説明

光ファイバ取付構造

【課題】長期間安定した固定が可能でかつ、光ファイバのコーティングの選択自由度が高い光ファイバ取付構造を提供する。
【解決手段】第一プリフォームガラス24Aと、第二プリフォームガラス24Bとが光ファイバ14に挿通され、貫通穴23に収容される。そして、第二プリフォームガラス24Bが下側となり、かつ、貫通穴23の軸方向が略鉛直方向となるようにし、挿通部21をヒータHで加熱し、第一プリフォームガラス24Aを溶融させる。その後、冷却・硬化させてハーメチックシール状に光ファイバ14を締付け固定する。このため、高い固定強度を長期間維持できる。また、低融点ガラス24により締付け固定を行うので、光ファイバ14のコーティングは、ポリイミド樹脂、紫外線硬化型樹脂、金属、と選択自由度を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度、変位、傾斜などの物理量検出を行う光ファイバセンサの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の物理量検出センサは、電気抵抗、インダクタンス、キャパシタンスの変化に基づく電気信号変化として取り出す方式のものが一般に用いられている。
このような電気式の物理量センサは、電磁干渉による影響を受けやすく、また、長距離信号伝送には不向きである。さらに、物理量測定対象物の敷設状況、例えば可燃性雰囲気などの場合は専用の防爆対策を施した構成にする必要があった。
【0003】
近年、このような問題に対処できるセンサとして、光ファイバ方式の物理量検出センサが数多く提案されている。
その中でも、ファイバブラッググレーティング(Fiber Bragg Grating:以下、FBGと省略)を書き込んだ光ファイバを用いたものは、精度が高く、また、一本の光ファイバケーブルに複数のセンサを多重化して設置できる等の優れた特性を有する。
このため、簡単なシステム構成で広範囲に付設されたモニタリング対象物に対して、複数の測定位置で同時に各種測定ができ、さらには、光の波長を用いるので防爆構造を要する等の物理量測定対象物の施設状況からの影響が少ないものとして注目されている。
【0004】
一般的に、FBGを各種物理量検出用センサとして用いる場合、被測定物の直接的又は間接的な曲げ歪みにより、FBGを含む光ファイバが伸縮歪み等を起こし物理量を検出するため、光ファイバへ正確に且つ安定的に伝達出来る固定方法が必要である。このため、光ファイバを保持部に固定するために接着剤を用いた方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、接着剤以外の固定方法として、金属接合手段であるハンダ付け、ロウ付け及び溶接等を用いた光ファイバの固定方法が提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−173820号公報
【特許文献2】特開2004−361264号公報
【特許文献3】特開2003−255151号公報
【特許文献4】特開2006−194704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来では、接着剤を用いて光ファイバを保持部に固定する場合、光ファイバセンサの長期間の使用によって、光ファイバの固定強度が低下するおそれがあり、長期間安定した光ファイバの固定が困難であることが問題として挙げられる。
上記方法による光ファイバの固定では、個々の光ファイバセンサにおいて接着強度に偏差が生じるおそれがあり、この偏差を原因として測定精度が低下することや安定した測定性能が得られないことなどが問題として挙げられる。
また、ハンダ付けによる光ファイバの固定においては、光ファイバに金属コーティングを施す必要があるため、金属コーティングによる製造コストの増加及び製造方法の煩雑化が問題として挙げられる。
また、ハンダ付けによる光ファイバの固定においては、無電解メッキあるいはスパッタ等による金属コーティングを施した光ファイバと、Au−Snハンダによる固定方法が提案されている。この方法の利点は、固定強度バラツキの低減と長期安定性の向上等がある。
しかしながら、この方法の問題、あるいは制約事項として、
・Auを含むため、ハンダ材料が高価
