説明

光学式検出装置、表示装置及び電子機器

【課題】効率的に検出精度を向上させることができる光学式検出装置、表示装置及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】光学式検出装置は、照射光を出射する照射部EUと、照射光が対象物に反射することによる反射光を少なくとも受光する受光素子PDと、受光素子PDの受光検出信号を増幅する増幅部100と、増幅部100が出力する信号に基づいて、対象物の位置特定情報を出力する検出部200と、位置特定情報に基づいて対象物の位置を判定する判定部300と、増幅部100の出力ノードN1と検出部200の入力ノードN2との間に設けられる結合キャパシターCAとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式検出装置、表示装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピューター、カーナビゲーション装置、券売機、銀行の端末などの電子機器では、近年、表示部の前面にタッチパネルが配置された位置検出機能付きの表示装置が用いられる。この表示装置によれば、ユーザーは、表示部に表示された画像を参照しながら、表示画像のアイコン等をポインティングしたり、情報を入力することが可能になる。このようなタッチパネルによる位置検出方式としては、例えば抵抗膜方式や静電容量方式などが知られている。
【0003】
一方、投写型表示装置(プロジェクター)やデジタルサイネージ用の表示装置では、携帯電話やパーソナルコンピューターの表示装置に比べて、その表示エリアが広い。従って、これらの表示装置において、上述の抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルを用いて位置検出を実現することは難しい。
【0004】
投写型表示装置用の位置検出装置の従来技術としては、例えば特許文献1、2に開示される技術が知られている。しかしながら、この位置検出装置では、システムが大掛かりになってしまうなどの問題がある。また、検出エリアが広い場合には、フォトダイオードなどの受光素子からの検出信号が小さくなってしまい、その結果、十分な検出精度を得ることが難しいなどの問題がある。また、検出精度を向上させるために、光学設計上のパラメーターや回路設計上のパラメーターを調整する必要があり、その結果、設計コスト、製造コスト等の増大を招くなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−345085
【特許文献2】特開2001−142643
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、効率的に検出精度を向上させることができる光学式検出装置、表示装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、照射光を出射する照射部と、前記照射光が対象物に反射することによる反射光を少なくとも受光する受光素子と、前記受光素子の受光検出信号を増幅する増幅部と、前記増幅部が出力する信号に基づいて、前記対象物の位置特定情報を出力する検出部と、前記位置特定情報に基づいて前記対象物の位置を判定する判定部と、前記増幅部の出力ノードと前記検出部の入力ノードとの間に設けられる結合キャパシターとを含む光学式検出装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、増幅部の出力ノードと検出部の入力ノードとの間に設けられる結合キャパシターの容量値を、受光素子や回路素子の特性などに応じて設定することができるから、効率的に検出精度を向上させることなどが可能になる。
【0009】
また本発明の一態様では、前記検出部は、前記入力ノードに対して逆バイアス電圧を設定するための逆バイアス印加用の回路を含んでもよい。
【0010】
このようにすれば、受光素子の受光電流が大きく、増幅する必要がない場合には、受光素子を直接入力ノードに接続することで、受光素子に逆バイアス電圧が印加された状態で、受光素子を動作させることができる。また受光素子の受光電流が小さい場合には、増幅部で受光検出信号を増幅し、増幅された信号を検出部に入力することができる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記受光素子は、フォトダイオードであって、前記逆バイアス電圧は、前記入力ノードに前記受光素子を接続する場合に、前記フォトダイオードに対して逆方向の電圧を印加するためのバイアス電圧であってもよい。
【0012】
このようにすれば、受光素子であるフォトダイオードに逆バイアス電圧を印加することができるから、受光素子を直接検出部の入力ノードに接続することができる。その結果、増幅部が不要になるから、装置の構成を簡素にすることができ、製造コストの低減などが可能になる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記検出部は、前記位置特定情報として発光電流制御情報を出力し、前記結合キャパシターの容量値は、前記発光電流制御情報の変動幅が所定の変動幅になるように設定されてもよい。
【0014】
このようにすれば、結合キャパシターの容量値を設定することで、発光電流制御情報の変動幅が所定の変動幅に設定されるから、所望の検出精度を得ることが可能になる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記所定の変動幅は、前記対象物の検出精度が所望の検出精度になる変動幅であってもよい。
このようにすれば、結合キャパシターの容量値を設定することで、所望の検出精度を得ることが可能になるから、光学設計上のパラメーターや回路設計上のパラメーターを調整することなしに、所望の位置検出精度を実現することが可能になる。
【0016】
