光ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを用いたガス検出センサー
【課題】ファイバーの結合効率を高め、かつ、発振スペクトルの狭帯域化及び波長を容易に制御できるファイバー結合外部共振器型半導体レーザー、及び該ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを用いた微量ガス検出用センサーを提供する。
【解決手段】本発明によって、レーザー光を発振する半導体レーザーと、入射された前記レーザー光の強度を増幅してフィードバックレーザー光を出射する外部共振器と、前記半導体レーザーと前記外部共振器との間に配置され、前記レーザー光を前記外部共振器に出射し、かつ前記フィードバックレーザー光を前記半導体レーザーに入射する光ファイバーと、前記光ファイバーの途中に配置された光ファイバーブラッググレーティングと、を備えることを特徴とするファイバー結合外部共振器型半導体レーザーが提供される。
【解決手段】本発明によって、レーザー光を発振する半導体レーザーと、入射された前記レーザー光の強度を増幅してフィードバックレーザー光を出射する外部共振器と、前記半導体レーザーと前記外部共振器との間に配置され、前記レーザー光を前記外部共振器に出射し、かつ前記フィードバックレーザー光を前記半導体レーザーに入射する光ファイバーと、前記光ファイバーの途中に配置された光ファイバーブラッググレーティングと、を備えることを特徴とするファイバー結合外部共振器型半導体レーザーが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを用いた微量ガス検出用センサーに関し、特に光ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーの波長を安定化した微量ガス検出用センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
波長が安定した定在波を得ることができる光源として外部共振器型半導体レーザー(External Cavity Diode Laser 以下、ECDLと記す。)が各方面で用いられている。ECDL外部共振器型半導体レーザーの一般的な構成を、図10に示す。図10は、外部共振器型半導体レーザー100の一般的な概略構成図である。図10に示すように、外部共振器型半導体レーザー100は、無反射コート(以下、ARコートと記す。)半導体レーザー110、コリメートレンズ(ここでは、非球面レンズを用いた。)130、入射ミラー121及び出射ミラー122の一対の高反射ミラーからなる外部共振器120を備える。半導体レーザー110から外部共振器120に入射された光のうち、共振器120の縦モードに一致する成分のみが選択され、半導体レーザー110の活性層へフィードバックされる。このフィードバック光の強度が十分な強度を持っていれば、半導体レーザーは受動的に固定された波長で誘導放出を生じる。従って、共振器長の微小制御や、半導体レーザーの発振周波数の安定化を行なうことなく、外部共振器内に安定して定在波を得ることができる。しかし、フィードバック光の強度を十分に確保することは容易ではなく、一般的に、共振周波数に一致させるために圧電素子による共振器長の微小制御や、発振波長の安定化が必要とされる。
【0003】
この様なECDLの共振器は、ガス濃度を光学的に検出する方法である吸収分光法に用いることができる。ここで、吸収分光法は、分子の電子遷移や振動回転遷移による吸収線に同調したレーザー波長による光の吸収効果を利用して測定を行う方法である。
【0004】
吸収分光法によるガス濃度検出にECDLを用いるのは、ECDLの共振器の内部に長い光路長を得ることができるからである。即ち、吸収媒質が存在するサンプルセル通過後のレーザーの透過光の強度変化は、ランベルト・ベールの法則により、次の式(1)として表わすことができる。
【数1】
ここで、I[W]は透過光強度、I0[W]は入射光強度、α[m−1]は吸収定数、d[m]はセルの光路長である。この式1からも把握されるように、長い光路長を得るほど、高感度な測定が可能である。ECDLは、外部共振器内においてレーザー光が数千回往復するため、長い光路長を得ることができる。従って、ECDLを用いることでガス検出の際に高感度な測定が可能になる。なお、吸収媒質が存在するサンプルセル通過後のレーザーの透過光の強度変化を模式的に図に示したものが、図11である。
【0005】
またECDLの共振器は、吸収分光法の一種であるキャビティリングダウン分光法(以下、CRDSと記す。)にも用いることができる。CRDSは、光共振器(サンプルセル)内の媒質の濃度をリングダウン信号と呼ばれる時定数によって測定する方法である。
【0006】
即ち、半導体レーザーに変調をかけることにより、外部共振器に入射する光を遮断することで、外部共振器からの透過光は一次の指数関数で減衰する。減衰は次の式(2)によって定義される。
【数2】
この時、I[W]は透過光強度、I0[W]は入射光強度、t[s]は経過時間、τ[s]は時定数である。また、外部共振器内にレーザー光を吸収する媒質がある場合、透過光のレーザー光強度は、以下の式(3)に従い減衰する。
【数3】
ここで、τ[s]は吸収のある媒質の時定数、τ0[s]は吸収のない媒質の時定数である。時定数はリングダウン信号とも呼ばれ、外部共振器内の媒質の濃度によって値は異なる。従って、時定数を求めることにより外部共振器内の媒質の濃度を測定することが可能となる。
【0007】
ECDLをCRDSに用いた測定例を以下に示す。図12は、ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定例を示す図である。図12においては、638nmの波長のレーザー光を用い、純粋窒素(Pure_N2)と50ppm濃度の二酸化窒素(NO2)をCRDSによって測定し、それぞれの時定数の変化を示した。図12より、純粋窒素と二酸化窒素では時定数の変化が異なることが把握される。また、図13は、ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定結果を示す図である。図13においては、予め所定濃度の二酸化窒素の減衰率を測定して、その結果を直線で表示している。図12、図13より、二酸化窒素と窒素の時定数の相違、及び二酸化窒素濃度による減衰率の変化が把握される。
【0008】
以上説明したように、外部共振器型半導体レーザーを用いて、微量ガスを検出することができることが理解される。しかし、この様な外部共振器型半導体レーザーを用いたガス検出センサーを製造する場合、レーザー光を空間で結合するため、装置全体が大きくなってしまう欠点がある。さらに、半導体レーザー、コリメートレンズ及び外部共振器をレーザー光の光路上に直線的に配置する必要があり、フレキシビリティに欠ける。
【0009】
そこで、装置の小型化及びフレキシビリティを確保するために、光ファイバーを用いることにより光源部とセンサー部を分離し、よりフレキシブルに用いることできる光ファイバー結合外部共振器型半導体レーザー(Fiber−coupled_external−cavity_diode_laser:以下、FC−ECDLと記す。)を用いたガス検出装置が考えられる。光ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーは非特許文献1に開示されている。
【0010】
図14は、FC−ECDLを用いたガス検出装置200の一例を示す概略構成図である。光源は無反射コート半導体レーザー210であり、レーザーからの出射光はコリメートレンズ230でコリメートされ、アナモルフィックプリズムペア260で楕円形から円形に整形され、カップリングレンズ240を用いて光ファイバー(図14においては、偏波保持ファイバーを用いた。)250へ結合される。光ファイバー250からの出射光はカップリングレンズ240でコリメートされて外部共振器220へと入射される。また、無反射コート半導体レーザー210には、電源を供給する半導体レーザー電源211が接続され、外部共振器220には、パワーメーター280が接続される。さらにアナモルフィックプリズムペア260と、半導体レーザー側のカップリングレンズ240との間に、レーザー光のスペクトル解析に用いる光スペクトラムアナライザー270が接続される。但し、光スペクトラムアナライザー270の配置位置は、これに限定されず、コリメートレンズ230とアナモルフィックプリズムペア260との間でもよい。ここで、コリメートレンズ230、アナモルフィックプリズムペア260及びカップリングレンズ240は光ファイバー250への結合効率を向上させるための装置である。
【0011】
この様に光ファイバーを用いることにより、光源部とセンサー部を直線上に配置する必要がなく、両者をよりフレキシブルに配置することが可能となる。また、センサー自体は無接点であるため、爆発危険性の高い環境下での防爆計測が容易に可能となり、さらに装置全体の小型化が可能となる。さらに、ECDLの半導体レーザーと外部共振器間をファイバー結合することにより、センサー部分である外部共振器に圧電素子などの電気機器をいっさい含まない微量ガス検出用センサーを構築することができる。
【0012】
このFC−ECDLも、外部共振器からのフィードバック光によって半導体レーザーの発振周波数を安定化することができる。
【0013】
従って、このFC−ECDLによっても、前述のECDLにおけるガス検出と同様の測定が可能である。FC−ECDLをCRDSに用いた測定例を以下に示す。図15は、FC−ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定例を示す図である。また、図16は、FC−ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定結果を示す図である。上述した図12、図13と同様に測定できることが把握される。
【0014】
しかし、FC−ECDLを用いた場合、ファイバーの結合効率がパラメーターの1つになる。ファイバーの結合効率はファイバーの入射前後のレーザー光強度を示したものであり、この結合効率が低い場合、外部共振器から十分なフィードバック光が得られず、半導体レーザーは発振不能となる。ゆえに、ファイバーの結合効率は、FC−ECDLにおけるレーザー発振のための1つのパラメーターとなるのである。
【0015】
