説明

光ファイバ部品及びその製造方法、並びに、光ファイバ・レンズ基板組立体及びその製造方法

【課題】損傷が発生し難く、製造を自動化し、製造コストの低減を図り得る、例えば光コネクタを構成する光ファイバ・レンズ基板組立体を提供する。
【解決手段】光ファイバ・レンズ基板組立体10は、光ファイバ心線20、及び、光ファイバ心線20が埋め込まれ、その平滑面31に、光ファイバ心線20を構成する光ファイバ素線21の断面及び2次被覆24の断面が露出した端面固定樹脂ブロック30から成る光ファイバ部品11、並びに、端面固定樹脂ブロック30の平滑面31に接着されたレンズ基板40から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバ部品及びその製造方法、並びに、光ファイバ・レンズ基板組立体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ素線の単心又は複数心に2次被覆を施した光ファイバ心線から出射された光あるいは光ファイバ心線へ入射する光を制御する場合、屡々、レンズが設けられたレンズ基板を備えた光コネクタが用られる。このような光コネクタにおいては、レンズの中心と、光ファイバ心線におけるコア(裸光ファイバとも呼ばれる光導波領域)の中心とを、高い精度で位置決めする必要がある。そして、通常、剛性が低く、左程形状精度が確保されていない光ファイバの2次被覆を除去した状態で、光ファイバ心線を光コネクタに固定している。具体的には、光ファイバ心線の端部から10mmほどに亙り2次被覆を取り除き、光ファイバ素線(コア・クラッド部)を露出させ、高い精度で製造された光ファイバ素線(一般的には、直径125μm)を、高い精度で加工された穴に挿入し、あるいは、V溝に載せることで(例えば、特開2008−164795参照)、コア(一般的には、直径50μm)の位置決めを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−164795
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の位置決め方法にあっては、2次被覆を取り除き、脆弱な光ファイバ素線が剥き出しになった状態で、光コネクタを構成する光ファイバ部品に対して光ファイバ心線の位置決めを行い、光ファイバ部品に接着する必要がある。然るに、このような作業は非常にデリケートな作業であり、光コネクタの組立工程を自動化することが極めて困難であり、全体の製造コストに占める組立工程の割合が非常に大きい。また、脆弱な光ファイバ素線が剥き出しになった状態で作業を行うため、剥き出しになった光ファイバ素線が、屡々、損傷するといった問題もある。
【0005】
従って、本開示の目的は、損傷が発生し難く、製造を自動化し、製造コストの低減を図り得る、例えば光コネクタを構成する光ファイバ部品及び光ファイバ・レンズ基板組立体、並びに、これらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の光ファイバ部品は、
光ファイバ心線、及び、
光ファイバ心線が埋め込まれ、その平滑面に、光ファイバ心線を構成する光ファイバ素線の断面及び2次被覆の断面が露出した端面固定樹脂ブロック、
から成る。
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の光ファイバ・レンズ基板組立体は、
光ファイバ心線、及び、
光ファイバ心線が埋め込まれ、その平滑面に、光ファイバ心線を構成する光ファイバ素線の断面及び2次被覆の断面が露出した端面固定樹脂ブロック、
から成る光ファイバ部品、並びに、
端面固定樹脂ブロックの平滑面に接着されたレンズ基板、
から成る。
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の光ファイバ部品の製造方法は、
光ファイバ心線を端面固定樹脂ブロックに挿入、固定した後(あるいは、光ファイバ心線を端面固定樹脂ブロックに埋め込んだ後)、光ファイバ心線の軸線方向と直交する仮想平面で端面固定樹脂ブロックを切断し、次いで、切断面を平滑化処理して平滑面とし、平滑面に、光ファイバ心線を構成する光ファイバ素線の断面及び2次被覆の断面を露出させる。