また本発明の一態様では、前記判定部は、前記対象物が検出される領域である検出領域に前記対象物が存在しない第1の期間における前記発光電流制御情報である第1期間用発光電流制御情報と、前記検出領域に前記対象物が存在する第2の期間における前記発光電流制御情報である第2期間用発光電流制御情報とに基づいて、前記対象物の位置を判定してもよい。
【0017】
このようにすれば、太陽光等の環境光や照射光の初期経路などの影響を除去することができるから、検出精度を向上させることができる。
【0018】
また本発明の一態様では、前記結合キャパシターの前記容量値は、前記第1期間用発光電流制御情報の値が所定の値になるように設定されてもよい。
【0019】
このようにすれば、結合キャパシターの容量値を設定することで、第1期間用発光電流制御情報の値が所定の値に設定されるから、所望の検出精度を確保することなどが可能になる。
【0020】
また本発明の一態様では、前記所定の値は、前記第2期間用発光電流制御情報の変動幅の中間の値であってもよい。
【0021】
このようにすれば、結合キャパシターの容量値を設定することで、第1期間用発光電流制御情報の値が、所定の変動幅の中間の値に設定されるから、所望の検出精度を確保することなどが可能になる。
【0022】
また本発明の一態様では、前記結合キャパシターの前記容量値は、前記第2期間用発光電流制御情報の変動幅が所定の変動幅になるように設定されてもよい。
【0023】
このようにすれば、結合キャパシターの容量値を設定することで、第2期間用発光電流制御情報の変動幅が所定の変動幅に設定されるから、所定の座標検出レンジを確保することができる。その結果、所望の検出精度を確保することなどが可能になる。
【0024】
また本発明の一態様では、前記所定の変動幅は、前記対象物の検出精度が所望の検出精度になる変動幅であってもよい。
【0025】
このようにすれば、結合キャパシターの容量値を設定することで、所望の検出精度を得ることが可能になるから、光学設計上のパラメーターや回路設計上のパラメーターを調整することなしに、所望の位置検出精度を実現することが可能になる。
【0026】
また本発明の一態様では、前記増幅部は、前記受光素子に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換回路と、前記電流電圧変換回路の出力信号を所定のバイアス電圧を中心として増幅し、増幅信号を前記出力ノードに出力する増幅回路とを含んでもよい。
【0027】
このようにすれば、受光素子に流れる電流が小さい場合でも、増幅部で受光検出信号を増幅し、増幅された信号を検出部に入力することができるから、検出精度を向上させることなどが可能になる。
【0028】
本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の光学式検出装置を含む表示装置及び電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】光学式検出装置の基本的な構成例。
【図2】光学式検出装置の増幅部を含まない構成例。
【図3】第1の期間における発光電流制御を説明する図。
【図4】第2の期間における発光電流制御を説明する図。
【図5】発光電流制御情報と発光電流との関係を説明する図。
【図6】光学式検出装置の変形例。
【図7】図7(A)、図7(B)は、結合キャパシターの容量値と発光電流制御情報との関係の第1の例。
【図8】図8(A)、図8(B)は、結合キャパシターの容量値と発光電流制御情報との関係の第2の例。
【図9】図9(A)、図9(B)は、結合キャパシターの容量値と発光電流制御情報との関係の第3の例。
【図10】照射部の詳細な構成例。
【図11】図11(A)、図11(B)は、光学式検出装置を用いた表示装置や電子機器の基本的な構成例。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0031】
1.光学式検出装置
図1に本実施形態の光学式検出装置の基本的な構成例を示す。本実施形態の光学式検出装置は、照射部EU、受光素子PD、増幅部100、検出部200、判定部300、結合キャパシターCAを含む。なお、本実施形態の光学式検出装置は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば、図2に示すように増幅部100を含まない構成とすることもできる。
【0032】
照射部EUは、第1、第2の光源部LS1、LS2を含み、光源部LS1、LS2が発光することで照射光を出射する。光源部LS1、LS2は、LED(発光ダイオード)等の発光素子を含み、例えば赤外光(可視光領域に近い近赤外線)を放出する。
【0033】
受光素子PDは、照射光が対象物に反射することによる反射光を少なくとも受光する。この受光素子PDは、例えばフォトダイオードやフォトトランジスターなどを用いることができる。
【0034】
増幅部100は、受光素子PDの受光検出信号を増幅して、出力ノードN1に出力する。増幅部100は、電流電圧変換回路110、増幅回路120及び逆バイアス設定回路BSCを含む。電流電圧変換回路110は、オペアンプOPA1及び抵抗素子R1を含み、受光素子PDに流れる電流を電圧に変換して、例えば高電位電源電圧VDDの1/2の電圧レベルを中心とする信号(受光検出信号)を出力する。この受光検出信号は、キャパシターC1を介して増幅回路120に入力される。増幅回路120は、オペアンプOPA2及び抵抗素子R2、R3を含み、受光検出信号を増幅して、例えば1/2×VDDの電圧レベル(広義には所定のバイアス電圧)を中心とする信号を出力ノードN1に出力する。逆バイアス設定回路BSCは、受光素子PD(フォトダイオード)に対して逆方向のバイアス電圧を印加する。
【0035】
