説明

光再生装置

【課題】 ビームが記録層に対して傾いた状態にあっても、傾きのない状態にて、ビームを記録層に正確に入射させ得る光再生装置を提供する。
【解決手段】 バイアス値VL、VRを印加して、レンズホルダー203の左右両端を初期位置に移動させる(S102、S107)。その後、収束ビームの左右側縁部をそれぞれ記録層領域方向に移送し(S103、S108)、側縁部が第1層に到達する少し前に、当該側縁部に対する引き込み処理を開始させる(S103〜S106、S108〜S111)。収束ビームが傾いており、何れか一方の側縁部が先に記録層領域に到達すると、まず、この側縁部が第1層目に引き込まれる。その後、遅れて他方の側縁部が記録層に到達すると、当該側縁部が第1層目に引き込まれる。これにより、収束ビームが、傾きなく、第1層目の記録層に引き込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録層が積層方向に配列された記録媒体に対し前記積層方向に垂直な方向から扁平ビームを入射して情報を再生する光再生装置に関するものであり、特に、平面光導波路ホログラムを積層したカード型光記録媒体を再生する光再生装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
平面光導波路ホログラムを積層したカード型光記録媒体の再生装置として、たとえば、特許文献1に記載の装置が知られている。
【0003】
ここで、カード型光記録媒体には、所定の情報をホログラムパターンとして保持する複数の記録層が積層して配列されている。所定の記録層にビームを入射すると、この記録層に形成されたホログラムパターンによってビームが散乱され、この散乱光がカード型光記録媒体の上面または下面から出射される。そして、出射された散乱光を、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子によって受光することで、当該記録層に保持された情報が再生される。
【0004】
かかる再生装置には、記録層のビーム入射口に扁平ビームを入射させるための光ヘッドが配備されており、さらに、当該光ヘッドには、記録層に対する扁平ビームの積層方向のズレを補正するためのアクチュエータが配備されている。積層方向のズレ量に応じたエラー信号に従って、アクチュエータを駆動することで、再生対象の記録層のビーム入射口に扁平ビームが位置付けられる。
【0005】
再生すべき記録層を変更する場合には、前記アクチュエータに駆動信号を印加して、目標記録層の方向に扁平ビームを移動させる。たとえば、移動の際に横切った記録層数をカウントし、目標記録層までの移動量に応じたカウント値に達したタイミングでアクチュエータを停止させる。これにより、収束ビームを目標記録層位置に位置づけることができる。
【特許文献1】特開2000−155960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる光再生装置では、光ヘッドの取り付け誤差等に起因して、扁平ビームが記録層に対して傾いた状態で入射されるとの現象が起こり得る。この問題は、扁平ビームの両側縁を個別に傾き是正方向に変位させることにより解消できる。
【0007】
具体的には、扁平ビームの幅方向両側縁が入射している記録層のアドレスを読み取り、読み取ったアドレスの差から、扁平ビームの傾き方向とその大きさを検出し、その検出結果に応じて、扁平ビームの両側縁を記録層の積層方向に上下動させる。これにより、扁平ビームの両側縁が傾き是正方向に変位され、扁平ビームが記録層に平行となるよう位置づけられる。
【0008】
しかしながら、扁平ビームの傾き量が大きい場合には、扁平ビームがアドレス情報の配置領域に掛からず、このため、両側縁入射位置のアドレス情報を適正に読み取ることができないとの事態が起こり得る。この場合、上記解決手法によっては、扁平ビームの傾き方向とその大きさを検出することはできず、よって、扁平ビームの傾き補正を行い得ないこととなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、扁平ビームが傾いた状態にあっても、傾きのない状態にて、扁平ビームを記録層に正確に入射させ得る光再生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み本発明は、それぞれ以下の特徴を有する。
