説明

光学パワースイッチ

本発明は、一般に、光学装置および/またはレンズ付属物の分野に関し、特に、異なる状態の間で制御可能に切り換えられる光学パワースイッチ(OPS)を提供する、光学装置および/またはレンズ付属物に関する。例えば、シリコンゲルのような軟質透明材料(12)は、ガラスプレート(10)の表面に堆積される。ガラスプレート(10)は、レンズ本体(10)の表面へとアクチュエータで動かされる。軟質材料要素(12)がレンズ本体(12)の表面に接触すると、この表面は、その光学特性を変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、光学装置および/またはレンズ付属物の分野に関し、特に、レンズやレンズ付属物の一部としての軟質透明材料要素や、光学装置において他の型の光学要素を制御可能に適合させることによって制御可能に切換できる光学パワースイッチ(OPS)を提供する、光学装置および/またはレンズ付属物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、光学装置やレンズ付属物の焦点距離や倍率などをどのようにして変更するかは公知である。伝統的に、これは、当業者に公知であるように、装置の少なくとも1つのまたは複数のレンズを動かすことによって、または光学装置の1つまたは複数のレンズの形状を変更することによって達成される。
【0003】
しかしながら、光学装置における機械的動作は、光学装置の多くの現代的な適用、例えば、携帯電話、小型カメラ、小型コンピュータのウェブカメラなどに使われるものとしてとは対照的に、比較的大きな機械的スイングを必要とする。これらの装置は、当業者に公知のマイクロシステムの要求と互換性が無くてはならない。レンズを動かすことは、特にマイクロシステムに関するときには欠点となる、比較的大きな移動機構を必要とする。例えば、従来は、電気湿潤や液晶レンズのような、連続的に回転可能なレンズの例がある。典型的には、これらの装置は、高駆動電圧を必要とするが、光学パワーの幅は制限され、光学収差は、光学装置の光学パワーを変更するときに変更される。
【0004】
光学パワースイッチの機能を提供することのできる光学装置の他の例が、例えば、米国特許6,897,995号に開示されている。回転可能回折格子(TDG)光学スイッチが、ライトを点灯したり消灯することのできるものとして開示されている。しかし、そのような装置は、マイクロ光学装置のレンズ装置および/またはレンズ付属物に適用するのが困難である。
【0005】
したがって、小さな機械的動作で比較的高い光学効果を切り換えることができ、同時に、光学パワースイッチが使われるレンズ装置の実質的な光学パラメータ(例えば、収差)を変えないような光学パワースイッチであって、該光学パワースイッチが、光学マイクロシステムに適用可能なものが従来技術において必要である。
【0006】
それ故に、改良された光学パワースイッチ装置は、有利であり、特に、より効率がよく信頼性の高い光学パワースイッチ装置が有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許6,897,995号
【特許文献2】米国特許出願2006/0152646A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の代替となるような装置を提供することである。
【0009】
特に、本発明の目的は、小さな機械的動きで20ディオプトリ(dpt)より大きい、比較的高い光学パワーの切換を提供する光学要素を有する光学パワースイッチを提供することである。更に、レンズプロファイルは、本発明の光学パワースイッチ装置の作動の間に実質的に維持される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的および他の目的は、光学要素(レンズ)の表面に、シリコンゲルのような軟質光学材料要素を押し付けたり引っ込めたりすることによって、光学装置の光軸を横断する光学要素表面(例えば、レンズ表面)の光学特性のパラメータ値を停止し、および/または始動し、または変更するための相関性を備えた光学パワースイッチを提供することによって、本発明の第1の態様において得られるようにされる。
【0011】
本発明の実施例によれば、光学要素は、当該光学要素を通過する光の「オン」状態と「オフ」状態の間で切換可能である。この実施例の更なる態様によれば、光学要素は、焦点長さの第1所定値と第2所定値間で焦点距離を切り換え可能である。
【0012】
本発明の他の実施例によれば、本発明の光学パワースイッチの切り換えは、光学ズーム装置を提供する。
【0013】
本発明の他の実施例によれば、本発明の光学パワースイッチの切り換えは、光学マクロ装置を提供する。
【0014】
