に対応し、各種類のフォーカス領域22は、対応する種類の光をフォーカス受光領域17に向けて回折させる。また、各種類のフォーカス領域22は、後述する複数のフォーカス細分領域によって構成される。各種類のフォーカス領域22を構成するフォーカス細分領域は、フォーカス回折領域21において分散して配置される。
【0040】
フォーカス回折領域21の外縁の予め定める一部は、直線状に形成されるフォーカス規定分割線26によって構成される。光学記録媒体11からの反射光18がいずれの種類の光であるときにも、反射光18は、回折素子16に入射する入射領域、つまり回折領域19に対して交差する。すなわち、反射光18は、回折領域19と交差する。フォーカス回折領域21は、平行に並ぶ複数の平行分割線27によって複数のフォーカス細分領域に分割される。複数の平行分割線27は、ナイフエッジ部26に対して、予め定める角度を有する。
【0041】
平行分割線27は、ナイフエッジ部26に対して30度以上150度以下の角度を成す。各フォーカス細分領域には、複数の回折溝が平行かつ周期的に並んで形成される。各フォーカス細分領域を、各フォーカス細分領域の回折溝に垂直に交差する仮想平面には、回折溝が5本以上交差する。すなわち、フォーカス細分領域を回折溝に直交する仮想平面で切断したとき、その切断面に含まれる回折溝の数が5以上である。
【0042】
光学記録媒体11は、情報の記録または再生を光学的に行うことができる記録媒体である。光学記録媒体11は、たとえばコンパクトディスク(compact disk, 略称「CD」)、デジタルバーサタイルディスク(digital versatile disk, 略称「DVD」)またはブルーレイディスク(blu-ray disk, 略称「BD」:登録商標)などによって構成される。
【0043】
光ピックアップ装置10は、これらのうちのいずれか2種類の光学記録媒体11に対して情報の記録および再生が可能である。光学記録媒体11がCDである場合は、情報の記録および再生に、780nm近傍の赤外領域の波長の光を用いる。光学記録媒体11がDVDである場合は、情報の記録および再生に、650nm近傍の波長の赤色の光を用いる。光学記録媒体11がBDである場合は、情報の記録および再生に、405nm近傍の青紫色の波長の光を用いる。光学記録媒体11は、複数の記録層を重ねたさらに大容量のものであってもよい。
【0044】
複数の光学記録媒体11に対して記録および再生の少なくとも一方を行うために、1つの光ピックアップ装置10内には、2種または3種の波長の光を出射する光源12が配置される。図1には、光学記録媒体11の1種類の光学記録媒体11aを用いる場合と、光学記録媒体11aとは異なる波長が用いられる他の1種類の光学記録媒体11bを用いる場合とを図示している。光ピックアップ装置10は、光学記録媒体11の記録面35に、光源12からの光、たとえばレーザ光を照射し、その反射光を受光素子6上の受光領域で受光して、光学記録媒体11に対する情報の再生および記録を行う。
【0045】
光ピックアップ装置10は、光学記録媒体11に対するフォーカスサーボおよびトラッキングサーボを行うために、受光素子6上の受光領域で受光した光の光信号から電気信号に変換して、サーボ信号を検出する。トラッキングサーボとは、光源12から出射された出射光を光学記録媒体11の記録面35のトラックのうち、記録または再生を行う目的のトラックに照射するための制御である。光ピックアップ装置10は、検出したサーボ信号に基づいて、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボを行う。フォーカスサーボでは、ナイフエッジ法および非点収差法などが使用される。また、トラッキングサーボでは、差動位相検出(Differential Phase Detection:以下「DPD」という)および3ビーム法などが、光学記録媒体11の種類に応じて使い分けられる。
【0046】
コリメートレンズ28は、光源12から出射された光を平行光にする。対物レンズ29は、コリメートレンズ28によって平行光となった光ビームを光学記録媒体11に向けて集光する。対物レンズ29は、図示しないアクチュエータによって支持されている。
【0047】
光源12は、たとえば半導体レーザ素子によって構成される。光源12は、第1波長の光を出射する第1発光点32と、第2波長の光を出射する第2発光点33の2つの発光点とを備える。第1発光点32からの第1波長の光と、第2発光点33からの第2波長の光とは、ほぼ同一の方向に出射される。互いに異なる2種類の波長のうち、短い方の波長を第1波長とし、長い方の波長を第2波長とする。
【0048】
光ピックアップ装置10は、半導体レーザ素子として、1チップ内に異なる波長の発光点を有するモノリシック型を用いるが、モノリシック型の半導体レーザ素子に限定されることはなく、1チップ単一波長のレーザ光を2つ近接して配置したハイブリッド型であってもよい。
【0049】
光ピックアップ装置10では、光源12からの出射光を光学記録媒体11に導く複数の光学部品の光軸は、1つの直線上に配置される。複数の光学部品とは、光源12、光分割素子46、回折領域19、コリメートレンズ28および対物レンズ29である。以下、第1発光点32からの出射光の光軸方向を「光軸方向Z」という。光軸方向ZはXYZ座標系におけるZ方向である。光軸方向Zは、対物レンズ29とコリメートレンズ28との中心を通るように配置される。図3,4は、回折素子16および受光素子6を光軸方向Zに見て図示している。
【0050】
コリメートレンズ28および対物レンズ29は、光源12からの出射光を光学記録媒体11の記録面35上において集光する。光学記録媒体11の記録面35上において集光される集光点は、記録面35に形成されるトラック上に位置する。トラック上の集光点における接線方向を、「タンジェンシャル方向Y」という。またトラック上の集光点における接線方向に対応する回折素子16および受光素子6における方向も、同様に「タンジェンシャル方向Y」として説明する。また光軸方向Zに垂直で、かつタンジェンシャル方向Yに垂直な方向を「ラジアル方向X」という。以下、タンジェンシャル方向YはXYZ座標系におけるY方向であり、ラジアル方向XはXYZ座標系におけるX方向である。
【0051】
受光素子6は、光源12からラジアル方向Xに離れた位置に配置される。ラジアル方向Xのうち、受光素子6に関して光源12に向かう向きを負の方向(以下、「−方向」と記す)とし、ラジアル方向Xのうち、−Xとは反対側の向きを正の方向(以下、「+方向」と記す)とする。
【0052】
受光素子6は、第1〜第12受光領域6a〜6lの12箇所の受光領域を備えている。受光素子6は、第3受光領域6cで第1波長の光を受光し、第4受光領域6dで第2波長の光を受光する。受光素子6は、第1,第2,第5〜第10受光領域6a,6b,6e,6f,6g,6h,6i,6j、6k、6lの10個の受光領域で、第1波長および第2波長の光を受光する。第1〜第12受光領域6a〜6lのうち第1受光領域6aおよび第2受光領域6bは、タンジェンシャル方向Yに互いに隣接して配置される。第1,第2受光領域6a,6bに集光されて入射する光の光信号は、フォーカスサーボに用いられる。第1,第2受光領域6a,6bよりもラジアル方向Xの−方向には、第3受光領域6cが配置され、第1,第2受光領域6a,6bよりもラジアル方向Xの+方向には、第4受光領域6dが配置される。第3受光領域6cおよび第4受光領域6dのそれぞれは、タンジェンシャル方向Yにおける第1,第2受光領域6a,6bの位置と同じ位置に配置される。
【0053】
第5,第6受光領域6e,6fは、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から、距離PX1ラジアル方向Xの+方向に離隔して配置される。第5受光領域6eは、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離PY離隔した位置に配置され、第6受光領域6fは、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離PY離隔した位置に配置される。第5受光領域6eに対し、タンジェンシャル方向Yの−方向に隣接した位置に第7受光領域6gが配置され、第5受光領域6eに対し、タンジェンシャル方向Yの+方向に隣接した位置に第9受光領域6iが配置される。第6受光領域6fに対し、タンジェンシャル方向Yの−方向に隣接した位置に第8受光領域6hが配置され、第6受光領域6fに対し、タンジェンシャル方向Yの+方向に隣接した位置に第10受光領域6jが配置される。第1受光領域6aに対し、タンジェンシャル方向Yの−方向に隣接した位置に第11受光領域6kが配置され、第2受光領域6bに対し、タンジェンシャル方向Yの+方向に隣接した位置に第12受光領域6lが配置される。
【0054】
第1受光領域6aおよび第2受光領域6bのラジアル方向Xの寸法は、互いに等しく設定され、第3,第4受光領域6c,6dのそれぞれのラジアル方向Xの寸法も、第1,第2受光領域6a,6bのラジアル方向Xの寸法におおよそ同等か、第3受光領域6cのラジアル方向Xが短くなるように、さらに第4受光領域6dのラジアル方向Xが長くなるように寸法に設定される。第5〜第12受光領域6e〜6lのラジアル方向Xの寸法は、第1,第2受光領域6a,6bのラジアル方向Xの寸法と同等とする。
【0055】
第3〜第12受光領域6c〜6lのそれぞれのタンジェンシャル方向Yの寸法は、およそ同等に設定され、この寸法に比べて、第1受光領域6aおよび第2受光領域6bのタンジェンシャル方向Yの寸法は、およそ半分の寸法に設定される。第3,第4受光領域6c,6dのそれぞれのタンジェンシャル方向Y中央を通り、ラジアル方向Xに延びる仮想的な直線は、第1受光領域6aと第2受光領域6bとの中央を通る。
【0056】
第1,第2,第5〜第12受光領域6a,6b,6e〜6lのラジアル方向Xの−方向の端の位置は、タンジェンシャル方向Yに延びる1つの直線にほぼ一致する。第1,第2,第5,第6受光領域6a,6b,6e,6fの4個の受光領域は、光分割素子46による第1波長および第2波長の光の0次回折光を受光する。第3受光領域6cは、光分割素子46による第1波長の0次回折光を受光し、第4受光領域6dは、光分割素子46による第2波長の0次回折光を受光する。第7受光領域6gは、光分割素子46による第1波長および第2波長の−1次回折光を受光し、第8受光領域6hは、光分割素子46による第1波長および第2波長の−1次回折光を受光する。第9受光領域6iは、光分割素子46による第1波長および第2波長の+1次回折光を受光し、第10受光領域6jは、光分割素子46による第1波長および第2波長の+1次回折光を受光する。第11受光領域6kは、光分割素子46による第1波長および第2波長の−1次回折光を受光し、第12受光領域6lは、光分割素子46による第1波長および第2波長の+1次回折光を受光する。
【0057】
回折領域19は、光学記録媒体11からの反射光18を、信号検出用の第1〜第12受光領域6a〜6lに向けて回折する。回折領域19には、回折格子が形成される。回折格子は、回折溝によって形成されている。回折領域19を光軸方向Zに見ると、回折領域19の外形は、円形状をしており、その中心点P0は、光ピックアップ装置10の光軸34を通る位置に配置される。
【0058】
回折領域19は、複数の分割線によって、複数の領域に分割される。複数の分割線のうちの1つは、回折領域19の中心点P0を通り、ラジアル方向Xに延びて配置されるフォーカス規定分割線26、つまりナイフエッジ部26である。回折領域19は、ナイフエッジ部26によって、フォーカス回折領域21とトラッキング回折領域36とに分割される。回折領域19のうち、ナイフエッジ部26よりもタンジェンシャル方向Yの+方向の領域が、フォーカス回折領域21であり、タンジェンシャル方向Yの−方向の領域が、トラッキング回折領域36である。フォーカス回折領域21おとびトラッキング回折領域36の配置は、ナイフエッジ部26を対称軸として、逆にしてもよい。
【0059】
フォーカス回折領域21およびトラッキング回折領域36は、それぞれ半円形状に形成される。トラッキング回折領域36は、トラッキング規定分割線40(以下、「トラッキング分割線40」ともいう)によって、第1トラッキング領域Eと第2トラッキング領域Fとに分割される。第2分割線であるトラッキング規定分割線40は、中心点P0を通り、タンジェンシャル方向Yに延びて配置される。第1トラッキング領域Eおよび第2トラッキング領域Fのそれぞれは、中心点P0を中心とする円周と、中心点P0で互いに直交する2つの直線である半径線とによって囲繞される扇形の形状である。
【0060】
フォーカス回折領域21は、上述したように、光源12が出射可能な光の種類の数に応じた複数のフォーカス領域22に分割される。第1実施形態では、フォーカス回折領域21は、フォーカス回折領域21の半円内で、複数の平行分割線27によって、複数の細長い形状のフォーカス細分領域に分割される。複数の平行分割線27は、ナイフエッジ部26に対して角度αだけ傾斜し、かつ互いに平行な、幅Waと幅Wbとで交互に繰り返し離れた複数の直線である。
【0061】
複数のフォーカス細分領域の一部は、第1フォーカス領域Aを構成し、残余の複数のフォーカス細分領域は、第2フォーカス領域Bを構成する。第1実施形態では、光源12が2種類の光を出力するので、第1フォーカス領域Aが1つの種類の光に対応するフォーカス領域22であり、第2フォーカス領域Bが他の種類の光に対応するフォーカス領域22である。