【0011】
第1の発明は、複数の記録層が積層方向に配列された記録媒体に対し積層方向に垂直な方向から扁平ビームを入射して情報を再生する光再生装置において、扁平ビームの幅方向両側縁を個別に積層方向に変位させることによって記録層に対する扁平ビームの積層方向の位置ずれを補正するサーボ手段と、扁平ビームを積層方向に走査させる走査手段と、扁平ビームの幅方向側縁が記録層の配列領域内に位置付けられていることを側縁毎に検出する検出手段とを備え、走査手段によって扁平ビームを記録層の配列領域から外れる位置から記録層の配列領域方向に変位させ、その後、検出手段によって扁平ビームの側縁が記録層の配列領域に達したことが検出されたことに応じて、サーボ手段によって当該側縁のサーボ引き込みを行うことを特徴とする。
【0012】
第2の発明は、前記第1の発明に係る光再生装置において、前記サーボの引き込みは、検出手段によって扁平ビームの側縁が記録層の配列領域に達したことが検出され、且つ、当該側縁の記録層に対する積層方向の位置ずれ状態を表す信号が所定の閾値を越えたことが検出されたときに行われることを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、前記第1または第2の発明に係る光再生装置において、前記扁平ビームの配列領域方向への変位は、扁平ビームの記録層に対する傾きが是正された状態にて行われることを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、前記第3の発明に係る光再生装置において、前記傾きの是正は、走査手段によって扁平ビームを記録層の配列領域から外れる位置に変位させる際に、傾きの大きさに応じた変位量だけ、扁平ビームの両側縁をそれぞれ配列領域方向に変位させることにより行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、扁平ビームを記録層の配列領域から外れる位置から記録層の配列領域方向に変位させたとき、扁平ビームの両側縁のうち、先に記録層の配列領域に到達した一方の側縁に対してサーボ引き込みが行われ、その後、遅れて記録層の配列領域に到達した他方の側縁に対してサーボ引き込みが行われるため、扁平ビームが記録層に対し傾いた状態にあっても、扁平ビームの両側縁は、通常、同一の記録層に引き込まれることとなり、よって、扁平ビームを、傾きのない状態にて記録層に正確に入射させることができるようになる。
【0016】
また、第2の発明によれば、扁平ビームの側縁が記録層の配列領域に達したことが検出され、且つ、当該側縁の記録層に対する積層方向の位置ずれ状態を表す信号が所定の閾値を越えたことが検出されたときにサーボ引き込みを行うようにしたことから、扁平ビームの両側縁を、配列領域に到達した直後の記録層に円滑に引き込むことができるようになる。
【0017】
また、第3の発明によれば、傾き補正を行った状態で、扁平ビームを記録層の配列領域方向に走査させるようにしたことから、記録層に対する扁平ビームの両側縁のサーボ引き込みをより確実に行うことができ、もって、扁平ビームをより正確に記録層に入射させることができるようになる。
【0018】
また、第4の発明によれば、扁平ビームを記録層の配列領域外に移動させる際に同時に、扁平ビームの傾き補正を行うものであるから、記録層に対する扁平ビームの引き込み動作をより迅速に行うことができるようになる。
【0019】
この他、本発明の特徴は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、本発明の一実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施の形態に係る光カード100の上面図である。
【0022】
光カード100は、複数の記録層を積層した積層構造を透明基板内に内包した構成を有している。それぞれの記録層は平面光導波路として形成されており、その導波路内に、記録情報に応じたパターンのホログラムが形成されている。かかるホログラムは、図中のデータ領域101に対応する位置に形成されている。
【0023】