従って、FC−ECDLを用いて微量ガス検出用センサーを構築する場合、ファイバーの結合効率を高くすることが求められる。また、発振スペクトルは外部共振器からのフィードバック成分(外部共振器長やミラーの反射率、レーザー媒質)に依存するため、FC−ECDLを用いて微量ガス検出用センサーを構築する場合、発振スペクトルを外部共振器からのフィードバック成分のみに依存するだけでなく、発振スペクトルを狭帯域化し、波長を容易に制御できることが求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】J. Sato et al.「Flexible laser diode race gas sensor based on cavity ringdown spectroscopy with an optical fiber-coupled high-finesse external-cavity diode laser」Applied Physics B (2009)96:741-744
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、ファイバーの結合効率を高め、かつ、発振スペクトルの狭帯域化及び波長を容易に制御できるファイバー結合外部共振器型半導体レーザー、及び該ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを用いた微量ガス検出用センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施の形態によって、レーザー光を発振する半導体レーザーと、入射された前記レーザー光の強度を増幅してフィードバックレーザー光を出射する外部共振器と、前記半導体レーザーと前記外部共振器との間に配置され、前記レーザー光を前記外部共振器に出射し、かつ前記フィードバックレーザー光を前記半導体レーザーに入射する光ファイバーと、前記光ファイバーの途中に配置された光ファイバーブラッググレーティングと、を備えることを特徴とするファイバー結合外部共振器型半導体レーザーが提供される。
【0019】
本発明の一実施の形態によって、レーザー光を発振する半導体レーザーと、入射された前記レーザー光の強度を増幅してフィードバックレーザー光を出射する外部共振器と、前記半導体レーザーと前記外部共振器との間に配置され、前記レーザー光を前記外部共振器に出射し、かつ前記フィードバックレーザー光を前記半導体レーザーに入射する光ファイバーと、前記光ファイバーの途中に配置された光ファイバーブラッググレーティングと、を具備するファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを備えることを特徴とするガス検出用センサーが提供される。
【0020】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が2%以上10%以下であってもよい。
【0021】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が5%であってもよい。
【0022】
前記光ファイバーの両端面は、PC研磨処理、APC研磨処理又は無反射コート処理の少なくとも一つの処理を施されてもよい。
【0023】
前記半導体レーザーと前記光ファイバーとの間にコリメートレンズを有してもよい。
【0024】
前記光ファイバーの両端にそれぞれカップリングレンズを備えてもよい。
【0025】
前記半導体レーザーと前記半導体レーザー側に位置する前記カップリングレンズとの間に、さらにアナモルフィックプリズムペアを備えてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施の形態によって、ファイバーの結合効率を高め、かつ、発振スペクトルの狭帯域化及び波長を容易に制御できるファイバー結合外部共振器型半導体レーザー、及び該ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを用いた微量ガス検出用センサーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL、及び該FC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーの概略構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDLに用いるFBGの概略模式図である。
【図3】二酸化窒素の紫外から可視域における吸収断面積の波長依存性を示す図である。
【図4】638nmの波長を選択するFBG(反射率5%)を備えたFC−ECDL(A)と、FBGを備えないFC−ECDL(B)の発振スペクトルの比較図である。
【図5】638nmの波長を選択するFBG(反射率2%)を備えたFC−ECDL(A)と、FBGを備えないFC−ECDL(B)の発振スペクトルの比較図である。
【図6】638nmの波長を選択するFBGを備えたフFC−ECDLについて、反射率5%の場合Aと反射率2%の場合Bの発振スペクトルを比較した図である。
【図7】638nmの波長を選択するFBG(反射率5%)を備えたFC−ECDL(A)と、638nmの波長を選択するFBG(反射率2%)を備えたFC−ECDL(B)とFBGを備えないFC−ECDL(C)の発振スペクトルの比較図である。
【図8A】本発明の一実施の形態に係るFBGを設けたFC−ECDLの経過時間におけるスペクトルの変化を示した図である。
【図8B】本発明の一実施の形態に係るFBGを設けたFC−ECDLの経過時間におけるスペクトルの変化を示した図である。
【図8C】本発明の一実施の形態に係るFBGを設けたFC−ECDLの経過時間におけるスペクトルの変化を示した図である。
【図9】ガス種類ごとの吸収のある波長域を表した図である。
【図10】外部共振器型半導体レーザー100の一般的な概略構成図である。
【図11】吸収媒質が存在するサンプルセル通過後のレーザーの透過光の強度変化を示す模式図である。
【図12】ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定例を示す図である。
【図13】ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定結果を示す図である。
【図14】FC−EDCLを用いたガス検出装置200の一例を示す概略構成図である。
【図15】FC−ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定例を示す図である。
【図16】FC−ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL、及び該FC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施の形態においては、本発明のファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL、及び該FC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーの一例を示しており、本発明のファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL、及び該FC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーは、それら実施の形態に限定されるわけではない。
【0029】
(ファイバー結合外部共振器型半導体レーザー:FC−ECDL)
図1は、本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL、及び該FC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーの概略構成図である。図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL2は、概略、無反射コート半導体レーザー10、外部共振器20、コリメートレンズ30、光ファイバー50、光ファイバーの両端に配置される1対のカップリングレンズ40、アナモルフィックプリズムペア60、半導体レーザーに電源を供給する半導体レーザー電源11及び光ファイバーの途中に配置される光ファイバーブラッググレーティング(Fiber_Bragg_Grating:以下、FBGと記す。)90から構成される。但し、コリメートレンズ30、カップリングレンズ40及びアナモルフィックプリズムペア60は必要に応じて設ければよい。
【0030】
無反射コート半導体レーザー10は、半導体レーザー電源11と電気的に接続され、半導体レーザー光源11からの電源の供給を受けてレーザー光を出射する。無反射コート半導体レーザー10の出射側の端面は無反射コート(ARコート)されている。本実施の形態においては、半導体レーザーとして無反射コート半導体レーザーを用いているが、これは、ARコートされた端面の反射率がほぼ0.01%で、ほぼ無反射となり、これによって半導体レーザー10内部でレーザー発振を起こすことがないためである。
【0031】
無反射コート半導体レーザー10は、外部共振器20からの反射光を半導体レーザーの活性層にフィードバックすることにより、共振器長や発振周波数の制御を必要としない。無反射コート半導体レーザー10は、外部共振器20の共振周波数にレーザー発振波長が受動的に制御される。
【0032】
本実施の形態においては、無反射コート半導体レーザー10は、発振波長638nmのものを使用したが、発振波長はこれに限定されず、検出対象のガスの種類に応じて適宜選択することができる。
【0033】
外部共振器20は、その内部に、入射ミラーと出射ミラー(いずれも図示せず)の一対の高反射ミラーを備える。入射ミラーと出射ミラーは互いに対向して配置し、それぞれのミラーの反射面の反射率は、非常に高く設定する必要がある。これによって、入射ミラー側から入射されたレーザー光は、出射ミラーと入射ミラーとの間で数千回往復され、レーザー光の強度が増幅される。従って、出射ミラーの反射率は好ましくは99.99%以上、より好ましくは99.999%以上に設定する。また、入射ミラーの反射率は出射ミラーの反射率より低く設定され、好ましくは99.94%以上、より好ましくは99.97%以上に設定される。ただし、それぞれのミラーの反射率はこれに限定されるわけではない。
【0034】
外部共振器20は、ガスを導入し密閉可能なガスセルとすることができ、外部共振器長は、装置全体の大きさを考慮して適宜選択することができる。
【0035】