検出部200は、増幅部100が出力する信号に基づいて、対象物の位置特定情報を検出し、判定部300に出力する。検出部200は、逆バイアス印加用回路210、バッファー回路BUF、スイッチ回路SW、比較回路220、発光電流制御回路230及び2つの駆動回路DR1、DR2を含む。
【0036】
逆バイアス印加用回路210は、入力ノードN2に対して逆バイアス電圧を設定することができる回路(逆バイアス印加用の回路)であって、例えば高電位電源電圧VDDを入力ノードN2に印加することができる。この逆バイアス電圧は、入力ノードN2に受光素子PDを接続する場合に、フォトダイオードに対して逆方向の電圧を印加するためのバイアス電圧である。逆バイアス印加用回路210を用いることで、増幅部100を介さずに、受光素子PD(フォトダイオード)を直接入力ノードN2に接続することができる。すなわち受光素子PDの受光電流が大きく、増幅する必要がない場合には、図2に示すように、受光素子PDを直接入力ノードN2に接続することで、受光素子PDに逆バイアス電圧が印加された状態で、受光素子PDを動作させることができる。一方、受光素子PDの受光電流が小さい場合には、図1に示すように増幅部100により受光電流を電圧に変換して増幅し、増幅された信号を結合キャパシターCAを介して入力ノードN2に入力することができる。
【0037】
図1に示すように、増幅部100により受光検出信号を増幅し、増幅された信号を検出部200に入力することで、例えば検出領域が広く、受光素子PDからの受光電流が小さい場合でも、発光電流制御回路230による発光電流制御が適正に行われ、所望の検出精度を得ることが可能になる。また、受光素子PDの受光電流が大きい場合には、図2に示すように、受光素子PDを直接入力ノードN2に接続することで、増幅部100が不要になるから、装置の構成を簡素にすることができ、製造コストの低減などが可能になる。このように本実施形態の光学式検出装置によれば、受光素子等の特性や検出領域の広さなどに応じて、効率的に所望の検出精度を得ることなどが可能になる。
【0038】
スイッチ回路SWは、バッファー回路BUFでバッファーされた受光検出信号を、比較回路220の一方の入力ノード(+)と他方の入力ノード(−)とに切り換えて出力する。具体的には、第1の光源部LS1の発光時には入力ノード(+)に受光検出信号を出力し、第2の光源部LS2の発光時には入力ノード(−)に受光検出信号を出力する。
【0039】
比較回路220は、入力ノード(+)に入力された受光検出信号と入力ノード(−)に入力された受光検出信号とを比較して、その結果を発光電流制御回路230に出力する。具体的には、例えばLS1の発光時の受光検出信号VA1が入力ノード(+)に入力され、LS2の発光時の受光検出信号VA2が入力ノード(−)に入力された場合に、比較回路220は2つの受光検出信号の差分VA1−VA2に対応する信号を出力する。
【0040】
発光電流制御回路230は、比較回路220からの信号に基づいて光源部LS1、LS2の発光制御を行う。具体的には、比較回路220の比較結果(受光検出信号の差分)に基づいて、2つの受光検出信号(例えばVA1、VA2など)が等しくなるように、2つの光源部LS1、LS2に流れる電流(発光電流)を設定するための発光電流制御情報LCNを出力する。この発光電流制御情報LCNは、例えばLS1の発光電流を設定するための電流設定値IA1及びLS2の発光電流を設定するための電流設定値IA2を含む。なお、発光電流制御の詳細については、後述する。
【0041】
判定部300は、検出部200が出力する位置特定情報(発光電流制御情報LCN)に基づいて、対象物の位置を判定する。具体的には、判定部300は、第1期間用発光電流制御情報LCNinitと第2期間用発光電流制御情報LCNdetとに基づいて、第1、第2の光源部LS1、LS2と対象物OBとの位置関係を判定する。第1期間用発光電流制御情報LCNinitは、対象物OBが検出領域に存在しない第1の期間(初期状態期間)での発光電流制御情報であり、第2期間用発光電流制御情報LCNdetは、対象物OBが検出領域に存在する第2の期間(検出期間)での発光電流制御情報である。これらの発光電流制御情報を用いて位置関係を判定する手法については、後述する。
【0042】
検出領域は、対象物が検出される領域であって、具体的には、例えば照射光が対象物OBに反射されることによる反射光を、受光素子PDが受光して、対象物OBを検出することができる領域である。より具体的には、受光素子PDが反射光を受光して対象物OBを検出することが可能であって、かつ、その検出精度について、許容できる範囲の精度が確保できる領域である。
【0043】
結合キャパシターCAは、増幅部100の出力ノードN1と検出部200の入力ノードN2との間に設けられる。この結合キャパシターCAは、入力ノードN2に印加されるバイアス電圧(逆バイアス)が増幅部100の出力ノードN1に印加されることを防止する。すなわち、結合キャパシターCAは、交流成分である受光検出信号を通過させ、直流成分であるバイアス電圧を遮断する働きをする。
【0044】
この結合キャパシターCAの容量値が変化すると、発光電流制御情報LCNの変動範囲(取り得る値の範囲)が変化する。CAの容量値が大きい場合には、入力ノードN2の電圧レベルの変化が大きくなり、CAの容量値が小さい場合には、入力ノードN2の電圧レベルの変化が小さくなるからである。LCNの変動範囲が変化すれば、その変動幅(座標検出レンジ)も変化する。対象物の位置検出精度は、LCNの変動幅(座標検出レンジ)に依存するから、所望の位置検出精度を得るためには、発光電流制御情報LCNの変動幅(座標検出レンジ)を所定の変動幅に設定する必要がある。
【0045】
