説明

光モジュール及び光モジュールの製造方法

【課題】受信機能と光強度モニタ機能とを分離した、高性能な光モジュールを提供する。
【解決手段】一の受光素子3と、他の受光素子4とを備える光モジュールにおいて、入力光を少なくとも2つの光路に分岐させる入力光分岐手段1を備え、該入力光分岐手段1は、分岐した分岐光の一方を前記一の受光素子3に入射させ、分岐した分岐光の他方を前記他の受光素子4に入射させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及び光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信等の分野においては、送信機から光ファイバを媒体として送信された光信号の受信機として受光素子が用いられる。受光素子としては、pinフォトダイオード(pinPD)(下記非特許文献1参照)やアバランシェフォトダイオード(APD)(下記非特許文献2参照)が一般的である。pinPDは照射されたフォトンを電流に変換することで光信号を電気信号に変える機能を持つものである。
【0003】
一方、APDは変換された電流をさらに増倍することでpinPDよりも大きな電気信号を得るものである。一般的な光通信では、各拠点どうしを光ファイバで結び、これらの光ファイバの両端に送信機と受信機を接続して光信号の伝播を行う。
【0004】
ところで一般的な光ファイバを伝播する光信号は1kmあたり0.3dB程度の強度の損失を被る。送信機および受信機は通常同じ種類のものを用いるため、互いの距離が短い拠点どうしの通信では、光ファイバが短いため光信号の強度の損失が小さく、受信機に到達する光信号の強度は大きく、また互いの距離が長い拠点どうしの通信では、光ファイバが長いため光信号の強度の損失が大きく、受信機に到達する光信号の強度は小さい。
【0005】
例えば拠点間の距離が10kmの場合、光ファイバを伝播することにより光信号は0.3×10=3dBの損失を受ける。送信機からの光信号強度は通常+3dB程度であるから、受信機に入射する光信号の強度は3−3=0dBmとなる。
【0006】
一方、例えば拠点問の距離が80kmの場合、光ファイバを伝播することにより光信号は0.3×80=24dBの損失を受ける。この場合、受信機に入射する光信号の強度は3−24=−21dBmとなる。受信機において光を受光するpinPDやAPDは小さい強度の光信号を効率よく、または増幅して電気信号に変換することに特長を発揮するものであるが、逆に強い光信号の場合には、電気信号強度の飽和現象が生じ信号が歪んだり、さらには電流が定格値を超えるために発生したジュール熱によってpinPDやAPDが破壊される。
【0007】
特にAPDの受光強度の定格値は0dBm前後であるため、伝播距離が短い拠点間の通信では受信機に入射される光信号の強度を減衰させる必要がある。
そこで従来の技術では光ファイバと受信機との間に光減衰器を挿入し、光強度を減衰させている。
【0008】
【非特許文献1】池上徹彦監修、土屋治彦、三上修編著、「半導体フォトニクス工学」、初版第1刷、株式会社コロナ社、1995年1月10日、p.363−369
【非特許文献2】池上徹彦監修、土屋治彦、三上修編著、「半導体フォトニクス工学」、初版第1刷、株式会社コロナ社、1995年1月10日、p.372−379
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような従来の光モジュールでは、光信号を受信する受光素子自身が受光する光から光強度をモニタしていたため、受信回路が複雑になったり、本来の受信特性が劣化したりするなどの問題があった。
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、受信機能と光強度モニタ機能とを分離した、高性能な光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための第1の発明(請求項1に対応)に係る光モジュールは、
一の受光素子と、
他の受光素子と
を備える光モジュールにおいて、
入力光を少なくとも2つの光路に分岐させる入力光分岐手段を備え、
該入力光分岐手段は、
分岐した分岐光の一方を前記一の受光素子に入射させ、
分岐した分岐光の他方を前記他の受光素子に入射させる
ことを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決するための第2の発明(請求項2に対応)に係る光モジュールは、第1の発明に係る光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段により分岐された少なくとも2つの分岐光の分岐比を1:2以上とする
