説明

光半導体装置

【課題】複数の波長の光に感度を有する光検知器として機能する光半導体装置において、構造が単純で製造工程が煩雑でなく、容易に小型化を実現することができる光半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基板24上に形成された下部電極層26と、下部電極層26上に形成された赤外線吸収層36と、赤外線吸収層36上に形成された上部電極層38とを有し、赤外線吸収層36は、方向によって寸法の異なる量子ドット30が積層されてなり、偏光方向に応じて赤外線に対する感度を有する波長が異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置に係り、特に、複数の波長の赤外線を検知又は放出する多波長型の光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
あるひとつの波長の赤外線を検知する単一波長型の赤外線検知器では、物体が放出する幅広いスペクトルを有する赤外線のうち、その感度を有する単一の波長だけについて赤外線の強度を測定することができるにすぎない。
【0003】
このため、単一波長型の赤外線検知器では、物体の温度及び赤外線検知器から物体までの距離を識別することが不可能である。すなわち、単一波長型の赤外線検知器により測定されたその感度を有する波長の赤外線強度がある値を示したとき、赤外線源である検知対象の物体が遠くに位置しているが高温であるためにその赤外線強度を示しているのか、低温であるが近くに位置しているためにその赤外線強度を示しているのか、を識別することは不可能である。
【0004】
物体が放出する赤外線に基づき物体の温度及び物体までの距離を識別するためには、複数の波長について赤外線強度を測定する多波長型の赤外線検知器が用いられている。多波長型の赤外線検知器によれば、それぞれ感度を有する波長ごとの赤外線強度に基づき、検知対象の物体の温度が高温であるか低温であるか、その物体が遠くに位置しているのか近くに位置しているのかを識別することが可能になる。
【0005】
かかる多波長型の赤外線検知器としては、互いに異なる波長に感度を有する複数の赤外線吸収層を基板上に積層して構成したものが提案されている(例えば特許文献1、非特許文献3を参照)。
【0006】
提案されている多波長型の赤外線検知器の構造について図19を用いて説明する。図19は提案されている多波長型赤外線検知器の一例として2波長型赤外線検知器の構造を示す断面図である。
【0007】
図示するように、基板100上には、第1の電極層102が形成されている。第1の電極層102上には、所定の波長の赤外線に感度を有する第1の赤外線吸収層104が形成されている。第1の赤外線吸収層104上には、第2の電極層106が形成されている。第2の電極層106上には、第1の赤外線吸収層104が感度を有する赤外線とは異なる波長の赤外線に感度を有する第2の赤外線吸収層108が形成されている。第2の赤外線吸収層108上には、第3の電極層110が形成されている。
【0008】
第1の電極層102の一部の領域上は、第3の電極層110、第2の赤外線吸収層108、第2の電極層106、及び第1の赤外線吸収層104が除去されており、この領域の第1の電極層102上に、電極112が形成されている。電極112は、第1の赤外線吸収層104における赤外線の吸収による光電流又は光起電力を読み出すためのものである。
【0009】
第2の電極層106の一部の領域上は、第3の電極層110及び第2の赤外線吸収層108が除去されており、この領域の第2の電極層106上に、共通電極114が形成されている。
【0010】
第3の電極層110上には、電極116が形成されている。電極116は、第2の赤外線吸収層108における赤外線の吸収による光電流又は光起電力を読み出すためのものである。
【0011】
こうして、第1の赤外線吸収層104と第2の赤外線吸収層108とを有する2波長型の赤外線検知器が構成されている。
【特許文献1】特表2002−503877号公報
【特許文献2】特開2006−58588号公報
【非特許文献1】J.J.サクライ著、San Fu Tuan編、桜井明夫訳、「現代の量子力学(下)」、吉岡書店、1989年5月
【非特許文献2】Takeyoshi Sugaya et al., "Improved optical properties of InAs quantum dots grown with an As2 source using molecular beam epitaxy", J. Appl. Phys., Volume 100, 063107 (2006)
【非特許文献3】Mani Sundaram et al., "Two-color quantum well infrared photodetector focal plane arrays", Infrared Physics & Technology, Volume 42, pp. 301-308 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
通常の半導体素子の製造方法では、基板面内方向において、赤外線に対する感度を有する波長が異なる複数の赤外線吸収層をつくり分けることは困難である。このため、上述のように、複数の赤外線吸収層は、基板に対して垂直な方向に積層されることになる。
【0013】
一方、赤外線の吸収による電気信号を読み出すための電極は、複数の赤外線吸収層のそれぞれに対して形成する必要がある。したがって、図19に示すような多波長型の赤外線検知器では、各赤外線吸収層について、その赤外線吸収層に接続された電極層上の赤外線吸収層を含む半導体層をエッチングにより除去し、露出した電極層上に電極を形成する必要がある。
【0014】
かかる多波長型の赤外線検知器では、このように複数の赤外線吸収層のそれぞれに対応して電極を設ける必要があることに起因して、電極形成工程が煩雑である、小型化に限界がある、電気信号を読み出すための読出回路が複雑、大規模なものとなる等の種々の難点があった。
【0015】
本発明の目的は、複数の波長の光に感度を有する光検知器として機能する光半導体装置において、構造が単純で製造工程が煩雑でなく、容易に小型化を実現することができる光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一観点によれば、入射光が入射され、前記入射光の偏光方向に応じて異なる波長の光を光電変換して電気信号を発生する活性部を有する光半導体装置が提供される。
【0017】
また、本発明の他の観点によれば、電気信号が入力され、前記電気信号を光電変換することにより、波長によって偏光方向の異なる多波長の光を発光する活性部を有する光半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の波長の光に感度を有する光検知器として機能する光半導体装置において、入射光が入射され、入射光の偏光方向に応じて異なる波長の光を光電変換して電気信号を発生する活性部を用いたので、構造が単純で製造工程が煩雑でなく、容易に小型化を実現することができる光半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[本発明の原理]
上述のように、図19に示すような構造を有する多波長型の赤外線検知器には、複数の赤外線吸収層のそれぞれについて、赤外線吸収層を含む半導体層をエッチングにより除去して電極を形成する必要がある。このため、電極形成工程が煩雑なものとなる。また、赤外線吸収層を除去したのでは、除去した分だけ赤外線を検知することができなくなり、赤外線検知器としての感度の低下することになる。
【0020】
また、各赤外線吸収層に対する電極のそれぞれについて、その形成に必要な面積を確保しなければならないため、小型化には限界がある。
【0021】
さらには、かかる構造を有する赤外線検知素子を撮像素子としてアレイ化して撮像装置を構成した場合、各画素に対応する読出回路として、それぞれの波長に対応した回路を用意する必要がある。このため、撮像装置を構成した場合に、その小型化が非常に困難なものとなる。
