説明

光ファイバ保持部材、光電気変換モジュール用部品及び光電気変換モジュール

【課題】光ファイバを高精度に固定して光伝送の信頼性を向上させることが可能な光ファイバ保持部材、光電気変換モジュール用部品及び光電気変換モジュールを提供する。
【解決手段】ガラスファイバが挿入される光ファイバ挿通孔13が形成され、ガラスファイバの挿入方向前方側の前端22aに電極14が設けられたフェルール12を有する光ファイバ保持部材11であって、フェルール12は、後端部23側に対して前端部22側の厚さが薄く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送等に用いられる光ファイバ保持部材、光電気変換モジュール用部品及び光電気変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
LSI間信号の高速化に伴い、電気による伝送ではノイズ、消費電力増加を解消することが困難となってきている。そこで、近年、LSI間を、電磁障害や周波数依存性損失が殆どない光通信で伝送する試みがなされている。
この光伝送に用いられる光配線部品として、光ファイバ等の光導波体と、該光導波体の光入出力端が素子搭載面から少なくとも一部突出するように該光導波体を保持し位置決めするフェルールと、このフェルールの少なくとも素子搭載面に設けられた電気配線と、前記フェルールの素子搭載面に搭載され且つ前記電気配線に電気接続された面型光素子とを具備したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、光デバイスが接続される一端側に電気回路を有するとともに複数の光ファイバ挿入孔を備え、光ファイバ挿入孔の光デバイス側に短尺ファイバを固定し、光フェルールの一端側に光デバイスが結合される光フェルールも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−59867号公報
【特許文献2】特開2009−128424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなフェルールでは、光ファイバの固定および受発光素子(例えば面発光素子)とフェルールの接合強度向上のため、アンダーフィル材と呼ばれる樹脂からなる接着材が使用され、この接着材を硬化させるためにフェルールを加熱する熱処理が行われる。
このような熱処理は、フェルールを均等に加熱することが難しいため、光ファイバの挿入位置を精密に制御しても、アンダーフィル材の熱膨張や熱収縮が不均等に生じ、光ファイバの位置が若干動いてしまうことがある。特に、受発光素子と対向する先端部分の位置が動いてずれると、受発光素子と光ファイバとの間での光送受信が不安定となり、光伝送の信頼性が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、光ファイバを高精度に固定して光伝送の信頼性を向上させることが可能な光ファイバ保持部材、光電気変換モジュール用部品及び光電気変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の光ファイバ保持部材は、光ファイバが挿入される光ファイバ挿通孔が形成され、前記光ファイバの挿入方向前方側の前端に電極が設けられたフェルールを有する光ファイバ保持部材であって、
前記フェルールは、後端部側に対して前端部側の厚さが薄いことを特徴とする。
【0008】
本発明の光ファイバ保持部材において、前記フェルールは、その後端に、光ファイバを保持した光コネクタを位置決めして接続させる位置決めガイドを有することが好ましい。
【0009】
本発明の光ファイバ保持部材において、前記フェルールの前端部側における厚さ方向の上下面は、何れか一方が前記光ファイバ挿通孔の軸線と平行な面であることが好ましい。
【0010】
本発明の光ファイバ保持部材において、前記フェルールの前端部側における上下面は、その一方が前記光ファイバ挿通孔の軸線と平行な面であり、他方が前端から後端部側へ向かって次第に前記光ファイバ挿通孔から離間する傾斜面であることが好ましい。
【0011】
