光学エンコーダの利得とオフセットを動的に調整する方法
【課題】光学エンコーダの利得とオフセットを動的に調整する。
【解決手段】光学エンコーダにおける利得とオフセットを動的に調整する方法は、回折格子を含むエンコーダ・ディスクを提供する段階と、前記エンコーダ・ディスクに光を照射する段階と、前記回折格子から回折された光を検出しかつ第1の細カウント・チャネルを出力するように構成された検出器を提供する段階と、前記第1の細カウント・チャネルの第1のターゲット利得と第1のターゲット・オフセットを計算する段階と、前記第1のターゲット利得と第1のターゲット・オフセットに基づいて、前記第1の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに補正を適用する段階と、を含む。
【解決手段】光学エンコーダにおける利得とオフセットを動的に調整する方法は、回折格子を含むエンコーダ・ディスクを提供する段階と、前記エンコーダ・ディスクに光を照射する段階と、前記回折格子から回折された光を検出しかつ第1の細カウント・チャネルを出力するように構成された検出器を提供する段階と、前記第1の細カウント・チャネルの第1のターゲット利得と第1のターゲット・オフセットを計算する段階と、前記第1のターゲット利得と第1のターゲット・オフセットに基づいて、前記第1の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに補正を適用する段階と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学エンコーダの利得とオフセットを動的に調整する方法に関する。本出願は、2008年8月28日に出願された米国仮出願第61/092,478号、および2009年7月10日に出願された米国仮出願第61/224,657号の優先権を請求し、これらの各出願の内容全体が、ここに援用される。
【背景技術】
【0002】
角変位を測定するための多数の装置が開示されている。典型的な装置は、回折光の干渉縞パターンのずれの検出を利用することが多い。
【0003】
特許文献1には、光源から回折格子上に放射されて様々な回折次数の回折光を生成し明るい縞と暗い縞の検出を可能にする光が開示されている。縞の移動の直接検出によって動きが測定される。
【0004】
特許文献2には、あらかじめ選択された波長を有する光を正と負の一次回折に集束し、同時に0次回折光を最小する格子が開示されている。回折された次数の光は、多相検出器板に当たる。
【0005】
特許文献3には、あらかじめ選択された波長を正と負の一次回折に集束する格子が開示されている。多相周期検出器は、スケールから離間されたその検出平面を、回折光の方向を変更することなく各検出器要素が正と負の一次回折に対応する場所に有する。
【0006】
特許文献4では、光線を可動スケール上に斜めに導く点光源を使用する。モアレ干渉帯を形成するためにロンチ格子などの光学構成要素と交差する回折ビームが生成される。光検出器群のアレイが、モアレ・パターンの帯を遮りかつスケールの変位を示すように電子処理された信号を放射するよう、位置決めされる。
【0007】
特許文献5は、光学格子と光学素子を含むスケールと、基板上に共に配置された光源と検出器アレイを含むセンサ・ヘッドとを含み、スケールは、センサ・ヘッドの反対側に配置され、センサ・ヘッドに対して移動するように配置される。スケールと、スケールに最も近いトールボット撮像面との間の距離は、dである。センサ・ヘッドは、第1の平面と第2の平面により画定された領域内に配置され、第1の平面は、n×dとd×xを加えたものと実質的に等しい距離だけスケールから離間され、第2の平面は、n×dからd×xを引いたものと実質的に等しい距離だけスケールから離間され、ここで、nは整数であり、xは2分の1以下である。光源は、発散光ビームを放射し、発散光ビームはスケールの方に導かれ、発散光ビームからの光は、格子によって検出器アレイの方に回折される。スケールとセンサ・ヘッドの間にはマスクが配置され、このマスクは開口を画定し、センサ・ヘッドに対して実質的に固定されたままであり、開口は、回折された5次ビームが検出器アレイに達するのを実質的に防ぐようにサイズと位置が決められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,355,220号明細書
【特許文献2】米国特許第5,486,923号明細書
【特許文献3】米国特許第5,559,600号明細書
【特許文献4】米国特許第5,909,283号明細書
【特許文献5】米国特許第7,002,137号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの装置には高い精度がしばしば必要とされ、例えば、ミクロンレベルの精度がしばしば必要とされる。多くの従来装置には、その精度、信頼性、較正、および大量生産し易さを制限する問題があり、また、一般に、そのような微細な分解能が必要とされるときは高価になる。経費は、ある程度、それらの部品を互いに正確な位置に組み立てる要件による。したがって、安価に大量生産できるきわめて正確で信頼性の高い光学エンコーダが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
光学エンコーダの一実施形態は、エンコーダ・ディスク、エンコーダ・ディスクに光を導くように構成された照明システム、およびエンコーダ・ディスクから回折された光を検出するように構成された検出器を含むことができる。エンコーダ・ディスクは、エンコーダ・ディスク上にリングとして形成された回折格子を有する信号トラックと、反射インデックス・マークを有するインデックス・トラックとを備えることができ、インデックス・マークの幅は、回折格子のピッチより大きい。
【0011】
光学エンコーダで使用されるエンコーダ・ディスクの一実施形態は、エンコーダ・ディスク上にリングとして形成された回折格子を有する信号トラックと、反射インデックス・マークを有するインデックス・トラックとを備えることができ、インデックス・マークの幅は、回折格子のピッチより大きい。
【0012】
光学エンコーダと共に使用するためのインデクシング方法の一実施形態は、エンコーダ・ディスクを提供する段階と、光をエンコーダ・ディスクに導くように構成された照明システムを提供する段階と、エンコーダ・ディスクから回折された光を検出するように構成された検出器を提供する段階と、インデックス・パルスの立ち上がり端からインデックス期間の中央までの直交位相状態の推定状態カウントkestを計算する段階と、kestにおける直交位相状態でありかつインデックス・パルスのほぼ中心における直交位相状態に対応するQkestを計算する段階と、オフセット補正を決定する段階とを含む。エンコーダ・ディスクは、エンコーダ・ディスク上にリングとして形成された回折格子を有する信号トラックと、エンコーダ・ディスク上にリングとして形成されたインデックス・トラックを備え、インデックス・トラックは、インデックス角度座標で提供されたインデックス・マークを有する。検出器は、信号トラックから回折された光を検出しかつ直交位相信号を出力するように構成された2つのオフセット検出器と、インデックス・トラックから反射された光を検出しかつインデックス・パルスを出力するように構成された1つのインデックス検出器とを含むことができる。
【0013】
光学エンコーダの利得とオフセットを動的に調整する方法の一実施形態は、回折格子を有するエンコーダ・ディスクを提供する段階と、エンコーダ・ディスクに光を照射する段階と、回折格子から回折された光を検出し第1の細カウント・チャネルを出力するように構成された検出器を提供する段階と、第1の細カウント・チャネルの第1のターゲット利得と第1のターゲット・オフセットを計算する段階と、第1のターゲット・オフセットと第1のターゲット利得に基づいて、第1の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに補正を適用する段階とを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】エンコーダ・ディスクの一実施形態の図である。
【図2】少なくとも1つの実施形態による二重直交位相信号とインデックス信号の相対位置を示す図である。
【図3】少なくとも1つの実施形態による二重直交位相信号とインデックス信号の相対位置を示す図である。
【図4】少なくとも1つの実施形態による二重直交位相信号、ゲート制御インデックス信号および非ゲート制御インデックス信号の相対位置を示す図である。
【図5A】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダ・ディスクの図である。
【図5B】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダ・ディスクの一部分の拡大図である。
【図6】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダ・ディスクの図である。
【図7】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダ・ディスクの一部分と種々の検出器の図である。
【図8A】少なくとも1つの実施形態によるインデックス・トラックと検出器の相対位置を示す図である。
【図8B】少なくとも1つの実施形態によるインデックス・トラックによって生成された信号を示すグラフである。
【図9】少なくとも1つの実施形態による種々の信号を示すグラフである。
【図10】少なくとも1つの実施形態による比較器の回路図である。
【図11】少なくとも1つの実施形態による様々な直交位相状態を示す図である。
【図12A】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図12B】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図13A】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図13B】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図13C】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図14】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図15】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダ・ディスクからの光反射を示す図である。
【図16】少なくとも1つの実施形態によるインデックス信号への光反射の影響を示す線図である。
【図17】少なくとも1つの実施形態による片面が黒く塗られたエンコーダ・ディスクの前面の写真である。
【図18】少なくとも1つの実施形態による片面が黒く塗られたエンコーダ・ディスクの前面の写真である。
【図19】少なくとも1つの実施形態による片面が黒く塗られたエンコーダ・ディスクの後面の写真である。
【図20】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの種々のビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図21】マルチモードVCSELの電流とビーム・プロファイルの関係を示すグラフである。
【図22】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダの回折パターンを示す図である。
【図23】ガウスビーム・プロファイルを示す三次元グラフである。
【図24】ガウスビーム・プロファイルを示す表示である。
【図25】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELのビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図26】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELのビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図27】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELのビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図28】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELのビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図29】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの種々のビーム・プロファイルを示す図である。
【図30】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの種々のビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図31】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの種々のビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図32】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELのビーム・プロファイルを示す表示である。
【図33】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの電流とビーム・プロファイル間の関係を示すグラフである。
【図34】ガウスビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図35】ガウスビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図36】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの非ガウスビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図37】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの非ガウスビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図38】少なくとも1つの実施形態によるVCSEL出力制御回路の回路図である。
【図39】少なくとも1つの実施形態によるVCSEL出力制御回路の回路図である。
【図40】VCSELの図である。
【図41】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図42】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図43】利得修正前の直交位相チャネルの出力のリサージュ・パターンである。
【図44】読取りヘッド較正に関するデータを示すグラフである。
【図45】利得修正後の直交位相チャネルの出力のリサージュ・パターンである。
【図46】読取りヘッド較正に関するデータを示すグラフである。
【図47】2クロム層エンコーダ・ディスクからの出力を示すグラフである。
【図48】2クロム層エンコーダ・ディスクからの出力を示すグラフである。
【図49】2クロム層エンコーダ・ディスクからの出力を示すグラフである。
【図50】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図51】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図52】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図53】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図54】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図55】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図56】動的パラメータ調整方法を示す図である。
【図57A】プレフィルタリング方法を示すフローチャートである。
【図57B】プレフィルタリング方法を示すフローチャートである。
【図58】移動平均フィルタの種々のウィンドウを示す図である。
【図59】正DCオフセットの直交位相状態の誤差を示す図である。
【図60】負DCオフセットの直交位相状態の誤差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、例示であり限定ではない添付図面を参照して、類似の要素がいくつかの図で同様に番号付けされた実施形態を単なる例として説明する。
【0016】
図1に見られるように、信号トラック12などの線トラックを円形ガラス片の外側部分に沿って配置することにより、エンコーダ・ディスク10を構成することができる。光が当てられたとき、信号トラック12の線が交互の明/暗パターンを作り出す。ディスク・カウントが、ディスク1回転当たりの明/暗対の数を指す。ピッチが、信号トラック12の各マークまたは線間の距離を指す。
【0017】
図2に見られるように、線がオフセット検出器(1/4ピッチ・オフセット)によって処理されるときに、一般に直交位相信号対(すなわち、第1の直交位相信号(CH A)20と第2の直交位相信号(CH B)22)と呼ばれる2つの出力を生成することができる。また、信号20と信号22の組み合わされた対が、一般に直交位相信号と呼ばれ、また1つの直交位相信号が1対の位相シフト信号を含むことを理解されたい。
【0018】
さらに図1に見られるように、通常、従来のエンコーダ・ディスク12に、ディスク上の特定の(絶対的)位置を識別するための第2のマークが追加される。インデックス・マーク14は、そのようなマークの例である。
【0019】
CH A20とCH B22の直交位相関係から、例えばアップ/ダウンカウンタや他の任意の適切な手段によって、回転の向きと大きさを決定することができる。インデックス・マーク14は、基準位置「0」を提供することができる。図3は、第1の直交位相信号20及び第2の直交位相信号22と比較したインデックス信号24を示す。
【0020】
直交位相エンコーダは、ゲート制御された形態とゲート制御されない形態の2つの形態になることができる。図4は、様々なゲート制御タイプによる異なるインデックス信号の例を示す。例えば、ゲート制御インデックス信号26は、第1の直交位相信号20と第2の直交位相信号22の積によってゲート制御される。別の例は、第1の直交位相信号のみでゲート制御されたゲート制御インデックス信号27である。第3の可能な例は、非ゲート制御インデックス信号28である。
【0021】
インデックス・パルスを生成するには2つの方法がある。1つの方法は、きわめて幅の狭いインデックス・マークから反射または狭いインデックス・スリットによる透過と、その後の光検出器を使用する。比較器が、調整された検知器信号の後に配置され、光強度があるしきい値を超えたときにトグルする。
【0022】
第2の方法は、回折を使用する。インデックス・マークは、異なるピッチの一連の微細な線で作成される。2つ以上の光検出器が、回折次数によって異なる位置に配置される。信号は、加算(または、減算)され比較器に適用される。信号レベルが、あるしきい値を超えたとき、インデックス・パルスが生成される。両方の方法は、反射または回折領域が小さいため厳密な位置合わせを必要とする。
【0023】
