説明

光学シート用基材シート及び光学シートの製造方法

【課題】製造コストを抑制することができ、生産性や作業効率が改善された光学シート用基材シートの製造方法、及びそれらの課題を解決することができると同時に優れた光学的機能を発現可能な光学シートの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】透明な基材フィルムとこの基材フィルムの一方の面に積層されたスティッキング防止層を備えた光学シート用基材シートの製造方法であって、Tダイを用いた押出成形法により熱可塑性樹脂からなる基材フィルム押出体を形成する基材フィルム形成工程と、基材フィルム押出体の一方の面に、スティッキング防止層用組成物を積層する積層工程と、基材フィルム押出体及びスティッキング防止層用組成物層の積層体を延伸する延伸工程とを有しており、上記積層工程を上記延伸工程の前に行うことを特徴とする光学シート用基材シート製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に用いられる光学シート用基材シートの製造方法、及びその光学シート用基材シートを含んでなる光学シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶層を背面から照らして発光させるバックライト方式が普及し、液晶層の下面側にエッジライト型、直下型などのバックライトユニットが装備されている。かかるエッジライト型のバックライトユニット50は、基本的には図8(a)に示すように、光源としての線状のランプ51と、ランプ51に端部が沿うように配置される方形板状の導光板52と、導光板52の表面側に配設される各種光学シートとを備えている。かかる光学シートとしては、例えば導光板52の表面側に配設される光拡散シート53や、光拡散シート53の表面側に配設されるプリズムシート54などが該当する。
【0003】
このバックライトユニット50の機能を説明すると、まずランプ51より導光板52に入射した光線は、導光板52裏面の反射ドット又は反射シート(図示していない)で反射され、導光板52の表面から出射される。導光板52から出射した光線は光拡散シート53に入射し、光拡散シート53で拡散され、光拡散シート53表面より出射される。その後、光拡散シート53から出射された光線は、プリズムシート54に入射し、プリズムシート54表面に形成されたプリズム部54aによって略法線方向にピークを示す分布の光線として出射される。
【0004】
このように、ランプ51から出射された光線が、光拡散シート53によって拡散され、またプリズムシート54によって略法線方向にピークを示すように屈折され、さらに表面側の液晶層(図示していない)全面を照明するものである。なお、図示していないが、上述のプリズムシート54の集光特性の緩和やプリズム部54aの保護又は偏光板等の液晶パネルとプリズムシート54とのスティッキングの防止を目的として、プリズムシート54の表面側にさらに光学シートが配設されている。
【0005】
上記バックライトユニット50に備える光拡散シート53としては、一般的には、図8(b)に示したように、透明な基材層55と、バインダー58中に光拡散剤59が分散した光拡散層56と、バインダー60中にビーズ61が分散したスティッキング防止層57とを有するビーズ塗工タイプの光拡散シート(例えば特開平7−5305号公報、特開2000−89007公報等参照)が使用されている。また、ビーズを塗工する代わりに、凹凸形状を有する金型を用いて透明な基材層の表面にその凹凸形状を転写したエンボスタイプの光拡散シート(例えば特開2006−47608号公報、特開2006−335028号公報等参照)も使用されている。これらのタイプの光拡散シートは表面の微細な凹凸形状により光拡散機能が奏される。
【0006】
かかる光拡散シート53は、一般的には、溶融した熱可塑性樹脂をTダイから押出成形する工程と、続いてその押出成形体をフィルム長手方向及びフィルム幅方向に延伸して基材フィルムを形成する工程を行い、次いで、バインダー中にビーズを分散させたスティッキング防止層用組成物を基材フィルムの裏面に積層する工程、及び、バインダー中に光拡散剤を分散させた光拡散層用組成物を基材フィルムの表面に積層する工程を行うことによって製造されている。この手法では、スティッキング防止層用組成物と光拡散層用組成物を予め準備しておき、基材フィルム形成の生産ラインとは別の生産ラインにおいて、それらの組成物を基材フィルムに順次積層する(延伸工程を含む基材フィルム形成の生産ラインと積層の生産ラインとが別個であるためオフライン積層法と呼ばれる)。しかし、このような複数の生産ラインを必要とする光拡散シートの製造方法では製造コストが大きくなり、また製造工程が煩雑となるため生産性や作業効率の点でも不都合が生じている。
【特許文献1】特開平7−5305号公報
【特許文献2】特開2000−89007号公報
【特許文献3】特開2006−47608号公報
【特許文献4】特開2006−335028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、製造コストを抑制することができ、生産性や作業効率が改善された光学シート用基材シートの製造方法、及びそれらの課題を解決することができると同時に優れた光学的機能を発現可能な光学シートの製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
透明な基材フィルムとこの基材フィルムの一方の面に積層されたスティッキング防止層を備えた光学シート用基材シートの製造方法であって、
Tダイを用いた押出成形法により熱可塑性樹脂からなる基材フィルム押出体を形成する基材フィルム形成工程と、
基材フィルム押出体の一方の面に、スティッキング防止層用組成物を積層する積層工程と、
基材フィルム押出体及びスティッキング防止層用組成物層の積層体を延伸する延伸工程と
を有しており、
上記積層工程を上記延伸工程の前に行うことを特徴とする光学シート用基材シートの製造方法である。
【0009】
当該光学シート用基材シート製造方法によれば、基材フィルム押出体及びスティッキング防止層用組成物層の積層体を延伸する延伸工程の前に、基材フィルム押出体の一方の面にスティッキング防止層用組成物を積層する積層工程を行うため、積層工程を基材フィルム形成工程及び延伸工程と同一の生産ラインで(すなわちインライン積層工程として)実施することができる。従って、当該方法によれば、製造コストを抑制し、生産性や作業効率を改善した形で光学シート用基材シートを製造することが可能になる。
【0010】
上記基材フィルム形成工程と上記積層工程との間に、基材フィルム押出体を予備的に延伸する予備的延伸工程を有してもよい。このように予備的延伸工程を有している場合においても、予備的に延伸された基材フィルム押出体の一方の面にスティッキング防止層用組成物を積層する積層工程を、基材フィルム形成工程、予備的延伸工程及び延伸工程と同一の生産ラインで実施することができるため、更に製造コストを抑制し、生産性や作業効率を改善することができる。