コリメートレンズ30は、無反射コート半導体レーザー10の無反射コートされた出射側に配置される。コリメートレンズ30は、無反射コート半導体レーザー10から出射された発散光であるレーザー光を、平行光に変換してアナモルフィックプリズムペア60に集光する。本実施の形態においてはコリメートレンズ30として、非球面レンズを使用したが、コリメートレンズ30はこれに限定されない。
【0036】
カップリングレンズ40は、光ファイバー50の両端に配置され、アナモルフィックプリズムペア60から出射されたレーザー光を、光ファイバー50の一端に結合させ、また、光ファイバー50から出射されるレーザー光を外部共振器20に結合させる。
【0037】
光ファイバー50は、円筒状のレーザー光の伝送路である。無反射コート半導体レーザー10から出射されたレーザー光を外部共振器20に伝送し、外部共振器20内で数千回往復して増幅された反射レーザー光を、無反射コート半導体レーザー10の活性層にフィードバックする。
【0038】
本実施の形態においては、光ファイバー50は、端面をPC研磨(Physical_Contact、接続の際に損失を小さくするために光ファイバーの端面を凸球面研磨したもので反射減衰量(入射波に対する反射波の比率の逆数)≧27dB。)したものを用いた。そしてファイバー入射側(即ち、無反射コート半導体レーザー10側)のアライメントを意図的にずらして配置した。これは、PC研磨した光ファイバーでは、端面の表面反射率とFBGの反射率が近いことから、光ファイバー端面と半導体レーザーとの間で共振が起き、本来のFBGの波長にて発振しなくなることが実験で把握されたためである。そこで、共振が起きないように、光ファイバー入射側のアライメントを意図的にずらして共振を抑制したのである。これによって、本来のFBGの波長にて発振することが可能になった。なお、共振の原因が端面の表面反射率とFBGの反射率が近いためであるので、光ファイバーの端面をAPC研磨(Angled_Physical_Contact、PCより研磨面を斜めにすることによりさらに戻り光を小さくしたもので反射減衰量:≧60dB)処理、又はARコートすることにより、アライメントをずらさなくても共振を抑制でき、本来のFBGの波長で発振することが可能となる。従って、光ファイバーの端面処理としては、以上の3つの処理の少なくとも一つを行なうことが好適である。
【0039】
アナモルフィックプリズムペア60は、ハウジング内部に2個のプリズム61,62を備え、無反射コート半導体レーザー10から出射された楕円形のレーザー光を、ビーム軸の1つを拡大・縮小することで円形に成形する。出射光は、入射光に対して平行に出射される。アナモルフィックプリズムペア60及び上述したコリメートレンズ20、カップリングレンズ40は、いずれも光ファイバー50への結合効率を向上せるための装置である。従って、無反射コート半導体レーザー10、外部共振器20及び光ファイバー50の結合効率を高く維持できる場合には、アナモルフィックプリズムペア60、コリメートレンズ20、カップリングレンズ40のいずれか又は全部を省略することもできる。特に、上述したように、光ファイバーの端面を例えばAPC研磨又は無反射コートすることで結合効率を高めた場合、省略が可能である。
【0040】
FBG90は、光ファーバーのコア中に回折格子91を形成したデバイスで、特定の波長を選択する素子である。即ち、光フィルターとしての機能を有する。図2は、本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDLに用いるFBGの概略模式図である。図2に示すように、光ファイバーのコア92中に、回折格子91を形成するため、入射光は、回折格子の反射率に応じて反射され、一定量の入射光のみが透過光として回折格子を通過する。これによって、発振スペクトルの狭帯域化を図ることができるとともに、波長を容易に制御することができる。
【0041】
FBG90は、上述した構成であるため、一定量の入射光のみが透過光として回折格子91を通過することにより、発振スペクトルを狭帯域化することができる。ここで、FBG90の代わりにフィルターを介することも考えられるが、フィルターを介した場合には、発振スペクトルを狭帯域化することができない。従って、FBG90を用いることが必要である。
【0042】
本実施の形態においては、FBG90として、638nmの波長を選択するFBG(タツタ電線社製)を用いた。このFBG90の反射率は5%である。また、比較例として同じ638nmの波長を選択する反射率2%のFBG(同じくタツタ電線社製)を使用した。微量ガス検出用センサーを構築する場合、使用するレーザー光の波長に併せて、適宜適切な波長を選択するFBG90を用いることができる。
【0043】
FBG90は、光ファイバー50の両端面の間に配置する。配置位置は光ファイバー50の中間に限定されず、いずれかの端面側に偏って配置してもよい。光ファイバー50のコアに、紫外線を照射して光ファイバー50とFBG90とを一体的に形成してもよい。即ち、光誘起屈折率変化(Photosensitivity)によって、光ファイバーのコアに屈折率の変化を生じさせ、この屈折率の変化を周期的に作ってやることで、コア内部に一種の回折格子を形成することができる。例えば、照射する紫外光にUVレーザー(エキシマレーザー等)を用い、このレーザーと照射面の間にレーザー回折を起こすための透過型回折格子(位相マスク)を入れることで、コアに回折格子を形成することができる。このような方法により、光ファイバー50とFBG90とを一体的に形成できる。
【0044】
このように、FBGを用いることで、従来のFC−ECDLでは実現することができなかった発振スペクトルの狭帯域化、及び波長を容易に制御することが可能となった。
【0045】
また、FBGは、温度変化や張力を加えることにより、容易に波長を制御することが可能であるので、FBGを用いた本発明の一実施の形態に係るFC−ECDLは、発振スペクトルの制御を容易に行なうことができる。
【0046】
即ち、従来のFC−ECDLの発振スペクトルは、外部共振器からのフィードバック成分(外部共振器長やミラーの反射率、レーザー媒質)に依存しており、従って容易に制御できなかった。そして、発振スペクトルは、吸収分光法を用いた微量ガス検出の際に、測定の可否を左右するパラメーターである。図3を参照する。図3は、二酸化窒素の紫外から可視域における吸収断面積の波長依存性を示す図である。図3に示すように二酸化窒素の吸収断面積は、波長に左右され、波長が若干ずれただけでも大きく異なる。波長630nm程度から700nmにかけては平坦に近くなるが、全く平坦なわけではない。従って、吸収分光法を用いる際に、吸収スペクトルに対して発振波長が狭帯域でなければ、吸収係数が周波数に依存するためリングダウン信号が一定にならず、濃度測定をすることが不可能となる。よって、発振スペクトルを外部共振器からフィードバック成分のみに依存するだけでなく、発振スペクトルの狭帯域化及び発振スペクトルの制御が可能になれば、吸収分光法によるガス検出に関して有利になる。また、赤外域のように多くのガスの吸収線がある領域でも、FC−ECDLを用いて吸収分光法によってガス検出が有効に行なうことができる。
【0047】
本発明の一実施の形態に係るFC−ECDLにおいては、発振スペクトルの狭帯域化が可能である。図を基に説明する。図4から図7は、FBGを用いたFC−ECDLと、FBGを用いないFC−ECDLとの発振スペクトルを比較した図である。図4は、
638nmの波長を選択するFBG(反射率5%)を備えたFC−ECDL(A)と、FBGを備えないFC−ECDL(B)の発振スペクトルの比較図である。図5は、638nmの波長を選択するFBG(反射率2%)を備えたFC−ECDL(A)と、FBGを備えないFC−ECDL(B)の発振スペクトルの比較図である。図6は、638nmの波長を選択するFBGを備えたフFC−ECDLについて、反射率5%の場合Aと反射率2%の場合Bの発振スペクトルを比較した図である。図7は、638nmの波長を選択するFBG(反射率5%)を備えたFC−ECDL(A)と、638nmの波長を選択するFBG(反射率2%)を備えたFC−ECDL(B)とFBGを備えないFC−ECDL(C)の発振スペクトルの比較図である。
【0048】
図4に示すように、FBGを備えたFC−ECDL(A)の発振スペクトルは、波長638nmを挟んで急峻なカーブを描くが、他の波長領域においては、ほとんど平坦なカーブである。即ち、FBGを設けたことで、FC−ECDLの発振スペクトルの狭帯域化が図られていることが把握される。一方、FBGを設けない場合の発振スペクトルは、波長636nmから637nmにかけて、1nm以上に渡っていくつものカーブが描かれており、発振スペクトルの幅が広い。また、図5を参照すると、反射率2%のFBGを設けたFC−ECDL(A)の発振スペクトルは、FBGを設けないFC−ECDL(B)の発振スペクトルよりも強度は低いものの、波長636nmから638nmの広い帯域に渡って複数のスペクトルが現れており、反射率5%のFBGを設けたFC−ECDLに比して発振スペクトルはあまり狭帯域化されていない。FBGの反射率の違いによる発振スペクトルの狭帯域化の達成状況は図6からもよく把握され、反射率5%のFBGを備えたFC−ECDLの発振スペクトルが高狭帯域化されていることが把握される。これは、3つの発振スペクトルを比較した図7からも把握される。
【0049】
結合効率もFC−ECDLが発振する条件としてのパラメーターである。図6及び図7にFBGの反射率の違いによる発振スペクトルの比較を示したが、FC−ECDLの閾値電流を求める式として、次の式(4)が与えられる。
【数4】
ここで、Ithは閾値電流、lはレーザー媒質長、sはストライプ幅、dは活性層の厚さ、ηは量子効率、J0はしきい値電流密度、βは利得係数、Γは閉じ込め係数、αは吸収係数、RFはファイバー結合効率、RcはFBGの反射率、RHRは半導体レーザー後方端面の反射率である。
【0050】
上述の式4から、FC−ECDLの閾値電流は、ファイバーの結合効率・FBGの反射率に依存することから、これらの値も発振に関するパラメーターであると考えられる。上述した図4及び図5より、FBGの反射率は、発振スペクトルの安定化に寄与することを示している。
【0051】
また、FC−ECDLを用いて吸収分光法によってガスを検出する際は、マイクロ秒時間での測定となるが、FBGを用いることにより、測定時間よりも長い時間での波長の安定化が可能となるので、ガス検出の際にも大きな効果が期待できる。
【0052】
