説明

光学機器の調整および検査システム

【課題】 単純な構成で且つ精度の高い位置補正を行い、かつ、シェーディング補正を行うことのできる光学機器の調整および検査システムを提供する。
【解決手段】 チャート100を用いて基準画像を撮影し、撮影した基準画像から相対座標基準点の絶対座標と、取得したい画像特性のある座標を相対座標基準点からの相対座標で表して水平垂直方向の位置補正量を導出する第1の演算手段(CPU401および記録装置402)と、チャート100を撮影して前記相対基準点近傍を走査して前記相対座標基準点の絶対座標を求め、基準画像と撮影画像の相対座標基準点とを比較して水平垂直方向の画角補正を行う第2の演算手段(CPU401および記録装置402)とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、撮影画像の画角補正及びシェーディングを補正するデジタルカメラ等、受光素子を備えた光学機器における相対位置調整及び検査工程に利用して公的な光学機器の調整および検査システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、受光素子を有するデジタルカメラ等光学機器の調整及び検査システムでは、被写体となるチャートを撮影し、受光素子から得た画像特性値を画像処理装置等の解析装置を用いて調整及び検査を行っていた。これらの調整及び検査では、チャート上の目的とする座標の画像特性値を取得するために予め座標を設定して読み取っている。
【0003】例えば、特開平6−229872号公報には、限界解像度より低い白黒縞が描かれた解像度チャートと、撮像素子から得られる映像信号である輝度の振幅から、白、黒の輝度レベルを基準とした変調度を求め、予め設定した基準値と比較して良否判定することにより、解像度チャートと撮像素子を備えたカメラとの相対位置関係を一定にした解像度自動検査方法及び装置が開示されている。ここでは、解像度検査は、カメラの限界解像度よりも低い白黒縞が描かれた解像度チャートを撮影し、画像中央及び四方に設置した白黒縞から得られる白黒の濃度差である輝度振幅を読み取り、変調度を求め、予め設定した基準値と比較することにより良否判定を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来技術によれば、カメラを支える固定治具の設置状況の変化や、チャートとカメラ間距離の変化により正しく画像特性値を取得できず、正確な調整、検査ができないという問題があった。このため、特開平6−229872号に開示された技術によれば、鏡筒を設置した時に生じる鏡筒とチャート間の相対位置の変化による座標の変化を補正するために、チャート上に基準位置マークを設置し、水平駆動モータおよび垂直駆動モータにてチャートを動かすことによって補正を実施している。従って、大掛かりな位置補正のための仕掛けを用意しなければならない。また、補正精度が良くないために目的とする座標の画像特性を取得できないことがあり、更に、シェーディングの影響により、画像周辺部における解像度の指標となる画像特性値が大きく変化してしまうため正確な解像度自動検査ができないといった不都合を有していた。
【0005】また、特開平6−229872号に開示された技術では、鏡筒を設置した時に、鏡筒とチャート間に相対の傾きを生じてしまうことがあるが、この傾きを補正するための手段が講じられていない。従って、鏡筒もしくはチャートに生じた傾きにより、チャート上の走査初期始点座標が変化してしまうため、目的とする画像特性を正確に取得しきれない。従って、鏡筒もしくはチャートが傾いていたとしても画像特性が取得できるような走査初期始点座標を補正する手段が必要である。
【0006】更に、特開平6−229872号に開示された技術では、レンズの特性により発生する画像周辺部の輝度レベルの減衰、すなわちシェーディングの影響を打ち消すために、走査ラインに対して一定の短冊区間で区切り、最大、最小を求め平均化して画像の特性を得ている。しかしながら、画像周辺部において、撮影画像の変調度を求めるための基準となる白参照ラインと、黒参照ラインとの座標の違いのため、それぞれシェーディングの撮影が違い、濃度勾配が大きく変化してしまうことと、白黒縞模様を水平垂直に数十画素の走査を行っているため、走査画素ラインに対してシェーディングの影響が発生してしまい、短冊区間の設定によって濃度勾配が大きく変化してしまう。
【0007】一方、光学機器の階調自動検査においても画角の補正が精度良くできないため、目的とする座標の画像特性を取得できないことがある。また、シェーディングの影響により、画像周辺部における階調の指標となる画像特性値が大きく変化してしまうため正確な階調自動検査ができない。また、光学機器の色バランス自動検査においても補正が精度良くできないため、目的とする座標の画像特性を取得できないことがある。更に、シェーディングの影響により、画像周辺部における色の位相及び振幅が大きく変化してしまうため正確な色バランス検査ができないといった問題があった。
【0008】本発明は上記諸々の事情に鑑みてなされたものであり、単純な構成で且つ精度の高い位置補正を行い、かつ、シェーディング補正を行うことのできる光学機器の調整および検査システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するために請求項1に記載の発明は、画角補正を行うパターンが配置されたチャートと、画像を撮影する撮影素子を備えた撮影装置とから成る光学機器の調整および検査システムであって、前記チャートを用いて基準画像を撮影し、前記撮影した基準画像から相対座標基準点の絶対座標と、取得したい画像特性のある座標を前記相対座標基準点からの相対座標で表して水平垂直方向の位置補正量を導出する第1の演算手段と、前記チャートを撮影して前記相対座標基準点近傍を走査して前記相対座標基準点の絶対座標を求め、前記基準画像と撮影画像の相対座標基準点とを比較して水平垂直方向の画角補正を行う第2の演算手段とを特徴とする。上記構成において、撮影したチャートの画像特性から画像の補正値を算出し、求める画像特性の走査初期始点座標を設定し直すことができるため、調整、検査途中でチャートの切り替え、または撮影装置の取り外しによる相対位置変化が起ったとしても画角補正を行うことで、調整、検査作業を持続することができる。従って、大掛かりな位置補正のための設備を使用することなく廉価構成で補正できるようになる。