図5A、図5Bおよび図6は、エンコーダ・ディスクの一実施形態を示す。例えば、図5Bと図6に見られるように、エンコーダ・ディスク30が、エンコーダ・ディスク30上にリングとして形成された回折格子の信号トラック32を有してもよい。信号トラックは、交互になった反射部分と非反射部分によって構成されてもよい。例えば、信号トラックの非反射部分は、均一の黒色塗料の塗装や他の適切な方法などにより、黒色化または暗色化されたガラスによって構成されてもよい。非反射という用語は、表面が必ずしも反射率0%でなくてもよいことを理解されよう。例えば、少なくともいくつかの実施形態では、非反射面は、5%または別の適切な値の反射率のような低反射率を有することができる。
【0024】
1つの可能な代替として、反射部分と非反射部分は、一方の層が吸収性で他方の層は反射性の2つのクロム層を使用して実施されてもよい。図41と図42は、2つのクロム層を使用するエンコーダ・ディスク400の一実施形態を示す。図41は、エンコーダ・ディスク400が、基板402、低反射クロム層404および高反射クロム層406を有することを示す。高反射クロム層406は、低反射クロム層404上に付着される。高反射クロム層406は、高反射クロム層406が付着された後で低反射部分404の一部分が見えたままになるようなパターンで形成されてもよい。例えば、高反射クロム層406は、エンコーダ・ディスク上に信号トラックとインデックス・トラックを形成するパターンで形成されてもよい。
【0025】
低反射クロム層404は、例えばクロム酸化物や別の適切な材料で作成されてもよく、少なくとも1つの実施形態では空気側で5%の反射率を有してもよい。さらに、少なくとも1つの実施形態では、高反射クロム層は、空気側で65%、ガラス側で59%の反射率を有してもよい。2つのクロム層を有するエンコーダの動作については、本明細書でさらに詳しく検討される。
【0026】
エンコーダ・ディスク30は、半径方向、すなわちエンコーダ・ディスク30の外縁の方向に、信号トラック34の外側に位置決めされた外側インデックス・トラック34を含んでもよい。図5Bと図6に示された実施形態では、外側インデックス・トラック34は、エンコーダ・ディスクのインデックス角度座標に配置された反射外側インデックス・マーク35を除き非反射性である。インデックス角度座標は、円周方向の任意の「ゼロ」基準点でよい。
【0027】
エンコーダ・ディスク30は、エンコーダ・ディスク30上でリングとして形成された内側インデックス・トラック36を含むこともできる。内側インデックス・トラックは、信号トラックの半径方向の内側、すなわちエンコーダ・ディスク30の中心に近い方に形成することができる。図5Bと図6に示された実施形態では、内側インデックス・トラックは、反射外側インデックス・マーク35と同じインデックス角度座標に配置された非反射内側インデックス・マーク37を除き反射性である。
【0028】
少なくとも1つの実施形態では、図7と図8Aに見られるように、インデックス・マークの幅は、回折格子のピッチより大きい。
【0029】
図5Bと図6の実施形態は、反射外側インデックス・マーク35を有する非反射外側インデックス・トラック34と非反射内側インデックス・マーク37を有する反射内側インデックス・トラック36を示し、これらの反射部分と非反射部分は、交換することができ、やはり正確な同じ結果を達成できることを理解されよう。例えば、非反射外側インデックス・マークを有する反射外側インデックス・トラックと反射外側インデックス・マークを有する非反射内側インデックス・トラックを備えてもよい。
【0030】
インデックス・トラックの反射部分と非反射部分は、様々な方法で実装することができる。例えば、信号トラックと同じように、エンコーダ・ディスクのガラスを暗色化することによって、インデックス・トラックの非反射部分を形成することができる。
【0031】
代替として、前述のように、吸収クロム層と反射クロム層を使用することもできる。図50〜図55は、2つのクロム層を有するエンコーダ・ディスク400,500の可能な特定の実施形態を示す。図51と図54に見られるように、エンコーダ・ディスク400,500は、前述のエンコーダ・ディスクと同様に構成され、外側インデックス・トラック434,534、外側インデックス・マーク435,535、内側インデックス・トラック436,536、および内側インデックス・マーク437,537を有することができる。前述のエンコーダ・ディスク30と同じように、エンコーダ・ディスク400,500の反射部分と非反射部分は、交換することができ、1つの特定の構成に限定されない。さらに、特定の図面に示された寸法が、示された特定の実施形態を指し、本発明の範囲を決して限定しないことを理解されよう。
【0032】
光検出器を使用して、インデックス・トラックと信号トラックをそれぞれ監視することができる。図7に見られるように、検出器40,41を使用して外側インデックス・トラックと内側インデックス・トラックを検出することができ、信号トラック検出器42を使用して、信号トラックから回折された光を検出することができる。インデックス・パターンが互いに反対なので(すなわち、1つのインデックス・トラックがインデックス角度座標で反射性であり、他のインデックス・トラックが、インデックス角度座標で非反射性である)、検出器40,41からのインデックス出力の共通オフセット・レベルが逆になる。
【0033】
例えば、図8Aは、インデックス角度座標の原点に集束された図を示す。図8Aでは、暗領域(すなわち、34,37)は、非反射性であり、左側に移動している。明領域(すなわち、35,36)は、反射性であり、左から右に移動している。検出器40,41は、インデックス・トラックの上に重ねられて示されている。図8Aは、図5Bと図6に示したものと同じ構成の反射部分と非反射部分を使用する。
【0034】
図8Bは、内側インデックス信号46と外側インデックス信号48の出力を時間の関数として示す。例えば、グラフの左側は、インデックス角度座標が検出器40,41から遠いときの時間期間を表わす。このとき、内側インデックス・トラックは検出器41において反射性であり、したがって、内側インデックス信号46は、図8Bのグラフの左側の方が高い。また、このとき、検出器40において外側インデックス・トラックは非反射性であり、したがって、外側インデックス信号48は、図8Bのグラフの左側の方が低い。
【0035】
図8Aで時間が進みエンコーダ・ディスクが回転するとき、検出器40が見る領域は、非反射性から反射性に移行し、検出器41が見る領域は、反射性から非反射性に移行する。この移行は、図8Bでは、高から低になる内側インデックス信号46と、低から高になる外側インデックス信号47によって表される。内側インデックス信号46と外側インデックス信号47の交点は、エンコーダ・ディスク上のインデックス・マークの「開始」または「終了」を示す。
【0036】
図9は、インデックス・パルス・トレースと信号トラック・トレースを示す表示の一例を示す。例えば、図9のインデックス・パルス80はインデックス・マークを表わす。図9は、さらに、インデックス・パルス80の立ち上がりと立ち下がりは、内側インデックス信号46と外側インデックス信号48の交点44に対応することを示す。
【0037】
図10は、内側インデックス信号と外側インデックス信号を論理インデックス信号に変換するための比較器の一例を示す。例えば、論理インデックス信号は、内側インデックス信号と外側インデックス信号の交点に基づいて高レベルまたは低レベルに移行する。
【0038】
前述のように、回折格子信号トラックは、CH A20やCH B22などの二重直交位相信号を生成することができる。これらの信号は、例えばオフセット検出器を含む検出器42を使用することにより生成することができる。回転の大きさと方向は、例えば、アップ/ダウン・カウンタによって2重直交位相信号を分析することにより決定することができる。インデックスした後で、アップ/ダウンカウンタから絶対位置を決定することもできる。
【0039】
図11に示されたように、4つの可能な直交位相状態60、62、64、66がある。以下の表は、CH A 20とCH B 22の可能な直交位相状態の一覧である。
【表1】
換言すると、直交位相状態は、グレーコード・シーケンスを表わす。前の(異なる)状態から異なる直交位相状態になると、方向に基づいて位置カウンタを増分または減分する。
【0040】
インデクシング操作では、インデックス期間中にいくつかの直交位相状態が存在する。換言すると、インデックス・トラック上のインデックス・マークは、インデックス・トラックが進行することによりいくつかの直交位相状態を経て進行するように十分に大きくてもよい。
【0041】
例えば、Kを直交位相状態の数とする。最適なターゲット・インデックス状態は、インデックス・パルス72またはインデックス期間の中心に最も近い直交位相状態である。所定の方向(+/−、CCW(半時計回り)/CW(時計回り))で、最適ターゲット状態は、K/2(Kが偶数の場合)または(K+1)/2(Kが奇数の場合)である。図12Aでは、例えば、K=10であり、最適ターゲット状態70が、直交位相状態5に位置決めされる。「最適」状態は、Kが奇数のときにCW回転とCCW回転で同一であり、Kが偶数のときに1つの直交位相状態だけ異なることに注意されたい(例えば、図12Bを参照)。この状況については、後でより詳細に述べる。
【0042】
ターゲット状態をできるだけインデックス期間72の中間近くに選択することにより(また、偶数カウントを補償することにより)、どちらの回転方向が使用されても関係なく選択された状態を一貫して誤差なしに求めることができることが分かる。さらに、これは、インデックス期間72の幅の変化による影響を受けない。
【0043】
インデックス期間72は、非対称的(すなわち、一方向)にシフトされてもよく、対称的(すなわち、インデックス中心点に関して拡張方向または収縮方向)にシフトされてもよい。重ね合せにより、2つの組み合わせを有することができるが、非対称特性と対称特性を個々に検査することによって誤差を考慮することができる。さらに、インデックス・パルス72の立ち下がりにヒステリシスを適用することにより、曖昧性が1直交位相状態に減少する。
【0044】
非対称誤差
非対称誤差には2つの原因がある。第1の原因は、読取りヘッド位置の変化によるものであり、第2の原因は、直交位相状態とインデックス・パルス遷移を同時に変化させる曖昧性(ノイズと遅延によって生じる)によるものである。
【0045】
第1の原因は考慮しなくてもよい。移動する読取りヘッドは、高精度エンコーダを実現不可能にする。これは、設計によって除去しなければならない。
【0046】
第2の非対称誤差の原因は、2つの要素を有する。単一エッジが生じる場合、1/2カウント誤差(1/2直交位相状態)が達成される。第2の要素は、最悪ケースの状態となり、遷移の曖昧さが両端で同じ方向(異なる方向が対称的シフトを構成する)に生じる場合に存在する。しかしながら、CCW方向とCW方向の両方の移動を考慮するとき、これは、両方の推定値間の2つのカウント(または、直交位相状態)の差になる場合がある。これは、どちらの状態が適正であるか曖昧なので望ましくない。ヒステリシスは、この誤差原因の解決策を提供する。
【0047】
インデックス(両方向に真)の端に適用されるヒステリシスの1/2直交位相状態を追加することにより、2エッジ曖昧性が除去され、CCW推定値とCW推定値との差が1カウント(直交位相)状態に減少する。図13A、図13Bおよび図13Cを参照されたい。実質的に、推定値はより近くなる。
【0048】
したがって、「ターゲット」推定値と新しく計算されたターゲット推定値の間には、多くても1つのカウントまたは1つの直交位相状態の差しかない。直交位相状態の検査から、真のターゲットの位置が明らかになる。
【0049】
対称誤差
インデックス期間が拡大または収縮するとき、追加の誤差は導入されない。移動中、前述のように単一カウント非対称誤差しか生じることがない。偶数カウント間隔を補正するとき、CCW/CW両方の動きに1つの状態を選択するターゲット選択方式が使用される。
【0050】
誤差補正
前述のように、K/2または(K+1)/2から確立された状態と後の評価との間には、多くても1つのカウント/状態誤差しか見つからない。較正中に到達したターゲット・オフセット方向(選択状態)を知ることにより、オフセット(インデックス・ターゲットでの実際のカウントと所望のカウントとの差)を作成するためにターゲット・カウントに加えられる補正率を作成することができる。現在のカウントからオフセットが減算されて、絶対インデックス位置が提供される。
【0051】
以下の定義は、誤差補正アルゴリズムを説明する際に使用され、図14を参照されたい。
P_Counti=位置iにおける位置カウンタ値。
P_Count^indexは、インデックス・パルスの立ち上がり端における位置カウントである。
K=インデックス・パルスの始めから終わりまでの直交位相カウント。これは、常に正である(すなわち、方向と関係なく)。
Dir=0(この方向のP_Count増分)または1(この方向のP_Count減分)。これは、インデックス・シーケンスによる回転運動方向を示すフラグである。Dirの例は、CCWでは0、CWでは1である。
kest=インデックス立ち上がり端からターゲット状態までの直交位相状態の数の推定値。
これは、インデックス・パルスの立ち上がり端からインデックス期間の中間までの状態カウントである。
ktarget=インデックス・パルスの立ち上がり端からターゲット状態までの実際の状態カウント。
Qi=位置iにおける直交位相状態(グレイコード)。
Qtarget=インデックス参照用のターゲット状態におけるグレイコード。
【0052】
以下では、1/2状態ヒステリシスが使用されると想定する。ターゲット状態(Qtarget)が与えらた場合、4つの変数から基準点を確立することができる。これらの変数を使用して基準点を調整する方法は、インデックス・アルゴリズムと呼ばれる。
【0053】
ターゲット状態が定義されていない場合は、インデックス・アルゴリズムを両方向に実行しなければならない。各パスからの出力が評価され、Qtargetが選択される。これについては後で説明される。
【0054】
これは、ターゲット有効(TV)フラグが存在することを意味する。当面は、Qtargetが定義されていないときはTV=0であり、定義されたときはTV=1であると仮定する。
【0055】
インデックス・アルゴリズムでは以下の変数が使用される。
1.インデックスの始まり(インデックス・パルスの立ち上がり端)での位置カウンタ値。
2.回転方向。(位置カウンタがインデックス期間により増大するかまたは減少するか)。
3.インデックスの始まりにおける直交位相状態のグレイコード。
4.インデックス期間での直交位相状態の総数。
【0056】
TV=0の場合
Qtargetは、インデクサ・アルゴリズムを両方向に実行することによって確立される。各方向からのアルゴリズム出力(Qkest+とQkest-)が比較される。等しい場合に、そのアルゴリズム出力がターゲット状態になる。アルゴリズム出力が1状態だけ異なる場合は、常にQkest+=Qkest-となる(逆も許容可能である)。一貫した手法が最良である。Qkest+とQkest-が2状態以上異なる場合は、ハードウェア障害が存在する。
【0057】
TV=1の場合
アルゴリズムは、ktarget(インデックス開始からターゲット状態(Qtarget)までの状態の数)を計算する。Qtargetが最良状態(インデックス期間の中心に最も近い)であることに注意されたい。
【0058】
ktargetが決定された後で、以下のように基準計算(ゼロ位置)が計算される(次の定義の節を参照)。
正方向の場合
P_Countnew=P_Countcurrent−[P_Count^index+(ktarget−1)] 式1
ktarget(−1 term)への調整は、インデックス開始イベントでkカウンタが1から始まるからであることに注意されたい。
負方向の場合
P_Countnew=P_Countcurrent−[P_Count^index−(ktarget−1)] 式2
ktarget(−1 term)への調整は、インデックス開始イベントでkカウンタが1から始まるからであることに注意されたい。これは、正回転の場合と同じである。
位相:
Cal_Phase − CCWとCWの両方の方向を使用してターゲット・インデックス状態を決定する。
工場設定。インデクシング・アルゴリズムが使用される。
Index_Phasedir−基準点を見つける。インデクシング・アルゴリズムが使用される。
Zero_Phase−P_Counttarget=0(ターゲット位置)となるように補正を計算し適用する
絶対エンコーダ・モードに入る。
インデクシング・アルゴリズム:
目的は、正(CCW)または負(CW)のエンコーダ回転のインデックス基準点を見つけることである。
入力:QtargetとTV
出力:ktarget
変数:P_Count^index、Q^index、K、およびDir。
ステップ1
kestの決定
kest=K/2(Kが偶数の場合)または(K+1)/2(Kが奇数の場合) 式3
【0059】
以下のようにインデックス・パルスの立ち上がり端で始まる直交位相状態を識別する(これは、モジューロ4パターンを構成する)。
Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10,Q11,Q12
Q1,Q2,Q3,Q0,Q1,Q2,Q3,Q0,Q1,Q2,Q3,Q0,……(合同)
ここで、Q^index=Q1
ステップ2
Qkestの決定
次の式からkestにおける直交位相状態(Qkest)を求めることができる。
Qkest=Q{kest mod 4} 式4
注:モジュロ演算。
0 mod 4=0
1 mod 4=1
2 mod 4=2
3 mod 4=3
4 mod 4=0
5 mod 4=1
6 mod 4=2
Qkestの決定(続き)
kest mod 4=1の場合(例えば、kest=5または9または13…)は、Qkest=Q1である。(図12A、図12B、図13A、図13Bおよび図13Cも参照)。
【0060】
Qは、方向によって割り当てられ、第2の要素(説明を参照)は、インデックス立ち上がり端によってアドレス指定される。生成された表は、オフセット表と呼ばれる。表の下降は正(増分カウント)であり、上昇は負である。これは、回転方向に依存しない。
例1:図13Aを使用する。
負方向Q1=LHの場合 表1(オフセット表の例)
Q3=HL[Q0に最も近いHL]
Q0=LL
Q1=「残り部分=1」状態で常にLH(インデックス始まり)。
Q2=HH
Q3=HL
Q0=LL[Q3に最も近いLL]
K=10または11(赤期間で終わるか青期間で終わるかによる)
それぞれを検討する。
K=10の場合は、kest=10/2=5である。5 mod 4=1
したがって、Q5=LH=Q1
K=11の場合は、kest=(11+1)/2=6である。6 mod 4=2
したがって、Q6=HH=Q2または順方向にQ1から次の状態。
Dirは、表を選択する(実際の順序)。動きが正か負かに関係なく、選択された表内で常に同じように前または後ろに動く。
注:基準のP_Countがないので、そのP_Countを使用してグレイコードを直接推定することができない。
オフセット表の説明
太字は、x mod 4の結果を示す。結果が境界(Q0またはQ3)なる場合、表は、1状態だけ拡張されなければならない(イタリック体。後方(@Q0の場合)/前方(@Q3の場合)−ここで、両方の可能性が示される)。探索は、常に、最も近い隣接値に行なわれる。
インデックスが任意状態(Q1=QC)で生じると仮定する。kest mod 4 −> Q0(QB)でかつターゲット状態がQAの場合は、
表2 拡張付きオフセット表
Q3=QA[最も近いQAからQ0][必要な場合]
Q0=QB−−−−−−−−−^
Q1=QC(インデックス開始)常に「残り=1」状態で。
Q2=QD
Q3=QA
Q0=QB[Q3に最も近いQB][必要な場合]
オフセット=−1
ステップ3
オフセット補正の決定
TV=0の場合、両方向からのQkestが必要とされる。検査するQtargetの等価物がない。生データを使用してターゲット決定を行なう。
各パスからのKを確認しなければならない。|K+−K-|<=2
TV=1の場合、Qtargetが定義される。
Qtarget=Qkestのとき、ktarget=kest