本発明の光ファイバ保持部材において、前記フェルールの後端には、前記光ファイバ挿通孔の軸線に対して上下の何れか一方が開放され、前記光ファイバ挿通孔と繋がるガイド溝を有するガイド部が形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の光電気変換モジュール用部品は、上記本発明の何れかに記載の光ファイバ保持部材と、前記光ファイバ保持部材の前記フェルールに形成された前記光ファイバ挿通孔へ挿入されて接着固定された光ファイバと、前記電極と導通接続された状態に前記フェルールの前端に取り付けられた光デバイスとを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の光電気変換モジュールは、上記本発明の光電気変換モジュール用部品と、前記光電気変換モジュール用部品が固定された回路基板と、前記回路基板に実装された電気デバイスとを備え、前記光ファイバ保持部材の前記フェルールの前端と前記電気デバイスとが略同一高さとされて、前記電極と前記電気デバイスとがワイヤーボンドにより導通接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フェルールの後端部側に対して前端部側の厚さが薄いので、熱処理して接着材を硬化させて光ファイバ挿通孔へ挿通させた光ファイバを固定させる際に、前端部側から温度が上昇して接着材が前端部側から硬化される。これにより、前端に取り付けられる光デバイスとの良好な光伝送のために最も正確に位置決めして固定することが要求される前端部における光ファイバの位置ずれを確実に防止することができる。したがって、光デバイスと光ファイバとの間での光送受信を安定化させることができ、光伝送の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る光ファイバ保持部材の一例を示す図であって、(a)は下面側から視た前方側の斜視図、(b)は上面側から視た後方側の斜視図である。
【図2】図1の光ファイバ保持部材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は裏面図、(c)は背面図、(d)は上下を逆にした状態の側面図である。
【図3】図1の光ファイバ保持部材の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る光電気変換モジュール用部品の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る光電気変換モジュールの一例を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る光電気変換モジュール用部品及び光コネクタの斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る光ファイバ保持部材を用いた光電気変換モジュール用部品の製造工程を示す図であって、(a)〜(c)は、それぞれ断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る光ファイバ保持部材を用いた光電気変換モジュール用部品の変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る光ファイバ保持部材を用いた光電気変換モジュール用部品の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る光ファイバ保持部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る光ファイバ保持部材、光電気変換モジュール用部品及び光電気変換モジュールの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、光ファイバ保持部材11は、フェルール12からなるものであり、このフェルール12は、樹脂によって一体成型されている。このフェルール12は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を主成分とする熱可塑性樹脂から形成されている。ポリフェニレンサルファイドを主成分とする熱可塑性樹脂は、精密成形性に優れた樹脂であり、精密成形を要するフェルール12に用いるのに好適である。また、このポリフェニレンサルファイドを主成分とする熱可塑性樹脂は、線膨張係数が小さく、耐熱性にも優れた樹脂である。
【0017】
図3にも示すように、フェルール12は、前端部22と後端部23とから構成されており、後端部23に対して前端部22の厚さが薄く、幅寸法も小さくされている。この前端部22の厚さは、十分な機械的強度が確保可能な範囲で極力薄く形成されている。そして、フェルール12の前端部22における上下面は、光ファイバ挿通孔13の軸線と平行な面となるように形成されている。
【0018】