【0010】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学機器の調整および検査システムにおいて、前記チャートに、水平、垂直方向に平行な線パターンが描かれ、前記第2の演算手段は、前記チャートのパターン座標から撮影画像の相対座標基準点を演算し、相対位置までの補正値を導出することを特徴とする。上記構成により、請求項1に記載の発明では、撮影画像の相対座標基準点を出すために、多くの走査ラインを必要とし、従って、相対座標基準点の座標を導出するためには、画像特性の取得と演算を多く返す必要があり、画角補正に多くの時間を費やしてしまうが、水平、垂直方向に平行な線パターンを用いることで、相対座標基準点を容易に求めることができ、請求項1の発明に比較して短時間で画角補正を実施することができる。
【0011】請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の光学機器の調整および検査システムにおいて、前記チャートに、水平または垂直方向に延びた線パターンが描かれ、前記第2の演算手段は、前記パターンの2点間の座標を導出し、前記導出した座標から撮影画像の傾きを演算し、基準位置座標からの相対座標を補正することを特徴とする。上記構成において、撮影したチャートの画像特性から角度の位置変化を算出し、求める画像特性の走査初期始点座標を設定し直すことができる。
【0012】請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の光学機器の調整および検査システムにおいて、前記チャートに、水平または水平方向に延びた2本の平行線パターンが描かれ、前記第2の演算手段は、前記平行線の間隔を読み出し、基準長との比較を行うことで倍率補正値を導出して、求める画像特性の走査初期視点座標の再設定を行うことを特徴とする。上記構成により、請求項3に記載の発明では、撮影装置を設置したときのチャート間距離変化のため、また、ズームのばらつきのために生じる撮影画像の拡大縮小による座標変化が存在してチャート上の走査初期始点座標が変化し、目的とする座標の画像特性を正確に取得しきれないが、請求項4に記載の発明によれば、撮影したチャートの画像特性から基準画像との相対倍率を算出し、求める画像特性の走査初期始点座標を設定し直すことができる。
【0013】請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の光学機器の調整および検査システムにおいて、前記チャートに描かれるパターンは一定色の画像特性検出範囲を有し、前記第2の演算手段は、画像特性値レベルの検出を行い、検出した特性値レベルを正規化してシェーディングを打ち消す補正値を演算することを特徴とする。上記構成により、画像の周辺部における特性値レベルを正規化することで、シェーディングによる画像周辺部の濃度変化が生じない調整及び検査システムを実現することができる。
【0014】請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の光学機器の調整および検査システムにおいて、前記チャートに描かれるパターンは、中央および四方に下地とは異なる輝度を持ち、前記第2の演算手段は、前記パターンの四方の座標を演算して画像特性値レベルの検出を行い、前記下地から前記パターンへの濃度勾配から解像度を算出することを特徴とする。上記構成において、撮影したチャートの画像特性から、水平、垂直方向及び傾きの位置変化、撮影画像の相対倍率を算出でき、求める画像特性の走査初期始点座標を設定し直すことができ、また、シェーディングの影響による周辺画像の輝度値の劣化を受けることもない。従って、低コスト、且つ精度のよい位置補正手段、シェーディング補正手段を有した解像度自動検査システムを実現することができる。
【0015】請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の光学機器の調整および検査システムにおいて、前記チャートに描かれるパターンは、形状に傾きがあって、かつ、中央および四方に下地とは異なる輝度を持ち、前記第2の演算手段は、前記下地からパターンへの濃度勾配から解像度を算出することを特徴とする。上記構成により、請求項6に記載の発明による解像度自動検査では撮影装置の画素に対するパターンの入り込みにより、下地からパターンの濃度勾配が変化してしまい、精度良く解像度を算出することができなかったが、パターン形状に傾きを持たせることで、画素に対するパターンの入り込みが一律でなくなり、解像度に対する濃度勾配を正確に取得できるようになる。
【0016】請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の光学機器の調整および検査システムにおいて、前記チャートに、階調検査を行うための階調特性を有するパターンが描かれ、前記第2の演算手段は、一定色の階調変化を行う部分の画像特性値を取得し、階調基準となる特性値と比較することを特徴とする。上記構成により、階調自動検査において撮影したチャートの画像特性により、目的の走査初期始点座標を設定し直すことができる画角補正と、および画像周辺部にてシェーディングによる階調の変動を抑制するシェーディング補正を容易に行うことができる。従って、低コストで、且つ精度のよい位置補正手段、シェーディング補正手段を備えた階調自動検査を実現することができる。
【0017】請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の光学機器の調整および検査システムにおいて、前記チャートに、色バランス検査を行うためのカラーバーが描かれ、前記第2の演算手段は、前記カラーバーの各色の位相と振幅を演算し、色バランス基準となる値と比較することを特徴とする。上記構成により、色バランス自動検査において、撮影したチャートの画像特性により目的の走査初期始点座標を設定し直し、色の位相と振幅を取得できるようにする画角補正、および画像周辺部にてシェーディングによる色の位相及び振幅の変動を抑制するシェーディング補正を容易に行うことができる。従って、低コストで、且つ精度のよい位置補正手段、およびシェーディング補正手段を有した色バランス自動検査を実現することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の光学機器の調整および検査システムの実施形態を示すブロック図である。本発明における光学機器の調整および検査システムは、被写体となるチャート100、照明200、被試験装置となる光学機器300、および光学機器の調整、検査を行うコンピュータ400、表示モニタ500から構成される。被写体となるチャート100には、例えば、図2に示すように、基準点(相対座標基準点)及び画角補正用の点(画角補正用パターン)を描かれている。また、チャート100には、図4に示すように、中心部に撮影手段の水平垂直方向の位置変化及び傾きを補正するため、また撮影手段とチャート間距離の補正を行うため、水平、垂直方向に平行な線により描画されたパターンも記される。他に、図6に示されるように、チャートまたは撮影装置の傾きを補正するための水平線から成るパターンも用意されている。図6では水平線から成るパターンのみ示されているが、垂直線でも構わない。