・ハンダの濡れ性を考慮した固定部材の材質制約または表面処理の必要性
・ハンダによる固定では、光ファイバへの金属コーティングが必要
が挙げられる。
【0007】
本発明の目的は、長期間安定した固定が可能で、低コストかつ、光ファイバの選択自由度が高い光ファイバの取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光ファイバ取付構造は、中央部に回折格子が形成された光ファイバの両端が相対的に変位する一対の保持部に取り付けられた光ファイバ取付構造であって、前記一対の保持部は前記光ファイバが貫通される貫通穴が形成された挿通部を備え、これら挿通部と前記光ファイバとの間は熱膨張係数が前記保持部の熱膨張係数よりも小さな低融点ガラスでハーメチックシール状に締付け固定されていることを特徴とする。
【0009】
この構成の発明では、保持部と光ファイバの回折格子の両側部分とを貫通穴内で低融点ガラスによりハーメチックシール状に締付け固定を行うため、高い固定強度が得られ、かつ、固定強度を長期間維持できる。このため、接着剤等を用いた光ファイバの取付構造に比べ、各光ファイバセンサ間での固定強度の偏差が生じるおそれが少なく、安定した測定精度を有する光ファイバセンサを得ることができる。
【0010】
また、低融点ガラスによりハーメチックシール状に締付け固定を行うため、使用可能な光ファイバのコーティングの選択自由度が高く、コストやセンサの用途、種類等を考慮した選定を行うことができる。
このため、光ファイバのコーティングはポリイミド等の樹脂コーティングでも製作可能となり、光ファイバのコーティング費用を安価に抑えることができる。
【0011】
本発明の光ファイバ取付構造では、前記保持部は、それぞれ挿通部に連結された支持部を備え、これらの支持部のうち一方は被検出部に固定される固定部に連結され、前記支持部のうち他方は錘部に連結され、この錘部と固定部とは略板状の弾性部材とを介して互いに連結されている構成が好ましい。
【0012】
この構成の発明では、光ファイバを固定部及び錘部に直接固定する必要がなく、保持部を介して間接的に固定することができるので、光ファイバセンサの組立調整をより容易に行うことができる。
【0013】
本発明の光ファイバ取付構造では、前記挿通部と前記支持部とは金属接合手段により一体とされている構成が好ましい。
この構成の発明では、保持部を支持部と挿通部とに分割した形状とすることで、支持部及び挿通部それぞれの材質の選択性、形状の自由度を高くすることが可能となる。
【0014】
本発明の光ファイバ取付構造では、前記挿通部は、前記貫通穴の径寸法が軸方向に沿って異なる多段型に形成される構成が好ましい。
この構成の発明では、保持部の貫通穴の断面形状を多段型とすることで、低融点ガラスを加熱・溶融した際に、溶融ガラスが貫通穴から流出するのを防ぐことが可能となる。
【0015】
本発明の光ファイバ取付構造では、前記挿通部は、前記貫通穴の2つの開口部外側に張出した光ファイバ保護部を備える構成が好ましい。
この構成の発明では、開口部外側に光ファイバ保護部を設けることにより、光ファイバと固定部とを連続した形状とすることができ、応力集中する箇所をなくし光ファイバの破断を防ぐことが可能となる。
【0016】
本発明の光ファイバ取付構造は、前記貫通穴の断面形状が円形以外に形成される構成が好ましい。
この構成の発明では、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで、各実施形態の説明において同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
第1実施形態を図1から図4に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態の加速度センサの斜視図である。
図1に示すように、光ファイバセンサとしての加速度センサ1は、加速度による慣性力を受け弾性変形する感知部10と、この感知部10の弾性変形に追従する線状部材である光ファイバ14とを備え、これらが図示しない検出器の筐体内に収容されている。
【0018】
感知部10は、ステンレス等の金属材料を用いて切削加工により製作されており、検出器筐体に取り付けられる直方体状の固定部11と、この固定部11の加速度変化により慣性力を受ける直方体状の錘部12と、これら固定部11と錘部12とを連結する板状の弾性体である弾性部材としての板ばね13とを有する。