ことを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するための第3の発明(請求項3に対応)に係る光モジュールは、第1の発明又は第2の発明に係る光モジュールにおいて、
前記一の受光素子にはアバランシェフォトダイオードを用いる
ことを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決するための第4の発明(請求項4に対応)に係る光モジュールは、第1の発明乃至第3の発明のいずれかに係る光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段により分岐された少なくとも2つの分岐光のうち分岐比が最大となる分岐光を前記一の受光素子に入射する
ことを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決するための第5の発明(請求項5に対応)に係る光モジュールは、第1の発明乃至第4の発明のいずれかに係る光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段と前記一の受光素子との間に光を減衰させる可変光減衰器を備え、
前記入力光分岐手段により分岐された分岐光のいずれかを前記可変光減衰器を介して前記一の受光素子に入射させ、
前記他の受光素子の出力に基づき前記可変光減衰器の透過損失を変化させる
ことを特徴とする。
【0016】
上記の課題を解決するための第6の発明(請求項6に対応)に係る光モジュールは、第5の発明に係る光モジュールにおいて、
前記他の受光素子の出力に基づき発熱を変化させる温度制御素子を備え、
該温度制御素子は前記発熱による温度変化により前記可変光減衰器の透過損失を変化させる
ことを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決するための第7の発明(請求項7に対応)に係る光モジュールは、第5の発明又は第6の発明に係る光モジュールにおいて、
前記可変光減衰器は前記他の受光素子で受光した分岐光の強度が高くなるほど、前記一の受光素子に入射される分岐光の強度を低下させるように光減衰量を調整する
ことを特徴とする。
【0018】
上記の課題を解決するための第8の発明(請求項8に対応)に係る光モジュールは、第1の発明乃至第7の発明のいずれかに係る光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段は前記他の受光素子の出力に基づき前記入力光の分岐割合を調整する
ことを特徴とする。
【0019】
上記の課題を解決するための第9の発明(請求項9に対応)に係る光モジュールは、第8の発明に係る光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段は前記他の受光素子で受光した分岐光の強度が高くなるほど、前記一の受光素子に入射される分岐光の強度を低下させるように分岐割合を調整する
ことを特徴とする。
【0020】
上記の課題を解決するための第10の発明(請求項10に対応)に係る光モジュールは、第1の発明乃至第9の発明のいずれかに係る光モジュールにおいて、
前記一の受光素子の利得を変化させる利得変化手段を備え、
前記利得変化手段は前記他の受光素子の出力に基づき前記一の受光素子の利得を調整する
ことを特徴とする。
【0021】
上記の課題を解決するための第11の発明(請求項11に対応)に係る光モジュールは、第10の発明に係る光モジュールにおいて、
前記利得変化手段は前記一の受光素子に印加するバイアス電圧を低下させることにより利得を低下させる
ことを特徴とする。
【0022】
上記の課題を解決するための第12の発明(請求項12に対応)に係る光モジュールは、第1の発明乃至第11の発明のいずれかに係る光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段と、前記一の受光素子と、前記他の受光素子とが、光モジュール内に一体となって構成される
ことを特徴とする。
【0023】
上記の課題を解決するための第13の発明(請求項13に対応)に係る光モジュールの製造方法は、
入力光を分岐する入力光分岐手段と、
可変光減衰器と、
一の受光素子と、
他の受光素子と
を備える光モジュールの製造方法において、