また、各記録層には、当該記録層が初期位置から何層目に当たるかを示すアドレス情報がアドレスマーク102として記録されている。図示の如く、アドレスマーク102はデータ領域101の左右に2組配されており、各組のアドレスマークにはそれぞれ同一のアドレス情報が記録されている。
【0024】
一組のアドレスマーク102は7つの領域からなっており、これら各領域にはアドレス情報に応じて選択的にホログラムが形成されている。すなわち、ホログラムが形成されている領域と形成されていない領域の組み合わせによってアドレス情報が保持されている。たとえば、ホログラムが形成されている領域を“1”とし、形成されていない領域を“0”としてアドレスを2進数にて保持させれば、一組のアドレスマーク102によって0から27(=128)のアドレスを各記録層に付することができる。
【0025】
なお、後述の光再生装置には、これら各領域に対向するようにして7つの光センサが2組配されている。各領域のうち、ホログラムが形成された領域からは対応する光センサに散乱光が導かれ、電気信号が出力される。何れの光センサから電気信号が出力されたかを検出することで、レーザ光が入射されている記録層のアドレス(記録層番号)が識別される。
【0026】
さらに、各記録層には、記録層に対する入射レーザ光の積層方向のずれを検出するためのサーボマーク103が配されている。サーボマーク103の配置領域には、上記アドレスマーク102と同様、ホログラムが形成されており、入射ビームは、当該ホログラムによって散乱され、対応するセンサに導かれる。
【0027】
図示の如く、サーボマーク103は、アドレスマーク102よりもさらに側縁に位置するようにして、データ領域101の左右に配されている。サーボマーク103の配置位置は、ビーム入射口側から見て左右に並ぶように設定されている。
【0028】
なお、アドレスマーク102とサーボマーク103は、上記の如くホログラムにて構成される他、当該領域にグレーティングを形成することにより構成するようにしても良い。
【0029】
図2は、ビーム入射口104側から見た光カード100の側面図である。図示のとおり、光カード100の記録層は、コア105とクラッド106を積層して形成されている。ビームは、コア105に入射され、コア105内に形成されたホログラムによって散乱される。コア105内に、上述のデータ領域101、アドレスマーク102、サーボマーク103が配され、それぞれホログラムが形成されている。
【0030】
図3は、コア105に対するビームの入射状態を示す図である。なお、同図は、光カード100をビーム入射側から見たときの状態を示すものである。また、サーボマークは、同図に示すコア105の入り口よりもさらに奥に配されている。同図では、サーボマークの配置を点線にて示してある。
【0031】
再生時には、コア105に対して、同図点線に示すような断面の段差ビームが入射される。ここで、段差ビームの中央部aがコア105に対し積層方向に位置ずれなく入射されているとき、左右の段差部b1、b2は、ほぼ同量だけコア105に入射され、それぞれ左右のサーボマークによって同じ量だけ散乱される。よって、このときサーボマークによって散乱される散乱光を、たとえば図4に示す如く、一対の光センサS1、S2によって受光すると、センサS1、S2の出力差はゼロとなる。
【0032】
これに対し、段差ビームの中央部aがコアに対し積層方向にずれている場合は、段差部b1がコアに入射される光量と、段差部b2がコアに入射される光量の間に差が生じ、それぞれのサーボマークによって散乱される光量に差が生じる。このため、センサS1、S2の出力差はゼロとならず、ズレの方向および大きさに応じた正負の値を持つようになる。
【0033】
かかる差信号をエラー信号として、光ヘッドの左右両端部にサーボを掛けることで、段差ビームの中央部aを、コア105に対し、積層方向にズレなく位置づけることができる。
【0034】
図5および図6に、光ヘッド200の構成を示す。なお、図5は上面図、図6は図5のA−A’断面図である。
【0035】
光ヘッド200は、レーザ光を光カードに入射させるための光学系と、記録層に対するレーザ光の位置を調整するためのアクチュエータから構成されている。
【0036】
