説明

光モジュール

【課題】外部からの電磁ノイズに対する耐性が高く、また、光データリンクに用いた際に、その光データリンクからの電磁放射を抑え、光データリンクが電磁ノイズに影響を受けることを抑えることができる、安価な光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール1は、光デバイス2を保持し、光コネクタのフェルールを整列するスリーブ部材3を備え、フェルールと光デバイス2とをスリーブ部材3で光結合させる。スリーブ部材3は、円筒部7、光デバイス2を保持する凸字状部材9、及び、円筒部7と凸字状部材9とが接合されるリング部材8を有し、リング部材8は、周囲に取付溝が形成され、フェルールより径が小さい光を通すための通光孔8gが形成された隔壁8fを有し、スリーブ部材3は、リング部材8の壁8fを挟んで、樹脂製の円筒部7と樹脂製の凸字状部材9とを一体成形して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光データリンクによる光通信に用いられる光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
高速かつ長距離の光ファイバ伝送を行うための光モジュールは、光素子(発光素子及び/または受光素子)を保持する光デバイスと、光コネクタのフェルールを整列して当該フェルールの光ファイバを所定の位置に保持し、光デバイスの光素子と上記光ファイバとを光学的に結合させるスリーブと、を備えている。なお、光モジュールは、スリーブを覆うスリーブシェルをさらに有することもある。
【0003】
この光モジュールにおいて、スリーブやスリーブシェルが金属製の場合、それらがアンテナとして機能してしまうことがある。このとき、発光素子(LD:Laser Diode)の駆動電流によって発生する電磁ノイズがスリーブやスリーブシェルを介して外部へ放射されることや、また、これらを介して外部からの電磁ノイズを受けてしまい、その結果、受光素子の出力電流に影響があることが、光モジュールにおいて問題となっていた。
【0004】
特許文献1には、光デバイスのパッケージと金属製フェルール整列スリーブの間に、上部金属蓋、絶縁部材、下金属リングの3部材からなるジョイントスリーブを備える光モジュールが開示されている。この光モジュールでは、スリーブを光デバイスパッケージから電気的に絶縁することによって、スリーブを介した外部と光素子の間の電磁ノイズの遮蔽を図っている。
【0005】
また、特許文献2には、スリーブが有するファイバスタブに光コネクタのフェルールを突き合わせて光結合させる光モジュールであって、スリーブに挿入されたファイバスタブの端部を保持するホルダを有するものが開示されている。このホルダは、金属製のスリーブシェルと光デバイスのパッケージを当該ホルダを介して連結させるためのものでもあり、また、一部が絶縁材料で形成され、スリーブシェルと光デバイスとを上記連結時に電気的に絶縁するようになっている。
【0006】
そのため、この光モジュールでは、例えば、光デバイス等から発生した電磁波が光デバイスのパッケージを介してスリーブシェルに伝達することがないので、光モジュールからの電磁ノイズ放射を抑えることができるようになっている。また、後述のように、ホルダのファイバスタブ保持部は金属製またはセラミック製である。
【0007】
また、特許文献3には、樹脂等からなる絶縁性のスリーブを備え、スリーブにおいて、光コネクタのフェルールとスリーブが有するファイバスタブとを整列させる光モジュールが開示されている。この光モジュールでは、スリーブを絶縁性の樹脂で形成することにより、スリーブをアンテナとして機能させないようにしている。なお、この光モジュールにおいて、スリーブ部と光デバイスは、ジョイントスリーブで連結されている。
【0008】
図3は、従来の他の光モジュールを説明する部分断面斜視図である。この光モジュール10は、図示するように、光デバイス11と、スリーブの機能を有すると共に光デバイス11に直接接合されるスリーブ部材12と、を備えるもので、金属製のスリーブ部材12に対して、金属製のパッケージを有する光デバイス11を絶縁性の接着剤で固定してなる。光モジュール10では、このような構成にすることにより、光デバイス等から発生した電磁波を光デバイスのパッケージを介してスリーブ部材12に伝達させないようになっている。
【0009】
また、光モジュールは、光データリンクに好適に用いられる。図4は、光データリンクの構成の一例を説明する図で、図4(A)は、図3の光モジュールを搭載した光データリンクの正面図、図4(B)は、図4(A)のY−Y断面を部分的に示した図である。図4の例の光データリンクは、2つの光モジュールを搭載するものであるが、説明のために、1つの光モジュールのみを図示している。
【0010】