【0011】
上記予備的延伸工程において基材フィルム押出体をフィルム長手方向に延伸し、上記延伸工程において基材フィルム押出体及びスティッキング防止層用組成物層の積層体をフィルム幅方向に延伸することは好ましい。このような延伸方法によれば、平面性と寸法安定性が良好で厚みムラの少ない光学シート用基材シートを、所望の厚みで得ることができる。また、かかる予備的延伸工程と延伸工程とを上記の基材フィルム形成工程及び積層工程と所定の順序で組み合わせることによって、平面性、寸法安定性及び厚みムラを良好なレベルに保ちつつ、製造コストを抑制し、生産性や作業効率を改善することができる。
【0012】
また、当該光学シート用基材シート製造方法においては、Tダイを用いた共押出成形法により上記基材フィルム形成工程と上記積層工程とを同時に行ってもよい。この場合、基材フィルム押出体を構成する熱可塑性樹脂とスティッキング防止層用組成物の各々の溶融物を多層化したTダイに供給し、それらを共押出成形することによって、一つの工程で基材フィルム押出体及びスティッキング防止層用組成物層の積層体を得ることができる。さらに、基材フィルム押出体及びスティッキング防止層用組成物層の積層体を延伸する延伸工程の前に共押出成形を伴う積層工程を行うため、さらに製造コストを抑制し、生産性や作業効率を改善することが可能になる。
【0013】
Tダイを用いた共押出成形法によって得た、基材フィルム押出体及びスティッキング防止層用組成物層の積層体を延伸する工程は、逐次二軸延伸又は同時二軸延伸によって行ってよい。逐次二軸延伸によれば、平面性と寸法安定性が良好で厚みムラの少ない光学シート用基材シートを得ることができる。一方、同時二軸延伸によれば、面内バランスの良好な光学シート用基材シートを得ることができる。また、このいずれかの方法による延伸工程を上記の共押出成形と組み合わせることによって、平面性等あるいは面内バランスを良好なレベルに保ちつつ、製造コストを抑制し、生産性や作業効率を改善することができる。
【0014】
当該光学シート用基材シート製造方法において、上記スティッキング防止層用組成物は無機フィラー及び合成樹脂バインダーを含んでよい(無機フィラーは、例えば50nm以上150nm以下の平均粒子径を有する)。かかるスティッキング防止層用組成物を用いることによって、スティッキング防止層用組成物を積層するための前処理として従来から行われている基材フィルム裏面に対する易接着層の敷設が不要となるため、製造コスト削減、薄膜化及び軽量化が可能となる。しかもそのようなスティッキング防止層を有する光学シートは光線透過率が優れており、スティッキング防止効果(密着防止効果)、帯電防止効果及び傷付き防止効果も従来の光学シートと同等以上となる。
【0015】
上述のとおり基材フィルム形成工程、積層工程及び延伸工程を行うことによって光学シート用基材シートを製造し、次いでこの光学シート用基材シートの他方の面に光学層を形成する光学層形成工程を行うことによって光学シートを製造することができる。かかる光学シートの製造方法によれば、光学シート用基材シートを製造する際に積層工程を基材フィルム形成工程及び延伸工程と同一の生産ラインで実施することができるため、製造コストを抑制し、生産性や作業効率を改善した形で光学シートを製造することが可能になる。
【0016】
上記光学層は光拡散剤とそのバインダーとを含んでいてよい。かかる光拡散剤とそのバインダーとを含む光学層を備えた光学シートによれば、集光、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を向上させることができる。
【0017】
上記光学層は屈折性を有する微細な凹凸形状を有していてもよい。かかる微細な凹凸形状を有する光学層を備えた光学シートによれば、光拡散性の向上、制御の容易化と共に、光学シートの薄膜化が可能となる。
【0018】
なお、本発明において、「基材フィルム押出体」は、上記基材フィルム形成工程において、Tダイを用いて押し出すことによって成形された熱可塑性樹脂からなるフィルム状の成形体を意味する。かかる基材フィルム押出体は、最終的に、本発明の方法によって製造された光学シート用基材シートの基材フィルムを構成する。また、本発明において、「スティッキング防止層用組成物」は、上記積層工程において用いられる、スティッキング防止層の材料となる組成物を意味する。かかるスティッキング防止層用組成物は、最終的に、本発明の方法によって製造された光学シート用基材シートのスティッキング防止層を構成する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の光学シート用基材シートの製造方法は、積層工程を基材フィルム形成工程及び延伸工程と同一の生産ラインで実施することができるため、製造コストを抑制し、生産性や作業効率を改善した形で光学シート用基材シートを製造することが可能になる。また、本発明の光学シートの製造方法は、光学シート用基材シートを製造する際に積層工程を基材フィルム形成工程及び延伸工程と同一の生産ラインで実施することができるため、製造コストを抑制し、生産性や作業効率を改善した形で光学シートを製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1は本発明の一実施形態に係る光学シート用基材シートの製造方法を示すフロー図、図2は図1の光学シート用基材シートの製造方法を実施する装置を示す模式図、図3は図1の光学シート用基材シートの製造方法の各ステップの製造物を示す模式的断面図、図4は図1とは異なる形態に係る光学シート用基材シートの製造方法を示すフロー図、図5は図4の光学シート用基材シートの製造方法を実施する装置を示す模式図、図6は図4の光学シート用基材シートの製造方法の各ステップの製造物を示す模式的断面図、図7(a)は本発明の一実施形態に係る光学シートの製造方法によって製造された光学シートを示す模式的断面図、図7(b)は図7(a)とは異なる形態に係る光学シートの製造方法によって製造された光学シートを示す模式的断面図である。
【0021】
図1の光学シート用基材シートの製造方法は、基材フィルム形成工程(STP1)、予備的延伸工程(STP2)、積層工程(STP3)及び延伸工程(STP4)を有している。
【0022】
図1の光学シート用基材シートの製造方法における基材フィルム形成工程(STP1)は、Tダイを用いた周知の押出成形法によって、図3に示すように熱可塑性樹脂1からなる長尺帯状体である基材フィルム押出体2を形成する工程である。Tダイを用いた周知の押出成形法としては、例えばポリッシングロール法やチルロール法が挙げられる。
【0023】
熱可塑性樹脂1として、硬化した際に光線透過性を有する合成樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂1としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0024】