他の状況では、1つの状態カウントを修正するだけでよい(上または下へ)。複数の状態差がある場合、フォルトが生じた。
ktarget=kest+オフセット。ここで、オフセット=+1または−1 式5
オフセット補正の決定(続き)
例2:図13Aを使用する。
Qtarget=LH=オフセット表(表1)内のQ1
表1(繰り返し)
Q0=LL
Q1=LH(インデックス開始)「残り部分=1」状態で常に。
Q2=HH −−−−−−−−−−−−−−−−−^
Q3=HL
K=11、kest=6、およびQkest=HH=Q2の場合
EQ5を使用する。
オフセット=ktarget=−kest−1(オフセット表を推定値からターゲットまで上昇させる)
したがって、ktarget=6−1=5
【0061】
前述の構造と方法は、いくつかの有効な利点を有する。例えば、光学的位置合わせが、きわめて単純になる。読み取りヘッドのエンコーダ・スケールまたは配置上の高精度格子が不要である。さらに、ギャップ幅(すなわち、インデックス・マークの幅)が、従来の装置より大きい。したがって、ギャップ位置の許容範囲は、従来のエンコーダより大きくなる。したがって、全体として、前述の構造と方法は、エンコーダが、従来のエンコーダよりも製造と実装を安価かつ単純にすることができる。
【0062】
さらに、複数の読取りヘッドの設計余裕が改善される。超高精度エンコーダには、2つおよび4つの読取りヘッドが一般的である。ゲート制御式または非ゲート制御式の従来のインデックス法は、すべての読取りヘッドに同時に適用されなければならない。読取りヘッドが互いに厳密に180度(2読取りヘッド)または90度(4読取りヘッド)でありえないという事実があるので、インデックス・パルス内で読取りヘッド位置に差が生じる。各読取りヘッドの中間が斜めにされるので、最良の状態を取ることが困難になる。これと対照的に、前述の構造の一実施形態では、エンコーダは、幅広いインデックス(アーク長320ミクロン、64の直交位相状態)を使用するので、あまり重要ではない。差は、温度ドリフトとエージングに対しても最小化される。
【0063】
また、従来のエンコーダでは、インデックス・パルスが5つ以上の直交位相状態を含む場合に、冗長状態を取ることができる。これは、検査され補正されなければならない(通常、ハードウェア、例えば、ケーブル交換によって)。前述の構造と技術は、この種の冗長状態による影響を受けない設計による。
【0064】
さらに、前述の技術と構造を、マルチモード(すなわち、非ガウス)ならびにシングルモード(すなわちガウス)のレーザ・ダイオードと共に使用することができる。装置は、ビーム・プロファイルの影響を受けにくい。VCSELの代わりの光源としてLEDを使用することもできる。光源のこの融通性は、コストを最小にするのに役立つ。マルチモードVCSELおよびLEDは、単純な格子パターンと同じように、シングルモード・ダイオードより安価で信頼性が高くなり得る。
【0065】
また、エンコーダ・スケールの裏面に光学的黒色(すなわち、光吸収材)を塗布することによって、エンコーダ・ディスクからの望ましくない反射を減少させることができることにも注意されたい。代替の実施形態では、光学的黒色材料をエンコーダ・スケールの前面に塗布してもよい。さらに、前述の低反射層と高反射層は、望ましくない反射を減少させることができる。
【0066】
例えば、前述の方法と構造は、直交位相信号格子の両側にある2つの相補的(すなわち、ブール解釈(Boolean interpretation))反射トラックを使用する。インデックス法が、レーザ・ビームの各側で2つの反射経路に依存するので、それらの反射経路は、それぞれの光検出器(2)と一列に並び、それぞれ信号クロスオーバに十分なエネルギーを受け取らなければならない。
【0067】
各インデックス信号の暗レベルが同じ場合は、個々の信号がピーク・トゥ・ピーク・ノイズ・レベルとヒステリシスを加えたものより大きい限り、インデックス期間でのクロスオーバが保証される。
【0068】
インデックス信号対のマーク・チャンネル信号48(すなわち、反射外側インデックス・マークによって生じた信号)は、場合によりDCオフセットを有する可能性がある。換言すると、マーク信号48は、スペース信号46(すなわち、非反射内側インデックス・マーク)の最低レベルと一致していなかった。このDCオフセットには反射112直前にくぼみ110が検出されたので(図15と図16を参照)、これは、エンコーダ・スケールの背面からの反射である疑いがあった。くぼみ110は、マーク・リフレクタが見えるように減少されたエンコーダ・スケールの後ろからの反射よるものである。
【0069】
スケールの裏側が、光学的黒色または均一な黒色塗料(エンコーダ・ディスクの前側に関しては図17と図18、黒く塗られた裏側に関しては図19を参照)で塗られたとき、オフセットは消える。前述の構造によって使用される広い照明および処理領域により、装置は、従来の装置よりも望ましくない反射の影響を受けやすい。エンコーダ・ディスクが使用される組立体内のすべての面を黒色化することにより、リサージュ信号の品質がさらに改善される(リサージュの入力は、直交位相信号の2つのチャネルである)。この技術が従来の装置にも試みられており、リサージュ歪みも改善されている(円形品質の改善)ことに注意されたい。これは、楕円形、ノイズが多い円、歪んだ円(例えば、じゃがいも形)などのリサージュひずみの主原因が反射がであるということを指す。
【0070】
したがって、すべての設計が、反射の減少から利益を得るように思われる。後側(または、前側、格子の外側、もしくはインデックス・リフレクタ)に塗布された光吸収材料、または低反射および高反射層は、読取りヘッドの性能を改善することができる。例えば、鏡面反射が減少するので、インデックス信号の信号対雑音比を改善することができ、またより良好な直交位相信号を得ることができる。
【0071】
また、吸収性被覆または低反射層と高反射層を、照明システムによって放射された光の特定の波長に合わせて最適化できることを理解されよう。
【0072】
また、図17から図19の実施形態が、エンコーダ・ディスク30の中心の透明領域を示すことに注意されたい。この透明領域により、この実施形態のエンコーダをカートリッジに取り付けるためにUV接着剤を塗布することができる。
【0073】
2つのクロム層エンコーダ(図41と図42に示されたエンコーダ400などの)について、エンコーダの性能を評価するために較正と検査を行った。結果を表2にまとめる。表2の左欄は、検査されるエンコーダの通し番号を示し、表2の右欄は、度で測定したエンコーダのシグマである。
【表2】
【0074】
これらの結果が、従来のエンコーダ・ヘッドより少なくとも25%改善されていることに注意されたい。
【0075】
また、図43〜図46は、読取りヘッドの較正データを示す。図43〜図44は、利得修正前のデータを示し、図45〜図46は、利得修正後のデータを示す。図43は、読取りヘッド信号に基づくリサージュ曲線900,902を示す。図44において、線904,906は、読取りヘッド位置の誤差を示す(分かりやすくためにずらされている)。上側の線908は、右回り方向の2つの読取りヘッドの平均位置のプロットである。下側の線910は、左回り方向の2つの読取りヘッドの平均位置のプロットである。中心線912は、両方向からの読取りヘッドの平均位置である。図45は、読取りヘッド信号に基づくリサージュ曲線920,922を示す。図46において、線924,926は、読取りヘッド位置の誤差を示す(分かりやすくするためにずらされている)。上側の線928は、右回り方向の2つの読取りヘッドの平均位置のプロットである。下側の線930は、左回り方向の2つの読取りヘッドの平均位置のプロットである。中心線932は、両方向からの読取りヘッドの平均位置である。
【0076】
図47〜図49は、性能試験で使用される2クロム層エンコーダからの出力を示す。図47〜図49において、線600は、反射インデックス・マークを有するリングを表し、線602は、非反射インデックス・マークを有するリングを表し、線604は、直交位相信号を表す。
【0077】
図47〜図49から、2クロム層構造を使用することにより、反射マークを有する非反射リングと非反射マークを有する反射リングからの暗レベルが、0.35VDCより低く、互いに0.16VDC内で一致したことが分かる。平均では、反射マークを有する非反射リングの暗レベル電圧が、0.16VDCと測定され、非反射マークを有する反射リングの暗レベル電圧は、0.26VDCと測定された。
【0078】
直交位相信号レベルに関して、1クロム層構造では、仕様は、以下の通りである。
正弦波(位相)DCオフセット=1.4+/−0.8VDC
正弦波(位相)AC信号=0.4Vp−p〜2.2Vp−p
ポスト・カートリッジ電子回路の出力仕様は、以下の通りである。
正弦波(位相)DCオフセット(DSPで)=1.67+/−0.3VDC
正弦波(位相)AC信号(DSPで)=0.45〜2.70p−p(標準1.1Vp−p)
【0079】
2クロム層構造では、読取りヘッド伝達関数は、0.8倍に減衰する。必要に応じてカートリッジ基板にゲイン調整を行うことができる。例えば、入力減衰器抵抗値を20kから13kに変更することができる。代替として、利得抵抗器を34.8kから24.9kに変更することにより、計測増幅器利得を2.42から3.0に変更することができる。
【0080】
全体として、エンコーダ・ガラス上の2クロム層構造は、カートリッジ・システムを2通りに改善する。第1に、望ましくない反射が減衰され、従って、DCオフセットを減少させることによりインデックス信号が改善される。第2に、直交位相信号がより一貫し、空間ノイズが減少する。
【0081】
VCSELのビーム・プロファイルがガウス形から非ガウス形に変化するときに、直交位相信号の品質があまり変化しないことも分かった。前述の装置は、マルチモード・レーザ・プロファイルを光強度監視方式により制御することができる。
【0082】
マルチモード・レーザは、低駆動電流でガウス・ビーム・プロファイルを示し、より高いVCSEL電流でラゲール−ガウス{1,0}プロファイル(3D外観は、光強度が中心に向かって低い「クレータ」を有する火山のものと類似している)に変化する(図20を参照。マルチモードVCSELの様々なプロファイル300,302,304,306,308を示す)。図21に見られるように、マルチモードのときにVCSEL電流と共にビーム幅が増大することに注意されたい。例えば、図21では、ビーム・プロファイル310は、電流4mAにおけるビーム・プロファイルであり、ビーム・プロファイル312は、電流6mAにおけるビーム・プロファイルである。
【0083】
前述の直交位相信号は、回折によるエネルギーの広い空間収集により、ガウス・モードでも非ガウス・モードでもあまり歪みがない。
【0084】
実験の際、狭ビームVCSEL(約12度のレーザ・ビーム・ウェスト)を使用してVCSEL電流が減少された。公称バイアス(4.75mA)で、優れた品質のリサージュ円が表示された。これは、本質的にLG{1,0}プロファイルであった。VCSEL電流が4.3mAより低かったので、円が大きくなった(信号強度が増大した)ことが分かった。しかしながら、円品質は同じままである。これは、約3mAまで続き、次に円が収縮し始めた。
【0085】
この現象は、ビーム形状がLGからガウス形に変化したときにエンコーダ・スケールの格子に印加された光学エネルギーの増大によるものであった。交換の際に、VCSEL電流の減少によって直交位相信号強度が増大することに注意されたい。
【0086】
20度以上のウェストを有するほとんどガウス幅広ビームであるVCSELの場合、円品質は良好のままであるが、直交位相信号は、VCSEL電流と共に線形かつ単調に変化する。
【0087】
前述の装置の少なくとも1つの実施形態の場合、VCSEL電流は、狭ビームVCSELが非ガウス領域に十分に入るように調整される。これにより、レーザ出力制御光強度ループを不安定にする非単調モードが回避される。
【0088】
レーザ・ダイオードまたはLED(発光素子)を制御する1つの方法は、定電流源によるものである。この技術は、温度による順方向ダイオード電圧降下への影響を最小にする。場合によって、電流を調整し温度による光学出力ドリフトを補正するために温度検出が使用される。
【0089】
第2の方法は、光学フィードバックを使用して補正する。光強度は、同一パッケージまたは個別光センサ内の個別の光検出器によって測定される。
【0090】
このエンコーダは、更に他の目的を有する第2の方法を使用することが好ましい。マルチモードVCSELの出力調整により、ビーム幅と形状を大幅に変更することができる。この特徴は、空間ひずみによる信号対雑音比を最適化するために使用される。
【0091】
したがって、利点は、サイン/コサインおよびインデックス・チャネルの温度と経年変化によるずれを補正することより大きい。
【0092】
光学エンコーダは、線形または回転ガラス・スケールでの高精度決定を使用する。そのような決定は、光学読取りヘッドとスケール間の相対運動を測定するために使用することができる位置基準を提供する。多くの場合、2つの直交位相正弦波信号が出力される。測定電子回路が、ゼロ交差をカウントし、ゼロ交差間を補間してもよい。
【0093】
このエンコーダは、トールボット・イメージング(Talbot imaging)と呼ばれる非直接イメージング技術に基づく。このタイプのエンコーダは、格子回折次数間の干渉に依存する。トールボット・イメージングの場合、重複する回折次数間の干渉は、スケール決定に類似の擬似画像を生成する。
【0094】
図22は、このエンコーダの回折パターンを示す。所望の情報は、+1回折帯320と−1回折帯322からのものである。しかしながら、Thorburnに譲渡された米国特許第7,002,137号のような空間フィルタを実施するマスクが使用されない。その代わりに、すべての回折次数が、センサ・ヘッドに渡され、次にアルゴリズムによって電子的にフィルタリングされる。
【0095】
レーザ・ダイオード−シングルモードおよびマルチモード・レーザ・ダイオード
シングルモード(TEM00と呼ぶ)レーザは、図23と図24に示されたようなガウス・プロファイル200を有する単一円形スポットを作成する。
【0096】
一方、マルチモード・レーザは、共振領域を示す。種々のピークと谷が生じる可能性がある。例えば、図25〜図28は、マルチモード・レーザの様々な可能なビーム・プロファイル340、342、344および346の三次元図を示す。図29は、様々な可能なビーム・プロファイルの断面350〜357を示す。
【0097】
VCSELビーム・プロファイル
マルチモードVCSELは、通常、ラゲール−ガウス形(LG)プロファイルに基づくパターンを生成する。マルチモードVCSELは、低出力ではガウス・プロファイルを提供し、高い方の出力レベルでは、図30〜図32に見られるようにLG[1,0]が一般的である。例えば、図32は、マルチモード・レーザのビーム・プロファイル360の様々な図を示す。
【0098】
このエンコーダは、図33に示されたような一般的なプロファイル/電流伝達関数(マルチモードのとき)を有するLG[1,0]VCSELを使用することが好ましい。実際のテスト・データは、図34〜図37に見ることができる。例えば、図34と図35は、2.75mAにおけるビーム・プロファイル380を示す。図34の2つの線は、x方向とy方向のプロファイルに対応する。同様に、図36と図37は、4.75mAのビーム・プロファイルを示す。
【0099】
図38は、VCSEL光強度制御回路400の可能な一実施形態を示す。図38に示された実施形態では、抵抗器R14がプログラム可能(すなわち、設定点制御)であることに注意されたい。
【0100】
レーザ・ビーム形状を制御する機能により、性能が最適化される。特定の周波数(モータによる)と実行されるDFT(離散フーリエ変換)でエンコーダを回転させることができる。したがって、光強度設定点を調整して最良の信号/ノイズ(SNR)を得ることができ、また空間高調波歪みが最小にされる。
【0101】
さらに、前述の出力制御は、温度とVCSEL経年変化による直交位相およびインデックス信号ドリフトを補償するのに役立つ。
【0102】
前述のVCSELプロファイル制御は、従来のプロファイル制御より優れたいくつかの利点を有する。
【0103】
例えば、レーザ・ビーム・プロファイルを+/−1回折次数位置の近くでピークにすることによって、一次空間高調波(+/−1回折次数で構成された)より高い次数の空間高調波が減少する。しかしながら、この方法では、望ましくない高調波を遮断するために物理的マスクを使用しなくてもよいことにも注意されたい。その理由は、少なくとも、例えば空間フィルタおよび/またはマスクを使用する代わりにデジタル信号処理(DSP)を使用してもよいからである。換言すると、必要に応じて、5次以上のビームなどのすべての高調波が、検出器に達することができる。これにより、構造が先行技術よりも大幅に単純化する。
【0104】
さらに、マルチモード(すなわち、非ガウス)レーザ・ダイオードは、シングルモード・レーザ・ダイオードより信頼性が高い。マルチモードVCSELの方が処理出力が高いので、構造はより強固である。これと対照的に、シングルモード・チャネルは、共振を減少させるために狭く、電圧応力と静電放電の影響を受けやすい。また、シングルモードの純粋なガウス・ビーム・プロファイルを作成するにはより洗練された技術を使用しなければならないので、マルチモードVCSELを使用することによりコストを最小限に抑えることができる。
【0105】
図39は、VCSEL制御の別の実施形態を示す。例えば、VCSEL構成要素D10は、金属パッケージ、窓(ほこり防御用)、VCSEL300、および光検出器302を含むことができる。レーザ光の一部分は、窓から反射され、光検出器302を励起する。したがって、内部光検出器の電流を監視することによって、透過した光エネルギーの量を求めることができる。
【0106】
図40は、VCSEL300の少なくとも1つの可能な実施形態を示す。しかしながら、本発明は、この特定のVCSELに限定されず、他の適切なVCSEL、LEDまたは他の適切な光源を使用することができる。図40は、また、VCSELの一部として窓301を示す。
【0107】
図39に見られるように、光検出器302からの帰還電流は、抵抗器R7または抵抗器R8と並列の抵抗器R7により電圧(VMON)に変換される。制御ダイナミック・レンジが拡大されるとき、並列組み合わせが使用される。通常、抵抗器R17が取り付けられず、その位置にゼロ・オーム抵抗器が取り付けられたときに並列組み合わせを構成できることに注意されたい。
【0108】
演算増幅器U1とトランジスタQ1は、電流変換器への電圧を生成する。VBiasは、設定値電圧である。演算増幅器U1、トランジスタQ1、キャパシタC4、VCSEL構成要素D10、および抵抗器R7(または、抵抗器R8と並列な抵抗器R7)によって構成された帰還ループは、VMON=VBIASとなるまでレーザ・ダイオード(LD)内の電流を変化させる。すなわち、光強度は、帰還電流*抵抗器R7(または、抵抗器R7および抵抗器R8と並列な抵抗器R7)が、VBiasと等しくなるまで、VCSEL電流を変更することによって調整される。
【0109】
演算増幅器U1は、VMONとVBias間の誤差を増幅する。キャパシタC4は、帯域幅を設定する。演算増幅器U1からの出力電圧(Vout−U1ピン1)は、抵抗器R9を介してトランジスタQ1のベースに印加される。
【0110】
トランジスタQ1のエミッタ電流は、約[Vout−Vbe]/R13であり、ここで、Vbeは、トランジスタQ1(〜0.7ボルト)のベース・エミッタ電圧であり、R13は、抵抗器R13の抵抗である。ベース電流がエミッタまたはコレクタ電流のベータ分の1(180分の1以下)未満であるという事実により、抵抗器R9の影響が無視できることに注意されたい。トランジスタQ1のコレクタ電流は、VCSEL電流と等しく、前述のエミッタ電流の式によって求められたエミッタ電流とほぼ等しい。
【0111】
VBiasは、定電圧ダイオード(2.5V)と、抵抗器R14と抵抗器R12によって構成された分圧器とによって決定される。