【0022】
このように、複数の赤外線吸収層が基板に垂直な方向に積層されている多波長型赤外線検知器には種々の不都合が存在する。これら不都合は、赤外線の吸収による電気信号を読み出すための電極がそれぞれの波長について必要であることに起因するものである。
【0023】
そこで、本願発明者らは、赤外線の複数の波長のそれぞれに感度を有する単一の赤外線吸収層を用い、各波長の赤外線の吸収による電気信号を別個独立に読み出すように多波長型赤外線検知器を構成することができれば、上記の不都合を解決することができると考えた。
【0024】
そして、本願発明者らは、赤外線の複数の波長のそれぞれに感度を有する単一の赤外線吸収層としては、入射する赤外線の偏光方向に応じて赤外線に対する感度を有する波長が異なる活性層を用いればよいことを見出した。
【0025】
以下、本発明の原理について図1乃至図3を用いて説明する。図1は本発明の原理を説明する概略図、図2は入射光の偏光方向に応じて感度を有する波長が異なる本発明による光吸収層の吸収スペクトルを示すグラフ、図3は本発明による量子ドットの成長の様子を示す概略図である。
【0026】
入射する赤外線の偏光方向に応じて赤外線に対する感度を有する波長が異なる活性層は、以下に述べるように、例えば量子ドットを用いて構成することができる。
【0027】
図1(a)は、半導体基板上に形成された量子ドット及びその量子閉じ込め効果が生じる方向を示す概略図である。
【0028】
図示するように、半導体基板10上に形成された量子ドット12には、D方向、D方向、及びD方向の互いに直交する3つの方向のそれぞれにおいて、電位障壁による量子閉じ込め効果が生じている。図1(a)において、D方向及びD方向は、半導体基板10に平行な面内で互いに直交する方向であり、D方向は、半導体基板10に平行な面に垂直な方向である。
【0029】
量子ドット内に閉じ込められたキャリアの波動関数をΨとすると、この量子ドット内に形成された離散的な量子準位のうち第i番目の量子準位と第j番目の量子準位との間の遷移確率は、その量子準位間での行列要素
【0030】
【数1】

【0031】
に比例する(非特許文献1を参照)。ここで、eは遷移に伴って吸収又は放出される光の電界ベクトル、pはキャリアの運動量演算子を表している。
【0032】
上記の式におけるベクトルpの方向はキャリアの運動方向に相当し、ベクトルeは光の偏光方向に相当する。したがって、上記の式によれば、光の偏光方向を例えばx方向としたとき、量子ドットに閉じ込められたキャリアの運動方向がx方向であるときに遷移確率が最大となり、量子ドットに閉じ込められたキャリアの運動方向がy方向及びz方向であるときに遷移確率が0となることがわかる。
【0033】
このことから、量子ドットでの光の吸収又は放出は、その量子ドット内のキャリアの運動方向に対して、平行な方向に偏光方向を有する光の場合に最も強くなり、直交する方向に偏光方向を有する光の場合に0になることがわかる。
【0034】
さらに、このときの準位間の遷移に伴って吸収又は放出される光の波長λは、その準位間のエネルギー差をE、プランク定数をh、自由空間での光の速さをcとして次式で表される。
【0035】
【数2】

【0036】
以上より、量子ドットにおけるそれぞれの方向に対応する量子準位のエネルギー差を互いに異なるように設定すれば、量子ドットで吸収されキャリアを励起する光の波長を、その偏光方向に応じて異なるように設定することが可能になる。また、量子ドットにおいてキャリアが緩和する際に放出される光の偏光方向を、その波長に応じて異なるように設定することが可能になる。
【0037】
ここで、量子ドットの波動関数、ひいては量子準位は、キャリアの閉じ込め条件に影響を及ぼす要因によって決定される。かかる要因としては、量子ドットの形状異方性、すなわち量子ドットのそれぞれの方向における寸法、量子ドットに加わる歪みの面内異方性等がある。
【0038】
図1(b)は、図1(a)に示す量子ドット12が形状異方性を有し、量子閉じ込めの方向であるD方向、D方向、及びD方向で寸法が互いに異なる場合の量子準位を示す図である。D方向、D方向、及びD方向で量子ドットの寸法が互いに異なることで、図示するように、D方向に対応する励起準位E、D方向に対応する励起準位E、及びD方向に対応する励起準位Eは、互いにエネルギー位置が異なるものとなる。
【0039】
したがって、例えば、方向によって寸法の異なる量子ドットを有する単層の量子ドット層又はその積層体よりなる活性層を光吸収層として用いることにより、偏光方向に応じて異なる波長の光を吸収する光吸収層、すなわち偏光方向に応じて光に対する感度を有する波長が異なる光吸収層を構成することが可能になる。また、例えば方向によって寸法の異なる量子ドットを有する単層の量子ドット層又はその積層体よりなる活性層を発光層として用いることにより、波長によって偏光方向の異なる多波長の波長の光を発光する発光層を構成することができる。
【0040】
図2は、入射光の偏光方向に応じて感度を有する波長が異なる光吸収層の吸収スペクトルを示すグラフである。グラフには、偏光方向Aの赤外線に対する吸収スペクトルと、偏光方向Aに直交する偏光方向Bの赤外線に対する吸収スペクトルを示している。吸収スペクトルを測定した光吸収層は、偏光方向Aに平行な方向と偏光方向Bに平行な方向とで寸法が異なる量子ドットを用いて構成したものである。
【0041】
両スペクトルの比較から、偏光方向Aの赤外線に対する感度を有する波長と偏光方向Bの赤外線に対する感度を有する波長とが異なっていることが分かる。
【0042】
本発明は、方向によって寸法が異なる量子ドットを有する量子ドット層を光吸収層又は発光層として用い、受光素子又は発光素子を構成するものである。
【0043】
本発明による受光素子又は発光素子の活性層を構成する、方向によって寸法が異なる量子ドットの形成方法は例えば以下の通りである。
【0044】
まず、例えば分子線エピタキシー法(MBE(Molecular Beam Epitaxy)法)によりGaAs基板上にIn0.4Ga0.6Asよりなる量子ドットを成長する場合において、As源としてAs分子線を用いることにより、異方的な量子ドットが形成されることが報告されている(非特許文献2参照)。したがって、このような量子ドットの成長方法を用いることにより、方向によって寸法が異なる量子ドットを形成することができる。
【0045】
また、量子ドットを成長する下地の基板として、劈開面から数度程度傾斜した表面を有する結晶基板、すなわち傾斜基板を用いることにより、方向によって寸法が異なる量子ドットを形成することができる。
【0046】
図3は、傾斜基板上に量子ドットが成長する様子を示している。
【0047】
図示するように、傾斜基板14の表面には、原子層のステップ16が周期的に平行に並んでいる。このような傾斜基板14の表面に付着した量子ドット材料18は、ステップ16に垂直な方向よりもステップ16に平行な方向に容易に動くことができる。したがって、成長している量子ドット20には、ステップ16に垂直な方向からよりもステップ16に平行な方向からより多くの量子ドット材料18が供給される。この結果、形成される量子ドット20の寸法は、ステップ16に平行な方向に大きく、ステップ16に垂直な方向に小さなものとなる。
【0048】
こうして、量子ドットを成長する下地の基板として傾斜基板を用いることにより、方向によって寸法が異なる量子ドットを形成することができる。
【0049】
さらには、量子ドットの成長速度の面方位依存性を利用したり、量子ドット材料と量子ドットが成長する下地材料との結晶格子定数の差が方向によって異なるように量子ドット材料及び下地材料を適宜選択したりすることにより、方向によって寸法が異なる量子ドットを形成することができる。
【0050】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による光半導体装置について図4乃至図9を用いて説明する。図4は本実施形態による光半導体装置における受光素子の構造を示す断面図、図5は本実施形態による光半導体装置の全体構造を示す概略図、図6乃至図8は本実施形態による受光素子の製造方法を示す工程断面図、図9は本実施形態の変形例による光半導体装置の全体構成を示す概略図である。
