説明

光学分析システム

光学信号の主成分の振幅を決定するための光学分析システム(20)は、光学信号を反射させると共に、それによって、スペクトルの重み付けの関数によって光学信号に重みを付けるための多変量の光学素子(10)及び重みを付けられた光学信号を検出するための検出器(9,9P,9N)を含む。光学分析システム(20)は、光学信号をスペクトル的に分散させるための分散素子(2)をさらに含んでもよく、多変量の光学素子は、分散させられた光学信号を受けるために、配置される。血液分析システム(40)は、本発明に従う光学分析システム(20)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学信号の主成分の振幅を決定するための光学分析システムに関し、その光学分析システムは、スペクトルの重み付けの関数によって光学信号に重みを付けるための多変量の光学素子(MOE)及び重みを付けられた光学信号を検出するための検出器を含む。
【0002】
本発明は、さらに、このような光学分析システムを含む血液分析システムに関する。
【0003】
本発明は、さらに、光学信号の主成分の振幅を決定するための方法に関し、その方法は、スペクトルの重み付けの関数を有するMOEによって光学信号に重みを付けるステップ及び検出器によって重みを付けられた光学信号を検出するステップを含む。
【背景技術】
【0004】
特許文献1は、冒頭の段落に記載された光学分析システムの実施形態を開示する。
【0005】
その知られた光学分析システムは、例えば、どの化合物が、試料においてどの濃度で、含まれるかを分析することに適した分光分析システムの一部である。試料と相互作用する光が、化合物及びそれらの濃度についての情報を持ち去ることは、周知である。基礎をなす物理的な過程は、たとえばレーザー、ランプ、又は発光ダイオードのような光源の光が、この情報を伝える光学信号を発生させるために、試料に向けられる、光学的な分光法の技術で活用される。
【0006】
例えば、光は、試料によって吸収されてもよい。あるいは又は加えて、知られた波長の光は、試料と相互作用してもよく、それによって、たとえばラマン(Raman)の過程により、異なる波長で光を発生させる。そして、透過させられた及び/又は発生させられた光は、スペクトルともまた呼ばれることもある、光学信号を構成する。そして、波長の関数としての光学信号の相対的な強度は、試料に含まれた化合物及びそれらの濃度を暗示する。
【0007】
試料に含まれる化合物を識別するために、且つ、それらの濃度を決定するために、光学信号を、分析する必要がある。その知られた光学分析システムにおいて、光学信号は、光学フィルターを含む専用のハードウェアによって、分析される。この光学フィルターは、波長に依存する透過性を有する、即ち、それは、波長に依存した透過性によって与えられるスペクトルの重み付けの関数によって光学信号に重みを付けるために、設計される。スペクトルの重み付けの関数は、重みを付けられた光学信号の、即ち、フィルターによって透過させられた光の、合計の強度が、特定の化合物の濃度に正比例するように、選ばれる。また、このような光学フィルターは、MOEとも呼ばれる。都合のよいことに、この強度を、たとえばフォトダイオードのような検出器によって、検出してもよい。化合物毎に、特徴的なスペクトルの重み付けの関数を備えた専用の光学フィルターが、使用される。光学フィルターは、たとえば、所望のスペクトルの重み付けの関数を構成する透過性を有する干渉フィルターであってもよい。
【0008】
この分析スキームの好結果の実施には、関心のある化合物に対応するスペクトルの重み付けの関数を知ることが、必須である。スペクトルの重み付けの関数を、知られた濃度のN個の純粋な化合物のN個以上のスペクトルを含む組みの主成分分析を行うことによって、得てもよく、ここでNは、整数である。各々のスペクトルは、M個の異なる波長での対応する光学信号の強度を含み、ここでMは、同様に整数である。典型的には、Mは、Nよりもはるかに大きい。対応するM個の波長でのM個の強度を含有する各々のスペクトルは、M次元のベクトルを構成し、それのM個の成分は、これらの強度である。これらのベクトルは、主成分分析の核心にあると共にこの技術において良く理解される特異値分解(SVD)として知られる、線形代数的な過程にさらされる。
【0009】
SVDの結果として、nがN+1よりも小さい正の整数であるとして、N個の固有ベクトルzの一組みが、得られる。固有ベクトルzは、元来のN個のスペクトルの線形結合であると共にしばしば主成分ベクトル又は回帰ベクトルと呼ばれる。典型的には、主成分ベクトルは、相互に直交すると共に|z|=1の規格化されたベクトルとして決定される。主成分ベクトルzを使用して、未知の濃度の化合物を含む試料の光学信号を、適切なスカラーの乗数を乗じた規格化された主成分ベクトルの組み合わせ
+x+・・・+x
によって、記述してもよい。
【0010】
nがN+1よりも小さい正の整数であるとして、スカラーの乗数xを、与えられた光学信号における主成分ベクトルzの振幅と考えてもよい。各々の乗数xを、M次元の波長の空間におけるベクトルとして光学信号を処理すると共に主成分ベクトルzとのこのベクトルの直積を算出することによって、決定することができる。その結果は、規格化された固有ベクトルzの方向における光学信号の振幅xを生む。振幅xは、N個の化合物の濃度に対応する。
【0011】
その知られた光学分析システムにおいては、光学信号を表すベクトルと主成分ベクトルとの間の直積の算出は、光学フィルターによって、光学分析システムのハードウェアで実施される。光学フィルターは、それが、主成分ベクトルの成分に従って、光学信号に重みを付けるように、透過率を有する、即ち、主成分ベクトルは、スペクトルの重み付けの関数を構成する。フィルター処理された光学信号を、主成分ベクトルの振幅に、このように、対応する化合物の濃度に、比例する振幅を備えた信号を発生させる検出器によって、検出してもよい。
【0012】
物理的意義において、各々の主成分ベクトルは、光学信号内のある波長の領域において、ある形状を備えた“スペクトル”に構築される。現実のスペクトル的に対比して、主成分ベクトルは、第一のスペクトルの範囲に正の部分を、及び、第二のスペクトルの範囲に負の部分を、含んでもよい。この場合には、主成分ベクトルは、第一のスペクトルの範囲に対応する波長について正の成分を、及び、第二のスペクトルの範囲に対応する波長について負の成分を、有する。
【0013】
その知られた光学分析システムの不都合は、それが、相対的に大量の空間を要求することである。これは、光学分析システムが、少ない空間が利用可能である用途において、たとえば、宇宙で、病院の救急室で、又は、携帯のデバイスで、使用されるとき、特に不都合である。
【特許文献1】米国特許第6,198,531号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、相対的に小さい空間で実現されてもよい、冒頭の段落に記載した種類の光学分析システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に従って、その目的は、MOEが、光学信号を反射させると共に、それによって、スペクトルの重み付けの関数によって光学信号に重みを付けるということで、実現される。MOEを、その知られた光学分析システムにおけるように、透過においてではなく、反射において、動作させるのだから、それは、より小型の空間で実現されてもよい。
【0016】
本発明に従って、光学信号は、ヒトの目に可視である波長を有する光学信号に制限されない。光学信号は、紫外(UV)スペクトルにおける及び/又は赤外(IR)スペクトルにおけるスペクトルの成分を含んでもよい。ここで、IRスペクトルの範囲は、1THzを超える周波数を有する、近赤外(NIR)及び遠赤外(FIR)、並びに同様に全ての中間の波長を含んでもよい。
【0017】
本発明に従って、主成分は、純粋な主成分に限定されない。ここで、純粋な主成分は、ある一定の化合物についての数学的に正確な固有ベクトルを指す。また、主成分は、主成分を決定する間の不完全度から結果として生じることもある、他の化合物からの軽微な寄与を含んでもよい。また、主成分は、知られた濃度のいくつかの化合物の混合物に対応してもよい。主成分は、一つ以上の特定の分析物と相関してもよく、ここで用語“相関する”は、実質的に完全な相関又は部分的な相関を含んでもよい。主成分は、これらの一つ以上の特定の分析物以外の分析物と相関しなくてもよく、ここで用語“相関しない”は、実質的に無相関又は部分的な相関を、この後者の部分的な相関が、一つ以上の特定の分析物との部分的な相関よりも小さいとの条件で、含んでもよい。また、スペクトルの重み付けの関数及び/又は主成分は、回帰ベクトルと呼ばれることもある。
【0018】
スペクトルの重み付けの関数を、主成分分析によって、又は、どんな他の数学的な直交化の手順、どんな多変量解析の方法、例えば、偏最小自乗(PLS)、一般的なアルゴリズム、若しくはニューラルネットワークによって、得てもよい。
【0019】
主成分は、分析物の電子の、振動の、及び/又は振電の遷移に関係してもよい。さらなる成分は、分析物以外の物質の電子の、振動の、及び/又は振電の遷移に関係してもよい。主成分は、分析物のラマンスペクトル的に関係してもよい。さらなる成分は、ヒトの皮膚の組織又は光学素子のような、分析物を所持する物質の及び/又は分析物それ自体の蛍光スペクトル、又は、検出の体積と検出器との間における物質の蛍光スペクトル的に関係してもよい。
【0020】
MOEは、調節可能であるスペクトルの重み付けの関数を有してもよい。
【0021】