【0112】
VBiasは、通常、公称光強度またはVCSEL電流を提供するように選択される。
【0113】
いずれの場合も、フィードバックにより、光強度は、温度と構成要素の変動(例えば、エージング)の間ずっと一定のままになる。
【0114】
また、マルチモードVCSELが、温度が変化している間ずっと予測できないビーム形状を有してもよいことを理解されたい。これにより、位置を補間するために直交位相信号の非線形振幅およびオフセット・ドリフトが使用されることがある。したがって、従来の装置は、VCSELを実装する際に著しい困難を有することになり、VCSELがエンコーダに役立つようにするめに利得とオフセットの動的調整を実施しなければならない。
【0115】
以下に、利得とオフセットの動的調整の一例を説明する。以下の考察が、単一エンコーダ読取りヘッドについて述べるが、複数の読取りヘッドを有するシステムに動的調整方法を採用できることを理解されよう。
【0116】
図56は、利得とオフセットの動的調整の少なくとも1つの実施形態を示す図である。図56に見られるように、1000で、読取りヘッドによって生データが取得される。1002で、この生データを、粗カウント1010、第1の細カウント1012および第2の細カウント1014にパースすることができる。細カウント1012,1014が、細カウントの2つのチャネルを表わすことを理解されよう。
【0117】
要するに、動的調整は、データ検証プレフィルタリング1020、最大/最小移動平均フィルタリング1030、および値補正1040,1050の3つの異なる工程段階を有する。1002で、データがパースされた後、1020で、細カウントがプレフィルタリングされる。プレフィルタリングは、データセットにおいて3つの最大サンプルと3つの最小サンプルを取得するために使用される。少なくとも1つの実施形態では、最大および最小データのしきい値が使用される。例えば、50%のしきい値や他の適切な値を使用することができる。
【0118】
図57A、図57Bは、データセットにおいて3つの最大サンプルと3つの最小サンプルを取得するための方法の少なくとも1つの実施形態を示す。
【0119】
1300で、最初に、細カウントが正かどうかが評価される。細カウントが正である場合、それは最大値の候補である。細カウントが負である場合、それは最小値の候補である。正と負の両方のためのアレイがある。最大値はMaxValue(0)、MaxValue(1)、MaxValue(2)であり、MaxValue(0)が最も高い。同様に、最小値はMinValue(0)、MinValue(1)、MinValue(2)であり、MinValue(0)が最も小さい。
【0120】
段階1302で、細カウントは、MaxValue(0)と比較される。細カウントがMaxValue(0)より大きい場合は、その細カウントが新しいMaxValue(0)になり、他の要素が再配列される(段階1304を参照)。他の状況では、段階1306で、細カウントが、MaxValue(1)と比較される。細カウントが、MaxValue(1)より大きい場合、細カウントが新しいMaxValue(1)になり、それにしたがってMaxValue(2)が調整される(段階1308を参照)。他の状況では、段階1310で、細カウントがMaxValue(2)と比較される。細カウントが、MaxValue(2)より大きい場合は、その細カウント値が、新しいMaxValue(2)になる(段階1312を参照)。細カウントが、MaxValueアレイの各値より小さい場合は、細カウントが廃棄される(段階1313を参照)。
【0121】
細カウントが負の場合に、MinValueアレイの各値に類似の方法をとることができることを理解されたい(図57Aの段階1314〜1326を参照)。細カウントが、アレイのうちの1つに記憶されるか廃棄された後で、プレフィルタリングが完了したかどうかが評価される(段階1328を参照)。
【0122】
3つの最大サンプルと3つの最小サンプルを取得した後で、データに選別方法を実行することができる。データが選別検査に合格した場合は、さらに他の計算に使用するために最高(最大)値と最低(最小)値が受け入れられる。各細カウント1012,1014の最大値と最小値が求められることを理解されたい。例えば、選別が満たされた場合、プレフィルタリング1020が、第1の細カウント最大値(maxA)、第1の細カウント最小値(minA)、第2の細カウント最大値(maxB)、第2の細カウント最小値(minB)を戻す。
【0123】
第1の選別方法は、3つの最高値がそれぞれ、それらの中央値の所定の範囲内にあるかどうか判定し、3つの最低値がそれぞれ、それらの中央値の所定の範囲内にあるかどうかを決定することである。
【0124】
例えば、一実施形態では、所定量は1%でよい。したがって、3つの最高値に関して、3つのうちの最低値は、0.99*中央値以上でなければならず、3つのうちの最高値は、0.99*中央値以下でなければならない。同様に、3つの最低値に関して、最高値は、0.99*中央値以下でなければならず、最低値は、1.01*中央値以上でなければならない(3つの最低値が負でなければならないことに注意されたい)。
【0125】
上記の条件が満たされた場合は、第2の選別が実行される。第2の選別は、最大値と最小値が、対応する移動平均フィルタ1030の10%以内にあるかどうかを評価する。この選別は、まず、移動平均フィルタ1030が完全に満たされたと仮定する。例えば、少なくとも1つの実施形態では、移動平均フィルタ1030は、5つのサンプルを含む。以下に、移動平均フィルタ1030をより詳細に説明する。最大値と最小値が選別条件を満たす場合は、その最大値と最小値は、対応する移動平均フィルタに入れられ、最も昔の値は、タップ・レジスタから廃棄される。
【0126】
少なくとも1つの実施形態では、データ取得周期が、約4ミリ秒(250Hzのレート)であり、ローカル・サンプル・レートであることに注意されたい。したがって、約4秒で1000個のサンプルが収集され、移動平均フィルタの更新レートはT=4秒である。
【0127】
プレフィルタリング1020が完了した後で、移動平均フィルタ1030は、新しく求められた最小値と最大値で更新される。図56に、ave_maxA、ave_minA、ave_maxBおよびave_minBとして示された第1の細カウント1012と第2の細カウント1014の最小値と最大値の移動平均フィルタがあることを理解されよう。以下に、移動平均フィルタ1030について説明する。
因果的(M+1 ポイント)移動平均値フィルタ(MAVF)の場合
【数1】
【0128】
遅延(τ)はMT/2(Tはサンプル・レート)であり、5ポイント・フィルタでM=4の場合、τ=2Tである。T=4秒(上記参照)の場合、一実施形態ではフィルタ遅延は8秒である。温度変化は、これよりかなり遅い。
【0129】
MAFが、較正の際に得られた最大値と最小値によって初期化されると仮定する。
【0130】
平均値が再帰的に計算される場合は、計算効率をわずかなに改善することができる。再帰的解法は、以前に計算された値に基づくものである。これを例示するために、以下の開発を検討する。
【0131】
任意の瞬間kにおいて、データ・シーケンスxiの最新n個のサンプルの平均は、次の式によって与えられる。
【数2】
【0132】
これは、k番目ごとの瞬間における平均が最新セットのn個の値に基づくので、移動平均として知られる。換言すると、任意の瞬間で、データ・シーケンスの平均を計算するために、n個の値の移動ウィンドウが使用される。例えば、図58では、それぞれn個の値から成る3つのウィンドウ1100、1102および1103がある。
【0133】
フィルタとして使用されるとき、xk-(以下「xk-」は、xkの上バー(すなわちデータ・シーケンスxiの最新n個のサンプルの平均)を示すものとする)の値は、xkのフィルタ値として得られる。この式は、xk-の値が、基準としてその前の値xk-1-使用して計算されるので、再帰的である。
【0134】
再帰的計算により、1つの除算と1つの加算と1つの減算を実行するだけでよいことが分かる。これは、検討されるデータ・ポイント数(n)に関係なく常に当てはまる。しかしながら、現行のフィルタ値を計算するには、xk-x、すなわち過去の測定のn個の時間ステップの使用を必要とする。
【0135】
プレフィルタリング1020と移動平均フィルタ1030が完了した後、1040でターゲット値と補正率を計算することができ、次に1050でデータ値を補正することができる。
【0136】
最初に、値補正で使用されるいくつかの値を定義し計算する(すなわち、1040で計算を行う)必要がある。
【0137】
ターゲット利得Gcalは、式Gcal=(ave_maxA−ave_minA)/2にしたがって計算される。
【0138】
ターゲット・オフセットOFFSETcalは、式OFFSETcal=(ave_maxA+ave_minA)/2にしたがって計算される。
【0139】
データ・サンプルGAの利得は、式GA=(maxA−minA)/2にしたがって計算される。
【0140】
データ・サンプルOFFSETAのオフセットは、式OFFSETA=(maxA+minA)/2にしたがって計算される。
【0141】
利得補正係数GFAは、式GFA=Gcal/GAにしたがって計算される。
【0142】
オフセット補正係数ΔOFFAは、式OFFA=OFFSETcal−OFFSETAにしたがって計算される。
【0143】
1040からこれらの計算値を使用することにより、値補正1050で、次の式にしたがって第1の細カウント1012値を補正することができる。
CFCA=(GFA*FCA)+ΔOFFA
ここで、FCAは細カウント1012であり、CFCAは、細カウント1012の補正細カウントである。可能な代替の実施形態では、オフセットを最初に加算した後で利得補正係数を乗算してもよい(すなわち、CFCA=GFA*(FCA+ΔOFFA)。
【0144】
上記の式は、第1の細カウント1012を指すが、第2の細カウント1014に同じ計算を実行できることは容易に理解されるであろう。さらに、複数の読取りヘッドの第1と第2の細カウントに同じ計算を構成できることを理解するであろう
【0145】
補正された細カウントを計算した後で、粗カウントを補正することができる。細カウントのオフセットが、量子化直交位相信号の誤差の原因になる可能性があるため、粗カウントの補正が必要である。
【0146】
例えば、図59〜図60は、直交位相信号を構成する信号1200,1202を示す。図59は、正DCオフセットがある場合に、高パルスが間違って拡大され、低パルスが間違って短縮されることを示す。換言すると、測定で領域1204内の値が戻される場合、低カウントの代わりに高カウントとして間違って登録する。したがって、読取りヘッドの粗カウントは、間違った状態を示す。
【0147】
図60は、この逆を示し、すなわち、負DCオフセットがある場合に、高パルスが間違って短縮され、低いパルスが間違って拡大される。換言すると、測定で領域1206内の値が戻される場合、高カウントの代わりに低カウントとして間違って登録する。したがって、読取りヘッドの粗カウントは、間違った状態を示す。
【0148】
粗カウントのこの誤差を補正するために、最初に、次のように量子化演算子Q(x)を定義する必要がある。
Q(x)=0 (x<0の場合)
Q(x)=1 (x≧1の場合)
【0149】
上で計算された補正細カウントCFCAは、ΔOFFAに関して対称的でなければならず、補正された細カウントCFCBは、ΔOFFBに関して対称的でなければならない。したがって、以下の式が成り立つ。
Q(CFCA−ΔOFFA)=0 (CFCA<ΔOFFAの場合)
Q(CFCA−ΔOFFA)=1 (CFCA≧ΔOFFAの場合)
【0150】
補正細カウントから、補正状態対{A’,B’}(すなわち、グレイコード値)を以下のように計算することができる。
{A’,B’}={Q(CFCA−ΔOFFA);Q(CFCB−ΔOFFB)}。
【0151】
補正状態対は、粗カウントによって示された非補償状態対{A、B}および基準状態(1,1)(論理的に(H,H))と比較することができる。この比較の結果により、粗カウントを−1,0,1によって調整することができる。補正された粗カウントと細カウントを再構成して角度計算モジュールに渡すことができる。
【0152】
したがって、利得とオフセットを動的に調整することができ、マルチモードVSCELレーザとより単純な格子パターンの使用が可能になる。さらに、この構造と動的調整方法により、より高次の回折次数(+/−1を越える)を排除するために従来の装置で必要とされた空間フィルタが不要になる。代わりに、動的に調整されたパラメータが、温度変化全体にわたるDCオフセットを考慮する。これは、製造がより単純になり製造コストが削減されるので、従来の装置より大幅に優れた利点である。
【0153】
以上の考察は、角度エンコーダに関するものであるが、直線エンコーダにも類似の概念を容易に適用できることに注意されたい。例えば、エンコーダ・ディスクの代わりに、回折格子を有するエンコーダ・スケールを使用することができ、またエンコーダ・スケール上に相補的インデックス・トラック(すなわち、反射インデックス・マークを有するものと、非反射インデックス・マークを有するもの)を提供することができ、このエンコーダ・スケールは、回折格子の一方の側に設けられるか、回折格子を挟むために回折格子の両側に設けられる。角度インデックス座標と対照的に、線形インデックス座標にインデックス・マークを位置決めすることができる。
【0154】
以上の説明は、本発明の特定の実施形態を参照したが、その趣旨から逸脱することなく多くの修正を行うことができることを理解されよう。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の意図と趣旨の範囲内にあるような修正を対象として含むものである。
【0155】
したがって、本明細書に開示された実施形態は、すべての点で制限ではなく例示と見なされるべきであり、本発明の範囲は、以上の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、したがって、特許請求の等価物の意味と範囲内にあるすべての変更が受け入れられる。
【符号の説明】
【0156】
10 エンコーダ・ディスク、12 信号トラック、14 インデックス・マーク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学エンコーダの利得とオフセットを動的に調整する方法に関する。本出願は、2008年8月28日に出願された米国仮出願第61/092,478号、および2009年7月10日に出願された米国仮出願第61/224,657号の優先権を請求し、これらの各出願の内容全体が、ここに援用される。
【背景技術】
【0002】
角変位を測定するための多数の装置が開示されている。典型的な装置は、回折光の干渉縞パターンのずれの検出を利用することが多い。
【0003】
特許文献1には、光源から回折格子上に放射されて様々な回折次数の回折光を生成し明るい縞と暗い縞の検出を可能にする光が開示されている。縞の移動の直接検出によって動きが測定される。
【0004】
特許文献2には、あらかじめ選択された波長を有する光を正と負の一次回折に集束し、同時に0次回折光を最小する格子が開示されている。回折された次数の光は、多相検出器板に当たる。
【0005】
特許文献3には、あらかじめ選択された波長を正と負の一次回折に集束する格子が開示されている。多相周期検出器は、スケールから離間されたその検出平面を、回折光の方向を変更することなく各検出器要素が正と負の一次回折に対応する場所に有する。
【0006】
特許文献4では、光線を可動スケール上に斜めに導く点光源を使用する。モアレ干渉帯を形成するためにロンチ格子などの光学構成要素と交差する回折ビームが生成される。光検出器群のアレイが、モアレ・パターンの帯を遮りかつスケールの変位を示すように電子処理された信号を放射するよう、位置決めされる。
【0007】
特許文献5は、光学格子と光学素子を含むスケールと、基板上に共に配置された光源と検出器アレイを含むセンサ・ヘッドとを含み、スケールは、センサ・ヘッドの反対側に配置され、センサ・ヘッドに対して移動するように配置される。スケールと、スケールに最も近いトールボット撮像面との間の距離は、dである。センサ・ヘッドは、第1の平面と第2の平面により画定された領域内に配置され、第1の平面は、n×dとd×xを加えたものと実質的に等しい距離だけスケールから離間され、第2の平面は、n×dからd×xを引いたものと実質的に等しい距離だけスケールから離間され、ここで、nは整数であり、xは2分の1以下である。光源は、発散光ビームを放射し、発散光ビームはスケールの方に導かれ、発散光ビームからの光は、格子によって検出器アレイの方に回折される。スケールとセンサ・ヘッドの間にはマスクが配置され、このマスクは開口を画定し、センサ・ヘッドに対して実質的に固定されたままであり、開口は、回折された5次ビームが検出器アレイに達するのを実質的に防ぐようにサイズと位置が決められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,355,220号明細書
【特許文献2】米国特許第5,486,923号明細書
【特許文献3】米国特許第5,559,600号明細書
【特許文献4】米国特許第5,909,283号明細書
【特許文献5】米国特許第7,002,137号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの装置には高い精度がしばしば必要とされ、例えば、ミクロンレベルの精度がしばしば必要とされる。多くの従来装置には、その精度、信頼性、較正、および大量生産し易さを制限する問題があり、また、一般に、そのような微細な分解能が必要とされるときは高価になる。経費は、ある程度、それらの部品を互いに正確な位置に組み立てる要件による。したがって、安価に大量生産できるきわめて正確で信頼性の高い光学エンコーダが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
光学エンコーダの一実施形態は、エンコーダ・ディスク、エンコーダ・ディスクに光を導くように構成された照明システム、およびエンコーダ・ディスクから回折された光を検出するように構成された検出器を含むことができる。エンコーダ・ディスクは、エンコーダ・ディスク上にリングとして形成された回折格子を有する信号トラックと、反射インデックス・マークを有するインデックス・トラックとを備えることができ、インデックス・マークの幅は、回折格子のピッチより大きい。
【0011】
光学エンコーダで使用されるエンコーダ・ディスクの一実施形態は、エンコーダ・ディスク上にリングとして形成された回折格子を有する信号トラックと、反射インデックス・マークを有するインデックス・トラックとを備えることができ、インデックス・マークの幅は、回折格子のピッチより大きい。
【0012】
光学エンコーダと共に使用するためのインデクシング方法の一実施形態は、エンコーダ・ディスクを提供する段階と、光をエンコーダ・ディスクに導くように構成された照明システムを提供する段階と、エンコーダ・ディスクから回折された光を検出するように構成された検出器を提供する段階と、インデックス・パルスの立ち上がり端からインデックス期間の中央までの直交位相状態の推定状態カウントkestを計算する段階と、kestにおける直交位相状態でありかつインデックス・パルスのほぼ中心における直交位相状態に対応するQkestを計算する段階と、オフセット補正を決定する段階とを含む。エンコーダ・ディスクは、エンコーダ・ディスク上にリングとして形成された回折格子を有する信号トラックと、エンコーダ・ディスク上にリングとして形成されたインデックス・トラックを備え、インデックス・トラックは、インデックス角度座標で提供されたインデックス・マークを有する。検出器は、信号トラックから回折された光を検出しかつ直交位相信号を出力するように構成された2つのオフセット検出器と、インデックス・トラックから反射された光を検出しかつインデックス・パルスを出力するように構成された1つのインデックス検出器とを含むことができる。