後述するように、本実施形態の光学的検出装置によれば、結合キャパシターCAの容量値を、発光電流制御情報LCNの変動幅が所定の変動幅になるように設定することができる。ここでLCNの変動幅とは、対象物が検出領域の一端に存在する時のLCNの値(デジタル値)と、対象物が検出領域の他端に存在する時のLCNの値の差分である。従って、この変動幅が大きいほど対象物の座標値に対応するLCNの値(デジタル値)の刻み(ステップ数)が多くなるから、位置検出精度が高くなる。所定の変動幅とは、所望の位置検出精度を確保するために必要な変動幅である。なお、発光電流制御情報LCNの変動幅については、後述する図7(A)〜図9(A)により具体的に説明する。
【0046】
駆動回路DR1、DR2は、発光電流制御回路230からの電流設定値IA1、IA2に基づいて、発光電流を生成して光源部LS1、LS2にそれぞれ供給する。
【0047】
図3は、第1の期間、すなわち対象物が検出領域に存在しない期間における発光電流制御を説明する図である。図3に示すように、発光電流制御回路230は、LS1とLS2とを交互に発光させる。受光素子PDは、LS1の発光時にはLS1からの照射光LT1を受光し、LS2の発光時にはLS2からの照射光LT2を受光する。さらに受光素子PDは、太陽光などの外光(環境光)LOを受光する。なお、図3には透光部材TPを含む構成例を示すが、透光部材TPを含まない構成であってもよい。
【0048】
発光電流制御回路230は、LS1の発光時の受光結果とLS2の発光時の受光結果とが等しくなるように、発光制御を行う。具体的には、比較回路220の比較結果(受光検出信号の差分)に基づいて、差分が0に近づくようにLS1、LS2の発光電流の電流設定値IA1、IA2を設定する。そして2つの受光結果が等しくなった時の発光電流制御情報を第1期間用発光電流制御情報LCNinitとして判定部300に出力する。
【0049】
図4は、第2の期間、すなわち対象物OBが検出領域に存在する期間における発光電流制御を説明する図である。図4に示すように、発光電流制御回路230は、LS1とLS2とを交互に発光させる。受光素子PDは、LS1の発光時にはLS1からの照射光LT1aと、照射光LT1bが対象物OBに反射されることによる反射光LR1とを受光し、LS2の発光時にはLS2からの照射光LT2aと、照射光LT2bが対象物OBに反射されることによる反射光LR2とを受光する。さらに受光素子PDは、太陽光などの外光(環境光)LOを受光する。なお、図4には透光部材TPを含む構成例を示すが、透光部材TPを含まない構成であってもよい。
【0050】
第2の期間、すなわち対象物が検出領域に存在する期間での発光制御は、上述した第1の期間での発光制御と同じである。すなわち発光電流制御回路230は、LS1とLS2とを交互に発光させ、LS1の発光時の受光結果とLS2の発光時の受光結果とが等しくなるように、発光制御を行う。具体的には、比較回路220の比較結果(受光検出信号の差分)に基づいて、差分が0に近づくようにLS1、LS2の発光電流の電流設定値IA1d、IA2dを設定する。そして2つの受光結果が等しくなった時の発光電流制御情報を第2期間用発光電流制御情報LCNdetとして判定部300に出力する。
【0051】
判定部300は、第1期間用及び第2期間用発光制御情報LCNinit、LCNdetに基づいて、対象物OBの位置を判定する。具体的には、電流設定値IA1、IA2、IA1d、IA2dから、次式により光源部LS1、LS2と対象物OBとの位置関係を判定することができる。
【0052】
FR=FA1/FA2=F(LOB1)/F(LOB2)
=(IA1×IA2d)/(IA2×IA1d)
ここで、FRは距離関数F(LOB1)の値FA1と距離関数F(LOB2)の値FA2との比である。また距離関数F(LOB1)は、第1の光源部LS1に対する対象物OBの位置関係を表す距離関数であり、F(LOB2)は第2の光源部LS2に対する対象物OBの位置関係を表す距離関数である。
【0053】
この距離関数F(L)は、ある光経路Lに対する光減衰を表す関数である。距離関数F(L)は、例えば光源が点光源である場合には、距離Lの2乗に反比例する関数である。実際には、距離関数F(L)は、光源部LS1、LS2と受光素子PDとの位置関係や透光部材TPの有無などを考慮して決めることができる。
【0054】
このように、第1期間用及び第2期間用発光制御情報LCNinit、LCNdetに基づいて対象物OBの位置を判定することで、外光(環境光)LOや照射光の初期経路LT1a、LT2aなどの影響を除去することができる。
【0055】
図5は、発光電流制御情報LCNと発光電流との関係を説明する図である。図5の横軸は、10ビットのデジタル値(0〜1023)で表現した発光電流制御情報LCNを示す。また図5の縦軸は、発光電流制御回路230により制御される電流値の範囲(上限値、下限値)を示す。例えば、LCNが0の場合には、IA1は下限値に設定され、IA2は上限値に設定される。またLCNが512の場合には、IA1とIA2は共に中央値(上限値と下限値の中間)に設定され、LCNが1023の場合には、IA1は上限値に設定され、IA2は下限値に設定される。
【0056】
上述したように、発光電流制御回路230は、比較回路220の比較結果(受光検出信号の差分)に基づいて、差分が0に近づくようにLS1、LS2の発光電流の電流値IA1、IA2を調整する。すなわち、IA1、IA2のいずれか一方を増加させ、他方を減少させることで、受光検出信号の差分を0に近づける。このようにして、発光電流制御情報LCNの値は0〜1023の範囲内の1つの値に決まる。
【0057】
第1の期間、すなわち対象物OBが検出領域に存在しない期間では、対象物OBからの反射光がない。したがって、理論的には、第1の光源部LS1から受光素子PDまでの距離(光経路)と、第2の光源部LS2から受光素子PDまでの距離(光経路)が等しく、またLS1とLS2の発光効率が等しい場合には、第1期間用発光電流制御情報LCNinitは512に設定される。IA1とIA2とが等しい値に設定されるからである。
【0058】