【0019】
そして、この感知部10は、固定部11と錘部12とが、例えば、垂直方向12mm、水平方向25mm、奥行き方向20mmの寸法に形成され、板ばね13が厚さ0.3mm、水平方向10mm、奥行き方向20mmの寸法に形成されている。
また、固定部11と錘部12とに1対の保持部20が設けられ、この保持部20により光ファイバ14は板ばね13と平行かつ離れて固定されている。
【0020】
保持部20はステンレス等の金属材料で製作されており、光ファイバ14が挿通される貫通穴23を有する直方体状に形成される挿通部21と、この挿通部21と一体で形成された板状部材である支持部22とを備えている。この支持部22は、溶接、ハンダ付け等の金属接合が施される固定部11及び錘部12の接合面と略同じ面積の平面を有する板状部材となっている。
具体的には、挿通部21は、φ1.5mmの貫通穴23を有する矩形部であって、長さ10mm、水平方向3.5mm、高さ2.5mmの寸法に形成されている。支持部22は、ステンレス部材であって、水平方向25mm、奥行き方向20mm、厚さ方向0.5mmの寸法に形成されている。
【0021】
また、光ファイバ14は、板ばね13と対向する箇所に回折格子としてのFBG15を有しており、このFBG15の両端がそれぞれ固定部11と錘部12とに金属接合された支持部22に設けられた挿通部21の貫通穴23に挿通され、貫通穴23と光ファイバ14との隙間に低融点ガラス24が充填されることにより締付け固定されている。
【0022】
次に、図1〜図4に基づいて、保持部20に光ファイバ14を固定する方法について説明する。図2は、本発明の第1実施形態の加速度センサの光ファイバ取付構造の形成方法を説明するための概略図である。図3は、本発明の第1実施形態の加速度センサの光ファイバ取付構造の形成方法を説明するための概略断面図である。図4は、本発明の第1実施形態の加速度センサの光ファイバ取付構造の斜視図である。
図2に示すように、外径が貫通穴23の内径と同等以下で、かつ、内径が光ファイバ14の外径以上の中空円筒形に成型された溶着前の低融点ガラス24の1種である第一プリフォームガラス24Aを複数個と、この第一プリフォームガラス24Aと同一形状で、かつ第一プリフォームガラス24Aより融点が高い第二プリフォームガラス24B1個とがFBG15を含む光ファイバ14の一方に挿通される。
このとき、FBG15に遠い側から第一プリフォームガラス24Aが連続して配置され、FBG15に最も近い位置に第二プリフォームガラス24Bが配置されるように挿通される。
【0023】
そして、光ファイバ14は、板ばね13に近い側の貫通穴23から第一プリフォームガラス24Aが先に挿通され、続いて第二プリフォームガラス24Bが貫通穴23に挿通されることで、第一プリフォームガラス24A及び第二プリフォームガラス24Bが貫通穴23に収容される。その後、保持部20は、第二プリフォームガラス24Bが下側となり、かつ、貫通穴23の軸方向が略鉛直方向となるように向きを調整し配置される。
【0024】
次に、図3に示すように、光ファイバ14が挿通された挿通部21をクリップ式のヒータHで機械的に挟み込み、挿通部21とヒータHとの接触部から熱を加えて挿通部21を含む保持部20を局所的に加熱し、貫通穴23内部の第一プリフォームガラス24Aを加熱・溶融させる。この溶融状態を所定時間維持することで貫通穴23内壁に第一プリフォームガラス24Aが密着する。その後、室温まで冷却し第一プリフォームガラス24Aを挿通部21内で硬化させることで貫通穴23においてハーメチックシール状に光ファイバ14を締付け固定する。
【0025】
なお、第一プリフォームガラス24Aの融点T1と、第二プリフォームガラス24Bの融点T2と、ヒータHの加熱温度THとの関係は、T2>TH>T1のようになっている。
このため、ヒータHにより加熱された際、第一プリフォームガラス24Aのみが溶融するので、第一プリフォームガラス24Aの加熱溶融時の流出防止用の底蓋として、第二プリフォームガラス24Bを使用することができる。
【0026】