シャーシ201には、支持部202が配されており、この支持部202に、2組の板バネ204を介して、レンズホルダー203が装着されている。かかるレンズホルダー203には、レーザ光を扁平ビームに収束して記録層に入射させるシリンドリカルレンズ306が装着されている。また、レンズホルダー203の両端部には、それぞれ一定方向に巻回されたコイル205a、205bが固着されている。
【0037】
なお、シリンドリカルレンズ306は、コア105に対する入射ビームの断面形状が図3に示すような段差形状となるよう、面形状の曲率ないし屈折率が調整されている。
【0038】
さらに、シャーシ201には、コイル205aを挟むようにして磁石206a、207aが配されている。同様に、コイル205bを挟むようにして磁石206b、207bが配されている。各コイルを挟む2つの磁石を対としたとき、一対の磁石は、コイルを挟む対向面が同一の極性を有するように配置されている。したがって、各コイルに電流を流入すると、上方向または下方向の駆動力が各コイルに発生する。この駆動力により、レンズホルダー203の左右端が駆動される。
【0039】
また、シャーシ201には、断面楕円状の出射ビームの長軸が水平になるようにして、半導体レーザ301が配置されている。半導体レーザ301から出射されたレーザ光は、コリメータ302によって並行光とされる。そして、ビームエキスパンダ303によって水平方向に拡張される。しかる後、ミラー304によって上方に反射される。しかる後、レーザ光は、レンズホルダー203に配されたミラー305によって側方に反射される。そして、シリンドリカルレンズ306によって上下方向に収束され、図3に示すような断面形状にて光カード100の記録層に収束される。
【0040】
図7および図8に、光ヘッド200を装着した装置本体の構成を示す。図7は装置本体の上面図、図8はそのA−A’断面図である。
【0041】
光ヘッド200は、シャーシ201の底面がベース401上に載置されるようにして、ベース401上に装着されている。ベース401上にはフレーム402が植設されており、このフレーム402には、光カード100の側縁を支持する一対のガイド403が形成されている。ガイド403は、光カード100を挿入しやすいようにその前端部にテーパが形成されている。また、ガイド403のギャップは、光カード100の厚みよりも少許だけ大きく設定されている。
【0042】
また、フレーム402には、光カード100の下面側のデータ領域101に臨む位置にCCD404が装着されている。データ領域101によって散乱され光カード100の下面から出射されたビームは、CCD404によって受光され、電気信号に変換される。変換された電気信号は、再生回路に供給され、所定の情報に再生される。
【0043】
また、フレーム402には、上記一組のアドレスマーク102を構成する7つのホログラム形成領域に対向する位置に7つの光センサ405a、405bが配されている。それぞれの光センサ405a、405bは、対応するホログラム形成領域にホログラムが形成されている場合に、その散乱光を受光して電気信号を出力する。
【0044】
さらに、フレーム402には、一組のサーボマーク103を構成する2つのホログラム形成領域に対向する位置に2つの光センサ406a、406bが配されている。それぞれの光センサ406a、406bは、対応するホログラム形成領域からの散乱光を受光して電気信号を出力する。
【0045】
シリンドリカルレンズ306によって収束されたビームのうち、コア105内に進入したビームは、コア105内に配されたデータ領域101、2組のアドレスマーク102および2組のサーボマーク103によって散乱され、光カード100の下面から出射される。このうち、ホログラム101によって散乱されたビームは、上記の如くCCD404によって受光される。
【0046】
また、2組のアドレスマーク102によって散乱されたビームは、上記の如く光センサ405a、405bによって受光され電気信号に変換される。変換された電気信号は、アドレスデコーダに供給されアドレス情報(層番号)として再生される。上記の如く、アドレスマーク102によってアドレス情報が2進数(ホログラムが形成されている領域が“1”、形成されていない領域が“0”)として保持されている場合、アドレスデコーダは、7つの光センサ405a、405bからの電気信号の有無から7桁の2進数を取得し、これを10進数に変換する処理を行い、当該記録層のアドレス情報(記録層番号)を再生する。