【0009】
上記の目的を達成するための本開示の光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法は、
光ファイバ心線を端面固定樹脂ブロックに挿入、固定した後(あるいは、光ファイバ心線を端面固定樹脂ブロックに埋め込んだ後)、光ファイバ心線の軸線方向と直交する仮想平面で端面固定樹脂ブロックを切断し、次いで、切断面を平滑化処理して平滑面とし、平滑面に、光ファイバ心線を構成する光ファイバ素線の断面及び2次被覆の断面を露出させ、その後、端面固定樹脂ブロックの平滑面をレンズ基板に接着する。
【発明の効果】
【0010】
本開示にあっては、光ファイバ素線(コア・クラッド部)を剥き出しとして光ファイバ心線を光ファイバ部品に固定する従来の技術とは異なり、端面固定樹脂ブロックに光ファイバ心線がそのまま埋め込まれている。従って、光ファイバ素線の取り扱いが容易であり、製造の自動化を図ることができ、製造コストを低減することができるし、光ファイバ心線に破損が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1の(A)、(B)並びに(C)は、それぞれ、実施例1の光ファイバ部品の模式的な平面図、模式的な正面図、並びに、図1の(A)及び(B)の矢印C−Cに沿った模式的な断面図であり、図1の(D)は、実施例1の光ファイバ・レンズ基板組立体の模式的な平面図であり、図1の(E)は、実施例1の光ファイバ部品の図1の(B)の矢印E−Eに沿った模式的な断面図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、実施例1の光ファイバ部品の製造方法、光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法を説明するための、端面固定樹脂ブロック等の模式的な平面図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、実施例1の光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法を説明するための、組立装置等の概念図である。
【図4】図4の(A)及び(B)は、図3の(B)に引き続き、実施例1の光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法を説明するための、組立装置等の概念図である。
【図5】図5の(A)、(B)及び(C)は、実施例2の端面固定樹脂ブロックの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の光ファイバ部品及びその製造方法、並びに、光ファイバ・レンズ基板組立体及びその製造方法、全般に関する説明
2.実施例1(光ファイバ部品及びその製造方法、並びに、光ファイバ・レンズ基板組立体及びその製造方法)
3.実施例2(実施例1の変形)、その他
【0013】
[本開示の光ファイバ部品及びその製造方法、並びに、光ファイバ・レンズ基板組立体及びその製造方法、全般に関する説明]
以下の説明において、光ファイバ心線とは、光ファイバ素線の単心あるいは複数心に、樹脂材料から成る2次被覆を施したものを意味し、光ファイバ素線とは、一般に、ガラス材あるいはプラスチック材等、同一素材から構成され、中央部の屈折率を僅かに高くしてコアとし、コアをクラッドが囲んでいるものを意味する。本開示において、光ファイバ心線の構成、構造、それ自体は、周知の構成、構造とすることができる。
【0014】
本開示の光ファイバ・レンズ基板組立体あるいは本開示の光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法において、端面固定樹脂ブロックの平滑面とレンズ基板とは接着剤で接着されている形態とすることができる。ここで、接着剤として、光ファイバ素線を通過する光に対して透明な周知の紫外線硬化型接着剤や熱硬化型接着剤、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等から成る接着剤を用いることができる。そして、この場合、接着剤は、光ファイバと略同じ屈折率を有することが好ましい。具体的には、コアを構成する材料の屈折率をnC、接着剤の屈折率をnAとしたとき、