本発明の他の実施例によれば、軟質材料要素、例えば、シリコンゲルは、光学要素材料(例えば、レンズ材料)と同じ屈折率を有している。この同一の屈折率を備えたこの実施例においては、光学パワーが切り換え可能で、実質的にゼロまで減じられる。
【0015】
本発明の他の実施例によれば、軟質材料要素、例えば、シリコンゲルは、光学要素材料(例えば、レンズ材料)とは異なる屈折率を有している。異なる屈折率を備えたこの実施例においては、光学パワーは、光学要素と透明軟質材料要素の間の接触の状態、例えば、完全接触か非接触か、または、光学要素表面と透明軟質材料要素表面の間の接触領域における重なり面積の量に依存して、第1所定レベルと第2所定値の間で切換可能である。
【0016】
本発明の他の実施例によれば、軟質材料の奥側とガラスプレートの奥側それぞれにレンズを用いることによって、レンズを使う時の2つの各焦点距離の値を調節することができる。
【0017】
本発明の他の実施例によれば、レンズ本体は、軟質透明材料、例えば、シリコンゲルからなり、ガラスプレートへ押されたりガラスプレートから引っ込められたり制御可能である。更に、ガラスプレートは、レンズ本体へ押されたりレンズ本体から引っ込められたりする。
【0018】
本発明の他の実施例によれば、レンズ本体は、いかなる型の光学要素であってもよい。例えば、実施例では、レンズ本体は、散乱面である。散乱面が軟質透明材料要素面に接触するように押されると、軟質材料要素に接触している光学要素は、光透過要素となる。
【0019】
本発明の他の態様によれば、レンズ本体は、不規則な面、例えば、鋸歯状面やでこぼこ面などからなる光学要素であり、これは、軟質透明材料要素を接触するように押されたり、引っ込められたりし、これにより、光学要素と透明軟質材料要素間の接触の状態、例えば、完全接触か非接触かに依存して、または、光学要素面と透明軟質材料要素面間の接触面積の重なり量に依存して、光学装置への異なる光透過を提供するのである。
【0020】
本発明の他の実施例によれば、光学要素は、フレネルレンズである。
【0021】
本発明の他の実施例によれば、光学要素と軟質材料要素が平行表面を有することは要求されない。例えば、本発明の実施例によれば、光学要素は、軟質材料要素の接触面に対して非平行な表面を備えたプリズムである。これは、光学要素と透明軟質材料要素間の接触の状態、例えば、完全接触か非接触かに依存して、または、光学要素面と透明軟質材料要素面間の接触面積の重なり量に依存して、光学装置を通過する光の方向の変更を提供する。
【0022】
本発明の他の態様によれば、光学要素と軟質材料要素は、平行面を有するが、光学装置を貫通する光軸に直角にはなっていない。これは、光学要素と透明軟質材料要素間の接触の状態、例えば、完全接触か接触無しかに依存して、または、光学要素面と透明軟質材料要素面間の接触面積の重なり量に依存して、光学装置を通過する光の平行移動を提供する。
【0023】
本発明のこれらのおよび他の特徴は、添付の特許請求の範囲に示される。本発明の実施例のいくつかが添付の図面に示されるが、これらは図示の目的でのみ提供されており、本発明の範囲を制限するものではない。
【0024】
本発明の個々の態様は、他の態様と組み合わせても良い。本発明のこれらのおよび他の態様は、実施例を参照して、以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例を示す。
【図2】本発明による光学要素の設計のパラメータの例を示す。
【図3】本発明による光学マクロスイッチの例を示す。
【図4】本発明による光学ズーム装置の例を示す。
【図5】本発明の実施例の表示装置の使用の例を示す。
【図6】凹レンズを有する本発明の他の実施例を示す。
【図7】多数段の光学要素を有する本発明の実施例を示す。
【図8】本発明による微小電気機械システム(MEMS)装置の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による実施例の個々の要素は、単一ユニットにおいて、複数ユニットにおいて、または分離機能ユニットの一部として、適切な方法で、物理的に、機能的におよび論理的に実施されうる。本発明は、単一ユニットにおいて実施されてもよいし、異なるユニット間で物理的におよび機能的に分配されてもよい。
【0027】
本発明は、詳細な実施例と関連して記載されるが、本実施例に限定されるものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲と解釈されるべきである。特許請求の範囲において、「を有する」なる用語は、他の可能な要素や工程を除外するものではない。また、要素は複数のものを排除すると解釈すべきではない。図面に示された要素と関連して特許請求の範囲に付された参照番号は、発明の範囲を制限するものと解釈されるべきでない。更に、異なる請求項に記載された個々の特徴は、有利に組合せされてもよい。