押出成形された基材フィルム押出体2の厚みは、特に限定されないが、用いるTダイの構造や後に行う延伸の比率次第で適宜設定され、40μm以上2000μm以下程度とすることができる。
【0025】
基材フィルム形成工程(STP1)は、図2に示された模式図の一部を占める押出成形装置により実施される。この押出成形装置は、主に押出機及びTダイ30、一対の押圧ロール31、巻取機等を備えている。押出機としては一軸押出機又は二軸押出機を用いることができる。Tダイ30としては、例えばフィッシュテールダイ、マニホールドダイ、コートハンガダイ等の周知のものを使用することができる。一対の押圧ロール31は隣接して平行に配設され、押出機及びTダイ30は一対の押圧ロール31のニップに溶融状態の熱可塑性樹脂1をシート状に押し出し可能に構成されている。この一対の押圧ロール31は、温度制御手段が設けられ、表面温度を押出成形に最適な温度に制御可能に構成されている。押圧ロール31として、金属ロールと表面に弾性体を被覆したフレキシブルロールとからなる金属弾性ロールを用いることは好ましい。かかる構造の押出成形装置を用い、まず溶融状態の熱可塑性樹脂1をTダイ30に供給し、押出機及びTダイ30によりこの熱可塑性樹脂を押し出し、一対の押圧ロール31で押圧することによって基材フィルム押出体2を形成する。なお、Tダイ30から押し出す熱可塑性樹脂1の溶融温度は使用される熱可塑性樹脂の融点等を考慮して適宜選定される。
【0026】
図1の光学シート用基材シートの製造方法における予備的延伸工程(STP2)は、図3に示すように、スティッキング防止層用組成物の積層に先だって予備的に基材フィルム押出体2を延伸することによって、予備的に延伸された基材フィルム押出体3を形成する工程である。
【0027】
基材フィルム押出体2から、予備的に延伸された基材フィルム押出体3を形成するためには、基材フィルム押出体2をフィルム長手方向に延伸してもよいし、フィルム幅方向に延伸してもよい。周知の逐次二軸延伸の順序にならって、この予備的延伸工程において基材フィルム押出体2をフィルム長手方向に延伸し、後述する延伸工程において基材フィルム押出体及びスティッキング防止層用組成物層の積層体をフィルム幅方向に延伸することは好ましい。
【0028】
この予備的延伸は、基材フィルム押出体2を構成する熱可塑性樹脂1の軟化温度と溶融温度の間の適当な温度で行うことができる。予備的延伸の延伸比は所望の光学シート用基材シートの厚み次第で調整することができるが、一般的には2〜5倍である。予備的に延伸された基材フィルム押出体3の厚みは、基材フィルム押出体2の厚みよりもこの延伸比の逆数の分だけ薄くなる。
【0029】
予備的延伸工程(STP2)は、図2に示された模式図の一部を占める周知の構造を有する延伸装置32により実施される。この延伸装置32は、主に加熱延伸部、熱処理部等を備えている。この予備的延伸工程では、基材フィルム押出体2を、まず加熱延伸部に導入してフィルム長手方向又はフィルム幅方向に適当な比率で延伸し、次いで平面安定性、寸法安定性を付与するために熱処理することによって、予備的に延伸された基材フィルム押出体3を形成する。
【0030】
図1の光学シート用基材シートの製造方法における積層工程(STP3)は、図3に示すように、予備的に延伸された基材フィルム押出体3の一方の面に、バインダー組成物5及びフィラー6を含むスティッキング防止層用組成物7を周知のロールコート技術を用いて積層することによって、スティッキング防止層用組成物層4及び予備的に延伸された基材フィルム押出体3の積層体8を形成する工程である。
【0031】
図示していないが、この積層工程に先立って、基材フィルム押出体とスティッキング防止層用組成物層の接着を容易にするため、バインダー中に帯電防止剤、無機フィラー等を配合して形成した組成物の層(易接着層)を設ける工程を行ってもよい。
【0032】
スティッキング防止層用組成物7に含まれるバインダー組成物5は、基材ポリマーを含んでいる。このバインダー組成物5が硬化することによってバインダー中にフィラー6が略等密度に配置固定されることになる。なお、バインダー組成物5は、基材ポリマーの他に、例えば硬化剤、帯電防止剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。
【0033】
上記基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂や、オルガノアルコキシシラン化合物からなるシロキサン樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。特に、上記基材ポリマーとしては、加工性が高いポリオールが好ましい。また、基材ポリマーは、光線の透過性を高める観点から硬化した際に透明性を有するものが好ましい。
【0034】
上記ポリオールとしては、例えば水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールや、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、これらを単体で又は2種以上混合して使用することができる。
【0035】
水酸基含有不飽和単量体としては、(a)例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、(b)例えばエチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコール又はエポキシ化合物と、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選択される1種又は2種以上を重合してポリオールを製造することができる。
【0036】
また上記ポリオールは、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン等から選択される1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体と、上記(a)及び(b)から選択される水酸基含有不飽和単量体とを重合することで製造することもできる。
【0037】
水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールの数平均分子量は1000以上500000以下であり、好ましくは5000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0038】