フェルール12には、前端部22の前端22aから後端部23の後端23aにわたって複数の光ファイバ挿通孔13が形成されており、これらの光ファイバ挿通孔13が、フェルール12の幅方向に間隔をあけて配列されている。これらの光ファイバ挿通孔13には、フェルール12の後端23a側から、それぞれ後述する内蔵のガラスファイバ(光ファイバ)32が挿入されて固定されるようになっている。
【0019】
フェルール12の前端部22には、その前端22aに、厚さ方向へ延在する電極(リードフレーム)14が複数設けられている。これらの電極14は、例えば、インサート成型によってフェルール12の前端22aに一体的に設けられている。つまり、このフェルール12は、複数の電極14とともに一体成型されている。そして、フェルール12の前端部22の上下面には、電極14の端部が露出されており、この露出された電極14の一部がパッド面14aとして設けられている。また、このフェルール12の前端22aには、その上下の縁部に、幅方向へわたるリブ20が形成されている。
【0020】
フェルール12の前端部22の後端部23側の根元部分は、後端部23側へ向かって次第に厚さ及び幅が広く形成されている。これにより、前端部22の根元部分における応力集中が抑制される。なお、この前端部22の根元部分の厚さ方向及び幅方向の断面形状としては、円弧形状であってもよく、テーパ形状であってもよい。
【0021】
また、フェルール12には、後端23aに、光ファイバ挿通孔13の軸線に対して上方が開放されたガイド部24が光ファイバ挿通孔13の配列に沿って形成されている。このガイド部24には、光ファイバ挿通孔13と繋がる複数のガイド溝24aが形成されており、これらのガイド溝24aの上方が開放されている。なお、光ファイバ挿通孔13のガイド部24に繋がる部分は、ガイド部24へ向かって次第に拡径された挿入ガイド孔13bとされており、光ファイバ挿通孔13へのガラスファイバ32の挿入の円滑化が図られている。
【0022】
フェルール12の後端部23には、その両端部に、位置決め穴(位置決めガイド)25が形成されている。これらの位置決め穴25には、後述する光コネクタ50に装着された位置決めピン(位置決めガイド)47が挿入可能である。位置決め穴25に位置決めピン47を挿入することにより、光コネクタ50がフェルール12の後端23aに位置決めされた状態で接続される。
【0023】
次に、光電気変換モジュール用部品及び光電気変換モジュールについて説明する。
図4に示すように、光電気変換モジュール用部品30は、光ファイバ保持部材11を構成するフェルール12の光ファイバ挿通孔13に、コア及びクラッドを有するガラスファイバ32が挿通されて固定されている。これらのガラスファイバ32は、その先端部が略平滑な面に形成され、光デバイス41に過剰な圧力がかからなければ光デバイス41に接触しても良いが、好ましくは、フェルール12の前端22aと同一面上または光ファイバ挿通孔13内へ少し引き込んだ位置に配置されている。
【0024】
なお、ガラスファイバ32は、その先端を斜めに切断したものでも良い。ガラスファイバ32の先端が斜めに切断されていると、光デバイス41との光伝送時における光の反射を極力少なくすることができる。また、実装トレランスが拡大され、多少の軸ずれを許容することができる。特に、マルチモードファイバの場合には、伝送光のモードスペックルノイズの発生を抑制することができる。
【0025】
フェルール12の前端22aには、リブ20の間に光デバイス41が取り付けられている。この光デバイス41は、フェルール12の前端22aに取り付けられる取り付け面である素子面に、素子部42と端子部43とを有している。
この光デバイス41は、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)やフォトダイオードなどの発光素子または受光素子である。光デバイス41の素子部42は、光デバイス41が発光素子である場合は発光部であり、光デバイス41が受光素子である場合は受光部である。
【0026】
この光デバイス41は、その端子部43が、フェルール12に設けられた電極14に対して、例えば、金(Au)からなるバンプ40によって導通接続されている。このバンプ40による接続は、超音波振動または熱によってバンプ40を介して端子部43と電極14とを接続するフリップチップ実装で行われる。あるいは、異方性導電フィルム(ACF)を用いて接着することも可能である。このようにフェルール12に取り付けられた光デバイス41は、その素子部42が、フェルール12の光ファイバ挿通孔13の対向位置に配置されている。
【0027】