【0028】
本発明の態様は、光学要素(レンズ)の表面に、シリコンゲルのような軟質光学材料要素を押し付けたり引っ込めたりすることによって、光学装置の光軸を横断する光学要素表面(例えば、レンズ表面)の光学特性のパラメータ値を停止し、および/または始動し、または変更するための相関性を備えた光学パワースイッチを提供することである。
【0029】
本発明の実施例によれば、光学パワースイッチ装置は、例えば、軟質透明材料要素、例えば、透明なシリコンゲル要素、例えば、軟質であるが硬化されたシリコンゲル要素の立方体薄片に、レンズ面の曲面形状を平らにすることによって、レンズの表面形状を変えることによって提供される。この軟質シリコンゲルの薄片は、光学透明ガラスプレートに堆積され、硬化され、当業者に公知なように硬化した後も軟質を維持している。図1を参照すると、レンズ本体10は、ガラスプレート11に堆積されたシリコンゲル(または軟質材料要素)12の要素の前に配置されている。本発明の光学パワースイッチ(OPS)の作用は、図1に例示するように、例えば、各制御信号でアクチュエータを作動することによってレンズ本体10へとガラスプレート11を移動することであって、軟質シリコンゲル12がレンズ本体10の曲面へ対向し、レンズ本体10の表面がレンズ本体10の光軸を横断している。シリコンゲルとレンズ本体材料の屈折率が等しく、軟質シリコンゲル要素が、図1に示すように、レンズ表面と完全に接触していると、レンズ本体10と、該レンズ本体10表面と接触する軟質シリコンゲル12の組合せの光学的効果は、当業者に公知なように、焦点距離を無限にずらすことである。この条件の光学的効果は、図1のレンズ組立体を通過する光の光学パワーがほぼゼロであることである。シリコンゲル12がレンズ本体10の表面と全く接触しない時には、図1のレンズ組立体を通過する光の光学パワーは、光が通過し、光学パワースイッチ装置がその一部である、総レンズ組立体の光学特性によって定義される。
【0030】
レンズ本体10の表面と軟質シリコンゲル要素12の表面の間の表面接触面積の重なり量は、レンズ組立体を通過する光の光学パワーへの光学的効果を有することは自明である。通過する光の光学パワーの値は、レンズ本体10の各表面とシリコンゲル12の表面の間の接触表面に重なる面積の量に比例する。したがって、各第1レベルと第2レベルの間で、レンズ組立体を通過する光の光学パワーの量を調節することが可能となる。
【0031】
レンズ本体10とシリコンゲル12の材料の屈折率が等しいと、上記した第1光学パワーレベルと第2光学パワーレベルは、光学パワースイッチを「オン」、「オフ」することに等しい。レンズ本体10とシリコンゲル要素12の各屈折率が異なっていると、光学パワースイッチは、それぞれ、第1所定光学パワーレベルと第2所定光学パワーレベルの間で切り替わる。このことは、レンズ組立体を所定の第1焦点距離と第2焦点距離にそれぞれ切り換えることに等しい。上記から明らかなように、光学レンズ本体10と軟質材料要素またはシリコンゲル要素12の間の接触面の重なり面積の量を制御することによって、第1所定値と第2所定値間で焦点距離を制御することが可能となる。
【0032】
本発明の他の実施例によれば、軟質材料要素12、例えば、上記したシリコンゲル要素の奥側とガラスプレート12の奥側それぞれにレンズを用いることによって、レンズを使う時の2つの各焦点距離の値を調節することができる。
【0033】
図2を参照すると、例えば、マクロ光学装置を設計することに関する光学パラメータが示されている。マクロ光学装置は、光学装置が、光学装置に非常に近い対象物に焦点合わせすることが可能な時に使われる用語である。本発明の光学パワースイッチの実施例では、マクロ光学パワースイッチのレンズ直径、例えば、携帯電話に使われるレンズ直径として2ミリメートルが使われている(Dlens=2mm)。f=50mmのマクロ距離が所望である。これは、従来技術で公知の以下の式を計算することによってもたらされる以下のパラメータを提供する。
【0034】
レンズの高さは、以下の式でもたらされる。
【0035】
【数1】


ここで、Hlensは、レンズの高さであり、Rlensは、レンズ本体要素の半径であり、Dlensは、光学パワースイッチ要素の直径である。
【0036】
【数2】


ηは、レンズ本体材料の屈折率である。
【0037】
例えば、η=1.5でf=50mmであると、式(2)は、Rlens=25mmを与える。式(1)はHlens=0.020mmを与える。
【0038】
