説明

光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置及びその照射方法

【課題】重畳照射によるラインビーム長手方向のスポットプロファイルの均一化の推進、戻り光遮断による光源のダメージの防止ないし抑制、制御信号用ビームの安定化によるラインビーム出力の向上等を図るための光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置及びその照射方法を提供する。
【解決手段】レーザ光2を入射させた光ファイバアレイ3の出射光からなる光源と、前記光源を整形して多重分割、重畳照射によるプロファイルの均一化と直線偏光化を実施して2次光源を生成するホモジナイズド光学系1Aと、前記2次光源による照射対象への照射、前記照射対象から光源への戻り光の遮断及び制御信号用ビームの抽出を行うフォーカシング光学系1Bを有することを特徴とする光ファイバアレイ3を用いたラインビーム照射装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を入射させたマルチモード光ファイバアレイの出射光を用いてラインビームを生成し、照射対象となるワークの改質又は除去を目的とする光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置及びその照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を入射させたマルチモード光ファイバアレイの出射光を用いてラインビームを生成し、照射対象物の改質又は除去を目的とする装置の光学系を設計するにあたり、ファイバ出射光が、高コヒーレンスであること、プロファイルの変動が大きいこと、ランダム偏光であること、といった特性を持つため、種々の問題が発生していた。
【0003】
すなわち、公知のホモジナイザでは、スポットプロファイルの均一化が困難
であった。さらに、ワークから光源への戻り光の遮断が困難で、ビームスプリッタの分光精度も不十分であった。
【0004】
例えば、ロッドレンズの中に光を入れて内部で全反射させ、出口で照射分布
を均一にさせるロッドインテグレータをホモジナイザとして適用すると、十分なプロファイル均一化の効果を得るためには、長大なロッドが必要となり、光源が高コヒーレンスの場合には、斑点模様のスペックルが発生し易い。
また、光線多重分割、重畳照射によるホモジナイズでは、光線分割にフライアイレンズを用いるのが一般的であるが、このフライアイレンズを適用すると、スポット形状が矩形になるため、ラインビームに再整形しても、短手幅の縮小に限界がある。
さらに、微細な凹凸形状のパターンから、光の行路差による等位相面を形成する回折現象を利用した回折型ホモジナイザ(DOE)では、光源特性に強く依存する構造であるため、安定したスポットプロファイルを得るのが難しい。
【0005】
以上のようなホモジナイザに内在する課題を克服しようとする技術が提案
されている(例えば、特許文献1)。
この技術は、光配向法に適用可能なアルゴンクリプトンイオンレーザやエキシマレーザなど各種レーザのいずれかに対し、生産性に必要な出力パワーとビーム偏光性の制御機能を有し、さらに、有効なホモジナイザ光学系でビームの強度分布を均一化し、大面積のLCDパネルの全面にわたって均一な光配向膜を作ろうとするレーザ照射光学システムである。その達成手段として、マルチモードの転送ファイバの出力端から出射されるランダム偏光のレーザビームを、
まずコリメートする。ランダム偏光平行ビームに対し、各々に用いる偏光板で一つのビームをS偏光とP偏光の直線偏光ビームに分離する。その後、ビームの試料面に照射する際の特定の偏光方向に揃うよう、各々の偏光方向を回転させ合わせる二分の一波長板を用いて直線偏光に調整する。そして各ビームが形成するラインビームを試料面で重ね合わせることにより、照射対象に均一光強度分布を持つラインビームを照射する。
【0006】
本発明も、前記技術同様、光ファイバアレイの出射光を光源とし、レーザ光の直線偏光化と重畳照射によるホモジナイズを行うことでは共通する。