水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールは、(c)例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ハイドロキノンビス(ヒドロキシエチルエーテル)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシヌレート、キシリレングリコール等の多価アルコールと、(d)例えばマレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、トリメット酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸とを、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール中の水酸基数が前記多塩基酸のカルボキシル基数よりも多い条件で反応させて製造することができる。
【0039】
かかる水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールの数平均分子量は500以上300000以下であり、好ましくは2000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
【0040】
当該バインダー組成物5の基材ポリマーとして用いられるポリオールとしては、上記ポリエステルポリオール、及び、上記水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールを基材ポリマーとするバインダー組成物を用いることによって、その組成物が硬化することによって形成されたバインダーの耐候性が向上する。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
【0041】
なお、上記ポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると硬化反応の架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
【0042】
バインダー組成物5中には硬化剤としてイソシアネートを含有するとよい。このようにバインダー組成物中にイソシアネート硬化剤を含有することで、その組成物が硬化した場合に、より一層強固な架橋構造とすることができる。このイソシアネートとしては脂肪族系イソシアネートが好ましい。
【0043】
特に、基材ポリマーとしてポリオールを用いる場合、バインダー組成物中に配合する硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、イソフロンジイソシアネート及びキシレンジイソシアネートのいずれか1種もしくは2種以上混合して用いるとよい。これらの硬化剤を用いるとバインダー組成物の硬化反応速度が大きくなる。
【0044】
スティッキング防止層用組成物7に含まれるフィラー6は無機フィラーと有機フィラーに大別される。
【0045】
スティッキング防止層用組成物7に含まれる無機フィラーとしては、例えば水酸化アルミニウム、元素周期律表第2族〜第6族から選ばれる元素(例えばケイ素、アルミニウム、亜鉛、チタン、ジルコニウム等)の酸化物、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物を用いることができる。無機フィラーとして、特にナノレベル(平均粒子径が10nm以上150nm以下程度)のコロイダルシリカを用いることは好ましい。
【0046】
スティッキング防止層用組成物7に含まれる有機フィラーとしては、例えばアクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等を用いることができる。中でも、硬化した際の透明性が高いアクリル樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
【0047】
フィラー6の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、球状、紡錘形状、針状、棒状、立方状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、中でも球状のフィラーが好ましい。
【0048】
フィラー6の平均粒子径の下限としては、10nm、特に50nm、さらに100nmが好ましい。一方、フィラー6の平均粒子径の上限としては、10μm、特に5μm、さらに1μmが好ましい。かかる範囲の平均粒子径を有するフィラーを含むスティッキング防止層を備えた光学シートは優れた光線透過率を有する。また、上述した平均粒子径が10nm以上150nm以下程度のコロイダルシリカを含むスティッキング防止層用組成物を用いた場合には、基材フィルム裏面に対して易接着層を形成しなくてもスティッキング防止層用組成物の積層が容易となり、製造コスト削減、軽量化及び薄膜化(スティキング防止層の厚さ50nm以上150nm以下程度)が可能となる。さらに、そのようなナノサイズのコロイダルシリカを含むスティッキング防止層を有する光学シートは光線透過率が優れており、スティッキング防止効果、帯電防止効果、及び傷付き防止効果も良好となる。
【0049】
フィラー6の配合量(スティッキング防止層用組成物7中の固形分換算の配合量)は1質量%以上80質量%以下が好ましく、さらには20質量%以上50質量%以下が好ましい。この範囲を下回るフィラーの配合量ではスティッキング防止効果が十分得られない。一方、この範囲を上回るフィラーの配合量ではスティッキング防止効果のさらなる向上は得られず、光線透過率が低下する。
【0050】
積層工程(STP3)において、積層されたスティッキング防止層用組成物層4の厚みは、特に限定されないが、使用するラミネーション用Tダイの構造や後に行う延伸の比率次第で適宜設定され、2μm以上50μm以下程度とすることができる。
【0051】
積層工程(STP3)のロールコートは、図2に示された模式図の一部を占める周知の構造を有するロールコーターにより実施される。このロールコーターは、主にコーターパン33、ピックアップロール34a、調整ロール34b、塗布ロール34c及びバックアップロール34dを備えている。塗布ロールの回転方向と被塗物の進行方向が同じであるダイレクトロールコーターまたは塗布ロールの回転方向と被塗物の進行方向が逆であリバースロールコーターを用いることができる。コーターパン33はバインダー組成物5及びフィラー6を含むスティッキング防止層用組成物7で満たされており、ピックアップロール34aの回転によってコーターパン33からスティッキング防止層用組成物7が汲み上げられる。こうしてスティッキング防止層用組成物7はピックアップロール34aの外周面に付着し、塗布ロール34cに受け渡される。その間に、調整ロール34bはピックアップロール34aの外周面に付着したスティッキング防止層用組成物7の量を調整する。スティッキング防止層用組成物7の付いた塗布ロール34cが、予備的に延伸された基材フィルム3の送出方向と同じ方向又は逆方向に回転することによって、塗布ロール34cとバックアップロール34dの間で支持されている予備的に延伸された基材フィルム3にスティッキング防止層用組成物7が積層され、スティッキング防止層用組成物層4及び予備的に延伸された基材フィルム押出体3の積層体8が形成される。
【0052】