なお、フェルール12には、前端22aの幅方向半分に発光素子からなる光デバイス41を取り付け、残りの幅方向半分側に受光素子からなる光デバイス41を取り付ける場合もある。
ガラスファイバ32は、接着材として機能するアンダーフィル材35によって接着されて固定されている。このアンダーフィル材35は、フェルール12の前端22aと光デバイス41との間にも充填されており、このアンダーフィル材35によって光デバイス41とフェルール12とが強固に接合されている。このアンダーフィル材35は、フェルール12に対して熱処理を施すことにより硬化されている。
【0028】
上記構造の光電気変換モジュール用部品30は、光電気変換モジュールとして用いる場合、ガイド部24が切断される場合がある。この切断箇所では、ガラスファイバ32の後端部が鏡面加工されている。なお、フェルール12は、ガイド部24を切断して鏡面加工を施す際に、前端部22より幅及び厚さ寸法が大きい後端部23によって充分な強度を有するので、十分な耐久性を発揮することができる。
【0029】
上記のような光電気変換モジュール用部品30は、図5に示すように、回路基板51に実装されて光電気変換モジュール31とされる。
この光電気変換モジュール31では、光電気変換モジュール用部品30を構成するフェルール12の前端部22が回路基板51の回路面51aにボンディング材等によって固定される。
【0030】
このように、前端部22を回路面51aへ配置させることにより、光電気変換モジュール用部品30が回路基板51の所定位置へ実装される。ここで、光ファイバ保持部材11を構成するフェルール12の前端部22における上下面が、光ファイバ挿通孔13の軸線と平行な面であるので、例えば、前端部22における下面を回路基板51に配置させることにより、極めて容易かつ円滑にフェルール12を回路基板51に取り付けることができる。
【0031】
回路基板51には、回路面51aに、電気デバイス55が実装されており、電気デバイス55の端子55aが回路面51aに形成された回路パターン(図示省略)と導通されている。なお、電気デバイス55は、例えば、ドライバ、トランスインピーダンスアンプなどの光素子駆動ICである。
【0032】
また、この回路基板51に実装された電気デバイス55の端子55aは、例えば、金(Au)からなるボンディングワイヤ56によってフェルール12の電極14のパッド面14aに導通接続される。
【0033】
回路基板51に実装された光電気変換モジュール用部品30のフェルール12は、その前端部22の高さが、回路基板51に実装された電気デバイス55の高さと略同一とされている。これにより、電気デバイス55の端子55aとフェルール12の電極14のパッド面14aとをつなぐボンディングワイヤ56の長さを極力短くすることができる。よって、ボンディングワイヤ56における高周波特性を向上させ、電気的ノイズの影響を極力抑えることができる。
【0034】
光電気変換モジュール用部品30を回路基板51に実装してなる光電気変換モジュール31には、図6に示すように、フェルール12の後端23a側に、光ファイバテープ心線48の複数本の光ファイバ心線49が接続された光コネクタ50が接続される。この光コネクタ50は、ポリエステル樹脂、PPS樹脂及びエポキシ樹脂の何れかを含む材料で形成されたコネクタフェルール44を有している。
【0035】
光ファイバ心線49は、コア及びクラッドを有するガラスファイバ(光ファイバ)45を樹脂によって被覆したものであり、光ファイバ心線49の端部で被覆から露出されたガラスファイバ45がコネクタフェルール44に保持されている。そして、コネクタフェルール44におけるフェルール12との対向面である光入出面44aで、それぞれのガラスファイバ45の端面が露出されている。
【0036】
光コネクタ50には、フェルール12側の光入出面44aの両側部に、フェルール12側へ突出する位置決めピン(位置決めガイド)47が設けられている。これらの位置決めピン47は、フェルール12に形成された位置決め穴25へ挿入して嵌合させることが可能である。光コネクタ50は、位置決めピン47を位置決め穴25へ挿入させながら、フェルール12側へ近接させることにより、ガラスファイバ45の先端面を、フェルール12に保持させたガラスファイバ32の後端面に高精度に配置させることができる。
【0037】
上記の光電気変換モジュール31では、光デバイス41と光コネクタ50のガラスファイバ45との間で、光電気変換モジュール31のガラスファイバ32を介して光伝送が行われる。
【0038】