光データリンク40は、図示するように、光コネクタを挿入するための光コネクタ挿入空間23が形成されている光レセプタクル21を有し、光レセプタクル21の後方には、光モジュールを搭載するための搭載孔24aが形成されている。光データリンク40においても、ノイズ対策は講じられており、光レセプタクル21を金属で形成し、光データリンクの電気回路搭載部分である本体部22を金属製のカバーで覆うなどして、シールド効果を高めるようにしている。
【0011】
光データリンクに搭載する光モジュールに何らかのノイズ対策が講じられていない場合、搭載孔24aそのものがノイズのパスとなってしまうが、図4の光データリンク40では、光モジュール10の金属製のスリーブ部材12が搭載孔24aを塞ぐような形状を有しているので、ノイズのパスが非常に小さくなっている(光データリンク40では、光信号が通る通光孔12aがノイズのパスになっている)。このために、光データリンク40では、外部へのノイズの放射や、外部からのノイズの影響を抑えることができるようになっている。
【特許文献1】特開2006−84683号公報
【特許文献2】特開2007−11287号公報
【特許文献3】国際公開第03/052479号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
なお、特許文献1に開示の光モジュールでは、ステムとレンズキャップで封止された光デバイスの他に、スリーブ、上金属蓋、絶縁体リング、下金属リングという4点の部品が必要であるが、図3及び図4の光モジュール10は、光デバイス11の他に必要な部品は、金属製のスリーブ部材12のみである。すなわち、光モジュール10は、部品点数を削減できる。しかし、光モジュールにおいて、1μm以下かそれ以下のレベルでフェルールと光デバイスを位置決めする必要があるが、光モジュール10のフェルールを導入するスリーブ部材12の挿通孔12bは、光デバイス11との位置決めに寄与しているため、それに相当した精度で加工する必要がある。したがって、スリーブ部材12を作成するには、金属の削り出し加工による作業が必要であり、1点毎に加工しなければならないため、量産することが難しく、生産性・部品コストの面で改善が求められる。
【0013】
また、特許文献2に開示の光モジュールでは、ファイバスタブを安定的に保持するために精度良く加工するには、ホルダのファイバスタブ保持部が金属製の場合は、一点毎に加工する必要がある。また、上記保持部がセラミック製の場合は、ホルダを量産することができない。そのため、生産性・部品コストの面で改善が求められる。また、特許文献2には、光データリンクの光モジュール搭載部に光モジュールがどのように搭載されるか開示されていないが、いずれにしても、この光モジュールのフェルールが挿入される挿通孔が光データリンクのノイズのパスとなるため、電磁的遮断効果の点で改善が望まれる。
【0014】
また、光データリンクに特許文献3に開示の光モジュールを用いた場合、光データリンクの光モジュール搭載部は、光モジュールのスリーブによって塞がれるが、当該スリーブの塞ぐ部分は樹脂製であるので、当該樹脂部分が光データリンクのノイズのパスとなる。そのため、この光データリンクでは、電磁波の放出を十分抑えることや、電磁ノイズに影響を受けることを抑えることが難しくなっている。つまり、特許文献3に開示の光モジュールも電磁的遮断効果の点で改善が望まれる。
【0015】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、外部への電磁放射量が小さく、かつ/あるいは、外部からの電磁ノイズに対する耐性が高く、また、光データリンクに用いた際に、その光データリンクからの電磁放射を抑えるとともに、光データリンクが電磁ノイズに影響を受けることを抑えることができる、安価な光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の光モジュールは、光デバイスを保持し、光コネクタのフェルールを整列するスリーブ部材を備え、フェルールと光デバイスとをスリーブ部材で光結合させるものであって、スリーブ部材は、樹脂製のフェルール整列部、光デバイスを保持する樹脂製の光デバイス保持部、及び、フェルール整列部と光デバイス保持部とが接合される金属製のリング部材、を有し、リング部材は、周囲に取付溝が形成され、フェルールより径が小さい光を通すための通光孔が形成された隔壁を有し、スリーブ部材は、リング部材の隔壁を挟んで、樹脂製のフェルール整列部と樹脂製の光デバイス保持部とを一体成形して構成されていることを特徴とする。
【0017】
また、光デバイスが、同軸型パッケージを有し、光デバイス保持部が、筒状部材により構成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光モジュールにおいて、フェルール整列部に樹脂材料を用いることにより、このフェルール整列部がアンテナとして機能することがないので、光モジュール外部への電磁放射量を小さくしたり、光モジュール外部からの電磁ノイズに対する耐性を高くしたりすることができる。