【0062】
第1フォーカス領域Aは、幅Waの平行線を形成する2つの平行分割線27、回折領域19の外縁を規定する円弧、およびナイフエッジ部26のうちのすべてもしくはいずれかによって囲まれた複数のフォーカス細分領域から構成される。第2フォーカス領域Bは、幅Wbの平行線を形成する2つの平行分割線27、回折領域19の外縁を規定する円弧、およびナイフエッジ部26のうちのすべてもしくはいずれかによって囲まれた複数のフォーカス細分領域から構成される。
【0063】
第1フォーカス領域Aを成すフォーカス細分領域と、第2フォーカス領域Bを成すフォーカス細分領域とは、平行分割線27に垂直な方向において、それぞれ1つずつ交互に隣接して配置される。これによって、第1フォーカス領域Aを成すフォーカス細分領域と、第2フォーカス領域Bを成すフォーカス細分領域とは、フォーカス回折領域21内において、周期的に分散して配置される。したがって、第1フォーカス領域Aおよび第2フォーカス領域B内の各フォーカス細分領域は、2本の平行分割線27、ナイフエッジ部26、および回折領域19の外縁を規定する円弧のうちのすべてもしくはいずれかによって、周縁が規定される。
【0064】
第1フォーカス領域Aは、入射した第1波長の光を、受光素子6の第1受光領域6aと第2受光領域6bとの境界線上に集光する回折格子が形成されている。第2フォーカス領域Bは、入射した第2波長の光を、受光素子6の第1受光領域6aと第2受光領域6bとの境界線上に集光する回折格子が形成されている。
【0065】
トラッキング回折領域36は、ナイフエッジ部26よりもタンジェンシャル方向Yの−方向に配置された半円形状の領域である。トラッキング回折領域36は、第1種トラッキング回折領域41と第2種トラッキング回折領域42とに分割される。第1種トラッキング回折領域41は、入射した第1波長の光を後述するトラッキング受光領域に向けて回折させる回折格子として形成され、第2種トラッキング回折領域42は、入射した第2波長の光をトラッキング受光領域に向けて回折させる回折格子として形成される。第1種トラッキング回折領域41および第2種トラッキング回折領域は、トラッキング規定分割線40によって、それぞれ2つの領域に分割される。
【0066】
トラッキング回折領域36は、さらにトラッキング分割線40によって、第1トラッキング領域Eと第2トラッキング領域Fとに分割される。第1トラッキング領域Eおよび第2トラッキング領域Fのそれぞれは、光源12が出射可能な光の種類の数と同じ数の種類のトラッキング領域38に分割される。第1実施形態では、それぞれ2つの種類のトラッキング領域38が形成される。第1トラッキング領域Eに含まれるトラッキング領域38は、第1種第1トラッキング領域E1および第1種第2トラッキング領域E2である。第2トラッキング領域Fに含まれるトラッキング領域38は、第2種第1トラッキング領域F1および第2種第2トラッキング領域F2である。
【0067】
第1トラッキング領域Eおよび第2トラッキング領域Fは、平行分割線27によって、複数の細長い形状のトラッキング細分領域に分割されている。複数のトラッキング細分領域は、第1トラッキング領域Eと第2トラッキング領域Fとの境界線であるトラッキング規定分割線40によって、分離されて形成される。第1トラッキング領域Eと第2トラッキング領域Fとにまたがっている1つのトラッキング細分領域は、トラッキング規定分割線40によって、第1トラッキング領域Eに含まれるトラッキング細分領域と、第2トラッキング領域Fに含まれるトラッキング細分領域とに分けられる。以下、フォーカス細分領域とトラッキング細分領域とを総称して、細分領域という。
【0068】
第1種第1トラッキング領域E1は、第1トラッキング領域Eに含まれる複数のトラッキング細分領域のうち、幅Waの平行線を形成する2つの平行分割線27、回折領域19の外縁を規定する円弧、トラッキング規定分割線40、およびフォーカス規定分割線26のうちのいずれかによって囲まれた複数のトラッキング細分領域から構成される。第1種第2トラッキング領域E2は、第1トラッキング領域Eに含まれる複数のトラッキング細分領域のうち、幅Wbの平行線を形成する2つの平行分割線27、回折領域19の外縁を規定する円弧、トラッキング規定分割線40、およびフォーカス規定分割線26のうちのいずれかによって囲まれた複数のトラッキング細分領域から構成される。
【0069】
また、第2種第1トラッキング領域F1は、第2トラッキング領域Fに含まれる複数のトラッキング細分領域のうち、幅Waの平行線を形成する2つの平行分割線27、回折領域19の外縁を規定する円弧、トラッキング規定分割線40、およびフォーカス規定分割線26のうちのいずれかによって囲まれた複数のトラッキング細分領域によって構成される。第2種第2トラッキング領域F2は、第2トラッキング領域Fに含まれる複数のトラッキング細分領域のうち、幅Wbの平行線を形成する2つの平行分割線27、回折領域19の外縁を規定する円弧、トラッキング規定分割線40、およびフォーカス規定分割線26のうちのいずれかによって囲まれた複数のトラッキング細分領域によって構成される。
【0070】
すなわち、第1トラッキング領域Eおよび第2トラッキング領域Fにおいては、いずれの1つ種類のトラッキング領域38も、複数のトラッキング細分領域によって構成される。第1種第1トラッキング領域E1および第2種第1トラッキング領域F1は、1つの種類の光に対応し、第1種第2トラッキング領域E2および第2種第2トラッキング領域F2は、他の種類の光に対応する。
【0071】
第1種第1トラッキング領域E1、第1種第2トラッキング領域E2、第2種第1トラッキング領域F1および第2種第2トラッキング領域F2は、平行分割線27に垂直な方向に、それぞれ周期的に分散して配置される。第1種第1トラッキング領域E1、第2種第1トラッキング領域F1および第1フォーカス領域Aは、それぞれがフォーカス規定分割線26およびトラッキング規定分割線40を跨いでも、平行分割線27が連続した構成で配置される。同様に、第1種第2トラッキング領域E2、第2種第2トラッキング領域F2および第2フォーカス領域Bは、それぞれがフォーカス規定分割線26およびトラッキング規定分割線40を跨いでも、平行分割線27が連続した構成で配置される。
【0072】
第1トラッキング領域Eに含まれるトラッキング細分領域と、第2トラッキング領域Fに含まれるトラッキング細分領域とは、同一の種類の光に対応するトラッキング細分領域がトラッキング規定分割線40上で互いにラジアル方向Xに隣接するように配置される。詳細は後述するが、このように配置することによって、第1トラッキング領域Eと第2トラッキング領域Fとで回折した光を受光した受光領域により検出された光信号を電気信号に変換し、それぞれの電気信号の差分を取ることで、トラッキングエラー信号を検出することが可能となる。
【0073】
第1波長を「λ1」とし、第2波長を「λ2」とする。第1波長の光が第1フォーカス領域Aに入射する入射角を「θA1i」とし、この入射によって生じる回折における、+1次回折光の回折角度を「θA1d」とする。第2波長の光が第1フォーカス領域Aに入射する入射角を「θA2i」とし、この入射によって生じる回折における、+1次回折光の回折角度を「θA2d」とする。第1波長の光が第2フォーカス領域Bに入射する入射角を「θB1i」とし、この入射によって生じる回折における、+1次回折光の回折角度を「θB1d」とする。第2波長の光が第2フォーカス領域Bに入射する入射角を「θB2i」とし、この入射によって生じる回折における、+1次回折光の回折角度を「θB2d」とする。入射角は、光軸34に対する角度である。
【0074】
さらに、第1フォーカス領域Aに形成される回折溝のピッチを「dA」とし、第2フォーカス領域Bに形成される回折溝のピッチを「dB」とすると、第1フォーカス領域Aに入射する第1波長について、式(1)が成り立ち、第2フォーカス領域Bに入射する第1波長について、式(2)が成り立ち、第1フォーカス領域Aに入射する第2波長について、式(3)が成り立ち、第2フォーカス領域Bに入射する第2波長について、式(4)が成り立つ。
sinθA1i−sinθA1d=λ1/dA …(1)
sinθB1i−sinθB1d=λ1/dB …(2)
sinθA2i−sinθA2d=λ2/dA …(3)
sinθB2i−sinθB2d=λ2/dB …(4)
【0075】
図3,4に示した回折素子16内に示した3つの円は、光学記録媒体11で反射された反射光が回折領域19に入射したときの光スポットを表している。図3に示すように、回折領域19の第1フォーカス領域Aに光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第1フォーカス領域Aによって回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9aとして集光される。受光素子6の受光面上において光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から距離PX1ラジアル方向Xの+方向に離隔した集光スポット9aの集光位置を通り、タンジェンシャル方向Yに延びる直線を第1直線L1とする。
【0076】
受光素子6の受光面上における集光スポット9aは、第1受光領域6aと第2受光領域6bとの境界線上に点状もしくはそれに近い形状で集光される。受光素子6の受光面上において第1直線L1は、第1,第2,第5〜第12受光領域6a,6b,6e〜6lを通過する。
【0077】
回折領域19の第1フォーカス領域Aに光分割素子46による第1波長の−1次回折光が入射したときには、第1フォーカス領域Aにおいて回折した−1次回折光は、第1フォーカス領域Aにおいて0次回折光が集光した集光スポット9aから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY離れた、第11受光領域6k内の位置に集光される。第1フォーカス領域Aに光分割素子46による第1波長の+1次回折光が入射したときには、第1フォーカス領域Aにおいて回折した+1次回折光は、集光スポット9aから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY離れた、第12受光領域6l内の位置に集光される。
【0078】
回折領域19の第2フォーカス領域Bに第1波長の0次回折光が入射したときには、第2フォーカス領域Bにおいて回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX2分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9cとして集光される。距離PX2は、距離PX1よりも短い。受光素子6の受光面上において光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から距離PX2離隔した集光スポット9cの集光位置を通り、タンジェンシャル方向Yに延びる直線を第2直線L2とする。第1波長の光が第2フォーカス領域Bにおいて回折された第3受光領域6c上の集光スポット9cの集光スポットの形状は、第1波長の光が第1フォーカス領域Aにおいて回折された、第1受光領域6aと第2受光領域6bとの境界上の集光スポット9aの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0079】
回折領域19の第2フォーカス領域Bに光分割素子46による第1波長の−1次回折光が入射したときには、第2フォーカス領域Bにおいて回折した−1次回折光は、第2フォーカス領域Bにおいて0次回折光が集光した集光スポット9cから、タンジェンシャル方向Yの−方向に、距離SYの位置に集光される。光分割素子46による第1波長の+1次回折光が入射したときには、第2フォーカス領域Bにおいて回折した+1次回折光は、第2フォーカス領域Bにおいて0次回折光が集光した集光スポット9cから、タンジェンシャル方向Yの+方向に、距離SYの位置に集光される。それぞれの集光スポットの形状は、集光スポット9cよりも若干大きくなる。
【0080】
トラッキング回折領域36も同様に、第1種第1トラッキング領域E1に、光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第1種第1トラッキング領域E1において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置に集光スポット9eとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。第2種第1トラッキング領域F1に、光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第2種第1トラッキング領域F1において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の位置に集光スポット9fとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。回折溝のピッチと回折角との関係については、第1,第2フォーカス領域A,Bについて説明した際の式と、同様の式が成り立つので、重複を避けるために説明は省略する。
【0081】