しかしながら、本発明による光学パワースイッチ装置の実情または設計においては、軟質材料要素12、例えば、シリコンゲル要素は、熱膨張を有する。したがって、使用材料の熱膨張係数、例えば、使用される室温でのシリコンゲル材料の係数や光学要素を使用する時に存在することを期待される温度範囲を補正することが必要である。例えば、室温RT+/−40℃での作動環境は、所定の追加値をHlensパラメータに加えることを必要とする。シリコンゲルが使われる、本発明の実施例によれば、これらの作動条件で100μmのゲル層の熱膨張を補正するのに必要な追加の空間は、0.006ミリメートルである。したがって、たった26μmの移動が、例えば、−20℃から+60℃の温度範囲内で50mmマクロレンズ組立体のために、光学パワースイッチを「オン」、「オフ」切り換えるのに必要である。
【0039】
26μmのこの移動量は、当業者には公知のように、公知のマイクロ電気機械装置(MEMS)アクチュエータ装置または圧電アクチュエータ装置によって達成される。
【0040】
本発明の光学パワースイッチマクロの使用の例が、図3に示される。
【0041】
光学パワースイッチ装置を光学構造において利用することは、本発明の範囲である。本発明の光学パワースイッチの使用の他の例が、図4に示されている。この例は、本発明の光学パワースイッチ装置が、どのように、レンズ組立体においてズーム作用を制御するのに使われるかを示している。本発明の2つの光学パワースイッチ要素間に使われるプリズムレンズの光学特性は、当業者には公知である。光学パワースイッチの機能は、レンズ組立体によって与えられるズーム量を「オン」、「オフ」切り換えすることである。しかしながら、光学パワースイッチと中間の光学プリズム要素の間の接触面に重なる制御可能な面積は、ズーム量を調節することを可能にし、ズーム特性を「オン」、「オフ」切り換えする。
【0042】
本発明の光学パワースイッチが使用されうる多くの他の光学応用がある。米国特許出願2006/0152646A1においては、複数のピンホールと組み合わされた複数の光学スイッチを使用した表示装置が開示されている。表示装置を開示することは、本発明の範囲内ではない。しかしながら、図5において、表示装置に使われる光を調節するために本発明による光学パワースイッチ装置を使う時に、米国特許出願2006/0152646A1の開示による表示装置がいかに簡単になるかを示している。
【0043】
図6は、本発明の光学パワースイッチのレンズ本体における凹状レンズ面(図1の凸の例と対照的に)の使用が可能であることを示している。図6に示したこの実施例においては、凹状レンズ本体要素の中心に微小孔が配置されている。光学パワースイッチを作動するときには、軟質材料要素とレンズ本体の凹状表面間で捕えられる空気やガスは、この微小孔から逃げる。
【0044】
図7は、本発明の積層された光学パワースイッチ装置の実施例を示している。複数の光学パワースイッチ要素が、光学装置に使われ、例えば、図7に示したように、積層される。
【0045】
図8は、マイクロ電気機械装置(MEMS)アクチュエータが、本発明の光学パワースイッチ装置に使われ得ることを示している。左の図は、アクチュエータと光学パワースイッチの移動部品の配置を示している。移動は、紙面に垂直である。右の図は、光学パワースイッチの断面図である。
【0046】
本発明の他の実施例によれば、レンズ本体は、軟質透明材料、例えば、シリコンゲルで作られ、例えば、アクチュエータを作動することによって、ガラスプレートに対して制御可能に押されたり引っ込められたりする。更に、ガラスプレートは、軟質レンズ本体に対して押されたり引っ込められたりする。
【0047】
本発明の他の態様によれば、レンズ本体は、いかなる型の光学要素であってもよい。例えば、本発明の実施例では、レンズ本体は、散乱面である。散乱面が押されて、軟質透明材料要素に接触すると、軟質材料要素に接触した光学要素は、光透過要素となる。
【0048】
本発明の他の態様によれば、レンズ本体は、不規則面、例えば、鋸歯状面やでこぼこ面などからなる光学要素であり、これは、軟質透明材料要素を接触するように押されたり、引っ込められたりし、これにより、光学要素と透明軟質材料要素間の接触の状態、例えば、完全接触か非接触かに依存して、または、光学要素面と透明軟質材料要素面間の接触面積の重なり量に依存して、光学装置への異なる光透過を提供するのである。
【0049】
本発明の他の実施例によれば、光学要素は、フレネルレンズである。
【0050】
本発明の他の実施例によれば、光学要素と軟質材料要素が平行表面を有することは要求されない。例えば、本発明の実施例によれば、光学要素は、軟質材料要素の接触面に対して非平行な表面を備えたプリズムである。これは、光学要素と透明軟質材料要素間の接触の状態、例えば、完全接触か非接触かに依存して、または、光学要素面と透明軟質材料要素面間の接触面積の重なり量に依存して、光学装置を通過する光の方向の変更を提供する。