前記光分岐手段はハーフミラー又は光学フィルタで構成され、該光分岐手段を透過又は反射して観測される前記一の受光素子の受光領域像と前記他の受光素子の受光領域像とが重なるように該光分岐手段の位置を調整する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、受信機能と光強度モニタ機能とを異なる受光素子に持たせることで、高性能な光モジュールを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る光モジュールは、光分岐手段により少なくとも二つ以上の光路に分岐された入射光の一方を受信用の受光素子で受光し、他方を光強度モニタ用の受光素子で受光するものである。また、受信用の受光素子としてアバランシェフォトダイオード(APD)を用い、モニタ用の受光素子で受光した強度に応じてAPDのバイアス電圧を調整するものである。
【0026】
また、光分岐手段と受信用の受光素子との間に光減衰手段を配置し、モニタ用の受光素子が受光する光強度に応じて光減衰手段の光減衰量を調整するものである。さらに、光分岐手段、受信用の受光素子、モニタ用の受光素子が一体となって同一のパッケージに収納されているものである。
【0027】
また、本発明に係る光モジュールの製造方法は、光分岐手段がハーフミラーまたは光学フィルタで構成されており、このハーフミラーまたは光学フィルタを透過または反射して観測される受信用の受光素子の受光領域像とモニタ用の受光素子の受光領域像とが互いに重なるようにハーフミラーまたは光学フィルタの位置を調整するものである。
【0028】
以下、本発明に係る光モジュールおよびその製造方法の実施形態について、図1から図11を参照しながら説明する。なお、図1は本発明に係る光モジュールの第1の実施形態を説明する図、図2は本発明に係る光モジュールの応答特性を説明する図、図3は本発明に係る光モジュールに用いる光減衰手段を説明する図、図4は本発明に係る光減衰手段の透過率を説明する図、図5は本発明に係るプラスチックを用いたエタロンフィルタの透過率を説明する図、図6は本発明に係る光モジュールの第2の実施形態を説明する図、図7は本発明に係る光モジュールの可変光分岐手段の実施形態を説明する図、図8は本発明に係る光モジュールの第3の実施形態を説明する図、図9は本発明に係る光モジュールの第4の実施形態を説明する図、図10は本発明に係る受信用のAPDのバイアス電圧と利得との関係の一例を説明する図、図11は従来の光モジュールの応答特性を説明する図である。
【0029】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明に係る光モジュールの第1の実施形態を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の光モジュールは、光分岐手段1で二つに分岐された光路の一方が可変光減衰器2を通過して受信用のAPD3で、他方がモニタ用のpin−PD4で受光されるように、それぞれの位置に配置されている。ここでは入射光の強度をモニタ用のpin−PD4でモニタすることにより、受信用のAPD4の受信感度を変化させる必要なく、常に一定以下の感度で入射光強度を測定することができる。
【0030】
このように、本実施形態では受光素子としてAPDを用いる。APDは光強度が大きすぎると破壊される。APDとしては1.3ミクロン〜1.6ミクロンの光に対して感度を持つInGaAsP系材料を受光層とした構造を用いる。一般的なAPDでは−30dBmから+5dBmの範囲で正常動作し、最大定格は+5dBmである。
【0031】
本実施形態では、上記光学素子(エタロンフィルタ)で光を3dB以上減衰できるので、光が強い場合に光を3dB減衰することにより、入射光が−30dBmから+8dBmの範囲で正常動作するAPDを実現できた。
【0032】
図11に示すように、受信用のAPDの受光強度により入射光をモニタし、モニタした受光電流で可変光減衰器の光減衰量を調整する従来の光モジュールでは、入射光がない状態では入射光の有無を高感度で検出する必要があるため光減衰器の光減衰量を最小(理想的には0dB)にして待機している。
【0033】
この状態でAPDに信号光が入射されるとAPDの感度が高いため瞬時的に大きな受光電流が発生する。例えば、+10dBmの入射光によって20mAの受光電流が発生する。APDの受光電流は外部回路によって強度がモニタされ、受光電流が最大定格値10mAを越えないように可変光減衰器の光減衰量を増加させる。
【0034】
しかしながら、外部回路の応答速度は通常1μ秒程度であるため光が入射してから可変光減衰器が動作するまでの間に瞬時的に20mAの受光電流が発生しAPDの最大定格受光電流値を超えるとAPDは破壊されてしまう。
【0035】
一方、図2に示すように、本発明の、モニタ用の受光素子であるpin−PD4で入射光をモニタし、モニタした受光電流で光減衰器の光減衰量を調整する光モジュールでは、入射光がない状態でも瞬時的に大きな受光電流が生じないように光減衰量を調整することができる可変光減衰器2を用い、この可変光減衰器2の光減衰量を大きくして待機することができる。
