説明

光ファイバ接続構造、レーザ照射装置およびレーザ加工装置

【課題】2つの光ファイバの融着部から漏れ出る漏洩光によって、それら光ファイバの温度が上昇するのを抑制するための構造を提供する。
【解決手段】ファイバ接続部8は、融着部11Cと、保護部21と、漏洩光除去部22とを有する。ノンドープ光ファイバ11Aの出射端面および希土類添加光ファイバ11Bの入射端面とが融着されることで、融着部11Cが形成される。ノンドープ光ファイバ11Aの出射端面と希土類添加光ファイバ11Bの入射端面とを融着するために、ノンドープ光ファイバ11Aの出射端の被覆および希土類添加光ファイバ11Bの入射端の被覆が除去されている。融着部11Cは保護部21によって覆われる。漏洩光除去部22は、希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bのうち融着部11C近傍の部分を覆うように設けられる。漏洩光除去部22は、被覆44Bの屈折率以上の屈折率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の光ファイバを接続するための構造、その構造によって一体化された光ファイバを用いたレーザ照射装置、およびそのレーザ照射装置を用いたレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光は集光性に優れることから、パワー密度を高くすることができるとともに、小さなビームスポットを得ることができる。このような特徴により、加工の分野ではレーザ光の注目度が高くなりつつある。物体の加工にレーザ光を用いることで非接触かつ精密な加工が可能であるため、物体の加工へのレーザ光の利用が急速に拡大しつつある。
【0003】
特に、希土類添加光ファイバをレーザ媒質としたファイバレーザは、従来の固体レーザに比べて高い効率を有するという特徴、レーザ装置全体をコンパクトにすることができるという特徴、レーザ発振媒質とレーザ伝播媒質とを希土類添加光ファイバで兼用できるといった各種の特徴を有している。近年では、数10WからkW超といった高パワーのレーザ光をファイバレーザから出力させることも報告されている。
【0004】
ファイバレーザでこのような高出力を実現するためには、希土類添加光ファイバに多くの励起光を投入しなければならない。希土類添加光ファイバを有するファイバレーザでは、通常では、励起光からレーザ出力への変換効率は、一般的に50%程度である。言い換えれば、ファイバレーザには、その出力の倍以上のパワーを有する励起光を投入しなければならない。したがって上述のようなkW級のファイバレーザの場合には、ファイバレーザに投入される励起光のパワーもkW級となる。
【0005】
希土類添加光ファイバでは、通常、希土類元素はコアに添加される。多くの場合、コアの直径は数μm〜数10μmであり極めて小さい。コアに励起光を投入することで希土類元素を励起するコア励起方式では、コアに多くの励起光を投入することは難しい。
【0006】
このため光ファイバレーザでは、ダブルクラッド構造を有する希土類添加光ファイバが多く用いられる。ダブルクラッド構造の光ファイバでは、クラッドが第1クラッドおよび第2クラッドの2層構造を有している。第1クラッドはコアの周囲に設けられ、第2クラッドは、第1クラッドの周囲に設けられる。第1クラッドは、コアに対するクラッドとして機能する。また第1クラッドおよび第2クラッドの間では、第1クラッドが前記コアと同等の機能を有し、第2クラッドがクラッドとして機能する。
【0007】
ダブルクラッド構造の希土類添加光ファイバでは、励起光が第1クラッドに導入されるクラッド励起方式が用いられる。多くの場合、第1クラッドは100μm以上の直径を有するので、第1クラッドに多くの励起光を投入することが可能になる。
【0008】
たとえば特許文献1は、希土類添加ダブルクラッドファイバを備えるファイバレーザを開示する。図17は、特許文献1に開示されたファイバレーザの構成を説明するための図である。
【0009】
図17を参照して、ファイバレーザ200において、光結合器203は、6つの励起ポート202と、1つの信号ポート211と、1つの出射ポート204とを有する。6つの励起ポートの各々は光ファイバによって構成される。6つの光ファイバを溶融かつ延伸することによって出射ポート204が形成される。
【0010】
各励起ポート202には励起光源201が接続される。励起光源201から出射された励起光は出射ポート204から出射される。また、信号ポート211には図示しない信号光源が接続される。その信号光源から出射された信号光も出射ポート204から出射される。
【0011】
光結合器203の出射ポート204の直径が希土類添加ダブルクラッドファイバの第1クラッドの直径と同じかそれ以下であり、かつ出射ポート204のNA(開口数)が希土類添加ダブルクラッドファイバ205の第1クラッドのNAより小さければ、入射側融着接続部206を介して出射ポート204から出射される励起光を、低損失で希土類添加ダブルクラッドファイバ205の第1クラッドへと入射することが可能となる。
【0012】
このようにして、希土類添加ダブルクラッドファイバの第1クラッドに投入された励起光は、第1クラッド内を伝播しながらコアを横切る際に、コアに添加された希土類元素に吸収される。励起光の吸収によって基底準位にある希土類元素の電子が反転分布状態になり、信号光源から入射された信号光によって誘導放出を引き起こして信号光を増幅する。増幅された信号光は出射側融着接続部207を介して大口径シングルモード光ファイバ208に入射し、レーザ光として出力される。
【0013】
図17に示されたファイバレーザでは、2本の光ファイバが融着によって接続される。一般的に2つの光ファイバ同士を融着すると、その融着部から光が漏出する。特許文献1は、希土類添加光ファイバの出射端から出射される増幅光以外の残留光を除去するための構成も開示する。
【0014】
図18は、特許文献1に開示された、残留光を除去するための構成を示した図である。図18を参照して、残留光除去構造220は、光学樹脂221と、金属筐体222と、ヒートシンク223とを有する。金属筐体222はヒートシンク223上に固定されている。金属筐体222には、大口径シングルモードファイバ208を通すための貫通孔が形成され、その貫通孔の内部に光学樹脂221が充填されている。特許文献1には、上記の構造について、光ファイバレーザや光ファイバ増幅器などの光増幅システムにおいて、希土類添加光ファイバの出射端から出射される増幅光以外の残留光を確実に除去することができるとともに、残留光による保護被覆の焼損などの不具合を防ぐことができると説明されている。
【0015】
