説明

光学フィルムの製造装置

【課題】製造ラインを止めることなく、用途の異なる光学フィルムの連続的製造、ロールの交換およびロールの清掃が可能な光学フィルムの製造装置を提供すること。
【解決手段】1以上の鋳型ロール2および1以上の鏡面ロール3を備えた凹凸転写手段10を有し、該凹凸転写手段においてポリマーフィルム1を鋳型ロール2と鏡面ロール3に交互に張架させて搬送することにより、鋳型ロール表面の凹凸形状をポリマーフィルムに転写させる光学フィルムの製造装置であって、前記凹凸転写手段10におけるロールのうち少なくとも1つのロールが位置変更可能な可動式であることを特徴とする光学フィルムの製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムは、反射防止性(防眩性)等のフィルム機能およびフィルムの円滑搬送、巻きズレ防止もしくはフィルム同士のブロッキング防止等の製造特性の観点から、表面に鋳型ロールの凹凸形状を転写させることが知られている。凹凸転写手段としては、例えば図8に示すように、1以上の鋳型ロール101および1以上の鏡面ロール102を備えたものが有用である。そのような凹凸転写手段において、ポリマーフィルム110は鋳型ロール101と鏡面ロール102に交互に張架され搬送されることにより、鋳型ロール表面の凹凸形状がポリマーフィルムに転写される(例えば、特許文献1)。上記した従来の凹凸転写手段では、鋳型ロール101および鏡面ロール102は回転可能に取り付けられているものの、その軸は移動不可能な状態で取り付けられていた。
【0003】
しかしながら、光学フィルムの用途によっては、光学フィルムに転写されるべき凹凸の寸法や形成領域や形状が異なったり、凹凸形状を転写する必要がなかったりした。そのため、用途が異なる光学フィルムを製造するときは、一旦、製造ラインを止めて、凹凸の異なる鋳型ロールに交換したり、鋳型ロールおよび/または鏡面ロールの取り付け位置を調整したり、鋳型ロールを取り外したりする必要があった。そのため、光学フィルムの生産性に問題が生じていた。また鋳型ロールには汚れが付着し易く、ロールの交換または清掃が頻繁に必要になるところ、新しい鋳型ロールに交換するときやロールを清掃するときも、一旦、製造ラインを止める必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−156615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、製造ラインを止めることなく、用途の異なる光学フィルムの連続的製造、ロールの交換およびロールの清掃が可能な光学フィルムの製造装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、特に、製造ラインを止めることなく、用途の異なる光学フィルムの連続的製造、鋳型ロールの交換および鋳型ロールの清掃が可能な光学フィルムの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1以上の鋳型ロールおよび1以上の鏡面ロールを備えた凹凸転写手段を有し、該凹凸転写手段においてポリマーフィルムを鋳型ロールと鏡面ロールに交互に張架させて搬送することにより、鋳型ロール表面の凹凸形状をポリマーフィルムに転写させる光学フィルムの製造装置であって、
前記凹凸転写手段におけるロールのうち少なくとも1つのロールが位置変更可能な可動式であることを特徴とする光学フィルムの製造装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造ラインを止めることなく、可動式としたロールの取り外し・交換および取り付け位置の調整が可能であるので、用途の異なる光学フィルムを連続的に製造できる。例えば、凹凸の寸法、形成領域および/または形状が異なる光学フィルムを連続的に製造できる。そのため生産性が向上する。また新しいロールへの交換時およびロールの清掃時にも製造ラインを止める必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(A)は本発明における凹凸転写手段の一例を示す概略模式図であり、(B)および(C)は、(A)に示す凹凸転写手段において可動式ロールが移動した後の状態を示す概略模式図である。
【図2】(A)は本発明における凹凸転写手段の別の一例を示す概略模式図であり、(B)および(C)は、(A)に示す凹凸転写手段において可動式ロールが移動した後の状態を示す概略模式図である。
【図3】(A)〜(C)は、鋳型ロールの軸方向ADを通る切断面におけるロール表面近傍の一例を示す概略模式図である。
【図4】(A)および(B)は、図3(A)に示す鋳型ロールを用いて、フィルム張力を変化させたときの、鋳型ロールとフィルムとの当接状態を概略的に表した模式図である。
【図5】(A)および(B)は、図3(B)に示す鋳型ロールを用いて、フィルム張力を変化させたときの、鋳型ロールとフィルムとの当接状態を概略的に表した模式図である。