第1種第1トラッキング領域E1に光分割素子46による第1波長の−1次回折光が入射したときには、第1種第1トラッキング領域E1において回折した−1次回折光は、第1種第1トラッキング領域E1において0次回折した集光スポット9eから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY離れた、第7受光領域6g内の位置に集光される。第1種第1トラッキング領域E1に光分割素子46による第1波長の+1次回折光が入射したときには、第1種第1トラッキング領域E1において回折した+1次回折光は、第1種第1トラッキング領域E1において回折した集光スポット9eから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY離れた、第9受光領域6i内の位置に、点状もしくはそれに近い形状で集光される。
【0082】
第2種第1トラッキング領域F1に光分割素子46による第1波長の−1次回折光が入射したときには、第2種第1トラッキング領域F1において回折した−1次回折光は、第2種第1トラッキング領域F1において0次回折した集光スポット9fから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY離れた、第8受光領域6h内の位置に集光される。第2種第1トラッキング領域F1に光分割素子46による第1波長の+1次回折光が入射したときには、第2種第1トラッキング領域F1において回折した+1次回折光は、第2種第1トラッキング領域F1において回折した集光スポット9fから、タンジェンシャル方向Yの+方向にに距離SY離れた、第10受光領域6j内の位置に、点状もしくはそれに近い形状で集光される。
【0083】
第1種第2トラッキング領域E2に光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第1種第2トラッキング領域E2において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX2分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の位置の位置に集光スポット9e2として集光される。集光スポット9e2は、第2直線L2上に集光される。第1種第2トラッキング領域E2において回折された集光スポット9e2の集光スポットの形状は、第1種第1トラッキング領域E1において回折された第5受光領域6eの集光スポット9eの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0084】
第2種第2トラッキング領域F2に光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第2種第2トラッキング領域F2において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX2分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の位置の位置に集光スポット9f2として集光される。第2種第2トラッキング領域F2において回折された集光スポット9f2の集光スポットの形状は、第2種第1トラッキング領域F1において回折された第6受光領域6f上の集光スポット9fの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0085】
図4に示すように、回折領域19の第2フォーカス領域Bに第2波長の0次回折光が入射したときには、第2フォーカス領域Bにおいて回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9aとして集光される。これは、上述の第1波長の光が第1フォーカス領域Aにおいて回折した0次回折光が、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9aとして集光された位置と同一である。したがって、第1フォーカス領域Aにおける平行分割線27上の任意の点における第1波長の0次回折光の回折角度と、第2フォーカス領域Bにおける平行分割線27上の前記同一の任意の点における第2波長の0次回折光の回折角度とは、同じ値に設定される。
【0086】
回折領域19の第1フォーカス領域Aに第2波長の0次回折光が入射したときには、第1フォーカス領域Aにおいて回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX3分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9dとして集光される。距離PX3は、距離PX1よりも長い。受光素子6の受光面上において光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から距離PX3離隔した集光スポット9dの集光位置を通り、タンジェンシャル方向Yに延びる直線を第3直線L3とする。受光素子6の受光面上において第3直線L3は、第4受光領域6dを通過する。
【0087】
回折領域19の第1種第2トラッキング領域E2に、光分割素子46による第2波長の0次回折光が入射したときには、第1種第2トラッキング領域E2において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置に集光スポット9eとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。第2種第2トラッキング領域F2に、光分割素子46による第2波長の0次回折光が入射したときには、第2種第2トラッキング領域F2において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の位置に集光スポット9fとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。回折溝のピッチと回折角との関係については、第1,第2フォーカス領域A,Bについて説明した際の式と、同様の式が成り立つので、重複を避けるために説明は省略する。
【0088】
第1種第2トラッキング領域E2に光分割素子46による第2波長の−1次回折光が入射したときには、第1種第2トラッキング領域E2において回折した−1次回折光は、第1種第2トラッキング領域E2において0次回折した集光スポット9eから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY2離れた、第7受光領域6g内の位置に集光される。第1種第2トラッキング領域E2に光分割素子46による第2波長の+1次回折光が入射したときには、第1種第2トラッキング領域E2において回折した+1次回折光は、第1種第2トラッキング領域E2において回折した集光スポット9eから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY2離れた、第9受光領域6i内の位置に、点状もしくはそれに近い形状で集光される。距離SY2は、第1波長に対して第2波長の方が大きく、光分割素子46による±1次回折光の回折角が大きくなるので、距離SYよりも大きくなる。
【0089】
第2種第2トラッキング領域F2に光分割素子46による第2波長の−1次回折光が入射したときには、第2種第2トラッキング領域F2において回折した−1次回折光は、第2種第2トラッキング領域F2において0次回折した集光スポット9fから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY2離れた、第8受光領域6h内の位置に集光される。第2種第2トラッキング領域F2に光分割素子46による第2波長の+1次回折光が入射したときには、第2種第2トラッキング領域F2において回折した+1次回折光は、第2種第2トラッキング領域F2において回折した集光スポット9fから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY2離れた、第10受光領域6j内の位置に、点状もしくはそれに近い形状で集光される。
【0090】
第1種第1トラッキング領域E1に光分割素子46による第2波長の0次回折光が入射したときには、第1種第1トラッキング領域E1において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX3分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の位置に集光スポット9e3として集光される。第1種第1トラッキング領域E1において回折された集光スポット9e3の集光スポットの形状は、第1種第2トラッキング領域E2において回折された第5受光領域6eの集光スポット9eの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0091】
第2種第1トラッキング領域F1に光分割素子46による第2波長の0次回折光が入射したときには、第2種第1トラッキング領域F1において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX3分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置に集光スポット9f3として集光される。第2種第1トラッキング領域F1において回折された集光スポット9f3の集光スポットの形状は、第2種第2トラッキング領域F2において回折された第6受光領域6f上の集光スポット9fの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0092】
上述したように、第1フォーカス領域Aにおける第1波長の光の回折角度と、第2フォーカス領域Bにおける第2波長の光の回折角度とを、同じ値に設定することによって、式(1)における回折角度θA1dと、式(4)における回折角度θB2dとが等しくなるという関係式が成り立つ。光源12における第1発光点32と第2発光点33とは、互いに位置が異なるけれども、簡易的に説明を行うため、発光点を同一とし、それぞれの回折素子16に対する入射角も零度とすると、式(5)が成り立つ。
λ1/dA=λ2/dB …(5)
【0093】
そのとき、第2フォーカス領域Bに第1波長の光が入射した場合の回折角度θB1dは、式(2)と式(5)とから、式(6)が成り立つ。
sinθB1d=(λ1/λ2)・sinθA1d …(6)
【0094】
したがって、第1波長と第2波長とでは、「λ1<λ2」の関係が成り立つので、回折角度は、θB1d<θA1dとなり、第1基準位置である集光スポット9aよりも、光軸に近い第2基準位置である集光スポット9cの位置に向けて回折され、図3に示すように、第3受光領域6c内の集光スポット9cのような位置となる。
【0095】
同様に、第1フォーカス領域Aに第2波長の光が入射した場合の回折角度θA2dを求めると、式(7)が成り立つ。
sinθA2d=(λ2/λ1)・sinθB2d …(7)
【0096】
したがって、第1波長と第2波長とでは、「λ1<λ2」の関係が成り立つので、回折角度は、θA2d>θB2dとなり、第1基準位置である集光スポット9aよりも、光軸34から離れた第3基準位置である集光スポット9dに向けて回折され、図4に示すように第4受光領域6d内の集光スポット9dのような位置となる。
【0097】
第1種第1トラッキング領域E1および第1種第2トラッキング領域E2についても同様に、第1波長の光が第1種第1トラッキング領域E1に入射して回折したときの回折角度と、第2波長の光が第1種第2トラッキング領域E2に入射して回折したときの回折角度とを、それぞれの集光スポットの位置が集光スポット9eの位置となるように設定する。また、第2種第1トラッキング領域F1および第2種第2トラッキング領域F2についても同様に、第1波長の光が第2種第1トラッキング領域F1に入射して回折したときの回折角度と、第2波長の光が第2種第2トラッキング領域F2に入射して回折したときの回折角度とを、それぞれの集光スポットの位置が集光スポット9fの位置となるように設定する。
【0098】
回折領域19の第1フォーカス領域Aおよび第2フォーカス領域Bに形成される回折溝の溝の方向は、タンジェンシャル方向Yもしくはそれに近い曲線状に形成される。第1フォーカス領域Aと第2フォーカス領域Bの回折溝のピッチは、λ1<λ2および式(5)から、dA<dBの関係となるため、平行分割線27に垂直な方向においてピッチの広い領域とピッチの狭い領域とが交互に配置される。
【0099】
また、回折領域19の第1種第1トラッキング領域E1および第1種第2トラッキング領域E2に形成される回折溝の溝の方向は、回折領域19の中心点P0と集光スポット9eとを結ぶ直線に直交する方向もしくはそれに近い曲線状に形成される。第1種第1トラッキング領域E1および第1種第2トラッキング領域E2に形成される回折溝のピッチは、上記と同様、第1種第1トラッキング領域E1の回折溝のピッチに比べて、第1種第2トラッキング領域E2の回折溝のピッチの方が大きくなり、それぞれが平行分割線27を境界として交互に配置される。
【0100】
同様に、回折領域19の第2種第1トラッキング領域F1および第2種第2トラッキング領域F2に形成される回折溝の溝の方向は、回折領域19の中心点P0と集光スポット9fを結ぶ直線に直交する方向もしくはそれに近い曲線状に形成される。第2種第1トラッキング領域F1および第2種第2トラッキング領域F2の回折溝のピッチは、上記と同様、第2種第1トラッキング領域F1の回折溝のピッチに比べて、第2種第2トラッキング領域F2の回折溝のピッチの方が大きくなり、それぞれが平行分割線27を境界として交互に配置される。
【0101】