ある実施形態において、光学分析システムは、光学信号をスペクトル的に分散させるための、たとえば回折格子又はプリズムのような、分散素子をさらに含み、MOEは、分散させられた光学信号を受けるために、配置される。このような光学分析システムにおいては、MOEの異なる領域は、光学信号の異なるスペクトルの部分を受ける。例えば、一つの領域が、たとえば青色のスペクトルの部分を受けてもよく、且つ別の領域は、赤色のスペクトルの部分を受けてもよい。スペクトルの部分を、波長のある範囲として定義してもよい。
【0022】
これらの領域の反射能を、スペクトルの重み付けの関数を得るための領域当たりに、調節してもよい。これは、干渉フィルターである先行技術で知られたMOEのスペクトルの反射率を設計することよりも正確であってもよく、且つ、その反射率を設計することよりも複雑でなくてもよい。知られたMOEにおいて、全てのスペクトルの部分は、MOEの同じ領域に入射する。そして、全てのスペクトルの領域について要求された反射率を得ることは、相対的に複雑であると共に困難である。
【0023】
MOEは、分散させられた光学信号のスペクトルの部分を受けるための領域を含んでもよく、その領域は、スペクトルの重み付けの関数に関係する反射能を有する。全体の領域の反射能を、この領域に入射するスペクトルの成分が、スペクトルの重み付けの関数に従って重みを付けられるように、調節してもよい。異なるスペクトルの成分に対応する、異なる領域は、スペクトルの重み付けの関数に従って、異なる反射能を有してもよい。全体の領域の反射能は、一定であってもよく、そのことは、相対的に単純な方式が、たとえばその領域を構成する表面における反射性の金属の被覆物の厚さを制御することよって、それを調節することを許容する。全体の領域の又はその領域の一部のみの反射能は、調節可能であってもよい。その領域は、個々に調節可能な反射能を各々有する多くの部分を含んでもよい。調節可能な反射能を備えたMOEの実施形態は、以下に与えられる。
【0024】
あるいは又は加えて、MOEは、分散させられた光学信号のあるスペクトルの部分を受けるための領域を含んでもよく、その領域の一部は、それに入射する分散させられた光学信号を、検出器へ反射させるために、配置され、その領域の別の部分は、それに入射する分散させられた光学信号が、検出器へ反射させられることを予防するために、配置される。この場合には、その領域は、二つの部分を含み、一方の部分は、この部分に入射するスペクトルの部分を検出器へ反射させ、他方の部分は、この後者の部分に入射するスペクトルの部分が、検出器へ反射させられることを予防する。その後者の部分は、他の場所で、たとえばビームダンプに、吸収されてもよく、又は、反射させられてもよい。後者の部分は、たとえば分光システムにおける光源の発光強度又は波長の較正用の、付加的な検出器によって、少なくとも部分的に検出されてもよい。それぞれの部分に入射するスペクトルの部分の相対的な強度及び検出器へ反射させられた光学信号の部分の反射能は、それぞれのスペクトルの部分における光学信号の重み付けを決定する。
【0025】
このようなMOEは、その部分に入射する相対的に少量の光のみが、他の部分に入射する相対的に少量の光のみが検出器になお到達してもよいのに対して、検出器に到達しなくてもよいのだから、相対的に高いコントラストの利点を有する。これらの求められない過程は、主として、反射する表面の光学的特性によって、決定される。これらの表面の特性は、相対的に低い費用で、良好に制御されることもある。さらに、反射能は、光の偏光状態に対して相対的に鈍感である。
【0026】
単語“配置される”は、その部分及び他の部分を、たとえば、図11A及び11Bに示される及び図11A及び11Bを参照して記載されるように構造化された反射面を形成することによって、恒久的に配置してもよいことを、暗示することもあるが、それは、このことに制限されない。また、それは、その領域が、傾斜可能な反射面を含むことを暗示する。傾斜可能な反射面の位置に依存して、それに入射するスペクトルの部分を、検出器へ反射させてもよいか、又は、それが検出されないように、他の場所へ、たとえばビームダンプへ、反射させてもよい。このようにして、スペクトルの重み付けの関数を、傾斜可能な反射面の位置によって、少なくとも部分的に調節してもよい。一つの傾斜の位置において、それが、それに入射するスペクトルの成分を検出器へ反射させるように、それを、配向させてもよい。別の傾斜の位置で、それが、それに入射するスペクトルの成分を、検出器を避けて反射させるように、それを、配向させてもよい。
【0027】
傾斜可能な反射面が、相対的に小さい傾斜可能な素子の一部であるとき、傾斜可能な表面の切り替え時間、すなわち、検出器へ又は検出器を避けて反射された光を方向付けるために要求される時間は、相対的に短くてもよい。反射面は、たとえば、10ミクロン掛ける10ミクロンの大きさを有してもよく、且つ、存在するとすれば、隣接した反射面まで14ミクロンの距離を有してもよい。切り替え時間は、20マイクロ秒程度であってもよい。
【0028】
その領域は、一つを超える傾斜可能な表面を含んでもよく、それらの各々は、個々に傾斜可能であってもよい。このようにして、検出器へ反射させられるスペクトルの部分の相対的な量を、多くの傾斜可能な表面のそれぞれを、それらが、それらに入射するスペクトルの成分を検出器へ反射させるように、配向させることによって、調節してもよい。傾斜可能な表面の数が、大きければ大きいほど、その確度もより高く、その確度で、スペクトルの重み付けの関数を調節してもよい。
【0029】
光学信号のある一定のスペクトルの部分についてのスペクトルの重み付けを、一つのセルによって実行してもよい。そのセルを、それに入射するスペクトルの成分が検出器へ反射される位置と、それに入射するスペクトルの成分が、他の場所へ反射させられるさらなる位置との間で、切り換えてもよい。そして、スペクトルの重み付けは、そのセルがその位置にある時間対それがそのさらなる位置にあるさらなる時間によって、決定される。換言すれば、スペクトルの部分の振幅は、セルのデューティサイクルによって決定される。検出器は、その時間プラスそのさらなる時間であってもよい、ある一定の期間にわたって信号を積算するための積算器を含んでもよい。
【0030】
MOEは、二つ以上の領域を含んでもよく、各々の領域は、光学信号のそれぞれのスペクトルの部分を受けるために、配置され、且つ、各々の領域は、少なくとも一つの傾斜可能な反射面を含む。このようにして、スペクトルの重み付けの関数を、二つのそれぞれの波長領域で調節してもよい。その反射能は、たとえば、単一の層又は多数の層における金属の、半導体の、及び/又は誘電体の表面について知られるように、波長に相対的に無関係である。そして、その領域の反射能を、その部分及び他の部分の表面積を調節することによって、相対的に容易に調節してもよい。無色性による波長の関数としての反射能の変化を説明することは、要求されない。
【0031】
MOEは、個々に傾斜可能な反射面の配列を含んでもよい。傾斜可能な反射面は、傾斜可能な素子の一部であってもよい。それら素子の各々の傾斜を、その素子とその素子に面する電極との間の静電的な電位差を印加することによって、誘発してもよい。このような配列は、たとえば、Proceedings of SPIE 4985,p14−25(2003)におけるD.Dudley,W.M.Duncan,J.Slaughterによる論文“Emerging Digital MMicromirror Device(DMD) Applications”に記載されるようなディジタルミラーデバイス(DMD)であってもよい。
【0032】
その領域は、反射性の液晶(LC)セルを含んでもよい。このようなセルは、電場を印加することによって少なくとも部分的に配向させてもよいLC分子の層を含む。少なくとも部分的に配向させられたLC分子の層は、通常の軸に沿った通常の屈折率及び異常の方向に沿った異常の屈折率のような異方性の屈折率を有し、ここで、通常の屈折率は、異常の屈折率と異なる。通常の方向又は異常の方向と異なる偏光方向を備えた光が、この層を通過するとき、光の偏光状態が、変えられる。反射性のLCセルにおいて、LC分子の層は、その層を通過した光が、もう一度その層を通過するために、逆戻りに反射させられるように、反射面の前に位置させられる。LC分子の層を通じて光を通過させることより先に、光の偏光状態を、偏光子によって調節してもよい。光の偏光状態における変化を、LC分子の層を通じた二重の通過後の光を、検光子を通じて、通過させることによって、測定してもよい。偏光子を、検光子として使用してもよい。
【0033】
検出器によって検出されるLCセルに入射するスペクトルの部分の量を、LC分子の配向を調節することによって、調節してもよい。換言すれば、スペクトルの重み付けの関数を、LCセルに電圧を印加すると共にそれによってLC分子を配向させることによって、少なくとも部分的に調節してもよい。
【0034】
反射性のLCセルは、そのようなものとして当技術において周知であり、且つ、相対的に低い価格で得られることもある。それらは、可動部を要求することなく、調節可能な反射を許容する。LC分子の配向は、数ミリ秒程度のような、相対的に遅くてもよい。
【0035】
その領域は、一つを超えるLCセルを含み、それらの各々は、個々に調節可能であってもよい。検出器へ反射させられるスペクトルの成分の量を、印加された電圧を調節することによって、調節してもよい。あるいは、多くの反射性のLCセルのそれぞれに、それらが、それらに入射するスペクトルの成分を検出器へ反射させるような電圧を、及び、セルの残りに、それらが、それらに入射するスペクトルの成分を実質的に検出器へ反射させないような電圧を、提供することによって、検出器へ反射させられるスペクトルの部分の相対的な量を調節してもよい。このようなスキームにおいて、アナログよりもむしろディジタルの電圧制御を使用してもよく、それは、要求される電子部品の使用を減少させる。反射性のLCセルの数が、大きければ大きいほど、その確度もより高く、その確度で、スペクトルの重み付けの関数を調節してもよい。