発光素子からなる光デバイス41からガラスファイバ45へ光伝送が行われる場合では、光デバイス41の素子部42から発光された光が、光電気変換モジュール31のガラスファイバ32を介して光コネクタ50のガラスファイバ45へ入射することとなる。また、光コネクタ50のガラスファイバ45から、受光素子からなる光デバイス41へ光伝送が行われる場合では、ガラスファイバ45から出射した光が、光電気変換モジュール31のガラスファイバ32を介して光デバイス41の素子部42へ入射することとなる。
【0039】
また、この光電気変換モジュール31によれば、回路基板51に実装した後に光コネクタ50を接続して光伝送を行うことができるので、光コネクタ50の接続後に、例えば、光ファイバ心線49側に不具合が生じたとしても、光電気変換モジュール31を交換する必要がなく、歩留まりの低下によるコスト高を抑えることができる。また、予め光ファイバ心線49を接続した構造と比較して、回路基板51等への取り付けの際の、良好な組み立て作業性を確保することができる。
【0040】
なお、上記の例では、光ファイバ保持部材11のフェルール12に位置決め穴25を形成し、この位置決め穴25に光コネクタ50側の位置決めピン47を挿入させることにより、光ファイバ保持部材11と光コネクタ50とを位置決めしたが、光ファイバ保持部材11のフェルール12に位置決めピンを形成し、この位置決めピンを光コネクタ50に形成した位置決め穴へ挿入して位置決めする構造としても良い。
【0041】
本実施形態の光ファイバ保持部材11は、フェルール12が後端部23側に対して前端部22側の厚さが薄いので、接着材であるアンダーフィル材35を熱処理して硬化させることにより、光ファイバ挿通孔13へ挿通させたガラスファイバ32を固定させる際に、アンダーフィル材35の温度が前端部22側から上昇して硬化する。したがって、光デバイス41との良好な光伝送のために最も正確に位置決めして固定することが要求される前端部22におけるガラスファイバ32の位置ずれを確実に防止することができる。これにより、光デバイス41とガラスファイバ32との間での光送受信を安定化させることができ、光伝送の信頼性を高めることができる。
【0042】
また、フェルール12には、後端23aに、上方側が開放されたガイド部24が形成されているので、このガイド部24のガイド溝24aにガラスファイバ32の先端部を載せ、このガラスファイバ32を光ファイバ挿通孔13へ極めて容易に挿し込むことができる。これにより、光ファイバ挿通孔13へのガラスファイバ32の挿入作業の容易化を図ることができる。
【0043】
また、光ファイバ挿通孔13へ挿し込んだガラスファイバ32の先端が光デバイス41に当接した場合でも、ガイド部24における開放された上方または側方へガラスファイバ32が容易に湾曲する。これにより、ガラスファイバ32は、小さな挿入力で湾曲することによって挿入力が逃がされて、光デバイス41との当接箇所への過剰な当接力の付与を防止することができる。したがって、ガラスファイバ32の挿入位置を厳密に管理するような煩雑な管理作業を行うことなく、光デバイス41とガラスファイバ32との過剰な当接による光デバイス41の素子部42の損傷やガラスファイバ32の端面損傷などの不具合を防止することができる。特に、光デバイス41との光伝送時における光の反射戻りを抑えるためにガラスファイバ32の先端を斜めに切断したとしても、光デバイス41の素子部42の剥離やガラスファイバ32の端面損傷などの不具合を防止することができる。
【0044】
また、ガラスファイバ32を固定する接着材であるアンダーフィル材35を光ファイバ挿通孔13へ充填する際に、ガイド部24がアンダーフィル材35に受け止められる。これにより、アンダーフィル材35の充填作業の円滑化を図ることができる。
【0045】
なお、ガイド部24を長くすることにより、ガラスファイバ32が光デバイス41に当接して湾曲する際の挿入力をより小さくすることができるとともに、ガラスファイバ32の位置決めのさらなる容易化を図ることができる。
【0046】
また、ガイド部24に形成されたガイド溝24aとしては、V溝にすることが好ましい。V溝にすると、ガイド溝24aへガラスファイバ32を配置させる際に、ガラスファイバ32の先端部のガイド溝24aへの干渉を極力抑え、ガラスファイバ32の損傷を防止することができる。
【0047】
次に、上記の光ファイバ保持部材11を用いて図4の光電気変換モジュール用部品30を製造する方法について、工程ごとに説明する。
【0048】