また、特許文献2は、光ファイバを伝播する漏洩光を除去するための構成を開示する。図19は、特許文献2に開示された漏洩光の除去部材の外観図である。図20は、図19に示された除去部材の構造を示した断面図である。
【0016】
図19および図20を参照して、光ファイバの漏洩光処理構造は、光ファイバ301と、漏洩光ガイド部材302とを備える。光ファイバ301は、石英系ガラスからなるコア部301aと、コア部301aの外周に形成された内側クラッド部301bとを備える。内側クラッド部301bは、コア部301aよりも屈折率が低い石英系ガラスからなる。さらに、領域A1において、光ファイバ301は、内側クラッド部301bの外周に形成された外側クラッド部301cを備える。外側クラッド部301cは、内側クラッド部301bよりも屈折率が低い樹脂である。一方、領域A2においては、光ファイバ301を他の光ファイバと接続するために、外側クラッド部301cが除去されている。
【0017】
漏洩光ガイド部材302は、内側クラッド部301bの屈折率とほぼ同一の屈折率を有する。漏洩光ガイド部材302は、内側クラッド部301bの外径と同一の内径を有する筒状に形成されており、領域A2では、光ファイバ301に通された状態で固定されている。
【0018】
領域A1においては、外側クラッド部301cが存在するので、残留励起光L1は内側クラッド部301bを伝播する。一方、領域A2には、外側クラッド部301cが存在しないので、残留励起光L1を伝播させることができない。その結果、残留励起光L1は、領域A2において、漏洩光ガイド部材302に入射する漏洩光L2となる。漏洩光ガイド部材302は、漏洩光L2を光ファイバ301の外部に導く。これにより漏洩光L2が光ファイバ301から放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−187100号公報
【特許文献2】特開2008−268747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
漏洩光は、例えば光ファイバのコアに再結合したり、クラッドをそのまま伝播して測定器などに入射したりすることによって、ノイズを発生させる。また、漏洩光によって被覆等が発熱することにより希土類添加光ファイバの温度が上昇する。光ファイバの温度が上昇した場合には、たとえば光ファイバが破断することが想定される。光ファイバが破断した場合にはファイバレーザの出力を低下させるだけでなく、破断部から漏れ出た高パワーの励起光が周囲の部品にダメージを与えるなど大きな影響を及ぼす可能性も生じ得る。
【0021】
図18に示されるように、特許文献1に開示された構造は、希土類添加光ファイバの出射端から出射される増幅光以外の残留光を除去することに特化されたものである。このため特許文献1に開示された構造では、希土類添加光ファイバに入射する光を除去することができない。つまり、特許文献1に開示された構造は、希土類添加光ファイバに入射した光による光ファイバの温度上昇を防ぐための構造ではない。
【0022】
また、特許文献2に開示された構造(図19、図20参照)は、クラッドに漏洩する光を除去する構造である。しかし、特許文献2は、ファイバの被覆を伝播する光を除去するための構造について具体的に記載していない。上記のように被覆が光を吸収することによって被覆が発熱する。しかし特許文献2には、このような課題およびその解決方法について具体的に示されていない。
【0023】
本発明の目的は、2つの光ファイバの融着部から漏れ出る漏洩光によって、それら光ファイバの温度が上昇するのを抑制するための構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、ある局面では、第1の被覆によって覆われた第1の光ファイバと第2の被覆によって覆われた第2の光ファイバとを接続するための光ファイバ接続構造である。第1の光ファイバの出射端において第1の被覆が除去される。第2の光ファイバの入射端において第2の被覆が除去される。光ファイバ接続構造は、第1の光ファイバの出射端の端面と、第2の光ファイバの入射端の端面とを融着することによって形成された融着部と、融着部の近傍において第2の被覆を覆う漏洩光除去部とを備える。漏洩光除去部の屈折率は、第2の被覆の屈折率以上である。
【0025】
好ましくは、第1および第2の光ファイバの各々は、コアとクラッドとを有する。光ファイバ接続構造は、融着部を覆うように形成された保護部をさらに備える。保護部の屈折率は、第2の被覆の屈折率以下、かつ、第2の光ファイバのクラッドの屈折率以下である。
【0026】
好ましくは、第1および第2の光ファイバのうちの少なくとも1つは、希土類添加光ファイバである。
【0027】
好ましくは、第1および第2の光ファイバの各々は、コアとクラッドとを有する。クラッドは、コアの周囲に設けられた第1のクラッドと、第1のクラッドの周囲に設けられた第2のクラッドとを含む。
【0028】
好ましくは、光ファイバ接続構造は、金属ケースをさらに備える。金属ケースは、保護部と壁面が接触するように保護部を収容する第1の収容室と、漏洩光除去部と壁面が接触するよう漏洩光除去部を収容する第2の収容室とを有する。
【0029】
本発明は、他の局面では、レーザ照射装置であって、第1の被覆によって覆われた第1の光ファイバと、第2の被覆によって覆われた第2の光ファイバとを備える。第1の光ファイバの出射端において第1の被覆が除去される。第2の光ファイバの入射端において第2の被覆が除去される。レーザ照射装置は、第1の光ファイバの出射端の端面と、第2の光ファイバの入射端の端面とを融着することによって形成された融着部と、融着部の近傍において第2の被覆を覆う漏洩光除去部と、第1の光ファイバの入射端に導入されるレーザ光を発生させるためのレーザ光源とさらに備える。漏洩光除去部の屈折率は、第2の被覆の屈折率以上である。
【0030】
好ましくは、第1および第2の光ファイバの各々は、コアとクラッドとを有する。レーザ照射装置は、融着部を覆うように形成された保護部をさらに備える。保護部の屈折率は、第2の被覆の屈折率以下、かつ、第2の光ファイバのクラッドの屈折率以下である。
【0031】
好ましくは、第1および第2の光ファイバのうちの少なくとも1つは、希土類添加光ファイバである。レーザ光源は、種光を発する種光源と、種光を希土類添加光ファイバによって増幅するための励起光を発する励起光源とを含む。
【0032】
好ましくは、第1および第2の光ファイバの各々は、コアとクラッドとを有する。クラッドは、コアの周囲に設けられた第1のクラッドと、第1のクラッドの周囲に設けられた第2のクラッドとを含む。種光源から発せられた種光はコアを伝播する。励起光源から発せられた励起光は第1のクラッドを伝播する。
【0033】