しかしながら、前記技術では、各ファイバが形成するラインビームを単純に重ね合わせているだけである為、均一なトップフラットを形成するのが難しく、また、スポットプロファイルが光源特性のバラツキの影響を受けやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2008−242147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、均一なトップフラットで出力の安定したラインビームを照射対象に合焦点し、例えば、シリコン膜の物理的特性を改質したり、結晶に含まれている欠陥を再結晶化により取り除いたりすることを目的とした、光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置及びその照射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置であって、レーザ光を入射させた光ファイバアレイの出射光からなる光源と、前記光源を整形して多重分割、重畳照射によるプロファイルの均一化と直線偏光化を実施して2次光源を生成するホモジナイズド光学系と、前記2次光源による照射対象への照射、前記照射対象からの光源への戻り光の遮断及び制御信号用ビームの抽出を行うフォーカシング光学系を有することを特徴とする。
【0010】
この構成により、各光学系を目的機能に特化した設計とすることが可能で、系全体をコンパクトに実装することができる。また、この装置によって、低コスト、高精度及び安定稼働が確保できる。
【0011】
また、本発明は、前記ラインビーム照射装置において、前記ホモジナイズド光学系は、照射対象方向に、アレイピッチ2nのシリンドリカルレンズアレイとアレイピッチnのポラライジングコンバータを対設して配置ことを特徴とする。
【0012】
この構成により、シリンドリカルレンズアレイとポラライジングコンバータが補完的な機能を発揮し、光源の多重分割と直線偏光化を同時に達成できる。
【0013】
また、本発明は、前記ラインビーム照射装置において、前記ホモジナイズド光学系は、コリメートレンズ、シリンドリカルレンズアレイ、ポラライジングコンバータ及びコンデンサレンズを、照射対象方向に順次配置して構成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記ラインビーム照射装置において、前記フォーカシング光学系は、照射対象方向に直線偏光用ビームスプリッタとλ/4板を対設して配置することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記ラインビーム照射装置において、前記フォーカシング光学系は、オートフォーカス制御系と出力測定系を付設することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記ラインビーム照射装置において、前記フォーカシング光学系は、コリメートレンズ、ダイクロイックミラー、直線偏光用ビームスプリッタ及び対物レンズを、照射対象方向に順次配置した構成するとともに、オートフォーカス制御系と出力測定系を付設することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記ラインビーム照射装置において、レーザ光を入射させた光ファイバアレイの出射光からなる光源と、前記光源を整形して多重分割、重畳照射によるプロファイルの均一化と直線偏光化を実施して2次光源を生成するコリメートレンズ、シリンドリカルレンズアレイ、ポラライジングコンバータ及びコンデンサレンズとからなるホモジナイズド光学系と、前記2次光源による照射対象への照射、前記照射対象から光源への戻り光の遮断及び制御信号用ビームの抽出を行うコリメートレンズ、ダイクロイックミラー、直線偏光用ビームスプリッタ、λ/4板及び対物レンズを照射対象方向に順次配置した構成するフォーカシング光学系と、前記フォーカシング光学系に付設するオートフォーカス制御系と出力測定系とで構成することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、光ファイバアレイを用いたラインビーム照射方法であって、レーザ光を入射させた光ファイバアレイの出力光を光源とし、ホモジナイズド光学系とフォーカシング光学系とからなる光学系のうち、ホモジナイズド光学系において、上記光源を整形して多重分割と重畳照射によるプロファイルの均一化と直線偏光化を実施して2次光源を生成し、フォーカシング光学系において、前記2次光源の照射対象への照射、前記照射対象から光源への戻り光の遮断及び制御信号用ビームの抽出を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記ラインビーム照射方法において、照射対象方向に、アレイピッチ2nのシリンドリカルレンズアレイとアレイピッチnのポラライジングコンバータを対設して配置ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記ラインビーム照射方法において、前記ホモジナイズド光学系は、コリメートレンズ、シリンドリカルレンズアレイ、ポラライジングコンバータ及びコンデンサレンズを、照射対象方向に順次配置して構成することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、前記ラインビーム照射方法において、前記フォーカシング光学系は、照射対象方向に、直線偏光用ビームスプリッタとλ/4板を対設して配置することを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記ラインビーム照射方法において、前記フォーカシング光学系は、オートフォーカス制御系と出力測定系を付設することを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記ラインビーム照射方法において、前記フォーカシング光学系は、コリメートレンズ、ダイクロイックミラー、直線偏光用ビームスプリッタ、λ/4板及び対物レンズを、照射対象方向に順次配置した構成するとともに、オートフォーカス制御系と出力測定系を付設することを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記ラインビーム照射方法において、レーザ光を入射させた光ファイバアレイの出力光を光源とし、ホモジナイズド光学系とフォーカシング光学系とからなる光学系のうち、コリメートレンズ、シリンドリカルレン
ズアレイ、ポラライジングコンバータ及びコンデンサレンズを、照射対象方向に順次配置して構成するホモジナイズド光学系において、上記光源を整形して多重分割と重畳照射によるプロファイルの均一化と直線偏光化を実施して2
次光源を生成し、コリメートレンズ、ダイクロイックミラー、直線偏光用ビームスプリッタ、λ/4板及び対物レンズを、照射対象方向に順次配置した構成するフォーカシング光学系及と前記フォーカシング光学系に付設するオートフォーカス制御系と出力測定系において、前記2次光源の照射対象への照射、前記照射対象から光源への戻り光の遮断及び制御信号用ビームの抽出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
前述の特徴によって、本発明は、スポットプロファイルの均一化が確保でき、照射対象ワークの照射部位における特性のバラツキが低減できる。また、照射ワークから光源への戻り光の遮断ができ、光源ダメージの防止を図ることができる。さらに、制御信号用ビームが安定である為、ラインビームの出力や焦点合わせ精度の向上を一段と図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のラインビーム照射装置の構成図である。
【図2】本発明に用いるポラライジングコンバータの概念図である。
【図3】無偏光ビームスプリッタの分光特性を説明するための図である。
【図4】無偏光ビームスプリッタの分光特性例を説明するための図である。
【図5】プロファイルのイメージ図であって(a)は、図1のA地点のプロファイルである。(b)は、図1のB地点のプロファイルである。(c)は、図1のC地点のプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置の構成図である。ラインビーム照射装置1は、光ファイバアレイ3、コリメートレンズ4、シリンドリカルレンズアレイ5、ポラライジングコンバータ6、シリンドリカルレンズアレイ7及びコンデンサレンズ8のレンズ等で配置するホモジナイズド光学系1Aと、コリメートレンズ9、ダイクロイックミラー10、直線偏光用ビームスプリッタ11、λ/4板12及び対物レンズ13で配置するフォーカシング光学系1Bとで構成する。
ホモジナイズド光学系1A(矢印Aと矢印Bの間)は、レーザ光2を入射させた光ファイバアレイ3の出力光を光源とし、コリメートレンズ4、シリンド
リカルレンズアレイ5、ポラライジングコンバータ6、シリンドリカルレンズアレイ7及びコンデンサレンズ8を、照射対象方向に順次配置して構成する。
ホモジナイズド光学系1Aより照射対象14側に位置するフォーカシング光学系1B(矢印Bと矢印Cの間)は、コリメートレンズ9、ダイクロイックミラー10、直線偏光用ビームスプリッタ11、λ/4板12及び対物レンズ13と、フォーカシング光学系1Bに付属するオートフォーカス制御系1Cと出力測定系1Dとで構成する。シリンドリカルレンズアレイ7を設けたのは、B地点(矢印Bの部位)に分割光をそろえて結像させるための補助的ポジションにするためである。また、オートフォーカス用別光源1Eをダイクロイックミラー10に入射させる。