【0047】
さらに、2組のサーボマーク103によって散乱されたビームは、上記の如く光センサ406a、406bによって受光され電気信号に変換される。そして、変換された電気信号の差をとることによって、上記の如く、記録層(コア)に対する収束ビームの積層方向のズレが検出され補正される。
【0048】
図9に、本実施の形態に係る光再生装置の構成例を示す。
【0049】
図において、10a、10bは、光センサ406a、406bを構成する各センサからのセンサ出力を減算してエラー信号を生成出力するエラー信号生成回路、20aは、エラー信号生成回路10aからのエラー信号に応じてビーム収束位置を記録層に位置づけるサーボ信号を生成し、位相補償を施した後に、これをコイル205aに供給するLドライバ、20bは、エラー信号生成回路10bからのエラー信号に応じてビーム収束位置を記録層に位置づけるサーボ信号を生成し、位相補償を施した後に、これをコイル205bに供給するRドライバである。
【0050】
30aは、光センサ405aからの検出出力からアドレス情報を生成するLアドレスデコーダ、30bは、光センサ405bからの検出出力からアドレス情報を生成するRアドレスデコーダ、40は、CCD404からのCCD再生信号を処理して情報を再生する再生信号処理回路、50a、50bは、光センサ406a、406bを構成する各センサからのセンサ出力を加算して、光ヘッド200からの収束ビームが記録層の積層領域内に位置づけられているかを示す検出信号を生成出力する検出信号生成回路、60は、各部を制御するコントローラである。
【0051】
なお、Lドライバ20aおよびRドライバ20bは、コントローラ60からの指令に応じて、光ヘッド200の左右端をそれぞれ記録層の積層方向に走査させるためのバイアス信号を、コイル205aおよびコイル205bに供給する。
【0052】
図10に、収束ビームを、第1層目の記録層(記録層番号1)に引き込む際に実行される処理フローを示す。
【0053】
引き込み処理が開始されると、コントローラ60からLドライバ20aとRドライバ20bに対し、初期位置への移動指令が入力される(S101)。すなわち、Lドライバ20aとRドライバ20bに対し、それぞれ、VL=V0、VR=V0のバイアス電圧をコイル205a、205bに印加する旨の指令が入力される。これを受けて、Lドライバ20aとRドライバ20bは、それぞれコイル205a、205bに同一レベル(=V0)のバイアス電圧を印加し、レンズホルダー203を初期位置に位置付ける(S102、107)。
【0054】
なお、かかる初期位置への移動によって、光ヘッド200から出射されるレーザ光の照射位置は、記録層の積層領域から外れるようになる。すなわち、第1層目の記録層よりもさらに外れた位置に、ビームの照射位置が位置づけられる。
【0055】
しかる後、コントローラ60は、Lドライバ20aとRドライバ20bに対し、記録層領域方向への移動指令を入力する。これを受けて、Lドライバ20aとRドライバ20bは、それぞれコイル205a、205bに記録層方向の駆動信号を印加し、レンズホルダー203の側縁部をそれぞれ記録層方向に移動させる(S103、S108)。同時に、コントローラ60は、レーザ駆動回路(図示せず)に駆動指令を入力する。これにより、半導体レーザ301が駆動され、光ヘッド200からビームが出射される。然して、レンズホルダー203の移動に伴って、収束光が記録層方向に変位される。
【0056】
かかるビーム走査によって、収束ビームの左右側縁部のうち、何れか一方が記録層の積層領域に到達すると、当該側縁部の光がサーボマークによって散乱されて、対応する光センサ(光センサ406aまたは406b)に受光される。これにより、検出信号生成回路50a、50bのうち何れか一方の出力信号が立ち上がり、コントローラ60によって、当該側縁部が記録層の積層領域に到達したことが検出される(S104、S109)。
【0057】
たとえば、左側の側縁部が先に積層領域に到達した場合、検出信号生成回路50aからの電気信号が立ち上がり、当該側縁部が積層領域に到達したことが検出される(S104)。このとき、コントローラ60は、エラー検出回路10aから出力されるエラー信号を監視し、当該エラー信号が所定の閾値Sを越えたかを判別する(S105)。そして、閾値Sを越えたことを検出したことに応じて、Lドライバ20aにそのときのバイアス電圧をホールドさせ、さらに、Lドライバ20aに対しサーボ引き込み指令を入力する。これにより、ビームの左側側縁部が、積層領域に到達した直後の記録層、すなわち第1層目の記録層に引き込まれる(S106)。