図1の光学シート用基材シートの製造方法における延伸工程(STP4)は、図3に示すように、積層工程において形成されたスティッキング防止層用組成物層4及び予備的に延伸された基材フィルム押出体3の積層体8を、予備的延伸工程(STP2)とは異なる方向に延伸することによって光学シート用基材シート9(基材フィルム10及びスティッキング防止層11を有する)を形成する工程である。
【0053】
すなわち、延伸工程における延伸方向は、予備的延伸工程においてフィルム長手方向に延伸した場合にはフィルム幅方向に延伸し、予備的延伸工程においてフィルム幅方向に延伸した場合にはフィルム長手方向に延伸ことができる。上記の予備的延伸工程において基材フィルム押出体2をフィルム長手方向に延伸し、この延伸工程においてスティッキング防止層用組成物層4及び予備的に延伸された基材フィルム押出体3の積層体8をフィルム幅方向に延伸することができる。このような延伸方法によれば、平面性と寸法安定性が良好で厚みムラの少ない光学シート用基材シートを所望の厚みで得ることができる。
【0054】
この延伸工程は、スティッキング防止層用組成物層4及び予備的に延伸された基材フィルム押出体3の積層体8を構成する諸成分の軟化温度と溶融温度の間の適当な温度で行うことができる。延伸工程の延伸比は所望の光学シート用基材シートの厚み次第で調整することができるが、一般的には2〜5倍である。
【0055】
製造された光学シート用基材シート9の厚みは、特には限定されないが、好ましくは10μm以上250μm以下、特に好ましくは20μm以上200μm以下とすることができる。当該光学シート用基材シート9の厚みが上記範囲未満であると、光学層等を形成するためのポリマー組成物を塗工した際にカールが発生しやすくなってしまう、取扱いが困難になる等の不都合が発生する。逆に、当該光学シート用基材シート9の厚みが上記範囲を超えると、液晶表示装置の輝度が低下してしまうことがあり、またバックライトユニットの厚みが大きくなって液晶表示装置の薄型化の要求に反することにもなる。
【0056】
延伸工程(STP4)は、図2に示された模式図の一部を占める周知の構造を有する延伸装置35により実施される。この延伸装置35は、主に加熱延伸部、熱処理部等を備えている。この延伸工程では、スティッキング防止層用組成物層4及び予備的に延伸された基材フィルム押出体3の積層体8を、まず加熱延伸部に導入して所定の方向に適当な比率で延伸し、次いで平面安定性、寸法安定性を付与するために熱処理することによって、光学シート用基材シート9を形成する。
【0057】
当該光学シート用基材シートの製造方法は、延伸工程(STP4)の後に、得られた光学シート用基材シート9を所定サイズに裁断する裁断工程を有するとよい。この裁断工程における光学シート用基材シート9の裁断方法としては、所定の形状に裁断できれば特に限定されず、通常は打抜プレス等が採用される。延伸工程(STP4)後に裁断工程を有することで、所望の光学シート用基材シートを効率よく製造することができ、光学シート用基材シートの巻き取りに起因するカール、基材フィルムの剥離等の発生を抑制することができる。
【0058】
上述のように本実施形態による光学シート用基材シートの製造方法においては、スティッキング防止層用組成物層4及び予備的に延伸された基材フィルム押出体3の積層体8を延伸する延伸工程(STEP4)の前に、予備的に延伸された基材フィルム押出体3の一方の面にスティッキング防止層用組成物7を積層する積層工程(STP3)が行われる。そのため、積層工程(STP3)を基材フィルム形成工程(STP1)、予備的延伸工程(STP2)及び延伸工程(STEP4)と同一の生産ラインで(すなわちインライン積層工程として)実施することができる。従って、当該方法によれば製造コストを抑制し、生産性や作業効率を改善した形で光学シート用基材シートを製造することができる。
【0059】
なお、本実施形態の積層工程(STP3)においては、スティッキング防止層用組成物の積層厚みを調整するためにエアーナイフを用いてもよい。また、上述したようなロールコート法に代えて、例えばバーコーター、ブレードコーター、スピンコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレー、スクリーン印刷等を用いた周知のコーティング法を用いてもよい。かかるコーティング法による積層工程は、基材フィルム形成工程(STP1)、予備的延伸工程(STP2)及び延伸工程(STEP4)と同一の生産ラインで実施することができる。
【0060】
図4の光学シート用基材シートの製造方法は、Tダイを用いた共押出成形法による基材フィルム形成工程と積層工程の同時実施工程(STP1)及び延伸工程(STP2)を有している。
【0061】
共押出成形法による基材フィルム形成工程と積層工程の同時実施工程(STP1)は、周知の共押出成形法によって、図6に示すように熱可塑性樹脂12からなる基材フィルム押出体13、及びバインダー組成物15とフィラー16とを含むスティッキング防止層用組成物17の層14からなる長尺帯状体である共押出成形体18を形成する工程である。周知の共押出成形法としては、例えば多層化したTダイを用いたフィードブロック法や多層マニホールド法が挙げられる。
【0062】
熱可塑性樹脂12としては上記の熱可塑性樹脂1と同様のものを用いることができる。また、ここでのスティッキング防止層用組成物17としては上記のスティッキング防止層用組成物7と同様のものを用いることができる。ただし、多層Tダイからの共押出を行うためバインダー組成物15の基材ポリマーとしては本質的に熱可塑性樹脂からなるものを使用する必要がある。
【0063】
共押出成形体18を構成する基材フィルム押出体13及びスティッキング防止層用組成物層14のそれぞれの厚みは、特に限定されないが、用いる多層化したTダイの構造や後に行う延伸の比率次第で適宜設定され、40μm以上2000μm以下程度及び4μm以上100μm以下程度とすることができる。
【0064】
図4の光学シート用基材シートの製造方法において、共押出成形法による基材フィルム形成工程と積層工程の同時実施工程(STP1)は、図5に示された模式図の一部を占める共押出成形装置により実施される。この共押出成形装置は、主に押出機及び多層化Tダイ36、一対の押圧ロール37、巻取機等を備えている。押出機としては一軸押出機又は二軸押出機を用いることができる。多層化Tダイ36としては、例えばフィードブロック式多層Tダイやマニホールド式多層Tダイ等の周知のものを使用することができる。一対の押圧ロール37は隣接して平行に配設され、押出機及び多層化Tダイ36は一対の押圧ロール37のニップに溶融状態の熱可塑性樹脂12及びスティッキング防止層用組成物17を積層した形でシート状に押し出し可能に構成されている。この一対の押圧ロール37は、温度制御手段が設けられ、表面温度を押出成形に最適な温度に制御可能に構成されている。押圧ロール37として金属弾性ロールを用いることは好ましい。かかる構造の共押出成形装置を用い、まず溶融状態の熱可塑性樹脂12及びスティッキング防止層用組成物17の各々を、多層化Tダイ36に供給し、押出機及び多層化Tダイ36によりこれらの成分を共に押し出し、一対の押圧ロール37で押圧することによって共押出成形体18を形成する。なお、多層化Tダイ36から押し出す熱可塑性樹脂12及びスティッキング防止層用組成物17の溶融温度は、それぞれ使用される熱可塑性樹脂及びバインダー組成物(スティッキング防止層用組成物に包含)の融点等を考慮して適宜選定される。