【0036】
例えば、可変光減衰器2の光減衰量を20dBとすると+10dBmの信号光が入射されてもAPDへの入射光は−10dBmとなりこれによって発生する受光電流は、0.2mAとなる。ここでモニタ用の受光素子であるpin−PD4で入射光強度を測定し、この入射光強度に応じて可変光減衰器2の光減衰量を調整することにより、瞬時的に受信用のAPD3の最大定格受光電流値を超えないようにすることができる。このため受信用のAPD3が破壊されることがなくなった。
【0037】
ここで可変光減衰器2としてはエタロンフィルタを用いることができる。図3に示すように、エタロンフィルタはプラスチック31、入射側反射膜32、出射側反射膜33で構成している。ここでプラスチック31としては入射光に対して90%以上の透明性を有するものが必要である。例えば、日本ゼオン社のゼオネックス(ZEONEX(登録商標))は92%の透過性を有する。
【0038】
エタロンフィルタを構成するためには入射側反射膜32と出射側反射膜33は同じ反射率にする。両者の反射率は1〜10%程度である。反射膜の作製は、スパッタ蒸着装置でTiO2とSiO2をそれぞれ0.4ミクロンずつ積層する。
【0039】
プラスチック31は温度変化により厚さが変化する。単位温度Kあたりの厚さの変化の割合は膨張係数によって表され、前記ゼオネックスは約5×10-5/Kである。プラスチック31は熱膨張係数が1×10-5/Kから1×10-4/Kまでのものを用いることができる。また、半導体を用いる場合には1×10-6/Kから1×10-5/Kまでのものを用いることができる。
【0040】
図4に示すように、エタロンフィルタは波長λに対して周期的に透過率が増減する性質を持っており、その周期はλ/2となる。エタロンフィルタを構成する半導体の膨張係数が上記のように5×10-5/Kとすると15Kの温度変化に対して、7.5×10-4の膨張が生じることになる。
【0041】
例えば、厚さ1000μmのプラスチック31を用いると、7.5×10-4×1000μm=0.75μmとなる。入射光の波長λが1.5μmの場合には、15Kの温度変化によりエタロンフィルタの透過率の周期が一周期シフトすることになる。すなわち15Kの温度変化の範囲で、温度調整によりエタロンフィルタの透過率を最大値と最小値の間の任意の値に調整することができることになる。
【0042】
図5に示すように、プラスチック31を用いたエタロンフィルタの透過率は、具体的には、1.55ミクロンの光に対して基準温度である25℃では透過率80%である。また、35℃では50%、45℃では30%となり、20℃の温度上昇によって透過率が1/2以下、つまり透過光強度が3dB以上減衰する。なお、1.55ミクロン以外の波長、例えば1.3ミクロン、1.6ミクロンでも同様の効果がある。
【0043】
本実施形態ではエタロンフィルタとしてプラスチック31を用いた例を示したが、半導体を用いても屈折率が温度で変化することを利用して同様の効果が期待できる。半導体の温度による屈折率の変化を用いる場合には、屈折率の変化が1×10-6/Kから1×10-5/Kのものを用いることができる。例えば、半導体としてGaAsやInPなどの化合物半導体を用いた場合は屈折率の変化率は約5×10-5/Kである。
【0044】
エタロンフィルタを構成する半導体の屈折率の変化率が5×10-5/Kとすると10Kの温度変化に対して、5×10-4の屈折率変化が生じることになる。この値は例えば入射光の波長λが1.5μmの場合に換算すると5×10-4μmに相当し、図4において透過特性の曲線が5×10-4μm波長軸に沿ってシフトすることになる。
【0045】
本実施形態における光分岐手段1によって分岐されて可変光減衰器2に入射する光(信号光)とモニタ用pin−PD4に入射する光の強度比は1:1であり、可変光減衰器2に入射する光(信号光)は全体の光の1/2である。ここで分岐する光の強度比は1:1でなくても他の割合で分岐してもよいが、モニタ用pin−PD4に入射する光が多すぎるとその分受信用のAPD4で受信する光(信号光)が減ることになるので、可変光減衰器2に入射する光は全体の光に対して1/3以上であることが望ましい。
【0046】
本実施形態においては、温度制御素子を可変光減衰器2であるエタロンフィルタに隣接あるいはその近傍に設置させる。モニタ用の受光素子であるpin−PD4の出力に応じて温度制御素子を制御することにより、pin−PD4における入射光強度によりpin−PD4の出力電流(電圧)が変化し温度制御素子の発熱を変化させる。
【0047】
