説明

光学フィルムの欠陥のマーキング方法

【課題】光学フィルムの欠陥をマークするマーキングによって、欠陥の位置を容易に特定することができるとともに、そのマーキング自体が誤認であった場合においても、そのマーキング自体が欠陥とならず、マーキングされた光学フィルムが最終製品の品質に悪影響を及ぼすことを回避することができる光学フィルムの欠陥マーキング方法を提供することを目的とする。
【解決手段】光学フィルムの欠陥に対して、可視光外の波長の光にて蛍光するインクを用いてマーキングする光学フィルムの欠陥のマーキング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキング自体が光学フィルムの品質に悪影響を及ぼさない光学フィルムの欠陥のマーキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビ等に用いられる位相差フィルムは、液晶テレビ等の大画面化に伴い、光学的な欠陥に対する要求が強くなっている。その要求に対して、人が顕微鏡又は偏光板を使用して特定面積内の異物発生個数を調べたり、目視又は投影により表面の欠陥を判定していたが、それらの判定に長時間を要し、多大な労力が必要であるとともに、目視判定には熟練が必要なため、十分な品質保証が困難であった。
そこで、自動検査による光学的な欠陥の検出に関する研究も進められており、CCDカメラ及び偏光板を用いた検査(例えば、特許文献1参照)が提案されている。この検査方法では、エリアセンサー又はラインセンサー等のCCDカメラと、2つの偏光板を用いて、光学的な欠陥を検出することができる。
そして、このように、欠陥が検出された後、常に、欠陥の位置が明確に分かれば、最終製品である液晶パネルでの光学フィルムのロスを極力低減することができるため、その欠陥位置を、インクでマーキングすることが行われている。
【特許文献1】特開平6−148095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述したような欠陥の検査方法では、CCDカメラによるノイズを低減することができず、未だ検出感度が低い等のため、欠陥の誤検出も多く認められている。
従って、マーキングされた欠陥であっても、実際には欠陥ではなかったものも数多く存在し、その場合には、本来は欠陥でなかった箇所にマーキングのインクによって欠陥が生じることとなり、光学フィルムのロスが増加し、その結果、生産効率を低減させることとなる。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、光学フィルムの欠陥のマーキングによって、欠陥の位置を容易に特定することができるとともに、そのマーキング自体が誤検出であった場合においても、そのマーキング自体が欠陥とならず、マーキングされた光学フィルムが最終製品の品質に悪影響を及ぼすことを回避することができる光学フィルムの欠陥マーキング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光学フィルムの欠陥のマーキング方法は、光学フィルムの欠陥に対して、可視光外の波長の光にて蛍光するインクを用いてマーキングすることを特徴とする。
この光学フィルムの欠陥のマーキング方法では、光学フィルムの欠陥は、光学欠陥であるか、クロスニコル状態で検出されたものであることが好ましい。
また、マーキングを、インクジェットシステムを用いて、インラインで行うことが好ましい。
さらに、所定の方向に直線偏光されたテレセントリックなレーザービームを、光学フィルムにインラインで走査させつつ、照射し、
前記光学フィルムを透過したレーザービームを、照射時のレーザービームの偏光方向と平行する方向に吸収軸をもつ偏光板を通過させた後に受光し、欠陥を検出し、
検出された欠陥に対してマーキングすることが好ましい。
また、光学フィルムが、位相差フィルムであるか、ノルボルネン系の樹脂により形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光学フィルムの欠陥のマーキング方法では、光学フィルムに存在する欠陥に直接マーキングを行うために、光学フィルムを使用する前に、欠陥を含む光学フィルムを排除することができる。しかも、欠陥が誤検出されていた場合においても、そのマーキングに起因する品質面での悪影響を回避し、光学フィルムのロスの発生を防止することができる。
【0007】
特に、光学フィルムの欠陥が光学欠陥である場合又はクロスニコル状態で検出されたものである場合には、光量が小さいなどに起因して誤検出の可能性が高いため、より効果的である。