【0051】
はじめに、本実施形態による光半導体装置の構造について図4及び図5を用いて説明する。本実施形態による光半導体装置は、波長ごとに独立して赤外線強度を測定することが可能な多波長型の赤外線検知器として機能するものである。
【0052】
まず、本実施形態による光半導体装置における受光素子22について説明する。
【0053】
図4に示すように、半絶縁性GaAs基板よりなる半導体基板24上には、例えば膜厚1000nmのn型GaAs層よりなる下部電極層26が形成されている。
【0054】
下部電極層26上には、例えば膜厚100nmのi型GaAs層よりなる中間層28が形成されている。
【0055】
中間層28上には、InGaAsよりなる複数の量子ドット30よりなる量子ドット層32が形成されている。量子ドット30の組成は、例えばIn0.4Ga0.6Asとなっている。量子ドット層32上には、量子ドット30を埋め込むように、例えば膜厚100nmのi型GaAs層よりなる中間層34が形成されている。中間層34上には、更に、量子ドット層32と中間層34とが例えば3回繰り返して積層されている。
【0056】
こうして、下部電極層26上に、中間層28と、中間層28上に量子ドット層32と中間層34とが例えば4回繰り返して積層されてなる積層体とを有する赤外線吸収層36が形成されている。
【0057】
赤外線吸収層36を構成する各量子ドット層32の量子ドット30は、後述するようにAs源としてAs分子線を用いたMBE法により成長したものであり、形状異方性を有し、方向によって寸法が異なっている。特に、量子ドット30は、基板面に平行な平面内の方向によって寸法が異なっており、後述するように赤外線源から入射する赤外線の進行方向に垂直な平面内の方向によって寸法が異なっている。このように量子ドット30の寸法が方向によって異なっているため、赤外線吸収層36は、偏光方向に応じて赤外線に対する感度を有する波長が異なっている。
【0058】
赤外線吸収層36の最上層の中間層34上には、例えば膜厚1000nmのn型GaAs層よりなる上部電極層38が形成されている。
【0059】
下部電極層26の一部の領域上は、上部電極層38及び赤外線吸収層36が除去されており、この領域の下部電極層26上に、AuGe/Au層よりなる電極40が形成されている。
【0060】
上部電極層38上には、AuGe/Au層よりなる電極42が形成されている。
【0061】
こうして、本実施形態による光半導体装置における受光素子22が構成されている。
【0062】
次に、本実施形態による光半導体装置の全体構成について説明する。
【0063】
図4に示す受光素子22には、電極40、42を介して、図5に示すように、赤外線吸収層36の赤外線の吸収による電気信号を読み出すための読出回路44が接続されている。なお、受光素子22は、基板上にマトリクス状に複数形成してアレイ化してもよい。
【0064】
受光素子22には、例えば、半導体基板24の電極40、42が形成されていない面側から基板面に垂直に赤外線源(図示せず)から赤外線が入射する。前述のように、量子ドット30は、基板面に平行な平面内の方向によって寸法が異なっているため、赤外線の進行方向に垂直な平面内の方向によって寸法が異なっている。
【0065】
受光素子22の赤外線が入射する側には、受光素子22に入射する赤外線を、直線偏光の赤外線に変換する偏光子46が配置されている。偏光子46は、偏光子46を透過して受光素子22に入射する直線偏光の赤外線の偏光方向を制御することができるように、その向きが機械的に制御されるようになっている。偏光子46には、偏光子46の向きを制御する制御部48が接続されている。
【0066】
制御部48と読出回路44とには、制御部48による偏光子46の向きの制御と、読出回路44による電気信号の読み出しとを同期して行うための同期信号を生成する同期信号生成部50が接続されている。
【0067】
こうして、本実施形態による光半導体装置が構成されている。
【0068】
本実施形態による光半導体装置は、受光素子22の赤外線吸収層36が、方向によって寸法が異なる量子ドット30よりなる量子ドット層32が積層されて構成されており、偏光方向に応じて赤外線に対する感度を有する波長が異なっている。このような赤外線吸収層36に対して、向きが機械的に制御される偏光子46により、赤外線源からの赤外線を直線偏光の赤外線に変換し、直線偏光の赤外線をその偏光方向を制御して入射する。
【0069】
直線偏光の赤外線が入射した赤外線吸収層36は、偏光子46により制御された赤外線の偏光方向について感度を有する波長の赤外線を吸収し、光電変換により光電流又は光起電力を生じる。この赤外線の吸収に伴う光電流又は光起電力、すなわち電気信号は、偏光子46による偏光方向の制御に同期して読出回路44により読み出され、読み出された電気信号に基づきその波長の赤外線の強度が測定される。
【0070】
こうして、本実施形態による光半導体装置では、受光素子22に入射する赤外線の偏光方向を制御することにより、波長ごとに独立して赤外線強度を測定することができる。
【0071】
このように、本実施形態による光半導体装置は、複数の赤外線吸収層を必要とすることなく、偏光方向に応じて赤外線に対する感度を有する波長が異なる単一の赤外線吸収層36により、波長ごとに独立して赤外線強度を測定することが可能となっている。
【0072】
したがって、本実施形態による光半導体装置は、受光素子22の構造が単純で製造工程が煩雑でなく、電極を形成するために必要な領域の面積を低減することができる。また、受光素子22からの信号を読み出すための読出回路44を単純で小規模なものとすることができる。これにより、本実施形態によれば、光半導体装置の小型化を容易に実現することができる。
【0073】
次に、図4に示す本実施形態による受光素子22の製造方法について図6乃至図8を用いて説明する。
【0074】
まず、半絶縁性GaAs基板よりなる半導体基板24上に、例えばMBE法により、例えば600℃の基板温度で、n型GaAs層よりなる下部電極層26を成長する(図6(a))。下部電極層26の膜厚は、例えば1000nmとする。また、下部電極層26へのドーピングは、n型不純物として例えばSiを用い、濃度を例えば2×1018cm−3とする。
【0075】
次いで、下部電極層26上に、例えばMBE法により、i型GaAs層よりなる中間層28を成長する(図6(b))。中間層28の膜厚は、例えば100nmとする。なお、中間層28を成長する間に、基板温度を、この後の量子ドット30の成長に適した例えば400℃に降温する。
【0076】
次いで、中間層28上に、MBE法により、In0.4Ga0.6Asよりなる複数の量子ドット30を成長し、量子ドット層32を形成する(図6(c))。In0.4Ga0.6Asよりなる量子ドット30は、例えば400℃の基板温度にて、As源としてAs分子線を用い、総供給量が例えば8ML(monolayer)相当のIn0.4Ga0.6Asを、例えば0.1ML/sの速度で供給して、ストランスキー−クラスタノフ(Stranski-Krastanov)結晶成長モードにより成長する。この結晶成長モードでは、臨界膜厚相当分を超える量のIn0.4Ga0.6Asを供給することにより、In0.4Ga0.6As層に加わる圧縮歪みが増加し、In0.4Ga0.6Asよりなる複数の量子ドット30が自己形成される。また、As分子線をAs源として用いることにより、方向によって寸法が異なる量子ドット30が成長する。
【0077】
次いで、量子ドット層32上に、例えばMBE法により、複数の量子ドット30を埋め込むように、i型GaAs層よりなる中間層34を成長する(図6(d))。中間層34の膜厚は、例えば100nmとする。
【0078】