【0036】
MOEは、二つ以上の領域を含んでもよく、各々の領域は、光学信号のそれぞれのスペクトルの部分を受けるために、配置され、且つ、各々の領域は、少なくとも一つの反射性のLCセルを含む。このようにして、スペクトルの重み付けの関数を、二つのそれぞれの波長の範囲で調節してもよい。LC分子について、異方性の屈折率は、光の波長に相対的に強く依存してもよい。この効果は、このようなMOEの制御を複雑にすることもある電圧を調節するときに、主な原因となる。
【0037】
MOEは、個々に制御可能な反射性のLCセルの配列を含んでもよい。LCセルは、シリコン上のLC(LCoS)セルであってもよい。MOEは、たとえば、米国特許第5,486,485号明細書に、並びに、ボストン(米国)(1997)のSID International SymposiumのDigest of Technical Papers XXVIII 997におけるF.Sato、Y.Yagi、及びK.Haniharaによる論文“High resolution and bright LCD projector with reflective LCD panels”、トロント(カナダ)(1997)のM−19のProceedings of the 17th International Display Research ConferenceにおけるP.M.Altによる論文“Single crystal silicon for high resolution displays”、及びProceedings of SPIE 3634 (1999)の197におけるJ.A.Shimizuによる“Single panel reflective LCD projector”に記載したようなLCoSセルの配列を含んでもよい。
【0038】
その領域は、反射性のエレクトロウェッティングセルを含んでもよい。このようなセルは、入射する光を吸収するために配置される吸収する液体を含む。吸収する液体は、吸収する液体によって湿潤させられてもよい表面を含むセルに含まれる。それは、電極と吸収する液体との間に電圧を印加するための電極をさらに含む。このような電圧を印加することによって、その表面の湿潤性を、変えてもよい。このようにして、吸収する液体を、それが、実質的に表面を覆うように、又は、反射する表面には、吸収する液体が実質的にないように、移動させてもよい。そのセルは、吸収する液体によって湿潤させられる表面であってもよい、又は、入射する光の経路におけるこの表面の下流に位置を定めてもよい、反射面をさらに含む。反射する表面には、吸収する液体が実質的にないとき、その光は、それが、反射する表面が、吸収する液体によって実質的に覆われるとき、吸収されるのに対して、反射させられる。換言すれば、スペクトルの重み付けの関数を、エレクトロウェッティングセルへ電圧を印加すること、且つそれによって、吸収する液体を位置決めすることによって、少なくとも部分的に調節してもよい。
【0039】
反射性のエレクトロウェッティングセルは、それ自体、当技術において周知であり、たとえば、Nature 425,第383−385頁(2003)におけるR.A.Hayes及びB.J.Feenstraによる論文“Video−speed electronic paper based on electro−wetting”を参照のこと。それらは、移動する部分を要求することなく調節可能な反射を許容する。吸収する液体の移動は、LC分子の配向よりも早くてもよい。
【0040】
その領域は、一つを超える反射性のエレクトロウェッティングセルを含んでもよく、それらの各々は、個々に調節可能であってもよい。検出器へ反射させられるスペクトルの成分の量を、印加された電圧を調節することによって、調節してもよい。あるいは、多くの反射性のエレクトロウェッティングセルのそれぞれに、それらが、それらに入射するスペクトルの成分を検出器へ反射させるように、電圧を提供すること、及び、セルの残りに、それらが、それらに入射するスペクトルの成分を検出器へ実質的に反射させないように、電圧を提供することによって、検出器へ反射されるスペクトルの部分の相対的な量を調節してもよい。このようなスキームにおいて、要求される電子部品の費用を減少させる、アナログよりもむしろディジタル電圧制御を、使用してもよい。セルが、分光分析の間に切り替えられないとき、次のことが、有効である。ある一定のスペクトルの範囲で照明される反射性のエレクトロウェッティングセルの数が、大きければ大きいほど、その確度は、より高く、その確度で、スペクトルの重み付けの関数を、このスペクトルの範囲で調節してもよい。セルが、分光分析の間に切り替えられるとき、光学信号の反射されたスペクトルの部分の振幅を、デューティサイクルによって、決定してもよい。そして、その確度を、セルを切り替えてもよい確度によって、決定する。
【0041】
MOEは、二つ以上の領域を含み、各々の領域は、光学信号のそれぞれのスペクトルの部分を受けるために、配置され、且つ、各々の領域は、少なくとも一つの反射性のエレクトロウェッティングセルを含む。このようにして、スペクトルの重み付けの関数を、二つのそれぞれの波長の範囲で調節してもよい。エレクトロウェッティングセルの技術において、そのようなものとして知られた吸収する液体について、その吸収は、光の波長に相対的に弱く依存してもよい。そして、その領域の反射能を、その部分及び他の部分の表面積を調節することによって、相対的に容易に調節してもよい。この無色性による波長の関数として反射能の変化を説明することは、要求されない。
【0042】
MOEは、たとえば、Nature 425、第383−385頁(2003)におけるR.A.Hayes及びB.J.Feenstraによる論文“Video−speed electronic paper based on electro−wetting”に記載されたような、個々に制御可能な反射性のエレクトロウェッティングセルの配列を含んでもよい。
【0043】
ある実施形態において、光学分析システムは、第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号を検出するための第一の検出器及び第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号を検出するための第二の検出器を有し、MOEは、第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた分散させられた光学信号の第一の部分を第一の検出器へ、及び、第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号の第二の部分を第二の検出器へ、反射させるために、配置される。
【0044】
本発明のこの態様に従って、光学分析システムは、光学信号をスペクトル的に分散させるための分散素子、及び、スペクトル的に分散させられた光学信号を受けるための且つ第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号の第一の部分を第一の検出器へ、及び、第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号の第二の部分を第二の検出器へ、分配するための分配素子をさらに含む。その分配素子は、反射性のMOEであってもよい。
【0045】
本発明のこの態様は、知られた光学分析システムに関する特定の利点を有する。知られた光学分析システムにおいて、光学信号の一部分は、第一のスペクトルの重み付けの関数によって光学信号に重みを付ける、第一のフィルターへ方向付けられ、且つ、光学信号のさらなる部分は、第二のスペクトルの重み付けの関数によって光学信号に重みを付ける第二のフィルターへ方向付けられる。光学信号の顕著な部分が、どんな検出器によっても検出されない、たとえば、第一の光学フィルターによって又は第二の光学フィルターによって遮断されるのであるから、信号対雑音比は、知られた光学分析システムにおいて相対的に低い。例えば、第一の光学フィルターによって受け取られた光学信号は、全ての情報を含むが、第一のフィルターは、第二の重み付けの関数に対応する光学信号の部分が、フィルターによって遮断されるのに対して、第一の重み付けの関数に対応する光学信号の部分のみを透過させる。第一の光学フィルターによって、及び、第二の光学フィルターによって、遮断された光は、検出されず、その光は、信号対雑音比を減少させる。
【0046】
本発明のこの態様に従って、信号対雑音比のこの減少は、少なくとも部分的に回避される。このために、光学分析システムは、たとえば、光学信号をスペクトル的に分散させるための回折格子又はプリズムのような分散素子を含む。スペクトル的に分散させられた光学信号は、分配素子によって、受けられる、すなわち、分配素子の異なる部分が、光学信号の異なる波長を受ける。個々の波長について、分配素子は、第一のスペクトルの重み付けの関数に従って重みを付けられた光学信号の第一の部分を第一の検出器へ、及び、第二のスペクトルの重み付けの関数に従って重みを付けられた光学信号の第二の部分を第二の検出器へ、分配するために、配置される。このように、知られた光学分析システムの第一の光学フィルター及び第二の光学フィルターによってなされるように、光学信号を部分的に遮断する代わりに、光学信号の異なる部分が、異なる検出器へ方向付けられる。結果として、大量の光学信号が、検出され、改善された信号対雑音比を生む。