図4に示すように、これら一連の工程と同様に他方の挿通部にも光ファイバ14を貫通穴23において締め付け固定することで、FBG15の両端が挿通部21の貫通穴23において低融点ガラス24によりハーメチックシール状に締付け固定された光ファイバ取付構造2が形成される。
さらに、この光ファイバ取付構造2の支持部22を固定部11と錘部12に、溶接やカシメ等の金属接合手段によりそれぞれ固定する。なお、固定の際は、FBG15が弛まないように若干の張力を加えた状態で固定する。
【0027】
これにより、加速度センサ1に上下方向の振動による加速度が加わった際に、錘部12が慣性力により上下に変位することで、FBG15が伸縮歪みを起こす。そして、このFBG15の伸縮歪みがFBGからの光の反射波長変化若しくは透過波長変化となる。また、FBG15の伸縮歪み量は、加速度の増減に相関した錘部12の変位量に依存するため、反射波長変化若しくは透過波長変化量を計測することで、加速度の大きさを測定することが可能な加速度センサ1が得られる。
【0028】
従って、第1実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)第一プリフォームガラス24Aと、第二プリフォームガラス24BとがFBG15を含む光ファイバ14に挿通される。そして、第一プリフォームガラス24A及び第二プリフォームガラス24Bは貫通穴23に収容される。その後、第二プリフォームガラス24Bが下側となり、かつ、貫通穴23の軸方向が略鉛直方向となるようにする。
次に、光ファイバ14が挿通された挿通部21をヒータHでクランプし、挿通部21を局所的に加熱し、内部の第一プリフォームガラス24Aを加熱・溶融させる。そして、室温まで冷却し第一プリフォームガラス24Aを挿通部21内で硬化させることで貫通穴23においてハーメチックシール状に光ファイバ14を締付け固定する。
【0029】
このため、挿通部21とFBG15両側の光ファイバ14とを貫通穴23内壁に低融点ガラス24を隙間なく密着させることができ、光ファイバ14と挿通部21とをハーメチックシール状に締付け固定を行うことができる。
従って、高い固定強度が得られ、かつ、固定強度を長期間維持できるので、接着剤等を用いた光ファイバ14の固定に比べ、各加速度センサ1間での測定精度に偏差を生じるおそれが少なく、FBG15による安定した加速度検出が可能となる。
よって、加速度センサ1は、長期間安定した測定精度を維持することができる。
【0030】
また、低融点ガラス24により締付け固定を行うので、FBG15両側の光ファイバ14のコーティングは、ポリイミドや紫外線硬化型樹脂および、金属コーティング等様々なコーティングを選択することが可能となる。
【0031】
(2)挿通部21をクリップ式のヒータHで挟み込み、挿通部21とヒータHとの接触部から熱を加えて挿通部21を含む保持部20を局所的に加熱し、貫通穴23内部の第一プリフォームガラス24Aを加熱・溶融させる。
このため、加熱方法を挿通部21のみの局所加熱とすることで、加熱時間と加熱領域を最小限に抑え、光ファイバ14のコーティングがポリイミドのような樹脂コーティングであっても、加熱影響を最小限に抑えることができる。
【0032】
(3)保持部20は第二プリフォームガラス24Bが下側となり、かつ、貫通穴23の軸方向が略鉛直方向となるように向きを調整し配置された後、第一プリフォームガラス24Aが加熱・溶融される。
このため、貫通穴23の軸方向が鉛直方向となるため、加熱・溶融後のガラスは、光ファイバ14の外周と貫通穴23の内周の間に均一に広がるので、ハーメチックシール状に密閉した締付け固定ができる。
【0033】
(4)第一プリフォームガラス24Aを加熱・溶融する際、第一プリフォームガラス24Aの融点T1、第二プリフォームガラス24Bの融点T2、ヒータHの加熱温度THとの関係は、T2>TH>T1のようになっている。
このため、ヒータHにより加熱された際、第一プリフォームガラス24Aのみが溶融するので、第一プリフォームガラス24Aの加熱溶融時の流出防止用の底蓋として第二プリフォームガラス24Bを使用することができる。
【0034】
以下、第2実施形態を図5に基づいて説明する。図5は、本発明の第2実施形態の加速度センサの要部の分解斜視図である。