好ましくは、レーザ照射装置は、金属ケースをさらに備える。金属ケースは、保護部と壁面が接触するように保護部を収容する第1の収容室と、漏洩光除去部と壁面が接触するよう漏洩光除去部を収容する第2の収容室とを有する。
【0034】
本発明は、さらに他の局面では、上述のレーザ照射装置を備えるレーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の目的は、2つの光ファイバの融着部から漏れ出る漏洩光によって、それら光ファイバの温度が上昇するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係るファイバレーザを備えたレーザ加工装置100の構成図である。
【図2】図1に示したファイバ接続部8の構成を示した断面図である。
【図3】光ファイバの接続構造が漏洩光除去部を備えていない場合における光ファイバ内部の光の伝播を説明した図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る光ファイバの接続構造による漏洩光の除去を説明した図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る光ファイバの接続構造による効果を検証した結果を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る光ファイバの接続構造において、漏洩光除去部の長さと、光ファイバの温度との関係を検証した結果を示した図である。
【図7】漏洩光の周囲への影響を防ぐための光ファイバ接続構造を示した図である。
【図8】図7に示したケースの蓋を取り外した状態を示した図である。
【図9】図7に示したケースの内部を模式的に示した断面図である。
【図10】本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第1の例を示した図である。
【図11】本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第2の例を示した図である。
【図12】本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第3の例を示した図である。
【図13】本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第4の例を示した図である。
【図14】本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第5の例を示した図である。
【図15】本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第6の例を示した図である。
【図16】本発明の実施の形態に係るファイバレーザの他の構成例を示した図である。
【図17】特許文献1に開示されたファイバレーザの構成を説明するための図である。
【図18】特許文献1に開示された、残留光を除去するための構成を示した図である。
【図19】特許文献2に開示された漏洩光の除去部材の外観図である。
【図20】図12に示された除去部材の構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0038】
図1は、本発明の実施の形態に係るファイバレーザを備えたレーザ加工装置100の構成図である。図1を参照して、レーザ加工装置100は、レーザ光源装置101と、光学装置20とを備える。
【0039】
レーザ光源装置101は、希土類添加光ファイバ1と、半導体レーザ2,3,9A〜9Dと、アイソレータ4,6と、光結合器5,10と、バンドパスフィルタ7と、ファイバ接続部8と、ノンドープ光ファイバ11Aと、希土類添加光ファイバ11Bとを備える。
【0040】
希土類添加光ファイバ1および11Bは、光増幅成分である希土類元素が添加されたコアを有する光増幅ファイバである。希土類元素の種類は特に限定されず、たとえばEr(エルビウム)、Yb(イッテルビウム)、Nd(ネオジム)などがある。この実施の形態では、コアに添加された希土類元素はYb(イッテルビウム)である。
【0041】
半導体レーザ2は種光を発する種光源である。種光の波長はたとえば1064±2nmである。半導体レーザ2は、図示されないドライバによって駆動されて、パルス状の種光を発する。
【0042】
アイソレータ4は一方向の光のみを透過し、その光と逆方向に入射する光を遮断する。具体的には、アイソレータ4は、半導体レーザ2から発せられる種光を通過させるとともに、希土類添加光ファイバ1からの戻り光を遮断する。これによって半導体レーザ2の損傷を防ぐことができる。
【0043】
半導体レーザ3は、希土類添加光ファイバ1のコアに添加された希土類元素を励起するための励起光を発する励起光源である。励起光の波長は、光ファイバのコアに添加される希土類元素の種類に基づいて定められる。たとえば希土類元素がYbである場合、励起光の波長はたとえば915±10nmである。
【0044】
光結合器5は、半導体レーザ2からの種光および半導体レーザ3からの励起光を結合させて、希土類添加光ファイバ1に入射させる。光結合器5は、たとえばWDM(Wavelength Division Multiplexing)結合器やコンバイナ等を適用できる。
【0045】
半導体レーザ3から光結合器5を介して希土類添加光ファイバ1に入射した励起光は、希土類添加光ファイバ1のコアに含まれる希土類元素に吸収される。これにより希土類元素が励起され(基底準位から上位準位に遷移され)、反転分布状態が得られる。この状態において、半導体レーザ2からの種光が希土類添加光ファイバ1のコアに入射すると、誘導放出が生じる。この誘導放出によって種光(パルス光)が増幅される。すなわち希土類添加光ファイバ1は、種光を励起光によって増幅する。
【0046】
アイソレータ6は、希土類添加光ファイバ1から出力されたパルス光を通過させるとともに希土類添加光ファイバ1に戻る光を遮断する。
【0047】
バンドパスフィルタ7は、所定の波長帯の光を通過させるよう構成される。「所定の波長帯」とは、具体的には、希土類添加光ファイバ1から出力されるパルス光のピーク波長を含む波長帯である。希土類添加光ファイバ1から自然放出光が放出された場合、その自然放出光はバンドパスフィルタ7により除去される。
【0048】
バンドパスフィルタ7を通過したレーザ光は、光結合器10を介してノンドープ光ファイバ11Aに入射する。半導体レーザ9A〜9Dは、バンドパスフィルタ7を通過したレーザ光を希土類添加光ファイバ11Bにおいて増幅するために励起光を発する。この実施の形態では4個の励起光源が設けられているが、励起光源としての半導体レーザの個数は4個に限定されるものではない。ファイバレーザに要求される出力、希土類添加光ファイバ11Bの増幅率等に基づいて、励起光のパワーおよび励起光源の個数を定めることができる。