さらに、経過時間におけるスペクトルの変化を図8A,図8B,図8Cに示す。図8A,8B,8Cは、本発明の一実施の形態に係るFBGを設けたFC−ECDLの経過時間におけるスペクトルの変化を示した図であり、FBGの反射率が5%の場合のスペクトルの経過時間における変化を(a),(c),(e),(g),(i),(k),(m),(o),(q)で示し、FBGの反射率が2%の場合のスペクトルの経過時間における変化を(b),(d),(f),(h),(j),(l),(n),(p),(r)で示す。それぞれのスペクトルの経過時間は30秒間隔である。
【0053】
図8A,8B,8Cに示すように、FBGの反射率が5%の場合、(a),(c),(e),(g),(i),(k),(m),(o),(q)において、スペクトルの経過時間における変化はほとんど見られない。一方、FBGの反射率2%の場合、スペクトルの経過時間における変化は、(b),(d),(f),(h),(j),(l),(n),(p),(r)で大きく変化することはないものの、部分的に変化が現われている。これらの結果より、FBGを設けることにより安定した発振が可能となるが、特にFBGの反射率が5%であれば、時間が経過してもより安定した発振が可能であることが把握される。
【0054】
以上より、FC−ECDLにFBGを設けることにより発振スペクトルの狭帯域化を図ることができ、好ましくは反射率2%超、より好ましくは反射率5%のFBGを用いることで、一層発振スペクトルの狭帯域化を図ることができる。なお、FBGの反射率は、例えば10%超の反射率とすることもできるが、この場合外部共振器に入射する光が減少し出力が落ちてしまう。従って、反射率は10%以下が好ましい。また、FBGの反射率が5%であれば、図8A,8B,8Cに示したように時間が経過しても安定した発振が可能である。
【0055】
以上説明したように、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLによって、発振波長を狭帯域化することができる。また、発振波長の波長安定化を図ることができ、より安定した発振が可能となる。
【0056】
さらに、上述したように本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLは、発振波長を狭帯域化することができるため、リングダウン信号を一定にすることが可能となる。従って、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLをガス検出用センサーに用いることによって、赤外域のように多くのガスの吸収線がある領域でも吸収分光法によってガス検出を行なうことが可能となる。図9は、ガス種類ごとの吸収のある波長域を表した図である。図9の黒く示されている箇所が、吸収のある波長域である。図9に示すように、例えば、N2O(亜酸化窒素)は、2μm〜3.2μm及び4μm〜10μm超の波長域で吸収がある。また、CH4(メタン)は、2.2μm〜2.8μm、3μm〜3.7μm程度及び10μm前後の波長域で吸収がある。このように、図9に示した有害ガスは、いずれも2μm〜5μmの波長域で吸収がある。吸収のある箇所であれば吸収分光法を用いることができる。従って、発振波長を狭帯域化し、リングダウン信号を一定にすることができる本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLをガス検出用センサーに用いることにより、赤外域等でのガス検出も行なうことができる。また、FBGを用いることによりミリ秒時間での波長安定化が可能になり測定時間よりも長い時間での発振波長の安定化を図ることができるため、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLをガス検出用センサーに用いることによって、微量ガス検出を適切に行なうことができる。なお、上述した実施形態においては、FBGとして638nmの波長を選択するものを用いたが、対象ガスの種類に応じて、適宜適切な発振波長のFC−ECDL及び適切な波長を選択するFBGを用いることにより、ガスの種類に応じて適切なセンサーを構築することができる。
【0057】
(ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを用いた微量ガス検出用センサー)
次に、本発明の一実施形態に係るFBGを備えたFC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーについて説明する。なお、説明に当たっては、上述したFBGを備えたFC−ECDLで説明した構成要素については、重複する説明を避けるために、説明を省略する。
【0058】
本発明の一実施形態に係るFBGを備えたFC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサー1は、概略、無反射コート半導体レーザー10、外部共振器20、コリメートレンズ30、光ファイバー50、光ファイバーの両端に配置される一対のカップリングレンズ40、アナモルフィックプリズムペア60、光スペクトラムアナライザー70、パワーメーター80、半導体レーザーに電源を供給する半導体レーザー電源11及びFBG90から構成される。即ち、上述した本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDL2に、さらに光スペクトラムアナライザー70及びパワーメーター80を備えた構成である。
【0059】
光スペクトラムアナライザー70は、レーザー光のスペクトル解析に用いる装置であり、受光したレーザー光を解析して、レーザー光の波長を横軸に、レーザー光の電圧を縦軸に表示する。本実施の形態においては、光スペクトラムアナライザー70はコリメートレンズ30とアナモルフィックプリズムペア60との間に配置した。光スペクトラムアナライザー70の配置位置はこれに限定されるわけではなく、例えば、無反射コート半導体レーザー10側のカップリングレンズ40とアナモルフィックプリズムペア60との間に配置されてもよい。また、他の位置であってもよい。
【0060】
パワーメーター80は、レーザー光の出力光強度を測定するための装置であり、外部共振器20の出射ミラー側に接続される。以上のような構成により、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサー1が得られる。
【0061】
(ガス検出用センサーの効果)
以上のような構成により、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーは、光源部とセンサー部を分離することが可能となり、よりフレキシブルなガス検出用センサーを提供できる。また、センサー自体は無接点であるため、爆発危険性の高い環境下での防爆計測を容易に行なうことが可能となる。さらに、センサーの小型化が可能となる。
【0062】
また、FBGを備えたFC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーによって、赤外域のように多くのガスの吸収線がある領域でも吸収分光法によってガス検出を行なうことが可能となる。また、FBGを用いることにより長時間での波長安定化が可能になり測定時間よりも長い時間での発振波長の安定化を図ることができるため、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLをガス検出用センサーに用いることによって、微量ガス検出を適切に行なうことができる。
【符号の説明】
【0063】
1:微量ガス検出用センサー
2:FC−ECDL(光ファイバー結合外部共振器型反動体レーザー)
10:無反射コート半導体レーザー
20:外部共振器
30:コリメートレンズ
40:カップリングレンズ
50:光ファイバー
60:アナモルフィックプリズムペア
70:光スペクトラムアナライザー
80:パワーメーター
90:FBG(光ファイバーブラッググレーティング)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを用いた微量ガス検出用センサーに関し、特に光ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーの波長を安定化した微量ガス検出用センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
波長が安定した定在波を得ることができる光源として外部共振器型半導体レーザー(External Cavity Diode Laser 以下、ECDLと記す。)が各方面で用いられている。ECDL外部共振器型半導体レーザーの一般的な構成を、図10に示す。図10は、外部共振器型半導体レーザー100の一般的な概略構成図である。図10に示すように、外部共振器型半導体レーザー100は、無反射コート(以下、ARコートと記す。)半導体レーザー110、コリメートレンズ(ここでは、非球面レンズを用いた。)130、入射ミラー121及び出射ミラー122の一対の高反射ミラーからなる外部共振器120を備える。半導体レーザー110から外部共振器120に入射された光のうち、共振器120の縦モードに一致する成分のみが選択され、半導体レーザー110の活性層へフィードバックされる。このフィードバック光の強度が十分な強度を持っていれば、半導体レーザーは受動的に固定された波長で誘導放出を生じる。従って、共振器長の微小制御や、半導体レーザーの発振周波数の安定化を行なうことなく、外部共振器内に安定して定在波を得ることができる。しかし、フィードバック光の強度を十分に確保することは容易ではなく、一般的に、共振周波数に一致させるために圧電素子による共振器長の微小制御や、発振波長の安定化が必要とされる。
【0003】
この様なECDLの共振器は、ガス濃度を光学的に検出する方法である吸収分光法に用いることができる。ここで、吸収分光法は、分子の電子遷移や振動回転遷移による吸収線に同調したレーザー波長による光の吸収効果を利用して測定を行う方法である。
【0004】
吸収分光法によるガス濃度検出にECDLを用いるのは、ECDLの共振器の内部に長い光路長を得ることができるからである。即ち、吸収媒質が存在するサンプルセル通過後のレーザーの透過光の強度変化は、ランベルト・ベールの法則により、次の式(1)として表わすことができる。
【数1】
ここで、I[W]は透過光強度、I0[W]は入射光強度、α[m−1]は吸収定数、d[m]はセルの光路長である。この式1からも把握されるように、長い光路長を得るほど、高感度な測定が可能である。ECDLは、外部共振器内においてレーザー光が数千回往復するため、長い光路長を得ることができる。従って、ECDLを用いることでガス検出の際に高感度な測定が可能になる。なお、吸収媒質が存在するサンプルセル通過後のレーザーの透過光の強度変化を模式的に図に示したものが、図11である。