次いで、中間層34上に、上記の手順と同様にして、量子ドット層32と中間層34とを、所望の回数、例えば3回繰り返して成長する。各量子ドット層32は、例えば上記と同様の成長条件で成長する。なお、最上層の中間層34を成長する間に、基板温度を、この後の上部電極層38の成長に適した例えば600℃に昇温する。こうして、下部電極層26上に、中間層28と、中間層28上に量子ドット層32と中間層34とが例えば4回繰り返して積層されてなる積層体とを有する赤外線吸収層36を形成する(図7(a))。
【0079】
次いで、赤外線吸収層36上に、例えばMBE法により、例えば600℃の基板温度で、n型GaAs層よりなる上部電極層38を成長する(図7(b))。上部電極層38の膜厚は、例えば1000nmとする。また、上部電極層38へのドーピングは、n型不純物として例えばSiを用い、濃度を例えば2×1018cm−3とする。
【0080】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、下部電極の形成予定領域の上部電極層38及び赤外線吸収層36を除去し、下部電極層26の表面を露出する(図8(a))。
【0081】
次いで、例えば金属蒸着法により、露出した下部電極層26上及び上部電極層38上に、それぞれAuGe/Au層よりなる電極40、42を形成し、本実施形態による受光素子22を完成する(図8(b))。
【0082】
このように、本実施形態によれば、方向によって寸法が異なる量子ドット30よりなる量子ドット層32を積層して、偏光方向に応じて赤外線に対する感度を有する波長が異なる赤外線吸収層36を構成し、このような単一の赤外線吸収層36に対して、向きが機械的に制御される偏光子46により、赤外線源からの赤外線を直線偏光の赤外線に変換し、直線偏光の赤外線をその偏光方向を制御して入射するので、波長ごとに独立して赤外線強度を測定することができる。
【0083】
したがって、本実施形態によれば、受光素子22の構造が単純で製造工程が煩雑でなく、電極を形成するために必要な領域の面積を低減することができ、また、読出回路44を単純で小規模なものとすることができるので、光半導体装置の小型化を容易に実現することができる。
【0084】
なお、上記では、例えば4層の量子ドット層32を同一の成長条件で成長することにより積層したが、積層する複数の量子ドット層32を異なる成長条件で成長してもよい。このように、複数の量子ドット層32を異なる成長条件で成長することにより、複数の量子ドット層32間で、量子ドット30の寸法又は形状を異なるようにすることができる。複数の量子ドット層32間で量子ドット30の寸法又は形状が異なることで、複数の量子ドット層32が吸収する赤外線の波長を互いに異なるようにすることができ、赤外線吸収層36が感度を有する赤外線の波長数を増加することができる。
【0085】
例えば、赤外線吸収層36を構成する例えば4層の量子ドット層32のうち1層又は数層の量子ドット層32を、総供給量が例えば8ML相当のIn0.4Ga0.6Asを、例えば0.1ML/sの速度で供給して成長する。一方、他の量子ドット層32を、総供給量が例えば10ML相当のIn0.4Ga0.6Asを、例えば0.1ML/sの速度で供給して成長する。
【0086】
このように、成長条件の異なる複数の量子ドット層32を積層して赤外線吸収層36を構成し、赤外線吸収層36が感度を有する赤外線の波長数を増加してもよい。
【0087】
なお、成長条件の異なる複数の量子ドット層32を積層することによるほか、材料の異なる複数の量子ドット層32を積層して赤外線吸収層36を構成してもよい。このように、方向によって寸法の異なる量子ドット30よりなる複数の量子ドット層32の材料が異なることによっても、複数の量子ドット層32が吸収する赤外線の波長を互いに異なるようにすることができ、赤外線吸収層36が感度を有する赤外線の波長数を増加することができる。
【0088】
上述のようにして赤外線吸収層36が感度を有する赤外線の波長数を増加した場合には、図5に示す構成に加えて、波長フィルタを偏光子46の前段に配置することにより、受光素子22に入射する赤外線の波長域を、測定すべき所望の波長を含む特定の波長域に制限する。図9は、赤外線吸収層36が感度を有する赤外線の波長数を増加した場合の光半導体装置の全体構成を示す概略図である。
【0089】
図示するように、偏光子46の前段、すなわち偏光子46の赤外線が入射する側には、測定すべき所望の波長を含む特定の波長域の赤外線を透過する波長フィルタ52が配置されている。波長フィルタ52としては、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ等を測定すべき赤外線の波長に応じて用いる。
【0090】
偏光子46には、波長フィルタ52を介して、赤外線源からの赤外線のうち、測定すべき波長を含む特定の波長域の赤外線が入射する。偏光子46に入射した特定の波長域の赤外線は、上述のように偏光子46により直線偏光に変換され、その偏光方向が制御されて受光素子22に入射する。
【0091】
こうして、波長フィルタ52によって受光素子22に入射する赤外線の波長域を制限することにより、赤外線吸収層36が感度を有する複数の波長のそれぞれについて独立して赤外線強度を測定することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による光半導体装置について図10を用いて説明する。図10は本実施形態による光半導体装置の全体構成を示す概略図である。なお、第1実施形態による光半導体装置と同一の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し或いは簡略にする。
【0092】
本実施形態による光半導体装置の基本的構成は、第1実施形態による光半導体装置とほぼ同様である。本実施形態による光半導体装置は、直線偏光の偏光方向を制御するためにその向きが制御される偏光子46に代えて、赤外線源からの赤外線を直線偏光に変換する偏光子54と、偏光子54からの直線偏光の赤外線の偏光方向を切り替える液晶フィルタ56とを有する点で、第1実施形態による光半導体装置と異なっている。
【0093】
図10に示すように、受光素子22には、第1実施形態による光半導体装置と同様に読出回路44が接続されている。
【0094】
受光素子22の赤外線が入射する側には、受光素子22に入射する赤外線を、直線偏光の赤外線に変換する偏光子54が配置されている。偏光子54の向きは、所定の向きに固定されている。
【0095】
偏光子54と受光素子22との間には、偏光子54からの直線偏光の赤外線の偏光方向を切り替える液晶フィルタ56が配置されている。液晶フィルタ56には、液晶フィルタ56による偏光方向の切り替えを制御する制御部58が接続されている。液晶フィルタ56は、制御部58からの電気信号に基づき、その液晶分子の配向を変え、偏光子54からの直線偏光の赤外線の偏光方向を切り替える。
【0096】
制御部58と読出回路44とには、液晶フィルタ56による偏光方向の切り替えの制御部58による制御と、読出回路44による電気信号の読み出しとを同期して行うための同期信号を生成する同期信号生成部60が接続されている。
【0097】
本実施形態による光半導体装置は、受光素子22の赤外線吸収層36に対して、偏光子54により赤外線源からの赤外線を直線偏光の赤外線に変換し、直線偏光の赤外線を、液晶フィルタ56によりその偏光方向を切り替えて入射する。
【0098】
直線偏光の赤外線が入射した受光素子22の赤外線吸収層36は、液晶フィルタ56により制御された赤外線の偏光方向について感度を有する波長の赤外線を吸収する。この赤外線の吸収に伴う電気信号は、液晶フィルタ56による偏光方向の切り替えに同期して読出回路44により読み出され、読み出された電気信号に基づきその波長の赤外線の強度が測定される。こうして、本実施形態による光半導体装置では、受光素子22に入射する赤外線の偏光方向を制御することにより、波長ごとに独立して赤外線強度を測定することができる。
【0099】
このように、偏光子54により赤外線源からの赤外線を直線偏光の赤外線に変換し、直線偏光の赤外線を、液晶フィルタ56によりその偏光方向を切り替えて赤外線吸収層36に入射するようにしてもよい。
