説明

光ファイバー連結デバイス

【課題】液体をレーザー受光面の冷却に使用しつつ、送液チューブによって光ファイバーを損傷等のリスクから保護し、かつ同チューブにて液体をレーザー照射部へと送液可能な光ファイバー連結デバイスを提供する。
【解決手段】内部に光ファイバーが挿通される空間部を有する本体と、前記本体をレーザー発振器と連結し前記光ファイバーに光源からのレーザー光を導光するように連結する連結金具を備えた光ファイバー連結デバイスであって、
前記本体は、前記連結金具の先端側に、前記空間部内に液体を導入する液体導入部と、前記液体導入部の先端側に前記液体を外部に流出させる液体送液部と、を設け、
前記液体導入部から導入された液体が、前記本体の基端側に設けられた前記光ファイバーを支持する支持部に向って流れるようにしたことを特徴とする光ファイバー連結デバイスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバーを固定する光ファイバー連結デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光は時間にも空間的にもコヒーレンスな光であり、単色性、指向性、干渉性、エネルギー集中性など様々な優れた特性を有している。この発振波長も幅広く実用化されており、用途に応じて選択可能である。従って近年、通信、工業、医療等様々な分野に応用されており、例えば、レーザー光のエネルギー集中性に注目して、水などの液体に短時間で大きなエネルギーを与えた際に、形成される水中衝撃波を利用した高速ジェットメス、血栓破砕などが挙げられる。
【0003】
特許文献1、2および非特許文献1では、カテーテル内に挿入した光ファイバーにレーザー発振器からのレーザーをパルス導光し、前記カテーテル内に充填された生理食塩水等を急激に加熱し、液体ジェット流を誘起し、この液体ジェット流の力により血栓等を粉砕し除去する方法が記載されている。
【0004】
この方法では、液体ジェット流の力を低減させることなく血栓等に到達させて治療効果を高めるために、光ファイバーが内部に挿入された状態のカテーテルを血栓等の近くまで導き、液体ジェット流を発生させている。
【0005】
ところが、従来のカテーテルは、塩化ビニルやPCB(ポリクロロビフェニル)あるいは下記特許文献2で記載されているように、ポリプロピレンやポリイミド等を材料として成形された、長尺で細いチューブであり、レーザーを吸収し易い材料であるため、強力なレーザー光を使用すると、その熱的影響を受けやすい。
【0006】
特に、このような材料で形成された細径で柔軟なカテーテル(通常外径0.9mm程度)内に外径(コア径)0.4mm程度の光ファイバーを挿入すると、カテーテルの内面と光ファイバーの外面との間は、極めて小さな間隙が存在するのみとなる。この状態で強力なレーザー光を照射すれば、レーザー光の熱がカテーテルに伝わり、かつレーザーエネルギーがカテーテル材料に吸収されることにより、カテーテルが変形、穿孔する虞があり、円滑な液体ジェット流の噴射を妨げたり、カテーテル自体の寿命も短くなったりする問題があった。
【0007】
この問題を解決すべく特許文献3に記載の方法は、レーザー照射部がアルミニウム合金などの金属により形成された本体により保護されているため、細いカテーテルの使用であっても、レーザー光による光熱的影響を受けることもなく、より強力なレーザー光により照射が可能で、しかも長時間に渡って使用でき円滑な操作が可能なレーザー誘発液体噴流発生デバイスを提供するものである。
【特許文献1】特開2003−111766号公報
【特許文献2】特開2002−521084号公報
【特許文献3】特開2005−169094号公報
【非特許文献1】日レ医誌第22巻第3号(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に係る装置では、レーザー光の照射部におけるカテーテルの熱的影響は確かに回避できるものの、治療に十分な強度の液体ジェット流を得るためには、上記特許文献1、2と比較して高い強度のレーザー光を光ファイバーに導光する必要があり、光ファイバーをレーザー発振器へと接続する部分、いわゆるフェルールの熱的損傷の増大が懸念される。さらに特許文献3に示されているのは、レーザーが使用者に及ぼす影響を防止する構造のみであり、装置全体の設計や使用者の操作面ではさらに改良の余地が存在する。
【0009】