【0019】また、図7に示されるように、撮影装置とチャート間距離の補正を行うための一対の平行線が配置されたパターンも用意される。図7では水平の平行線から成るパターンのみ示したが、垂直の平行線でも構わない。更に、図9に示されるような、中央および四方に色のついた下地とは異なる輝度を持ったパターンが配置され、中心部の囲いは、図4と同様、撮影装置の水平垂直方向の位置変化及び傾きを補正するための、また撮影装置とチャート間距離の補正を行うためのパターンであり、白黒の縞模様はフォーカスを合せやすいように描かれている。外枠の△形の先端は基準画像の画角範囲を示し、△形先端の内側に設置している枠はモニタリング画像の画角範囲を示している。
【0020】また、図10に示されるような図7に示すチャートのエッジに傾きを持たせたチャートも用意される。更に、図12に示されるように、チャート上に階調を表す色のついたグラデーション模様が描かれたものも用意され、図4同様、画角補正を行うために囲いが設置されている。図13に示すチャートには、様々な色が付されたカラーバーが描かれており、図4同様、画角補正を行うために囲いが設置されている。ここでは、チャート100の中心部に囲いを設置しているが、チャート100上であれば中心部に限定されない。
【0021】説明を図1に戻す。照明200は、チャート100背面から光を透過させ輝度及び色温度を管理している。別システムとして反射型チャートを使用し、外部から光をあてチャートを照らすことも可能である。
【0022】被試験装置となる撮像素子を有した光学機器300は、例えば、デジタルカメラを想定している。デジタルカメラ300は、光の焦点を撮像素子に結ぶためのレンズ301、オートフォーカス(AF)、絞り、フィルター部を含み、メカニカルシャッタを閉じるタイミングにより露光量を制御するメカ機構302、レンズ301およびメカ機構302から成るレンズユニットを介して入力された映像を電気信号(アナログ画像データ)に変換するCCD303(電荷結像素子)、CCD撮像素子に対する低雑音化のためのCDS(相関2重サンプリング)回路304、CDS回路304で低雑音化した信号のレベルを補正するAGCアンプ305(可変利得増幅器)、AGCアンプ305を介して入力されたCCD303からのアナログ信号をディジタル画像データに変換するA/D306(アナログディジタル変換器)、A/D306から入力される画像データを色差(Cb、Cr)と輝度(Y)に分けて補正及び画像の圧縮伸張のためのデータ処理を施すIPP307(ディジタル画像処理回路)、JPEG(Joint Photographic Coding Experts Group)等準拠の画像圧縮伸張の一過程である直交交換を行うDCT回路308(Discrete Cosine Transform)、JPEG等準拠の画像圧縮伸張の一過程であるハフマン符号化、復号化等を行う符号化回路309(Coder)、圧縮した画像を一旦蓄えてPCカードインターフェース等(図示せず)を介してPCカード等の記録媒体(図示せず)への記録、あるいは記録媒体からの画像データの読み出しを行うMCC回路310(Memory Card Controller)、メカ制御、画像処理等の指令を出すカメラ内CPU311、一時的に画像の保存、演算データの保存を行う内部メモリ312(RAM)、外部の機器との通信を行う外部インターフェース313(I/F)、CCD303、CDS304、AGC305、A/D306に至る一連のシーケンスを制御するシーケンス発生器(SG)314、メカ機構302を駆動するモータドライバ315で構成される。
【0023】被試験装置であるデジタルカメラ300の調整検査を行うパーソナルコンピュータ400は、画像の特性を演算し、画角の補正値を導き出し、補正を行った上でデジタルカメラ300の特性を演算するCPU401、デジタルカメラ300の水平垂直方向の位置変化及び傾きを補正すると共に、撮影画像の倍率を補正し、画像特性検出を行いシェーティングの補正を実行し、解像度自動検査、色バランス自動検査を行うためのプログラムが記録される記録装置402、CPU401が記録装置402に記録されたプログラムを実行すると共に、演算結果の一時的保存等が行なわれるRAM403、接続される表示モニタ500に映像信号を出力するD/A(デジタルアナログ変換)回路404、外部機器との通信を行うための外部インターフェース回路405(I/F)で構成される。なお、CPU401は、被試験装置である光学機器300の各種調整、検査のために記録装置402からプログラム命令を読み出し、RAM403を使用して逐次プログラム命令を実行するが、ここでは、チャート100を用いて基準画像を撮影し、撮影した基準画像から相対座標基準点の絶対座標と、取得したい画像特性のある座標を相対座標基準点からの相対座標で表して水平垂直方向の位置補正量を導出する第1の演算手段、チャート100を撮影して相対座標基準点近傍を走査して相対座標基準点の絶対座標を求め、基準画像と撮影画像の相対座標基準点とを比較して水平垂直方向の画角補正を行う第2の演算手段として動作する他、被試験装置300である光学機器の水平垂直方向の位置変化及び傾きを補正すると共に、撮影画像の倍率を補正し、画像特性検出を行いシェーティングの補正を実行し、解像度自動検査、色バランス自動検査を行う。いずれも詳細は後述する。
【0024】従来、チヤート100上の目的とする場所のデータを取得するために、予め座標を設定してチャート100上の画像の特性を読み取ってきたが、カメラを支える固定治具の設置状況の変化により正しくデータを取得できずにいたことは上記した通りである。そこで、本発明は、撮影したチャートの画像特性からプログラムにより相対座標基準点を求め、また水平、垂直の位置変化を算出し、説定している相対座標に補正を行う画角補正アルゴリズムを採用した。