【0005】
またECDLの共振器は、吸収分光法の一種であるキャビティリングダウン分光法(以下、CRDSと記す。)にも用いることができる。CRDSは、光共振器(サンプルセル)内の媒質の濃度をリングダウン信号と呼ばれる時定数によって測定する方法である。
【0006】
即ち、半導体レーザーに変調をかけることにより、外部共振器に入射する光を遮断することで、外部共振器からの透過光は一次の指数関数で減衰する。減衰は次の式(2)によって定義される。
【数2】
この時、I[W]は透過光強度、I0[W]は入射光強度、t[s]は経過時間、τ[s]は時定数である。また、外部共振器内にレーザー光を吸収する媒質がある場合、透過光のレーザー光強度は、以下の式(3)に従い減衰する。
【数3】
ここで、τ[s]は吸収のある媒質の時定数、τ0[s]は吸収のない媒質の時定数である。時定数はリングダウン信号とも呼ばれ、外部共振器内の媒質の濃度によって値は異なる。従って、時定数を求めることにより外部共振器内の媒質の濃度を測定することが可能となる。
【0007】
ECDLをCRDSに用いた測定例を以下に示す。図12は、ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定例を示す図である。図12においては、638nmの波長のレーザー光を用い、純粋窒素(Pure_N2)と50ppm濃度の二酸化窒素(NO2)をCRDSによって測定し、それぞれの時定数の変化を示した。図12より、純粋窒素と二酸化窒素では時定数の変化が異なることが把握される。また、図13は、ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定結果を示す図である。図13においては、予め所定濃度の二酸化窒素の減衰率を測定して、その結果を直線で表示している。図12、図13より、二酸化窒素と窒素の時定数の相違、及び二酸化窒素濃度による減衰率の変化が把握される。
【0008】
以上説明したように、外部共振器型半導体レーザーを用いて、微量ガスを検出することができることが理解される。しかし、この様な外部共振器型半導体レーザーを用いたガス検出センサーを製造する場合、レーザー光を空間で結合するため、装置全体が大きくなってしまう欠点がある。さらに、半導体レーザー、コリメートレンズ及び外部共振器をレーザー光の光路上に直線的に配置する必要があり、フレキシビリティに欠ける。
【0009】
そこで、装置の小型化及びフレキシビリティを確保するために、光ファイバーを用いることにより光源部とセンサー部を分離し、よりフレキシブルに用いることできる光ファイバー結合外部共振器型半導体レーザー(Fiber−coupled_external−cavity_diode_laser:以下、FC−ECDLと記す。)を用いたガス検出装置が考えられる。光ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーは非特許文献1に開示されている。
【0010】
図14は、FC−ECDLを用いたガス検出装置200の一例を示す概略構成図である。光源は無反射コート半導体レーザー210であり、レーザーからの出射光はコリメートレンズ230でコリメートされ、アナモルフィックプリズムペア260で楕円形から円形に整形され、カップリングレンズ240を用いて光ファイバー(図14においては、偏波保持ファイバーを用いた。)250へ結合される。光ファイバー250からの出射光はカップリングレンズ240でコリメートされて外部共振器220へと入射される。また、無反射コート半導体レーザー210には、電源を供給する半導体レーザー電源211が接続され、外部共振器220には、パワーメーター280が接続される。さらにアナモルフィックプリズムペア260と、半導体レーザー側のカップリングレンズ240との間に、レーザー光のスペクトル解析に用いる光スペクトラムアナライザー270が接続される。但し、光スペクトラムアナライザー270の配置位置は、これに限定されず、コリメートレンズ230とアナモルフィックプリズムペア260との間でもよい。ここで、コリメートレンズ230、アナモルフィックプリズムペア260及びカップリングレンズ240は光ファイバー250への結合効率を向上させるための装置である。
【0011】
この様に光ファイバーを用いることにより、光源部とセンサー部を直線上に配置する必要がなく、両者をよりフレキシブルに配置することが可能となる。また、センサー自体は無接点であるため、爆発危険性の高い環境下での防爆計測が容易に可能となり、さらに装置全体の小型化が可能となる。さらに、ECDLの半導体レーザーと外部共振器間をファイバー結合することにより、センサー部分である外部共振器に圧電素子などの電気機器をいっさい含まない微量ガス検出用センサーを構築することができる。
【0012】
このFC−ECDLも、外部共振器からのフィードバック光によって半導体レーザーの発振周波数を安定化することができる。
【0013】
従って、このFC−ECDLによっても、前述のECDLにおけるガス検出と同様の測定が可能である。FC−ECDLをCRDSに用いた測定例を以下に示す。図15は、FC−ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定例を示す図である。また、図16は、FC−ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定結果を示す図である。上述した図12、図13と同様に測定できることが把握される。
【0014】
しかし、FC−ECDLを用いた場合、ファイバーの結合効率がパラメーターの1つになる。ファイバーの結合効率はファイバーの入射前後のレーザー光強度を示したものであり、この結合効率が低い場合、外部共振器から十分なフィードバック光が得られず、半導体レーザーは発振不能となる。ゆえに、ファイバーの結合効率は、FC−ECDLにおけるレーザー発振のための1つのパラメーターとなるのである。
【0015】
従って、FC−ECDLを用いて微量ガス検出用センサーを構築する場合、ファイバーの結合効率を高くすることが求められる。また、発振スペクトルは外部共振器からのフィードバック成分(外部共振器長やミラーの反射率、レーザー媒質)に依存するため、FC−ECDLを用いて微量ガス検出用センサーを構築する場合、発振スペクトルを外部共振器からのフィードバック成分のみに依存するだけでなく、発振スペクトルを狭帯域化し、波長を容易に制御できることが求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】J. Sato et al.「Flexible laser diode race gas sensor based on cavity ringdown spectroscopy with an optical fiber-coupled high-finesse external-cavity diode laser」Applied Physics B (2009)96:741-744
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、ファイバーの結合効率を高め、かつ、発振スペクトルの狭帯域化及び波長を容易に制御できるファイバー結合外部共振器型半導体レーザー、及び該ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを用いた微量ガス検出用センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施の形態によって、レーザー光を発振する半導体レーザーと、入射された前記レーザー光の強度を増幅してフィードバックレーザー光を出射する外部共振器と、前記半導体レーザーと前記外部共振器との間に配置され、前記レーザー光を前記外部共振器に出射し、かつ前記フィードバックレーザー光を前記半導体レーザーに入射する光ファイバーと、前記光ファイバーの途中に配置された光ファイバーブラッググレーティングと、を備えることを特徴とするファイバー結合外部共振器型半導体レーザーが提供される。
【0019】
本発明の一実施の形態によって、レーザー光を発振する半導体レーザーと、入射された前記レーザー光の強度を増幅してフィードバックレーザー光を出射する外部共振器と、前記半導体レーザーと前記外部共振器との間に配置され、前記レーザー光を前記外部共振器に出射し、かつ前記フィードバックレーザー光を前記半導体レーザーに入射する光ファイバーと、前記光ファイバーの途中に配置された光ファイバーブラッググレーティングと、を具備するファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを備えることを特徴とするガス検出用センサーが提供される。
【0020】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が2%以上10%以下であってもよい。
【0021】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が5%であってもよい。
【0022】
前記光ファイバーの両端面は、PC研磨処理、APC研磨処理又は無反射コート処理の少なくとも一つの処理を施されてもよい。
【0023】
前記半導体レーザーと前記光ファイバーとの間にコリメートレンズを有してもよい。
【0024】
前記光ファイバーの両端にそれぞれカップリングレンズを備えてもよい。
【0025】
前記半導体レーザーと前記半導体レーザー側に位置する前記カップリングレンズとの間に、さらにアナモルフィックプリズムペアを備えてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施の形態によって、ファイバーの結合効率を高め、かつ、発振スペクトルの狭帯域化及び波長を容易に制御できるファイバー結合外部共振器型半導体レーザー、及び該ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを用いた微量ガス検出用センサーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL、及び該FC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーの概略構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDLに用いるFBGの概略模式図である。