【図6】(A)および(B)は、図3(C)に示す鋳型ロールを用いて、フィルム張力を変化させたときの、鋳型ロールとフィルムとの当接状態を概略的に表した模式図である。
【図7】本発明に係る光学フィルムの製造装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図8】従来の凹凸転写手段の一例を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る光学フィルムの製造装置は、1以上の鋳型ロールおよび1以上の鏡面ロールを備えた凹凸転写手段を有するものである。そのような凹凸転写手段においてポリマーフィルム(以下、単にフィルムと呼ぶことがある)を鋳型ロールと鏡面ロールに交互に張架させて搬送することにより、鋳型ロール表面の凹凸形状をポリマーフィルムに転写させる。以下、図面を用いて、凹凸転写手段について詳しく説明する。図1(A)は、本発明における凹凸転写手段の一例(10A)を示す概略模式図であり、図1(B)および図1(C)は、図1(A)に示す凹凸転写手段10Aにおいて可動式ロールが移動した後の状態を示す概略模式図である。図2(A)は、本発明における凹凸転写手段の別の一例(10B)を示す概略模式図であり、図2(B)および図2(C)は、図2(A)に示す凹凸転写手段10Bにおいて可動式ロールが移動した後の状態を示す概略模式図である。図1(A)〜(C)(以下、まとめて単に図1と呼ぶことがある)、および図2(A)〜(C)(以下、まとめて単に図2と呼ぶことがある)はロールの軸方向からみたときの概略見取り図である。
【0011】
<凹凸転写手段>
本発明において凹凸転写手段におけるロールのうち少なくとも1つのロールは位置変更可能な可動式である。可動式とは、製造ラインにおいて光学フィルムの連続的製造の最中であっても、当該ロールを、軸についてフィルム幅手方向に対して平行を保ちつつ、かつ他のロールと接触させることなく、駆動手段によって移動させることができる、という意味である。製造ラインにおいて光学フィルムを連続的に製造しているとき、ある一定量の光学フィルムの製造が完了したら、可動式ロールの位置を変更することにより、製造ラインを止めることなく、可動式ロールの取り外し・交換および取り付け位置の調整が可能となる。そのため、用途の異なる光学フィルムを連続的に製造でき、生産性が向上する。また新しいロールへの交換時およびロールの清掃時にも製造ラインを止める必要がなくなる。
【0012】
詳しくは、鋳型ロールおよび/または鏡面ロールを、軸方向からみたときの位置で、フィルムと当接しない位置まで退避させると、製造ラインを止めることなく、当該ロールの取り外し・交換が可能になる。具体的には、例えば、図1(A)または図2(A)に示すように、フィルム1を鋳型ロール2と鏡面ロール3に交互に張架させて搬送することにより、鋳型ロール2表面の凹凸形状をフィルム1に転写させているとき、鋳型ロール2を方向Dで移動させ、図1(B)または図2(B)に示すように、フィルム1と当接しない位置まで退避させると、製造ラインを止めることなく、当該ロールの取り外し・交換が可能になる。このとき、新たに取り付けられるロールを選択することにより、鋳型ロール2の移動前とは凹凸の寸法や形成領域や形状が異なる所望の光学フィルムを連続的に製造できる。また退避させたロールをそのままの状態に維持するか、取り外すことにより、鋳型ロールによる凹凸を表面に有さない光学フィルムを連続的に製造できる。
【0013】
一方で、鋳型ロールおよび/または鏡面ロールを、当該ロールとフィルムとの当接を維持しながらも、フィルムの搬送方向での張力が減少または増加する方向に移動させると、製造ラインを止めることなく、フィルムに対する鋳型ロールの押圧力を減少または増加させ得る。その結果、ロール移動前とは転写率や凹凸形状が異なる光学フィルムが連続的に製造できる。転写率が小さくなると、凹凸の寸法(表面粗さ)が小さくなり、転写率が大きくなると、凹凸の寸法(表面粗さ)が大きくなる。
【0014】
詳しくは例えば、鋳型ロールおよび/または鏡面ロールを、フィルムの搬送方向での張力が減少する方向に移動させると、製造ラインを止めることなく、フィルムに対する鋳型ロールの押圧力を減少させ得る。そのため、ロール移動前の転写率よりも小さい転写率で凹凸形状が転写されるようになり、凹凸形状も異なる光学フィルムを連続的に製造できる。具体的には、例えば、図3(A)に示すように軸方向ADにおいて中央部から両端部にかけて表面粗さが均一な鋳型ロールを用い、図1(A)または図2(A)に示すように、鋳型ロール2表面の凹凸形状をフィルム1に転写させているとき、鋳型ロール2を、フィルムの搬送方向Dでの張力が減少する方向Dで移動させながら、図1(C)または図2(C)に示すように、フィルム1との当接を確保すると、製造ラインを止めることなく、フィルム1に対する鋳型ロール2の押圧力を減少させ得る。このとき、鋳型ロール2とフィルム1との当接状態は、例えば、図4(A)に示すような状態から、図4(B)に示すような状態に変化する。このため、ロール移動前の転写率よりも小さい転写率で凹凸形状が転写されるようになり、凹凸形状も異なる光学フィルムを連続的に製造できるようになる。ロール移動の際には、方向Dでのロール移動量が大きいほど、フィルムに対する押圧力は小さくなるので、転写率は小さくなる。図3(A)は、鋳型ロール2の軸方向を通る切断面におけるロール表面近傍の一例を示す概略模式図である。図4(A)および図4(B)は、図3(A)に示す鋳型ロールを用いて、フィルム張力を変化させたときの、鋳型ロール2とフィルム1との当接状態を概略的に表した模式図である。