【0047】
ある実施形態において、主成分は、第一のスペクトルの範囲において正の部分を含み、且つ、第二のスペクトルの範囲において負の部分を含み、第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号の第一の部分は、正の部分に対応し、第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号の第二の部分は、負の部分に対応し、第一の検出器及び第二の検出器は、第一の検出器によって発生させられた信号から第二の検出器によって発生させられた信号を差し引くために配置された信号処理装置に結合させられる。この実施形態においては、正の部分及び負の部分を有する主成分を含む光学信号を、改善された信号対雑音比で分析してもよい。典型的には、第一のスペクトルの範囲には、第二のスペクトルの範囲がない。
【0048】
別の実施形態においては、主成分は、第一の主成分及び第二の主成分を含み、第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号の第一の部分は、第一の主成分に対応し、第二のスペクトルの重み付けの関数重みを付けられた光学信号の第二の部分は、第二の主成分に対応する。この光学分析システムは、二つ以上の主成分を含む光学信号を分析するために、特に適合させられる。それは、二つ以上の主成分の対応する振幅に、改善された信号対雑音比を提供する。
【0049】
さらに別の実施形態において、主成分は、第一の主成分及び第二の主成分を含み、且つ、第一の主成分及び/又は第二の主成分は、第一のスペクトルの範囲に正の部分を含み、且つ、第二のスペクトルの範囲に負の部分を含む。
【0050】
分配素子が、スペクトル的に分散させられた光学信号を受けるための表面を有し、その表面が、第一の組みの表面の要素及び第二の組みの表面の要素を含み、第一の組みの表面の要素が、スペクトル的に分散させられた光学信号を第一の検出器へ分配するために配置され、第二の組みの表面の要素が、スペクトル的に分散させられた光学信号を第二の検出器へ分配するために配置されるとすれば、好都合である。この実施形態において、各々の表面の要素は、それの位置及びそれの表面積に依存して、スペクトル的に分散させられた光学信号のある一定の部分を受ける。そして、第一の重み付けの関数は、第一の組みの表面の要素の位置及び表面積によって決定され、且つ、第二の重み付けの関数は、第二の組みの表面の要素の位置及び表面積によって決定される。その表面によって受け取られたスペクトル的に分散させられた光学信号を、その表面によって反射させてもよく、及び/又は、回折させてもよい。あるいは、それを、透過させてもよく、及び屈折させてもよく、及び/又は、回折させてもよい。
【0051】
この実施形態は、エッチング及び/又は研磨によって、表面の要素が提供される、たとえば、透明な基体、たとえば、ガラスの基体を使用することによって、分配素子を、相対的に容易に製造することができるという利点を有する。あるいは、基体を、適切に形作られた型を使用することによって、製造してもよい。透明な基体の付加的な利点は、光学信号の損失が、相対的に少ないということである。
【0052】
分散素子が、分散性の平面において光学信号を分散させるために、配置され、且つ、光学分析システムが、分散させられた光学信号を集束させるための集束部材をさらに含み、集束部材は、分散性の平面において第一の焦点距離を有し、且つ、分散性の平面に垂直な平面において第二の焦点距離を有し、第一の焦点距離は、第二の焦点距離と異なってもよく、集束部材が、分散性の平面において分散させられた光学信号を分配素子に集束させるために、配置されるとすれば、好都合である。この実施形態においては、スペクトル的に分散させられた光学信号は、光学信号の異なるスペクトルの成分が、分配素子の異なる相互に良好に分離された部分によって受け取られるように、分配素子に集束させられる。そして、異なる波長を異なる検出器へ選択的に分配させることは、可能である。
【0053】
この実施形態において、光学分析システムが、光学信号の第一の部分を第一の検出器へ集束させるためのさらなる集束部材をさらに含むとすれば、さらに好都合である。これは、第一の部分を有効に検出するための検出エリア用の相対的に小さいエリアを有する第一の検出器を使用することを許容する。
【0054】
いっそうより小さい検出エリアを備えた検出器を使用する効率的な検出のために、光学分析システムが、光学信号の第一の部分を、その第一の部分を第一の検出器に集束させるより先に、スペクトル的に再結合させるためのさらなる分散素子をさらに含むとすれば、好都合である。分配素子によって分配させられた光学信号の第一の部分は、原則として、なおスペクトル的に分散させられ、そのことは、第一の部分を小さい検出エリアへ集束させる可能性を限定する。さらなる分散素子を使用することによって、光学信号の第一の部分は、スペクトル的に再結合させられ、そのことは、それをより小さいエリアへ集束させることを許容する。従って、この焦点に置かれたより小さい第一の検出器を、使用することができる。あるいは、共焦点の検出スキームを実施するために、ピンホール又は開口を、この焦点に置いてもよい。
【0055】
MOEは、第一の部分的な重み付けの関数によって光学信号に重みを付ける第一のMOEを、第一の部分的な重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号に、第二の部分的な重み付けの関数によって、重みを付けるための第二のMOEと直列に、含んでもよい。二つの別々のMOEを直列に組み合わせることによって、重みを付けられた光学信号を、それぞれ、第一の検出器及び第二の検出器へ分配させることと無関係に、光学信号の振幅を、調節してもよい。例えば、第一のMOEは、一つ以上のスペクトルの範囲における光学信号の振幅を調節してもよい、すなわち、それは、第一の部分的な重み付けの関数によって、光学信号に重みを付けてもよい。第二のMOEは、第一の部分的な重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号を受け、且つ、それを第一の検出器及び第二の検出器へ、第二の部分的な重み付けの関数によって決定された相対的な比で分配させてもよい。そして、第一のスペクトルの重み付けの関数及び第二のスペクトルの重み付けの関数は、第一の部分的な重み付けの関数及び第二の部分的な重み付けの関数のそれぞれの部分の積である。このようにして、第一のスペクトルの重み付けの関数による及び第二のスペクトルの重み付けの関数による光学信号の同時の重み付けは、調節可能なMOEを使用するとき及び/又は第一のスペクトルの重み付けの関数及び第二のスペクトルの重み付けの関数が部分的に重なり合うときでさえも、達成されることもある。そして、特定のスペクトルの範囲において、第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号の振幅及び第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号の振幅が、全体の光学信号の振幅よりも小さくてもよいことは、可能である。
【0056】
あるいは、第一のMOE及び第二のMOEを、取り換えてもよい、すなわち、第一のMOEは、第一の部分的な重み付けの関数に従って、第一の検出器及び第二の検出器へ向かって光学信号を分配してもよい。その後、このように得られた光学信号の部分に、第二のMOEによって、第二の部分的な重み付けの関数に従って、重みを付けてもよい。
【0057】
直列に二つのMOEを含むMOEは、効率的であり、且つ、感度を増加させると共に主成分の振幅を決定するために要求される時間を減少させる高い信号対雑音比を有する。この利点を、特に、光学分析システムが、それぞれ、第一のスペクトルの重み付けの関数によって及び第二のスペクトルの重み付けの関数によって、重みを付けられた光学信号を検出するための二つの検出器を有するときに、得てもよい。その利点は、本発明に従って反射性のMOEについて得られるが、このタイプのMOEに制限されない。また、それは、反射におけるよりもむしろ透過において、動作させてもよい他のMOEについても、得られる。第一のMOE及び第二のMOEは、一方が反射性であり、他方が透過性であり、それらが、異なるダイナミックレンジ及び/又は異なるスペクトルの分解能を有してもよいというような異なる作用原理を有してもよい。第一の部分的な重み付けの関数及び/又は第二の部分的な重み付けの関数を、固定してもよく、又は調節可能であってもよい。単一のデバイスの異なる部分を、第一のMOEとして及び第二のMOEとして使用してもよい。
【0058】
光学分析システムは、ある濃度を有する物質を含む試料を照明するための、及びそれによって主成分を発生させるための光を提供するための、光源をさらに含んでもよい。そして、主成分の振幅は、その物質の濃度に関係してもよい。その関係は、振幅と濃度との間における線形の関係であってもよい。このような光学分析システムは、分光分析システムであってもよい。
【0059】
本発明に従う光学分析システムは、血液を含む試料を分析するために配置される血液分析システムの一部分であってもよい。その試料は、生体内での、すなわち、ヒト若しくは動物にまだ含有される血液、又は、生体外での血液、すなわち、ヒト若しくは動物から抽出された血液であってもよい。分析物は、たとえば、ブドウ糖、乳酸塩又は乳酸エステル、グリコヘモグロビン(HbA1c)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、コレステロール(総量、HDL、LDL)、トリグリセリド、尿素、アルブミン、クレアチニン、酸素化、pH、炭酸水素塩、及びその他多数のものから選択された一つ以上の要素を含んでもよい。主成分は、一つ以上の要素のラマン(Raman)スペクトルを含んでもよい。さらなる成分は、一つ以上の要素が溶解させられる又は含有される媒体の蛍光スペクトルを含んでもよい。その媒体は、水、ヒト又は動物の皮膚の組織、光路中の光学素子、及び/又は浸漬媒体を含んでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