【0025】以下、本発明実施形態の動作について詳細に説明するが、はじめに被試験装置となるデジタルカメラの動作について簡単に説明する。照明200から照射された光は、チャート100を透過して、レンズ301を通過し、CCD303上に結像する。結像した画像は、CCD303により電気信号に変換された後、A/D変換器306によりデジタル画像信号に変換される。更に、デジタル信号はIPP307で輝度信号(Y)及び色差信号(Cb,Cr)に分離され、それぞれデータとしてRAM312に格納される。
【0026】PC400は、デジタルカメラ300のRAM312に格納された輝度信号(Y)の値を、例えばRA232Cケーブルを用い、外部インターフェース313およびPC400内外部インターフェース回路405を介してリードし、PC400が内蔵するRAM403に格納する。PC400のCPU401は、記録装置402に記録されている画角補正プログラムに基づき、RAM403に格納された画像データを取得して、CCD303とチャート100の位置変化を演算し、水平、垂直方向の位置補正量を導き出す。
【0027】(第1の実施形態)図3に示すフローチャートを用いて上記した位置補正のためのアルゴリズムについて説明する。まず、相対座標基準点を算出する。ここでは、(a)に示すように、始めに基準画像となる画像を撮影しておき(ステップS301)、基準画像から相対座標基準点の絶対座標と取得したい画像特性のある座標を相対座標基準点からの相対座標で表し求めておく(ステップS302)。
【0028】次に(b)に従い画角の相対座標補正を行う。すなわち、チャート100を撮影して相対座標基準点付近を走査し(ステップS401、S402)、相対座標基準点の絶対座標を求める。相対座標基準点の検出は、例えば輝度に着目すると、走査ラインの各画素の輝度レベルを取得し、輝度レベルの変化点を見つけることで行える。基準画像と撮影画像の相対座標基準点の座標を比べる(ステップS403)ことで、水平垂直方向の画角変化を求めることができる。画角補正は画角変化分の座標を求める点の相対座標に加減算することで実施される(ステップS404)。
【0029】(第2の実施形態)上記した画角補正によれば、撮影画像の相対位置基準点を出すために、多くの走査ラインを必要とし、従って、相対位置基準点の座標を導出するためには、画像特性の取得と演算を多く返す必要があり、画角補正に多くの時間を費やしてしまう。そこで、水平、垂直方向に平行な線パターンを用いることで、相対座標基準点を求めることが考えられる。そこで第2の実施形態として、相対座標基準点を求めるために以下に示す手法が用いられ、図4,図5に示すチャート(走査ライン)を参照しながら説明する。
【0030】はじめに基準とする相対座標基準点に四角い囲いを設置した図4に示すチャート100を撮影しておく。画角補正は撮影画像の相対座標基準点S(図5)を算出し、基準画像で設定した走査始点座標の相対座標の補正を行い、補正後の座標を指定することで行われている。以下は走査始点座標を基準画像の相対座標基準点Kとし、撮影画像の相対座標基準点Sを求める。
【0031】最初に基準画像の相対座標基準点Kを設定するために図4に示すチャート100を撮影した画像の左上を原点とし、右方向からX軸を、下方向にY軸を設定して、画素の座標を読み取ることとする。撮影した画像から図4上の■、■、■、■の白から黒に変化するエッジの座標を求める。座標の求め方は例えば、■のラインの輝度データを取得し白から黒へ切り替わるときの輝度の傾きが最大となるところをエッジの座標として取得する。撮影画像の相対座標基準点Sを求めるためには、以下の手順により、パラメータP1、P2を取得する。
【0032】撮影画像における相対座標基準点SのX座標算出のため、■と■のエッジの座標の差分βを算出する。ここでは■と■のY座標を同じように設定している。そして、基準画像の相対座標基準点KのX座標と■のX座標の差分値δXを算出する。次に、先に求めた■と■のX座標の差分値であるβとδXの比率P1を算出する。
1=δX/β (P1:S点のX座標を求めるための比率) …(1)
【0033】撮影画像における相対座標基準点SのY座標算出のため、■のエッジのY座標を求め、■と■のY座標の差分γを算出する。但し、ここでは■と■のX座標を同じように設定している。基準画像の相対座標基準点KのY座標と■のY座標の差分値δyを算出する。そして、先に求めた■と■のY座標の差分値であるγとδyの比率P2を算出する。
2=δy/γ (P2:点SのY座標を求めるための比率) …(2)
以上により基準画像からパラメータP1、P2を取得し、画角補正プログラムの基準画像パラメータとしてセットする。
【0034】以下に、取得した基準画像パラメータP12を用いた撮影画像の相対座標基準点Sを算出するアルゴリズムを説明する。まず、図4に示すチャートを撮影した画像から、■、■、■、■のエッジ座標を測定する。撮影画像の相対座標基準点SのX座標を求めるため、■と■の差分値Bを算出する。ここで算出されたBに基準画像パラメータP1を掛け合わせ、■のX座標から相対座標基準点SのX座標までの画素数LXを求める。
X=B*P1 (LX:点SのX座標を求めるための画素数) …(3)
【0035】次に、■のX座標に前記LXを加え、相対座標基準点SのX座標(Xs)を求める。そして、相対座標基準点SのY座標を求めるため、■と■の差分値Cを算出する。Cに基準画像パラメータP2を掛け合わせ、■のY座標から相対座標基準点SのY座標までの画素数Lyを求める。
y=C*P2 (Ly:SのY座標を求めるための画素数) …(4)
■のY座標に前記Lyを加え、基準画像SのY座標(Ys)を求める。以上により、相対座標基準点Sを容易に求めることができる。画角補正は基準画像での相対座標基準点Kからの相対座標に補正を加えることで画角補正を行うことができる。
【0036】(第3の実施形態)次に、第3の実施形態について説明する。ここでは、まず、基準とする相対座標基準点に四角い囲いを設置した図4に示すチャートを撮像しておく。画角補正は、撮影画像の相対座標基準点Sを算出し、基準画像で設定した走査始点座標の相対座標の補正を行い補正後の座標を指定することで行われている。従来、撮影画像と基準画像のチャートの位置変化がX方向に10画素、Y座標に5画素ずれているとすれば、画角補正を実施した場合、始点座標も同様にX方向に10画素、Y方向に5画素移動するように設定する。ここでは、従来補正できない画像の傾きを補正できるようにしている。以下に、画角補正を実施する上で必要な撮影画像の相対座標基準点Sを算出する方法と、角度変化を補正する方法を説明する。以下は、走査始点座標を基準画像の相対座標基準点Kからの相対極座標点M(RM,θM)とした場合の画角補正である。