【0065】
図4の光学シート用基材シートの製造方法における延伸工程(STP2)は、図6に示すように、上記の共押出成形法による基材フィルム形成工程と積層工程の同時実施工程において形成された共押出成形体18を、フィルム長手方向及びフィルム幅方向に延伸することによって光学シート用基材シート19(基材フィルム20及びスティッキング防止層21を有する)を形成する工程である。
【0066】
この延伸工程(STP2)は、基材フィルム押出体13及びスティッキング防止層用組成物層14からなる共押出成形体18を構成する諸成分の軟化温度と溶融温度の間の適当な温度で行うことができる。延伸工程における延伸比は、所望の光学シート用基材シート19の厚み次第で調整することができるが、一般的にはフィルム長手方向とフィルム幅方向に対して、それぞれ2〜5倍である。延伸された光学シート用基材シート19の厚みは、共押出成形体18の厚みよりもこの延伸比(積)の逆数の分だけ薄くなる。光学シート用基材シート19の厚みは、上記の光学シート用基材シート9の厚みと同様とすることができる。
【0067】
延伸工程(STP2)は、図5に示された模式図の一部を占める周知の構造を有する二軸延伸装置38により実施される。この二軸延伸装置38は、主に加熱延伸部、熱処理部等を備えている。二軸延伸法として、チューブラーフィルム二軸延伸法やフラットフィルム二軸延伸法等の周知の方法を採用することができる。また二軸延伸法は、フィルム長手方向の延伸とフィルム幅方向の延伸を分離して行う逐次二軸延伸法であってもよいし、フィルム長手方向の延伸とフィルム幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸法であってもよい。逐次二軸延伸によれば、平面性と寸法安定性が良好で厚みムラの少ない光学シート用基材シートを得ることができる。一方、同時二軸延伸によれば、面内バランスの良好な光学シート用基材シートを得ることができる。
【0068】
逐次二軸延伸の方法としては、例えば、共押出成形体18を加熱したロール群に導き、フィルム長手方向に延伸し、次いでそのフィルムの両端をクリップで把持しながら加熱されたテンターに導いてフィルム幅方向に延伸することができる。同時二軸延伸の方法としては、例えば、共押出成形体18の両端をクリップで把持しながら加熱されたテンターに導いてフィルム幅方向に延伸を行い、それと同時にクリップ走行速度を加速していくことによってフィルム長手方向の延伸を行うことができる。一般的には、これらの延伸物に対してさらに平面安定性、寸法安定性を付与するために熱処理が行われる。
【0069】
当該光学シート用基材シートの製造方法は、先に述べた実施形態の場合と同様に、延伸工程(STP2)の後に、得られた光学シート用基材シート19を所定サイズに裁断する裁断工程を有するとよい。延伸工程(STP2)後に裁断工程を有することで、所望の光学シート用基材シートを効率よく製造することができ、光学シート用基材シートの巻き取りに起因するカール、基材フィルムの剥離等の発生を抑制することができる。
【0070】
上述のように、本実施形態による光学シート用基材シートの製造方法においては、熱可塑性樹脂12とスティッキング防止層用組成物17の各々の溶融物を多層化Tダイから共押出成形することによって、単一の工程で基材フィルム押出体13及びスティッキング防止層用組成物層14の積層体(共押出成形体18)を得ることができる。延伸工程の前に共押出成形を伴う積層工程(同一生産ラインでの積層工程)を行うため、製造コストを抑制し、生産性や作業効率を改善することが可能になる。
【0071】
なお、本実施形態において、基材フィルム押出体13とスティッキング防止層用組成物層14の接着を容易にするため、それらの層間において、バインダー中に帯電防止剤、無機フィラー等を配合して形成した組成物の層(易接着層)を設けてもよい。この場合、そのような易接着層を構成する組成物の溶融物を多層化Tダイに供給し、熱可塑性樹脂及びスティッキング防止層用組成物と併せて共押出成形することによって、それら三層を含む共押出成形体を形成することができる。
【0072】
また、上述の二つの実施形態における光学シート用基材シートの製造方法ではフィルム長手方向の延伸とフィルム幅方向の延伸の両方を行っているが、それらのうちのいずれかの方向の延伸のみによっても所望の光学シート用基材シートを製造することができる。
【0073】
上記の基材フィルム形成工程、予備的延伸工程、積層工程及び延伸工程、あるいは、共押出成形法による基材フィルム形成工程と積層工程の同時実施工程及び延伸工程を行うことによって光学シート用基材シートを製造し、次いで、その光学シート用基材シートの他方の面に光学層を形成する工程を行うことによって光学シートの製造することができる。すなわち、図7(a)の光学シート40に示すように、光拡散剤47とそのバインダー46とを含む光学層45用組成物を、光学シート用基材シート(バインダー43及びフィラー44を含むスティッキング防止層42と基材フィルム41からなる)の表面に積層することによって、光学層45を形成することができる。
【0074】
光学層45を構成する光拡散剤47及びバインダー46の組成物としては、上述のビーズ6及びバインダー組成物5と同様のものを使用することができる。ただし、光拡散剤47の平均粒子径の下限としては、1μm、特に2μm、さらに5μmが好ましく、一方、光拡散剤47の平均粒子径の上限としては、50μm、特に20μm、さらに15μmが好ましい。
【0075】
光学シート用基材シートに光学層45を積層するために、例えば上記のロールコーターや、バーコーター、ブレードコーター、スピンコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレー、スクリーン印刷等を用いた周知のコーティング法を採用することができる。光学層45の平均厚みは、特には限定されないが、例えば1μm以上30μm以下程度とすることができる。
【0076】
また、図7(b)の光学シート48に示すように、光学シート用基材シートの他方の面に屈折性を有する微細な凹凸形状49を形成し光学層として機能させてもよい。あるいはそれに代えて、光学シート用基材シートの他方の面に微細な凹凸形状を有する光学層を別途形成してもよい。このように別途形成する場合の光学層の材料としては、基材フィルムの材料と同様のものを用いることができる。
【0077】