【0049】
光結合器10は、バンドパスフィルタ7を通過したパルス光と、半導体レーザ9A〜9Dからの光とを結合してノンドープ光ファイバ11Aに入射させる。
【0050】
ノンドープ光ファイバ11Aのコアには希土類元素(具体的にはYb)が実質的に添加されていない。このため、バンドパスフィルタ7を通過したパルス光は、ノンドープ光ファイバ11Aでは実質的に増幅されない。なおノンドープ光ファイバ11Aは光結合器10の出射ポートを構成する。
【0051】
ノンドープ光ファイバ11Aと希土類添加光ファイバ11Bとは、ファイバ接続部8において接続される。後に詳細に説明されるように、ノンドープ光ファイバ11Aの出射端面と希土類添加光ファイバ11Bの入射端面とは融着によって接続される。ノンドープ光ファイバ11Aを伝播したパルス光および励起光は、その融着部を介して希土類添加光ファイバ11Bに入射する。希土類添加光ファイバ11Bにパルス光および励起光が入射されることで、そのパルス光が増幅される。
【0052】
光学装置20は、アイソレータ12と、コリメータレンズ13と、ガルバノスキャナ14と、集光レンズ15とを備える。アイソレータ12は希土類添加光ファイバ11Bから出力されるパルス光を通過させるとともに、希土類添加光ファイバ11Bに戻る光を遮断する。アイソレータ12を通過したパルス光は、アイソレータ12に付随するコリメータレンズ13からガルバノスキャナ14に入射する。コリメータレンズ13は、アイソレータ12を通じて出力されたレーザ光のビーム径を拡大し平行光にする。
【0053】
ガルバノスキャナ14はコリメータレンズ13からのレーザ光を二次元方向に走査する。この実施形態では、レーザ光を走査するための走査装置としてガルバノミラーを採用するが、このような走査装置はガルバノミラーに限定されず、たとえばポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical System)スキャナ等を用いることができる。また、走査装置は、レーザ光を二次元方向に走査するものと限定されず、たとえば一次元方向にのみレーザ光を走査可能なものであってもよい。
【0054】
集光レンズ15は、ガルバノスキャナ14からのレーザ光を集光する。加工対象物50の表面には、集光されたレーザ光Lが照射される。
【0055】
増幅されたレーザ光をガルバノスキャナ14によって二次元方向に走査するとともに、集光レンズ15によって集光することで、加工対象物50の表面では、たとえばアブレーションが起こる。ポリマー、セラミックス、ガラス、金属材料等の物体の表面に高いエネルギー密度でレーザ光を照射すると,材料を構成している分子・原子間の結合が瞬時に切れることによる分解、気化、蒸散を経て材料表面が爆発的に除去され、周囲に熱ダメージを与えない極めてシャープな除去が起こる。これがアブレーションと呼ばれる現象である。アブレーションを利用することによって、様々な加工が可能となる。
【0056】
この実施の形態に係るレーザ加工装置100は、レーザマーキング装置である。ただし、レーザ光による加工は、マーキングのみに限定されるものではない。すなわち、本発明に係るレーザ加工装置は、レーザマーキング装置に限定されるものではない。たとえばレーザ光を、ドリリング、溶接、切断、熱処理、形状加工、トリミング等に用いることも可能である。したがって、本発明に係るレーザ加工装置を、これらの用途向けのレーザ加工装置にも適用可能である。たとえば、本発明に係るレーザ加工装置として、レーザトリミング装置、フォトマスク等の欠陥修正(リペア)を行なうレーザリペア装置を含めることができる。
【0057】
図2は、図1に示したファイバ接続部8の構成を示した断面図である。図2を参照して、ファイバ接続部8は、融着部11Cと、保護部21と、漏洩光除去部22とを有する。ノンドープ光ファイバ11Aの出射端面および希土類添加光ファイバ11Bの入射端面とが融着されることで、融着部11Cが形成される。保護部21および漏洩光除去部22は、たとえば光学樹脂である。
【0058】
ノンドープ光ファイバ11Aおよび希土類添加光ファイバ11Bはダブルクラッドファイバである。したがってノンドープ光ファイバ11Aおよび希土類添加光ファイバ11Bの各々は、コアと、第1クラッドと、第2クラッドとを有する。第1クラッドはコアの周囲に設けられ、かつ、コアの屈折率よりも低い屈折率を有する。第2クラッドは第1クラッドの周囲に設けられ、かつ、第1クラッドの屈折率よりも低い屈折率を有する。ノンドープ光ファイバ11Aおよび希土類添加光ファイバ11Bの各々は、さらに、第2クラッドの表面を覆う被覆を有する。
【0059】
具体的には、ノンドープ光ファイバ11Aは、コア41Aと、第1クラッド42Aと、第2クラッド43Aと、被覆44Aとを含む。希土類添加光ファイバ11Bは、コア41Bと、第1クラッド42Bと、第2クラッド43Bと、被覆44Bとを含む。コア41Bには希土類元素(この実施形態ではYb)が添加されているのに対して、コア41Aには希土類元素が添加されていない。この点において、希土類添加光ファイバ11Bは、ノンドープ光ファイバ11Aと異なる。
【0060】
ノンドープ光ファイバ11Aの出射端面と希土類添加光ファイバ11Bの入射端面とを融着するために、ノンドープ光ファイバ11Aの出射端の被覆および希土類添加光ファイバ11Bの入射端の被覆が除去されている。2本の光ファイバの端面同士を融着することによって融着部11Cが形成された後には、融着部11Cは保護部21によって覆われる。融着部11Cを保護部21で覆うことによって、2本の光ファイバの接続部分が補強される。
【0061】
なお、図2に示されるように第2クラッドが薄い場合には、被覆を剥がした際に被覆とともに第2クラッドが除去されることがある。つまり第1クラッドが露出する。このため図2に示した構成では、保護部21は、各光ファイバの露出した第1クラッド(42A,42B)を覆っている。保護部21の屈折率は、クラッド(第1クラッド)の屈折率以上、かつ、被覆44Bの屈折率以下である。
【0062】
漏洩光除去部22は、希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bのうち融着部11C近傍の部分を覆うように設けられる。漏洩光除去部22は、被覆44Bの屈折率以上の屈折率を有する。
【0063】