【0100】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による光半導体装置について図11を用いて説明する。図11は本実施形態による光半導体装置の全体構成を示す概略図である。なお、第1及び第2実施形態による光半導体装置と同一の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し或いは簡略にする。
【0101】
本実施形態による光半導体装置の基本的構成は、第1実施形態による光半導体装置とほぼ同様である。本実施形態による光半導体装置は、直線偏光の偏光方向を制御するためにその向きが制御される偏光子46に代えて、偏光ビームスプリッタ62及び一対のシャッタ66a、66bを用いて、赤外線源からの赤外線のうちの所定の直線偏光成分を受光素子22に入射する点で、第1実施形態による光半導体装置と異なっている。
【0102】
図11に示すように、受光素子22には、第1実施形態による光半導体装置と同様に読出回路44が接続されている。
【0103】
受光素子22の赤外線が入射する側には、赤外線源からの赤外線を互いに直交する2つの直線偏光成分、すなわちP偏光成分とS偏光成分とに分離する偏光ビームスプリッタ62が配置されている。P偏光成分は、偏光ビームスプリッタ62を透過してそのまま受光素子22に向かってに進行するようになっている。また、S偏光成分は、偏光ビームスプリッタ62で反射され、更に偏光ビームスプリッタ62近傍に配置されたミラー64で反射されて受光素子22に向かって進行するようになっている。
【0104】
偏光ビームスプリッタ62と受光素子22との間には、シャッタ66a、66bが配置されている。
【0105】
一方のシャッタ66aは、受光素子22に向かって進行するP偏光成分の光路上で開閉動作する。シャッタ66aの開いた状態でP偏光成分が受光素子22に入射し、閉じた状態でP偏光成分の受光素子22への入射が遮断される。シャッタ66aには、シャッタ66aの開閉動作を制御する制御部68aが接続されている。
【0106】
他方のシャッタ66bは、受光素子22に向かって進行するS偏光成分の光路上で開閉動作する。シャッタ66bの開いた状態でS偏光成分が受光素子22に入射し、閉じた状態でS偏光成分の受光素子22への入射が遮断される。シャッタ66bには、シャッタ66bの開閉動作を制御する制御部68bが接続されている。
【0107】
シャッタ66a、66bの開閉動作は、一方が開いた状態のときに他方が閉じた状態となるように制御部68a、68bにより制御される。これにより、P偏光成分及びS偏光成分のいずれか一方が受光素子22に選択的に入射するようになっている。
【0108】
制御部68a、68bと読出回路44とには、制御部68a、68bによるシャッタ66a、66bの開閉動作の制御と、読出回路44による電気信号の読み出しとを同期して行うための同期信号を生成する同期信号生成部70が接続されている。
【0109】
本実施形態による光半導体装置は、受光素子22の赤外線吸収層36に対して、偏光ビームスプリッタ62により赤外線源からの赤外線をP偏光成分とS偏光成分とに分離し、シャッタ66a、66bによりいずれか一方の直線偏光成分を選択的に入射する。
【0110】
P偏光成分又はS偏光成分が入射した受光素子22の赤外線吸収層36は、P偏光成分又はS偏光成分の偏光方向について感度を有する波長の赤外線を吸収する。この赤外線の吸収に伴う電気信号は、制御部68a、68bによるシャッタ66a、66bの開閉動作の制御に同期して読出回路44により読み出され、読み出された電気信号に基づきその波長の赤外線の強度が測定される。こうして、本実施形態による光半導体装置では、受光素子22に入射する赤外線の直線偏光成分を制御することにより、波長ごとに独立して赤外線強度を測定することができる。
【0111】
このように、偏光ビームスプリッタ62により赤外線源からの赤外線をP偏光成分とS偏光成分とに分離し、シャッタ66a、66bによりいずれか一方の直線偏光成分を赤外線吸収層36に入射するようにしてもよい。
【0112】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による受光素子の製造方法について図12及び図13を用いて説明する。図12及び図13は本実施形態による受光素子の製造方法を示す工程断面図である。なお、第1乃至第3実施形態による光半導体装置と同一の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し或いは簡略にする。
【0113】
第1実施形態では、As源としてAs分子線を用いたMBE法により、方向によって寸法の異なる量子ドット30を成長する場合について説明したが、方向によって寸法の異なる量子ドット30はこのほか種々の方法によって成長することができる。
【0114】
本実施形態では、量子ドット30を成長する下地の基板として、表面が所定の面方位から傾斜した傾斜基板72を用いることにより、方向によって寸法の異なる量子ドット30を成長する場合について説明する。
【0115】
まず、傾斜基板72上に、例えばMBE法により、例えば600℃の基板温度で、n型GaAs層よりなる下部電極層26を成長する(図12(a))。傾斜基板72としては、例えば表面が面方位(100)から(111)方向へ5°傾斜した半絶縁性GaAs基板を用いる。
【0116】
次いで、下部電極層26上に、例えばMBE法により、i型GaAs層よりなる中間層28を成長する(図12(b))。中間層28の膜厚は、例えば100nmとする。なお、中間層28を成長する間に、基板温度を、この後の量子ドット30の成長に適した例えば400℃に降温する。
【0117】
次いで、中間層28上に、MBE法により、InGaAsよりなる複数の量子ドット30を成長し、量子ドット層32を形成する(図12(c))。InGaAsよりなる量子ドット30は、例えば400℃の基板温度にて、総供給量が例えば8ML相当のInGaAsを、例えば0.1ML/sの速度で供給して、ストランスキー−クラスタノフ結晶成長モードにより成長する。本実施形態では、量子ドット30を成長する下地の基板として傾斜基板72を用いているため、方向によって寸法の異なる量子ドット30が成長する。
【0118】
次いで、量子ドット層32上に、例えばMBE法により、複数の量子ドット30を埋め込むように、i型GaAs層よりなる中間層34を成長する(図12(d))。中間層34の膜厚は、例えば100nmとする。
【0119】
次いで、中間層34上に、上記の手順と同様にして、量子ドット層32と中間層34とを、所望の回数、例えば3回繰り返して成長する。各量子ドット層32は、例えば上記と同様の成長条件で成長する。こうして、下部電極層26上に、中間層28と、中間層28上に量子ドット層32と中間層34とが例えば4回繰り返して積層されてなる積層体とを有する赤外線吸収層36を形成する(図13(a))。
【0120】
以後、図7(b)乃至図8(b)に示す第1実施形態による受光素子の製造方法と同様にして、上部電極層38、電極40、42を形成し、本実施形態による受光素子を完成する(図13(b))。
【0121】
このように、量子ドット30を成長する下地の基板として傾斜基板72を用いることにより、方向によって寸法の異なる量子ドット30を成長してもよい。
【0122】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による発光素子について図14乃至図18を用いて説明する。図14は本実施形態による発光素子の構造を示す断面図、図15は本実施形態による発光素子の発光原理を説明する図、図16乃至図18は本実施形態による発光素子の製造方法を示す工程断面図である。
【0123】
上記第1乃至第4実施形態では、本発明の原理を受光素子に適用し、方向によって寸法の異なる量子ドット30よりなる量子ドット層32を積層して赤外線吸収層36を構成する場合について説明したが、本発明の原理は発光素子に適用することもできる。すなわち、方向によって寸法の異なる量子ドットよりなる量子ドット層を積層して発光素子の発光層を構成することにより、波長によって偏光方向の異なる多波長の光を発光する発光素子を実現することができる。