また、マーキングをインクジェットシステムを用いてインラインで行う場合には、例えば、長尺状の光学フィルムであっても、効率的に全面に渡って検査することが可能となる。
さらに、所定の方向に直線偏光されたテレセントリックなレーザービームを用いて、所定の方法で欠陥をマーキングする場合には、光学欠陥をより効果的に検出することができ、欠陥のマーキング方法を適切に適用することができる。
また、光学フィルムが位相差フィルムである場合には、光学欠陥を高感度で検出することが可能であり、より有効である。
さらに、光学フィルムがノルボルネン系の樹脂により形成される場合には、固有複屈折率を低減し、光弾性係数を抑えることができ、有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の光学フィルムの欠陥マーキング方法は、光学フィルムの欠陥に対して、可視光外の波長の光にて蛍光するインクを用いるマーキング方法である。
可視光外の波長の光にて蛍光するインクとしては、例えば、公知のインビジブルインクと称されるものを用いることが適している。インビジブルインクとしては、特に限定されないが、例えば、可視光または昼光の下では視認不可能で、紫外光(例えば、275nm〜450nm、好ましくは350nm〜410nm)を照射すると、基底状態から励起状態へと変化することにより、無色から有色に発光して、視認可能となる蛍光着色剤、蛍光増白剤等が挙げられる。
【0009】
このようなインクとしては、例えば、ジアミノスチルベン系、スチルベン系(例えば、4,4’−ビス(トリアジン−2−イルアミノ)スチルベン−2,2’−ジスルホン酸誘導体等)、イミダゾール系、チアゾール系、オキサゾール系(例えば、2,2’―(2,5−チオフェンジイル)−ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール等)、トリアゾール系、オキサジアゾール系、クマリン系、ナフタルイミド系、ピラゾリン系などの市販の蛍光増白染料、希土類金属キレート(例えば、ユーロピウムアセトネートの誘導体等)等が挙げられる。また、例えば、特開平8−199101号公報、特開平11−152436号公報、特開2004−189850号公報、特表2001−507052号公報、特開2005−187540号公報等に記載されている公知のもののいずれをも用いることができる。
【0010】
光学フィルムの欠陥とは、リング状欠陥、打痕打痕欠陥、ゲル欠陥、異物の混入・付着等の欠陥を包含するが、なかでも、打痕欠陥、ゲル欠陥、異物の混入・付着等の光学欠陥であることが好ましい。光学欠陥とは、局所的に複屈折をもった欠陥を意味し、例えば、クロスニコル状態で光り抜けする欠陥を指し、異物や、フィルム自体の歪みによってもたらされるものである。
【0011】
このような欠陥は、従来公知の方法を用いて検出することができる。特に、クロスニコル状態で検出したものであることが好ましい。例えば、目視又はルーペを用いた検出でもよいし、CCDカメラを用いる方法であってもよい(特開平6−148095号公報等参照)。特に、光源とCCDカメラとの間に偏光板をクロスニコルで配置し、その間をフィルムが通過するように設定した方法を用いることにより、光学欠陥を検出することが可能となり、好ましい。
また、レーザーを用いて行う検査方法であってもよい(例えば、特開2001−264259号公報等参照)。特に、直線偏光のレーザー光を、光学フィルムの搬送方向と平行又は直角方向となるように設定し、さらに、検出器の前面に、照射時のレーザーの偏光方向が吸収軸となるように偏光板を配置し、欠陥のない状態では、レーザーが通過しない条件にて検出を行うことが好ましい。
【0012】
さらに、レーザを用いる検査方法として、例えば、図1に示すように、少なくとも、レーザを備える投光機11と、レーザ光を受光し得る検出器13と、検出器13の前面に配置された偏光板12とを備えて構成される検査装置10を用いるものであってもよい。
【0013】
投光機には、光源として、レーザが備えられている。レーザは、例えば、波長が350nmから800nm程度である半導体レーザであることが好ましい。レーザ光は、直線偏光されていることが好ましく、例えば、照射する光学フィルムの幅方向又は長手方向に偏光されているものが好ましい。
レーザ光の光学フィルムへの入射角は、光学フィルム面に対して、60°から90°であることが好ましい。つまり、正透過軸(90°)に設定することにより光学欠陥が検出することができ、傾斜軸(60°から90°未満)に設定することにより、光学欠陥の有無のみならず、欠陥の形状をも検出することができる。