漏洩光除去部22は、融着部11Cから希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bに入射した漏洩光を、希土類添加光ファイバ11Bの外部に逃がす。これによって、ノンドープ光ファイバ11Aおよび希土類添加光ファイバ11Bの温度上昇(特に希土類添加光ファイバ11Bの温度上昇)を抑制することが可能となる。この点について、以下、漏洩光除去部22を備えていない光ファイバの接続構造と、本発明の実施の形態に係る光ファイバの接続構造とを対比しつつ説明する。
【0064】
図3は、光ファイバの接続構造が漏洩光除去部を備えていない場合における光ファイバ内部の光の伝播を説明した図である。図3を参照して、光結合器10からパルス光Aがノンドープ光ファイバ11Aのコア41Aに入射する。コア41Aに入射したパルス光Aは、コア41Aを伝播して、その後に融着部11Cから希土類添加光ファイバ11Bのコア41Bに入射する。コア41Bに入射したパルス光Aは、コア41Bを伝播する。
【0065】
半導体レーザ9A〜9Dからの励起光Bは、光結合器10からノンドープ光ファイバ11Aの第1クラッド42Aに入射する。励起光Bは、第1クラッド42Aと第2クラッド43Aとの境界で反射しながら第1クラッド42Aを伝播する。ノンドープ光ファイバ11Aの第1クラッド42Aを伝播した励起光Bは、融着部11Cから、希土類添加光ファイバ11Bの第1クラッド42Bに入射する。第1クラッド42Bに入射した励起光Bは、第1クラッド42Bと第2クラッド43Bとの境界で反射しながら第1クラッド42Aを伝播する。
【0066】
励起光Bがコア41Bを通過することによって、コア41Bに含まれる希土類元素が励起光Bを吸収する。これにより希土類元素が励起される。希土類元素が励起された状態でパルス光Aがコア41Bに入射すると、希土類元素の誘導放出によってパルス光Aが増幅される。第1クラッドの直径はコアの直径よりも大きいので、多くの励起光を希土類添加光ファイバ11Bに導入することが可能となる。
【0067】
一般に、2つの光ファイバ同士を融着すると、その融着部では光を完全に閉じ込めることができないため融着部から光が漏出する。融着部11Cでは、第1クラッド42Aを伝播した励起光の一部が漏洩光Cとして漏れ出る。光結合器10からノンドープ光ファイバ11Aに導入される励起光Bのパワーが大きいので、融着部11Cにおいて僅かな割合で漏洩光Cが発生していても、その漏洩光Cのパワーは比較的大きくなる。
【0068】
パルス光(種光)Aの一部も融着部11Cから漏れ出るが、その漏洩光のパワーは融着部11Cから漏れ出る励起光(漏洩光C)のパワーに比べて小さい。このため図3およびそれ以後の図では、融着部11Cから漏れ出る光として漏洩光Cのみを示している。
【0069】
漏洩光Cは、融着部11Cから保護部21に入射する。保護部21に入射した漏洩光Cのうち、一部の光は保護部21から外部に漏れるが、残りの光は保護部21の内部を進み、直接もしくは保護部21と外部との境界面で反射された後に希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bに入射する。
【0070】
被覆44Bに入射した漏洩光Cは被覆44Bの中で熱に変わる。したがって被覆44Bの温度が上昇する。被覆44Bが発熱することにより希土類添加光ファイバ11Bの温度が上昇する。希土類添加光ファイバ11Bの温度が上昇しすぎた場合には、たとえば希土類添加光ファイバ11Bが破断するおそれがある。このため、希土類添加光ファイバ11Bの温度上昇を抑制することが求められる。
【0071】
図4は、本発明の実施の形態に係る光ファイバ接続構造による漏洩光の除去を説明した図である。図4および図3を参照して、本発明の実施の形態に係る光ファイバ接続構造は、保護部21の近傍(すなわち融着部11Cの近傍)において希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bを覆う漏洩光除去部22を有する。漏洩光除去部22の屈折率は被覆44Bの屈折率以上である。したがって、被覆44Bの中を進行した漏洩光Cは、漏洩光除去部22に入射して、漏洩光除去部22の中を進み、漏洩光除去部22から希土類添加光ファイバ11Bの外部に放出される。漏洩光除去部22によって漏洩光が希土類添加光ファイバ11Bから除去されるので、被覆44Bの発熱が抑制される。これにより希土類添加光ファイバ11Bの温度上昇が抑制されるため、ノンドープ光ファイバ11Aおよび希土類添加光ファイバ11Bの温度上昇(特に希土類添加光ファイバ11Bの温度上昇)を抑制することが可能となる。
【0072】
漏洩光除去部22は、光の透過性が高いことが好ましい。光の透過性が高いことで漏洩光の吸収による漏洩光除去部22の発熱が生じにくくなる。さらに漏洩光除去部22には耐熱性の高い材料を用いることが好ましい。漏洩光除去部22の耐熱性が高いことにより、漏洩光の吸収によって漏洩光除去部22の温度が上昇した場合にも漏洩光除去部22の劣化等を抑えることができる。
【0073】
同様に、保護部21の屈折率は、光ファイバのクラッド(この実施形態では、第1クラッド42Aおよび42B)の屈折率以下であることが好ましい。これにより、保護部21は第1クラッド42A,42B内を伝播する励起光をできるだけ外部に漏洩させなくすることができるので、励起光を効率よく伝播させることができる。また、保護部21の屈折率は、被覆44Bの屈折率以下であることが好ましい。これにより、融着部11Cから保護部21の内部に出た漏洩光を漏洩光除去部22に導くことができる。
【0074】
また、漏洩光除去部22と同様に、保護部21も、光の透過性が高いことが好ましい。光の透過性が高いことで、漏洩光の吸収による保護部21の発熱が生じにくくなる。さらに保護部21には耐熱性の高い材料を用いることが好ましい。保護部21の耐熱性が高いことにより、漏洩光の吸収によって保護部21の温度が上昇した場合にも保護部21の劣化等を抑えることができる。
【0075】
図5は、本発明の実施の形態に係る光ファイバの接続構造による効果を検証した結果を示した図である。図5を参照して、グラフの横軸は、励起光のパワー(Pump Power)を示し、グラフの縦軸はファイバ温度を示す。実験では、保護部21および漏洩光除去部22ともに、屈折率の調整の容易なUV硬化タイプの光学樹脂を用いた。漏洩光除去部22の屈折率は1.55、保護部21の屈折率は1.38とした。希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bの屈折率は1.38であり、第1クラッド42Bの屈折率は1.45であった。
【0076】
図5に示すように、保護部および漏洩光除去部を有する接続構造では、保護部のみからなる接続構造に比べて、光ファイバの温度上昇を抑制する効果が発揮される。特に励起光パワーが大きくなるにつれて、漏洩光除去部による光ファイバの温度上昇を抑制する効果が高くなる。