この発熱による温度変化によりエタロンフィルタの透過損失が変化するので、受信用受光素子であるAPD3への入射光強度を制御することができる。この結果、入射光によって受信用のAPD3は特性劣化または破壊されることなく良好な特性を維持することができる。
【0048】
〔第2の実施形態〕
図6は、本発明に係る光モジュールの第2の実施形態を示す図である。
図6に示すように、本実施形態の光モジュールは、可変光分岐手段51で二つに分岐された光路の一方が受信用のAPD52で、他方がモニタ用のpin−PD53で受光されるように、それぞれの位置に配置されている。ここでは入射光の強度をpin−PD53でモニタすることにより、可変光分岐手段51の分岐割合を調整し受信用のAPD52の受信感度を変化させる必要なく、常に一定以下の感度で入射光強度を測定することができる。
【0049】
本構成では入射光がない状態でも瞬時的に大きな受光電流が生じないように可変光分岐手段51のモニタ用のpin−PD53への分岐割合を最大、すなわち受信用のAPD52への分岐割合を最小にして待機することができる。
【0050】
例えば、可変光分岐手段51の分岐割合を1:100とすると+10dBmの信号光が入射されても受信用のAPD52への入射光は−10dBmとなりこれによって発生する受光電流は、0.2mAとなる。ここでモニタ用の受光素子であるpin−PD53への入射光強度を測定し、その強度に応じて可変光分岐手段51の分岐割合を調整することにより、瞬時的に受信用のAPD52の最大定格受光電流値を超えないようにすることができる。このため受信用のAPD52が破壊されることがなくなった。
【0051】
図7に示すように、可変光分岐手段61としては、例えばガラス材料を用いた平面光波回路を用いる。この平面光波回路は2本の光路の干渉の原理を用いたマッハツェンダ干渉計で構成され、一方の光路を光導波路とし、もう一方の光路にヒータ63を形成して、ヒータ63による温度上昇により屈折率を変化させて実効的な光路長を変化し分岐割合を変化させるものである。なお、平面光波回路としては、プラスチック、ポリイミド、半導体を用いることもできる。
【0052】
本実施形態に用いる平面光波回路においてはヒータ63の温度を室温から60℃〜70℃程度に増加することにより分岐割合(受信用受光素子(APD52)に分岐する光の強度:モニタ用受光素子(pin−PD53)に分岐する光の強度)を1:100から100:1に変化させることができる。モニタ用の受光素子であるpin−PD53の出力に応じて平面光波回路のヒータ63を制御することにより、pin−PD53における入射光強度によりpin−PD53の出力電流(電圧)が変化しヒータ63の発熱を変化させる。
【0053】
この発熱による温度変化により平面光波回路の分岐割合が変化するので、受信用受光素子であるAPD52への入射光強度を制御することができる。この結果、入射光によって受信用のAPD52は特性劣化または破壊されることなく良好な特性を維持することができる。
【0054】
〔第3の実施形態〕
図8は、本発明に係る光モジュールの第3の実施形態を示す図である。
図8に示すように、本実施形態の光モジュールは、第1の実施形態に記載の光分岐手段71、可変光減衰器72、受信用のAPD73、モニタ用のpin−PD74を1つの筐体内に実装した光モジュールである。
【0055】
光分岐手段71はハーフミラーで形成され透過光と反射光は所望の分岐比でそれぞれ受信用のAPD73、モニタ用のpin−PD74に入射する。ここでは受信用のAPD73への分岐比の方を高くしておくのが一般的である。この光モジュールの組立において、入射側からはハーフミラーを透過してきた受信用のAPD73の像と、ハーフミラーを反射してきたモニタ用のpin−PD74の像が同時に観測される。
【0056】
これらの像が重なるように各部品の位置を調整することで、きわめて簡易な方法で、透過光と反射光がそれぞれ受信用のAPD73、モニタ用のpin−PD74に入射されるようになる。
【0057】
本実施形態ではハーフミラーの透過光と反射光がそれぞれ受信用のAPD73、モニタ用のpin−PD74に入射される例を示したが、逆に透過光と反射光がそれぞれモニタ用のpin−PD74、受信用のAPD73に入射されるように配置しても同様の効果がある。
【0058】
本実施形態においては、温度制御素子を可変光減衰器72であるエタロンフィルタに隣接あるいはその近傍に設置させる。モニタ用の受光素子であるpin−PD4の出力に応じて温度制御素子を制御することにより、pin−PD74における入射光強度によりpin−PD74の出力電流(電圧)が変化し温度制御素子の発熱を変化させる。
【0059】