実際には、光源部の発光効率のばらつきや、光源部と受光素子との位置関係などにより、厳密には等しくすることは難しい。しかしながら、位置検出精度を確保するためには、上述したように第1期間用発光電流制御情報LCNinitを中心値(例えば512)に近い値(広義には発光電流制御情報LCNの所定の変動幅の中間の値)に設定することが望ましい。
【0059】
第2の期間、すなわち対象物OBが検出領域に存在する期間では、対象物OBの位置によって、第2期間用発光電流制御情報LCNdetの値は変化する。例えば、対象物OBが第1の光源部LS1に近く、第2の光源部LS2から遠いほど、LCNdetの値は0に近づく。IA2が大きい値に設定され、IA1が小さい値に設定されるためである。反対に、対象物OBが第2の光源部LS2に近く、第1の光源部LS1から遠いほど、LCNdetの値は1023に近づく。IA1が大きい値に設定され、IA2が小さい値に設定されるためである。
【0060】
位置検出精度は、発光電流制御情報LCNを表現するデジタル値(例えば0〜1023)の刻み(ステップ数)が多いほど、精度が高くなる。例えば、検出領域のX座標値が0〜XAの範囲であり、このX座標値に対応するLCNのステップ数がNである場合には、位置検出精度はXA/Nになる。従って、例えば図5では、N=1024である場合に、最も精度が良くなる。すなわち、対象物OBが検出領域の一端(例えばX座標値が0)に存在する時にLCNの値が0になり、対象物OBが検出領域の他端(例えばX座標値がXA)に存在する時にLCNの値が1023になる場合に、最も精度が良くなる。
【0061】
以上説明したように、対象物OBが検出領域の一端から他端に移動した際の第2期間用発光電流制御情報LCNdetの変動幅(座標検出レンジ)が大きいほど、すなわち可能な最大の変動幅(例えば0〜1023)に近いほど、位置検出精度が高くなる。また、第1期間用発光電流制御情報LCNinitの値は、第2期間用発光電流制御情報LCNdetの変動範囲の中心値(例えば512)に近い値に設定することが望ましい。
【0062】
このように本実施形態の光学式検出装置では、結合キャパシターCAの容量値を変化させることで、LCNinit及びLCNdetの変動範囲(取り得る値の範囲)を変化させることができる。従って、本実施形態の光学式検出装置によれば、第1期間用発光電流制御情報LCNinitの値が所定の値になるように、結合キャパシターCAの容量値を設定することができる。また、第2期間用発光電流制御情報LCNdetの変動幅(座標検出レンジ)が所定の変動幅になるように、結合キャパシターCAの容量値を設定することができる。所定の値及び所定の変動幅は、要求される位置検出精度に応じて決めることができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の光学式検出装置によれば、例えば検出領域が広く、受光素子PDからの受光電流が小さい場合でも、増幅部100により受光検出信号を増幅することで、所望の検出精度を得ることが可能になる。さらに結合キャパシターCAの容量値を変化させることで、発光電流制御情報LCNの変動幅を所定の変動幅に設定することができるから、光学設計上のパラメーターを調整することなしに、或いは比較回路、発光電流制御回路などの回路設計上のパラメーターを調整することなしに、所望の位置検出精度を実現することができる。その結果、設計コスト、製造コスト等の増大を抑制しつつ、効率的に位置検出精度を向上させることなどが可能になる。
【0064】
また本実施形態の光学式検出装置によれば、受光素子PDの受光電流が大きい場合には、受光素子からの信号を直接検出部に入力することができるから、増幅部が不要になり、装置の構成を簡素にすることができ、製造コストの低減などが可能になる。その結果、受光素子等の特性や検出領域の広さなどに応じて、効率的に所望の検出精度を得ることなどが可能になる。
【0065】
図6に、本実施形態の光学式検出装置の変形例を示す。この変形例では、結合キャパシターCB1〜CB3を含み、レジスターREGのレジスター値に基づいて、CB1〜CB3のうちのいずれか1つを選択して接続することができる。このようにすることで、結合キャパシターの容量値を可変に設定することができるから、光学系の特性ばらつきや回路素子の特性ばらつきに対応して、容量値を最適な値に設定することができる。なお、図6における結合キャパシターの個数は3個に限定されるものではなく、4個以上の結合キャパシターを含む構成としてもよい。
【0066】
図7(A)に、結合キャパシターCAの容量値と発光電流制御情報LCNとの関係の第1の例を示す。この第1の例は、図7(B)に示す照射部EU及び受光部RU(受光素子PD)を用いて、測定されたものである。
【0067】
この照射部EUは、中心位置PEから見た角度(0〜180度)に応じて強度が変化する照射光を出射する。すなわち光源部LS1の発光時には、角度0度の方向に対して強度が最大となり、角度180度の方向に対して強度が最小になる強度分布パターンを有する照射光を出射する。また、光源部LS2の発光時には、角度0度の方向に対して強度が最小となり、角度180度の方向に対して強度が最大になる強度分布パターンを有する照射光を出射する。受光素子PDは中心位置PE、又はその近傍に設けられる。このような構成により、対象物が存在する方向(角度)を検出することができる。なお、照射部EUの詳細な構成については、後述する。
【0068】
図7(A)には、対象物が無い場合のLCN(LCNinit)の値と、対象物が0度及び180度の方向に存在する場合のLCN(LCNdet)の値と、検出レンジ(LCNdetの変動幅)とを示す。検出レンジは、図7(A)のA1で最大になり、またLCNinitの値は、図7(A)のA2でほぼ中心値512になる。従って、結合キャパシターCAの容量値を、図7(A)のA3に示す容量値の範囲に設定すればよい。
【0069】