【0013】
光学エンコーダの利得とオフセットを動的に調整する方法の一実施形態は、回折格子を有するエンコーダ・ディスクを提供する段階と、エンコーダ・ディスクに光を照射する段階と、回折格子から回折された光を検出し第1の細カウント・チャネルを出力するように構成された検出器を提供する段階と、第1の細カウント・チャネルの第1のターゲット利得と第1のターゲット・オフセットを計算する段階と、第1のターゲット・オフセットと第1のターゲット利得に基づいて、第1の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに補正を適用する段階とを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】エンコーダ・ディスクの一実施形態の図である。
【図2】少なくとも1つの実施形態による二重直交位相信号とインデックス信号の相対位置を示す図である。
【図3】少なくとも1つの実施形態による二重直交位相信号とインデックス信号の相対位置を示す図である。
【図4】少なくとも1つの実施形態による二重直交位相信号、ゲート制御インデックス信号および非ゲート制御インデックス信号の相対位置を示す図である。
【図5A】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダ・ディスクの図である。
【図5B】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダ・ディスクの一部分の拡大図である。
【図6】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダ・ディスクの図である。
【図7】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダ・ディスクの一部分と種々の検出器の図である。
【図8A】少なくとも1つの実施形態によるインデックス・トラックと検出器の相対位置を示す図である。
【図8B】少なくとも1つの実施形態によるインデックス・トラックによって生成された信号を示すグラフである。
【図9】少なくとも1つの実施形態による種々の信号を示すグラフである。
【図10】少なくとも1つの実施形態による比較器の回路図である。
【図11】少なくとも1つの実施形態による様々な直交位相状態を示す図である。
【図12A】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図12B】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図13A】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図13B】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図13C】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図14】少なくとも1つの実施形態によるインデクシング・アルゴリズムを説明する図表である。
【図15】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダ・ディスクからの光反射を示す図である。
【図16】少なくとも1つの実施形態によるインデックス信号への光反射の影響を示す線図である。
【図17】少なくとも1つの実施形態による片面が黒く塗られたエンコーダ・ディスクの前面の写真である。
【図18】少なくとも1つの実施形態による片面が黒く塗られたエンコーダ・ディスクの前面の写真である。
【図19】少なくとも1つの実施形態による片面が黒く塗られたエンコーダ・ディスクの後面の写真である。
【図20】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの種々のビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図21】マルチモードVCSELの電流とビーム・プロファイルの関係を示すグラフである。
【図22】少なくとも1つの実施形態によるエンコーダの回折パターンを示す図である。
【図23】ガウスビーム・プロファイルを示す三次元グラフである。
【図24】ガウスビーム・プロファイルを示す表示である。
【図25】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELのビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図26】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELのビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図27】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELのビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図28】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELのビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図29】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの種々のビーム・プロファイルを示す図である。
【図30】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの種々のビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図31】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの種々のビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図32】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELのビーム・プロファイルを示す表示である。
【図33】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの電流とビーム・プロファイル間の関係を示すグラフである。
【図34】ガウスビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図35】ガウスビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図36】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの非ガウスビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図37】少なくとも1つの実施形態によるマルチモードVCSELの非ガウスビーム・プロファイルを示すグラフである。
【図38】少なくとも1つの実施形態によるVCSEL出力制御回路の回路図である。
【図39】少なくとも1つの実施形態によるVCSEL出力制御回路の回路図である。
【図40】VCSELの図である。
【図41】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図42】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図43】利得修正前の直交位相チャネルの出力のリサージュ・パターンである。
【図44】読取りヘッド較正に関するデータを示すグラフである。
【図45】利得修正後の直交位相チャネルの出力のリサージュ・パターンである。
【図46】読取りヘッド較正に関するデータを示すグラフである。
【図47】2クロム層エンコーダ・ディスクからの出力を示すグラフである。
【図48】2クロム層エンコーダ・ディスクからの出力を示すグラフである。
【図49】2クロム層エンコーダ・ディスクからの出力を示すグラフである。
【図50】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図51】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図52】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図53】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図54】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図55】2クロム層エンコーダ・ディスクの図である。
【図56】動的パラメータ調整方法を示す図である。
【図57A】プレフィルタリング方法を示すフローチャートである。
【図57B】プレフィルタリング方法を示すフローチャートである。
【図58】移動平均フィルタの種々のウィンドウを示す図である。
【図59】正DCオフセットの直交位相状態の誤差を示す図である。
【図60】負DCオフセットの直交位相状態の誤差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、例示であり限定ではない添付図面を参照して、類似の要素がいくつかの図で同様に番号付けされた実施形態を単なる例として説明する。
【0016】
図1に見られるように、信号トラック12などの線トラックを円形ガラス片の外側部分に沿って配置することにより、エンコーダ・ディスク10を構成することができる。光が当てられたとき、信号トラック12の線が交互の明/暗パターンを作り出す。ディスク・カウントが、ディスク1回転当たりの明/暗対の数を指す。ピッチが、信号トラック12の各マークまたは線間の距離を指す。
【0017】
図2に見られるように、線がオフセット検出器(1/4ピッチ・オフセット)によって処理されるときに、一般に直交位相信号対(すなわち、第1の直交位相信号(CH A)20と第2の直交位相信号(CH B)22)と呼ばれる2つの出力を生成することができる。また、信号20と信号22の組み合わされた対が、一般に直交位相信号と呼ばれ、また1つの直交位相信号が1対の位相シフト信号を含むことを理解されたい。
【0018】
さらに図1に見られるように、通常、従来のエンコーダ・ディスク12に、ディスク上の特定の(絶対的)位置を識別するための第2のマークが追加される。インデックス・マーク14は、そのようなマークの例である。
【0019】
CH A20とCH B22の直交位相関係から、例えばアップ/ダウンカウンタや他の任意の適切な手段によって、回転の向きと大きさを決定することができる。インデックス・マーク14は、基準位置「0」を提供することができる。図3は、第1の直交位相信号20及び第2の直交位相信号22と比較したインデックス信号24を示す。
【0020】
直交位相エンコーダは、ゲート制御された形態とゲート制御されない形態の2つの形態になることができる。図4は、様々なゲート制御タイプによる異なるインデックス信号の例を示す。例えば、ゲート制御インデックス信号26は、第1の直交位相信号20と第2の直交位相信号22の積によってゲート制御される。別の例は、第1の直交位相信号のみでゲート制御されたゲート制御インデックス信号27である。第3の可能な例は、非ゲート制御インデックス信号28である。
【0021】
インデックス・パルスを生成するには2つの方法がある。1つの方法は、きわめて幅の狭いインデックス・マークから反射または狭いインデックス・スリットによる透過と、その後の光検出器を使用する。比較器が、調整された検知器信号の後に配置され、光強度があるしきい値を超えたときにトグルする。
【0022】
第2の方法は、回折を使用する。インデックス・マークは、異なるピッチの一連の微細な線で作成される。2つ以上の光検出器が、回折次数によって異なる位置に配置される。信号は、加算(または、減算)され比較器に適用される。信号レベルが、あるしきい値を超えたとき、インデックス・パルスが生成される。両方の方法は、反射または回折領域が小さいため厳密な位置合わせを必要とする。
【0023】
図5A、図5Bおよび図6は、エンコーダ・ディスクの一実施形態を示す。例えば、図5Bと図6に見られるように、エンコーダ・ディスク30が、エンコーダ・ディスク30上にリングとして形成された回折格子の信号トラック32を有してもよい。信号トラックは、交互になった反射部分と非反射部分によって構成されてもよい。例えば、信号トラックの非反射部分は、均一の黒色塗料の塗装や他の適切な方法などにより、黒色化または暗色化されたガラスによって構成されてもよい。非反射という用語は、表面が必ずしも反射率0%でなくてもよいことを理解されよう。例えば、少なくともいくつかの実施形態では、非反射面は、5%または別の適切な値の反射率のような低反射率を有することができる。
【0024】
1つの可能な代替として、反射部分と非反射部分は、一方の層が吸収性で他方の層は反射性の2つのクロム層を使用して実施されてもよい。図41と図42は、2つのクロム層を使用するエンコーダ・ディスク400の一実施形態を示す。図41は、エンコーダ・ディスク400が、基板402、低反射クロム層404および高反射クロム層406を有することを示す。高反射クロム層406は、低反射クロム層404上に付着される。高反射クロム層406は、高反射クロム層406が付着された後で低反射部分404の一部分が見えたままになるようなパターンで形成されてもよい。例えば、高反射クロム層406は、エンコーダ・ディスク上に信号トラックとインデックス・トラックを形成するパターンで形成されてもよい。
【0025】
低反射クロム層404は、例えばクロム酸化物や別の適切な材料で作成されてもよく、少なくとも1つの実施形態では空気側で5%の反射率を有してもよい。さらに、少なくとも1つの実施形態では、高反射クロム層は、空気側で65%、ガラス側で59%の反射率を有してもよい。2つのクロム層を有するエンコーダの動作については、本明細書でさらに詳しく検討される。
【0026】
エンコーダ・ディスク30は、半径方向、すなわちエンコーダ・ディスク30の外縁の方向に、信号トラック34の外側に位置決めされた外側インデックス・トラック34を含んでもよい。図5Bと図6に示された実施形態では、外側インデックス・トラック34は、エンコーダ・ディスクのインデックス角度座標に配置された反射外側インデックス・マーク35を除き非反射性である。インデックス角度座標は、円周方向の任意の「ゼロ」基準点でよい。
【0027】
エンコーダ・ディスク30は、エンコーダ・ディスク30上でリングとして形成された内側インデックス・トラック36を含むこともできる。内側インデックス・トラックは、信号トラックの半径方向の内側、すなわちエンコーダ・ディスク30の中心に近い方に形成することができる。図5Bと図6に示された実施形態では、内側インデックス・トラックは、反射外側インデックス・マーク35と同じインデックス角度座標に配置された非反射内側インデックス・マーク37を除き反射性である。
【0028】
少なくとも1つの実施形態では、図7と図8Aに見られるように、インデックス・マークの幅は、回折格子のピッチより大きい。
【0029】
図5Bと図6の実施形態は、反射外側インデックス・マーク35を有する非反射外側インデックス・トラック34と非反射内側インデックス・マーク37を有する反射内側インデックス・トラック36を示し、これらの反射部分と非反射部分は、交換することができ、やはり正確な同じ結果を達成できることを理解されよう。例えば、非反射外側インデックス・マークを有する反射外側インデックス・トラックと反射外側インデックス・マークを有する非反射内側インデックス・トラックを備えてもよい。
【0030】
インデックス・トラックの反射部分と非反射部分は、様々な方法で実装することができる。例えば、信号トラックと同じように、エンコーダ・ディスクのガラスを暗色化することによって、インデックス・トラックの非反射部分を形成することができる。
【0031】
代替として、前述のように、吸収クロム層と反射クロム層を使用することもできる。図50〜図55は、2つのクロム層を有するエンコーダ・ディスク400,500の可能な特定の実施形態を示す。図51と図54に見られるように、エンコーダ・ディスク400,500は、前述のエンコーダ・ディスクと同様に構成され、外側インデックス・トラック434,534、外側インデックス・マーク435,535、内側インデックス・トラック436,536、および内側インデックス・マーク437,537を有することができる。前述のエンコーダ・ディスク30と同じように、エンコーダ・ディスク400,500の反射部分と非反射部分は、交換することができ、1つの特定の構成に限定されない。さらに、特定の図面に示された寸法が、示された特定の実施形態を指し、本発明の範囲を決して限定しないことを理解されよう。
【0032】
光検出器を使用して、インデックス・トラックと信号トラックをそれぞれ監視することができる。図7に見られるように、検出器40,41を使用して外側インデックス・トラックと内側インデックス・トラックを検出することができ、信号トラック検出器42を使用して、信号トラックから回折された光を検出することができる。インデックス・パターンが互いに反対なので(すなわち、1つのインデックス・トラックがインデックス角度座標で反射性であり、他のインデックス・トラックが、インデックス角度座標で非反射性である)、検出器40,41からのインデックス出力の共通オフセット・レベルが逆になる。
【0033】
例えば、図8Aは、インデックス角度座標の原点に集束された図を示す。図8Aでは、暗領域(すなわち、34,37)は、非反射性であり、左側に移動している。明領域(すなわち、35,36)は、反射性であり、左から右に移動している。検出器40,41は、インデックス・トラックの上に重ねられて示されている。図8Aは、図5Bと図6に示したものと同じ構成の反射部分と非反射部分を使用する。
【0034】
図8Bは、内側インデックス信号46と外側インデックス信号48の出力を時間の関数として示す。例えば、グラフの左側は、インデックス角度座標が検出器40,41から遠いときの時間期間を表わす。このとき、内側インデックス・トラックは検出器41において反射性であり、したがって、内側インデックス信号46は、図8Bのグラフの左側の方が高い。また、このとき、検出器40において外側インデックス・トラックは非反射性であり、したがって、外側インデックス信号48は、図8Bのグラフの左側の方が低い。
【0035】
図8Aで時間が進みエンコーダ・ディスクが回転するとき、検出器40が見る領域は、非反射性から反射性に移行し、検出器41が見る領域は、反射性から非反射性に移行する。この移行は、図8Bでは、高から低になる内側インデックス信号46と、低から高になる外側インデックス信号47によって表される。内側インデックス信号46と外側インデックス信号47の交点は、エンコーダ・ディスク上のインデックス・マークの「開始」または「終了」を示す。
【0036】
図9は、インデックス・パルス・トレースと信号トラック・トレースを示す表示の一例を示す。例えば、図9のインデックス・パルス80はインデックス・マークを表わす。図9は、さらに、インデックス・パルス80の立ち上がりと立ち下がりは、内側インデックス信号46と外側インデックス信号48の交点44に対応することを示す。
【0037】
図10は、内側インデックス信号と外側インデックス信号を論理インデックス信号に変換するための比較器の一例を示す。例えば、論理インデックス信号は、内側インデックス信号と外側インデックス信号の交点に基づいて高レベルまたは低レベルに移行する。
【0038】
前述のように、回折格子信号トラックは、CH A20やCH B22などの二重直交位相信号を生成することができる。これらの信号は、例えばオフセット検出器を含む検出器42を使用することにより生成することができる。回転の大きさと方向は、例えば、アップ/ダウン・カウンタによって2重直交位相信号を分析することにより決定することができる。インデックスした後で、アップ/ダウンカウンタから絶対位置を決定することもできる。