回折領域19は、回折素子16が透明硝子基板であれば、フォトリソグラフィ法を用いて製造することができ、回折素子16が透明樹脂基板であれば、2P法や金型成型を用いて製造することができる。
【0102】
次に、光ピックアップ装置10の動作原理について説明する。図示しないサーボ信号生成部は、各受光領域から得られる電気信号から、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を生成する。そして、図示しないサーボ信号処理部は、サーボ信号、すなわちフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号によって、フォーカスサーボ制御およびトラッキングサーボ制御を行い、光学記録媒体11の所定トラックに対して、対物レンズ29による集光点を追従するように、図示しないアクチュエータを搭載した対物レンズ29のフォーカス方向およびトラック方向の位置制御を行う。これらのサーボ信号生成部、サーボ信号処理部およびアクチュエータを制御する図示しない駆動制御部は、従来技術によって実現される。
【0103】
具体的には、フォーカスエラー信号(Focus Error Signal:以下「FES」ともいう)は、回折領域19の第1フォーカス領域Aもしくは第2フォーカス領域Bで回折された光信号を受けた第1,第2受光領域6a,6bで検出される電気信号Sa,Sbの差である。すなわち、FESは、式(8)によって算出される。
FES=Sa−Sb …(8)
【0104】
光ピックアップ装置10は、回折領域19上のナイフエッジ部26を境界としたナイフエッジを利用して、ナイフエッジ法によりフォーカスサーボ制御を行う。特に、ナイフエッジにより集光する光が、点状もしくはそれに近い形状の1つの集光スポットだけであるので、受光素子6の姿勢が、光軸方向Zに垂直なXY平面内でXY方向にずれいる場合あるいは回転している場合でも、回折素子16を光軸方向Zに垂直なXY平面内でXY方向にずらしてあるいは回転させて調整することによって補正することができる。したがって、ナイフエッジ法によって、常にフォーカスエラー信号FESを検出することができ、安定してフォーカスサーボ制御を行うことができる。
【0105】
以下、第1〜第6受光領域6a〜6fで検出される電子信号を、それぞれSa,Sb,Sc,Sd,Se,Sfとする。フォーカス領域22に含まれる第1フォーカス領域Aおよび第2フォーカス領域Bが、それぞれが異なる1種類の光に対応することは、1種類の光を予め定める受光領域上の点、ここでは第1受光領域6aと第2受光領域6bとの境界線近傍に定められる集光スポット9aに入射させることを意味する。
【0106】
また、トラッキングエラー信号(Tracking Error Signal:以下「TES」もという)は、差動プッシュプル(Differential Push Pull:以下「DPP」という)法では、第5,第6受光領域6e,6fで検出される電気信号Se,Sfの差である。すなわちTESは、式(9)によって算出される。
TES=Se−Sf …(9)
【0107】
また、DPP法とは異なる方式である差動位相検出(Differential Phase Detection:以下「DPD」という)法では、式(10)によって算出される。
TES=Phase(Se−Sf) …(10)
【0108】
DPD法は、安定したサーボ制御を行うことができ、光学記録媒体11の所望のトラックに光を集光させることができる。DPD法を用いる場合には、少なくとも第5,第6受光領域6e,6fでは、入射する光の位相を検出する。式(10)において「Phase(Se−Sf)」は、第5,第6受光領域6e,6fから得られる光の位相差を表す。
【0109】
また、DPP法およびDPD法とは異なる方式である3ビーム法では、第7〜第12受光領域6g〜6lで検出される電気信号Sg〜Slから、式(11)によって算出される。
TES=(Sg+Sh+Sk)−(Si+Sj+Sl) …(11)
【0110】
つまり、光分割素子46において回折した+1次回折光から得られる電気信号の和から、−1次回折光から得られる電気信号の和を、差分したものである。式(8)〜(11)によって、トラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号を算出するので、光ピックアップ装置10は、安定したサーボ制御を行うことができ、光学記録媒体11の所望のトラックに光を集光させることができる。
【0111】
再生信号をRFとすると、RFは、式(12)によって算出される。
RF=Sa+Sb+Sc+Sd+Se+Sf …(12)
【0112】
したがって、光ピックアップ装置10は、トラックの再生信号RFを安定して再生することができる。
【0113】
第1実施形態では、平行分割線27の幅Waおよび幅Wbは、第2フォーカス領域Bに形成されるピッチ幅の広い回折溝のピッチdBの5ピッチ幅以上とし、かつ幅Waと幅Wbとの比率を1:1とする。ただし、幅Waと幅Wbとの比率については、1:1に限定されない。たとえば、第1波長を用いるときまたは第2波長を用いるときに、それぞれ出力されるサーボ信号の信号強度を調整するために、これらの比率を変化させて調整してもよい。
【0114】
具体的には、たとえば、第1波長の光に対する受光感度が、第2波長の光に対する感度よりも低いときには、幅Waを幅Wbよりも太くして、第1フォーカス領域Aの面積を、第2フォーカス領域Bの面積よりも広くすることによって、第1波長の光に対するRF信号やフォーカスエラー信号FESの信号振幅を大きくすることができる。これによって、信号対雑音比(signal to noise ratio:略称「S/N」)を向上させることができ、信号品質を向上させることができる。このように、第1フォーカス領域Aと第2フォーカス領域Bとの面積割合を、波長の異なる各種類の光に対する各受光領域の受光感度を考慮して決定してもよい。
【0115】
また、第1の実施形態では、受光素子6上に落射する集光スポット9e,9fの位置を、第1直線L1上とし、かつ第5,第6受光領域6e,6fのラジアル方向Xの寸法を、第1,第2受光領域6a,6bのラジアル方向Xの寸法と同等であると設定したが、それに限定されるものではない。たとえば、集光スポット9e,9fの集光位置に応じて、第1波長および第2波長の光を受光できるように第5,第6受光領域6e,6fをラジアル方向Xおよびタンジェンシャル方向Yの寸法を決めてやればよい。
【0116】
ナイフエッジ部26と平行分割線27とが成す角度αについては、30度以上150度以下とすることが望ましい。平行分割線27の角度αが、小さい場合、光学記録媒体11上に付着している異物・汚れによって、回折素子16上の0次回折光の光強度が低くなる部分が生じる。この光強度が暗くなる箇所が、Y方向に移動するため、角度αが小さいと、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号に混入するノイズ信号が大きくなってしまう。この角度αを、ナイフエッジ部26に対してある程度傾斜させることで、そのノイズを小さくすることができ、安定したフォーカスサーボ制御およびトラッキングサーボ制御を行うことができる。
【0117】
また、第1実施形態では、トラッキングサーボに3ビーム法を用いる場合、上述したように、光分割素子46によって発生させた±1次回折光の信号出力の差分をトラッキングエラー信号する。
【0118】
図5は、回折素子16に入射した±1次回折光に分割線を投影した図である。図5(a)は、第2波長の光で光ピックアップ装置10を動作させた場合に、回折領域19と、回折領域19に入射する第2波長の光を、光軸方向Zから見た平面図である。図5(b)は、上述した回折領域19に入射する第2波長の光のうち、回折領域19への入射した+1次回折光302を、回折領域19の分割線を含めて記載した平面図であり、図5(c)は、上述した回折領域19に入射する第2波長の光のうち、回折領域19への入射した−1次回折光301を、回折領域19の分割線を含めて記載した平面図である。
【0119】
+1次回折光302は、ナイフエッジ部26が、+1次回折光302の中心より−Y方向にずれており、かつトラッキング規定分割線40が、+1次回折光302の中心よりラジアル方向Xの−方向にずれている。−1次回折光301は、ナイフエッジ部26が、−1次回折光301の中心よりタンジェンシャル方向Yの+方向にずれており、かつトラッキング規定分割線40が、−1次回折光301の中心よりラジアル方向Xの−方向にずれている。さらに、ナイフエッジ部26に対して、角度αの複数の平行分割線27によって、回折領域19でのスポット像が分割されている。
【0120】
第2波長の光のうち、3ビーム法で用いる光は、図5(b),(c)のように、±1次回折光301,302の有効径内にあり、斜線を付した第1波長のための細分領域を除く、斜線が付されていない白抜きの第2波長のための細分領域を透過する光である。その白抜きの第2波長のための細分領域は、有効径内で複数本あり、かつ有効径内で連続性を持っている。したがって、回折領域19に入射する0次回折光300、および±1次回折光301,302が、Y方向に多少ずれても、常に白抜きの第2波長のための細分領域が有効径内に存在するので、+1次回折光302と、−1次回折光301との光強度のバランスが変化し難い。その結果、式(11)で算出されるトラッキングエラー信号TESにオフセットが発生し難く、安定してトラッキングサーボ制御を行うことができる。有効径とは、0次回折光300、および±1次回折光301,302のそれぞれの回折領域19でのスポット像の領域である。
【0121】
第1実施形態によれば、光ピックアップ装置10においてフォーカス回折領域21およびトラッキング回折領域36は、光源12が出射可能な光の種類と同数の種類のフォーカス領域22およびトラッキング領域38を備える。フォーカス領域22およびトラッキング領域38の種類は、光の各種類にそれぞれ対応する。各種類のフォーカス領域22は、対応する種類の光をフォーカス受光領域17に向けて回折させ、各種類のトラッキング領域38は、対応する種類の光をトラッキング受光領域に向けて回折させる。また各種類のフォーカス領域22は、同じ種類の複数のフォーカス細分領域によって構成され、各種類のトラッキング領域38は、同じ種類の複数のトラッキング細分領域によって構成される。各種類のフォーカス領域22の複数のフォーカス細分領域は、フォーカス回折領域21において周期的に分布し、各種類のトラッキング領域38の複数のトラッキング細分領域は、トラッキング回折領域36において周期的に分布する。
【0122】
トラッキング受光領域は、トラッキングエラー検出方式によって異なり、DPP法およびDPD法では、第5,第6受光領域6e,6fであり、3ビーム法では、第7〜第12受光領域6g〜6lである。
【0123】
これによって、フォーカス受光領域17およびトラッキング受光領域を、波長の異なる複数種類の光に対して共用することができる。また各種類のフォーカス領域22の複数のフォーカス細分領域は、フォーカス回折領域21において周期的に分布する。また、各種類のトラッキング領域38の複数のトラッキング細分領域は、トラッキング回折領域36において周期的に分布する。これらのフォーカス細分領域およびトラッキング細分領域を形成する平行分割線27がナイフエッジ部26およびトラッキング規定分割線40を跨っても連続性があるので、複数種類のフォーカス領域22のいずれかのフォーカス領域22、および複数種類のトラッキング領域38のいずれかのトラッキング領域38に入射する光学記録媒体11からの反射光の位置がY方向にずれても、また光学記録媒体11上に異物や汚れが付着しても、安定してフォーカスサーボ制御およびトラッキングサーボ制御を行うことができる。
【0124】
また第1実施形態によれば、フォーカス回折領域21の外縁の予め定める一部は、直線状に形成されるナイフエッジ部26によって規定される。光学記録媒体11からの反射光18がいずれの種類の光であるときにも、反射光18は、回折素子16に入射する入射領域、つまり回折領域19に対して交差する。フォーカス回折領域21は、平行に並ぶ複数の平行分割線27によって複数のフォーカス細分領域に分割される。複数の平行分割線27は、ナイフエッジ部26に対して傾斜する。
【0125】
また第1実施形態によれば、平行分割線27は、ナイフエッジ部26に対して30度以上150度以下の角度を成す。これによって、回折素子16に入射する光の位置が変化した場合であっても、1つの種類の光のためのフォーカス細分領域の部分の面積、および他の種類の光のためのフォーカス細分領域の部分の面積を、複数種類のフォーカス領域22に効果的に分散することができる。したがって、フォーカスサーボを安定して行うことができる。同時に、回折素子16に入射する光の位置が変化した場合であっても、1つの種類の光のためのトラッキング細分領域の部分の面積、および他の種類の光のためのトラッキング細分領域の部分の面積を、複数種類のトラッキング領域38に効果的に分散することができる。したがって、トラッキングサーボを安定して行うことができる。
【0126】
また第1実施形態によれば、各フォーカス細分領域および各トラッキング細分領域には、複数の回折溝が平行かつ周期的に並んで形成される。各フォーカス細分領域および各トラッキング細分領域に形成される回折溝は、各フォーカス細分領域および各トラッキング細分領域の回折溝に垂直に交差する仮想平面と、5本以上交差する。これによって、各フォーカス細分領域および各トラッキング細分領域の回折溝が回折溝に垂直な方向に並ぶ数は、効率よく回折を行うために最低限必要な数以上とすることができる。したがって、各フォーカス細分領域における回折を、効率よく行うことができる。