光学シート用基材シートの他方の面に屈折性を有する微細な凹凸形状49を形成し光学層として機能させるタイプの光学シートの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の方法を採用することができる。
【0078】
すなわち、(a)光学シートの表面の反転形状を有するシート型に合成樹脂を積層し、そのシート型を剥がすこと当該光学シートを形成する方法、(b)光学シートの表面の反転形状を有する金型に溶融樹脂を注入する射出成型法、(c)シート化された樹脂を再加熱して前記と同様の金型と金属板との間にはさんでプレスして形状を転写する方法、(d)光学シートの表面の反転形状を周面に有するロール型と他のロールとのニップに溶融状態の樹脂を通し、上記形状を転写する押出しシート成形法が挙げられる。
【0079】
また、光学シート用基材シートの他方の面に微細な凹凸形状を有する光学層を別途形成するタイプの光学シートの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の方法を採用することができる。
【0080】
すなわち、(d)光学シートの表面の反転形状を周面に有するロール型と他のロールとのニップに溶融状態の樹脂と基材シートを通し、基材シートの表面側の溶融樹脂に上記形状を転写する押出シート成形法、(e)基材シートの表面に放射線硬化型樹脂を塗布し、上記と同様の反転形状を有するシート型、金型又はロール型に押さえ付けて未硬化の放射線硬化型樹脂に形状を転写し、紫外線等の放射線をあてて放射線硬化型樹脂を硬化させる方法、(f)上記と同様の反転形状を有する金型又はロール型に未硬化の放射線硬化性樹脂を充填塗布し、基材シートで押さえ付けて均し、紫外線等の放射線をあてて放射線硬化型樹脂を硬化させる方法が挙げられる。
【0081】
これらの光学シート製造方法においても、上述のとおり、光学シート用基材シートを製造する際に積層工程を基材フィルム形成工程及び延伸工程と同一の生産ラインで実施することができるため、製造コストを抑制し、生産性や作業効率を改善した形で光学シートを製造することが可能になる。さらには、光拡散剤47とそのバインダー46とを含む光学層45を備えた光学シート40によれば、集光、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を向上させることができる。また、上述の微細な凹凸形状を有する光学層を備えた光学シート48によれば、光拡散性等の光学的機能の向上と共に、光学シートの薄膜化が可能となる。
【0082】
なお、光学シート用基材シートの他方の面に積層される光学層としては、上述のもの以外に、例えば(i)表面に複数の半球状マイクロレンズからなるマイクロレンズアレイを有するマイクロレンズシート、(ii)表面に複数の三角柱状のプリズム部をストライプ状に有するプリズムシート、(iii)表面に複数の半円柱状のシリンドリカルレンズ部をストライプ状に有するレンチキュラーレンズシート、(iv)表面にレンズの曲率だけを並べたフレネルレンズシート等を用いることもできる。これらの光学層についても、周知のコーティング方法に従って光学シート用基材シートに積層することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0084】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称する)をTダイに供給し、押出成形してPETフィルム押出体を形成し、そのPETフィルム押出体をフィルム長手方向に3倍延伸した。次に、固形分換算でポリエステルポリオール(東洋紡績社製の「バイロナール MD1250」)100部、ブロックイソシアネート(第一工業製薬社製の「エラストロンH−3」)120部、及び平均粒子径が100nmのコロイダルシリカ50部を含むスティッキング防止層用組成物を調製し、ロールコート法により、このスティッキング防止層用組成物の層と上記PETフィルム押出体との積層体を形成した。次いで、この積層体をフィルム幅方向に3倍延伸することによって平均厚み188μmの光学シート用基材シート(スティッキング防止層の平均厚み100nm)を得た。これらの工程は全て同一の生産ライン上で連続して行った。JIS−K7105に準じ、スガ試験機株式会社製のヘイズメーターにより当該光学シート用基材シートの全光線透過率を測定したところ、93.1%と良好であった。JIS B0601−1994に準じ、カットオフλc2.5mm、評価長さ12.5mmとし、株式会社東京精密製の触針式表面粗さ測定機「サーフコム470A」を用いて、当該光学シート用基材シートのスティッキング防止層面の算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)及び十点平均粗さ(Rz)を測定したところ、それぞれ0.09μm、、0.63μm及び0.52μmであった。また、当該光学シート用基材シートのスティッキング防止層の鉛筆硬度はH〜2Hであった。
【0085】
次に、ポリエステルポリオールを基材ポリマーとするバインダー樹脂配合物(東洋紡績(株)の「バイロン200」)100部、平均粒子径が20nmのコロイダルシリカ50部、硬化剤(日本ポリウレタン(株)の「コロネートHX」)5部及び光安定化剤(大塚化学(株)の「PUVA−1033」)5部を含むポリマー組成物中に、平均粒子径15μmのアクリル系樹脂ビーズ(積水化成品工業(株)の「MBX−15」)50部を混合して塗工液を作製した。この塗工液をロールコート法によって上記光学シート用基材シートの表面に15g/m(固形分換算)塗工し、硬化させることで光学層を形成し、光学シートを得た。
【0086】
この光学シートを20cm平方に裁断し、スティッキング防止層をアクリル板と重ね合わせても干渉模様が発生せず、スティッキング防止効果は良好であった。また、上記のように裁断した光学シートに水を介在させてアクリル板と重ね合わせたものを環境試験条件下(70℃×RH95%)で24時間放置した。放置後、光学シートとアクリル板の剥離を試みたところ容易に剥離した。また、JIS−K7105に準じ、スガ試験機株式会社製のヘイズメーターにより当該光学シートの全光線透過率を測定したところ、69.5%と良好であった。
【0087】
[実施例2]
実施例1で用いたものと同じスティッキング防止層用組成物とPETとをそれぞれ多層ダイに供給し、共押出成形することによって、スティッキング防止層用組成物の層とPETフィルム押出体の層からなる共押出成形体を形成した。次いで、この共押出成形体をフィルム長手方向に3倍及びフィルム幅方向に3倍の延伸比で同時二軸延伸することによって平均厚み188μmの光学シート用基材シート(スティッキング防止層の平均厚み100nm)を得た。これらの工程は全て同一の生産ライン上で連続して行った。JIS−K7105に準じ、スガ試験機株式会社製のヘイズメーターにより当該光学シート用基材シートの全光線透過率を測定したところ、91%と良好であった。JIS B0601−1994に準じ、カットオフλc2.5mm、評価長さ12.5mmとし、株式会社東京精密製の触針式表面粗さ測定機「サーフコム470A」を用いて、当該光学シート用基材シートのスティッキング防止層面の算術平均粗さ(Ra)を測定したところ、26.5nmであった。