【0039】
図11に示されたように、4つの可能な直交位相状態60、62、64、66がある。以下の表は、CH A 20とCH B 22の可能な直交位相状態の一覧である。
【表1】
換言すると、直交位相状態は、グレーコード・シーケンスを表わす。前の(異なる)状態から異なる直交位相状態になると、方向に基づいて位置カウンタを増分または減分する。
【0040】
インデクシング操作では、インデックス期間中にいくつかの直交位相状態が存在する。換言すると、インデックス・トラック上のインデックス・マークは、インデックス・トラックが進行することによりいくつかの直交位相状態を経て進行するように十分に大きくてもよい。
【0041】
例えば、Kを直交位相状態の数とする。最適なターゲット・インデックス状態は、インデックス・パルス72またはインデックス期間の中心に最も近い直交位相状態である。所定の方向(+/−、CCW(半時計回り)/CW(時計回り))で、最適ターゲット状態は、K/2(Kが偶数の場合)または(K+1)/2(Kが奇数の場合)である。図12Aでは、例えば、K=10であり、最適ターゲット状態70が、直交位相状態5に位置決めされる。「最適」状態は、Kが奇数のときにCW回転とCCW回転で同一であり、Kが偶数のときに1つの直交位相状態だけ異なることに注意されたい(例えば、図12Bを参照)。この状況については、後でより詳細に述べる。
【0042】
ターゲット状態をできるだけインデックス期間72の中間近くに選択することにより(また、偶数カウントを補償することにより)、どちらの回転方向が使用されても関係なく選択された状態を一貫して誤差なしに求めることができることが分かる。さらに、これは、インデックス期間72の幅の変化による影響を受けない。
【0043】
インデックス期間72は、非対称的(すなわち、一方向)にシフトされてもよく、対称的(すなわち、インデックス中心点に関して拡張方向または収縮方向)にシフトされてもよい。重ね合せにより、2つの組み合わせを有することができるが、非対称特性と対称特性を個々に検査することによって誤差を考慮することができる。さらに、インデックス・パルス72の立ち下がりにヒステリシスを適用することにより、曖昧性が1直交位相状態に減少する。
【0044】
非対称誤差
非対称誤差には2つの原因がある。第1の原因は、読取りヘッド位置の変化によるものであり、第2の原因は、直交位相状態とインデックス・パルス遷移を同時に変化させる曖昧性(ノイズと遅延によって生じる)によるものである。
【0045】
第1の原因は考慮しなくてもよい。移動する読取りヘッドは、高精度エンコーダを実現不可能にする。これは、設計によって除去しなければならない。
【0046】
第2の非対称誤差の原因は、2つの要素を有する。単一エッジが生じる場合、1/2カウント誤差(1/2直交位相状態)が達成される。第2の要素は、最悪ケースの状態となり、遷移の曖昧さが両端で同じ方向(異なる方向が対称的シフトを構成する)に生じる場合に存在する。しかしながら、CCW方向とCW方向の両方の移動を考慮するとき、これは、両方の推定値間の2つのカウント(または、直交位相状態)の差になる場合がある。これは、どちらの状態が適正であるか曖昧なので望ましくない。ヒステリシスは、この誤差原因の解決策を提供する。
【0047】
インデックス(両方向に真)の端に適用されるヒステリシスの1/2直交位相状態を追加することにより、2エッジ曖昧性が除去され、CCW推定値とCW推定値との差が1カウント(直交位相)状態に減少する。図13A、図13Bおよび図13Cを参照されたい。実質的に、推定値はより近くなる。
【0048】
したがって、「ターゲット」推定値と新しく計算されたターゲット推定値の間には、多くても1つのカウントまたは1つの直交位相状態の差しかない。直交位相状態の検査から、真のターゲットの位置が明らかになる。
【0049】
対称誤差
インデックス期間が拡大または収縮するとき、追加の誤差は導入されない。移動中、前述のように単一カウント非対称誤差しか生じることがない。偶数カウント間隔を補正するとき、CCW/CW両方の動きに1つの状態を選択するターゲット選択方式が使用される。
【0050】
誤差補正
前述のように、K/2または(K+1)/2から確立された状態と後の評価との間には、多くても1つのカウント/状態誤差しか見つからない。較正中に到達したターゲット・オフセット方向(選択状態)を知ることにより、オフセット(インデックス・ターゲットでの実際のカウントと所望のカウントとの差)を作成するためにターゲット・カウントに加えられる補正率を作成することができる。現在のカウントからオフセットが減算されて、絶対インデックス位置が提供される。
【0051】
以下の定義は、誤差補正アルゴリズムを説明する際に使用され、図14を参照されたい。
P_Counti=位置iにおける位置カウンタ値。
P_Count^indexは、インデックス・パルスの立ち上がり端における位置カウントである。
K=インデックス・パルスの始めから終わりまでの直交位相カウント。これは、常に正である(すなわち、方向と関係なく)。
Dir=0(この方向のP_Count増分)または1(この方向のP_Count減分)。これは、インデックス・シーケンスによる回転運動方向を示すフラグである。Dirの例は、CCWでは0、CWでは1である。
kest=インデックス立ち上がり端からターゲット状態までの直交位相状態の数の推定値。
これは、インデックス・パルスの立ち上がり端からインデックス期間の中間までの状態カウントである。
ktarget=インデックス・パルスの立ち上がり端からターゲット状態までの実際の状態カウント。
Qi=位置iにおける直交位相状態(グレイコード)。
Qtarget=インデックス参照用のターゲット状態におけるグレイコード。
【0052】
以下では、1/2状態ヒステリシスが使用されると想定する。ターゲット状態(Qtarget)が与えらた場合、4つの変数から基準点を確立することができる。これらの変数を使用して基準点を調整する方法は、インデックス・アルゴリズムと呼ばれる。
【0053】
ターゲット状態が定義されていない場合は、インデックス・アルゴリズムを両方向に実行しなければならない。各パスからの出力が評価され、Qtargetが選択される。これについては後で説明される。
【0054】
これは、ターゲット有効(TV)フラグが存在することを意味する。当面は、Qtargetが定義されていないときはTV=0であり、定義されたときはTV=1であると仮定する。
【0055】
インデックス・アルゴリズムでは以下の変数が使用される。
1.インデックスの始まり(インデックス・パルスの立ち上がり端)での位置カウンタ値。
2.回転方向。(位置カウンタがインデックス期間により増大するかまたは減少するか)。
3.インデックスの始まりにおける直交位相状態のグレイコード。
4.インデックス期間での直交位相状態の総数。
【0056】
TV=0の場合
Qtargetは、インデクサ・アルゴリズムを両方向に実行することによって確立される。各方向からのアルゴリズム出力(Qkest+とQkest-)が比較される。等しい場合に、そのアルゴリズム出力がターゲット状態になる。アルゴリズム出力が1状態だけ異なる場合は、常にQkest+=Qkest-となる(逆も許容可能である)。一貫した手法が最良である。Qkest+とQkest-が2状態以上異なる場合は、ハードウェア障害が存在する。
【0057】
TV=1の場合
アルゴリズムは、ktarget(インデックス開始からターゲット状態(Qtarget)までの状態の数)を計算する。Qtargetが最良状態(インデックス期間の中心に最も近い)であることに注意されたい。
【0058】
ktargetが決定された後で、以下のように基準計算(ゼロ位置)が計算される(次の定義の節を参照)。
正方向の場合
P_Countnew=P_Countcurrent−[P_Count^index+(ktarget−1)] 式1
ktarget(−1 term)への調整は、インデックス開始イベントでkカウンタが1から始まるからであることに注意されたい。
負方向の場合
P_Countnew=P_Countcurrent−[P_Count^index−(ktarget−1)] 式2
ktarget(−1 term)への調整は、インデックス開始イベントでkカウンタが1から始まるからであることに注意されたい。これは、正回転の場合と同じである。
位相:
Cal_Phase − CCWとCWの両方の方向を使用してターゲット・インデックス状態を決定する。
工場設定。インデクシング・アルゴリズムが使用される。
Index_Phasedir−基準点を見つける。インデクシング・アルゴリズムが使用される。
Zero_Phase−P_Counttarget=0(ターゲット位置)となるように補正を計算し適用する
絶対エンコーダ・モードに入る。
インデクシング・アルゴリズム:
目的は、正(CCW)または負(CW)のエンコーダ回転のインデックス基準点を見つけることである。
入力:QtargetとTV
出力:ktarget
変数:P_Count^index、Q^index、K、およびDir。
ステップ1
kestの決定
kest=K/2(Kが偶数の場合)または(K+1)/2(Kが奇数の場合) 式3
【0059】
以下のようにインデックス・パルスの立ち上がり端で始まる直交位相状態を識別する(これは、モジューロ4パターンを構成する)。
Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10,Q11,Q12
Q1,Q2,Q3,Q0,Q1,Q2,Q3,Q0,Q1,Q2,Q3,Q0,……(合同)
ここで、Q^index=Q1
ステップ2
Qkestの決定
次の式からkestにおける直交位相状態(Qkest)を求めることができる。
Qkest=Q{kest mod 4} 式4
注:モジュロ演算。
0 mod 4=0
1 mod 4=1
2 mod 4=2
3 mod 4=3
4 mod 4=0
5 mod 4=1
6 mod 4=2
Qkestの決定(続き)
kest mod 4=1の場合(例えば、kest=5または9または13…)は、Qkest=Q1である。(図12A、図12B、図13A、図13Bおよび図13Cも参照)。
【0060】
Qは、方向によって割り当てられ、第2の要素(説明を参照)は、インデックス立ち上がり端によってアドレス指定される。生成された表は、オフセット表と呼ばれる。表の下降は正(増分カウント)であり、上昇は負である。これは、回転方向に依存しない。
例1:図13Aを使用する。
負方向Q1=LHの場合 表1(オフセット表の例)
Q3=HL[Q0に最も近いHL]
Q0=LL
Q1=「残り部分=1」状態で常にLH(インデックス始まり)。
Q2=HH
Q3=HL
Q0=LL[Q3に最も近いLL]
K=10または11(赤期間で終わるか青期間で終わるかによる)
それぞれを検討する。
K=10の場合は、kest=10/2=5である。5 mod 4=1
したがって、Q5=LH=Q1
K=11の場合は、kest=(11+1)/2=6である。6 mod 4=2
したがって、Q6=HH=Q2または順方向にQ1から次の状態。
Dirは、表を選択する(実際の順序)。動きが正か負かに関係なく、選択された表内で常に同じように前または後ろに動く。
注:基準のP_Countがないので、そのP_Countを使用してグレイコードを直接推定することができない。
オフセット表の説明
太字は、x mod 4の結果を示す。結果が境界(Q0またはQ3)なる場合、表は、1状態だけ拡張されなければならない(イタリック体。後方(@Q0の場合)/前方(@Q3の場合)−ここで、両方の可能性が示される)。探索は、常に、最も近い隣接値に行なわれる。
インデックスが任意状態(Q1=QC)で生じると仮定する。kest mod 4 −> Q0(QB)でかつターゲット状態がQAの場合は、
表2 拡張付きオフセット表
Q3=QA[最も近いQAからQ0][必要な場合]
Q0=QB−−−−−−−−−^
Q1=QC(インデックス開始)常に「残り=1」状態で。
Q2=QD
Q3=QA
Q0=QB[Q3に最も近いQB][必要な場合]
オフセット=−1
ステップ3
オフセット補正の決定
TV=0の場合、両方向からのQkestが必要とされる。検査するQtargetの等価物がない。生データを使用してターゲット決定を行なう。
各パスからのKを確認しなければならない。|K+−K-|<=2
TV=1の場合、Qtargetが定義される。
Qtarget=Qkestのとき、ktarget=kest
他の状況では、1つの状態カウントを修正するだけでよい(上または下へ)。複数の状態差がある場合、フォルトが生じた。
ktarget=kest+オフセット。ここで、オフセット=+1または−1 式5
オフセット補正の決定(続き)
例2:図13Aを使用する。
Qtarget=LH=オフセット表(表1)内のQ1
表1(繰り返し)
Q0=LL
Q1=LH(インデックス開始)「残り部分=1」状態で常に。
Q2=HH −−−−−−−−−−−−−−−−−^
Q3=HL
K=11、kest=6、およびQkest=HH=Q2の場合
EQ5を使用する。
オフセット=ktarget=−kest−1(オフセット表を推定値からターゲットまで上昇させる)
したがって、ktarget=6−1=5
【0061】
前述の構造と方法は、いくつかの有効な利点を有する。例えば、光学的位置合わせが、きわめて単純になる。読み取りヘッドのエンコーダ・スケールまたは配置上の高精度格子が不要である。さらに、ギャップ幅(すなわち、インデックス・マークの幅)が、従来の装置より大きい。したがって、ギャップ位置の許容範囲は、従来のエンコーダより大きくなる。したがって、全体として、前述の構造と方法は、エンコーダが、従来のエンコーダよりも製造と実装を安価かつ単純にすることができる。
【0062】
さらに、複数の読取りヘッドの設計余裕が改善される。超高精度エンコーダには、2つおよび4つの読取りヘッドが一般的である。ゲート制御式または非ゲート制御式の従来のインデックス法は、すべての読取りヘッドに同時に適用されなければならない。読取りヘッドが互いに厳密に180度(2読取りヘッド)または90度(4読取りヘッド)でありえないという事実があるので、インデックス・パルス内で読取りヘッド位置に差が生じる。各読取りヘッドの中間が斜めにされるので、最良の状態を取ることが困難になる。これと対照的に、前述の構造の一実施形態では、エンコーダは、幅広いインデックス(アーク長320ミクロン、64の直交位相状態)を使用するので、あまり重要ではない。差は、温度ドリフトとエージングに対しても最小化される。
【0063】
また、従来のエンコーダでは、インデックス・パルスが5つ以上の直交位相状態を含む場合に、冗長状態を取ることができる。これは、検査され補正されなければならない(通常、ハードウェア、例えば、ケーブル交換によって)。前述の構造と技術は、この種の冗長状態による影響を受けない設計による。
【0064】
さらに、前述の技術と構造を、マルチモード(すなわち、非ガウス)ならびにシングルモード(すなわちガウス)のレーザ・ダイオードと共に使用することができる。装置は、ビーム・プロファイルの影響を受けにくい。VCSELの代わりの光源としてLEDを使用することもできる。光源のこの融通性は、コストを最小にするのに役立つ。マルチモードVCSELおよびLEDは、単純な格子パターンと同じように、シングルモード・ダイオードより安価で信頼性が高くなり得る。
【0065】
また、エンコーダ・スケールの裏面に光学的黒色(すなわち、光吸収材)を塗布することによって、エンコーダ・ディスクからの望ましくない反射を減少させることができることにも注意されたい。代替の実施形態では、光学的黒色材料をエンコーダ・スケールの前面に塗布してもよい。さらに、前述の低反射層と高反射層は、望ましくない反射を減少させることができる。
【0066】
例えば、前述の方法と構造は、直交位相信号格子の両側にある2つの相補的(すなわち、ブール解釈(Boolean interpretation))反射トラックを使用する。インデックス法が、レーザ・ビームの各側で2つの反射経路に依存するので、それらの反射経路は、それぞれの光検出器(2)と一列に並び、それぞれ信号クロスオーバに十分なエネルギーを受け取らなければならない。
【0067】
各インデックス信号の暗レベルが同じ場合は、個々の信号がピーク・トゥ・ピーク・ノイズ・レベルとヒステリシスを加えたものより大きい限り、インデックス期間でのクロスオーバが保証される。
【0068】
インデックス信号対のマーク・チャンネル信号48(すなわち、反射外側インデックス・マークによって生じた信号)は、場合によりDCオフセットを有する可能性がある。換言すると、マーク信号48は、スペース信号46(すなわち、非反射内側インデックス・マーク)の最低レベルと一致していなかった。このDCオフセットには反射112直前にくぼみ110が検出されたので(図15と図16を参照)、これは、エンコーダ・スケールの背面からの反射である疑いがあった。くぼみ110は、マーク・リフレクタが見えるように減少されたエンコーダ・スケールの後ろからの反射よるものである。
【0069】
スケールの裏側が、光学的黒色または均一な黒色塗料(エンコーダ・ディスクの前側に関しては図17と図18、黒く塗られた裏側に関しては図19を参照)で塗られたとき、オフセットは消える。前述の構造によって使用される広い照明および処理領域により、装置は、従来の装置よりも望ましくない反射の影響を受けやすい。エンコーダ・ディスクが使用される組立体内のすべての面を黒色化することにより、リサージュ信号の品質がさらに改善される(リサージュの入力は、直交位相信号の2つのチャネルである)。この技術が従来の装置にも試みられており、リサージュ歪みも改善されている(円形品質の改善)ことに注意されたい。これは、楕円形、ノイズが多い円、歪んだ円(例えば、じゃがいも形)などのリサージュひずみの主原因が反射がであるということを指す。
【0070】
したがって、すべての設計が、反射の減少から利益を得るように思われる。後側(または、前側、格子の外側、もしくはインデックス・リフレクタ)に塗布された光吸収材料、または低反射および高反射層は、読取りヘッドの性能を改善することができる。例えば、鏡面反射が減少するので、インデックス信号の信号対雑音比を改善することができ、またより良好な直交位相信号を得ることができる。
【0071】
また、吸収性被覆または低反射層と高反射層を、照明システムによって放射された光の特定の波長に合わせて最適化できることを理解されよう。
【0072】
また、図17から図19の実施形態が、エンコーダ・ディスク30の中心の透明領域を示すことに注意されたい。この透明領域により、この実施形態のエンコーダをカートリッジに取り付けるためにUV接着剤を塗布することができる。
【0073】
2つのクロム層エンコーダ(図41と図42に示されたエンコーダ400などの)について、エンコーダの性能を評価するために較正と検査を行った。結果を表2にまとめる。表2の左欄は、検査されるエンコーダの通し番号を示し、表2の右欄は、度で測定したエンコーダのシグマである。
【表2】
【0074】
これらの結果が、従来のエンコーダ・ヘッドより少なくとも25%改善されていることに注意されたい。
【0075】
また、図43〜図46は、読取りヘッドの較正データを示す。図43〜図44は、利得修正前のデータを示し、図45〜図46は、利得修正後のデータを示す。図43は、読取りヘッド信号に基づくリサージュ曲線900,902を示す。図44において、線904,906は、読取りヘッド位置の誤差を示す(分かりやすくためにずらされている)。上側の線908は、右回り方向の2つの読取りヘッドの平均位置のプロットである。下側の線910は、左回り方向の2つの読取りヘッドの平均位置のプロットである。中心線912は、両方向からの読取りヘッドの平均位置である。図45は、読取りヘッド信号に基づくリサージュ曲線920,922を示す。図46において、線924,926は、読取りヘッド位置の誤差を示す(分かりやすくするためにずらされている)。上側の線928は、右回り方向の2つの読取りヘッドの平均位置のプロットである。下側の線930は、左回り方向の2つの読取りヘッドの平均位置のプロットである。中心線932は、両方向からの読取りヘッドの平均位置である。