図8(A)に、結合キャパシターCAの容量値と発光電流制御情報LCNとの関係の第2の例を示す。この第2の例は、図8(B)に示す光源部LS1〜LS4及び受光素子PDを用いて、測定されたものである。この構成例では、検出領域RDETの各辺にライトガイドLG1〜LG4が設けられ、例えば光源部LS1と直線状のライトガイドLG1が1つの照射部を構成する。ライトガイドLG1〜LG4から、各辺に垂直に検出領域RDETの内側に向かう方向に照射光が出射される。対象物のX座標検出時にはLS1とLS3とを交互に発光させ、Y座標検出時にはLS2とLS4とを交互に発光させて発光電流制御を行う。
【0070】
図8(A)には、対象物が無い場合のLCN(LCNinit)の値と、対象物が存在する場合の検出レンジ(LCNdetの変動幅)とを、X座標検出時及びY座標検出時について示す。LCNinitの値は、図8(A)のB1で、X座標に対しても、Y座標に対してもほぼ同じ値になる。X座標の検出レンジは、図8(A)のB2で、約570になり、Y座標の検出レンジは、図8(A)のB3で、約180になる。X座標の検出レンジは、図8(A)のB2では最大になっていないが、LCNinitの値がX座標、Y座標についてほぼ同じ値になる容量値の範囲(図8(A)のB4)に、結合キャパシターCAの容量値を設定するのがよい。
【0071】
図9(A)に、結合キャパシターCAの容量値と発光電流制御情報LCNとの関係の第3の例を示す。この第3の例は、図9(B)に示す光源部LS1〜LS4及び受光素子PDを用いて、測定されたものである。この構成例では、検出領域RDETの各コーナーに光源部LS1〜LS4が設けられ、例えばX座標検出時にはLS1とLS3とを交互に発光させ、Y座標検出時にはLS2とLS4とを交互に発光させて発光電流制御を行う。
【0072】
図9(A)には、対象物が無い場合のLCN(LCNinit)の値と、対象物が存在する場合の検出レンジ(LCNdetの変動幅)とを、X座標検出時及びY座標検出時について示す。LCNinitの値は、図9(A)のC1で、X座標に対しても、Y座標に対してもほぼ同じ値になる。X座標の検出レンジとY座標の検出レンジは、図9(A)のC2で、ほぼ同じ値をとる。この値は検出レンジの最大値ではないが、十分に大きい値である。このようにX座標の検出レンジとY座標の検出レンジがほぼ同じ値であれば、X座標についての検出精度とY座標についての検出精度がほぼ同じになる。従って、結合キャパシターCAの容量値を、図9(A)のC3に示す容量値の範囲に設定すればよい。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の光学式検出装置では、結合キャパシターCAの容量値を変化させることで、LCNinit及びLCNdetの変動範囲(取り得る値の範囲)を変化させることができる。従って、本実施形態の光学式検出装置によれば、第1期間用発光電流制御情報LCNinitの値が所定の値、すなわち第2期間用発光電流制御情報の変動幅(座標検出レンジ)の中間の値になるように、結合キャパシターCAの容量値を設定することができる。ここで変動幅の中間の値とは、変動幅の中心値だけでなく、中心値に近い値も含む。例えば中心値より変動幅の1/4だけ小さい値から変動幅の1/4だけ大きい値までの範囲を含んでもよい。また、第2期間用発光電流制御情報LCNdetの変動幅(座標検出レンジ)が所定の変動幅、すなわち所望の検出精度を確保できる変動幅になるように、結合キャパシターCAの容量値を設定することができる。
【0074】
2.照射部
図10に、図7(B)に示した照射部EUの詳細な構成例を示す。図10の構成例の照射部EUは、光源部LS1、LS2と、ライトガイドLGと、照射方向設定部LEを含む。また反射シートRSを含む。そして照射方向設定部LEはプリズムシート(光学シート)PS及びルーバーフィルムLFを含む。なお、本実施形態の照射部EUは、図10の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0075】
光源部LS1、LS2は、光源光を出射するものであり、LED(発光ダイオード)等の発光素子を有する。この光源部LS1、LS2は例えば赤外光(可視光領域に近い近赤外線)の光源光を放出する。即ち、光源部LS1、LS2が発光する光源光は、ユーザーの指やタッチペン等の対象物により効率的に反射される波長帯域の光や、外乱光となる環境光にあまり含まれない波長帯域の光であることが望ましい。具体的には、人体の表面での反射率が高い波長帯域の光である850nm付近の波長の赤外光や、環境光にあまり含まれない波長帯域の光である950nm付近の赤外光などである。
【0076】
光源部LS1は、図10のF1に示すようライトガイドLGの一端側に設けられる。また第2の光源部LS2は、F2に示すようにライトガイドLGの他端側に設けられる。そして光源部LS1が、ライトガイドLGの一端側(F1)の光入射面に対して光源光を出射することで、照射光LT1を出射し、第1の照射光強度分布LID1を対象物の検出エリアに形成(設定)する。一方、光源部LS2が、ライトガイドLGの他端側(F2)の光入射面に対して第2の光源光を出射することで、第2の照射光LT2を出射し、第1の照射光強度分布LID1とは強度分布が異なる第2の照射光強度分布LID2を検出エリアに形成する。このように照射部EUは、検出領域RDETでの位置に応じて強度分布が異なる照射光を出射することができる。
【0077】
ライトガイドLG(導光部材)は、光源部LS1、LS2が発光した光源光を導光するものである。例えばライトガイドLGは、光源部LS1、LS2からの光源光を曲線状の導光経路に沿って導光し、その形状は曲線形状になっている。具体的には図10ではライガイドLGは円弧形状になっている。なお図10ではライトガイドLGはその中心角が180度の円弧形状になっているが、中心角が180度よりも小さい円弧形状であってもよい。ライトガイドLGは、例えばアクリル樹脂やポリカーボネートなどの透明な樹脂部材等により形成される。