【0077】
図6は、本発明の実施の形態に係る光ファイバの接続構造において、漏洩光除去部の長さと光ファイバの温度との関係を検証した結果を示した図である。なお、「漏洩光除去部の長さ」とは、光ファイバの延在方向の長さを意味し、この検証実験では希土類添加光ファイバの被覆に塗布される高屈折率樹脂の長さ(光ファイバの延在方向の長さ)である。漏洩光除去部22の屈折率等の条件は、図5に示した実験結果を得られたときの条件と同じとした。
【0078】
図6を参照して、高屈折率樹脂を長くすることによって、ファイバ温度を低下させることができる。一般的に、光ファイバの使用温度の上限は85℃程度とされている。光ファイバの環境温度が25℃上昇(たとえば25℃から50℃に上昇)したとしても、光ファイバの使用温度が85℃に達しないようにするためには、環境温度が25℃であるときの光ファイバの温度が60℃以下となるように、高屈折率樹脂の長さを設定すればよい。図6に示すように、高屈折率樹脂の長さが10mm以上であれば、環境温度が25℃であるときに光ファイバの温度が60℃以下にすることができる。
【0079】
図2では融着部からの漏洩光を光ファイバの外部に放出するための構成のみが示される。しかし光ファイバから放出された漏洩光が周囲の部品にダメージを与えるなどの影響が生じる可能性がある。このような課題を解決可能な構造について以下に説明する。
【0080】
図7は、漏洩光の周囲への影響を防ぐための光ファイバ接続構造を示した図である。図7および図2を参照して、ファイバ接続部8は、図2に示した構成に加えて、保護部21および漏洩光除去部22を収納するケース30をさらに備える。ケース30は、蓋31と、ケース本体32と、蓋31およびケース本体32を固定するためのネジ33,34とを備える。
【0081】
ケース30は、漏洩光除去部22から放出された光を遮蔽することを目的とする。ケース30は、さらに、その光を効率よく吸収して熱へと変換させるとともに、その熱を効率よく放出することを目的とする。本発明の実施の形態では、黒アルマイト処理が施されたアルミ材がケース30に用いられる。上記アルミ材を切削加工することによって、図7に示したケース30を容易に作製することができる。またアルミ材をケース30に用いることによって放熱性を高めることができる。なお、ケースの放熱性をより一層向上させるために、ケースの表面積を増やすための形状加工が施されてもよい。
【0082】
図8は、図7に示したケースの蓋を取り外した状態を示した図である。図9は、図7に示したケースの内部を模式的に示した断面図である。図8および図9を参照して、ケース本体32には、ノンドープ光ファイバ11Aおよび希土類添加光ファイバ11Bを保持するための溝部35が形成されている。溝部35の一部には、隣り合って配置された凹部36,37が形成される。
【0083】
凹部36は、保護部21を収容する第1の収容室である。凹部36には保護部21としての光学樹脂が充填される。同様に、凹部37は、漏洩光除去部22を収容する第2の収容室である。凹部37には、漏洩光除去部22としての光学樹脂(すなわち高屈折率樹脂)が充填される。これらの光学樹脂は、たとえばUV硬化樹脂である。ただし、保護部21および漏洩光除去部には、比較的粘度の高いマッチングジェル(屈折率整合剤)あるいはシリコーン樹脂などを用いてもよい。
【0084】
ノンドープ光ファイバ11Aおよび希土類添加光ファイバ11Bの融着部11Cは、凹部36に位置する。第1の収容部としての凹部36に光学樹脂を充填するとともにその光学樹脂を固化することによって、融着部11Cを保護することができるだけでなく、ノンドープ光ファイバ11Aおよび希土類添加光ファイバ11Bを真っ直ぐに保つことができる。さらに凹部36に光学樹脂を充填し、その光学樹脂を硬化させることで保護部21が形成されるので、第1の収容室の壁面が保護部21と接触する。これにより、保護部21が漏洩光を吸収することによって保護部21が発熱しても、その熱をケース30を通じて効率よく放出することができる。
【0085】
なお、保護部21は、ケース30を用いる代わりに、市販の光ファイバ用リコータを用いてリコートすることによって形成してもよい。
【0086】
一方、第2の収容部としての凹部37に高屈折率樹脂を充填するとともにその樹脂を硬化することによって漏洩光除去部22が形成される。第2の収容室の壁面は漏洩光除去部22と接触する。これにより、漏洩光除去部22が漏洩光を吸収することによって漏洩光除去部22が発熱しても、その熱をケース30を通じて効率よく放出することができる。
【0087】
本発明に係る光ファイバ接続構造の実施形態は、図2に示した形態に限定されるものではなく、漏洩光除去部22が希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bのうち融着部11C近傍の部分を覆うように設けられるのであれば、他の種々の形態を適用することもできる。本発明に係る光ファイバ接続構造の実施形態の例を以下に示す。
【0088】
図10は、本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第1の例を示した図である。図10に示した構造では、図2に示した構造から保護部21が省略されている。このような構成であってもよい。図10に示した構造においても漏洩光除去部22は、希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bのうち融着部11C近傍の部分を覆うように設けられる。
【0089】
図11は、本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第2の例を示した図である。図11に示した構造では、図2に示した保護部21に代えて、樹脂製または金属製のスリーブ23を備えている。スリーブ23は、ノンドープ光ファイバ11Aおよび希土類添加光ファイバ11Bに取り付けられており、融着部11Cを覆う。すなわち、スリーブ23は、図2に示した保護部21と同様の機能を有する。ただし、図2に示した保護部21は、融着部11Cの表面にコーティングされた樹脂であり、融着部11Cの表面に密着しているが、スリーブ23と融着部11Cとの間には隙間が存在する。このように保護部と光ファイバとの間に隙間が存在する構造であってもよい。
【0090】
図12は、本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第3の例を示した図である。図12に示した構造では、漏洩光除去部22が保護部21全体を覆っている。図12の構成においても、漏洩光除去部22が希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bのうち融着部11C近傍の部分を覆っている。