レーザ光は、シングルモードでもよい、縦マルチモードでもよい。また、レーザ光のスポット径は縦、横の平均値が100μm程度以下となるように設定されていることが好ましい。
【0014】
レーザー光を照射する方式は、テレセントリック方式を用いる。これにより、レーザ光が照射される光学フィルムの全幅において、同じ入射角でレーザ光を入射させることができる。つまり、従来のCCDカメラを用いて測定していた場合には、カメラの中央部と周辺部とで検出感度に差が生じ、特に、クロスニコルで検出を行う場合、角度の影響により、幅方向での光の抜け具合(クロスニコル時での光抜けの強度)が異なることから、検出感度が異なり、全幅において、同感度での検出は困難であった。一方、この方法では、このような検出感度による差異を回避することができ、光学フィルムの全幅において感度差なく欠陥を検出することが可能となる。なお、テレセントリック方式は、レーザ光のテレセントリックビームを得ることができるものであればどのような方法又は手段によって実現されていてもよく、例えば、特開2004−138828号公報、特開2002−122781号公報、特表平11−500834号公報等、従来公知の光学系又はこれら光学系に準じた方法及び手段等を利用することにより、実現することができる。
【0015】
レーザ光のスキャン周波数は、特に限定されるものではなく、例えば、光学フィルムのライン速度等によって適当な周波数に設定することができ、2000〜5000Hz程度が挙げられる。具体的には、ライン速度が20m/minであり、流れ方向(例えば、光学フィルムの長手方向)の分解能を100μmとすれば、例えば、幅方向の周波数は3333Hzとすることが適している。
【0016】
偏光板は、検出器の前面に配置されていることが必要である。また、偏光板は、光学フィルムに照射されるレーザビームの偏光方向と吸収軸が平行するように設置することが必要である。このように偏光板を設置することにより、光学フィルムの欠陥に照射され、その欠陥によって偏光状態が変化させられたレーザ光が、この偏光板を通過することとなり、後述する検出器で容易に通過したレーザ光を検出することができる。
【0017】
検出器としては、レーザ光を受光、検出することができるものであれば、特に限定されず、どのようなものを用いてもよい。例えば、光電センサ、光検出素子、光電変換素子が挙げられ、なかでも、光電子増倍管が適している。光電子増倍管を用いる場合、光電子増倍管の取り込み周波数は、幅方向及び流れ方向の分解能等によって適当な周波数に設定することができ、例えば、1MHzから80MHz程度が挙げられる。具体的には、ライン速度が20m/minであり、流れ方向の分解能が100μm、一台の検出器で検出される検査幅を1000mmとすれば、33.3MHzとすることが適している。
なお、検出器において光電センサを用いる場合には、投光機のテレセントリックなレーザービームを、そのまま受光できるように、投光機又は光学フィルムの幅に対応するような形状又は配置とすることが好ましい。例えば、投光機又は光学フィルムの幅方向に、光電子増倍管を複数配置してもよいし、光電子倍増管を端部にのみ1つ配置し、投光機又は光学フィルムの幅方向にわたるアクリルロッドなどの導光部材を用いてもよい。
【0018】
なお、このような装置を用いる場合、レーザ光を照射する光学フィルムは、静止状態でもよいが、光学フィルムの幅方向又は長手方向に搬送されている状態で行うことが好ましい。このため、上述したような光学フィルムの検査方法を実現し得る装置では、投光機と、検出器の前面に配置された偏光板との間で、光学フィルムが搬送されるように、搬送手段を備えていることが好ましい。搬送手段としては、光学フィルムを載置し、一定の速度で移動し得る移動ステージのようなものであってもよいし、長尺の光学フィルムを、巻出ロールから巻取ロールへ巻き取るような巻き上げ装置のようなものであってもよい。
【0019】
このような装置を用いて、まず、所定の方向に直線偏光されたテレセントリックなレーザービームを、光学フィルムに走査させつつ、照射する。この場合の走査は、いずれの方向であってもよく、光学フィルムの幅方向、長手方向等が挙げられるが、後者が好ましい。長手方向に走査することにより、長手方向に連続的に光学フィルムを検査することができる。
【0020】