【0029】
レーザ光2を光ファイバアレイ3に入射し、その出射光を光源とする。この光源は、コリメートレンズ4で平行光ビームとなる。この状態での平行光ビームは、無偏光である。平行光ビームは、シリンドリカルレンズアレイ5に入射する。
【0030】
ここで、光源分割、重畳照射によるホモジナイズに関しては、光源分割にフライアイレンズのようなレンズアイを用いるのが一般的である。しかし、本発明ではプロフェイルの均一化を行いたいのは、ラインビームの長手方向の一方向のみであるため、シリンドリカルレンズアレイ5を採用した。ただし、ホモジナイズ効果を高めるためには、光源の分割数をできる限り増やす必要がある。
【0031】
シリンドリカルレンズアレイ5では、次のポラライジングコンバータ6との相補により、平行光ビームの多重分割が行われる。そこでポラライジングコンバータ6を図2を用いて説明する。
【0032】
図2は、ポラライジングコンバータ6の概要図であって、レンズ6aとレンズ6bの組み合わせとからなる偏光ビームスプリッタ(PBS)とλ/2板とで構成する。具体的には、端部の三角形状のレンズ6a1に対し菱形のレンズ6b1を横方向に順次結合させ、傾斜面6a11を接合面として共通面とする。レンズ6b1の隣にはレンズ6b1と同一のレンズ6b2を接合する。以下レンズ6b3を同様に接合し、その端部に三角形状のレンズ6a2を接合してなる構造に、1/2板6cがレンズ6b1、レンズ6b3の出力側に所定のピッチ間隔で装備されている。菱形のレンズの数は、任意に設定できる。
無偏光の平行光ビームL1(L1a)が、シリンドリカルレンズアレイ5から偏光ビームスプリッタ(PBS)とλ/2板のアレイ構造であるポラライジン
グコンバータ6のPBS6b1に入射すると、無偏光(P+S)L1の平行光ビームのうち、たとえば、P偏光L2a(またはS偏光)のみがそのままPBS6a透過し、S偏光L1cはP偏光L2aと直交方向に反射する。S偏光L1cは、となりのPBSのプリズム斜面6b11で反射してλ/2板6c1に向かう。S偏光L2bは、P偏光L2aと同一方向の直線偏光となる。このような透過光、反射光の関係は、レンズ6b3に入射する無偏光L1b(L2c、L1d、L2d)とλ/2板6c2の関係においても同様である。
ただし、無偏光は、この図示例ではレンズ6b2、6a2には入射されない。
【0033】
ところで、ポラライジングコンバータ6では、無偏光(P+S)L1を入射できるのは、入射面の半分の領域だけである。このため、用途によっては、入射不可能領域に反射膜を装着させて、戻り光を再利用する等の技術もあるが、本発明では、シリンドリカルレンズアレイ5からの入射光を有効に利用することにした。
【0034】
すなわち、シリンドリカルレンズアレイ5からの出射光は分割および集光されている為、ポラライジングコンバータ6との位置関係を適切に調整することにより、前述の入射不可能領域への入射を回避することが可能である。
またシリンドリカルレンズアレイ5ではビームの分割数を増やすほど重畳照射後のホモジナイズ効果が高まるが、ポラライジングコンバータ6では、入射光の数に対し、構造的に出射光の数が倍になる特性がある。
したがって、シリンドリカルレンズアレイ5から見ると、出射光の数が結果として倍数になると同時に直線偏光化されたことになり、ポラライジングコンバータ6から見ると、入射不可能領域に対策処理を行うことなく、直線偏光化を達成したことになる。
【0035】
このようなシリンドリカルレンズアレイ5とポラライジングコンバータ6の相補作用は、重畳照射によるラインビーム長手方向のスポットプロファイルの均一化(トップフラット化)と直線偏光化に効率よく達成することができ、目的とする2次光源が実質的に生成される。
ここで2次光源とは、ラインビームを指すが、上述のとおり、本発明では、光ファイバアレイ3の各ファイバからの出射光がコリメートレンズ4によって各光源が混合した平行光として生成され、シリンドリカルレンズアレイ5により多重分割され、ポラライジングコンバータ6によって更に倍数に多重分割される。この結果、重畳照射による光源特性のバラツキが高度に平準化される。
従って、ラインビームは長手方向に、きわめてトップフラットで安定化したプロファイルを実現することができる。
【0036】