この発熱による温度変化により可変光減衰器72であるエタロンフィルタの透過損失が変化するので、受信用受光素子であるAPD73への入射光強度を制御することができる。この結果、入射光によって受信用のAPDは特性劣化または破壊されることなく良好な特性を維持することができる。
【0060】
〔第4の実施形態〕
図9は、本発明に係る光モジュールの第4の実施形態を示す図である。
図9に示すように、本実施形態の光モジュールは、光分岐手段81で二つに分岐された光路の一方が受信用のAPD82で、他方がモニタ用のpin−PD83で受光されるように、それぞれの位置に配置されている。
【0061】
ここでは入射光の強度をpin−PD83でモニタすることにより、受信用のAPD82の利得を調整し、最大定格受光電流値以上の光電流が流れないようにしている。本構成では入射光がない状態でも瞬時的に大きな受光電流が生じないように受信用のAPD82の利得を最小にして待機することができる。
【0062】
図10は本発明に係る受信用のAPD82のバイアス電圧と利得との関係の一例を説明する図である。図10に示すように、この例ではバイアス電圧20Vでは利得3、10Vでは利得1、30Vでは利得10であることが分かる。ここで入射した光が電子−ホール対に変換される感度をRes(単位:A/W)とすると、利得1の場合には光電気変換効率はRes×1、利得10の場合にはRes×10となる。一般に波長1.5μmの光信号に対してAPDの感度は1A/W程度であるから、利得1の場合には光電気変換効率は1A/W、利得10の場合には光電気変換効率は10A/Wとなる。
【0063】
本実施形態において、光強度+10dBm(=10mW)の光信号を光分岐手段81で9:1に分岐し、それぞれ受信用のAPD82、モニタ用のpin−PD83に入射する。受信用のAPD82へ入射される光強度は9mw、モニタ用のpin−PD83へ入射される光強度は1mWとなる。
【0064】
モニタ用のpin−PD83は1〜10Vのバイアス電圧の範囲で利得は1で一定であるから、光電気変換効率は1A/Wであり、受光電流は1mAである。このとき待機状態で受信用のAPD82のバイアス電圧を10Vとし、モニタ用のpin−PD83での受光電流値をもとに、定格最大受光電流値を超えないように受信用のAPD82のバイアス電圧を10Vのまま(光電気変換効率は1A/W)とし、受光電流値を9mAとする。
【0065】
次に本実施形態において、光強度−10dBm(=0.1mW)の光信号を入射した場合は、受信用のAPD82へ入射される光強度は0.09mW、モニタ用のpin−PD83へ入射される光強度は0.01mWとなる。モニタ用のpin−PD83の受光電流は0.01mAである。このとき受信用のAPD82のバイアス電圧10Vの待機状態からバイアス電圧を30Vに増加させると、光電気変換効率は10A/Wであるから、受光電流値は0.9mAとなり、高い効率で感度よく受信することが可能となる。
【0066】
以上のように、モニタ用のpin−PD83の受光電流により受信用のAPD82への入射光強度を測定し、受信用のAPD82のバイアス電圧を制御することにより、受信用のAPD82が強度の強い光に対しては特性劣化または破壊されることなく、強度の低い光に対しては高い効率で感度よく受信することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る光モジュール及び光モジュールの製造方法は、光通信用の受信機の光入力部分に適用して好適なものであるが、受信機用としてのみではなく、送信光強度の調整、伝送路途中における光強度の調整、また光計測器の発光部または受光部に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る光モジュールの第1の実施形態を説明する図である。
【図2】本発明に係る光モジュールの応答特性を説明する図である。
【図3】本発明に係る光モジュールに用いる光減衰手段を説明する図である。
【図4】本発明に係る光減衰手段の透過率を説明する図である。
【図5】本発明に係るプラスチックを用いたエタロンフィルタの透過率を説明する図である。
【図6】本発明に係る光モジュールの第2の実施形態を説明する図である。
【図7】本発明に係る光モジュールの可変光分岐手段の実施形態を説明する図である。
【図8】本発明に係る光モジュールの第3の実施形態を説明する図である。
【図9】本発明に係る光モジュールの第4の実施形態を説明する図である。
【図10】本発明に係る受信用のAPDのバイアス電圧と利得との関係の一例を説明する図である。
【図11】従来の光モジュールの応答特性を説明する図である。
【符号の説明】
【0069】
1 光分岐手段
2 可変光減衰器
3 受信用のAPD
4 モニタ用のpin−PD
31 プラスチック
32 入射側反射膜
33 出射側反射膜