次いで、光学フィルムを透過したレーザービームを、照射時のレーザービームの偏光方向と平行する方向に吸収軸をもつ偏光板を通過させた後に受光する。受光は、上述したように受光センサ等により行うことができる。それによって、受光したレーザ光の強度と、予め設定した閾値とを比較し、その閾値よりも大きいか小さいかを判別し、それによって、光学フィルムにおける欠陥の有無を検出することができる。
【0021】
このように検出された光学フィルムの欠陥をマーキングする方法は、例えば、インクジェットシステムを用いて行うことが好ましい。さらに、インラインで行うことが好ましい。
インクジェットシステムは、公知のシステムをそのまま又は公知のシステムに準じて用いることができる。なお、欠陥に直接マーキングするためには、インクジェットのヘッドが光学フィルムの幅方向に駆動する機構を設けたものを利用するか、インクジェットヘッドをフィルム幅方向に多数配置したものを利用して、欠陥に対して最も近いヘッドにてマーキングする方法が挙げられる。インクジェットの噴射システムとしては、ピエゾインクジェット方式、熱インクジェット方式、コンティニアスインクジェット方式等の種々のものが挙げられる。
【0022】
光学フィルムは、例えば、位相差フィルム、偏光板、カラーフィルター、拡散板等公知のもののいずれでもよいが、特に、位相差フィルムであることが好ましい。
光学フィルムの材質は、特に限定されず、どのようなものを用いてもよい。例えば、熱可塑性樹脂が挙げられ、なかでも、非晶性熱可塑性樹脂が好ましい。ここで、非晶性熱可塑性樹脂とは、ほとんど結晶構造をとらない無定形状態を保つ高分子である。このような樹脂を用いることにより、透明性に優れた光学フィルムを得ることができる。なお、このような樹脂のガラス転移点Tgは、特に限定されるものではなく、一般に、100℃以上のものが好ましい。自動車に搭載され、高温環境で使用されるような場合においても、十分な耐久性を確保することができるからである。非晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリサルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル及びノルボルネン系樹脂等が挙げられる。これらは、1種のみで用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、単層構造でもよく、2層以上の積層構造でもよい。
【0023】
これらの非晶性熱可塑性樹脂のなかでも、光学特性を考慮すると、固有複屈折率が低く、かつ光弾性係数が小さいため、特に、位相差フィルムに関しては、ノルボルネン系樹脂が好適である。
【0024】
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物、ノルボルネン系モノマーとオレフィンとの付加重合体、ノルボルネン系モノマー同士の付加重合体及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは、1種のみで用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン等の三環体;テトラシクロドデセン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;テトラシクロペンタジエン等の七環体;これらのメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル、ビニル等のアルケニル、エチリデン等のアルキリデン、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール等の置換体;さらにこれらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、無水酸基、シリル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基等の炭素、水素以外の元素を含有する基、いわゆる極性基を有する置換体等が挙げられ、なかでも、入手が容易であり、反応性に優れ、得られる成形品の耐熱性が優れることから、三環体、四環体及び五環体のノルボルネン系モノマーが好適に用いられる。これらのノルボルネン系モノマーは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0026】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物としては、ノルボルネン系モノマーを公知の方法で開環重合した後、残留している二重結合を水素添加したものが広く用いられている。なお、開環重合体水素添加物は、ノルボルネン系モノマーの単独重合体であってもよく、ノルボルネン系モノマーと他の環状オレフィン系モノマーとの共重合体であってもよい。