【0037】撮影画像の相対座標基準点Sを求めるためには、始めに基準画像の相対座標基準点Kを設定するために図4に示すチャート100を撮影する。ここでは、撮影した画像の左上を原点とし、右方向にY軸を設定して、画素の座標を読み取ることとする。まず、撮影した画像から、図4上部に位置する■、■、■、■、■の白から黒に変化するエッジの座標を求める。座標の求め方は例えば、■のラインの輝度データを取得し白から黒へ切り替わるときの輝度の傾きが最大となるところをエッジの座標として取得する。画角補正を行うために以下の手順により傾き補正パラルータα、撮影画像の相対座標基準点Sを求めるためのパラメータP1、P2を取得する。
【0038】撮影画像の傾きを算出するため、■と■のエッジのX座標の差分αを算出する。ここで■と■のY座標は同じになるように設定している。撮影画像における相対座標基準点SのX座標算出のため、■と■のエッジのX座標の差分βを算出する。ここでは、■と■のY座標を同じになるように設定しておく。そして、基準画像の相対座標基準点KのX座標と■のX座標の差分値δxを算出する。次に先に求めた■と■のX座標の差分値であるβとδxの比率P1を算出する。
1=δx/β …(5)
【0039】最後に撮影画像の相対座標基準点SのY座標を算出するため、■のエッジのY座標を求め、■と■のY座標の差分γを算出する。但し、■と■のX座標が同じになるように設定している。次に、基準画像の相対座標基準点KのY座標と■のY座標の差分値δyを算出する。そして、先に求めた■と■のY座標の差分値であるγとδyの比率P2を算出する。
2=δy/γ …(6)
以上により基準画像からパラメータα、P1、P2、を取得し、画角補正プログラムの基準画像パラメータとしてセットする。
【0040】以下に取得した基準画像パラメータα、P1、P2、を用いた画角補正プログラムのアルゴリズムについて説明する。まず、図4に示す画角補正チャート100を撮影した画像から■、■、■、■、■のエッジ座標を測定する。そして、■と■のYの座標の差分値Aを算出する。次に、基準画像パラメータαを用いて、Aからカメラを支える固定治具の接値状況などによる撮影画像の傾きθAを求める。以下に傾きθAを求めるための演算式を示す。
θA=tan-1(A/α) (θA:角度補正量) …(7)
そして、撮影画像の相対座標基準点SのX座標を求めるため、■と■の差分値Bを算出する。また、Bの基準画像パラメータP1を掛け合わせ、■のX座標から相対座標基準点SのX座標までの画素数LXを求める。
X=B*P1 …(8)
【0041】■のX座標に前記LXを加え、相対座標基準点SのX座標(XS)を求める。そして、相対座標基準点SのY座標を求めるため、■と■の差分値Cを算出する。次に先のCに基準画像パラメータP2を掛け合わせ、■のY座標から相対座標基準点SのY座標までの画素数Lyを求める。
y=C*P2 …(9)
【0042】次に■のY座標に上記により求めたLyを加え、相対画像基準点SのY座標(YS)を求める。そして、算出した相対座標基準点Sの極座標変換を以下の演算式(10)により算出する。
相対座標基準点S(((XS2+(YS)2)1/2,tan-1(YS/XS)) …(10)
相対座標基準点Sに対して、求める座標点M(RM,θM)の相対座標を加え角度補正を実施する。従って、求める点Mの絶対座標は以下の演算式(11)により算出される。
M(((XS2+(YS2)1/2+RM,tan-1(YS/XS)+θM+θA) …(11)
以上が水平垂直方向および傾きの補正方法である。
【0043】(第4の実施形態)上記した第3の実施形態では、カメラを設置した場合におけるチャート間距離の変化のため、またスムーズのばらつきのために生じる撮影画像の拡大縮小による座標変化を補正する手段がないため、チャート上の目的から画像の特性を正しく取得できないことが生じていた。そのため、ここでは、上記した画角補正に撮影画像の倍率補正を加えている。ここでは、上記した第3の実施形態と同様に、はじめに基準とする相対座標基準点Kに四角い囲いを設置した図4に示したチャートを撮像しておく、画角補正は基準画像の相対座標基準点Kと撮影画像の相対座標基準点Sの座標変化を算出し、画像の傾きを導き出し、撮影画像の基準画像との相対倍率を算出し、撮影画像の相対画像基準点Sに基準画像で設定した走査始点座標の相対座標の補正を行い補正後の座標を指定することで行われている。
【0044】次に画角補正を実施する上で必要な撮影画像の相対座標基準点Sを算出する方法と、角度変化を補正する方法、倍率補正の方法を説明する。以下は走査始点座標を基準画像の相対座標基準点Kからの相対極座標点M(RM,θM)とした場合の画角補正である。撮影画像の相対座標基準点Sを求めるためには、はじめに基準画像の相対座標基準点Kを設定するために図4のチャートを撮影する。撮影した画像の左上を原点とし、右方向にX軸を設定して、画素の座標を読み取ることとする。撮影した画像から図4上の■、■、■、■、■の白から黒に変化するエッジの座標を求める。
【0045】画角補正を行うために以下の手順により傾き補正のパラメータα、撮影画像の相対座標基準点Sを求めるためパラメータP1、P2を取得する。まず、撮影画像の傾きを算出するため、■と■のエッジのX座標の差分αを算出する。ここで■と■のY座標は同じになるよう設定している。そして、撮影画像における相対座標基準点SのX座標算出のため、■と■のエッジのXx座標の差分βを算出する。■と■のY座標を同じになるよう設定している。次に、基準画像の相対座標基準点KのY座標と■のX座標の差分値δXを算出する。先に求めた■と■のX座標の差分値であるβとδXの比率P1を算出する。
1=δX/β …(12)
最後に撮影画像における相対座標基準点SのY座標算出のため、■のエッジのY座標を求め、■と■のY座標の差分γを算出する。但し、■と■のX座標を同じように設定している。
【0046】基準画像の相対座標基準点KのY座標と■のY座標の差分値δyを算出する。そして、先に求めた■と■のY座標の差分値であるγとδyの比率P2を算出する。
2=δy/γ …(13)
以上により基準画像からパラメータα、P1、P2を取得し、画角補正ブログラムの基準画像パラメータとしてセットする。