【0127】
また第1実施形態では、第3,第4受光領域6c,6dを搭載し、他の種類のフォーカス領域22で回折される第1波長または第2波長の光を受光するよう配置したが、それに限定されることなく、第1,第2受光領域6a,6bで受光量が十分満足できれば、第3,第4受光領域6c,6dは省略してもよい。
【0128】
また第1実施形態では、第1,第2受光領域6a,6bの境界線は、ラジアル方向Xに平行な直線で配置したが、それに限定されることなく、傾斜していてもよい。これは、波長公差を考慮した場合、受光する光スポットの形状が、第1基準位置である集光スポット9aを境に変化するため、デフォーカスが発生する場合があり、それを補正するために傾斜させることもある。同様に、その他受光領域の形状のラジアル方向Xおよびタンジェンシャル方向Yの寸法についても、第1実施形態での寸法は一例であり、それに限定されることはない。
【0129】
また第1実施形態では、第1,第2受光領域6a,6bの境界に受光する光スポットが、第1波長の光および第2波長の光ともに、集光スポット9aがおおよそ同じ位置に集光するように回折領域19の回折溝のピッチを設定したが、それに限定されることなく、第1,第2受光領域6a,6bからはみ出さない程度あれば、第1波長の光による集光位置と、第2波長の光による集光位置とを若干ずらしてもよい。
【0130】
また第1実施形態では、受光素子6に対して、第1波長の第1発光点32が、第2波長の第2発光点33よりも遠く配置されているが、それに限定されることなく、逆の位置でもよい。
【0131】
また第1実施形態では、トラッキングエラー信号TESの検出方式を、光学記録媒体11の種類に合わせて変えることができる。たとえば、第1波長をDVD−ROM(Read Only Memory)用とし、第2波長をCD−ROM用とすると、DVD−ROM再生時にはDPD法を採用し、CD−ROM再生時には3ビーム法を採用する。
【0132】
図6は、本発明の第2実施形態である光ピックアップ装置210の構成を表す図である。図7は、回折素子216および各受光領域の平面図である。図8は、第1波長の光での回折素子216と各受光領域との関係を表す図である。図9は、第2波長の光での回折素子216と各受光領域との関係を表す図である。図10は、第3の波長の光での回折素子216と各受光領域との関係を表す図である。
【0133】
第2実施形態に係る光ピックアップ装置210は、第1実施形態に係る光ピックアップ装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第2実施形態の相違点を中心に説明する。
【0134】
第2実施形態に係る光ピックアップ装置210は、第1実施形態に係る光ピックアップ装置10の光源12に加えて、第3波長の光を発光する光源51が追加されて構成される。光源51は、光源12よりも受光素子6に近い位置に、光源12に隣接して配置される。光源51は、第3発光点52の発光点を備え、第1,第2発光点32,33から発光される第1波長の光および第2波長の光と、ほぼ同じの向きに出射される。互いに異なる3つの波長のうち、第1波長、第2波長、そして第3波長の順で波長が長くなるものとする。
【0135】
光源12は、1チップ内に異なる波長の発光点を持つモノリシック型であり、光源51は、単波長レーザチップとなるハイブリッド型であるが、それらに限定されることはなく、3つの波長とも、1チップ内に3つの発光点を収めたモノリシック型や、全波長が独立した単波長レーザチップで構成して近接して配置したハイブリッド型であってもよい。さらに、第1波長、第2波長および第3波長の順で、X方向に並べたがそれに限定されることなく、中間波長が中央にあれば、X方向の逆方向に並べても良い。さらに、第1波長、第2波長および第3波長の第1発光点32、第2発光点33および第3発光点52については、X方向に並べて記載したが、それに限定することなく、いずれか1つもしくは複数の発光点が、Y方向にずれていてもよい。
【0136】
受光素子206は、第1実施形態の光ピックアップ装置10内の受光素子6と同様に、第1〜第12受光領域206a〜206lの12箇所の受光領域を備えているが、第5〜12受光領域206e〜206lのX方向の寸法が、第3受光領域206cのラジアル方向Xの−方向の端点と、第4受光領域206dのラジアル方向Xの+方向の端点との間の寸法と同等とする。
【0137】
回折素子216に形成される回折領域219は、第1実施形態の回折領域19で構成されるナイフエッジ部26に対して角度αで傾斜した平行分割線27によって分割される、第1,第2フォーカス領域A,Bに含まれるフォーカス細分領域、および第1種第1,第1種第2,第2種第1,第2種第2トラッキング領域E1,E2,F1,F2に含まれるトラッキング細分領域に追加して、第3フォーカス領域Cに含まれるフォーカス細分領域、および第1種第3,第2種第3トラッキング領域E3,F3に含まれるトラッキング細分領域が追加されている。
【0138】
回折領域219をフォーカス規定分割線26で分割したフォーカス回折領域221およびトラッキング回折領域236は、それぞれ半円形状に形成される。トラッキング回折領域236は、第1トラッキング領域Eと第2トラッキング領域Fとに分割されるが、さらに平行分割線27によって、第1種第1トラッキング領域E1、第1種第2トラッキング領域E2、第1種第3トラッキング領域E3、第2種第1トラッキング領域F1、第2種第2トラッキング領域F2および第2種第3トラッキング領域F3の、計6種のトラッキング領域に分割される。
【0139】
第1トラッキング領域Eと第2トラッキング領域Fとに分割するトラッキング規定分割線40には、第1トラッキング規定分割線401、第2トラッキング規定分割線402および第3トラッキング規定分割線403の3種類がある。第1トラッキング規定分割線401は、第1種第1トラッキング領域E1と第2種第1トラッキング領域F1とを分割する。第2トラッキング規定分割線402は、第1種第2トラッキング領域E2と第2種第2トラッキング領域F2とを分割する。第3トラッキング規定分割線403は、第1種第3トラッキング領域E3と第2種第3トラッキング領域F3とを分割する。
【0140】
第2トラッキング規定分割線402は、トラッキング回折領域236において、トラックの接線方向に対応する方向に延びる中心点P0を通る直線上に配置される。第1トラッキング規定分割線401は、トラッキング回折領域236において、中心点P0からラジアル方向Xの−方向に距離T1だけ離れた点P1から、トラックの接線方向に対応する方向に延びる直線上に配置される。第3トラッキング規定分割線403は、トラッキング回折領域236において、中心点P0からラジアル方向Xの+方向に距離T2だけ離れた点P2から、トラックの接線方向に対応する方向に延びる直線上に配置される。
【0141】
回折領域219に形成されるフォーカス回折領域221は、第1フォーカス領域A、第2フォーカス領域Bおよび第3フォーカス領域Cの順で隣接して配置される。同様に、トラッキング回折領域236も、第1種第1トラッキング領域E1、第1種第2トラッキング領域E2および第1種第3トラッキング領域E3の順で隣接して配置され、第2種第1トラッキング領域F1、第2種第2トラッキング領域F2および第2種第3トラッキング領域F3の順で隣接して配置される。
【0142】
図8に示すように、回折領域219の第1フォーカス領域Aに光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第1フォーカス領域Aにおいて回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9aとして集光される。受光素子206の受光面上における集光スポット9aは、第1受光領域206aと第2受光領域206bとの境界線上に点状もしくはそれに近い形状で集光される。受光素子206の受光面上において光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から距離PX1離隔した集光スポット9aの集光位置を通り、タンジェンシャル方向Yに延びる直線を第1直線L1とする。受光素子206の受光面上において第1直線L1は、第1,第2,第5〜第12受光領域206a,206b,206e〜206lを通過する。
【0143】
回折領域219の第1フォーカス領域Aに光分割素子46による第1波長の−1次回折光が入射したときには、第1フォーカス領域Aにおいて回折した−1次回折光は、第1フォーカス領域Aにおいて0次回折した集光スポット9aから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY1離れた、第11受光領域206k内の位置に集光される。第1フォーカス領域Aに光分割素子46による第1波長の+1次回折光が入射したときには、第1フォーカス領域Aにおいて回折した+1次回折光は、集光スポット9aから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY1離れた、第12受光領域206l内の位置に集光される。
【0144】
回折領域219の第2フォーカス領域Bに第1波長の0次回折光が入射したときには、第2フォーカス領域Bにおいて回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX2分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9cとして集光される。距離PX2は、距離PX1よりも短い。受光素子206の受光面上において光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から距離PX2離隔した集光スポット9cの集光位置を通り、タンジェンシャル方向Yに延びる直線を第2直線L2とする。第1波長の光が第2フォーカス領域Bにおいて回折された第3受光領域206c上の集光スポット9cの集光スポットの形状は、第1波長の光が第1フォーカス領域Aにおいて回折された、第1受光領域206aと第2受光領域206bとの境界上の集光スポット9aの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0145】
回折領域219の第2フォーカス領域Bに光分割素子46による第1波長の−1次回折光が入射したときには、第2フォーカス領域Bにおいて回折した−1次回折光は、第2フォーカス領域Bにおいて0次回折した集光スポット9cから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY1離れた、第11受光領域206k内の位置に集光される。第2フォーカス領域Bに光分割素子46による第1波長の+1次回折光が入射したときには、第2フォーカス領域Bにおいて回折した+1次回折光は、第2フォーカス領域Bにおいて0次回折した集光スポット9cから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY1離れた、第12受光領域206l内の位置に集光され、それぞれの集光スポット形状は、集光スポット9aより若干大きくなる。
【0146】
回折領域219の第3フォーカス領域Cに第1波長の0次回折光が入射したときには、第3フォーカス領域Cにおいて回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX2a分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9c2として集光される。距離PX2aは、距離PX2よりも短い。受光素子206の受光面上において光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から距離PX2a離隔した集光スポット9c2の集光位置を通り、タンジェンシャル方向Yに延びる直線を第4直線L2aとする。第1波長の光が第3フォーカス領域Cにおいて回折された集光スポット9c2の集光スポットの形状は、第1波長の光が第2フォーカス領域Bにおいて回折された第3受光領域206c上の集光スポット9cの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0147】
回折領域19の第3フォーカス領域Cに光分割素子46による第1波長の−1次回折光が入射したときには、第3フォーカス領域Cにおいて回折した−1次回折光は、第3フォーカス領域Cにおいて0次回折した集光スポット9c2から、タンジェンシャル方向Yの−方向に、距離SY1の位置に集光される。第3フォーカス領域Cに光分割素子46による第1波長の+1次回折光が入射したときには、第3フォーカス領域Cにおいて回折した+1次回折光は、第3フォーカス領域Cにおいて0次回折した集光スポット9c2から、タンジェンシャル方向Yの+方向に、距離SY1の位置に集光される。
【0148】
それぞれの集光スポットの形状は、集光スポット9cより若干大きくなる。すなわち、第1波長の0次回折光の集光スポット9aに対して、集光スポット9c,9c2の大きさの関係は、集光スポット9a<集光スポット9c<集光スポット9c2となる。第1波長の±1次回折光の集光スポットの形状についても同様である。ただし、図には示していないが、+Y方向にある+1次回折光の各集光スポットの形状は、それに対応する0次回折光の各集光スポットよりも大きくなり、逆に、−Y方向にある−1次回折光の各集光スポットの形状は、それに対応する0次回折光の各集光スポットより小さくなる。