【0051】
本発明の他の態様によれば、光学要素と軟質材料要素は、平行面を有するが、光学装置を貫通する光透過の光軸に直角にはなっていない。これは、光学要素と透明軟質材料要素間の接触の状態、例えば、完全接触か接触無しかに依存して、または、光学要素面と透明軟質材料要素面間の接触面積の重なり量に依存して、光学装置を通過する光の平行移動を提供する。
【0052】
光学要素の表面と透明軟質材料要素の表面の間の接触を提供する、光学要素または透明軟質材料要素のいずれかの移動(または両方の移動)は、従来技術で公知の多くのアクチュエータによって達成される。本発明の原理によって使われる、いかなる機構や装置や組立体などは添付の特許請求の範囲によって保護される、本発明の範囲内のものである。図示し上述した実施例は、アクチュエータの設計や型の使用を制限するものではない。電子制御されるアクチュエータに適用される制御信号は、接続されるアクチュエータの作動を提供する閾値レベルより高い所定の電圧レベルを備えた信号でありうる。移動量(すなわち、どれくらい遠くまで移動するか揺動するか)は、当業者に公知の電圧レベルに比例することができる。光学装置の多くの適用においては、マイクロコントローラやマイクロプロセッサ装置が利用可能である。例えば、携帯電話やデジタルカメラ等は、所定のアクチュエータ型と設計を達成するための適正な電圧レベルを提供するようにプログラムされうるコンピュータ資源を有している。
【0053】
光学要素表面と透明材料要素表面間の接触面積の重なり面積の所定量が提供されるならば、光学要素の表面と透明材料要素の表面の単純な幾何学モデルが重なり面積の所定レベルを達成するために装置に提供するのに必要な移動量を確認するのに使われてもよい。実際に使用されるアクチュエータの型は、適用される電圧とアクチュエータによってもたらされる変位の間の公知の関係を有しており、所定の移動のためにアクチュエータに適用されねばならない必要電圧は、適正に確認されるのである。この関係は、例えば、検索テーブルに保存され、コンピュータ要素やプロセッサは、底から読み込むことができる。このテーブルは、各変位を示す数値によって索引を付けられ、各索引保存位置で、変位を達成するのに必要な電圧値に相当する数値が保存される。そのような検索テーブルから数値が読取られると、それらがデジタル処理可能ならば、コンピュータ要素やプロセッサ要素は、この値を信号を介して直接転送し、アクチュエータがアナログタイプであると、デジタルアナログ変換機へとこの値を転送する。変位値の数値範囲は、上記したように、「オフ」状態から「オン」状態を定義する数値範囲に相当する。これら状態間を移動する時には、コンピュータ要素またはプロセッサ要素は、テーブルの全ての索引を連続的に通る。これは、この実施例において、このように制御される光学パワースイッチの状態の切換を達成する。滑らかな動きが必要ならば、テーブルから読取る時に使うコンピュータ要素やプロセッサの制御信号や速度をろ過するのに使われる電子フィルタが、本発明の実施例による光学パワースイッチ装置における移動の態様を制御するのに使われ得る。
【0054】
本発明の実施例によれば、コンピュータ要素やプロセッサは、例えば、メッセージや信号のような、本発明の光学パワースイッチ装置を、上記したような、所定の状態にするためにコンピュータ要素やプロセッサに命令する情報を受信する。このようにして、光学パワースイッチ装置を光学装置に一体化することが可能であり、光学装置のどこかで発生した信号は、光学パワースイッチ装置を、例えば、直接制御シグナルとしてまたは通常のループ帰還装置の結果として制御することができる。
【0055】
本発明の光学パワースイッチ装置は、光学装置組立体に使われるあらゆる型の光学要素と組み合わせてまたは単独で使うことのできる、多目的に使え、簡単な頑丈な光学装置である。そのような光学装置または組立体は、本発明の光学パワースイッチ装置を1つだけ備えてもよいし、例えば、1つまたは複数の光学装置または組立体の光軸を横断して、積み重ねられ、または光学装置または光学組立体内に個々に位置決めされる複数のそのような光学パワースイッチ装置を備えてもよい。上記した開示においては、光学パワースイッチ装置のいくつかの適用例が記載されている。しかしながら、これらの例は、本発明の光学パワースイッチの適用の範囲を制限するものではない。例えば、光学パワースイッチ装置は、例えば、光ファイバ通信装置において、多目的光学減衰器として使うことができる。
【0056】