【0091】
図13は、本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第4の例を示した図である。図13に示した構造では、漏洩光除去部22が断続的に被覆44Bの表面に設けられている。漏洩光除去部22が希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bのうち融着部11C近傍の部分を覆っていれば、このように漏洩光除去部22が断続的に被覆44Bの表面に設けられていてもよい。
【0092】
図14は、本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第5の例を示した図である。図14に示した構造では、漏洩光除去部22,24が隣りあって被覆44Bの表面に設けられる。漏洩光除去部22,24のいずれの屈折率も被覆44Bの屈折率以上であるが、漏洩光除去部22,24の屈折率は互いに異なる。このように、異なる屈折率を有する複数(複数であればその数は特に限定されない)の漏洩光除去部を組み合わせてもよい。
【0093】
図15は、本発明に係る光ファイバ接続構造の他の形態の第6の例を示した図である。図15に示した構造では、漏洩光除去部22は、保護部21と隙間を設けて被覆44Bの表面に設けられる。さらに、漏洩光除去部22は被覆44Bの全周にわたらずに、部分的に設けられている。このように漏洩光除去部22は、保護部21と隙間を設けて被覆44Bの表面に設けられてもよい。あるいは漏洩光除去部22は、被覆44Bの全周にわたらずに、部分的に設けられていてもよい。また、図15に示されるように、漏洩光除去部22は、保護部21と隙間を設けた上で、被覆44Bの全周にわたらずに、部分的に設けられてもよい。いずれの構造であっても、漏洩光除去部22が希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bのうち融着部11C近傍の部分を覆っている。
【0094】
また、図1に示したファイバレーザは、希土類添加ファイバの入射側から励起光を投入する方式(前方励起)のファイバレーザであるが、本発明の実施の形態に係るファイバレーザの励起方式は、前方励起に限定されるものではない。
【0095】
図16は、本発明の実施の形態に係るファイバレーザの他の構成例を示した図である。図16を参照して、レーザ光源装置102は、種光源としての半導体レーザ52と、励起光源としての半導体レーザ53A,53Bと、光結合器63A,63Bとを有する。
【0096】
光結合器63Aは、6つの励起ポート62Aと、1つの入射ポート61と、1つの出射ポート64とを有する。6つの励起ポートの各々は光ファイバによって構成される。6つの光ファイバを溶融かつ延伸することによって出射ポート64が形成される。同様に光結合器63Bは、6つの励起ポート62Bと、励起光を出射するための出射ポート68と、最終的にレーザ光を出力するための出射ポート69とを有する。6つの励起ポートの各々は光ファイバによって構成される。
【0097】
光結合器63Aの各励起ポート62Aには励起光源としての半導体レーザ53Aが接続される。半導体レーザ53Aから出射された励起光は、出射ポート64から出射される。また、入射ポート61には種光源としての半導体レーザ52が接続される。半導体レーザ52から出射された種光も出射ポート64から出射される。
【0098】
同様に、光結合器63Bの各励起ポート62Bには励起光源としての半導体レーザ53Bが接続される。半導体レーザ53Bから出射された励起光は、出射ポート68から出射される。なお、出射ポート64,68は、たとえばノンドープ光ファイバである。
【0099】
希土類添加光ファイバ65の入射端は、光結合器63Aの出射ポート64を構成する光ファイバと融着される。半導体レーザ52からの種光および半導体レーザ53Aからの励起光は、光結合器63Aの出射ポート64から融着部66を介して希土類添加光ファイバ65に入射する。同様に、希土類添加光ファイバ65の出射端は、光結合器63Bの出射ポート68を構成する光ファイバと融着される。半導体レーザ53Bからの励起光は、光結合器63Bの出射ポート68から融着部67を介して希土類添加光ファイバ65に入射する。希土類添加光ファイバ65は、種光を励起光によって増幅する。増幅された光は希土類添加光ファイバ65の出射端から融着部67および出射ポート68,69を介してレーザ光として出力される。
【0100】
図16に示した構成によれば、励起光は、希土類添加光ファイバ65の入射端および出射端の両方から希土類添加光ファイバ65に投入される。すなわち図16に示したレーザ光源装置102は、前方励起および後方励起によってレーザ光を出力する。図16に示した融着部66,67において、本発明に係る光ファイバ接続構造を適用することができる。すなわち希土類添加光ファイバ65の被覆の融着部66,67近傍部分において、その被覆の屈折率よりも高い屈折率を有する漏洩光除去部を設けることができる。
【0101】
なお、レーザ光源装置の励起方式が、後方励起、すなわち希土類添加光ファイバの出射端に励起光を投入する後方励起方式の場合であっても、図16の構成において融着部67に対応する部分に、本発明に係る光ファイバ接続構造を適用することができる。
【0102】
以上のように、この実施の形態に係る光ファイバの接続構造によれば、漏洩光除去部22が、希土類添加光ファイバ11Bの被覆44Bのうち融着部11C近傍の部分を覆うように設けられる。漏洩光除去部22は、被覆44Bの屈折率以上の屈折率を有する。これにより融着部11Cから被覆44Bに入射した漏洩光を希土類添加光ファイバ11Bから放出することができる。したがって、希土類添加光ファイバ11Bおよびノンドープ光ファイバ11Aの温度上昇を抑制できる。
【0103】
なお、ノンドープ光ファイバ11Aおよび希土類添加光ファイバ11Bにレーザ光を導入するためのレーザ光源の構成は特に限定されず、種々の構成(たとえば図16に示した構成)を適用することができる。
【0104】
また、この実施の形態では、ノンドープ光ファイバと希土類添加光ファイバとを接続するための構成を示したが、2本の希土類添加光ファイバ同士を融着によって接続する場合にも本発明を適用することができる。
【0105】