【0149】
トラッキング回折領域236も同様に、第1種第1トラッキング領域E1に、光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第1種第1トラッキング領域E1において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置に集光スポット9eとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。第2種第1トラッキング領域F1に、光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第2種第1トラッキング領域F1において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の位置に集光スポット9fとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。回折溝のピッチおよび回折角の関係については、第1,第2フォーカス領域A,Bについて説明した際の式と、同様の式が成り立つので、重複を避けるために説明は省略する。
【0150】
第1種第1トラッキング領域E1に光分割素子46による第1波長の−1次回折光が入射したときには、第1種第1トラッキング領域E1において回折した−1次回折光は、第1種第1トラッキング領域E1において0次回折した集光スポット9eから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY1離れた、第7受光領域206g内の位置に集光される。第1種第1トラッキング領域E1に光分割素子46による第1波長の+1次回折光が入射したときには、第1種第1トラッキング領域E1において回折した+1次回折光は、第1種第1トラッキング領域E1において0次回折した集光スポット9eから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY1離れた、第9受光領域206i内に、点状もしくはそれに近い形状で集光される。
【0151】
第2種第1トラッキング領域F1に光分割素子46による第1波長の−1次回折光が入射したときには、第2種第1トラッキング領域F1において回折した−1次回折光は、第2種第1トラッキング領域F1において0次回折した集光スポット9fから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY1離れた、第8受光領域206h内の位置に集光される。第2種第1トラッキング領域F1に光分割素子46による第1波長の+1次回折光が入射したときには、第2種第1トラッキング領域F1において回折した+1次回折光は、第2種第1トラッキング領域F1において0次回折した集光スポット9fから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY1離れた、第10受光領域206j内に、点状もしくはそれに近い形状で集光される。
【0152】
第1種第2トラッキング領域E2に光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第1種第2トラッキング領域E2において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX2分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置の位置に集光スポット9e2として集光される。距離PX2は、距離PX1よりも短い。集光スポット9e2は、第2直線L2上に形成される。第2種第2トラッキング領域F2において回折された集光スポット9e2の集光スポットの形状は、第1種第1トラッキング領域E1において回折された第5受光領域206eの集光スポット9eの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0153】
第2種第2トラッキング領域F2に光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第2種第2トラッキング領域F2において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX2分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の位置に集光スポット9f2として集光される。集光スポット9f2は、第2直線L2上に形成される。第2種第2トラッキング領域F2において回折された集光スポット9f2の集光スポットの形状は、第2種第1トラッキング領域F1において回折された第6受光領域206f上の集光スポット9fの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0154】
第1種第3トラッキング領域E3に光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第1種第3トラッキング領域E3において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX2a分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置の位置に集光スポット9e2aとして集光される。距離PX2aは、距離PX2よりも短い。集光スポット9e2aは、第4直線L2a上に形成される。第2種第3トラッキング領域F3において回折された集光スポット9e2aの集光スポットの形状は、第1種第2トラッキング領域E2において回折された第5受光領域206eの集光スポット9e2の集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0155】
第2種第3トラッキング領域F3に光分割素子46による第1波長の0次回折光が入射したときには、第2種第3トラッキング領域F3において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX2a分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の位置に集光スポット9f2cとして集光される。集光スポット9f2cは、第4直線L2a上に形成される。第2種第3トラッキング領域F3において回折された集光スポット9f2cの集光スポットの形状は、第2種第2トラッキング領域F2において回折された第6受光領域206f上の集光スポット9f2の集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0156】
図9に示すように、回折領域219の第2フォーカス領域Bに第2波長の0次回折光が入射したときには、第2フォーカス領域Bにおいて回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9aとして集光される。これは、上述した第1波長の光が第1フォーカス領域Aにおいて回折した0次回折光が、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9aとして集光された位置と同一である。したがって、第1フォーカス領域Aにおける平行分割線27上の任意の点における第1波長の光の回折角度と、第2フォーカス領域Bにおける平行分割線27上の前記同一の任意の点における第2波長の光の回折角度とは、同じ値に設定される。
【0157】
回折領域219の第1フォーカス領域Aに第2波長の0次回折光が入射したときには、第1フォーカス領域Aにおいて回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX3分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9dとして集光される。距離PX3は、距離PX1よりも長い。受光素子206の受光面上において光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34から距離PX3離隔した集光スポット9dの集光位置を通り、タンジェンシャル方向Yに延びる直線を第3直線L3とする。受光素子206の受光面上において第3直線L3は、第4受光領域206dを通過する。
【0158】
回折領域219の第1種第2トラッキング領域E2に、光分割素子46による第2波長の0次回折光が入射したときには、第1種第2トラッキング領域E2において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置に集光スポット9eとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。第2種第2トラッキング領域F2に、光分割素子46による第2波長の0次回折光が入射したときには、第2種第2トラッキング領域F2において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の位置に集光スポット9fとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。回折溝のピッチと回折角との関係については、第1,第2フォーカス領域A,Bについて説明した際の式と、同様の式が成り立つので、重複を避けるために説明は省略する。
【0159】
第1種第2トラッキング領域E2に光分割素子46による第2波長の−1次回折光が入射したときには、第1種第2トラッキング領域E2において回折した−1次回折光は、第1種第1トラッキング領域E1において0次回折した集光スポット9eから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY2離れた、第7受光領域206g内の位置に集光される。第1種第2トラッキング領域E2に光分割素子46による第2波長の+1次回折光が入射したときには、第1種第2トラッキング領域E2において回折した+1次回折光は、第1種第1トラッキング領域E1において0次回折した集光スポット9eから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY2離れた、第9受光領域206i内の位置に、点状もしくはそれに近い形状で集光される。距離SY2は、第1波長に対して第2波長の方が大きく、光分割素子46による±1次回折光の回折角が大きくなるため、距離SY1よりも大きくする。
【0160】
第2種第2トラッキング領域F2に光分割素子46による第2波長の−1次回折光が入射したときには、第2種第2トラッキング領域F2において回折した−1次回折光は、第2種第2トラッキング領域F2において0次回折した集光スポット9fから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY2離れた、第8受光領域206h内の位置に集光される。第2種第2トラッキング領域F2に光分割素子46による第2波長の+1次回折光が入射したときには、第2種第2トラッキング領域F2において回折した+1次回折光は、第2種第2トラッキング領域F2において0次回折した集光スポット9fから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY2離れた、第10受光領域206j内に、点状もしくはそれに近い形状で集光される。
【0161】
第1種第1トラッキング領域E1に光分割素子46による第2波長の0次回折光が入射したときには、第1種第1トラッキング領域E1において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX3分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置の第5受光領域206eに集光スポット9e3として集光される。第1種第1トラッキング領域E1において回折された集光スポット9e3の集光スポットの形状は、第1種第2トラッキング領域E2において回折された第5受光領域206eの集光スポット9eの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0162】
第2種第1トラッキング領域F1に光分割素子46による第2波長の0次回折光が入射したときには、第2種第1トラッキング領域F1において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX3分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の第6受光領域206fに集光スポット9f3として集光される。第2種第1トラッキング領域F1において回折された集光スポット9f3の集光スポットの形状は、第2種第2トラッキング領域F2において回折された第6受光領域206f上の集光スポット9fの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0163】
第1種第3トラッキング領域E3に光分割素子46による第2波長の0次回折光が入射したときには、第1種第3トラッキング領域E3において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX2b分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の第5受光領域206eに集光スポット9e2として集光される。第1種第3トラッキング領域E3において回折された集光スポット9e2の集光スポットの形状は、第1種第2トラッキング領域E2において回折された第5受光領域206eの集光スポット9eの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0164】