【0078】
ライトガイドLGの外周側及び内周側の少なくとも一方には、ライトガイドLGからの光源光の出光効率を調整するための加工が施されている。加工手法としては、例えば反射ドットを印刷するシルク印刷方式や、スタンパーやインジェクションで凹凸を付ける成型方式や、溝加工方式などの種々の手法を採用できる。
【0079】
プリズムシートPSとルーバーフィルムLFにより実現される照射方向設定部LE(照射光出射部)は、ライトガイドLGの外周側に設けられ、ライトガイドLGの外周側(外周面)から出射される光源光を受ける。そして曲線形状(円弧形状)のライトガイドLGの内周側から外周側へと向かう方向に照射方向が設定された照射光LT1、LT2を出射する。即ち、ライトガイドLGの外周側から出射される光源光の方向を、ライトガイドLGの例えば法線方向(半径方向)に沿った照射方向に設定(規制)する。これにより、ライトガイドLGの内周側から外周側に向かう方向に、照射光LT1、LT2が放射状に出射されるようになる。
【0080】
このような照射光LT1、LT2の照射方向の設定は、照射方向設定部LEのプリズムシートPSやルーバーフィルムLFなどにより実現される。例えばプリズムシートPSは、ライトガイドLGの外周側から低視角で出射される光源光の方向を、法線方向側に立ち上げて、出光特性のピークが法線方向になるように設定する。またルーバーフィルムLFは、法線方向以外の方向の光(低視角光)を遮光(カット)する。
【0081】
このように本実施形態の照射部EUによれば、ライトガイドLGの両端に光源部LS1、LS2を設け、これらの光源部LS1、LS2を交互に点灯させることで、2つの照射光強度分布を形成することができる。すなわちライトガイドLGの一端側の強度が高くなる照射光強度分布LID1と、ライトガイドLGの他端側の強度が高くなる照射光強度分布LID2を交互に形成することができる。
【0082】
このような照射光強度分布LID1、LID2を形成し、これらの強度分布の照射光による対象物の反射光を受光することで、環境光などの外乱光の影響を最小限に抑えた、より精度の高い対象物の検出が可能になる。即ち、外乱光に含まれる赤外成分を相殺することが可能になり、この赤外成分が対象物の検出に及ぼす悪影響を最小限に抑えることが可能になる。
【0083】
3.表示装置及び電子機器
図11(A)、図11(B)に本実施形態の光学式検出装置を用いた表示装置や電子機器の基本的な構成例を示す。図11(A)、図11(B)は本実施形態の光学式検出装置を、液晶プロジェクター或いはデジタル・マイクロミラー・デバイスと呼ばれる投写型表示装置(プロジェクター)に適用した場合の例である。図11(A)、図11(B)では、互いに交差する軸をX軸、Y軸、Z軸(広義には第1、第2、第3の座標軸)としている。具体的には、X軸方向を横方向とし、Y軸方向を縦方向とし、Z軸方向を奥行き方向としている。
【0084】
本実施形態の光学式検出装置は、照射部EU、受光部RU(受光素子PD)、増幅部100、検出部200及び判定部300を含む。また本実施形態の表示装置(電子機器)は、光学式検出装置とスクリーン20(広義には表示部)を含む。さらに表示装置(電子機器)は画像投射装置10(広義には画像生成装置)を含むことができる。なお、本実施形態の光学式検出装置、表示装置、電子機器は図11(A)、図11(B)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0085】
画像投射装置10は、筺体の前面側に設けられた投射レンズからスクリーン20に向けて画像表示光を拡大投射する。具体的には画像投射装置10は、カラー画像の表示光を生成して、投射レンズを介してスクリーン20に向けて出射する。これによりスクリーン20の表示エリアARDにカラー画像が表示されるようになる。
【0086】
本実施形態の光学式検出装置は、図11(B)に示すようにスクリーン20の前方側(Z軸方向側)に設定された検出領域RDETにおいて、ユーザーの指やタッチペンなどの対象物を光学的に検出する。このために光学式検出装置の照射部EUは、対象物を検出するための照射光(検出光)を出射する。具体的には、照射方向に応じて強度(照度)が異なる照射光を放射状に出射する。これにより検出領域RDETには、照射方向に応じて強度が異なる照射光強度分布が形成される。なお検出領域RDETは、スクリーン20(表示部)のZ方向側(ユーザー側)において、XY平面に沿って設定される領域である。
【0087】
受光部RUは、照射部EUからの照射光が対象物に反射されることによる反射光を受光する。この受光部RUは、例えばフォトダイオードやフォトトランジスターなどの受光素子PDにより実現できる。この受光部RUには増幅部100が例えば電気的に接続されている。なお、図示していないが、受光部RUの近傍に参照光源部を設けることができる。
【0088】
増幅部100は、受光素子PDの受光検出信号を増幅し、結合キャパシターを介して検出部200に出力する。
【0089】
検出部200は、増幅部100が出力する信号に基づいて、対象物の位置特定情報を検出し、判定部300に出力する。また検出部200は、光学式検出装置の各種の制御処理を行う。具体的には照射部EUが有する光源部及び参照光源部の発光制御などを行う。この検出部200は照射部EUに電気的に接続されている。
【0090】
判定部300は、検出部200が出力する位置特定情報に基づいて、対象物の位置を判定する。判定部300の機能は、集積回路装置やマイクロコンピューター上で動作するソフトウェアなどにより実現できる。
【0091】
なお本実施形態の光学式検出装置は、図11(A)に示す投写型表示装置には限定されず、各種の電子機器に搭載される様々な表示装置に適用できる。また本実施形態の光学式検出装置を適用できる電子機器としては、パーソナルコンピューター、カーナビゲーション装置、券売機、携帯情報端末、或いは銀行の端末などの様々な機器を想定できる。この電子機器は、例えば画像を表示する表示部(表示装置)や、情報を入力するための入力部や、入力された情報等に基づいて各種の処理を行う処理部などを含むことができる。