かかるシリンドリカルレンズアレイ5とポラライジングコンバータ6の相補作用を確実に行うために、本発明は、ポラライジングコンバータ6のアレイピッチnに対し、シリンドリカルアレイ5のアレイピッチを2nになるようデザインされている。
したがって、入射不可能領域に反射膜を装着させたり、戻り光対策を考慮する必要もなく、必要とするレーザ光2を有効に活用することができる。
【0037】
さて、ポラライジングコンバータ6から出射されるビームは、第2シリンドリカルレンズアレイ7を経て、コンデンサレンズ8で集光される。
【0038】
次に、ホモジナイズド光学系1Aに続くフォーカシング光学系1Bについて説明する。
コンデンサレンズ8で集合されたレーザ光2は、第2コリメートレンズ9、ダイクロイックミラー10、直線偏光用ビームスプリッタ11、λ/4板12及び対物レンズ13を透過して、照射対象ワーク14を照射する。また直線偏光用ビームスプリッタ11に入射した光の一部は出力測定系1Dに入射する。照射対象ワーク14に照射される光は、本発明の構造では、円偏光となる。したがって、照射対象ワーク14での偏光方向制御は、本発明では考慮外となる。
【0039】
照射対象ワーク14を照射して発生する反射光(戻り光)は、再度対物レンズ13、λ/4板12を透過して直線偏光用ビームスプリッタ11に戻る。この反射光(戻り光)は、オートフォーカス制御系1Cに入射する。
【0040】
続いて、フォーカシング光学系1Bに付設するオートフォーカス制御系1Cと出力測定系1Dについて説明する。一般に光ファイバからの出射光は、高い開口数(NA)、低パワー密度であるため、光源としての品位が低い。そのため、必要とするパワー密度を得るために縮小光学系を通すと、高NAなるがゆえに焦点深度が浅くなる。そのため、ワーク面にレーザスポットの焦点が合うよう対物レンズ13を移動させ、レーザスポットのパワー密度が変化しないようにするオートフォーカス制御系1Cは有用である。また、好感度なワークに対応するため、出力のフィードバック制御に必要な出力測定系1Dも有用である。
【0041】
ところで、出力測定系1Dを確実に機能させるためには、ビームスプリッタの分光精度が高いこと、すなわち光源特性が変化しても分光特性に変動が生じないことが必須である。図3と図4は、無偏光用ビームスプリッタ(NPBS)の分光特性を説明するための図である。
【0042】
図3において、無偏光用ビームスプリッタ(NPBS)15は、三角形のプリズムを組み合わせたもので、縦横直交辺15a、15b、15c、15d、に対し、多層膜を付着させた傾斜面15eを共通面とするプリズムで構成する。
NPBS15のプリズム傾斜面に構成した多層膜15eにランダム偏光である入射光16(L3)は、透過光L4と傾斜面15eよって水平方向の反射光L5に分離される。この場合、透過光17と反射光18はP偏光とS偏光が混在する。無偏光用ビームスプリッタ(NPBS)15では、このP偏光とS偏光の分光比を完全に一致させることは技術的に困難である。
【0043】
図4は、このような技術的な課題を説明するための例示であって、無偏光用ビームスプリッタ(NPBS)15を用いた場合のNPBSの分光特性例、入射光の偏光比率例及びNPBS出力の相互関係を図示したものである。
その結果、NPBS15の出力結果は、同じ入射光量であっても反射光量が10%以上も変動する。
本発明では、ビームスプリッタに入射する2次光源はすでに直線偏光に変換されているので、直線偏光用ビームスプリッタ11を使用することができ、実用上十分な分光精度が確保されている。
【0044】
さて、本発明は、ランダム偏光のファイバ出射光を平行光とした後、多重分割、重畳照射によってプロファイルの均一化と直線偏光化された2次光源を生成し、本2次光源を用いて従来技術では奏し得ない光学系を再構築することにある。
そこで、図5を用いてステップごとに2次光源の生成過程のプロファイルを説明する。図5は、プロファイルのイメージ図であって、(a)は、図1のA地点(A矢印)のプロファイル、(b)は、図1のB地点(B矢印)におけるプロファイル、そして(c)は、図1のC地点(C矢印)のプロファイルである。各図とも、縦軸はビーム強度を、横軸はスポット位置をあらわす。
【0045】
図5(a)の段階では、2次光源の生成前の段階であって、出射光(長手方向にAL1、AL2、AL3からなるAL、短手方向はASとする)はラインビーム生成前であり、各ファイバの出射光は、長手方向、短手方向ともにガウ
シアン分布に近似の状態のプロファイルになっている。