本発明に従う、光学分析システムのこれらの及び他の態様、血液分析システム、並びに、光学信号を分析する方法を、図面を参照して、さらに解明すると共に記載することにする。
【0061】
図1に示す実施形態において、光学信号の主成分の振幅を決定するための光学分析システム20は、ある濃度を有する物質を含む試料2を照明すると共に、それによってその主成分を発生させるための光を提供するための光源1を含む。主成分の振幅は、その物質の濃度に関係する。光源1は、気体レーザー、色素レーザー、及び/又は、半導体又はダイオードレーザーのような固体レーザーのようなレーザーである。
【0062】
光学分析システム20は、血液分析システム40の一部である。試料2は、血管を備えた皮膚を含む。その物質は、次の分析物、ブドウ糖、乳酸塩又は乳酸エステル、コレステロール、オキシ−ヘモグロビン及び/又はデオキシ−ヘモグロビン、グリコヘモグロビン(HbA1c)、ヘマトクリット、コレステロール(総量、HDL、LDL)、トリグリセリド、尿素、アルブミン、クレアチニン、酸素化、pH、炭酸水素塩、及びその他多数のものの一つ以上であってもよい。これらの物質の濃度は、光波分光学を使用して、非侵襲性の方式で決定される。このために、光源1によって提供された光は、光源によって提供された光を、皮膚中の血管へ向かって、反射させる二色性ミラー3へ送られる。その光を、対物12を使用して、血管上に集束させてもよい。その光を、国際特許出願のWO02/057759に記載されるような撮像及び分析システムを使用することによって、血管中に集束させてもよい。
【0063】
血管中の血液との光源1によって提供された光の相互作用によって、光学信号が、ラマン散乱及び蛍光により、発生させられる。このように発生させられた光学信号を、対物12によって制御すると共に二色性ミラー3へ送ってもよい。光学信号は、光源1によって提供された光とは異なる波長を有する。二色性ミラーは、それが、光学信号の少なくとも一部分を透過させるように、構築される。
【0064】
この方式で発生させた光学信号のスペクトルを図2Aに示す。スペクトルは、相対的に広い蛍光の背景FBG及び相対的に狭いラマンバンドRBを含む。図2Aのx軸は、光源1による励起の785nmに関する波長のシフトを波数で表し、図2Aのy軸は、任意単位で強度を表す。x軸は、ゼロの強度に対応する。ラマンバンドの波長及び強度、すなわち、位置及び高さは、水中に80mMolの濃度で溶解した分析物のブドウ糖について、図2Bの例に示されるような分析物のタイプを示す。図2Bの実線は、ブドウ糖及び水の両方のスペクトルを示し、図2Bの破線は、水中のブドウ糖のスペクトルとブドウ糖無しの水のスペクトルと間の差を示す。これらのバンドを備えたスペクトルの振幅は、分析物の濃度を示す。
【0065】
血液が、多くの化合物を含み、各々が、図2Bのものと同程度に複雑であってもよい、ある一定のスペクトルを有するのだから、光学信号のスペクトルの分析は、相対的に複雑にさせられる。光学信号は、本発明に従って光学分析システム20へ送られ、ここで光学信号は、たとえば図3に概略的に示される、重み付けの関数によって光学信号に重みを付けるMOEによって、分析される。図3の重み付けの関数は、血液中のブドウ糖もついて設計される。それは、正の部分P及び負の部分Nを含む。正の部分P及び負の部分Nは、各々、この例において、一つを超えるスペクトルのバンドを含む。
【0066】
図4に示す光学分析システム20の実施形態においては、試料2からの光、すなわち、分析される光学信号は、ビームスプリッター22によって分割されると共に図5Aに詳細に示されるスペクトルのフィルター4、5へ送られる。スペクトルのフィルター4、5は、それぞれ、スペクトルの重み付けの関数の正の部分及び負の部分によって重みを付けられた光学信号を検出するために、配置される。スペクトルのフィルター4、5において、光学信号は、回折格子である分散素子6へ方向付けられる。回折格子は、符号7によって示されるように鏡のように、光学信号を部分的に反射させてもよい。分散素子6は、少なくとも部分的に光学信号を回折させる。回折により、光学信号は、スペクトル的に分散させられ、且つ、異なるスペクトルの成分は、回折格子を異なる角度の下で去る。図解の目的のために、これは、二つの異なる波長についての光線8及び8’によって描かれる。
【0067】
分散させられた光学信号は、集束部材9によって、集束させられるが、その部材は、レンズであるが、代わりに、DMDであるMOE10上へ集束させる鏡であってもよい。それは、傾斜可能な素子の配列を含み、各々は、傾斜可能な反射面を有する。分散素子6から集束部材9までの距離は、集束部材9からMOE10までの距離に等しく、それらは、両方とも、集束部材9の焦点距離に対応する。
【0068】
ここで、及び、この用途の残りにおいて、集束部材と別の光学素子との間の距離は、集束部材の主平面と他の光学素子の主平面との間の光軸に沿った距離として、定義される。集束部材が、たとえば、厚いレンズの場合であるように、二つの主平面を有するとき、他の光学素子に最も近い主平面が、使用される。集束部材と他の光学素子との間の空間の一部が、1と異なる屈折率を備えた媒体を含むとき、光学距離、すなわち、屈折率倍の幾何学的距離が、使用される。
【0069】
分散させられた光学信号の異なるスペクトルの成分の部分は、光線8及び8’によって二つの特定の波長について図解したようなx軸に沿ったDMDの異なる領域に集束させられる。DMDは、それが、xz平面の中から、正又は負のy方向のいずれかへ、光学信号を反射させるように、配向させられ、すなわち、DMDの各々の傾斜可能な素子が、x軸に平行な軸のまわりに傾斜可能である。その領域の一部、すなわち、これらの素子の一部は、それに入射する分散させられた光学信号を検出器11へ反射させるために、配置される。対応する傾斜可能な反射面は、それぞれの反射が、検出器11へ方向付けられるように、配向させられる。その領域の別の部分は、それに入射する分散させられた光学信号が、検出器11へ反射させられることを予防するために、配置される。対応する傾斜可能な反射面は、それぞれの反射が、ビームダンプへ方向付けられるように、配向させられる。これを、図5Bに概略的に示す。反射は、集束部材9によって、再度、集束させられ、且つ、その後、それら素子によって反射させられる光学信号は、フォトダイオードである検出器11によって検出される。あるいは、重みを付けられた光学信号の強度に無関係に電気信号を提供することに適切な任意の他の検出器を、使用してもよい。検出器は、回折格子と同じzの位置に、しかし回折格子より上又は下のいずれかに、すなわち、異なるyの位置に、位置決めされる。これは、テレセントリックの設計である。
【0070】
図5Bの実施形態においては、MOE10は、DMDであり、且つ実質的に、全体の表面は、傾斜可能な反射面で構成される。あるいは、その表面の一部又は全体の表面を、傾斜可能ではなく固定される反射面によって、形成してもよい。これの例を、図11A及び11Bを参照して、以下に与えることにする。
【0071】
図4、5A及び5Bの実施形態においては、MOEは、二つの機能を有する。それは、他のスペクトルのフィルターによって測定されるべきである、分散させられた光学信号のそれらの部分を捨て、且つそれは、適切な振幅、すなわち、このスペクトルのフィルターによって測定されるべきである分散させられた光学信号のそれらの部分についての波長毎のグレースケールを導入する。振幅の調節は、たとえば投射デバイス又はディスプレイにおいて、使用されるようなDMDに基づいた光弁に類似して、信号の経路とダンプの経路との間の反射の表面を速く繰り返しで傾斜させることによって、なされてもよい。
【0072】
図1に示す計算素子19は、正の信号と負の信号との間における差を算出するために、配置される。この差は、光学信号の主成分の振幅に比例する。主成分の振幅は、物質の、すなわち、分析物の濃度に関係する。振幅と濃度との間の関係は、線形の依存性であってもよい。
【0073】
主成分が、正の成分のみ又は負の成分のみを含むとき、ただ一つのスペクトルのフィルターは、一つのMOE及び一つの検出器を使用してもよい。
【0074】
図4、5A、及び5Bの実施形態は、それが、ビームの経路を整列させるために、相対的に単純であるという利点を有する。この実施形態においては、光学信号の一部は、ビームスプリッター22によって光学信号を最初に分割することによって、スペクトルのフィルター4、5で失われる。たとえば、重み付けの関数の正の部分に対応する光学信号のそれらの部分は、重み付けの関数の負の部分によって重みを付けられた光学信号を測定するスペクトルのフィルターで捨てられる。同じことは、重み付けの関数の負の部分に対応すると共に重み付けの関数の正の部分によって重みを付けられた光学信号を測定するスペクトルのフィルターで捨てられる光学信号に有効である。この実施形態においては、二つの回折格子6及び二つのMOE10が、使用される。しかしながら、一つの且つ同じ分散素子6及び/又は一つの且つ同じMOE10を使用する、二つの別々の光路は、同様にして実行でき、たとえば図8A及び8Bを参照のこと。
【0075】