また、レーザー発振器からレーザー光が光ファイバーに導光される際に、全てのレーザー光を光ファイバー内に導光することができないことによる問題がいくつかある。その一つとして、光ファイバーは石英、プラスチックなどの繊維の光ファイバー本体をポリイミド樹脂などで被覆して使用されるのが一般的であるが、樹脂などで被覆されている光ファイバーを使用すると、樹脂層の厚みを均一にしなければ光ファイバーを固定することができないために、レーザー光を正確に光ファイバー内に導光できず、光ファイバーに導光されなかったレーザー光はフェルールに照射され、熱的損傷が生じる原因になると考えられる。そのため、図2に示すように、光ファイバーの受光面を支持するレーザー受光部(レーザー光が光ファイバーに導光される部分)において、樹脂層で被覆されていないむき出しの状態にした位置で光ファイバーを固定しているが、この場合であっても以下の理由により熱的損傷が生じる可能性があると考えられる。
【0010】
図2で示すように、レーザー発振器内部で発生させたレーザー光はレンズなどで集光して光ファイバーに導光させるが、光ファイバーのコアの直径よりもレーザーのスポット径が大きくなってしまった場合、レーザー光がはみ出してしまい、特に図2の円で囲った部分にレーザー光が照射され、熱エネルギーへと変換され、熱的損傷が生じる原因になると考えられる。
【0011】
特に、レーザー発振器と光ファイバーとは、いわゆるフェルールという連結具を用いて接続されるが、この連結具は、レーザー発振器の直近位置で用いられる部品であるため、熱的影響を受けやすい上に冷却しづらいという問題を有していた。
【0012】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みてなされ、液体をレーザー受光面の冷却に使用しつつ、かつ同チューブにて液体をレーザー照射部へと送液可能な光ファイバー連結デバイスを提供することを目的とする。また、本発明は、送液チューブによって光ファイバーを損傷等のリスクから保護できる光ファイバー直結デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、内部に光ファイバーが挿通される空間部を有する本体と、前記本体をレーザー発振器と連結し前記光ファイバーに光源からのレーザー光を導光するように連結できる連結金具を備えた光ファイバー連結デバイスであって、前記本体は、前記連結金具の先端側に、前記空間部内に液体を導入する液体導入部と、前記液体導入部の先端側に前記液体を外部に流出させる液体送液部と、を設け、前記液体導入部から導入された液体が、前記本体の基端側に設けられた前記光ファイバーを支持する支持部に向って流れるようにする光ファイバー連結デバイスを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、レーザー発振器と光ファイバーとを接続する部分である光ファイバー連結デバイス(いわゆるフェルール)に、レーザー受光部付近を液体により冷却する機能を付加したものである。レーザー受光面はレーザーの影響によりかなりの高熱になるため、徐々に熱的損傷を生じるが、本発明ではレーザー受光面を液体により冷却する構造となっているため、損傷の原因である熱を液体が吸収することで損傷を低減させ高寿命化を図ることができる。
【0015】
また、レーザー受光面を冷却する液体をそのままレーザー照射部に送液して治療に用いることより、冷却用と治療用の液体をそれぞれ別個に用意する必要がなくなり、装置全体の構造を簡素化でき、製造上有利な上、装置使用時のセッティングが容易となり、加えて操作性も向上する。
【0016】
加えて光ファイバーを用いてレーザー光を導光する場合、光ファイバーが剥き出しの状態では何らかの外的要因により光ファイバーが損傷、破断を生じ、最悪の場合はレーザー光の漏出による器物、人体への悪影響が生じる虞がある。本発明では、光ファイバー連結デバイスから延びる光ファイバーをチューブによって保護する機能と、そのチューブの内腔よりレーザー照射部へと液体を送液する機能とを付加した場合、光ファイバーをチューブで保護しているため、光ファイバーの破損のリスクを低減でき、しかも仮に何らかの外的要因によって光ファイバーやチューブに破断が生じても、光ファイバーの破断部位から漏出したレーザーによるチューブの溶融部位、または破断部位から液体が漏出するので、破断を早期に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る光ファイバー連結デバイスを添付図面に示す好適構成例に基づいて詳説する。
【0018】
「第1実施形態」
図1は、本発明に係る光ファイバー連結デバイスを有する医療用器具の全体を示す概略図であり、楕円で囲んだ部分である光ファイバー連結デバイスの拡大部を図2または図3に示すものであり、図7は図2のうち光ファイバーを固定する支持体の半径方向の断面図である。