【0015】
また例えば、鋳型ロールおよび/または鏡面ロールを、フィルムの搬送方向での張力が増加する方向に移動させると、製造ラインを止めることなく、フィルムに対する鋳型ロールの押圧力を増加させ得る。そのため、ロール移動前の転写率よりも大きい転写率で凹凸形状が転写されるようになり、凹凸形状も異なる光学フィルムを連続的に製造できる。具体的には、例えば、図3(A)に示すように軸方向ADにおいて中央部から両端部にかけて表面粗さが均一な鋳型ロールを用い、図1(A)または図2(A)に示すように、鋳型ロール2表面の凹凸形状をフィルム1に転写させているとき、鋳型ロール2を、フィルムの搬送方向Dでの張力が増加する方向Dで移動させると(図示せず)、製造ラインを止めることなく、フィルム1に対する鋳型ロール2の押圧力を増加させ得る。このとき、鋳型ロール2とフィルム1との当接状態は、例えば、図4(B)に示すような状態から、図4(A)に示すような状態に変化する。このため、ロール移動前の転写率よりも大きい転写率で凹凸形状が転写されるようになり、凹凸形状も異なる光学フィルムを連続的に製造できるようになる。ロール移動の際には、方向Dでのロール移動量が大きいほど、フィルムに対する押圧力は大きくなるので、転写率は大きくなる。
【0016】
可動式とするロールは鋳型ロールであっても、鏡面ロールであっても、または両方のロールであってもよい。図1および図2において詳しくは、全ての鋳型ロール2を可動式とし、全ての鏡面ロール3を固定式としているが、鋳型ロール2および鏡面ロール3のうち1以上のロールが可動式であればよい。例えば、1以上の鋳型ロール2を可動式とし、残りの鋳型ロール2および全ての鏡面ロール3を固定式としてもよいし、全ての鋳型ロール2および鏡面ロール3を可動式としてもよいし、または1以上の鏡面ロール3を可動式とし、残りの鏡面ロール3および全ての鋳型ロール2を固定式としてもよい。鏡面ロール3を可動式とした場合であっても、鋳型ロール2を可動式とした場合と同様に、可動式鏡面ロールは、フィルムの搬送方向での張力が減少または増加する方向に移動させることができので、製造ラインを止めることなく、転写率や凹凸形状が異なる光学フィルムを連続的に製造できる。鏡面ロール3を可動式とする場合、例えば図1および図2において、鏡面ロール3にとって、フィルムの搬送方向Dでの張力が減少する方向Dは図面上の略下方向であり、フィルムの搬送方向Dでの張力が増加する方向Dは図面上の略上方向である。
本明細書中、固定式とは、当該ロールは表面が軸を中心として回転可能であるものの、軸を移動させることができないという意味である。
【0017】
本発明において好ましくは凹凸転写手段10におけるロールのうち少なくとも1つの鋳型ロール、より好ましくは全ての鋳型ロールが可動式である。鋳型ロールの表面には汚れが付着・堆積し易いところ、そのような鋳型ロールを可動式とすることにより、交換/清掃の頻度が比較的高い鋳型ロールの交換・清掃が簡便に行えるためである。全ての鋳型ロールが可動式であるとき、しわ等の面品質の観点から、全ての鏡面ロールは通常、固定式である。
【0018】
鋳型ロール2および/または鏡面ロール3を可動式とするための駆動手段は、当該ロールを、軸についてフィルム幅手方向に対して平行を保ちつつ、移動させることができる限り特に制限されず、例えば、空気圧式、油圧式、電動式等を採用できる。
【0019】
鋳型ロール2は、フィルムが転写されるべき凹凸形状を外周表面に有するものである。鋳型ロール2が表面に有する凹凸形状は、従来から光学フィルムの製造分野で鋳型ロール表面に採用されている凹凸形状が使用可能である。鋳型ロール2が有する凹凸は、例えば、軸方向、当該軸方向に直交する方向、または斜め方向などの様々な方向に連なった凸条部が互いに平行に繰り返し形成された筋状凹凸であってもよいし、錐体形状の凸部が規則的または不規則的に形成された点状凹凸であってもよい。そのような凹凸における凸部および凹部の断面形状は通常、それぞれ独立して略三角形状または略半円形状である。当該断面形状は軸方向に対する垂直断面またはフィルム搬送方向に対する垂直断面において有していればよい。
【0020】
鋳型ロール2が凹凸を有する表面の表面粗さは特に制限されるものではないが、当該表面は、例えば、軸方向ADにおいて、図3(A)に示すように中央部から両端部にかけて表面粗さが略均一であってもよいし、図3(B)に示すように中央部から両端部に向かって表面粗さが増加する凹凸勾配を有していてもよいし、または図3(C)に示すように中央部から両端部に向かって表面粗さが低下する凹凸勾配を有していてもよい。図3(A)〜図3(C)は、鋳型ロール2の軸方向を通る切断面におけるロール表面近傍の一例を示す概略模式図である。以下、図3(A)〜図3(C)に示す鋳型ロールをそれぞれ、表面粗さ均一ロール、中央部平滑ロール、両端部平滑ロールと呼ぶものとする。