図6A及び6Bに示す光学分析システムの実施形態においては、光学信号は、光学信号の正の部分及び負の部分を別々にスペクトル的にフィルター処理するために、ビームスプリッターによって、分割させられない。従って、光学信号は、MOEで不必要に失われず、且つ、光学信号は、有効に使用される。さらに、ただ一つの回折格子及び一つのMOEが使用される。一般概念は、光学信号を、それが、分散素子6に入射する前に、分割することではなく、後で、たとえば分散させられた光学信号がMOE10に入射するとき、これをすることである。二つの反射の一つを、MOEから外れて捨てる代わりに、両方の反射が、使用されると共に、図5A及び5Bに類似して、集束部材9によって集められる。これらの反射の一方は、スペクトルの重み付けの関数の正の部分Pのスペクトルの成分を含み、他方の反射は、スペクトルの重み付けの関数の負の部分Nのスペクトルの成分を含む。光学信号が、最初にスペクトル的に分散させられるのだから、異なるスペクトルの成分は、MOE10における異なる位置に、図6A及び6Bの例においては異なるxの位置に、入射する。従って、正の部分及び負の部分に分割することは、光学信号の部分の損失無しに、なされてもよい。
【0076】
図6A及び6Bの実施形態においては、光学信号は、ビームの直径5mmを有する。そのビームは、特定の波長について、分散性のxz平面において光軸から外れて、すなわちz軸から外れて、11度の回折角を有する回折格子である分散素子6によって、最初にスペクトル的に分散させられる。非分散性のyz平面において、ビームの位置は、分散素子によって、変えられない。回折格子に入射する光学信号は、試料2から来ると共に、xz平面において伝播する。分散させられた光学信号は、集束部材9によって、反射性のMOE10上へ、集束させられる。図6A及び6Bの例において、集束部材9は、50mmの焦点距離を有するレンズである。一つの光線を、MOE10の一つの特定の領域に集束させられる一つの特定の波長について示す。図6A及び6Bには示さない、他の波長は、分散素子6から外れて異なる角度で回折されるが、対応する光線は、以下に記載した様々な反射及び屈折の後、全て同じ位置に、この例では(x、z)=(0,−120)mmに、到着する。図6A及び6Bに示さない他の波長は、MOE10の他の領域に集束させられる。特定の波長が、スペクトルの重み付けの関数の負の部分N又は正の部分Pに含まれるか否かに依存して、この波長を受けるMOEの部分は、それを、正の部分Pについては、二つの折りたたみミラーの一つ23Pへ、及び、負の部分Nについては、二つの折りたたみミラーの一つ23Nへ、反射させる。それぞれの折りたたみミラー23P又は23Nへの経路上に、対応する光線は、集束部材9によって、再度コリメートされる。折りたたみミラー23P及び23Nは、(y,z)=(+/−22mm,−15mm)に位置決めされ、且つ、yz平面内で6度だけ回転させられる。折りたたみミラー23P及び23Nは、それらに入射する光を、集束部材9を介して、MOE10の他の領域へ、方向付ける。図6A及び6Bの例において、初めて光学信号を反射させるMOE10の領域が、y=0にあるのに対して、これらの後者の領域は、それぞれ、正の及び負のyの値にある。一つの且つ同じMOEの三つの異なる領域の代わりに、二つの又は三つの異なるMOEを使用してもよい。二つの又は三つのMOEが使用されるとすれば、MOEの一つ、二つ、又は全てを、反射又は透過において、動作させてもよい。図6A及び6Bの例において、単一のDMDは、柔軟な、すなわち、調節可能なMOEとして使用される。DMDは、反射面を備えた傾斜可能な素子を有する。それら素子を、各々、yz平面においてプラス又はマイナス12度の偏向角だけ、傾斜させてもよい。換言すれば、MOEは、三つの異なる領域で照明される。y=0に近いと共に分散性のx方向に沿って延びる第一の中央の縞は、正及び負のスペクトルの部分を分割するために照明される。その後、この中央の縞より上の、すなわち、正のyの値における、且つ、分散性のx方向に沿って延びる縞は、たとえば正の部分に、要求される振幅又はグレースケールを導入するために、照明され、且つ、この中央の縞より下の、すなわち、負のyの値における、且つ、再度、分散性のx方向に沿って延びる縞は、たとえば負の部分に、要求される振幅又はグレースケールを導入するために、照明される。
【0077】
このとき、図4、5A及び5Bの実施形態におけるような類似の様式で、MOEは、各々のスペクトルの成分に適切な振幅を、すなわち、スペクトル的には、スペクトルの重み付けの関数に従って光学信号のグレースケールを、導入する。光学信号の各々のスペクトルの部分について、振幅のこの調節は、MOEの専用の領域で行われる。検出される光の全ては、集束部材9によって、捕獲され、且つ、二つの検出器、正の部分についての一つの検出器11P及び負の部分についての一つの検出器11Nへ向かって方向付けられる。検出器11P及び11Nを(x,y,z)=(0,9,−120)及び(0,−9,−120)mmに置くことによって、第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号及び第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号の両方を、独立に測定してもよい。第一のスペクトルの重み付けの関数及び第二のスペクトルの重み付けの関数は、たとえば図3に示すスペクトルの重み付けの関数の正の部分P及び負の部分Nに対応してもよい。
【0078】
図6A及び6Bの光学分析システム20は、xz平面に関して対称的である。
【0079】
図6A及び6Bに示すように、折りたたみミラー23P及び23Nは、分散素子6と同じyの位置に位置決めされない。このようにして、正の部分及び負の部分は、空間的に分離されてもよく、それによって、これらの二つの部分の別々の検出を許容する。図6A及び6Bのパラメータは、光の経路が、全ての色について、及び、正の及び負の部分の両方について、MOE10から離れた第二の反射の後、折りたたみミラー23P、23N及び分散素子6のまわりで迂回するように、選ばれる。この設計は、どんな光も失わないために、十分に大きい獲得の角度を備えた集束部材9を要求することもある。集束部材9の結果として生じるf数は、おおよそF#1.0である。その正確な値は、反射面の角度に、及び/又は、分散素子6の分散の強さに、依存してもよい。
【0080】
図7に示す別の実施形態において、光学信号は、たとえば共焦点の検出スキームにおけるピンホールであってもよい、点源14から光学分析システム20に入る。点源14から、発散する光学信号は、DMDであってもよいMOE上に、分散させられた光学信号を結像させる凹状の回折格子である分散素子6へ方向付けられる。第一のステップにおいて、必要なグレースケールは、適切なデューティサイクルで傾斜可能な素子を切り替えることによって、スペクトルへ適用される。各々のスペクトルの位置について、光の望まれない分画は、ビームダンプ18へ向かって反射させられる。所望のスペクトルの強度を有するスペクトルは、凹面鏡であるさらなる集束部材29に向かって反射させられる。この鏡は、スペクトルを、DMDの別の部分へ、再度集束させる。DMDを離れた第二の反射で、スペクトルは、それぞれ、第一の成分並びにスペクトルの重み付けの関数の正の部分P及び負の部分Nによって重みを付けられた光学信号に対応してもよい第二の成分に分割される。そして、二つの成分は、二つの検出器11N、11Pに向かって方向付けられる。これを、第一の凹の回折格子、別々の回折格子、又はレンズ若しくは鏡のような一つ以上の集束部材の異なる部分によって、達成してもよい。
【0081】
あるいは又は加えて、第一の成分及び第二の成分は、それぞれ、第一の主成分及び第二の主成分に対応してもよい。図7の実施形態において、分散させられた光学信号は、分散素子6の分散の方向に沿って配向した一つの線にあるMOEの領域に二回集束させられる。これは、その原理の理解を単純にする。MOEをより有効に使用してもよい、この例の変形において、二つのスペクトルは、二つの平行な線としてMOE上に投射される、すなわち、一方が図7の平面より上又は下にあり、他方のスペクトルが、この平面内にあってもよい。
【0082】
図8A及び8Bの実施形態において、光学信号は、たとえば、回折格子又はプリズムであってもよい回折素子6によって、スペクトル的に分散させられる。反射性のMOEは、たとえばLCセルの又は反射性のエレクトロウェッティングセルの配列のようなピクセル化された素子であってもよい。入ってくる光学信号は、最初に、たとえば示してない50/50ビームスプリッターを使用することによって、光の二つのビームに分割される。スペクトルの重み付けの関数の正の部分Pによって重みを付けられるビーム及びスペクトルの重み付けの関数の負の部分Nによって重みを付けられるビームは、平行に伝播し、且つ、異なるyの位置で、しかし同一のxの及びzの位置で、回折素子6に入射する。回折素子で、光を、スペクトル的に分散させる、すなわち、光学信号の異なるスペクトルの部分が、異なる角度で回折される。分散させられた光学信号は、各々の入射するビームについて、たとえばレンズのような二つの集束部材9N、9Pによって、集められる。回折格子からそれぞれのレンズ9N、9Pまでの且つそれぞれのレンズ9N、9PからMOE10までの距離は、等しく、且つ、レンズの焦点距離に対応する(テレセントリックの設計)。その結果は、光の収束する光線束が、全てのスペクトルの部分について、xz平面におけるMOE10に入射する法線であるというものである。反射性のMOE10における異なるxの位置は、符号8及び8’によって二つの特定の波長について示された、異なるスペクトルの部分を受ける。MOE10は、xの位置の関数として変動する反射係数を備えた、入射する分散させられた光学信号を反射させるために、配置される。これは、スペクトルの重み付けの関数を構築する適切なグレースケールを導入する。