|nC−nA|≦0.2
好ましくは、
|nC−nA|≦0.1
を満足することが望ましい。尚、このような形態とすることで、たとえ、光ファイバ素線やコアに微細な損傷(クラックや凹凸等)が生じたとしても、損傷が接着剤で充填されるので、損傷による悪影響が生じ難い。
【0015】
上記の好ましい形態を含む本開示の光ファイバ・レンズ基板組立体あるいは本開示の光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法、本開示の光ファイバ部品あるいは本開示の光ファイバ部品の製造方法において、光ファイバ心線はテープ心線から構成されている形態とすることができるが、これに限定するものではない。また、光ファイバ部品における光ファイバ素線の数やテープ心線を構成する光ファイバ素線の数に限定はない。
【0016】
以上に説明した好ましい形態を含む本開示の光ファイバ・レンズ基板組立体あるいは本開示の光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法、本開示の光ファイバ部品あるいは本開示の光ファイバ部品の製造方法にあっては、平滑面の二乗平均平方根粗さRq(JIS B0601:2001に規定)は0.1μm以上である形態とすることができる。云い換えれば、従来の光ファイバ端面の面粗さ規格よりも粗い面粗さ規格でも、何ら問題は生じない。尚、Rqの上限値として0.5μmを例示することができる。
【0017】
以上に説明した好ましい形態を含む本開示の光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法において、端面固定樹脂ブロックの平滑面にレンズ基板を接着する工程は、端面固定樹脂ブロックを移動用アームで把持し、移動用アームの移動及びアライメントカメラの作動によって、組立台に載置されたレンズ基板の上方の所望の位置に端面固定樹脂ブロックを位置せしめ、次いで、移動用アームの移動を下降させることで、接着剤が塗布されたレンズ基板に端面固定樹脂ブロックを接触させた後、接着剤を硬化させる工程から成る構成とすることができる。
【0018】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の光ファイバ・レンズ基板組立体あるいは本開示の光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法、本開示の光ファイバ部品あるいは本開示の光ファイバ部品の製造方法(以下、これらを総称して、単に、『本開示』と呼ぶ場合がある)において、端面固定樹脂ブロックを構成する樹脂は、周知の熱可塑性樹脂とすればよく、例えば、端面固定樹脂ブロックは、射出成形法に基づき作製、成形することができる。尚、1又は複数の貫通孔が設けられた端面固定樹脂ブロックを作製した後、貫通孔に光ファイバ心線を挿入してもよいし、端面固定樹脂ブロックを例えば2つの部材から構成し、これらの2つの部材で光ファイバ心線を挟んだ状態で、これらの2つの部材を接着してもよいし、端面固定樹脂ブロックと光ファイバ心線とを一体に成形してもよい。端面固定樹脂ブロックの外形形状は、特に限定はなく、例えば、直方体を挙げることができる。そして、この場合、光ファイバ心線は、端面固定樹脂ブロックの平滑面からこの平滑面と対向する面へと直線状に延びる形態とすることができる。あるいは又、この場合、光ファイバ心線は、端面固定樹脂ブロックの側面を構成する平滑面から底面あるいは頂面へと、あるいは又、端面固定樹脂ブロックの側面を構成する平滑面から隣接する側面へと、端面固定樹脂ブロックの内部において角度を変えて延びる形態とすることができる。あるいは又、これらの形態が混在した形態とすることもできる。光ファイバ心線と同数のレンズが設けられたレンズ基板の構成、構造は、周知の構成、構造、例えば、プラスチック・モールド・マイクロレンズが設けられた基板とすることができる。本開示の光ファイバ部品から、例えば、光コネクタが構成され、あるいは又、所謂フェルールが構成される。