例えば、AL1は、AL1a、AL1b、AL1cで囲繞される三角錐の模式図であるが、実際にはガウシアンモードに近似の放射強度分布を形成する。AL2(AL2a、AL2b、AL2cで囲繞される三角錐の模式図)、AL3(AL3a、AL3b、AL3cで囲繞される三角錐の模式図)及びAS(ASa、ASb、AScで囲繞される三角錐の模式図)についても同様である。
【0046】
図5(b)においては、ホモジナイズド光学系1Aにおけるレーザ光の多重分割、重畳照射によって2次光源が生成され、かつプロファイルの均一化を図っている。すなわち、2次光源の長手方向は、トップフラットのBLa、BLb、BLcおよびBLdで形成される略等脚台形BLのプロファイルである。
BLcがトップフラットをなしている。
短手方向はASと同様のガウシアンモードに近似のプロファイルBS(BSa、BSb、BScに囲繞された領域)である。本発明では、ラインビームの長手方向にのみプロファイルの均一化を行うことにしているので、機能的には十分である。
【0047】
図5(c)においては、フォーカシング光学系1Bの縮小光学制御によってパワー密度を高めたプロファイルとする。すなわち、CLa、CLb、CLcおよびCLdで形成される略等脚台形CLが2次光源の長手方向は、図5(b)の長手方向より縮小されたプロファイルとなる。また、短手方向はガウシアンモードに近似ながらBSよりシャープなプロファイルCS(CSa、CSb、CScに囲繞された領域)となっている。
【0048】
本発明においては、不測の入射方向ずれや入射位置ずれが均一化面におけるプロファイルの均一化の悪化を招かぬよう光軸ずれ防止に十分配慮している(特にホモジナイズド光学系1A)。
【0049】
ところで、特許文献1の技術に関し、各ファイバからの出射光(これはガウス分布に近いプロファイルである)を直線偏光化されたラインビームに整形する過程において、本質的にホモジナイズ部と偏光制御部は独立的であって、相互関係はない。一方本発明では、シリンドリカルレンズアレイ5とポラライジングコンバータ6間に補完的な相互関係を持たせることによって、ホモジナイズ効果の飛躍的向上と直線偏光化を図り、2次光源を生成すること、その2次光源をもって光学系を再構築することをもって前述の諸課題を解決しつつ、系全体をコンパクトに実装することが可能となる。
【0050】
本発明の2次光源を生成する構成は、ラインビーム長手/短手幅の可変機能やスポットプロファイルの更なるトップフラット化、マーキング用途で異なるスポット形状への可変機能を要求される場合等に有効に対応し得るものである。
【符号の説明】
【0051】
1:ラインビーム照射装置、
1A:ホモジナイズド光学系、1B:フォーカシング光学系、
5:シリンドリカルレンズアレイ、6:ポラライジングコンバータ 、
11:ビームスプリッタ、12:λ/4板、



























【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を入射させた光ファイバアレイの出射光からなる光源と、前記光源を整形して多重分割、重畳照射によるプロファイルの均一化と直線偏光化を実施して2次光源を生成するホモジナイズド光学系と、前記2次光源による照射対象への照射、前記照射対象からの光源への戻り光の遮断及び制御信号用ビームの抽出を行うフォーカシング光学系を有することを特徴とする光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置。
【請求項2】
前記ホモジナイズド光学系は、照射対象方向に、アレイピッチ2nのシリンドリカルレンズアレイとアレイピッチnのポラライジングコンバータを対設して配置ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置。
【請求項3】
前記ホモジナイズド光学系は、コリメートレンズ、シリンドリカルレンズアレイ、ポラライジングコンバータ及びコンデンサレンズを、照射対象方向に順次配置して構成することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置。
【請求項4】
前記フォーカシング光学系は、照射対象方向に直線偏光用ビームスプリッタとλ/4板を対設して配置することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置。
【請求項5】
前記フォーカシング光学系は、オートフォーカス制御系と出力測定系を付設することを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置。