【0083】
MOE10の反射の後で、光は、集束部材9P、9Nによって集められ、且つ、二つの検出器に向かって方向付けられ、第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号を検出するための一つの検出器11Pが、スペクトルの重み付けの関数の正の部分Pに対応し、且つ、第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号を検出するための一つの検出器11Nが、スペクトルの重み付けの関数の負の部分Nに対応する。二つのレンズ9P、9Nの光軸は、平行であるが、MOE10から離れて反射した光を、回折素子6から空間的に分離することができるように、y方向に変位させられる。
【0084】
MOE10の反射能が、たとえば反射性のLCセルを含むMOEの場合であるように、偏光依存性であるとき、MOE10は、それが、一つの具体的な偏光を備えた光について作用するのみであるから、しばしば、限定された効率を有することがある。図9A及び9Bに示す実施形態においては、反射性のLCセルの配列を備えたMOE10を含む効率的な光学分析システム20が、使用される。分光器に入る前に、光学信号は、四つのビームに、すなわちs偏光の二つ及びp偏光の二つに、分割される。そして、p偏光のビームは、たとえば、二分の一ラムダ板によって、又は、一連の傾斜された鏡によって、s偏光に変換される。これらの四つのビームは、分散させる素子6に入射する。
【0085】
この実施形態において、MOE10は、反射性のLCセルの配列であり、それらのセルは、各々、三つの素子、p偏光した光を透過させるシート偏光子、LC分子の層、及び反射面を含む。それぞれのLCセルに印加された電圧によって誘発されたLC分子の配向に依存して、反射面によって反射させられた光の一部は、偏光子によって吸収される。このようにして、スペクトル的に分散させられた光学信号に重みを付けられる。
【0086】
入ってくる光学信号は、最初に、たとえば、示してない標準どおりの50/50ビームスプリッターを使用することによって、光の二つのビームに分割される。実線によって示したこれらの二つのビームの一方は、スペクトルの重み付けの関数の正の部分Pに対応する第一のスペクトルの重み付けの関数によって、重みを付けられる。破線によって示したこれらの二つのビームの他方は、スペクトルの重み付けの関数の負の部分Nに対応する第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられる。これらの二つのビームは、平行に伝播する。
【0087】
これらのビームの各々は、異なる偏光を有する二つのビームに分割され、たとえば、一方は、s偏光したものであり、他方は、p偏光したものである。太線によって示した一つのビームは、シート偏光子によって透過させられる偏光方向、すなわち、この例では、s偏光を有する。このビームの偏光は、分散素子6より先に、例えば二分の一ラムダ板によって、90度だけ、回転させられる。ビームは、それらの偏光を変化させてあるが、その偏光が変化していないままであるビームに対して、y方向において、平行ではない。
【0088】
四つの結果として生じるビームは、回折格子である、回折素子6に、異なるyの位置で、しかし、同一のx及びzの位置で、入射する。回折素子6では、光は、スペクトル的に分散させられる。スペクトル的に分散させられた光は、二つの集束部材によって、すなわち、スペクトルの重み付けの関数の正の部分Pに対応してもよい第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられる光学信号用の一つの集束部材9P、及び、スペクトルの重み付けの関数の負の部分Nに対応してもよい第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられる光学信号用の一つの集束部材9Nによって、集められる。回折格子からそれぞれのレンズまでの距離及びそれぞれのレンズからMOEまでの距離は、両方とも等しく、且つ、それぞれのレンズの焦点距離に対応する(テレセントリックの設計)。
【0089】
その結果は、MOE10に向かった光の収束する光線束が、光学信号の全てのスペクトルの部分について、xz平面においてMOE10に入射する法線であるというものである。MOE10での異なるxの位置は、異なるスペクトルの部分を受ける。反射性のピクセル化された素子であるMOE10は、xの位置の関数として変動する反射係数を備えた、入射する分散させられた光学信号を反射させるために、配置され、それによって、スペクトルの重み付けの関数に従って、要求されるスペクトルの重み付けを導入する。MOE10から離れた反射の後で、光は、再度、集束部材9P、9Nによって、集められ、且つ、四つの検出器へ向かって、すなわち、スペクトルの重み付けの関数の正の部分Pに対応してもよい第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号のp偏光した部分を検出するための一つの検出器11PP、スペクトルの重み付けの関数の正の部分Pに対応してもよい第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号のs偏光した部分を検出するための一つの検出器11PS、スペクトルの重み付けの関数の負の部分Nに対応してもよい第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号のp偏光した部分を検出するための一つの検出器11NP、及びスペクトルの重み付けの関数の負の部分Nに対応してもよい第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた光学信号のs偏光した部分を検出するための一つの検出器11NSへ向かって、方向付けられる。
【0090】
二つの集束部材9P及び9Nの光軸は、平行であるが、MOE10から離れて反射された光を、回折素子6から空間的に分離することができるように、y方向に変位させられる。
【0091】
図10A、10B、及び10Cに示す別の実施形態においては、MOE10は、LCセルの配列を含む。図4、5A、5B、8A、8B、9A及び9Bを参照して上述した実施形態に対比して、入ってくる光学信号は、この実施形態においては分散素子6より先に、正の部分及び負の部分についての二つのビームに分割されない。この実施形態において使用されたLCセルは、図9A及び9Bを参照して上述したものと同様であるが、偏光子を含有しない。その結果は、LC分子の層における求められない損失を除いて、全ての入射する光が、反射させられるが、しかしながら、光の偏光方向を、LCセルにわたる電圧の印加によって調節してもよい異方性の屈折率により、変化させてもよいというものである。図10Aにおいて、s偏光した光のみを備えたただ一つの入ってくるビームが、示される。入ってくる光は、偏光してないものであってもよく、又は、たとえば、直線若しくは円偏光を有する部分的に偏光したものであってもよい。これらの場合において、入ってくるビームを、図9A及び9Bを参照して記載された実施形態に類似して、s偏光及びp偏光を有する二つのビームに分解してもよい。明りょうさの理由のために、単一のビームのみを、図10A、10B、及び10Cに描く。
【0092】
図10Aにおいて、入ってくる光は、z方向に平行である、s偏光を有する光学信号の部分である。入ってくる光は、分散素子6に入射し、そこで光学信号は、スペクトル的に分散させられる、すなわち、異なるスペクトルの位置が、異なる角度で分散させられる。分散させられた光学信号は、レンズである、集束部材9によって、少なくとも部分的に集められ、且つ、反射性のLCセルの配列であるMOE10に集束させられる。回折格子からレンズまでの距離及びレンズからLCセルまでの距離は、等しく、且つ、レンズの焦点距離に対応する(テレセントリックな設計)。その結果は、MOE10に向かって伝播する光の収束する光線束が、光学信号の全てのスペクトルの部分について、xz平面内でMOE10に入射する法線であるというものである。MOE10の異なるxの位置は、光学信号の異なるスペクトルの部分に対応する。
【0093】
集束部材9とMOE10との間で、偏光ビームスプリッター(PBS)15は、位置決めされる。入ってくるs偏光した光は、PBS15によって透過させられる。LCセルの配列は、偏光フィルターを含有せず、且つ、従って、それに入射する実質的に全ての光を反射させる。光の偏光方向は、LCセルにわたる電圧に依存する量だけ、変化させられる。偏光の回転の量は、それぞれのスペクトルの範囲で、スペクトルの重み付けの関数の絶対値によって、決定される。LCセルから反射された光は、PBS15へ方向付けられる。PBS15に入射する光のp成分は、PBS15によって反射させられ、且つ、さらなる集束部材17によって、ビームダンプ18に集束させられる。PBS15に入射する光のs成分は、PBS15によって透過させられ、且つ、折りたたみミラー23に入射する。折りたたみミラー23からレンズまでの距離は、レンズの焦点距離に等しくない。折りたたみミラー23によって反射させられた光は、集束部材9によって、MOE10に集束させられる。折りたたみミラー23が、入射する光の方向に関してわずかな角度にあるのだから、折りたたみミラー23によって反射させられる光は、異なるzの位置でMOE10に到達する。また、LCセル(6)における光のxの位置は、第一の反射のxの位置と比較して、光軸に関して、反射させられる。
【0094】