【0027】
ノルボルネン系モノマーとオレフィンとの付加重合体としては、ノルボルネン系モノマーとα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。α−オレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数が2〜20、好ましくは2〜10のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等が挙げられる。なかでも、共重合性に優れているため、エチレンが好適に用いられる。また、他のα−オレフィンをノルボルネン系モノマーと共重合させる場合にも、エチレンが存在している方が共重合性を高めることができ、好ましい。
【0028】
ノルボルネン系樹脂は公知であり、商業的に入手可能である。公知のノルボルネン系樹脂の例としては、例えば、JSR社製、商品名「アートン」シリーズ、日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア」シリーズ等が挙げられる。
【0029】
本発明の光学フィルムには、任意に、種々の添加剤が添加されてもよい。このような添加剤としては、熱可塑性樹脂の劣化防止、成形された光学フィルムの耐熱性、耐紫外線性又は平滑性等を向上させる種々の添加剤が挙げられる。例えば、フェノール系又はリン系等の酸化防止剤;ラクトン系等の熱劣化防止剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系等の紫外線吸収剤;脂肪族アルコールのエステル系、多価アルコールの部分エステル系や部分エーテル系等の滑剤;アミン系等の帯電防止剤等が例示される。これらは、1種のみで用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、光学フィルムは、例えば、15〜300μm程度、好ましくは15〜200μm程度の厚みを有するものが好ましい。レーザービームを確実に透過させることができるからである。
以下、本発明の光学フィルムの欠陥のマーキング方法の実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
(光学フィルム)
熱可塑性ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア1420R」)を用いて、60μm程度の厚みのフィルムを作製した後、以下の延伸条件にて、延伸を行い、位相差フィルムを得た。
延伸方式 …ロール間延伸方式
延伸倍率 …1.8倍
延伸前走行速度…9m/min
予熱温度 …80℃
延伸温度 …142℃
冷却温度 …90℃
【0031】
(実施例1)
上述したように作製した光学フィルムを、光源(ライトガイド・ハロゲンランプ)の前面に配置し、さらに、光学フィルムの前後に、2枚の偏光板をクロスニコル状態で配置することにより、光源からの光を、光学フィルム及び2枚の偏光板を通し、目視及びルーペ(10倍)にて目視検査を行い、欠陥を検出した。
検出した欠陥に対して、Eu−キレート化合物を含む可視光域で透明なインクにてマーキングを行った。
【0032】
(実施例2)
上記で得られた光学フィルム24を、図2に示す検査装置20を用いて検査した。
この検査装置20は、検出器としてCCDカメラ21と、光源としてメタルハライドを用いた伝送ライト23と、CCDカメラ21のレンズ部分に配置された偏光フィルタ25と、伝送ライト23の前面に配置された偏光板22とを備えて構成されている。
この検査装置20では、偏光フィルタ25と偏光板22とは、クロスニコル状態となるようにセットされている。レーザビームの入射角αはフィルム全幅にわたって75°となるように設定した。
【0033】
なお、光学フィルム24は、巻出ロールから巻取ロールへ巻き取るような巻き上げ装置(図示せず)を用いて、CCDカメラ21と偏光板22との間で、光学フィルム24を長手方向に搬送しながら検査した。
検出した欠陥に対して、Eu−キレート化合物を含む可視光域で透明なインクにて、光学フィルムの幅方向に移動機構を有するインクジェット方式のマーカーによって、マーキングを行った。
【0034】
(実施例3)
上記で得られた光学フィルム14を、図1に示すレーザを備える投光機11と、レーザ光を受光し得る検出器13と、検出器13の前面に配置された偏光板12とを備える検査装置10を用いて検査した。