【0021】
図3(A)に示す表面粗さ均一ロールは、光学フィルムの製造分野で一般的によく使用される鋳型ロールであり、軸方向ADにおいて中央部から両端部に向かって表面粗さが必ずしも厳密に均一である必要はない。例えば、軸方向において、ロール端面から50mmまでの両端部の表面粗さRaE1およびRaE2ならびに軸方向長さ(幅)50mmの中央部の表面粗さRaを測定したとき、それらの値のうち最大値と最小値との差が5nm以内の鋳型ロールである。表面粗さ均一ロールのRaE1、RaE2、RaおよびRaは特に制限されるものではないが、フィルムの円滑搬送、巻きズレ防止もしくはフィルム同士のブロッキング防止等の観点から好ましくは、それぞれ独立して80〜130nmであり、より好ましくは90〜110nmである。両端部と中央部との間の部分における領域の表面粗さRaは上記最大値と最小値との間の値であればよい。
【0022】
各部の表面粗さRaE1、RaE2、RaおよびRaは、各部において任意の10点で測定された値の平均値を用いるものとする。
本明細書中、表面粗さはニュー・ビュー(New View)5000(ZYGO社製)によって測定された値を用いている。
【0023】
図3(B)に示す中央部平滑ロールは、中央部が必ずしも平滑である必要はなく、中央部の表面粗さが両端部よりも小さい鋳型ロールである。例えば、軸方向において、両端部の表面粗さRaE1およびRaE2ならびに中央部の表面粗さRaを測定したとき、関係式;
RaE1>Ra;および
RaE2>Ra
好ましくは関係式;
RaE1−30>Ra;および
RaE2−30>Ra
を満たす鋳型ロールである。中央部平滑ロールのRaE1およびRaE2は通常、それぞれ独立して80〜130nmであり、好ましくは90〜130nmである。中央部平滑ロールのRaは通常、50〜100nmであり、好ましくは60〜80nmである。中央部平滑ロールにおいて両端部と中央部との間の部分における領域の表面粗さRaは両端部の表面粗さと中央部の表面粗さとの間の値であればよい。中央部平滑ロールにおけるRaE1、RaE2、RaおよびRaはそれぞれ、表面粗さ均一ロールにおける表面粗さ均一ロールにおけるRaE1、RaE2、RaおよびRaと同様の方法によって測定され得る。
【0024】
図3(C)に示す両端部平滑ロールは、両端部が必ずしも平滑である必要はなく、両端部の表面粗さが中央部よりも小さい鋳型ロールである。例えば、軸方向において、両端部の表面粗さRaE1およびRaE2ならびに中央部の表面粗さRaを測定したとき、関係式;
RaE1<Ra;および
RaE2<Ra
好ましくは関係式;
RaE1+30<Ra;および
RaE2+30<Ra
を満たす鋳型ロールである。両端部平滑ロールのRaE1およびRaE2は通常、それぞれ独立して50〜100nmであり、好ましくは60〜80nmである。両端部平滑ロールのRaは通常、80〜130nmであり、好ましくは90〜130nmである。両端部平滑ロールにおいて両端部と中央部との間の部分における領域の表面粗さRaは両端部の表面粗さと中央部の表面粗さとの間の値であればよい。両端部平滑ロールにおけるRaE1、RaE2、RaおよびRaはそれぞれ、表面粗さ均一ロールにおける表面粗さ均一ロールにおけるRaE1、RaE2、RaおよびRaと同様の方法によって測定され得る。
【0025】
少なくとも1つの鋳型ロール2として、軸方向で中央部から両端部に向かって表面粗さRaが低下または増加する凹凸勾配を有するロール、例えば前記した中央部平滑ロールまたは両端部平滑ロールを用い、当該ロールを可動式とすると、凹凸の寸法や形状が異なるだけでなく、凹凸の形成領域も異なる光学フィルムを連続的に製造できる。例えば、図3(B)に示すような中央部平滑ロールを用い、図5(A)に示す当接状態で、鋳型ロール2表面の凹凸形状をフィルム1に転写させているとき、鋳型ロール2を、フィルムの搬送方向Dでの張力が減少する方向Dで移動させて、図5(B)に示す当接状態を確保する。これによって、ロール移動前の転写率よりも小さい転写率で凹凸形状が転写されるようになるので、凹凸の寸法(表面粗さ)が小さく、凹凸形状が異なるだけでなく、凹凸形成領域が狭くなった光学フィルムを連続的に製造できるようになる。これに対して、図5(B)に示す当接状態で、鋳型ロール2表面の凹凸形状をフィルム1に転写させているとき、鋳型ロール2を、フィルムの搬送方向Dでの張力が増加する方向Dで移動させて、図5(A)に示す当接状態を確保すると、ロール移動前の転写率よりも大きい転写率で凹凸形状が転写されるようになるので、凹凸の寸法(表面粗さ)が大きく、凹凸形状が異なるだけでなく、凹凸形成領域が広くなった光学フィルムを連続的に製造できるようになる。図5(A)および図5(B)は、図3(B)に示す鋳型ロールを用いて、フィルム張力を変化させたときの、鋳型ロール2とフィルム1との当接状態を概略的に表した模式図である。