まず、内蔵させるガラスファイバ32を切断し、フェルール12の全長よりも長い寸法とする。このとき、ガラスファイバ32は、その先端部を略平滑面としておく。具体的には、ガラスファイバ32の一部に傷を付け、その傷部分に曲げ力を付与して破断させるへき開による切断、超硬刃切断あるいはレーザー切断によって、ガラスファイバ32の先端部を略平滑面とする。
【0049】
次に、図7(a)に示すように、前端22aに光デバイス41を超音波フリップチップ実装等によって搭載したフェルール12を用意し、このフェルール12の光ファイバ挿通孔13に接着材であるアンダーフィル材35を充填する。
【0050】
そして、図7(b)に示すように、このフェルール12のガイド部24で上方側が開放されている光ファイバ挿通孔13と繋がるガイド溝24aにガラスファイバ32の先端部を載せ、このガラスファイバ32をガイド溝24aに沿わせて光ファイバ挿通孔13へ挿し込んで、ガラスファイバ32の先端面を光デバイス41の素子部42と対向させる。このとき、ガラスファイバ32をフェルール12に形成されたガイド部24のガイド溝24aへ載置させることにより、容易に光ファイバ挿通孔13に対して位置決めすることができる。よって、光ファイバ挿通孔13へのガラスファイバ32の挿入作業の容易化を図ることができる。
【0051】
光ファイバ挿通孔13へ挿し込んだガラスファイバ32は、その先端が光デバイス41に当接すると、ガイド部24における開放された上方または側方へ小さな挿入力で湾曲する。これにより、ガラスファイバ32は、湾曲することによって挿入力が逃がされ、光デバイス41との当接箇所へ過剰な当接力が加わることが防止される。
【0052】
なお、アンダーフィル材35は、光ファイバ挿通孔13へのガラスファイバ32の挿入とともにガラスファイバ32の外周と光ファイバ挿通孔13の内周との間の僅かな隙間に充填されるとともに、ガラスファイバ32の先端に押し出される。
【0053】
次に、フェルール12に、100℃〜150℃程度の熱処理を施してアンダーフィル材35を硬化させる。このとき、フェルール12は、前端部22の厚さが後端部23の厚さよりも薄いので、前端部22側の温度が先に上昇する。したがって、アンダーフィル材35は、早く温度が上昇する前端部22側から硬化し、その後、後端部23側が硬化する。
【0054】
このように、アンダーフィル材35を硬化させる際に、このアンダーフィル材35が前端部22側から硬化するので、前端部22におけるガラスファイバ32の位置ずれを防止することができる。これにより、光デバイス41の素子部42に対してガラスファイバ32を所定の位置に高精度に配置させることができ、光デバイス41とガラスファイバ32との間での光送受信を安定化させることができ、光伝送の信頼性を向上させることができる。
【0055】
その後、図7(c)に示すように、フェルール12のガイド部24を、ガラスファイバ32とともに後端部23側の根元部分から切断し、ガラスファイバ32の切断面を鏡面加工する。ガイド部24の切断の仕方としては、高速回転する円形のダイヤモンドブレードで切断するダイシングがあり、このダイシングによってガイド部24を切断することにより、ガラスファイバ32の切断面を鏡面仕上げすることができる。
そして、上記の工程によりフェルール12にガラスファイバ32が内蔵され、フェルール12の前端22aに光デバイス41が装着された光電気変換モジュール用部品30が得られる。
【0056】
なお、上記実施形態では、フェルール12の光ファイバ挿通孔13にガラスファイバ32を内蔵させる場合を例示して説明したが、図8に示すように、光ファイバ心線の先端の被覆を除去して露出させたガラスファイバ33を直接フェルール12の光ファイバ挿通孔13へ挿入してアンダーフィル材35によって接着して固定させても良い。これにより、ピグテール型の光電気変換モジュール用部品が得られる。
【0057】
また、図9に示すように、前端部22側における光ファイバ挿通孔13内に短尺ガラスファイバ34を固定しておき、その後、光ファイバ心線から露出させたガラスファイバ33を光ファイバ挿通孔13へ挿入して短尺ガラスファイバ34に突き当て、アンダーフィル材35によって接着して固定させても良い。
【0058】
これらの構造の場合も、アンダーフィル材35を硬化させる際に、このアンダーフィル材35が前端部22側から硬化するので、前端部22におけるガラスファイバ33の位置ずれを防止することができる。
【0059】