【0047】以下に取得した基準画像パラメータα、P1、P2を用いた画角補正ブログラムのアルゴリズムについて説明する。図4に示す画角補正チャートを撮影した画像から、■、■、■、■、■のエッジ座標を上記と同様に測定する。次に、倍率補正値を算出するため■と■の差分値Bを求める。そして、撮影した画像の倍率補正Hrを演算する。
Hr=β/B (Hr:倍率補正値) …(14)
【0048】次に、傾き補正値を算出するために■と■のY座標の差分値Aを算出する。そして、基準画像パラメータαにHrを掛け、■と■の距離αを補正する。
α= Hr*α …(15)
基準画像パラメータαを用いて、Aからカメラを支える固定治具の設置状況などによる撮影画像の傾きθAを求める。下にθAを求めるための式を示す。
θA=tan-1(A/α) …(16)
そして、■と■の差分値であるBに基準画像パラメータP1を掛け合わせ、■のX座標から相対座標基準点SのX座標までの画素数LXを求める。
X=B*1 …(17)
【0049】■のX座標に先に求めたLXを加え、相対座標基準点SのX座標(Xs)を求める。相対座標基準点SのY座標を求めるため、■と■の差分値Cを算出する。そして、Cに基準画像パラメータP2を掛け合わせ、■のY座標から相対座標基準点SのY座標までの画素数Lyを求める。
Ly=C*2 …(18)
【0050】また、■のY座標に前記Lyを加え、相対座標基準点SのY座標(Ys)を求める。そして、算出した相対座標基準点Sの極座標変換を行う 相対座標基準点S(((Xs)2+(Ys)212,tan-1(Ys/Xs))…(19)
相対座標基準点Sに求める座標点Mの相対座標を加え角度補正、倍率補正を実施する。従って、求める点Mの絶対座標は以下の演算式に従う。
M(((Xs)2+(Ys)2)1/2+RM* Hr,tan-1(Ys/Xs)+θM+θA) …(20)
以上が水平垂直方向および傾き距離の補正を実施する方法である。
【0051】(第5の実施形態)なお、特開平6−229872号に開示された技術によれば、シェーディング(レンズの特性により発生する画像周辺部における輝度値の減衰)の影響を打ち消すために、走査ラインに対して一定の短冊区間で区切り、最大、最小を求め平均化し画像の特性を得ることを行っていた。しかしながら、画像周辺部において、撮影画像の変調度を求めるための基準となる白参照ライン平均濃度と、黒参照ラインの座標の違いによりシェーディングの影響のため濃度勾配が大きく変化してしまうことと、白黒縞模様を水平垂直に数十画素の走査を行っているため、先の問題と同様にシェーディングの影響が発生してしまい、濃度勾配が短冊区間の設定により大きく変化してしまう。そこでシェーディングの影響をなくすために、本発明では、画像周辺部においては一定色の画像特性検出範囲から色レベル、例えば輝度レベル、色差信号であるCb、Crレベル、または色3原色であるRGB系のR、G、Bなどの色レベル等を取得し、画像中心部における色レベルへと正規化することで求められる係数を、画像周辺部における画像データ評価値に掛け合わせることでシェーディングの影響を除去している。
【0052】特開平6−229872号公報に開示された技術によれば、図8に白参照ライン変更図として示すように、白レベル検出範囲の位置を変更し、中心付近の白レベル検出範囲で求めた濃度と周辺部の白参照ラインを比較し、正規化係数Vをそれぞれの画素に対して取得する。本発明によれば、求めた正規化係数Vを解像度評価ラインで取得した濃度分布に掛け合わせることで、各画素に対するシェーディングの影響を排除する。上記した第3、第4の実施形態で示した、角度補正、倍率補正を適用することで、走査ラインの始点座標が精度良く取れるため、黒参照ライン、白参照ライン、解像度評価ラインを隣接させることができる。以上がシェーディングの影響をなくするための方法である。
【0053】(第6の実施形態)以下に、角度補正、倍率補正、およびシェーディング補正を施した解像度自動検査システムについて説明する。従来の目視検査は官能検査であるため、人、場所、時により判定が変わってしまい、正確な解像度検査の判断が実施できないでいた。この問題に対応すべく、また人員の削減、工数低減を目指し、従来からPCを用いて自動解像度検査を実施している。
【0054】解像度検査とは、カメラがどれだけ細かく画像を捉えているかを調べる検査である。そこで、本発明においては、図9に示すチャート100を用いている。すなわち、中心および四方にブロックを設置し、中心部には画角補正用の囲いとフォーカスを合わせやすいように設置した白黒縞を描きこんだチャートを用い、PCにより中心及び四方に設置したブロックのエッジ部の輝度変化を取得し、輝度の変化率、つまり輝度勾配ζに着目した検査を実施している。輝度勾配ζに着目した理由は、高解像度のカメラであれば画像を細かく捉えることができ、エッジ部を少ない画素数で表現することができるため、隣り合った画素の輝度変化が大きいので傾き値ζは大きな値を示すためである。逆に低解像度のカメラであればエッジ部を表現するのに多くの画素が必要となり、隣り合う画素の輝度変化が小さいので傾き値ζも小さな値を示す。
【0055】この傾き値ζを解像度を示す評価値として用い、一定以上の傾き値ζを持つならば解像度検査合格とし、規格に設定した傾き値ζ以下ならば、解像度検査不合格として解像度自動検査を実施している。またシェーディングの影響、およびAEレベルのばらつきを抑えるためシェーディング補正を実施している。シェーディング補正を実施するには、エッジ部より前の白レベル検出範囲で白レベルを検出し、人の目の明るさ感度の大きさ(60IRE)へと正規化を行い、係数Vを取得する必要がある。この正規化係数Vを輝度勾配に乗算し、シェーディングおよびAEの補正を行っている。
【0056】解像度自動検査の手順は、まず始めに画角補正を実施するため、上記した第23、4、5の実施形態と同様に、図9に示すチャート、ここでは解像度自動検査用チャート100の基準画像を撮影し、その基準画像からパラメータα、P1、P2を記録する。このパラメータをプログラム上に記録させておけば、画角補正用ラインの輝度変化を読むだけで上記した各実施例で示す方法で自動的に画角を補正し、走査ライン始点座標を再設定することができる。
【0057】解像度自動検査プログラムを実行すると、はじめに画角補正ラインの走査が行なわれ、輝度変化から画角補正を実行して、画像の中央及び四方の水平垂直輝度取得ライン始点座標の再設定を行う。次に補正された座標から輝度の変化をカメラ側から取得し、取得ラインの各画素間の輝度傾き値から傾き最大値ζmaxを導き出し、規格値と比較を行って解像度の検査を実施している。ここでは既に輝度変化を取得すると同時に、白レベル検出範囲より得た正規化係数Vをエッジ部の輝度値に乗算して傾き最大値を取得している。なお、ここでは、白レベルを基準としているが、一定色の色レベルを基準としても可能である。以上により、角度補正、距離補正、シェーディング補正を実施した解像度自動検査が可能となる。