図5に示すように、保持部20は、ステンレス等の金属材料を用いて切削加工により製作されており、貫通穴23を有する挿通部21と支持部22とが分割された別部材となっており、これらの部材が接合されることにより一体に形成されている。
また、それ以外の構成については、上記第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0035】
第2実施形態の光ファイバ取付構造2の形成方法は、第一プリフォームガラス24A及び第二プリフォームガラス24Bが挿通された光ファイバ14が貫通穴23に挿通・収容される。
その後、第二プリフォームガラス24Bが下側となり、かつ、貫通穴23の軸方向が略鉛直方向となるように挿通部21を調整し配置する。
【0036】
そして、挿通部21をヒータHで局所的に加熱し、内部の第一プリフォームガラス24Aを加熱・溶融させる。その後、室温まで冷却し第一プリフォームガラス24Aを挿通部21内で硬化させることで貫通穴23においてハーメチックシール状に光ファイバ14を締付け固定する。
さらに、他方の挿通部21も同様に光ファイバ14を締付け固定する。
最後に、挿通部21と支持部22とが金属接合されることで保持部20と光ファイバ14とが締付け固定された光ファイバ取付構造2が形成される。
ただし、金属接合する際、加熱による第一プリフォームガラス24Aの再溶融による流出を防止するため、接合温度は、第一プリフォームガラス24Aの融点より低い温度とし、接合時間は、ヒータHによる加熱・溶融時間よりも短いものとする。
【0037】
従って、第2実施形態では(1)から(4)の作用効果を奏することができ、さらに次に示す作用効果を奏することができる。
(5)第2実施形態の保持部20は、挿通部21と支持部22とが分割された別部材となっており、挿通部21と光ファイバ14とが締付け固定された後、挿通部21と支持部22とが接合されることにより一体に形成されている。
このため、保持部20を支持部22と挿通部21とに分割した形状とすることで、挿通部21、支持部22及び感知部10のそれぞれの材質の選択性や形状などの自由度を高くすることが可能となる。
【0038】
また、挿通部21が支持部22と別部材となっているので、光ファイバ14及び挿通部21のみで締付け固定作業ができるため、板状の支持部22を含まない分、締付け固定の作業を行う際、作業スペースをコンパクトにすることができ、また、締付け固定作業を行い易くすることができる。よって、締付け固定の作業性を向上させることができる。
【0039】
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
図6は、本発明の第3実施形態の加速度センサの要部の断面図である。
図6に示すように、保持部20は、ステンレス等の金属材料を用いて切削加工により製作されており、貫通穴23を有する挿通部21と支持部22とを備えており、貫通穴23は、2つの開口部がそれぞれ異なる径に形成されている。
【0040】
具体的には、挿通部21同士が対向する側、つまり板ばね13(図1参照)に近い側の第一開口部23Aは挿通される光ファイバ14の径と略同じ径に形成され、反対側の第二開口部23Bは光ファイバ14の径より大きく形成される貫通ザグリ穴となっている。
そして、貫通穴23と光ファイバ14の隙間を第一プリフォームガラス24Aが充填されている。
また、それ以外の構成については、上記第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0041】
第3実施形態の光ファイバ取付構造2の形成方法は、光ファイバ14が貫通穴23に第一開口部23Aから挿通・収容される。その後、保持部20は、第一開口部23Aが下側となり、かつ、貫通穴23の軸方向が略鉛直方向となるように調整し配置される。
【0042】
そして、挿通部21をヒータHで局所的に加熱し、内部の第一プリフォームガラス24Aを加熱・溶融させる。その後、室温まで冷却し第一プリフォームガラス24Aを挿通部21内で硬化させることで貫通穴23においてハーメチックシール状に充填され光ファイバ14を締付け固定する光ファイバ取付構造2が形成される。
【0043】
従って、第3実施形態では(1)から(3)の作用効果を奏することができ、さらに次に示す作用効果を奏することができる。