【0124】
本実施形態では、本発明の原理を発光素子に適用した場合について説明する。
【0125】
まず、本実施形態による発光素子の構造について図14を用いて説明する。
【0126】
図示するように、傾斜基板74上には、例えば膜厚1000nmのn型GaAs層よりなる下部電極層76が形成されている。傾斜基板74としては、例えば表面が面方位(100)から(111)方向へ5°傾斜した半絶縁性GaAs基板が用いられている。
【0127】
下部電極層76上には、多重量子井戸構造を有する多重量子井戸層78が形成されている。多重量子井戸層78は、例えば膜厚5nmのi型In0.5Ga0.5As層よりなる井戸層と、例えば膜厚5nmのi型Al0.3Ga0.3As層よりなる障壁層とを例えば10回繰り返し積層することにより構成されている。
【0128】
多重量子井戸層78上には、InAsよりなる複数の量子ドット80よりなる量子ドット層82が形成されている。量子ドット層82上には、量子ドット80を埋め込むように、例えば膜厚10nmのi型Al0.3Ga0.3As層よりなる中間層84が形成されている。中間層84上には、更に、多重量子井戸層78と量子ドット層82と中間層84とが例えば3回繰り返して積層されている。最上層の中間層84上には、更に、多重量子井戸層78が形成されている。
【0129】
こうして、下部電極層76上に、多重量子井戸層78と量子ドット層82と中間層84とが例えば4回繰り返して積層されてなる積層体と、この積層体上に形成された多重量子井戸層78とを有する発光層86が形成されている。
【0130】
発光層86を構成する各量子ドット層82の量子ドット80は、傾斜基板74上に成長したものであり、形状異方性を有し、方向によって寸法が異なっている。特に、量子ドット80は、基板面に平行な平面内の方向によって寸法が異なっている。
【0131】
発光層86の最上層の多重量子井戸層78上には、例えば膜厚1000nmのn型GaAs層よりなる上部電極層88が形成されている。
【0132】
下部電極層76の一部の領域上は、上部電極層88及び発光層86が除去されており、この領域の下部電極層76上に、AuGe/Au層よりなる電極90が形成されている。
【0133】
上部電極層88上には、AuGe/Au層よりなる電極92が形成されている。
【0134】
こうして、本実施形態による発光素子が構成されている。
【0135】
次に、本実施形態による発光素子の発光原理について図15を用いて説明する。
【0136】
図14に示す本実施形態による発光素子において、多重量子井戸層78には、図15に示すように、量子効果によるサブバンド94が形成されている。本実施形態による発光素子に電気信号を入力する、すなわち電極90、92間に電圧を印加して発光層86に電流を流すと、キャリア(電子)96は、主としてサブバンド94を通って多重量子井戸層78を横断し、量子ドット層82へ供給される。
【0137】
ここで、多重量子井戸層78及び量子ドット層82では、サブバンド94から量子ドット層82の高次の量子準位Eにキャリア82が移動することができるように、それぞれのエネルギー準位の高さが設定されている。このため、キャリア96は、サブバンド94から量子ドット層82の高次の量子準位Eに流入する。その後、キャリア96は、量子ドット層82の高次の量子準位Eから低次の量子準位Eに緩和し、この緩和に伴って、高次の量子準位Eと低次の量子準位Eとの間のエネルギー差に相当する光が放出される。
【0138】
さらに、多重量子井戸層78及び量子ドット層82では、量子ドット層82の低次の量子準位Eから、陽極側すなわちキャリアの流れについて下流側の多重量子井戸層78のサブバンド94へキャリア96が移動することができるように、それぞれのエネルギー準位の高さが設定されている。これにより、キャリア96は、量子ドット層82に溜まることなく、多重量子井戸層78を介して積層された各量子ドット層82を順次流れ続ける。この結果、各量子ドット層82において継続して発光が生じる。
【0139】
なお、上述したエネルギー準位の設定は、量子ドット30の大きさ、多重量子井戸層78の厚さ等を調整し、また、これらの材料として用いる元素を適宜選択することにより行うことができる。
【0140】
こうして、本実施形態による発光素子は、電極90、92間に電圧を印加して発光層86に電流を流すことにより、発光層86の各量子ドット層82において光電変換により発光を生じる。ここで、各量子ドット層82の量子ドット80は、方向によって寸法が異なっている。このため、各量子ドット層82において、量子ドット80の寸法が異なる方向に対応して、エネルギー位置が異なる複数の励起準位が形成されている。このため、発光層86の各量子ドット層82からは、波長によって偏光方向の異なる多波長の光が放出される。
【0141】
ここで、量子ドット80は、特に、基板面に平行な平面内の方向によって寸法が異なっているため、波長によって偏光方向の異なる多波長の光の進行方向は、基板面に垂直な方向となる。すなわち、量子ドット80は、放出される多波長の光の進行方向に垂直な平面内の方向によって寸法が異なっている。
【0142】
このように、本実施形態による発光素子は、発光層86を構成する各量子ドット層82の量子ドット80が、方向によって寸法が異なっているため、波長によって偏光方向の異なる多波長の光を発光することができる。本実施形態によれば、複数の発光層を必要とすることなく、波長によって偏光方向の異なる多波長の光を単一の発光層86により発光することができるので、簡単な構成で、偏光方向の異なる多波長の光を発光する偏光光源を構成することができる。
【0143】
次に、本実施形態による発光素子の製造方法について図16乃至図18を用いて説明する。
【0144】
まず、傾斜基板74上に、例えばMBE法により、例えば600℃の基板温度で、n型GaAs層よりなる下部電極層76を成長する(図16(a))。傾斜基板74としては、例えば表面が面方位(100)から(111)方向へ5°傾斜した半絶縁性GaAs基板を用いる。また、下部電極層76の膜厚は、例えば1000nmとする。また、下部電極層76へのドーピングは、n型不純物として例えばSiを用い、濃度を例えば2×1018cm−3とする。
【0145】
下部電極層76を形成した後、基板温度を、この後の量子ドット80の成長に適した例えば450℃に降温する。
【0146】
次いで、下部電極層76上に、例えばMBE法により、例えば膜厚5nmのi型In0.5Ga0.5As層よりなる井戸層と、例えば膜厚5nmのi型Al0.3Ga0.3As層よりなる障壁層とを例えば10回繰り返し積層することにより、多重量子井戸層78を形成する(図16(b))。
【0147】
次いで、多重量子井戸層78上に、MBE法により、InAsよりなる複数の量子ドット80を成長し、量子ドット層82を形成する(図16(c))。InAsよりなる量子ドット80は、例えば450℃の基板温度にて、総供給量が例えば2ML相当のInAsを、例えば0.1ML/sの速度で供給して、ストランスキー−クラスタノフ結晶成長モードにより成長する。本実施形態では、量子ドット80を成長する下地の基板として傾斜基板74を用いているため、方向によって寸法の異なる量子ドット80が成長する。なお、量子ドット80は、As源としてAs分子線を用いたMBE法によって成長することにより、方向によって寸法が異なるようにしてもよい。
【0148】
次いで、量子ドット層82上に、例えばMBE法により、複数の量子ドット80を埋め込むように、i型Al0.3Ga0.3As層よりなる中間層84を成長する(図16(d))。中間層84の膜厚は、例えば10nmとする。
【0149】
次いで、中間層84上に、上記の手順と同様にして、多重量子井戸層78と量子ドット層82と中間層84とを、所望の回数、例えば3回繰り返して成長する。更に、最上層の中間層84上に、上記手順と同様にして、多重量子井戸層78を成長する。こうして、下部電極層76上に、多重量子井戸層78と量子ドット層82と中間層84とが例えば4回繰り返して積層されてなる積層体と、この積層体上に形成された多重量子井戸層78とを有する発光層86を形成する(図17(a))。