【請求項6】
前記フォーカシング光学系は、コリメートレンズ、ダイクロイックミラー、直線偏光用ビームスプリッタ、λ/4板及び対物レンズを、照射対象方向に順次配置した構成するとともに、オートフォーカス制御系と出力測定系を付設することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置。
【請求項7】
レーザ光を入射させた光ファイバアレイの出射光からなる光源と、前記光源を整形して多重分割、重畳照射によるプロファイルの均一化と直線偏光化を実施して2次光源を生成するコリメートレンズ、シリンドリカ
ルレンズアレイ、ポラライジングコンバータ及びコンデンサレンズとからなるホモジナイズド光学系と、前記2次光源による照射対象への照射、前記照射対象からの光源への戻り光の遮断及び制御信号用ビームの抽出を行うコリメートレンズ、ダイクロイックミラー、直線偏光用ビームスプリッタ、λ/4板及び対物レンズを、照射対象方向に順次配置した構成するフォーカシング光学系と、前記フォーカシング光学系に付設するオートフォーカス制御系と出力測定系とで構成することを特徴とする光ファイバアレイを用いたラインビーム照射装置。
【請求項8】
レーザ光を入射させた光ファイバアレイの出力光を光源とし、ホモジナイズド光学系とフォーカシング光学系とからなる光学系のうち、ホモジナイズド光学系において、上記光源を整形して多重分割と重畳照射によるプロファイルの均一化と直線偏光化を実施して2次光源を生成し、フォーカシング光学系において、前記2次光源の照射対象への照射、前記照射対象からの光源への戻り光の遮断及び制御信号用ビームの抽出を行うことを特徴とする光ファイバアレイを用いたラインビーム照射方法。
【請求項9】
前記ホモジナイズド光学系は、アレイピッチ2nのシリンドリカルレンズアレイとアレイピッチnのポラライジングコンバータを対設して配置ことを特徴とする請求項8に記載の光ファイバアレイを用いたラインビーム照射方法。
【請求項10】
前記ホモジナイズド光学系は、コリメートレンズ、シリンドリカルレンズアレイ、ポラライジングコンバータ及びコンデンサレンズを、照射対象方向に順次配置して構成することを特徴とする請求項8に記載の光ファイバアレイを用いたラインビーム照射方法。
【請求項11】
前記フォーカシング光学系は、照射対象方向に、直線偏光用ビームスプリッタとλ/4板を対設して配置することを特徴とする請求項8に記載の光ファイバアレイを用いたラインビーム照射方法。
【請求項12】
前記フォーカシング光学系は、オートフォーカス制御系と出力測定系を付設することを特徴とする請求項8に記載の光ファイバアレイを用いたラインビーム照射方法。
【請求項13】
前記フォーカシング光学系は、コリメートレンズ、ダイクロイックミラー、直線偏光用ビームスプリッタ、λ/4板及び対物レンズを、照射対象方向に順次配置した構成するとともに、オートフォーカス制御系と出力測定系を付設する
ことを特徴とする請求項7に記載の光ファイバアレイを用いたラインビーム照射方法。
【請求項14】
レーザ光を入射させた光ファイバアレイの出力光を光源とし、ホモジナイズド光学系とフォーカシング光学系とからなる光学系のうち、コリメートレンズ、シリンドリカルレンズアレイ、ポラライジングコンバータ及びコンデンサレンズを、照射対象方向に順次配置して構成するホモジナイズド光学系において、上記光源を整形して多重分割と重畳照射によるプロファイルの均一化と直線偏光化を実施して2次光源を生成し、コリメートレンズ、ダイクロイックミラー、直線偏光用ビームスプリッタ、λ/4板及び対物レンズを、照射対象方向に順次配置した構成するフォーカシング光学系と前記フォーカシング光学系に付設するオートフォーカス制御系と出力測定系において、前記2次光源の照射対象への照射、前記照射対象から光源への戻り光の遮断及び制御信号用ビームの抽出を行うことを特徴とする光ファイバアレイを用いたラインビーム照射方法。























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−30575(P2013−30575A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164930(P2011−164930)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000233033)日立コンピュータ機器株式会社 (253)
【Fターム(参考)】