【図3】二酸化窒素の紫外から可視域における吸収断面積の波長依存性を示す図である。
【図4】638nmの波長を選択するFBG(反射率5%)を備えたFC−ECDL(A)と、FBGを備えないFC−ECDL(B)の発振スペクトルの比較図である。
【図5】638nmの波長を選択するFBG(反射率2%)を備えたFC−ECDL(A)と、FBGを備えないFC−ECDL(B)の発振スペクトルの比較図である。
【図6】638nmの波長を選択するFBGを備えたフFC−ECDLについて、反射率5%の場合Aと反射率2%の場合Bの発振スペクトルを比較した図である。
【図7】638nmの波長を選択するFBG(反射率5%)を備えたFC−ECDL(A)と、638nmの波長を選択するFBG(反射率2%)を備えたFC−ECDL(B)とFBGを備えないFC−ECDL(C)の発振スペクトルの比較図である。
【図8A】本発明の一実施の形態に係るFBGを設けたFC−ECDLの経過時間におけるスペクトルの変化を示した図である。
【図8B】本発明の一実施の形態に係るFBGを設けたFC−ECDLの経過時間におけるスペクトルの変化を示した図である。
【図8C】本発明の一実施の形態に係るFBGを設けたFC−ECDLの経過時間におけるスペクトルの変化を示した図である。
【図9】ガス種類ごとの吸収のある波長域を表した図である。
【図10】外部共振器型半導体レーザー100の一般的な概略構成図である。
【図11】吸収媒質が存在するサンプルセル通過後のレーザーの透過光の強度変化を示す模式図である。
【図12】ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定例を示す図である。
【図13】ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定結果を示す図である。
【図14】FC−EDCLを用いたガス検出装置200の一例を示す概略構成図である。
【図15】FC−ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定例を示す図である。
【図16】FC−ECDLを用いたCRDSによる二酸化窒素測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL、及び該FC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施の形態においては、本発明のファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL、及び該FC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーの一例を示しており、本発明のファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL、及び該FC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーは、それら実施の形態に限定されるわけではない。
【0029】
(ファイバー結合外部共振器型半導体レーザー:FC−ECDL)
図1は、本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL、及び該FC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーの概略構成図である。図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDL2は、概略、無反射コート半導体レーザー10、外部共振器20、コリメートレンズ30、光ファイバー50、光ファイバーの両端に配置される1対のカップリングレンズ40、アナモルフィックプリズムペア60、半導体レーザーに電源を供給する半導体レーザー電源11及び光ファイバーの途中に配置される光ファイバーブラッググレーティング(Fiber_Bragg_Grating:以下、FBGと記す。)90から構成される。但し、コリメートレンズ30、カップリングレンズ40及びアナモルフィックプリズムペア60は必要に応じて設ければよい。
【0030】
無反射コート半導体レーザー10は、半導体レーザー電源11と電気的に接続され、半導体レーザー光源11からの電源の供給を受けてレーザー光を出射する。無反射コート半導体レーザー10の出射側の端面は無反射コート(ARコート)されている。本実施の形態においては、半導体レーザーとして無反射コート半導体レーザーを用いているが、これは、ARコートされた端面の反射率がほぼ0.01%で、ほぼ無反射となり、これによって半導体レーザー10内部でレーザー発振を起こすことがないためである。
【0031】
無反射コート半導体レーザー10は、外部共振器20からの反射光を半導体レーザーの活性層にフィードバックすることにより、共振器長や発振周波数の制御を必要としない。無反射コート半導体レーザー10は、外部共振器20の共振周波数にレーザー発振波長が受動的に制御される。
【0032】
本実施の形態においては、無反射コート半導体レーザー10は、発振波長638nmのものを使用したが、発振波長はこれに限定されず、検出対象のガスの種類に応じて適宜選択することができる。
【0033】
外部共振器20は、その内部に、入射ミラーと出射ミラー(いずれも図示せず)の一対の高反射ミラーを備える。入射ミラーと出射ミラーは互いに対向して配置し、それぞれのミラーの反射面の反射率は、非常に高く設定する必要がある。これによって、入射ミラー側から入射されたレーザー光は、出射ミラーと入射ミラーとの間で数千回往復され、レーザー光の強度が増幅される。従って、出射ミラーの反射率は好ましくは99.99%以上、より好ましくは99.999%以上に設定する。また、入射ミラーの反射率は出射ミラーの反射率より低く設定され、好ましくは99.94%以上、より好ましくは99.97%以上に設定される。ただし、それぞれのミラーの反射率はこれに限定されるわけではない。
【0034】
外部共振器20は、ガスを導入し密閉可能なガスセルとすることができ、外部共振器長は、装置全体の大きさを考慮して適宜選択することができる。
【0035】
コリメートレンズ30は、無反射コート半導体レーザー10の無反射コートされた出射側に配置される。コリメートレンズ30は、無反射コート半導体レーザー10から出射された発散光であるレーザー光を、平行光に変換してアナモルフィックプリズムペア60に集光する。本実施の形態においてはコリメートレンズ30として、非球面レンズを使用したが、コリメートレンズ30はこれに限定されない。
【0036】
カップリングレンズ40は、光ファイバー50の両端に配置され、アナモルフィックプリズムペア60から出射されたレーザー光を、光ファイバー50の一端に結合させ、また、光ファイバー50から出射されるレーザー光を外部共振器20に結合させる。
【0037】
光ファイバー50は、円筒状のレーザー光の伝送路である。無反射コート半導体レーザー10から出射されたレーザー光を外部共振器20に伝送し、外部共振器20内で数千回往復して増幅された反射レーザー光を、無反射コート半導体レーザー10の活性層にフィードバックする。
【0038】
本実施の形態においては、光ファイバー50は、端面をPC研磨(Physical_Contact、接続の際に損失を小さくするために光ファイバーの端面を凸球面研磨したもので反射減衰量(入射波に対する反射波の比率の逆数)≧27dB。)したものを用いた。そしてファイバー入射側(即ち、無反射コート半導体レーザー10側)のアライメントを意図的にずらして配置した。これは、PC研磨した光ファイバーでは、端面の表面反射率とFBGの反射率が近いことから、光ファイバー端面と半導体レーザーとの間で共振が起き、本来のFBGの波長にて発振しなくなることが実験で把握されたためである。そこで、共振が起きないように、光ファイバー入射側のアライメントを意図的にずらして共振を抑制したのである。これによって、本来のFBGの波長にて発振することが可能になった。なお、共振の原因が端面の表面反射率とFBGの反射率が近いためであるので、光ファイバーの端面をAPC研磨(Angled_Physical_Contact、PCより研磨面を斜めにすることによりさらに戻り光を小さくしたもので反射減衰量:≧60dB)処理、又はARコートすることにより、アライメントをずらさなくても共振を抑制でき、本来のFBGの波長で発振することが可能となる。従って、光ファイバーの端面処理としては、以上の3つの処理の少なくとも一つを行なうことが好適である。
【0039】
アナモルフィックプリズムペア60は、ハウジング内部に2個のプリズム61,62を備え、無反射コート半導体レーザー10から出射された楕円形のレーザー光を、ビーム軸の1つを拡大・縮小することで円形に成形する。出射光は、入射光に対して平行に出射される。アナモルフィックプリズムペア60及び上述したコリメートレンズ20、カップリングレンズ40は、いずれも光ファイバー50への結合効率を向上せるための装置である。従って、無反射コート半導体レーザー10、外部共振器20及び光ファイバー50の結合効率を高く維持できる場合には、アナモルフィックプリズムペア60、コリメートレンズ20、カップリングレンズ40のいずれか又は全部を省略することもできる。特に、上述したように、光ファイバーの端面を例えばAPC研磨又は無反射コートすることで結合効率を高めた場合、省略が可能である。
【0040】
FBG90は、光ファーバーのコア中に回折格子91を形成したデバイスで、特定の波長を選択する素子である。即ち、光フィルターとしての機能を有する。図2は、本発明の一実施の形態に係るファイバーの結合効率を高めたFC−ECDLに用いるFBGの概略模式図である。図2に示すように、光ファイバーのコア92中に、回折格子91を形成するため、入射光は、回折格子の反射率に応じて反射され、一定量の入射光のみが透過光として回折格子を通過する。これによって、発振スペクトルの狭帯域化を図ることができるとともに、波長を容易に制御することができる。
【0041】
FBG90は、上述した構成であるため、一定量の入射光のみが透過光として回折格子91を通過することにより、発振スペクトルを狭帯域化することができる。ここで、FBG90の代わりにフィルターを介することも考えられるが、フィルターを介した場合には、発振スペクトルを狭帯域化することができない。従って、FBG90を用いることが必要である。
【0042】