【0076】
図47〜図49は、性能試験で使用される2クロム層エンコーダからの出力を示す。図47〜図49において、線600は、反射インデックス・マークを有するリングを表し、線602は、非反射インデックス・マークを有するリングを表し、線604は、直交位相信号を表す。
【0077】
図47〜図49から、2クロム層構造を使用することにより、反射マークを有する非反射リングと非反射マークを有する反射リングからの暗レベルが、0.35VDCより低く、互いに0.16VDC内で一致したことが分かる。平均では、反射マークを有する非反射リングの暗レベル電圧が、0.16VDCと測定され、非反射マークを有する反射リングの暗レベル電圧は、0.26VDCと測定された。
【0078】
直交位相信号レベルに関して、1クロム層構造では、仕様は、以下の通りである。
正弦波(位相)DCオフセット=1.4+/−0.8VDC
正弦波(位相)AC信号=0.4Vp−p〜2.2Vp−p
ポスト・カートリッジ電子回路の出力仕様は、以下の通りである。
正弦波(位相)DCオフセット(DSPで)=1.67+/−0.3VDC
正弦波(位相)AC信号(DSPで)=0.45〜2.70p−p(標準1.1Vp−p)
【0079】
2クロム層構造では、読取りヘッド伝達関数は、0.8倍に減衰する。必要に応じてカートリッジ基板にゲイン調整を行うことができる。例えば、入力減衰器抵抗値を20kから13kに変更することができる。代替として、利得抵抗器を34.8kから24.9kに変更することにより、計測増幅器利得を2.42から3.0に変更することができる。
【0080】
全体として、エンコーダ・ガラス上の2クロム層構造は、カートリッジ・システムを2通りに改善する。第1に、望ましくない反射が減衰され、従って、DCオフセットを減少させることによりインデックス信号が改善される。第2に、直交位相信号がより一貫し、空間ノイズが減少する。
【0081】
VCSELのビーム・プロファイルがガウス形から非ガウス形に変化するときに、直交位相信号の品質があまり変化しないことも分かった。前述の装置は、マルチモード・レーザ・プロファイルを光強度監視方式により制御することができる。
【0082】
マルチモード・レーザは、低駆動電流でガウス・ビーム・プロファイルを示し、より高いVCSEL電流でラゲール−ガウス{1,0}プロファイル(3D外観は、光強度が中心に向かって低い「クレータ」を有する火山のものと類似している)に変化する(図20を参照。マルチモードVCSELの様々なプロファイル300,302,304,306,308を示す)。図21に見られるように、マルチモードのときにVCSEL電流と共にビーム幅が増大することに注意されたい。例えば、図21では、ビーム・プロファイル310は、電流4mAにおけるビーム・プロファイルであり、ビーム・プロファイル312は、電流6mAにおけるビーム・プロファイルである。
【0083】
前述の直交位相信号は、回折によるエネルギーの広い空間収集により、ガウス・モードでも非ガウス・モードでもあまり歪みがない。
【0084】
実験の際、狭ビームVCSEL(約12度のレーザ・ビーム・ウェスト)を使用してVCSEL電流が減少された。公称バイアス(4.75mA)で、優れた品質のリサージュ円が表示された。これは、本質的にLG{1,0}プロファイルであった。VCSEL電流が4.3mAより低かったので、円が大きくなった(信号強度が増大した)ことが分かった。しかしながら、円品質は同じままである。これは、約3mAまで続き、次に円が収縮し始めた。
【0085】
この現象は、ビーム形状がLGからガウス形に変化したときにエンコーダ・スケールの格子に印加された光学エネルギーの増大によるものであった。交換の際に、VCSEL電流の減少によって直交位相信号強度が増大することに注意されたい。
【0086】
20度以上のウェストを有するほとんどガウス幅広ビームであるVCSELの場合、円品質は良好のままであるが、直交位相信号は、VCSEL電流と共に線形かつ単調に変化する。
【0087】
前述の装置の少なくとも1つの実施形態の場合、VCSEL電流は、狭ビームVCSELが非ガウス領域に十分に入るように調整される。これにより、レーザ出力制御光強度ループを不安定にする非単調モードが回避される。
【0088】
レーザ・ダイオードまたはLED(発光素子)を制御する1つの方法は、定電流源によるものである。この技術は、温度による順方向ダイオード電圧降下への影響を最小にする。場合によって、電流を調整し温度による光学出力ドリフトを補正するために温度検出が使用される。
【0089】
第2の方法は、光学フィードバックを使用して補正する。光強度は、同一パッケージまたは個別光センサ内の個別の光検出器によって測定される。
【0090】
このエンコーダは、更に他の目的を有する第2の方法を使用することが好ましい。マルチモードVCSELの出力調整により、ビーム幅と形状を大幅に変更することができる。この特徴は、空間ひずみによる信号対雑音比を最適化するために使用される。
【0091】
したがって、利点は、サイン/コサインおよびインデックス・チャネルの温度と経年変化によるずれを補正することより大きい。
【0092】
光学エンコーダは、線形または回転ガラス・スケールでの高精度決定を使用する。そのような決定は、光学読取りヘッドとスケール間の相対運動を測定するために使用することができる位置基準を提供する。多くの場合、2つの直交位相正弦波信号が出力される。測定電子回路が、ゼロ交差をカウントし、ゼロ交差間を補間してもよい。
【0093】
このエンコーダは、トールボット・イメージング(Talbot imaging)と呼ばれる非直接イメージング技術に基づく。このタイプのエンコーダは、格子回折次数間の干渉に依存する。トールボット・イメージングの場合、重複する回折次数間の干渉は、スケール決定に類似の擬似画像を生成する。
【0094】
図22は、このエンコーダの回折パターンを示す。所望の情報は、+1回折帯320と−1回折帯322からのものである。しかしながら、Thorburnに譲渡された米国特許第7,002,137号のような空間フィルタを実施するマスクが使用されない。その代わりに、すべての回折次数が、センサ・ヘッドに渡され、次にアルゴリズムによって電子的にフィルタリングされる。
【0095】
レーザ・ダイオード−シングルモードおよびマルチモード・レーザ・ダイオード
シングルモード(TEM00と呼ぶ)レーザは、図23と図24に示されたようなガウス・プロファイル200を有する単一円形スポットを作成する。
【0096】
一方、マルチモード・レーザは、共振領域を示す。種々のピークと谷が生じる可能性がある。例えば、図25〜図28は、マルチモード・レーザの様々な可能なビーム・プロファイル340、342、344および346の三次元図を示す。図29は、様々な可能なビーム・プロファイルの断面350〜357を示す。
【0097】
VCSELビーム・プロファイル
マルチモードVCSELは、通常、ラゲール−ガウス形(LG)プロファイルに基づくパターンを生成する。マルチモードVCSELは、低出力ではガウス・プロファイルを提供し、高い方の出力レベルでは、図30〜図32に見られるようにLG[1,0]が一般的である。例えば、図32は、マルチモード・レーザのビーム・プロファイル360の様々な図を示す。
【0098】
このエンコーダは、図33に示されたような一般的なプロファイル/電流伝達関数(マルチモードのとき)を有するLG[1,0]VCSELを使用することが好ましい。実際のテスト・データは、図34〜図37に見ることができる。例えば、図34と図35は、2.75mAにおけるビーム・プロファイル380を示す。図34の2つの線は、x方向とy方向のプロファイルに対応する。同様に、図36と図37は、4.75mAのビーム・プロファイルを示す。
【0099】
図38は、VCSEL光強度制御回路400の可能な一実施形態を示す。図38に示された実施形態では、抵抗器R14がプログラム可能(すなわち、設定点制御)であることに注意されたい。
【0100】
レーザ・ビーム形状を制御する機能により、性能が最適化される。特定の周波数(モータによる)と実行されるDFT(離散フーリエ変換)でエンコーダを回転させることができる。したがって、光強度設定点を調整して最良の信号/ノイズ(SNR)を得ることができ、また空間高調波歪みが最小にされる。
【0101】
さらに、前述の出力制御は、温度とVCSEL経年変化による直交位相およびインデックス信号ドリフトを補償するのに役立つ。
【0102】
前述のVCSELプロファイル制御は、従来のプロファイル制御より優れたいくつかの利点を有する。
【0103】
例えば、レーザ・ビーム・プロファイルを+/−1回折次数位置の近くでピークにすることによって、一次空間高調波(+/−1回折次数で構成された)より高い次数の空間高調波が減少する。しかしながら、この方法では、望ましくない高調波を遮断するために物理的マスクを使用しなくてもよいことにも注意されたい。その理由は、少なくとも、例えば空間フィルタおよび/またはマスクを使用する代わりにデジタル信号処理(DSP)を使用してもよいからである。換言すると、必要に応じて、5次以上のビームなどのすべての高調波が、検出器に達することができる。これにより、構造が先行技術よりも大幅に単純化する。
【0104】
さらに、マルチモード(すなわち、非ガウス)レーザ・ダイオードは、シングルモード・レーザ・ダイオードより信頼性が高い。マルチモードVCSELの方が処理出力が高いので、構造はより強固である。これと対照的に、シングルモード・チャネルは、共振を減少させるために狭く、電圧応力と静電放電の影響を受けやすい。また、シングルモードの純粋なガウス・ビーム・プロファイルを作成するにはより洗練された技術を使用しなければならないので、マルチモードVCSELを使用することによりコストを最小限に抑えることができる。
【0105】
図39は、VCSEL制御の別の実施形態を示す。例えば、VCSEL構成要素D10は、金属パッケージ、窓(ほこり防御用)、VCSEL300、および光検出器302を含むことができる。レーザ光の一部分は、窓から反射され、光検出器302を励起する。したがって、内部光検出器の電流を監視することによって、透過した光エネルギーの量を求めることができる。
【0106】
図40は、VCSEL300の少なくとも1つの可能な実施形態を示す。しかしながら、本発明は、この特定のVCSELに限定されず、他の適切なVCSEL、LEDまたは他の適切な光源を使用することができる。図40は、また、VCSELの一部として窓301を示す。
【0107】
図39に見られるように、光検出器302からの帰還電流は、抵抗器R7または抵抗器R8と並列の抵抗器R7により電圧(VMON)に変換される。制御ダイナミック・レンジが拡大されるとき、並列組み合わせが使用される。通常、抵抗器R17が取り付けられず、その位置にゼロ・オーム抵抗器が取り付けられたときに並列組み合わせを構成できることに注意されたい。
【0108】
演算増幅器U1とトランジスタQ1は、電流変換器への電圧を生成する。VBiasは、設定値電圧である。演算増幅器U1、トランジスタQ1、キャパシタC4、VCSEL構成要素D10、および抵抗器R7(または、抵抗器R8と並列な抵抗器R7)によって構成された帰還ループは、VMON=VBIASとなるまでレーザ・ダイオード(LD)内の電流を変化させる。すなわち、光強度は、帰還電流*抵抗器R7(または、抵抗器R7および抵抗器R8と並列な抵抗器R7)が、VBiasと等しくなるまで、VCSEL電流を変更することによって調整される。
【0109】
演算増幅器U1は、VMONとVBias間の誤差を増幅する。キャパシタC4は、帯域幅を設定する。演算増幅器U1からの出力電圧(Vout−U1ピン1)は、抵抗器R9を介してトランジスタQ1のベースに印加される。
【0110】
トランジスタQ1のエミッタ電流は、約[Vout−Vbe]/R13であり、ここで、Vbeは、トランジスタQ1(〜0.7ボルト)のベース・エミッタ電圧であり、R13は、抵抗器R13の抵抗である。ベース電流がエミッタまたはコレクタ電流のベータ分の1(180分の1以下)未満であるという事実により、抵抗器R9の影響が無視できることに注意されたい。トランジスタQ1のコレクタ電流は、VCSEL電流と等しく、前述のエミッタ電流の式によって求められたエミッタ電流とほぼ等しい。
【0111】
VBiasは、定電圧ダイオード(2.5V)と、抵抗器R14と抵抗器R12によって構成された分圧器とによって決定される。
【0112】
VBiasは、通常、公称光強度またはVCSEL電流を提供するように選択される。
【0113】
いずれの場合も、フィードバックにより、光強度は、温度と構成要素の変動(例えば、エージング)の間ずっと一定のままになる。
【0114】
また、マルチモードVCSELが、温度が変化している間ずっと予測できないビーム形状を有してもよいことを理解されたい。これにより、位置を補間するために直交位相信号の非線形振幅およびオフセット・ドリフトが使用されることがある。したがって、従来の装置は、VCSELを実装する際に著しい困難を有することになり、VCSELがエンコーダに役立つようにするめに利得とオフセットの動的調整を実施しなければならない。
【0115】
以下に、利得とオフセットの動的調整の一例を説明する。以下の考察が、単一エンコーダ読取りヘッドについて述べるが、複数の読取りヘッドを有するシステムに動的調整方法を採用できることを理解されよう。
【0116】
図56は、利得とオフセットの動的調整の少なくとも1つの実施形態を示す図である。図56に見られるように、1000で、読取りヘッドによって生データが取得される。1002で、この生データを、粗カウント1010、第1の細カウント1012および第2の細カウント1014にパースすることができる。細カウント1012,1014が、細カウントの2つのチャネルを表わすことを理解されよう。
【0117】
要するに、動的調整は、データ検証プレフィルタリング1020、最大/最小移動平均フィルタリング1030、および値補正1040,1050の3つの異なる工程段階を有する。1002で、データがパースされた後、1020で、細カウントがプレフィルタリングされる。プレフィルタリングは、データセットにおいて3つの最大サンプルと3つの最小サンプルを取得するために使用される。少なくとも1つの実施形態では、最大および最小データのしきい値が使用される。例えば、50%のしきい値や他の適切な値を使用することができる。
【0118】
図57A、図57Bは、データセットにおいて3つの最大サンプルと3つの最小サンプルを取得するための方法の少なくとも1つの実施形態を示す。
【0119】
1300で、最初に、細カウントが正かどうかが評価される。細カウントが正である場合、それは最大値の候補である。細カウントが負である場合、それは最小値の候補である。正と負の両方のためのアレイがある。最大値はMaxValue(0)、MaxValue(1)、MaxValue(2)であり、MaxValue(0)が最も高い。同様に、最小値はMinValue(0)、MinValue(1)、MinValue(2)であり、MinValue(0)が最も小さい。
【0120】
段階1302で、細カウントは、MaxValue(0)と比較される。細カウントがMaxValue(0)より大きい場合は、その細カウントが新しいMaxValue(0)になり、他の要素が再配列される(段階1304を参照)。他の状況では、段階1306で、細カウントが、MaxValue(1)と比較される。細カウントが、MaxValue(1)より大きい場合、細カウントが新しいMaxValue(1)になり、それにしたがってMaxValue(2)が調整される(段階1308を参照)。他の状況では、段階1310で、細カウントがMaxValue(2)と比較される。細カウントが、MaxValue(2)より大きい場合は、その細カウント値が、新しいMaxValue(2)になる(段階1312を参照)。細カウントが、MaxValueアレイの各値より小さい場合は、細カウントが廃棄される(段階1313を参照)。
【0121】
細カウントが負の場合に、MinValueアレイの各値に類似の方法をとることができることを理解されたい(図57Aの段階1314〜1326を参照)。細カウントが、アレイのうちの1つに記憶されるか廃棄された後で、プレフィルタリングが完了したかどうかが評価される(段階1328を参照)。
【0122】
3つの最大サンプルと3つの最小サンプルを取得した後で、データに選別方法を実行することができる。データが選別検査に合格した場合は、さらに他の計算に使用するために最高(最大)値と最低(最小)値が受け入れられる。各細カウント1012,1014の最大値と最小値が求められることを理解されたい。例えば、選別が満たされた場合、プレフィルタリング1020が、第1の細カウント最大値(maxA)、第1の細カウント最小値(minA)、第2の細カウント最大値(maxB)、第2の細カウント最小値(minB)を戻す。
【0123】
第1の選別方法は、3つの最高値がそれぞれ、それらの中央値の所定の範囲内にあるかどうか判定し、3つの最低値がそれぞれ、それらの中央値の所定の範囲内にあるかどうかを決定することである。
【0124】
例えば、一実施形態では、所定量は1%でよい。したがって、3つの最高値に関して、3つのうちの最低値は、0.99*中央値以上でなければならず、3つのうちの最高値は、0.99*中央値以下でなければならない。同様に、3つの最低値に関して、最高値は、0.99*中央値以下でなければならず、最低値は、1.01*中央値以上でなければならない(3つの最低値が負でなければならないことに注意されたい)。
【0125】
上記の条件が満たされた場合は、第2の選別が実行される。第2の選別は、最大値と最小値が、対応する移動平均フィルタ1030の10%以内にあるかどうかを評価する。この選別は、まず、移動平均フィルタ1030が完全に満たされたと仮定する。例えば、少なくとも1つの実施形態では、移動平均フィルタ1030は、5つのサンプルを含む。以下に、移動平均フィルタ1030をより詳細に説明する。最大値と最小値が選別条件を満たす場合は、その最大値と最小値は、対応する移動平均フィルタに入れられ、最も昔の値は、タップ・レジスタから廃棄される。
【0126】
少なくとも1つの実施形態では、データ取得周期が、約4ミリ秒(250Hzのレート)であり、ローカル・サンプル・レートであることに注意されたい。したがって、約4秒で1000個のサンプルが収集され、移動平均フィルタの更新レートはT=4秒である。
【0127】
プレフィルタリング1020が完了した後で、移動平均フィルタ1030は、新しく求められた最小値と最大値で更新される。図56に、ave_maxA、ave_minA、ave_maxBおよびave_minBとして示された第1の細カウント1012と第2の細カウント1014の最小値と最大値の移動平均フィルタがあることを理解されよう。以下に、移動平均フィルタ1030について説明する。
因果的(M+1 ポイント)移動平均値フィルタ(MAVF)の場合
【数1】
【0128】
遅延(τ)はMT/2(Tはサンプル・レート)であり、5ポイント・フィルタでM=4の場合、τ=2Tである。T=4秒(上記参照)の場合、一実施形態ではフィルタ遅延は8秒である。温度変化は、これよりかなり遅い。
【0129】
MAFが、較正の際に得られた最大値と最小値によって初期化されると仮定する。
【0130】
平均値が再帰的に計算される場合は、計算効率をわずかなに改善することができる。再帰的解法は、以前に計算された値に基づくものである。これを例示するために、以下の開発を検討する。
【0131】
任意の瞬間kにおいて、データ・シーケンスxiの最新n個のサンプルの平均は、次の式によって与えられる。
【数2】
【0132】
これは、k番目ごとの瞬間における平均が最新セットのn個の値に基づくので、移動平均として知られる。換言すると、任意の瞬間で、データ・シーケンスの平均を計算するために、n個の値の移動ウィンドウが使用される。例えば、図58では、それぞれn個の値から成る3つのウィンドウ1100、1102および1103がある。