(6)第3実施形態の挿通部21が有する貫通穴23は、第二開口部23Bは光ファイバ14の径より大きく形成され、反対側の第一開口部23Aは光ファイバ14の径と略同じ径に形成される貫通ザグリ穴となっている。
このため、貫通穴23内で第一プリフォームガラス24Aを加熱・溶融させた場合、第一開口部23Aが光ファイバ14の径と略同じであるので、第二プリフォームガラス24Bを用いなくても第一プリフォームガラス24Aが貫通穴23から流出するのを防ぐことが可能となる。
よって、第二プリフォームガラス24Bを用いる必要がなく、低融点ガラス24を単一種にすることができるので、製造コストを削減できる。
【0044】
以下、本発明の第4実施形態を図面に基づいて説明する。
図7は、本発明の第4実施形態の加速度センサの要部の斜視図である。
図7に示すように、保持部20は、ステンレス等の金属材料を用いて切削加工により製作されており、貫通穴23を有する挿通部21と支持部22とを備えている。また、貫通穴23の全ての開口部外側に光ファイバ14に沿って略四角錐状の光ファイバ保護部21Aが形成されている。
【0045】
そして、この光ファイバ保護部21Aは、保護用接着剤により形成されており、四角錐の底面が貫通穴23の開口部を有する挿通部21の側面と当接しており、この側面と底面とが略同じ面積に形成されている。
また、それ以外の構成については、上記第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0046】
第4実施形態の光ファイバ取付構造2の形成方法は、第1実施形態と同様に保持部20と光ファイバ14とが締付け固定された光ファイバ取付構造2が形成される。その後、貫通穴23の全ての開口部外側に光ファイバ14に沿って保護接着剤を略四角錐状に塗布することで光ファイバ保護部21Aを形成する。
【0047】
従って、第3実施形態では(1)から(4)の作用効果を奏することができ、さらに次に示す作用効果を奏することができる。
(7)第4実施形態の挿通部21は、貫通穴23の開口部外側に光ファイバ14に沿って光ファイバ保護部21Aを備えている。
このため、開口部外側に光ファイバ保護部21Aを設けることにより、光ファイバ14と挿通部21とを連続した形状で固定できるので、応力集中する箇所をなくし光ファイバ14の破断を防ぐことが可能となる。
【0048】
なお、本発明について好適な実施例を挙げて説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれるものである。
例えば、貫通穴23の断面形状を円形としたが、これに限らず、楕円形や多角形の貫通穴であってよい。
【0049】
光ファイバ14のコーティングはポリイミドコーティングとしたが、これに限らず、紫外線硬化型樹脂や金属コーティングとしてもよい。金属コーティングの場合は、コーティングが残った状態で低融点ガラスにより締め付け固定されるが、紫外線硬化型樹脂の場合は、低融点ガラスの溶融時の熱で燃え尽きた後に締め付け固定される。このため、いずれのコーティングを選択しても締め付け効果により、固定強度と長期安定性が高い。
【0050】
固定部11や挿通部21の形状は直方体としたが、これに限らず、円筒形や多角形の形状であってもよい。
そして、板ばね13の両端部に挿通部21と挿通部21とを貼り合わせて固定し、一方の板ばね13を変位させる形態としても本発明に適用することができる。
【0051】
保持部20は、切削加工としたが、鋳造や鍛造、粉末成型等などの切削加工以外であってもよい。また、ステンレス等の金属材料以外でも、熱膨張係数が加熱溶融対象である低融点ガラスの数値以上であれば、例えば、セラミックスであってもよい。
【0052】
第一プリフォームガラス24Aを光ファイバ14に複数個挿通するとしたが、これに限らず幅寸法の長い1個の第一プリフォームガラス24Aとしてもよい。
【0053】
保持部20の局所加熱は、クリップ式のヒータHにて接触箇所からの局所加熱としたが、これに限らず、例えば、高周波誘導加熱やハロゲンヒータ等による非接触加熱であってもよい。
【0054】
支持部22と、固定部11及び錘部12とを金属接合するとしたが、これに限らず、ねじ止め、カシメ、接着剤等他の固定方法、及びそれら2つ以上の固定方法の組合せであってもよい。
【0055】