【0092】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、光学式検出装置、表示装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0093】
EU 照射部、RU 受光部、PD 受光素子、ARD 表示エリア、
LT1、LT2 照射光、LR1、LR2 反射光、LS1、LS2 光源部、
OB 対象物、CA 結合キャパシター、RDET 検出領域、
LCNinit 第1期間用発光電流制御情報、
LCNdet 第2期間用発光電流制御情報、TP 透光部材、
LG1〜LG4 ライトガイド、RS 反射シート、
PS プリズムシート(光学シート)、LF ルーバーフィルム、
LE 照射方向設定部、
LID1 第1の照射光強度分布、LID2 第2の照射光強度分布、
10 画像投影装置、20 スクリーン、100 増幅部、110 電流電圧変換回路、
120 増幅回路、200 検出部、210 逆バイアス印加用回路、
220 比較回路、230 発光電流制御回路、300 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射光を出射する照射部と、
前記照射光が対象物に反射することによる反射光を少なくとも受光する受光素子と、
前記受光素子の受光検出信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部が出力する信号に基づいて、前記対象物の位置特定情報を出力する検出部と、
前記位置特定情報に基づいて前記対象物の位置を判定する判定部と、
前記増幅部の出力ノードと前記検出部の入力ノードとの間に設けられる結合キャパシターとを含むことを特徴とする光学式検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記検出部は、前記入力ノードに対して逆バイアス電圧を設定するための逆バイアス印加用の回路を含むことを特徴とする光学式検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記受光素子は、フォトダイオードであって、
前記逆バイアス電圧は、前記入力ノードに前記受光素子を接続する場合に、前記フォトダイオードに対して逆方向の電圧を印加するためのバイアス電圧であることを特徴とする光学式検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記検出部は、前記位置特定情報として発光電流制御情報を出力し、
前記結合キャパシターの容量値は、前記発光電流制御情報の変動幅が所定の変動幅になるように設定されることを特徴とする光学式検出装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記所定の変動幅は、前記対象物の検出精度が所望の検出精度になる変動幅であることを特徴とする光学式検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記判定部は、
前記対象物が検出される領域である検出領域に前記対象物が存在しない第1の期間における前記発光電流制御情報である第1期間用発光電流制御情報と、
前記検出領域に前記対象物が存在する第2の期間における前記発光電流制御情報である第2期間用発光電流制御情報とに基づいて、
前記対象物の位置を判定することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記結合キャパシターの前記容量値は、前記第1期間用発光電流制御情報の値が所定の値になるように設定されることを特徴とする光学式検出装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記所定の値は、前記第2期間用発光電流制御情報の変動幅の中間の値であることを特徴とする光学式検出装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかにおいて、
前記結合キャパシターの前記容量値は、前記第2期間用発光電流制御情報の変動幅が所定の変動幅になるように設定されることを特徴とする光学式検出装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記所定の変動幅は、前記対象物の検出精度が所望の検出精度になる変動幅であることを特徴とする光学式検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかにおいて、
前記増幅部は、
前記受光素子に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換回路と、
前記電流電圧変換回路の出力信号を所定のバイアス電圧を中心として増幅し、増幅信号を前記出力ノードに出力する増幅回路とを含むことを特徴とする光学式検出装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の光学式検出装置を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれかに記載の光学式検出装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−13482(P2012−13482A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148750(P2010−148750)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】