【0026】
また例えば、図3(C)に示すような両端部平滑ロールを用い、図6(A)に示す当接状態で、鋳型ロール2表面の凹凸形状をフィルム1に転写させているとき、鋳型ロール2を、フィルムの搬送方向Dでの張力が減少する方向Dで移動させて、図6(B)に示す当接状態を確保する。これによって、ロール移動前の転写率よりも小さい転写率で凹凸形状が転写されるようになるので、凹凸の寸法(表面粗さ)が小さく、凹凸形状が異なるだけでなく、凹凸形成領域が狭くなった光学フィルムを連続的に製造できるようになる。これに対して、図6(B)に示す当接状態で、鋳型ロール2表面の凹凸形状をフィルム1に転写させているとき、鋳型ロール2を、フィルムの搬送方向Dでの張力が増加する方向Dで移動させて、図6(A)に示す当接状態を確保すると、ロール移動前の転写率よりも大きい転写率で凹凸形状が転写されるようになるので、凹凸の寸法(表面粗さ)が大きく、凹凸形状が異なるだけでなく、凹凸形成領域が広くなった光学フィルムを連続的に製造できるようになる。図6(A)および図6(B)は、図3(C)に示す鋳型ロールを用いて、フィルム張力を変化させたときの、鋳型ロール2とフィルム1との当接状態を概略的に表した模式図である。
【0027】
鋳型ロール2が2以上で使用される場合(例えば図2参照)、全ての鋳型ロール2は通常、凹凸勾配だけでなく、両端部、中央部等の各部の表面粗さも同等のロールが使用される。
【0028】
鋳型ロール2の材質は、フィルムとの当接に耐えられる剛性を有するものであればよく、金属、ガラス、セラミックス、合成樹脂、合成樹脂と金属および/またはガラスとのコンポジットなど、限定されず使用できる。鋳型ロールは、上記材質の表面に凹凸を形成する種々の方法で製造できる。鋳型ロール表面に凹凸を形成する方法としては、放電加工、ショット加工、エッチング加工、レーザー加工等が利用できる。鋳型に用いられる金属は所望の凹凸を付与できる限り特に制限されず、例えば、高炭素鋼、クロム−モリブデン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などが挙げられる。鋳型表面を硬化する目的で、焼き入れ処理を施したり、ハードクロムなどのメッキ処理の他、カナック処理などの窒化表面処理等を行ったりしてもよい。
【0029】
鋳型ロール2の外径は特に制限されるものではなく、ロールとして製作できる50mm以上3000mm以下の外径を適用することができるが、フィルムに凹凸を精度良く付与する点、ならびに重量の肥大化を避ける点により、実質的には50mm以上2000mm以下の外径が好ましい。
【0030】
鏡面ロール3は、光学フィルムの製造分野で従来から使用されている鏡面ロールが使用できる。例えば、表面粗さRaを任意の10点で測定したとき、平均値が50〜100nm、好ましくは60〜80nmであって、かつ最大値と最小値との差が10nm以下、好ましくは5nm以下のものが使用される。
【0031】
図1および図2において、鋳型ロール2および鏡面ロール3以外に搬送ロール5が示されている。搬送ロール5の表面は通常、鏡面であり、搬送ロール5はフィルムの安定的な搬送のために配置されている固定式ロールである。搬送ロール5は鏡面ロール3と同等のものが使用できる。
【0032】
<ポリマーフィルム>
前記した凹凸転写手段によって凹凸が転写されるポリマーフィルム1は、特に制限されず、例えば、光学フィルムの分野で従来より使用されている公知の樹脂からなるフィルムが使用可能である。具体的には、セルロース樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、ノルボルネン等が挙げられる。好ましくはセルロース樹脂からなるフィルムが使用される。
【0033】
セルロース樹脂は、セルロースエステルの構造を有するものであり、具体例として、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレート等が挙げられる。これらの中で特に好ましいセルロース樹脂として、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。セルロース樹脂は1種を単独で使用してもよいし、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0034】
ポリマーフィルムには紫外線吸収剤、可塑剤、無機金属酸化物、有機微粒子等の添加剤が含有されていてもよい。
【0035】
ポリマーフィルムのTg(ガラス転移温度)は、加工しやすさの観点から、100〜400℃、特に120〜350℃であることが好ましい。
本明細書中、Tgは、十分に乾燥および冷却したフィルムについて、TMA8310(RIGAKU社製)によって測定された値を用いている。
【0036】