【0058】
左側の側縁部が積層領域に到達した後に、右側の側縁部が積層領域に到達したことが検出されると(S109:YES)、左側側縁部の場合と同様、コントローラ60は、エラー検出回路10bから出力されるエラー信号を監視し、当該エラー信号が所定の閾値Sを越えたかを判別する(S110)。そして、閾値Sを越えたことを検出したことに応じて、Rドライバ20bにそのときのバイアス電圧をホールドさせ、さらに、Rドライバ20bに対しサーボ引き込み指令を入力する。これにより、ビームの右側側縁部が、第1層目の記録層に引き込まれる(S111)。
【0059】
しかして、ビームの左右両端部が第1層目の記録層に引き込まれることにより、収束ビームが傾きなく第1層目の記録層に位置づけられる。そして、当該記録層の左右側縁部に記録されたアドレス情報が読み取られ、Lアドレスデコーダ30aとRアドレスデコーダ30bからコントローラ60に出力される(S112)。
【0060】
コントローラ60は、Lアドレスデコーダ30aとRアドレスデコーダ30bからアドレスデータを適正に受信したことに応じて(S113:YES)、当該引き込み動作を終了する。何れか一方からのアドレスデータを一定期間内に受信できなかった場合、あるいは、受信したアドレスデータが不適正な場合(層番号が想定外の場合、アドレス差が大きすぎる場合、等)には、それぞれS102、107に戻り、上記の引き込み動作を再度行う。
【0061】
以上のように、本実施の形態によれば、ビームが記録層に対し傾いた状態にあっても、ビームの両側縁を到達順に第1層目の記録層に引き込むことにより、ビームを傾きのない状態にて記録層に正確に入射させることができる。
【実施例2】
【0062】
ところで、上記実施の形態では、ビームを積層領域外から積層領域方向に移動させた際に、積層領域に到達した順にビーム側縁部にサーボを掛け、これにより、ビームを傾きなく第1層目に引き込むものであるから、記録層に対するビームの傾きが大きく、このために、ビーム側縁部にサーボを掛けることができないような場合には、ビームの引き込み動作を適正に行うことができなくなってしまう。
【0063】
かかる不都合は、ビームの傾きをある程度補正した後に、上記の引き込み動作を行うことによって解消できる。以下、かかる場合の構成例を示す。
【0064】
まず、図11に、傾き補正の処理フローを示す。なお、この処理フローでは、Lドライバ20aのバイアス値と、Rドライバ20bのバイアス値がコントローラによって参照される(S210)。このため、図9の構成は、Lドライバ20a、Rドライバ20bのバイアス値が適宜コントローラ60に供給されるよう変更する必要がある。
【0065】
図11を参照して、傾き補正処理が開始されると、変数Nが0に設定されるとともに、コントローラ60からLドライバ20aとRドライバ20bに対し、それぞれ、VL=V0、VR=V0のバイアス電圧をコイル205a、205bに印加する旨の指令が入力される(S201)。これを受けて、Lドライバ20aとRドライバ20bは、それぞれコイル205a、205bに同一レベル(=V0)のバイアス電圧を印加し、レンズホルダー203を初期位置に位置付ける(S202、206)。
【0066】
なお、かかる初期位置への移動によって、光ヘッド200から出射されるレーザ光の照射位置は、記録層の積層領域から外れるようになる。すなわち、第1層目の記録層よりもさらに外れた位置に、ビームの照射位置が位置づけられる。
【0067】
しかる後、コントローラ60は、Lドライバ20aとRドライバ20bに対し、記録層領域方向への移動指令を入力する。これを受けて、Lドライバ20aとRドライバ20bは、それぞれコイル205a、205bに記録層方向の駆動信号を印加し、レンズホルダー203の側縁部をそれぞれ記録層方向に移動させる(S203、S207)。同時に、コントローラ60は、レーザ駆動回路(図示せず)に駆動指令を入力する。これにより、半導体レーザ301が駆動され、光ヘッド200からビームが出射される。然して、レンズホルダー203の移動に伴って、収束光が記録層方向に変位される。