第2実施形態では、挿通部21と光ファイバ14とを締付け固定した後、支持部22と接合するとしたがこれに限らず、挿通部21と支持部22とを接合した後、光ファイバ14を締付け固定してもよい。この場合、挿通部21と支持部22との接合温度及び接合時間の制約をなくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、加速度センサ、その他の物理量を検出する測定機器に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態の加速度センサの斜視図。
【図2】本発明の第1実施形態の加速度センサの光ファイバ取付構造の形成方法を説明するための概略図。
【図3】本発明の第1実施形態の加速度センサの光ファイバ取付構造の形成方法を説明するための概略断面図。
【図4】本発明の第1実施形態の加速度センサの光ファイバ取付構造の斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態の加速度センサの要部の分解斜視図。
【図6】本発明の第3実施形態の加速度センサの要部の断面図。
【図7】本発明の第4実施形態の加速度センサの要部の斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1…加速度センサ(光ファイバセンサ)
2…光ファイバ取付構造
10…感知部
11…固定部
12…錘部
13…板ばね(弾性部材)
14…光ファイバ
20…保持部
21…挿通部
21A…光ファイバ保護部
22…支持部
23…貫通穴
23A…第一開口部(開口部)
23B…第二開口部(開口部)
24…低融点ガラス
24A…第一プリフォームガラス(低融点ガラス)
24B…第二プリフォームガラス(低融点ガラス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に回折格子が形成された光ファイバの両端が相対的に変位する一対の保持部に取り付けられた光ファイバ取付構造であって、
前記一対の保持部は前記光ファイバが貫通される貫通穴が形成された挿通部を備え、これら挿通部と前記光ファイバとの間は熱膨張係数が前記保持部の熱膨張係数よりも小さな低融点ガラスでハーメチックシール状に締付け固定されていることを特徴とする光ファイバ取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ取付構造において、
前記保持部は、それぞれ挿通部に連結された支持部を備え、これらの支持部のうち一方は被検出部に固定される固定部に連結され、前記支持部のうち他方は錘部に連結され、この錘部と固定部とは略板状の弾性部材とを介して互いに連結されていることを特徴とした光ファイバ取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載の光ファイバ取付構造において、
前記挿通部と前記支持部とは金属接合手段により一体とされていることを特徴とする光ファイバ取付構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバ取付構造において、
前記挿通部は、前記貫通穴の径寸法が軸方向に沿って異なる多段型に形成されることを特徴とする光ファイバ取付構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ファイバ取付構造において、
前記挿通部は、前記貫通穴の2つの開口部外側に張出した光ファイバ保護部を備えることを特徴とする光ファイバ取付構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光ファイバ取付構造において、
前記貫通穴の断面形状が円形以外に形成されることを特徴とした光ファイバ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−79061(P2010−79061A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248723(P2008−248723)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000150707)長野計器株式会社 (62)
【Fターム(参考)】