回帰ベクトルの正の値に対応する波長を備えた光については、その偏光は、LCセルによって、変化させられない。このs偏光した光は、PBSによって四回目に透過させられ、且つ、レンズ(4)によって検出器(3)上に集束させられる。回帰ベクトルの負の値に対応する波長を備えた光については、その偏光は、LCセルによって90度だけ回転させられる。このp偏光した光は、PBSによって反射させられ、且つ、レンズ(7)によって検出器(9)上に集束させられる。
【0095】
この実施形態においては、LCセルは、偏光子を含有しない。従って、全ての光は、反射させられ、且つ、光の偏光方向のみを、変化させてもよい。
【0096】
入射する光は、集束部材9の光軸にはなく、従って、入ってくる及び戻された光は、重なり合わず、且つ、折りたたみミラー23を使用することが、可能である。好ましくは、集束部材に入射する、入ってくる光は、集束部材9の光軸から外れた軸にあり、且つ、相対的に小さいレンズの直径を許容するために、分散素子6の分散の方向に実質的に垂直である。
【0097】
分散素子6から集束部材9までの距離及び集束部材9からMOE10までの距離は、両方とも、集束部材9の焦点距離に等しくてもよい(テレセントリックな設計)。その結果は、光の収束する光線束が、全てのスペクトル成分について、xz平面内でMOE10に入射する法線であるものである。
【0098】
集束部材9から検出器11Sまでの距離は、集束部材9の焦点距離に等しくてもよい。この場合には、検出器11Sは、相対的に小さいエリアを有してもよい。
【0099】
MOE10から集束部材17までの距離及び集束部材17からビームダンプ18及び/又は検出器11Pまでに距離は、各々、集束部材9の焦点距離に等しくてもよい(テレセントリックな設計)。
【0100】
折りたたみミラー23から集束部材9の主平面までの距離は、集束部材9の焦点距離と異なってもよい(非テレセントリックな設計)。このようにして、検出器11Sは、分散素子6とは異なる位置を有してもよい。
【0101】
図11A及び11Bに示す実施形態においては、光学分析システム1は、光学信号の第一の部分を、その第一の部分を第一の検出器5に集束させることより先に、スペクトル的に再結合させるためのさらなる分散素子9を含む。この実施形態においては、光学信号は、たとえば、共焦点の検出スキームにおけるピンホールであってもよい点源14から光学分析システム1に入る。光学分析システム1は、光学信号をコリメートするためのレンズ15、及び、回折格子である、分散素子2、及び、シリンダーレンズである、集束部材3を含む。集束部材3は、分散させられた光学信号を分配素子4に集束させるために、配置される。この実施形態において、図12に示す分配素子4は、分散させられた光学信号を、再度のコリメーションのために、集束部材3に向かって逆戻りに、反射させるために、配置される。そして、再度コリメートされた光学信号は、なお、スペクトル的に分散させられ、それは、それを、相対的に小さいスポットの大きさに集束させることの可能性を限定する。光学信号を空間的に再結合させるために、それは、この実施形態においては分散素子3である、さらなる分散素子9へ送られる、すなわち、分散素子4及びさらなる分散素子9は、一つの回折格子に統合される。第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられたスペクトル的に再結合された光学信号及び第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられたスペクトル的に再結合させられた光学信号は、レンズ15によって第一の検出器5及び第二の検出器6上に集束させられる。
【0102】
実施形態に与えられた光学設計は、唯一の可能な設計ではないことに留意すること。パラメータの自明な変動の他に、他のスキームは、特に、異なる方向及び異なる検出器の位置における反射に関して、想像可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】血液分析システムの実施形態の概略図である。
【図2】(A)及び(B)は、皮膚における血液から及び溶液中の一つの分析物を含む試料から発生させられた光学信号のスペクトルである。
【図3】MOEにおいて実施されるスペクトルの重み付けの関数である。
【図4】光学分析システムの実施形態の概略図である。
【図5】(A)及び(B)は、それぞれ、xz平面及びyz平面における図4のスペクトルフィルターの概略図である。
【図6】(A)及び(B)は、それぞれ、xz平面及びyz平面における光学分析システムの別の実施形態の概略図である。
【図7】光学分析システムの別の実施形態の概略図である。
【図8】(A)及び(B)は、それぞれ、xz平面及びyz平面における光学分析システムの別の実施形態の概略図である。
【図9】(A)及び(B)は、それぞれ、xz平面及びyz平面における光学分析システムのさらに別の実施形態の概略図である。
【図10】(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、xy平面、yz平面、及びxz平面における光学分析システムのさらに別の実施形態の概略図である。
【図11】(A)及び(B)は、それぞれ、xz平面及びyz平面における光学分析システムのさらに別の実施形態の概略図である。
【図12】分配素子の実施形態の断面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学信号の主成分の振幅を決定する光学分析システムであって、
当該光学分析システムは、
該光学信号を反射させると共に、それによって、スペクトルの重み付けの関数によって該光学信号に重みを付ける多変量の光学素子、及び
該重みを付けられた光学信号を検出するための検出器
を含む、光学分析システム。
【請求項2】
前記光学信号をスペクトル的に分散させる分散素子をさらに含み、
前記多変量の光学素子は、該分散させられた光学信号を受けるように、配置される、請求項1に記載の光学分析システム。
【請求項3】
前記多変量の光学素子は、前記分散させられた光学信号のスペクトルの部分を受ける領域を含み、
該領域は、前記スペクトルの重み付けの関数に関係する反射能を有する、請求項2に記載の光学分析システム。
【請求項4】
前記多変量の光学素子は、前記分散させられた光学信号のスペクトルの部分を受けるための領域を含み、
該領域の一部分は、それに入射する前記分散させられた光学信号を前記検出器へ反射させるように、配置され、
該領域の別の部分は、それに入射する前記分散させられた光学信号が、前記検出器へ反射させられることを予防するように、配置される、請求項2に記載の光学分析システム。
【請求項5】
前記領域の前記部分は、傾斜可能な反射面を含む、請求項4に記載の光学分析システム。
【請求項6】
前記領域は、反射性のLCセルを含む、請求項3又は4に記載の光学分析システム。
【請求項7】
前記領域は、反射性のエレクトロウェッティングセルを含む、請求項3又は4に記載の光学分析システム。
【請求項8】
前記検出器は、第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた前記光学信号を検出する第一の検出器を、及び、第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた前記光学信号を検出する第二の検出器を含み、
前記多変量の光学素子は、該第一のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた前記分散させられた光学信号の第一の部分を該第一の検出器へ、及び、該第二のスペクトルの重み付けの関数によって重みを付けられた該光学信号の第二の部分を該第二の検出器へ、反射させるように、配置される、請求項2に記載の光学分析システム。
【請求項9】
前記多変量の光学素子は、第一の部分的な重み付けの関数によって前記光学信号に重みを付ける第一の多変量の光学素子、及び、該第一の部分的な重み付けの関数によって重みを付けられた該光学信号に、第二の部分的な重み付けの関数によって、重みを付ける第二の多変量の光学素子を含む、請求項1又は8に記載の光学分析システム。
【請求項10】
ある濃度を有する物質を含む試料を照明すると共に、それによって、前記主成分を発生させる光を提供する光源をさらに含み、
前記主成分の振幅は、該物質の該濃度に関係する、請求項1に記載の光学分析システム。
【請求項11】
請求項10に記載の光学分析システムを含む血液分析システムであって、
前記試料は、血液を含む、血液分析システム。
【請求項12】
光学信号の主成分の振幅を決定するための方法であって、
当該方法は、
スペクトルの重み付けの関数に対応するスペクトルの反射能を有する多変量の光学素子によって該光学信号を反射させるステップ、及び
該多変量の光学素子によって反射させられた該光学信号を検出するステップ
を含む、方法。

【図1】
image rotate

image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

【図7】
image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2006−510899(P2006−510899A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561903(P2004−561903)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/IB2003/006089
【国際公開番号】WO2004/057285
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】