【0019】
また、スリーブ部材の金属製のリング部材は、その通光孔を小さくすることができ、当該光モジュールを搭載した光データリンクにおいてノイズのパスを小さくすることができる。そのため、この光データリンクからの電磁放射を抑えるとともに、光データリンクが電磁ノイズに影響を受けることを抑えることができる。
また、加工精度が求められるフェルール整列部を樹脂材料で形成しており、また、スリーブ部材の樹脂材料で形成される部分を、リング部材の壁の前後に、その壁を挟むような形態で一体に成形しているため、光モジュールを量産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1及び図2は、本発明の光モジュールを説明する図であり、図1は、本発明の光モジュールの部分断面斜視図、図2(A)は、当該光モジュールを搭載した光データリンクの正面図、図2(B)は、図2(A)のX−X断面を部分的に示した図である。
本発明に係る光モジュールは、光電変換機能を有するが、その光電変換機能を担う光素子としては、受光素子(以下、PD(Photo Diode)という)や、半導体レーザ(LD:Laser Diode)等の発光素子が挙げられる。以下では、本発明の光モジュールについて、PDを備える受光モジュールとして構成した例で説明する。
【0021】
本発明の光モジュールは、例えば、図1に示すように、光デバイス2とスリーブ部材3を備える。
まず、光デバイス2について説明する。光デバイス2は、同軸型パッケージ(CANパッケージ)内にPD4を保持するように構成されたものであって、PD4の他、例えば、ステム5、キャップ6を有する。
【0022】
PD4は、アバランシェフォトダイオードやPIN型フォトダイオード等の半導体受光素子である。
ステム5は、PD4が実装される金属製の円板状の部材であり、キャップ6と協働して、内部に素子搭載空間を有するCANパッケージを構成する。ステム5には、PD4が実装されるが、さらに、抵抗やコンデンサ、あるいはPD4が生成した微弱な電気信号を増幅する前置増幅器等の素子が実装される場合もある。また、ステム5には、搭載された素子と外部電気回路の電気接続のためのリードピン5aがガラス封止されている。これら素子は互いに又はステム上面5bもしくはリードピン(信号リードピン)5aとワイヤリングにより接続される。PD4以外の素子やワイヤは図示を省略する。また、ステム5は、各種素子が実装される実装部の周囲に、キャップ6との接合のための接合部5cを有する。
【0023】
キャップ6は、ステム5と協働してPD4を気密封止するもので、金属材料を用いて筒状に形成される。本例のキャップ6は、レンズ6aを保持するキャップシェル6bを有するレンズキャップである。レンズ6aは、例えば、ボールレンズであり、スリーブ部材3に挿入された光コネクタの光フェルールの光ファイバ(図示せず)からの光をPD4に集光する。キャップシェル6bは、PD4側とは反対側の中央に開口6cを有する。この開口6cに、低融点ガラス等の封止ガラスによって、レンズ6aが固定される。キャップシェル6bの端部6dは、ステムの接合部5cと抵抗溶接にて接合される。なお、レンズ6aは省略される場合もあり、その場合には、対象とする光の波長領域で透明な窓材を開口6cに封着することが好ましい。
【0024】
続いて、本発明の特徴部にかかるスリーブ部材について説明する。スリーブ部材3は、光デバイス2を保持し、光コネクタのフェルール(図示せず)を整列するもので、このスリーブ部材3により、フェルールの光ファイバと光デバイス2のPD4とを光学的に結合させる。スリーブ部材3は、例えば、円筒部材7、リング部材(以下、リングという)8及び凸字状部材9を有する。
【0025】
円筒部材7は、光コネクタのフェルールを整列させる樹脂製のフェルール整列部(スリーブ)であって、光軸Pを中心軸とし、上記フェルールの外径と略同一の大きさの内径を有する円筒状に形成される。円筒部材7は、その挿通孔7aの一端から光コネクタのフェルールが挿入され、フェルール挿入側と反対側の端部がリング8に対して固定される。また、円筒部材7のフェルール挿入側端部には、挿入が容易になるようにテーパ7bが形成されている。光コネクタのフェルールは、円筒部材7に挿入されることで精度良く位置決めされる。言い換えれば、円筒部材7の挿通孔7aは、光コネクタのフェルールの位置決めを精度良く行うために、高精度で加工されている。円筒部材7の加工方法及びリング8への固定方法については、後述する。
【0026】
このように円筒部材7を絶縁性の樹脂材料で形成することにより、円筒部材7がアンテナとして機能することがないので、光モジュール1から外部への電磁放射量を小さくしたり、外部からの電磁ノイズに対する光モジュール1の耐性を高くしたりすることができる。