光学パワースイッチ装置を、光が装置の所定の技術的機能を達成するための技術特性として使われるような適用において、添付の特許請求の範囲の規定内で使うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学パワースイッチ(OPS)装置であって、該装置が、透明軟質材料要素(12)の第2面に対向する第1面を有する光学要素(10)を備え、前記透明軟質材料要素(12)が可動透明支持(11)に堆積され、適用される制御信号に反応するアクチュエータが前記透明軟質材料要素(12)の表面を光学要素(10)の表面に移動可能で、これにより、前記光学パワースイッチ装置の少なくとも1つの光学特性または光学パラメータ値を変更し、前記適用される制御信号が、光学要素と透明軟質材料要素の表面間の完全接触または非接触を提供することができ、または、光学要素表面面積の一部と軟質材料要素表面面積の一部の間の特定の重なり接触面積量を提供することを特徴とする、光学パワースイッチ装置。
【請求項2】
前記光学要素(10)が移動可能であり、該移動がアクチュエータによって制御され、透明支持(11)上に堆積される透明軟質材料要素(12)が固定されることを特徴とする、請求項1に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項3】
前記光学要素(10)が移動可能であり、該移動が第1アクチュエータによって制御され、透明支持(11)上に堆積される透明軟質材料要素(12)が可動であり、該移動が第2アクチュエータによって制御されることを特徴とする、請求項1に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項4】
前記光学要素(10)が、透明軟質材料製であり、前記軟質材料要素(12)が省略され、前記支持(11)が単一で使われることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項5】
前記光学要素(10)が凹レンズであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項6】
前記光学要素(10)が凸レンズであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項7】
前記光学要素(10)が平行面を備えたプリズムであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項8】
前記光学要素(10)が平行面を持たないプリズムであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項9】
前記光学要素(10)の第1面と前記透明軟質材料要素(12)の第2面がそれぞれ、前記光学パワースイッチ装置の光軸を、該光軸に対して直角に交差することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項10】
前記光学要素(10)の第1面と前記透明軟質材料要素(12)の第2面がそれぞれ、前記光学パワースイッチ装置の光軸を、該光軸に対して地平線俯角に交差することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項11】
前記光学要素(10)の材料の屈折率が、前記透明軟質材料要素(12)の屈折率に等しいことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項12】
前記光学要素(10)の材料の屈折率が、前記透明軟質材料要素(12)の屈折率と異なることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項13】
前記制御信号レベルが、前記アクチュエータと連絡するコンピュータ装置で計算され、該信号レベルが、該コンピュータ装置に伝達されるメッセージまたは外部信号によって定義される前記光学パワースイッチ装置の状態に比例することを特徴とする請求項1に記載の光学パワースイッチ装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の光学パワースイッチ装置のマクロレンズ装置への使用。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか1項に記載の光学パワースイッチ装置のズームレンズ装置への使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−504777(P2013−504777A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528381(P2012−528381)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063391
【国際公開番号】WO2011/029932
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(509103646)
【Fターム(参考)】