本実施の形態においては、FBG90として、638nmの波長を選択するFBG(タツタ電線社製)を用いた。このFBG90の反射率は5%である。また、比較例として同じ638nmの波長を選択する反射率2%のFBG(同じくタツタ電線社製)を使用した。微量ガス検出用センサーを構築する場合、使用するレーザー光の波長に併せて、適宜適切な波長を選択するFBG90を用いることができる。
【0043】
FBG90は、光ファイバー50の両端面の間に配置する。配置位置は光ファイバー50の中間に限定されず、いずれかの端面側に偏って配置してもよい。光ファイバー50のコアに、紫外線を照射して光ファイバー50とFBG90とを一体的に形成してもよい。即ち、光誘起屈折率変化(Photosensitivity)によって、光ファイバーのコアに屈折率の変化を生じさせ、この屈折率の変化を周期的に作ってやることで、コア内部に一種の回折格子を形成することができる。例えば、照射する紫外光にUVレーザー(エキシマレーザー等)を用い、このレーザーと照射面の間にレーザー回折を起こすための透過型回折格子(位相マスク)を入れることで、コアに回折格子を形成することができる。このような方法により、光ファイバー50とFBG90とを一体的に形成できる。
【0044】
このように、FBGを用いることで、従来のFC−ECDLでは実現することができなかった発振スペクトルの狭帯域化、及び波長を容易に制御することが可能となった。
【0045】
また、FBGは、温度変化や張力を加えることにより、容易に波長を制御することが可能であるので、FBGを用いた本発明の一実施の形態に係るFC−ECDLは、発振スペクトルの制御を容易に行なうことができる。
【0046】
即ち、従来のFC−ECDLの発振スペクトルは、外部共振器からのフィードバック成分(外部共振器長やミラーの反射率、レーザー媒質)に依存しており、従って容易に制御できなかった。そして、発振スペクトルは、吸収分光法を用いた微量ガス検出の際に、測定の可否を左右するパラメーターである。図3を参照する。図3は、二酸化窒素の紫外から可視域における吸収断面積の波長依存性を示す図である。図3に示すように二酸化窒素の吸収断面積は、波長に左右され、波長が若干ずれただけでも大きく異なる。波長630nm程度から700nmにかけては平坦に近くなるが、全く平坦なわけではない。従って、吸収分光法を用いる際に、吸収スペクトルに対して発振波長が狭帯域でなければ、吸収係数が周波数に依存するためリングダウン信号が一定にならず、濃度測定をすることが不可能となる。よって、発振スペクトルを外部共振器からフィードバック成分のみに依存するだけでなく、発振スペクトルの狭帯域化及び発振スペクトルの制御が可能になれば、吸収分光法によるガス検出に関して有利になる。また、赤外域のように多くのガスの吸収線がある領域でも、FC−ECDLを用いて吸収分光法によってガス検出が有効に行なうことができる。
【0047】
本発明の一実施の形態に係るFC−ECDLにおいては、発振スペクトルの狭帯域化が可能である。図を基に説明する。図4から図7は、FBGを用いたFC−ECDLと、FBGを用いないFC−ECDLとの発振スペクトルを比較した図である。図4は、
638nmの波長を選択するFBG(反射率5%)を備えたFC−ECDL(A)と、FBGを備えないFC−ECDL(B)の発振スペクトルの比較図である。図5は、638nmの波長を選択するFBG(反射率2%)を備えたFC−ECDL(A)と、FBGを備えないFC−ECDL(B)の発振スペクトルの比較図である。図6は、638nmの波長を選択するFBGを備えたフFC−ECDLについて、反射率5%の場合Aと反射率2%の場合Bの発振スペクトルを比較した図である。図7は、638nmの波長を選択するFBG(反射率5%)を備えたFC−ECDL(A)と、638nmの波長を選択するFBG(反射率2%)を備えたFC−ECDL(B)とFBGを備えないFC−ECDL(C)の発振スペクトルの比較図である。
【0048】
図4に示すように、FBGを備えたFC−ECDL(A)の発振スペクトルは、波長638nmを挟んで急峻なカーブを描くが、他の波長領域においては、ほとんど平坦なカーブである。即ち、FBGを設けたことで、FC−ECDLの発振スペクトルの狭帯域化が図られていることが把握される。一方、FBGを設けない場合の発振スペクトルは、波長636nmから637nmにかけて、1nm以上に渡っていくつものカーブが描かれており、発振スペクトルの幅が広い。また、図5を参照すると、反射率2%のFBGを設けたFC−ECDL(A)の発振スペクトルは、FBGを設けないFC−ECDL(B)の発振スペクトルよりも強度は低いものの、波長636nmから638nmの広い帯域に渡って複数のスペクトルが現れており、反射率5%のFBGを設けたFC−ECDLに比して発振スペクトルはあまり狭帯域化されていない。FBGの反射率の違いによる発振スペクトルの狭帯域化の達成状況は図6からもよく把握され、反射率5%のFBGを備えたFC−ECDLの発振スペクトルが高狭帯域化されていることが把握される。これは、3つの発振スペクトルを比較した図7からも把握される。
【0049】
結合効率もFC−ECDLが発振する条件としてのパラメーターである。図6及び図7にFBGの反射率の違いによる発振スペクトルの比較を示したが、FC−ECDLの閾値電流を求める式として、次の式(4)が与えられる。
【数4】
ここで、Ithは閾値電流、lはレーザー媒質長、sはストライプ幅、dは活性層の厚さ、ηは量子効率、J0はしきい値電流密度、βは利得係数、Γは閉じ込め係数、αは吸収係数、RFはファイバー結合効率、RcはFBGの反射率、RHRは半導体レーザー後方端面の反射率である。
【0050】
上述の式4から、FC−ECDLの閾値電流は、ファイバーの結合効率・FBGの反射率に依存することから、これらの値も発振に関するパラメーターであると考えられる。上述した図4及び図5より、FBGの反射率は、発振スペクトルの安定化に寄与することを示している。
【0051】
また、FC−ECDLを用いて吸収分光法によってガスを検出する際は、マイクロ秒時間での測定となるが、FBGを用いることにより、測定時間よりも長い時間での波長の安定化が可能となるので、ガス検出の際にも大きな効果が期待できる。
【0052】
さらに、経過時間におけるスペクトルの変化を図8A,図8B,図8Cに示す。図8A,8B,8Cは、本発明の一実施の形態に係るFBGを設けたFC−ECDLの経過時間におけるスペクトルの変化を示した図であり、FBGの反射率が5%の場合のスペクトルの経過時間における変化を(a),(c),(e),(g),(i),(k),(m),(o),(q)で示し、FBGの反射率が2%の場合のスペクトルの経過時間における変化を(b),(d),(f),(h),(j),(l),(n),(p),(r)で示す。それぞれのスペクトルの経過時間は30秒間隔である。
【0053】
図8A,8B,8Cに示すように、FBGの反射率が5%の場合、(a),(c),(e),(g),(i),(k),(m),(o),(q)において、スペクトルの経過時間における変化はほとんど見られない。一方、FBGの反射率2%の場合、スペクトルの経過時間における変化は、(b),(d),(f),(h),(j),(l),(n),(p),(r)で大きく変化することはないものの、部分的に変化が現われている。これらの結果より、FBGを設けることにより安定した発振が可能となるが、特にFBGの反射率が5%であれば、時間が経過してもより安定した発振が可能であることが把握される。
【0054】
以上より、FC−ECDLにFBGを設けることにより発振スペクトルの狭帯域化を図ることができ、好ましくは反射率2%超、より好ましくは反射率5%のFBGを用いることで、一層発振スペクトルの狭帯域化を図ることができる。なお、FBGの反射率は、例えば10%超の反射率とすることもできるが、この場合外部共振器に入射する光が減少し出力が落ちてしまう。従って、反射率は10%以下が好ましい。また、FBGの反射率が5%であれば、図8A,8B,8Cに示したように時間が経過しても安定した発振が可能である。
【0055】
以上説明したように、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLによって、発振波長を狭帯域化することができる。また、発振波長の波長安定化を図ることができ、より安定した発振が可能となる。
【0056】
さらに、上述したように本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLは、発振波長を狭帯域化することができるため、リングダウン信号を一定にすることが可能となる。従って、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLをガス検出用センサーに用いることによって、赤外域のように多くのガスの吸収線がある領域でも吸収分光法によってガス検出を行なうことが可能となる。図9は、ガス種類ごとの吸収のある波長域を表した図である。図9の黒く示されている箇所が、吸収のある波長域である。図9に示すように、例えば、N2O(亜酸化窒素)は、2μm〜3.2μm及び4μm〜10μm超の波長域で吸収がある。また、CH4(メタン)は、2.2μm〜2.8μm、3μm〜3.7μm程度及び10μm前後の波長域で吸収がある。このように、図9に示した有害ガスは、いずれも2μm〜5μmの波長域で吸収がある。吸収のある箇所であれば吸収分光法を用いることができる。従って、発振波長を狭帯域化し、リングダウン信号を一定にすることができる本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLをガス検出用センサーに用いることにより、赤外域等でのガス検出も行なうことができる。また、FBGを用いることによりミリ秒時間での波長安定化が可能になり測定時間よりも長い時間での発振波長の安定化を図ることができるため、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLをガス検出用センサーに用いることによって、微量ガス検出を適切に行なうことができる。なお、上述した実施形態においては、FBGとして638nmの波長を選択するものを用いたが、対象ガスの種類に応じて、適宜適切な発振波長のFC−ECDL及び適切な波長を選択するFBGを用いることにより、ガスの種類に応じて適切なセンサーを構築することができる。
【0057】
(ファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを用いた微量ガス検出用センサー)