【実施例1】
【0019】
実施例1は、本開示の光ファイバ部品及びその製造方法、並びに、光ファイバ・レンズ基板組立体及びその製造方法に関する。実施例1の光ファイバ部品の模式的な平面図(光ファイバ部品を上から眺めた模式図)を図1の(A)に示し、模式的な正面図(図1の(A)の矢印Bの方向から眺めた模式図)を図1の(B)に示し、図1の(A)及び(B)の矢印C−Cに沿った拡大された模式的な断面図を図1の(C)に示す。更には、光ファイバ・レンズ基板組立体の模式的な平面図を図1の(D)に示し、光ファイバ部品の図1の(B)の矢印E−Eに沿った模式的な断面図を図1の(E)に示す。
【0020】
実施例1の光ファイバ部品11から光コネクタあるいは所謂フェルールが構成され、この光ファイバ部品11は、
光ファイバ心線20、及び、
光ファイバ心線20が埋め込まれ、その平滑面31に、光ファイバ心線20を構成する光ファイバ素線21の断面及び2次被覆24の断面が露出した端面固定樹脂ブロック30、
から成る。
【0021】
また、実施例1の光ファイバ・レンズ基板組立体10は、
実施例1の光ファイバ部品11、並びに、
端面固定樹脂ブロック30の平滑面31に接着されたレンズ基板40、
から成る。
【0022】
ここで、実施例1にあっては、端面固定樹脂ブロック30に光ファイバ心線20が埋め込まれている。光ファイバ心線20は、例えば、4チャンネルアレイのテープ心線から構成されている。テープ心線の幅は約1.25mm、高さは約0.4mmであり、断面形状は長穴形状である。尚、このテープ心線から構成された光ファイバ心線20は、周知の構成、構造を有するが、光ファイバ素線21は、具体的には、例えば、石英ガラス(屈折率nC=1.5)から構成されたコア22(例えば、直径50μm)及びクラッド23(例えば、直径125μm)から成り、4本のコア22がピッチ250μmで一列に並ぶように配列されており、2次被覆24は樹脂材料から構成されている。端面固定樹脂ブロック30は、熱可塑性樹脂から射出成形法に基づき成形されている。屈折率nAが約1.4乃至約1.6の透明な成形用樹脂から作製されたレンズ基板40の第1面41には、複数のプラスチック・モールド・マイクロレンズから成るレンズ43が形成されており、第1面41と対向する第2面42は平面である。尚、端面固定樹脂ブロック30の外形形状は、実施例1にあっては直方体であり、1側面32に相当する平滑面31からこの平滑面31と対向する側面(対向側面)33まで、直線状の貫通孔37が形成されている。そして、光ファイバ心線20は、貫通孔37内を平滑面31から対向側面33へと直線状に延びており、更に、外部へと延びている。貫通孔37の大きさは、テープ心線から構成された光ファイバ心線20の断面よりも僅かに小さい。尚、参照番号35は端面固定樹脂ブロック30の頂面を指し、参照番号36は端面固定樹脂ブロック30の底面を指す。ここで、射出成形法によって成形された端面固定樹脂ブロック30の寸法精度は、十分満足すべきものであった。尚、コア22の位置関係にバラツキが生じなければ、しかも、平滑面31が光ファイバ心線20に対しておおよそ垂直(おおよそ±2°以内)であれば、端面固定樹脂ブロック30の外形等の形状精度は一般的な精度で何ら問題は生じない。
【0023】
実施例1の光ファイバ・レンズ基板組立体10にあっては、端面固定樹脂ブロック30の平滑面31とレンズ基板40とは、接着剤50、具体的には、光ファイバ素線21を通過する光に対して透明な紫外線硬化型の接着剤50で接着されている。尚、接着剤50は、光ファイバ(具体的には、コア22)と略同じ屈折率を有する。より具体的には、
|nC−nA|≦0.2
を満足している。
【0024】
以下、端面固定樹脂ブロック等の模式的な平面図である図2の(A)及び(B)、並びに、組立装置等の概念図である図3の(A)及び(B)、図4の(A)及び(B)を参照して、実施例1の光ファイバ部品の製造方法、光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法を説明する。
【0025】
[工程−100]