【0019】
なお、本明細書において「基端側」とはレーザー発振器に近い側をいい、「先端側」とは基端側の逆側をいい、例えば光ファイバー連結デバイスを有するレーザー誘起液体噴流デバイスにおいては、液体ジェット流を噴射する側をいうものとする。
【0020】
以下、本発明に係る光ファイバー連結デバイスを用いたレーザー誘起液体噴流デバイスの一例について図1を用いて説明する。
本発明に係るレーザー誘起液体噴流デバイスは、図1に示されるように、概してレーザー発振器1と、レーザー発振器1からレーザー光が導光される光ファイバー2と、光ファイバー2の基端部分を保持しつつレーザー発振器と光ファイバー2とを連結する光ファイバー連結デバイス3(いわゆるフェルール)と、レーザー光の照射によって生じた液体ジェット流を噴射するジェット発生管部5が隔壁部材6の内部に設けられた液体注入部7と、ジェット発生管部5から液体ジェット流が内部を流れる細いチューブ8(本実施形態ではカテーテル)と、基部12と、ジェット発生管部5からの液体ジェット流が内部を流れる細いチューブ8と液密に接続可能若しくは前記チューブに液密に固定されたチューブ接続部14と、ジェット発生管部5と液密に接続(接触)可能である細いチューブ(カテーテル)8のハブ15と、レーザー光を吸収する所定の液体を液体注入部7内に充填できるシリンジポンプや輸液ポンプ等の液体供給ポンプ10と、先端が液体注入部7に液密に接続し液体供給ポンプ10から供給された液体を液体注入部7に導く送液チューブ4と、から構成されている。
【0021】
また、本発明に係る光ファイバー連結デバイスの第一実施形態の構成を以下説明する。
本発明に係る光ファイバー連結デバイス3は、液体供給ポンプ10から送液された液体を内部に導入する液体導入部3aと、導入された液体をレーザー照射部へと送液する液体送液部3bと、液体導入部3aと液体送液部3bとを連通し液体が流れる内空間部3kと、送液に十分な間隙を有しつつ光ファイバー2を内空間部3k内にて支持する光ファイバーを固定する支持体3cと、光ファイバー2の受光面2aを支持する光ファイバー支持部3zと、レーザー発振器1と光ファイバー連結デバイス3の本体33とを接続、固定する連結金具3eと、光ファイバー連結デバイス3の本体33に形成された抜け止め用の突起3fと、から構成されており、光ファイバー連結デバイス3の本体33と連結金具3eとは嵌合等により接続している。光ファイバー連結デバイス3の内部には光ファイバー2が挿通されており、その位置は光ファイバー支持体3cと光ファイバー支持部3zで固定されている。光ファイバー2と光ファイバー支持部3z、また液体送液部3bと送液チューブ4とは接着等の方法で接続されており、液密性が保たれているが、光ファイバー2と光ファイバーを固定する支持体3cとは接着等の方法で固定されているものの、光ファイバーを固定する支持体3cには送液に充分な間隙が設けられた構造となっている(図7参照)。内空間部3kは光ファイバー支持部3zを隔ててレーザー光が照射されうる領域3dまで延びている。光ファイバー連結デバイスの本体33における光ファイバー支持部3zの先端面3x(換言すると受光部の基端面3nの背面)と受光部の基端面3nとの間の距離は5mm程度のため、該レーザーの受光部の基端面3nは、内空間部3kを流れる液体により支障なく冷却される。
【0022】
本発明に係る光ファイバー連結デバイスの本体を構成する材料としては、受光面2aにて受光しきれずに漏出したレーザー光による熱的損傷を受ける可能性があるため、その構成材料としてはレーザーおよびそれにより誘発される熱に対して強い材料が好ましく、耐熱性材料であれば公知の材料を使用することができる。具体的には、鉄、チタン、タングステン、ニッケル、クロムなどの高融点材料およびそれらの合金(例えば、ステンレス、インコネルやハステロイ)などが挙げられる。
【0023】
さらに、本発明に係る光ファイバー連結デバイスの長手方向の長さは、特に制限されず、術者や術式などにより適宜選択されるものである。
【0024】
また、本発明に係る光ファイバー連結デバイスの断面において、内部に挿通される光ファイバーの最外周から光ファイバー連結デバイスの最内周までの離間距離は、水、生理緩衝溶液、生理食塩水などの液体が充分に内部を流れることができれば良く、特に制限されないが、例えば0.05〜5.00mmが好ましく、0.07〜1.5mmがより好ましい。
【0025】