【0058】(第7の実施形態)上記した第6の実施形態の解像度自動検査では、エッジの傾きが垂直であるため、図11にエッジの入り込みとして示すように画素に対するエッジの入り込みによりエッジ部での画素の輝度レベルが変化してしまう。特に高画素になるほど隣り合った画素との輝度値変化(輝度傾き値ζ)が異なる傾向にある。そこで、エッジに角度を付けることが必要となり、ここでは、画素に対するエッジ部の入り込みを考慮して、複数の輝度の走査ラインを設けた。解像度判定の評価値は、例えば、各ラインの傾き最大値を平均した値ζaveもしくは各ラインの傾き最大値の中の最大値ζmaxとする。
【0059】ライン数はエッジ角度に対応しており、エッジが急角度の場合はラインを多くとり、エッジ部の入り込みによる折り返しを多く取得しなければならない。角度の大きさの設定は、例えば、水平走査の場合、エッジ角度が45°以上であれば水平解像度が大きく影響し、45°以下ならば垂直解像度の方に大きく影響してくるため、解像度を水平垂直成分に分割したい場合は、できるだけエッジを急角度にしなければならない。水平垂直の解像の現われ方は、単純な真円ではないため、水平垂直方向成分に分解して解像度を判断することはできない。ここでの解像度自動検査ではエッジ角度を走査ラインに対して75°に設定している。角度を75°に設定したのは、チャートまたはカメラによる傾きを ±5°と考え、エッジ傾き最大80°とすると折り返し1回につき約6ライン必要となる。従って、折り返し数を多く取り、解像判定を精度良くするため走査ライン数を30本とした。以上により、第6の実施形態と同様の解像度自動検査を行っている。
【0060】(第8の実施形態)次に、角度補正、距離補正、及びシェーディング補正を実施した階調自動検査について説明する。階調検査は、カメラが画像の濃度変化を正しく捉えられているか否かの検査である。チャート100としてグレースケールチャートを用い、チャート100上の濃度変化が描かれている各階調において輝度値を取得し、指定された座標の照度値が規格に満足しているかどうか判断して検査を行っている。
【0061】階調自動検査の手順は、まず始めに画角補正を実施するため上記した各実施形態と同様に、図12に階調自動検査用として示すチャートの基準画像を撮影して基準画像からパラメータα、P1、P2を記録する。このパラメータをプロクラム上に記録させておけば、画角補正用ラインの輝度変化を読むだけで自動的に画角を補正し、走査ライン始点座標を再設定する。階調自動検査プログラムを実行すると、はじめに画角補正ラインの走査を行い、輝度変化から画角補正を実行して、階調が描かれたチャート上の階調輝度取得座標の再設定を行う。次に各階調輝度取得座標の下の白検出ラインから白レベルを測定し、正規化係数Vを取得しておく。以上により、再設定された階調輝度取得座標上の輝度値を読み込み正規化係数を掛けることで、撮像素子の傾きや、カメラとチャート間距離、シェーディングに影響されない階調自動検査を実施することができる。
【0062】(第9の実施形態)角度補正、倍率補正、及びシェーディング補正を実施した色レベル自動検査について説明する。色レベル検査は、カメラが撮影画像の色の振幅及び位相を正しく読み込めているか否かの検査である。ここでは、チャートとしてカラーバーチャートを用い、チャート上の各色の位相及び振幅を取得し、指定された座標の位相と振幅が規格に満足しているか否かを判断して検査を行っている。
【0063】色レベル自動検査の手順は、はじめに画角補正を実施するため上記した各実形態と同様に、図13に色バランス自動検査用チャート100として示す基準画像を撮影して基準画像からパラメータα、P1、P2を記録する。このパラメータをプログラム上に記録させておけば、画角補正用ラインの輝度変化を読むだけで自動的に画角を補正し、走査ライン始点座標を再設定する。
【0064】色レベル自動検査プログラムを実行すると、はじめに画角補正ラインの走査を行い、輝度補正を実行して、カラーバーが描かれたチャート上の色レベル取得座標の再設定を行う。次に、色レベル取得座標の上の白検査ラインから白レベルを測定し、正規化係数Vを取得しておく。以上により、再設定された色レベル取得座標上の色レベルに正規化係数Vを反映することで、撮影素子の傾きや、カメラとチャート間距離、シェーディングに影響され色レベル自動検査を実行することができる。
【0065】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、撮影したチャートの画像特性から画像の補正値を算出し、求める画像特性の走査初期始点座標を設定し直すことができるため、調整、検査途中でチャートの切り替え、または撮影装置の取り外しによる相対位置変化が起ったとしても画角補正を行うことで、調整、検査作業を持続することができる。従って、大掛かりな位置補正のための設備を使用することなく廉価構成で補正できるようになる。
【0066】請求項2に記載の発明によれば、水平、垂直方向に平行な線パターンを用いることで、相対座標基準点を容易に求めることができ、請求項1の発明に比較して短時間で画角補正を実施することができる。また、請求項3に記載の発明によれば、撮影したチャートの画像特性から角度の位置変化を算出し、求める画像特性の走査初期始点座標を設定し直すことができる。
【0067】請求項4に記載の発明によれば、撮影したチャートの画像特性から基準画像との相対倍率を算出し、求める画像特性の走査初期始点座標を設定し直すことができる。また、請求項5に記載の発明によれば、画像の周辺部における特性値レベルを正規化することで、シェーディングによる画像周辺部の濃度変化が生じない調整及び検査システムを実現することができる。
【0068】請求項6に記載の発明によれば、撮影したチャートの画像特性から、水平、垂直方向及び傾きの位置変化、撮影画像の相対倍率を算出でき、求める画像特性の走査初期座標を設定し直すことができ、また、シェーディングの影響による周辺画像の輝度値の劣化を受けることもない。従って、低コスト、且つ精度のよい位置補正手段、シェーディング補正手段を有した解像度自動検査システムを実現することができる。