先ず、射出成形法に基づき成形された端面固定樹脂ブロック30に光ファイバ心線20を挿入、固定する(図2の(A)参照)。具体的には、端面固定樹脂ブロック30の貫通孔37内に、テープ心線から構成された光ファイバ心線20を挿入した後、端面固定樹脂ブロック30と光ファイバ心線20とを接着剤(図示せず)を用いて固定する。
【0026】
また、端面固定樹脂ブロック30と光ファイバ心線20とをインサート射出成形法に基づき一体的に成形し、光ファイバ心線20を端面固定樹脂ブロック30に埋め込んでもよい。あるいは又、端面固定樹脂ブロック30を例えば2つの部材から構成し、これらの2つの部材で光ファイバ心線20を挟んだ状態で、これらの2つの部材を接着することで、光ファイバ心線20を端面固定樹脂ブロック30に固定してもよい。尚、これらの形態も、「光ファイバ心線を端面固定樹脂ブロックに挿入、固定」する形態に包含される。
【0027】
[工程−110]
次に、図2の(B)に示すように、例えばダイヤモンドカッターを用いて、光ファイバ心線20の軸線方向と直交する仮想平面(図2の(A)の点線参照)で端面固定樹脂ブロック30を切断する。この切断面31Aが端面固定樹脂ブロック30の平滑面31となる。
【0028】
[工程−120]
その後、切断面31Aを平滑化処理して平滑面31とする。具体的には、研磨剤を用いて切断面31Aの研磨を行う。切断面31Aの平滑化処理によって、光ファイバ心線20を構成する光ファイバ素線21の断面(露出面)及び2次被覆24の断面(露出面)に大きな損傷が生じることはなかった。以上によって、光ファイバ部品11を完成させることができる。尚、評価・試験のために、研磨剤を用いて、粗研磨、大研磨、中研磨、小研磨、仕上げ研磨を、順次、行った。
【0029】
[工程−130]
次いで、端面固定樹脂ブロック30の平滑面31を、レンズ基板40(具体的には、レンズ基板40の第2面42)に、光ファイバ素線21を通過する光に対して透明な紫外線硬化型の接着剤50を用いて接着する。より具体的には、レンズ基板40の第2面42を上にして、レンズ基板40を組立台60上に固定する。尚、組立台60には垂直に延びるピン60Aが、例えば4本配設されており、レンズ基板40に設けられた位置決め用の貫通孔(図示せず)とピン60Aとを嵌合させることで、レンズ基板40を組立台60上に固定することができる。そして、ディスペンサ(図示せず)を用いて、レンズ基板40の第2面42の上に接着剤50を塗布する(図3の(A)参照)。
【0030】
そして、X方向、Y方向、Z方向への移動が可能であり、しかも、水平面に対する角度θを変化させることが可能な移動用アーム61で、端面固定樹脂ブロック30の平滑面31を下に向けた状態で、光ファイバ部品11(具体的には、端面固定樹脂ブロック30)を把持する。そして、移動用アーム61の移動及びアライメントカメラ62の作動によって、組立台60に載置されたレンズ基板40の上方の所望の位置に端面固定樹脂ブロック30を位置せしめる。具体的には、アライメントカメラ62によって端面固定樹脂ブロック30の平滑面31における光ファイバ素線21の断面(露出面)及び2次被覆24の断面(露出面)を観察しながら、移動用アーム61を移動させて、端面固定樹脂ブロック30のX方向、Y方向、Z方向への移動、角度θの調整を行い、端面固定樹脂ブロック30の平滑面31を所定の位置に配置させる(図3の(B)参照)。その後、アライメントカメラ62を水平方向に移動させ、移動用アーム61を下降させて、接着剤50が塗布されたレンズ基板40に端面固定樹脂ブロック30を接触させる(図4の(A)参照)。即ち、端面固定樹脂ブロック30の平滑面31を、接着剤50を介してレンズ基板40の第2面42に載置する。そして、接着剤50に紫外線を短時間、照射することで、紫外線硬化型の接着剤50を仮硬化させる。尚、一般に、組立台60上におけるレンズ43の相対的位置合わせ精度は、例えば±10μm以下を確保することができるので、移動用アーム61により容易にレンズ43の光軸合わせを行うことができる。
【0031】