なお、本発明に係る光ファイバー連結デバイスにおける光ファイバーを支持する支持部3zの厚みは、特に制限されず術式や他の条件で適宜決められ、光ファイバー2の受光面2aがレーザー光の進行方向に対し垂直になるように保持しつつ、レーザー光が照射されうる領域3dが冷却されればよいが、例えば1〜10mmが好ましく、3〜6mmがより好ましい。
【0026】
なお、本発明に係る「液体」とは、人体を直接治療するような薬理活性を有する物質を含む液体だけではなく、生理緩衝溶液、生理食塩水、水などであっても人体における疾患を健康体に戻すために使用される液体が好ましく利用される。
【0027】
本発明に係る光ファイバーは、シングルモードでもマルチモードであってもよく、また石英系でもポリマーであってもよく、公知の光ファイバーを使用することができるのでここでは本発明に用いられる光ファイバーの材質の詳細については省略する。
【0028】
なお、本発明に係る光ファイバーのコアの直径は、50〜1500μmが好ましく、より好ましくは300〜800μmであり、クラッディングとコアとを含めた直径は、120〜1800μmが好ましく、より好ましくは310〜900μmである。
【0029】
また、本発明に係るレーザー発振器は、イットリウム、アルミニウム、ガーネットの結晶(YAG)に、添加物としてホルミウム(Ho)を微量加えて形成したレーザー用素子を備えていて、発振波長2.100マイクロメートルのいわゆるHo:YAGレーザーを発生することができるように構成されていることが好ましい。ただし、上記レーザー発振器は公知のレーザー発振器であれば良く、例えば、Nd:YAG、Er:YAGなどの固体レーザーあるいはCOレーザー、エキシマレーザーなど種々の適用がある。
【0030】
本発明に係る連結金具は、光ファイバー連結デバイスの本体を構成する材料と同様の材料を使用することができるが、その他公知の材料、嵌合方法を使用することができるため、ここでの記載は省略する。
【0031】
本発明に係る空間部を挿通する光ファイバーを固定する支持体3cに用いられる材料や、
前記支持体の大きさ、位置や光ファイバーを支持する方法などは公知の方法を、適宜選択することができるのでここでは詳細は省略するが、例えば図7で示すように液体の経路を遮断するように設置しなければよい。
【0032】
本発明に係る液体供給ポンプ10については、液体を供給できるものであれば機種は特に限定されるものではないが、シリンジポンプや輸液ポンプ等、医療用に用いられ、送液量の精度が確保されたものであればより好ましい。また、供給する液体には、生理食塩水のような生体内に注入しても無害な液体の他、それに血栓溶解剤や抗凝固剤等の薬剤を溶かしたものが用いられる。
【0033】
以下、本発明の光ファイバー連結デバイスの実施形態の作用について説明する。
【0034】
例えば図3に示す光ファイバー連結デバイスにおいて、液体供給ポンプ10によって液体導入部3aから流入した液体が、直接液体送液部3bへ前記液体が流れる経路だけではなく、液体導入部3aを基準に基端側に設けられた空間部であって、かつ当該空間部は前記液体導入部3aと連通しているため、液体が前記液体導入部3aから導入された後、本体の基端側に設けられた前記光ファイバーを支持する支持部に向って(当該空間部へ)液体が流れ込み、次いで前記液体導入部3aの先端側に設けられている液体送液入部3bへと液体が流れる経路も有する。
【0035】
なお、本発明に係る「光ファイバー連結デバイスの本体の基端側に設けられた光ファイバーを支持する支持部」とは、レーザー発振器などで発生させ、収束された全てのレーザー光が光ファイバーを透過したと仮定した場合(換言すれば、むき出しの光ファイバーを無いものとすると)、光ファイバー連結デバイスの本体にレーザー光が照射されうる領域3dであり(いわゆるレーザー光を受光する領域)、かつ光ファイバーを固定する部分をいう。
【0036】
なお、上記光ファイバーを支持する支持部により、外部から導入される液体が通る空間と光ファイバー連結デバイスの本体33にレーザー光が照射されうる領域3dは隔離されていることが好ましい。また、光ファイバーは図2などで示すように、上記光ファイバーを支持する支持部(3z)を境に基端側および当該支持部で固定されている部分までは樹脂層を被覆していない光ファイバーを使用し、当該支持部から先端側はポリイミド樹脂層などで被覆された光ファイバーを使用することが、安全性または固定化のために好ましい。
【0037】
レーザー光が光ファイバーに導光される際に、全てのレーザー光が、光ファイバー中に導光されない場合、漏れたレーザー光が外部、すなわち光ファイバー連結デバイス本体を照射し、照射された本体の部分はレーザー光が熱に変換されるため、高温になる。なお、上記の漏れたレーザー光が外部(本体)を照射し、照射された部分であるレーザー光が照射されうる領域(3d)の温度は、瞬間的に300℃以上まで達する。