【0088】
次に、実施例1で用いたものと同じ塗工液を作製した。この塗工液をロールコート法によって上記光学シート用基材シートの表面に15g/m(固形分換算)塗工し、硬化させることで光学層を形成し、光学シートを得た。
【0089】
この光学シートを20cm平方に裁断し、スティッキング防止層をアクリル板と重ね合わせても干渉模様が発生せず、スティッキング防止効果は良好であった。また、上記のように裁断した光学シートに水を介在させてアクリル板と重ね合わせたものを環境試験条件下(70℃×RH95%)で24時間放置した。放置後、光学シートとアクリル板の剥離を試みたところ容易に剥離した。また、JIS−K7105に準じ、スガ試験機株式会社製のヘイズメーターにより当該光学シートの全光線透過率を測定したところ、実施例1と同様69.5%と良好であった。
【0090】
このように本発明の光学シート用基材シート製造方法及び光学シートの製造方法によれば、基材フィルム押出体の一方の面にスティッキング防止層用組成物を積層する積層工程を、基材フィルム形成工程及び延伸工程と同一の生産ラインで実施するため、光学シート用基材シート並びに光学シートの製造効率を顕著に改善することができ、また、本発明によって製造された光学シートは優れた密着防止効果及び光学的機能を有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の製造方法で得られる光学シート用基材シート及び光学シートは、液晶表示装置の構成要素として有用であり、特に透過型液晶表示装置に用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学シート用基材シートの製造方法を示すフロー図である。
【図2】図1の光学シート用基材シートの製造方法を実施する装置を示す模式図である。
【図3】図1の光学シート用基材シートの製造方法の各ステップの製造物を示す模式的断面図である。
【図4】図1とは異なる形態に係る光学シート用基材シートの製造方法を示すフロー図である。
【図5】図4の光学シート用基材シートの製造方法を実施する装置を示す模式図である。
【図6】図4の光学シート用基材シートの製造方法の各ステップの製造物を示す模式的断面図である。
【図7】(a)は本発明の一実施形態に係る光学シートの製造方法によって製造された光学シートを示す模式的断面図であり、(b)は(a)と異なる形態に係る光学シートの製造方法によって製造された光学シートを示す模式的断面図である。
【図8】(a)は一般的なエッジライト型のバックライトユニットを示す模式的斜視図であり、(b)は従来の一般的な光拡散シートを示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 熱可塑性樹脂
2 基材フィルム押出体
3 予備的に延伸された基材フィルム押出体
4 スティッキング防止層用組成物層
5 バインダー組成物
6 フィラー
7 スティッキング防止層用組成物
8 基材フィルム押出体及びスティッキング防止層用組成物層の積層体
9 光学シート用基材シート
10 基材フィルム
11 スティッキング防止層
12 熱可塑性樹脂
13 基材フィルム押出体
14 スティッキング防止層用組成物層
15 バインダー組成物
16 フィラー
17 スティッキング防止層用組成物
18 共押出成形体(基材フィルム押出体とスティッキング防止層用組成物層の積層体)
19 光学シート用基材シート
20 基材フィルム
21 スティッキング防止層
30 Tダイ
31 一対の押圧ロール
32 延伸装置
33 コーターパン
34a ピックアップロール
34b 調整ロール
34c 塗布ロール
34d バックアップロール
35 延伸装置
36 多層Tダイ
37 一対の押圧ロール
38 延伸装置
40 光学シート
41 基材フィルム
42 スティッキング防止層
43 バインダー
44 フィラー
45 光学層
46 バインダー
47 光拡散剤
48 光学シート
49 微細な凹凸形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基材フィルムとこの基材フィルムの一方の面に積層されたスティッキング防止層を備えた光学シート用基材シートの製造方法であって、
Tダイを用いた押出成形法により熱可塑性樹脂からなる基材フィルム押出体を形成する基材フィルム形成工程と、
基材フィルム押出体の一方の面に、スティッキング防止層用組成物を積層する積層工程と、
基材フィルム押出体及びスティッキング防止層用組成物層の積層体を延伸する延伸工程と
を有しており、
上記積層工程を上記延伸工程の前に行うことを特徴とする光学シート用基材シートの製造方法。
【請求項2】
上記基材フィルム形成工程と上記積層工程の間に、基材フィルム押出体を予備的に延伸する予備的延伸工程を有している請求項1に記載の光学シート用基材シートの製造方法。
【請求項3】
上記予備的延伸工程において基材フィルム押出体をフィルム長手方向に延伸し、上記延伸工程において基材フィルム押出体及びスティッキング防止層用組成物層の積層体をフィルム幅方向に延伸する請求項2に記載の光学シート用基材シートの製造方法。
【請求項4】
Tダイを用いた共押出成形法により上記基材フィルム形成工程と上記積層工程とを同時に行う請求項1に記載の光学シート用基材シートの製造方法。
【請求項5】
上記延伸工程を逐次二軸延伸又は同時二軸延伸によって行う請求項4に記載の光学シート用基材シートの製造方法。
【請求項6】
上記スティッキング防止層用組成物が無機フィラー及び合成樹脂バインダーを含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光学シート用基材シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光学シート用基材シートの製造方法における基材フィルム形成工程、積層工程及び延伸工程と、
この製造方法によって製造された光学シート用基材シートの他方の面に光学層を形成する光学層形成工程と
を有する光学シートの製造方法。
【請求項8】
上記光学層が、光拡散剤とそのバインダーとを含む請求項7に記載の光学シートの製造方法。
【請求項9】
上記光学層が、屈折性を有する微細な凹凸形状を有している請求項7に記載の光学シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−23343(P2010−23343A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187205(P2008−187205)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(595138591)株式会社ジロオコーポレートプラン (16)
【Fターム(参考)】