【0150】
発光層86を形成した後、基板温度を、この後の上部電極層88の成長に適した例えば600℃に昇温する。
【0151】
次いで、発光層88上に、例えばMBE法により、例えば600℃の基板温度で、n型GaAs層よりなる上部電極層88を成長する(図17(b))。上部電極層88の膜厚は、例えば1000nmとする。また、上部電極層88へのドーピングは、n型不純物として例えばSiを用い、濃度を例えば2×1018cm−3とする。
【0152】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、下部電極の形成予定領域の上部電極層88及び発光層86を除去し、下部電極層76の表面を露出する(図18(a))。
【0153】
次いで、例えば金属蒸着法により、露出した下部電極層76上及び上部電極層88上に、それぞれAuGe/Au層よりなる電極90、92を形成し、本実施形態による発光素子を完成する(図18(b))。
【0154】
このように、本実施形態によれば、方向によって寸法が異なる量子ドット80よりなる量子ドット層82を積層して発光層86を構成するので、波長によって偏光方向の異なる多波長の光を発光することができる。したがって、本実施形態によれば、簡単な構成で、偏光方向の異なる多波長の光を発光する偏光光源を構成することができる。
【0155】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0156】
例えば、上記実施形態では、As源としてAs分子線を用いたMBE法、量子ドットを成長する下地の基板として傾斜基板72、74を用いる方法により、方向によって寸法の異なる量子ドット30、80を成長する場合について説明したが、方向によって寸法の異なる量子ドットを成長する方法はこれらに限定されるものではない。例えば、量子ドットの成長速度の面方位依存性を利用したり、量子ドット材料と量子ドットが成長する下地材料との結晶格子定数の差が方向によって異なるように量子ドット材料及び下地材料を適宜選択したりすることにより、方向によって寸法の異なる量子ドットを成長してもよい。
【0157】
また、上記実施形態では、量子ドット30、80の成長にMBE法を用いる場合について説明したが、量子ドットの成長には、例えば有機金属気相成長法等の他の結晶成長法を用いることもできる。
【0158】
また、上記実施形態では、量子ドット30、80をストランスキー−クラスタノフ結晶成長モードにより成長する場合について説明したが、量子ドットの形成方法は、この結晶成長モードによるものに限定されるものではない。量子ドットの形成方法としては、方向によって寸法の異なる量子ドットを形成することができる他のあらゆる方法を用いることができる。
【0159】
また、上記実施形態では、量子ドット層32、82を4層積層する場合を例に説明したが、量子ドット層の層数はこれに限定されるものではない。量子ドット層は単層であってもよいし、所望の層数の量子ドット層を積層してもよい。
【0160】
また、上記実施形態では、InGaAsよりなる量子ドット30とGaAsよりなる中間層34との組み合わせを用いて構成した赤外線吸収層36を示し、InAsよりなる量子ドット80とAlGaAsよりなる中間層84との組合せを用いて構成した発光層86を示したが、量子ドットの材料と中間層の材料との組み合わせは、上記実施形態に示したものに限定されるものではなく、種々の材料の組合せを用いることができる。
【0161】
また、上記実施形態では、受光素子22に赤外線源から赤外線が基板面に垂直に入射する場合について説明したが、赤外線の入射方向はこれに限定されるものではない。本発明による受光素子では、量子ドットが、赤外線の進行方向に垂直な平面内の方向によって寸法が異なっていればよい。
【0162】
また、上記実施形態では、向きが制御される偏光子46、偏光子54及び液晶フィルタ56の組合せ、並びに偏光ビームスプリッタ62及びシャッタ66a、66bの組合せにより、偏光方向を制御しつつ直線偏光の赤外線を受光素子22に入射する場合について説明したが、偏光方向を制御するための構成はこれらに限定されるものではない。
【0163】
また、上記実施形態では、受光素子22に入射する赤外線の偏光方向を制御することにより、波長ごとに独立して赤外線強度を測定する赤外線検知器について説明したが、本発明によれば、赤外線源からの赤外線のうち特定の偏光方向の赤外線を抽出する赤外線検知器を構成することもできる。この場合、物体が放出する幅広いスペクトルを有する赤外線について、偏光方向に応じて赤外線に対する感度を有する波長が異なる本発明による赤外線吸収層を用いて、その感度を有する特定の波長の赤外線強度を測定する。これにより、赤外線強度を測定した波長に対応する偏光方向の赤外線を、物体が放出する赤外線から抽出することができる。
【0164】
また、上記実施形態では、多波長の赤外線を検知する赤外線検知器を構成する場合について説明したが、本発明の適用範囲は、赤外線を検知する場合に限定されるものではなくあらゆる波長域における多波長の光を検知する場合に適用することができる。
【0165】
また、上記実施形態では、基板面に平行な平面内の方向によって寸法が異なる量子ドット80を用いて発光層86を構成する場合について説明したが、量子ドットは、基板面に平行な平面内のほか、所定の平面内の方向によって寸法が異なっていればよい。本発明による発光素子において、発光層を構成する量子ドットは、放出される波長によって偏光方向の異なる多波長の光の進行方向に垂直な平面内の方向によって寸法が異なっている。
【0166】
また、上記実施形態では、方向によって寸法の異なる量子ドットを用いて、入射光の偏光方向に応じて異なる波長の光を光電変換して電気信号を発生する光吸収層36を構成する場合について説明したが、かかる光吸収層は、量子ドットを用いて構成したものに限定されるものではない。
【0167】
また、上記実施形態では、方向によって寸法の異なる量子ドットを用いて、電気信号を光電変換することにより、波長によって偏光方向の異なる多波長の光を発光する発光層86を構成する場合について説明したが、かかる発光層は、量子ドットを用いて構成したものに限定されるものではない。
【0168】
以上詳述したように、本発明の特徴をまとめると以下の通りとなる。
【0169】
(付記1) 方向によって寸法が異なる量子ドットを有し、入射光が入射され、前記入射光の偏光方向に応じて異なる波長の光を光電変換して電気信号を発生する活性部を有する
ことを特徴とする光半導体装置。
【0170】
(付記2) 付記1記載の光半導体装置において、
前記入射光の偏光方向を制御する偏光制御部と、
前記偏光制御部による前記偏光方向の制御と同期して、前記活性部が発生した前記電気信号を読み出す読出部とを更に有する
ことを特徴とする光半導体装置。
【0171】
(付記3) 付記2記載の光半導体装置において、
前記偏光制御部は、前記入射光を直線偏光に変換する偏光子を有し、前記偏光子の向きを制御することにより、前記直線偏光の偏光方向を制御する
ことを特徴とする光半導体装置。
【0172】
(付記4) 付記2記載の光半導体装置において、
前記偏光制御部は、前記入射光を直線偏光に変換する偏光子と、前記直線偏光の偏光方向を切り替える液晶フィルタとを有する
ことを特徴とする光半導体装置。
【0173】
(付記5) 付記2記載の光半導体装置において、
前記偏向制御部は、前記入射光を、互いに直交する第1の直線偏光成分と第2の直線偏光成分とに分離する偏光分離部と、前記第1の直線偏光成分及び前記第2の直線偏光成分のいずれか一方を選択的に前記活性部に入射するシャッタ部とを有する
ことを特徴とする光半導体装置。
【0174】
(付記6) 付記1乃至5のいずれかに記載の光半導体装置において、
前記入射光は、赤外線である
ことを特徴とする光半導体装置。
【0175】
(付記7) 方向によって寸法が異なる量子ドットを有し、電気信号が入力され、前記電気信号を光電変換することにより、波長によって偏光方向の異なる多波長の光を発光する活性部を有する
ことを特徴とする光半導体装置。