【0068】
かかるビーム走査によって、収束ビームの左右側縁部のうち、何れか一方が記録層の積層領域に到達したことが検出されると(S204、S208)、当該側縁部の変位が停止される(S205、S209)。このとき、Lドライバ20aまたはRドライバ20bからコントローラ60に対し、停止時にコイルに印加されているバイアス電圧のバイアス値が出力される(S205、S209)。なお、積層領域に対する側縁部の到達は、上記と同様、検出信号生成回路50a、50bから出力される信号の立ち上がりを検出して判別される。
【0069】
収束ビームの左右側縁部がともに積層領域に到達し、Lドライバ20aおよびRドライバ20bの双方からバイアス値VL1、VR2を受信すると、次に、コントローラ60は、これらバイアス値をもとにΔV=(VL1−VR1)/2を算出する(S210)。そして、初期位置への移動時にコイルに印加するバイアス値VL、VRを、VL=VL+ΔV、VR=VR+ΔVに設定し、さらに、変数Nを1カウントアップする(S211)。
【0070】
しかる後、変数NがN=3でなければ、S202、S206に戻り、新たに設定したVL、VRをもとに上記処理を実行する。このとき、VL、VRが再設定されていることにより、初期位置における収束ビームの記録層に対する傾きは、上記の場合(バイアス電圧をV0とした場合)に比べ、傾きを解消する方向に是正されている。
【0071】
かかるVL、VRの再設定は、変数NがN=3になるまで、すなわち、3サイクル繰り返される(S212)。そして、3サイクル終了後のVL、VRが、レンズホルダーを初期位置へ移送する際のバイアス電圧としてメモリに記憶される。なお、処理サイクルの繰り返し回数は3回に限定されるものではなく、必要に応じて、適宜、変更可能である。
【0072】
図12に、傾き補正を行った状態にてサーボ引き込み処理を行う場合の処理フローを示す。なお、この処理フローは、上記図10のS101の処理ステップがS110の処理ステップに変更されている。
【0073】
すなわち、本処理フローでは、上記図11の処理フローに従って取得されたバイアス値VL、VRが、S110にてメモリから読み出され、これらバイアス値VL、VRをもとに、レンズホルダー203の左右両端が初期位置に移動される(S102、S107)。このとき、バイアス値VL、VRは、上記の如く、記録層に対する収束ビームの傾きを是正するようにして設定されているため、収束ビームは、記録層に対して大きく傾くことなく設定される。
【0074】
その後の処理フローは、上記図10と同様である。すなわち、収束ビームの左右側縁部がそれぞれ積層領域方向に移送され(S103、S108)、両側縁部に対する引き込み処理が行われ(S103〜S106、S108〜S111)、アドレス情報の確認処理が行われる(S112、S113)。これにより、収束ビームが、第1層目の記録層に傾きなく引き込まれる。
【0075】
本実施の形態によれば、収束ビームの傾きが大きい場合にも、収束ビームを適正に記録層に引き込むことができるようになる。
【0076】
なお、傾き補正の処理フローは、図11に示すものに限定されるものではないが、図11に示す処理フローを用いた場合には、初期位置への移送によって同時に傾き補正が行えるので、処理の簡素化と引き込み動作の迅速化を図ることができる。また、図11の処理フローは、収束ビームの初期位置への移送処理と、初期位置から積層領域への移送処理が引き込み動作時の処理フローと重複しているので、処理ルーチンの簡略化を図ることもできる。
【0077】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は、かかる実施の形態に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0078】
たとえば、上記実施の形態では、第1層目の記録層にサーボを引き込むようにしたが、第2層目以降の記録層にサーボを引き込むようにすることもできる。たとえば、S105、S110にてエラー信号の波形数をカウントし所定数カウント後のエラー信号が閾値Sを越えたかを判別するようにすれば、カウント波形数に応じた層番号の記録層にサーボを引き込むことができる。