凹凸が転写される直前のポリマーフィルムの厚みは本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は10〜150μm、好ましくは20〜80μmである。
【0037】
<光学フィルムの製造装置>
本発明に係る光学フィルムの製造装置がいわゆる溶液流延法を採用する場合、前記凹凸転写手段を用いた凹凸転写工程は、当該溶液流延法が有するいかなる工程間で実施されてもよいが、鋳型ロールの凹凸形状を高精度に転写する観点から、フィルムを流延支持体から剥離する剥離工程の直後に実施することが好ましい。
【0038】
例えば、溶液流延法がいわゆる流延工程、第1乾燥工程、剥離工程、第2乾燥工程、延伸工程、第3乾燥工程および巻き取り工程を有する場合、前記凹凸転写手段を用いた凹凸転写工程は剥離工程と第2乾燥工程との間で実施することが好ましい。溶液流延法においては、第2乾燥工程および/または延伸工程を省略することができる。
【0039】
本発明に係る光学フィルムの製造装置がいわゆる溶液流延法を採用する場合、当該凹凸転写工程直前のポリマーフィルムは、鋳型ロールの凹凸形状を高精度に転写する観点から、残留溶媒量が60〜100重量%、特に70〜90重量%であることが好ましい。残留溶媒量とは、下記式(1);
(溶媒量/フィルム乾燥重量)×100 (1)
によって算出される値である。
【0040】
式(1)中、溶媒量およびフィルム乾燥重量は以下の方法によって測定できる。フィルム重量Mを測定し、十分に乾燥させた後、フィルム重量Mを測定する。溶媒量は「M−M」で表され、フィルム乾燥重量はMで表される。
【0041】
凹凸転写工程を溶液流延法において剥離工程と第2乾燥工程との間で実施する場合における本発明に係る光学フィルムの製造装置の具体例の一例を図7に示す。
【0042】
図7は、溶液流延法による光学フィルムの製造装置の基本的な構成を示す概略図である。光学フィルムの製造装置20は、無端ベルト支持体12、流延ダイ13、剥離ロール14、凹凸転写装置10、乾燥装置15、延伸装置16、乾燥装置17及び巻取装置18等を備える。流延ダイ13は、所定の樹脂を含むフィルム原料を溶媒に溶解/分散した樹脂溶液(ドープ)19を無端ベルト支持体12の表面上に流延する。無端ベルト支持体12は、流延ダイ13から流延されたドープ19からなるウェブを形成し、搬送させながら乾燥手段(図示しない)で乾燥させることによってフィルムとする。剥離ロール14は、フィルムを無端ベルト支持体12から剥離する。凹凸転写装置10は、剥離されたフィルムに鋳型ロールおよび鏡面ロールを用いて凹凸を転写する。図7中、凹凸転写装置10は図2に示す凹凸転写手段10Bであるが、これに制限されるものではなく、例えば図1に示す凹凸転写手段10Aであってもよい。乾燥装置15は、凹凸が転写されたフィルムを搬送ロールで搬送させながら、乾燥させる。延伸装置16は、乾燥されたフィルムを延伸する。乾燥装置17は、延伸されたフィルムを搬送ロールで搬送させながら、乾燥させる。巻取装置18は、乾燥したフィルムを巻き取って、フィルムロールとする。
【0043】
ドープを調製するための溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、蟻酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい。上記の溶媒に、以下の溶媒を混合して使用することがより好ましい。例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘクサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることが出来る。
【0044】
本発明に係る光学フィルムの製造装置がいわゆる溶融流延法を採用する場合、前記凹凸転写手段を用いた凹凸転写工程は、当該溶融流延法が有するいかなる工程間で実施されてもよいが、鋳型ロールの凹凸形状を高精度で転写する観点から、フィルムを冷却ロールから剥離する剥離工程の直後に実施することが好ましい。
【0045】
例えば、溶融流延法がいわゆる流延工程、冷却工程、剥離工程、延伸工程および巻き取り工程を有する場合、前記凹凸転写手段を用いた凹凸転写工程は剥離工程と延伸工程との間で実施することが好ましい。溶融流延法においては、延伸工程を省略することができる。
【0046】
本発明に係る光学フィルムの製造装置がいわゆる溶融流延法を採用する場合、当該凹凸転写工程直前のポリマーフィルムは、鋳型ロールの凹凸形状を高精度で転写する観点から、表面温度が40〜15℃、特に20〜25℃であることが好ましい。
【0047】
<光学フィルムの用途>
以上の方法で製造された光学フィルムは、例えば、プリズムシート、レンズシート、回折格子、無反射構造体等としての使用に特に適している。
【0048】
例えば、光学フィルムをプリズムシートとして使用する場合、液晶ディスプレイ用バックライト用輝度向上フィルムとして好ましく用いられる。
【0049】
また例えば、光学フィルムを無反射構造体として使用する場合、ディスプレイ最表面の反射防止フィルムとして好ましく用いられる。