51 可変光分岐手段
52 受信用のAPD
53 モニタ用のpin−PD
61 可変光分岐手段
62 光導波路
63 ヒータ
71 光分岐手段
72 可変光減衰器
73 受信用のAPD
74 モニタ用のpin−PD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の受光素子と、
他の受光素子と
を備える光モジュールにおいて、
入力光を少なくとも2つの光路に分岐させる入力光分岐手段を備え、
該入力光分岐手段は、
分岐した分岐光の一方を前記一の受光素子に入射させ、
分岐した分岐光の他方を前記他の受光素子に入射させる
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段により分岐された少なくとも2つの分岐光の分岐比を1:2以上とする
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
前記一の受光素子にはアバランシェフォトダイオードを用いる
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段により分岐された少なくとも2つの分岐光のうち分岐比が最大となる分岐光を前記一の受光素子に入射する
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段と前記一の受光素子との間に光を減衰させる可変光減衰器を備え、
前記入力光分岐手段により分岐された分岐光のいずれかを前記可変光減衰器を介して前記一の受光素子に入射させ、
前記他の受光素子の出力に基づき前記可変光減衰器の透過損失を変化させる
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の光モジュールにおいて、
前記他の受光素子の出力に基づき発熱を変化させる温度制御素子を備え、
該温度制御素子は前記発熱による温度変化により前記可変光減衰器の透過損失を変化させる
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の光モジュールにおいて
前記可変光減衰器は前記他の受光素子で受光した分岐光の強度が高くなるほど、前記一の受光素子に入射される分岐光の強度を低下させるように光減衰量を調整する
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段は前記他の受光素子の出力に基づき前記入力光の分岐割合を調整する
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項9】
請求項8のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段は前記他の受光素子で受光した分岐光の強度が高くなるほど、前記一の受光素子に入射される分岐光の強度を低下させるように分岐割合を調整する
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
前記一の受光素子の利得を変化させる利得変化手段を備え、
前記利得変化手段は前記他の受光素子の出力に基づき前記一の受光素子の利得を調整する
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の光モジュールにおいて、
前記利得変化手段は前記一の受光素子に印加するバイアス電圧を低下させることにより利得を低下させる
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の光モジュールにおいて、
前記入力光分岐手段と、前記一の受光素子と、前記他の受光素子とが、光モジュール内に一体となって構成される
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項13】
入力光を分岐する入力光分岐手段と、
可変光減衰器と、
一の受光素子と、
他の受光素子と
を備える光モジュールの製造方法において、
前記光分岐手段はハーフミラー又は光学フィルタで構成され、該光分岐手段を透過又は反射して観測される前記一の受光素子の受光領域像と前記他の受光素子の受光領域像とが重なるように該光分岐手段の位置を調整する
ことを特徴とする光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−244391(P2008−244391A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86583(P2007−86583)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】