【0038】
しかしながら、液体導入部3aから導入された液体が、前記本体の基端側に設けられた前記光ファイバーを支持する支持部(3d、3z)に向って流れるため、レーザー光が光ファイバー2に導光されず、漏れたレーザー光が照射される領域の近傍、換言すると図2、3などでは漏れたレーザー光が照射されうる領域(3d)の背面(3z)を冷却することができ、熱的損傷を抑制・防止することができる。
【0039】
以下、本発明に係る光ファイバー連結デバイスを用いたレーザー誘起液体噴流発生デバイスの使用方法について説明する。
【0040】
光ファイバー2、光ファイバー連結デバイス3、送液チューブ4、ジェット発生管部5、隔壁部材6、液体注入部7および基部12は予め嵌合や接着等の方法で組み立てられている。したがって、光ファイバー連結デバイス3とレーザー発振器1とを接続し、光ファイバー連結デバイス3の液体導入部3aと液体供給ポンプ10と連結した液体供給チューブ11とを接続するだけで組み付けは完了する。
【0041】
この状態で液体供給ポンプ10より液体を供給すると、液体は液体導入部3a〜(光ファイバー連結デバイスの本体にレーザー光が照射されうる領域3dの近傍(特に、光ファイバーを支持する支持部3zの背面)〜液体送液部3b〜送液チューブ4〜隔壁部材6の外周〜隔壁部材6の内部〜ジェット発生管部5の順に流れる。ジェット発生管部5の先端から液体が流出した時点で満液状態となり、いわゆるプライミングが完了する。
【0042】
術者はガイドワイヤー(図示せず)を生体内に挿入し、次いでガイドワイヤーを先端より突出させた状態で基部側からYコネクター(図示せず)を接続したガイディングカテーテル(図示せず)を通し、血栓近傍まで進める。そしてガイドワイヤーの先端が血栓の位置まで到達し、ガイディングカテーテルがその手前まで到達させたら、ガイドワイヤーをガイドとしてチューブ8を血管内に挿入する。チューブ8の先端がガイディングカテーテル先端より突出し、かつ血栓近傍に到達したら、ガイドワイヤーを抜去する。
【0043】
続いて液体注入部7のチューブ接続部14をハブ15に液密に接続して、チューブ8とジェット発生管部5とを液密に接続(接触)し、液体供給ポンプ10を作動させてチューブ8に液体を供給しつつ、レーザー発振器1を動作させると、光ファイバー2の先端側よりレーザー光がパルス的に照射され、それが液体を急激に蒸発気化させる。このとき形成されるバブルによる体積膨張が加圧力となり、ジェット発生管部5内の、蒸発していない液体を急激に先端側へと押し出す。これにより液体ジェット流が生じる。
【0044】
本実施形態では、レーザー照射はチューブ8内部ではなくジェット発生管部5内で行なわれるため、レーザー照射により生じるバブルが及ぼす加圧力は、ジェット発生管部5へも作用することとなる。しかしジェット発生管部5は機械的強度を有するため、変形等は生じない。結果として、バブルによる加圧力は確実に液体へと作用することとなる。
【0045】
レーザー照射により生じた液体ジェット流は、チューブ8内を伝播し、前方の血栓に向かって噴射され、この衝突と、場合によっては血栓溶解剤等の薬剤の補助により、血栓が破砕される。
【0046】
血栓の破砕が確認されたら、ガイディングカテーテルの基部に接続されたYコネクターのポートから血栓破砕片を吸引し、体外に取り出す。以上の手順により、血管内での血液の再還流が開始される。
【0047】
上記の治療では、患者の安全性を確保すべく、患者の体外でレーザーを照射しているため、チューブ8の先端から血栓破砕に充分な勢いの液体ジェット流を発生させるために、レーザー発振器1からは高い光強度を有するレーザー光を発振している。加えて本治療に要する時間は、破砕対象である血栓の硬さや量によって左右され、血栓が硬かったり量が多かったりすると、それだけ手技時間が長引いてしまう。その結果、受光面2aにて受光し切れずに漏出したレーザー光により、光ファイバー連結デバイスの本体にレーザー光が照射されうる領域3d(特に、光ファイバーを支持する支持部3z)に熱的損傷を生じ、最悪の場合は装置の破損および手技の中断の虞があった。特に、漏出したレーザー光は、光ファイバー連結デバイス3の中心軸(内空間部3の中心軸)に向かって突出する光ファイバーを支持する支持部3zの受光部の基端面3nに垂直ないし垂直に近い方向に当たるため、この受光部の基端面3nの熱的損傷が著しい傾向がある。
【0048】