【0027】
ここで、光モジュール1を搭載することができる光データリンクについて説明する。図2の例の光データリンクは、2つの光モジュールを搭載するものであるが、説明のために、1つの光モジュール1のみを図示している。
光データリンク20は、図2に示すように、光コネクタが挿入される光レセプタクル21を有し、その後方部分に、光モジュール1の光デバイス2や電子部品、回路基板(図示せず)等が収納される本体部22を有する。
【0028】
光レセプタクル21は、金属製であるか、表面が導電性メッキで覆われた樹脂製であり、光コネクタ挿入空間23と本体部22とを隔てる隔壁24を有し、この隔壁24には、光モジュールを搭載するための搭載孔24aが形成されている。後述するように、光モジュール1のスリーブ部材3のリング8は、その外形が最も小さい部分(最細部)8eが、この搭載孔24aに対応した形状を有する。
【0029】
この光データリンク20に対して、光モジュール1は、スリーブ部材3の円筒部材7が光レセプタクル21の光コネクタ挿入空間23内に位置し、リング8の最細部8eが搭載孔24a上に位置し、光デバイス2が本体部22内に位置した状態で、搭載される。このとき、リング8は光レセプタクル21の搭載孔24aに接触している。
このような構成の光データリンク20において、光コネクタを光レセプタクル21に挿入すると、光コネクタのフェルールが光モジュール1のスリーブ部材3の円筒部材7に挿入され、その結果、挿入されたフェルールの光ファイバと光デバイス2とが光結合される。
【0030】
また、光データリンク20において、光レセプタクル21と本体部22は、導電性材料から成るカバー25によって覆われる。光データリンク20では、当該データリンクの筐体を構成する光レセプタクル21及びカバー25に導電性材料を用いることにより、シールド効果を高めている。
なお、光データリンク20において、光レセプタクル21は、カバー25(及び光データリンク20が挿入されるケージ)を介してフレームグラウンドに電気接続される。
【0031】
図1のスリーブ部材3の説明に戻る。スリーブ部材3のリング8は、金属製の部材であり、光モジュール1が光データリンク20に搭載されたときに、光レセプタクル21の搭載孔24a上に位置し、搭載孔24aの略全体を塞ぐような形態になっている。リング8は、円筒部材7を固定するための第1の凹部8aと、凸字状部材9を固定するための第2の凹部8bとを、有する。第1の凹部8aには、円筒部材7が、フェルール挿入側と反対側の端部が挿入されたような形態で固定され、第2の凹部8bには、凸字状部材9が、後述の突出部9bが挿入されたような形態で固定される。
【0032】
また、リング8は、その周囲に、光データリンク20に取り付けるための取付溝が形成されており、この取付溝は、例えば、一対のフランジ(第1のフランジ8cと第2のフランジ8d)により構成される。この一対のフランジは、最細部8eを挟んで向かい合った形態になっており、一対のフランジの間に、光データリンク20の隔壁24を挟み込むことによって、光データリンク20内において、光モジュール1が光軸方向に動かないようになっている。また、このように隔壁24を挟みこみ隔壁24に接触することによって、リング8は光レセプタクル21に電気接続され、リング8の電位はフレームグラウンド電位と等しくなる、すなわち、リング8は接地される。
【0033】
また、リング8は、第1の凹部8aと第2の凹部8bとを隔てる隔壁8fを有し、隔壁8fには、円筒部材7に挿入されたフェルールの光ファイバからの光信号が光デバイス2に向けて通る通光孔8gが形成されている。この通光孔8gの大きさは、当然、光コネクタのフェルールと光デバイス2との光結合を阻害しない程度の大きさであり、少なくとも、フェルールの外径より小さくすることができる。
【0034】
光モジュール1を光データリンク20に搭載する際に、上述のリング8を用いることによって、隔壁8fで搭載孔24aを塞ぐことができるので、光データリンク20では、高周波の電磁波のパス(ノイズのパス)を、リング8の通光孔8gとすること、すなわち非常に小さくすることができる。そのため、光デバイス2または光データリンク20の本体部22が光データリンク20の外部からの電磁波(ノイズ)を受信することを抑え、また、光データリンク20の本体部22(及び光デバイス2)から光データリンク20の外部への電磁波放出を抑制することができる。
なお、リング8は、フェルールと光デバイス2の位置決めに直接寄与しないため、精度が数十μm程度の一般的な加工方法で製造することができるので、安価な部品となる。
【0035】
続いて、凸字状部材9について説明する。凸字状部材9は、光デバイス2を保持する光デバイス保持部であり、側面視凸字状の筒状の部材で構成され、樹脂により形成される。凸字状部材9は、光デバイス固定部9aと突出部9bを有する。光デバイス固定部9aは凹部9a1により構成されるが、凹部9a1は、キャップ6の光軸P方向に延在する円筒形部分の外径と略同じ大きさの径を有するものである。光デバイス固定部9aの凹部9a1の内面とキャップ6とを接着剤で接着させることにより、光デバイス2は凸字状部材9に固定される。