【0069】請求項7に記載の発明によれば、パターン形状に傾きを持たせることで、画素に対するパターンの入り込みが一律でなくなり、解像度に対する濃度勾配を正確に取得できるようになる。
【0070】請求項8に記載の発明によれば、階調自動検査において撮影したチャートの画像特性により、目的の走査初期始点座標を設定し直すことができる画角補正と、および画像周辺部にてシェーディングによる階調の変動を抑制するシェーディング補正を容易に行うことができる。従って、低コストで、且つ精度のよい位置補正手段、シェーディング補正手段を備えた階調自動検査を実現することができる。
【0071】請求項9に記載の発明によれば、色バランス自動検査において、撮影したチャートの画像特性により目的の走査初期始点座標を設定し直し、色の位相と振幅を取得できるようにする画角補正、および画像周辺部にてシェーディングによる色の位相及び振幅の変動を抑制するシェーディング補正を容易に行うことができる。従って、低コストで、且つ精度のよい位置補正手段、およびシェーディング補正手段を有した色バランス自動検査を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における光学機器の調整および検査システムの実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示すチャートに描画される画角補正チャートの一例を示す図である。
【図3】図1に示すPC内CPUが実行する相対座標補正アルゴリズムをフローチャートで示した図である。
【図4】図1に示すチャートに描画される画角補正チャートの一例を示す図である。
【図5】図4に示すチャートの基準画像、撮影画像の記号を説明するために引用した図である。
【図6】図1に示すチャートに描画される傾き補正チャートの一例を示す図である。
【図7】図1に示すチャートに描画される倍率補正チャートの一例を示す図である。
【図8】図1に示すチャートに描画される白黒参照ライン変更図を示す図である。
【図9】図1に示すチャートに描画される解像度自動検査用チャートの一例を示す図である。
【図10】図1に示すチャートに描画される解像度自動検査用チャートの一例を示す図である。
【図11】解像度自動検査において、エッジの入り込みを説明するために引用した図である。
【図12】図1に示すチャートに描画される階調自動検査用チャートの一例を示す図である。
【図13】図1に示すチャートに描画される色バランス自動検査用チャートの一例を示す図である。
【符号の説明】
100 チャート
200 照明
300 被試験装置(デジタルカメラ)
400 パーソナルコンピュータ(PC)
401 CPU
402 記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 画角補正を行うパターンが配置されたチャートと、画像を撮影する撮影素子を備えた撮影装置とから成る光学機器の調整および検査システムであって、前記チャートを用いて基準画像を撮影し、前記撮影した基準画像から相対座標基準点の絶対座標と、取得したい画像特性のある座標を前記相対座標基準点からの相対座標で表して水平垂直方向の位置補正量を導出する第1の演算手段と、前記チャートを撮影して前記相対座標基準点近傍を走査して前記相対座標基準点の絶対座標を求め、前記基準画像と撮影画像の相対座標基準点とを比較して水平垂直方向の画角補正を行う第2の演算手段とを備えたことを特徴とする光学機器の調整および検査システム。
【請求項2】 前記チャートに、水平、垂直方向に平行な線パターンが描かれ、前記第2の演算手段は、前記チャートのパターン座標から撮影画像の相対座標基準点を演算し、相対位置までの補正値を導出することを特徴とする請求項1に記載の光学機器の調整および検査システム。
【請求項3】 前記チャートに、水平または垂直方向に延びた線パターンが描かれ、前記第2の演算手段は、前記パターンの2点間の座標を導出し、前記導出した座標から撮影画像の傾きを演算し、基準位置座標からの相対座標を補正することを特徴とする請求項1に記載の光学機器の調整および検査システム。
【請求項4】 前記チャートに、水平または水平方向に延びた2本の平行線パターンが描かれ、前記第2の演算手段は、前記平行線の間隔を読み出し、基準長との比較を行うことで倍率補正値を導出して、求める画像特性の走査初期視点座標の再設定を行うことを特徴とする請求項1に記載の光学機器の調整および検査システム。
【請求項5】 前記チャートに描かれるパターンは一定色の画像特性検出範囲を有し、前記第2の演算手段は、画像特性値レベルの検出を行い、検出した特性値レベルを正規化してシェーディングを打ち消す補正値を演算することを特徴とする請求項1に記載の光学機器の調整および検査システム。
【請求項6】 前記チャートに描かれるパターンは、中央および四方に下地とは異なる輝度を持ち、前記第2の演算手段は、前記パターンの四方の座標を演算して画像特性値レベルの検出を行い、前記下地から前記パターンへの濃度勾配から解像度を算出することを特徴とする請求項1に記載の光学機器の調整および検査システム。
【請求項7】 前記チャートに描かれるパターンは、形状に傾きがあって、かつ、中央および四方に下地とは異なる輝度を持ち、前記第2の演算手段は、前記下地からパターンへの濃度勾配から解像度を算出することを特徴とする請求項6に記載の光学機器の調整および検査システム。
【請求項8】 前記チャートに、階調検査を行うための階調特性を有するパターンが描かれ、前記第2の演算手段は、一定色の階調変化を行う部分の画像特性値を取得し、階調基準となる特性値と比較することを特徴とする請求項1に記載の光学機器の調整および検査システム。
【請求項9】 前記チャートに、色バランス検査を行うためのカラーバーが描かれ、前記第2の演算手段は、前記カラーバーの各色の位相と振幅を演算し、色バランス基準となる値と比較することを特徴とする請求項1に記載の光学機器の調整および検査システム。

【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2002−290993(P2002−290993A)
【公開日】平成14年10月4日(2002.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−83677(P2001−83677)
【出願日】平成13年3月22日(2001.3.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】