次に、本発明の一実施形態に係るFBGを備えたFC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーについて説明する。なお、説明に当たっては、上述したFBGを備えたFC−ECDLで説明した構成要素については、重複する説明を避けるために、説明を省略する。
【0058】
本発明の一実施形態に係るFBGを備えたFC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサー1は、概略、無反射コート半導体レーザー10、外部共振器20、コリメートレンズ30、光ファイバー50、光ファイバーの両端に配置される一対のカップリングレンズ40、アナモルフィックプリズムペア60、光スペクトラムアナライザー70、パワーメーター80、半導体レーザーに電源を供給する半導体レーザー電源11及びFBG90から構成される。即ち、上述した本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDL2に、さらに光スペクトラムアナライザー70及びパワーメーター80を備えた構成である。
【0059】
光スペクトラムアナライザー70は、レーザー光のスペクトル解析に用いる装置であり、受光したレーザー光を解析して、レーザー光の波長を横軸に、レーザー光の電圧を縦軸に表示する。本実施の形態においては、光スペクトラムアナライザー70はコリメートレンズ30とアナモルフィックプリズムペア60との間に配置した。光スペクトラムアナライザー70の配置位置はこれに限定されるわけではなく、例えば、無反射コート半導体レーザー10側のカップリングレンズ40とアナモルフィックプリズムペア60との間に配置されてもよい。また、他の位置であってもよい。
【0060】
パワーメーター80は、レーザー光の出力光強度を測定するための装置であり、外部共振器20の出射ミラー側に接続される。以上のような構成により、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサー1が得られる。
【0061】
(ガス検出用センサーの効果)
以上のような構成により、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーは、光源部とセンサー部を分離することが可能となり、よりフレキシブルなガス検出用センサーを提供できる。また、センサー自体は無接点であるため、爆発危険性の高い環境下での防爆計測を容易に行なうことが可能となる。さらに、センサーの小型化が可能となる。
【0062】
また、FBGを備えたFC−ECDLを用いた微量ガス検出用センサーによって、赤外域のように多くのガスの吸収線がある領域でも吸収分光法によってガス検出を行なうことが可能となる。また、FBGを用いることにより長時間での波長安定化が可能になり測定時間よりも長い時間での発振波長の安定化を図ることができるため、本発明の一実施の形態に係るFBGを備えたFC−ECDLをガス検出用センサーに用いることによって、微量ガス検出を適切に行なうことができる。
【符号の説明】
【0063】
1:微量ガス検出用センサー
2:FC−ECDL(光ファイバー結合外部共振器型反動体レーザー)
10:無反射コート半導体レーザー
20:外部共振器
30:コリメートレンズ
40:カップリングレンズ
50:光ファイバー
60:アナモルフィックプリズムペア
70:光スペクトラムアナライザー
80:パワーメーター
90:FBG(光ファイバーブラッググレーティング)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を発振する半導体レーザーと、
入射された前記レーザー光の強度を増幅してフィードバックレーザー光を出射する外部共振器と、
前記半導体レーザーと前記外部共振器との間に配置され、前記レーザー光を前記外部共振器に出射し、かつ前記フィードバックレーザー光を前記半導体レーザーに入射する光ファイバーと、
前記光ファイバーの途中に配置された光ファイバーブラッググレーティングと、
を備えることを特徴とするファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項2】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が2%以上10%以下であることを特徴とする請求項1に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項3】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が5%であることを特徴とする請求項1に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項4】
前記光ファイバーの両端面は、PC研磨処理、APC研磨処理又は無反射コート処理の少なくとも一つの処理を施されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項5】
前記半導体レーザーと前記光ファイバーとの間にコリメートレンズを有することを特徴とする請求項4に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項6】
前記光ファイバーの両端にそれぞれカップリングレンズを備えることを特徴とする請求項4に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項7】
前記半導体レーザーと前記半導体レーザー側に位置する前記カップリングレンズとの間に、さらにアナモルフィックプリズムペアを備えることを特徴とする請求項6に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項8】
レーザー光を発振する半導体レーザーと、
入射された前記レーザー光の強度を増幅してフィードバックレーザー光を出射する外部共振器と、
前記半導体レーザーと前記外部共振器との間に配置され、前記レーザー光を前記外部共振器に出射し、かつ前記フィードバックレーザー光を前記半導体レーザーに入射する光ファイバーと、
前記光ファイバーの途中に配置された光ファイバーブラッググレーティングと、
を具備するファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを備えることを特徴とするガス検出用センサー。
【請求項9】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が2%以上10%以下であることを特徴とする請求項8に記載のガス検出用センサー。
【請求項10】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が5%であることを特徴とする請求項8に記載のガス検出用センサー。
【請求項1】
レーザー光を発振する半導体レーザーと、
入射された前記レーザー光の強度を増幅してフィードバックレーザー光を出射する外部共振器と、
前記半導体レーザーと前記外部共振器との間に配置され、前記レーザー光を前記外部共振器に出射し、かつ前記フィードバックレーザー光を前記半導体レーザーに入射する光ファイバーと、
前記光ファイバーの途中に配置された光ファイバーブラッググレーティングと、
を備えることを特徴とするファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項2】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が2%以上10%以下であることを特徴とする請求項1に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項3】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が5%であることを特徴とする請求項1に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項4】
前記光ファイバーの両端面は、PC研磨処理、APC研磨処理又は無反射コート処理の少なくとも一つの処理を施されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項5】
前記半導体レーザーと前記光ファイバーとの間にコリメートレンズを有することを特徴とする請求項4に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項6】
前記光ファイバーの両端にそれぞれカップリングレンズを備えることを特徴とする請求項4に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項7】
前記半導体レーザーと前記半導体レーザー側に位置する前記カップリングレンズとの間に、さらにアナモルフィックプリズムペアを備えることを特徴とする請求項6に記載のファイバー結合外部共振器型半導体レーザー。
【請求項8】
レーザー光を発振する半導体レーザーと、
入射された前記レーザー光の強度を増幅してフィードバックレーザー光を出射する外部共振器と、
前記半導体レーザーと前記外部共振器との間に配置され、前記レーザー光を前記外部共振器に出射し、かつ前記フィードバックレーザー光を前記半導体レーザーに入射する光ファイバーと、
前記光ファイバーの途中に配置された光ファイバーブラッググレーティングと、
を具備するファイバー結合外部共振器型半導体レーザーを備えることを特徴とするガス検出用センサー。
【請求項9】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が2%以上10%以下であることを特徴とする請求項8に記載のガス検出用センサー。
【請求項10】
前記光ファイバーブラッググレーティングは、反射率が5%であることを特徴とする請求項8に記載のガス検出用センサー。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図9】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図9】
【公開番号】特開2011−119541(P2011−119541A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276793(P2009−276793)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
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