しかしながら本発明は、光ファイバー連結デバイスの本体にレーザー光が照射されうる領域3d(特に、光ファイバーを支持する支持部3z)を液体供給ポンプ10より供給され内空間部3k内を流れてこの受光部3dと接触する液体にて常に冷却する構造となっている。光ファイバー連結デバイスの本体にレーザー光が照射されうる領域3d(特に、光ファイバーを支持する支持部3zであって、受光部の基端面3n)の熱的損傷を低減させ、高寿命化を図ることが可能である。
【0049】
一方、術中の術者の移動や行動の妨げとならないよう、レーザー発振器1は術者からかなりの距離離間して配置される。したがって光ファイバー2は、レーザー発振器1から長距離にて配置されることとなるが、光ファイバー2が剥き出しの状態では、それに伴う術者やその助手たちが光ファイバー2を踏みつけたり、躓いたり、引っ掛けたりする等、何らかの外的要因により光ファイバー2に強い力がかかることで、光ファイバー2に損傷や破断を生じ、最悪の場合はレーザー光の漏出による器物、人体への悪影響が生じる虞がある。
【0050】
本発明に係る光ファイバー連結デバイスを有するレーザー誘起液体噴流デバイスにおいては、送液チューブ4の内部に光ファイバー2が挿通する形で配置されており、送液チューブ4によって光ファイバー2を保護する構造になっている。このため、光ファイバー2の破損のリスクを低減できる。なお、送液チューブ4は、デバイス3の本体と別体であるが液体送液部3bと液密に接続可能に構成され、使用時に術者がこれら液密に直結してもよい。
【0051】
しかも、仮に何らかの外的要因によって光ファイバー2や送液チューブ4に破断が生じても、光ファイバー2の破断部位から漏出したレーザーによるチューブの溶融部位やチューブの破断部位から液体が漏出するので、破断を早期に検出することができる。
【0052】
加えて、光ファイバー連結デバイスの本体にレーザー光が照射されうる領域3d(特に、光ファイバーを支持する支持部3z)を冷却する液体をそのままレーザー照射部に送液して治療に用いることにより、光ファイバー連結デバイスの本体にレーザー光が照射されうる領域3d(特に、光ファイバーを支持する支持部3z)を冷却用と治療用の液体とをそれぞれ別個に用意する必要がなくなり、装置全体の構造を簡素化でき、製造上有利な上、術者の手元まで伸びる光ファイバー2と送液チューブ4とを1本にまとめることで、装置使用時のセッティングが容易となり、加えて操作性も向上させることができる。
【0053】
「第2実施形態」
図4は本発明の第2実施形態を示す光ファイバー連結デバイス部分の要部拡大断面図である。前記実施形態と同様の部材は同一符号を使用し、説明を省略する。
【0054】
本実施形態は光ファイバー連結デバイス3の内部に光ファイバー連結デバイスの長手方向に延設する流れ変更部材3gを設けることで、光ファイバー連結デバイス内部に液体導入部3aからの送液が伴う流れを作り出し、光ファイバー連結デバイスの本体にレーザー光が照射されうる領域3d(特に、光ファイバーを支持する支持部3z)の冷却効率を更に高める構造となっている。すなわち、本発明に係る流れ変更部材3gを、光ファイバーと光ファイバー連結デバイスの本体の内壁との間に設けることが好ましい。流れ変更部材3gの基端は光ファイバー支持部3zにおけるレーザー光の受光部の基端面3nの背面から先端方向に若干離間しており、液体導入部3aから流入した液体は、流れ変更部材3gの外側に沿って光ファイバー連結デバイスの本体にレーザー光が照射されうる領域3d(特に、光ファイバーを支持する支持部3z)を冷却した後、流れ変更部材3gの外側を流れる液体は流れ変更部材3g基端とレーザー光が照射されうる領域3d(特に、光ファイバーを支持する支持部3z)との隙間を通って流れ変更部材3gの内側を流れ、液体送液部3bよりレーザー照射部へと送り出される。これにより、常に新鮮な液体がレーザー受光部3dを冷却するため熱的損傷を更に低減させることが可能となる。
【0055】
本発明に係る流れ変更部材の構成材料としては、公知の材料を使用することができ、適宜選択されるものであるが、例えばポリカーボネート、塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレンなどの高分子材料や、ステンレスなどの金属材料が挙げられる。さらに、上記流れ変更部材の形状は、棒状、板状のものや、流体力学的に表面加工した形状のものを適宜使用することができる。また、流れ変更部材を設ける位置については、図7でも示される光ファイバー支持体3cと同様に、一定間隔を設けて設置してもよいが、液体の流れを遮断しないようにすべきである。例えば、先端側から基端側をみた断面を考えた場合(図7のような断面図では)、本発明に係る流れ変更部材は、光ファイバー支持体3cの背後に先端側から基端側に向かって流れ変更部材を設置することで流れを作りだしてもよい。