【実施例】
【0050】
<実施例1>
(ドープの調製)
メチレンクロライド400質量部及びエタノール45質量部を入れた溶解タンクに、透明性樹脂としてセルロースアセテートプロピオーネ樹脂(アセチル基置換度:1.5、プロピオニル基置換度:1.0、総アシル基置換度:2.5、Tg150℃)100質量部を添加し、さらに、トリフェニルホスフェート5.5質量部及びエチルフタリルエチルグリコール5.5質量部を添加した。そして、液温が80℃になるまで昇温させた後、3時間攪拌した。そうすることによって、セルロースアセテートプロピオーネ樹脂溶液が得られた。その後、攪拌を終了し、液温が43℃になるまで放置した。そして、得られた樹脂溶液を、濾過精度0.005mmの濾紙を使用して濾過した。濾過後の樹脂溶液を一晩放置することにより、樹脂溶液中の気泡を脱泡させた。このようにして得られた樹脂溶液を、ドープとして使用し、以下の方法により、光学フィルムを製造した。
【0051】
(セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造)
まず、得られたドープの温度を35℃に、無端ベルト支持体の温度を25℃に調整した。
【0052】
次いで、凹凸転写手段10として図1に示す凹凸転写手段10Aを用いたこと以外、図7に示す光学フィルムの製造装置20と同様の装置を用いて光学フィルムを製造した。
流延ダイ13から搬送速度60m/分の無端ベルト支持体12にドープ19を流延してウェブを形成し、乾燥させながら搬送した。
【0053】
無端ベルト支持体から剥離ロール14によりウェブをフィルムとして剥離し、剥離したフィルムに対して凹凸転写手段10Aにより鋳型ロール2の凹凸を転写した。凹凸転写直前のフィルムの残留溶媒量は80重量%、厚みは60μmであった。凹凸転写手段10Aにおいて、フィルムと鋳型ロールとの当接状態は図4(A)に示す状態であった。凹凸転写直後におけるフィルムの搬送方向の張力は150N/mであった。凹凸転写手段10Aにおいて、1本の鋳型ロール2、2本の鏡面ロール3および2本の搬送ロール5はそれぞれ以下に示すロールを用いた。
鋳型ロール2;図3(A)に示す表面近傍を有する表面粗さ均一ロール(可動式);駆動手段=油圧式;軸方向長さ2050mm;外径120mm;両端部の表面粗さRaE1=RaE2=115nm;中央部の表面粗さRa=117nm;両端部と中央部との間の部分における領域の表面粗さRa=115nm;凸部は規則的に点状に形成され、円錐形状を有する。
鏡面ロール3;固定式;軸方向長さ2050mm;外径120mm;表面粗さは平均で75nmであり、最大値と最小値との差は5nmであった。
搬送ロール5;鏡面ロール3と同様である。
【0054】
凹凸が転写されたフィルムを乾燥装置15により90℃で乾燥した。乾燥したフィルムの両端を、延伸装置(テンター)16において、クリップで把持しながら延伸した。延伸されたフィルムを乾燥装置17により120℃で乾燥し、巻き取り装置18により巻き取り、光学フィルムA1を得た。光学フィルムA1には、鋳型ロール2の凹凸が精度よく転写されており、厚みは40μm、凹凸転写面全面における任意の10点の平均表面粗さRaは10.5nmであった。
【0055】
4000m長の光学フィルムA1が製造されたら、速やかに、全ての可動式鋳型ロール2を、フィルムの搬送方向Dでの張力が減少する方向Dで移動させ、図1(C)に示すようなフィルム1との当接を確保したこと以外、前記光学フィルムA1の製造方法と同様の方法により、光学フィルムを製造した。その結果、製造ラインを止めることなく、光学フィルムA1とは凹凸の寸法(表面粗さ)および形状が異なる光学フィルムB1を4000m長で、光学フィルムA1の製造から連続的に製造できた。光学フィルムB1の製造時において、凹凸転写手段10Aにおけるフィルムと鋳型ロールとの当接状態は図4(B)に示す状態であった。凹凸転写直後におけるフィルムの搬送方向の張力は135N/mであった。光学フィルムB1には、鋳型ロール2の凹凸が比較的低い転写率で転写されており、厚みは40μmであった。特に光学フィルムB1の凹凸転写面全面における任意の10点の平均表面粗さRaは3.0nmであり、転写された凸部の先端は平坦であった。
【0056】
<実施例2>
凹凸転写手段10として図2に示す凹凸転写手段10Bを用いたこと以外、前記光学フィルムA1の製造方法と同様の方法により、光学フィルムA2を製造した。光学フィルムA2には、鋳型ロール2の凹凸が精度よく転写されており、厚みは60μmであった。例えば、フィルムの凹凸転写面において、幅方向で両端から50mmにおける領域の任意の10点の平均表面粗さRaは4.7nmであった。凹凸転写手段10Bにおいて、フィルムと鋳型ロールとの当接状態は図5(A)に示す状態であった。凹凸転写直後におけるフィルムの搬送方向の張力は150N/mであった。凹凸転写手段10Bにおいて、5本の鋳型ロール2、6本の鏡面ロール3および2本の搬送ロール5はそれぞれ以下に示すロールを用いた。