この検査装置10は、投光機11に、光源としてレーザダイオード(波長660nm)を備え、直線偏光方向を、検査する光学フィルム14の搬送方向Aに対して直角方向となるように設定した。レーザパワーは1.4Wであり、レーザビームのスポットサイズは縦50μm、横100μmとした。レーザビームの入射角αはフィルム全幅にわたって75°となるように設定した。また、偏光板12は、光源から出射されたレーザビームの直線偏光方向にクロスニコル状態となるようにセットした。
【0035】
なお、光学フィルム14は、巻出ロールから巻取ロールへ巻き取るような巻き上げ装置(図示せず)を用いて、投光機11と偏光板12との間で、光学フィルム14を長手方向に搬送しながら、検査を行った。
検出した欠陥に対して、Eu−キレート化合物を含む可視光域で透明なインクにて、光学フィルムの幅方向の長さに対応し、幅方向の全長に複数のノズルが配列したヘッドを有したインクジェット方式のマーカーによって、マーキングを行った。
【0036】
(比較例1)
黒い顔料インクを用いてマーキングする以外は実施例2と同様に欠陥をマーキングした。
【0037】
実施例、比較例で得られたフィルムから欠陥が検出された部分を含むように枚葉フィルムを切り出し、このうち実施例の枚葉フィルムに紫外線を照射することでマーキングの存在が確認できた。これにより、再検査工程における精度を高めた欠陥検査を効率的に実施することが可能となる。
次いで、これらの枚葉フィルムを液晶パネルに組み込んでマーキングの視認性を確認したところ、光学欠陥(例えば、輝点欠陥)の有無にかかわらず、比較例のフィルムではマーキング自体が新たな光学欠陥となってしまう一方、実施例のフィルムではマーキングは視認されず、仮に検査工程で誤検出された、または許容できる程度の光学欠陥をそのまま製品に組み込むことが可能となり、マーキングによる光学フィルムのロス発生といった不具合を解消できることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の光学フィルムの欠陥のマーキング方法は、種々の光学フィルムの欠陥の検出時に利用することができるとともに、他の用途に用いられるフィルム、薄板状部材等の欠陥の検出時にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】光学フィルムの検査方法を実現する装置の概略図である。
【図2】光学フィルムの検査方法を実現する別の装置の概略図である。
【符号の説明】
【0040】
10、20 検査装置
11 投光機
12、22 偏光板
13 検出器
14、24 光学フィルム
A 搬送方向
21 CCDカメラ
23 伝送ライト
25 偏光フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの欠陥に対して、可視光外の波長の光にて蛍光するインクを用いてマーキングすることを特徴とする光学フィルムの欠陥のマーキング方法。
【請求項2】
光学フィルムの欠陥が、光学欠陥である請求項1に記載の欠陥のマーキング方法。
【請求項3】
光学フィルムの欠陥は、クロスニコル状態で検出されたものである請求項1又は2に記載の欠陥のマーキング方法。
【請求項4】
マーキングを、インクジェットシステムを用いて、インラインで行う請求項1〜3のいずれか1つに記載の欠陥のマーキング方法。
【請求項5】
所定の方向に直線偏光されたテレセントリックなレーザービームを、光学フィルムにインラインで走査させつつ、照射し、
前記光学フィルムを透過したレーザービームを、照射時のレーザービームの偏光方向と平行する方向に吸収軸をもつ偏光板を通過させた後に受光し、欠陥を検出し、
検出された欠陥に対してマーキングする請求項1〜4のいずれか1つに記載の欠陥のマーキング方法。
【請求項6】
光学フィルムが位相差フィルムである請求項1〜5のいずれか1つに記載の欠陥のマーキング方法。
【請求項7】
光学フィルムがノルボルネン系の樹脂により形成されたものである請求項1〜6のいずれか1つに記載の欠陥のマーキング方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−175940(P2008−175940A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7824(P2007−7824)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】