【0079】
但し、実施例2のように傾き補正を行った状態でサーボ引き込みを行う場合には、第1層目から離れるに従って、傾きが次第に大きくなり、折角行った傾き補正がサーボ引き込み時には無意味なものとなって、サーボ引き込みを適正に行えなくなる場合がある。サーボ引き込みを適正に行うには、初期位置からあまり離れていない記録層を目標にするのがよく、最も好ましくは、上記実施例2のように、第1層目の記録層に引き込むようにするのが良い。
【0080】
なお、初期位置を第1層からさらに外側の位置とする場合には、上記のように第1層目に引き込むのが好ましいが、初期位置を最終層からさらに外側の位置とする場合には、当然ながら、最終層に対しサーボ引き込みを行うようにするのが好ましい。
【0081】
この他、光学系やアクチュエータ、記録媒体の構成、それに用いるビームの断面形状等についても、上記実施の形態に示されたものに限定されるものではない。本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例1に係る光カード100の上面図
【図2】実施例1に係る光カード100の側面図
【図3】実施例1に係るビーム入射状態を説明する図
【図4】実施例1に係るエラー信号の生成方法を説明する図
【図5】実施例1に係る光ヘッド200の上面図
【図6】実施例1に係る光ヘッド200の断面図
【図7】実施例1に係る光再生装置本体の上面図
【図8】実施例1に係る光再生装置本体の断面図
【図9】実施例1に係る光再生装置の回路構成を示す図
【図10】実施例1に係るサーボ引き込み時の処理フローチャート
【図11】実施例2に係る傾き補正時の処理フローチャート
【図12】実施例2に係るサーボ引き込み時の処理フローチャート
【符号の説明】
【0083】
200 光ヘッド
20a Lドライバ
20b Rドライバ
60 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録層が積層方向に配列された記録媒体に対し前記積層方向に垂直な方向から扁平ビームを入射して情報を再生する光再生装置において、
前記扁平ビームの幅方向両側縁を個別に前記積層方向に変位させることによって前記記録層に対する前記扁平ビームの積層方向の位置ずれを補正するサーボ手段と、
前記扁平ビームを前記積層方向に走査させる走査手段と、
前記扁平ビームの幅方向側縁が前記記録層の配列領域内に位置付けられていることを側縁毎に検出する検出手段とを備え、
前記走査手段によって前記扁平ビームを前記記録層の配列領域から外れる位置から前記配列領域方向に変位させ、前記検出手段によって前記扁平ビームの側縁が前記配列領域に達したことが検出されたことに応じて、前記サーボ手段によって当該側縁のサーボ引き込みを行う、
ことを特徴とする光再生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記サーボの引き込みは、前記検出手段によって前記扁平ビームの側縁が前記配列領域に達したことが検出され、且つ、当該側縁の前記記録層に対する前記積層方向の位置ずれ状態を表す信号が所定の閾値を越えたことが検出されたときに行われる、
ことを特徴とする光再生装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記扁平ビームの前記配列領域方向への変位は、前記扁平ビームの前記記録層に対する傾きが是正された状態にて行われる、
ことを特徴とする光再生装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記傾きの是正は、前記走査手段によって前記扁平ビームを前記記録層の配列領域から外れる位置に変位させる際に、前記傾きの大きさに応じた変位量だけ、前記扁平ビームの両側縁をそれぞれ当該方向に変位させることにより行われる、
ことを特徴とする光再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−24325(P2006−24325A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203329(P2004−203329)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】