また、この実施の形態では、2本のダブルクラッドファイバを接続するための構造を示したが、2本のシングルクラッドファイバを融着によって接続する場合にも、本発明を適用することができる。2本のシングルクラッドファイバのうち少なくとも1つが希土類添加光ファイバである場合、その希土類添加光ファイバのコアに励起光が投入される。上記のように、2本の光ファイバを融着によって接続した場合、その融着部から光が漏れないように光を完全に閉じ込めることは難しい。したがって、2本のシングルクラッドファイバ同士を融着によって接続する場合においても、その融着部からは僅かであっても光が漏出することが十分に起こりうる。このため、2本のシングルクラッドファイバ同士を融着によって接続する場合において本発明を適用することができる。
【0106】
また、逆に、クラッドが3層以上の層からなるファイバにも本発明を適用することができる。
【0107】
また、この実施の形態では、レーザヘッド部から照射されるレーザ光は被加工物の加工に用いられる。しかし、本発明に係るレーザ照射装置を加工以外の目的で使用することも可能である。たとえばセンサ、光ピンセット、レーザ加速器、レーザ顕微鏡、あるいはレーザ医療装置、核融合装置等に本発明に係るレーザ照射装置を用いることもできる。したがって本発明に係るレーザ照射装置はレーザ加工装置に限定されず、様々な分野への適用が可能である。
【0108】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
1,11B,65 希土類添加光ファイバ、2,3,9A〜9D,52,53A,53B 半導体レーザ、4,6,12, アイソレータ、5,10,63A,63B 光結合器、7 バンドパスフィルタ、8 ファイバ接続部、11A ノンドープ光ファイバ、11B 希土類添加光ファイバ、11C,66,67 融着部、13 コリメータレンズ、14 ガルバノスキャナ、15 集光レンズ、20 光学装置、21 保護部、22,24 漏洩光除去部、23 スリーブ、30 ケース、31 蓋、32 ケース本体、33,34 ネジ、35 溝部、36,37 凹部、41A,41B コア、42A,42B 第1クラッド、43A,43B 第2クラッド、44,44A,44B 被覆、50 加工対象物、61 入射ポート、62A,62B 励起ポート、64,68,69 出射ポート、100 レーザ加工装置、101,102 レーザ光源装置、130 レーザ伝送部、A パルス光、B 励起光、C 漏洩光、L レーザ光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被覆によって覆われた第1の光ファイバと第2の被覆によって覆われた第2の光ファイバとを接続するための光ファイバ接続構造であって、
前記第1の光ファイバの出射端において前記第1の被覆が除去され、
前記第2の光ファイバの入射端において前記第2の被覆が除去され、
前記第1の光ファイバの前記出射端の端面と、前記第2の光ファイバの前記入射端の端面とを融着することによって形成された融着部と、
前記融着部の近傍において前記第2の被覆を覆う漏洩光除去部とを備え、
前記漏洩光除去部の屈折率は、前記第2の被覆の屈折率以上である、光ファイバ接続構造。
【請求項2】
前記第1および第2の光ファイバの各々は、コアとクラッドとを有し、
前記光ファイバ接続構造は、
前記融着部を覆うように形成された保護部をさらに備え、
前記保護部の屈折率は、前記第2の被覆の屈折率以下、かつ、前記第2の光ファイバのクラッドの屈折率以下である、請求項1に記載の光ファイバ接続構造。
【請求項3】
前記第1および第2の光ファイバのうちの少なくとも1つは、希土類添加光ファイバである、請求項1または2に記載の光ファイバ接続構造。
【請求項4】
前記第1および第2の光ファイバの各々は、コアとクラッドとを有し、
前記クラッドは、
前記コアの周囲に設けられた第1のクラッドと、
前記第1のクラッドの周囲に設けられた第2のクラッドとを含む、請求項3に記載の光ファイバ接続構造。
【請求項5】
前記光ファイバ接続構造は、
金属ケースをさらに備え、
前記金属ケースは、
前記保護部と壁面が接触するように前記保護部を収容する第1の収容室と、
前記漏洩光除去部と壁面が接触するよう前記漏洩光除去部を収容する第2の収容室とを有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバ接続構造。
【請求項6】
第1の被覆によって覆われた第1の光ファイバと、
第2の被覆によって覆われた第2の光ファイバとを備え、
前記第1の光ファイバの出射端において前記第1の被覆が除去され、
前記第2の光ファイバの入射端において前記第2の被覆が除去され、
前記第1の光ファイバの前記出射端の端面と、前記第2の光ファイバの前記入射端の端面とを融着することによって形成された融着部と、
前記融着部の近傍において前記第2の被覆を覆う漏洩光除去部と、
前記第1の光ファイバの入射端に導入されるレーザ光を発生させるためのレーザ光源とさらに備え、
前記漏洩光除去部の屈折率は、前記第2の被覆の屈折率以上である、レーザ照射装置。
【請求項7】
前記第1および第2の光ファイバの各々は、コアとクラッドとを有し、
前記レーザ照射装置は、
前記融着部を覆うように形成された保護部をさらに備え、
前記保護部の屈折率は、前記第2の被覆の屈折率以下、かつ、前記第2の光ファイバのクラッドの屈折率以下である、請求項6に記載のレーザ照射装置。
【請求項8】
前記第1および第2の光ファイバのうちの少なくとも1つは、希土類添加光ファイバであり、
前記レーザ光源は、
種光を発する種光源と、
前記種光を前記希土類添加光ファイバによって増幅するための励起光を発する励起光源とを含む、請求項6または7に記載のレーザ照射装置。
【請求項9】
前記第1および第2の光ファイバの各々は、コアとクラッドとを有し、
前記クラッドは、
前記コアの周囲に設けられた第1のクラッドと、
前記第1のクラッドの周囲に設けられた第2のクラッドとを含み、
前記種光源から発せられた前記種光は前記コアを伝播し、
前記励起光源から発せられた前記励起光は前記第1のクラッドを伝播する、請求項8に記載のレーザ照射装置。
【請求項10】
前記レーザ照射装置は、
金属ケースをさらに備え、
前記金属ケースは、
前記保護部と壁面が接触するように前記保護部を収容する第1の収容室と、
前記漏洩光除去部と壁面が接触するよう前記漏洩光除去部を収容する第2の収容室とを有する、請求項6から9のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか1項に記載のレーザ照射装置を備える、レーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−186399(P2011−186399A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54568(P2010−54568)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】