鋳型ロール2;図3(B)に示す表面近傍を有する中央部平滑ロール(可動式);駆動手段=油圧式;軸方向長さ2050mm;外径120mm;両端部の表面粗さRaE1=RaE2=105nm;中央部の表面粗さRa=69nm;両端部と中央部との間の部分における領域の表面粗さRa=95nm;凸部は規則的に点状に形成され、円錐形状を有する。
鏡面ロール3;固定式;軸方向長さ2050mm;外径120mm;表面粗さは平均で75nmであり、最大値と最小値との差は5nmであった。
搬送ロール5;鏡面ロール3と同様である。
【0057】
4000m長の光学フィルムA2が製造されたら、速やかに、全ての可動式鋳型ロール2を、フィルムの搬送方向Dでの張力が減少する方向Dで移動させ、図2(C)に示すようなフィルム1との当接を確保したこと以外、前記光学フィルムA2の製造方法と同様の方法により、光学フィルムを製造した。その結果、製造ラインを止めることなく、光学フィルムA2とは凹凸の寸法(表面粗さ)、形状および形成領域が異なる光学フィルムB2を4000m長で、光学フィルムA2の製造から連続的に製造できた。光学フィルムB2の製造時において、凹凸転写手段10Bにおけるフィルムと鋳型ロールとの当接状態は図5(B)に示す状態であった。凹凸転写直後におけるフィルムの搬送方向の張力は135N/mであった。光学フィルムB2には、鋳型ロール2の凹凸が比較的低い転写率で転写されており、厚みは60μmであった。特に光学フィルムB2の凹凸転写面において、幅方向で両端から50mmにおける領域の任意の10点の平均表面粗さRaは3.3nmであり、転写された凸部の先端は平坦であった。また光学フィルムB2の凹凸転写面における幅方向中央の平滑領域は、光学フィルムA2と比較して広くなっていた。
【符号の説明】
【0058】
1:ポリマーフィルム
2:鋳型ロール
3:鏡面ロール
5:搬送ロール
10:10A:10B:凹凸転写手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の鋳型ロールおよび1以上の鏡面ロールを備えた凹凸転写手段を有し、該凹凸転写手段においてポリマーフィルムを鋳型ロールと鏡面ロールに交互に張架させて搬送することにより、鋳型ロール表面の凹凸形状をポリマーフィルムに転写させる光学フィルムの製造装置であって、
前記凹凸転写手段におけるロールのうち少なくとも1つのロールが位置変更可能な可動式であることを特徴とする光学フィルムの製造装置。
【請求項2】
前記凹凸転写手段におけるロールのうち少なくとも1つの鋳型ロールが位置変更可能な可動式である請求項1に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項3】
前記凹凸転写手段におけるロールのうち全ての鋳型ロールが位置変更可能な可動式である請求項1に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項4】
前記凹凸転写手段における少なくとも1つの可動式鋳型ロールが軸方向で、中央部から両端部に向かって表面粗さRaが低下または増加する凹凸勾配を有する請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項5】
前記凹凸転写手段における少なくとも1つの可動式鋳型ロールが軸方向で、中央部から両端部に向かって表面粗さRaが増加する凹凸勾配を有し、両端部の表面粗さRaが800〜130nmであり、中央部の表面粗さRaが50〜100nmである請求項4に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項6】
前記凹凸転写手段における少なくとも1つの可動式鋳型ロールが軸方向で、中央部から両端部に向かって表面粗さRaが低下する凹凸勾配を有し、両端部の表面粗さRaが50〜100nmであり、中央部の表面粗さRaが80〜130nmである請求項4に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項7】
流延工程、第1乾燥工程、剥離工程、第2乾燥工程、延伸工程、第3乾燥工程および巻き取り工程を有する溶液流延法を採用した請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルムの製造装置であって、
前記凹凸転写手段を用いた凹凸転写工程を、剥離工程と第2乾燥工程との間で実施する光学フィルムの製造装置。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれかに記載の製造装置を用いて製造することを特徴とする光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−245706(P2011−245706A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120136(P2010−120136)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】