【0056】
上記流れ変更部材の長さは、光ファイバー連結デバイスの長手方向の長さに対しては特に制限はなく、必ずしも光ファイバー直結デバイスに内蔵されなくてもよい。
【0057】
また、本発明に係る光ファイバー連結デバイスの断面において、内部に挿通される光ファイバー最外周から流れ変更部材最内周までの離間距離、および流れ変更部材最外周から光ファイバー連結デバイス最内周までの離間距離は、両者が少なくとも同じである必要はないが、水や生理緩衝溶液、生理食塩水などの液体が充分に内部を流れることができれば例えばそれぞれの離間距離は、特に制限されないが、0.05〜5.00mmが好ましく、0.07〜1.5mmがより好ましい。
【0058】
「第3実施形態」
図5は本発明の第3実施形態を示す光ファイバー連結デバイス部分の要部拡大断面図である。前記実施形態と同様の部材は同一符号を使用し、説明を省略する。
【0059】
本実施形態は光ファイバー連結デバイス3に回転部3hを設け、送液チューブ4に捻れが生じない構造としたものである。これにより、術者が使用中液体注入部7およびチューブ8を回転させても、送液チューブ4の損傷のリスクを低減することができる。
【0060】
液密性を保つため、回転部3hの接続部には、シリコーンゴム等の高い柔軟性を有する樹脂で形成されたOリング3iが配置されている。
【0061】
より詳細に説明すると、本発明に係る光ファイバー連結デバイスを有するレーザー誘起液体噴流発生デバイスは、光ファイバー連結デバイス3の液体導入部3bの先端に送液チューブ4の接続部を介して接続された送液チューブ4を通って外部に液体を送液するが、液体送液部3bの先端と送液チューブ4との接続部との間でデバイス3の本体を基端側と先端側に分け、これにより生じる基端側部材B1と先端側部材B2とを連結部Aにより相互に連結し、先端側部材B2が基端側部材B1に対し回転可能とした回転手段が設けられていることが好ましい。
【0062】
連結部Aは、送液チューブ4の基端側に設けられた回転部3hと、光ファイバー連結デバイス3の本体における液体送液部3bに設けられた凹部3yとからなり、前記回転部3hと前記凹部3yを凹凸嵌合することにより基端側部材B1と先端側部材B2とを連結している。
【0063】
回転手段は、先端側部材B2を基端側部材B1に対し回転させることができるものであればどのようなものであってもよく、本実施形態では、回転部3hの中間部位に設けられた環状突起3iiiと、液体送液部3bの先端側に形成された抜け止め用の突起3iiと、環状突起と凹部との間に設けられたOリング3iとから構成され、送液チューブ4を液体送液部3bの先端に連結するとき、環状突起3iiiが抜け止め用の突起3iiを越えて係合し、送液チューブ4と液体送液部3bが脱着可能に係合すると共に先端側部材B2が基端側部材B1に対し回転できる構成となっている。なお、Oリング3iは、内部の液体を封止する機能も有しているが、環状突起3iiiと抜け止め用の突起3iiとの間に設けてもよい。
【0064】
なお、本発明に係る送液チューブの基端側に設けられた回転部の材料は、公知の材料であれば使用することができ特に制限されず、本発明に係る光ファイバー連結デバイスの本体の材料と同様の材料を用いてもよい。
【0065】
「第4実施形態」
図6は本発明の第4実施形態を示す光ファイバー連結デバイス部分の要部拡大断面図である。前記実施形態と同様の部材は同一の符号を使用し、説明を省略する。
【0066】
本実施形態は光ファイバー連結デバイス3に圧力計9を接続する圧力検出口3jを設けたものである。液体供給ポンプ10からチューブ8までのライン内圧の変動を監視することで、送液チューブ4や液体注入部7等に生じた損傷による液体の漏出を検出でき、その結果装置の安全性を高めることができる。
【0067】
液体供給ポンプ10の稼動後、ライン内圧は液体が光ファイバー連結デバイス3からチューブ8に送液されるにつれて徐々に上昇し、チューブ8の先端に液体が到達した時点でほぼ一定の値となる。従ってラインの途中に損傷が生じて液体が漏出すると、その内圧は急激に減少することとなる。実施形態ではその内圧の低下を検出し、液体の漏出すなわちラインの損傷をいち早く感知することが可能である。
【0068】