【0036】
突出部9bは、光デバイス固定部9aから円筒部材7側に向けて突き出した円筒状の部分である。突出部9bの外周がリング8の第2の凹部8bの内面に密着し、且つ、光デバイス固定部9aの上面9a2がリング8の第2のフランジ8dの下面8d1に密着した状態で、凸字状部材9はリング8に固定される。
【0037】
以上のように、本光モジュール1のスリーブ部材3は、リング8を中心として、フェルールをガイドする円筒部材7、光デバイス2との固定に用いられる凸字状部材9を有している。また、このスリーブ部材3は、金属製のリング部材8の隔壁8fを挟んでその前後に樹脂製の円筒部材7と凸字状部材9を樹脂の射出成形にて一体成形して構成される。
【0038】
中でも、フェルールをガイドする円筒部材7の内径は、フェルールと光デバイス2の位置決めに寄与することから高精度で形成する必要がある。樹脂の射出成形技術を用いて、高精度で成形可能となる成形金型及び射出条件を用いることで、高精度で円筒部材7を成形することが可能となる。また、凸字状部材9の光デバイス固定部9aも高精度で樹脂で成形することにより、光モジュール1において光軸Pと垂直方向の調芯を行わなくても、光コネクタのフェルールの光ファイバから出射されレンズ6aを透過した光をPD4の受光中心から十数μmの範囲内に集光することができる。
また、スリーブ部材3をこのように射出成形にて部品を形成することで、量産効果を高めることができ、量産時には安価に部品を製造することができる。
【0039】
なお、スリーブ部材3の形成は、円筒部材7及び凸字状部材9を形成する射出成形金型に、金属製のリング8を予めセットしておき、射出成形金型を閉じて軟化した樹脂を高圧力で射出することで行われる。
また、リング8に対して、円筒部材7との接合面、凸字状部材9との接合面に微小な凹凸を設けることが好適である。これにより、射出成形により円筒部材7及び凸字状部材9は上記凹凸形状に沿った形で形成される。これにより、アンカー効果が得られ、リング8と円筒部材7、凸字状部材9を強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の光モジュールを説明する図である。
【図2】本発明の光モジュールが光データリンクに搭載されたときの様子を示す図である。
【図3】従来の光モジュールを説明する図である。
【図4】従来の光モジュールが光データリンクに搭載されたときの様子を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1…光モジュール、2…光デバイス、3…スリーブ部材、4…PD、5…ステム、5a…リードピン、5b…ステム上面、5c…接合部、6…キャップ、6a…レンズ、6b…キャップシェル、6c…開口、7…円筒部材、7a…挿通孔、7b…テーパ、8…リング、8a…第1の凹部、8b…第2の凹部、8c…第1のフランジ、8d…第2のフランジ、8e…最細部、8f…隔壁、8g…通光孔、9…凸字状部材、9a…光デバイス固定部、9b…突出部、20…光データリンク、21…光レセプタクル、22…本体部、23…光コネクタ挿入空間、24…隔壁、24a…搭載孔、25…カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光デバイスを保持し、光コネクタのフェルールを整列するスリーブ部材を備え、前記フェルールと前記光デバイスとを前記スリーブ部材で光結合させる光モジュールであって、
前記スリーブ部材は、樹脂製のフェルール整列部、光デバイスを保持する樹脂製の光デバイス保持部、及び、前記フェルール整列部と前記光デバイス保持部とが接合される金属製のリング部材、を有し、
前記リング部材は、周囲に取付溝が形成され、前記フェルールより径が小さい光を通すための通光孔が形成された隔壁を有し、
前記スリーブ部材は、前記リング部材の前記隔壁を挟んで、前記樹脂製のフェルール整列部と前記樹脂製の光デバイス保持部とを一体成形して構成されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記光デバイスは、同軸型パッケージを有し、前記光デバイス保持部は、筒状部材により構成されることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−157317(P2009−157317A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338743(P2007−338743)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】