【0133】
フィルタとして使用されるとき、xk-(以下「xk-」は、xkの上バー(すなわちデータ・シーケンスxiの最新n個のサンプルの平均)を示すものとする)の値は、xkのフィルタ値として得られる。この式は、xk-の値が、基準としてその前の値xk-1-使用して計算されるので、再帰的である。
【0134】
再帰的計算により、1つの除算と1つの加算と1つの減算を実行するだけでよいことが分かる。これは、検討されるデータ・ポイント数(n)に関係なく常に当てはまる。しかしながら、現行のフィルタ値を計算するには、xk-x、すなわち過去の測定のn個の時間ステップの使用を必要とする。
【0135】
プレフィルタリング1020と移動平均フィルタ1030が完了した後、1040でターゲット値と補正率を計算することができ、次に1050でデータ値を補正することができる。
【0136】
最初に、値補正で使用されるいくつかの値を定義し計算する(すなわち、1040で計算を行う)必要がある。
【0137】
ターゲット利得Gcalは、式Gcal=(ave_maxA−ave_minA)/2にしたがって計算される。
【0138】
ターゲット・オフセットOFFSETcalは、式OFFSETcal=(ave_maxA+ave_minA)/2にしたがって計算される。
【0139】
データ・サンプルGAの利得は、式GA=(maxA−minA)/2にしたがって計算される。
【0140】
データ・サンプルOFFSETAのオフセットは、式OFFSETA=(maxA+minA)/2にしたがって計算される。
【0141】
利得補正係数GFAは、式GFA=Gcal/GAにしたがって計算される。
【0142】
オフセット補正係数ΔOFFAは、式OFFA=OFFSETcal−OFFSETAにしたがって計算される。
【0143】
1040からこれらの計算値を使用することにより、値補正1050で、次の式にしたがって第1の細カウント1012値を補正することができる。
CFCA=(GFA*FCA)+ΔOFFA
ここで、FCAは細カウント1012であり、CFCAは、細カウント1012の補正細カウントである。可能な代替の実施形態では、オフセットを最初に加算した後で利得補正係数を乗算してもよい(すなわち、CFCA=GFA*(FCA+ΔOFFA)。
【0144】
上記の式は、第1の細カウント1012を指すが、第2の細カウント1014に同じ計算を実行できることは容易に理解されるであろう。さらに、複数の読取りヘッドの第1と第2の細カウントに同じ計算を構成できることを理解するであろう
【0145】
補正された細カウントを計算した後で、粗カウントを補正することができる。細カウントのオフセットが、量子化直交位相信号の誤差の原因になる可能性があるため、粗カウントの補正が必要である。
【0146】
例えば、図59〜図60は、直交位相信号を構成する信号1200,1202を示す。図59は、正DCオフセットがある場合に、高パルスが間違って拡大され、低パルスが間違って短縮されることを示す。換言すると、測定で領域1204内の値が戻される場合、低カウントの代わりに高カウントとして間違って登録する。したがって、読取りヘッドの粗カウントは、間違った状態を示す。
【0147】
図60は、この逆を示し、すなわち、負DCオフセットがある場合に、高パルスが間違って短縮され、低いパルスが間違って拡大される。換言すると、測定で領域1206内の値が戻される場合、高カウントの代わりに低カウントとして間違って登録する。したがって、読取りヘッドの粗カウントは、間違った状態を示す。
【0148】
粗カウントのこの誤差を補正するために、最初に、次のように量子化演算子Q(x)を定義する必要がある。
Q(x)=0 (x<0の場合)
Q(x)=1 (x≧1の場合)
【0149】
上で計算された補正細カウントCFCAは、ΔOFFAに関して対称的でなければならず、補正された細カウントCFCBは、ΔOFFBに関して対称的でなければならない。したがって、以下の式が成り立つ。
Q(CFCA−ΔOFFA)=0 (CFCA<ΔOFFAの場合)
Q(CFCA−ΔOFFA)=1 (CFCA≧ΔOFFAの場合)
【0150】
補正細カウントから、補正状態対{A’,B’}(すなわち、グレイコード値)を以下のように計算することができる。
{A’,B’}={Q(CFCA−ΔOFFA);Q(CFCB−ΔOFFB)}。
【0151】
補正状態対は、粗カウントによって示された非補償状態対{A、B}および基準状態(1,1)(論理的に(H,H))と比較することができる。この比較の結果により、粗カウントを−1,0,1によって調整することができる。補正された粗カウントと細カウントを再構成して角度計算モジュールに渡すことができる。
【0152】
したがって、利得とオフセットを動的に調整することができ、マルチモードVSCELレーザとより単純な格子パターンの使用が可能になる。さらに、この構造と動的調整方法により、より高次の回折次数(+/−1を越える)を排除するために従来の装置で必要とされた空間フィルタが不要になる。代わりに、動的に調整されたパラメータが、温度変化全体にわたるDCオフセットを考慮する。これは、製造がより単純になり製造コストが削減されるので、従来の装置より大幅に優れた利点である。
【0153】
以上の考察は、角度エンコーダに関するものであるが、直線エンコーダにも類似の概念を容易に適用できることに注意されたい。例えば、エンコーダ・ディスクの代わりに、回折格子を有するエンコーダ・スケールを使用することができ、またエンコーダ・スケール上に相補的インデックス・トラック(すなわち、反射インデックス・マークを有するものと、非反射インデックス・マークを有するもの)を提供することができ、このエンコーダ・スケールは、回折格子の一方の側に設けられるか、回折格子を挟むために回折格子の両側に設けられる。角度インデックス座標と対照的に、線形インデックス座標にインデックス・マークを位置決めすることができる。
【0154】
以上の説明は、本発明の特定の実施形態を参照したが、その趣旨から逸脱することなく多くの修正を行うことができることを理解されよう。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の意図と趣旨の範囲内にあるような修正を対象として含むものである。
【0155】
したがって、本明細書に開示された実施形態は、すべての点で制限ではなく例示と見なされるべきであり、本発明の範囲は、以上の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、したがって、特許請求の等価物の意味と範囲内にあるすべての変更が受け入れられる。
【符号の説明】
【0156】
10 エンコーダ・ディスク、12 信号トラック、14 インデックス・マーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学エンコーダにおける利得とオフセットを動的に調整する方法であって、
回折格子を含むエンコーダ・ディスクを提供する段階と、
前記エンコーダ・ディスクに光を照射する段階と、
前記回折格子から回折された光を検出しかつ第1の細カウント・チャネルを出力するように構成された検出器を提供する段階と、
前記第1の細カウント・チャネルの第1のターゲット利得と第1のターゲット・オフセットを計算する段階と、
前記第1のターゲット利得と第1のターゲット・オフセットに基づいて、前記第1の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに補正を適用する段階と、
を含み、
ターゲット利得およびオフセットを計算する段階が、
前記第1の細カウント・チャネルからの1組のデータの最小値と最大値を決定する段階と、
前記第1の細カウント・チャネルからの複数の前の組のデータからの前記最小値に基づいて移動平均最小値を計算する段階と、
前記第1の細カウント・チャネルからの前記複数の前の組のデータからの前記最大値に基づいて移動平均最大値を計算する段階と、
Gcalが前記第1のターゲット利得であり、ave_maxAが移動平均最大値であり、ave_minAが移動平均最小値である場合に、前記第1のターゲット利得を式Gcal=(ave_maxA−ave_minA)/2にしたがって計算する段階と、
OFFSETcalが前記第1のターゲット・オフセットである場合に、前記第1のターゲット・オフセットを式OFFSETcal=(ave_maxA+ave_minA)/2にしたがって計算する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに補正を適用する段階が、
maxAが前記データ・サンプルの最大値であり、minAが前記データ・サンプルの最小値である場合に、データ・サンプルの利得GAを式GA=(maxA−minA)/2にしたがって計算する段階と、
式OFFSETA=(maxA+minA)/2にしたがって、前記データ・サンプルのオフセットOFFSETAを計算する段階と、
Gcalが第1のターゲット利得である場合に、利得補正係数GFAを式GFA=Gcal/GAにしたがって計算する段階と、
OFFSETcalが第1のターゲット・オフセットである場合に、オフセット補正係数ΔOFFAを式ΔOFFA=OFFSETcal−OFFSETAにしたがって計算する段階と、
FCAが前記第1の細カウント・チャネルからの生細カウント・データであり、CFCAが前記補正細カウント・データである場合に、細カウントを、式CFCA=(GFA*FCA)+ΔOFFAにしたがって補正する段階とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出器が、第2の細カウント・チャネルを出力するように構成され、
前記第2の細カウント・チャネルの第2のターゲット利得と第2のターゲット・オフセットを計算する段階と、
前記第2のターゲット利得と第2のターゲット・オフセットに基づいて前記第2の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに補正を適用する段階とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出器が、粗カウントを出力するように構成され、前記第1の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータと、前記第2の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに対する補正に基づいて、前記粗カウントに補正を適用する段階をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記粗カウントに補正を適用する段階が、
量子化演算子Q(x)を次のように定義する段階と、
Q(x)=0 (x<0の場合)
Q(x)=1 (x≧0の場合)
補正状態対{A’,B’}を次の式にしたがって計算する段階とを含み、
{A’,B’}={Q(CFCA−ΔOFFA),Q(CFCB−OFFB)}
ここで、CFCAは、前記第1の細カウント・チャネルからサンプリングされた補正データであり、CFCBは、前記第2の細カウント・チャネルからサンプリングされた補正データであり、ΔOFFAは、前記第1の細カウント・チャネルのオフセット補正値であり、ΔOFFBは、前記第2の細カウント・チャネルのオフセット補正値であり、
前記粗カウントを前記補正状態対と比較する段階と、
前記補正状態対と一致するように前記粗カウントを調整する段階とを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複数の検出器が提供され、前記複数の検出器がそれぞれ、前記回折格子から回折された光を検出しかつ第1の細カウント・チャネルを出力するように構成された、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の細カウント・チャネルからの1組のデータの最小値と最大値を決定する段階が、
前記1組のデータの前記3つの最高値と前記3つの最低値を決定する段階と、
前記3つの最高値のどれかが、前記3つの最高値のうちの中央値と所定量より大きく異なる場合、または前記3つの最低値のどれかが、前記3つの最低値のうちの中央値と所定量より大きく異なる場合に、前記最小値と最大値を拒否する段階とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の細カウント・チャネルからの1組のデータの最小値と最大値を決定する前記段階が、
前記最小値が、前記移動平均最小値と所定量より大きく異なる場合、または前記最大値が、前記移動平均最大値と所定量より大きく異なる場合に、前記最小値と最大値を拒否する段階とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
光学エンコーダにおける利得とオフセットを動的に調整する方法であって、
回折格子を含むエンコーダ・ディスクを提供する段階と、
前記エンコーダ・ディスクに光を照射する段階と、
前記回折格子から回折された光を検出しかつ第1の細カウント・チャネルを出力するように構成された検出器を提供する段階と、
前記第1の細カウント・チャネルの第1のターゲット利得と第1のターゲット・オフセットを計算する段階と、
前記第1のターゲット利得と第1のターゲット・オフセットに基づいて、前記第1の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに補正を適用する段階と、
を含み、
ターゲット利得およびオフセットを計算する段階が、
前記第1の細カウント・チャネルからの1組のデータの最小値と最大値を決定する段階と、
前記第1の細カウント・チャネルからの複数の前の組のデータからの前記最小値に基づいて移動平均最小値を計算する段階と、
前記第1の細カウント・チャネルからの前記複数の前の組のデータからの前記最大値に基づいて移動平均最大値を計算する段階と、
Gcalが前記第1のターゲット利得であり、ave_maxAが移動平均最大値であり、ave_minAが移動平均最小値である場合に、前記第1のターゲット利得を式Gcal=(ave_maxA−ave_minA)/2にしたがって計算する段階と、
OFFSETcalが前記第1のターゲット・オフセットである場合に、前記第1のターゲット・オフセットを式OFFSETcal=(ave_maxA+ave_minA)/2にしたがって計算する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに補正を適用する段階が、
maxAが前記データ・サンプルの最大値であり、minAが前記データ・サンプルの最小値である場合に、データ・サンプルの利得GAを式GA=(maxA−minA)/2にしたがって計算する段階と、
式OFFSETA=(maxA+minA)/2にしたがって、前記データ・サンプルのオフセットOFFSETAを計算する段階と、
Gcalが第1のターゲット利得である場合に、利得補正係数GFAを式GFA=Gcal/GAにしたがって計算する段階と、
OFFSETcalが第1のターゲット・オフセットである場合に、オフセット補正係数ΔOFFAを式ΔOFFA=OFFSETcal−OFFSETAにしたがって計算する段階と、
FCAが前記第1の細カウント・チャネルからの生細カウント・データであり、CFCAが前記補正細カウント・データである場合に、細カウントを、式CFCA=(GFA*FCA)+ΔOFFAにしたがって補正する段階とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出器が、第2の細カウント・チャネルを出力するように構成され、
前記第2の細カウント・チャネルの第2のターゲット利得と第2のターゲット・オフセットを計算する段階と、
前記第2のターゲット利得と第2のターゲット・オフセットに基づいて前記第2の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに補正を適用する段階とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出器が、粗カウントを出力するように構成され、前記第1の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータと、前記第2の細カウント・チャネルからサンプリングされたデータに対する補正に基づいて、前記粗カウントに補正を適用する段階をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記粗カウントに補正を適用する段階が、
量子化演算子Q(x)を次のように定義する段階と、
Q(x)=0 (x<0の場合)
Q(x)=1 (x≧0の場合)
補正状態対{A’,B’}を次の式にしたがって計算する段階とを含み、
{A’,B’}={Q(CFCA−ΔOFFA),Q(CFCB−OFFB)}
ここで、CFCAは、前記第1の細カウント・チャネルからサンプリングされた補正データであり、CFCBは、前記第2の細カウント・チャネルからサンプリングされた補正データであり、ΔOFFAは、前記第1の細カウント・チャネルのオフセット補正値であり、ΔOFFBは、前記第2の細カウント・チャネルのオフセット補正値であり、
前記粗カウントを前記補正状態対と比較する段階と、
前記補正状態対と一致するように前記粗カウントを調整する段階とを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複数の検出器が提供され、前記複数の検出器がそれぞれ、前記回折格子から回折された光を検出しかつ第1の細カウント・チャネルを出力するように構成された、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の細カウント・チャネルからの1組のデータの最小値と最大値を決定する段階が、
前記1組のデータの前記3つの最高値と前記3つの最低値を決定する段階と、
前記3つの最高値のどれかが、前記3つの最高値のうちの中央値と所定量より大きく異なる場合、または前記3つの最低値のどれかが、前記3つの最低値のうちの中央値と所定量より大きく異なる場合に、前記最小値と最大値を拒否する段階とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の細カウント・チャネルからの1組のデータの最小値と最大値を決定する前記段階が、
前記最小値が、前記移動平均最小値と所定量より大きく異なる場合、または前記最大値が、前記移動平均最大値と所定量より大きく異なる場合に、前記最小値と最大値を拒否する段階とを含む、請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57A】
【図57B】
【図58】
【図59】
【図60】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57A】
【図57B】
【図58】
【図59】
【図60】
【公開番号】特開2013−54040(P2013−54040A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−274350(P2012−274350)
【出願日】平成24年12月17日(2012.12.17)
【分割の表示】特願2011−525231(P2011−525231)の分割
【原出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(598064510)ファロ テクノロジーズ インコーポレーテッド (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月17日(2012.12.17)
【分割の表示】特願2011−525231(P2011−525231)の分割
【原出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(598064510)ファロ テクノロジーズ インコーポレーテッド (60)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]