本発明に係る圧力計9としては、ブルドン管圧力計、ダイアグラム圧力計等の弾性圧力計やマノメータ、その他各種圧力計が利用可能である。なお、圧力計9がレーザー発振器1と連動しており、一定の圧力低下でレーザー発振器1を停止させる構造となっていれば、液体が流れていない状態でレーザー照射による照射部位の急激な加熱を予防でき、より好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、レーザーと液体を併用して作用を発現させる機器において、光ファイバーとレーザー発振器とを連結しながら、液体をレーザー受光面の冷却に使用し、同時に送液チューブによって光ファイバーを損傷等のリスクから保護し、かつ同チューブにて液体をレーザー照射部へと送液可能な光ファイバー連結デバイスとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る光ファイバー連結デバイスを用いたレーザー誘起液体噴流発生デバイスの全体図である。
【図2】図1における要部を示す拡大断面図であり、本発明に係る光ファイバー連結デバイスの模式図である。
【図3】図1における要部を示す拡大断面図であり、本発明の第1実施形態を示す光ファイバー連結デバイスの拡大断面図である。
【図4】図1における要部を示す拡大断面図であり、本発明の第2実施形態を示す光ファイバー連結デバイスの拡大断面図である。
【図5】図1における要部を示す拡大断面図であり、本発明の第3実施形態を示す光ファイバー連結デバイスの拡大断面図である。
【図6】図1における要部を示す拡大断面図であり、本発明の第4実施形態を示す光ファイバー連結デバイスの拡大断面図である。
【図7】本発明における光ファイバー連結デバイスを先端側から基端側を見た場合における拡大断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1…レーザー発振器、
2…光ファイバー、
2a…受光面
3…光ファイバー連結デバイス、
33…光ファイバー連結デバイスの本体、
3a…液体導入部、
3b…液体送液部、
3c…光ファイバーを固定する支持体、
3d…レーザー光が照射されうる領域、
3e…連結金具、
3f…抜け止め用の突起
3g…流れ変更部材、
3h…回転部、
3k…内空間部、
3i…Oリング、
3ii…抜け止め用の突起、
3iii…環状突起、
3n…受光部の基端面、
3x…先端面
3y…凹部
3z…光ファイバー支持部、
4…送液チューブ、
5…ジェット発生管部、
6…隔壁部材、
7…液体流入部、
8…チューブ、
9…圧力計、
10…液体供給ポンプ、
11…液体供給チューブ、
12…基部
14…チューブ接続部
15…ハブ
A…連結部、
B1…基端側部材
B2…先端側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に光ファイバーが挿通される空間部を有する本体と、前記本体をレーザー発振器と連結し前記光ファイバーに光源からのレーザー光を導光するように連結する連結金具を備えた光ファイバー連結デバイスであって、
前記本体は、前記連結金具の先端側に、前記空間部内に液体を導入する液体導入部と、前記液体導入部の先端側に前記液体を外部に流出させる液体送液部と、を設け、
前記液体導入部から導入された液体が、前記本体の基端側に設けられた前記光ファイバーを支持する支持部に向って流れるようにしたことを特徴とする光ファイバー連結デバイス。
【請求項2】
前記空間部内に、前記液体を前記支持部に向かうようにする流れ変更部材を備える、請求項1に記載の光ファイバー連結デバイス。
【請求項3】
前記本体は、先端側にチューブを介して、前記光ファイバーの先端から前記液体に向って照射されたレーザー光によりジェット流を生じさせるレーザー誘起液体噴流発生デバイスを連結したことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバー連結デバイス。
【請求項4】
前記チューブは、前記本体に対し回転部を介して回転可能に連結したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバー連結デバイス。
【請求項5】
前記本体は、内部の圧力を検出し、前記レーザー発振器の出力を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ファイバー連結デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−36025(P2008−36025A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212433(P2006−212433)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】