その後、移動用アーム61による光ファイバ部品11の把持を解き、移動用アーム61を上昇させ、更に、水平方向に移動させる。そして、接着剤50を硬化させる。具体的には、接着剤50に紫外線を照射することで、紫外線硬化型の接着剤50を硬化させる(図4の(B)参照)。そして、レンズ基板40を組立台60から外す。こうして、図1の(D)に示す光ファイバ・レンズ基板組立体10を完成させることができる。尚、レンズ基板40を組立台60から外した後、接着剤50に紫外線を照射することで紫外線硬化型の接着剤50を硬化させてもよい。
【0032】
上述した[工程−120]において、評価・試験のために平滑面31に対して粗研磨、大研磨、中研磨、小研磨、仕上げ研磨を行った後の平滑面31の二乗平均平方根粗さRqの測定結果は、以下の表1のとおりであった。尚、平滑面31を観察したが、各段階の研磨処理後において、光ファイバ素線21の断面(露出面)及び2次被覆24の断面(露出面)に大きな損傷は認められなかった。
【0033】
[表1]
二乗平均平方根粗さRq
粗研磨 0.30μm
大研磨 0.22μm
中研磨 0.18μm
小研磨 0.05μm
仕上げ研磨 0.05μm
【0034】
そして、粗研磨、大研磨、小研磨、及び、仕上げ研磨の各段階で得られた平滑面31を有する端面固定樹脂ブロック30に基づき、光ファイバ・レンズ基板組立体10を試作し、光ファイバ心線20の一端から入射し、端面固定樹脂ブロック30の平滑面31に配された光ファイバ素線21の断面(露出面)から出射され、接着剤50、レンズ基板40を通過した光の光損失を測定した。その結果、仕上げ研磨の状態(Rq=0.05m)で光損失は0.05dB、粗研磨の状態(Rq=0.30μm)であっても光損失は0.15dBであり、極めて少ない光損失を達成することができた。即ち、Rqの値が0.1μmあるいはそれ以上の大きな値であっても、十分な低光損失を達成することができた。
【0035】
以上に説明したように、実施例1にあっては、端面固定樹脂ブロック30に光ファイバ心線20がそのまま埋め込まれており、光ファイバ心線20を構成する光ファイバ素線21だけでなく、2次被覆24も一緒に平滑化処理(平滑加工)される。従って、光ファイバ心線20の取り扱いが容易であり、製造の自動化を図ることができ、製造コストを低減することができる。また、光ファイバ心線20に破損が生じ難い。しかも、端面固定樹脂ブロック30に、レンズ基板40との位置合わせのために、特別の位置決め構造を設けることは、原則、不要であるし、端面固定樹脂ブロック30の外形寸法等は特に高い精度を要求されない。また、光ファイバ素線21やコア22に微細な損傷(クラックや凹凸等)が生じたとしても、損傷が接着剤50で充填されるので、損傷による悪影響が生じ難い。
【実施例2】
【0036】
実施例1にあっては、端面固定樹脂ブロック30に直線状の貫通孔37を設けた。一方、実施例2にあっては、端面固定樹脂ブロック30に、所望の角度、曲げられた貫通孔38を設ける。即ち、この場合、貫通孔38は、模式的な断面図を図5の(A)あるいは図5の(B)に示すように、端面固定樹脂ブロック30の1側面32に相当する平滑面31から頂面35へと、端面固定樹脂ブロック30の内部において、例えば90度、角度を変えて延びている。尚、図5の(B)に示す例では、頂面35の一部分には、光ファイバ心線よりも大きな凹部が形成されており、一種の開放構造となっている。あるいは又、貫通孔38は、模式的な断面図を図5の(C)に示すように、端面固定樹脂ブロック30の底面36に相当する平滑面31から側面33へと、端面固定樹脂ブロック30の内部において、例えば90度、角度を変えて延びている。尚、図5の(A)、(B)及び(C)は、図1の(A)の矢印C−Cに沿ったと同様の模式的な断面図である。あるいは又、端面固定樹脂ブロック30に直線状の貫通孔37と、所望の角度、曲げられた貫通孔38を、併せて設けてもよい。
【0037】