第2種第3トラッキング領域F3に光分割素子46による第2波長の0次回折光が入射したときには、第2種第3トラッキング領域F3において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX2b分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の第6受光領域206fに集光スポット9f2として集光される。第2種第3トラッキング領域F3において回折された集光スポット9f2の集光スポットの形状は、第2種第1トラッキング領域F1において回折された第6受光領域206f上の集光スポット9fの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0165】
図10に示すように、回折領域219の第3フォーカス領域Cに第3波長の0次回折光が入射したときには、第3フォーカス領域Cにおいて回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9aとして集光される。これは、上述した第1波長の光が第1フォーカス領域Aにおいて回折した0次回折光が、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向の位置に集光スポット9aとして集光された位置と同一である。したがって、第1フォーカス領域Aにおける平行分割線27上の任意の点における第1波長の光の回折角度と、第2フォーカス領域Bにおける平行分割線27上の前記同一の任意の点における第2波長の光の回折角度と、第3フォーカス領域Cにおける平行分割線27上の前記同一の任意の点における第3波長の光の回折角度とは、同じ値に設定される。
【0166】
回折領域219の第2フォーカス領域Bに第3波長の0次回折光が入射したときには、第2フォーカス領域Bにおいて回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX3b分、ラジアル方向Xの+方向の第4受光領域206dに集光スポット9dとして集光される。距離PX3bは、距離PX1よりも長い。集光スポット9dは、第3直線L3上に形成される。受光素子206の受光面上において第3直線L3は、第4受光領域206dを通過する。
【0167】
回折領域19の第1種第3トラッキング領域E3に、光分割素子46による第3波長の0次回折光が入射したときには、第1種第3トラッキング領域E3において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置に集光スポット9eとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。第2種第3トラッキング領域F3に、光分割素子46による第3波長の0次回折光が入射したときには、第2種第3トラッキング領域F3において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX1分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の位置に集光スポット9fとして、点状もしくはそれに近い形状で集光される。回折溝のピッチと回折角との関係については、第1,第2フォーカス領域A,Bについて説明した際の式と、同様の式が成り立つので、重複を避けるために説明は省略する。
【0168】
第1種第3トラッキング領域E3に光分割素子46による第3波長の−1次回折光が入射したときには、第1種第3トラッキング領域E3において回折した−1次回折光は、第1種第1トラッキング領域E1において0次回折した集光スポット9eから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY3離れた、第7受光領域206g内の位置に集光される。第1種第3トラッキング領域E3に光分割素子46による第3波長の+1次回折光が入射したときには、第1種第3トラッキング領域E3において回折した+1次回折光は、第1種第3トラッキング領域E3において0次回折した集光スポット9eから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY3離れた、第9受光領域206i内の位置に、点状もしくはそれに近い形状で集光される。距離SY3は、第2波長に対して第3波長の方が小さく、光分割素子46による±1次回折光の回折角が小さくなるため、距離SY2よりも小さくする。
【0169】
第2種第3トラッキング領域F3に光分割素子46による第3波長の−1次回折光が入射したときには、第2種第3トラッキング領域F3において回折した−1次回折光は、第2種第3トラッキング領域F3において0次回折した集光スポット9fから、タンジェンシャル方向Yの−方向に距離SY3離れた、第8受光領域206h内の位置に集光される。第2種第3トラッキング領域F3に光分割素子46による第3波長の+1次回折光が入射したときには、第2種第3トラッキング領域F3において回折した+1次回折光は、第2種第3トラッキング領域F3において0次回折した集光スポット9fから、タンジェンシャル方向Yの+方向に距離SY3離れた、第10受光領域206j内の位置に、点状もしくはそれに近い形状で集光される。
【0170】
第1種第2トラッキング領域E2に光分割素子46による第3波長の0次回折光が入射したときには、第1種第2トラッキング領域E2において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX3b分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置の第5受光領域206eに集光スポット9e3して集光される。第1種第2トラッキング領域E2において回折された集光スポット9e3の集光スポットの形状は、第1種第3トラッキング領域E3において回折された第5受光領域206eの集光スポット9eの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0171】
第2種第2トラッキング領域F2に光分割素子46による第3波長の0次回折光が入射したときには、第2種第2トラッキング領域F2において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX3b分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの+方向の第6受光領域206fに集光スポット9f3として集光される。第2種第2トラッキング領域F2において回折された集光スポット9f3の集光スポットの形状は、第2種第3トラッキング領域F3において回折された第6受光領域206f上の集光スポット9fの集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0172】
第1種第1トラッキング領域E1に光分割素子46による第2波長の0次回折光が入射したときには、第1種第1トラッキング領域E1において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX4分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置に集光スポット9e4として集光される。距離PX4は、距離PX3bよりも長い。第1種第1トラッキング領域E1において回折された集光スポット9e4の集光スポットの形状は、第1種第2トラッキング領域E2において回折された第5受光領域206eの集光スポット9e3の集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0173】
第2種第1トラッキング領域F1に光分割素子46による第3波長の0次回折光が入射したときには、第2種第1トラッキング領域F1において回折した0次回折光は、光源12の第1発光点32からの出射光の光軸34よりも距離PX4分、ラジアル方向Xの+方向で、かつ距離PY分、タンジェンシャル方向Yの−方向の位置に集光スポット9f4として集光される。第2種第1トラッキング領域F1において回折された集光スポット9f4の集光スポットの形状は、第2種第2トラッキング領域F2において回折された第6受光領域206f上の集光スポット9f3の集光スポットの形状よりも、若干大きくなる。
【0174】
受光素子206から検出される電気信号から得られるフォーカスエラー信号FES、トラッキングエラー信号TES、および再生信号RFは、第1実施形態と同様に、フォーカス回折領域221およびトラッキング回折領域236内に、第1波長、第2波長および第3波長の3つの波長の波長ごとに細分領域を設けたことによって、波長ごとに検出することができる。
【0175】
第2実施形態では、回折領域219上に入射する各波長の光がそれぞれの光軸の中心に相当する位置で、トラッキング規定分割線401〜403が波長ごとに分かれているので、ラジアル方向Xで見ると、各波長の光のスポット径内でほぼ中心に相当する位置で分割される。したがって、電気信号Seと電気信号Sfとの信号バランス、および電気信号「Sg+Sh」と電気信号「Si+Sj」との信号バランスがよいので、第1実施形態のトラッキングサーボ制御と異なる方式であるDPP法を使用することができる。すなわち、TESは、式(13)で算出することができる。ここで、kは定数である。
TES=(Se−Sf)−k{(Sg+Sh)―(Si+Sj)} …(13)
【0176】
したがって、光ピックアップ装置210は、安定してトラックサーボ制御を行うことができ、光学記録媒体11の所望のトラックに光を集光することができる。
【0177】
第1実施形態および第2実施形態では、回折領域19または回折領域219による+1次回折光を利用してサーボ信号を検出するが、これに限定されることはない。他の実施形態では、−1次回折光側にも、同様の第1〜第12受光領域6a〜6lを配置し、±1次回折光の両方を使って、ダブルナイフエッジ法を使ったフォーカスエラー信号FES検出することもできる。
【0178】
またこの他の実施形態の構成によって、トラッキングサーボのサーボ信号を検出することも可能である。すなわち、第1波長のトラッキングサーボ方式と第2波長のトラッキングサーボ方式とが異なる場合、たとえば第2波長が3ビーム法で、第1波長がその他のトラッキングサーボ方式である場合、第2波長については、本発明の目的である「3ビーム法によるトラッキングエラー信号のアンバランスを防ぐこと」を実現するために、第1実施形態または第2実施形態によって、そして、第1波長については、この他の実施形態の構成によって、トラッキングサーボのサーボ信号を検出してもよい。
【0179】
光源12、受光素子6および回折素子16を一体化した集積ユニット、または光源12,51、受光素子206および回折素子216を一体化した集積ユニット、いわゆるホログラムレーザを使用することで、これらを一体化しない場合に比べて、光ピックアップ装置10,210を小形化することができる。この場合においても、他の効果については、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0180】
また第1実施形態および第2実施形態では、フォーカス領域22,222およびトラッキング領域38,238におけるフォーカス細分領域およびトラッキング細分領域は、平行な複数の平行分割線27によって分割されるものとしたが、光源12、または光源12,51が出射可能な光の種類に対応するそれぞれのフォーカス領域22,222およびトラッキング領域38,238が、いずれの種類のフォーカス領域22,222およびトラッキング領域38,238においても、フォーカス領域22,222およびトラッキング領域38,238の全体にわたって、分散して配置されていれば足りる。たとえば中心点P0を通り放射状に形成される分割線によって分割されていてもよい。
【0181】
また平行な複数の平行分割線27によって分割されるフォーカス細分領域およびトラッキング細分領域は、各種類のフォーカス領域22,222およびトラッキング領域38,238において複数形成されればよい。最低個数は「2」とし、各種類において個数が多ければ多いほど、均一に分散させて配置することが可能となる。
【0182】
また第1実施形態および第2実施形態では、フォーカスサーボ制御にはナイフエッジ法を用い、トラッキングサーボ制御にはDPP法を用いるようにして説明したが、それに限定されることなく、回折素子16,216を使った光ピックアップ装置であれば、フォーカスサーボ制御には非点収差法やビームサイズ法を用い、トラッキングサーボ制御にはDPD法や3ビーム法等を用い、回折素子16,216に対応する受光領域を備えた受光素子を用意することで同様に適用することができる。
【0183】
また第1実施形態および第2実施形態では、ナイフエッジ法を用いるために、ナイフエッジとなるナイフエッジ部26を光軸34の中央を通る直線で構成したが、それに限定されることなく、光軸34の中央から外れたポイントを通る直線や、さらに曲線であってもナイフエッジとして機能する構造であれば同様に対応可能である。
【0184】