また、光ファイバ挿通孔13へガラスファイバ33を挿入する際に、ガラスファイバ33をガイド部24のガイド溝24aへ載置させることにより、容易に光ファイバ挿通孔13に対して位置決めすることができ、光ファイバ挿通孔13へのガラスファイバ33の挿入作業の容易化を図ることができる。また、光ファイバ挿通孔13へ挿し込んだガラスファイバ33の先端が光デバイス41または短尺ガラスファイバ34に当接すると、ガイド部24における開放された上方または側方へ湾曲する。これにより、ガラスファイバ33は、湾曲することによって挿し込み力が逃がされ、光デバイス41または短尺ガラスファイバ34との当接箇所へ過剰な当接力が加わることが防止される。
【0060】
また、光ファイバ保持部材11を構成するフェルール12は、その前端部22における上下面の何れか一方が光ファイバ挿通孔13の軸線と平行な面であれば良い。したがって、図10に示すように、前端部22の下面を光ファイバ挿通孔13の軸線と平行な面とし、前端部22の上面を前端22aから後端部23側へ向かって次第に光ファイバ挿通孔13から離間する傾斜面としても良い。このような傾斜面とすれば、熱処理によってアンダーフィル材35を硬化させる際に、前端22aから後端部23側へ向かって次第に硬化させやすくすることができる。
【符号の説明】
【0061】
11:光ファイバ保持部材、12:フェルール、13:光ファイバ挿通孔、14:電極、22:前端部、22a:前端、23:後端部、23a:後端、24:ガイド部、25:位置決め穴(位置決めガイド)、30:光電気変換モジュール用部品、31:光電気変換モジュール、32,33:ガラスファイバ(光ファイバ)、35:アンダーフィル材、41:光デバイス、45:ガラスファイバ(光ファイバ)、50:光コネクタ、51:回路基板、55:電気デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバが挿入される光ファイバ挿通孔が形成され、前記光ファイバの挿入方向前方側の前端に電極が設けられたフェルールを有する光ファイバ保持部材であって、
前記フェルールは、後端部側に対して前端部側の厚さが薄いことを特徴とする光ファイバ保持部材。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ保持部材であって、
前記フェルールは、その後端に、光ファイバを保持した光コネクタを位置決めして接続させる位置決めガイドを有することを特徴とする光ファイバ保持部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバ保持部材であって、
前記フェルールの前端部側における厚さ方向の上下面は、何れか一方が前記光ファイバ挿通孔の軸線と平行な面であることを特徴とする光ファイバ保持部材。
【請求項4】
請求項3に記載の光ファイバ保持部材であって、
前記フェルールの前端部側における上下面は、その一方が前記光ファイバ挿通孔の軸線と平行な面であり、他方が前端から後端部側へ向かって次第に前記光ファイバ挿通孔から離間する傾斜面であることを特徴とする光ファイバ保持部材。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の光ファイバ保持部材であって、前記フェルールの後端には、前記光ファイバ挿通孔の軸線に対して上下の何れか一方が開放され、前記光ファイバ挿通孔と繋がるガイド溝を有するガイド部が形成されていることを特徴とする光ファイバ保持部材。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の光ファイバ保持部材と、前記光ファイバ保持部材の前記フェルールに形成された前記光ファイバ挿通孔へ挿入されて固定された光ファイバと、前記電極と導通接続された状態に前記フェルールの前端に取り付けられた光デバイスとを備えていることを特徴とする光電気変換モジュール用部品。
【請求項7】
請求項6に記載の光電気変換モジュール用部品と、前記光電気変換モジュール用部品が固定された回路基板と、前記回路基板に実装された電気デバイスとを備え、前記光ファイバ保持部材の前記フェルールの前端と前記電気デバイスとが略同一高さとされて、前記電極と前記電気デバイスとがワイヤーボンドにより導通接続されていることを特徴とする光電気変換モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−128005(P2012−128005A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276900(P2010−276900)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】