【0176】
(付記8) 付記1乃至7のいずれかに記載の光半導体装置において、
前記量子ドットは、As源としてAs分子線を用いた分子線エピタキシー法により成長したものである
ことを特徴とする光半導体装置。
【0177】
(付記9) 付記1乃至7のいずれかに記載の光半導体装置において、
前記量子ドットは、傾斜基板上に成長したものである
ことを特徴とする光半導体装置。
【0178】
(付記10) 付記1乃至9のいずれかに記載の光半導体装置において、
前記量子ドットは、InGaAs又はInAsよりなる
ことを特徴とする光半導体装置。
【0179】
(付記11) 付記1乃至10のいずれか1項に記載の光半導体装置において、
前記活性部は、複数の前記量子ドットが中間層を介して積層されてなる
ことを特徴とする光半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】本発明の原理を説明する概略図である。
【図2】入射光の偏光方向に応じて感度を有する波長が異なる本発明による光吸収層の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図3】本発明による量子ドットの成長の様子を示す概略図である。
【図4】本発明の第1実施形態による光半導体装置における受光素子の構造を示す断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による光半導体装置の全体構成を示す概略図である。
【図6】本発明の第1実施形態による受光素子の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図7】本発明の第1実施形態による受光素子の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図8】本発明の第1実施形態による受光素子の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図9】本発明の第1実施形態の変形例による光半導体装置の全体構成を示す概略図である。
【図10】本発明の第2実施形態による光半導体装置の全体構成を示す概略図である。
【図11】本発明の第3実施形態による光半導体装置の全体構成を示す概略図である。
【図12】本発明の第4実施形態による受光素子の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図13】本発明の第4実施形態による受光素子の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図14】本発明の第5実施形態による発光素子の構造を示す断面図である。
【図15】本発明の第5実施形態による発光素子の発光原理を説明する図である。
【図16】本発明の第5実施形態による発光素子の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図17】本発明の第5実施形態による発光素子の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図18】本発明の第5実施形態による発光素子の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図19】提案されている多波長型赤外線検知器の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0181】
10…半導体基板
12…量子ドット
14…傾斜基板
16…ステップ
18…量子ドット材料
20…量子ドット
22…受光素子
24…半導体基板
26…下部電極層
28…中間層
30…量子ドット
32…量子ドット層
34…中間層
36…赤外線吸収層
38…上部電極層
40…電極
42…電極
44…読出回路
46…偏光子
48…制御部
50…同期信号生成部
52…波長フィルタ
54…偏光子
56…液晶フィルタ
58…制御部
60…同期信号生成部
62…偏光ビームスプリッタ
64…ミラー
66a、66b…シャッタ
68a、66b…制御部
70…同期信号生成部
72…傾斜基板
74…傾斜基板
76…下部電極層
78…多重量子井戸層
80…量子ドット
82…量子ドット層
84…中間層
86…発光層
88…上部電極層
90…電極
92…電極
94…サブバンド
96…キャリア
100…基板
102…第1の電極層
104…第1の赤外線吸収層
106…第2の電極層
108…第2の赤外線吸収層
110…第3の電極層
112…電極
114…共通電極
116…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向によって寸法が異なる量子ドットを有し、入射光が入射され、前記入射光の偏光方向に応じて異なる波長の光を光電変換して電気信号を発生する活性部を有する
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の光半導体装置において、
前記入射光の偏光方向を制御する偏光制御部と、
前記偏光制御部による前記偏光方向の制御と同期して、前記活性部が発生した前記電気信号を読み出す読出部とを更に有する
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の光半導体装置において、
前記偏光制御部は、前記入射光を直線偏光に変換する偏光子を有し、前記偏光子の向きを制御することにより、前記直線偏光の偏光方向を制御する
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項4】
請求項2記載の光半導体装置において、
前記偏光制御部は、前記入射光を直線偏光に変換する偏光子と、前記直線偏光の偏光方向を切り替える液晶フィルタとを有する
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項5】
請求項2記載の光半導体装置において、
前記偏向制御部は、前記入射光を、互いに直交する第1の直線偏光成分と第2の直線偏光成分とに分離する偏光分離部と、前記第1の直線偏光成分及び前記第2の直線偏光成分のいずれか一方を選択的に前記活性部に入射するシャッタ部とを有する
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項6】
方向によって寸法が異なる量子ドットを有し、電気信号が入力され、前記電気信号を光電変換することにより、波長によって偏光方向の異なる多波長の光を発光する活性部を有する
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光半導体装置において、
前記量子ドットは、As源としてAs分子線を用いた分子線エピタキシー法により成長したものである
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光半導体装置において、
前記量子ドットは、傾斜基板上に成長したものである
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光半導体装置において、
前記量子ドットは、InGaAs又はInAsよりなる
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光半導体装置において、
前記活性部は、複数の前記量子ドットが中間層を介して積層されてなる
ことを特徴とする光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−65143(P2009−65143A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2008−205293(P2008−205293)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、防衛省、「2波長赤外線センサ(その1)」試作研究請負契約、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】