また第1実施形態および第2実施形態では、光分割素子46は、2つの波長とも、あるいは3つの波長とも、3ビームを生成したが、3ビームの生成に限定することなく、波長選択性を備えて、任意の波長のみ3ビームを生成し、他方の波長の光は透過していてもよい。すなわち、特定の波長のみ3ビームを生成し、他波長では透過して1ビームとして使用してもよい。
【0185】
また第1実施形態および第2実施形態では、光源12,51となる半導体レーザと、受光素子6,206とを近接して配置して構成したが、それに限定されることなく、半導体レーザから出射される往路光に対して、光学記録媒体11で反射された復路光の光路途中でビームスプリッタ等の分岐光学素子で、光を分岐させて復路光軸を折り曲げ、集光レンズと受光素子を設けた光ピックアップ装置でも、その復路光路内に、第1実施形態の回折素子16または第2実施形態の回折素子216を設けることで、同様に適用可能である。
【0186】
このように、光源12または光源12,51は、複数のトラックが形成される光学記録媒体11,211に照射するための光であって、波長の異なる複数種類の光を出射可能である。受光素子6,216は、受光した光を、光源12または光源12,51から出射された光の焦点を制御するための電気信号に変換するフォーカス受光領域17と、受光した光を、光源12または光源12,51から出射された光を光学記録媒体11,211の目的のトラックへ照射する制御を行うための電気信号に変換するトラッキング受光領域とが形成される。回折素子16,216は、光源12または光源12,51から出射され、光学記録媒体11,211で反射された反射光18をフォーカス受光領域17の方向に回折するフォーカス回折領域21,221と、反射光18をトラッキング受光領域の方向に回折するトラッキング回折領域36,236とに分割された回折領域19,219が形成される。
【0187】
また、フォーカス回折領域21,221およびトラッキング回折領域36,236は、複数の平行な直線である平行分割線27によって細分領域に分割される。フォーカス回折領域21,221に含まれる細分領域は、光源12または光源12,51が出射可能な光の種類に対応するフォーカス細分領域からなり、異なる光の種類に対応するフォーカス細分領域は、平行分割線27に直交する方向に交互に隣接して配置される。トラッキング回折領域36,236に含まれる細分領域は、光源12または光源12,51が出射可能な光の種類に対応するトラッキング細分領域からなり、異なる光の種類に対応するトラッキング細分領域は、平行分割線27に直交する方向に交互に隣接して配置される。フォーカス回折領域21,221は、光源12または光源12,51が出射可能な光の種類に対応するフォーカス領域22,222を含み、トラッキング回折領域36,236は、光源12または光源12,51が出射可能な光の種類に対応するトラッキング領域38,238を含む。
【0188】
また、各フォーカス領域22,222は、各フォーカス領域22,222に対応する光の種類と同一の光の種類に対応するフォーカス細分領域からなり、反射光18を同一のフォーカス受光領域17に回折し、各トラッキング領域38,238は、各トラッキング領域38,238に対応する光の種類と同一の光の種類に対応するトラッキング細分領域からなり、反射光18を同一のトラッキング受光領域に回折する。そして、各フォーカス細分領域は、フォーカス回折領域21,221とトラッキング回折領域36,236との境界で、各フォーカス細分領域に対応する光の種類と同一の光の種類に対応するトラッキング細分領域と隣接するように配置される。
【0189】
これによって、光ピックアップ装置10,210は、フォーカス受光領域17およびトラッキング受光領域を、波長の異なる複数種類の光の使用において共用することができる。また、光ピックアップ装置10,210は、フォーカス領域22,222とトラッキング領域38,238に入射する3ビーム法によるサブビームの強度の不連続性を低減し、トラッキングサーボを安定して行うことができる。したがって、複数の波長に対応した光ピックアップ装置10,210は、1つの波長では3ビーム法におけるトラッキングエラー信号のアンバランスを防ぎ、かつ、他の波長ではDPD法またはDPP法におけるトラッキングエラー信号によってサーボ制御を行い、各波長とも、安定したサーボ信号を得ることができる。
【0190】
また本発明によれば、回折領域19,219は、光学記録媒体11,211の記録面35に平行で光学記録媒体11,211のトラックの接線方向に直交する直線であるフォーカス規定分割線26によってフォーカス回折領域21,221とトラッキング回折領域36,236とに分割される。そして、平行分割線27は、フォーカス規定分割線26に対して予め定める角度で傾斜する。したがって、光ピックアップ装置10,210は、光学記録媒体11,211に付着した異物や汚れによる再生信号へのノイズを少なくすることができる。
【0191】
また本発明によれば、予め定める角度は、30度以上150度以下の角度である。したがって、光ピックアップ装置10,210は、光学記録媒体11,211の回転時に、光学記録媒体11,211上の凹凸となるピットによる光信号に入るノイズが少なくなり、再生信号を安定して再生することができる。
【0192】
また本発明によれば、前記各細分領域には複数の回折溝が平行かつ周期的に形成される。そして、回折溝に直交する仮想平面で1つの細分領域を切断したとき、仮想平面に含まれる回折溝の数は、5以上である。これによって、光ピックアップ装置10,210は、各フォーカス細分領域および各トラッキング細分領域における回折溝が、回折溝に垂直な方向において並ぶ数を、効率よく回折を行うために最低限必要な数以上とすることができる。したがって、光ピックアップ装置10,210は、各フォーカス細分領域および各トラッキング細分領域における回折を、効率よく行うことができる。
【0193】
また本発明によれば、前記トラッキング受光領域は、第1トラッキング受光領域、たとえば第5受光領域6e,206eと、第1トラッキング受光領域とは異なる位置に配置される第2トラッキング受光領域、たとえば第6受光領域6f,206fとを含む。前記各トラッキング細分領域は、反射光18の一部を第1トラッキング受光領域、たとえば第5受光領域6e,206eの方向に回折する第1回折領域、たとえば第1トラッキング領域E、および反射光18の一部を第2トラッキング受光領域の方向に回折する第2回折領域、たとえば第2トラッキング領域Fのうちの少なくとも1つを含む。同一のトラッキング細分領域にある第1回折領域と第2回折領域とは、光学記録媒体11,211のトラックの接線方向と平行な直線である少なくとも1つのトラッキング規定分割線40によって分割される。そして、各トラッキング規定分割線40の位置は、トラッキング細分領域に対応する光の種類に応じて配置される。
【0194】
これによって、光ピックアップ装置10,210は、複数の光源12または複数の光源12,51の位置に差異があっても、第1トラッキング受光領域、たとえば第5受光領域6e,206eおよび第2トラッキング受光領域、たとえば第6受光領域6f,206fに入射する光の光強度が、第1トラッキング受光領域、たとえば第5受光領域6e,206eおよび第2トラッキング受光領域、たとえば第6受光領域6f,206fのうちのいずれか1つに偏ることを防止することができる。したがって、光ピックアップ装置10,210は、トラッキングサーボを高い精度で行うことができる。
【0195】
また本発明によれば、前記トラッキング受光領域は、各トラッキング領域38,238によって回折された光を、光源12または光源12,51が出射可能な光の種類に応じて選択的に受光する複数の受光領域、たとえば第5〜第12受光領域6e〜6lを含む。これによって、光ピックアップ装置10,210は、トラッキング受光領域を小形化することができる。したがって、光ピックアップ装置10,210は、トラッキングサーボにおける応答速度を速くすることができる。
【符号の説明】
【0196】
6,122,206 受光素子
10,120,210 光ピックアップ装置
11,211 光学記録媒体
12,51 光源
16,121,216 回折格子
17,217 フォーカス受光領域
18 反射光
19,219 回折領域
21,221 フォーカス回折領域
22,222 フォーカス領域
26 ナイフエッジ部
27 平行分割線
28 コリメートレンズ
29 対物レンズ
32 第1発光点
33 第2発光点
34 光軸
35 記録面
36,236 トラッキング回折領域
38,238 トラッキング領域
40 トラッキング分割線
41 第1種トラッキング回折領域
42 第2種トラッキング回折領域
46,130 光分割素子
52 第3発光点
401 第1トラッキング規定分割線
402 第2トラッキング規定分割線
403 第3トラッキング規定分割線
X ラジアル方向
Y タンジェンシャル方向
Z 光軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトラックが形成される光学記録媒体に照射するための光であって、波長の異なる複数種類の光を出射可能な光源と、
受光した光を、光源から出射された光の焦点を制御するための電気信号に変換するフォーカス受光領域と、受光した光を、光源から出射された光を光学記録媒体の目的のトラックへ照射する制御を行うための電気信号に変換するトラッキング受光領域とが形成される受光素子と、
前記光源から出射され、光学記録媒体で反射された反射光をフォーカス受光領域の方向に回折するフォーカス回折領域と、前記反射光をトラッキング受光領域の方向に回折するトラッキング回折領域とに分割された回折領域が形成される回折素子とを含み、
フォーカス回折領域およびトラッキング回折領域は、複数の平行な直線である平行分割線によって細分領域に分割され、
フォーカス回折領域に含まれる細分領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するフォーカス細分領域からなり、異なる光の種類に対応するフォーカス細分領域は、平行分割線に直交する方向に交互に隣接して配置され、
トラッキング回折領域に含まれる細分領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するトラッキング細分領域からなり、異なる光の種類に対応するトラッキング細分領域は、平行分割線に直交する方向に交互に隣接して配置され、
フォーカス回折領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するフォーカス領域を含み、トラッキング回折領域は、光源が出射可能な光の種類に対応するトラッキング領域を含み、
各フォーカス領域は、各フォーカス領域に対応する光の種類と同一の光の種類に対応するフォーカス細分領域からなり、前記反射光を同一のフォーカス受光領域に回折し、各トラッキング領域は、各トラッキング領域に対応する光の種類と同一の光の種類に対応するトラッキング細分領域からなり、前記反射光を同一のトラッキング受光領域に回折し、
各フォーカス細分領域は、フォーカス回折領域とトラッキング回折領域との境界で、各フォーカス細分領域に対応する光の種類と同一の光の種類に対応するトラッキング細分領域と隣接するように配置されることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記回折領域は、光学記録媒体の記録面に平行で光学記録媒体のトラックの接線方向に直交する直線である第1分割線によって前記フォーカス回折領域と前記トラッキング回折領域とに分割され、
前記平行分割線は、第1分割線に対して予め定める角度で傾斜することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記予め定める角度は、30度以上150度以下の角度であることを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記各細分領域には複数の回折溝が平行かつ周期的に形成され、
回折溝に直交する仮想平面で1つの細分領域を切断したとき、仮想平面に含まれる回折溝の数は、5以上であることを特徴とする請求項2または3に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記トラッキング受光領域は、第1トラッキング受光領域と、第1トラッキング受光領域とは異なる位置に配置される第2トラッキング受光領域とを含み、
前記各トラッキング細分領域は、前記反射光の一部を第1トラッキング受光領域の方向に回折する第1回折領域、および前記反射光の一部を第2トラッキング受光領域の方向に回折する第2回折領域のうちの少なくとも1つを含み、

同一のトラッキング細分領域にある第1回折領域と第2回折領域とは、光学記録媒体のトラックの接線方向と平行な直線である少なくとも1つの第2分割線によって分割され、
各第2分割線の位置は、トラッキング細分領域に対応する光の種類に応じて配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記トラッキング受光領域は、各トラッキング領域によって回折された光を、光源が出射可能な光の種類に応じて選択的に受光する複数の受光領域を含むことを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−25832(P2013−25832A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157239(P2011−157239)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】