以上、好ましい実施例に基づき本開示を説明したが、本開示はこれらの実施例に限定するものではない。実施例にあっては、光ファイバ心線を、4チャンネルアレイのテープ心線から構成したが、例えば、2チャンネルアレイ、12チャンネルアレイ等のテープ心線から構成することもできる。場合によっては、端面固定樹脂ブロック30の平滑面31に位置決め穴(あるいは突起部)を設け、レンズ基板40に突起部(あるいは位置決め穴)を設け、位置決め穴に突起部を挿入することで、端面固定樹脂ブロック30とレンズ基板40とを位置決めしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10・・・光ファイバ・レンズ基板組立体、11・・・光ファイバ部品、20・・・光ファイバ心線、21・・・光ファイバ素線、22・・・コア、23・・・クラッド、24・・・2次被覆、30・・・端面固定樹脂ブロック、31・・・平滑面、31A・・・切断面、32,33,34・・・側面、35・・・頂面、36・・・底面、37,38・・・貫通孔、40・・・レンズ基板、41・・・第1面、42・・・第2面、43・・・レンズ、50・・・接着剤、60・・・組立台、60A・・・ピン、61・・・移動用アーム、62・・・アライメントカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線、及び、
光ファイバ心線が埋め込まれ、その平滑面に、光ファイバ心線を構成する光ファイバ素線の断面及び2次被覆の断面が露出した端面固定樹脂ブロック、
から成る光ファイバ部品、並びに、
端面固定樹脂ブロックの平滑面に接着されたレンズ基板、
から成る光ファイバ・レンズ基板組立体。
【請求項2】
端面固定樹脂ブロックの平滑面とレンズ基板とは、接着剤で接着されている請求項1に記載の光ファイバ・レンズ基板組立体。
【請求項3】
接着剤は、光ファイバと略同じ屈折率を有する請求項2に記載の光ファイバ・レンズ基板組立体。
【請求項4】
光ファイバ心線はテープ心線から構成されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光ファイバ・レンズ基板組立体。
【請求項5】
平滑面の二乗平均平方根粗さRqは0.1μm以上である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光ファイバ・レンズ基板組立体。
【請求項6】
光ファイバ心線を端面固定樹脂ブロックに挿入、固定した後、光ファイバ心線の軸線方向と直交する仮想平面で端面固定樹脂ブロックを切断し、次いで、切断面を平滑化処理して平滑面とし、平滑面に、光ファイバ心線を構成する光ファイバ素線の断面及び2次被覆の断面を露出させ、その後、端面固定樹脂ブロックの平滑面をレンズ基板に接着する光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法。
【請求項7】
端面固定樹脂ブロックの平滑面とレンズ基板とは、接着剤で接着されている請求項6に記載の光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法。
【請求項8】
端面固定樹脂ブロックの平滑面にレンズ基板を接着する工程は、端面固定樹脂ブロックを移動用アームで把持し、移動用アームの移動及びアライメントカメラの作動によって、組立台に載置されたレンズ基板の上方の所望の位置に端面固定樹脂ブロックを位置せしめ、次いで、移動用アームの移動を下降させることで、接着剤が塗布されたレンズ基板に端面固定樹脂ブロックを接触させた後、接着剤を硬化させる工程から成る請求項7に記載の光ファイバ・レンズ基板組立体の製造方法。
【請求項9】
光ファイバ心線、及び、
光ファイバ心線が埋め込まれ、その平滑面に、光ファイバ心線を構成する光ファイバ素線の断面及び2次被覆の断面が露出した端面固定樹脂ブロック、
から成る光ファイバ部品。
【請求項10】
光ファイバ心線を端面固定樹脂ブロックに挿入、固定した後、光ファイバ心線の軸線方向と直交する仮想平面で端面固定樹脂ブロックを切断し、次いで、切断面を平滑化処理して平滑面とし、平滑面に、光ファイバ心線を構成する光ファイバ素線の断面及び2次被覆の断面を露出させる光ファイバ部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−185261(P2012−185261A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47343(P2011−47343)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】